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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】物品収容設備
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/04 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
B65G1/04 541
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021144844
(22)【出願日】2021-09-06
(65)【公開番号】P2023037987
(43)【公開日】2023-03-16
【審査請求日】2023-12-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 淳一
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-277166(JP,A)
【文献】特開2001-130708(JP,A)
【文献】特開2001-130709(JP,A)
【文献】特開2007-15863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/04
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を収容する収容部を複数備えた収容棚と、
外部搬送装置から前記物品を受け取り、複数の前記物品を保持する入庫部と、
前記収容棚の前面に沿って設定された搬送経路に沿って移動し、前記入庫部と前記収容棚の少なくとも一部の前記収容部とを含む第1搬送範囲内で前記物品の搬送を行う第1内部搬送装置と、
前記搬送経路に沿って移動し、前記収容棚の少なくとも一部の前記収容部を含むと共に前記入庫部を含まない第2搬送範囲内で前記物品の搬送を行う第2内部搬送装置と、
前記第1内部搬送装置及び前記第2内部搬送装置を制御する制御システムと、を備え、
前記第1搬送範囲の一部と前記第2搬送範囲の一部とが重複するように設定され、
前記制御システムは、前記入庫部に保持されている前記物品の個数である保持物品数に基づいて定まる基準物品数が多くなるに従って前記第1搬送範囲を小さくする範囲調整処理を行う、物品収容設備。
【請求項2】
前記制御システムは、前記範囲調整処理において、前記第1搬送範囲を小さくするのに応じて前記第2搬送範囲を大きくする、請求項1に記載の物品収容設備。
【請求項3】
前記入庫部に保持可能な前記物品の最大個数を保持上限数として、
前記制御システムは、前記第1搬送範囲を、通常の大きさの通常範囲と前記通常範囲よりも小さい制限範囲とに設定変更可能であり、前記範囲調整処理において、前記基準物品数が前記保持上限数未満である場合には前記第1搬送範囲を前記通常範囲に設定し、前記基準物品数が前記保持上限数以上である場合には前記第1搬送範囲を前記制限範囲に設定する、請求項1又は2に記載の物品収容設備。
【請求項4】
前記基準物品数は前記保持物品数である、請求項1から3のいずれか一項に記載の物品収容設備。
【請求項5】
前記外部搬送装置による前記入庫部への搬送中の前記物品の個数である搬送中物品数を、前記保持物品数に加えた数を保持予定物品数として、
前記基準物品数は前記保持予定物品数である、請求項1から3のいずれか一項に記載の物品収容設備。
【請求項6】
前記制御システムは、前記第1内部搬送装置及び前記第2内部搬送装置のそれぞれに前記物品の搬送指令を割り当てて1つの前記搬送指令で1つの前記物品を搬送させ、前記第2内部搬送装置に割り当てられた前記搬送指令の個数が規定のしきい値以上である場合には前記範囲調整処理を行わない、請求項1から5のいずれか一項に記載の物品収容設備。
【請求項7】
前記搬送経路に隣接する位置に受渡部が配置されており、
前記受渡部は、前記物品に対する処理を行う処理装置と、前記第1内部搬送装置又は前記第2内部搬送装置との間での前記物品の受け渡しに用いられ、
前記第2搬送範囲が前記受渡部を含むように設定されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の物品収容設備。
【請求項8】
前記第1内部搬送装置から受け取った前記物品を保持し、当該物品を前記外部搬送装置に引き渡す出庫部をさらに備え、
前記入庫部に保持可能な前記物品の最大個数を保持上限数として、
前記制御システムは、前記基準物品数が前記保持上限数以上である場合には、前記第1内部搬送装置に対して、前記収容部から前記出庫部への前記物品の搬送処理、及び、前記収容部から別の前記収容部への前記物品の搬送処理よりも、前記入庫部から前記収容部への前記物品の搬送処理を優先させる、請求項1から7のいずれか一項に記載の物品収容設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品収容設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体工場やフラットパネルディスプレイ工場等では、複数の処理工程を順次行うため、各工程に内部搬送装置を備えた物品収容設備を設けるとともに、外部搬送装置を用いて工程間の物品搬送を行うように構成される場合がある。このような物品収容設備の一例が、特開2001-130708号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
特許文献1の物品収容設備(自動倉庫システム4)は、物品(カセット39)を収容可能な収容棚(ラック6)と、外部搬送装置(有軌道台車24)から物品を受け取る入庫部(ステーション8)と、第1内部搬送装置(スタッカークレーン12)と、第2内部搬送装置(スタッカークレーン14)とを備えている。第1内部搬送装置は、入庫部の位置を含む範囲内で物品の搬送を行い、第2内部搬送装置は、入庫部の位置を含まない範囲内で物品の搬送を行うように構成されている。第1内部搬送装置による搬送範囲の一部と第2内部搬送装置による搬送範囲の一部とは重複している。
【0004】
この物品収容設備では、外部搬送装置が搬送してくる物品を入庫部で受け取り、その物品を第1内部搬送装置により収容棚に収容し、その後、第1内部搬送装置と第2内部搬送装置とが協働して処理装置に搬送して各種処理を行う。入庫部には複数の保持位置(支持位置60,62)が設定されており、この複数の保持位置を有する入庫部は、先行する物品を第1内部搬送装置が搬送して戻ってくるまでの間に次の物品を仮保持するバッファとして機能する。
【0005】
ところで、入庫部に実際に保持されている物品で入庫部が満杯となっていると、外部搬送装置が次の物品を搬送してきても、当該物品を移載できずに入庫部に空きが生じるまで待機しなければならなくなる。外部搬送装置が特定の物品収容設備の入庫部に臨む位置で待機することで、外部搬送装置に渋滞が生じ、外部搬送装置と複数の物品収容設備とを備える物品搬送設備全体としての処理効率が低下するという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-130708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、物品搬送設備全体としての処理効率の低下を抑制することができる物品収容設備の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る物品収容設備は、
物品を収容する収容部を複数備えた収容棚と、
外部搬送装置から前記物品を受け取り、複数の前記物品を保持する入庫部と、
前記収容棚の前面に沿って設定された搬送経路に沿って移動し、前記入庫部と前記収容棚の少なくとも一部の前記収容部とを含む第1搬送範囲内で前記物品の搬送を行う第1内部搬送装置と、
前記搬送経路に沿って移動し、前記収容棚の少なくとも一部の前記収容部を含むと共に前記入庫部を含まない第2搬送範囲内で前記物品の搬送を行う第2内部搬送装置と、
前記第1内部搬送装置及び前記第2内部搬送装置を制御する制御システムと、を備え、
前記第1搬送範囲の一部と前記第2搬送範囲の一部とが重複するように設定され、
前記制御システムは、前記入庫部に保持されている前記物品の個数である保持物品数に基づいて定まる基準物品数が多くなるに従って前記第1搬送範囲を小さくする範囲調整処理を行う。
【0009】
この構成によれば、収容棚の前面に沿う搬送経路に沿って移動する第1内部搬送装置と第2内部搬送装置とが協働して、外部搬送装置から受け取った物品を収容棚に収容し、必要な場合にその後の処理に供することができる。この場合において、制御システムが範囲調整処理を行うことで、保持物品数に基づいて定まる基準物品数が多くなるに従って第1内部搬送装置の稼働範囲を縮小して回転率を高め、これにより、第1内部搬送装置による入庫部からの物品の搬送を促進することができる。その結果、入庫部が満杯となっている状態を回避しやすくなり、物品搬送設備全体としての処理効率の低下を抑制することができる。
【0010】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の物品搬送設備の全体レイアウト図
図2】物品収容設備の模式平面図
図3】物品収容設備の斜視図
図4】制御システムの模式図
図5】搬送指令のデータ構造を示す図
図6】入庫搬送処理の一例を示す模式図
図7】棚内搬送処理の一例を示す模式図
図8】棚内搬送処理の一例を示す模式図
図9】棚内搬送処理の一例を示す模式図
図10】処理用搬送処理の一例を示す模式図
図11】出庫搬送処理の一例を示す模式図
図12】運用バッファ数調整制御の処理手順を示すフローチャート
図13】入庫最優先制御の処理手順を示すフローチャート
図14】内部搬送負荷調整制御の一例を示す模式図
図15】内部搬送負荷調整制御の処理手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
物品収容設備の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、例えば半導体工場やフラットパネルディスプレイ工場等において、複数の処理工程を順次行うために設置される物品搬送設備100に備えられる物品収容設備1を例として説明する。
【0013】
図1に示すように、物品搬送設備100は、物品収容設備1と、外部搬送装置8と、処理装置9とを備えている。本実施形態では、複数の物品収容設備1が設けられ、これら複数の物品収容設備1を周回するように外部搬送装置8が設けられているとともに、それぞれの物品収容設備1に対応付けて処理装置9が設けられている。物品収容設備1とそれに対応する処理装置9とで1つの工程が構成されており、複数の物品収容設備1を周回する外部搬送装置8は工程間搬送を担っている。
【0014】
外部搬送装置8は、規定の走行経路(外部搬送経路To)に沿って周回する複数の搬送台車82を備えている。本実施形態の外部搬送装置8は、外部搬送経路Toに沿って設置された周回軌道81と、この周回軌道81上を走行する複数の搬送台車82とを備えている。また、本実施形態では、周回軌道81は床面に設置されている。すなわち、本実施形態の外部搬送装置8は、有軌道の床面走行式の搬送台車82を複数備えている。また、外部搬送装置8は、搬送台車82に支持されたフォーク式の移載装置を備えている。外部搬送装置8は、複数の物品収容設備1どうしの間(工程間)で物品10を搬送する。
【0015】
物品10としては、例えば半導体デバイスの製造に用いられる半導体ウェハや、加工用のレチクル等を例示することができる。本実施形態では、これらは、容器(例えば半導体ウェハであればFOUP、レチクルであればレチクルポッド)に収容された状態で搬送される。そこで以下では、「物品10」と言う場合には、当該物品10を収容する容器も含むものとする。
【0016】
処理装置9は、物品10に対する処理を行う。本実施形態では、処理装置9は受渡ポートPpを備えており、この受渡ポートPpを用いて、内部搬送装置3との間での物品10の受け渡しを行う。そして、処理装置9は、受渡ポートPpで内部搬送装置3から受け取った物品10を対象として各種の処理を行う。処理装置9は、例えば洗浄装置、成膜装置、露光装置、及びエッチング装置等であって良い。処理装置9は、処理後の物品10を受渡ポートPpで内部搬送装置3に引き渡す。受渡ポートPpは、内部搬送装置3の搬送経路(内部搬送経路Ti)に対して、隣接する位置に配置されている。
【0017】
図2及び図3に示すように、物品収容設備1は、収容棚2と、内部搬送装置3と、入庫部4と、出庫部5とを備えている。また、物品収容設備1は、制御システム7(図1を参照)を備えている。本実施形態では、制御システム7は、複数の物品収容設備1を個別に制御するとともに、物品搬送設備100の全体を統括的に制御するように構成されている。
【0018】
収容棚2は、物品10を収容する収容部23を複数備えている。本実施形態では、物品収容設備1は、対向配置された一対の収容棚2(第1収容棚2A及び第2収容棚2B)を備えている。第1収容棚2Aと第2収容棚2Bとは、間に内部搬送装置3を挟んで対向配置されている。第1収容棚2A及び第2収容棚2Bは、それぞれ、所定間隔で床面から立設された複数の支柱21と、所定間隔で支柱21に固定された複数の支持部22とを有する。隣り合う支柱21における同じ高さに固定された一対の支持部22の上方の空間により、物品10を収容する収容部23が形成されている。第1収容棚2A及び第2収容棚2Bは、それぞれ、複数段複数列に亘る収容部23を備えている。それぞれの収容部23は、内部搬送装置3の搬送経路(内部搬送経路Ti)に対して、その直交する方向に隣接する位置に配置されている。
【0019】
本実施形態では、第1収容棚2Aと第2収容棚2Bとは、一方の端部を揃えて設置されている。そして、それらの揃った側の端部に隣接して、入庫部4及び出庫部5が設けられている。第1収容棚2Aに隣接して入庫部4が設けられ、第2収容棚2Bに隣接して出庫部5が設けられている。また、本実施形態では、第2収容棚2Bは、第1収容棚2Aに比べて列数が多く設定されている。このため、入庫部4及び出庫部5とは反対側の端部において、第1収容棚2Aよりも第2収容棚2Bが突出配置されている。そして、第1収容棚2Aに隣接し、かつ、第2収容棚2Bに対向する位置に、処理装置9が配置されている。
【0020】
内部搬送装置3は、対向配置された一対の収容棚2(第1収容棚2A及び第2収容棚2B)どうしの間に設置されている。内部搬送装置3は、収容棚2の前面に沿って設定された内部搬送経路Tiに沿って移動し、入庫部4と収容棚2との間、同一の収容棚2内、一方の収容棚2と他方の収容棚2との間、及び収容棚2と出庫部5との間で物品10の搬送を行う。本実施形態では、内部搬送経路Tiが「搬送経路」に相当する。
【0021】
また、本実施形態の物品収容設備1は、内部搬送経路Tiに沿って並ぶ一対の内部搬送装置3(第1内部搬送装置3A及び第2内部搬送装置3B)を備えている。第1内部搬送装置3A及び第2内部搬送装置3Bは、スタッカークレーンで構成されており、走行台車32とマスト33と昇降台34と移載装置35とをそれぞれ備えている。走行台車32は、内部搬送経路Tiに沿って床面に設置された走行レール31上を走行する。マスト33は、走行台車32から立設されている。本実施形態では、一対のマスト33が、走行台車32における内部搬送経路Tiの両側に分かれて設けられている。マスト33の上端部は、天井に設置されたガイドレール36によって案内される。昇降台34は、一対のマスト33に沿って昇降する。移載装置35は、昇降台34に固定されており、物品10を移載する。
【0022】
本実施形態では、第1内部搬送装置3A及び第2内部搬送装置3Bは、共通の走行レール31上に設けられている。すなわち、第1内部搬送装置3Aの走行台車32と第2内部搬送装置3Bの走行台車32とが、共通の走行レール31上を走行するように設けられている。第1内部搬送装置3Aは、第2内部搬送装置3Bに比べて入庫部4及び出庫部5側に設けられている。
【0023】
図2に示すように、第1内部搬送装置3Aは、入庫部4と収容棚2の少なくとも一部の収容部23とを含む第1搬送範囲R1内で物品10の搬送を行う。第1搬送範囲R1は、入庫部4と収容棚2における入庫部4側の一部の収容部23とを含む範囲に設定されている。また、第1搬送範囲R1は、入庫部4に対向する出庫部5をも含んでいる。第2内部搬送装置3Bは、収容棚2の少なくとも一部の収容部23を含むと共に入庫部4を含まない第2搬送範囲R2内で物品10の搬送を行う。本実施形態では、第2搬送範囲R2は、収容棚2の少なくとも一部の収容部23と、入庫部4及び出庫部5とは反対側に配置された処理装置9とを含む範囲に設定されている。第2搬送範囲R2は、収容棚2における処理装置9側の一部の収容部23と処理装置9とを含む範囲に設定されている。
【0024】
これらの第1搬送範囲R1及び第2搬送範囲R2は、第1搬送範囲R1の一部と第2搬送範囲R2の一部とが互いに重複するように設定されている。第1搬送範囲R1における処理装置9側の一部と、第2搬送範囲R2における入庫部4及び出庫部5側の一部とが、互いに重複している。
【0025】
入庫部4は、外部搬送装置8から物品10を受け取り、受け取った物品10を保持する。本実施形態の入庫部4は、入庫コンベヤ41を含んでいる。入庫コンベヤ41は、例えばローラコンベヤ、スラットコンベヤ、及びベルトコンベヤ等であって良い。本実施形態では、入庫部4は、静止状態で複数の物品10を保持するように構成されている。本例では、入庫部4を構成する入庫コンベヤ41が2つの物品10を保持する場合の例を示している。この場合、入庫コンベヤ41は2つの支持位置43,44を有し、入庫部4に保持可能な物品10の最大個数である保持上限数Nmaxは「2」となっている(Nmax=2)。
【0026】
入庫コンベヤ41は、支持位置43に物品10が支持されており支持位置44には物品10が支持されていない場合に稼働して、支持位置43にあった物品10を支持位置44に搬送することができる。搬送方向最上流側の支持位置43は、外部搬送装置8から物品10を受け取る位置であり、受取ポートPrとなっている。搬送方向最下流側の支持位置44は、物品10の入庫の際に当該物品10を内部搬送装置3(第1内部搬送装置3A)に引き渡す位置であり、入庫ポートPiとなっている。入庫ポートPiは、内部搬送経路Tiに対して、その直交する方向に隣接する位置に配置されている。
【0027】
出庫部5は、外部搬送装置8に引き渡す物品10を保持する。出庫部5は、内部搬送装置3(第1内部搬送装置3A)から受け取った物品10を保持し、当該物品10を外部搬送装置8に引き渡す。本実施形態の出庫部5は、出庫コンベヤ51を含んでいる。出庫コンベヤ51は、例えばローラコンベヤ、スラットコンベヤ、及びベルトコンベヤ等であって良い。本実施形態では、出庫部5は、静止状態で複数の物品10を保持するように構成されている。本例では、出庫部5を構成する出庫コンベヤ51が2つの物品10を保持する場合の例を示している。この場合、出庫コンベヤ51は2つの支持位置53,54を有し、出庫部5に保持可能な物品10の最大個数は「2」となっている。
【0028】
出庫コンベヤ51は、支持位置53に物品10が支持されており支持位置54には物品10が支持されていない場合に稼働して、支持位置53にあった物品10を支持位置54に搬送することができる。搬送方向最上流側の支持位置53は、物品10の出庫の際に内部搬送装置3(第1内部搬送装置3A)から物品10を受け取る位置であり、出庫ポートPoとなっている。出庫ポートPoは、内部搬送経路Tiに対して、その直交する方向に隣接する位置であって入庫ポートPiとは反対側に配置されている。搬送方向最下流側の支持位置54は、物品10を外部搬送装置8に引き渡す位置であり、引渡ポートPhとなっている。
【0029】
入庫ポートPi及び出庫ポートPoは、第1搬送範囲R1の一方の端部に設けられている。入庫ポートPi及び出庫ポートPoは、第1搬送範囲R1だけに含まれており、第2搬送範囲R2には含まれていない。処理装置9の受渡ポートPpは、第2搬送範囲R2における入庫ポートPi及び出庫ポートPoとは反対側の端部に設けられている。受渡ポートPpは、第2搬送範囲R2だけに含まれており、第1搬送範囲R1には含まれていない。収容棚2の複数の収容部23には、第1搬送範囲R1だけに含まれているものと、第2搬送範囲R2だけに含まれているものと、第1搬送範囲R1と第2搬送範囲R2との重複範囲Lに含まれているものとが存在する。
【0030】
このような構成の物品収容設備1において、内部搬送装置3は、入庫搬送処理、棚内搬送処理、処理用搬送処理、及び出庫搬送処理を行う。
【0031】
入庫搬送処理は、入庫部4から収容棚2の特定の収容部23へ物品10を搬送する処理である。入庫搬送処理では、入庫部4の支持位置44(入庫ポートPi)に支持されている物品10を、第1内部搬送装置3Aにより、収容棚2(第1収容棚2A又は第2収容棚2B)の特定の収容部23へ搬送して入庫する。
【0032】
棚内搬送処理は、収容棚2の特定の収容部23から、同じ又は別の収容棚2の別の収容部23へ物品10を搬送する処理である。棚内搬送処理では、搬送元の特定の収容部23に収容されている物品10を、第1内部搬送装置3A又は第2内部搬送装置3Bにより、搬送先の特定の収容部23へ搬送する。このとき、搬送元又は搬送先の収容部23が第1搬送範囲R1だけに含まれていれば、対象の物品10を第1内部搬送装置3Aにより搬送する。搬送元又は搬送先の収容部23が第2搬送範囲R2だけに含まれていれば、対象の物品10を第2内部搬送装置3Bにより搬送する。搬送元及び搬送先の収容部23がどちらも第1搬送範囲R1と第2搬送範囲R2との重複範囲Lに含まれていれば、対象の物品10を第1内部搬送装置3A及び第2内部搬送装置3Bのいずれかにより搬送する。
【0033】
処理用搬送処理は、収容棚2の特定の収容部23と処理装置9との間で物品10を搬送する処理である。処理用搬送処理では、搬送元の特定の収容部23に収容されている物品10を、第2内部搬送装置3Bにより、処理装置9の受渡ポートPpへ搬送する。或いは、処理用搬送処理では、処理装置9の受渡ポートPpに支持されている処理後の物品10を、第2内部搬送装置3Bにより、搬送先の特定の収容部23へ搬送する。
【0034】
出庫搬送処理は、収容棚2の特定の収容部23から出庫部5へ物品10を搬送する処理である。出庫搬送処理では、収容棚2(第1収容棚2A又は第2収容棚2B)の特定の収容部23に収容されている物品10を、第1内部搬送装置3Aにより、出庫部5の支持位置53(出庫ポートPo)へ搬送して出庫する。
【0035】
上述したように、制御システム7は、複数の物品収容設備1(内部搬送装置3)を個別に制御するとともに、外部搬送装置8を含む物品搬送設備100の全体を統括的に制御する。このため、図4に示すように、制御システム7は、内部搬送制御ユニット71と、外部搬送制御ユニット72と、統括制御ユニット73とを備えている。なお、簡略化のため、図4では1つの物品収容設備1(内部搬送装置3)に対応する内部搬送制御ユニット71だけを示しているが、複数の物品収容設備1(内部搬送装置3)のそれぞれに対応する内部搬送制御ユニット71が備えられている。
【0036】
内部搬送制御ユニット71は、内部搬送装置3を制御する。本実施形態では、内部搬送装置3は第1内部搬送装置3Aと第2内部搬送装置3Bとを備えているのに対応して、内部搬送制御ユニット71は第1内部搬送装置3A及び第2内部搬送装置3Bを制御する。内部搬送制御ユニット71は、搬送指令(ここでは工程内の搬送指令)に基づいて、第1内部搬送装置3A及び第2内部搬送装置3Bを制御する。
【0037】
搬送指令は、例えば図5に示すようなデータ構造を有している。それぞれの搬送指令は、搬送元(搬送開始位置)、搬送先(搬送完了位置)、及び用いる内部搬送装置3の情報を有している。図5において、「S1」は第1収容棚2Aを表し、「S2」は第2収容棚2Bを表している。また、「S1」及び「S2」に続く「(m,n)」は、入庫部4及び出庫部5側からm列目で下からn段目の収容部23を表している。なお、「m」及び「n」はそれぞれ整数である。
【0038】
例えば搬送指令A-2は、入庫ポートPiを搬送元とし、第1収容棚2Aの1列目第2段の収容部23を搬送先とする指令である(図6を参照)。これら2つの位置はいずれも第1搬送範囲R1に含まれているため、搬送指令A-2の担い手には第1内部搬送装置3Aが割り当てられている。この搬送指令A-2に基づく搬送処理は、上述した入庫搬送処理の一例である。
【0039】
また、例えば搬送指令A-4は、第1収容棚2Aの1列目第4段の収容部23を搬送元とし、第2収容棚2Bの5列目第7段の収容部23を搬送先とする指令である(図7を参照)。これら2つの位置はいずれも第1搬送範囲R1に含まれているため、搬送指令A-4の担い手には第1内部搬送装置3Aが割り当てられている。この搬送指令A-4に基づく搬送処理は、上述した棚内搬送処理の一例である。
【0040】
また、例えば搬送指令B-2は、第2収容棚2Bの10列目第1段の収容部23を搬送元とし、第2収容棚2Bの4列目第1段の収容部23を搬送先とする指令である(図8を参照)。これら2つの位置はいずれも第2搬送範囲R2に含まれているため、搬送指令B-2の担い手には第2内部搬送装置3Bが割り当てられている。この搬送指令B-2に基づく搬送処理も、上述した棚内搬送処理の一例である。
【0041】
また、例えば搬送指令A-1は、第1収容棚2Aの4列目第5段の収容部23を搬送元とし、第1収容棚2Aの6列目第5段の収容部23を搬送先とする指令である(図9を参照)。これら2つの位置はいずれも第1搬送範囲R1と第2搬送範囲R2との重複範囲Lに含まれているため、搬送指令A-1の担い手には第1内部搬送装置3A及び第2内部搬送装置3Bのいずれもがなり得るが、本例では第1内部搬送装置3Aが割り当てられている。この搬送指令A-1に基づく搬送処理も、上述した棚内搬送処理の一例である。
【0042】
また、例えば搬送指令B-1は、第1収容棚2Aの8列目第3段の収容部23を搬送元とし、受渡ポートPpを搬送先とする指令である(図10の実線矢印を参照)。これら2つの位置はいずれも第2搬送範囲R2に含まれているため、搬送指令B-1の担い手には第2内部搬送装置3Bが割り当てられている。また、搬送指令B-3は、受渡ポートPpを搬送元とし、第2収容棚2Bの8列目第5段の収容部23を搬送先とする指令である(図10の破線矢印を参照)。これら2つの位置はいずれも第2搬送範囲R2に含まれているため、搬送指令B-3の担い手には第2内部搬送装置3Bが割り当てられている。これらの搬送指令B-1及びB-3に基づく搬送処理は、上述した処理用搬送処理の一例である。
【0043】
また、例えば搬送指令A-3は、第2収容棚2Bの2列目第7段の収容部23を搬送元とし、出庫ポートPoを搬送先とする指令である(図11を参照)。これら2つの位置はいずれも第1搬送範囲R1に含まれているため、搬送指令A-3の担い手には第1内部搬送装置3Aが割り当てられている。この搬送指令A-3に基づく搬送処理は、上述した出庫搬送処理の一例である。
【0044】
なお、本実施形態では、第1内部搬送装置3A及び第2内部搬送装置3Bは、それぞれ、図5において上に表示された搬送指令に基づく搬送処理から順番に実行するものとされている。この例では、第1内部搬送装置3Aについては搬送指令A-1,A-2,A-3,A-4,・・・の順が予定されている搬送処理の順序であり、第2内部搬送装置3Bについては搬送指令B-1,B-2,B-3,・・・の順が予定されている搬送処理の順序である。これらは、例えば第1内部搬送装置3A及び第2内部搬送装置3Bのそれぞれの処理効率を優先した搬送順とすることができる。
【0045】
外部搬送制御ユニット72は、外部搬送装置8を制御する。外部搬送制御ユニット72は、周回軌道81上を走行する複数の搬送台車82と、それに支持された移載装置とを制御する。外部搬送制御ユニット72は、搬送指令(ここでは、工程間の搬送指令)に基づいて、搬送台車82及び移載装置を制御する。工程間搬送指令は、搬送元工程(搬送元の物品収容設備1)、搬送先工程(搬送先の物品収容設備1)、及び用いる搬送台車82の情報を有している。この工程間搬送指令に基づき、搬送元工程の出庫部5に支持されている物品10が、指定された搬送台車82により、搬送先工程の入庫部4に搬送される。このとき、複数の工程間搬送指令は同時に実行可能である。
【0046】
統括制御ユニット73は、外部搬送制御ユニット72及び内部搬送制御ユニット71を統括する。統括制御ユニット73は、例えば工程間で物品10を搬送する場合に、搬送元の物品収容設備1に対応する内部搬送制御ユニット71、外部搬送制御ユニット72、及び搬送先の物品収容設備1に対応する内部搬送制御ユニット71を協調的に制御する。統括制御ユニット73は、搬送元の物品収容設備1の出庫部5に搬送対象の物品10が支持された状態となるように当該物品収容設備1に対応する内部搬送制御ユニット71を制御し、その出庫部5に支持されている物品10を受け取って搬送先の物品収容設備1まで搬送しその入庫部4に移載するように外部搬送制御ユニット72を制御し、さらに、搬送先の物品収容設備1の入庫部4に支持された物品10を収容棚2に収容するように当該物品収容設備1に対応する内部搬送制御ユニット71を制御する。
【0047】
ところで、本実施形態の物品搬送設備100は、設備全体としての処理効率を向上させるため、システム上、物理的なバッファ数である保持上限数Nmax以上の物品10が入庫部4に保持可能であるとみなして各部が制御される。すなわち、保持上限数Nmaxに調整数Aを加算した数が運用バッファ数B(B=Nmax+A)として設定され(図2を参照)、搬送先の物品収容設備1の入庫部4は、運用バッファ数B以下の個数の物品10を受け入れるように構成されている。搬送先の物品収容設備1の入庫部4は、物理的に受入可能な保持上限数Nmaxの物品10を実際に支持する以外に、調整数A以下の物品10をシステム上仮想的に支持しているとみなして、その後の搬送処理が実行される。
【0048】
ここで、調整数Aは、可変設定される0以上の整数値である。調整数Aは、1以上の整数値であることが好ましい。この調整数A以下の物品10を、搬送先の物品収容設備1の入庫部4が全て埋まっている場合でも、当該入庫部4に向けて先行して搬送することができる。調整数Aは、外部搬送装置8によって先行して搬送される物品10が搬送先の物品収容設備1の入庫部4に届くまでの間に、当該入庫部4から収容棚2に内部搬送装置3(第1内部搬送装置3A)によって搬出することができる物品10の個数に基づいて設定される。このような観点から、調整数Aは、現実的には例えば1~3程度に設定されることが好ましい。
【0049】
図2には、保持上限数Nmaxである「2」に対して調整数Aとして「2」が加算され、「4」を運用バッファ数Bとして4個までの物品10を入庫部4で仮想的に受入可能とする例が示されている。内部搬送装置3(第1内部搬送装置3A)により、入庫部4の入庫ポートPiから収容棚2のいずれかの収容部23に物品10が搬送されると、入庫コンベヤ41が作動して、次の物品10を入庫ポートPiに移送するとともに、外部搬送装置8によって先行して搬送されてくる物品10の受取スペースを形成する。
【0050】
このような構成において、搬送先の物品収容設備1において実際に保持されている物品10で入庫部4が満杯となっていると、外部搬送装置8が次の物品10を搬送してきても当該物品10を移載することができない。この場合、入庫部4に空きが生じるまで待機しなければならず、その結果、外部搬送装置8に渋滞が生じて設備全体としての処理効率が低下してしまう。そこで本実施形態の物品搬送設備100において、制御システム7は、以下に詳述する運用バッファ数調整制御、入庫最優先制御、及び内部搬送負荷調整制御を実行するように構成されている。
【0051】
<運用バッファ数調整制御>
運用バッファ数調整制御は、一定条件下で運用バッファ数Bを調整する制御である。上記のとおり、制御システム7は、0以上(好ましくは1以上)の整数値に可変設定される調整数Aを保持上限数Nmaxに加算した数を運用バッファ数Bとして設定し(B=Nmax+A)、この運用バッファ数Bに基づいて物品搬送設備100を制御する。ここで、各時点において入庫部4に実際に保持されている物品10の個数を「保持物品数Nr」とし、外部搬送装置8によって入庫部4へ向けて搬送中の物品10の個数を「搬送中物品数Nt」とする。このとき、制御システム7は、搬送中物品数Ntが運用バッファ数Bから保持物品数Nrを減算した数(B-Nr=Nmax+A-Nr)以下となるように外部搬送装置8を制御する。
【0052】
このような構成を前提として、運用バッファ数調整制御では、制御システム7は、内部搬送装置3の負荷が高くなるに従って小さい値となるように調整数Aを設定する。ここでは特に、制御システム7は、入庫部4を含む第1搬送範囲R1内で作動する第1内部搬送装置3Aの負荷が高くなるに従って小さい値となるように調整数Aを設定する。
【0053】
上述したように、第1内部搬送装置3Aは入庫搬送処理、棚内搬送処理、及び出庫搬送処理を担当する。このため、第1内部搬送装置3Aの負荷が高くなる(特に、棚内搬送処理や出庫搬送処理の割合が高くなる)と、入庫部4から収容棚2への物品10の搬送(入庫搬送処理)が遅滞する可能性が高くなる。そこで、第1内部搬送装置3Aの負荷が高くなるに従って小さい値となるように調整数Aを設定することで、第1内部搬送装置3Aの負荷の程度に応じて、外部搬送装置8によって入庫部4に向けて先行して搬送されてくる物品10の数を減らすことができる。先行して搬送されてくる物品10自体が少なくなるため、それらの物品10が入庫部4に到着した際に入庫部4が満杯となっているという事態を回避しやすくなる。よって、設備全体としての処理効率の低下を抑制することができる。
【0054】
本実施形態では、制御システム7は、第1内部搬送装置3Aの負荷を、当該第1内部搬送装置3Aに対する物品10の搬送指令の数に基づいて判定する。そして、制御システム7は、第1内部搬送装置3Aに対する物品10の搬送指令の数が多くなるに従って負荷が高くなると判定する。
【0055】
ここで、搬送元又は搬送先が第1搬送範囲R1内にある(但し、双方が第1搬送範囲R1と第2搬送範囲R2との重複範囲Lにはない)物品10の搬送は専ら第1内部搬送装置3Aが担当するため、これに対応する搬送指令は全て第1内部搬送装置3Aに対する指令となる。一方、搬送元及び搬送先の双方が第1搬送範囲R1と第2搬送範囲R2との重複範囲Lにある物品10の搬送は第1内部搬送装置3Aと第2内部搬送装置3Bとが分担するため、これに対応する搬送指令のうちの一部のみが第1内部搬送装置3Aに対する指令となる。本実施形態では、制御システム7は、演算処理の軽減のため、重複範囲Lにある物品10の搬送は第1内部搬送装置3Aと第2内部搬送装置3Bとが均等に分担するとみなして、これに対応する搬送指令のうちの半分を第1内部搬送装置3Aに対する指令とみなす。
【0056】
すなわち、制御システム7は、搬送元又は搬送先が第1搬送範囲R1内にある物品10の搬送指令の数と、搬送元及び搬送先の双方が重複範囲Lにある物品10の搬送指令の数の半分との合計数(以下、「搬送指令数」と言う。)が多くなるに従って第1内部搬送装置3Aの負荷が高くなると判定し、当該第1内部搬送装置3Aの負荷が高くなるに従って小さい値となるように調整数Aを設定する。例えば図2の例において、当初「2」に設定されていた調整数Aは、搬送指令数が第1基準値以上となると「1」に再設定され、搬送指令数が第1基準値よりも大きい第2基準値以上となると「0」に再設定される。これに伴い、運用バッファ数Bは、「4」から「3」、さらには「2」へと次第に減少する。
【0057】
調整数Aが小さく再設定されることにより、それに伴って運用バッファ数B(=Nmax+A)も小さくなり、入庫部4に実際に保持されている物品10の個数(保持物品数Nr)との差分(=Nmax+A-Nr)も小さくなる。この差分は、その時点で外部搬送装置8によって入庫部4に向けて先行して搬送することができる物品10の数に相当するところ、これが小さくなることによって当該個数の物品10が既に搬送中となっている場合がある。このような場合には、制御システム7は、搬送中物品数Ntが、運用バッファ数Bから保持物品数Nrを減算した数(B-Nr=Nmax+A-Nr)と等しい間は、外部搬送装置8による入庫部4へ向けての新たな物品10の搬送を開始しないものとされる。
【0058】
やがて、第1内部搬送装置3Aによる入庫搬送処理が進むと、搬送中物品数Ntが、運用バッファ数Bから保持物品数Nrを減算した数(B-Nr=Nmax+A-Nr)未満となる。すると、制御システム7は、外部搬送装置8による入庫部4へ向けての新たな物品10の搬送を開始する。本実施形態では、制御システム7は、搬送中物品数Ntが運用バッファ数Bから保持物品数Nrを減算した数(Nmax+A-Nr)未満となると直ちに、外部搬送装置8による新たな物品10の搬送を開始する。
【0059】
図12は、運用バッファ数調整制御の処理手順を示すフローチャートである。運用バッファ数調整制御は、制御システム7を構成する内部搬送制御ユニット71と外部搬送制御ユニット72と統括制御ユニット73とが協働して実行される。運用バッファ数調整制御では、まず、内部搬送制御ユニット71により第1内部搬送装置3Aの負荷(搬送指令数)が判定され、当該負荷を示す負荷情報が生成される(ステップ#01)。生成された負荷情報は、内部搬送制御ユニット71から統括制御ユニット73に送信される。
【0060】
次に、統括制御ユニット73により、内部搬送制御ユニット71から受信した負荷情報に基づいて、第1内部搬送装置3Aの負荷が高くなるに従って小さい値となるように調整数Aが設定される(#02)。そして、設定された調整数Aに応じて定まる運用バッファ数B(B=Nmax+A)に基づいた数の物品10の工程間搬送指令が、統括制御ユニット73により外部搬送制御ユニット72へ送信される。
【0061】
より具体的には、統括制御ユニット73により、その時点での搬送中物品数Ntが、運用バッファ数B(=Nmax+A)と保持物品数Nrとの差分(=Nmax+A-Nr)未満であるか否かが判定される(#03)。搬送中物品数Ntが運用バッファ数Bと保持物品数Nrとの差分未満であれば(#03:Yes)、外部搬送装置8による入庫部4へ向けての新たな物品10の搬送が許容される(#04)。この場合、統括制御ユニット73により、新たな工程間搬送指令が外部搬送制御ユニット72に送信され、それを受信した外部搬送制御ユニット72により、当該工程間搬送指令に基づいて外部搬送装置8が制御される。
【0062】
一方、搬送中物品数Ntが運用バッファ数Bと保持物品数Nrとの差分以上(実際にはこれらが同数)であれば(#03:No)、外部搬送装置8による入庫部4へ向けての新たな物品10の搬送が一時停止される(#05)。例えば、統括制御ユニット73による新たな工程間搬送指令の外部搬送制御ユニット72への送信が保留され、或いは、新たな工程間搬送指令が外部搬送制御ユニット72に送信された上で、当該工程間搬送指令に基づく外部搬送装置8の動作が保留される。やがて、搬送中物品数Ntが運用バッファ数Bと保持物品数Nrとの差分未満となると(#03:Yes)、保留が解除され、外部搬送装置8による入庫部4へ向けての新たな物品10の搬送が許容される(#04)。
【0063】
<入庫最優先制御>
入庫最優先制御は、内部搬送装置3による搬送処理に関して、一定条件下で入庫搬送処理を最優先で実行する制御である。本実施形態では、制御システム7は、保持物品数Nrと搬送中物品数Ntとの合計数(以下、「潜在的保持物品数Np」と言う。)に基づいて入庫優先制御を実行する。ここで、保持物品数Nrは、上述したように入庫部4に実際に保持されている物品10の個数であり、搬送中物品数Ntは外部搬送装置8による入庫部4への搬送中の物品10の個数である。入庫最優先制御において、制御システム7は、潜在的保持物品数Npが判定しきい値Thよりも多い場合には、内部搬送装置3による各種の搬送処理のうち、入庫搬送処理を、出庫搬送処理及び棚内搬送処理よりも優先して行う。
【0064】
本実施形態では、内部搬送装置3を構成する第1内部搬送装置3A及び第2内部搬送装置3Bのうち、入庫搬送処理を担当するのは第1内部搬送装置3Aだけである。このため、制御システム7は、第1内部搬送装置3A及び第2内部搬送装置3Bのうち、第1内部搬送装置3Aに対してのみ入庫優先制御を実行する。
【0065】
入庫最優先制御の実行の有無を判定するための基準となる判定しきい値Thは、本実施形態では、入庫部4に保持可能な物品10の最大個数である保持上限数Nmaxに設定されている。このため、本実施形態では、潜在的保持物品数Npが保持上限数Nmaxよりも多い場合、言い換えれば、外部搬送装置8が搬送中の全ての物品10のうちの少なくとも1つについてその時点では入庫部4に受取可能なスペースが存在しない場合に、入庫最優先制御が実行される。
【0066】
上述したように、本実施形態では、第1内部搬送装置3Aは、例えばその処理効率を優先した搬送順で実行するものとされており、例えば図5の例では、搬送指令A-1,A-2,A-3,A-4,・・・の順が予定されている搬送処理の順序である。制御システム7は、入庫最優先制御において、この予定されていた搬送処理の順序を変更して入庫優先制御を実行する。例えば図5の例では、搬送指令A-1に基づく搬送処理と搬送指令A-2に基づく搬送処理との順序を入れ替えることによって、搬送指令A-2に基づく入庫搬送処理を最優先で実行する。
【0067】
入庫搬送処理を最優先で実行することによって、外部搬送装置8が搬送中の物品10を受け取るためのスペースを早期に入庫部4に形成しやすくなる。すなわち、入庫部4が満杯となってしまうことを回避しやすくなり、設備全体としての処理効率の低下を抑制することができる。特定の物品収容設備1の第1内部搬送装置3Aの処理効率を多少犠牲にしてでも、物品搬送設備100全体としての処理効率の低下抑制を優先するという考え方である。
【0068】
なお、外部搬送装置8における複数の搬送台車82の稼働率が低い場合には、一部の搬送台車82がいずれかの入庫部4の手前で待機しなければならない状況になったとしても設備全体に与える影響は小さく済む場合が多い。このため、本実施形態では、制御システム7は、外部搬送装置8における複数の搬送台車82の稼働率が規定の稼働率しきい値以下である場合には、入庫優先制御を実行しないように構成されている。これにより、物品搬送設備100全体としての処理効率がさほど問題とはならない場合には、当初の狙い通り、第1内部搬送装置3Aの処理効率を優先することができる。
【0069】
ここで、搬送台車82の稼働率は、搬送台車82の全台数に対する、工程間搬送指令が割り当てられた搬送台車82の台数の比(百分率)である。稼働率しきい値は、例えば1台の搬送台車82が一定時間待機しても後続の搬送台車82が渋滞しにくい上限付近の値、具体的には例えば1%~20%程度の値に設定される。
【0070】
図13は、入庫最優先制御の処理手順を示すフローチャートである。入庫最優先制御は、制御システム7を構成する内部搬送制御ユニット71と外部搬送制御ユニット72と統括制御ユニット73とが協働して実行される。入庫最優先制御では、まず、統括制御ユニット73により外部搬送装置8における複数の搬送台車82の稼働率と稼働率しきい値との大小関係が判定される(#21)。搬送台車82の稼働率が稼働率しきい値以下である場合には(#21:No)、入庫最優先制御はそのまま終了する。一方、搬送台車82の稼働率が稼働率しきい値より大きい場合には(#21:Yes)、統括制御ユニット73により潜在的保持物品数Npが取得される(#22)。具体的には、内部搬送制御ユニット71から保持物品数Nrが取得され、外部搬送制御ユニット72から搬送中物品数Ntが取得され、これらを加算することによって潜在的保持物品数Npが算出される。
【0071】
そして、統括制御ユニット73により、潜在的保持物品数Npに基づいて入庫優先制御を実行するか否かが判定される。具体的には、潜在的保持物品数Npが判定しきい値Thよりも大きいか否かが判定される(#23)。潜在的保持物品数Npが判定しきい値Thよりも多い場合には(#23:Yes)、統括制御ユニット73により、入庫優先制御を実行すると判定される。この場合、統括制御ユニット73により、その旨の指令が内部搬送制御ユニット71に送信され、これに基づき、第1内部搬送装置3Aによる各種の搬送処理に関して、予定されていた搬送処理の順序が変更されて、入庫搬送処理が最優先で実行される(#24)。一方、潜在的保持物品数Npが判定しきい値Th以下の場合には(#23:Yes)、予定されていた通りの順序で、第1内部搬送装置3Aによる搬送処理が実行される(#25)。
【0072】
<内部搬送負荷調整制御>
内部搬送負荷調整制御は、内部搬送装置3を構成する第1内部搬送装置3A及び第2内部搬送装置3Bの搬送負荷のバランスを調整する制御である。本実施形態では、内部搬送負荷調整制御では、第1内部搬送装置3Aの動作範囲である第1搬送範囲R1に関して、入庫部4に保持されている物品10の個数である保持物品数Nrに少なくとも基づき、一定条件下でその範囲を調整する処理(範囲調整処理)を行う。本実施形態では、保持物品数Nrに、外部搬送装置8による入庫部4への搬送中の物品10の個数である搬送中物品数Ntを加えた数(保持予定物品数Ne)に基づいて内部搬送負荷調整制御を実行する。制御システム7は、内部搬送負荷調整制御において、保持予定物品数Neが多くなるに従って第1搬送範囲R1を小さくする処理を範囲調整処理として行うことにより、第1内部搬送装置3A及び第2内部搬送装置3Bの搬送負荷のバランスを調整する。本実施形態では、保持予定物品数Neが「基準物品数」に相当する。
【0073】
また、制御システム7は、内部搬送負荷調整制御(範囲調整処理)において、第1搬送範囲R1を小さくするのに応じて第2搬送範囲R2を大きくする。制御システム7は、例えば、第1搬送範囲R1における処理装置9側の一部を第2搬送範囲R2に振り替えることにより、第1搬送範囲R1を小さくするとともに、当該第1搬送範囲R1が小さくなった分だけ第2搬送範囲R2を大きくする。
【0074】
図14に示すように、本実施形態では、制御システム7は、第1搬送範囲R1を、通常の大きさの通常範囲R1nと、通常範囲R1nよりも小さい制限範囲R1lとに設定変更可能とされている。また、制御システム7は、第2搬送範囲R2を、通常の大きさの通常範囲R2nと、通常範囲R2nよりも大きい拡張範囲R2eとに設定変更可能とされている。なお、第1搬送範囲R1における通常範囲R1nと制限範囲R1lとの大きさの差と、第2搬送範囲R2における通常範囲R2nと拡張範囲R2eとの大きさの差とが、互いに等しく設定されている。
【0075】
制御システム7は、内部搬送負荷調整制御(範囲調整処理)において、保持予定物品数Neが保持上限数Nmax未満である場合には、第1内部搬送装置3Aの第1搬送範囲R1を通常範囲R1nに設定するとともに、第2内部搬送装置3Bの第2搬送範囲R2を通常範囲R2nに設定する。なお、これは通常の制御における範囲設定そのものである。
【0076】
また、制御システム7は、内部搬送負荷調整制御(範囲調整処理)において、保持予定物品数Neが保持上限数Nmax以上となっている場合には、第1内部搬送装置3Aの第1搬送範囲R1を制限範囲R1lに設定するとともに、第2内部搬送装置3Bの第2搬送範囲R2を拡張範囲R2eに設定する。保持予定物品数Neが保持上限数Nmax以上となっている場合に第1搬送範囲R1を制限範囲R1lに設定することで、保持予定物品数Neが多い場合に第1内部搬送装置3Aの稼働範囲を縮小して回転率を高め、これにより入庫部4からの物品10の搬送を促進することができる。
【0077】
例えば図5に示した搬送指令A-1に基づく棚内搬送処理(図9を参照)は、第1搬送範囲R1が制限範囲R1lとされ、第2搬送範囲R2が拡張範囲R2eとされることで、もはや重複範囲L内での搬送処理ではなくなってしまう。これに伴い、搬送指令A-1に基づく棚内搬送処理の割り当ては、第1内部搬送装置3Aから第2内部搬送装置3Bに変更されることになる。このように、第1搬送範囲R1を狭めることで第1内部搬送装置3Aの処理負担を減らすことができ、それによって生じる余力を利用して、入庫搬送処理を優先的に実行することができる。これにより、入庫部4が満杯となっている状態を回避しやすくなり、物品搬送設備100全体としての処理効率の低下を抑制することができる。
【0078】
本実施形態では、制御システム7は、第2内部搬送装置3Bに割り当てられた搬送指令の個数が指令数しきい値以上である場合には、保持予定物品数Neの大きさによらずに、範囲調整処理を行わない。指令数しきい値は、例えば収容棚2のサイズや第2内部搬送装置3Bの処理能力等を考慮の上、第2内部搬送装置3Bが割り当てられた搬送処理をある程度の余力を残したまま実行できる上限付近の値に設定される。第2内部搬送装置3Bの負荷にある程度の余裕がある場合にのみ範囲調整処理を行うように構成することで、第2搬送範囲R2が大きくなることに伴う第2内部搬送装置3Bの負荷増大に適切に対応することができる。本実施形態では、指令数しきい値が「しきい値」に相当する。
【0079】
図15は、内部搬送負荷調整制御の処理手順を示すフローチャートである。内部搬送負荷調整制御は、制御システム7を構成する内部搬送制御ユニット71によって実行される。内部搬送負荷調整制御では、まず、第2内部搬送装置3Bに割り当てられた搬送指令数と指令数しきい値との大小関係が判定される(#41)。第2内部搬送装置3Bの搬送指令数が指令数しきい値以上である場合には(#41:No)、内部搬送負荷調整制御はそのまま終了する。
【0080】
一方、第2内部搬送装置3Bの搬送指令数が指令数しきい値未満である場合には(#41:Yes)、次に、保持予定物品数Neと保持上限数Nmaxとの大小関係が判定される(#42)。保持予定物品数Neが保持上限数Nmax未満の場合には(#42:Yes)、第1内部搬送装置3Aの第1搬送範囲R1が通常範囲R1nに、また、第2内部搬送装置3Bの第2搬送範囲R2が通常範囲R2nに設定される(#43)。一方、保持予定物品数Neが保持上限数Nmax以上の場合には(#42:No)、第1内部搬送装置3Aの第1搬送範囲R1が制限範囲R1lに、また、第2内部搬送装置3Bの第2搬送範囲R2が拡張範囲R2eに設定される(#44)。
【0081】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、運用バッファ数調整制御において、搬送中物品数Ntが運用バッファ数Bから保持物品数Nrを減算した数(Nmax+A-Nr)未満となると直ちに外部搬送装置8による新たな物品10の搬送が開始される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、搬送中物品数Ntが運用バッファ数Bから保持物品数Nrを減算した数(Nmax+A-Nr)未満となった後、一定時間の経過後に、外部搬送装置8による新たな物品10の搬送が開始されても良い。
【0082】
(2)上記の実施形態では、入庫最優先制御において、判定しきい値Thが入庫部4に保持可能な物品10の最大個数である保持上限数Nmaxに設定されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、判定しきい値Thが保持上限数Nmaxとは異なる値、例えば「保持上限数Nmax±1」等に設定されても良い。
【0083】
(3)上記の実施形態では、入庫最優先制御において、潜在的保持物品数Npが保持物品数Nrと搬送中物品数Ntとの合計数とされる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば潜在的保持物品数Npに、工程間搬送指令は既に生成されているものの未だ搬送前のものも含めて考えても良い。この場合、潜在的保持物品数Npは、「入庫部4に保持されている物品10の個数である保持物品数Nrと、外部搬送装置8により入庫部4に搬送される予定の物品10の個数である搬送物品数との合計数」と定義することができる。
【0084】
(4)上記の実施形態では、外部搬送装置8における複数の搬送台車82の稼働率が稼働率しきい値以下である場合には入庫優先制御が実行されない構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、搬送台車82の稼働率によらずに一律に入庫優先制御が実行されても良い。
【0085】
(5)上記の実施形態では、内部搬送負荷調整制御において、第1搬送範囲R1を小さくするのに応じて同じだけ第2搬送範囲R2が大きくされる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1搬送範囲R1を小さくする程度と第2搬送範囲R2が大きくする程度とを異なせても良い。或いは、第2搬送範囲R2の大きさを変更することなく第1搬送範囲R1だけを小さくしても良い。
【0086】
(6)上記の実施形態では、内部搬送負荷調整制御において、第1搬送範囲R1及び第2搬送範囲R2がそれぞれ2段階に切り替えられる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば第1搬送範囲R1及び第2搬送範囲R2がそれぞれ3段階以上に切り替えられても良い。この場合において、第1搬送範囲R1の切り替えの段数と第2搬送範囲R2の切り替えの段数とが互いに異なっていても良い。
【0087】
(7)上記の実施形態では、保持予定物品数Ne(入庫部4に保持されている物品10の個数である保持物品数Nrに外部搬送装置8による入庫部4への搬送中の物品10の個数である搬送中物品数Ntを加えた数)に基づいて内部搬送負荷調整制御が実行される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば搬送中物品数Ntを考慮せずに保持物品数Nrだけに基づいて内部搬送負荷調整制御が実行されても良い。この場合、保持物品数Nrが「基準物品数」に相当する。
【0088】
(8)上記の実施形態では、第2内部搬送装置3Bに割り当てられた搬送指令の個数が指令数しきい値以上である場合には内部搬送負荷調整制御(範囲調整処理)が実行されない構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第2内部搬送装置3Bに割り当てられた搬送指令数によらずに一律に内部搬送負荷調整制御(範囲調整処理)が実行されても良い。
【0089】
(9)上記の実施形態では、運用バッファ数調整制御、入庫最優先制御、及び内部搬送負荷調整制御の全てが実行される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、これらのうちの1つ又は2つのみが実行されても良い。
【0090】
(10)上記の実施形態では、第1内部搬送装置3Aと第2内部搬送装置3Bとが共通の走行レール31上に設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば第1内部搬送装置3Aと第2内部搬送装置3Bとが、互いに平行に敷設されたそれぞれ専用の走行レール31上に設けられても良い。
【0091】
(11)上記の実施形態では、内部搬送装置3が第1内部搬送装置3A及び第2内部搬送装置3Bを有する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば内部搬送装置3が1台だけで構成されても良い。この場合、1台の内部搬送装置3が、入庫部4及び出庫部5から収容棚2を経由して処理装置9までの全範囲の搬送処理を担当し、入庫部4から処理装置9へ物品10を直接搬送することも可能となる。このような場合には、内部搬送装置3により入庫部4の入庫ポートPiから処理装置9の受渡ポートPpへ物品10を直接搬送する処理も、入庫搬送処理に含めて考えるものとする。また、1台の内部搬送装置3が、入庫部4から出庫部5へ物品10を直接搬送することも可能であり、このような場合には、内部搬送装置3により入庫部4から出庫部5へ物品10を直接搬送する処理も、入庫搬送処理に含めて考えるものとする。
【0092】
(12)上記の実施形態では、入庫部4及び出庫部5がそれぞれ2個の物品10を物理的に保持可能とされている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、入庫部4や出庫部5が物理的に保持可能な物品数は1個でも良いし3個以上でも良い。この場合において、入庫部4が物理的に保持可能な物品数と出庫部5が物理的に保持可能な物品数とが互いに異なっていても良い。
【0093】
(13)上記の実施形態では、内部搬送装置3がスタッカークレーンで構成されている例について説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、内部搬送装置3が例えば複数段のシャトル式台車(収容棚2の各段に対応する高さにおいて収容棚2の前面に沿って往復移動する複数の搬送台車を備えた搬送装置)等で構成されても良い。
【0094】
(14)上記の実施形態では、外部搬送装置8が有軌道の床面走行式の搬送台車82を備えている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、外部搬送装置8が例えば床面走行式の無軌道台車を備えて構成されても良いし、或いは、天井搬送式の有軌道台車を備えて構成されても良い。外部搬送装置8が天井搬送式の有軌道台車を備えて構成される場合には、当該外部搬送装置8は搬送台車82から吊下支持されたホイスト式の移載装置を備えても良い。
【0095】
(15)上記の実施形態では、外部搬送装置8が移載装置を備えている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、外部搬送装置8が移載装置を備えずに、入庫部4や出庫部5側に移載装置が設けられても良い。
【0096】
(16)上記の実施形態では、制御システム7が互いに協働する内部搬送制御ユニット71と外部搬送制御ユニット72と統括制御ユニット73とを備える構成を例として説明した。しかし、制御システム7の具体的構成に関しては、複数の制御ユニットを組み合わせたり、1つの制御ユニットをさらに細分化したりしても良い。また、他の機能を実現可能とするための他の制御ユニットをさらに備えていても良い。
【0097】
(17)上述した各実施形態(上記の実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【0098】
〔実施形態の概要〕
以上をまとめると、本開示に係る物品収容設備は、好適には、以下の各構成を備える。
【0099】
物品収容設備であって、
物品を収容する収容部を複数備えた収容棚と、
外部搬送装置から前記物品を受け取り、複数の前記物品を保持する入庫部と、
前記収容棚の前面に沿って設定された搬送経路に沿って移動し、前記入庫部と前記収容棚の少なくとも一部の前記収容部とを含む第1搬送範囲内で前記物品の搬送を行う第1内部搬送装置と、
前記搬送経路に沿って移動し、前記収容棚の少なくとも一部の前記収容部を含むと共に前記入庫部を含まない第2搬送範囲内で前記物品の搬送を行う第2内部搬送装置と、
前記第1内部搬送装置及び前記第2内部搬送装置を制御する制御システムと、を備え、
前記第1搬送範囲の一部と前記第2搬送範囲の一部とが重複するように設定され、
前記制御システムは、前記入庫部に保持されている前記物品の個数である保持物品数に基づいて定まる基準物品数が多くなるに従って前記第1搬送範囲を小さくする範囲調整処理を行う。
【0100】
この構成によれば、収容棚の前面に沿う搬送経路に沿って移動する第1内部搬送装置と第2内部搬送装置とが協働して、外部搬送装置から受け取った物品を収容棚に収容し、必要な場合にその後の処理に供することができる。この場合において、制御システムが範囲調整処理を行うことで、保持物品数に基づいて定まる基準物品数が多くなるに従って第1内部搬送装置の稼働範囲を縮小して回転率を高め、これにより、第1内部搬送装置による入庫部からの物品の搬送を促進することができる。その結果、入庫部が満杯となっている状態を回避しやすくなり、物品搬送設備全体としての処理効率の低下を抑制することができる。
【0101】
一態様として、
前記制御システムは、前記範囲調整処理において、前記第1搬送範囲を小さくするのに応じて前記第2搬送範囲を大きくすることが好ましい。
【0102】
この構成によれば、第2内部搬送装置の稼働範囲を拡大することで第2内部搬送装置が受け持つことができる搬送処理を増加させることができ、その分、第1内部搬送装置による入庫部からの物品の搬送をさらに促進することができる。よって、設備全体としての処理効率の低下をさらに抑制することができる。
【0103】
一態様として、
前記入庫部に保持可能な前記物品の最大個数を保持上限数として、
前記制御システムは、前記第1搬送範囲を、通常の大きさの通常範囲と前記通常範囲よりも小さい制限範囲とに設定変更可能であり、前記範囲調整処理において、前記基準物品数が前記保持上限数未満である場合には前記第1搬送範囲を前記通常範囲に設定し、前記基準物品数が前記保持上限数以上である場合には前記第1搬送範囲を前記制限範囲に設定することが好ましい。
【0104】
この構成によれば、第1搬送範囲の設定を通常範囲と制限範囲とで切り替えるという比較的単純な制御で、第1内部搬送装置による入庫部からの物品の搬送を促進することができる。よって、制御の複雑化に伴うコストアップを回避しながら、物品搬送設備全体としての処理効率の低下を抑制することができる。
【0105】
一態様として、
前記基準物品数は前記保持物品数であることが好ましい。
【0106】
この構成によれば、制御システムは、範囲調整処理において、保持物品数が多くなるに従って第1搬送範囲を小さくするので、その時点における入庫部の実情に応じて当該入庫部が満杯となっている状態を適切に回避できる。よって、設備全体としての処理効率の低下を適切に抑制することができる。
【0107】
一態様として、
前記外部搬送装置による前記入庫部への搬送中の前記物品の個数である搬送中物品数を、前記保持物品数に加えた数を保持予定物品数として、
前記基準物品数は前記保持予定物品数であることが好ましい。
【0108】
この構成によれば、制御システムは、範囲調整処理において、保持予定物品数が多くなるに従って第1搬送範囲を小さくする。外部搬送装置による入庫部への搬送中の物品の個数も考慮に入れることで、入庫部が満杯となっている状態をより一層回避しやすくなる。よって、設備全体としての処理効率の低下をさらに抑制することができる。
【0109】
一態様として、
前記制御システムは、前記第1内部搬送装置及び前記第2内部搬送装置のそれぞれに前記物品の搬送指令を割り当てて1つの前記搬送指令で1つの前記物品を搬送させ、前記第2内部搬送装置に割り当てられた前記搬送指令の個数が規定のしきい値以上である場合には前記範囲調整処理を行わないことが好ましい。
【0110】
範囲調整処理によって第1内部搬送装置の第1搬送範囲を小さくすることに伴い、第2内部搬送装置の処理負荷が増大すると、場合によっては、結果的に第2内部搬送装置による搬送処理が停滞してしまう可能性がある。この点、上記の構成によれば、第2内部搬送装置の元々の処理負荷がある程度高い場合には範囲調整処理を行わないようにすることで、第1内部搬送装置及び第2内部搬送装置の処理負荷のアンバランスに起因して却って設備全体としての処理効率が低下してしまうのを回避することができる。
【0111】
一態様として、
前記搬送経路に隣接する位置に受渡部が配置されており、
前記受渡部は、前記物品に対する処理を行う処理装置と、前記第1内部搬送装置又は前記第2内部搬送装置との間での前記物品の受け渡しに用いられ、
前記第2搬送範囲が前記受渡部を含むように設定されていることが好ましい。
【0112】
この構成によれば、処理装置への物品の搬入や処理装置からの物品の搬出を、第2内部搬送装置を用いて行うことができる。これにより、第1内部搬送装置によって入庫部からの物品の搬送を促進しながら、例えば処理装置との間の物品の搬送を優先的に行いたいような場合にそれに適切に対応することができる。
【0113】
一態様として、
前記第1内部搬送装置から受け取った前記物品を保持し、当該物品を前記外部搬送装置に引き渡す出庫部をさらに備え、
前記入庫部に保持可能な前記物品の最大個数を保持上限数として、
前記制御システムは、前記基準物品数が前記保持上限数以上である場合には、前記第1内部搬送装置に対して、前記収容部から前記出庫部への前記物品の搬送処理、及び、前記収容部から別の前記収容部への前記物品の搬送処理よりも、前記入庫部から前記収容部への前記物品の搬送処理を優先させることが好ましい。
【0114】
この構成によれば、第1内部搬送装置によって入庫部から収容部へと物品を優先的に搬送することで、入庫部が満杯となる状態をより一層回避しやすくなり、物品搬送設備全体としての処理効率の低下をより一層抑制することができる。
【0115】
本開示に係る物品収容設備は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができれば良い。
【符号の説明】
【0116】
1 物品収容設備
2 収容棚
2A 第1収容棚
2B 第2収容棚
3 内部搬送装置
3A 第1内部搬送装置
3B 第2内部搬送装置
4 入庫部
5 出庫部
7 制御システム
8 外部搬送装置
9 処理装置
10 物品
23 収容部
71 内部搬送制御ユニット
72 外部搬送制御ユニット
73 統括制御ユニット
82 搬送台車
Ti 内部搬送経路(搬送経路)
Pi 入庫ポート
Po 出庫ポート
Pp 処理用ポート(受渡部)
R1 第1搬送範囲
R1n 通常範囲
R1l 制限範囲
R2 第2搬送範囲
R2n 通常範囲
R2e 拡張範囲
L 重複範囲
B 運用バッファ数
Nmax 保持上限数
A 調整数
Nr 保持物品数(基準物品数)
Np 潜在的保持物品数
Nt 搬送中物品数
Ne 保持予定物品数(基準物品数)
図1
図2
図3
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図5
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図10
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