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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】飛行制御装置及び飛行制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B64D 45/00 20060101AFI20240611BHJP
   B64C 27/24 20060101ALI20240611BHJP
   B64D 27/24 20240101ALI20240611BHJP
【FI】
B64D45/00 Z
B64C27/24
B64D27/24
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021181338
(22)【出願日】2021-11-05
(65)【公開番号】P2023069462
(43)【公開日】2023-05-18
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】竹村 優一
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-077754(JP,A)
【文献】国際公開第2019/181899(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/070464(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111880574(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0096270(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 45/00
B64C 27/24
B64D 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員室を有する電動航空機であり且つ飛行体である自機(10)に搭載され、前記自機を制御する飛行制御装置(40)であって、
前記自機に関する情報として自機情報を取得する自機取得部(S201,S203,S301,S303)と、
前記自機とは異なる前記飛行体である相手機に関する情報として相手機情報を取得する相手機取得部(S402,S501)と、
前記自機と前記相手機との衝突について、前記衝突を回避するための飛行である衝突回避飛行を前記自機及び前記相手機のいずれが優先して行うかを示す優先関係を、前記自機情報及び前記相手機情報に応じて設定する優先関係設定部(43,S403,S502)と、
前記自機について、前記衝突回避飛行をどの程度優先して行うかを示す回避優先度を前記自機情報に応じて設定する自機設定部(S202,S204,S302,S304)と、
前記相手機について、前記回避優先度を前記相手機情報に応じて設定する相手機設定部(S402、S501)と、
を備え
前記自機設定部は、前記自機に乗員がいる場合の前記自機の前記回避優先度を、前記自機に乗員がいない場合の前記自機の前記回避優先度よりも低めに設定し、
前記相手機設定部は、前記相手機が有人機である場合の前記相手機の前記回避優先度を、前記相手機が人が乗らない無人機である場合の前記相手機の前記回避優先度よりも低めに設定し、
前記優先関係設定部は、前記自機についての前記回避優先度と前記相手機についての前記回避優先度とに応じて前記優先関係を設定する、飛行制御装置。
【請求項2】
前記自機及び前記相手機を含む前記飛行体について、前記衝突回避飛行をどの程度優先して行うかを示す回避優先度を、前記自機情報及び前記相手機情報を含む飛行体情報に応じて設定する優先度設定部(S202,S204,S302,S304,S402,S501)、を備え、
前記優先関係設定部は、前記優先度設定部により設定された前記回避優先度に応じて前記優先関係を設定する、請求項1に記載の飛行制御装置。
【請求項3】
前記優先度設定部は、前記飛行体に乗員がいる場合の前記回避優先度を、前記飛行体に乗員がいない場合の前記回避優先度よりも低めに設定する、請求項2に記載の飛行制御装置。
【請求項4】
前記優先度設定部は、前記飛行体が重いほど前記回避優先度を低めに設定する、請求項2又は3に記載の飛行制御装置。
【請求項5】
前記優先度設定部は、前記飛行体が垂直離着陸可能な機体である場合の前記回避優先度を、前記飛行体が垂直離着陸できない機体である場合の前記回避優先度よりも高めに設定する、請求項2~4のいずれか1つに記載の飛行制御装置。
【請求項6】
前記優先度設定部は、前記飛行体の飛行速度が速いほど前記回避優先度を低めに設定する、請求項2~5のいずれか1つに記載の飛行制御装置。
【請求項7】
前記優先度設定部は、前記飛行体に異常が発生している場合の前記回避優先度を、前記飛行体に異常が発生していない場合の前記回避優先度に比べて低めに設定する、請求項2~6のいずれか1つに記載の飛行制御装置。
【請求項8】
前記自機情報には、前記自機にとって固有の固有情報と、前記自機において変動する変動情報とが含まれており、
前記自機設定部は、前記固有情報に応じて設定された固定優先度に対して前記変動情報を用いた補正を行うことで前記回避優先度を取得する、請求項1~7のいずれか1つに記載の飛行制御装置。
【請求項9】
前記固有情報には、前記自機の機体重量が含まれており、
前記固定優先度は、前記機体重量に応じて設定されている、請求項に記載の飛行制御装置。
【請求項10】
前記固有情報には、前記自機の推進機構を示す情報が含まれており、
前記固定優先度は、前記推進機構に応じて設定されている、請求項又はに記載の飛行制御装置。
【請求項11】
前記変動情報には、前記自機の機体重量に追加された追加重量を示す情報が含まれており、
前記自機設定部は、前記固定優先度に対して前記追加重量に応じた補正を行うことで前記回避優先度を取得する、請求項10のいずれか1つに記載の飛行制御装置。
【請求項12】
前記変動情報には、前記自機の飛行速度を示す情報が含まれており、
前記自機設定部は、前記固定優先度に対して前記飛行速度に応じた補正を行うことで前記回避優先度を取得する、請求項8~11のいずれか1つに記載の飛行制御装置。
【請求項13】
前記変動情報には、前記自機における異常の有無を示す情報が含まれており、
前記自機設定部は、前記固定優先度に対して前記異常の有無に応じた補正を行うことで前記回避優先度を取得する、請求項8~12のいずれか1つに記載の飛行制御装置。
【請求項14】
前記相手機設定部が前記相手機についての前記回避優先度を設定するための前記相手機情報を、前記自機に設けられた受信部(33)により受信する受信実行部(S107,S402,S501)、を備えている請求項1~13のいずれか1つに記載の飛行制御装置。
【請求項15】
前記自機設定部により設定された前記自機についての前記回避優先度を含む前記自機情報を、前記自機に設けられた発信部(34)により前記相手機に対して発信する発信実行部(S401)、を備えている請求項1~14のいずれか1つに記載の飛行制御装置。
【請求項16】
前記優先関係が前記自機が前記相手機よりも前記衝突回避飛行を優先して行うことを示す場合に、前記自機の飛行ルートを前記衝突回避飛行を行うための衝突回避ルートに変更し、前記優先関係が前記自機が前記相手機よりも前記衝突回避飛行を優先して行うことを示していない場合に、前記自機の飛行ルートを前記衝突回避ルートに変更しない、ルート変更部(S404,S503,S1402)、を備えている請求項1~15のいずれか1つに記載の飛行制御装置。
【請求項17】
前記自機設定部は、前記自機での乗員の人数が多いほど前記自機の前記回避優先度を低めに設定する、請求項1~16のいずれか1つに記載の飛行制御装置。
【請求項18】
前記自機は、垂直離着陸を行うために駆動回転するロータ(20)を少なくとも4つ有している垂直離着陸機である、請求項1~17のいずれか1つに記載の飛行制御装置。
【請求項19】
前記自機は、
前記自機を飛行させるために駆動回転するロータ(20)と、
モータを含み、前記モータの駆動により前記ロータを駆動回転させる駆動装置(50)と、
を有しており、前記駆動装置の駆動により飛行する前記電動航空機である、請求項1~18のいずれか1つに記載の飛行制御装置。
【請求項20】
乗員室を有する電動航空機であり且つ飛行体である自機(10)に搭載され、前記自機を制御する飛行制御プログラムであって、
少なくとも1つのプロセッサに、
前記自機に関する情報として自機情報を取得させ(S201,S203,S301,S303)、
前記自機とは異なる前記飛行体である相手機に関する情報として相手機情報を取得させ(S402,S501)、
前記自機と前記相手機との衝突について、前記衝突を回避するための飛行である衝突回避飛行を前記自機及び前記相手機のいずれが優先して行うかを示す優先関係を、前記自機情報及び前記相手機情報に応じて設定させ(43,S403,S502)、
前記自機について、前記衝突回避飛行をどの程度優先して行うかを示す回避優先度を前記自機情報に応じて設定させ(S202,S204,S302,S304)、
前記相手機について、前記回避優先度を前記相手機情報に応じて設定させ(S402、S501)、
前記自機に乗員がいる場合の前記自機の前記回避優先度を、前記自機に乗員がいない場合の前記自機の前記回避優先度よりも低めに設定させ、
前記相手機が有人機である場合の前記相手機の前記回避優先度を、前記相手機が人が乗らない無人機である場合の前記相手機の前記回避優先度よりも低めに設定させ、
前記自機についての前記回避優先度と前記相手機についての前記回避優先度とに応じて前記優先関係を設定させる、飛行制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、飛行制御装置及び飛行制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、無人航空機を制御する制御装置について記載されている。この制御装置では、無人航空機と他の航空機との衝突を回避できるように、無人航空機を飛行させるための飛行計画が修正される。飛行計画の修正は、無人航空機が最も安全なルートを飛行できるように行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2021-509096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、2つの飛行体のうち一方の飛行体だけが衝突回避のために一方的に飛行ルートを変更する場合、衝突回避を行う負担が一方の飛行体だけに偏ることになる。この場合、一方の飛行体だけが自身の安全性を低下させながら衝突回避を行う、という事態が発生することが懸念される。
【0005】
本開示の主な目的は、垂直離着陸機等の飛行体において異常が発生した場合の安全性を高めることができる飛行制御装置及び飛行制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲及びこの項に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
上記目的を達成するため、開示された第1態様は、
乗員室を有する電動航空機であり且つ飛行体である自機(10)に搭載され、自機を制御する飛行制御装置(40)であって、
自機に関する情報として自機情報を取得する自機取得部(S201,S203,S301,S303)と、
自機とは異なる飛行体である相手機に関する情報として相手機情報を取得する相手機取得部(S402,S501)と、
自機と相手機との衝突について、衝突を回避するための飛行である衝突回避飛行を自機及び相手機のいずれが優先して行うかを示す優先関係を、自機情報及び相手機情報に応じて設定する優先関係設定部(43,S403,S502)と、
自機について、衝突回避飛行をどの程度優先して行うかを示す回避優先度を自機情報に応じて設定する自機設定部(S202,S204,S302,S304)と、
相手機について、回避優先度を相手機情報に応じて設定する相手機設定部(S402、S501)と、
を備え
自機設定部は、自機に乗員がいる場合の自機の回避優先度を、自機に乗員がいない場合の自機の回避優先度よりも低めに設定し、
相手機設定部は、相手機が有人機である場合の相手機の回避優先度を、相手機が人が乗らない無人機である場合の相手機の回避優先度よりも低めに設定し、
優先関係設定部は、自機についての回避優先度と相手機についての回避優先度とに応じて優先関係を設定する、飛行制御装置である。
【0008】
第1態様によれば、自機と相手機との衝突が予測された場合に、衝突回避飛行を自機及び相手機のいずれが優先して行うかを示す優先関係が、自機情報及び相手機情報に応じて設定される。この構成では、自機及び相手機の少なくとも一方が優先関係に応じて衝突回避飛行を行うことにより、自機及び相手機のそれぞれの安全性が低下しないような態様で衝突を回避することができる。このため、自機及び相手機のうち一方だけが一方的に衝突回避飛行を行って、一方だけの安全性が低下する、ということを抑制できる。したがって、自機及び相手機という2つの飛行体の衝突を回避する場合に、2つの飛行体のそれぞれについて安全性を高めることができる。
【0009】
開示された第2態様は、
乗員室を有する電動航空機であり且つ飛行体である自機(10)に搭載され、自機を制御する飛行制御プログラムであって、
少なくとも1つのプロセッサに、
自機に関する情報として自機情報を取得させ(S201,S203,S301,S303)、
自機とは異なる飛行体である相手機に関する情報として相手機情報を取得させ(S402,S501)、
自機と相手機との衝突について、衝突を回避するための飛行である衝突回避飛行を自機及び相手機のいずれが優先して行うかを示す優先関係を、自機情報及び相手機情報に応じて設定させ(43,S403,S502)、
自機について、衝突回避飛行をどの程度優先して行うかを示す回避優先度を自機情報に応じて設定させ(S202,S204,S302,S304)、
相手機について、回避優先度を相手機情報に応じて設定させ(S402、S501)、
自機に乗員がいる場合の自機の回避優先度を、自機に乗員がいない場合の自機の回避優先度よりも低めに設定させ、
相手機が有人機である場合の相手機の回避優先度を、相手機が人が乗らない無人機である場合の相手機の回避優先度よりも低めに設定させ、
自機についての回避優先度と相手機についての回避優先度とに応じて優先関係を設定させる、飛行制御プログラムである。
【0010】
第2態様によれば、第1の態様と同様に、自機及び相手機という2つの飛行体の衝突を回避する場合に、2つの飛行体のそれぞれについて安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態における自機及び相手機の電気的な構成を示す図ロック図。
図2】飛行制御処理の手順を示すフローチャート。
図3】離陸前処理の手順を示すフローチャート。
図4】飛行中処理の手順を示すフローチャート。
図5】発見回避処理の手順を示すフローチャート。
図6】受信回避処理の手順を示すフローチャート。
図7】第2実施形態における発見回避処理の手順を示すフローチャート。
図8】回避確認処理の手順を示すフローチャート。
図9】第3実施形態における受信回避処理の手順を示すフローチャート。
図10】第4実施形態におけるeVTOLの構成を示す図。
図11】自機及び相手機の電気的な構成を示す図ロック図。
図12】衝突回避処理の手順を示すフローチャート。
図13】第5実施形態における自機及び相手機の電気的な構成を示す図ロック図。
図14】衝突回避処理の手順を示すフローチャート。
図15】第6実施形態における自機、相手機及び管理センタの電気的な構成を示す図ロック図。
図16】飛行制御処理の手順を示すフローチャート。
図17】離陸前処理の手順を示すフローチャート。
図18】飛行中処理の手順を示すフローチャート。
図19】受信回避処理の手順を示すフローチャート。
図20】管理処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0013】
<第1実施形態>
図1に示す飛行システム30は、自機10に搭載されている。自機10は、eVTOL等の飛行体である。eVTOLは、電動垂直離着陸機である。電動垂直離着陸機は、電動式の垂直離着陸機であり、垂直離着陸することが可能である。eVTOLは、electric Vertical Take-Off and Landing aircraftの略称である。自機10は、大気中を飛行する電動式の航空機であり、飛行体及び電動航空機に相当する。自機10は、乗員が乗る有人飛行体、又は乗員が乗らない無人飛行体である。自機10が有人飛行体である場合には、操縦者としてのパイロットが乗員に含まれる。飛行システム30は、自機10を飛行させるために駆動するシステムである。飛行システム30は、推進システムと称されることがある。有人飛行体及び無人飛行体は、有人機及び無人機と称されることがある。
【0014】
飛行システム30は、受信装置33、発信装置34、監視装置39、飛行制御装置40を有している。飛行制御装置40は、記憶装置35、リスク判定部41、ルート設定部42、優先関係設定部43を有している。図1では、自機10をFP、受信装置33をRD、発信装置34をTD、監視装置39をMD、飛行制御装置40をFCDと図示している。また、記憶装置35をFSD、リスク判定部41をCRJ、ルート設定部42をFRS、優先関係設定部43をCAPと図示している。
【0015】
飛行制御装置40は、例えばECUであり、自機10を飛行させるための飛行制御を行う。飛行制御装置40は、飛行システム30を制御する制御装置である。ECUは、Electronic Control Unitの略称である。飛行制御装置40は、例えばプロセッサ、メモリ、I/O、これらを接続するバスを備えるマイクロコンピュータを主体として構成されている。マイクロコンピュータはマイコンと称されることがある。メモリは、コンピュータによって読み取り可能なプログラム及びデータを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体である。また、非遷移的実体的記憶媒体は、non-transitory tangible storage mediumであり、半導体メモリ又は磁気ディスクなどによって実現される。
【0016】
飛行制御装置40は、メモリ及び記憶装置35の少なくとも一方に記憶された制御プログラムを実行することで、飛行制御に関する各種の処理を実行する。飛行制御装置40は、受信装置33及び監視装置39などから取得された情報に応じて飛行制御を行う。記憶装置35は、制御プログラムなど飛行制御に関する情報を記憶している。記憶装置35は、記憶媒体を含んで構成されている。なお、記憶装置35は、飛行制御装置40から独立して設けられていてもよい。この場合、記憶装置35と飛行制御装置40とが互いに通信可能であることが好ましい。
【0017】
飛行制御装置40は、受信装置33、発信装置34及び監視装置39に電気的に接続されている。受信装置33及び発信装置34は、自機10とは異なる通信対象との無線通信が可能である。受信装置33は、通信対象からの信号を受信可能である。発信装置34は、通信対象に対して信号を発信可能である。飛行制御装置40は、受信装置33を介して通信対象から情報を取得し、発信装置34を介して通信対象に対して情報を出力する。なお、受信装置33と発信装置34とは通信装置などとして一体的に設けられていてもよい。また、受信装置33が受信部に相当し、発信装置34が発信部に相当する。
【0018】
監視装置39は、自機10の周囲を監視する。監視装置39は、自機10の周囲について他の飛行体を監視する。自機10が飛行している場合、監視装置39は、自機10の周辺空域についての他の飛行体を監視する。監視装置39は、監視結果を示す情報を飛行制御装置40に対して出力する。監視結果には、周辺空域での他の飛行体に関する飛行体情報が含まれている。
【0019】
他の飛行体を相手機90と称すると、自機10と相手機90とが衝突することが懸念される。そこで、飛行制御装置40は、自機10と相手機90との衝突を回避するための衝突回避制御を行う。自機10と相手機90との衝突には、自機10と相手機90との接触が含まれる。
【0020】
自機10においては、自機10に関する情報である自機情報が記憶装置35に記憶されている。自機情報は、飛行制御装置40が飛行制御及び衝突回避制御を行うために必要な情報である。自機情報は飛行体情報に相当する。自機情報としては、識別情報、重量情報、乗員情報、異常情報、速度情報などがある。識別情報は、自機10を識別するための情報である。識別情報には、自機10の機体を識別するための機体識別情報、自機10の種類を示す情報などが含まれている。重量情報は、自機10の重量に関する情報である。重量情報には、自機10の機体重量に関する情報が含まれている。なお、識別情報には、機体の大きさ及び重量など機体に関する情報が直接的又は間接的に含まれていてもよい。
【0021】
乗員情報は、自機10の乗員に関する情報である。乗員情報には、自機10に乗員が乗っているか否かを示す情報が含まれている。すなわち、自機10が有人飛行体及び無人飛行体のいずれであるかを示す情報が、乗員情報に含まれている。自機10に乗員が乗っている場合、乗員の人数などが乗員情報に含まれていてもよい。異常情報は、自機10の異常に関する情報である。異常情報には、自機10に異常が発生しているか否かを示す情報が含まれている。すなわち、異常情報には、自機10における異常の有無を示す情報が含まれている。自機10に異常が発生している場合、異常の内容を示す情報が異常情報に含まれていてもよい。速度情報は、自機10の飛行速度に関する情報である。
【0022】
本実施形態では、相手機90として、相手機90とは異なる通信対象との無線通信が可能な飛行体を想定する。相手機90は、受信装置93及び発信装置94を有している。受信装置93は、通信対象からの信号を受信可能である。発信装置94は、通信対象に対して信号を発信可能である。自機10と相手機90とは、受信装置33,93及び発信装置34,94により情報の発信及び受信が可能である。図1においては、相手機90をFP、受信装置93をRD、発信装置94をTD、と図示している。
【0023】
自機10が通信可能な通信対象としては、相手機90の他に管理センタがある。管理センタは、自機10を管理することが可能な施設であり、例えば管制センタ155(図15参照)などである。管理センタにおいては、自機10を管理可能な管理システムが構築されている。管理システムは、管理装置及び記憶装置を有している。管理装置は、管理システムを制御する制御装置である。記憶装置は、自機10を管理するために必要な情報を記憶可能である。なお、記憶装置は管理装置に含まれていてもよい。
【0024】
自機10と相手機90とが通信可能な場合、飛行制御装置40は、相手機90に関する情報である相手機情報を相手機90から取得する。相手機情報は、自機情報と同様に、飛行制御装置40が衝突回避制御を行うために必要な情報である。相手機情報は飛行体情報に相当する。相手機情報としては、識別情報、優先度情報、飛行ルート情報、位置情報などがある。識別情報は、相手機90を識別するための情報である。識別情報には、相手機90の機体を識別するための機体識別情報、相手機90の種類を示す情報が含まれている。識別情報には、機体の大きさ及び重量など相手機90の機体に関する情報が直接的又は間接的に含まれていてもよい。
【0025】
優先度情報は、相手機90の回避優先度に関する情報である。回避優先度は、自機10と相手機90との衝突を回避する衝突回避を相手機90がどの程度優先して行うかを示す度合いである。優先度情報においては、例えば相手機90の回避優先度が高いほど、自機10と相手機90との衝突回避を相手機90が優先して行う可能性が高いことを示す。飛行ルート情報は、相手機90の飛行ルートに関する情報である。飛行ルート情報には、相手機90が飛行する飛行ルートを示す情報が含まれている。飛行ルートには、相手機90にとっての進路及び経路の少なくとも一方が含まれている。飛行ルートは、飛行経路と称されることがある。位置情報は、相手機90の位置に関する情報である。位置情報には、相手機90の現在位置を示す情報、及び相手機90の現在の高度を示す情報などが含まれている。
【0026】
飛行制御装置40が行う衝突回避制御に用いられる自機情報には、識別情報等に加えて、優先度情報、飛行ルート情報、位置情報などが含まれている。飛行ルート情報は、自機10の飛行ルートに関する情報である。飛行ルート情報には、自機10が飛行する飛行ルートを示す情報が含まれている。飛行ルートには、自機10にとっての進路及び経路の少なくとも一方が含まれている。位置情報は、自機10の位置に関する情報である。位置情報には、自機10の現在位置を示す情報、及び自機10の現在の高度を示す情報などが含まれている。
【0027】
優先度情報は、自機10の回避優先度に関する情報である。回避優先度は、自機10と相手機90との衝突回避を自機10がどの程度優先して行うかを示す度合いである。優先度情報においては、例えば自機10の回避優先度が高いほど、自機10と相手機90との衝突回避を自機10が優先して行う可能性が高いことを示す。
【0028】
自機情報には、固定情報と変動情報とが含まれている。固定情報は、自機10について固有の不変的な情報であり、変動しにくい情報である。固定情報としては、例えば自機10の機体重量などがある。固定情報は固有情報に相当する。変動情報は、自機10について変動する情報である。変動情報としては、例えば自機10への追加重量を示す情報、自機10の速度情報などがある。自機10への追加重量としては、自機10に乗る乗員の人数、及び自機10に積載される積載物の総重量などがある。積載物としては貨物などがある。
【0029】
回避優先度は、指標として自機情報に応じて設定される。回避優先度は、自機10の固定情報及び変動情報の両方に応じて設定される。回避優先度としては、固定情報に応じて設定された固定優先度がある。回避優先度は、固定優先度が変動情報に応じて補正されることで算出される。固定優先度は、自機10について初期設定された回避優先度である。
【0030】
固定優先度は、例えば自機10の機体重量、自機10が無人機であるか否か、自機10が垂直離着陸可能であるか否か、自機10の推進機構などに応じて設定される。例えば、自機10の機体重量が軽いほど衝突回避しやすいとして、固定優先度が高めに設定される。自機10が無人飛行体である場合、自機10が有人飛行体である場合に比べて衝突回避しやすいとして、固定優先度が高めに設定される。自機10が垂直離着陸可能である場合、自機10が垂直離着陸可能ではない場合に比べて衝突回避しやすいとして、固定優先度が高めに設定される。
【0031】
固定優先度については、機体重量の影響が他の固定情報に比べて大きくなるように設定されてもよい。自機10等の飛行体として、重さが数十kg~数百tまで想定される場合に、機体重量が数百tなどtオーダの飛行体は、機体重量が数十kgなどkgオーダの飛行体に比べて、進路変更による衝突回避を行うことが非常に困難であると考えられる。このため、他の飛行体とは重量のオーダが異なるほどに機体重量が極端に大きい又は小さい飛行体については、他の固定情報による固定優先度の増減が影響しないほどに、機体重量の影響が大きくなるように固定優先度が設定されることが好ましい。
【0032】
自機10においては、自機10を推進させるための推進機構が、垂直離着陸可能であるか否かによって異なる。例えば、自機10が垂直離着陸機である場合、自機10には垂直離着陸を可能にする推進機構が搭載されている。自機10が垂直離着陸機でない場合、自機10には垂直離着陸を行うことができない推進機構が搭載されている。また、垂直離着陸機の種類によっても推進機構が異なる。例えば、自機10がチルトロータ機である場合、垂直離着陸を行うためのリフト用ロータと、クルーズするためのクルーズ用ロータとが、1つのロータで兼用される。一方、自機10がチルトロータ機でない場合、リフト用ロータとクルーズ用ロータとが兼用されない。この場合、自機10には、リフト用ロータとクルーズ用ロータとがそれぞれ個別に搭載されている。このように、垂直離着陸機であっても、チルトロータ機であるか否かによって推進機構が異なる。
【0033】
例えば、自機10が上昇及び下降しやすい推進機構を備えた機体である場合、自機10が上昇及び下降しにくい推進機構を備えた機体である場合に比べて、衝突回避しやすいとして、固定優先度が高めに設定される。また、自機10において、1つのロータがリフト用ロータとクルーズ用ロータとを兼用する機体である場合、リフト用ロータとクルーズ用ロータとを個別に有する機体である場合に比べて、衝突回避までに要する時間が長いとして、固定優先度が低めに設定される。
【0034】
記憶装置35には、固定情報の少なくとも一部が記憶されている。例えば、固定情報のうち、自機10の機体重量を示す情報は記憶装置35に記憶されている。また、固定優先度を示す情報は、固定情報として記憶装置35に記憶されている。なお、固定情報の少なくとも一部は、管理センタの記憶装置に記憶されていてもよい。
【0035】
飛行制御装置40は、自機情報及び相手機情報を用いて衝突回避制御を行う。飛行制御装置40は、衝突回避制御を行うための機能ブロックとして、リスク判定部41、ルート設定部42、優先関係設定部43を有している。機能ブロックは、少なくとも1つのIC等によりハードウェア的に構成されていてもよく、プロセッサによるソフトウェアの実行とハードウェアとの組み合わせにより実行されていてもよい。
【0036】
リスク判定部41は、自機10と相手機90との衝突リスクについて判定する。衝突リスクは、例えば自機10と相手機90とが衝突する可能性である。例えばリスク判定部41は、自機10と相手機90との衝突リスクがあるか否かを判定する。すなわち、リスク判定部41は、自機10に対する衝突リスクのある相手機90が存在するか否かを判定する。リスク判定部41は、例えば自機10の進路と相手機90の進路とが所定のタイミングで接近、交差又は一致する場合に、衝突リスクがあると判断する。
【0037】
ルート設定部42は、自機10が飛行する飛行ルートを設定する。ルート設定部42は、飛行ルートを再設定することが可能である。例えば、自機10と相手機90との衝突リスクが生じていない場合、ルート設定部42は、自機10を目的地に到達させるための飛行ルートを設定する。そして、自機10と相手機90との衝突リスクが生じ、且つ自機10が衝突を回避する必要がある場合、ルート設定部42は、自機10と相手機90との衝突を回避できるように飛行ルートを再設定する。この場合、ルート設定部42は、飛行ルートを変更することになる。
【0038】
優先関係設定部43は、自機10と相手機90との衝突を回避するための優先関係を算出する。優先関係は、自機10及び相手機90のいずれが衝突回避を優先して行うかを示す情報である。優先関係は、例えば自機10と相手機90とに対して設定される優先順位である。優先関係においては、自機10及び相手機90のうち、衝突回避についての優先順位が高い方が、自機10と相手機90との衝突を優先して回避することを示す。衝突を回避する方法としては、例えば自機10及び相手機90のうち優先順位が高い方だけが飛行ルートを変更する方法がある。
【0039】
飛行制御装置40は、自機10を飛行させるための飛行制御処理を行う。飛行制御処理について、図2図6のフローチャートを参照しつつ説明する。飛行制御装置40は、飛行制御処理を所定の制御周期で繰り返し実行する。飛行制御装置40は、飛行制御処理において各ステップの処理を実行する機能を有している。
【0040】
飛行制御装置40は、図2に示すステップS101において、自機10が離陸前であるか否かを判定する。自機10が離陸前である場合、飛行制御装置40は、自機10が飛行していないとして、ステップS102に進む。飛行制御装置40は、ステップS102において離陸前処理を行う。離陸前処理は、自機10の離陸前において、固定優先度に対して変動情報に応じた補正を行うことで回避優先度を取得するという処理である。この処理は、回避優先度を変動情報により補正して更新するという処理でもある。なお、飛行制御装置40は、離陸前処理において、自機10の固定情報に応じて固定優先度を算出してもよい。離陸前処理については、図3に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
【0041】
飛行制御装置40は、離陸前処理のステップS201において、自機10の重量情報を取得する。この重量情報には、積載物の重量に関する情報が変動情報として含まれている。飛行制御装置40におけるステップS201の処理を実行する機能が自機取得部に相当する。
【0042】
飛行制御装置40は、ステップS202において、自機10の重量情報に応じて回避優先度を補正して更新する。すなわち、自機10の重量情報を用いて固定優先度に対する補正を行う。飛行制御装置40は、例えば積載物の総重量に応じて固定優先度を補正し、その補正結果を回避優先度として取得する。飛行制御装置40は、例えば積載物の総重量が重いほど衝突回避しにくいとして、回避優先度が低くなるように補正する。飛行制御装置40におけるステップS202の処理を実行する機能が優先度設定部及び自機設定部に相当する。
【0043】
飛行制御装置40は、ステップS203において、自機10の乗員情報を取得する。この乗員情報には、自機10に乗る乗員の人数に関する情報が変動情報として含まれている。飛行制御装置40におけるステップS203の処理を実行する機能が自機取得部に相当する。
【0044】
飛行制御装置40は、ステップS204において、自機10の乗員情報を用いて回避優先度を補正して更新する。すなわち、自機10の乗員情報を用いて固定優先度に対する補正を行う。飛行制御装置40は、ステップS202にて補正済みの回避優先度を、例えば乗員の人数に応じて更に補正し、その補正結果を回避優先度として取得する。飛行制御装置40は、例えば乗員の人数が多いほど衝突回避しにくいとして、回避優先度が低くなるように補正する。乗員の人数は、乗員の総重量を示す情報である。このため、回避優先度は、乗員の総重量により補正されることになる。飛行制御装置40におけるステップS204の処理を実行する機能が優先度設定部及び自機設定部に相当する。
【0045】
飛行制御装置40は、ステップS205において、ステップS204にて補正済みの回避優先度を記憶装置35に記憶する。
【0046】
図2に戻り、ステップS101について自機10が離陸前でない場合、自機10が飛行中であるとして、飛行制御装置40は、ステップS103に進む。飛行制御装置40は、ステップS103において飛行中処理を行う。飛行中処理は、自機10の飛行中において、固定優先度に対して変動情報に応じた補正を行うことで回避優先度を取得するという処理である。この処理は、回避優先度を変動情報により補正して更新するという処理でもある。飛行中処理については、図4に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
【0047】
飛行制御装置40は、飛行中処理のステップS301において、自機10の速度情報を取得する。この速度情報には、自機10の現在の飛行速度を示す情報が変動情報として含まれている。飛行制御装置40におけるステップS301の処理を実行する機能が自機取得部に相当する。
【0048】
飛行制御装置40は、ステップS302において、自機10の速度情報を用いて回避優先度を補正して更新する。すなわち、自機10の速度情報を用いて固定優先度に対する補正を行う。飛行制御装置40は、記憶装置35から回避優先度に関する情報を読み込み、この回避優先度を自機10の飛行速度に応じて補正し、この補正結果を回避優先度として取得する。飛行制御装置40は、例えば自機10の飛行速度が速いほど衝突回避しにくいとして、回避優先度が低くなるように補正する。飛行制御装置40におけるステップS302の処理を実行する機能が優先度設定部及び自機設定部に相当する。
【0049】
飛行制御装置40は、ステップS303において、自機10の異常情報を取得する。この異常情報には、自機10での異常の有無及び異常の内容などを示す情報が変動情報として含まれている。飛行制御装置40におけるステップS303の処理を実行する機能が自機取得部に相当する。
【0050】
飛行制御装置40は、ステップS304において、自機10の異常情報を用いて回避優先度を補正して更新する。すなわち、自機10の異常情報を用いて固定優先度に対する補正を行う。飛行制御装置40は、ステップS302にて補正済みの回避優先度を、異常の有無及び異常の内容に応じて更に補正し、その補正結果を回避優先度として取得する。飛行制御装置40は、自機10にて異常が発生している場合に衝突回避しにくいとして、回避優先度が低くなるように補正する。飛行制御装置40におけるステップS304の処理を実行する機能が優先度設定部及び自機設定部に相当する。
【0051】
飛行制御装置40は、ステップS305において、ステップS304にて補正済みの回避優先度を記憶装置35に記憶する。
【0052】
図2に戻り、飛行制御装置40は、ステップS103の後、ステップS104に進み、衝突予測を行う。飛行制御装置40は、自機10と相手機90とが衝突することを予測する。例えば、飛行制御装置40は、自機10の進路と相手機90の進路とが所定のタイミングで接近、交差又は一致する可能性を予測する。この可能性が高いと予測された場合に、自機10と相手機90とが衝突する可能性が高いと予測される。飛行制御装置40におけるステップS104の処理を実行する機能が衝突予測部に相当する。
【0053】
飛行制御装置40は、ステップS105において、衝突リスクを発見したか否かを判定する。すなわち、飛行制御装置40は、衝突リスクのある相手機90を発見したか否かを判定する。飛行制御装置40は、自機10と相手機90とが衝突する衝突可能性が所定の基準よりも高いか否かを判定する。飛行制御装置40は、衝突可能性が所定の基準よりも高い場合に、衝突リスクを発見したとして、ステップS106に進む。衝突リスクを発見することは、衝突リスクのある飛行体を発見したことでもある。ステップS105の処理を実行する機能がリスク判定部41に相当する。
【0054】
飛行制御装置40は、ステップS106において発見回避処理を行う。発見回避処理は、自機10が飛行制御装置40により衝突リスクを発見した場合に、その衝突リスクを回避するための処理である。衝突リスクを回避することは、自機10と相手機90とが衝突することを回避することである。発見回避処理については、図5に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
【0055】
飛行制御装置40は、発見回避処理のステップS401において、自機情報を発信する。飛行制御装置40は、相手機90に対して発信装置34から自機情報を発信する。この自機情報には、例えば自機10の回避優先度に関する優先度情報が含まれている。なお、飛行制御装置40は、自機情報を管理センタに対して発信してもよい。また、飛行制御装置40は、自機10の周囲に相手機90以外の飛行体が存在する場合、その飛行体に対して自機情報を発信してもよい。飛行制御装置40におけるステップS401の処理を実行する機能が発信実行部に相当する。
【0056】
飛行制御装置40は、ステップS402において、相手機情報を受信したか否かを判定する。相手機情報には、例えば相手機90の回避優先度に関する優先度情報が含まれている。飛行制御装置40は、例えば自機情報を発信してからの経過時間を計測し、この経過時間が所定の判定時間に達するまでの間に、相手機90から相手機情報を受信したか否かを判定する。経過時間が判定時間に達するまでに相手機90から相手機情報を受信した場合、飛行制御装置40は、ステップS403に進む。経過時間が判定時間に達するまでに相手機90から相手機情報を受信しなかった場合、飛行制御装置40は、相手機情報を受信することができなかったと判断する。飛行制御装置40におけるステップS402の処理を実行する機能が優先度設定部及び受信実行部に相当する。
【0057】
回避優先度を示す情報が相手機情報に含まれている場合、飛行制御装置40は、その回避優先度を示す情報を取得することで、相手機90の回避優先度を設定することになる。また、回避優先度を示す情報が相手機情報に含まれていない場合、飛行制御装置40は、相手機90についての回避優先度を相手機情報に応じて設定する。飛行制御装置40は、自機10の回避優先度を自機情報に応じて設定するのと同様に、相手機90の回避優先度を相手機情報に応じて設定する。例えば飛行制御装置40は、相手機90の固定情報に応じて固定優先度を回避優先度として算出する。そして、飛行制御装置40は、自機10についてのステップS102,S103と同様に、相手機90について変動情報に応じて回避優先度を補正して更新する。
【0058】
ステップS402において相手機情報を受信することができなかった場合、飛行制御装置40は、相手機情報を受信することができなかったという情報を相手機情報として取得することになる。この場合、飛行制御装置40は、相手機情報を受信することができなかったという相手機情報に応じて、相手機90について回避優先度を設定する。なお、飛行制御装置40は、相手機90の現在の飛行速度等を相手機情報として取得し、現在の飛行速度等に応じて回避優先度を設定してもよい。飛行制御装置40におけるステップS402の処理を実行する機能が相手機取得部及び相手機設定部に相当する。
【0059】
飛行制御装置40は、ステップS403において、自機10と相手機90との優先関係を自機情報及び相手機情報に応じて設定する。飛行制御装置40におけるステップS403の処理を実行する機能が優先関係設定部に相当する。飛行制御装置40は、自機10と相手機90との優先関係において、衝突回避についての優先順位が自機10及び相手機90のいずれが高いかを判定する。例えば飛行制御装置40は、衝突回避について相手機90の優先順位が自機10の優先順位よりも高いか否かを判定する。飛行制御装置40は、相手機90の回避優先度が自機10の回避優先度よりも高い場合に、衝突回避について相手機90の優先順位が自機10の優先順位よりも高いと判断する。
【0060】
相手機90が自機10よりも優先順位が高い場合、飛行制御装置40は、そのまま発見回避処理を終了し、飛行制御処理も終了する。この場合、自機10と相手機90との衝突を回避するための衝突回避飛行を相手機90が行うことになる。一方で、自機10は、衝突回避飛行を行わずに、現状の飛行ルートを変更せずにそのまま飛行を継続する。衝突回避飛行は、衝突回避行動と称されることもある。なお、相手機90が自機10よりも優先順位が高い場合、飛行制御装置40は、自機10が衝突回避飛行を行わないことを示す情報を相手機90に対して発信してもよい。
【0061】
衝突回避について相手機90の優先順位が自機10の優先順位よりも高くない場合、飛行制御装置40は、ステップS404に進む。飛行制御装置40は、ステップS404において、自機10の飛行ルートを変更する。飛行制御装置40は、相手機情報に含まれる飛行ルート情報等を用いて相手機90の飛行ルートを取得する。そして、飛行制御装置40は、自機10と相手機90との衝突リスクが解消されるように、相手機90の飛行ルートに応じて自機10の飛行ルートを変更する。飛行ルートは、衝突回避飛行を行うための衝突回避ルートに変更される。衝突回避ルートは、相手機90との衝突リスクが解消された飛行ルートである。そして、飛行制御装置40は、衝突回避ルートで自機10を飛行させるための衝突回避制御を行う。飛行制御装置40におけるステップS404の処理を実行する機能がルート設定部42に相当する。
【0062】
飛行制御装置40は、ステップS405において、相手機90に対して変更情報を発信する。変更情報は、自機10の飛行ルートを変更したことを示す情報である。変更情報には、自機10の衝突回避ルートを示す情報が含まれている。
【0063】
ステップS402について、相手機90から相手機情報を受信することができなかった場合、飛行制御装置40は、ステップS406に進む。飛行制御装置40は、ステップS406において通報処理を行う。飛行制御装置40は、通報処理において、相手機90の存在を知らせるための通報情報を管理センタに対して発信する。通報情報には、相手機90から何の反応もないことを示す情報、相手機90が不審機であることを示す情報などが含まれている。なお、飛行制御装置40は、自機10の周囲に相手機90以外の飛行体が存在する場合、その飛行体に対して通報情報を発信してもよい。
【0064】
飛行制御装置40は、ステップS407において、自機10の飛行ルートを変更する。飛行制御装置40は、監視装置39の監視結果等を用いて相手機90の飛行状態を取得し、この飛行状態に応じて相手機90の飛行ルートを推定ルートとして算出する。そして、飛行制御装置40は、自機10と相手機90との衝突リスクが解消されるように、相手機90の推定ルートに応じて自機10の飛行ルートを変更する。飛行ルートは、相手機90との衝突を回避するための警戒ルートに変更される。相手機情報を取得できないことに起因して相手機90の飛行ルートが不明であるため、警戒ルートは、相手機90を警戒して大きく回避した飛行ルートになっている。例えば警戒ルートは、ステップS404にて設定された衝突回避ルートに比べて、相手機90との離間距離が大きく設定されている。警戒ルートは、衝突回避ルートの一種である。そして、飛行制御装置40は、警戒ルートで自機10を飛行させるための衝突回避制御を行う。飛行制御装置40におけるステップS407の処理を実行する機能がルート設定部42に相当する。
【0065】
図2に戻り、ステップS105について衝突リスクを発見していない場合、飛行制御装置40は、ステップS107に進む。飛行制御装置40は、ステップS107において衝突リスクを示す情報を受信したか否かを判定する。自機10と相手機90との衝突リスクを相手機90が発見し、衝突リスクを発見したことが相手機90から自機10に対して発信された場合、自機10は衝突リスクを示す情報を受信することになる。飛行制御装置40におけるステップS107の処理を実行する機能が受信実行部に相当する。衝突リスクを示す情報を受信しなかった場合、飛行制御装置40は、そのまま飛行制御処理を終了する。
【0066】
衝突リスクを示す情報を受信した場合、飛行制御装置40は、ステップS108に進み、受信回避処理を行う。受信回避処理は、相手機90により衝突リスクが発見された場合に、その衝突リスクを回避するための処理である。受信回避処理については、図6に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
【0067】
飛行制御装置40は、受信回避処理のステップS501において、相手機情報を受信したか否かを判定する。例えば、衝突リスクを示す情報に相手機情報が含まれている場合、衝突リスクを示す情報を受信したことで相手機情報を受信したことになる。相手機情報には、例えば相手機90の優先度情報が含まれている。飛行制御装置40におけるステップS501の処理を実行する機能が優先度設定部及び受信実行部に相当する。
【0068】
相手機情報を受信した場合、飛行制御装置40は、ステップS502に進む。飛行制御装置40は、回避優先度を示す情報が相手機情報に含まれている場合及び含まれていない場合のいずれについても、ステップS402と同様に、相手機90についての回避優先度を設定することになる。
【0069】
ステップS501において相手機情報を受信することができなかった場合、飛行制御装置40は、相手機情報を受信することができなかったという情報を相手機情報として取得することになる。この場合、飛行制御装置40は、ステップS402と同様に、相手機情報を受信することができなかったという相手機情報に応じて、相手機90について回避優先度を設定する。飛行制御装置40におけるステップS501の処理を実行する機能が相手機取得部及に相手機設定部に相当する。
【0070】
飛行制御装置40は、ステップS502において、ステップS403と同様に、自機10と相手機90との優先関係を自機情報及び相手機情報に応じて算出する。これもステップS403と同様に、飛行制御装置40は、衝突回避について相手機90の優先順位が自機10の優先順位よりも高いか否かを判定する。飛行制御装置40におけるステップS403の処理を実行する機能が優先関係設定部に相当する。相手機90が自機10よりも優先順位が高い場合、飛行制御装置40は、ステップS106の発見回避処理と同様に、そのまま発見回避処理を終了し、飛行制御処理も終了する。
【0071】
衝突回避について相手機90の優先順位が自機10の優先順位よりも高くない場合、飛行制御装置40は、ステップS503に進む。飛行制御装置40は、ステップS503において、ステップS404と同様に、自機10の飛行ルートを変更し、衝突回避制御を行う。飛行制御装置40におけるステップS503の処理を実行する機能がルート設定部42に相当する。飛行制御装置40は、ステップS504において、ステップS405と同様に、相手機90に対して変更情報を発信する。
【0072】
ステップS501について、相手機90から相手機情報を受信することができなかった場合、飛行制御装置40は、ステップS505に進む。飛行制御装置40は、ステップS505において、ステップS406と同様に、通報処理を行う。飛行制御装置40は、ステップS506において、ステップS407と同様に、自機10の飛行ルートを変更する。ステップS407と同様に、飛行制御装置40におけるステップS506の処理を実行する機能がルート設定部42に相当する。
【0073】
次に、衝突回避の優先順位について、安全性の観点でまとめて説明する。自機10及び相手機90という2機の衝突回避について、有人機の急な進路変更は遠心力及び加速度などの急な変化によって乗員にケガや不快感などのリスクが生じやすい。そこで、無人機が優先的に進路変更されることで、乗員の安全性についてリスクを低減できる。また、機体に貨物が積載物として積載されている場合、急な進路変更は貨物が破損するなどのリスクが生じやすい。そこで、自機10及び相手機90のうち貨物を搭載していない方の機体が優先的に進路変更されることで、貨物の破損が生じにくく安全である。さらに、何かしらの異常が生じている機体の場合、適切な進路変更ができない可能性がある。そこで、正常な機体が優先的に進路変更されることで、より確実に衝突を回避できて安全である。
【0074】
衝突回避の優先順位について、飛行性の観点でまとめて説明する。飛行性の観点としては、進路変更についての容易さ及び効率性などがある。自機10及び相手機90という2機の衝突回避について、重たい機体は進路変更に大きなエネルギを要する。そこで、軽い機体が優先的に進路変更されることで、進路変更に要するエネルギが小さくなりやすく、効率的である。また、高速で飛行している機体は進路変更に大きなエネルギを要するだけでなく、進路変更が変更された際に遠心力などの影響が大きくなりやすい。例えば、機体の進路が曲線上を飛行するような進路である場合に、その曲線の曲がりがきつくなるように進路変更された場合、遠心力が大きくなりやすい。そこで、低速で飛行している機体が優先的に進路変更されることで、進路変更を容易かつ安全に行うことができる。さらに、垂直離着陸ができない機体は、垂直離着陸できる機体に比べて進路変更の調整代が小さくなりやすい。そこで、垂直離着陸できる機体が優先的に進路変更されることで、進路変更を容易に行うことができる。
【0075】
衝突回避の優先順位については、安全性の観点が飛行性の観点よりも重要とされることが好ましい。そこで、自機10及び相手機90に対して優先順位が設定される場合は、安全性の観点を満たす情報について、回避優先度を設定するための重み付けを重くする方法がある。安全性の観点を満たす情報としては、上述したように乗員情報、重量情報及び異常情報などがある。また、各種情報についての回避優先度を個別に算出し、重要度の高い情報から順番に回避優先度を比較しながら総合的な回避優先度を設定する、という方法がある。重要度は、安全性の観点を満たす観点での重要度である。
【0076】
ここまで説明した本実施形態によれば、自機10と相手機90との衝突について、衝突回避飛行を自機10及び相手機90のいずれが優先して行うかを示す優先関係が、自機情報及び相手機情報に応じて設定される。この構成では、自機10及び相手機90のうち一方が優先関係に応じて衝突回避飛行を行うことにより、自機10及び相手機90のそれぞれの安全性が低下しないような態様で衝突を回避できる。このため、自機10及び相手機90のうち一方だけが一方的に衝突回避飛行を行い、一方だけの安全性が低下する、ということを抑制できる。すなわち、このように、自機10と相手機90とが協力して衝突回避することが可能になる。したがって、自機10及び相手機90という2つの飛行体の衝突を回避する場合に、2つの飛行体のそれぞれについて安全性を高めることができる。
【0077】
本実施形態によれば、自機10及び相手機90という飛行体について、衝突を回避するための飛行ルートの変更をどの程度優先して行うかを示す回避優先度が、自機情報及び相手機情報という飛行体情報に応じて設定される。この構成では、飛行体に対してあらかじめ回避優先度を設定することが可能であるため、衝突回避飛行を行わせる飛行体を容易に決めることができる。このため、衝突回避についての飛行制御装置40の処理負担を低減すること、及び衝突回避ルートを算出するまでの所要時間を短縮すること、などを実現できる。
【0078】
本実施形態によれば、飛行体に乗員がいる場合の回避優先度が、飛行体に乗員がいない場合の回避優先度よりも低めに設定される。この構成では、乗員がいる飛行体に衝突回避飛行を行わせる可能性を極力低減できる。このため、衝突回避に伴って乗員の安全性が低下するということが生じにくくなっている。例えば、乗員としての人間が搭乗している飛行体は、衝突回避のために急な軌道変更を行うと、搭乗者等の乗員に負担が大きく、乗員にとっての不快感及びケガなどにつながるリスクが生じやすい。そこで、本実施形態では、人間が搭乗していない飛行体の回避優先度を高めに設定することで、人間が搭乗している飛行体に回避動作を行わせるという事態を極力抑制できる。
【0079】
飛行体が軌道変更等の進路変更を行うために要する時間及びエネルギなどは、飛行体が重いほど大きくなりやすいと考えられる。これに対して、本実施形態によれば、飛行体が重いほど回避優先度が低めに設定される。この構成では、重い飛行体が衝突回避飛行を行う可能性が低減される。このため、重い飛行体が衝突回避飛行を行うことで所要時間及び消費エネルギなどが増大する、ということを抑制できる。したがって、飛行体が行う衝突回避飛行の効率化を図ることができる。
【0080】
本実施形態によれば、固定優先度は、自機10の機体重量に応じて設定されている。この構成では、固定優先度に自機10の機体重量が反映されているため、固定優先度の設定精度を高めることができる。また、飛行制御装置40が回避優先度を補正する際に自機10の重量情報をその都度用いるという必要がないため、回避優先度を取得する際の処理負担を低減できる。
【0081】
本実施形態によれば、飛行制御装置40は、固定優先度に対して自機10の追加重量に応じた補正を行うことで回避優先度を取得する。この構成では、回避優先度に自機10の追加重量が反映されているため、回避優先度の設定精度を高めることができる。
【0082】
本実施形態によれば、飛行体が垂直離着陸可能な機体である場合の回避優先度が、飛行体が垂直離着陸できない機体である場合の回避優先度よりも高めに設定される。この構成では、垂直離着陸可能な飛行体が衝突回避飛行を行う可能性を高くすることができる。垂直離着陸可能な飛行体の方が、垂直離着陸できない飛行体に比べて進路を変更しやすいため、飛行体が容易に衝突回避することができる。また、飛行体が進路変更する場合の変更量である調整代が、垂直離着陸可能な飛行体の方が垂直離着陸できない飛行体に比べて大きくなりやすい。このことからしても、垂直離着陸可能な飛行体に衝突回避飛行を行わせることが衝突回避を実現する上で容易である。
【0083】
本実施形態によれば、飛行体が垂直離着陸機のうちチルトロータ機である場合の回避優先度が、飛行体が垂直離着陸機のうちチルトでない場合の回避優先度に比べて低めに設定される。すなわち、飛行体においてリフト用ロータとクルーズ用ロータとが1つのロータで兼用される場合の回避優先度が、飛行体においてリフト用ロータとクルーズ用ロータとが個別に設けられた場合の回避優先度に比べて低めに設定される。この構成では、チルトロータ機が衝突回避飛行を行う可能性を低くすることができる。チルトロータ機は、衝突回避飛行を行うためにチルト角を変更する場合、そのチルト角の変更に時間を要することに起因して、進路を変更しにくい。このため、飛行体としてのチルトロータ機について衝突回避のための進路変更が遅れるということを抑制できる。
【0084】
本実施形態によれば、固定優先は、自機10の推進機構に応じて設定されている。この構成では、固定優先度に自機10の推進機構に関する情報が反映されているため、固定優先度の設定精度を高めることができる。また、飛行制御装置40が回避優先度を補正する際に自機10の推進機構に関する情報をその都度用いるという必要がないため、回避優先度を取得する際の処理負担を低減できる。
【0085】
飛行体が進路変更を行うために要するエネルギは、飛行体の飛行速度が速いほど大きくなりやすいと考えられる。これに対して、本実施形態によれば、飛行体の飛行速度が速いほど回避優先度が低めに設定される。この構成では、飛行速度が速い飛行体が衝突回避飛行を行う可能性が低減される。このため、飛行速度が速い飛行体が衝突回避飛行を行うことで消費エネルギが増大する、ということを抑制できる。
【0086】
また、飛行体の飛行速度が速いほど、飛行体が衝突回避のために曲線的に飛行した場合の遠心力が大きくなりやすい。この場合、飛行体に搭乗している人間にとっては身体的な負荷が大きくなりやすい。また、この場合、飛行体に積載されている貨物にとっては破損のリスクが高くなりやすい。これらのことからしても、飛行速度が遅い飛行体が衝突回避飛行を行う可能性が高くして、飛行速度が遅い飛行体に軌道変更させた方が衝突回避を容易に行うことができる。
【0087】
本実施形態によれば、飛行制御装置40は、固定優先度に対して自機10の飛行速度に応じた補正を行うことで回避優先度を取得する。この構成では、回避優先度に自機10の飛行速度が反映されているため、回避優先度の設定精度を高めることができる。
【0088】
飛行体に異常が発生した場合、その飛行体は進路変更が困難である可能性がある。これに対して、本実施形態によれば、飛行体に異常が発生している場合の回避優先度が、飛行体に異常が発生していない場合の回避優先度に比べて低めに設定される。この構成では、異常が発生している状態に飛行体が衝突回避飛行を行う可能性が低減される。このため、異常が発生した状態の飛行体が適正な衝突回避飛行を行うことができないという事態を回避できる。すなわち、異常が発生していない飛行体が進路変更を適正に行うことで、衝突回避を容易に行うことができる。
【0089】
本実施形態によれば、飛行制御装置40は、固定優先度に対して自機10での異常の有無に応じた補正を行うことで回避優先度を取得する。この構成では、回避優先度に自機10での異常の有無が反映されているため、回避優先度の設定精度を高めることができる。
【0090】
本実施形態によれば、自機10についての回避優先度と相手機90についての回避優先度とに応じて優先関係が設定される。この構成では、自機10についての回避優先度及び相手機90についての回避優先度のそれぞれを取得することで、衝突回避についての優先関係の設定を容易化できる。例えば、本実施形態とは異なり、自機情報及び相手機情報を用いて優先関係が直接的に算出される構成に比べて、優先関係を算出する際の飛行制御装置40の処理負担を低減できる。したがって、飛行制御装置40により設定される衝突回避ルートについて、設定精度を高めること、及び設定に要する時間を短縮すること、の両方を実現できる。
【0091】
本実施形態によれば、飛行制御装置40は、固定情報に応じて設定された固定優先度に対して変動情報を用いた補正を行うことで回避優先度を取得する。この構成では、飛行制御装置40が固定優先度をその都度算出するという必要がない。例えば、固定優先度を示す情報が記憶装置35に記憶されていることで、飛行制御装置40は記憶装置35から固定優先度を読み込むだけで済む。飛行制御装置40は、固定優先度に対する補正を行うだけで回避優先度を取得できるため、回避優先度を取得するための処理負担を低減できる。また、回避優先度には変動情報が反映されているため、飛行制御装置40は、自機10の現在の状態が反映された回避優先度を取得できる。このため、変動情報の取得精度を高めることができる。
【0092】
本実施形態によれば、飛行制御装置40は、受信装置33により相手機情報を受信する。この構成では、相手機情報を用いて相手機90についての回避優先度を取得できるため、相手機情報の取得精度を高めることができる。このため、衝突回避についての自機10と相手機90との優先関係を精度良く設定できる。
【0093】
本実施形態によれば、飛行制御装置40は、発信装置34により自機情報を相手機90に対して発信する。この構成では、自機10の回避優先度などを含む自機情報を相手機90に取得してもらうことができるため、自機情報を相手機90と共有化できる。このため、衝突回避についての自機10と相手機90との優先関係を共有化することなどにより、自機10と相手機90とが協力して衝突回避することができる。
【0094】
<第2実施形態>
第1実施形態では、衝突を回避する方法として、自機10及び相手機90のうち優先順位が高い方だけが飛行ルートを変更する方法が採用されていた。これに対して、第2実施形態では、衝突を回避する方法として、自機10及び相手機90の少なくとも優先順位が高い方が飛行ルートを変更する方法が採用される。この方法は、自機10及び相手機90の両方が飛行ルートを変更することがある方法である。第2実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第1実施形態と同様である。第2本実施形態では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0095】
本実施形態の発見回避処理について、図7のフローチャートを参照しつつ説明する。飛行制御装置40は、図7に示すステップS401~S407において、上記第1実施形態と同様の処理を行う。ただし、ステップS403にて、衝突回避について相手機90の優先順位が自機10の優先順位よりも高い場合、飛行制御装置40は、ステップS601に進む。飛行制御装置40は、ステップS601において回避確認処理を行う。回避確認処理は、相手機90の優先順位が自機10の優先順位よりも高い場合に、自機10が衝突回避飛行を行うか否かを確認するための処理である。回避確認処理については、図8のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0096】
飛行制御装置40は、回避確認処理のステップS701において、ルート変更情報を相手機90から受信したか否かを判定する。ルート変更情報は、相手機90が現在の飛行ルートを衝突回避ルートに変更することを示す情報である。この場合、衝突回避について相手機90の優先順位が自機10の優先順位よりも高いことを自機10と相手機90とで共有していることになる。なお、ルート変更情報は相手機情報に含まれていてもよい。なお、ルート変更情報を受信したか否かの判定は、発見回避処理のステップS402にて相手機情報を受信したか否かの判定と共に行われてもよい。
【0097】
ルート変更情報を受信した場合、飛行制御装置40は、ステップS702に進み、余裕取得処理を行う。飛行制御装置40は、余裕取得処理において、相手機90が行う衝突回避飛行について余裕代を算出する。余裕代は、例えば相手機90が衝突回避飛行を行った場合について相手機90と自機10とが最も接近した場合の離間距離である。余裕代は、相手機90の衝突回避ルートと自機10の飛行ルートとが最も接近するタイミングにおいて、これら衝突回避ルートと飛行ルートとの離間距離でもある。飛行制御装置40は、相手機90の衝突回避ルートと自機10の飛行ルートとに応じて余裕代を算出する。
【0098】
飛行制御装置40は、ステップS703において、自機10の飛行ルートを変更するか否かの判定を行う。飛行制御装置40は、自機10と相手機90との衝突を回避するには、相手機90のルート変更に加えて、自機10が飛行ルートを変更する必要があるか否かを判定する。例えば飛行制御装置40は、余裕代が所定の判定値よりも大きいか否かを判定する。飛行制御装置40は、余裕代が判定値よりも大きくない場合、自機10の飛行ルートを変更する必要があると判断する。余裕代が判定値よりも大きくない場合としては、相手機90のルート変更により衝突回避できると予測された場合と、相手機90のルート変更でも衝突回避できないと予測された場合とがある。
【0099】
自機10の飛行ルートを変更する場合、飛行制御装置40は、ステップS704に進み、自機10の飛行ルートを変更する。飛行制御装置40は、余裕代が大きくなるように、相手機90の衝突回避ルートに応じて自機10の飛行ルートを変更する。自機10の飛行ルートは、自機10にとっての衝突回避ルートに変更される。この衝突回避ルートは、余裕代を大きくすることができるルートである。相手機90のルート変更でも衝突回避できないと予測された場合については、自機10にとっての衝突回避ルートが、衝突回避できるようにするためのルートになる。
【0100】
飛行制御装置40は、ステップS705において、相手機90に対して変更情報を発信する。変更情報には、自機10の飛行ルートを衝突回避ルートに変更したことを示す情報が含まれている。変更情報には、余裕代を示す情報が含まれていてもよい。
【0101】
図7に戻り、ステップS403について相手機90の優先順位が自機10の優先順位よりも高くない場合、上記第1実施形態と同様に、飛行制御装置40は、ステップS404,S405の処理を行う。飛行制御装置40は、ステップS404,S405において、相手機90のルート変更と、相手機90に対する変更情報発信を行う。この場合、相手機90は、自機10のルート変更に合わせた飛行ルートで飛行する。自機10のルート変更に合わせて相手機90もルート変更することが考えられる。例えば、相手機90においてステップS601の回避確認処理と同様の処理が実行されるなどして、相手機90が余裕代を大きくするためのルート変更を行うことが考えられる。
【0102】
発見回避処理及び回避確認処理についてまとめて説明する。衝突回避について自機10よりも相手機90の方が優先順位が高い場合について、相手機90から受け取ったルート情報では自機10と相手機90との間に十分な離間距離を確保できないと予想されることがある。この場合は、相手機90の飛行ルートに加えて、必要な分だけ自機10の飛行ルートが変更されることで、衝突回避についての安全性を高めることができる。衝突回避について自機10と相手機90とに優先順位が設定されているため、自機10及び相手機90の両方ともがルート変更する必要がある場合に、自機10及び相手機90のうち優先順位の低い方は、必要最小限のルート変更で済む。また、自機10と相手機90とに優先順位が設定されているため、自機10及び相手機90の両方がルート変更を行うことでかえって衝突リスクが高くなるという事態を防止できる。衝突リスクが高くなる場合としては、自機10及び相手機90のうち一方が他方に対して同時且つ独自にルート変更を変更した場合が考えられる。
【0103】
衝突回避について相手機90よりも自機10の方が優先順位が高い場合について、自機10は、衝突回避ルートにより最善の進路変更を行うはずである。このため、自機10から相手機90に対して衝突回避ルートを示す情報を相手機90に伝えたら、それ以降の判断は相手機90に委ねることが好ましい。
【0104】
<第3実施形態>
第2実施形態では、発見回避処理において、自機10及び相手機90の少なくとも優先順位が高い方が飛行ルートを変更する方法が採用されていた。これに対して、第3実施形態では、受信回避処理において、自機10及び相手機90の少なくとも優先順位が高い方が飛行ルートを変更する方法が採用される。第3実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第1実施形態と同様である。第3本実施形態では、上記第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0105】
本実施形態の受信回避処理について、図9のフローチャートを参照しつつ説明する。飛行制御装置40は、図9に示すステップS501~S504において、上記第1実施形態と同様の処理を行う。ただし、ステップS502にて、衝突回避について相手機90の優先順位が自機10の優先順位よりも高い場合、飛行制御装置40は、ステップS801に進む。飛行制御装置40は、ステップS801において、上記第2実施形態のステップS601と同様に、回避確認処理を行う。したがって、受信回避処理についても、上記第2実施形態の発見回避処理と同様の効果を奏することができる。
【0106】
<第4実施形態>
第4実施形態では、自機10がeVTOLである。第4実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第1実施形態と同様である。第4本実施形態では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0107】
図10に示す自機10は、機体11及びロータ20を有している。機体11は、機体本体12及び翼13を有している。機体本体12は、機体11の胴体であり、例えば前後に延びた形状になっている。機体本体12は、乗員が乗るための乗員室を有している。翼13は、機体本体12から延びており、機体本体12に複数設けられている。翼13は固定翼である。複数の翼13には、主翼、尾翼などが含まれている。
【0108】
ロータ20は、機体11に複数設けられている。自機10には、少なくとも4つのロータ20が設けられている。ロータ20は、機体本体12及び翼13のそれぞれに設けられている。ロータ20は、ロータ軸線を中心に回転する。ロータ軸線は、ロータ20の回転軸線であり、ロータ20の中心線に一致している。
【0109】
ロータ20は、ブレード21、ロータヘッド22及びロータシャフト23を有している。ブレード21は、周方向に複数並べられている。ロータヘッド22は、複数のブレード21を連結している。ブレード21は、ロータヘッド22から径方向に延びている。ブレード21は、ロータシャフト23と共に回転する羽根である。ロータシャフト23は、ロータ20の回転軸であり、ロータヘッド22からロータ軸線に沿って延びている。
【0110】
自機10は、eVTOLとしてのチルトロータ機である。自機10においては、ロータ20を傾けることが可能になっている。すなわち、ロータ20のチルト角が調整可能になっている。例えば、自機10が上昇する場合には、ロータ軸線が上下方向に延びるようにロータ20の向きが設定される。この場合、ロータ20は、自機10に揚力を生じさせるためのリフト用ロータとして機能する。すなわち、ロータ20は、回転翼としての役割を果たすことが可能である。リフト用ロータは、自機10をホバリングさせるためのホバリング用ロータとしても機能する。また、リフト用ロータは、自機10を下降させることも可能である。なお、ホバリング用ロータはホバー用ロータと称されることがある。
【0111】
自機10が前方に進む場合には、ロータ軸線が前後方向に延びるようにロータ20の向きが設定される。この場合、ロータ20は、自機10に推力を生じさせるためのクルーズ用ロータとして機能する。本実施形態では、パイロットにとっての前方を自機10にとっての前方としている。なお、パイロットにとっての前方に関係なく、水平方向のうち自機10が進む向きを前方としてもよい。この場合、自機10は、進行方向を変えても常に前方に進んでいることになる。
【0112】
図11に示すように、自機10は、チルト機構38を有している。チルト機構38は、モータ等を含んで構成されており、ロータ20のチルト角を調整するために駆動する。チルト機構38は、チルト駆動部と称されることがある。例えば、自機10においては、翼13を機体本体12に対して相対的に傾けることが可能になっている。すなわち、翼13ごとロータ20を傾けることが可能になっている。この自機10においては、機体本体12に対する翼13の傾斜角度が調整されることで、ロータ20のチルト角が調整される。この自機10においては、翼13の傾斜角度を調整する機構がチルト機構38である。
【0113】
なお、自機10においては、ロータ20が機体11に対して相対的に傾くことが可能になっていてもよい。例えば、翼13に対するロータ20の相対的な傾斜角度が調整されることで、ロータ20のチルト角が調整されてもよい。
【0114】
図10図11に示すように、飛行システム30は、チルト機構38及びEPU50を有している。図11では、チルト機構38をTIM、EPU50をEPU、と図示している。
【0115】
EPU50は、ロータ20を駆動回転させるために駆動する装置であり、駆動装置に相当する。EPUは、Electric Propulsion Unitの略称である。EPU50は、電駆動装置と称されることがある。EPU50は、複数のロータ20のそれぞれに対して個別に設けられている。EPU50は、ロータ軸線に沿ってロータ20に並べられている。複数のEPU50はいずれも、機体11に固定されている。EPU50は、ロータ20を回転可能に支持している。EPU50は、ロータシャフト23に機械的に接続されている。複数のEPU50には、機体11の外側にはみ出した状態で機体11に固定されたEPU50、及び機体11の内側に埋め込まれた状態で機体11に固定されたEPU50、の少なくとも一方が含まれている。
【0116】
ロータ20は、EPU50を介して機体11に固定されている。EPU50は、ロータ20に対して相対的に傾くということが生じないようになっている。EPU50は、ロータ20と共に傾くことが可能になっている。ロータ20のチルト角が調整される場合、ロータ20と共にEPU50の向きが設定されることになる。
【0117】
ロータ20及びEPU50は、自機10を推進させることが可能である。自機10においては、ロータ20及びEPU50を含んで推進装置が構成されている。この推進装置は、自機10に複数設けられている。ロータ20がリスト用ロータとして機能している場合、推進装置は垂直推力を生成可能である。垂直推力は、自機10を垂直方向に推進させるための垂直方向の推進力である。ロータ20がクルーズ用ロータとして機能している場合、推進装置は水平推力を生成可能である。水平推力は、自機10を水平方向に推進させるための水平方向の推進力である。
【0118】
EPU50は、モータ装置80及びインバータ装置60を有している。モータ装置80は、モータ及びモータハウジングを有している。モータはモータハウジングに収容されている。モータは、複数相の交流モータであり、例えば3相交流方式の回転電機である。モータは、自機10の飛行駆動源である電動機として機能する。モータは、回転子及び固定子を有している。モータは、バッテリ31の電力により駆動される。EPU50は、モータの駆動によりロータ20を駆動回転させる。モータとしては、例えばブラシレスモータが用いられている。なお、モータとしては、誘導モータやリアクタンスモータが用いられてもよい。
【0119】
インバータ装置60は、インバータ及びインバータハウジングを有している。インバータはインバータハウジングに収容されている。インバータは、モータに供給する電力を変換することでモータを駆動する。インバータは、駆動部と称されることがある。インバータは、モータに供給される電力を直流から交流に変換する。インバータは、電力を変換する電力変換部である。インバータは、複数相の電力変換部であり、複数相のそれぞれについて電力変換を行う。インバータは、例えば3相インバータである。モータは、インバータから供給される電圧及び電流に応じて駆動する。
【0120】
EPU50においては、各種センサの検出結果などに応じてモータの駆動が制御される。例えば、EPU50は、モータの駆動を制御する駆動制御部を有している。駆動制御部は、インバータ、各種センサに電気的に接続されている。駆動制御部は、インバータを介してモータ制御を行う。駆動制御部は、飛行制御装置40に電気的に接続されており、飛行制御装置40からの信号に応じてモータ制御を行う。なお、飛行制御装置40がEPU50についてモータ等の制御を直接的に行ってもよい。
【0121】
バッテリ31は、複数のEPU50に電気的に接続されている。バッテリ31は、EPU50に電力を供給する電力供給部であり、電源部に相当する。バッテリ31は、EPU50に直流電圧を印加する直流電圧源である。バッテリ31は、充放電可能な2次電池を有している。この2次電池としては、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池などがある。なお、電源部としては、バッテリ31に加えて又は代えて、燃料電池や発電機などが用いられてもよい。バッテリ31は、電力を蓄えることが可能であり、蓄電装置に相当する。
【0122】
分配器32は、バッテリ31及び複数のEPU50に電気的に接続されている。分配器32は、バッテリ31からの電力を複数のEPU50に分配する。バッテリ31は、分配器32を介して複数のEPU50に電気的に接続されている。バッテリ31は、分配器32を介してEPU50に電力を供給する。バッテリ31の電圧を高電圧と称すると、EPU50において後述するインバータ及びモータには高電圧が印加される。なお、バッテリ31の電力が複数のEPU50に供給される構成であれば、分配器32がなくてもよい。分配器32がなくてもよい構成としては、例えば、複数のEPU50のそれぞれに個別に電源部が設けられた構成がある。
【0123】
飛行制御装置40は、衝突回避処理を行うことが可能である。衝突回避処理は、自機10が衝突回避ルートで衝突回避飛行を行うための処理である。衝突回避処理は、例えば上記第1実施形態の飛行制御処理と共に行われる。衝突回避処理について、図12に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
【0124】
飛行制御装置40は、衝突回避処理のステップS901において、衝突リスクが発生したか否かを判定する。飛行制御装置40は、衝突リスクを発見したか否かの判定、及び衝突リスクを示す情報を受信したか否かの判定、の少なくとも一方を行う。例えば飛行制御装置40は、上記第1実施形態のステップS105について衝突リスクが発見された場合、又はステップS107について衝突リスクを示す情報を受信した場合、に衝突リスクが発生したと判断する。
【0125】
衝突リスクが発生した場合、飛行制御装置40は、ステップS902~S905にて、飛行ルートを変更するための準備である変更準備処理を行う。変更準備処理では、衝突リスクが発生する前における自機10の飛行状態を維持しつつ推進装置の状態を変化させるという処理を行う。
【0126】
飛行制御装置40は、ステップS902において、自機10での推力を割り振るための割り振り処理を行う。飛行制御装置40は、複数の推進装置を、垂直推力を生成するための垂直用装置と、水平推力を生成するための水平用装置とに割り振る。割り振り処理は、複数のロータ20をリフト用ロータとクルーズ用ロータとに割り振ることになる。
【0127】
飛行制御装置40は、ステップS903において、垂直推力を低減させるためのダウン処理を行う。この処理では、衝突リスクが発生する前に比べて垂直推力が低減するように垂直用装置を駆動する。飛行制御装置40は、ステップS904において、水平推力を増加させるためのアップ処理を行う。この処理では、衝突リスクが発生する前に比べて水平推力が増加するように水平用装置を駆動する。
【0128】
飛行制御装置40は、ステップS905において、角度変更処理を行う。飛行制御装置40は、垂直用装置のチルト角が垂直推力を生成可能な角度に変更される。垂直用装置においては、ロータ20のチルト角がチルト機構38により変更される。ステップS902~S905にて変更準備処理が行われることで、衝突リスクが発生する前における自機10の水平推力を維持しつつ、垂直用装置を確保できる。
【0129】
飛行制御装置40は、ステップS906において、ルート変更するか否かの判定を行う。ルート変更する場合としては、上記第1実施形態のステップS404,S407,S503においてルート変更を行うと判断された場合がある。また、上記第2実施形態のステップS704においてルート変更を行うと判断された場合がある。飛行制御装置40は、ルート変更する場合、ステップS907に進み、ルート変更を行う。飛行制御装置40は、ステップS907において、上記ステップS404,S407,S503,S704と同様に、自機10の飛行ルートを衝突回避ルートに変更する。
【0130】
飛行制御装置40は、ステップS908において高度を変更するか否かを判定する。飛行制御装置40は、衝突回避ルートにおいて高度を変更するように自機10を上昇又は下降させる必要があるか否かを判定する。高度を変更する場合、飛行制御装置40は、ステップS909に進み、高度の変更を必要とする衝突回避ルートについて、推進制御を行う。飛行制御装置40は、衝突回避ルートに沿って自機10が上昇又は下降するように、垂直用装置及び水平用装置の両方について駆動制御を行う。
【0131】
ステップS908について高度を変更しない場合、飛行制御装置40は、ステップS910に進み、推進装置の割り振りを解消する解消処理を行う。この処理は、垂直用装置及び水平用装置のそれぞれに割り振られていた推進装置を、衝突リスクが発生する前の状態に戻す処理である。飛行制御装置40は、推進装置のチルト角を衝突リスクが発生する前のチルト角に戻す。ルート変更が必要である場合に解消処理が完了した後、飛行制御装置40は、ステップS909に進み、高度の変更を必要としない衝突回避ルートについて、推進制御を行う。飛行制御装置40は、衝突回避ルートに沿って自機10が衝突回避飛行するように、推進装置の制御を行う。
【0132】
ステップS906についてルート変更しない場合、飛行制御装置40は、ステップS910に進み、解消処理を行う。ルート変更が必要でない場合に解消処理が完了した後、飛行制御装置40は、ステップS909に進み、衝突リスクが発生する前の飛行ルートについて、推進制御を行う。飛行制御装置40は、衝突リスクが発生する前の飛行ルートに沿って自機10が飛行するように、推進装置の制御を行う。
【0133】
第4実施形態の衝突回避処理についてまとめて説明する。ホバリングとクルーズとで推進装置を兼用するeVTOLでは、チルト機構38により推進装置の角度を変更することで水平方向の推力と垂直方向の推力を調整可能である。クルーズ中は全ての推進装置が水平方向に推力を発生させる角度になっていることが多い。この場合、衝突リスクを検知したら、一部の推進装置を垂直方向に推力を発生させられるように角度を変更することが好ましい。その際、クルーズ状態を維持するには、垂直方向に推力を生成させるための推進装置は、角度変更中にeVTOLの機体が垂直方向に変化しないように推力を弱めた上で角度を変更し、クルーズを維持するための推進装置は推力をアップすることが好ましい。これにより、eVTOLのクルーズ状態を維持することが可能である。
【0134】
本実施形態によれば、自機10は、ロータ20及びEPU50を有している電動航空機である。このため、自機10と相手機90との衝突を自機10が衝突回避飛行により回避する場合に、回避に伴う急な進路変更を実現しやすい。
【0135】
<第5実施形態>
第4実施形態では、自機10において1つのロータ20がリフト用ロータとクルーズ用ロータとを兼用していた。これに対して、第5実施形態では、自機10においてリフト用ロータとクルーズ用ロータとが個別に設けられている。第5実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第1実施形態と同様である。第5本実施形態では、上記第4実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0136】
図13に示す自機10においては、リフト用ロータ及びクルーズ用ロータが複数ずつ設けられている。自機10は、EPU50として、リフト用EPU50a及びクルーズ用EPU50bを有している。リフト用EPU50aは、リフト用ロータを駆動回転させるために駆動する装置である。リフト用EPU50aは、ホバー用駆動装置と称されることがある。クルーズ用EPU50bは、クルーズ用ロータを駆動回転させるために駆動する装置である。クルーズ用EPU50bは、クルーズ用駆動装置と称されることがある。
【0137】
自機10においては、推進装置として、垂直用装置と水平用装置とが個別に設けられている。垂直用装置と水平用装置とは複数ずつ自機10に搭載されている。垂直用装置は、リフト用ロータ及びリフト用EPU50aを含んで構成されている。垂直用装置は、ホバー用推進装置と称されることがある。水平用装置は、クルーズ用ロータ及びクルーズ用EPU50bを含んで構成されている。水平用装置は、クルーズ用推進装置と称されることがある。
【0138】
飛行制御装置40は、上記第4実施形態と同様に、衝突回避処理を行うことが可能である。本実施形態の衝突回避処理について、図14に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
【0139】
飛行制御装置40は、衝突回避処理のステップS1001において、衝突リスクが発生したか否かを判定する。この判定は、上記第4実施形態のステップS901と同様に行われる。
【0140】
衝突リスクが発生した場合、飛行制御装置40は、ステップS1002に進み、垂直駆動準備を行う。飛行制御装置40は、垂直駆動準備として、垂直用装置を駆動させるための準備を行う。例えば、リフト用ロータが通常状態と待機状態とに移行可能な垂直用装置を想定する。垂直駆動準備としては、垂直用装置においてリフト用ロータを待機状態から通常状態に移行させるための処理がある。
【0141】
この垂直用装置においては、自機10がクルーズ中である場合に、リフト用ロータが待機状態になっている。リフト用ロータの待機状態としては、例えばリフト用ロータが収容スペースに収容された状態、及びリフト用ロータが折りたたまれた状態、などがある。一方で、自機10が垂直離陸中、垂直着陸中又はクルーズ中である場合、リフト用ロータは通常状態で駆動回転している。リフト用ロータの通常状態としては、例えばリフト用ロータが収容スペースから露出し且つ駆動回転可能な状態がある。また、リフト用ロータの折りたたみが解除されて駆動回転可能になっている状態がある。
【0142】
飛行制御装置40は、ステップS1003において、ルート変更するか否かの判定を行う。この判定は、上記第4実施形態のステップS906と同様に行われる。ルート変更する場合、飛行制御装置40は、ステップS1004に進み、ルート変更を行う。ルート変更は、上記第4実施形態のステップS907と同様に行われる。飛行制御装置40は、ステップS1005において、高度を変更するか否かを判定する。この判定は、上記第4実施形態のステップS908と同様に行われる。高度を変更する場合、飛行制御装置40は、ステップS1006に進む。
【0143】
高度を変更する場合、飛行制御装置40は、ステップS1006に進み、垂直用装置の駆動を行う。垂直用装置の駆動では、リフト用ロータが駆動回転するようにリフト用EPU50aを駆動させる。高度を変更する場合、飛行制御装置40は、ステップS1006の後、ステップS1007に進み、高度の変更を必要とする衝突回避ルートについて、推進制御を行う。飛行制御装置40は、衝突回避ルートに沿って自機10が上昇又は下降するように、垂直用装置の駆動に加えて水平用装置の駆動を行う。飛行制御装置40は、リフト用EPU50a及びクルーズ用EPU50bの両方について駆動制御を行う。
【0144】
ステップS1005について高度を変更しない場合、飛行制御装置40は、ステップS1007に進み、高度の変更を必要としない衝突回避ルートについて、推進制御を行う。この場合、飛行制御装置40は、垂直用装置の駆動を行わず、衝突回避ルートに沿って自機10が衝突回避飛行するように水平用装置の駆動を行う。
【0145】
ステップS1003についてルート変更しない場合、飛行制御装置40は、ステップS1007に進み、衝突リスクが発生する前の飛行ルートについて、推進制御を行う。この場合、飛行制御装置40は、垂直用装置の駆動を行わず、衝突リスクが発生する前の飛行ルートに沿って自機10が飛行するように水平用装置の駆動を行う。
【0146】
第5実施形態の衝突回避処理についてまとめて説明する。ホバリングとクルーズとで異なる推進装置を駆動させるeVTOLでは、クルーズ飛行時はホバー用の推進装置を駆動させないことが多い。ホバー用の駆動装置は、ホバー用のモータ及びホバー用のプロペラなどを含んで構成されている。衝突回避のためには水平方向の進路変更だけではなく高度についても進路変更した方が良い場合が想定される。これに対して、eVTOLの機種によってはクルーズ時にホバー用のプロペラが抵抗とならないように、ホバー用のプロペラが格納容器内に格納されること、ホバー用のプロペラが回転しないように所定位置に固定されること、などの構成がある。この構成では、衝突回避のための進路変更が必要になってからホバー用のプロペラを稼働できるように制御開始するのでは、衝突回避動作に遅れが生じることが懸念される。そこで、衝突リスクを検知したらホバー用のプロペラ等を駆動可能な状態にしておき、実際に垂直方向の進路変更が必要になったら、速やかにホバー用のプロペラ等を駆動開始して進路変更できるようにしておくことが好ましい。
【0147】
<第6実施形態>
第1実施形態では、自機10と相手機90とが直接的に通信可能であった。これに対して、第6実施形態では、自機10と相手機90とが管理センタを介して間接的に通信可能である。第6実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第1実施形態と同様である。第6本実施形態では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0148】
図15において、自機10及び相手機90は、いずれも管制センタ155と通信可能である。管制センタ155は、管理センタの一種であり、自機10及び相手機90といった飛行体の飛行を管制するための施設である。管制としては、飛行体の飛行を管理すること、及び飛行体の飛行を制限することなどがある。管制センタ155は管理施設に相当する。
【0149】
管制センタ155においては、管制システム150が構築されている。管制システム150は、自機10及び相手機90のそれぞれを管制することが可能である。管制システム150は、自機10及び相手機90等の飛行体を制御可能であってもよい。管制システム150は、管制装置151、記憶装置152及び通信装置153を有している。管制装置151は、飛行制御装置40と同様に、マイコンを主体として構成されている。管制装置151は、管制システム150を制御する制御装置である。管制装置151は、記憶装置152及び通信装置153に電気的に接続されている。なお、図15では、管制装置151をATCD、記憶装置152をATSD、通信装置153をATCU、管制センタ155をATCC、と図示している。
【0150】
記憶装置152は、飛行体を管制するための管制情報を記憶している。管制情報としては、自機情報及び相手機情報などがある。記憶装置152に記憶されている自機情報としては、自機10についての固定情報と、自機10についての固定優先度など回避優先度を示す情報と、がある。記憶装置152に記憶されている相手機情報としては、相手機90についての固定情報と、相手機90についての固定優先度など回避優先度を示す情報と、がある。
【0151】
管制システム150は、自機10及び相手機90のそれぞれと通信可能である。通信装置153は、自機10が有する受信装置33及び発信装置34のそれぞれと無線通信可能である。通信装置153は、相手機90が有する受信装置93及び発信装置94のそれぞれと無線通信可能である。通信装置153は、管制装置151に対して情報の出力及び入力が可能である。受信装置33、発信装置34及び通信装置153は、管制センタ155と自機10との情報の授受、及び管制センタ155と相手機90との情報の授受、を可能にしている。自機10から管制センタ155に対して発信される情報としては、自機情報がある。相手機90から管制センタ155に対して発信される情報としては、相手機情報がある。
【0152】
管制装置151は、飛行体の飛行を管理するための管理処理を行う。管理処理には、飛行体の衝突を回避させるための処理が含まれている。この処理では、例えば自機10と相手機90との衝突を回避させることが可能である。管制装置151は、管理処理において、上記第1実施形態では飛行制御装置40が行っていた処理として、衝突を予測する処理と、回避優先度、優先関係及び衝突回避ルートを設定する処理と、を実行することが可能である。
【0153】
飛行制御装置40は、上記第1実施形態と同様に飛行制御処理を行う。本実施形態の飛行制御処理について、図16のフローチャートを参照しつつ説明する。飛行制御装置40は、図16に示すステップS101~S103において、上記第1実施形態と同様の処理を行う。ただし、ステップS102,S103の処理内容は、上記第1実施形態とは異なる。ステップS102の離陸前処理について、図17のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0154】
飛行制御装置40は、図17に示すステップS1201において、自機10の重量情報を取得する処理を行う。この処理は、上記第1実施形態のステップS201と同様に行われる。飛行制御装置40は、ステップS1202において、自機10の乗員情報を取得する処理を行う。この処理は、上記第1実施形態のステップS203と同様に行われる。
【0155】
飛行制御装置40は、ステップS1203において、情報発信を行う。この情報発信では、重量情報及び乗員情報を含む自機情報を管制センタ155に対して発信する。離陸前処理にて発信された自機情報には、自機10の識別情報が含まれている。管制センタ155においては、管制装置151が、重量情報及び乗員情報と識別情報とを対応させた状態で自機情報を記憶装置152に記憶する。飛行制御装置40におけるステップS1203の処理を実行する機能が情報出力部に相当する。
【0156】
次に、ステップS103の飛行中処理について、図18のフローチャートを参照しつつ説明する。飛行制御装置40は、図18に示すステップS1301において、自機10の速度情報を取得する処理を行う。この処理は、上記第1実施形態のステップS301と同様に行われる。飛行制御装置40は、ステップS1302において、自機10の異常情報を取得する処理を行う。この処理は、上記第1実施形態のステップS303と同様に行われる。
【0157】
飛行制御装置40は、ステップS1303において、情報発信を行う。この情報発信では、速度情報及び異常情報を含む自機情報を管制センタ155に対して発信する。飛行中処理にて発信された自機情報には、自機10の識別情報が含まれている。管制センタ155においては、管制装置151が、速度情報及び異常情報と識別情報とを対応させた状態で自機情報を記憶装置152に記憶する。飛行制御装置40におけるステップS1303の処理を実行する機能が情報出力部に相当する。
【0158】
図16に戻り、飛行制御装置40は、ステップS103の後、ステップS107に進む。本実施形態では、上記第1実施形態とは異なり、ステップS104~S106の処理を行わない。すなわち、本実施形態の飛行制御装置40は、衝突を予測する処理と、回避優先度、優先関係及び衝突回避ルートを設定する処理と、を行わない。
【0159】
飛行制御装置40は、ステップS107において、上記第1実施形態と同様に、衝突リスクを示す情報を受信したか否かを判定する。ただし、本実施形態では、衝突リスクを示す情報を自機10に対して発信するのが、相手機90ではなく管制センタ155である。このため、自機10は、衝突リスクを示す情報を、管制センタ155から発信された情報として受信することになる。
【0160】
衝突リスクを示す情報を受信した場合、飛行制御装置40は、ステップS108に進み、上記第1実施形態と同様に、受信回避処理を行う。ただし、ステップS108の処理内容は、上記第1実施形態とは異なる。ステップS108の受信回避処理について、図19のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0161】
飛行制御装置40は、図19に示すステップS1401において、ルート変更指示を管制センタ155から受信したか否かを判定する。ルート変更指示には、自機10の飛行ルートを衝突回避ルートに変更すること、衝突回避ルートを示す情報、などが含まれている。また、ルート変更指示には、衝突回避について自機10と相手機90との優先関係を示す情報が含まれている。飛行制御装置40におけるステップS1401の処理を実行する機能が優先関係取得部及びルート取得部に相当する。なお、ルート変更指示は、衝突リスクを示す情報に含まれていてもよい。
【0162】
ルート変更指示を受信した場合、飛行制御装置40は、ステップS1402に進み、自機10の飛行ルートを変更する。飛行制御装置40は、自機10について、衝突リスクが発生する前の飛行ルートを衝突回避ルートに変更する。そして、飛行制御装置40は、管制センタ155から指示された衝突回避ルートで自機10を飛行させるために衝突回避制御を行う。
【0163】
次に、管制装置151が行う管理処理について、図20に示すフローチャートを参照しつつ説明する。管制装置151は、管理処理を所定の管理周期で繰り返し実行する。管制装置151は、管理処理において各ステップの処理を実行する機能を有している。
【0164】
管制装置151は、図20に示すステップS1501において、情報取得処理を行う。この処理では、自機10から受信した自機情報を取得する処理、及び相手機90から受信した相手機情報を取得する処理を行う。管制装置151は、ステップS1502において、上記第1実施形態のステップS104と同様に、自機情報及び相手機情報を用いて衝突予測を行う。管制装置151は、ステップS1503において、上記第1実施形態のステップS105と同様に、衝突リスクを発見したか否かを判定する。
【0165】
自機10と相手機90との衝突リスクを発見した場合、管制装置151は、ステップS1504に進む。管制装置151は、ステップS1504において、上記第1実施形態のステップS403と同様に、自機10と相手機90との優先順位を設定する。この設定では、自機10と相手機90との優先関係が自機情報及び相手機情報に応じて設定される。
【0166】
管制装置151は、ステップS1505において、上記第2実施形態のステップS702と同様に、余裕取得処理を行う。この処理では、自機10及び相手機90のうち優先順位が高い方について、自機情報及び相手機情報を用いて衝突回避ルートが設定される。また、この処理では、優先順位が高い方の衝突回避ルートと、優先順位が低い方の飛行ローとについて、余裕代が算出される。管制装置151は、算出した余裕代を取得する。
【0167】
管制装置151は、ステップS1506において、自機10及び相手機90の少なくとも一方について衝突回避ルートを設定する。管制装置151は、例えば余裕代が所定の判定値よりも大きい場合に、自機10及び相手機90のうち優先順位が高い方だけについて衝突回避ルートを設定する。一方、余裕代が判定値よりも大きくない場合、管制装置151は、優先順位が低い方についても、余裕代が大きくなるように衝突回避ルートを設定する。
【0168】
管制装置151は、ステップS1507において、回避指令を行う。管制装置151は、自機10及び相手機90の少なくとも一方に対して、衝突回避ルートを含む回避指令を発信する。これにより、管制装置151は、自機10及び相手機90の少なくとも一方に、衝突回避ルートによる衝突回避飛行を行わせることが可能である。なお、管制装置151は、自機10及び相手機90のうち衝突回避ルートを設定しなかった方に対して、衝突回避ルートを設定しなかったことを示す情報を発信してもよい。
【0169】
管理処理についてまとめて説明する。管制センタ155では、自機10と相手機90とについて衝突リスクの判断が行われる。衝突リスクが生じた場合、管制センタ155では、衝突回避の優先順位が高い方の機体について、進路を変更させるための演算が行われる。管制センタ155では、衝突回避についての余裕代が算出され、この余裕代に応じて、優先順位が低い方の機体について、進路変更の必要性があるか否かの判断が行われる。優先順位が低い方の機体についても進路変更の必要性がある場合、管制センタ155では、優先順位が低い方の機体についても、進路を変更させるための演算が行われる。優先順位が低い方の機体についての進路変更の必要性がある場合としては、優先順位が高い方の機体が進路変更しただけでは十分に安全を確保できないことが懸念される場合がある。
【0170】
本実施形態によれば、自機10と相手機90との衝突を回避することについて、自機10は、自機10と相手機90との優先関係を管制センタ155との無線通信により取得可能である。このため、上記第1実施形態と同様に、自機10及び相手機90という2つの飛行体の衝突を回避する場合に、2つの飛行体のそれぞれについて安全性を高めることができる。
【0171】
本実施形態によれば、自機10は、衝突回避ルートを管制センタ155との無線通信により取得可能である。このため、飛行制御装置40は、自機10の飛行ルートを管制センタ155からの衝突回避ルートに変更することで、自機10と相手機90との衝突を回避できる。
【0172】
<他の実施形態>
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品、要素の組み合わせに限定されず、種々変形して実施することが可能である。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品、要素が省略されたものを包含する。開示は、一つの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、又は組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0173】
上記第6実施形態において、衝突を予測する処理、回避優先度を設定する処理、優先関係を設定する処理、及び衝突回避ルートを設定する処理の少なくとも1つは、自機10及び管制センタ155の両方で行われてもよい。例えば、衝突回避ルートを設定する処理が飛行制御装置40及び管制装置151の両方で行われる構成とする。この構成では、飛行制御装置40が設定した衝突回避ルートと、管制装置151が設定した衝突回避ルートとが異なる場合、飛行制御装置40は、これら2つの衝突回避ルーツのうち一方を選択して飛行ルートとする。例えば、飛行制御装置40が設定した衝突回避ルートの方が設定精度が高い場合には、飛行制御装置40が設定した衝突回避ルートが飛行ルートとして選択されることが好ましい。
【0174】
上記各実施形態において、自機10及び相手機90の少なくとも一方については、飛行ルートがあらかじめ設定されていなくてもよい。すなわち、自機10及び相手機90の少なくとも一方は、例えばパイロットにより操縦されることなどにより予定の進路が決まっていなくてもよい。この構成では、自機10と相手機90との衝突が予測された場合に、自機10及び相手機90のうち優先関係に応じて衝突回避飛行を行う飛行体は、予定の進路を変更するのではなく、パイロットの操縦等に従って衝突を回避するための進路を通ることになる。
【0175】
上記各実施形態において、飛行制御装置40が搭載される自機10等の飛行体は、垂直離着陸機であれば、電動式でなくてもよい。垂直離着陸機には、飛行するための駆動源としてエンジン等の内燃機関が搭載されていてもよい。また、飛行体は、電動式であれば、垂直離着陸機でなくてもよい。例えば、飛行体は、電動航空機として、滑走を伴う離着陸が可能な飛行体でもよい。さらに、飛行体は、回転翼機又は固定翼機でもよい。飛行体は、人が乗らない無人飛行体でもよい。
【0176】
上記各実施形態において、飛行制御装置40は、少なくとも1つのコンピュータを含む制御システムによって提供される。制御システムは、ハードウェアである少なくとも1つのプロセッサを含む。このプロセッサをハードウェアプロセッサと称すると、ハードウェアプロセッサは、下記(i)、(ii)、又は(iii)により提供することができる。
【0177】
(i)ハードウェアプロセッサは、ハードウェア論理回路である場合がある。この場合、コンピュータは、プログラムされた多数の論理ユニット(ゲート回路)を含むデジタル回路によって提供される。デジタル回路は、プログラム及びデータの少なくとも一方を格納したメモリを備える場合がある。コンピュータは、アナログ回路によって提供される場合がある。コンピュータは、デジタル回路とアナログ回路との組み合わせによって提供される場合がある。
【0178】
(ii)ハードウェアプロセッサは、少なくとも1つのメモリに格納されたプログラムを実行する少なくとも1つのプロセッサコアである場合がある。この場合、コンピュータは、少なくとも1つのメモリと、少なくとも1つのプロセッサコアとによって提供される。プロセッサコアは、例えばCPUと称される。メモリは、記憶媒体とも称される。メモリは、プロセッサによって読み取り可能な「プログラム及びデータの少なくとも一方」を非一時的に格納する非遷移的かつ実体的な記憶媒体である。
【0179】
(iii)ハードウェアプロセッサは、上記(i)と上記(ii)との組み合わせである場合がある。(i)と(ii)とは、異なるチップの上、又は共通のチップの上に配置される。
【0180】
すなわち、飛行制御装置40が提供する手段及び機能の少なくとも一方は、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、又はそれらの組み合わせにより提供することができる。
【符号の説明】
【0181】
10…飛行体としての自機、20…ロータ、33…受信部としての受信装置、34…発信部としての発信装置、40…飛行制御装置、43…優先関係設定部、50…駆動装置としてのEPU、90…飛行体としての相手機、155…管理施設としての管制センタ、S201,S203,S301,S303…自機取得部、S202,S204,S302,S304,S402,S501…優先度設定部、S202,S204,S302,S304…自機設定部、S402,S501…相手機設定部、S107,S402,S501…受信実行部、S401…発信実行部、S402,S501…相手機取得部、S403,S502…優先関係設定部、S1203,S1303…情報出力部、S1401…優先関係取得部及びルート取得部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20