(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法、制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 17/931 20200101AFI20240611BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20240611BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G01S17/931
G01S13/931
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2021100905
(22)【出願日】2021-06-17
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】孫 理天
(72)【発明者】
【氏名】松尾 清史
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-026095(JP,A)
【文献】特開2008-275400(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0128911(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0056476(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - G01S 7/64
G01S 13/00 - G01S 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ(12,2082)を有し、ホスト車両(2)のビームセンサ(20)においてターゲット車両(3)のビームセンサ(30)に対するビーム干渉を予防するための制御装置(1,2008)であって、
前記プロセッサは、
前記ホスト車両及び前記ターゲット車両のビーム照射に関連する照射関連情報(Ii)を、取得することと、
前記ホスト車両及び前記ターゲット車両間において前記ビーム干渉の発生する干渉シーン(Si)を、前記照射関連情報に基づき予測することと、
予測された前記干渉シーンにおいて前記ビーム干渉のリスクを緩和する干渉リスク制御を、前記ホスト車両に与えることと、を実行するように構成され、
前記干渉リスク制御を与えることは、
将来パス(Pf)を、前記ビーム干渉のリスクを緩和する緩和パス(Pr)へ変更するパス変更制御を、前記ホスト車両に与えることと、
前記パス変更制御の禁止される前記干渉シーンにおいて、照射タイミングが断続
され、および/または、照射方位が走査される前記ビーム照射の予定パターンを、前記ビーム干渉を緩和する緩和パターンへ変更するビーム変更制御を、前記ホスト車両に与えることと
、
前記パス変更制御及び前記ビーム変更制御の禁止される前記干渉シーンにおいて、走行速度を、前記ビーム干渉を緩和する緩和速度(Vr)へ変更する速度変更制御を、前記ホスト車両に与えることとを、含む制御装置。
【請求項2】
前記干渉リスク制御を与えることは、
予測された前記干渉シーンの開始時刻(Ti)から、前記ホスト車両において前記予定パターンの変更に必要な最小動作時間(Δt)以上、遡るように前記ビーム変更制御の開始タイミング(Tc)を設定することを、含む請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記干渉リスク制御を与えることは、
走行速度を、前記ビーム干渉を緩和する緩和速度(Vr)へ変更する速度変更制御を、前記ホスト車両に与えることを、含む請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記ターゲット車両と通信可能な前記ホスト車両に搭載される請求項1~
3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記ホスト車両及び前記ターゲット車両と通信可能なリモートセンタ(2006)を構築する請求項1~
3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
ホスト車両(2)のビームセンサ(20)においてターゲット車両(3)のビームセンサ(30)に対するビーム干渉を予防するために、プロセッサ(12,2082)により実行される制御方法であって、
前記ホスト車両及び前記ターゲット車両のビーム照射に関連する照射関連情報(Ii)を、取得することと、
前記ホスト車両及び前記ターゲット車両の間において前記ビーム干渉の発生する干渉シーン(Si)を、前記照射関連情報に基づき予測することと、
予測された前記干渉シーンにおいて前記ビーム干渉のリスクを緩和する干渉リスク制御を、前記ホスト車両に与えることと、を含み、
前記干渉リスク制御を与えることは、
将来パス(Pf)を、前記ビーム干渉のリスクを緩和する緩和パス(Pr)へ変更するパス変更制御を、前記ホスト車両に与えることと、
前記パス変更制御の禁止される前記干渉シーンにおいて、照射タイミングが断続
され、および/または、照射方位が走査される前記ビーム照射の予定パターンを、前記ビーム干渉を緩和する緩和パターンへ変更するビーム変更制御を、前記ホスト車両に与えることと
、
前記パス変更制御及び前記ビーム変更制御の禁止される前記干渉シーンにおいて、走行速度を、前記ビーム干渉を緩和する緩和速度(Vr)へ変更する速度変更制御を、前記ホスト車両に与えることとを、含む制御方法。
【請求項7】
ホスト車両(2)のビームセンサ(20)においてターゲット車両(3)のビームセンサ(30)に対するビーム干渉を予防するために記憶媒体(10,2080)に記憶され、プロセッサ(12,2082)に実行させる命令を含む制御プログラムであって、
前記命令は、
前記ホスト車両及び前記ターゲット車両のビーム照射に関連する照射関連情報(Ii)を、取得させることと、
前記ホスト車両及び前記ターゲット車両の間において前記ビーム干渉の発生する干渉シーン(Si)を、前記照射関連情報に基づき予測させることと、
予測された前記干渉シーンにおいて前記ビーム干渉のリスクを緩和する干渉リスク制御を、前記ホスト車両に与えさせることと、を含み、
前記干渉リスク制御を与えさせることは、
将来パス(Pf)を、前記ビーム干渉のリスクを緩和する緩和パス(Pr)へ変更するパス変更制御を、前記ホスト車両に与えさせることと、
前記パス変更制御の禁止される前記干渉シーンにおいて、照射タイミングが断続
され、および/または、照射方位が走査される前記ビーム照射の予定パターンを、前記ビーム干渉を緩和する緩和パターンへ変更するビーム変更制御を、前記ホスト車両に与えさせることと
、
前記パス変更制御及び前記ビーム変更制御の禁止される前記干渉シーンにおいて、走行速度を、前記ビーム干渉を緩和する緩和速度(Vr)へ変更する速度変更制御を、前記ホスト車両に与えさせることとを、含む制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホスト車両のビームセンサにおいてターゲット車両のビームセンサに対するビーム干渉を予防するための制御技術に、関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される技術は、ホスト車両のビームセンサにおいて距離計測用のビーム照射である測定光照射に所定パターンを形成することで、ターゲット車両に搭載されるビームセンサとのビーム干渉を低減することを、提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示される技術は、ターゲット車両のビームセンサにおいても測定光照射に所定パターンが形成されることを、前提としている。そのため、ビームセンサに種々の仕様が存在する車社会では汎用性が低いことから、ビーム干渉に起因する干渉ノイズがホスト車両でのセンシング精度に影響することまでは、予防困難であった。
【0005】
本開示の課題は、センシング精度を確保する制御装置を、提供することにある。本開示の別の課題は、センシング精度を確保する制御方法を、提供することにある。本開示のさらに別の課題は、センシング精度を確保する制御プログラムを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、課題を解決するための本開示の技術的手段について、説明する。尚、特許請求の範囲及び本欄に記載された括弧内の符号は、後に詳述する実施形態に記載された具体的手段との対応関係を示すものであり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
本開示の第一態様は、
プロセッサ(12,2082)を有し、ホスト車両(2)のビームセンサ(20)においてターゲット車両(3)のビームセンサ(30)に対するビーム干渉を予防するための制御装置(1,2008)であって、
プロセッサは、
ホスト車両及びターゲット車両のビーム照射に関連する照射関連情報(Ii)を、取得することと、
ホスト車両及びターゲット車両間においてビーム干渉の発生する干渉シーン(Si)を、照射関連情報に基づき予測することと、
予測された干渉シーンにおいてビーム干渉のリスクを緩和する干渉リスク制御を、ホスト車両に与えることと、を実行するように構成され、
干渉リスク制御を与えることは、
将来パス(Pf)を、ビーム干渉のリスクを緩和する緩和パス(Pr)へ変更するパス変更制御を、ホスト車両に与えることと、
パス変更制御の禁止される干渉シーンにおいて、照射タイミングが断続され、および/または、照射方位が走査されるビーム照射の予定パターンを、ビーム干渉を緩和する緩和パターンへ変更するビーム変更制御を、ホスト車両に与えることと、
パス変更制御及びビーム変更制御の禁止される干渉シーンにおいて、走行速度を、ビーム干渉を緩和する緩和速度(Vr)へ変更する速度変更制御を、ホスト車両に与えることとを、含む。
【0008】
本開示の第二態様は、
ホスト車両(2)のビームセンサ(20)においてターゲット車両(3)のビームセンサ(30)に対するビーム干渉を予防するために、プロセッサ(12,2082)により実行される制御方法であって、
ホスト車両及びターゲット車両のビーム照射に関連する照射関連情報(Ii)を、取得することと、
ホスト車両及びターゲット車両の間においてビーム干渉の発生する干渉シーン(Si)を、照射関連情報に基づき予測することと、
予測された干渉シーンにおいてビーム干渉のリスクを緩和する干渉リスク制御を、ホスト車両に与えることと、を含み、
干渉リスク制御を与えることは、
将来パス(Pf)を、ビーム干渉のリスクを緩和する緩和パス(Pr)へ変更するパス変更制御を、ホスト車両に与えることと、
パス変更制御の禁止される干渉シーンにおいて、照射タイミングが断続され、および/または、照射方位が走査されるビーム照射の予定パターンを、ビーム干渉を緩和する緩和パターンへ変更するビーム変更制御を、ホスト車両に与えることと、
パス変更制御及びビーム変更制御の禁止される干渉シーンにおいて、走行速度を、ビーム干渉を緩和する緩和速度(Vr)へ変更する速度変更制御を、ホスト車両に与えることとを、含む。
【0009】
本開示の第三態様は、
ホスト車両(2)のビームセンサ(20)においてターゲット車両(3)のビームセンサ(30)に対するビーム干渉を予防するために記憶媒体(10,2080)に記憶され、プロセッサ(12,2082)に実行させる命令を含む制御プログラムであって、
命令は、
ホスト車両及びターゲット車両のビーム照射に関連する照射関連情報(Ii)を、取得させることと、
ホスト車両及びターゲット車両の間においてビーム干渉の発生する干渉シーン(Si)を、照射関連情報に基づき予測させることと、
予測された干渉シーンにおいてビーム干渉のリスクを緩和する干渉リスク制御を、ホスト車両に与えさせることと、を含み、
干渉リスク制御を与えさせることは、
将来パス(Pf)を、ビーム干渉のリスクを緩和する緩和パス(Pr)へ変更するパス変更制御を、ホスト車両に与えさせることと、
パス変更制御の禁止される干渉シーンにおいて、照射タイミングが断続され、および/または、照射方位が走査されるビーム照射の予定パターンを、ビーム干渉を緩和する緩和パターンへ変更するビーム変更制御を、ホスト車両に与えさせることと、
パス変更制御及びビーム変更制御の禁止される干渉シーンにおいて、走行速度を、ビーム干渉を緩和する緩和速度(Vr)へ変更する速度変更制御を、ホスト車両に与えさせることとを、含む。
【0010】
これら第一~第三態様によると、ホスト車両及びターゲット車両間においてビーム干渉の発生する干渉シーンが、それら車両のビーム照射に関連する照射関連情報に基づき予想される。そこで予測された干渉シーンにおいて、ビーム干渉のリスクを緩和する干渉リスク制御がホスト車両に与えられることによれば、ホスト車両及びダーゲット車両間でのビームセンサの仕様が異なる場合であっても、ビーム干渉を汎用的に予防することができる。故に、ホスト車両においてセンシング精度を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第一実施形態の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】第一実施形態の適用されるホスト車両の走行環境を示す模式図である。
【
図3】第一実施形態による制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】第一実施形態による制御方法を示すフローチャートである。
【
図5】第一実施形態による干渉シーンを説明するための模式図である。
【
図6】第一実施形態による干渉シーンを説明するための模式図である。
【
図7】第一実施形態による干渉シーンを説明するための模式図である。
【
図8】第一実施形態による干渉リスク制御ルーチンを示すフローチャートである。
【
図9】第一実施形態によるパス変更制御を説明するための模式図である。
【
図10】第一実施形態によるビーム変更制御を説明するための模式図である。
【
図11】第一実施形態によるビーム変更制御を説明するための模式図である。
【
図12】第一実施形態による速度変更制御を説明するための模式図である。
【
図13】第二実施形態の全体構成を示すブロック図である。
【
図14】第二実施形態による制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図15】第二実施形態による制御方法を示すフローチャートである。
【
図16】第二実施形態による干渉リスク制御ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態を図面に基づき複数説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことで、重複する説明を省略する場合がある。また、各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。さらに、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
【0013】
(第一実施形態)
図1に示す第一実施形態の制御装置1は、ホスト車両2のビームセンサ20において、
図2に示すターゲット車両3のビームセンサ30に対するビーム干渉を、ホスト車両2の制御によって予防するための装置である。ホスト車両2を中心とする視点において、ホスト車両2は自車両(ego-vehicle)であるともいえる。ホスト車両2を中心とする視点において、ターゲット車両3は他道路ユーザであるともいえる。
【0014】
ホスト車両2においては、運転タスクにおける乗員の手動介入度に応じてレベル分けされる、自動運転モードが与えられてもよい。自動運転モードは、条件付運転自動化、高度運転自動化、又は完全運転自動化といった、作動時のシステムが全ての運転タスクを実行する自律走行制御により、実現されてもよい。自動運転モードは、運転支援、又は部分運転自動化といった、乗員が一部若しくは全ての運転タスクを実行する高度運転支援制御により、実現されてもよい。自動運転モードは、それら自律走行制御と高度運転支援制御とのいずれか一方、組み合わせ、又は切り替えにより実現されてもよい。
【0015】
図1に示すように第一実施形態のホスト車両2には、制御装置1と共に、センサ系4、通信系5、及び地図データベース7が搭載される。センサ系4は、制御装置1により利用可能なセンサ情報を、ホスト車両2の外界及び内界の検知によって取得する。そのためにセンサ系4は、外界センサ40及び内界センサ41を含んで構成されている。
【0016】
外界センサ40は、ホスト車両2の周辺環境となる外界から、センサ情報としての外界情報を取得する。外界センサ40は、ホスト車両2の外界に存在する物標を検知することで、外界情報を取得してもよい。物標検知タイプの外界センサ40は、例えばカメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging / Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダ、及びソナー等のうち、少なくとも一種類である。
【0017】
こうした外界センサ40として第一実施形態では、少なくとも一つのビームセンサ20がホスト車両2に搭載されている。
図2に示すようにビームセンサ20は、ホスト車両2の外界へと向けてビームを照射し、当該外界からの反射ビームをセンシングして物標を検知する。ビームセンサ20は、ビームとしてのレーザ光を照射する、LiDARであってもよい。ビームセンサ20は、ビームとしてのミリ波を照射する、ミリ波レーダであってもよい。
【0018】
ここで第一実施形態では、ターゲット車両3に搭載される少なくとも一つのビームセンサ30として、ホスト車両2のビームセンサ20とビームの種類が同一の外界センサ40を、ビーム干渉予防の対象としている。例えば、ビームとしてレーザ光を用いるビームセンサ20に対しては、ビームとしてレーザ光を用いるビームセンサ30が、ホスト車両2においてビーム干渉予防の対象とされる。ビームとしてミリ波を用いるビームセンサ20に対しては、ビームとしてミリ波を用いるビームセンサ30が、ホスト車両2においてビーム干渉予防の対象とされる。但し、いずれの場合でも、ビームの特性を含むビームセンサ20,30の仕様は、相異であってもよいし、同一であってもよい。
【0019】
図1に示す内界センサ41は、ホスト車両2の内部環境となる内界から、センサ情報としての内界情報を取得する。内界センサ41は、ホスト車両2の内界において特定の運動物理量を検知することで、内界情報を取得してもよい。物理量検知タイプの内界センサ41は、例えば走行速度センサ、加速度センサ、及びジャイロセンサ等のうち、少なくとも一種類である。内界センサ41は、ホスト車両2の内界において乗員の特定状態を検知することで、内界情報を取得してもよい。乗員検知タイプの内界センサ41は、例えばドライバーステータスモニター(登録商標)、生体センサ、着座センサ、アクチュエータセンサ、及び車内機器センサ等のうち、少なくとも一種類である。
【0020】
通信系5は、制御装置1により利用可能な通信情報を、無線通信により取得する。通信系5には、ホスト車両2の外界に存在するV2Xシステムとの間において通信信号を送受信する、V2Xタイプが含まれている。V2Xタイプの通信系5は、例えばDSRC(Dedicated Short Range Communications)通信機、及びセルラV2X(C-V2X)通信機等のうち、少なくとも一種類である。V2Xタイプの通信系5は、ホスト車両2外部において少なくとも一つずつのターゲット車両3及びリモートセンタ6との間に、通信可能な通信ネットワークを構築している。
【0021】
ここでターゲット車両3には、ホスト車両2に準じて通信系及び地図データベースが、搭載されている。一方でリモートセンタ6は、例えばクラウドサーバ、及びエッジサーバ(インフラコンピュータを含む)等のサーバユニット、通信ユニット、並びに地図データベースを主体として、構築されている。例えばリモートセンタ6は、ホスト車両2の運転若しくは運行を監視管理する管理センタ、及びホスト車両2に関連するサービスを提供するサービスセンタ等のうち、少なくとも一種類である。リモートセンタ6では、通信ユニットを通じて通信可能な、ホスト車両2を含む道路ユーザに関連して、例えばリモートセンタ6のオペレータへ情報を表示する等の出力制御処理が、実行されてもよい。それに伴ってリモートセンタ6では、通信可能な道路ユーザへフィードバックされる情報を、例えばリモートセンタ6のオペレータから受付する等の入力制御処理が、実行されてもよい。
【0022】
通信系5には、ホスト車両2の外界に存在するGNSS(Global Navigation Satellite System)の人工衛星から測位信号を受信する、測位タイプが含まれていてもよい。測位タイプの通信系5は、例えばGNSS受信機等である。通信系5には、ホスト車両2の内界に存在する端末との間において通信信号を送受信する、端末通信タイプが含まれていてもよい。端末通信タイプの通信系5は、例えばブルートゥース(Bluetooth:登録商標)機器、Wi-Fi(登録商標)機器、及び赤外線通信機器等のうち、少なくとも一種類である。
【0023】
地図データベース7は、制御装置1により利用可能な地図情報を、記憶する。地図データベース7は、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)を含んで構成されている。地図データベース7は、ホスト車両2の位置を含む運動状態を推定するロケータの、データベースであってもよい。地図データベース7は、ホスト車両2の走行経路をナビゲートするナビゲーションユニットの、データベースであってもよい。地図データベース7は、これらのデータベース等のうち複数種類の組み合わせにより、構成されてもよい。
【0024】
地図データベース7は、V2Xタイプの通信系5を通じたリモートセンタ6との通信により、最新の地図情報を取得して記憶する。ここで地図情報は、ホスト車両2の走行環境を表す情報として、二次元又は三次元にデータ化されている。特に三次元の地図データとしては、高精度地図のデジタルデータが採用されるとよい。地図情報は、例えば道路自体の位置、形状、及び路面状態等のうち、少なくとも一種類を表した道路情報を含んでいてもよい。地図情報は、例えば道路に付属する標識及び区画線の位置並びに形状等のうち、少なくとも一種類を表した標示情報を含んでいてもよい。地図情報は、例えば道路に面する建造物及び信号機の位置並びに形状等のうち、少なくとも一種類を表した構造物情報を含んでいてもよい。
【0025】
制御装置1は、例えばLAN(Local Area Network)回線、ワイヤハーネス、内部バス、及び無線通信回線等のうち、少なくとも一種類を介してセンサ系4、通信系5、及び地図データベース7に接続されている。制御装置1は、少なくとも一つの専用コンピュータを含んで構成されている。
【0026】
制御装置1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2の運転を制御する、運転制御ECU(Electronic Control Unit)であってもよい。制御装置1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2の走行経路をナビゲートする、ナビゲーションECUであってもよい。制御装置1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2の自己状態量を推定する、ロケータECUであってもよい。制御装置1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2の走行アクチュエータを制御する、アクチュエータECUであってもよい。制御装置1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2における情報提示を制御する、HCU(HMI(Human Machine Interface) Control Unit)であってもよい。
【0027】
制御装置1を構成する専用コンピュータは、メモリ10及びプロセッサ12を、少なくとも一つずつ有している。メモリ10は、コンピュータにより読み取り可能なプログラム及びデータ等を非一時的に記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。プロセッサ12は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、RISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU、DFP(Data Flow Processor)、及びGSP(Graph Streaming Processor)等のうち、少なくとも一種類をコアとして含んでいる。
【0028】
制御装置1においてプロセッサ12は、ホスト車両2のビームセンサ20においてターゲット車両3のビームセンサ30に対するビーム干渉を予防するために、メモリ10に記憶された制御プログラムに含まれる複数の命令を、実行する。これにより制御装置1は、ホスト車両2のビームセンサ20においてターゲット車両3のビームセンサ30に対するビーム干渉を予防するために、複数の機能ブロックを構築する。制御装置1において構築される機能ブロックには、
図3に示すように情報取得ブロック100、干渉予測ブロック110、及び車両制御ブロック120が含まれている。
【0029】
これらのブロック100,110,120の共同により制御装置1が、ホスト車両2のビームセンサ20においてターゲット車両3のビームセンサ30に対するビーム干渉を予防するための制御方法は、
図4に示す制御フローに従って実行される。本制御フローは、ホスト車両2の起動中に繰り返し実行される。尚、制御フローにおける各「S」は、制御プログラムに含まれた複数命令によって実行される複数ステップを、それぞれ意味している。
【0030】
第一実施形態による制御フローのS101において情報取得ブロック100は、ホスト車両2及びターゲット車両3の各々でのビーム照射に関連する照射関連情報Iiを、取得する。このときホスト車両2の照射関連情報Iiは、ビームセンサ20を含むセンサ系4、通信系5、及び地図データベース7のうち、少なくとも一種類を通じて取得される。一方でターゲット車両3の照射関連情報Iiは、ターゲット車両3の通信系を通じて取得される。
【0031】
S101において情報取得ブロック100が取得する各車両2,3の照射関連情報Iiは、それぞれビームセンサ20,30の特性情報Isを含んでいる。各ビームセンサ20,30の特性情報Isは、例えばセンシング距離、照射タイミングが断続且つ照射方位が走査されるビーム照射の予定パターン、及び当該予定パターンの変更に必要な最小動作時間Δt(後述の
図10,11参照)等を含んだ複数種類ずつのセンシングパラメータを、それぞれ表している。ここで特にビーム照射の予定パターンとは、現在から将来におけるビーム照射の断続タイミング及び照射方位の時間推移を表すパターンを、意味する。また特に最小動作時間Δtとは、予定パターンを変更するビーム変更制御(後に詳述)の開始を起点として、例えばビームセンサ20,30が動作変更を開始するまでの時間、又は当該動作変更によりビームセンサ20,30が安定するまでの時間等に、定義される。
【0032】
S101において情報取得ブロック100が取得する各車両2,3の照射関連情報Iiは、それぞれパス情報Ipを含んでいる。各車両2,3のパス情報Ipは、例えば計画された将来パスPf(後述の
図9参照)、当該将来パスPf上での速度プロファイル及び加速度プロファイル、並びに将来パス上のキー地点への到達時刻等を含んだ複数種類ずつのパス計画データを、それぞれ表している。ここで将来パスPfとは、ホスト車両2の計画された進路を意味し、特に第一実施形態では、現在から将来に亘って計画された経路及び軌道のうち少なくとも一方を含む。
【0033】
S101において情報取得ブロック100が取得する照射関連情報Iiは、ホスト車両2及びターゲット車両3のうち、少なくとも前者の地図データベース7に記憶された地図情報Imを、含んでいる。ここで地図情報Imは、各車両2,3の特性情報Is及びパス情報Ipに対して、現在から将来に亘る制御タイミング(即ち、制御時刻)毎の位置を関連付けるように、取得される。
【0034】
制御フローのS102において干渉予測ブロック110は、
図5~7に示すようにホスト車両2及びターゲット車両3の間においてビーム干渉の発生する干渉シーンSiを、S101の情報取得ブロック100により取得された照射関連情報Iiに基づき、予測する。このとき干渉シーンSiは、各車両2,3の将来パスPf上において、各車両2,3の離間距離が各ビームセンサ20,30のセンシング距離の和以下となり、各ビームセンサ20,30での照射方位が同一時刻に交差又は相反方向となる、将来シーンに定義される。こうした干渉シーンSiの予測においては、同シーンSiの開始時刻Ti(後述の
図10,11参照)、及び同シーンSiの時間推移が、推定される。
【0035】
尚、
図5及び後述の
図9,10,12は、ホスト車両2及びターゲット車両3が進行方向の相反する対抗車線をそれぞれ走行する場合の、干渉シーンSiを示している。
図6は、ホスト車両2及びターゲット車両3が進行方向の同一な並列車線をそれぞれ走行する場合の、干渉シーンSiを示している。
図7及び後述の
図11は、ホスト車両2及びターゲット車両3が進行方向の交差する交差車線をそれぞれ走行する場合の、干渉シーンSiを示している。
【0036】
図4に示すようにS102において、干渉予測ブロック110により干渉シーンSiが予測されない場合には、制御フローの今回実行が終了する。ここで、各車両2,3での将来パスPfの計画は有限となるため、干渉シーンSiが予測されない場合は発生する。一方でS102において、干渉予測ブロック110により干渉シーンSiが予測される場合には、制御フローがS103へ移行する。
【0037】
移行したS103において車両制御ブロック120は、S102の干渉予測ブロック110により予測された干渉シーンSiにおいて、ビーム干渉のリスクを緩和する干渉リスク制御を、ホスト車両2に与える。そのためにS103における車両制御ブロック120は、
図8に示すように干渉リスク制御ルーチンを実行する。
【0038】
第一実施形態による干渉リスク制御ルーチンのS201において車両制御ブロック120は、ホスト車両2により現在選択の将来パスPfを変更可能な変更パス数Nhと、ターゲット車両3により現在選択の将来パスPfを変更可能な変更パス数Ntとを、対比する。このとき変更パス数Nh,Ntは、S101の情報取得ブロック100により取得された照射関連情報Iiに基づき、認識される。これら変更パス数Nh,Ntの対比により、ホスト車両2の変更パス数Nhがターゲット車両3の変更パス数Ntよりも少ない場合には、干渉リスク制御ルーチンがS202へ移行する。
【0039】
移行したS202において車両制御ブロック120は、通信系5を通じたターゲット車両3からのレスポンス通知を待つ待機時間において、ホスト車両2の制御を将来パスPfに従って維持する。S202において、ターゲット車両3からのレスポンス通知を待機時間内に取得できない、条件C1が成立する場合には、干渉リスク制御ルーチンがS203へ移行する。
【0040】
S202においても、待機時間内にターゲット車両3からレスポンス通知を取得し、且つ当該通知がビーム干渉のリスク緩和に最適なターゲット車両3の制御を表す、条件C2が成立する場合には、干渉リスク制御ルーチン及び制御フローの今回実行が終了する。一方でS202において、待機時間内にターゲット車両3からレスポンス通知を取得し、且つ当該通知がビーム干渉のリスク緩和には不十分なターゲット車両3の制御を表す、条件C3が成立している場合には、干渉リスク制御ルーチンがS203へ移行する。ここでターゲット車両3からレスポンス通知される制御がリスク緩和に最適か否かは、干渉予測ブロック110に準ずる干渉シーンSiの予測が当該制御によって解消されるか否かに応じて、判別される。
【0041】
干渉リスク制御ルーチンのS203において車両制御ブロック120は、
図9に示すようにホスト車両2の現在における将来パスPfから変更制御可能な変更パスとして、ビーム干渉のリスクを緩和するのに最適な緩和パスPrが存在するか否かを、判定する。このとき、変更パスがリスク緩和に最適か否かは、干渉予測ブロック110に準じる干渉シーンSiの予測が当該変更パスによって解消されるか否かに応じて、判別される。
【0042】
S203において緩和パスPrが存在する場合には、
図8に示すように干渉リスク制御ルーチンがS204へ移行する。移行したS204において車両制御ブロック120は、将来パスPfを緩和パスPrへと変更するパス変更制御(
図9参照)を、ホスト車両2に与える。即ちS204における車両制御ブロック120は、干渉シーンSiの予測を解消するパス変更制御を、ホスト車両2に対して実行する。このとき車両制御ブロック120は、パス変更制御の実行を表すレスポンス通知を、通信系5を通じてターゲット車両3へと送信してもよい。S204の完了により、干渉リスク制御ルーチン及び制御フローの今回実行が終了する。
【0043】
一方、S203において緩和パスPrが存在しないことで、S204によるパス変更制御が禁止される場合には、干渉リスク制御ルーチンがS205へ移行する。このとき車両制御ブロック120は、パス変更制御の禁止を表すレスポンス通知を、通信系5を通じてターゲット車両3へ送信してもよい。
【0044】
移行したS205において車両制御ブロック120は、ビーム干渉のリスクを緩和するのに最適な緩和パターンへ、現在におけるビーム照射の予定パターンを変更するのに必要な最小動作時間Δtが、ホスト車両2において確保可能か否かを判定する。このとき、
図10,11に示す最小動作時間Δtは、S101の情報取得ブロック100により取得されたの照射関連情報Iiのうち、パス情報Ipに含まれる。そこで、S102の干渉予測ブロック110により予測された干渉シーンSiの開始時刻Tiから、現在時刻までの時間長さが、最小動作時間Δtの長さ以上となるか否かに応じて、最小動作時間Δtを確保可能か否かが判別される。
【0045】
S205において最小動作時間Δtが確保可能な場合には、
図8に示すように干渉リスク制御ルーチンがS206へ移行する。移行したS206において車両制御ブロック120は、ビーム照射の予定パターンを緩和パターンへ変更するビーム変更制御を、ホスト車両2に与える。即ちS206における車両制御ブロック120は、干渉シーンSiの予測を解消するビーム変更制御を、ホスト車両2に対して実行する。このとき、
図10,11の如く車両制御ブロック120は、S102の干渉予測ブロック110により予測された干渉シーンSiの開始時刻Tiから、確保された最小動作時間Δt以上の時間を溯るように、ビーム変更制御の開始タイミングTc(即ち,開始時刻Tc)を設定する。
【0046】
図8のS206において、設定した開始タイミングTc以降に車両制御ブロック120は、例えば干渉する照射方位での断続タイミングの変更によるビーム照射の一時停止(
図10,11の二点鎖線は一時停止状態の例を示す)、又は照射方位を走査する走査角速度の増減変更等を、ビーム変更制御として実行する。このとき車両制御ブロック120は、ビーム変更制御の実行を表すレスポンス通知を、通信系5を通じてターゲット車両3へ送信してもよい。S206の完了により、干渉リスク制御ルーチン及び制御フローの今回実行が終了する。
【0047】
一方、S205において最小動作時間Δtは確保不可であるために、S204によるパス変更制御だけでなく、S206によるビーム変更制御も禁止される場合には、干渉リスク制御ルーチンがS207へ移行する。このとき車両制御ブロック120は、ビーム変更制御の禁止を表すレスポンス通知を、通信系5を通じてターゲット車両3へ送信してもよい。
【0048】
移行したS207において車両制御ブロック120は、
図12に示すように走行速度を緩和速度Vrへと変更する速度変更制御を、ホスト車両2に与える。即ちS207における車両制御ブロック120は、干渉シーンSiの予測を解消する速度変更制御を、ホスト車両2に対して実行する。このとき車両制御ブロック120は、S101の情報取得ブロック100により取得された将来パスPf上の速度及び加速度プロファイルに基づき、ホスト車両2の現在走行速度から減速又は増速された緩和速度Vr、好ましくは当該減速の緩和速度Vrを設定する。またこのとき車両制御ブロック120は、速度変更制御の実行を表すレスポンス通知を、通信系5を通じてターゲット車両3へ送信してもよい。S207の完了により、干渉リスク制御ルーチン及び制御フローの今回実行が終了する。
【0049】
ここまで、
図8のS201においてホスト車両2の変更パス数Nhがターゲット車両3の変更パス数Ntよりも少ない場合を、説明した。次に、ホスト車両2の変更パス数Nhがターゲット車両3の変更パス数Nt以上である場合を、説明する。この場合には、干渉リスク制御ルーチンがS203へ移行することで、S203~S207のうち必要に応じたステップが実行される。
【0050】
(作用効果)
以上説明した第一実施形態の作用効果を、以下に説明する。
【0051】
本実施形態によると、ホスト車両2及びターゲット車両3間においてビーム干渉の発生する干渉シーンSiが、それら車両2,3のビーム照射に関連する照射関連情報Iiに基づき予想される。そこで予測された干渉シーンSiにおいて、ビーム干渉のリスクを緩和する干渉リスク制御がホスト車両2に与えられることによれば、車両2,3間でのビームセンサ20,30の仕様が異なる場合であっても、ビーム干渉を汎用的に予防することができる。故に、ホスト車両2においてセンシング精度を確保することが可能となる。ここで特に第一実施形態では、ターゲット車両3と通信可能なホスト車両2に搭載の制御装置1が利用されることで、当該ホスト車両2におけるセンシング精度の確保を達成することが可能となっている。
【0052】
第一実施形態によると、干渉リスク制御としてパス変更制御がホスト車両2に与えられる。これによれば、車両2,3間でのビームセンサ20,30の仕様が異なる場合であっても、ホスト車両2における将来パスPfを、ビーム干渉リスクを緩和する緩和パスPrへと変更することで、ビーム干渉の予防確度を高めることができる。故に、ホスト車両2におけるセンシング精度の確保を、信頼性をもって達成することが可能となる。
【0053】
第一実施形態によると、干渉リスク制御としてビーム変更制御がホスト車両2に与えられる。これによれば、車両2,3間でのビームセンサ20,30の仕様が異なる場合であっても、ホスト車両2におけるビーム照射の予定パターンを、ビーム干渉リスクを緩和する緩和パターンへと変更することで、ビーム干渉の予防確度を高めることができる。故に、ホスト車両2におけるセンシング精度の確保を、信頼性をもって達成することが可能となる。
【0054】
ここで特に第一実施形態によると、パス変更制御の禁止される干渉シーンSiにおいて、干渉リスク制御としてのビーム変更制御がホスト車両2に与えられる。これによりホスト車両2では、パス変更制御によるビーム干渉の予防が困難な状況にあっても、ビーム変更制御への切り替えによって高い予防確度を維持することができる。故に、ホスト車両2におけるセンシング精度の確保を、信頼性の低下なく達成することが可能となる。
【0055】
第一実施形態によると、予測された干渉シーンSiの開始時刻Tiから、ホスト車両2において予定パターンの変更に必要な最小動作時間Δt以上、遡るようにビーム変更制御の開始タイミングTcが設定される。これによれば、ビーム変更制御の開始タイミングTcを正確に見極めて、ビーム干渉を高い確度で予防することができる。故に、高レベルのセンシング精度を、信頼性をもって達成することが可能となる。
【0056】
第一実施形態によると、干渉リスク制御として速度変更制御がホスト車両2に与えられる。これによれば、車両2,3間でのビームセンサ20,30の仕様が異なる場合であっても、ホスト車両2における走行速度を、ビーム干渉リスクを緩和する緩和速度Vrへと変更することで、ビーム干渉の予防確度を高めることができる。故に、ホスト車両2におけるセンシング精度の確保を、信頼性をもって達成することが可能となる。
【0057】
ここで特に第一実施形態によると、パス変更制御及びビーム変更制御の禁止される干渉シーンSiにおいて、干渉リスク制御としての速度変更制御がホスト車両2に与えられる。これによりホスト車両2では、パス変更制御によるビーム干渉の予防だけでなく、ビーム変更制御によるビーム干渉の予防も困難な状況にあっても、速度変更制御への切り替えによって高い予防確度を維持することができる。故に、ホスト車両2におけるセンシング精度の確保を、高い信頼性をもって達成することが可能となる。
【0058】
(第二実施形態)
図13に示すように第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。
【0059】
第二実施形態によるリモートセンタ2006は、監視対象として通信可能且つビームセンサを搭載した複数車両(以下、監視対象車両という)のうち、通信ネットワーク上の指令によって干渉リスク制御を与えるホスト車両2に対し、残り車両の中からターゲット車両3を識別する。そのため、干渉リスク制御の指令先となるホスト車両2は、随時入れ替わることとなる。また、干渉リスク制御の指令先となるホスト車両2は、干渉リスク制御の別な指令先となるホスト車両2からの視点では、
図13の如くターゲット車両3として認識される。さらに、監視対象車両及びリモートセンタ2006によって構築される通信ネットワークは、グローバルクロックに対して同期されるとよい。尚、ホスト車両2となる監視対象車両には、第一実施形態による干渉リスク制御機能の省かれた制御装置2001が、搭載されている。
【0060】
リモートセンタ2006は、ホスト車両2へと干渉リスク制御を与えるため、制御装置2008を備えたサーバユニット、通信ユニット、並びに地図データベース2007を主体として、構築されている。地図データベース2007は、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)を含んで構成されている。地図データベース2007は、監視対象車両へ送信されて地図データベース7に記憶される地図情報Imを、随時更新して記憶する。
【0061】
制御装置2008を構成する専用コンピュータは、メモリ2080及びプロセッサ2082を、少なくとも一つずつ有している。制御装置2008のメモリ2080及びプロセッサ2082は、制御装置1のメモリ10及びプロセッサ12に準じて構成される。
【0062】
制御装置2008においてプロセッサ2082は、ホスト車両2となる監視対象車両のビームセンサ20において、ターゲット車両3となる監視対象車両のビームセンサ30に対してのビーム干渉を予防するために、メモリ2080に記憶された制御プログラムに含まれる複数の命令を、実行する。これにより制御装置2008は、ホスト車両2となる監視対象車両のビームセンサ20において、ターゲット車両3となる監視対象車両のビームセンサ30に対してのビーム干渉を予防するために、複数の機能ブロックを構築する。制御装置2008において構築される機能ブロックには、
図14に示すように情報取得ブロック2100、干渉予測ブロック2110、及び車両制御ブロック2120が含まれている。
【0063】
これらのブロック2100,2110,2120の共同により制御装置2008が、ホスト車両2となる監視対象車両のビームセンサ20において、ターゲット車両3となる監視対象車両のビームセンサ30に対してのビーム干渉を予防するための制御方法は、
図15に示す制御フローに従って実行される。本制御フローは、リモートセンタ2006の起動中に繰り返し実行される。
【0064】
第二実施形態による制御フローのS2101において情報取得ブロック2100は、監視対象車両各々でのビーム照射に関連する照射関連情報Iiを、取得する。このとき照射関連情報Iiは、各監視対象車両の通信系5との間の通信ネットワークを通じて、及びリモートセンタ2006の地図データベース2007を通じて、取得される。取得される照射関連情報Iiは、第一実施形態に準じて特性情報Is、パス情報Ip、及び地図情報Imを含んでいる。
【0065】
制御フローのS2102において干渉予測ブロック2110は、監視対象車両間においてビーム干渉の発生する干渉シーンSiを、S2101の情報取得ブロック2100により取得された照射関連情報Iiに基づき、予測する。このとき予測される干渉シーンSiの定義は、第一実施形態に準ずる。そこで情報取得ブロック2100は、干渉シーンSiが予測される場合に、予測のタイミング及びその前後タイミングのうち、少なくとも予測タイミングにおける照射関連情報Iiを、タイムスタンプと関連付けてメモリ2080に蓄積していってもよい。
【0066】
S2102における干渉予測ブロック2110は、干渉シーンSiの発生予測される監視対象車両のペア(以下、干渉予測ペアという)が存在するか否かを、監視しているともいえる。そこで情報取得ブロック2100は、特性情報Is及びパス情報Ipを含むオペレータ向け情報を、地図情報Im上に重畳してオペレータに表示させることで、当該オペレータからの入力指示に応じて、干渉シーンSiの発生有無を確定させてもよい。
【0067】
S2102において、干渉予測ブロック2110により干渉シーンSiが予測されない場合には、制御フローの今回実行が終了する。ここでも、各監視対象車両での将来パスPfの計画は有限となるため、干渉シーンSiが予測されない場合は発生する。一方でS2102において、干渉予測ブロック2110により干渉シーンSiが予測される場合には、制御フローがS2103へ移行する。
【0068】
移行したS2103において車両制御ブロック2120は、S2102の干渉予測ブロック110により予測された干渉シーンSiでの干渉予測ペアのうち、ホスト車両2とする少なくとも一方の監視対象車両に対して、干渉リスク制御を与える。そのためにS2103における車両制御ブロック120は、
図16に示すように干渉リスク制御ルーチンを実行する。
【0069】
第二実施形態による干渉リスク制御ルーチンのS2201において車両制御ブロック2120は、干渉予測ペアのうちホスト車両2とする少なくとも一方の監視対象車両に対して、現在の将来パスPfから変更制御可能な緩和パスPrが存在するか否かを、判定する。このとき、干渉予測ペアのうちホスト車両2とする監視対象車両は、例えば緩和パスPrが多い側等の一方であってもよいし、双方であってもよい。
【0070】
S2201において緩和パスPrが存在する場合には、干渉リスク制御ルーチンがS2202へ移行する。移行したS2202において車両制御ブロック2120は、第一実施形態に準じた緩和パスPrへのパス変更制御を、ホスト車両2とする少なくとも一方の監視対象車両に対しての、通信指令によって与える。S2202の完了により、干渉リスク制御ルーチン及び制御フローの今回実行が終了する。
【0071】
一方、S2201において緩和パスPrが存在しないことで、S2202によるパス変更制御が禁止される場合には、干渉リスク制御ルーチンがS2203へ移行する。移行したS2203において車両制御ブロック2120は、干渉予測ペアのうちホスト車両2とする少なくとも一方の監視対象車両において、ビーム照射の予定パターンを緩和パターンへ変更するのに必要な最小動作時間Δtが、確保可能か否かを判定する。このとき、干渉予測ペアのうちホスト車両2とする監視対象車両は、例えば最小動作時間Δtが短い側等の一方であってもよいし、双方であってもよい。これらいずれであっても、確保可能か否かの判別は、干渉予測ペアの監視対象車両毎に第一実施形態に準じて実行される。
【0072】
S2203において最小動作時間Δtが確保可能な場合には、干渉リスク制御ルーチンがS2204へ移行する。移行したS2204において車両制御ブロック2120は、第一実施形態に準じた緩和パターンへのビーム変更制御を、ホスト車両2とする少なくとも一方の監視対象車両に対しての、通信指令によって与える。S2204の完了により、干渉リスク制御ルーチン及び制御フローの今回実行が終了する。
【0073】
一方、S2203において最小動作時間Δtは確保不可であるために、S2202によるパス変更制御だけでなく、S2204によるビーム変更制御も禁止される場合には、干渉リスク制御ルーチンがS2205へ移行する。移行したS2205において車両制御ブロック2120は、第一実施形態に準じた緩和速度Vrへの速度変更制御を、ホスト車両2とする少なくとも一方の監視対象車両に対しての、通信指令によって与える。このとき、干渉予測ペアのうちホスト車両2とする監視対象車両は、例えば緩和速度Vrへの速度変化量が小さい側又は減速側等の一方であってもよいし、双方であってもよい。S2205の完了により、干渉リスク制御ルーチン及び制御フローの今回実行が終了する。
【0074】
以上説明したように第二実施形態では、ホスト車両2及びターゲット車両3と通信可能なリモートセンタ2006を構築する制御装置2008が利用されることで、第一実施形態と同様の原理によってセンシング精度を確保することが可能である。
【0075】
(他の実施形態)
以上、複数の実施形態について説明したが、本開示は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0076】
変形例において制御装置1,2008を構成する専用コンピュータは、デジタル回路及びアナログ回路のうち、少なくとも一方をプロセッサとして有していてもよい。ここでデジタル回路とは、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System on a Chip)、PGA(Programmable Gate Array)、及びCPLD(Complex Programmable Logic Device)等のうち、少なくとも一種類である。またこうしたデジタル回路は、プログラムを記憶したメモリを、有していてもよい。
【0077】
変形例において、S204,S2202によるパス変更制御と、S206,S2204によるビーム変更制御と、S207,S2205による速度変更制御とは、S203,S205,S2201,S2203による判定条件の変更により優先順位(実施順)を、第一及び第二実施形態の順とは異ならされていてもよい。ここで特に、パス変更制御及びビーム変更制御の少なくとも一方よりも速度変更制御を優先的に(先に)実行する変形例では、例えば速度変更制御は可能か否か等が、判定条件として採用されるとよい。
【0078】
変形例において、S204,S2202によるパス変更制御と、S206,S2204によるビーム変更制御と、S207,S2205による速度変更制御とのうち、一種類又は二種類は省かれてもよい。ここまでの説明形態の他、第一及び第二実施形態並びに変化例は、制御装置1,2008のプロセッサ12,2082とメモリ10,2080とを少なくとも一つずつ有した半導体装置(例えば半導体チップ等)として、実施されてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1,2008:制御装置、2:ホスト車両、3:ターゲット車両、6,2006:リモートセンタ、10,2080:メモリ、12,2082:プロセッサ、20,30:ビームセンサ、Ii:照射関連情報、Pf:将来パス、Pr:緩和パス、Si:干渉シーン、Tc:開始タイミング、Ti:開始時刻、Vr:緩和速度、Δt:最小動作時間