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  • 特許-回転電機 図1
  • 特許-回転電機 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 21/14 20060101AFI20240611BHJP
   H02K 1/2706 20220101ALI20240611BHJP
【FI】
H02K21/14 M
H02K1/2706
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021157055
(22)【出願日】2021-09-27
(65)【公開番号】P2023047884
(43)【公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北山 武志
(72)【発明者】
【氏名】服部 宏之
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-136012(JP,A)
【文献】特開2019-146422(JP,A)
【文献】特開2002-136079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K1/17
1/27-1/2798
15/03
21/00-21/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向を中心に回転可能なシャフトと、
前記シャフトの周囲に配置され、ロータコア及び前記ロータコアに設けられた複数の磁石を有するロータと、
前記ロータの周囲に配置され、ステータコア及び前記ステータコアに設けられたステータコイルを有するステータと、
前記軸線方向において前記ロータコアに対向して配置され、前記軸線方向に移動可能な磁束短絡板と、
前記磁束短絡板を前記軸線方向で前記ロータコアから遠ざかる側へ付勢する付勢部材と、
前記付勢部材を保持する保持部材と、
前記保持部材を前記シャフトに固定する固定部材と、
を備えた回転電機であって、
前記固定部材の材質は、前記保持部材の材質よりも強度が高いことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記固定部材の材質は金属であり、
前記保持部材の材質は樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記付勢部材はコイルバネであり、
前記保持部材には、前記コイルバネの一部を格納するバネ穴が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の永久磁石が周方向に配設されたロータを回転可能に支持する回転軸の軸線方向の一方に移動したときに、前記永久磁石に当接して磁束を短絡させ、前記回転軸の軸線方向の他方に移動したときに、前記永久磁石から離反する磁束短絡板を備えた電動機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-267453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁束短絡板によって永久磁石から発生する磁束を短絡させない場合に、磁束短絡板を永久磁石から離反させるため、磁束短絡板を回転軸の軸線方向で永久磁石から離反する方向に付勢するバネなどの付勢部材を設けるとともに、この付勢部材を回転軸に固定されたハウジングで保持する構成が考えられる。しかしながら、前記ハウジングにおいて、バネを保持する保持部位と、回転軸に固定させる固定部位とを、回転軸の回転時には固定部位に強い負荷がかかることから強度の高い同じ材質で一体的に成形した場合には、機械加工などによる加工コストが高くなり、ひいては、回転電機の高コスト化を招いてしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、高コスト化を抑制することができる回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る回転電機は、軸線方向を中心に回転可能なシャフトと、前記シャフトの周囲に配置され、ロータコア及び前記ロータコアに設けられた複数の磁石を有するロータと、前記ロータの周囲に配置され、ステータコア及び前記ステータコアに設けられたステータコイルを有するステータと、前記軸線方向において前記ロータコアに対向して配置され、前記軸線方向に移動可能な磁束短絡板と、前記磁束短絡板を前記軸線方向で前記ロータコアから遠ざかる側へ付勢する付勢部材と、前記付勢部材を保持する保持部材と、前記保持部材を前記シャフトに固定する固定部材と、を備えた回転電機であって、前記固定部材の材質は、前記保持部材の材質よりも強度が高いことを特徴とするものである。
【0007】
これにより、本発明に係る回転電機においては、保持部材に固定部材の強度と同等以上の材質を用いた場合よりも、保持部材の加工が容易となり、加工コストが高くることを抑制し、ひいては、回転電機の高コスト化を抑制することができる。
【0008】
また、上記において、前記固定部材の材質は金属であり、前記保持部材の材質は樹脂であるようにしてもよい。
【0009】
これにより、固定部材の強度を金属によって担保したまま、保持部材が樹脂であるため保持部材の加工が容易となり加工コストを低減させることが可能となる。
【0010】
また、上記において、前記付勢部材はコイルバネであり、前記保持部材には、前記コイルバネの一部を格納するバネ穴が形成されているようにしてもよい。
【0011】
これにより、金型などで、バネ穴が形成された形状で保持部材を成形することが可能なため、後から機械加工によってバネ穴をあける場合よりも、低コスト化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る回転電機は、高コスト化を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係る回転電機の構成を示す図であって、磁束短絡板が第1の位置に位置している状態を示す側面図である。
図2図2は、実施形態に係る回転電機の構成を示す図であって、磁束短絡板が第2の位置に位置している状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る回転電機の実施形態について説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0015】
実施形態に係る回転電機1は、例えば永久磁石型のモータであり、図1に示すように、シャフト10と、ロータ20と、ステータ30と、磁束可変機構40とを備えている。なお、図1では、回転電機1を側面視したもののうち、シャフト10の軸線AXの上半分のみを図示している。
【0016】
シャフト10は、軸線方向を中心に回転可能な軸部材である。シャフト10は、長尺状に形成されている。なお、「軸線方向」とは、シャフト10の軸線AXに沿った方向のことを示している。
【0017】
ロータ20は、シャフト10の周囲(径方向外側)に配置されており、より具体的には、シャフト10に固設されている。このロータ20は、ロータコア21と、複数の磁石(永久磁石)22と、を備えている。
【0018】
ロータコア21は、複数の電磁鋼板が軸線方向に積層されて形成されており、全体として円筒状に形成されている。磁石22は、ロータコア21に埋設されており、ロータコア21の軸線方向にわたって延在している。また、磁石22の軸線方向における端面は、図1に示すように、ロータコア21の軸線方向における端面と面一になっている。
【0019】
ステータ30は、ロータ20の周囲(径方向外側)に隙間をあけて配置されている。また、ステータ30は、ステータコア31とステータコイル32とを備えている。ステータコア31は、複数の電磁鋼板が軸線方向に積層されて形成されており、全体として円筒状に形成されている。ステータコイル32は、例えば、ステータコア31の内周側に形成された複数のティースに巻き回されている。
【0020】
磁束可変機構40は、ロータ20の磁石22からステータ30に向かう磁束を変化させるための機構であり、磁束短絡板41とコイルバネ42とバネ格納部材43とシャフト締結部材44とを備えている。
【0021】
磁束短絡板41は、ロータ20の磁石22の磁束を短絡させるためのものである。磁束短絡板41は、磁性材料から構成されており、円板状に形成されている。また、磁束短絡板41は、図1に示すように、軸線方向においてロータコア21と対向して配置されている。磁束短絡板41は、径方向で内周側に設けられた円環部411と、径方向で外周側であって円環部411よりも軸線方向でロータコア21側に突出した突出部412とを有している。円環部411は、内周側にシャフト10が挿通される開口が形成されているとともに、軸線方向でロータコア21と対向する面に複数のコイルバネ42がそれぞれ接触する。突出部412は、軸線方向でロータコア21と対向する面が、ロータコア21に埋設された磁石22と対向する。
【0022】
コイルバネ42は、磁束短絡板41を軸線方向の外側へ付勢する付勢部材であり、磁束短絡板41の周方向に複数(例えば、18個)設けられている。なお、「磁束短絡板41を軸線方向の外側」とは、磁束短絡板41を軸線方向でロータコア21から遠ざかる側のことを示している。
【0023】
コイルバネ42を保持する保持部材であるバネ格納部材43は、例えば、立方体状や直方体状であって、磁束短絡板41の周方向でコイルバネ42と同じ数(例えば、18個)だけ複数設けられている。なお、バネ格納部材43の形状としては、立方体状や直方体状などに特に限定されるものではない。バネ格納部材43の軸線方向で磁束短絡板41と対向する面には、コイルバネ42の一部を格納するバネ穴431が形成されている。なお、バネ穴432の深さ方向は、シャフト10の軸線方向と同じである。コイルバネ42の軸線方向の一端は、磁束短絡板41における円環部411の軸線方向でバネ格納部材43と対向する面に接触している。また、コイルバネ42の軸線方向の他端は、バネ穴431の底面に接触している。なお、バネ格納部材43の外周面と、磁束短絡板41における突出部412の内周面とは径方向で対向しており、例えば、バネ格納部材43の外周面をガイド面として突出部412の内周面が摺動し、磁束短絡板41が軸線方向に移動することも可能である。また、バネ格納部材43の外周面に突出部412の内周面が接触することによって、磁束短絡板41の径方向の移動を規制することが可能である。
【0024】
バネ格納部材43をシャフト10に固定する固定部材であるシャフト締結部材44は、円環状であって、シャフト締結部材44の内周側がシャフト10に締結されて固定されている。シャフト締結部材44の外周側には、周方向に複数のバネ格納部材43が一体的に設けられている。これにより、バネ格納部材43は、シャフト締結部材44を介してシャフト10に固定される。
【0025】
図1に示した磁束短絡板41は、第1の位置に位置している。「第1の位置」とは、磁束短絡板41がコイルバネ42の付勢力によって軸線方向でロータコア21から最も遠ざかった位置である。また、図2に示した磁束短絡板41は、第2の位置に位置している。「第2の位置」とは、磁束短絡板41がコイルバネ42の付勢力に抗して軸線方向でロータコア21に最も近づいた位置である。実施形態に係る回転電機1においては、磁束短絡板41が軸線方向で第1の位置と第2の位置との間を移動することによって、ロータコア21に埋設された磁石22から発生した磁束の一部が、磁束短絡板41の突出部412に短絡する量(漏れ磁束の量)を変化させることが可能となっている。すなわち、実施形態に係る回転電機1では、磁束短絡板41が軸線方向で第1の位置から第2の位置に近づくほど、磁石22から発生した磁束の一部が、磁束短絡板41の突出部412に短絡する漏れ磁束の量を増加させることが可能である。このようにして、磁束可変機構40は、磁石22から磁束短絡板41の突出部412に短絡する漏れ磁束の量を変化させることによって、磁石22からステータ30に供給される磁束の量を変化させることが可能である。
【0026】
なお、磁束短絡板41を第1の位置から第2の位置に移動させる手段としては、例えば、ステータコイル32に流す電流の大きさを所定値よりも大きくすることによって、磁石22から第1の位置に位置する磁束短絡板41の突出部412に短絡する漏れ磁束の量を増加させることにより、磁束短絡板41を軸線方向でロータコア21に近づく側へ引き付けて第2の位置に移動させるような力を発生させることによって行う。
【0027】
また、実施形態に係る回転電機1においては、アクチュエータなどを有する作動機構によって、コイルバネ42の付勢力に抗して、第1の位置から第2の位置に磁束短絡板41を移動させるような力を磁束短絡板41に加えて、第1の位置から第2の位置に磁束短絡板41を移動させる構成を採用することも可能である。この場合には、第1の位置を、磁石22から磁束短絡板41の突出部412に漏れ磁束が短絡しない非短絡位置とし、第2の位置を、磁石22から磁束短絡板41の突出部412に漏れ磁束が短絡する短絡位置とすることも可能である。
【0028】
実施形態に係る回転電機1においては、例えば、高回転時に磁束短絡板41を第1の位置から第2の位置に移動させて、磁石22から磁束短絡板41の突出部412に短絡する漏れ磁束の量を増加させることにより、磁石22からステータ30に供給される磁束の量を減らすことによって、高回転時における逆起電圧を抑制する。
【0029】
ここで、実施形態に係る回転電機1においては、磁束可変機構40が備えるバネ格納部材43とシャフト締結部材44とが異なる材質からなり、シャフト締結部材44の材質は、バネ格納部材43の材質よりも強度が高い。具体的に、実施形態に係る回転電機1において、シャフト締結部材44は金属からなり、バネ格納部材43は樹脂からなる。シャフト締結部材44に用いられる金属としては、例えば、非磁性のステンレス鋼などが挙げられる。また、バネ格納部材43に用いられる樹脂としては、例えば、PPS(ポリフェニレンスルファイド)樹脂などが挙げられる。
【0030】
このように、実施形態に係る回転電機1では、シャフト10の回転時に高負荷がかかるシャフト締結部材44の強度を担保したまま、バネ格納部材43にシャフト締結部材44よりも強度の低い材質を用いる。これにより、実施形態に係る回転電機1においては、バネ格納部材43にシャフト締結部材44の強度と同等以上の材質を用いた場合よりも、バネ穴431を形成するなどのバネ格納部材43の加工が容易となり、加工コストが高くなることを抑制し、ひいては、回転電機の高コスト化を抑制することができる。
【0031】
また、実施形態に係る回転電機1では、シャフト締結部材44に金属を用いるのに対して、バネ格納部材43に樹脂を用いることによって、金型などで、バネ穴431が形成された形状でバネ格納部材43を成形することが可能なため、後から機械加工によってバネ穴431をあける場合よりも、低コスト化を図ることが可能となる。
【0032】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、以上のように表わしかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては、ロータ20の軸線方向で両側にそれぞれ磁束可変機構40を設けた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ロータ20の軸線方向で少なくとも一方側に磁束可変機構40を設ければよい。したがって、添付のクレームおよびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 回転電機
10 シャフト
20 ロータ
21 ロータコア
22 磁石
30 ステータ
31 ステータコア
32 ステータコイル
41 磁束短絡板
42 コイルバネ
43 バネ格納部材
44 シャフト締結部材
411 円環部
412 突出部
431 バネ穴
AX 軸線
図1
図2