(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】電子装置
(51)【国際特許分類】
H05K 3/28 20060101AFI20240611BHJP
H01R 12/58 20110101ALI20240611BHJP
H05K 1/18 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H05K3/28 B
H01R12/58
H05K1/18 B
(21)【出願番号】P 2021053850
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大村 良輔
(72)【発明者】
【氏名】塩見 巧
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-140383(JP,A)
【文献】特開2017-059587(JP,A)
【文献】特開2016-225173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/28
H01R 12/58
H05K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルーホール(20、22)が形成されている配線基板(12)と、
前記スルーホール(20)に圧入されて前記スルーホールと電気的に接続するように構成されたプレスフィット端子(40)と、
前記配線基板の板厚方向の両面のうち、前記プレスフィット端子が圧入される前記スルーホールの入口側の圧入面(14)と反対側の反対面(16)に少なくとも形成される第1のソルダーレジスト(30)と、
前記圧入面において少なくとも前記スルーホールの周囲に形成され、前記第1のソルダーレジストよりも伸び率が高い第2のソルダーレジスト(32)と、
を備え
、
前記配線基板は薄膜基板(50)を有し、
前記薄膜基板が屈曲している屈曲部(52)の前記圧入面には前記第2のソルダーレジストが形成されている、
電子装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子装置であって、
前記プレスフィット端子と前記スルーホールの内周面(20a)とは、前記反対面よりも前記圧入面に近い位置で接触する、
電子装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子装置であって、
前記プレスフィット端子は、前記スルーホールに圧入されるばね部(42)と、圧入方向と反対側で前記ばね部に続くリード部(44)とを有し、
前記プレスフィット端子が前記スルーホールに圧入された状態で、前記スルーホール内において前記ばね部の幅が最大になる位置(100)は、前記ばね部の中央よりも前記ばね部と前記リード部との境界側に近い、
電子装置。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1項に記載の電子装置であって、
前記プレスフィット端子が圧入される前記スルーホールの周囲の前記圧入面において、少なくとも前記プレスフィット端子が前記スルーホールの内周面に力を加える方向の前記圧入面に、前記第2のソルダーレジストは形成されている、
電子装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の電子装置であって、
前記プレスフィット端子が圧入される前記スルーホールの周囲の前記圧入面において、前記プレスフィット端子が前記スルーホールの内周面に力を加える方向の前記圧入面にだけ、前記第2のソルダーレジストは形成されている、
電子装置。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか1項に記載の電子装置であって、
前記第2のソルダーレジストは、前記プレスフィット端子が圧入される前記スルーホールの周囲の前記圧入面にだけ形成されている、
電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線基板のスルーホールにプレスフィット端子が圧入される電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板のスルーホールにプレスフィット端子を圧入してスルーホールとプレスフィット端子とを電気的に接続する技術が知られている。配線基板の板厚方向の両面には、配線基板に形成された配線を絶縁するためにソルダーレジストが形成される。
【0003】
ここで、スルーホールにプレスフィット端子を圧入すると、スルーホールの内径を広げる方向にプレスフィット端子から力が加わり、配線基板の表面において、プレスフィット端子が圧入されるスルーホールの周囲が変形することがある。その結果、プレスフィット端子が圧入されるスルーホールの周囲のソルダーレジストが損傷するおそれがある。
【0004】
そこで、下記の特許文献1には、配線基板の表面においてプレスフィット端子から力が加わる方向にスルーホールの径以上の大きさのランドを含む導体を形成し、配線基板の表面の変形を抑制することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、配線基板の表面においてプレスフィット端子から力が加わる方向にスルーホールの径以上の大きさのランドを含む導体を形成すると、導体が形成されている領域には配線を形成できない。その結果、発明者の詳細な検討によると、スルーホールの周囲に配線を形成するときの自由度が制約されるという課題が見出された。
【0007】
本開示の1つの局面は、スルーホールの周囲に配線を形成するときの自由度を確保し、プレスフィット端子が圧入される圧入面側のソルダーレジストの損傷を抑制する技術を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の1つの態様による電子装置は、配線基板(12)と、プレスフィット端子(40)と、第1のソルダーレジスト(30)と、第2のソルダーレジスト(32)と、を備える。
【0009】
配線基板にはスルーホール(20、22)が形成されている。プレスフィット端子は、スルーホール(20)に圧入されてスルーホールと電気的に接続する。第1のソルダーレジストは、配線基板の板厚方向の両面のうち、プレスフィット端子が圧入されるスルーホールの入口側の圧入面(14)と反対側の反対面(16)に少なくとも形成される。第2のソルダーレジストは、圧入面において少なくともスルーホールの周囲に形成され、第1のソルダーレジストよりも伸び率が高い。
【0010】
この構成によれば、プレスフィット端子が圧入されることによりスルーホールの周囲の圧入面が変形しても、圧入面においてスルーホールの周囲に形成された第2のソルダーレジストは、圧入面の変形に合わせて伸び縮みする。したがって、スルーホールの周囲の圧入面が変形しても、第2のソルダーレジストの損傷を抑制できる。
【0011】
また、スルーホールの周囲の第2のソルダーレジストが損傷することを抑制するために、プレスフィット端子から力が加わる方向にランドを含む導体を形成する必要がないので、スルーホールの周囲に配線を形成するときの自由度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】プレスフィット端子の圧入を説明する断面図。
【
図5】第1実施形態の変形例1の電子装置を示す断面図。
【
図6】第1実施形態の変形例2の電子装置を示す断面図。
【
図8】
図2と同じ方向から見た第2実施形態の電子装置を示す矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す電子装置10は、配線基板12と、スルーホール20、22と、第1のソルダーレジスト30と、第2のソルダーレジスト32と、プレスフィット端子40と、を備える。
【0014】
図1では図を簡略化するために配線基板12は単層で示されているが、多層であってもよい。配線基板12の各層には、図示しない配線が形成されている。配線基板12は、プレスフィット端子40が圧入されるスルーホール20の入口側の圧入面14と、板厚方向で圧入面14と反対側の反対面16とを有している。
【0015】
スルーホール20、22は、配線基板12を貫通して形成されている。スルーホール20、22の内周面20a、22aには、例えば銅めっきが形成されている。スルーホール20、22の内周面20a、22aに形成された銅メッキは、配線基板12の板厚方向の両面において、スルーホール20、22の周囲に形成されたランド24、ならびに配線基板12の各層に形成された配線と電気的に接続している。
【0016】
スルーホール20には、プレスフィット端子40が圧入される。スルーホール22は、電子部品のピン等が挿入されてはんだ付けされるために形成されている。
第1のソルダーレジスト30は、配線基板12の両面に形成された配線を絶縁するために、反対面16と、第2のソルダーレジスト32が形成されている領域以外の圧入面14とを覆って形成されている。第1のソルダーレジスト30の材質として、例えば、カルボキシ基を有するエポキシアクリレートを主成分とする硬化性樹脂組成物が使用される。
【0017】
図1および
図2に示すように、第2のソルダーレジスト32は、圧入面14において、プレスフィット端子40が圧入されるスルーホール20の周囲全周にだけ環状に形成されている。第2のソルダーレジスト32の内周側は、ランド24の外周を覆っている。
【0018】
スルーホール20にプレスフィット端子40が圧入されると、
図2に示すように、スルーホール20の内周面20aに、スルーホール20の内径が広がる矢印200が示す方向にばね部42から力が加わる。
【0019】
第2のソルダーレジスト32の材質として、例えば、スルフィド結合を有する硬化性樹脂を含む硬化性成分とセルロースナノファイバーとを含む硬化性樹脂組成物が使用される。第2のソルダーレジスト32の伸び率は第1のソルダーレジスト30の伸び率よりも高い。
【0020】
プレスフィット端子40は、ばね部42と、プレスフィット端子40の圧入方向と反対側でばね部42に続くリード部44とを有している。ばね部42は、長さ方向の両端で結合された二股状に形成されている。リード部44のばね部42と反対側は、例えば、電子部品と電気的に結合される。
【0021】
図1に示すように、プレスフィット端子40を圧入面14からスルーホール20に圧入する場合、反対面16側に、スルーホール20の周囲を支持する治具2が設置される。
図3に示すように、スルーホール20に圧入する前のプレスフィット端子40の最大幅D0は、スルーホール20の内径D1よりも大きい。スルーホール20にプレスフィット端子40を圧入すると、ばね部42が弾性変形して生じる弾性力により、プレスフィット端子40はスルーホール20内に保持される。
【0022】
プレスフィット端子40がスルーホール20内に圧入された状態で、スルーホール20内においてプレスフィット端子40の幅が最大になっているのは、ばね部42とスルーホール20の内周面20aとが接触している位置100である。この位置100は、反対面16よりも圧入面14に近い。また、位置100は、ばね部42の長さ方向の中央よりもばね部42とリード部44との境界46側に近い。
【0023】
図4に示すように、設置場所の形状や周囲環境の制約のために、配線基板12として薄膜基板50が使用される箇所がある。薄膜基板50の圧入面14側には、少なくとも薄膜基板50の屈曲部52の凸面において、第2のソルダーレジスト32が形成されている。
【0024】
[1-2.圧入時の作動]
スルーホール20の内径D1よりも圧入前の最大幅D0が大きいプレスフィット端子40がスルーホール20に圧入されると、プレスフィット端子40が弾性変形するので、以下の(1)~(3)に示す力が配線基板12に加わる。
【0025】
(1)プレスフィット端子40がスルーホール20に圧入されることにより、スルーホール20の圧入面14側からプレスフィット端子40の圧入が終了する位置100まで、内径が広がる方向にプレスフィット端子40からスルーホール20に加わる力。
【0026】
(2)プレスフィット端子40がスルーホール20の圧入面14側から位置100まで圧入されるときに、摩擦によりスルーホール20に対して治具2側に加わる力。
(3)プレスフィット端子40がスルーホール20に圧入された状態で、内径が広がる方向にプレスフィット端子40からスルーホール20に加わる力。
【0027】
上記の(1)、(2)の力はプレスフィット端子40をスルーホール20に圧入するときに加わるので、スルーホール20の周囲の圧入面14が変形しやすい。
上記の(3)の力はプレスフィット端子40がスルーホール20に圧入された状態で常にスルーホール20に加わる。その結果、周囲環境の温度変化により配線基板12に冷熱ストレスが加わると、スルーホール20を変形させる力が加わる。
【0028】
プレスフィット端子40がスルーホール20と接触する位置100が反対面16よりも圧入面14に近く、ばね部42の長さ方向の中央よりもばね部42とリード部44との境界46側に近い場合、スルーホール20の周囲の圧入面14は反対面16より変形しやすい。
【0029】
第1実施形態では、スルーホール20の周囲の圧入面14に第1のソルダーレジスト30よりも伸び率の高い第2のソルダーレジスト32が形成されているので、スルーホール20の周囲の圧入面14の変形に合わせて、第2のソルダーレジスト32が伸び縮みする。
【0030】
[変形例1]
第1実施形態の変形例1を
図5に示す。変形例1の電子装置60では、第2のソルダーレジスト32が、ランド24の外周と第1のソルダーレジスト30の内周とを覆っている。
【0031】
[変形例2]
第1実施形態の変形例2を
図6に示す。変形例2の電子装置70では、第2のソルダーレジスト32がランド24の外周を覆い、第1のソルダーレジスト30が第2のソルダーレジスト32の外周を覆っている。
【0032】
[変形例3]
第1実施形態の変形例3を
図7に示す。変形例3の電子装置80では、第1実施形態の電子装置10と異なり、第2のソルダーレジスト32はランド24の外周を覆っていない。
【0033】
[1-3.効果]
以上説明した第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1a)配線基板12の圧入面14のスルーホール20の周囲に、反対面16に形成される第1のソルダーレジスト30よりも伸び率の高い第2のソルダーレジスト32が形成されている。
【0034】
これにより、プレスフィット端子40がスルーホール20に圧入されるときに、プレスフィット端子40からスルーホール20に加わる力によりスルーホール20の周囲の圧入面14が変形しても、この変形に合わせて第2のソルダーレジスト32が伸び縮みする。その結果、スルーホール20の周囲の圧入面14に形成された第2のソルダーレジスト32の損傷を抑制できる。
【0035】
(1b)スルーホール20内に圧入された状態で、スルーホール20内においてプレスフィット端子40の幅が最大になり、ばね部42とスルーホール20の内周面20aとが接触している位置100は、ばね部42とリード部44との境界46側に近い。
【0036】
この構成では、プレスフィット端子40がスルーホール20に奥深く圧入されても、プレスフィット端子40がスルーホール20と接触している位置100は、反対面16よりも圧入面14に近くなりやすい。その結果、プレスフィット端子40がスルーホール20に圧入された状態で、プレスフィット端子40からスルーホール20に加わる力により、スルーホール20の周囲の反対面16よりも圧入面14が変形しやすい。
【0037】
第1実施形態では、スルーホール20の周囲の圧入面14に第1のソルダーレジストよりも伸び率の高い第2のソルダーレジスト32が形成されているので、スルーホール20の周囲の圧入面14の変形に合わせて、第2のソルダーレジスト32が伸び縮みする。これにより、スルーホール20の周囲の圧入面14に形成された第2のソルダーレジスト32の損傷を抑制できる。
【0038】
(1c)圧入面14の全面ではなく、プレスフィット端子40を圧入するスルーホール20の周囲の圧入面14にだけ第2のソルダーレジスト32を形成するので、第1のソルダーレジスト30よりも高価な第2のソルダーレジスト32の使用量を低減できる。
【0039】
(1d)薄膜基板50の屈曲部52に形成された第2のソルダーレジスト32は、屈曲部52の形状に合わせて伸び縮みする。したがって、屈曲部52に形成された第2のソルダーレジスト32の損傷を抑制できる。
【0040】
(1e)プレスフィット端子40が圧入されることによりスルーホール20の周囲の圧入面14が変形することを抑制するために導体を圧入面14に形成することなく、第2のソルダーレジスト32の損傷を抑制することができる。したがって、スルーホール20の周囲に配線を形成するときの自由度を確保できる。
【0041】
[2.第2実施形態]
[2-1.第1実施形態との相違点]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0042】
前述した第1実施形態では、スルーホール20の周囲全周の圧入面14に第2のソルダーレジスト32を形成した。これに対し、第2実施形態では、
図8に示すように、プレスフィット端子40がスルーホール20の内周面20aに力を加える矢印200が示す方向の圧入面14にだけ、第2のソルダーレジスト32が形成されている点で、第1実施形態と相違する。
【0043】
図8に示すように、プレスフィット端子40の厚さ方向の第2のソルダーレジスト32の幅L0は、プレスフィット端子40の厚さL1よりも大きい。
[2-2.効果]
以上説明した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1a)~(1e)に加え、さらに、以下の効果を得ることができる。
【0044】
(2a)スルーホール20の周囲全周ではなく、プレスフィット端子40がスルーホール20の内周面20aに力を加える方向の圧入面14にだけ、第2のソルダーレジスト32が形成されている。したがって、第1のソルダーレジスト30よりも高価な第2のソルダーレジスト32の使用量を低減できる。
【0045】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0046】
(3a)上記実施形態では、配線基板12の圧入面14において、スルーホール20の周囲にだけ第2のソルダーレジスト32を形成したが、これに限定されるものではない。例えば、配線基板12の圧入面14の全面に第2のソルダーレジスト32を形成してもよい。
【0047】
(3b)プレスフィット端子40のばね部42は、ばね部42がスルーホール20に圧入されてスルーホール20の内周面20aに力を加えるのであれば、上記実施形態で説明した二股状に限るものではない。例えば、ばね部は、断面が円弧状に形成されてもよい。
【0048】
(3c)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。
【0049】
(3d)上記の電子装置10、60、70、80の他、当該電子装置10、60、70、8を構成要素とするシステムなど、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0050】
10、60、70、80:電子装置、12:配線基板、14:圧入面、16:反対面、20、22:スルーホール、20a:内周面、30:第1のソルダーレジスト、32:第2のソルダーレジスト、40:プレスフィット端子、42:ばね部、44:リード部、50:薄膜基板、52:屈曲部