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特許7501458情報処理装置、情報処理方法、及び、情報処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及び、情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20240611BHJP
   H04L 67/10 20220101ALI20240611BHJP
【FI】
G08G1/09 H
H04L67/10
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021108416
(22)【出願日】2021-06-30
(65)【公開番号】P2023006041
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長田 祐
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊洋
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-164198(JP,A)
【文献】特開2017-228107(JP,A)
【文献】特開2019-139473(JP,A)
【文献】特開2007-318353(JP,A)
【文献】特開2019-175089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G06F 13/00
H04L 67/00 - 67/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中に、第2の車両に代わって第1のデータをダウンロードする第1の車両を、複数の車両から、走行予定経路における通信速度と通信による負荷とに基づいて、選択することと、
前記第1の車両へ、走行中に前記第2の車両に代わって前記第1のデータをダウンロードすることと、前記第2の車両へ前記第1のデータを送信することと、を指示することと、
を実行する制御部、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第2の車両の走行予定経路における通信速度が第1の閾値未満である場合に、前記第1の車両を選択する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記複数の車両のうち、前記通信による負荷が第2の閾値未満であり、且つ、通信速度が最も速い車両を前記第1の車両として選択する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記複数の車両それぞれの通信による負荷を、前記複数の車両それぞれの走行予定経路に含まれる道路の種類に基づいて、取得する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第2の車両と合流予定のある複数の車両から、前記第1の車両を選択し、
前記第2の車両との合流地点において、前記第2の車両へ前記第1のデータを送信するように前記第1の車両へ指示する、
請求項1からのいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記第1のデータは、前記第2の車両に搭載されるプログラムの更新用データであり、
前記制御部は、
前記第2の車両へ、前記第1の車両から前記第1のデータを受信することと、前記第1のデータによって前記プログラムを更新することと、を指示することをさらに実行する、請求項1からのいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記第1の車両は、
中継装置を介する第1の通信によって、前記第1のデータのダウンロードを行い、
中継装置を介さない第2の通信によって、前記第1のデータを前記第2の車両に送信する、
請求項1からのいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
走行中に、第2の車両の代わりに第1のデータをダウンロードする第1の車両を、複数の車両から、走行予定経路における通信速度と通信による負荷とに基づいて、選択することと、
前記第1の車両へ、走行中に前記第2の車両の代わりに前記第1のデータをダウンロードすることと、前記第2の車両へ前記第1のデータを送信することと、を指示することと、
を含む情報処理方法。
【請求項9】
前記第2の車両の走行予定経路における通信速度が第1の閾値未満である場合に、前記第1の車両を選択する、
請求項に記載の情報処理方法。
【請求項10】
前記複数の車両のうち、前記通信による負荷が第2の閾値未満であり、且つ、通信速度が最も速い車両を前記第1の車両として選択する、
請求項8又は9に記載の情報処理方法。
【請求項11】
前記複数の車両それぞれの通信による負荷を、前記複数の車両それぞれの走行予定経路に含まれる道路の種類に基づいて、取得する、
請求項8から10のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項12】
前記第2の車両と合流予定のある複数の車両から、前記第1の車両を選択し、
前記第2の車両との合流地点において、前記第2の車両へ前記第1のデータを送信するように前記第1の車両へ指示する、
請求項から11のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項13】
前記第1のデータは、前記第2の車両に搭載されるプログラムの更新用データであり、
前記第2の車両へ、前記第1の車両から前記第1のデータを受信することと、前記第1のデータによって前記プログラムを更新することと、を指示することをさらに含む、
請求項から12のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項14】
前記第1の車両は、
中継装置を介する第1の通信によって、前記第1のデータのダウンロードを行い、
中継装置を介さない第2の通信によって、前記第1のデータを前記第2の車両に送信する、
請求項から13のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項15】
複数の車両と、
前記複数の車両から、走行中に、第2の車両の代わりに第1のデータをダウンロードする第1の車両を、走行予定経路における通信速度と通信による負荷とに基づいて、選択することと、
前記第1の車両へ、走行中に前記第2の車両の代わりに前記第1のデータをダウンロードすることと、前記第2の車両へ前記第1のデータを送信することと、を指示することと、
を実行する制御部を備える情報処理装置と、
を含む情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、情報処理方法、及び、情報処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最新の地図データを管理センタから通信衛星を介して車載器に配信するシステムにおいて、衛星信号を受信できなかった車両は、車車間通信を利用して、すでに最新の地図データを取得している他の車両から最新の地図データを取得することが開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-93260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
開示の態様の一つは、ダウンロードによって取得可能なデータを通信環境によらずに確実に車両が取得可能な情報処理装置、情報処理方法、及び、情報処理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の態様の一つは、
走行中に、第2の車両の代わりに第1のデータをダウンロードする第1の車両を選択することと、
前記第1の車両へ、走行中に前記第2の車両の代わりに前記第1のデータをダウンロードすることと、前記第2の車両へ前記第1のデータを送信することと、を指示することと、を実行する制御部、
を備える情報処理装置である。
【0006】
本開示の他の態様の一つは、
走行中に、第2の車両の代わりに第1のデータをダウンロードする第1の車両を選択することと、
前記第1の車両へ、走行中に前記第2の車両の代わりに前記第1のデータをダウンロードすることと、前記第2の車両へ前記第1のデータを送信することと、を指示することと、を含む情報処理方法である。
【0007】
本開示の他の態様の一つは、
複数の車両と、
前記複数の車両から、走行中に、第2の車両の代わりに第1のデータをダウンロードする第1の車両を選択することと、
前記第1の車両へ、走行中に前記第2の車両の代わりに前記第1のデータをダウンロードすることと、前記第2の車両へ前記第1のデータを送信することと、を指示することと、
を実行する制御部を備える情報処理装置と、
を含む情報処理システムである。
【発明の効果】
【0008】
本開示の態様の一つによれば、車両は、ダウンロードによって取得可能なデータを通信環境によらずに確実に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態の情報処理システムのシステム構成の一例を示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る更新用データの代替ダウンロードの処理の一例を示す図である。
図3図3は、リリースNOTEの一例である。
図4図4は、管制センタのハードウェア構成の一例を示す図である。
図5図5は、管制センタの機能構成の一例を示す図である。
図6図6は、管制センタのスケジュール情報データベースに保持されるスケジュールに関する情報の一例である。
図7図7は、管制センタの車両情報データベースに保持される車両情報の一例である。
図8図8は、管制センタのリリースNOTE受信による更新スケジュールの作成処理のフローチャートの一例である。
図9図9は、代替車両の特定処理のフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の態様の一つは、制御部を備える情報処理装置である。制御部は、走行中に、第2の車両の代わりに第1のデータをダウンロードする第1の車両を選択することと、第1の車両へ、走行中に第2の車両の代わりに第1のデータをダウンロードすることと、第2の車両へ第1のデータを送信することと、を指示することと、を実行する。
【0011】
情報処理装置は、例えば、複数の車両を管理するサーバである。ただし、これに限られない。情報処理装置が管理する車両は、第1の車両及び第2の車両を含む。情報処理装置が管理する車両は、例えば、自律走行又は自動走行可能な車両である。ただし、これに限られず、情報処理装置が管理する車両は、人の運転によって走行する車両であり、通信機能を備え、複数のプログラムを搭載している車両であってもよい。制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサである。車両への指示の一例は、当該
車両についてスケジュールを作成し、送信することである。ただし、これに限定されない。
【0012】
本開示の態様の一つでは、例えば、第2の車両が通信環境の良くないエリアを走行したり、駐車したりする場合でも、第2の車両の代わりに第1の車両が第1のデータをダウンロードして第2の車両へ送信してくれるようになる。これによって、第2の車両は、第1のデータを安定して取得することができる。
【0013】
本開示の態様の一つでは、制御部は、複数の車両から、走行予定経路における通信速度に基づいて、第2の車両の代わりに第1のデータをダウンロードする第1の車両を選択するようにしてもよい。この場合には、制御部は、第2の車両の走行予定経路における通信速度が第1の閾値未満である場合に、第1の車両を選択するようにしてもよい。複数の車両は、情報処理装置が管理する車両である。走行予定経路における通信速度は、例えば、各地点で測定された下り通信速度の測定結果を地図上にプロットした通信速度地図から取得されてもよい。本開示の態様の一つによれば、通信環境の良し悪しを走行予定経路における通信速度に基づいて判定することができる。
【0014】
本開示の態様の一つでは、制御部は、複数の車両から、通信による負荷にさらに基づいて、第1の車両を選択するようにしてもよい。この場合に、制御部は、複数の車両のうち
、通信による負荷が第2の閾値未満であり、且つ、通信速度が最も速い車両を第1の車両として選択するようにしてもよい。例えば、情報処理装置が管理する車両が自律走行又は自動走行する車両である場合には、走行による通信の処理の負荷がかかっている。自律走行又は自動走行する車両に、第1のデータのダウンロードを走行中に行わせることによって通信負荷が増加し、当該車両の走行に影響を及ぼす可能性がある。したがって、第1の車両の選択に通信負荷を考慮することによって、第1の車両に選択される車両の走行の安全性を担保することができる。なお、通信による負荷は推定値であってもよい。
【0015】
本開示の他の態様の一つでは、制御部は、複数の車両それぞれの通信による負荷を、複数の車両それぞれの走行予定経路に含まれる道路の種類に基づいて、取得してもよい。道路の種類には、例えば、高速道路、及び、一般道路がある。例えば、高速道路は、一般道路に比べると、信号がなかったり、直線区間が長かったり、歩行者がいなかったりして、走行による通信負荷が一般道路よりも小さくなる傾向がある。本開示の態様の一つによれば、車両の通信による負荷を走行予定経路に含まれる道路の種類から取得することができる。
【0016】
本開示の態様の一つでは、制御部は、第2の車両と合流予定のある複数の車両から、第1の車両を選択してもよい。この場合には、制御部は、第1の車両との合流地点において、第1の車両へ第1のデータを送信するように指示してもよい。これによって、確実に第2の車両に第1のデータを渡せる車両を第1の車両として選択することができる。
【0017】
本開示の態様の一つでは、第1のデータは、第2の車両に搭載されるプログラムの更新用データであってもよい。この場合には、制御部は、第2の車両へ、第1の車両から第1のデータを受信することと、第1のデータによってプログラムを更新することと、を指示することをさらに実行してもよい。これによって、第2の車両は、通信環境が良くないエリアに存在している場合でも、プログラムの更新用データを取得して、当該プログラムを更新することができる。
【0018】
本開示の態様の一つでは、第1の車両は、中継装置を介する第1の通信によって、第1のデータのダウンロードを行い、中継装置を介さない第2の通信によって、第1のデータを第2の車両に送信してもよい。第1の通信は、例えば、5G(5th Generation)、LTE(Long Term Evolution)、及び、6G等の移動体通信方式による通信である。第2の
通信は、例えば、Bluthooth(登録商標)、及び、Wi-Fi等の無線通信方式である。これによって、第2の車両は、第1の通信において通信環境が良くないエリアに存在している場合でも、第1の車両から第2の通信を通じて第1のデータを取得することができる。
【0019】
本開示の他の態様は、上述の情報処理装置の処理を含む情報処理方法、コンピュータに上述の情報処理装置の処理を実行させるためのプログラム、及び、当該プログラムを記録する非一時的でコンピュータ読み取り可能な記録媒体として特定することができる。また、本開示の他の態様は、複数の車両と、上述の情報処理装置とを含む情報処理システムとしても特定することができる。
【0020】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0021】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の情報処理システム100のシステム構成の一例を示す図である。情報処理システム100は、車両2と、車両センタ3のコンピュータと、管制センタ4のコンピュータとを有する。以下、車両センタ3のコンピュータ、及び、管制センタ4の
コンピュータを単に車両センタ3、及び、管制センタ4とも呼ぶ。車両2と、車両センタ3と、管制センタ4とはネットワークN1で接続される。
【0022】
ネットワークN1は、有線ネットワーク、及び、無線ネットワークを含む。有線ネットワークは、例えば、コアネットワーク、バックボーン等とも呼ばれ、光ファイバ網等で例示されるブロードバンドネットワークである。無線ネットワークは、例えば、Long Term Evolution(LTE)、第5世代移動通信システム(5G)、第6世代移動通信システム
(6G)等の携帯電話網を含む。
【0023】
車両2は、例えば、車両である。車両は4輪でも、3輪でも、2輪でもよい。車両はエンジンで駆動されるものでもよいし、モータで駆動されるものでもよい。車両は自律走行可能または自動走行可能な自動運転システムを搭載した車両でもよい。
【0024】
図1のように、車両2は、Data Communication Module(DCM)21と、Central Electrical Control Unit(Central ECU)22と、User Interface (UIF)装置23と、予防安全装置24と、Advanced Drive System(ADS)25と、音・映像・NAV
I装置26とを有する。
【0025】
DCM 21は、ネットワークN1にアクセスし、他の移動体、車両センタ3、または、管制センタ4等と通信する。DCM 21は、移動体通信網を介した無線通信が可能である。
【0026】
Central ECU 22は、車両2内の各機器を管理する。Central ECU22は、例えば、プロセッサとメモリを有する。プロセッサはメモリ上のコンピュータプログラムを実行し、Central ECU 22としての処理を実行する。Central ECU 22は、例えば、車両2内の各機器に搭載されたECUで実行されるコンピュータプログラムを更新し、更新の進捗を管理する。また、Central ECU 22は、コンピュータプログラム
を更新したときのエラーを検出し、エラー発生時の処理を実行する。Central ECU
22とDCM 21の組み合わせは車両に搭載されたコンピュータの一例である。
【0027】
UIF装置23は、例えば、車両2内の各機器に搭載されたECUで実行されるコンピュータプログラムを更新するときに、ユーザインターフェースを提供する。ユーザインターフェースは、リプログラミングHuman Machine Interface(リプロHMI)とも呼ばれる
。UIF装置23も、Central ECU 22と同様のECUを有する。Central ECU
22、UIF装置23内のECU等は、共通ECU群と呼ぶことができる。
【0028】
予防安全装置24は、ECUを内蔵し、コンピュータプログラムの処理により衝突回避支援処理を実行する。予防安全装置24は、レーダ、及び、カメラ等のセンサからの信号を基に、例えば、衝突の回避のサポート、車線逸脱の報知、オートマチックハイビーム、レーダークルーズコントロール等を実行する。
【0029】
ADS 25には、Spatial Information Service(SIS)27、及び、Advanced Drive Extension(ADX)28等が接続される。ADS 25、SIS 27、及び、A
DX 28は、それぞれECUを内蔵し、コンピュータプログラムの処理により高度で先進的な運転支援処理を実行する。ADS 25は、例えば、Light Detection and Ranging(LiDAR)からの検出信号により車両2の周辺の車両または立体物等を検知し、車
両2自身の位置を推定し、運動制御を実行する。
【0030】
SIS 27は、車両2自身の姿勢、及び、地図上の位置等をADS 25に提供する。すなわち、SIS 27は、global navigation satellite system(GNSS)または
global positioning system(GPS)からの位置情報、ジャイロセンサからの6軸の加
速度信号、ナビゲーションシステムからの経路情報または地図情報等を取得する。SIS
27は、取得した情報を基に車両2自身の姿勢、及び、地図上の位置等を計算する。ADX 28は、Artificial Intelligence(AI)システムを適用し、上記の様々なセンサ
等からの情報を認識し、処理し、処理結果をADS 25に通知する。
【0031】
音・映像・NAVI装置26には、Automated Mapping Platform(AMP)29、MET 2A、及び、Rear Seat Entertainment(RSE)2Bが接続される。音・映像・N
AVI装置26、AMP 29、MET 2A、及び、RSE 2BはそれぞれECUを内蔵し、コンピュータプログラムの処理により、車両2の利用者に音、映像、及び、地図情報等による様々な機能を提供する。
【0032】
AMP 29は、車両2に搭載したカメラ等のセンサで収集した画像などのデータから地図情報を生成する。RSE 2Bは、車両2が後部座席を有する車両の場合に、車室内の後席で、独立してテレビジョン放送、及び、Digital Versatile Disc(DVD)映像などを後席に着座する利用者に提供する。
【0033】
以上の予防安全装置24、ADS25、及び、音・映像・NAVI装置26のECUと、これらに接続される各装置のECUは、個別ECU群と呼ぶことができる。Central ECU 22は、個別ECU群に搭載されるコンピュータプログラムの更新の進捗と更新時のエラーを管理する。
【0034】
車両センタ3は、車両2を販売し、または、車両2を保守する会社等の組織またはその会社等から委託を受けた会社等により運用される。車両センタ3は、これらの会社等が販売し、または、保守するすべての移動体に搭載されるECU等の部品を管理する。また、車両センタ3は、これらのECUそれぞれで実行されるコンピュータプログラムの種類とバージョンを管理する。車両センタ3は車両2等にコンピュータプログラムを更新するための更新用データを配信する。更新用データは単に更新プログラムということもできる。
【0035】
管制センタ4は、それぞれの車両2の走行、及び、保守等を管理する。管制センタ4は、例えば、フリートマネジメントサービス(FMS)を提供するFMS会社のコンピュータである。管制センタ4は、非定期で利用されるサービス、例えば、ライドシェアサービスにおける車両2の走行開始日時、走行終了日時、及び、保守日時を含むシェアリングでの利用のスケジュールを管理する。また、管制センタ4は、レンタルで利用される車両2の貸し出しのスケジュールを管理する。管制センタ4は、スケジュールを適時更新し、車両2に配布し、車両2の運行を管理する。以下、スケジュールと称する場合には、例えば、一日、一週間、及び、一カ月等の全体的な予定を指す場合、及び、所定の2地点間の移動、及び、プログラムの更新等の1又は複数のイベントを実行する1つのアイテムを示す場合がある。例えば、「スケジュールを作成する」、「スケジュールを計画する」という場合には、スケジュールの一つのアイテムについて言及している。
【0036】
上記の通り、車両2は、ECUを内蔵する様々な部品を搭載する。各部品内のECUで実行されるコンピュータプログラムは、改良または不具合対策に伴う更新を受ける。ところで、車両2は安全性が要求される。そのため、車両2に搭載されたECU用のコンピュータプログラムの更新は、車両2が走行を停止している間に実行される。
【0037】
車両センタ3は、各ECUのコンピュータプログラムについての最新の更新内容と更新用データの配信のスケジュールをリリースNOTEの形式で、管制センタ4に通知する。管制センタ4は、リリースNOTEを受信すると、それぞれの車両2のスケジュールに、各ECUのコンピュータプログラムの更新を組み込む。すなわち、管制センタ4は、各車
両2が走行していない保守期間中に各ECUのコンピュータプログラムの更新が完了するように車両2のスケジュールを計画する。管制センタ4は、確定したスケジュールを車両2に通知し(図1の計画配信)、それぞれのECUのコンピュータプログラムの更新を実行させる。
【0038】
車両2のDCM 21は、ネットワークN1を介して、車両センタ3、及び、管制センタ4と通信する。DCM 21は、管制センタ4からコンピュータプログラムの更新を含むスケジュールを受信する(図1の計画配信)。Central ECU 22は、DCM 21と例えば、Ethernet(登録商標)によって例示される移動体内のネットワークで接続される。
【0039】
DCM 21は、受信したスケジュールにしたがって、車両センタ3にアクセスし、コンピュータプログラムを更新するための更新用データを取得し、Central ECU 22に転送する。Central ECU 22は、車両2が停止中の保守期間中に共通ECU群、及び、個別ECU群を含む各ECUのコンピュータプログラムを更新する。DCM 21は、Central ECU 22による各ECUの更新が完了すると、完了報告を管制センタ4に通知する。
【0040】
UIF装置23は、例えば、Controller Area Network(CAN(登録商標))で例示される移動体内のネットワークによってCentral ECU 22と接続される。UIF装置23は、リプロHMIを介して、利用者の操作による確認の入力を受け付けてもよい。すなわち、Central ECU 22は、UIF装置23でユーザにコンピュータプログラムの更新開始の確認を求め、確認が得られた後に、更新を開始してもよい。なお、UIF装置23自身も、Central ECU 22から更新用データを取得し、UIF装置23のコンピュータプログラムを更新する。
【0041】
予防安全装置24は、例えば、Controller Area Network with Flexible Data rate (
CAN-FD(CANは登録商標))で例示される車両2内のネットワークによってCentral ECU 22と接続される。予防安全装置24は、Central ECU 22からコンピ
ュータプログラムの更新用データを受け、更新を実行する。そして、予防安全装置24は、更新に伴うステータスをCentral ECU 22に報告する。
【0042】
ADS 25と音・映像・NAVI装置26は、例えば、Ethernet(登録商標)で例示される移動体内のネットワークでCentral ECU 22と接続される。ADS 25と音・映像・NAVI装置26は、それぞれ、Central ECU 22からコンピュータプログラムの更新用データを受ける。そして、ADS25と音・映像・NAVI装置26は、それぞれ、自身、及び、配下のECUのコンピュータプログラムの更新を実行する。ADS 25と音・映像・NAVI装置26は、更新に伴うステータスをCentral ECU 22に報告する。以上がリリースNOTEの発行による通常の車両2のプログラムの更新の流れである。
【0043】
第1実施形態では、管制センタ4は、リリースNOTEの更新対象のプログラムを搭載している車両2が、更新用データの配信開始日時以降の所定期間において存在するエリアの通信環境の良し悪しを判定する。例えば、車両2が通信環境の良くないエリアを走行し、さらに、駐車場所も当該エリア内である場合には、当該車両2は、更新用データのダウンロードが中断したり、時間がかかり過ぎたりして、更新用データを安定的にダウンロードできない可能性が高い。そこで、第1実施形態では、管制センタ4は、車両2の代わりに他の車両2に更新用データをダウンロードさせる。
【0044】
図2は、第1実施形態に係る更新用データの代替ダウンロードの処理の一例を示す図で
ある。管制センタ4は、車両センタ3からのリリースNOTEを受信し、当該リリースNOTEの更新対象であるプログラムを搭載している車両2Aを特定する。管制センタ4は、例えば、車両2Aのスケジュールから、車両2Aが更新用データの配信開始日時以降の所定の期間において通信環境の良くないエリアに存在することを検出する。通信環境の良し悪しは、例えば、通信速度地図から得られる各地点において得られる通信速度に基づいて判定される。
【0045】
例えば、通信速度が所定の閾値未満である場合には、通信環境が良くないことが判定される。通信速度地図は、例えば、各通信キャリアについて公開されている、各移動体通信方式において、各地点における下り通信速度の測定結果が地図上にプロットされたものである。ただし、これに限られず、通信速度地図は、理論上の下りの通信速度を示すものであってもよい。なお、下りの通信速度とは、基地局から端末の方向への通信の速度であって、受信通信速度とも呼ばれる。
【0046】
管制センタ4は、通信環境が良いエリアを走行する予定があり、かつ、更新用データの配信開始日時以降に車両2Aと合流する予定のある車両2の中から、車両2Aの代わりに更新用データのダウンロードを行わせる車両2Bを選択する。車両2Aとの合流には、例えば、駐車場所、待機場所、又は、メンテナンスを行う場所等が同じであることを含む。
【0047】
管制センタ4は、車両2Bについて、通信環境の良いエリアを走行中に更新用データをダウンロードすることを含むスケジュールと、当該更新用データを車両2Bへ送信することを含むスケジュールを作成し、車両2Bへ送信する。また、管制センタ4は、車両2Aについて、車両2Bから更新用データを受信し、当該更新用データで該当のプログラムの更新を行うことを含むスケジュールを作成し、車両2Aへ送信する。
【0048】
車両2A及び車両2Bは、管制センタ4及び車両センタ3とは、第1実施形態では、移動体通信方式によってネットワークN1に接続して通信を行う。これに対して、車両2Aと車両2Bとの間では、例えば、Bluthooth(登録商標)等の近距離無線通信によって直接通信可能であり、更新用データのやり取りはBluthooth(登録商標)等の近距離無線通信によって行われる。車両2Aは、「第2の車両」の一例である。車両2Bは、「第1の車両」の一例である。移動体通信方式は、「第1の通信」の一例である。Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信は、「第2の通信」の一例である。
【0049】
図3は、リリースNOTEの一例である。リリースNOTEは、車両センタ3から管制センタ4に送信される。図3に示される例では、リリースNOTEは、“キーワード:値”の形式で、キーワードに対する値が指定されている。また、図3に示される例では、“キーワード:値”の組が中括弧“{}”で閉じられて、階層的に記述されている。
【0050】
図3に示される例では、リリースNOTEには、キーワードとして、車両の種別(vehicle type)、リリースされるシステムのバージョン(System Version)、配信開始日時(release date)、ECUの種別(ECU type)、リリースされるプログラムの種類(Program type)、リリースされるプログラムのバージョン(Version)、及び、更新用データ
のサイズ(Volume)が含まれている。
【0051】
すなわち、図3に示される例では、E-palette G0という種別の車両2の、V07-01のバージョンのシステムについて、ddmmmyyyyという日時に更新用データの配信が開始されるこ
とを示すリリースNOTEである。ここで、システムのバージョン(System Version)は、車両3にインストールされるコンピュータプログラム群全体に付与されるバージョンである。また、このリリースNOTEには、ECUの種別(ECU type)ごとに、プログラム
の種類、バージョン、更新用データのデータサイズ(データ量、Volume)等が記述さている。例えば、Central ECUのプログラムであるPC1のバージョンはV07-01-1であり、デ
ータサイズがV1 MBであることが分かる。
【0052】
なお、リリースNOTEの形式は、図3に示される例に限定される訳ではない。例えば、リリースNOTEは、HyperText Markup Language(HTML)、または、Extensible Markup Language(XML)等の規定のフォーマットで記述されてもよい。また、リリー
スNOTEは、複数の要素を含むレコードを配列した表形式で記述されてもよい。
【0053】
図4は、管制センタ4のハードウェア構成の一例を示す図である。管制センタ4は、例えば、サーバである。管制センタ4は、ハードウェア構成として、CPU 401、メモリ 402、補助記憶装置403、及び、通信部404を備える。管制センタ4のコンピュータは、「情報処装置」の一例である。
【0054】
CPU 401は、インタフェース(I/F)を通じて、外部機器と接続し、プログラムを実行して所定の処理を実行する。CPU 401は、プロセッサの一つである。CPU 401は、単一のプロセッサに限定されず、マルチプロセッサ構成であってもよい。また、CPU 401は、Graphics Processing Unit(GPU)、及び、Digital Signal
Processor(DSP)等を含むものであってもよい。また、CPU 401は、Field Programmable Gate Array(FPGA)等のハードウェア回路と連携するものでもよい。イ
ンタフェース(I/F)を通じてCPU 401と接続する外部機器としては、補助記憶装置403、及び、通信部404がある。その他に、インタフェース(I/F)を通じて、例えば、ディスプレイ等の出力装置、及び、キーボード及びマウス等の入力装置がCPU 401に接続されてもよい。CPU 401は、「制御部」の一例である。
【0055】
CPU 401は、メモリ402に実行可能に展開されたコンピュータプログラムを実行し、管制センタ4の機能を提供する。メモリ402は、CPU 401が実行するコンピュータプログラム、及び、CPU 401が処理するデータ等を記憶する。メモリ402は、Dynamic Random Access Memory(DRAM)、Static Random Access Memory(S
RAM)、及び、Read Only Memory(ROM)等である。補助記憶装置403は、例えば、メモリ402を補助する記憶領域として使用される。補助記憶装置403は、CPU 401が実行するコンピュータプログラム、及び、CPU 401が処理するデータ等を記憶する。外部記憶装置403は、ハードディスクドライブ、及び、Solid State Disk(SSD)等である。管制センタ4には、着脱可能記憶媒体の駆動装置が設けられてもよい。着脱可能記憶媒体は、例えば、ブルーレイディスク、Digital Versatile Disk(DVD)、Compact Disc(CD)、及び、フラッシュメモリカード等である。
【0056】
通信部404は、ネットワーク上の他の装置とデータを授受する。例えば、通信部404は、ネットワークN1を介して、DCM 21と通信する。通信部404は、例えば、LAN(Local Area Network)や専用線等の有線のネットワークカードであり、当該LAN等のアクセスネットワークを通じてネットワークN1に接続する。管制センタ4のハードウェア構成は、図4に示されるものに限定されない。
【0057】
車両センタ3も管制センタ4と同様に、CPU、メモリ、補助記憶装置、及び、通信部を備える。DCM 21は、CPU、メモリ、補助記憶装置、及び、無線通信部を備える。DCM 21が備える無線通信部は、例えば、5G、LTE、LTE-Advanced、及び、3G等の移動体通信方式、又は、WiFi等の無線通信方式に対応する無線通信回路である。無線通信部は、無線通信によってアクセスネットワークに接続し、当該アクセスネットワークを通じてネットワークN1に接続する。
【0058】
図5は、管制センタ4の機能構成の一例を示す図である。管制センタ4は、機能構成として、制御部41、車両情報データベース(DB)42、及び、スケジュール情報DB 43を備える。これらの機能構成要素は、例えば、管制センタ4のCPU 404が所定のプログラムを実行することによって達成される。
【0059】
制御部41は、車両2の走行を管理する。制御部41は、通信部404を通じて、車両センタ3からリリースNOTEを受信する。車両2は、リリースNOTEを受信すると、プログラムの更新の対象となる車両2を抽出し、それぞれについて更新のスケジュールを作成する。リリースNOTEが示す更新の対象となる車両2は、図3に示されるリリースNOTEの場合には、リリースNOTEに含まれる、車両の種別(vehicle type)とシステムのバージョン(System Version)とが合致し、且つ、最終更新日がリリースNOTEに含まれる配信開始日時(release date)より前である車両2である。
【0060】
第1実施形態では、制御部41は、通信環境の良くないエリアに存在する車両2については、他の車両2に更新用データのダウンロードを行わせ、更新対象の車両2に更新用データを渡すようにスケジュールを作成する。それ以外の更新については、制御部41は、例えば、リリースNOTEの配信開始日時以降の最初の保守又は待機のスケジュールにおいて、リリースNOTEが示す更新用データのダウンロードと更新とを組み込む。
【0061】
制御部41は、リリースNOTEが示す更新の対象となる車両2が、配信開始日時以降の所定の期間、通信環境の良いエリアに存在するか否を判定する。配信開始日時以降の所定の期間は、例えば、配信開始日における配信開始日時以降の時間帯である。ただし、これに限られず、例えば、配信開始日時以降の24時間、又は、1週間等であってもよい。
【0062】
第1実施形態では、通信環境の良し悪しは、通信速度に基づいて判定される。具体的には、制御部41は、配信開始日時以降の所定の期間、車両2が走行するエリア及び駐車又はメンテナンス等を行う場所のそれぞれにおいて得られる通信速度が所定の閾値未満である場合に、通信環境が良くないことを判定する。所定の閾値は、例えば、1Mbps~5Mbpsの範囲で設定されてもよい。制御部41は、配信開始日時以降の所定の期間、車両2が走行するエリア及び駐車又はメンテナンス等を行う場所を、スケジュール情報DB
43を参照して、特定する。制御部41は、特定した場所における通信速度を、車両2に採用されている通信キャリアの通信速度地図から取得する。制御部41は、車両2に採用されている通信キャリアを、車両情報DB 42を参照して、特定する。
【0063】
制御部41は、車両2の代わりに更新用データをダウンロードする車両2を選択する。以下、更新の対象の車両2を対象車両と称する。車両2の代わりに更新用データをダウンロードすることを代替ダウンロードと称する。代替ダウンロードを実行する車両2を代替車両と称する。代替車両は、管制センタ4の管理下にある車両2から、配信開始日時以降の所定の期間において、対象車両と合流予定があり、且つ、走行するエリアの通信環境の良い車両の中から選択される。以下、車両2が走行するエリアを、単に走行エリアと称する。走行エリアは、車両2の走行経路または走行予定経路を含むエリアである。対象車両は「第2の車両」の一例である。代替車両は、「第1の車両」の一例である。更新用データは、「第1のデータ」の一例である。
【0064】
対象車両との合流予定は、例えば、対象車両と同じ場所における、待機、又は、メンテナンスの予定である。ただし、対象車両との合流予定はこれらに限定されない。各車両2の、配信開始日時以降の所定の期間内のスケジュール及び走行エリアは、スケジュール情報DB 43を参照することで取得される。各車両2の通信環境の良し悪しは、第1実施形態では、通信速度で判定される。走行エリアにおいて得られる通信速度が所定の閾値以上である場合に、制御部41は、車両の通信環境が良いことを判定する。車両2の通信環
境の良し悪しを判定する閾値は、対象車両の通信環境の良し悪しを判定する閾値と同じで合っても異なっていてもよい。各車両2が走行エリアにおいて得られる通信速度は、例えば、各車両2に採用されている通信キャリアの通信速度地図から取得される。
【0065】
制御部41は、抽出された車両2のうち、予想通信負荷が閾値未満である車両2をさらに抽出する。車両2の予想通信負荷は、配信開始日時以降の所定の期間において車両2が走行する経路に含まれる道路の種類に基づいて取得される推定値である。例えば、道路の種類には、一般道路と高速道路とがある。一般道路では、信号があったり、左折又は右折したり、細い道があったり、歩行者がいたり、対向車線を走行する車両があったりして、高速道路を走行するときよりも、走行にかかる管制センタ4との通信による車両2の処理負荷が高くなる傾向がある。したがって、一般道路を走行する場合の方が高速道路を走行する場合よりも車両2に係る通信負荷が高い。なお、制御部41は、高速道路を走行する場合の予想通信負荷、及び、一般道路を走行する場合の予想通信負荷は、例えば、過去の走行履歴から取得し、補助記憶装置403に保持している。予想通信負荷は、例えば、割合で示される。車両2を抽出する際の予想通信負荷の閾値は、例えば、80%である。
【0066】
制御部41は、予想通信負荷が閾値未満である車両2のうち、走行エリアにおいて得られる通信速度が最も速い車両2を代替車両として選択する。車両2の通信速度は、例えば、配信開始日時以降の所定の期間において車両2の走行エリアにおいて得られる通信速度の平均値、最小値、中央値、又は最大値のいずれであってもよい。
【0067】
制御部41は、代替車両について、走行中に更新用データをダウンロードするスケジュールと、対象車両との合流場所において更新用データをBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信によって対象車両へ送信するスケジュールとを作成する。走行中に更新用データをダウンロードするスケジュールは、例えば、配信開始日時から、対象車両との合流予定に該当するスケジュールの開始時刻までの間の、走行を含む既存のスケジュールに更新用データをダウンロードすることを追加して作成される。対象車両へ更新用データを送信するスケジュールは、例えば、配信開始日時以降の、対象車両との合流予定に該当するスケジュールに、更新用データを対象車両へ送信することを追加して作成される。
【0068】
また、制御部41は、対象車両について、代替車両との合流場所において、更新用データを代替車両から近距離無線通信によって受信するスケジュールと、更新用データで対象のプログラムの更新を行うスケジュールとを作成する。更新用データを代替車両から受信するスケジュールは、例えば、配信開始日時以降の、代替車両との合流予定に該当するスケジュールに、更新用データを代替車両から受信することを追加して作成される。対象のプログラムの更新を行うスケジュールは、例えば、更新用データを代替車両から受信するスケジュールの後の最初の、待機又はメンテナンスの既存のスケジュールに、更新用データを代替車両から受信することを追加して作成される。
【0069】
制御部41は、作成した対象車両及び代替車両それぞれについてのスケジュールをスケジュール情報DB 43に登録し、対象車両及び代替車両それぞれに送信する。また、上記の制御部41が作成した作成した対象車両及び代替車両それぞれについてのスケジュールとともに、例えば、該当するリリースNOTEに含まれる情報、及び、対象車両及び代替車両に関する情報も送信される。リリースNOTEに含まれる情報は、例えば、図3に示される通りである。対象車両及び代替車両に関する情報には、例えば、対象車両及び代替車両の識別情報、及び、近距離無線通信に用いられる情報等が含まれている。車両2は、管制センタ4からのスケジュールに従った動作及び処理を行うため、車両2へスケジュールを送信することは、車両2へ所定の動作又は処理を指示することと同義である。
【0070】
車両情報DB 42及びスケジュール情報DB 43は、管制センタ4の補助記憶装置
403内の記憶領域に作成される。車両情報DB 42は、車両2に関する情報を保持する。スケジュール情報DB 43は、車両2のスケジュールに関する情報を保持する。
【0071】
図6は、管制センタ4のスケジュール情報DB 43に保持されるスケジュールに関する情報の一例である。スケジュールは、車両2ごとに作成される。図6に示されるスケジュールに関する情報には、車両ID、年月日、時間帯、及び、アイテムの項目が含まれる。車両IDの項目には、車両2の識別情報が格納されている。年月日の項目には、該当のスケジュールの年月日が格納されている。すなわち、図6の例では、スケジュールは、1日単位で作成されている。時間帯の項目には、各時間帯を示す情報が格納されている。
【0072】
アイテムの項目には、アイテムに関する情報が格納されている。当該アイテムに関する情報をスケジュール情報と称する。スケジュール情報には、例えば、アイテムの種類を示す情報が格納されている。アイテムの種類には、例えば、走行、ダウンロード、及び、更新等がある。ただし、アイテムの種類はこれらに限定されない。プログラムの更新処理には、更新用データのダウンロードと、対象のプログラムを更新用データで書き換える処理とが含まれる。なお、第1実施形態において、スケジュールのアイテムの種類が更新であることは、対象のプログラムを更新用データで書き換える処理を行うことが示される。
【0073】
アイテムの種類が走行である場合には、スケジュール情報には、例えば、移動のための走行であるのかサービス提供のための走行であるのかを示す情報、出発地、目的地、及び、経路情報が含まれる。スケジュール情報には、当該アイテムの開始時刻及び終了時刻も含まれる。アイテムの開始時刻及び終了時刻は、それぞれ、出発予定時刻及び到着予定時刻ともいう。走行を提供するサービスは、例えば、配車サービス、及び、ライドシェアサービス等である。サービスの提供ための走行である場合には、スケジュール情報にサービスに関する情報が含まれてもよい。サービスに関する情報は、例えば、ユーザの識別情報、及び予約情報等である。予約情報には、例えば、ユーザによって指定された乗車希望時刻、到着予定時刻、乗車地、及び、降車地等が含まれる。なお、図6に示される例では、アイテムが開始時刻から終了時刻の期間に合わせて配置されている。経路情報には、例えば、走行予定経路、通過する道路の識別情報及び種類、経由地を示す位置情報等が含まれている。
【0074】
アイテムの種類がダウンロードである場合には、スケジュール情報には、例えば、開始時刻、及び、ダウンロード対象のファイル名等が含まれる。スケジュール情報には、ダウンロードの終了予定時刻が含まれてもよい。アイテムの種類が更新である場合には、スケジュール情報には、例えば、開始時刻、及び、更新用データの識別情報等が含まれる。1つのアイテムにおいて、複数の種類が含まれることもある。例えば、走行中にダウンロードする場合には、アイテムの種類は、走行中とダウンロードとになる。
【0075】
例えば、図6には、車両ID:E-PALETTE EV1の年月日DDMMMYYYYにおけるス
ケジュールが示されている。車両ID:E-PALETTE EV1の車両2は、0:00から9:0
0までの間は、アイテムが設定されておらず、待機状態となっている。車両ID:E-PALETTE EV1の車両2は、9:00から走行を開始する。9:00からの走行は、ユーザを載
せておらず、次のスケジュールのための移動である。車両ID:E-PALETTE EV1の車両2
は、9:45から11:00まで、サービスの提供ための走行を行う。
【0076】
車両ID:E-PALETTE EV1の車両2は、11:00から12:00まで、移動のための
走行と、走行中にダウンロードを行う。12:00には、車両ID:E-PALETTE EV1の車
両2は、走行を停止し、更新を行う。以降、車両ID:E-PALETTE EV1の車両2は、13
:00から23:00まで走行し、23時以降運行を停止し、待機状態となる。なお、図6の例では、13:00から22:00までの間のスケジュールの詳細は省略されている
【0077】
制御部41は、例えば、スケジュールに変更が発生した場合には、車両2へ、1日単位の全体のスケジュールを送信してもよいし、変更が生じたアイテムのスケジュール情報を抽出して送信してもよい。例えば、リリースNOTEの受信によって、図6に示される車両ID:E-PALETTE EV1の車両2の11:00から12:00までの、移動のための走行
と、走行中にダウンロードとを行うアイテムと、12:00から13:00までの更新のアイテムとが、追加された場合には、制御部41は、当該2つのアイテムのスケジュール情報を含む年月日DDMMMYYYYにおけるスケジュール全体を車両2へ送信してもよい。または、制御部41は、追加された2つのアイテムのスケジュール情報のみを車両2へ送信してもよい。なお、追加された2つのアイテムによって他のアイテムに変更が生じる場合には、当該アイテムのスケジュール情報も車両2へ送信される。
【0078】
なお、図6に示されるスケジュールは一例であり、管制センタ4が作成するスケジュールが図6に限定される訳ではない。例えば、運行スケジュールは1日ごとに作成されなくもよく、例えば、1週間単位で作成されてもよい。また、運行スケジュールは1ヶ月単位で作成されてもよい。また、スケジュールは、平日(月~金)、土曜日、及び、休祝日ごとに作成されてもよい。
【0079】
図7は、管制センタ4の車両情報DB 42に保持される車両情報の一例である。車両情報は、車両2に関する情報である。車両情報に、管制センタ4の車両情報DB 42に保持される。図7に示される例では、車両情報は、車両ID、最終更新日、コンピュータプログラム群全体のシステムバージョン、及び、採用キャリアの項目を有する。
【0080】
車両IDの項目には、車両2の識別情報が格納される。最終更新日の項目には、車両2が、最後に、各部のECUのコンピュータプログラム群を更新した更新日が格納される。コンピュータプログラム群のシステムバージョンの項目には、車両2における更新後のコンピュータプログラム群全体のバージョンが格納される。
【0081】
採用キャリアの項目には、車両2に採用されている通信キャリアを示す情報が格納される。車両2に採用されているとは、例えば、通信キャリアのSIMカードがDCM 21に挿入されていることを示す。通信キャリアを示す情報は、例えば、コード、又は、通信キャリア名である。車両2に採用されている通信キャリアが複数である場合には、採用キャリアの項目には、車両2に採用されている複数の通信キャリアを示す情報が格納される。車両2に複数の通信キャリアが採用されている場合には、制御部41は、通信環境の良し悪しを判定する際に、車両2に採用されている各通信キャリアの通信速度地図を参照し、例えば、得られる通信速度のうち最も速い通信速度を用いて判定を行ってもよい。例えば、スケジュールにおいて、使用する通信キャリアが指定されている場合には、制御部41は、指定されている通信キャリアの通信速度地図のみを参照する。なお、図7に示される車両情報は一例であって、車両情報に含まれる情報は図7に示されるものに限定されない。
【0082】
(処理の流れ)
図8は、管制センタ4のリリースNOTE受信による更新スケジュールの作成処理のフローチャートの一例である。図8に示される処理は、車両2の1台ずつに対して実行される。図8に示される処理は、管制センタ4が車両センタ3から、車両2を対象とするリリースNOTEを受信すると開始される。図8に示される処理の実行主体は、管制センタ4のコンピュータのCPU 401であるが、便宜上、機能構成要素を主体として説明する。以下の他のフローチャートについても同様である。
【0083】
OP101では、制御部41は、配信開始日時以降の対象車両が存在するエリアをスケジュール情報DB 43を参照して特定する。対象車両が存在するエリアは、例えば、対象車両の走行経路、駐車場所、待機場所、及び、メンテナンスを実施する場所等を含む地理的範囲である。
【0084】
OP102では、制御部41は、対象車両が存在するエリアにおいて、対象車両が得られる通信速度が所定の閾値未満であるか否かを判定する。対象車両が得られる通信速度は、例えば、対象車両が存在するエリアにおいて対象車両が得られる通信速度の平均値、中央値、最小値、又は、最大値のいずれかである。対象車両が存在するエリアにおいて得られる通信速度は、例えば、対象車両に採用されている通信キャリアの通信速度地図に基づいて取得される。通信速度地図は、例えば、インターネットを通じて取得される。
【0085】
対象車両が存在するエリアにおいて、対象車両が得られる通信速度が所定の閾値未満である場合には(OP102:YES)、処理がOP103へ進む。OP103では、代替ダウンロードを行う代替車両を特定する代替車両の特定処理が実行される。OP103における代替車両の特定処理の詳細は後述される。その後、処理がOP104へ進む。
【0086】
OP104では、制御部41は、対象車両と代替車両とのそれぞれについて、対象車両の更新に関するスケジュールを作成し、対象車両及び代替車両のそれぞれへ送信する。代替車両について作成されるスケジュールは、配信開始日時以降の所定期間において走行中に更新用データをダウンロードすることを含むスケジュールと、走行していない間に対象車両との合流場所において対象車両に近距離無線通信で更新用データを送信することを含むスケジュールである。対象車両について作成されるスケジュールは、配信開始日時以降の所定の期間において、代替車両との合流場所において代替車両から近距離無線通信によって更新用データを受信することを含むスケジュールと、当該更新用データで該当するプログラムを更新することを含むスケジュールである。制御部41は、これらのスケジュールをスケジュール情報DB 43に登録する。その後、図8に示される処理が終了する。
【0087】
対象車両が存在するエリアにおいて、対象車両が得られる通信速度が所定の閾値以上である場合には(OP102:NO)、処理がOP105へ進む。対象車両が得られる通信速度が所定の閾値以上である場合には、対象車両自身が安定して更新用データをダウンロードできることが示される。OP105では、制御部41は、対象車両について、配信開始日時以降の走行していない時間帯において、更新用データを車両センタ3からダウンロードし、更新用データで該当のプログラムを更新することを含むスケジュールを作成し、対象車両へ送信する。また、制御部41は、作成した対象車両についてのスケジュールをスケジュール情報DB 43に登録する。その後、図8に示される処理が終了する。
【0088】
図9は、代替車両の特定処理のフローチャートの一例である。図9に示される処理は、図8のOP103において実行される処理である。OP201では、制御部41は、管理下の車両2から、スケジュール情報DB 43を参照して、対象車両と配信開始日時以降の所定の期間に合流予定のある車両を抽出する。対象車両との合流予定は、例えば、対象車両と同じ場所における、待機、又は、メンテナンスの実施等の予定である。
【0089】
OP202では、制御部41は、スケジュール情報DB 43を参照して、配信開始日時から対象車両との合流予定の時刻までの間において、抽出した車両2のそれぞれについて、走行エリアにおいて得られる通信速度と予想通信負荷とを取得する。各車両2の走行エリアにおいて得られる通信速度は、車両2の走行予定経路において得られる通信速度の平均値、中央値、最小値、又は、最大値のいずれか、対象車両が存在するエリアにおいて得られる通信速度と同様の者が用いられる。車両2の走行予定経路において得られる通信速度は、車両2に採用されている通信キャリアの通信速度地図から取得される。各車両2
の予想通信負荷は、例えば、各車両2の走行経路における道路の種類に基づいて取得される。
【0090】
OP203では、制御部41は、抽出した車両2から、予想通信負荷が所定の閾値未満である車両2をさらに抽出する。OP204では、OP203において抽出された車両2のうち、走行エリアにおいて最も速い通信速度を得られる車両2を代替車両として選択する。その後、図9に示される処理が終了し、処理が図8のOP104へ進む。
【0091】
例えば、対象車両と配信開始日時以降の所定の期間に合流予定のある車両として、以下の3台が抽出された(OP201、OP202)ことを想定する。
車両A 走行エリアの通信速度:50Mbps、予想通信負荷:90%(一般道走行予定)
車両B 走行エリアの通信速度:25Mbps、予想通信負荷:60%(高速道路走行予定)
車両C 走行エリアの通信速度:35Mbps、予想通信負荷:60%(高速道路走行予定)
【0092】
予想通信負荷の閾値を80%とすると、予想通信負荷が閾値未満である60%の車両Bと車両Cとが抽出される(OP203)。車両Bと車両Cとでは、走行エリアにおいて得られる通信速度が車両Cの方が早いので、この例では、車両Cで代替車両として選択される(OP204)。
【0093】
<第1実施形態の作用効果>
第1実施形態では、リリースNOTEが示す更新の対象となる車両2が存在するエリアにおいて通信環境が良くない場合に、代わりに更新用データのダウンロードを行う代替車両が選択される。対象の車両2は、代替車両と合流したときに、代替車両から近距離無線通信で更新用データを受信し、当該更新用データで該当するプログラムの更新を行う。これによって、更新の対象となる車両2が存在するエリアにおいて通信環境が良くない場合でも、当該車両2は、更新用データを安定的に取得することができる。これによって、配信開始日時以降の所定の期間において、車両2が通信環境の良くないエリアに存在している場合でも、当該車両2は、更新用データが配信されてからより早い時点に、当該更新用データを取得し、該当のプログラムの更新を安定して実施することができる。
【0094】
<その他の変形例>
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。
【0095】
本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0096】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0097】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよ
い。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク、ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0098】
2・・車両
3・・車両センタ
4・・管制センタ
41・・制御部
42・・車両情報データベース
43・・スケジュール情報データベース
100・・情報処理システム
401・・CPU
402・・メモリ
403・・補助記憶装置
404・・通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9