(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】電源システム、及び制御装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240611BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20240611BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J7/02 H
H02J7/00 L
H02J3/32
(21)【出願番号】P 2021053230
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三井 正彦
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/179810(WO,A1)
【文献】特開2020-089141(JP,A)
【文献】特開2018-074709(JP,A)
【文献】特開2008-182810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00-3/12
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
H01M10/05-10/0587
H01M10/36-10/48
H02J3/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02M7/42-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源回路と、
前記電源回路に接続可能な電池ストリングと、
前記電池ストリングを制御する制御装置とを備え、
前記電源回路は、外部電源と電気的に接続可能に構成され、
前記電池ストリングは、互いに接続された複数の電池回路を含み、
前記複数の電池回路の各々は、前記電源回路に対して接続/切離し可能な態様で電池を含み、
前記制御装置は、前記電池ストリングに含まれる複数の電池を少なくとも第1電池と第2電池とに区別し、所定の第1条件が成立すると、前記電池ストリングに含まれる電池のうち前記第1電池のみを前記電源回路に接続し、所定の第2条件が成立すると、前記電池ストリングに含まれる電池のうち前記第2電池のみを前記電源回路に接続するように構成さ
れ、
前記制御装置は、前記第1条件が成立すると、前記電池ストリングに含まれる電池のうち前記第1電池のみを前記電源回路に接続した状態で、前記電源回路に接続された各電池に放電を行なわせ、前記第2条件が成立すると、前記電池ストリングに含まれる電池のうち前記第2電池のみを前記電源回路に接続した状態で、前記電源回路に接続された各電池に放電を行なわせ、所定の第3条件が成立すると、前記第1電池及び前記第2電池の両方を前記電源回路に接続した状態で、前記電源回路に接続された各電池に放電を行なわせ、所定の第4条件が成立すると、前記第1電池及び前記第2電池の少なくとも一方を前記電源回路に接続した状態で、前記電源回路に接続された各電池の充電と放電とを繰り返すように構成され、
前記制御装置は、前記電源回路の入出力電力によって前記外部電源の電力調整を行なうように前記電源回路を制御し、
前記制御装置は、要求される電力調整の度合い及び調整時間を用いて、前記第1条件、前記第2条件、前記第3条件、及び前記第4条件の各々の成否を判断する、電源システム。
【請求項2】
前記複数の電池回路の各々は、前記電池と、前記電池に並列に接続された第1スイッチと、前記電池に直列に接続された第2スイッチとを備え、前記第2スイッチがOFF状態であるときに前記電池が前記電源回路から切り離され、前記第1スイッチがOFF状態かつ前記第2スイッチがON状態であるときに前記電池が前記電源回路に接続されるように構成される、請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記電池ストリングに含まれる前記複数の電池回路は、前記第1電池に区別される電池をそれぞれ含む複数の第1電池回路と、前記第2電池に区別される電池をそれぞれ含む複数の第2電池回路とを含み、
前記制御装置は、前記第1条件が成立すると、第1制御指令を前記電池ストリングへ送信し、前記第2条件が成立すると、第2制御指令を前記電池ストリングへ送信するように構成され、
前記電池ストリングは、前記第1制御指令を受信すると、前記複数の第1電池回路に含まれる各電池を前記電源回路に接続するように各第1電池回路の前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを駆動し、前記第2制御指令を受信すると、前記複数の第2電池回路に含まれる各電池を前記電源回路に接続するように各第2電池回路の前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを駆動する、請求項2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記電池ストリングは、
前記制御装置からの制御指令に従ってスイッチング信号を生成する制御回路と、
前記制御装置からの前記第1制御指令に従って前記制御回路が生成した第1スイッチング信号、又は前記第1スイッチング信号を遅延させたスイッチング信号を用いて、前記複数の第1電池回路の各々の前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを駆動する第1駆動回路と、
前記制御装置からの前記第2制御指令に従って前記制御回路が生成した第2スイッチング信号、又は前記第2スイッチング信号を遅延させたスイッチング信号を用いて、前記複数の第2電池回路の各々の前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを駆動する第2駆動回路とをさらに含む、請求項3に記載の電源システム。
【請求項5】
前記第1電池は、ニッケル水素電池であり、
前記第2電池は、リチウムイオン電池である、請求項1~4のいずれか一項に記載の電源システム。
【請求項6】
前記第2電池は、前記第1電池と比べて出力電力が小さく容量が大きい、請求項1~4のいずれか一項に記載の電源システム。
【請求項7】
電源回路に接続可能な電池ストリングを制御する制御装置であって、
前記電源回路は、外部電源と電気的に接続可能に構成され、
前記電池ストリングは、互いに接続された複数の電池回路を含み、
前記複数の電池回路の各々は、前記電源回路に対して接続/切離し可能な態様で電池を含み、
前記制御装置は、前記電池ストリングに含まれる複数の電池を少なくとも第1電池と第2電池とに区別し、所定の第1条件が成立すると、前記電池ストリングに含まれる電池のうち前記第1電池のみを前記電源回路に接続し、所定の第2条件が成立すると、前記電池ストリングに含まれる電池のうち前記第2電池のみを前記電源回路に接続するように構成さ
れ、
前記制御装置は、前記第1条件が成立すると、前記電池ストリングに含まれる電池のうち前記第1電池のみを前記電源回路に接続した状態で、前記電源回路に接続された各電池に放電を行なわせ、前記第2条件が成立すると、前記電池ストリングに含まれる電池のうち前記第2電池のみを前記電源回路に接続した状態で、前記電源回路に接続された各電池に放電を行なわせ、所定の第3条件が成立すると、前記第1電池及び前記第2電池の両方を前記電源回路に接続した状態で、前記電源回路に接続された各電池に放電を行なわせ、所定の第4条件が成立すると、前記第1電池及び前記第2電池の少なくとも一方を前記電源回路に接続した状態で、前記電源回路に接続された各電池の充電と放電とを繰り返すように構成され、
前記制御装置は、前記電源回路の入出力電力によって前記外部電源の電力調整を行なうように前記電源回路を制御し、
前記制御装置は、要求される電力調整の度合い及び調整時間を用いて、前記第1条件、前記第2条件、前記第3条件、及び前記第4条件の各々の成否を判断する、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源システム及び制御装置に関し、特に、電池ストリングを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-074709号公報(特許文献1)には、電源回路と、電源回路に接続可能な電池ストリングと、電池ストリングを制御する制御装置とを備える電源システムが開示されている。電池ストリングは、互いに接続された複数の電池回路を含む。複数の電池回路の各々は、電源回路に対して接続/切離し可能な態様で電池を含む。制御装置は、電池の接続/切離しを制御することで、電池ストリングの出力電圧を所望の大きさに調整することができる。こうした電池ストリングは、1つの蓄電装置として機能し得る。以下、電池ストリングを構成する各電池を、「電池要素」とも称する。電池ストリングは、電池要素の1つが故障しても、故障した電池要素を切り離すことで、蓄電装置として正常に動作し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、環境保全などの観点から、主に電力を動力源とする電動車両(たとえば電気自動車又はプラグインハイブリッド車のようなxEV)が増える傾向がある。そこで、電動車両で使用された電池の有効利用を図るため、電動車両で使用された電池を用いて電池ストリングを製造することが考えられる。車両ごとに異なる種類の電池が使用される場合には、異なる種類の電池を用いて電池ストリングが製造されるかもしれない。しかしながら、特許文献1は、異種電池を混合して含む電池ストリング(以下、「異種電池混合ストリング」とも称する)の制御に適した制御装置を提供していない。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、異種電池混合ストリングの制御に適した制御装置、及びこうした制御装置を備える電源システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電源システムは、電源回路と、電源回路に接続可能な電池ストリングと、電池ストリングを制御する制御装置とを備える。電池ストリングは、互いに接続された複数の電池回路を含む。複数の電池回路の各々は、電源回路に対して接続/切離し可能な態様で電池を含む。制御装置は、電池ストリングに含まれる複数の電池を少なくとも第1電池と第2電池とに区別するように構成される。制御装置は、所定の第1条件が成立すると、電池ストリングに含まれる電池のうち第1電池のみを電源回路に接続するように構成される。制御装置は、所定の第2条件が成立すると、電池ストリングに含まれる電池のうち第2電池のみを電源回路に接続するように構成される。
【0007】
本開示に係る制御装置は、電源回路に接続可能な電池ストリングを制御する制御装置である。電池ストリングは、互いに接続された複数の電池回路を含む。複数の電池回路の各々は、電源回路に対して接続/切離し可能な態様で電池を含む。制御装置は、電池ストリングに含まれる複数の電池を少なくとも第1電池と第2電池とに区別するように構成される。制御装置は、所定の第1条件が成立すると、電池ストリングに含まれる電池のうち第1電池のみを電源回路に接続するように構成される。制御装置は、所定の第2条件が成立すると、電池ストリングに含まれる電池のうち第2電池のみを電源回路に接続するように構成される。
【0008】
上記制御装置は、第1電池及び第2電池のいずれか一方を選択的に電源回路に接続するように構成される。このため、上記制御装置は、異種電池混合ストリングを制御する場合に、同種の電池のみを電源回路に接続することができる。上記制御装置は、第1電池に合った電力を電源回路から出力させることも、第2電池に合った電力を電源回路から出力させることもできる。上記制御装置によれば、電池ストリングの出力特性を幅広く変更することが可能になる。また、上記制御装置は、同種の電池のみを選択的に電源回路に接続することができるため、同時に稼働させることができない異種電池(たとえば、互いに電圧が大きく異なる2種以上の電池)を含む異種電池混合ストリングも適切に制御することができる。
【0009】
上記の制御装置は、電池ストリングに含まれる複数の電池を、2つの区分(第1電池/第2電池)で区別してもよいし、3つ以上の区分で区別してもよい。第1条件は、第1電池が単独で使用される条件であり、任意に設定できる。また、第2条件は、第2電池が単独で使用される条件であり、任意に設定できる。第1条件及び第2条件は択一的に成立するように設定されてもよい。
【0010】
複数の電池回路の各々は、電池と、電池に並列に接続された第1スイッチと、電池に直列に接続された第2スイッチとを備えてもよい。そして、複数の電池回路の各々は、第2スイッチがOFF状態であるときに電池が電源回路から切り離され、第1スイッチがOFF状態かつ第2スイッチがON状態であるときに電池が電源回路に接続されるように構成されてもよい。
【0011】
上記構成を有する電池回路によれば、第1スイッチ及び第2スイッチにより、電源回路に対する電池の接続/切離しを適切に行なうことが可能になる。
【0012】
上記複数の電池回路の各々は、第1スイッチがOFF状態かつ第2スイッチがON状態であるときに電池の電圧が印加される第1出力端子及び第2出力端子を備えてもよい。そして、電池回路の第2出力端子が、当該電池回路に隣接する電池回路の第1出力端子と接続されることによって、電池ストリングに含まれる電池回路同士が接続されていてもよい。
【0013】
電池ストリングに含まれる複数の電池回路は、第1電池に区別される電池をそれぞれ含む複数の第1電池回路と、第2電池に区別される電池をそれぞれ含む複数の第2電池回路とを含んでもよい。制御装置は、第1条件が成立すると、第1制御指令を電池ストリングへ送信するように構成されてもよい。制御装置は、第2条件が成立すると、第2制御指令を電池ストリングへ送信するように構成されてもよい。電池ストリングは、第1制御指令を受信すると、複数の第1電池回路に含まれる各電池を電源回路に接続するように各第1電池回路の第1スイッチ及び第2スイッチを駆動するように構成されてもよい。電池ストリングは、第2制御指令を受信すると、複数の第2電池回路に含まれる各電池を電源回路に接続するように各第2電池回路の第1スイッチ及び第2スイッチを駆動するように構成されてもよい。
【0014】
上記構成によれば、電池ストリングに含まれる第1電池と第2電池とを適切に区別して制御することが可能になる。
【0015】
上記制御装置は、電池ストリングの出力電力が目標値になるように、電池ストリングに対する制御指令(たとえば、第1制御指令又は第2制御指令)を生成してもよい。第1スイッチ及び第2スイッチの各々は、SSR(Solid State Relay)のような半導体リレーであってもよい。半導体リレーの例としては、電界効果トランジスタが挙げられる。
【0016】
電池ストリングは、制御装置からの制御指令に従ってスイッチング信号を生成する制御回路と、第1駆動回路と、第2駆動回路とをさらに含んでもよい。第1駆動回路は、制御装置からの第1制御指令に従って制御回路が生成した第1スイッチング信号、又は第1スイッチング信号を遅延させたスイッチング信号を用いて、複数の第1電池回路の各々の第1スイッチ及び第2スイッチを駆動するように構成されてもよい。第2駆動回路は、制御装置からの第2制御指令に従って制御回路が生成した第2スイッチング信号、又は第2スイッチング信号を遅延させたスイッチング信号を用いて、複数の第2電池回路の各々の第1スイッチ及び第2スイッチを駆動するように構成されてもよい。
【0017】
上記構成によれば、多数の電池を含む電池ストリングを適切に制御することが可能になる。
【0018】
電池ストリングは、上記の制御装置から受信した制御指令により、所定の電池(たとえば、第1電池又は第2電池)が電源回路に順次接続されるように構成されてもよい。たとえば、電池ストリングにおいて、電池回路ごとに設けられた駆動回路が、信号の伝達方向の上流から下流に配列されてもよい。そして、最上流に位置する駆動回路は、上記の制御装置から受け取った制御指令に基づいて生成されたスイッチング信号に従って、当該駆動回路に対応する電池回路の第1スイッチ及び第2スイッチを駆動するように構成され、最上流に位置しない各駆動回路は、上流の駆動回路からスイッチング信号を受け取り、受け取ったスイッチング信号を所定時間遅延させたスイッチング信号を生成し、生成したスイッチング信号に従って、当該駆動回路に対応する電池回路の第1スイッチ及び第2スイッチを駆動するように構成されてもよい。
【0019】
第1電池はニッケル水素電池であってもよい。第2電池はリチウムイオン電池であってもよい。
【0020】
現在普及している電動車両では、走行用電力を蓄える電池として、ニッケル水素電池及びリチウムイオン電池のいずれかが使用されることが多い。上記の電源システムは、電動車両で使用されたニッケル水素電池及びリチウムイオン電池を併用して製造された異種電池混合ストリングを適切に制御することができる。このため、電動車両で使用された電池の有効利用が図られる。
【0021】
上記電源システムにおいて、第2電池は、第1電池と比べて出力電力が小さく容量が大きくてもよい。
【0022】
上記構成を有する電源システムでは、高出力・低容量型の第1電池と低出力・高容量型の第2電池とを組み合わせることで、電池ストリングの出力特性(特に、出力電力及び出力持続時間)を幅広く変更することが可能になる。
【0023】
制御装置は、第1条件が成立すると、電池ストリングに含まれる電池のうち第1電池のみを電源回路に接続した状態で、電源回路に接続された各電池に放電を行なわせるように構成されてもよい。制御装置は、第2条件が成立すると、電池ストリングに含まれる電池のうち第2電池のみを電源回路に接続した状態で、電源回路に接続された各電池に放電を行なわせるように構成されてもよい。制御装置は、所定の第3条件が成立すると、第1電池及び第2電池の両方を電源回路に接続した状態で、電源回路に接続された各電池に放電を行なわせるように構成されてもよい。
【0024】
上記構成によれば、第1~第3条件のいずれが成立するかに応じて、第1電池に対応する電力と、第2電池に対応する電力と、第1電池及び第2電池の組合せに対応する電力とのいずれかを選択的に電源回路から出力させることができる。第1電池及び第2電池は、両方同時に稼働できる程度に近い電圧を有してもよい。第1~第3条件は択一的に成立するように設定されてもよい。
【0025】
制御装置は、所定の第4条件が成立すると、第1電池及び第2電池の少なくとも一方を電源回路に接続した状態で、電源回路に接続された各電池の充電と放電とを繰り返すように構成されてもよい。
【0026】
上記電源システムは、たとえばエネルギーマネージメントに利用できる。上記制御装置は、電源回路に接続された各電池に充電と放電とを繰返し行なわせることによって、電力周波数の調整を行なってもよい。
【0027】
電源回路は、外部電源と電気的に接続可能に構成されてもよい。制御装置は、電源回路の入出力電力によって外部電源の電力調整を行なうように電源回路を制御してもよい。制御装置は、要求される電力調整の度合い及び調整時間を用いて、第1条件、第2条件、第3条件、及び第4条件の各々の成否を判断するように構成されてもよい。
【0028】
上記制御装置は、要求される電力調整の度合い及び調整時間に応じて、第1電池の放電と、第2電池の放電と、第1電池及び第2電池の両方の放電と、第1電池及び第2電池の少なくとも一方による充放電の繰返しとを選択的に実行することができる。上記構成によれば、外部電源の電力調整を適切に行ないやすくなる。
【0029】
電源システムは、上記制御装置に外部電源の電力調整を要求する管理装置を含んでもよい。管理装置は、外部電源の需給を管理するサーバであってもよい。管理装置から上記制御装置に要求される電力調整には、外部電源の電力不足を補うための電力供給と、外部電源が供給する電力の周波数調整とが含まれてもよい。
【発明の効果】
【0030】
本開示によれば、異種電池混合ストリングの制御に適した制御装置、及びこうした制御装置を備える電源システムを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本開示の実施の形態に係る電源システムの構成を示す図である。
【
図2】
図1に示した電池ストリングの構成を示す図である。
【
図3】
図2に示した駆動回路及び電池回路の構成を示す図である。
【
図4】本開示の実施の形態に係る制御装置によって制御される電池回路の動作の一例を示すタイムチャートである。
【
図6】遅延期間における電池回路の状態を示す図である。
【
図7】停止期間における電池回路の状態を示す図である。
【
図8】本開示の実施の形態に係る制御装置の構成を示す図である。
【
図9】各SUAによる遅延処理なしでNi出力及びLi出力を実行する電池ストリングの動作例を示す図である。
【
図10】遅延処理ありの条件でNi出力を実行する電池ストリングの動作例を示す図である。
【
図11】遅延処理ありの条件でLi出力を実行する電池ストリングの動作例を示す図である。
【
図12】Ni+Li出力を実行する電池ストリングの動作例を示す図である。
【
図13】Ni+Li充放電を実行する電池ストリングの動作例を示す図である。
【
図14】本開示の実施の形態に係る制御装置が電力出力の要求を受けたときに実行する処理を示すフローチャートである。
【
図15】電池ストリングにおけるLi出力の電力の大きさ及び放電持続時間について説明するための図である。
【
図16】電池ストリングにおけるNi出力の電力の大きさ及び放電持続時間について説明するための図である。
【
図17】
図14に示した処理において実行されるNi+Li充放電の一例を示す図である。
【
図18】
図14に示した処理の第1変形例を示すフローチャートである。
【
図19】
図14に示した処理の第2変形例において、周波数調整に係る処理を示すフローチャートである。
【
図20】
図14に示した処理の第3変形例を示すフローチャートである。
【
図21】
図2に示した構成の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0033】
図1は、この実施の形態に係る電源システムの構成を示す図である。
図1を参照して、電源システム1は、電池ストリングSt1,St2,St3・・・と、分電盤100と、PCS(Power Conditioning System)200と、HUB300と、GCU(Group Control Unit)500とを備える。電源システム1に含まれる電池ストリングSt1,St2,St3・・・は、互いに異なる構成を有してもよいが、この実施の形態では、互いに同じ構成を有する。以下では、区別して説明する場合を除いて、電池ストリングSt1,St2,St3・・・の各々を「電池ストリングSt」と記載する。
【0034】
電池ストリングSt1,St2,St3・・・は、それぞれ電線PL1,PL2,PL3・・・を介して、分電盤100と接続されている。電線PL1,PL2,PL3・・・には、遮断器R1,R2,R3・・・がそれぞれ設けられている。GCU500は、遮断器R1,R2,R3・・・をON/OFF制御することによって、電線PL1,PL2,PL3・・・の接続/遮断をそれぞれ切り替えるように構成される。分電盤100、PCS200、及び電線(電源システム1に含まれる電線PL1,PL2,PL3・・・など)によって、電池ストリングSt1,St2,St3・・・に接続可能な電源回路が形成されている。電源システム1の電源回路は、供給対象及び電力系統PGの少なくとも一方と電気的に接続される。電源システム1において、少なくとも1つの電池ストリングStに接続された電源回路は、少なくとも1つの電池ストリングStによって生成される電力を供給対象へ出力するように構成される。また、電源システム1において、少なくとも1つの電池ストリングStに接続された電源回路は、電力系統PGから入力される電力を、少なくとも1つの電池ストリングStへ供給するように構成される。
【0035】
上記のように、電源システム1の電源回路は電力系統PGと接続可能に構成される。具体的には、電源システム1に含まれるPCS200が、電力線SL1を介して分電盤100と接続されるとともに、電力線SL2を介して電力系統PGと接続されている。そして、PCS200は、電源システム1の電源回路と電力系統PGとの並列(接続)/解列(切離し)を切替え可能に構成される。電力系統PGは、本開示に係る「外部電源」の一例に相当する。
【0036】
PCS200は、少なくとも1つの電池ストリングStから分電盤100を介して供給される電力に所定の電力変換を行なう電力変換装置を備える。電力変換装置は、直流電力を交流電力に変換するインバータであってもよい。また、PCS200は、運転制御装置及び保護装置をさらに備える。PCS200は、分電盤100と電力系統PGとが相互に接続された状態で、GCU500からの制御指令に従って系統連系制御を行なうように構成される。PCS200は、電力系統PGから供給される電力を、電池ストリングStから供給される電力で調整し、調整された電力を供給対象へ出力する。ただし、電力系統PGに異常が生じた場合には、GCU500は、分電盤100と電力系統PGとの接続を断つようにPCS200を制御する。これにより、電力系統PGから供給対象への電力供給が停止される。また、GCU500は、非常用の電力として、電池ストリングStから供給される電力を供給対象へ供給するようにPCS200を制御する。電力系統PGが復旧するまでの間は、電力系統PGに代わって各電池ストリングStが主電源となる。
【0037】
この実施の形態では、住宅を供給対象とする。PCS200は、住宅内の配線(宅内配線)に接続される分電盤(図示せず)に向けて電力を出力してもよい。ただし、供給対象は、住宅に限られず任意である。たとえば、供給対象は商業用施設であってもよい。また、電源システム1は、たとえば自動車、船、ドローン、又は宇宙探査機のような移動体に搭載され、移動のための動力源として用いられてもよい。
【0038】
サーバ700は、送配電事業者に帰属するサーバである。この実施の形態では、電力会社が発電事業者及び送配電事業者を兼ねる。電力系統PGは、電力会社によって提供される電力網である。電力会社は、発電所及び送配電設備によって電力網(すなわち、電力系統PG)を構築するとともに、サーバ700及び電力系統PGを保守及び管理する。サーバ700は、電力系統PGの管理コンピュータに相当する。サーバ700は、電力系統PGの需給を管理する。電力会社は、電力を使用する需要家(たとえば、個人又は法人)と取引を行なうことにより利益を得ることができる。電力系統PGは、たとえば電力会社と契約した各需要家に電力を供給する。この実施の形態における供給対象は、電力系統PGから電力の供給を受ける住宅である。サーバ700は、GCU500と通信可能に構成され、必要に応じて、GCU500に電力系統PGの電力調整を要求する。サーバ700は、GCU500に対してDR(デマンドレスポンス)を実施してもよい。
【0039】
GCU500は、HUB300を介して、PCS200、電池ストリングSt1,St2,St3・・・、及び遮断器R1,R2,R3・・・の各々へ信号(たとえば、制御指令)を送信するように構成される。GCU500は、本開示に係る「制御装置」の一例に相当する。HUB300は、PCS200、GCU500、電池ストリングSt1,St2,St3・・・、及び遮断器R1,R2,R3・・・とそれぞれ接続される複数のポートを備える。HUB300は、入力信号を、電気的に増幅して、指定されたポート(すなわち、入力信号が示す宛先)へ出力するように構成される。HUB300は、スイッチング機能を有してもよい。
【0040】
以下では、区別して説明する場合を除いて、電線PL1,PL2,PL3・・・の各々を「電線PL」、遮断器R1,R2,R3・・・の各々を「遮断器R」と記載する。遮断器Rは、電磁式のメカニカルリレーであってもよい。遮断器Rは、ユーザが手動でON/OFFできるように構成されてもよい。
【0041】
図2は、電池ストリングStの構成を示す図である。
図2を参照して、電池ストリングStは、SCU(String Control Unit)10と、駆動回路SUA1~SUA16と、電池回路BC1~BC16とを備える。
【0042】
SCU10は、GCU500からの制御指令に従ってゲート信号を生成する制御回路を含む。詳細は後述するが、ゲート信号は、電池回路BC1~BC16の各々に含まれるスイッチのON/OFFタイミングを指定する信号であり、本開示に係る「スイッチング信号」の一例に相当する。この実施の形態では、SCU10が、プロセッサを有して、所定の演算を行なうように構成される。詳しくは、SCU10は、後述するセンサ信号を用いて、電池回路BC1~BC16に含まれる各電池の状態を取得する。ただしこれに限られず、SCU10では演算を行なわず、GCU500のみで演算を行なうように、電源システム1が構成されてもよい。
【0043】
電池回路BC1~BC8はそれぞれ、電力回路SUB1~SUB8と、カートリッジCg1~Cg8とを含む。カートリッジCg1~Cg8はそれぞれ、電池B1~B8と、監視ユニットBS1~BS8とを含む。電力回路SUB1~SUB8と電池B1~B8とがそれぞれ接続されることによって、電池B1~B8をそれぞれ含む電池回路BC1~BC8が形成されている。電池回路BC1~BC8の各々は、本開示に係る「第1電池回路」の一例に相当する。駆動回路SUA1~SUA8は、それぞれ電池回路BC1~BC8に含まれるスイッチ(より特定的には、後述するSW11及びSW12)を駆動するように構成される。駆動回路SUA1~SUA8は、本開示に係る「第1駆動回路」として機能する。
【0044】
この実施の形態では、電池B1~B8の各々が、ニッケル水素二次電池(以下、「Ni-MH」と表記する場合がある)である。この実施の形態では、電動車両で使用された複数のNi-MHを直列に接続することによって、電池B1~B8を製造する。この実施の形態における電池B1~B8の各々は、電圧6.0~7.2VのNi-MHモジュール(中古電池)が直列に6個接続されて構成される。電池B1~B8の総容量は、たとえば4Ahである。電池B1~B8の各々を構成するNi-MHは、高出力・低容量型の電池に相当する。
【0045】
電池回路BC9~BC16はそれぞれ、電力回路SUB9~SUB16と、カートリッジCg9~Cg16とを含む。カートリッジCg9~Cg16はそれぞれ、電池B9~B16と、監視ユニットBS9~BS16とを含む。電力回路SUB9~SUB16と電池B9~B16とがそれぞれ接続されることによって、電池B9~B16をそれぞれ含む電池回路BC9~BC16が形成されている。電池回路BC9~BC16の各々は、本開示に係る「第2電池回路」の一例に相当する。駆動回路SUA9~SUA16は、それぞれ電池回路BC9~BC16に含まれるスイッチ(より特定的には、後述するSW11及びSW12)を駆動するように構成される。駆動回路SUA9~SUA16は、本開示に係る「第2駆動回路」として機能する。
【0046】
この実施の形態では、電池B9~B16の各々が、リチウムイオン二次電池(以下、「LiB」と表記する場合がある)である。この実施の形態では、電動車両で使用された複数のLiBを直列に接続することによって、電池B9~B16を製造する。この実施の形態における電池B9~B16の各々は、電圧3.1~3.8VのLiBセル(中古電池)が直列に12個接続されて構成される。電池B9~B16の総容量は、たとえば50Ahである。電池B9~B16の各々を構成するLiBは、低出力・高容量型の電池に相当し、電池B1~B8の各々を構成するNi-MHと比べて出力電力が小さく容量が大きい。
【0047】
以下では、区別して説明する場合を除いて、駆動回路SUA1~SUA16の各々を「SUA」、電力回路SUB1~SUB16の各々を「SUB」、電池回路BC1~BC16の各々を「電池回路BC」、カートリッジCg1~Cg16の各々を「Cg」、電池B1~B16の各々を「電池B」、監視ユニットBS1~BS16の各々を「監視ユニットBS」と記載する。各電池Bは、電池要素(電池ストリングを構成する電池)に相当する。
【0048】
図3は、上記の駆動回路(SUA)及び電池回路BCの構成を示す図である。
図2とともに
図3を参照して、電池回路BCは、電力回路(SUB)と、カートリッジ(Cg)と、遮断器RB1及びRB2(以下、区別しない場合は「遮断器RB」と称する)とを含む。SUBとCgとは、遮断器RB1及びRB2を介して、互いに接続されている。SCU10は、GCU500からの制御指令に従って各遮断器RBをON/OFF制御することによって、SUBとCgとの接続状態(導通/遮断)を切り替えるように構成される。遮断器RBは、電磁式のメカニカルリレーであってもよい。遮断器RBは、ユーザが手動でON/OFFできるように構成されてもよい。
【0049】
この実施の形態では、電池ストリングStがSUA、SUB、及び遮断器RBの組合せを複数備え、これらの組合せは、同じ構成を有し、互換性を有する。このため、SUA、SUB、及び遮断器RBをモジュール化してもよい。共通の部品をモジュール化することで、大量生産による低コスト化が期待できる。また、モジュールごとの取り扱いが容易になるため、故障したモジュールを交換しやすくなる。
【0050】
また、Cgは、SUBに対して着脱可能に構成される。たとえば遮断器RB1及びRB2の各々がOFF状態(遮断状態)であるときに、ユーザはCgをSUBから取り外してもよい。電池ストリングStは空きカートリッジがあっても動作可能であるため、ユーザは、電池ストリングStに含まれるCgの数を増減しやすい。電池ストリングStは、後付け用の空きカートリッジを有してもよい。こうした電池ストリングStは、電池の再利用に適している。
【0051】
Cgにおいて、監視ユニットBSは、電池Bの状態(たとえば、電圧、電流、及び温度)を検出して、検出結果をSCU10へ出力するように構成される。監視ユニットBSは、電池Bの電圧を検出する電圧センサと、電池Bの電流を検出する電流センサと、電池Bの温度を検出する温度センサとを含む。また、監視ユニットBSは、上記センサ機能に加えて、SOC(State Of Charge)推定機能、SOH(State of Health)推定機能、電池電圧の均等化機能、診断機能、及び通信機能をさらに有するBMS(Battery Management System)であってもよい。SCU10は、各監視ユニットBSの出力に基づいて、電池回路BC1~BC16に含まれる各電池Bの状態(たとえば、温度、電流、電圧、SOC、及び内部抵抗)を取得し、得られた各電池Bの状態をGCU500へ出力する。
【0052】
GCU500は、電池ストリングStに含まれる各電池BのSOCが、下限SOC値を下回らず、かつ、上限SOC値を超えないように、電池ストリングStの充放電制御を行なう。この実施の形態では、下限SOC値を20%、上限SOC値を80%とする。このため、電池ストリングStに含まれる各電池BはSOC20~80%の範囲(使用SOC範囲)で充放電される。
【0053】
電池ストリングStに含まれる電池回路BC1~BC16は共通の電線PLによって接続されている。電線PLは、各電池回路BCの出力端子OT1及びOT2を含む。電池回路の出力端子OT2が、当該電池回路に隣接する電池回路の出力端子OT1と接続されることによって、電池ストリングStに含まれる電池回路BC同士が接続されている。たとえば、電池回路BC1の出力端子OT2は、電池回路BC1に隣接する電池回路BC2の出力端子OT1と電気的に接続されている。
【0054】
SUBは、第1スイッチング素子11(以下、「SW11」と表記する)と、第2スイッチング素子12(以下、「SW12」と表記する)と、第1ダイオード13と、第2ダイオード14と、チョークコイル15と、コンデンサ16と、出力端子OT1及びOT2とを備える。SW11及びSW12の各々は、SUAによって駆動される。この実施の形態に係るSW11、SW12は、それぞれ本開示に係る「第1スイッチ」、「第2スイッチ」の一例に相当する。
【0055】
SUBの出力端子OT1及びOT2間には、SW11と、コンデンサ16と、電池Bとが並列に接続されている。SW11は、電線PL上に位置し、出力端子OT1と出力端子OT2との接続状態(導通/遮断)を切り替えるように構成される。出力端子OT1は電線BL1を介して電池Bの正極に接続されており、出力端子OT2は電線BL2を介して電池Bの負極に接続されている。遮断器RB1、RB2は、それぞれ電線BL1、BL2に設けられている。電線BL1には、SW12及びチョークコイル15がさらに設けられている。電池回路BCにおいては、電池Bと直列に接続されたSW12がON状態(接続状態)であり、かつ、電池Bと並列に接続されたSW11がOFF状態(遮断状態)であるときに、出力端子OT1及びOT2間に電池Bの電圧が印加される。
【0056】
出力端子OT1,OT2と電池Bとの間には、電線BL1及び電線BL2の各々に接続されたコンデンサ16が設けられている。コンデンサ16の一端は、SW12とチョークコイル15との間で電線BL1に接続されている。コンデンサ16は、電池Bの電圧を平滑化して出力端子OT1及びOT2間に出力する。
【0057】
SW11及びSW12の各々は、たとえばFET(電界効果トランジスタ)である。第1ダイオード13、第2ダイオード14は、それぞれSW11、SW12に対して並列に接続されている。SW12は、出力端子OT1とチョークコイル15との間に位置する。チョークコイル15は、SW12と電池Bの正極との間に位置する。電池B、チョークコイル15、及びコンデンサ16によってRCLフィルタが形成される。このRCLフィルタによって電流の平準化が図られる。なお、SW11及びSW12の各々は、FETに限られず、FET以外のスイッチであってもよい。
【0058】
駆動回路(SUA)は、電池回路BCごとに設けられている。SUAは、ゲート信号に従ってSW11及びSW12を駆動するGD(ゲートドライバ)31と、ゲート信号を遅延させる遅延回路32とを含む。電池回路BCに含まれるSW11及びSW12の各々は、ゲート信号に従ってON/OFF制御される。
【0059】
図4は、ゲート信号によって制御される電池回路BCの動作の一例を示すタイムチャートである。この実施の形態では、SW11及びSW12を駆動するためのゲート信号として、矩形波信号を採用する。
図4中に示されるゲート信号の「Low」、「High」は、それぞれゲート信号(矩形波信号)のLレベル、Hレベルを意味する。また、「出力電圧」は、出力端子OT1及びOT2間に出力される電圧を意味する。
【0060】
図3とともに
図4を参照して、電池回路BCの初期状態では、SUAにゲート信号が入力されず(ゲート信号=Lレベル)、SW11、SW12がそれぞれON状態、OFF状態になっている。
【0061】
SUAにゲート信号が入力されると、GD31が、入力されたゲート信号に従ってSW11及びSW12を駆動する。
図4に示す例では、タイミングt1で、ゲート信号がLレベルからHレベルに立ち上がり、ゲート信号の立ち上がりと同時にSW11がON状態からOFF状態に切り替わる。そして、ゲート信号の立ち上がりから所定の時間(以下、「dt1」と表記する)だけ遅れたタイミングt2で、SW12がOFF状態からON状態に切り替わる。これにより、電池回路BCが稼働状態になる。以下、ゲート信号の立ち上がりからdt1が経過するまでの期間を、「第1遅延期間」とも称する。
【0062】
図5は、稼働状態の電池回路BCを示す図である。
図5を参照して、稼働状態の電池回路BCでは、SW11がOFF状態かつSW12がON状態になることで、出力端子OT1及びOT2間に電池Bの電圧が印加される。電池Bの電圧がコンデンサ16を介して出力端子OT1及びOT2間に印加されることで、電圧Vmが出力端子OT1及びOT2間に出力される。電池回路BCが稼働状態であるときには、その電池回路BCに含まれる電池Bが電源システム1の電源回路に接続されている。
【0063】
再び
図3とともに
図4を参照して、タイミングt3で、ゲート信号がHレベルからLレベルに立ち下がると、ゲート信号の立ち下がりと同時にSW12がON状態からOFF状態に切り替わる。これにより、電池回路BCが停止状態になる。停止状態の電池回路BCでは、SW12がOFF状態になることで、出力端子OT1及びOT2間に電池Bの電圧が印加されなくなる。その後、ゲート信号の立ち下がりから所定の時間(以下、「dt2」と表記する)だけ遅れたタイミングt4で、SW11がOFF状態からON状態に切り替わる。dt1とdt2とは互いに同じであっても異なってもよい。この実施の形態では、dt1及びdt2の各々を100n秒とする。ただし、dt1及びdt2の各々は任意に設定できる。
【0064】
電池回路BCが停止状態であるときには、その電池回路BCに含まれる電池Bが電源システム1の電源回路から切り離されている。以下、ゲート信号の立ち下がりからdt2が経過するまでの期間を、「第2遅延期間」とも称する。また、第2遅延期間終了から電池回路BCが稼働状態になるまでの期間を、「停止期間」とも称する。
【0065】
図6は、遅延期間における電池回路BCの状態を示す図である。
図6に示すように、第1遅延期間及び第2遅延期間の各々では、SW11及びSW12の両方がOFF状態になる。
【0066】
図7は、停止期間における電池回路BCの状態を示す図である。
図7に示すように、停止期間では、初期状態と同様、SW11がON状態かつSW12がOFF状態になる。
【0067】
上記遅延期間及び停止期間のいずれの期間においても、電池回路BCは停止状態になっている。停止状態の電池回路BCでは、出力端子OT1及びOT2間に電圧が印加されない。第1遅延期間及び第2遅延期間が設けられていることで、SW11及びSW12が同時にON状態になること(すなわち、電池回路BCが短絡状態になること)が抑制される。
【0068】
上記のように、電池回路BC1~BC16は、電源システム1の電源回路に対して接続/切離し可能な態様で電池B1~B16をそれぞれ含む。電池Bの接続/切離しは、SW11及びSW12によって行なわれる。各電池回路BCは、電池Bと、電池Bに並列に接続されたSW11と、電池Bに直列に接続されたSW12とを備える。各電池回路BCにおいては、SW12がOFF状態であるときに電池Bが電源回路から切り離され、SW11がOFF状態かつSW12がON状態であるときに電池Bが電源回路に接続される。
【0069】
再び
図2とともに
図3を参照して、電池ストリングStにおいては、電池回路BCごとに設けられたSUAが、信号の伝達方向の上流から下流に配列されている。駆動回路SUA1~SUA16は、上流から、駆動回路SUA1,SUA2,SUA3・・・のように配列されている。すなわち、駆動回路SUA1が最上流に位置する。SCU10は、GCU500からの制御指令に従ってゲート信号を生成して、生成されたゲート信号を駆動回路SUA1へ出力する。この実施の形態では、GCU500からSCU10へ送信される制御指令に、SCU10に対する指令(以下、「SCU指令」と称する)と、各SUAに対する指令(以下、「SUA指令」と称する)とが含まれる。SCU指令は、ゲート信号の立ち上がり/立ち下がりのタイミングを示すスイッチング情報を含む。スイッチング情報は、立ち上がり/立ち下がりのタイミングに加えて、ゲート信号の周期及びデューティ比(周期に対するHレベル期間の割合)を指定してもよい。SUA指令は、稼働対象とする電池回路BC(すなわち、電池回路BC1~BC16の少なくとも1つ)を指定する稼働情報と、各SUAにおける遅延処理の有無を示す遅延情報とを含む。また、遅延情報は、遅延処理の有無に加えて、遅延処理における遅延時間を指定してもよい。GCU500は、SCU10に所望のゲート信号を生成させるとともに、生成されたゲート信号を必要に応じて各SUAに遅延させることにより、電池ストリングStの出力を制御することができる。GCU500は、矩形波のゲート信号を用いて、PWM(パルス幅変調)制御を行なってもよい。
【0070】
SCU10は、GCU500からの制御指令(SCU指令)に従ってゲート信号を生成し、生成されたゲート信号とともにSUA指令を駆動回路SUA1へ送信する。ゲート信号は、最上流の駆動回路SUA1から下流へ伝達される。各SUAには、ゲート信号とSUA指令とが入力される。以下、各SUAの動作について説明する。
【0071】
各SUAのGD31は、SUA指令(稼働情報)に基づいて、当該SUAに対応する電池回路BCが稼働対象であるか否かを判断する。当該SUAに対応する電池回路BCが稼働対象である場合には、GD31は、入力されたゲート信号及びSUA指令を下流へ伝達する前に、そのゲート信号に従って電池回路BCのSW11及びSW12を駆動する。GD31は、ゲート信号が示す稼働タイミング(たとえば、
図4に示したタイミングt2)で電池回路BCを稼働状態にし、ゲート信号が示す停止タイミング(たとえば、
図4に示したタイミングt3)で電池回路BCを停止状態にする。
【0072】
各SUAのGD31は、SUA指令(遅延情報)に基づいて、ゲート信号に対する遅延処理の有無を判断する。遅延情報が「遅延処理あり」を示す場合には、GD31はゲート信号を遅延回路32へ出力する。遅延回路32は、入力されたゲート信号を所定時間(以下、「SUA遅延時間」と称する)遅延させたゲート信号を生成し、生成されたゲート信号を下流のSUAへ出力する。SUA遅延時間は、たとえば固定値である。ただしこれに限られず、SUA遅延時間は、GCU500からのSUA指令(遅延情報)に従って設定されてもよい。遅延情報が「遅延処理なし」を示す場合には、GD31は遅延回路32を介さずに直接的に下流のSUAへゲート信号を出力する。このため、上述した遅延回路32による遅延処理は行なわれない。
【0073】
当該SUAに対応する電池回路BCが稼働対象でない場合には、GD31は、入力されたゲート信号及びSUA指令を通過させる(パススルー)。この場合、電池回路BCのスイッチ駆動は行なわれることなく、ゲート信号が下流のSUAへ伝達される。このため、電池回路BCは停止状態になる。最下流のSUA(この実施の形態では、駆動回路SUA16)は、下流のSUAの代わりにSCU10へゲート信号を伝達してもよい。SCU10は、最下流のSUAからゲート信号を受信することで、ゲート信号が最下流まで伝達されたことを認識できる。
【0074】
図8は、GCU500の構成を示す図である。
図1~
図3とともに
図8を参照して、GCU500は、電源システム1に含まれる複数の電池ストリングStを統合制御するように構成される。電源システム1に含まれる電池ストリングStの数は、5~10個であってもよい。なお、電源システムに含まれる電池ストリングの数は任意であり、2~4個であってもよいし、100個以上であってもよい。
【0075】
GCU500は、制御装置510と、記憶装置520と、通信装置530と、入力装置540と、表示装置550とを備える。制御装置510はコンピュータであってもよい。制御装置510は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサと、プロセッサによって処理されるデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含む。記憶装置520は、格納された情報を保存可能に構成される。記憶装置520には、たとえば、プロセッサによって実行されるプログラム、及びプログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。通信装置530は各種通信I/F(インターフェース)を含む。制御装置510は、通信装置530を通じてGCU500の外部と通信するように構成される。この実施の形態では、記憶装置520に記憶されているプログラムを制御装置510が実行することで、GCU500における各種処理が実行される。ただし、GCU500における各種処理は、ソフトウェアによる実行に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で実行することも可能である。
【0076】
入力装置540は、ユーザからの入力を受け付ける装置である。入力装置540は、ユーザからの入力に対応する信号を制御装置510へ出力する。たとえば、ユーザは、入力装置540を通じて、所定の指示又は要求を制御装置510に入力したり、パラメータの値を制御装置510に設定したりすることができる。入力装置540の例としては、各種スイッチ(押しボタンスイッチ、スライドスイッチ等)、各種ポインティングデバイス(マウス、タッチパッド等)、キーボード、タッチパネルが挙げられる。また、入力装置540は、音声入力を受け付けるスマートスピーカを含んでもよい。
【0077】
表示装置550は、制御装置510から入力される情報を表示するように構成される。制御装置510は、表示装置550を通じてユーザへ情報を報知することができる。表示装置550の例としては、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、タッチパネルディスプレイが挙げられる。表示装置550はスピーカ機能を備えていてもよい。
【0078】
GCU500は、電池ID(電池Bを識別するための識別情報)で区別して、登録された各電池Bの情報を管理する。具体的には、
図8に示すような電池管理情報が記憶装置520に記憶されている。制御装置510は、電池管理情報を表示装置550に表示させてもよい。ユーザは、入力装置540を通じて、GCU500に電池Bを登録したり、電池管理情報を更新することができる。GCU500に電池Bが登録されると、その電池Bに電池IDが付与され、その電池Bに関する情報がその電池IDに紐付けられた状態で電池管理情報に追加される。GCU500は、電池管理情報を用いて各電池Bを管理する。
【0079】
電池管理情報は、登録された各電池Bについて、ストリングIDと、電池IDと、種類と、型番と、個数と、グループとを示す。電池管理情報のストリングIDは、電池Bが属する電池ストリングStを示す。たとえば、
図8中の「St-1」、「St-2」はそれぞれ、電池IDで特定される電池Bが電池ストリングSt1、St2に属することを示している。電池管理情報の種類、型番、個数は、それぞれ電池Bを構成する二次電池(モジュール/セル)の種類、型番、個数を示す。この実施の形態では、電池の種類が、ニッケル水素電池(Ni-MH)とリチウムイオン電池(LiB)とのいずれかである。電池の型番は、電池の構造(たとえば、寸法、形状、及び材料)及び容量を示す。電池の型番が同じであることは、電池の構造、容量、及び製造条件が概ね同じであることを意味する。たとえば、電池ID「B-1」で特定される電池Bは、型番「XXX」のNi-MHモジュールを6個含む。
【0080】
電池管理情報のグループは、電池Bが属するグループを示す。GCU500に電池Bが登録されると、GCU500は電池の種類に基づいて、その電池Bをいずれかのグループに振り分ける。たとえば、電池ストリングSt1に関しては、Ni-MHがグループG1、LiBがグループG2に振り分けられる。GCU500は、電池管理情報に基づいて、電池ストリングSt1に含まれる各電池Bを第1電池と第2電池とに区別する。電池ストリングSt1においては、グループG1に属する電池B1~B8の各々が第1電池に相当し、グループG2に属する電池B9~B16の各々が第2電池に相当する。なお、電池Bを区別するための情報は、
図8に示した電池管理情報に限られない。たとえば、電池管理情報は、型番を示さなくてもよい。また、電池管理情報は、型番だけでなく電池メーカも示してもよい。
【0081】
GCU500は、前述の制御指令を生成するときに、グループごとに稼働対象とするか否かを判断する。これにより、GCU500は、電池ストリングStの充電制御及び放電制御をグループごとに行なうことができる。この実施の形態では、電池ストリングSt1に対する制御指令が示す稼働対象は、グループG1のみ、グループG2のみ、グループG1及びG2の両方のいずれかである。ただし、GCU500は、電池Bの故障を検知した場合には、故障した電池Bを稼働対象から除外する。
【0082】
以下、
図1~
図3を参照して、電池ストリングSt1に対する制御指令(稼働情報)が示す稼働対象が、グループG1のみである場合と、グループG2のみである場合と、グループG1及びG2の両方である場合との各々について説明する。GCU500はSUA指令(稼働情報)を用いて電池ストリングSt1の各SUAに稼働対象を指示する。
【0083】
電池回路BC1~BC8は、グループG1に属する電池B1~B8(いずれもNi-MH)をそれぞれ含む。GCU500から最上流の駆動回路SUA1へ送信されるSUA指令によってグループG1(電池回路BC1~BC8)のみが稼働対象であることが示される場合には、駆動回路SUA1のGD31が、GCU500から受け取ったゲート信号が示す稼働タイミングで電池回路BC1を稼働状態にする。その後、駆動回路SUA1は、GCU500から受け取ったSUA指令(遅延情報)に従い、ゲート信号に遅延処理を行なって又は行なわずに、下流の駆動回路SUA2へゲート信号及びSUA指令を伝達する。さらに、駆動回路SUA1のGD31は、稼働状態にした電池回路BC1を、GCU500から受け取ったゲート信号が示す停止タイミングで停止状態にする。
【0084】
駆動回路SUA1よりも下流に位置する駆動回路SUA2~SUA8のGD31は、上流のSUAから受け取ったゲート信号が示す稼働タイミングで電池回路BC2~BC8をそれぞれ稼働状態にする。また、駆動回路SUA2~SUA8の各々は、上流のSUAから受け取ったSUA指令(遅延情報)に従い、ゲート信号に遅延処理を行なって又は行なわずに、下流のSUAへゲート信号及びSUA指令を伝達する。さらに、駆動回路SUA2~SUA8の各GD31は、稼働状態にした電池回路BCを、上流のSUAから受け取ったゲート信号が示す停止タイミングで停止状態にする。
【0085】
駆動回路SUA8よりも下流に位置する駆動回路SUA9~SUA16の各々のGD31は、上流のSUAから受け取ったゲート信号及びSUA指令を下流のSUAへパススルーする。これにより、電池回路BC9~BC16の各々は停止状態に維持される。このように、電池ストリングSt1に対する制御指令が示す稼働対象がグループG1のみである場合には、電池ストリングSt1に含まれる電池BのうちNi-MH(第1電池)のみが電源システム1の電源回路に接続される。以下、こうした接続状態を、「Ni接続状態」とも称する。GCU500は、Ni接続状態でPCS200を制御することにより、電源回路に接続された各Ni-MHに放電を行なわせること(以下、「Ni出力」とも称する)も、電源回路に接続された各Ni-MHを充電すること(以下、「Ni入力」とも称する)も、電源回路に接続された各Ni-MHの充電及び放電を交互に繰り返すこと(以下、「Ni充放電」とも称する)も可能である。Ni出力では、電池ストリングStに含まれる各Ni-MHが電源システム1の電源回路へ電力を出力する。Ni入力では、電力系統PGから電源システム1の電源回路に供給される電力によって、電池ストリングStに含まれる各Ni-MHが充電される。Ni充放電は連続パルス充放電であってもよい。
【0086】
電池回路BC9~BC16は、グループG2に属する電池B9~B16(いずれもLiB)をそれぞれ含む。GCU500から最上流の駆動回路SUA1へ送信されるSUA指令によってグループG2(電池回路BC9~BC16)のみが稼働対象であることが示される場合には、駆動回路SUA1~SUA8の各々のGD31は、GCU500から受け取ったゲート信号及びSUA指令を下流のSUAへパススルーする。これにより、電池回路BC1~BC8の各々は停止状態に維持される。そして、駆動回路SUA8よりも下流に位置する駆動回路SUA9~SUA16のGD31が、上流のSUAから受け取ったゲート信号が示す稼働タイミングで電池回路BC9~BC16をそれぞれ稼働状態にする。また、駆動回路SUA9~SUA16の各々は、上流のSUAから受け取ったSUA指令(遅延情報)に従い、ゲート信号に遅延処理を行なって又は行なわずに、下流のSUAへゲート信号及びSUA指令を伝達する。さらに、駆動回路SUA9~SUA16の各GD31は、稼働状態にした電池回路BCを、上流のSUAから受け取ったゲート信号が示す停止タイミングで停止状態にする。
【0087】
上記のように、電池ストリングSt1に対する制御指令が示す稼働対象がグループG2のみである場合には、電池ストリングSt1に含まれる電池BのうちLiB(第2電池)のみが電源システム1の電源回路に接続される。以下、こうした接続状態を、「Li接続状態」とも称する。GCU500は、Li接続状態でPCS200を制御することにより、電源回路に接続された各LiBに放電を行なわせること(以下、「Li出力」とも称する)も、電源回路に接続された各LiBを充電すること(以下、「Li入力」とも称する)も、電源回路に接続された各LiBの充電及び放電を交互に繰り返すこと(以下、「Li充放電」とも称する)も可能である。Li出力では、電池ストリングStに含まれる各LiBが電源システム1の電源回路へ電力を出力する。Li入力では、電力系統PGから電源システム1の電源回路に供給される電力によって、電池ストリングStに含まれる各LiBが充電される。Li充放電は連続パルス充放電であってもよい。
【0088】
GCU500から最上流の駆動回路SUA1へ送信されるSUA指令によってグループG1及びG2の両方(電池回路BC1~BC16)が稼働対象であることが示される場合には、駆動回路SUA1~SUA16のGD31は、入力されたゲート信号が示す稼働タイミングで電池回路BC1~BC16をそれぞれ稼働状態にする。また、駆動回路SUA1~SUA16の各GD31は、入力されたSUA指令(遅延情報)に従い、ゲート信号に遅延処理を行なって又は行なわずに、下流のSUAへゲート信号及びSUA指令を伝達する。さらに、駆動回路SUA1~SUA16の各GD31は、稼働状態にした電池回路BCを、入力されたゲート信号が示す停止タイミングで停止状態にする。
【0089】
上記のように、電池ストリングSt1に対する制御指令が示す稼働対象がグループG1及びG2の両方である場合には、電池ストリングSt1に含まれるNi-MH及びLiBの両方が電源システム1の電源回路に接続される。以下、こうした接続状態を、「Ni+Li接続状態」とも称する。GCU500は、Ni+Li接続状態でPCS200を制御することにより、電源回路に接続された各Ni-MH及び各LiBに放電を行なわせること(以下、「Ni+Li出力」とも称する)も、電源回路に接続された各Ni-MH及び各LiBを充電すること(以下、「Ni+Li入力」とも称する)も、電源回路に接続された各Ni-MH及び各LiBの充電及び放電を交互に繰り返すこと(以下、「Ni+Li充放電」とも称する)も可能である。Ni+Li出力では、電池ストリングStに含まれる各Ni-MH及び各LiBが電源システム1の電源回路へ電力を出力する。Ni+Li入力では、電力系統PGから電源システム1の電源回路に供給される電力によって、電池ストリングStに含まれる各Ni-MH及び各LiBが充電される。Ni+Li充放電は連続パルス充放電であってもよい。
【0090】
電池ストリングStにおいて最下流に位置する駆動回路SUA16は、たとえばSCU10へゲート信号を出力する。ただしこれに限られず、駆動回路SUA16は、ゲート信号の伝達を停止してもよい。また、GCU500は、稼働タイミング及び停止タイミングの両方を示すゲート信号を駆動回路SUA1へ送信してもよいし、稼働タイミングを示すゲート信号を送信した後、停止タイミングを示すゲート信号を駆動回路SUA1へ送信してもよい。
【0091】
図9は、各SUAによる遅延処理なしでNi出力及びLi出力を実行する電池ストリングStの動作例を示す図である。
図9には、電池B1~B16の状態(接続/切離し)と、電池ストリングStの出力電圧とが示されている。
【0092】
図2及び
図3とともに
図9を参照して、電池ストリングStによるNi出力は、電池ストリングStがNi接続状態であるときに行なわれる。Ni接続状態では、電池B1~B8の各々が電源回路に接続されており、電池B9~B16の各々が電源回路から切り離されている。Ni出力では、Ni接続状態の電池ストリングStから電力(電圧は
図9中のVH1)が出力される。一方、電池ストリングStによるLi出力は、電池ストリングStがLi接続状態であるときに行なわれる。Li接続状態では、電池B9~B16の各々が電源回路に接続されており、電池B1~B8の各々が電源回路から切り離されている。Li出力では、Li接続状態の電池ストリングStから電力(電圧は
図9中のVH2)が出力される。
【0093】
なお、GCU500は、ゲート信号のデューティ比を調整することにより、電池ストリングStの出力をPWM制御してもよい。また、電池ストリングStにおける各SUAが、ゲート信号を下流へ伝達するときに、遅延回路32による遅延処理を行なってもよい。
【0094】
図10は、遅延処理ありの条件でNi出力を実行する電池ストリングStの動作例を示す図である。この例では、GCU500が、ゲート信号の、最初の立ち上がりタイミング、周期、及びデューティ比を示すSCU指令をSCU10へ送信する。SCU10は、SCU指令によって指定された最初の立ち上がりタイミング、周期、及びデューティ比を有するゲート信号を生成する。また、GCU500は、遅延処理ありを示すSUA指令をSCU10へ送信する。遅延時間は、たとえば固定値である。
図10に示す例では、ゲート信号のデューティ比が50%である。
図10には、電池B1~B5の状態(接続/切離し)と、電池ストリングStの出力電圧とが示されている。電池B1~B5の状態(接続/切離し)は、ゲート信号の立ち上がり/立ち下がりに応じて切り替わる。
【0095】
図2及び
図3とともに
図10を参照して、この稼働方式では、ゲート信号が駆動回路SUA1~SUA8に伝達されるときに、各SUAの遅延回路32がゲート信号を遅延させる。このため、最初の電池B1が電源回路に接続されてから所定の遅延時間ずつずれて電池B2~B8が電源回路に順次接続される。また、電源回路に接続された各Ni-MHは、所定時間(ゲート信号によって指定される時間)経過すると、電源回路から切り離される。電池B1~B8(それぞれNi-MH)は、電源回路に順次接続され、電源回路から順次切り離される。
図10に示す稼働方式(スイープ方式)では、電源回路に接続されるNi-MHが入れ替わりながら、電源回路には所定数のNi-MHが常時接続される。一方、電池B9~B16(それぞれLiB)は電源回路から常時切り離されている。すなわち、電池ストリングStはNi接続状態になる。そして、Ni接続状態の電池ストリングStから電力(電圧は
図10中のVH1)が出力される。スイープ方式で複数のNi-MHを順次稼働させることで、電池ストリングStに含まれる各Ni-MHの電流及びSOCの均等化が図られる。
【0096】
図11は、遅延処理ありの条件でLi出力を実行する電池ストリングStの動作例を示す図である。この例では、Li出力がスイープ方式で行なわれる。制御態様は、
図10に示したスイープ方式のNi出力に準ずる。
図11に示す例では、ゲート信号のデューティ比が50%である。
図11には、電池B9~B13の状態(接続/切離し)と、電池ストリングStの出力電圧とが示されている。電池B9~B13の状態(接続/切離し)は、ゲート信号の立ち上がり/立ち下がりに応じて切り替わる。
【0097】
図2及び
図3とともに
図11を参照して、この稼働方式では、ゲート信号が駆動回路SUA9~SUA16に伝達されるときに、各SUAの遅延回路32がゲート信号を遅延させる。このため、最初の電池B9が電源回路に接続されてから所定の遅延時間ずつずれて電池B10~B16が電源回路に順次接続される。また、電源回路に接続された各LiBは、所定時間(ゲート信号によって指定される時間)経過すると、電源回路から切り離される。電池B9~B16(それぞれLiB)は、電源回路に順次接続され、電源回路から順次切り離される。
図11に示す稼働方式(スイープ方式)では、電源回路に接続されるLiBが入れ替わりながら、電源回路には所定数のLiBが常時接続される。一方、電池B1~B8(それぞれNi-MH)は電源回路から常時切り離されている。すなわち、電池ストリングStはLi接続状態になる。そして、Li接続状態の電池ストリングStから電力(電圧は
図11中のVH2)が出力される。スイープ方式で複数のLiBを順次稼働させることで、電池ストリングStに含まれる各LiBの電流及びSOCの均等化が図られる。
【0098】
図12は、Ni+Li出力を実行する電池ストリングStの動作例を示す図である。
図12には、電池B1~B16の状態(接続/切離し)と、電池ストリングStの出力電圧とが示されている。
【0099】
図2及び
図3とともに
図12を参照して、電池ストリングStによるNi+Li出力は、電池ストリングStがNi+Li接続状態であるときに行なわれる。Ni+Li接続状態では、電池B1~B16の各々が電源回路に接続されている。Ni+Li出力では、Ni+Li接続状態の電池ストリングStから電力(電圧は
図12中のVH3)が出力される。
【0100】
図13は、Ni+Li充放電を実行する電池ストリングStの動作例を示す図である。
図13には、電池B1~B16の状態(接続/切離し)と、電池ストリングStの電圧(放電側を正、充電側を負とする)とが示されている。
【0101】
図2及び
図3とともに
図13を参照して、電池ストリングStによるNi+Li充放電は、電池ストリングStがNi+Li接続状態であるときに行なわれる。Ni+Li接続状態では、電池B1~B16の各々が電源回路に接続されている。Ni+Li充放電では、Ni+Li接続状態の電池ストリングStから電力(電圧は
図13中のVH3)が出力されるNi+Li放電と、Ni+Li接続状態の電池ストリングStに電力(電圧は
図13中の-VH3)が入力されるNi+Li充電とが、所定の周期で繰り返される。Ni+Li充放電において、1回のNi+Li放電で電池ストリングStから出力される電力量と、1回のNi+Li充電で電池ストリングStに入力される電力量とは同じである。このため、電池ストリングStがNi+Li充放電を実行しても、電池ストリングStの蓄電量(より特定的には、電池ストリングStに含まれる各Ni-MH及び各LiBのSOC)は減らない。
【0102】
GCU500は、サーバ700から電力系統PGの電力調整を要求されると、電源回路の入出力電力によって電力系統PGの電力調整を行なうように各電池ストリングSt及び電源回路(たとえば、各遮断器R及びPCS200)を制御する。GCU500は、Ni出力とNi入力とNi充放電とLi出力とLi入力とLi充放電とNi+Li出力とNi+Li入力とNi+Li充放電とからなる群より選択された1つを実行するように、PCS200及び各電池ストリングStを制御してもよい。
【0103】
図14は、サーバ700から電力の出力を要求されたときにGCU500が実行する処理の一例を示すフローチャートである。この例では、電力調整の度合い及び調整時間がサーバ700からGCU500へ送信される。サーバ700は、電力調整の度合いとして、0kW超40kW以下の範囲で調整電力の大きさを指定する。電源システム1の電源回路に少なくとも1つの電池ストリングStが接続され、かつ、その電源回路と電力系統PGとが並列(接続)された状態で、GCU500は、サーバ700からの要求に応えるように少なくとも1つの電池ストリングSt(たとえば、電池ストリングSt1)を制御する。GCU500は、サーバ700から電力の出力を要求されると、以下に説明する
図14に示す処理を実行する。以下では、フローチャート中の各ステップを、単に「S」と表記する。
【0104】
図1~
図3とともに
図14を参照して、GCU500は、S11において、要求される調整電力が10kW以下であるか否かを判断し、判断結果がYESの場合は、続くS21において、要求される調整時間が29.5分以内であるか否かを判断する。そして、S11及びS21の両方においてYESと判断されると、GCU500は、S31において、同時に半数のLiBを電源回路に接続するスイープ方式のLi出力をデューティ比50%のゲート信号で電池ストリングSt1に実行させる。このように、GCU500は、サーバ700から要求される調整電力及び調整時間を取得し、調整電力が所定の第1電力以下であり、かつ、調整時間が所定の第1時間以内である場合に、電池ストリングSt1に上述のLi出力を実行させる。第1時間は、電池ストリングSt1における第1電力でのLi出力の放電持続時間に応じて設定される。この実施の形態では、第1電力を10kW、第1時間を29.5分とする。
【0105】
図15は、電池ストリングSt1におけるLi出力の電力の大きさ及び放電持続時間について説明するための図である。
図15を参照して、電池ストリングSt1における10kWのLi出力の放電持続時間は29.5分である。電池ストリングSt1は、電流55Aかつ電圧183Vの電力(電流:Lレベル)から電流67Aかつ電圧149Vの電力(電流:Hレベル)まで電流を変化させながら、10kWの電力を29.5分間継続して出力することができる。この実施の形態では、電池ストリングSt1に含まれるLiBの総容量が50Ahである。各LiBはSOC20~80%の範囲で充放電される。このため、LiBの実質的な容量は30Ah(=50Ah×0.6)である。上記放電持続時間は、「30×2×60/(55+67)=29.5」のような式から算出される。GCU500は、電池ストリングSt1のLi出力の電力が目標値(たとえば、10kW)になるように、電池ストリングSt1に対する制御指令を生成してもよい。
【0106】
再び
図1~
図3とともに
図14を参照して、S11においてNOと判断されると、GCU500は、S12において、要求される調整電力が25kW以下であるか否かを判断し、判断結果がYESの場合は、続くS22において、要求される調整時間が0.9分以内であるか否かを判断する。そして、S12及びS22の両方においてYESと判断されると、GCU500は、S32において、同時に半数のNi-MHを電源回路に接続するスイープ方式のNi出力をデューティ比50%のゲート信号で電池ストリングSt1に実行させる。このように、GCU500は、サーバ700から要求される調整電力及び調整時間を取得し、調整電力が第1電力よりも大きく所定の第2電力以下であり、かつ、調整時間が所定の第2時間以内である場合に、電池ストリングSt1に上述のNi出力を実行させる。第2時間は、電池ストリングSt1における第2電力でのNi出力の放電持続時間に応じて設定される。この実施の形態では、第2電力を25kW、第2時間を0.9分とする。
【0107】
図16は、電池ストリングSt1におけるNi出力の電力の大きさ及び放電持続時間について説明するための図である。
図16を参照して、電池ストリングSt1における25kWのNi出力の放電持続時間は0.9分である。電池ストリングSt1は、電流146Aかつ電圧173Vの電力(電流:Lレベル)から電流172Aかつ電圧144Vの電力(電流:Hレベル)まで電流を変化させながら、25kWの電力を0.9分間継続して出力することができる。Ni出力の電圧は、Li出力の電圧と同程度に設定されている。この実施の形態では、電池ストリングSt1に含まれるNi出力の総容量が4Ahである。各Ni-MHはSOC20~80%の範囲で充放電される。このため、Ni-MHの実質的な容量は2.4Ah(=4Ah×0.6)である。上記放電持続時間は、「2.4×2×60/(146+172)=0.9」のような式から算出される。GCU500は、電池ストリングSt1のNi出力の電力が目標値(たとえば、25kW)になるように、電池ストリングSt1に対する制御指令を生成してもよい。
【0108】
なお、電池ストリングStの放電持続時間は、出力電力が小さくなるほど長くなる。たとえば、電池ストリングSt1におけるNi出力の電力の大きさを25kWから15kWに変更すると、電池ストリングSt1におけるNi出力の放電持続時間は1.5分になる。また、電池ストリングStの放電持続時間は、電池ストリングStに含まれるカードリッジ(Cg)の数を増やして出力電圧を高くするほど長くなる。たとえば、電池ストリングSt1において、Ni-MHカードリッジの数を8個から16個に増やすと、電池ストリングSt1におけるNi出力(25kW)の放電持続時間は1.8分になる。
【0109】
再び
図1~
図3とともに
図14を参照して、S12においてNOと判断されると、GCU500は、S23において、要求される調整時間が10秒以内であるか否かを判断する。S12においてNOと判断されることは、要求される調整電力が25kW超40kW以下であることを意味する。そして、S23においてYESと判断されると、GCU500は、S33において、同時に半数のNi-MHと半数のLiBとを電源回路に接続するスイープ方式のNi+Li出力をデューティ比50%のゲート信号で電池ストリングSt1に実行させる。このように、GCU500は、サーバ700から要求される調整電力及び調整時間を取得し、調整電力が第2電力よりも大きく所定の第3電力以下であり、かつ、調整時間が所定の第3時間以内である場合に、電池ストリングSt1に上述のNi+Li出力を実行させる。第3時間は、電池ストリングSt1における第3電力でのNi+Li出力の放電持続時間に応じて設定される。この実施の形態では、第3電力を40kW、第3時間を10秒とする。算出式は割愛するが、電池ストリングSt1における40kWのNi+Li出力の放電持続時間は10秒である。
【0110】
上述したS21~S23のいずれかにおいてNOと判断されると、GCU500は、S34において、同時に半数のNi-MHと半数のLiBとを電源回路に接続するスイープ方式のNi+Li充放電をデューティ比50%のゲート信号で電池ストリングSt1に実行させる。このように、GCU500は、サーバ700から要求される調整時間が電池ストリングSt1の許容範囲を超える場合には、要求された電力の出力は行なわず、Ni+Li充放電によって電力系統PGの周波数調整を行なう。
【0111】
図17は、
図14のS34において実行されるNi+Li充放電の一例を示す図である。
図17を参照して、電池ストリングSt1は、たとえばデューティ比50%かつ周期20秒で連続パルス充放電を実行する。これにより、10秒間の40kW放電と10秒間の40kW充電とが交互に繰り返し実行される。LiBが15kWの充放電を行ない、Ni-MHが25kWの充放電を行なうことにより、合計40kWの充放電が行なわれる。
【0112】
GCU500は、サーバ700から電力の出力を要求されると、上述した
図14に示す処理により電力系統PGの電力調整を行なう。たとえば、GCU500は、電力系統PGの消費電力量を少なくするために、電源システム1の電源回路から住宅(供給対象)へ電力を供給してもよい。GCU500は、電力系統PGの一時的な電力不足を電池ストリングStの電力で補ってもよい。GCU500は、電力系統PGの停電時に電池ストリングStから住宅(供給対象)へ電力を供給してもよい。GCU500は、電池ストリングStの充放電制御により、住宅(供給対象)に供給される電力の周波数調整を行なってもよい。
【0113】
以上説明したように、この実施の形態に係る電源システム1は、複数の電池ストリングStに接続可能な電源回路と、各電池ストリングStを制御するGCU500(制御装置)とを備える(
図1参照)。電池ストリングStは、互いに接続された電池回路BC1~BC16を含む(
図2参照)。電池回路BC1~BC16は、電源システム1の電源回路に対して接続/切離し可能な態様で電池B1~B16をそれぞれ含む(
図3参照)。GCU500は、電池ストリングStに含まれる電池B1~B16を第1電池(グループG1)と第2電池(グループG2)とに区別する(
図8参照)。
【0114】
そして、GCU500は、所定の第1条件が成立すると、電池ストリングStに含まれる電池B1~B16のうち第1電池のみ(電池B1~B8の少なくとも1つ)を電源システム1の電源回路に接続し、Ni出力を実行する。この実施の形態では、第1電池をニッケル水素電池とする。
図14に示す処理では、S11にてNOかつS12及びS22の両方でYESと判断されると、第1条件が成立する。第1条件が成立すると、GCU500は、稼働対象として電池回路BC1~BC8を指定する第1制御指令を電池ストリングStへ送信する。電池ストリングStは、第1制御指令を受信すると、電池回路BC1~BC8にそれぞれ含まれる電池B1~B8を電源システム1の電源回路に接続するように電池回路BC1~BC8の各々のSW11及びSW12を駆動する。より具体的には、駆動回路SUA1が、GCU500からの第1制御指令に従ってSCU10(制御回路)が生成したゲート信号(第1スイッチング信号)を用いて、電池回路BC1のSW11及びSW12を駆動する。また、駆動回路SUA2~SUA8は、たとえばSCU10が生成したゲート信号(第1スイッチング信号)を遅延させたゲート信号を用いて、それぞれ電池回路BC2~BC8のSW11及びSW12を駆動する。
【0115】
また、GCU500は、所定の第2条件が成立すると、電池ストリングStに含まれる電池B1~B16のうち第2電池のみ(電池B9~B16の少なくとも1つ)を電源システム1の電源回路に接続し、Li出力を実行する。この実施の形態では、第2電池をリチウムイオン電池とする。
図14に示す処理では、S11及びS21の両方においてYESと判断されると、第2条件が成立する。第2条件が成立すると、GCU500は、稼働対象として電池回路BC9~BC16を指定する第2制御指令を電池ストリングStへ送信する。電池ストリングStは、第2制御指令を受信すると、電池回路BC9~BC16にそれぞれ含まれる電池B9~B16を電源システム1の電源回路に接続するように電池回路BC9~BC16の各々のSW11及びSW12を駆動する。より具体的には、駆動回路SUA9が、GCU500からの第2制御指令に従ってSCU10(制御回路)が生成したゲート信号(第2スイッチング信号)を用いて、電池回路BC9のSW11及びSW12を駆動する。また、駆動回路SUA10~SUA16は、たとえばSCU10が生成したゲート信号(第2スイッチング信号)を遅延させたゲート信号を用いて、それぞれ電池回路BC10~BC16のSW11及びSW12を駆動する。
【0116】
さらに、GCU500は、所定の第3条件が成立すると、電池ストリングStに含まれる第1電池及び第2電池の両方(電池B1~B8の少なくとも1つと電池B9~B16の少なくとも1つとの両方)を電源システム1の電源回路に接続し、Ni+Li出力を実行する。
図14に示す処理では、S11及びS12の両方でNOかつS23にてYESと判断されると、第3条件が成立する。また、GCU500は、所定の第4条件が成立すると、電池ストリングStに含まれる第1電池及び第2電池の両方を電源システム1の電源回路に接続し、Ni+Li充放電を実行する。
図14に示す処理では、第1~第3条件のいずれも成立しない場合に、第4条件が成立する。第1~第4条件は択一的に成立する。
図14に示す処理では、GCU500が、要求される電力調整の度合い(たとえば、電力の大きさ)及び調整時間を用いて、第1条件、第2条件、第3条件、及び第4条件の各々の成否を判断する。このため、電源システム1は、サーバ700からの要求に応じて適切な電力調整を行なうことができる。
【0117】
なお、
図4のS31~S34における電池ストリングSt1の稼働方式は、スイープ方式に限られず、
図9、
図12、及び
図13に示した稼働方式であってもよい。また、第1~第3電力及び第1~第3時間は可変であってもよい。たとえば、第1~第3時間は、電池ストリングStの使用SOC範囲に応じて可変であってもよい。
【0118】
上記実施の形態では、GCU500がサーバ700から電力の出力を要求された場合について言及したが、GCU500は、サーバ700から電力の入力を要求されたときに、サーバ700からの要求に応えるように各電池ストリングSt及び電源回路(たとえば、各遮断器R及びPCS200)を制御してもよい。GCU500は、たとえば、Ni入力とLi入力とNi+Li入力とからなる群より選択された1つを実行することにより、電力系統PGの余剰電力を電池ストリングStに蓄電してもよい。
【0119】
上記実施の形態では、電源システム1に含まれる複数の電池ストリングStが互いに同じ構成を有する。しかしこれに限られず、電源システムは、たとえば、電池ストリングSt1と、電池ストリングSt1よりも高容量の電池ストリングSt2と、電池ストリングSt1よりも高出力の電池ストリングSt3とを含んでもよい。そして、GCU500は、
図14に示した処理に代えて、以下に説明する
図18に示す処理を実行してもよい。
【0120】
図18は、
図14に示した処理の第1変形例を示すフローチャートである。
図18に示す処理は、
図14に示した処理に対してS13が追加され、S34(
図14)に代えてS35及びS36が採用されたこと以外は、
図14に示した処理と同じである。以下、S13、S35、及びS36について説明する。
【0121】
図1~
図3とともに
図18を参照して、この変形例では、サーバ700からGCU500に要求される調整電力に制限はなく、40kWを超える調整電力がGCU500に要求されることがある。S12においてNOと判断されると、GCU500は、S13において、要求される調整電力が40kW以下であるか否かを判断し、判断結果がYESの場合は、続くS23において、要求される調整時間が10秒以内であるか否かを判断する。そして、S13及びS23の両方においてYESと判断されると、GCU500は、S33においてNi+Li出力を電池ストリングSt1に実行させる。また、S21~S23のいずれかにおいてNOと判断されると、GCU500は、S35において、サーバ700からの要求に応えるように、高容量の電池ストリングSt2の放電制御を行なう。S21~S23のいずれかにおいてNOと判断されることは、要求される調整時間が電池ストリングSt1の許容範囲を超えることを意味する。また、S13においてNOと判断されると、GCU500は、S36において、サーバ700からの要求に応えるように、高出力の電池ストリングSt3の放電制御を行なう。S13においてNOと判断されることは、要求される調整電力が電池ストリングSt1の許容範囲を超えることを意味する。
【0122】
また、GCU500は、サーバ700から周波数調整を要求されたときに、以下に説明する
図19に示す処理を実行してもよい。
【0123】
図19は、
図14に示した処理の第2変形例において、周波数調整に係る処理を示すフローチャートである。
図1~
図3とともに
図19を参照して、この変形例では、GCU500が、S51において、要求される調整電力が10kW以下であるか否かを判断する。そして、S51においてYESと判断されると、GCU500は、S52においてLi充放電を電池ストリングSt1に実行させる。S51においてNOと判断されると、GCU500は、S53において、要求される調整電力が25kW以下であるか否かを判断する。そして、S53においてYESと判断されると、GCU500は、S54においてNi充放電を電池ストリングSt1に実行させる。S53においてNOと判断されると、GCU500は、S55において、要求される調整電力が40kW以下であるか否かを判断する。そして、S55においてYESと判断されると、GCU500は、S56においてNi+Li充放電を電池ストリングSt1に実行させる。他方、S55においてNOと判断されると、GCU500は、S57において、サーバ700からの要求に応えるように、高出力の電池ストリングSt3の充放電制御を行なう。
【0124】
上記第1変形例及び第2変形例は組み合わせて実施されてもよい。上述した各変形例に係る電源システムによれば、より広範囲の電力調整を行なうことが可能になる。
【0125】
GCU500は、要求される電力の大きさのみに基づいて、第1条件及び第2条件の各々の成否を判断してもよい。
【0126】
図20は、
図14に示した処理の第3変形例を示すフローチャートである。
図1~
図3とともに
図20を参照して、この変形例では、GCU500が、S61において、要求される出力電力が所定の基準値以上であるか否かを判断する。S61においてYESと判断されると、GCU500は、S62においてNi出力を電池ストリングSt1に実行させる。他方、S61においてNOと判断されると、GCU500は、S63においてLi出力を電池ストリングSt1に実行させる。移動体(たとえば、車両)に搭載された電源システムにおいて、GCU500が
図20に示す処理を実行してもよい。こうした移動体では、移動のために瞬時のパワーが要求されるときに高出力のNi出力が実行される。
【0127】
上記実施の形態では、稼働対象ではない電池回路の駆動回路がスイッチング信号(ゲート信号)をパススルーするように構成される。しかしこれに限られず、スイッチング信号の信号線は、電池種別ごとに設けられてもよい。
図21は、
図2に示した構成の変形例を示す図である。
図21を参照して、この変形例に係る電池ストリングは、駆動回路SUA1~SUA8にスイッチング信号(ゲート信号)を伝達する信号線SWL1と、駆動回路SUA9~SUA16にスイッチング信号(ゲート信号)を伝達する信号線SWL2とを備える。SCU10は、GCU500からの第1制御指令に従って生成したゲート信号(第1スイッチング信号)を信号線SWL1へ送信する。この場合、SCU10が生成したゲート信号(第1スイッチング信号)を、駆動回路SUA1が受信する。また、SCU10は、GCU500からの第2制御指令に従って生成したゲート信号(第2スイッチング信号)を信号線SWL2へ送信する。この場合、SCU10が生成したゲート信号(第2スイッチング信号)を、駆動回路SUA9が受信する。こうした構成によれば、GD31のパススルー機能を割愛できる。
【0128】
第1電池及び第2電池は、上述したニッケル水素電池及びリチウムイオン電池には限られない。第1電池及び第2電池は、互いに電圧が大きく異なる2種類の電池であってもよい。上記実施の形態では、GCU500が、電池ストリングStに含まれる複数の電池Bを2つの区分(第1電池/第2電池)で区別しているが、3つ以上の区分で区別してもよい。たとえば、第1電池をニッケル水素電池、第2電池をリチウムイオン電池、第3電池を鉛畜電池、第4電池をリチウム空気電池として、GCU500は、電池ストリングStに含まれる複数の電池Bを第1~第4電池のいずれかに区別してもよい。また、GCU500は、電池ストリングStに含まれる複数の電池Bを電池の容量で区別してもよい。たとえば、第1電池を低容量、第2電池を中容量、第3電池を高容量としてもよい。
【0129】
電源システムが複数の電池ストリングを含むことは必須ではなく、電池ストリングの数は1個であってもよい。
【0130】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0131】
1 電源システム、10 SCU、11 第1スイッチング素子、12 第2スイッチング素子、13 第1ダイオード、14 第2ダイオード、15 チョークコイル、16 コンデンサ、31 ゲートドライバ、32 遅延回路、100 分電盤、200 PCS、300 HUB、500 GCU、510 制御装置、520 記憶装置、530 通信装置、540 入力装置、550 表示装置、700 サーバ、B 電池、BC 電池回路、BS 監視ユニット、Cg カートリッジ、OT1,OT2 出力端子、PG 電力系統、R,RB 遮断器、SUA 駆動回路、SUB 電力回路、SWL1,SWL2 信号線、St 電池ストリング。