(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】搬送ロボット
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240611BHJP
B61B 13/00 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G05D1/43
B61B13/00 C
(21)【出願番号】P 2021133567
(22)【出願日】2021-08-18
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 和実
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 英一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大典
(72)【発明者】
【氏名】茂木 俊介
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-205044(JP,A)
【文献】特開平07-109826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物を載置可能な本体部と、
前記本体部に設けられた駆動輪と、
建物内に立設された壁部の壁面に沿ってかつ走行経路に沿って延在する走行経路誘導部の延在方向と進行方向とが一致するように前記駆動輪を制御可能とされた駆動制御部と、
を有
し、
前記駆動制御部は、
前記走行経路誘導部としての手摺に沿って案内可能とされると共に前記本体部に対して当該本体部の高さ方向周りに回転可能に支持された回転部と、
前記延在方向と前記進行方向とが一致しているときの前記回転部の位置を基準として当該回転部の当該進行方向に対する回転角度を検出可能な回転角度検出部と、
を備えると共に、
前記回転角度が0度となるように前記駆動輪を制御可能とされている、
搬送ロボット。
【請求項2】
前記本体部には、歩行者が把持可能な把持部を備えたハンドレールが設けられている、
請求項
1に記載の搬送ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、宅配システムに関する発明が開示されている。この宅配システムは、ユーザ端末と、宅配管理装置と、宅配ロボット(搬送ロボット)とを備えている。そして、宅配管理装置からユーザ端末に荷物に関する情報を通知し、通知を受けたユーザ端末からの荷物の配送指示を宅配管理装置で受け付け、宅配管理装置が配送指示を受けた荷物の配送先までの経路を探索すると共に、探索した経路の情報を用いて宅配ロボットに荷物の配送を実行させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、宅配ロボットを荷物の配送先まで移動させるには、宅配ロボットを自律走行可能な構成とする必要がある。そして、そのためには、宅配ロボットの位置を取得するGPS(Global Positioning System)や宅配ロボットの周囲の障害物を検知する各種センサを搭載する必要があり、宅配ロボットの構成並びに制御が複雑なものとなる。
【0005】
一方で、宅配ロボットの移動範囲を建物の内側に限定すれば、宅配ロボットの構成並びに制御を単純化することが可能である。具体的には、建物内の路面に宅配ロボットの走行経路に沿ってマーカーを配置し、宅配ロボットをこのマーカーに沿って走行させるようにすれば、宅配ロボットの位置の取得や走行経路の設定に関する制御が不要となり、宅配ロボットの構成並びに制御の単純化を図ることができる。
【0006】
しかしながら、建物内の床面にマーカーを配置すると、マーカー上を人や物が移動することで、マーカーが損傷することが考えられるため、宅配ロボットの走行経路を維持するという点については、課題が残ることとなる。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、構成並びに制御を単純化しつつ、走行経路を容易に維持することができる搬送ロボットを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明に係る搬送ロボットは、搬送物を載置可能な本体部と、前記本体部に設けられた駆動輪と、建物内に立設された壁部の壁面に沿ってかつ走行経路に沿って延在する走行経路誘導部の延在方向と進行方向とが一致するように前記駆動輪を制御可能とされた駆動制御部と、を有し、前記駆動制御部は、前記走行経路誘導部としての手摺に沿って案内可能とされると共に前記本体部に対して当該本体部の高さ方向周りに回転可能に支持された回転部と、前記延在方向と前記進行方向とが一致しているときの前記回転部の位置を基準として当該回転部の当該進行方向に対する回転角度を検出可能な回転角度検出部と、を備えると共に、前記回転角度が0度となるように前記駆動輪を制御可能とされている。
【0009】
請求項1に記載の本発明によれば、本体部と、当該本体部に設けられた駆動輪とを備えており、本体部に搬送物を載置した状態で当該搬送物を搬送することができる。
【0010】
また、本発明では、駆動制御部を備えており、当該駆動制御部によって、搬送ロボットの走行経路に沿って延在する走行経路誘導部の延在方向と搬送ロボットの進行方向とが一致するように駆動輪が制御される。
【0011】
このため、本発明では、搬送ロボットの位置の取得や搬送ロボットの走行経路の設定に関する制御を行うことなく、搬送ロボットを走行経路に沿って走行させることができる。
【0012】
ところで、建物内の床面に走行経路誘導部を配置すると、走行経路誘導部上を人や物が移動することで、走行経路誘導部が損傷することが考えられる。
【0013】
ここで、本発明では、駆動制御部が、建物内に立設された壁部の壁面に沿って延在する走行経路誘導部の延在方向に基づいて駆動輪を制御することができるため、建物内の床面に走行経路誘導部を配置することなく搬送ロボットの走行経路を設定することができる。その結果、建物内における人や物の移動による走行経路誘導部の損傷を抑制することができる。
【0015】
また、本発明によれば、駆動制御部が回転部を備えており、当該回転部は、走行経路誘導部としての手摺に沿って案内可能とされると共に、搬送ロボットの本体部に対して当該本体部の高さ方向周りに回転可能に支持されている。
【0016】
このため、搬送ロボットの走行中において、手摺の延在方向と搬送ロボットの進行方向とが一致していないとき、すなわち当該進行方向が搬送ロボットの走行経路に対してずれているとき、回転部が本体部の高さ方向周りに回転することとなる。
【0017】
また、駆動制御部は、回転角度検出部を備えており、当該回転角度検出部は、手摺の延在方向と搬送ロボットの進行方向とが一致しているときの回転部の位置を基準として、当該回転部の当該進行方向に対する回転角度を検出する。
【0018】
そして、本発明では、駆動制御部が、回転部の回転角度が0度となるように、すなわち手摺の延在方向と搬送ロボットの進行方向とが一致するように、駆動輪を制御するため、搬送ロボットを手摺に沿って走行させることができる。
【0019】
請求項2に記載の本発明に係る搬送ロボットは、請求項1に記載の発明において、前記本体部には、歩行者が把持可能な把持部を備えたハンドレールが設けられている。
【0020】
請求項2に記載の本発明によれば、上述したように、建物内に設置された手摺に沿って搬送ロボットが走行することとなる。
【0021】
ところで、手摺に沿って搬送ロボットが走行すると、搬送ロボットの近傍に位置する手摺の一部は、利用することが困難となる。
【0022】
ここで、本発明では、本体部にハンドレールが設けられており、当該ハンドレールは、歩行者が把持可能な把持部を備えている。このため、本発明では、搬送ロボットの近傍において、歩行者は、搬送ロボットに設けられたハンドレールを手摺の代わりに用いることができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係る搬送ロボットは、構成並びに制御を単純化しつつ、走行経路を容易に維持することができるという優れた効果を有する。
【0029】
また、本発明に係る搬送ロボットは、建物内の既存の手摺を用いて走行経路を設定することができるという優れた効果を有する。
【0030】
請求項2に記載の本発明に係る搬送ロボットは、搬送物の搬送を行いつつ、歩行者を補助することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】第1実施形態に係る搬送ロボットの構成を模式的に示す側面図である。
【
図2】第1実施形態に係る搬送ロボットの構成を模式的に示す平面図である。
【
図3】第1実施形態に係る搬送ロボットの回転部の構成を模式的に示す正面図である。
【
図4】第1実施形態に係る搬送ロボットのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】第1実施形態に係る搬送ロボットに搭載された制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】第1実施形態に係る搬送システムの一部を構成するゲート装置の構成を模式的に示す正面図である。
【
図7】第1実施形態に係る搬送ロボットに搭載された制御装置による搬送ロボットの制御フローを示すフローチャートである。
【
図8】第1実施形態に係る搬送ロボットの走行中における回転部と手摺との関係を模式的に示す平面図である。
【
図9】第2実施形態に係る搬送ロボットの構成を模式的に示す側面図である。
【
図10】第2実施形態に係る搬送ロボットの構成を模式的に示す正面図である。
【
図11】第2実施形態に係る搬送ロボットのハードウェア構成を示すブロック図である
【
図12】第2実施形態に係る搬送ロボットに搭載された制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図13】第2実施形態に係る搬送ロボットに搭載された制御装置による搬送ロボットの制御フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、
図1~
図8を用いて、本発明に係る搬送ロボットの第1実施形態について説明する。
図1に示されるように、本実施形態に係る「搬送ロボット10」は、後述する「ゲート装置12(
図6参照)」と共に、搬送システム14の一部を構成している。
【0034】
図2にも示されるように、搬送ロボット10は、「本体部16」、一対の「駆動輪18」、一対のキャスター20、「ハンドレール22」、方向制御装置24及びトレー26を備えており、「建物28」内の通路30を走行可能とされている。
【0035】
なお、搬送ロボット10は、その前後方向において対称な構成とされているが、説明の便宜上、各図に示される矢印FRを搬送ロボット10の前後方向前側とし、矢印UPを搬送ロボット10の高さ方向上側とし、矢印LHを搬送ロボット10の幅方向左側とすることとする。また、以下では、特に断りのない限り、前後方向は搬送ロボット10の前後方向を意味し、高さ方向は搬送ロボット10の高さ方向を意味し、幅方向は搬送ロボット10の幅方向を意味するものとする。
【0036】
本体部16は、長手方向を前後方向とされた直方体状とされており、本体部16の上面には、「搬送物32」を載置可能とされている。なお、搬送物32としては、例えば、段ボール箱詰めされた種々の物品等が挙げられる。
【0037】
また、本体部16の前後方向中央部における幅方向両側には、駆動輪18が設けられている。そして、それぞれの駆動輪18には、駆動輪18に駆動力を付与するモータ34(
図4参照)が図示しない動力軸を介して連結されている。一方、本体部16の前後方向両側の部分における幅方向中央部には、それぞれキャスター20が設けられている。
【0038】
さらに、本体部16には、
図4に示されるように、一対のモータドライバ36及び制御装置38が搭載されている。そして、モータドライバ36は、それぞれ対応するモータ34及び制御装置38に電気的に接続されている。なお、モータ34等の搬送ロボット10に搭載された電子機器には、本体部16に搭載された図示しないバッテリから電力が供給されるようになっている。
【0039】
一方、ハンドレール22は、本体部16の前後方向中央部における幅方向右側の部分に設けられており、幅方向から見て高さ方向下側が開放されたU字状に曲げられたパイプ材でその主な部分が構成されている。
【0040】
また、ハンドレール22における高さ方向上側の部分には、前後方向に延在するラバーグリップ40が取り付けられており、図示しない歩行者が把持可能な「把持部22A」とされている。
【0041】
一方、方向制御装置24は、
図1~
図3に示されるように、「回転部42」と、回転部42を支持する支柱部44と、回転角度検出部としての「回転角度センサ46」とを備えている。
【0042】
回転部42は、天板48と、天板48に取り付けられた一対のガイド部50と、支持シャフト52とを備えている。なお、以下では、特に断りのない限り回転部42が基準位置にあることを前提として説明を続けていくこととする。
【0043】
天板48は、回転部42の高さ方向上側の部分を構成するとともに、平面視で矩形の板状とされており、長手方向を幅方向とされて配置されている。この天板48には、その幅方向左側の部分とその幅方向中央部分とに幅方向に延在するスリット部54が設けられている。なお、これらのスリット部54は、幅方向に延在する同一直線上に位置している。
【0044】
ガイド部50は、ローラ56、支持ブラケット58、ボルト60及びナット62を備えている。ローラ56は、ゴム製とされると共に高さ方向に延在する円筒状とされており、支持ブラケット58にボルト60及びナット62を介して支持されている。
【0045】
詳しくは、支持ブラケット58は、厚さ方向を高さ方向とされて幅方向に延在する上壁部58Aと、厚さ方向を高さ方向とされて上壁部58Aの高さ方向下側に上壁部58Aと平行に配置された下壁部58Bと、上壁部58Aの端部と下壁部58Bの端部とを高さ方向に繋ぐ側壁部58Cとを含んで構成されている。また、上壁部58A及び下壁部58Bには、図示しない被挿通部が形成されている。
【0046】
そして、ローラ56が支持ブラケット58の上壁部58Aと下壁部58Bとの間に配置された状態で、下壁部58Bの高さ方向下側からボルト60が、上壁部58A及び下壁部58Bの被挿通部、ローラ56及びスリット部54に挿通された状態でボルト60にナット62が締結されることで、ガイド部50は、天板48に取り付けられている。
【0047】
上記のように構成された一対のガイド部50は、ローラ56同士が幅方向に対向するように配置されている。そして、一対のローラ56によって、建物28内に立設された「壁部64」の「壁面64A」に沿って延在する走行経路誘導部としての「手摺66」が幅方向に挟持された状態となっている。
【0048】
なお、手摺66は、円柱状とされており、搬送ロボット10が走行する通路30に沿って延在すると共に、壁面64Aに通路30の延在方向に所定の間隔をあけて設けられた支持部68に建物下方側から支持されている。
【0049】
支持シャフト52は、高さ方向に延在する円筒状とされており、天板48の幅方向右側の端部から高さ方向下側に延出されている。そして、支持シャフト52は、その高さ方向下側の部分が支柱部44に支持されている。
【0050】
支柱部44は、有蓋角筒状とされており、その上壁部44Aには、図示しない被挿通部が形成されている。そして、支持シャフト52は、上壁部44Aの被挿通部に高さ方向上側から挿通されて、上壁部44Aの高さ方向下側に固定された図示しないベアリングを介して、支柱部44に高さ方向周りに回転可能に支持されている。
【0051】
なお、支持シャフト52は、幅方向から見て、その回転軸と駆動輪18の回転中心とが、高さ方向に延在する同一直線上に位置するように配置されている。
【0052】
一方、回転角度センサ46は、支柱部44の内側における高さ方向上側に配置されており、回転部42の支柱部44に対する回転角度を検出可能とされている。また、回転角度センサ46は、回転部42の基準位置に対する回転角度に基づく角度信号を制御装置38に出力可能とされている。
【0053】
トレー26は、高さ方向上側は開放された箱状とされており、本体部16上に位置するように支柱部44に取り付けられている。このトレー26は、書類等の比較的軽い搬送物を載置可能とされている。
【0054】
ここで、本実施形態では、制御装置38及び方向制御装置24によって一対の駆動輪18が制御されることで、手摺66の延在方向と搬送ロボット10の進行方向とが一致している点に第1の特徴がある。また、制御装置38及び各種機器によって搬送ロボット10の進行方向が切替可能とされている点に第2の特徴がある。以下、制御装置38を中心として、一対の駆動輪18の制御に用いられる各種機器の構成について説明していくこととする。
【0055】
制御装置38は、
図4に示されるように、プロセッサの一例であるCPU(Central Processing Unit)38A、ROM(Read Only Memory)38B、RAM(Random Access Memory)38C、ストレージ38D及び入出力I/F(Inter Face)38Eを含んで構成されている。そして、CPU38A、ROM38B、RAM38C、ストレージ38D及び入出力I/F38Eは、バス38Fを介して相互に通信可能に接続されている。
【0056】
CPU38Aは、中央演算処理ユニットとされており、搬送ロボット10の各種制御に係る各種プログラムの実行が可能とされている。具体的には、CPU38Aは、ROM38Bからプログラムを読み出し、RAM38Cを作業領域としてプログラムを実行可能とされている。そして、ROM38Bに記憶された実行プログラムが、CPU38Aで読み出されて実行されることで、制御装置38は、後述するように、種々の機能を発揮することが可能となっている。
【0057】
ストレージ38Dは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)を含んで構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム及び各種データが記憶されている。
【0058】
入出力I/F38Eは、制御装置38が搬送ロボット10に搭載された各装置と通信するためのインターフェースとされている。そして、制御装置38は、入出力I/F38Eを介して後述する各装置に相互に通信可能に接続されている。なお、これらの装置は、バス38Fに対して直接接続されていてもよい。
【0059】
詳しくは、入出力I/F38Eには、上述したモータドライバ36、回転角度センサ46、一対の上側接触センサ70及び下側接触センサ72が接続されている。モータドライバ36は、制御装置38から入力された指令信号に基づいて制御信号をモータ34に出力し、モータ34の回転数及び回転方向等を制御可能とされている。そして、本実施形態では、制御装置38及び一対のモータドライバ36によって一対のモータ34の回転数及び回転方向等がそれぞれ独立して制御されることで、搬送ロボット10の進行方向を変更することが可能とされている。
【0060】
上側接触センサ70は、支柱部44の高さ方向上側の部分において、前後方向前側の面と、前後方向後側の面とのそれぞれに設けられている。この上側接触センサ70は、上側接触センサ70への物体の接触を検出すると、第1接触信号を制御装置38に出力するようになっている。
【0061】
下側接触センサ72は、本体部16の前後方向前側の面と、本体部16の前後方向後側の面とのそれぞれに設けられている。この下側接触センサ72は、下側接触センサ72への物体の接触を検出すると、第2接触信号を制御装置38に出力するようになっている。
【0062】
次に、
図5を用いて制御装置38の機能構成について説明する。制御装置38は、CPU38AがROM38Bに記憶された実行プログラムを読み出し、これを実行することによって、方位角検出部74、駆動量制御部76、停止制御部78及び進行方向切替制御部80の集合体として機能する。
【0063】
方位角検出部74は、回転角度センサ46から入力された角度信号に基づき回転部42の基準位置に対する回転角度θを所定時間毎に検出している。なお、
図8に示されるように、回転部42は、搬送ロボット10の走行中において、手摺66に案内されるようになっており、回転角度θは、手摺66の延在方向と搬送ロボット10の進行方向とが成す角すなわち方位角と見なすことができる。また、方位角検出部74は、基準位置に対して反時計回りの角度を正の値として検出し、基準位置に対して時計回りの角度を負の値として検出するようになっている。
【0064】
駆動量制御部76は、モータドライバ36を制御することで、一例として、搬送ロボット10の走行速度が1m/sとなるようにモータ34の駆動量を制御している。また、駆動量制御部76は、方位角検出部74で検出された回転角度θに基づいて、一対のモータ34の駆動量をそれぞれ独立して制御することが可能とされている。
【0065】
詳しくは、
図8に示されるように、搬送ロボット10の走行中において、通路30が直線であるときには、回転部42は、手摺66の直線部66Aに沿って案内され、手摺66の延在方向と搬送ロボット10の進行方向とが一致する。このため、直線部66Aにおいて、回転部42は、基準位置から回転することがない。
【0066】
一方、通路30が曲線であるときは、回転部42は、手摺66のコーナー部66Bに沿って案内され、手摺66の延在方向と搬送ロボット10の進行方向とが一時的に一致しない状態となる。このとき、回転部42は、基準位置から回転し、方位角検出部74によって回転角度θが0度以外の値で検出されることとなる。
【0067】
そして、駆動量制御部76は、上記のように検出された回転角度θが0度か否かを判定し、回転角度θが0度でない場合には、回転角度θが0度になるようにモータドライバ36を制御することで、モータ34の駆動量を制御している。すなわち、駆動量制御部76は、回転角度θの値に基づいてモータ34の駆動量を制御するフィードバック制御を行っている。
【0068】
例えば、搬送ロボット10がコーナー部66Aに沿って進行方向左側に旋回するときには、駆動量制御部76は、幅方向右側の駆動輪18を駆動させるモータ34の回転数を上昇させ、幅方向左側の駆動輪18を駆動させるモータ34の回転数を低下させるようになっている。
【0069】
そして、回転角度θが0度にならない場合には、幅方向右側の駆動輪18を駆動させるモータ34の回転数をさらに上昇させ、幅方向左側の駆動輪18を駆動させるモータ34の回転数をさらに低下させるようになっている。
【0070】
このように、本実施形態では、上記のように方向制御装置24及び駆動量制御部76によって駆動輪18が制御されることで、搬送ロボット10が手摺66に沿って走行することが可能となっている。つまり、本実施形態では、通路30が搬送ロボット10の走行経路に設定されている。なお、以下では、方向制御装置24及び制御装置38の集合体を「駆動制御部82」と称することとする。
【0071】
停止制御部78は、上側接触センサ70からの第1接触信号に基づき、モータ34を制御可能とされている。詳しくは、停止制御部78は、搬送ロボット10の走行中において第1接触信号が入力されると、一対のモータドライバ36に停止信号を出力し、モータ34の駆動を停止させるようになっている。
【0072】
一方、搬送ロボット10の停止中において第1接触信号が停止制御部78に入力されると、停止制御部78は、一対のモータドライバ36に起動信号を出力し、モータ34を駆動させるようになっている。
【0073】
そして、本実施形態では、
図1に示されるように、搬送ロボット10の停止位置において、手摺66にストッパ84を取り付けることで、搬送ロボット10の走行中において上側接触センサ70とストッパ84とが接触すると、搬送ロボット10が停止位置に停止するようになっている。また、搬送ロボット10を走行させるときには、使用者がストッパ84を手摺66から外すと共に、上側接触センサ70に触れることで、搬送ロボット10の走行が再開されるようになっている。
【0074】
進行方向切替制御部80は、搬送ロボット10の走行中において下側接触センサ72からの第2接触信号が入力されると、一対のモータドライバ36に逆転信号を出力し、モータ34の回転を逆転させるようになっている。このため、本実施形態では、下側接触センサ72が壁等の障害物と接触すると、進行方向が下側接触センサ72の接触前の進行方向と逆方向に設定され、搬送ロボット10は、所定の経路を往復することとなる。
【0075】
一方、ゲート装置12は、
図6に示されるように、壁部64における開口部86が設けられた箇所に配置されており、一対の可動バー88と、一対の接触センサ90とを備えている。
【0076】
可動バー88は、基本的に手摺66の直線部66Aと同様の構成とされており、その長さが開口部86の開口幅の半分程度の長さに設定されると共に、通常状態において、鉛直方向に沿うように配置されている。
【0077】
この可動バー88は、その一方側の端部が、支持部92及び図示しないアクチュエータを介して開口部86の幅方向一方側又は他方側の周縁部に取り付けられている。そして、可動バー88は、接触センサ90からの第3接触信号に基づいてアクチュエータが駆動されることで壁部64の厚さ方向周りに回動するようになっている。
【0078】
接触センサ90は、直線部66Aにおける開口部86から所定距離離れた位置において、直線部66Aの壁部64側に配置されている。そして、可動バー88が通常状態にあるときに接触センサ90に物体が接触すると、第3接触信号がアクチュエータに入力されて、可動バー88は、アクチュエータによって壁部64の厚さ方向周りに90度回動して、直線部66Aと同一直線上に配置される倒伏状態となるようになっている。
【0079】
一方、可動バー88が倒伏状態にあるときに接触センサ90に物体が接触すると、第3接触信号がアクチュエータに入力されて、可動バー88は、アクチュエータによって壁部64の厚さ方向周りに90度回動して、通常状態となるようになっている。
【0080】
そして、上記のように構成されたゲート装置12では、可動バー88が通常状態にあるときに、回転部42のローラ56が接触センサ90に接触することで、壁部64における開口部86が設けられた箇所においても、搬送ロボット10の走行経路を設定することが可能となっている。また、搬送ロボット10が開口部86の前を通過した後では、開口部86を通過可能な状態に復元することが可能となっている。
【0081】
(本実施形態の作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果を説明する。
【0082】
本実施形態では、
図1に示されるように、搬送ロボット10は、本体部16と、本体部16に設けられた駆動輪18とを備えており、本体部16に搬送物32を載置した状態で搬送物32を搬送することができる。
【0083】
また、搬送ロボット10は、駆動制御部82を備えており、駆動制御部82によって、搬送ロボット10の走行経路に沿って延在する手摺66の延在方向と搬送ロボット10の進行方向とが一致するように駆動輪18が制御される。
【0084】
このため、本実施形態では、搬送ロボット10の位置の取得や搬送ロボット10の走行経路の設定に関する制御を行うことなく、搬送ロボット10を走行経路に沿って走行させることができる。
【0085】
ところで、建物28内の床面に搬送ロボット10の走行経路の誘導に用いる走行経路誘導部を配置すると、走行経路誘導部上を人や物が移動することで、走行経路誘導部が損傷することが考えられる。
【0086】
ここで、本実施形態では、駆動制御部82が、建物28内に立設された壁部64の壁面64Aに沿って延在する手摺66の延在方向に基づいて駆動輪18を制御することができるため、建物28内の床面に走行経路誘導部を配置することなく搬送ロボット10の走行経路を設定することができる。その結果、建物28内における人や物の移動による走行経路誘導部の損傷を抑制することができる。
【0087】
したがって、本実施形態では、搬送ロボット10の構成並びに制御を単純化しつつ、搬送ロボット10の走行経路を容易に維持することができる。
【0088】
また、本実施形態では、
図2及び
図3にも示されるように、駆動制御部82が回転部42を備えており、回転部42は、手摺66に沿って案内可能とされると共に、搬送ロボット10の本体部16に対して本体部16の高さ方向周りに回転可能に支持されている。
【0089】
このため、
図8に示されるように、搬送ロボット10の走行中において、手摺66の延在方向と搬送ロボット10の進行方向とが一致していないとき、すなわち当該進行方向が搬送ロボット10の走行経路に対してずれているとき、回転部42が本体部16の高さ方向周りに回転することとなる。
【0090】
また、駆動制御部82は、回転角度センサ46を備えており、回転角度センサ46は、手摺66の延在方向と搬送ロボット10の進行方向とが一致しているときの回転部42の位置を基準として、回転部42の進行方向に対する回転角度θを検出する。
【0091】
そして、本実施形態では、駆動制御部82が、回転部42の回転角度θが0度となるように、すなわち手摺66の延在方向と搬送ロボット10の進行方向とが一致するように、駆動輪18を制御するため、搬送ロボット10を手摺66に沿って走行させることができる。
【0092】
以下、
図7に示されるフローチャートを主に用いて、このときの制御装置38による搬送ロボット10の制御フローの一例について説明することとする。この制御フローは、CPU38Aが所定の時間毎に所定の指示信号を受け付けることで開始される。
【0093】
この制御フローが開始されると、ステップS100では、CPU38Aは、方位角検出部74として機能し、回転角度センサ46から入力された角度信号に基づき回転部42の基準位置に対する回転角度θを検出し、ステップS101に進む。
【0094】
ステップS101では、CPU38Aは、駆動量制御部76として機能して、回転角度θが0度か否かを判定し、回転角度θが0度である場合(ステップS101:YES)、この制御フローを終了する。一方、回転角度θが0度でない場合(ステップS101:NO)、CPU38Aは、ステップS102に進む。
【0095】
ステップS102では、CPU38Aは、駆動量制御部76として機能し、ステップS100で検出された回転角度θに基づき、回転角度θが0度になるようにモータドライバ36を制御し、この制御フローを終了する。
【0096】
このように、本実施形態では、建物28内の既存の手摺66を用いて搬送ロボット10の走行経路を設定することができる。
【0097】
図1に戻り、本実施形態では、本体部16にハンドレール22が設けられており、ハンドレール22は、歩行者が把持可能な把持部22Aを備えている。このため、本実施形態では、搬送ロボット10の近傍において、歩行者は、搬送ロボット10に設けられたハンドレール22を手摺66の代わりに用いることができる。したがって、本実施形態では、搬送物32の搬送を行いつつ、歩行者を補助することができる。
【0098】
<第2実施形態>
以下、
図9~
図13を用いて、本発明の第2実施形態に係る「搬送ロボット100」について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一構成部分については同一番号を付してその説明を省略する。
【0099】
図9及び
図10に示されるように、搬送ロボット100は、後述する無線コントローラ102と共に、搬送システム104の一部を構成している。そして、搬送ロボット100は、「本体部106」、4つの「駆動輪108」、「化粧板部110」、検出部としての「第1カメラ112」、検出部としての「第2カメラ114」と、上側接触センサ116と、下側接触センサ118とを備えている。
【0100】
なお、各図に示される矢印FRは、搬送ロボット100の前後方向前側を示しており、矢印UPは、搬送ロボット100の高さ方向上側を示しており、矢印LHは、搬送ロボット100の幅方向左側を示している。また、以下では、特に断りのない限り、前後方向は搬送ロボット100の前後方向を意味し、高さ方向は搬送ロボット100の高さ方向を意味し、幅方向は搬送ロボット100の幅方向を意味するものとする。
【0101】
本体部106は、車体部120と、載置台122とを備えている。車体部120は、長手方向を前後方向とされた直方体状とされており、車体部120の高さ方向上側の面には、載置台122が設けられている。
【0102】
載置台122は、底板124と、一対のブレース126とを含んで構成されている。底板124は、車体部120の前後方向後側の端部から高さ方向上側に延出された板状とされており、図示しない取付部材で車体部120に取り付けられている。一方、ブレース126は、互いに対して幅方向に間隔をあけて配置されており、板厚方向を幅方向とされた板状とされると共に、底板124の先端部と車体部120の前後方向前側の端部とを連結している。
【0103】
駆動輪108は、車体部120の幅方向両側の側面に前後方向に間隔をあけて配置されており、この駆動輪108は、少なくとも外周部が磁石で構成されている。そして、本実施形態では、建物28の「壁部128」に駆動輪108を密着させることが可能となっている。
【0104】
詳しくは、壁部128は、その一部を構成する「走行板部130」を備えており、走行板部130は、壁部128の壁面128A側に配置されている。この走行板部130は、鉄等の強磁性体を含む板状の部材で構成されており、板厚方向を壁部128の厚さ方向とされて建物高さ方向すなわち鉛直方向に延在している。つまり、搬送ロボット100は、駆動輪108が走行板部130を引き寄せることで壁面128Aに沿って建物高さ方向に走行することが可能とされている。
【0105】
また、本実施形態では、壁部128に駆動輪108が密着している状態において、搬送ロボット100の前後方向前側が建物上方側となるため、上述した載置台122の底板124上に搬送物32を載置することが可能となっている。
【0106】
なお、走行板部130は、その建物上方側の部分が支持部材132で天井大梁134に支持されており、その建物下方側の部分は、支持部材132で図示しない床大梁に支持されている。また、走行板部130の表面には、内壁仕上げ用の内壁クロス136が張り付けられている。
【0107】
また、
図11に示されるように、それぞれの駆動輪108には、駆動輪108に駆動力を付与するモータ34が図示しない動力軸を介して連結されている。さらに、車体部120には、4つのモータドライバ36及び制御装置138が搭載されている。そして、モータドライバ36は、それぞれ対応するモータ34及び制御装置138に電気的に接続されており、制御装置138から入力された信号に基づいてモータ34の回転数等を制御可能とされている。なお、モータ34等の搬送ロボット100に搭載された電子機器には、車体部120に搭載された図示しないバッテリから電力が供給されるようになっている。
【0108】
図9に戻り、本体部106の前後方向後側には、化粧板部110が設けられており、化粧板部110は、本体部106に図示しない取付部材で取り付けられている。この化粧板部110は、建物28の「天井142」における「天井面142A」を構成する天井材144と同じ材質で構成されると共に、板厚方向を前後方向とされて、前後方向後側から見て本体部106及び駆動輪108の大部分を覆うことが可能な矩形の板状とされている。
【0109】
一方、天井142には、壁部128と隣接する位置に化粧板部110が収まる「貫通部146」が形成されている。つまり、化粧板部110は、搬送ロボット100が壁面128A上の所定の位置に位置しているときに、天井面142Aの一部を構成可能とされている。
【0110】
第1カメラ112及び第2カメラ114は、
図10に示されるように、車体部120に搭載されており、互いに対して前後方向に間隔をあけて配置されている。また、第1カメラ112及び第2カメラ114は、搬送ロボット100の高さ方向下側の画像を撮像可能とされると共に、
図11に示されるように制御装置138に電気的に接続されており、第1カメラ112及び第2カメラ114で撮像された画像のデータは、制御装置138に送信されるようになっている。
【0111】
図10に戻り、壁部128の壁面128Aには、鉛直方向に延在する走行経路誘導部としての「走行線148」が設けられている。この走行線148は、黒色のビニルテープや黒色の塗料で構成されており、壁部128の厚さ方向すなわち水平方向から見て貫通部146の建物下方側に位置している。
【0112】
そして、搬送ロボット100は、壁部128の厚さ方向から見て、第1カメラ112及び第2カメラ114が走行線148上に位置するように壁面128Aに対して配置されている。
【0113】
上側接触センサ116は、車体部120の前後方向前側の端部に設けられると共に、
図11にも示されるように、制御装置138と電気的に接続されており、上側接触センサ116への物体の接触を検出すると、第1接触信号を制御装置138に出力するようになっている。
【0114】
一方、下側接触センサ118は、車体部120の前後方向後側の端部に設けられると共に、制御装置138と電気的に接続されており、下側接触センサ118への物体の接触を検出すると、第2接触信号を制御装置138に出力するようになっている。なお、化粧板部110には、下側接触センサ118を挿通可能な図示しない被挿通部が形成されており、下側接触センサ118は、化粧板部110の前後方向後側にその一部が露出した状態となっている。
【0115】
ここで、本実施形態では、制御装置138によって4つの駆動輪108が制御されることで、搬送ロボット100が壁面128A上の所定の走行経路に沿って走行可能とされている点に特徴がある。以下、制御装置138の構成について、詳しく説明することとする。
【0116】
図11に示されるように、制御装置138は、CPU138A、ROM138B、RAM138C、ストレージ138D、入出力I/F138E及びバス138Fを含んで、基本的には、制御装置38と同様の構成とされているものの、通信I/F138Gを備えている点が制御装置38と異なっている。
【0117】
なお、入出力I/F138Eには、上述したように、モータドライバ36、第1カメラ112、第2カメラ114、上側接触センサ116及び下側接触センサ118が接続されている。
【0118】
通信I/F138Gは、制御装置138と無線機器との通信に用いられるインターフェースとされており、制御装置138は、通信I/F138Gを介して無線コントローラ102と通信可能とされている。
【0119】
一方、無線コントローラ102は、
図10に示されるように、壁部128の壁面128Aに設置されると共に、上昇スイッチ102A、下降スイッチ102B及び停止スイッチ102Cを備えている。そして、無線コントローラ102は、上昇スイッチ102Aが押圧されると上昇指示信号を制御装置138に送信し、下降スイッチ102Bが押圧されると下降指示信号を制御装置138に送信し、停止スイッチ102Cが押圧されると停止指示信号を制御装置138に送信するようになっている。
【0120】
そして、制御装置138は、
図12に示されるように、CPU138AがROM138Bに記憶された実行プログラムを読み出し、これを実行することによって、通信部150、方位角検出部152、駆動量制御部154、停止制御部156及び進行方向切替制御部158の集合体として機能する。
【0121】
通信部150は、無線コントローラ102から送信される各種信号を受信し、これらの信号を停止制御部156及び進行方向切替制御部158に送信する。
【0122】
方位角検出部152は、第1カメラ112で撮像された走行線148の画像と、第2カメラ114で撮像された走行線148の画像とを比較し、これらの相違点から走行線148の延在方向と搬送ロボット100の進行方向とが成す角すなわち方位角を所定時間毎に検出している。
【0123】
駆動量制御部154は、モータドライバ36を制御することで、一例として、搬送ロボット100の走行速度が0.5m/sとなるようにモータ34の駆動量を制御している。また、駆動量制御部154は、方位角検出部152で検出された方位角が0度か否かを判定し、当該方位角が0度でない場合には、当該方位角が0度になるように、4つのモータドライバ36を独立して制御することで、それぞれのモータ34の駆動量を制御している。
【0124】
例えば、搬送ロボット100の進行方向が走行線148に対して幅方向一方側にずれている場合には、駆動量制御部154は、幅方向一方側の駆動輪108を駆動させるモータ34の回転数を上昇させ、幅方向他方側の駆動輪108を駆動させるモータ34の回転数を低下させるようになっている。
【0125】
このように、本実施形態では、上記のように第1カメラ112、第2カメラ114及び駆動量制御部154によって駆動輪108が制御されることで、搬送ロボット100が走行線148に沿って走行することが可能となっている。つまり、本実施形態では、壁部128の壁面128Aにおいて走行線148に沿う部分が搬送ロボット100の走行経路に設定されている。なお、以下では、第1カメラ112、第2カメラ114及び制御装置138の集合体を「駆動制御部160」と称することとする。
【0126】
停止制御部156は、搬送ロボット100の走行中において第1接触信号、第2接触信号及び停止指示信号の少なくとも一つが入力されると、各モータドライバ36に停止信号を出力し、モータドライバ36がモータ34の駆動を停止させるようになっている。
【0127】
より詳しくは、本実施形態では、
図9に示されるように、走行板部130の建物上方側の部分にストッパ162が設けられており、搬送ロボット100の上昇時において上側接触センサ116がストッパ162に接触するとモータ34が停止するようになっている。
【0128】
一方、搬送ロボット100の下降時において下側接触センサ118が図示しない床面に接触するとモータ34が停止するようになっている。また、本実施形態では、使用者が停止スイッチ102Cを押圧することで、搬送ロボット100が使用者の所望の高さにあるときにモータ34を停止させることが可能となっている。
【0129】
進行方向切替制御部158は、上昇指示信号が入力されると搬送ロボット100が上昇するように各モータドライバ36を制御し、下降指示信号が入力されると搬送ロボット100が下降するように各モータドライバ36を制御するようになっている。
【0130】
(本実施形態の作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果を説明する。
【0131】
本実施形態では、
図10に示されるように、壁部128の壁面128Aに沿って搬送ロボット100の走行経路の誘導に用いる走行線148が設けられているため、建物28内における人や物の移動による走行線148の損傷を抑制することができる。
【0132】
また、本実施形態では、
図9に示されるように、本体部106の下方側には、化粧板部110が設けられており、化粧板部110は、建物28内の天井142に設けられた貫通部146に収まると共に、天井142の天井面142Aの一部を構成可能とされている。
【0133】
また、駆動輪108は、少なくとも外周部が磁石で構成されており、一方、天井142の貫通部146の下方側には、壁部128の一部を構成しかつ強磁性体を含んで構成された走行板部130が鉛直方向に延在している。このため、本実施形態では、駆動輪108が走行板部130を引き寄せることで、搬送ロボット100が壁部128に沿って走行することができる。
【0134】
また、駆動制御部160は、第1カメラ112及び第2カメラ114を備えており、第1カメラ112及び第2カメラ114は、水平方向から見て貫通部146の下方側において鉛直方向に延在している走行線148を検出することができる。このため、本実施形態では、搬送ロボット100の進行方向を鉛直方向に設定することができる。
【0135】
以下、
図13に示されるフローチャートを主に用いて、このときの制御装置138による搬送ロボット100の制御フローの一例について説明することとする。この制御フローは、CPU138Aが所定の時間毎に所定の指示信号を受け付けることで開始される。
【0136】
この制御フローが開始されると、ステップS200では、CPU138Aは、方位角検出部152として機能し、第1カメラ112で撮像された走行線148の画像と、第2カメラ114で撮像された走行線148の画像とを比較することで方位角を検出し、ステップS201に進む。
【0137】
ステップS201では、CPU138Aは、駆動量制御部154として機能して、方位角が0度か否か、すなわち搬送ロボット100の進行方向が走行線148の延在方向か否かを判定し、方位角が0度である場合(ステップS201:YES)、この制御フローを終了する。一方、方位角が0度でない場合(ステップS201:NO)、CPU138Aは、ステップS202に進む。
【0138】
ステップS202では、CPU138Aは、駆動量制御部154として機能し、ステップS200で検出された方位角に基づき、当該方位角が0度になるように各モータドライバ36を制御し、この制御フローを終了する。
【0139】
このように、本実施形態では、
図9に示されるように、通常時において、天井142の意匠性を損なうことなく、本体部106に載置された搬送物32を天井裏に収納することができる。また、搬送物32が必要となったときには、搬送ロボット100を鉛直方向下側に移動させることで、搬送物32を天井裏から移動させることができる。
【0140】
したがって、本実施形態では、建物28内のデッドスペースを搬送物32の搬送に利用することができる。
【0141】
<上記実施形態の補足説明>
(1) 上述した第1実施形態では、回転角度センサ46からの角度信号を制御装置38に出力し、制御装置38が当該角度信号に基づいてモータドライバ36を制御していたが、これに限らない。例えば、回転角度センサ46からの角度信号を直接モータドライバ36に出力し、モータドライバ36が当該角度信号に基づいてモータ34を制御するような構成として、更なる搬送ロボット100の構成の単純化を図ることも可能である。
【0142】
(2) また、上述した第1実施形態では、回転角度センサ46を用いて手摺66の延在方向と搬送ロボット10の進行方向が一致するように駆動輪18を制御していたが、これに限らない。例えば、上述した第2実施形態と同様に手摺66の上部に搬送ロボット10の走行経路に沿って走行線を設けると共に、搬送ロボット10に当該走行線を撮像可能な一対のカメラを搭載し、これらのカメラで撮像された当該走行線の画像に基づいて、当該走行線の延在方向と搬送ロボット10の進行方向とが一致するように駆動輪18を制御することも可能である。このような構成によれば、壁部64に設けられた手摺が挟持困難な構成であっても、搬送ロボット10の走行経路を設定することが可能となる。
【0143】
(3) また、上述した第2実施形態では、走行線が黒色のビニルテープや黒色の塗料で構成されていたが、これに限らない。例えば、壁部に溝部を設けて、当該溝部を走行線として用いることで、走行線の損傷がより抑制されるようにしてもよい。
【0144】
(4) 加えて、上述した第2実施形態では、搬送システム104を建物28の壁部128及び天井142に対して設置したが、これに限らない。例えば、建物28内に設置されたエレベータに搬送システム104を設置して、搬送物32をエレベータの天井裏に収納するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0145】
10 搬送ロボット
16 本体部
18 駆動輪
22 ハンドレール
22A 把持部
28 建物
32 搬送物
42 回転部
46 回転角度センサ(回転角度検出部)
64 壁部
64A 壁面
66 手摺
82 駆動制御部
100 搬送ロボット
106 本体部
108 駆動輪
110 化粧板部
112 第1カメラ(検出部)
114 第2カメラ(検出部)
128 壁部
128A 壁面
130 走行板部
142 天井
142A 天井面
146 貫通部
148 走行線
160 駆動制御部