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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】収納装置および電子レジスタ
(51)【国際特許分類】
   G07G 1/00 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
G07G1/00 321Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021152101
(22)【出願日】2021-09-17
(65)【公開番号】P2023044199
(43)【公開日】2023-03-30
【審査請求日】2022-03-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1. 令和3年5月20日、6月2日、高円寺商店街連合会に加盟する5店舗において公開 2. 令和3年7月2日、市場調査の事前説明会(東京都新宿区西新宿1丁目8番3号)において公開 3. 令和3年7月5日、7月7日~7月9日、祖師谷商店街振興組合に加盟する25店舗において公開
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 聡史
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0360195(US,A1)
【文献】特開2000-006723(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0104011(US,A1)
【文献】実開昭64-024641(JP,U)
【文献】実開平02-007028(JP,U)
【文献】実開昭60-192082(JP,U)
【文献】特開2018-026160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
ある方向に互いに並んだ複数の歯を有するラック部と、
前記ラック部が設けられ、前記筐体内に収納される収納位置と、少なくとも一部が前記筐体から露出する露出位置との間で前記ある方向に移動可能な第1収納部と、
前記ラック部の前記複数の歯に噛み合い、回動運動が前記ラック部に伝達されることで前記第1収納部を前記収納位置と前記露出位置との間で前記ある方向に移動させるための歯車部と、を備え、
前記ラック部および前記歯車部の一方は、前記歯車部と前記複数の歯とが互いに噛み合った噛合い状態と、前記歯車部と前記複数の歯との互いの噛合いが外れた解除状態とに、ユーザの操作に応じて選択的に移行可能であり、
前記ラック部および前記歯車部の前記一方が前記ユーザの操作に応じて前記解除状態から前記噛合い状態に移行するときに、前記複数の歯と前記歯車部との噛合い位置を予め定められた適正噛合い位置に合わせるための位置合わせ部と、
を備え、
前記位置合わせ部は、前記第1収納部が前記露出位置よりも前記収納位置側に移動する場合に、前記回動運動に伴って回転移動し、前記第1収納部が前記収納位置に位置している場合に、前記第1収納部の下部に配置される
ことを特徴とする収納装置。
【請求項2】
請求項1に記載の収納装置において、
前記位置合わせ部は、前記歯車部に設けられ、前記ラック部および前記歯車部の前記一方が前記ユーザの操作に応じて、前記解除状態から前記噛合い状態に移行する場合において、前記第1収納部が前記露出位置にあるときに、前記ラック部を含むある部材と前記第1収納部との少なくとも一方に当接することにより、前記複数の歯と前記歯車部との噛合い位置を前記適正噛合い位置に合わせる
ことを特徴とする収納装置。
【請求項3】
請求項2に記載された収納装置において、
前記位置合わせ部は、前記歯車部と前記複数の歯とが互いに噛合い状態にあり、かつ、前記第1収納部が前記露出位置よりも前記収納位置側にあるときに、前記第1収納部に当接しない
ことを特徴とする収納装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載された収納装置において、
前記歯車部と前記複数の歯との前記噛合い状態を維持するように前記歯車部の回動量を規制し、前記ユーザの操作に応じて前記歯車部の回動量の規制を解除可能な規制機構を更に備え、
前記歯車部は、前記ユーザの操作に応じて、前記規制機構による前記歯車部の回動量の規制が解除され、かつ、前記複数の歯との噛合いが外れるように回動させられることによって、前記解除状態に移行する
ことを特徴とする収納装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の収納装置において、
前記筐体には、前記筐体内に連通する開口が設けられ、
前記筐体に対する回動運動により前記開口を開閉可能な開閉蓋をさらに備え、
前記歯車部は、前記開閉蓋と連動可能であり、
前記第1収納部は、前記筐体に対する前記開閉蓋の回動運動が前記歯車部および前記ラック部を介して伝達されることによって、前記収納位置と前記露出位置との間で移動する ことを特徴とする収納装置。
【請求項6】
請求項5に記載の収納装置において、
前記第1収納部は、前記筐体内の上段に収納され、
前記開閉蓋の開閉動作に連動して回動し、前記開閉蓋が閉じた状態のときに前記筐体内に収納され、前記開閉蓋が開いた状態のときに前記筐体の下部において外部に露出される第2収容部をさらに備える
ことを特徴とする収納装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の収納装置において、
前記開閉蓋は、前記開口を閉鎖する閉鎖位置と、前記ラック部および前記歯車部の前記一方が前記噛合い状態にあり、かつ、前記開口を開放する開放位置と、前記ラック部および前記歯車部の前記一方が前記解除状態にあり、かつ、前記開口を開放する解除位置との間で回動可能であり、
前記開閉蓋が前記解除位置にある状態で前記ユーザの操作に応じて前記ラック部および前記歯車部の前記一方が前記解除状態から前記噛合い状態に移行する場合において、前記複数の歯と前記歯車部との前記噛合い位置が前記位置合わせ部により前記適正噛合い位置に合わされ、かつ、前記ユーザの操作により前記第1収納部が前記露出位置に移動させられたときに、前記第1収納部の移動が前記ラック部及び前記歯車部を介して前記開閉蓋に伝達されることにより、前記開閉蓋が前記開放位置に位置するように回動する
ことを特徴とする収納装置。
【請求項8】
請求項5~請求項7のいずれかに記載された収納装置において、
前記筐体は、縦長の箱状に形成されており、
前記開閉蓋は、前記筐体の前面において上下方向に回動して前記開口を開閉する
ことを特徴とする収納装置。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれかに記載の収納装置において、
前記ラック部と共に前記第1収納部に設けられた支持部材と、
前記筐体内に設けられ、前記支持部材を前記第1収納部と共に、前記ある方向への移動をガイドするためのガイド部と、をさらに備える
ことを特徴とする収納装置。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれかに記載された収納装置を備え、前記収納装置は金銭を収納可能であることを特徴とする電子レジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、収納装置およびそれを備えた電子レジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
収納装置として、例えば、電子レジスタの金銭収納装置においては、特許文献1に記載されているように、筐体内に収納された収納部をモータなどの駆動源によって駆動させて、筐体内から引き出したり筺体内に収納したりする構造のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平3-245292号公報
【0004】
この種の収納装置は、収納部の側面にラックを前後方向に沿って設け、このラックに噛み合う歯車を筐体に設け、この歯車をモータなどの駆動源によって回転させることにより、収納部を筐体内から引き出したり筺体内に収納したりするように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような収納装置では、筐体内から抜き出された収納部を筐体内に収納する際に、収納部に設けられたラックと筐体に設けられた歯車との噛み合い位置を適正な位置に合せる必要がある。すなわち、この収納装置では、ラックと歯車との噛み合い位置が適正な位置でない場合、収納部を筐体内に完全に収納することができない。このため、このような収納装置では、ラックと歯車との噛み合い位置を適正な位置に合せる作業が面倒で、取り扱いが煩雑で、使い勝手が悪いという問題がある。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、取り扱いが簡単で、使い勝手の良い収納装置およびそれを備えた電子レジスタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、筐体と、ある方向に互いに並んだ複数の歯を有するラック部と、前記ラック部が設けられ、前記筐体内に収納される収納位置と、少なくとも一部が前記筐体から露出する露出位置との間で前記ある方向に移動可能な第1収納部と、前記ラック部の前記複数の歯に噛み合い、回動運動が前記ラック部に伝達されることで前記第1収納部を前記収納位置と前記露出位置との間で前記ある方向に移動させるための歯車部と、を備え、前記ラック部および前記歯車部の一方は、前記歯車部と前記複数の歯とが互いに噛み合った噛合い状態と、前記歯車部と前記複数の歯との互いの噛合いが外れた解除状態とに、ユーザの操作に応じて選択的に移行可能であり、前記ラック部および前記歯車部の前記一方が前記ユーザの操作に応じて前記解除状態から前記噛合い状態に移行するときに、前記複数の歯と前記歯車部との噛合い位置を予め定められた適正噛合い位置に合わせるための位置合わせ部と、を備え、前記位置合わせ部は、前記回動運動に伴って回転移動し、前記第1収納部が前記収納位置に位置している場合に、前記第1収納部の下部に配置されることを特徴とする収納装置である。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、取り扱いが簡単で、使い勝手の良い収納装置およびそれを備えた電子レジスタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明を適用した電子レジスタの一実施形態を示した斜視図である。
図2図1に示された電子レジスタを示した側面図である。
図3図1に示された電子レジスタを背面側から見た斜視図である。
図4図1に示された電子レジスタにおける金銭収納装置のA-A矢視における断面図である。
図5図1に示された電子レジスタにおける金銭収納装置の開閉蓋を開いた状態を示した斜視図である。
図6図5に示された金銭収納装置おいて、紙幣収納部と硬貨収納部とを筐体から取り出した状態を示した分解斜視図である。
図7図5に示された金銭収納装置において、開閉蓋内に紙幣収納部が収納された状態を示した斜視図である。
図8図5に示された金銭収納装置の硬貨収納部を示し、(a)はその斜視図、(b)はその側面図である。
図9図5に示された金銭収納装置のB-B矢視における断面図である。
図10図4に示された金銭収納装置における転倒防止装置を示した要部の斜視図である。
図11図9に示された金銭収納装置において、開閉蓋が開いた状態における転倒防止装置を示した斜視図である。
図12図9に示された金銭収納装置における保持機構の要部を示した斜視図である。
図13図12に示された金銭収納装置における保持機構の要部を分解して示した斜視図である。
図14図12に示された金銭収納装置における保持機構のC-C矢視において破断して示した要部の斜視図である。
図15図14に示された金銭収納装置の保持機構において、保持部による硬貨収納部の保持を解除した状態を示した要部の斜視図である。
図16図12に示された金銭収納装置における保持機構のD-D矢視において破断して示した要部の斜視図である。
図17図16に示された金銭収納装置の保持機構において、保持部による硬貨収納部の保持を解除した状態を示した要部の斜視図である。
図18図9に示された金銭収納装置の保持機構において、紙幣収納部がほぼ水平な状態の下限位置から更に前下りに傾いた状態を示した要部の断面図である。
図19図9に示された金銭収納装置の位置合わせ部の要部を示した斜視図である。
図20図19に示された金銭収納装置の位置合わせ部において、ラック部と歯車部との噛み合い位置を示した要部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1図20を参照して、この発明を適用した電子レジスタの一実施形態について説明する。なお、以下の説明では、電子レジスタを操作するユーザから見て手前側を「前」、奥側を「後」、左側を「左」、右側を「右」、上側を「上」、下側を「下」として説明し、両方向の回転を回動という。
【0011】
この電子レジスタは、図1図3に示すように、金銭収納装置1を兼ね備えたものであり、筐体2を備えている。この筐体2は、上下方向の長さが前後方向の長さよりも大きい縦長のほぼ箱状に形成されている。この筐体2は、上面が前下がりに傾斜した傾斜面に形成されている。
【0012】
この筐体2の傾斜した上面には、図1に示すように、キー入力部3と主表示部4とが右側に設けられていると共に、プリンタカバー5と記録紙排出口6とスライドスイッチ7とが左側に設けられている。この場合、主表示部4は、筐体2の上面の右上側に配置されている。キー入力部3は、主表示部4を除いて、筐体2の上面における右側の2/3程度の領域に配置されている。
【0013】
また、プリンタカバー5は、図1に示すように、プリンタ(図示せず)を覆うものであり、筐体2の上面における左側に、その下辺部側を除いて、配置されている。記録紙排出口6は、筐体2の上面におけるプリンタカバー5の下辺部に設けられている。スライドスイッチ7は、電源、精算、設定、登録などの各種のモードを切り替えるものであり、筐体2の上面における記録紙排出口6と上面の下辺部との間の狭い範囲に配置されている。
【0014】
この筐体2の前面における傾斜面よりも下側には、図1図6などに示すように、筐体2内を外部に連通させる開口2dが形成されており、この開口2dを開閉可能に可動体である開閉蓋8が設けられている。開閉蓋8は、左右方向に延びる軸線(後述する第1支持軸12)を中心として、この開口2dを閉鎖する閉鎖位置(図2など参照)と、開口2dを開放する開放位置(図5など参照)と、解除位置(図18など参照)との間で、上下方向に回転(回動)可能に、筐体2に取り付けられている。
【0015】
開閉蓋8は、開放位置にあるときには、筐体2から前方にほぼ水平に延びており、開閉蓋8の回動に伴う開閉蓋8の自由端の水平方向における移動方向は、前後方向(自由端移動方向)である。また、開閉蓋8は、解除位置にあるときには、開口2dを開放するとともに開閉蓋8の自由端部が開放位置よりも下方に位置し、筐体2から前下がりに延びている。
【0016】
また、筐体2の背面には、図2および図3に示すように、背面部である背面板9が取り付けられている。この背面板9は、上部が裏面下がりに傾斜する傾斜面9aに形成されており、この傾斜面9aには、顧客用の補助表示部9bが設けられている。また、この背面板9の下部には、電池蓋9cが設けられている。
【0017】
この筐体2は、図1図3に示すように、左右の両側面における前後方向の長さ(厚さ・奥行き)が比較的小さく形成されており、筐体2の前面に設けられた開閉蓋8の左右の両側部と、筐体2の裏面に設けられた背面板9の左右の両側部とには、傾斜部2aが設けられている。これにより、金銭収納装置1の全体は、その左右の両側部における前後部が内側に引き込んで形成されていることにより、筐体2の左右の両側部の前後方向の寸法が、筐体2の左右の中央部の前後方向の寸法に比べて小さく、全体的に両側部の厚みが薄く見えるように形成されている。
【0018】
また、この筐体2の内部には、図4および図5に示すように、第1収納部である硬貨収納部11と、第2収納部である紙幣収納部10と、が収納されている。紙幣収納部10は、図7に示すように、紙幣や金券を金種ごとに収納するものであって、左右方向に並んだ複数の収納部に区画されており、紙幣収納部10の各収納部には、紙幣押え10aが設けられている。この紙幣収納部10は、開閉蓋8とは別体に構成されており、開閉蓋8の内面に配置されて、図5に示すように、その一部が筐体2内の下段に配置されるように構成されている。硬貨収納部11は、図8に示すように、硬貨を金種ごとに収納するものであって、左右方向に並んだ複数の収納部に区画されており、筐体2内の上段に配置されるように構成されている。
【0019】
すなわち、紙幣収納部10は、図4に示すように、開閉蓋8が閉鎖位置に位置して閉じた状態のときに、開閉蓋8の内面に配置された状態で、筐体2内に起立して配置され、収納位置に位置するように構成されている。また、この紙幣収納部10は、図5図7に示すように、開閉蓋8が閉鎖位置から下側に回転して開いた状態(開放位置に位置した状態)のときに、開閉蓋8内に配置された状態で、筐体2内の下段に開閉蓋8と共にほぼ水平な状態で配置され、露出位置に位置するように構成されている。紙幣収納部10は、開閉蓋8の左右の側面の前端部の各々に設けられたフックにより、開閉蓋8に係止されている。紙幣収納部10は、開閉蓋8が開放位置にある場合に、これらのフックをユーザが外すことにより、開閉蓋8から取り外すことができる。
【0020】
硬貨収納部11は、図4に示すように、開閉蓋8が閉じた状態のときに、筐体2内の上段における後側の収納位置に配置されるように構成されている。また、この硬貨収納部11は、図5図6および図9に示すように、開閉蓋8が開いた状態のときに、筐体2よりも前側で、且つ紙幣収納部10よりも上側の露出位置に配置され、筐体2の外部に露出するように構成されている。
【0021】
この場合、開閉蓋8は、図1および図4に示すように、閉じた状態のときに、筐体2の前側に突出する形状に形成され、この突出した箇所の内部に紙幣収納部10が収納されるように構成されている。この開閉蓋8の左右の端部の各々の下端部には、図6および図7に示すように、第1回動体13が上方に突出して設けられている。この第1回動体13は、筐体2内に設けられた第1支持軸12を中心に開閉蓋8と共に回動するように構成されている。第1支持軸12は左右方向に延びている。
【0022】
これにより、開閉蓋8は、図4図7、および図9に示すように、第1回動体13の中心部が第1支持軸12によって回動可能に支持され、この第1支持軸12を中心に第1回動体13と共に、前述した開放位置と閉鎖位置との間で上下方向に回動し、それに伴って開閉蓋8の自由端が上下方向且つ前後方向に移動するように構成されている。また、図7図11に示すように、第1支持軸12および第1回動体13には、トーションばね8aが設けられており、開閉蓋8は、トーションばね8aのばね力によって開放位置側(解除位置側)に、すなわち、図4における反時計回りに回転するように付勢されている。なお、トーションばね8aは省略してもよく、その場合には、開閉蓋8はユーザにより開けられる。また、開閉蓋8の左右の側壁部の各々には、切欠き部31が形成されている。各切欠き部31は、開閉蓋8が開放位置に位置しているときに、開閉蓋8の側壁の後端部の上端部に位置し、かつ、下方に凸形状となるように、形成されている。
【0023】
第1回動体13は、図4図6図7図9に示すように、半円形状に形成されて、開閉蓋8に設けられている。この第1回動体13は、開閉蓋8の開閉動作に伴う回動動作を、後述するカム溝13aと歯車部13bとによって2つの系統に分岐させて伝達させるように構成されている。すなわち、この第1回動体13は、図10に示すように、カム溝13aによって分岐されて筐体2の転倒を防止する第1系統と、歯車部13bによって分岐されて硬貨収納部11を前述した収納位置と露出位置との間でスライドさせる第2系統との2つの系統に分岐させて、第1回動体13の回動動作を2つの系統に伝達させるように構成されている。
【0024】
硬貨収納部11の左右の端部には、図8に示すように、支持部材14がそれぞれ固定されている。これらの左右の支持部材14、14は、図5図6図9に示すように、筐体2内における左右の両側に筐体2の前後方向に沿って設けられたガイド溝15、15内にスライド可能にそれぞれ配置されている。この場合、各支持部材14の後部には、図8に示すように、ガイド溝15内を転動する2つのローラ14bが回動自在に設けられている。
【0025】
また、支持部材14の下部の前端部と後端部以外の部分には、図8図10および図11に示すように、前後方向に互いに並んだ複数の歯を有するラック部14aが設けられている。この支持部材14のラック部14aは、その複数の歯が開閉蓋8の第1回動体13の歯車部13bに噛み合うように構成されている。
【0026】
これにより、この硬貨収納部11は、開閉蓋8の開閉動作に伴って第1回動体13が回動した際に、第1回動体13の歯車部13bに噛み合った支持部材14のラック部14aが第1回動体13の回動動作に連動して、支持部材14が筐体2のガイド溝15に沿ってガイドされて移動することにより、筐体2の前後方向にスライドするように構成されている。また、歯車部13bは、ラック部14aの複数の歯と噛み合った噛み合い状態と、複数の歯との噛み合いが解除された解除状態とに、ユーザの操作に応じて選択的に移行可能に構成されている。
【0027】
また、金銭収納装置1は、図9図13に示すように、転倒防止装置16を備えている。この転倒防止装置16は、筐体2の下端部の左右の端部にそれぞれ設けられており、各転倒防止装置16は、筐体2の下端部の前端部に回動可能に設けられた倒れ防止部材17と、開閉蓋8の開閉動作に伴う回動運動を直線運動に変換して倒れ防止部材17に伝達することで倒れ防止部材17を回動させる連動機構18と、を備えている。なお、転倒防止装置16の数は、本実施形態では2つであるが、任意である。
【0028】
倒れ防止部材17は、図11図13に示すように、ほぼ扇形状に形成された平板であり、その扇状の要が、筐体2の下面に設けられた第3支持軸19に取り付けられており、第3支持軸19は上下方向に延びている。倒れ防止部材17は、第3支持軸19を中心として、図4図10などに示す収納位置と、図9図12などに示す突出位置との間で前後方向に回動可能に構成されている。また、この倒れ防止部材17は、扇状の先端の円弧部における筐体2の前側に位置する一端部の下面に足部17aが設けられている。これにより、倒れ防止部材17は、第3支持軸19を中心に回転した際に、足部17aを筐体2の下端部から前後方向に移動させて出没させるように構成されている。
【0029】
連動機構18は、図10図13に示すように、開閉蓋8の開閉動作に連動して回動する第1回動体13と、この第1回動体13の回動に応じて回動する第2回動体20と、この第2回動体20に連動して筐体2の前後方向に向けて直線移動して倒れ防止部材17を回動させるスライド体21と、を備えている。
【0030】
すなわち、第1回動体13は、図6図10図12に示すように、開閉蓋8の左右の端部に設けられており、各第1回動体13は、筐体2に設けられた第1支持軸12に回動可能に支持されている。この第1回動体13には、開閉蓋8の回動動作を2つの系統のうちの筐体2の転倒を防止する第1系統に分岐させるためのカム溝13aが設けられている。このカム溝13aは、第1支持軸12に近接した箇所と第1支持軸12から離れた箇所とに亘って、渦巻き状に湾曲して設けられている。
【0031】
第2回動体20は、図10図13に示すように、ほぼ扇形状に形成された平板であって、第1回動体13の下部側に配置されており、その扇の要が、筐体2に設けられた第2支持軸22に回動可能に支持されている。第2支持軸22は、第1支持軸12と平行に左右方向に延びている。また、第2回動体20の扇状の円弧部における両端部のうちの一方である上端部には、第1回動体13のカム溝13a内を移動可能な第1ピン23が設けられており、他方である下端部には、スライド体21に回転可能に連結された第2ピン24が設けられている。
【0032】
この場合、第1ピン23は、図10および図11に示すように、開閉蓋8の開閉動作に応じて回動する第1回動体13のカム溝13aに沿って上下方向に回動移動するように構成されている。これにより、第2回動体20は、第1回動体13におけるカム溝13aの回動移動に伴って第1ピン23が上下方向に回動移動することにより、第2支持軸22を中心に回動するように構成されている。
【0033】
すなわち、第1ピン23は、図10に示すように、開閉蓋8が閉鎖位置にあるときに、第1回動体13のカム溝13aにおける第1支持軸12に近接する箇所に位置して、第2支持軸22の若干上方に位置するように構成されている。また、この第1ピン23は、図11に示すように、開閉蓋8が開く際に、第1回動体13のカム溝13aに沿って第1支持軸12から離れるように下方に回転移動して、第2支持軸22とほぼ同じ高さ位置になるように構成されている。
【0034】
この場合、第1ピン23は、上下方向の移動量が第1回動体13の回動量よりも小さくなるように、第1回転体13のカム溝13aが形成されている。開閉蓋8が閉じる際には、第1ピン23は、カム溝13aに沿って上記とは逆に上方に回転移動するように構成されている。また、図18に示すように、開閉蓋8が解除位置にあるときに、第1ピン23はカム溝13aの縁部に接触し、それにより、開閉蓋8が解除位置からさらに下方に回転するのが阻止される。
【0035】
第2ピン24は、図10図13に示すように、前後方向に延びるスライド体21のほぼ中間部に回動自在に取り付けられている。この第2ピン24は、第1ピン23が上下方向に回動移動することにより、第2支持軸22を中心に第2回動体20が回動した際に、筐体2の前後方向に回動移動して、スライド体21を前後方向に直線移動させるように構成されている。
【0036】
この場合、第2ピン24は、図10図13に示すように、前後方向の移動量が第1ピン23の上下方向の移動量と同じで、第1回動体13の回動量よりも小さくなるように構成されている。このため、第2回動体20は、その回転力(回転トルク)が第1回動体13の回転力(回転トルク)よりも、大きくなるように構成されている。
【0037】
スライド体21は、図10図13に示すように、前端部21aが、倒れ防止部材17における第3支持軸19の近傍に位置する箇所に回転可能に連結されている。第3支持軸19は上下方向に延びている。また、スライド体21は、筐体2に設けられたガイド(図示せず)により、前後方向に移動可能(スライド可能)に支持されており、筐体2に設けられたストッパ(図示せず)により、スライド体21の前後方向への移動範囲は、予め定められた或る範囲に規定されている。このスライド体21は、第2回動体20が回動して第2ピン24が前後方向に移動した際に、第2ピン24と連動して前後方向に移動し、スライド体21の前端部21aが第3支持軸19を中心に倒れ防止部材17を前記収納位置と前記突出位置との間で前後方向に回動させるように、構成されている。
【0038】
また、倒れ防止部材17は、図10図13に示すように、スライド体21の前端部21aが第3支持軸19の近傍に位置する倒れ防止部材17の箇所に連結されていることにより、スライド体21のスライド長さが短くても、倒れ防止部材17の回転量が多くなるように構成されている。このため、倒れ防止部材17は、外周部に設けられた足部17aの前後方向の回動移動量が大きくなり、筐体2の前側下部から足部17aを筐体2の前側に大きく突出させるように構成されている。
【0039】
この場合、倒れ防止部材17は、図11および図13に示すように、スライド体21の前端部21aが第3支持軸19の近傍に位置する倒れ防止部材17の箇所に連結されているので、倒れ防止部材17を回転させるのに要する力(回転トルク)は比較的大きい。これに対して、第2回動体20の回転トルクは第1回動体13の回転トルクよりも大きく、そのような第2回動体20の大きな回転トルクによってスライド体21をスライドさせるので、このスライド体21のスライドにより、倒れ防止部材17は、第3支持軸19を中心に確実に回動する。
【0040】
また、この金銭収納装置1は、図6図12および図13に示すように、一対の保持機構25を備えている。各保持機構25は、開閉蓋8が前記開放位置よりも下方に回転するのを阻止し、それにより、硬貨収納部11が露出位置に位置しているときに、歯車部13bとラック部14aとが互いに噛合った噛合い状態を維持することで、硬貨収納部11を筐体2から分離不能に保持し、ユーザによる解除操作に応じて、開閉蓋8の開放位置よりも下方への回転を許容することによって、歯車部13bとラック部14aとの噛合いを解除し、それにより、硬貨収納部11を筐体2から分離可能にするように構成されている。なお、保持機構25および切欠き部31の数は任意である。
【0041】
すなわち、この保持機構25は、図12および図13に示すように、開放位置よりも下方への開閉蓋8の回転を阻止する保持部27と、この保持部27による開閉蓋8の回転の阻止を解除する解除釦部28と、が一体に設けられた保持解除部材26を備えている。この保持解除部材26は、筐体2の側面から見て、全体がほぼZ字形状に形成され、筐体2の側面部の内側に筐体2の前後方向に沿って配置されている。
【0042】
この保持解除部材26の前側上部には、図12および図13に示すように、解除釦部28が設けられており、後側下部には、保持部27が設けられている。また、この保持解除部材26は、図14および図15に示すように、筐体2に回動可能に取り付けられ、上下方向に延びる軸部29と、解除釦部28を筐体2の外部に向けて付勢すると共に保持部27を開閉蓋8の側壁部に向けて付勢する付勢部材であるばね部材30と、を備えている。軸部29は、保持解除部材26の前後方向の中央の上下の部位の各々に設けられ、筐体2の側面部の内面に設けられた軸受部29aに回動可能に取り付けられている。軸受部29aには、軸部29が回動可能に嵌合している。
【0043】
ばね部材30は、図13に示すように、板ばねであり、保持解除部材26の前後方向に細長い帯状に形成されている。この場合、ばね部材30は、前端部が解除釦部28側の内面に当接し、後端部が保持部27側に位置する保持解除部材26の内面に設けられた係止部に当接するように構成されている。これにより、ばね部材30は、軸部29を中心に、前端部が解除釦部28を筐体2の外部に向けて付勢し、後端部が保持部27を開閉蓋8の側壁部に向けて付勢するように構成されている。
【0044】
このため、解除釦部28は、図12図15に示すように、ばね部材30のばね力によって筐体2内から外部に向けて付勢されて、筐体2の側面に設けられた釦孔2b(図2参照)内に外部に向けて押し出されるように構成されている。保持部27は、開閉蓋8が開放位置にあるときに、ばね部材30のばね力によって開閉蓋8の側壁部に設けられた切欠き部31内に押し込まれるように構成されている。
【0045】
これにより、保持部27は、図16に示すように、切欠き部31内に押し込まれて係合した際に、保持位置に位置し、開閉蓋8がほぼ水平な状態の前記開放位置よりも下側に回転しないように、開閉蓋8の回動位置を規制するように構成されている。
【0046】
なお、開閉蓋8の開放位置よりも上方への回転は保持部27及び切欠き部31によっては規制(制限)されない。以上のように、保持部27を含む保持機構25は、開閉蓋8の第1回動体13の歯車部13bとラック部14aの複数の歯とが互いに噛合った噛合い状態を維持するように、開閉蓋8の回動量、すなわち、歯車部13bの回動量を規制するように、構成されている。
【0047】
また、保持解除部材26は、図15および図17に示すように、解除釦部28がばね部材30のばね力に抗して押されて筐体2の釦孔2b(図2参照)から筐体2内に押し込まれたときに、ばね部材30のばね力に抗して軸部29を中心に回動して保持解除位置に位置し、保持部27を開閉蓋8の側壁部に設けられた切欠き部31内から離脱させて、開放位置よりも下方への開閉蓋8の回転の阻止を解除するように構成されている。
【0048】
この場合、開閉蓋8は、図16および図17に示すように、保持解除部材26の保持部27が開閉蓋8の切欠き部31内から離脱して、開閉蓋8の係止が解除されるので、図18に示すように、第1支持軸12を中心に開放位置から更に前下がりに回動するように構成されている。
【0049】
また、図18に示す解除位置にある開閉蓋8がユーザ操作により引き上げるように回動させられて開放位置に位置する際に、図17に示すように、保持部27の傾斜部(図示せず)が開閉蓋8の側壁部に乗り上げてスライドして、一旦、保持解除位置に位置した後に、図16に示すように、ばね部材30のばね力により保持部27が切欠き部31に押し込まれて、開閉蓋8の開放位置から下方への回転が自動的に規制されるように構成されている。
【0050】
一方、硬貨収納部11は、図5および図9に示すように、開閉蓋8が開いた状態のときに、紙幣収納部10の上方に配置されて筐体2から前方に露出した露出位置に位置するように構成されている。また、この硬貨収納部11は、保持解除部材26の保持部27による開放位置から下方への開閉蓋8の回転の阻止が解除されて、図18に示すように、開閉蓋8が開放位置よりも下方に回転し、解除位置に位置した際に、図19および図20に示す状態から、支持部材14のラック部14aの複数の歯のうちの最も後ろ側の歯が第1回動体13の歯車部13bから外れることで、ラック部14aの歯と歯車部13bの歯との噛み合いが外れるように構成されている。
【0051】
すなわち、硬貨収納部11は、保持解除部材26の保持部27による開放位置よりも下方への開閉蓋8の回転の阻止が解除された際に、図18に示すように、開放位置から開閉蓋8がトーションばね8aのばね力によって下方に回転し、この開閉蓋8の回転に連動して第1回動体13の歯車部13bが回転してラック部14aを前方に引き出すので、図19および図20に示す状態から、ラック部14aと歯車部13bとの噛み合いが外れて、筐体2から取り外せる(分離可能になる)ように構成されている。
【0052】
以上のように、筐体2に対する開閉蓋8の回動量が開閉蓋8の開放位置に相当するある回動量に達したときに、保持部27が開閉蓋8の切欠き部31に係合するによって、開閉蓋8の回動量は、ある回動量を超えないように(開放位置からさらに下方に回転しないように)規制され、それにより、歯車部13bとラック部14aとの噛合いが維持される。また、保持部27による開放位置よりも下方への開閉蓋8の回転の阻止の解除に伴い、開閉蓋8への保持部27の係合による開閉蓋8の回動量の規制が解除されることにより、歯車部13bがラック部14aとの噛合いを外せるように回動可能になることで、硬貨収納部11が筐体2から分離可能になる。
【0053】
ところで、この金銭収納装置1は、取り外された硬貨収納部11が筐体2内に再度、開閉蓋8と連動可能に取り付けられて収納されるように構成されている。すなわち、この金銭収納装置1は、硬貨収納部11を筐体2内に再度、収納し、ユーザの操作に応じて歯車部13bが前記解除状態から前記噛み合い状態に移行するときに、硬貨収納部11の収納位置を予め定められた適正収納位置に合わせるべく、支持部材14のラック部14aの複数の歯と第1回動体13の歯車部13bの歯との噛み合い位置を予め定められた適正噛み合い位置に合わせるための位置合わせ部33を備えている。
【0054】
硬貨収納部11は、開閉蓋8の回動に伴って第1回動体13の歯車部13bが回転してラック部14aが引き出された際に、ラック部14aと歯車部13bとの噛み合いが外れるため、筐体2内に再度、収納するときに、位置合わせ部33によってラック部14aと歯車部13bとの噛み合い位置を適正噛み合い位置に合わせる必要がある。ラック部14aと歯車部13bとの噛合い位置が適正噛合い位置に合っていないと、硬貨収納部11が筐体2内の適正収納位置に位置せずに開閉蓋8や筐体2に接触することによって、開閉蓋8が閉まらなくなるためである。
【0055】
この位置合わせ部33は、図18および図19に示すように、第1回動体13に一体に設けられて、開閉蓋8の開閉動作に伴って回動する第1回動体13の回動動作に応じて回転移動するように構成されている。また、位置合わせ部33は、硬貨収納部11を筐体2内に収納する際に、硬貨収納部11の後端部に当接して、支持部材14のラック部14aと第1回動体13の歯車部13bとの噛み合い位置を適正位置に合わせるように構成されている。
【0056】
また、位置合わせ部33は、図18および図19に示すように、ラック部14aと歯車部13bとの噛み合い位置を適正噛み合い位置に合わせた状態で、硬貨収納部11が筐体2内に押し込まれた際に、支持部材14のラック部14aの複数の歯が後側に移動して歯車部13bの歯に噛み合って噛み合い状態になり、この歯車部13bを第1回動体13と共に回動させることにより、この第1回動体13の回動に伴って支持部材14の後端部から徐々に離れるように構成されている。
【0057】
また、この位置合わせ部33は、図18および図19に示すように、支持部材14のラック部14aの移動によって歯車部13bが第1回動体13と共に回動した際に、第1回動体13の回動に伴って、前下がりに傾いた解除位置にある状態の開閉蓋8を引き上げる方向に回動させて、紙幣収納部10をほぼ水平な状態の開放位置に配置させるように構成されている。
【0058】
次に、このような電子レジスタの金銭収納装置1を使用する場合について説明する。
この金銭収納装置1は、開閉蓋8が閉じている状態のときに、縦長の箱状をなしている。この場合には、開閉蓋8の両側部と背面板9の両側部とにそれぞれ傾斜部2aが形成されていることにより、筐体2の両側面における前後方向の長さが小さく形成され、厚みが薄く見える。
【0059】
また、この状態では、筐体2内に紙幣収納部10と硬貨収納部11とが収納されている。すなわち、紙幣収納部10は、開閉蓋8内に配置され、且つ開閉蓋8と共に起立した状態で筐体2内に収納されている。硬貨収納部11は、筐体2内における上段に配置された状態で、筐体2内の後部に収納されている。
【0060】
この状態で、開閉蓋8を開くと、開閉蓋8が、第1支持軸12を中心に回動して筐体2内の下段に配置され、開放位置に位置する。このときには、開閉蓋8内に紙幣収納部10がほぼ水平な状態に配置されると共に、硬貨収納部11が筐体2内の上段において前側に引き出されて配置される。すなわち、紙幣収納部10は、開閉蓋8と共に回動して筐体2から前側に突出して配置される。硬貨収納部11は、筐体2における紙幣収納部10の上方に位置する上段において、筐体2から前側に引き出されて露出位置に位置する。
【0061】
また、開閉蓋8が開く際には、開閉蓋8に設けられた第1回動体13が、筐体2に設けられた第1支持軸12を中心に回動する。これに伴って、紙幣収納部10が開閉蓋8と共に第1支持軸12を中心に回動する。このときには、第1回動体13の回動動作が、筐体2の転倒を防止する第1系統と、硬貨収納部11をスライドさせる第2系統との2つの系統に分岐される。
【0062】
この場合、第1回動体13の回動動作が第2系統に分岐されて伝達される際には、第1回動体13の歯車部13bに噛み合ったラック部14aが第1回動体13の回動動作に応じて筐体2内の前側にスライド移動する。すなわち、ラック部14aは支持部材14に設けられており、支持部材14は筐体2のガイド溝15にほぼ水平な状態でガイドされて筐体2の前側に向けてスライドする。
【0063】
これにより、紙幣収納部10と硬貨収納部11とが筐体2内から外部に露出して配置される。このときには、紙幣収納部10と硬貨収納部11とによって、筐体2全体の重心が前側に移動し、筐体2が不安定な状態になる。このため、このように紙幣収納部10および硬貨収納部11が筐体2内から外部に露出する際には、第1回動体13の回動動作が第1系統に分岐されて伝達される。この場合には、開閉蓋8の開閉動作に連動して転倒防止装置16の倒れ防止部材17が回動して、倒れ防止部材17の足部17aが筐体2の前側下部に突出する。このため、不安定な状態の筐体2の転倒が防げる。
【0064】
すなわち、開閉蓋8が開いて第1回動体13が第1支持軸12を中心に回動する際には、第1回動体13のカム溝13aによって転倒防止装置16の第1系統に分岐される。この場合、第1回動体13が第1支持軸12を中心に回動する際には、第1回動体13の回動動作に連動して連動機構18が回転運動を直線運動に変換して倒れ防止部材17を回動させる。
【0065】
すなわち、連動機構18は、開閉蓋8の開閉動作と共に回動する第1回動体13と、この第1回動体13の回動に連動して回動する第2回動体20と、この第2回動体20に連動して筐体2の前後方向に向けて直線移動して倒れ防止部材17を回動させるスライド体21と、を備えている。従って、開閉蓋8が開く際には、第1回動体13が第1支持軸12を中心に回動し、この第1回動体13の回動に伴って第2回動体20が第2支持軸22を中心に回動する。
【0066】
このときには、第2回動体20の第1ピン23が第1回動体13のカム溝13aに沿って第1支持軸12から下側に移動し、この第1ピン23の下側への移動に連動して、第2回動体20が第2支持軸22を中心に回動する。この第2回動体20の回動に伴って第2ピン24が筐体2の前方に向けて移動する。これにより、第2回動体20の第2ピン24によってスライド体21が筐体2の前方に向けて直線移動する。
【0067】
このスライド体21の直線移動によって倒れ防止部材17が第3支持軸19を中心に回動して、足部17aが筐体2の下部から前側に突出する。このときには、スライド体21の一端部21aが倒れ防止部材17の第3支持軸19の近傍に連結されているので、スライド体21のスライド長さが短くても、倒れ防止部材17の足部17aの回転移動長さが長くなる。このため、倒れ防止部材17の足部17aが筐体2の前側に十分な長さで突出し、筐体2の前側への転倒が防げる。
【0068】
すなわち、倒れ防止部材17は、スライド体21の一端部21aが第3支持軸19の近傍に位置する倒れ防止部材17の箇所に連結されているので、倒れ防止部材17の回転力(回転トルク)が大きくなっても、第2回動体20の回転トルクが第1回動体13の回転トルクよりも大きい。このため、この大きい第2回動体20の回転トルクによってスライド体21をスライドさせ、このスライド体21のスライドによって倒れ防止部材17を確実に回動させて、倒れ防止部材17の足部17aを筐体2の前側に十分な長さで突出させる。
【0069】
次に、紙幣収納部10および硬貨収納部11を開閉蓋8および筐体2からそれぞれ取り外して、紙幣収納部10および硬貨収納部11の各内部の金銭を集計する場合について説明する。
この場合には、筐体2内の下段にほぼ水平な状態の開放位置に配置された開閉蓋8内に紙幣収納部10が配置され、この状態で開閉蓋8の左右の側面の前端部に設けられたフックをユーザが外すことによって、紙幣収納部10を開閉蓋8から取り外すことができる。
【0070】
また、開閉蓋8が開放位置にあるときには、保持機構25の保持部27がばね部材30のばね力によって開閉蓋8の側壁部に設けられた切欠き部31内に押し込まれている。このときには、保持部27は、開閉蓋8の切欠き部31内に押し込まれ係合した際に、開閉蓋8が開放位置よりも下方に回転するのを阻止し、開閉蓋8の回動量を規制する。
【0071】
この状態で、硬貨収納部11を筐体2から取り外す場合には、ユーザは、筐体2の釦孔2bから外部に露出した保持解除部材26の解除釦部28をばね部材30のばね力に抗して押す。すると、保持解除部材26が軸部29を中心にばね部材30のばね力に抗して回動し、保持部27が開閉蓋8の切欠き部31内から離脱して、保持部27による開放位置よりも下方への開閉蓋8の回転の阻止が解除される。
【0072】
このときには、保持部27による開閉蓋8の回転の阻止が解除されるので、開閉蓋8がトーションばね8aのばね力で第1支持軸12を中心に開放位置からさらに下方に回動し、解除位置に位置する。なお、トーションばね8aを省略した場合には、ユーザ操作によって開閉蓋8は解除位置に回転させられる。また、開閉蓋8が解除位置にある場合には、開閉蓋8が開放位置にある場合よりも前下りに傾斜するため、紙幣収納部10を開閉蓋8から取外しやすい状態にすることができる。
【0073】
このときには、硬貨収納部11もほぼ同時に取り出せる。すなわち、保持部27による開閉蓋8の回転の阻止が解除されて、開閉蓋8が解除位置に位置した際には、支持部材14のラック部14aの複数の歯と第1回動体13の歯車部13bの歯との噛み合いが外れる。
【0074】
すなわち、開閉蓋8が開放位置から下方に回動する際には、開閉蓋8の回動に伴って第1回動体13の歯車部13bが回転してラック部14aが筐体2の前側に引き出される。これにより、ラック部14aの歯と歯車部13bの歯との噛み合いが外れて、ユーザは、筐体2から硬貨収納部11を取り外すことができる。以上により、ユーザは、紙幣収納部10および硬貨収納部11の各内部の金銭を集計することができる。
【0075】
次に、紙幣収納部10と硬貨収納部11とを筐体2内に取り付ける場合について説明する。
この場合には、ユーザは、解除位置に位置した開閉蓋8内に紙幣収納部10を配置し、フックにより紙幣収納部10を開閉蓋8に係止する。この状態で、ユーザは、硬貨収納部11に設けられた支持部材14を筐体2内のガイド溝15内に挿入させて、硬貨収納部11を筐体2内の上段に配置する。
【0076】
そして、ユーザは、支持部材14のラック部14aを開閉蓋8に設けられた第1回動体13の歯車部13bに接近させる。このときには、ユーザは、硬貨収納部11の後端部を第1回動体13に設けられた位置合わせ部33に接近させて当接させる。すると、支持部材14のラック部14aの歯と第1回動体13の歯車部13bの歯との噛み合い位置が適正位置に合わされる。
【0077】
この状態で、ユーザが硬貨収納部11を支持部材14と共に筐体2内の後部に押し込むと、硬貨収納部11の後端部が位置合わせ部33に押し当てられて、支持部材14のラック部14aの歯が第1回動体13の歯車部13bの歯に噛み合う。これにより、硬貨収納部11の押し込み動作に伴うラック部14aの移動によって第1回動体13が、トーションばね8aのばね力に抗して歯車部13bと共に回動する。すなわち、ラック部14aが筐体2内の後部に移動して、このラック部14aに噛み合って歯車部13bが回動する。
【0078】
このときには、位置合わせ部33が第1回動体13の回動に伴って硬貨収納部11の後端部から徐々に離れて、硬貨収納部11が筐体2内の上段に配置される。また、このときには、歯車部13bの回動に連動して第1回動体13が回動するので、解除位置に位置していた開閉蓋8が引き上げられて開放位置に配置される。すなわち、ラック部14aの移動によって歯車部13bが回動する際には、第1回動体13が第1支持軸12を中心に開閉蓋8と共に回動して、開閉蓋8を開放位置に回転させる。
【0079】
このときには、開閉蓋8の側壁部に向けて突出した保持部27の傾斜部(図示せず)が開閉蓋8の後端部の側壁部に押し当てられて、保持部27の傾斜部が開閉蓋8の側壁部に乗り上げてスライドした上、保持部27が開閉蓋8の側壁部の切欠き部31に押し込まれる。これにより、開放位置よりも下方への開閉蓋8の回転が保持部27によって阻止される。
【0080】
この状態で、ユーザが開閉蓋8を上方に回動させて閉じると、開閉蓋8が第1支持軸12を中心に第1回動体13と共に回動して筐体2の前面の開口2dを塞いで、筐体2内の上部のフック部2cに係止される。このときには、開閉蓋8内に配置された紙幣収納部10が開閉蓋8と共に回動して筐体2内に起立する。また、このときには、開閉蓋8と共に第1回動体13が回動し、この第1回動体13の回動に連動して回動する歯車部13bによってラック部14aが筐体2の後部に移動して、硬貨収納部11が筐体2の上段における後部に配置される。
【0081】
また、このときには、開閉蓋8と共に回動する第1回動体13の回動に伴って、連動機構18が回転運動を直線運動に変換して倒れ防止部材17を前述とは逆方向に回動させる。すなわち、開閉蓋8が閉じる際には、第1回動体13が第1支持軸12を中心に前述とは逆方向に回動し、この第1回動体13の回動に連動して第2回動体20が第2支持軸22を中心に前述とは逆方向に回動する。
【0082】
このときには、第2回動体20の第1ピン23が第1回動体13のカム溝13aに沿って第1支持軸12から上側に第1支持軸12に接近する方向に移動する。このため、第2回動体20が第2支持軸22を中心に回動し、この第2回動体20の回動に伴って第2ピン24が筐体2の後方に移動する。
【0083】
すると、第2回動体20の第2ピン24によってスライド体21が筐体2の後方に直線移動し、このスライド体21によって倒れ防止部材17が第3支持軸19を中心に前述とは逆方向に回動して、足部17aが筐体2の前側から下部に引き込まれる。このときにも、スライド体21のスライド長さが短くても、倒れ防止部材17の足部17aの移動長さが長くなる。このため、倒れ防止部材17の足部17aが筐体2の前側に十分な長さで突出していても、筐体2の下部に収納される。
【0084】
この場合にも、倒れ防止部材17は、スライド体21の一端部21aが第3支持軸19の近傍に位置する倒れ防止部材17の箇所に連結されているので、倒れ防止部材17の回転力(回転トルク)が大きくなっても、第2回動体20の回転トルクが第1回動体13の回転トルクよりも大きい。このため、この大きい第2回動体20の回転トルクによってスライド体21をスライドさせるので、このスライド体21のスライドによって確実に回動し、倒れ防止部材17の足部17aを筐体2の前側から下部に良好に収納される。
【0085】
このように、この金銭収納装置1によれば、筐体2と、前後方向(ある方向)に互いに並んだ複数の歯を有するラック部14aと、このラック部14aが設けられ、筐体2内に収納される収納位置と、少なくとも一部が筐体2から露出する露出位置との間で前後方向に移動可能な硬貨収納部11(第1収納部)と、ラック部14aの複数の歯に噛み合い、回動運動がラック部14aに伝達されることで硬貨収納部11を収納位置と露出位置との間で前記ある方向に移動させ、複数の歯と噛み合った噛合い状態と、複数の歯との噛合いが外れた解除状態とに、ユーザの操作に応じて選択的に移行可能な歯車部13bと、この歯車部13bがユーザの操作に応じて解除状態から噛合い状態に移行するときに、複数の歯と歯車部13bとの噛合い位置を予め定められた適正噛合い位置に合わせるための位置合わせ部33と、を備えていることにより、取り扱いが簡単で、使い勝手が良い。
【0086】
すなわち、この金銭収納装置1では、硬貨収納部11を筐体2内に収納するときに、位置合わせ部33によってラック部14aと歯車部13bとを位置合せすることができるので、筐体2内に硬貨収納部11を適正な位置に配置させることができ、これにより筐体2対する硬貨収納部11の位置合せ作業が容易にできるので、取り扱いが簡単で、使い勝手が良い。
【0087】
このため、硬貨収納部11は、位置合わせ部33によって硬貨収納部11を筐体2内に位置合わせされているので、硬貨収納部11を筐体2内に確実に且つ良好に収納させることができると共に、硬貨収納部11を収納させて開閉蓋8を確実に且つ良好に閉じることができる。
【0088】
この場合、この金銭収納装置1では、位置合わせ部33が、歯車部13bに設けられ、この歯車部13bがユーザの操作に応じて、解除状態から噛合い状態に移行する場合において、硬貨収納部11が露出位置にあるときに、硬貨収納部11に当接することにより複数の歯と歯車部13bとの噛合い位置を適正噛合い位置に合わせることにより、ラック部14aと歯車部13bとを適正な位置で噛み合せることができる。
【0089】
また、この金銭収納装置1では、位置合わせ部33は、歯車部13bが噛合い状態にあり、かつ、硬貨収納部11が露出位置よりも収納位置側にあるときに、硬貨収納部11に当接しないことにより、ラック部14aと歯車部13bとの噛み合いによって硬貨収納部11を円滑に且つ良好に移動させることができる。
【0090】
また、この金銭収納装置1では、歯車部13bの噛合い状態を維持するように歯車部13bの回動量を規制し、ユーザの操作に応じて歯車部13bの回動量の規制を解除可能な保持機構25(規制機構)を更に備え、歯車部13bは、ユーザの操作に応じて、保持機構25による歯車部13bの回動量の規制が解除され、かつ、複数の歯との噛合いが外れるように回動させられることによって、解除状態に移行することにより、硬貨収納部11を筐体2から容易に取り外すことができる。
【0091】
また、この金銭収納装置1では、筐体2にその筐体2内に連通する開口2dが設けられ、筐体2に対する回動運動により開口2dを開閉可能な開閉蓋8をさらに備え、歯車部13bは、開閉蓋8と連動可能であり、硬貨収納部11は、筐体2に対する開閉蓋8の回動運動が歯車部13bおよびラック部14aを介して伝達されることによって、収納位置と露出位置との間で移動するので、硬貨収納部11を開閉蓋8の開閉動作に連動させて移動させることができる。
【0092】
また、この金銭収納装置1では、硬貨収納部11が、筐体2内の上段に収納され、開閉蓋8の開閉動作に連動して回動し、開閉蓋8が閉じた状態のときに筐体2内に収納され、開閉蓋8が開いた状態のときに筐体2の下部において外部に露出される第2収容部である紙幣収納部10をさらに備えていることにより、開閉蓋8が開いた状態のときに紙幣収納部10を筐体2の外部に露出させることができる。
【0093】
また、この金銭収納装置1では、開閉蓋8が、開口2dを閉鎖する閉鎖位置と、歯車部13bが噛合い状態にあり、かつ、開口2dを開放する開放位置と、歯車部13bが解除状態にあり、かつ、開口2dを開放する解除位置との間で回動可能であることにより、開閉蓋8によって筐体2の開口2dを良好に開閉させることができる。
【0094】
また、この金銭収納装置1では、開閉蓋8が解除位置にある状態でユーザの操作に応じて歯車部13bが解除状態から噛合い状態に移行する場合において、複数の歯と歯車部13bとの噛合い位置が位置合わせ部33により適正噛合い位置に合わされ、かつ、ユーザの操作により硬貨収納部11が露出位置に移動させられたときに、硬貨収納部11の移動がラック部14a及び歯車部13bを介して開閉蓋8に伝達されることにより、開閉蓋8が開放位置に位置するように回動することにより、位置合わせ部33により複数の歯と歯車部13bとが適正噛合い位置で噛み合った際に、開閉蓋8の開閉動作に連動して硬貨収納部11と紙幣収納部10とを移動させることができる。
【0095】
また、この金銭収納装置1では、筐体2が縦長の箱状に形成されており、開閉蓋8は、筐体2の前面において上下方向に回動して開口2dを開閉することにより、筐体2の前面において開閉蓋8を開閉させることができ、これにより筐体2の前面に硬貨収納部11と紙幣収納部10とを露出させることができるので、使い勝手が良い。
【0096】
さらに、この金銭収納装置1では、ラック部14aと共に硬貨収納部11に設けられた支持部材14と、筐体2内に設けられ、支持部材14を硬貨収納部11と共に、前記ある方向への移動をガイドするためのガイド部であるガイド溝15と、をさらに備えることにより、ガイド溝15によって支持部材を円滑に且つ良好にガイドすることができるので、この支持部材14によって硬貨収納部11を良好に移動させることができる。
【0097】
なお、上述した実施形態では、開閉蓋8が筐体2の前面において上下方向に回動して開閉する場合について述べたが、この発明は、これに限らず、例えば筐体2の前面において左右方向に回動して開閉するようにしても良い。この場合には、片側のみに開閉する片開きでも良く、両側に開閉する両開きでも良い。また、実施形態では、可動体は開閉蓋8であるが、一部が筐体2に接触または収納される第1位置と筐体2から離間した第2位置との間で移動可能な可動体であれば、他の適当な可動体でもよい。
【0098】
また、上述した実施形態では、連動機構18が回転運動を直線運動に変換するように構成した場合について述べたが、この発明は、これに限らず、例えば傘歯車などの歯車を用いた歯車機構を用いた構造であっても良い。
【0099】
また、上述した実施形態では、位置合わせ部33が筐体2内に硬貨収納部11を収納する際に、位置合わせ部33は、硬貨収納部11の後面に当接しているが、硬貨収納部11の後面に代えて、または硬貨収納部11の後面と共に、ラック部14aを含む支持部材14(ある部材)の後端に当接しても良い。
【0100】
さらに、実施形態では、ラック部14aの複数の歯と歯車部13bとの噛合いの解除を、ラック部14aの後端の歯を歯車部13bから外すことで行っているが、例えば次のようにして行っても良い。すなわち、(a)歯車部13bを第1支持軸12に、スプライン結合により第1支持軸12の軸線方向に移動可能かつ回動不能に設け、歯車部13bを、ばねなどの付勢部で第1支持軸12の軸線方向の一方側に付勢し、この付勢部とストッパとの協働によって、歯車部13bとラック部14aの複数の歯とが互いに噛合った噛合い状態を維持する。また、ユーザによる解除操作で操作される解除操作部の操作力を歯車部13bに作用させることにより、付勢部の付勢力に抗して歯車部13bを第1支持軸12上において軸線方向の他方側に移動させることで、ラック部14aの複数の歯と歯車部13bとの噛合いが解除される。この状態で、ユーザは、露出位置に位置している硬貨収納部11をラック部14aとともに、筐体2から手前に引き抜いて分離させることができる。また、この場合には、保持部としての付勢部およびストッパと、解除操作部とが、保持機構として機能し、硬貨収納部11が露出位置に位置している場合に、硬貨収納部11を筐体2に分離不能に保持し、ユーザによる解除操作に応じて硬貨収納部11の保持を解除して硬貨収納部11を筐体2から分離可能にするように機能する。
【0101】
あるいは、ラック部14aの複数の歯と歯車部13bとの噛合いの解除を、例えば次のようにして行っても良い。すなわち、(b)ラック部14aを前後方向に移動可能にガイドするガイド部の上部を、筐体2に対して、ラック部14aの複数の歯が歯車部13bに噛合う第1位置と、複数の歯が歯車部13bから外れることが可能な第2位置(第1位置よりも上側)との間で上下方向に移動可能に設けるとともに、ばねなどの付勢部でこのガイド部の上部を第1位置側に付勢し、この付勢部とガイド部との協働によって、ラック部14aの複数の歯と歯車部13bとが互いに噛合った噛合い状態を維持する。また、ユーザによる解除操作で操作される解除操作部の操作力をガイド部の上部に作用させることにより、付勢部の付勢力に抗してガイド部の上部を第2位置に移動させることで、ラック部14aの複数の歯と歯車部13bとの噛合いが解除可能になる。この状態で、ユーザは、露出位置に位置している硬貨収納部11をラック部14aとともに上方に動かしながら手前に引き抜けば、複数の歯と歯車部13bとの噛合いを解除状態に移行させて、筐体2から硬貨収納部11を分離することができる。また、この場合、保持部としての付勢部およびガイド部と、解除操作部とが、保持機構として機能し、硬貨収納部11が露出位置に位置している場合に、硬貨収納部11を筐体2に分離不能に保持し、ユーザによる解除操作に応じて硬貨収納部11の保持を解除して硬貨収納部11を筐体から分離可能にするように機能する。以上のように、保持部が、歯車部とラック部の複数の歯との噛合い状態を維持するように歯車部及びラック部の一方を保持することにより、収納部が筐体から分離不能になり、ユーザによる解除操作に応じて、保持部による歯車部と複数の歯との噛合い状態の維持が解除されることで、収納部が筐体から分離可能になるように、収納装置は構成されていればよく、この点において、他の適当な構成を採用しても良いことは、もちろんである。
【0102】
上記の(a)および(b)の各々の場合であって、開閉蓋8が開放位置に位置し、かつ、歯車部13bとラック部14aの複数の歯とが互いに噛合った噛合い状態にあるとき、および、歯車部13bとラック部14aの複数の歯との互いの噛合いが外れた解除状態にあるときのいずれにおいても、位置合わせ部33は、開閉蓋8が開放位置にあるときに、ラック部14aを含むある部材と硬貨収納部11との少なくとも一方に当接可能に設けられる。
【0103】
さらに、上述した実施形態では、硬貨収納部11に支持部材14を固定しているが、硬貨収納部11を支持部材14に着脱自在に設けるとともに、硬貨収納部11を支持部材14にロックするロック部と、このロック部による硬貨収納部11のロックを、ユーザによる解除操作に応じて解除するための解除操作部とを設けても良い。この場合、保持部としてのロック部と、解除操作部とが、保持機構として機能し、硬貨収納部11が露出位置に位置している場合に、硬貨収納部11を筐体2に分離不能に保持し、ユーザによる解除操作に応じて硬貨収納部11の保持を解除して硬貨収納部11を筐体2から分離可能にするように機能する。また、この場合、例えば、ロック部は、フックなどで構成され、かつ、硬貨収納部11と支持部材14の一方に設けられ、硬貨収納部11と支持部材14の他方に係合する係合状態と、ユーザによる解除操作に応じて硬貨収納部11と支持部材14の他方への係合が解除される解除状態とに、移行可能に構成される。
【0104】
さらに、上述した実施形態では、切欠き部31を開閉蓋8の側壁部に形成しているが、開閉蓋8及び紙幣収納部10の両方に互いに連続するように形成してもよい。これにより、開閉蓋8が開放位置に位置しているときに、保持部27を開閉蓋8の切欠き部31及び紙幣収納部10の切欠き部の両方に係合させることによって、収納部としての紙幣収納部10を開閉蓋8から分離不能に保持し、ユーザによる解除操作(解除釦部28の押し操作)に応じて紙幣収納部10の保持を解除して紙幣収納部10を筐体2から分離可能にしても良い。
【0105】
さらに、上述した実施形態では、電子レジスタの金銭収納装置1に適用した場合について述べたが、この発明は必ずしも金銭収納装置1である必要はなく、収納部である引出しを多段に重ねた電子機器やキャビネットなどにも適用することができる。これなでに述べた実施形態のバリエーションは適宜、組み合わせても良い。
【0106】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0107】
(付記)
請求項1に記載の発明は、筐体と、ある方向に互いに並んだ複数の歯を有するラック部と、前記ラック部が設けられ、前記筐体内に収納される収納位置と、少なくとも一部が前記筐体から露出する露出位置との間で前記ある方向に移動可能な第1収納部と、前記ラック部の前記複数の歯に噛み合い、回動運動が前記ラック部に伝達されることで前記第1収納部を前記収納位置と前記露出位置との間で前記ある方向に移動させるための歯車部と、を備え、前記ラック部および前記歯車部の一方は、前記歯車部と前記複数の歯とが互いに噛み合った噛合い状態と、前記歯車部と前記複数の歯との互いの噛合いが外れた解除状態とに、ユーザの操作に応じて選択的に移行可能であり、前記ラック部および前記歯車部の前記一方が前記ユーザの操作に応じて前記解除状態から前記噛合い状態に移行するときに、前記複数の歯と前記歯車部との噛合い位置を予め定められた適正噛合い位置に合わせるための位置合わせ部と、を備えていることを特徴とする収納装置である。
【0108】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の収納装置において、前記位置合わせ部は、前記歯車部に設けられ、前記ラック部および前記歯車部の前記一方が前記ユーザの操作に応じて、前記解除状態から前記噛合い状態に移行する場合において、前記第1収納部が前記露出位置にあるときに、前記ラック部を含むある部材と前記第1収納部との少なくとも一方に当接することにより、前記複数の歯と前記歯車部との噛合い位置を前記適正噛合い位置に合わせることを特徴とする収納装置である。
【0109】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載された収納装置において、前記位置合わせ部は、前記歯車部と前記複数の歯とが互いに噛合い状態にあり、かつ、前記第1収納部が前記露出位置よりも前記収納位置側にあるときに、前記第1収納部に当接しないことを特徴とする収納装置である。
【0110】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれかに記載された収納装置において、前記歯車部と前記複数の歯との前記噛合い状態を維持するように前記歯車部の回動量を規制し、前記ユーザの操作に応じて前記歯車部の回動量の規制を解除可能な規制機構を更に備え、前記歯車部は、前記ユーザの操作に応じて、前記規制機構による前記歯車部の回動量の規制が解除され、かつ、前記複数の歯との噛合いが外れるように回動させられることによって、前記解除状態に移行することを特徴とする収納装置である。
【0111】
請求項5に記載の発明は、請求項1~4のいずれかに記載の収納装置において、前記筐体には、前記筐体内に連通する開口が設けられ、前記筐体に対する回動運動により前記開口を開閉可能な開閉蓋をさらに備え、前記歯車部は、前記開閉蓋と連動可能であり、前記第1収納部は、前記筐体に対する前記開閉蓋の回動運動が前記歯車部および前記ラック部を介して伝達されることによって、前記収納位置と前記露出位置との間で移動することを特徴とする収納装置である。
【0112】
請求項6に記載の発明は、請求5に記載の収納装置において、前記第1収納部は、前記筐体内の上段に収納され、前記開閉蓋の開閉動作に連動して回動し、前記開閉蓋が閉じた状態のときに前記筐体内に収納され、前記開閉蓋が開いた状態のときに前記筐体の下部において外部に露出される第2収容部をさらに備えることを特徴とする収納装置である。
【0113】
請求項7に記載の発明は、請求項5または請求項6に記載の収納装置において、前記開閉蓋は、前記開口を閉鎖する閉鎖位置と、前記ラック部および前記歯車部の前記一方が前記噛合い状態にあり、かつ、前記開口を開放する開放位置と、前記ラック部および前記歯車部の前記一方が前記解除状態にあり、かつ、前記開口を開放する解除位置との間で回動可能であり、前記開閉蓋が前記解除位置にある状態で前記ユーザの操作に応じて前記ラック部および前記歯車部の前記一方が前記解除状態から前記噛合い状態に移行する場合において、前記複数の歯と前記歯車部との前記噛合い位置が前記位置合わせ部により前記適正噛合い位置に合わされ、かつ、前記ユーザの操作により前記第1収納部が前記露出位置に移動させられたときに、前記第1収納部の移動が前記ラック部及び前記歯車部を介して前記開閉蓋に伝達されることにより、前記開閉蓋が前記開放位置に位置するように回動する
ことを特徴とする収納装置である。
【0114】
請求項8に記載の発明は、請求項4~請求項7のいずれかに記載された収納装置において、前記筐体は、縦長の箱状に形成されており、前記開閉蓋は、前記筐体の前面において上下方向に回動して前記開口を開閉することを特徴とする収納装置である。
【0115】
請求項9に記載の発明は、請求項1~請求項8のいずれかに記載の収納装置において、前記ラック部と共に前記第1収納部に設けられた支持部材と、前記筐体内に設けられ、前記支持部材を前記第1収納部と共に、前記ある方向への移動をガイドするためのガイド部と、をさらに備えることを特徴とする収納装置である。
【0116】
請求項10に記載の発明は、請求項1~請求項9のいずれかに記載された収納装置を備え、前記収納装置は金銭を収納可能であることを特徴とする電子レジスタである。
【符号の説明】
【0117】
1 金銭収納装置
2 筐体
2a 傾斜部
2b 釦孔
2d 開口
3 キー入力部
4 主表示部
5 プリンタカバー
6 記録紙排出口
7 スライドスイッチ
8 開閉蓋
9 背面板
10 紙幣収納部
10a 紙幣押え
10b 側壁部
11 硬貨収納部
12 第1支持軸
13 第1回動体
13a カム溝
13b 歯車部
14 支持部材
14a ラック部
15 ガイド溝
16 転倒防止装置
17 倒れ防止部材
17a 足部
18 連動機構
19 第3支持軸
20 第2回動体
21 スライド体
22 第2支持軸
23 第1ピン
24 第2ピン
25 保持機構
26 保持解除部材
27 保持部
28 解除釦部
29 軸部
29a 軸受部
30 ばね部材
31 切欠き部
33 位置合わせ部
図1
図2
図3
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