(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】旋回式油圧作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20240611BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20240611BHJP
F15B 11/024 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
E02F9/22 C
F15B11/02 W
F15B11/024 B
(21)【出願番号】P 2021059315
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】由井 涼
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-521894(JP,A)
【文献】特開2018-204390(JP,A)
【文献】特開2013-007175(JP,A)
【文献】特開2019-027009(JP,A)
【文献】特開平07-331705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
F15B 11/02
F15B 11/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回式油圧作業機械であって、
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に取付けられて作業動作を行う作業装置であって、前記上部旋回体に起伏可能に連結されるブームと、アーム引き方向及びアーム押し方向に回動可能となるように前記ブームに連結されるアームと、を含む作業装置と、
前記上部旋回体の旋回及び前記アームの回動のための作動油を吐出する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプにより吐出される作動油の供給を受けて作動する油圧モータにより構成され、当該作動油の供給に応じて前記上部旋回体を左旋回方向及び右旋回方向のいずれにも旋回させることが可能な旋回モータと、
前記油圧ポンプにより吐出される作動油の供給を受けることにより前記アームを回動させるように伸縮しながら作動油を排出するアームシリンダと、
前記油圧ポンプと前記旋回モータとの間に介在し、当該油圧ポンプから当該旋回モータに供給される作動油の方向及び流量を変化させるように開閉動作する旋回制御弁と、
前記油圧ポンプと前記アームシリンダとの間に介在し、当該油圧ポンプから当該アームシリンダに供給される作動油の方向及び流量を変化させるように開閉動作するアーム制御弁と、
前記旋回モータを動かして前記上部旋回体を旋回させるための旋回操作が与えられることが可能な旋回操作部と、当該旋回操作部に与えられた当該旋回操作に対応した方向に前記旋回モータを作動させる方向の開閉動作を前記旋回制御弁に行わせる旋回指令部と、を含む旋回操作装置と、
前記アームシリンダを動かすためのアーム操作が与えられることが可能なアーム操作部と、当該アーム操作部に与えられた当該アーム操作に対応した方向に前記アームシリンダを作動させる方向の開閉動作を前記アーム制御弁に行わせるアーム指令部と、を含むアーム操作装置と、
前記アームシリンダから排出される作動油である排出作動油をタンクに導くように配置される戻りラインと、
前記戻りラインを通じて前記タンクに戻される戻り作動油の一部が前記タンク内の圧力よりも前記作動油の圧力が高い位置から前記旋回モータの吸い込み側に補給されることを許容するように配置される作動油補給ラインと、
再生状態と再生解除状態とに切換わることが可能であり、前記再生状態では前記排出作動油が前記タンクに戻ることを制限して当該排出作動油の一部が前記アームシリンダに再供給される再生動作を可能にする流路を形成し、前記再生解除状態では前記排出作動油が前記タンクに戻ることの制限を解除して前記再生動作を解除する流路を形成する再生回路と、
前記上部旋回体が当該上部旋回体の慣性により前記旋回操作に対応する方向と異なる方向に旋回する動作である慣性旋回動作を検出する慣性旋回動作検出部と、
前記アームシリンダの駆動状態が予め設定された再生動作条件に該当しかつ前記慣性旋回動作検出部が前記慣性旋回動作を検出していないときには前記再生回路を前記再生状態に切換え、前記慣性旋回動作検出部が前記慣性旋回動作を検出しているときは前記アームシリンダの駆動状態が前記再生動作条件に該当するか否かにかかわらず前記再生回路を前記再生解除状態に切換えるように構成された再生制御部と、を備える、旋回式油圧作業機械。
【請求項2】
請求項1記載の旋回式油圧作業機械であって、前記慣性旋回動作検出部は、前記旋回操作部に与えられる前記旋回操作の方向である旋回操作方向を検出する旋回操作検出器と、前記上部旋回体の実際の旋回動作の方向である旋回動作方向を検出する旋回動作検出器と、前記旋回操作検出器により検出される前記旋回操作方向と前記旋回動作方向との関係が予め設定された慣性旋回動作判定条件に該当する場合にのみ前記上部旋回体が前記慣性旋回動作をしていると判定する旋回動作判定部と、を含み、前記再生制御部は、前記上部旋回体が前記慣性旋回動作をしていると前記旋回動作判定部が判定した場合に前記アームシリンダの駆動状態が前記再生動作条件に該当するか否かにかかわらず前記再生回路を前記再生解除状態に切換えるように構成されている、旋回式油圧作業機械。
【請求項3】
請求項2記載の旋回式油圧作業機械であって、前記慣性旋回動作判定条件は複数の判定要件を含み、前記旋回動作判定部は、前記複数の判定要件のうちのいずれかが満たされた場合に前記上部旋回体が前記慣性旋回動作をしていると判定する、旋回式油圧作業機械。
【請求項4】
請求項2または3記載の旋回式油圧作業機械であって、前記慣性旋回動作判定条件は、前記旋回操作方向と前記旋回動作方向とが逆であるという判定要件を含む、旋回式油圧作業機械。
【請求項5】
請求項2~4のいずれかに記載の旋回式油圧作業機械であって、前記慣性旋回動作判定条件は、前記旋回操作部に与えられている前記旋回操作の方向とは逆の方向に上部旋回体が旋回しているという判定要件を含む、旋回式油圧作業機械。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の旋回式油圧作業機械であって、前記再生制御部は、前記アームシリンダの駆動状態が前記再生動作条件を満たしているときに前記慣性旋回動作検出部が前記慣性旋回動作を検出している状態から前記慣性旋回動作を検出していない状態に移行した時点で前記再生回路を前記再生解除状態から前記再生状態に切換えるように構成されている、旋回式油圧作業機械。
【請求項7】
請求項4記載の旋回式油圧作業機械であって、前記再生制御部は、前記旋回動作方向が前記旋回操作方向と逆の方向から前記旋回操作方向に対応する方向に逆転した時点で前記再生回路を前記再生解除状態から前記再生状態に切換えるように構成されている、旋回式油圧作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の旋回式油圧作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
旋回式油圧作業機械は、一般に、下部走行体と、上部旋回体と、作業装置と、複数の作業アクチュエータと、油圧ポンプと、旋回制御弁と、を備える。前記上部旋回体は、前記下部走行体に旋回可能に搭載される。前記作業装置は、前記上部旋回体に連結されて作業動作を行う。前記旋回モータは、油圧モータからなり、作動油の供給を受けることにより前記上部旋回体を左旋回方向及び右旋回方向のいずれにも旋回させることが可能である。前記複数の作業アクチュエータのそれぞれは、作動油の供給を受けて前記作業装置の所定の部位を動かす油圧アクチュエータである。前記油圧ポンプは、前記旋回モータに供給されるべき作動油を吐出する。前記油圧ポンプは、前記旋回モータに加えて前記複数の作業アクチュエータの中から選ばれる作業アクチュエータ、例えばアームシリンダ、にも接続されることが多く、その場合には当該油圧ポンプから前記旋回モータと前記の選ばれた作業アクチュエータとの双方に作動油が供給される。
【0003】
前記旋回制御弁は、前記油圧ポンプから前記旋回モータに供給される作動油の方向及び流量を変化させるように開弁動作する。具体的に、前記旋回制御弁は、オペレータにより旋回操作レバーに加えられる旋回操作に対応した開弁動作をする。例えば、前記旋回操作レバーに上部旋回体を左旋回方向に旋回させるための旋回操作が与えられると、前記旋回制御弁は、前記上部旋回体を左旋回方向に旋回させる方向に前記旋回モータを回転させるように当該旋回モータに前記油圧ポンプから作動油が供給されることを許容し、かつ、その作動油の流量が前記旋回操作の大きさに対応した流量となるように、開弁する。
【0004】
前記上部旋回体の旋回中に前記旋回操作レバーが中立位置または実際の旋回方向と逆の方向に操作されると、前記旋回制御弁は閉弁し、あるいは逆向きに開弁して、現在の旋回方向に前記上部旋回体を旋回させるような作動油の供給を阻止するが、大きな慣性モーメントを有する前記上部旋回体は、前記旋回制御弁の動作にかかわらず現在の旋回方向への旋回動作を続ける。このような上部旋回体の慣性による旋回動作は、前記旋回モータの吸入側の圧力を著しく低下させ、当該旋回モータの故障の原因となるキャビテーションを生じさせるおそれがある。
【0005】
特許文献1は、前記キャビテーションを防ぐための手段を備えた旋回駆動装置を開示する。この装置は、油圧ポンプの吐出口からタンクに至るセンターバイパスラインと、当該センターバイパスラインに沿って配置された複数の切換弁と、メイクアップラインと、を備える。前記複数の切換弁は、旋回モータに接続される旋回切換弁と、旋回モータ以外の油圧アクチュエータに接続される他の切換弁と、を含む。前記メイクアップラインは、前記センターバイパスラインにおいてタンクに近い位置に設定された分岐点から分岐し、前記旋回モータと前記旋回切換弁とを結ぶ流路に至る。前記分岐点と前記タンクとの間には可変絞り弁が設けられ、当該可変絞り弁は、前記分岐点にタンク圧よりも高い背圧を発生させるように流路を絞る。
【0006】
この装置において、上部旋回体の慣性による旋回動作によって前記旋回モータの吸入側圧力が低下すると、その低下した圧力と前記可変絞り弁により生成された前記背圧との圧力差により、前記センターバイパスラインを通じてタンクに戻る作動油の一部が前記メイクアップラインに分流し、前記旋回モータの吸入側に補給される。この作動油の補給が前記旋回モータの前記吸入側圧力の低下を緩和し、キャビテーションの発生を抑止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記装置における前記他の切換弁、すなわち前記旋回切換弁とともに共通の前記油圧ポンプからの作動油の供給を受ける切換弁、がアームシリンダに接続されるアーム制御弁を含み、かつ、当該アームシリンダの駆動についての再生動作であるアーム再生動作が行われる場合、前記メイクアップラインによる補給が損なわれてキャビテーションを有効に抑止できないおそれがある。前記アーム再生動作は、前記アームのアーム引き方向の回動に伴って伸長するアームシリンダのロッド側室から排出される作動油の一部をタンクに戻さずに当該アームシリンダのへッド側室に再供給する動作であり、これにより、当該アームのアーム引き動作が増速されることを可能にし、また、前記油圧ポンプから吐出される作動油のうち前記アームシリンダに供給される作動油の量を減らして前記上部旋回体の旋回駆動を優先することを可能にするが、当該アーム再生動作は前記アーム切換弁から前記センターバイパスラインを通じてタンクに戻る作動油の流量を著しく減少させ、これにより、前記メイクアップラインを通じて前記旋回モータの吸入側に補給される作動油の流量を著しく減らして前記キャビテーションの抑止を阻害するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上部旋回体を旋回させる旋回モータ及び作業装置のアームを動かすためのアームシリンダが共通の油圧ポンプに接続される旋回式油圧作業機械であって、前記アームの駆動について再生動作を行うことが可能であり、かつ、前記旋回モータに係るキャビテーションの発生を確実に防ぐことが可能なものを提供することを目的とする。
【0010】
提供される旋回式油圧作業機械は、下部走行体と、下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に取付けられて作業動作を行う作業装置と、油圧ポンプと、旋回モータと、アームシリンダと、旋回制御弁と、アーム制御弁と、旋回操作装置と、アーム操作装置と、戻りラインと、作動油補給ラインと、再生回路と、再生制御部と、慣性旋回動作検出部と、を備える。前記作業装置は、前記上部旋回体に起伏可能に連結されるブームと、アーム引き方向及びアーム押し方向に回動可能となるように前記ブームに連結されるアームと、を含む。前記油圧ポンプは前記上部旋回体の旋回及び前記アームの回動のための作動油を吐出する。前記旋回モータは、前記油圧ポンプにより吐出される作動油の供給を受けて作動する油圧モータにより構成され、当該作動油の供給に応じて前記上部旋回体を左旋回方向及び右旋回方向のいずれにも旋回させることが可能である。前記アームシリンダは、前記油圧ポンプにより吐出される作動油の供給を受けることにより前記アームを回動させるように伸縮しながら作動油を排出する。前記旋回制御弁は、前記油圧ポンプと前記旋回モータとの間に介在し、当該油圧ポンプから当該旋回モータに供給される作動油の方向及び流量を変化させるように開閉動作する。前記アーム制御弁は、前記油圧ポンプと前記アームシリンダとの間に介在し、当該油圧ポンプから当該アームシリンダに供給される作動油の方向及び流量を変化させるように開閉動作する。前記旋回操作装置は、前記旋回モータを動かして前記上部旋回体を旋回させるための旋回操作が与えられることが可能な旋回操作部と、当該旋回操作部に与えられた当該旋回操作に対応した方向に前記旋回モータを作動させる方向の開閉動作を前記旋回制御弁に行わせる旋回指令部と、を含む。前記アーム操作装置は、前記アームシリンダを動かすためのアーム操作が与えられることが可能なアーム操作部と、当該アーム操作部に与えられた当該アーム操作に対応した方向に前記アームシリンダを作動させる方向の開閉動作を前記アーム制御弁に行わせるアーム指令部と、を含む。前記戻りラインは、前記アームシリンダから排出される作動油である排出作動油をタンクに導くように配置される。前記作動油補給ラインは、前記戻りラインを通じて前記タンクに戻される戻り作動油の一部が前記タンク内の圧力よりも前記作動油の圧力が高い位置から前記旋回モータの吸い込み側に補給されることを許容するように配置される。前記再生回路は、再生状態と再生解除状態とに切換わることが可能である。前記再生回路は、前記再生状態では前記排出作動油が前記タンクに戻ることを制限して当該排出作動油の一部が前記アームシリンダに再供給される再生動作を可能にする流路を形成し、前記再生解除状態では前記排出作動油が前記タンクに戻ることの制限を解除して前記再生動作を解除する流路を形成する。前記慣性旋回動作検出部は、慣性旋回動作を検出する。当該慣性旋回動作は、前記上部旋回体が当該上部旋回体の慣性により前記旋回操作に対応する方向と異なる方向に旋回する動作である。前記再生制御部は、前記アームシリンダの駆動状態が予め設定された再生動作条件に該当しかつ前記慣性旋回動作検出部が前記慣性旋回動作を検出していないときには前記再生回路を前記再生状態に切換え、前記慣性旋回動作検出部が前記慣性旋回動作を検出しているときは前記アームシリンダの駆動状態が前記再生動作条件に該当するか否かにかかわらず前記再生回路を前記再生解除状態に切換えるように、構成されている。
【0011】
この作業機械において、前記再生制御部は、前記アームシリンダの駆動状態が予め設定された再生動作条件に該当しかつ前記慣性旋回動作検出部が前記慣性旋回動作を検出していないときには前記再生回路を前記再生状態に切換えることにより、前記アームシリンダから排出された作動油の一部がタンクに戻されずに当該アームシリンダに再供給されることを可能にする。このことは、前記アームの動作が増速されることを可能にする。また、前記旋回操作と前記アーム操作とが同時に行われている状態では、前記油圧ポンプから吐出される作動油のうち前記アームシリンダに供給される作動油の量を減らし、これにより、前記上部旋回体の旋回駆動が優先されることを可能にする。その一方、前記再生制御部は、前記慣性旋回動作検出部が前記慣性旋回動作を検出しているとき、つまり前記旋回モータの前記吸込み側圧力が低下して作動油の補給を要する可能性のあるとき、は前記アームシリンダの駆動状態が前記再生動作条件に該当するか否かにかかわらず前記再生回路を前記再生解除状態に切換えて当該アームシリンダからの前記排出作動油が制限されることなく戻りラインを通じてタンクに戻ることを許容し、これにより、当該戻りラインを流れる戻り作動油の一部が前記メイクアップラインを通じて十分な流量で前記旋回モータの吸込み側に補給されることを可能にしてキャビテーションの発生を有効に抑止することができる。
【0012】
前記慣性旋回動作検出部は、前記旋回操作部に与えられる前記旋回操作の方向である旋回操作方向を検出する旋回操作検出器と、前記上部旋回体の実際の旋回動作の方向である旋回動作方向を検出する旋回動作検出器と、前記旋回操作検出器により検出される前記旋回操作方向と前記旋回動作方向との関係が予め設定された慣性旋回動作判定条件に該当する場合にのみ前記上部旋回体が前記慣性旋回動作をしていると判定する旋回動作判定部と、を含み、前記再生制御部は、前記上部旋回体が前記慣性旋回動作をしていると前記旋回動作判定部が判定した場合に前記アームシリンダの駆動状態が前記再生動作条件に該当するか否かにかかわらず前記再生回路を前記再生解除状態に切換えるように構成されていることが、好ましい。前記慣性旋回動作検出部は、前記旋回操作方向及び前記旋回動作方向を検出するだけの簡単な構成で前記慣性旋回動作の有無を的確に判定することが可能である。
【0013】
前記慣性旋回動作判定条件は、複数の判定要件を含み、前記旋回動作判定部は、前記複数の判定要件のうちのいずれかが満たされた場合に前記上部旋回体が前記慣性旋回動作をしていると判定しても、よい。
【0014】
具体的に、前記慣性旋回動作判定条件は、前記旋回操作方向と前記旋回動作方向とが逆であるという判定要件、つまり、前記旋回操作部に与えられている前記旋回操作の方向とは逆の方向に上部旋回体が旋回しているという要件、及び、前記上部旋回体が旋回動作をしており、かつ、前記旋回操作検出器により検出される前記旋回操作が中立状態であるという判定要件、つまり、前記旋回操作部に実質上前記旋回操作が与えられていないにもかかわらず実際に上部旋回体が旋回しているという要件、の少なくとも一方を含んだものが好適である。いずれの判定要件も、実際の前記上部旋回体の旋回方向が前記旋回操作部に与えられている前記旋回操作の方向と異なることに基づいて、前記慣性旋回動作の存在を的確に判定することを可能にする。
【0015】
前記再生制御部は、前記アームシリンダの駆動状態が前記再生動作条件を満たしているときに前記慣性旋回動作検出部が前記慣性旋回動作を検出している状態から前記慣性旋回動作を検出していない状態に移行した時点で前記再生回路を前記再生解除状態から前記再生状態に切換えるように構成されていることが、好ましい。このことは、前記慣性旋回動作中は当該慣性旋回動作に起因するキャビテーションを確実に抑止しながら、当該慣性旋回動作が解消された時点、すなわち前記旋回モータに戻り作動油の一部を補給する必要がなくなった時点、で再生動作を再開して前記旋回モータによる旋回駆動が優先される状態に迅速に移行することを可能にする。
【0016】
具体的に、前記少なくとも一つの慣性旋回動作判定条件が、前記旋回操作方向と前記旋回動作方向とが逆であること、を含んでいる場合、前記再生制御部は、前記旋回動作方向が前記旋回操作方向と逆の方向から前記旋回操作方向に対応する方向に逆転した時点で前記再生回路を前記再生解除状態から前記再生状態に切換えるように構成されていることが、好ましい。このように、前記旋回動作方向が前記旋回操作方向に対応する方向、すなわち順方向、に逆転した時点で前記再生動作を再開することにより、前記旋回駆動が優先される状態に素早く移行して、つまり前記上部旋回体を前記順方向に積極的に駆動するための作動油の量を増やして、高い旋回加速性を確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、上部旋回体を旋回させる旋回モータ及び作業装置のアームを動かすためのアームシリンダが共通の油圧ポンプに接続される旋回式油圧作業機械であって、前記アームの駆動について再生動作を行うことが可能であり、かつ、前記旋回モータに係るキャビテーションの発生を確実に防ぐことが可能なものが、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る旋回式油圧作業機械である油圧ショベルを示す側面図である。
【
図2】前記油圧ショベルに搭載される油圧回路を示す図である。
【
図3】前記油圧回路に接続されるコントローラの主機能を示すブロック図である。
【
図4】前記コントローラが行う演算制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、前記実施の形態に係る油圧ショベルを示す。なお、本発明は、ここに示される油圧ショベルに限らず、上部旋回体及び作業装置を備え、かつ油圧を主たる動力として作動する作業機械に広く適用され得るものである。
【0021】
前記油圧ショベルは、地盤G上を走行可能な下部走行体10と、前記下部走行体10に搭載される上部旋回体12と、上部旋回体12に搭載される作業装置14と、を備える。前記上部旋回体12は、旋回フレーム15を含み、当該旋回フレーム15は縦軸回りに旋回可能となるように前記下部走行体10に搭載される。前記上部旋回体12は、前記旋回フレーム15に搭載される複数の要素をさらに含み、当該複数の要素は、運転室であるキャブ16と、エンジン等を収容するエンジンルーム18と、を含む。
【0022】
前記作業装置14は、ブーム20、アーム22及びバケット24を含む。
【0023】
前記ブーム20は、上部旋回体12の前端に起伏可能すなわち水平軸を中心として上方向及び下方向にそれぞれ回動可能となるように支持される基端部と、その反対側の先端部と、を有する。前記アーム22は、前記ブーム20の先端部に水平軸を中心としてアーム引き方向及びアーム押し方向に回動可能に取付けられる基端部と、その反対側の先端部と、を有する。前記アーム引き方向は、前記アーム22の前記先端部が後退するように前記アーム22が前記ブーム20に近づく回動方向であり、前記アーム押し方向は前記アーム引き方向と逆の回動方向である。前記バケット24は、前記アーム22の前記先端部に水平軸回りに回動可能に取付けられる。
【0024】
前記油圧ショベルは、前記作業装置14を油圧により動かすための複数の作業アクチュエータと、前記上部旋回体12を油圧により旋回させるための旋回モータ30と、をさらに備える。
【0025】
前記油圧ショベルは、前記ブーム20、前記アーム22及び前記バケット24をそれぞれ動かすための複数の作業アクチュエータ、すなわち、ブームシリンダ26、アームシリンダ27及びバケットシリンダ28をさらに備える。これらのシリンダ26~28のそれぞれは、作動油の供給を受けることにより伸縮動作する油圧シリンダにより構成される。前記ブームシリンダ26は、当該ブームシリンダ26の伸縮に伴なって前記ブーム20が起伏するように、つまりブーム上げ方向及びブーム下げ方向にそれぞれ回動するように、当該ブーム20と前記上部旋回体12とに連結される。前記アームシリンダ27は、当該アームシリンダ27の伸縮に伴なって前記アーム22が前記アーム引き方向及び前記アーム押し方向にそれぞれ回動するように当該アーム22と前記ブーム20とに連結される。前記バケットシリンダ28は、当該バケットシリンダ28の伸縮により前記バケット24が回動するように前記アーム22と前記バケット24とに連結される。
【0026】
前記旋回モータ30は、出力軸を有する油圧モータにより構成され、当該出力軸が図略の減速機を介して前記上部旋回体12に連結されている。前記旋回モータ30は、後に詳述するように、作動油の供給を受けることによりその供給の方向に対応した方向に前記出力軸が回転するように動作し、これにより、前記上部旋回体12を左旋回方向及び右旋回方向の双方向に旋回させることが可能である。
【0027】
前記油圧ショベルは、前記上部旋回体12に搭載される油圧回路をさらに備える。当該油圧回路は、
図2に示される部分、すなわち前記上部旋回体12の旋回及び前記アーム22の回動を生じさせるための部分、を含む。この部分は、前記アームシリンダ27及び前記旋回モータ30に加え、メインポンプ32と、パイロットポンプ34と、旋回操作器36と、アーム操作器38と、旋回制御弁40と、アーム制御弁42と、を含む。
【0028】
前記メインポンプ32及び前記パイロットポンプ34は、いずれも前記エンジンによって駆動され、これによりタンク内の油を吐出する。前記メインポンプ32は、前記アームシリンダ27及び前記旋回モータ30の双方に接続されてこれらに供給されるべき作動油を吐出する油圧ポンプである。前記パイロットポンプ34は、前記タンク内の作動油をパイロット油として吐出し、これにより、前記旋回操作器36及び前記アーム操作器38をそれぞれ通じて前記旋回制御弁40及び前記アーム制御弁42に供給されるべきパイロット圧を生成する。
【0029】
この実施形態に係る前記メインポンプ32は可変容量型油圧ポンプであり、レギュレータに接続されている。当該レギュレータは、例えば電磁式減圧弁からなるポンプ容量操作弁33を含み、前記メインポンプ32の容量が前記ポンプ容量操作弁33のソレノイド33aに入力される容量指令信号に対応した容量になるように当該メインポンプ32を操作する。前記パイロットポンプ34は、前記レギュレータにもポンプ容量操作のためのパイロット圧を供給するように前記ポンプ容量操作弁33に接続されている。
【0030】
前記アームシリンダ27は、シリンダ本体44と、ピストン46と、シリンダロッド48と、を含む。前記シリンダ本体44はシリンダ室を囲む。前記ピストン46は前記シリンダ室内に装填されて当該シリンダ室をへッド側室27aとロッド側室27bとに区画する。前記シリンダロッド48は前記ピストン46から前記ロッド側室27bを貫通するように延びて前記シリンダ本体44の外部に突出する。前記へッド側室27aに作動油が供給されることにより前記ピストン46及び前記シリンダロッド48が前進して前記アームシリンダ27全体が伸長し、これにより前記アーム22を前記アーム引き方向に回動させる一方、前記ロッド側室27b内の作動油が排出される。逆に前記ロッド側室27bに作動油が供給されることにより前記ピストン46及び前記シリンダロッド48が後退して前記アームシリンダ27全体が収縮し、これにより前記アーム22を前記アーム押し方向に回動させる一方、前記へッド側室27a内の作動油が排出される。
【0031】
前記旋回モータ30の前記出力軸は、前記上部旋回体12を左旋回方向及び右旋回方向の双方に旋回させるように当該上部旋回体12に連結されている。前記旋回モータ30は、一対の第1ポート30a及び第2ポート30bを有し、そのうちの一方のポートへの作動油の供給を受けることにより当該一方のポートに対応する方向に前記出力軸が回転して当該方向に前記上部旋回体12を旋回させるとともに他方のポートから前記作動油を排出する。この実施形態では、前記第1ポート30aに作動油が供給されることにより、前記第2ポート30bからの作動油の排出を伴いながら、前記旋回モータ30の出力軸が前記上部旋回体12を右旋回方向に旋回させるように回転する。逆に、前記第2ポート30bに作動油が供給されることにより、前記第1ポート30aからの作動油の排出を伴いながら、前記旋回モータ30の出力軸が前記上部旋回体12を左旋回方向に旋回させるように回転する。
【0032】
前記旋回制御弁40及び前記アーム制御弁42のそれぞれは油圧パイロット切換弁からなり、前記パイロットポンプ34からのパイロット圧の供給を受けることによりそのパイロット圧の大きさに応じたストロークで開弁方向に作動する。従って、前記旋回制御弁40は前記パイロット圧に対応した流量で前記旋回モータ30の前記第1及び第2ポート30a,30bのいずれかに作動油が供給されることを許容し、前記アーム制御弁42は前記パイロット圧に対応した流量で前記アームシリンダ27の前記へッド側室27aまたはロッド側室27bのいずれかに作動油が供給されることを許容する。
【0033】
前記油圧回路は、前記メインポンプ32から吐出される作動油の流路として、センターバイパスライン50と、パラレル供給ラインと、を含む。
【0034】
前記センターバイパスライン50は前記メインポンプ32の吐出口からタンクに至るように配置され、当該センターバイパスライン50に沿って直列に並ぶように前記旋回制御弁40及び前記アーム制御弁42が配置される。当該センターバイパスライン50は、後述のように、前記旋回モータ30及び前記アームシリンダ27のそれぞれから排出された排出作動油をタンクまで導く戻りラインを含む。
【0035】
前記パラレル供給ラインは、前記メインポンプ32から吐出される作動油が前記旋回制御弁40と前記アーム制御弁42とにパラレルに供給されることを許容するラインであり、旋回供給ライン52とアーム供給ライン54とを含む。前記旋回供給ライン52は前記旋回制御弁40の上流側の位置で前記センターバイパスライン50から分岐して当該旋回制御弁40の入口ポートに至る。前記アーム供給ライン54は前記アーム制御弁42の上流側及び下流側のそれぞれの位置で前記センターバイパスライン50から分岐して当該アーム制御弁42の入口ポートに至る。
【0036】
前記旋回制御弁40は、前記旋回モータ30に供給されるべき作動油を前記メインポンプ32から前記旋回モータ30の第1及び第2ポート30a,30bの一方に選択的に導くとともに当該第1及び第2ポート30a,30bの他方から排出される作動油をタンクに導くための流路を形成し、かつ、当該流路の開口面積を変化させるように、開閉動作をする。このように、当該旋回制御弁40は、前記旋回モータ30に供給される作動油の方向すなわち旋回方向と当該作動油の流量すなわち旋回流量を制御する弁である。
【0037】
前記旋回制御弁40は、3位置のパイロット切換弁であり、第1旋回パイロットポート40a及び第2旋回パイロットポート40bを有する。
【0038】
旋回制御弁40は、前記第1及び第2旋回パイロットポート40a,40bにそれぞれ供給されるパイロット圧、すなわち第1旋回パイロット圧及び第2旋回パイロット圧、がいずれも0または微小である場合は中立位置56Nに保たれ、前記メインポンプ32と前記旋回モータ30との間を遮断するとともに前記センターバイパスライン50を全開にする。
【0039】
前記旋回制御弁40は、前記第1旋回パイロットポート40aに一定以上の前記第1旋回パイロット圧が供給されると当該第1旋回パイロット圧の大きさに対応したストロークで前記中立位置56Nから第1旋回位置56Aにシフトし、この第1旋回位置56Aでは前記メインポンプ32からの作動油が前記ストロークに対応した流量で前記旋回モータ30の前記第1ポート30aに供給されるのを許容するような流路を形成する。より具体的に、前記旋回制御弁40は、前記旋回供給ライン52と前記第1ポート30aにつながる第1ポートライン58Aとを接続するとともに前記センターバイパスライン50を前記ストロークに対応して絞り、これにより前記旋回モータ30を前記ストロークに対応する速度で前記第1ポート30aに対応する方向、例えば右旋回方向、に作動させるとともに、前記第2ポート30bにつながる第2ポートライン58Bを通じて排出される排出作動油を前記センターバイパスライン50に流す。
【0040】
逆に、前記旋回制御弁40は、前記第2旋回パイロットポート40bに一定以上の前記第2旋回パイロット圧が供給されると当該第2旋回パイロット圧の大きさに対応したストロークで前記中立位置56Nから第2旋回位置56Bにシフトし、この第2旋回位置56Bでは前記メインポンプ32からの作動油が前記ストロークに対応した流量で前記旋回モータ30の前記第2ポート30bに供給されるのを許容する流路を形成する。より具体的に、前記旋回制御弁40は、前記旋回供給ライン52と前記第2ポート30bにつながる第2ポートライン58Bとを接続するとともに前記センターバイパスライン50を前記ストロークに対応して絞り、これにより前記旋回モータ30を前記ストロークに対応する速度で前記第2ポート30bに対応する方向、例えば左旋回方向、に作動させるとともに、前記第1ポート30aにつながる前記第1ポートライン58Aを通じて排出される排出作動油を前記センターバイパスライン50に流す。
【0041】
前記アーム制御弁42は、前記アームシリンダ27に供給されるべき作動油を前記メインポンプ32から前記アームシリンダ27のへッド側室27a及びロッド側室27bの一方に選択的に導くとともに他方から排出される作動油をセンターバイパスライン50に導くための流路を形成し、かつ、当該流路の開口面積を変化させるように、開閉動作をする。このように、当該旋回制御弁40は、前記アームシリンダ27に供給される作動油の方向すなわちアーム伸縮方向と当該作動油の流量すなわちアーム流量を制御する弁である。
【0042】
前記アーム制御弁42は、3位置のパイロット切換弁であり、一対のアーム引きパイロットポート42a及びアーム押しパイロットポート42bを有する。
【0043】
前記アーム制御弁42は、前記アーム引きパイロットポート42a及び前記アーム押しパイロットポート42bにそれぞれ供給されるパイロット圧、すなわちアーム引きパイロット圧及びアーム押しパイロット圧、がいずれも0または微小である場合は中立位置60Nに保たれ、前記メインポンプ32と前記アームシリンダ27との間を遮断して前記センターバイパスライン50を開通することにより前記メインポンプ32からの作動油をそのままタンクに逃がす。
【0044】
前記アーム制御弁42は、前記アーム引きパイロットポート42aに一定以上の前記アーム引きパイロット圧が供給されると当該アーム引きパイロット圧の大きさに対応したストロークで前記中立位置60Nからアーム引き位置60Aにシフトし、このアーム引き位置60Aでは前記メインポンプ32からの作動油が前記ストロークに対応した流量で前記アームシリンダ27のへッド側室27aに供給されるのを許容するとともに当該アームシリンダ27のロッド側室27bから排出される排出作動油がタンクに戻るのを許容する流路を形成する。具体的に、前記アーム制御弁42は、前記アーム供給ライン54と前記へッド側室27aにつながるヘッド側室ライン61Aとを接続するとともに前記ロッド側室27bにつながるロッド側室ライン61Bを前記センターバイパスライン50に合流するアーム引き戻りライン62Aに接続し、これにより、前記アームシリンダ27を前記ストロークに対応する速度で伸長させて前記アーム22をアーム引き方向に回動させるとともに当該アームシリンダ27からの排出作動油を前記センターバイパスライン50に流す。
【0045】
逆に、前記アーム制御弁42は、前記アーム押しパイロットポート42bに一定以上の前記アーム押しパイロット圧が供給されると当該アーム押しパイロット圧の大きさに対応したストロークで前記中立位置60Nからアーム押し位置60Bにシフトし、このアーム押し位置60Bでは前記メインポンプ32からの作動油が前記ストロークに対応した流量で前記アームシリンダ27の前記ロッド側室27bに供給されるのを許容するとともに当該アームシリンダ27の前記へッド側室27aから排出された排出作動油がタンクに戻るのを許容する流路を形成する。より具体的に、前記アーム制御弁42は、前記アーム供給ライン54と前記ロッド側室ライン61Bとを接続するとともに前記へッド側室ライン61Aを前記センターバイパスライン50に合流するアーム押し戻りライン62Bに接続し、これにより、前記アームシリンダ27を前記ストロークに対応する速度でアーム押し方向に収縮させて前記アーム22をアーム押し方向に回動させるとともに当該アームシリンダ27からの排出作動油を前記センターバイパスライン50に流す。
【0046】
このように、前記センターバイパスライン50は、前記旋回モータ30及び前記アームシリンダ27のそれぞれから前記旋回制御弁40及び前記アーム制御弁42を通じて排出される排出作動油をタンクに戻すライン、すなわち戻りライン、を含む。
【0047】
前記旋回操作器36は、旋回レバー36aと旋回パイロット弁36bとを含む。当該旋回操作器36は、前記旋回レバー36aがオペレータにより操作されることが可能となるように前記キャブ16内に設けられる。
【0048】
前記旋回レバー36aは、旋回操作部であり、当該旋回操作部は、前記旋回モータ30を動かして前記上部旋回体12を旋回させるための旋回操作がオペレータにより与えられる部分である。当該旋回レバー36aは、当該旋回レバー36aの基端部を中心として回動可能となるように前記旋回パイロット弁36bに連結される。前記旋回操作は、前記旋回レバー36aを回動させる操作、具体的には、前記上部旋回体12を右旋回方向に旋回させるために前記旋回レバー36aを一方向に回動させる右旋回操作、または前記上部旋回体12を左旋回方向に旋回させるために前記旋回レバー36aを前記一方向と反対の方向に回動させる左旋回操作、である。
【0049】
前記旋回パイロット弁36bは、前記パイロットポンプ34とともに旋回指令部を構成する。当該旋回指令部は、前記旋回レバー36aに与えられた前記旋回操作に対応した方向に前記旋回モータ30を作動させる方向の開閉動作を前記旋回制御弁40に行わせる。具体的に、前記旋回パイロット弁36bは、前記パイロットポンプ34に接続される入口ポートと、一対の出口ポートと、を有し、当該一対の出口ポートは第1旋回パイロットライン37A及び第2旋回パイロットライン37Bをそれぞれ介して前記旋回制御弁40の前記第1旋回パイロットポート40a及び前記第2旋回パイロットポート40bにそれぞれ接続されている。前記旋回パイロット弁36bは、前記旋回レバー36aに前記旋回操作が実質上与えられず当該旋回レバー36aが中立位置にあるとき、つまり当該旋回操作の大きさが実質上0である中立状態にあるとき、は前記パイロットポンプ34と前記第1及び第2旋回パイロットポート40a,40bとの間を遮断する閉弁状態を保つ。前記旋回パイロット弁36bは、前記旋回レバー36aが前記中立位置から回動操作されると、つまり当該旋回レバー36aに旋回操作が与えられると、前記第1及び第2旋回パイロットポート40a,40bのうち前記旋回操作の方向に対応するパイロットポートに対して当該旋回操作の大きさに対応した大きさをもつ旋回パイロット圧が前記パイロットポンプ34から供給されるのを許容するように、当該旋回操作に応じて開弁動作する。これにより、前記旋回制御弁40は前記旋回レバー36aに与えられる前記旋回操作の方向に対応した方向に当該旋回操作の大きさに対応したストロークで開弁動作する。
【0050】
前記アーム操作器38は、アームレバー38aとアームパイロット弁38bとを含む。当該アーム操作器38は、前記アームレバー38aがオペレータにより操作されることが可能となるように前記キャブ16内に設けられる。
【0051】
前記アームレバー38aは、アーム操作部であり、当該アーム操作部は、前記アームシリンダ27を伸縮させて前記アーム22を回動させるためのアーム操作がオペレータにより与えられる部分である。当該アームレバー38aは、当該アームレバー38aの基端部を中心として回動可能となるように前記アームパイロット弁38bに連結される。前記アーム操作は、前記アームレバー38aを回動させる操作、具体的には、前記アーム22をアーム引き方向に回動させるために前記アームレバー38aを一方向に回動させるアーム引き操作、または前記アーム22をアーム押し方向に回動させるために前記アームレバー38aを前記一方向と反対の方向に回動させるアーム押し操作、である。
【0052】
前記アームパイロット弁38bは、前記パイロットポンプ34とともにアーム指令部を構成する。当該アーム指令部は、前記アームレバー38aに与えられた前記アーム操作に対応した方向に前記アームシリンダ27を作動させる方向の開閉動作を前記アーム制御弁42に行わせる。具体的に、前記アームパイロット弁38bは、前記パイロットポンプ34に接続される入口ポートと、一対の出口ポートと、を有し、当該一対の出口ポートはアーム引きパイロットライン39A及びアーム押しパイロットライン39Bをそれぞれ介して前記アーム制御弁42の前記アーム引きパイロットポート42a及び前記アーム押しパイロットポート42bにそれぞれ接続されている。前記アームパイロット弁38bは、前記アームレバー38aに前記アーム操作が実質上与えられず当該アームレバー38aが中立位置にあるとき、つまり当該アーム操作の大きさが実質上0である中立状態にあるとき、は前記パイロットポンプ34と前記アーム引き及びアーム押しパイロットポート42a,42bとの間を遮断する閉弁状態を保つ。前記アームパイロット弁38bは、前記アームレバー38aが前記中立位置から回動操作されると、つまり当該アームレバー38aにアーム操作が与えられると、前記アーム引き及びアーム押しパイロットポート42a,42bのうち前記アーム操作の方向に対応するパイロットポートに対して当該アーム操作の大きさに対応した大きさをもつパイロット圧が前記パイロットポンプ34から供給されるのを許容するように、当該アーム操作に応じて開弁動作する。これにより、前記アーム制御弁42は前記アームレバー38aに与えられる前記アーム操作の方向に対応した方向に当該アーム操作の大きさに対応したストロークで開弁動作する。
【0053】
前記油圧回路は、作動油補給ラインであるメイクアップライン64をさらに含む。当該メイクアップライン64は、前記上部旋回体12が慣性旋回動作をしているときに前記旋回モータ30の第1及び第2ポート30a,30bのうちの吸込み側ポートに作動油を補給してキャビテーションを抑止するための流路である。
【0054】
前記慣性旋回動作は、前記上部旋回体12の慣性により当該上部旋回体12が前記旋回操作に対応する方向と異なる方向に旋回する動作である。当該慣性旋回動作は、例えば、前記旋回レバー36aに与えられている前記旋回操作が前記上部旋回体12を左旋回方向(または右旋回方向)に旋回させるための操作であるにもかかわらず当該上部旋回体12が右旋回方向(または左旋回方向)に旋回している動作であり、あるいは、前記旋回レバー36aが中立位置に戻されている(つまり旋回操作の大きさが実質上0である中立状態にある)にもかかわらず前記上部旋回体12が旋回を続ける動作である。
【0055】
このような慣性旋回動作が行われていると、当該慣性旋回動作の方向と同じ方向に回転する前記旋回モータ30の実際の吸込み側の圧力が著しく低下する。なぜならば、前記旋回レバー36aには前記慣性旋回動作の方向と逆の方向の旋回操作が与えられ、あるいは当該旋回レバー36aが中立位置にあるために、前記旋回制御弁40は前記旋回モータ30の実際の吸込み側ポートへの作動油の供給をブロックするからである。例えば、前記旋回レバー36aが急に回動操作されて当該旋回レバー36aに与えられている旋回操作が前記上部旋回体12を右旋回方向に旋回させる方向の旋回操作から当該上部旋回体12を左旋回方向に旋回させる方向の旋回操作に切換わった場合、当該旋回操作の方向の切換わりにより前記旋回制御弁40は例えばそれまでの第1旋回位置56Aから第2旋回位置56Bに切換わり、これにより前記旋回モータ30の第1ポート30aをメインポンプ32から遮断するが、前記上部旋回体12はその大きな慣性によってしばらくは右旋回方向への旋回動作すなわち前記慣性旋回動作を続ける。このことは、前記旋回制御弁40の切換わりにかかわらず前記旋回モータ30が前記第1ポート30aが吸込み側ポートとなる方向に回転し続けることを生じさせる。このようにして、前記慣性旋回動作は、当該吸込み側ポートである前記第1ポート30aにつながる前記第1ポートライン58Aにおける圧力を低下させてキャビテーションを生じさせるおそれがある。
【0056】
前記メイクアップライン64は、このようなキャビテーションを抑止すべく、前記センターバイパスライン50を流れる戻り作動油を前記旋回モータ30の吸込み側ポートに補給するように、配置される。具体的に、当該メイクアップライン64は、前記センターバイパスライン50に設定された分岐点51から第1旋回チェック弁66A及び第2旋回チェック弁66Bをそれぞれ介して前記第1ポートライン58A及び第2ポートライン58Bに至るように、配置される。前記分岐点51は、前記タンクに近い位置であってかつ当該タンク内の圧力よりも圧力の高い位置に設定される。前記第1及び第2旋回チェック弁66A,66Bは、それぞれ、前記第1及び第2ポートライン58A,58Bから前記センターバイパスライン50への逆流を阻止するように配置される。また、この実施形態では、前記第1及び第2旋回チェック弁66A,66Bよりも前記センターバイパスライン50に近い位置で前記メイクアップライン64と前記第1及び第2ポートライン58A,58Bとの間にそれぞれ第1旋回リリーフ弁68A及び第2旋回リリーフ弁68Bが介在し、前記第1及び第2ポートライン58A,58Bのうち前記旋回モータ30の吐出側ポートにつながるラインの圧力が一定以上になったときに前記第1及び第2旋回リリーフ弁68A,68Bのうち当該ラインに対応する旋回リリーフ弁が開弁して当該ラインから他方のラインすなわち吸込み側のラインに作動油が補給されることを許容する。
【0057】
前記分岐点51は、当該分岐点51における圧力と前記吸込み側ポートにつながるポートラインの圧力との差によって前記センターバイパスライン50を通じての戻り作動油が補給されることが可能となる位置に設定される。この実施形態では、前記分岐点51とタンクとの間に背圧弁53が配置され、これにより、前記分岐点51にタンク圧よりも適度に高い圧力(背圧)が与えられている。この背圧弁53は必須ではなく、例えば前記分岐点51からタンクに至るまでの配管の流路抵抗によって前記背圧が確保されてもよい。
【0058】
前記油圧回路は、再生回路70をさらに含む。当該再生回路70は、前記アーム22を前記アーム引き方向に動かすように前記アームシリンダ27が伸長しているときに当該アームシリンダ27の前記ロッド側室27bから排出される排出作動油の一部が前記へッド側室27aに再供給されることを可能にし、これにより、当該アームシリンダ27の伸長動作の増速を可能にする。このような再生動作は、前記旋回操作と前記アーム引き操作とが同時に行われているときに、前記メインポンプ32から吐出される作動油のうち前記アームシリンダ27に供給される作動油の量を減らして前記上部旋回体12の旋回駆動が優先されることを可能にする。
【0059】
前記再生回路70は、具体的に、再生流路71と、再生切換弁72と、再生操作弁74と、を含む。
【0060】
前記再生流路71は、この実施形態では、前記アーム引き位置60Aにシフトされたときの前記アーム制御弁42によって形成される。具体的に、当該再生流路71は、前記アーム引き位置60Aにおける正規の戻り流路60a、すなわち、前記アーム引き動作において前記アームシリンダ27の前記ロッド側室27bから前記ロッド側室ライン61Bを通じて前記アーム制御弁42に戻される排出作動油を前記アーム引き戻りライン62Aに導く流路、とは別に、前記排出作動油の一部を前記アームシリンダ27の前記へッド側室27aにつながる前記へッド側室ライン61Aに導く流路である。
【0061】
前記再生切換弁72は、再生位置76Rと再生解除位置76Cとを有する切換弁であり、この実施形態では再生パイロットポート72aを有する2位置油圧切換弁により構成される。前記再生パイロットポート72aは、再生パイロットライン73を介して前記パイロットポンプ34に接続される。前記再生切換弁72は、前記パイロットポンプ34から前記再生パイロットライン73を通じて前記再生パイロットポート72aに再生パイロット圧が供給されると前記再生位置76Rに切換えられ、当該再生パイロットポート72aに当該再生パイロット圧が供給されないときは前記再生解除位置76Cに保たれる。
【0062】
前記再生切換弁72は、前記再生位置76Rに切換えられたときは前記アーム引き戻りライン62Aの途中に絞りを与えて当該アーム引き戻りライン62Aを流れる前記排出作動油の流量すなわちアーム引き戻り流量を制限する。このことは、前記ロッド側室ライン61Bを通じて前記アーム制御弁42に流れ込む排出作動油の一部が前記戻り流路60aではなく前記再生流路71に流れて前記アームシリンダ27の前記へッド側室27aに再供給されることを生じさせる、つまり、前記再生回路70を再生状態すなわち前記再生動作を行う状態にする。
【0063】
一方、前記再生切換弁72は、前記再生解除位置76Cに保たれているときは前記アーム引き戻りライン62Aを全開にして前記アーム引き戻り流量の制限を解除する。このことは、前記アーム引き戻りライン62Aにおける圧力を前記へッド側室ライン61Aにおける圧力よりも十分低くして前記排出作動油の略全量が前記再生流路71ではなく前記戻り流路60aに流れることを生じさせる、つまり、前記再生回路70を再生解除状態にする。
【0064】
前記再生操作弁74は、前記再生パイロットライン73の途中に設けられ、当該再生パイロットライン73を通じて前記再生パイロットポート72aへの前記再生パイロット圧の入力をオンオフさせるように動作する。前記再生操作弁74は、ソレノイド74aを有する電磁式減圧弁により構成され、前記再生パイロット圧の入力を通じての前記再生動作の電子制御を可能にする。具体的に、前記再生操作弁74は、前記ソレノイド74aに再生指令信号が入力されないときは閉弁して前記パイロットポンプ34から前記再生パイロットポート72aへの前記再生パイロット圧の供給を遮断する一方、前記ソレノイド74aに前記再生指令信号が入力されると開弁して前記パイロットポンプ34から前記再生パイロットポート72aへの前記再生パイロット圧の供給を許容する。
【0065】
この実施の形態に係る油圧ショベルは、
図2及び
図3に示される複数のセンサ及びコントローラ90をさらに備える。前記コントローラ90は、
図2に示される油圧回路に接続されて前記再生動作の制御及び前記メインポンプ32のポンプ量の制御を行う。前記複数のセンサは、前記コントローラ90による制御を可能にするために必要な情報を取得して当該コントローラ90に与えるものであり、旋回動作センサ80、第1旋回パイロット圧センサ82A、第2旋回パイロット圧センサ82B、アーム引きパイロット圧センサ84及びポンプ圧センサ86を含む。
【0066】
前記旋回動作センサ80は、前記上部旋回体12の実際の旋回動作を検出する旋回動作検出器である。当該旋回動作検出器は、少なくとも前記旋回動作の方向である旋回動作方向を特定することが可能なものであればよい。前記旋回動作センサ80は、例えば、ジャイロセンサ(角速度センサ)またはポテンショメータである。
【0067】
前記第1及び第2旋回パイロット圧センサ82A,82Bは、旋回操作方向を検出する旋回操作検出器を構成する。前記旋回操作方向は、前記旋回操作器36に与えられる前記旋回操作の方向である。具体的に、前記第1旋回パイロット圧センサ82Aは、前記第1旋回パイロットライン37Aに接続され、当該第1旋回パイロットライン37Aを通じて前記旋回制御弁40の前記第1旋回パイロットポート40aに供給される前記第1旋回パイロット圧を検出する。同様に、前記第2旋回パイロット圧センサ82Bは、前記第2旋回パイロットライン37Bに接続され、当該第2旋回パイロットライン37Bを通じて前記旋回制御弁40の前記第2旋回パイロットポート40bに供給される前記第2旋回パイロット圧を検出する。前記第1及び第2旋回パイロット圧センサ82A,82Bは、それぞれ圧力センサにより構成され、前記第1及び第2旋回パイロット圧を電気信号すなわち第1及び第2旋回パイロット圧検出信号に変換して前記コントローラ90に入力する。
【0068】
前記アーム引きパイロット圧センサ84は、前記アーム操作器38に与えられる前記アーム引き操作を検出するアーム引き操作検出器である。具体的に、当該アーム引きパイロット圧センサ84は、前記アーム引きパイロットライン39Aに接続され、当該アーム引きパイロットライン39Aを通じて前記アーム操作器38から前記アーム制御弁42の前記アーム引きパイロットポート42aに供給される前記アーム引きパイロット圧を検出する。当該アーム引きパイロット圧センサ84は、圧力センサにより構成され、前記アーム引きパイロット圧を電気信号すなわちアーム引きパイロット圧検出信号に変換して前記コントローラ90に入力する。
【0069】
前記ポンプ圧センサ86は、前記メインポンプ32から吐出される作動油の圧力であるポンプ圧を検出する。具体的に、前記ポンプ圧センサ86は、前記メインポンプ32の吐出口につながるポンプラインに接続される。当該ポンプ圧センサ86は、圧力センサにより構成され、前記ポンプ圧を電気信号すなわちポンプ圧検出信号に変換して前記コントローラ90に入力する。当該ポンプ圧センサ86は、メインポンプ32のポンプ容量制御が行われない場合、例えば当該メインポンプ32が固定容量型油圧ポンプである場合、は適宜省略されることが可能である。
【0070】
前記コントローラ90は、前記再生動作及び前記ポンプ容量の制御を行うための機能として、
図3に示すような旋回動作判定部92、再生指令部94及びポンプ容量指令部96を含む。
【0071】
前記旋回動作判定部92は、前記旋回動作センサ80並びに前記第1及び第2旋回パイロット圧センサ82A,82Bから入力される検出信号に基づいて、前記上部旋回体12が前記慣性旋回動作をしているか否かの判定を行うものであり、当該センサ80,82A,82Bとともに慣性旋回動作検出部を構成する。
【0072】
前記旋回動作判定部92は、前記旋回動作センサ80により検出される前記旋回動作方向と、前記第1及び第2旋回パイロット圧センサ82A,82Bにより検出される第1及び第2旋回パイロット圧により特定される前記旋回操作方向と、の関係が予め設定された慣性旋回動作判定条件に該当する場合にのみ、前記上部旋回体12が前記慣性旋回動作をしていると判定する。すなわち、当該慣性旋回動作判定条件は、前記上部旋回体12が前記慣性旋回動作をしていると判定するために設定された条件である。
【0073】
この実施形態に係る前記慣性旋回動作判定条件は、複数の要件、すなわち逆操作要件及び中立要件、を含んでおり、前記旋回動作判定部92は当該逆操作要件及び当該中立要件のいずれかが充足された場合に前記上部旋回体が前記慣性旋回動作をしていると判定する。前記逆操作要件は、前記旋回動作方向が前記旋回操作方向に対応する方向と逆であるという要件であり、前記中立要件は、前記旋回操作が中立状態にあるにもかかわらず前記上部旋回体12が旋回動作をしているという要件である。
【0074】
前記再生指令部94は、前記再生操作弁74の前記ソレノイド74aに適宜前記再生指令信号を入力することにより、前記再生回路70を前記再生状態と前記再生解除状態とに切換える。当該再生指令部94は、原則として、前記アームシリンダ27による前記アームシリンダ27の駆動状態が予め設定された再生動作条件に該当する場合には前記再生操作弁74に前記再生指令信号を入力して前記再生切換弁72を前記再生位置76Rに切換え、前記アームシリンダ27の駆動状態が前記再生動作条件に該当しない場合には前記再生指令信号の入力を停止して前記再生切換弁72を前記再生解除位置76Cに切換える。このように、前記再生指令部94は、アームシリンダ27の駆動状態に応じて前記再生切換弁72の位置の切換を行うことにより前記再生回路70を前記再生状態と前記再生解除状態とに切換える再生制御部を構成する。
【0075】
前記再生動作条件は、少なくとも一つの判定要件を含み、当該少なくとも一つの判定要件は、前記アームレバー38aにアーム引き操作、すなわち前記アーム22を前記アーム引き方向に動かすための操作、が与えられるという基本判定要件として含む。当該再生動作条件は、当該基本判定要件のみを含んでもよいし、当該基本判定要件に加えて他の少なくとも一つの付加的判定要件を含んでもよい。つまり、当該再生動作条件は、当該基本判定要件と当該付加的判定要件との双方が充足されるという条件であってもよい。例えば、前記少なくとも一つの付加的判定要件は、例えば次のような判定要件1,2の少なくとも一つを含むことができる。
【0076】
判定要件1:前記アーム引き操作に加え、前記旋回レバー36aに旋回操作が与えられていること。すなわち、前記アーム引き方向と前記旋回操作とが同時に行われる複合操作が行われていること。この要件は、前記再生動作による旋回優先効果、つまり前記メインポンプ32から前記アームシリンダ27に供給される作動油の量を減らして前記旋回モータ30に供給される作動油の量を増やす効果、を重視するものである。
【0077】
判定要件2:前記アームシリンダ27の駆動の負荷が一定以下であること。例えば、当該アームシリンダ27の伸長動作が前記アーム22及び前記バケット24の自重による降下によるものであること。この要件は、前記再生動作が低負荷時に有効であることを考慮したものである。前記再生動作は、前記アームシリンダ27の伸長動作を増速する反面、ロッド側室27bの圧力の上昇を伴うものであるから、アームシリンダ27の駆動負荷が低い場合に有効である。この判定要件2の充足の判断は例えば前記ポンプ圧センサ86により検出されるポンプ圧に基づいて行われることが可能である。
【0078】
前記再生指令部94は、さらに、その特徴として、前記上部旋回体12が前記慣性旋回動作をしていると前記旋回動作判定部92が判定した場合、つまり前記慣性旋回動作が検出された場合、には、前記アームシリンダ27の駆動状態が前記再生動作条件に該当するか否かにかかわらず、前記再生操作弁74への前記再生指令信号の入力を停止して前記再生切換弁72を前記再生解除位置76Cに保持するように、構成されている。
【0079】
次に、前記コントローラ90が実際に行う演算制御動作を、
図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0080】
前記コントローラ90の前記再生指令部94は、前記アーム引きパイロット圧センサ84等から入力される検出信号に基づき、現在の前記アームシリンダ27の駆動状態が前記再生動作条件に該当するか否かを判定する(ステップS10)。当該駆動状態が当該再生動作条件に該当しない場合(ステップS10でNO)、前記再生指令部94は再生指令を行わない(ステップS12)。具体的に、当該再生指令部94は、前記再生操作弁74への再生指令信号の入力を停止し、前記再生切換弁72を前記再生解除位置76Cにして前記再生回路70を前記再生解除状態に保つ。
【0081】
前記駆動状態が前記再生動作条件に該当する場合(ステップS10でYES)、前記コントローラ90の前記旋回動作判定部92が前記慣性旋回動作判定条件についての判定を行う。
【0082】
まず、当該旋回動作判定部92は、前記上部旋回体12が旋回動作をしているか否かを判定する(ステップS14)。当該上部旋回体12が旋回動作をしていない場合、つまり当該上部旋回体12が停止している場合(ステップS14でNO)、前記慣性旋回動作条件には明らかに該当しないため、前記旋回動作判定部92は前記上部旋回体12が前記慣性旋回動作をしていないと判定し、その判定結果に基づき、前記再生指令部94は、前記再生操作弁74に再生指令信号を入力して(ステップS16)前記再生回路70を前記再生状態に切換える。
【0083】
なお、このステップS14に係る判定は、前記再生動作条件が前記判定要件1すなわち「旋回レバー36aに旋回操作が与えられている」という要件を含んでいる場合には不要である。当該判定は既に前記ステップS10で行われることになるからである。
【0084】
前記上部旋回体12が旋回動作中である場合(ステップS14でYES)、前記旋回動作判定部92は、前記上部旋回体12が旋回動作をしているにもかかわらず前記旋回操作が中立である(つまり旋回レバー36aが中立位置にある)という要件、または前記上部旋回体12の旋回動作の方向が前記旋回操作に対応する方向と逆であるという要件を充足しているか否かを判定する(ステップS17,S18)。いずれの要件も充足しない場合(ステップS17,S18のそれぞれにおいてNO)、前記上部旋回体12の旋回動作はこの実施形態における前記慣性旋回動作判定条件に該当しないため、前記旋回動作判定部92は前記上部旋回体12が慣性旋回動作をしていないと判定し、この判定結果に基づいて前記再生指令部94は前記再生操作弁74への再生指令信号の入力を行う。
【0085】
これに対して前記要件のいずれかが充足される場合(ステップS17でYESまたはステップS18でYES)、前記旋回動作判定部92は前記上部旋回体12が慣性旋回動作をしていると判定し、この判定結果に基づいて、前記再生指令部94は、前記駆動状態が前記慣性旋回動作に該当しているにもかかわらず前記再生指令信号の入力を解除して前記再生回路70を前記再生解除状態にする(ステップS12)。このことは、前記再生動作の実行が前記メイクアップライン64を通じての前記旋回モータ30への作動油の補給を阻害することを防ぐ。仮に、前記上部旋回体12が慣性旋回動作をしている状態で前記再生動作が実行された場合、当該再生動作は前記アーム引き戻りライン62A及び前記センターバイパスライン50を通ってタンクに至る戻り作動油の流量を著しく減らすため、前記第1及び第2ポートライン58A,58Bのうち前記慣性旋回動作に起因して圧力が低下したラインに前記センターバイパスライン50から前記メイクアップライン64を通じて供給されるべき作動油の量も著しく低減し、これによりキャビテーションが有効に抑止されないおそれがある。これに対し、前記再生動作条件に該当する場合であっても前記上部旋回体12が前記慣性旋回動作をしているときに前記再生指令を解除することは、前記メイクアップライン64を通じての十分な作動油の補給によって前記キャビテーションが確実に抑止されることを可能にする。
【0086】
前記アームシリンダ27の駆動状態が前記再生動作条件に該当しているときに前記上部旋回体12が前記慣性旋回動作をしていると前記旋回動作判定部92が判定している状態から前記上部旋回体12が前記慣性旋回動作をしていないと判定する状態に移行した場合(ステップS17,S18の双方でNO)、その移行した時点で前記再生指令部94は前記再生操作弁74への再生指令信号の入力を直ちに開始する(ステップS16)。このことは、前記上部旋回体12の実際の旋回動作の方向が前記旋回操作に対応する方向と逆の方向から当該旋回操作に対応する方向に逆転した時点、つまり、当該上部旋回体12の積極的な駆動が開始される時点から直ちに前記再生動作を開始して旋回駆動を優先することを可能にし、これにより、前記上部旋回体12の旋回の加速性を高めることを可能にする。
【0087】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されない。本発明は、例えば次のような態様を含むことが可能である。
【0088】
(A)旋回操作装置及びアーム操作装置について
本発明に係る旋回操作装置及びアーム操作装置は、前記旋回パイロット弁36b及び前記アームパイロット弁38bを含むものにそれぞれ限定されない。当該旋回操作装置及び当該アーム操作装置の少なくとも一方は、オペレータにより与えられた操作に対応した電気信号を生成してコントローラに入力する電気レバー装置と、前記コントローラに含まれ、前記電気レバー装置から入力される前記電気信号に基づいてパイロット圧が旋回制御弁またはアーム制御弁のパイロットポートに与えられるようにパイロットライン中の電磁操作弁に指令信号を入力するパイロット圧指令部と、を含むものでもよい。
【0089】
(B)再生回路について
本発明に係る再生回路は、
図2に示されるような前記再生流路71を含む前記アーム制御弁42と戻り流量を制限する前記再生切換弁72との組み合わせを含む回路に限定されない。当該再生回路は、アーム制御弁とは独立した単一の再生切換弁、具体的には、アームシリンダから排出される排出作動油を当該アームシリンダに再供給するための再生流路を形成する再生位置と当該排出作動油をそのままタンクに逃がす再生解除位置とに切換可能な切換弁、を含むものであってもよい。
【0090】
また、前記再生回路は、再生状態においてアームシリンダに再供給する作動油の流量すなわち再生流量をアナログ的に調節することが可能なものでもよい。例えば、
図2に示される前記再生回路70において、前記再生切換弁72は当該再生切換弁72の前記再生パイロットポート72aに入力される再生パイロット圧の大きさに対応した再生流量で作動油がアームシリンダ27に再供給されることを許容するように開弁し、前記再生指令部94は、前記再生操作弁74に入力する前記再生指令信号の大きさを変えることにより前記再生流量を制御するように構成されてもよい。
【0091】
(C)慣性旋回動作の検出について
前記慣性旋回動作を検出するために設定される判定条件は、上部旋回体が慣性旋回動作をしているか否かの判定を行うことを可能にするものであればよい。当該条件は、例えば、旋回操作方向と旋回モータの吸込み側圧力との組み合わせにより設定されてもよい。
【符号の説明】
【0092】
10 下部走行体
12 上部旋回体
14 作業装置
20 ブーム
22 アーム
24 バケット
27 アームシリンダ
30 旋回モータ
32 メインポンプ(油圧ポンプ)
36 旋回操作器
36a 旋回レバー(旋回操作部)
36b 旋回パイロット弁(旋回指令部)
38 アーム操作器
38a アームレバー(アーム操作部)
38b アームパイロット弁(アーム指令部)
40 旋回制御弁
42 アーム制御弁
50 センターバイパスライン(戻りライン)
51 分岐点
64 メイクアップライン(作動油補給ライン)
70 再生回路
71 再生流路
72 再生切換弁
74 再生操作弁
80 旋回動作センサ(旋回動作検出器)
82A 第1旋回パイロット圧センサ(旋回操作検出器)
82B 第2旋回パイロット圧センサ(旋回操作検出器)
84 アーム引きパイロット圧センサ
90 コントローラ
92 旋回動作判定部
94 再生指令部(再生制御部)