(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】容器保管設備
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20240611BHJP
B65G 1/00 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H01L21/68 T
B65G1/00 521D
(21)【出願番号】P 2021183243
(22)【出願日】2021-11-10
【審査請求日】2023-12-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】福島 秀基
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-140379(JP,A)
【文献】特開2014-241377(JP,A)
【文献】特開2017-186161(JP,A)
【文献】特開2013-140893(JP,A)
【文献】特開2015-009913(JP,A)
【文献】特開2015-012042(JP,A)
【文献】国際公開第2015/114981(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
H01L 21/677
B65G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれに容器が載置される容器載置部を複数備えた容器保管棚と、前記容器載置部に載置された前記容器のそれぞれに対して不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置と、を備えた容器保管設備であって、
前記容器保管棚の周辺に分散配置された複数の酸素濃度センサからなるセンサ群と、
前記容器保管棚の必要箇所に対して送風できるように設置された拡散用ファンと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記容器保管棚の全域を複数の監視エリアに区分し、前記センサ群を構成する複数の前記酸素濃度センサのそれぞれの検出値に基づいて、前記複数の監視エリアのそれぞれの酸素濃度を推定し、推定した前記酸素濃度が規定の判定しきい値以下である前記監視エリアである酸素濃度低下エリアがある場合には、当該酸素濃度低下エリアに対して送風するように前記拡散用ファンを動作させる、容器保管設備。
【請求項2】
水平方向に沿う特定の方向を第1方向とし、上下方向に沿う上下方向視で前記第1方向に直交する方向を第2方向とし、前記上下方向に沿う方向を第3方向として、
前記センサ群は、前記第1方向、前記第2方向、及び、前記第3方向のそれぞれについて2個以上の前記酸素濃度センサが間隔を空けて分散するように配置され、
前記制御装置は、前記センサ群を構成する全ての前記酸素濃度センサの検出値に基づいて、空間補
間により前記複数の監視エリアのそれぞれの酸素濃度の最低値を推定し、前記最低値が前記判定しきい値以下である前記監視エリアを、前記酸素濃度低下エリアと判定する、請求項1に記載の容器保管設備。
【請求項3】
前記拡散用ファンは、前記制御装置からの指令に応じて送風方向を変更できるように構成されている、請求項1又は2に記載の容器保管設備。
【請求項4】
表示装置を更に備え、
前記制御装置は、前記複数の監視エリアのそれぞれについて推定した酸素濃度を、前記容器保管棚の位置に関連付けた酸素濃度マップとして前記表示装置に表示する、請求項1から3のいずれか一項に記載の容器保管設備。
【請求項5】
前記容器保管棚は、当該容器保管棚の周囲を囲む周壁部を備えた保管庫の内部に設置され、
前記周壁部の一部に開口が設けられ、
前記拡散用ファンは、前記保管庫の内部における前記開口に隣接するエリアに、前記開口の内側から外側に向かう方向に対して交差する方向の気流を生成する、請求項1から4のいずれか一項に記載の容器保管設備。
【請求項6】
前記容器保管棚は、当該容器保管棚の周囲を囲む周壁部を備えた保管庫の内部に設置され、
前記保管庫の内部から排気路に向かう気流を生成する排気ファンを更に備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の容器保管設備。
【請求項7】
前記制御装置は、前記複数の監視エリアの全てにおける前記酸素濃度が前記判定しきい値以上に設定された減速しきい値以上である場合には、前記排気ファンにより生成する気流を減速させる減速制御を実行し、又は、前記排気ファンにより生成する気流を減速させる操作を作業者に促す減速促進制御を実行する、請求項6に記載の容器保管設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれに容器が載置される容器載置部を複数備えた容器保管棚と、容器載置部に載置された容器のそれぞれに対して不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置と、を備えた容器保管設備に関する。
【背景技術】
【0002】
このような容器保管設備の一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、この背景技術の説明では、特許文献1における符号及び名称を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1に記載のパージ装置は、クリーンルーム内に設置されるストッカ(2)に備えられる。ストッカ(2)の内部スペース(6)は、作業エリア(12)と、非作業エリア(14)とに分割される。作業エリア(12)と非作業エリア(14)との境界には、非作業エリア(14)から作業エリア(12)へのパージガスの侵入を制限するパーティション(30)が置かれる。パージ装置は、作業者が内部スペース(6)に立ち入る際には、作業エリア(12)でのパージを停止する。作業エリア(12)での酸素濃度を監視し、酸素濃度センサ(54)から取得した、作業エリア(12)内の酸素濃度の検出結果が、所定値以下の場合、非作業エリア(14)でもパージガスの供給を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/045582号(〔0017〕段落、〔0018〕段落、〔0021〕段落、〔0030〕段落)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は、作業者が内部スペースに立ち入る際に、作業エリアのパージを停止して作業者の安全を確保している。更に、作業エリアの酸素濃度が所定値以下になった場合には、非作業エリアのパージを停止することで、作業エリアの酸素濃度の回復を図っている。しかしながら、パージガスの供給を止めて酸素濃度が回復するのを待つという特許文献1に記載の技術では、酸素濃度が所定値以下に低下した場合に、迅速に酸素濃度を回復することができず、例えば酸素濃度の回復が遅い場合には作業者は作業を中断しなければならないこともある。このため、特許文献1に記載の技術は、作業者の作業に支障が生じる可能性がある。
【0006】
そこで、酸素濃度の低下を回避して、作業者の作業に支障が生じることを回避できる容器保管設備の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記に鑑みた、容器保管設備の特徴構成は、
それぞれに容器が載置される容器載置部を複数備えた容器保管棚と、前記容器載置部に載置された前記容器のそれぞれに対して不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置と、を備えた容器保管設備であって、
前記容器保管棚の周辺に分散配置された複数の酸素濃度センサからなるセンサ群と、
前記容器保管棚の必要箇所に対して送風できるように設置された拡散用ファンと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記容器保管棚の全域を複数の監視エリアに区分し、前記センサ群を構成する複数の前記酸素濃度センサのそれぞれの検出値に基づいて、前記複数の監視エリアのそれぞれの酸素濃度を推定し、推定した前記酸素濃度が規定の判定しきい値以下である前記監視エリアである酸素濃度低下エリアがある場合には、当該酸素濃度低下エリアに対して送風するように前記拡散用ファンを動作させる点にある。
【0008】
それぞれに容器が載置される容器載置部を複数備えた容器保管棚と、容器載置部に載置された容器のそれぞれに対して不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置と、を備えた容器保管設備において、容器からの不活性ガスの漏れの程度に応じて、局所的に酸素濃度が低下する場合がある。この場合、酸素濃度が低下したエリアには作業者が入ることができない。本構成によれば、容器保管棚の複数の監視エリアのそれぞれについて酸素濃度を監視し、容器保管設備内において酸素濃度低下エリアがある場合には、当該酸素濃度低下エリアに対して送風することにより、酸素濃度低下エリアの不活性ガスを拡散することができる。これにより、容器保管設備内における局所的な酸素濃度の低下を回避して、作業者の作業に支障が生じることを回避できる。
【0009】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】拡散用ファンにより生成される気流の流れを示す図
【
図6】拡散用ファンの動作の制御に係る機能部を示すブロック図
【
図9】酸素濃度と、拡散用ファンの動作及び排気ファンの動作との関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る容器保管設備の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、容器保管設備が、クリーンルーム内に設置された場合を例として説明する。
【0012】
1.容器保管設備の実施形態
容器保管設備1は、
図1に示すように、容器保管棚10と不活性ガス供給装置45とを備えている。容器保管棚10は、容器4を保管する棚であり、それぞれに容器4が載置される容器載置部11を複数備えている。そして、容器載置部11に載置された容器4のそれぞれに対して不活性ガス供給装置45により不活性ガスが供給される。
【0013】
ここで、
図1に示されるように、水平方向に沿う、特定の方向(本実施形態では、水平方向に沿う容器保管棚10の長手方向)を第1方向Xとし、上下方向に沿う上下方向視で第1方向Xに直交する方向を第2方向Yとし、上下方向に沿う方向を第3方向Zとする。
【0014】
本実施形態では、容器4は、内部空間を気密状態とするように密閉可能な容器である。容器4の内部には、例えば、半導体基板やレチクル基板等が収容される。本実施形態では、容器4は、本体部と、当該本体部に対して着脱自在な蓋部とを備え、本体部に対して蓋部が取り付けられた状態において、容器4の内部空間が気密状態となるように構成されている。
【0015】
本実施形態では、
図1に示すように、容器保管設備1は、当該容器保管設備1の内部と当該容器保管設備1の外部との間で容器4を移動させる移動装置84を備えている。なお、容器保管設備1の内部とは、保管空間90の内部を意味し、容器保管設備1の外部とは、保管空間90の外部を意味する。本実施形態では、移動装置84はコンベヤにより構成されている。
【0016】
容器保管設備1は、容器4を保管する保管庫に相当する。容器保管棚10は、当該容器保管棚10の周囲を囲む周壁部14を備えた容器保管設備1の内部に設置される。移動装置84は、周壁部14を貫通するように配設されている。すなわち、周壁部14の一部に、開口70が設けられ、この開口70に移動装置84が設けられる。移動装置84は、容器保管設備1の外部に位置する外部移載箇所と、容器保管設備1の内部に位置する内部移載箇所との間で容器4を移動させる。そして、外部移載箇所に移動された容器4は、図示しない外部搬送装置に受け取られる。また、移動装置84は、外部搬送装置から容器4の受け取りも可能である。
【0017】
本実施形態では、容器保管設備1は、清浄空気が天井側から床側に向けて下向きに通流するダウンフロー式のクリーンルーム内に設置されている。クリーンルームの床部88は、下部床82と、下部床82よりも上側に配設された上部床81とにより構成される。上部床81と天井部87との間には、作業空間92が形成される。上部床81と下部床82との間には、床下空間93が形成されている。上部床81は、通気可能な構造となっている。本例では、上部床81は、グレーティング床であり、第3方向Z(厚さ方向)に貫通する通気孔が複数形成されている。下部床82は、通気孔を有さない床であり、本例では、無孔状のコンクリートによって構成されている。
【0018】
天井部87から床部88に流動した空気は、上部床81を通った後、床下空間93を流動し、作業空間92の外部に設けられた接続流路(図示せず)を介して天井部87に供給される。したがって、床下空間93は「排気路」に相当する。天井部87に供給された空気は、図示しないフィルタを介して清浄化され、天井部87に設けられた吐出口(図示せず)から下側に向けて吹き出される。このようにして、クリーンルーム内に清浄化された空気が循環される。
【0019】
クリーンルーム内の作業者は、作業空間92において、例えば上部床81に立った状態で作業(例えばメンテナンス作業等)を行う。容器保管設備1には、作業者が容器保管設備1に対する容器4の入出庫作業を行う際に利用される載置装置(図示せず)が備えられている。また、周壁部14における載置装置の配設箇所には、作業者が容器4を入出庫するための作業者用開口部(「開口70」の一例)(
図3参照)と、この作業者用開口部を開閉する開閉部材(例えばシャッター等)とが設けられる。本実施形態では、容器保管設備1には、複数の移動装置84と載置装置とが備えられ、これらの移動装置84及び載置装置により、容器保管設備1内への容器4の入庫及び出庫が行われる。
【0020】
容器保管棚10は、
図1に示すように、複数の容器載置部11が規則的に配置される。本実施形態では、容器保管設備1は、当該容器保管設備1の内部で容器4を搬送する内部搬送装置3を備えている。容器保管棚10に備えられる複数の容器載置部11は、第1方向Xに沿って配列されている。また、
図1に示すように、複数の容器載置部11は、第1方向Xに加えて第3方向Zにも沿って配列されている。本実施形態では、
図1に示すように、底部7が支柱9を介して下部床82によって支持された状態で、容器保管棚10が下部床82に対して固定されている。
【0021】
本実施形態では、内部搬送装置3は、スタッカークレーンであり、床部88に配設されたレール83に沿って走行移動する走行体3aと、走行体3aに立設されたマスト3bと、マスト3bに案内される状態で昇降移動する昇降体3cとを備えている。レール83は、内部搬送装置3の走行経路となり、下部床82に配設されている。また、本実施形態では、レール83は、第1方向Xに沿って延びるように形成されている。昇降体3cには、昇降体3cと容器載置部11との間で容器4を移載するための移載装置3dが備えられている。
【0022】
容器保管棚10は、複数の容器載置部11を備え、容器載置部11は、容器4を載置支持する載置支持部15を備えている。具体的には、容器保管棚10は、内部搬送装置3の走行経路を挟んで第2方向Yに対向するように配置される第1収納棚10aと第2収納棚10bとを備えている。本実施形態では、
図3及び
図4に示すように、2つの第1収納棚10aが第1方向Xに並べて設けられていると共に、2つの第2収納棚10bが第1方向Xに並べて設けられている。
【0023】
図1に示すように、容器保管棚10の複数の容器載置部11は、保管空間90内に配置されている。本実施形態では、保管空間90は、周壁部14により区画形成された、直方体状の空間として形成されている。また本実施形態では、周壁部14は、容器保管設備1を第3方向Zに見て、容器保管棚10の周囲を囲むように構成されている。周壁部14には、上述した、移動装置84を配設するための開口70が形成されていると共に、載置装置の配設箇所に作業者用開口部(開口70)が形成されている。
【0024】
本実施形態では、容器保管設備1は、保管空間90の上部から下側に向けて送風する送風装置85を備えている。送風装置85は、保管空間90の外部の空気を吸引して保管空間90の内部に供給する。送風装置85は、周壁部14の上端部に形成される矩形状の開口部を塞ぐように設けられている。送風装置85の送風作用により、保管空間90の内部には下向きの気体の流れが形成される。
【0025】
不活性ガス供給装置45は、容器載置部11に載置されている容器4のそれぞれに不活性ガスを供給する。ここで、不活性ガスとは、容器4に収容されている収容物に対する反応性が低い(問題となる化学反応を実質的に生じさせない)気体であり、本実施形態では、不活性ガスとして窒素ガスを用いている。なお、不活性ガスは、窒素ガスに代えて、二酸化炭素であっても良いし、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンなどのような希ガスでも良い。
【0026】
本実施形態では、不活性ガス供給装置45は、複数の容器載置部11に載置される容器4の内部に、図示しない供給部を介して不活性ガスを供給するように構成されている。不活性ガス供給装置45は、不活性ガスの供給源に接続された第1配管45aと、第1配管45aと給気部とを接続する第2配管45bとを備えている。第1配管45aは、第3方向Zに延びるように配設されており、第2配管45bは、第1配管45aから分岐して第2方向Yに延びるように配設されている。
【0027】
不活性ガス供給装置45は、第1配管45a及び第2配管45bにおける不活性ガスの流量を調節可能な流量調節装置45cも備えている。流量調節装置45cにより、第1配管45a及び第2配管45bにおける不活性ガスの流量を調節することで、下流側への不活性ガスの供給流量を調節することができる。
図1では、流量調節装置45cは第1配管45aに設けられているが、流量調節装置45cは第2配管45bに設けられても良い。不活性ガス供給装置45からの不活性ガスは、容器4のそれぞれに供給され、容器4に供給された不活性ガスは保管空間90の内部に排出される。この保管空間90の内部に排出される不活性ガスを含む保管空間90の内部の空気は、排気ファン41によって、保管空間90の外部に排出される。排気ファン41は、保管空間90より下側における、容器載置部11が配置されない下部空間に設けられる。これにより、容器保管設備1の内部から排気路に向かう気流が生成される。
【0028】
次に、容器保管設備1が備えるセンサ群30と拡散用ファン40について説明する。センサ群30は、容器保管棚10の周辺に分散配置される複数の酸素濃度センサ31からなる。酸素濃度センサ31は、酸素の濃度を検出する。酸素濃度センサ31は、ジルコニア式、磁気式、半導体レーザ分光式、電極式等、これらに限定されず、どのような方式のものであっても良い。
【0029】
図2には、第1方向Xに沿って容器保管設備1の保管空間90を見た場合の酸素濃度センサ31の配置図が示され、
図3には、第2方向Yに沿って容器保管設備1の保管空間90を見た場合の酸素濃度センサ31の配置図が示され、
図4には、第3方向Zに沿って容器保管設備1の保管空間90を見た場合の酸素濃度センサ31の配置図が示される。
図2、
図3、
図4では、理解を容易にするために、上述した容器保管設備1を構成する機能部の図示が一部省略されている。
【0030】
センサ群30は、第1方向X、第2方向Y、及び、第3方向Zのそれぞれについて2個以上の酸素濃度センサ31が間隔を空けて分散するように配置されて構成されている。本例では、
図2及び
図4に示されるように、酸素濃度センサ31は、互いに対向する一対の容器保管棚10を構成する第1収納棚10a側と第2収納棚10b側とのそれぞれに設けられる。したがって、酸素濃度センサ31は、第2方向Yに沿って、互いに間隔を空けて設けられる。また、本例では、
図3及び
図4に示されるように、酸素濃度センサ31は、第1方向Xに沿って互いに対向する一対の周壁部14の間において、第1方向Xに沿って4つずつ設けられる。したがって、本実施形態では、酸素濃度センサ31は、第1方向Xに沿って、互いに間隔を空けて設けられる。更に、本例では、
図2及び
図3に示されるように、酸素濃度センサ31は、第3方向Zに沿って互いに対向する送風装置85と上部床81との間において、第3方向Zに沿って3つずつ設けられる。したがって、本実施形態では、酸素濃度センサ31は、第3方向Zに沿って、互いに間隔を空けて設けられる。
【0031】
更に、本実施形態では、酸素濃度センサ31は、容器保管棚10の内部における、下部床82に相当する高さと上部床81に相当する高さとの間、すなわち床下空間93に対応する容器保管棚10の内部空間にも、第1方向X及び第2方向Yのそれぞれに沿って、互いに間隔を空けて設けられる。本例では、床下空間93に対応する容器保管棚10の内部空間に設けられる酸素濃度センサ31は、第1方向X、及び、第2方向Yについては、保管空間90に設けられる酸素濃度センサ31と同様の間隔で配置され、第3方向Zに1段だけ配置されている。複数の酸素濃度センサ31のそれぞれの検出結果は、後述する制御装置50に伝達される。
【0032】
図2及び
図3には、拡散用ファン40も示される。拡散用ファン40は、容器保管棚10の必要箇所に対して送風できるように配置されている。容器保管棚10の必要箇所とは、拡散用ファン40で送風することによって、不活性ガスを拡散して酸素濃度の偏りを少なくすることが可能な個所である。具体的には、必要箇所とは、送風することによって、互いに酸素濃度が異なる2つの領域のうち、酸素濃度が低い領域及び酸素濃度が高い領域のうちの一方から他方への空気の流れを形成することが可能な箇所である。或いは、必要箇所とは、容器保管設備1の開口70の内側から外側へ向かう不活性ガスの流れを妨げることが可能な箇所である。このような箇所への送風のため、
図3に示す例では、複数の開口70のそれぞれに対応して1つ以上の拡散用ファン40が配置されている。具体的には、拡散用ファン40は、周壁部14の内側であって、複数の開口70のそれぞれに対して斜め上方に配置されており、そこから、少なくとも下方又は斜め下方へ向けて送風できるように構成されている。また、
図3に示す例では、開口70から離れた場所にも、拡散用ファン40が配置されている。複数の拡散用ファン40は、容器保管設備1の内部における酸素濃度の偏りを少なくできるように、互いに離間して分散配置されていると好適である。
【0033】
本実施形態では、
図2及び
図3に示されるように、開口70に対応して配置された拡散用ファン40は、容器保管設備1の内部における開口70に隣接するエリアに、開口70の内側から外側に向かう方向に対して交差する方向の気流を生成する。容器保管設備1の内部における開口70とは、上述したように、周壁部14に形成されている開口70である。開口70に隣接するエリアとは、開口70の近傍であって、拡散用ファン40の動作に応じて生じた空気の流れが到達する範囲内である。また、開口70の内側から外側に向かう方向とは、開口70を介して、容器保管設備1の保管空間90から作業空間92に向かう方向である。このため、開口70の内側から外側に向かう方向に対して交差する方向とは、開口70を介して、容器保管設備1の保管空間90から作業空間92に向かう方向と平行でない方向が相当する。具体的には、例えば周壁部14の内面(内壁面)に沿った方向や、容器保管設備1の保管空間90から作業空間92に向かう方向と平行でなく、且つ、容器保管設備1の保管空間90の中央側から周壁部14の内面側に向かう方向や、容器保管設備1の保管空間90から作業空間92に向かう方向と平行でなく、且つ、周壁部14の内面側から容器保管設備1の保管空間90の中央側に向かう方向が相当する。したがって、拡散用ファン40は、周壁部14に形成されている開口70の近傍であって、拡散用ファン40の動作に応じて生じた空気の流れが到達する範囲内に、開口70を介して、容器保管設備1の保管空間90から作業空間92に向かう方向と交差する方向の気流を生成する。
図5では、このような拡散用ファン40により生成された気流が、破線で示される。
【0034】
このような拡散用ファン40は、後述する制御装置50から指令に応じて動作する。また、拡散用ファン40は、制御装置50からの指令に応じて送風方向を変更できるように構成することも可能である。送風方向を変更できるとは、エアコンや扇風機のような所謂首振りが可能であることをいう。これにより、上述した開口70の内側から外側に向かう方向に対して交差する方向の気流を生成し易くできる。なお、拡散用ファン40は、送風方向が固定されていても良い。送風方向を変更可能な拡散用ファン40を用いる場合には、1つの拡散用ファン40によって送風できるエリアを広くすることができるため、容器保管設備1に設置する拡散用ファン40の数を少なくすることができる。
【0035】
ここで、本実施形態の容器保管設備1は制御装置50を備え、この制御装置50が、センサ群30を構成する酸素濃度センサ31の検出結果に応じて、拡散用ファン40の動作を制御するように構成されている。
図6は、制御装置50による拡散用ファン40の動作の制御に係る機能部を示したブロック図である。
【0036】
制御装置50は、監視エリア設定部51、酸素濃度推定部52、動作指令部53、マップ生成部54、排気ファン指令部55を備え、これらの機能部は酸素濃度の拡散に係る処理を行うために、CPUを中核部材としてハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
【0037】
監視エリア設定部51は、容器保管棚10の全域を複数に区分した監視エリアAを設定する。本実施形態では、容器保管棚10の全域とは、容器保管設備1の保管空間90の全域である。「複数に区分した」とは、規定のサイズで複数に区分することを意味する。
図7に示す例では、第1方向X、第2方向Y、及び第3方向Zのそれぞれについて複数の監視エリアAが並ぶように区分されている。監視エリア設定部51は、容器保管設備1の保管空間90を、規定のサイズで複数に区分する。区分したエリアのそれぞれは、監視エリアAとして扱われる。本例では、
図7に示されるように、監視エリア設定部51は、容器保管設備1の保管空間90を、第1方向Xに沿って4つに区分し、第2方向Yに沿って2つに区分し、第3方向Zに沿って3つに区分している。したがって、
図7の例では、24個の監視エリアAが設定されている。また、
図7に示されるように、複数の監視エリアAは、それぞれの監視エリアA内に、1つの酸素濃度センサ31が含まれるように設定されている。但し、これには限定されず、例えば、酸素濃度センサ31が含まれる監視エリアAと含まれない監視エリアAとが存在しても良いし、1つの監視エリアAに複数の酸素濃度センサ31が含まれるようにしても良い。
【0038】
酸素濃度推定部52は、センサ群30を構成する複数の酸素濃度センサ31のそれぞれの検出値に基づいて、複数の監視エリアAのそれぞれの酸素濃度を推定する。酸素濃度推定部52には、酸素濃度センサ31の検出値が伝達される。本例では、酸素濃度センサ31の検出値は、リアルタイムで、或いは、一定の時間間隔で、酸素濃度推定部52に伝達される。酸素濃度推定部52は、伝達された酸素濃度センサ31の検出値に基づき、複数の監視エリアAにおける酸素濃度を推定する。本例では、複数の監視エリアAのそれぞれに、1つの酸素濃度センサ31が含まれるように設定されているため、監視エリアAのそれぞれの酸素濃度の推定値として、酸素濃度センサ31の検出値をそのまま用いることができる。
【0039】
動作指令部53は、推定した酸素濃度が規定の判定しきい値以下である監視エリアAである酸素濃度低下エリアA1(
図8参照)がある場合には、当該酸素濃度低下エリアA1に対して送風するように拡散用ファン40を動作させる。推定した酸素濃度とは、酸素濃度推定部52により推定された監視エリアA毎の酸素濃度である。判定しきい値は、容器保管棚10の設置環境や使用状況等に応じて適宜設定される。例えば、判定しきい値を、容器保管設備1における作業者が、支障を生じることなく作業を行うことができる酸素濃度の下限値に設定すると良い。動作指令部53は、酸素濃度推定部52により推定された監視エリアA毎の酸素濃度が判定しきい値以下であるか否かをリアルタイムで、或いは、一定の時間間隔で判定する。そして、動作指令部53は、この判定において、酸素濃度が判定しきい値以下である監視エリアAがあった場合には、当該監視エリアAを酸素濃度低下エリアA1とし、当該酸素濃度低下エリアA1に対して送風するように拡散用ファン40を動作させる。酸素濃度低下エリアA1に対して送風するとは、直接酸素濃度低下エリアA1に送風することに限定されず、酸素濃度低下エリアA1の周囲の監視エリアAに送風することによって、酸素濃度低下エリアA1に気流を生じさせることも含まれる。いずれにしても、動作指令部53により拡散用ファン40が動作された場合には、酸素濃度低下エリアA1における不活性ガスを拡散させるような気流を生じさせることができる。
【0040】
ここで、動作指令部53は、酸素濃度低下エリアA1に対して送風するように、複数の拡散用ファン40の一部を動作させる。その際、動作指令部53は、全ての拡散用ファン40を個別に動作させても良いし、全ての拡散用ファン40を複数のグループに分け、グループ毎に動作させるようにしても良い。
【0041】
また、酸素濃度推定部52は、センサ群30を構成する全ての酸素濃度センサ31の検出値に基づいて、空間補間により複数の監視エリアAのそれぞれの酸素濃度の最低値を推定するように構成しても良い。すなわち、例えば、監視エリアA毎に、酸素濃度を推定するのではなく、互いに隣接する複数の酸素濃度センサ31の検出値を用いて、各所における酸素濃度の勾配(濃度勾配)を推定し、その推定値に基づいて複数の監視エリアAのそれぞれの中における酸素濃度分布を推定する。そして、酸素濃度推定部52は、このように推定した各監視エリアAの酸素濃度分布のうち、最も低い酸素濃度の値を、当該監視エリアAの酸素濃度の最低値として推定する。このような空間補間を用いた酸素濃度の推定方法は、上記のように、複数の監視エリアAのそれぞれに1つの酸素濃度センサ31が含まれる構成に限らず、酸素濃度センサ31が含まれる監視エリアAと含まれない監視エリアAとが存在する構成や、1つの監視エリアAに複数の酸素濃度センサ31が含まれる構成においても、適切に酸素濃度を推定することができる。
【0042】
このような空間補間を用いた酸素濃度の推定方法を用いる場合には、動作指令部53は、最低値が判定しきい値以下である監視エリアAを、酸素濃度低下エリアA1として判定すると良く、このような酸素濃度低下エリアA1に対して送風するように拡散用ファン40を動作させると良い。
【0043】
また、容器保管設備1が、表示装置60を備えている場合には、マップ生成部54が、複数の監視エリアAのそれぞれについて推定した酸素濃度を、容器保管棚10の位置に関連付けた酸素濃度マップとして表示装置60に表示すると良い。複数の監視エリアAのそれぞれについて推定した酸素濃度とは、酸素濃度推定部52が推定した酸素濃度である。したがって、マップ生成部54は、酸素濃度推定部52が酸素濃度を推定した推定結果を取得すると良い。容器保管棚10の位置に関連付けた酸素濃度マップとは、仮想的に設定された監視エリアA及び実空間である保管空間90の双方の位置関係を互いに対応付けしたマップを作成し、監視エリアAに対応するマップ上の領域毎に、推定された酸素濃度を示す情報を付与したものである。マップ生成部54は、このような酸素濃度マップを生成し、表示装置60に表示すると良い。なお、表示装置60は、制御装置50のモニタを利用することが可能である。
【0044】
図8には、表示装置60に表示される酸素濃度マップの一例が示される。このよう酸素濃度マップを表示装置60の表示し、これを作業者が確認することで、容器保管設備1の保管空間90内における酸素濃度を、視覚的に把握し易くできる。なお、
図8の例では、酸素濃度の高低を示す区分けを4段階としているが、より細分化しても良い。また、図示は省略しているが、
図8に示される酸素濃度マップを確認した作業者が、容易に把握できるようにするために、酸素濃度マップに容器保管棚10を表す画像を重ねても好適である。なお、
図8には、上述した酸素濃度が規定の判定しきい値以下である監視エリアAが、酸素濃度低下エリアA1として示されている。
【0045】
また、制御装置50は、複数の監視エリアAの全てにおける酸素濃度が判定しきい値以上に設定された減速しきい値以上である場合には、排気ファン41により生成する気流を減速させる減速制御を実行するように構成すると好適である。減速しきい値は、減速しきい値以上の値で、容器保管棚10の設置環境や使用状況等に応じて適宜設定される。例えば、減速しきい値を、容器保管設備1における作業者が、支障を生じることなく作業を行うことができる酸素濃度であって、且つ、保管空間90の空気の流通を低減しても問題が生じない酸素濃度に設定すると良い。減速制御とは、排気ファン41の回転数を低減する制御である。例えば、減速制御として、酸素濃度が減速しきい値以上である場合に、時間の経過に応じて排気ファン41により生成する気流を減速させるように、フィードバック制御を行うと良い。このような減速制御には、排気ファン41の回転数を零とする制御、すなわち、排気ファン41を停止する停止制御も含まれる。制御装置50は、このような減速制御を実行することにより、排気ファン41の電力消費を低減することが可能となる。
【0046】
また、制御装置50は、複数の監視エリアAの全てにおける酸素濃度が判定しきい値以上に設定された減速しきい値以上である場合には、排気ファン41により生成する気流を減速させる操作を作業者に促す減速促進制御を実行しても良い。減速促進制御とは、作業者に対して、排気ファン41の回転数の低減を促すように報知する制御である。ここで、作業者に対する報知には、表示装置60に文章や図形等を表示することや、音声によるメッセージや通知音を出力すること等が含まれる。このような減速促進制御には、排気ファン41の回転数を零とすることを促す制御、すなわち、排気ファン41を停止することを促す停止促進制御も含まれる。制御装置50は、このような減速促進制御を実行することにより、排気ファン41の電力消費を低減することが可能となる。
【0047】
図9には、酸素濃度と、拡散用ファン40の動作及び排気ファン41の動作との関係が示される。
図9の最上段は、縦軸が所定の監視エリアAにおける酸素濃度とし、横軸を時間tとした、酸素濃度の時系列変化が示される。
図9の中段は、縦軸が拡散用ファン40の動作状態をし、横軸を時間tとしている。
図9の下段は、縦軸が排気ファン41の回転数であり、横軸を時間としている。
【0048】
t=0で、センサ群30による酸素濃度の測定が開始される。このとき、拡散用ファン40はOFF状態であり、排気ファン41は所定の回転数R0で駆動されている。t=1で酸素濃度が判定しきい値以下になっている。これにより、制御装置50が、酸素濃度が低下した監視エリアA(酸素濃度低下エリアA1)に対して送風するように拡散用ファン40を動作させる。
【0049】
t=2で酸素濃度が判定しきい値を超えているが、このときに拡散用ファン40を停止させると、直ちに酸素濃度が判定しきい値以下になる可能性がある。この場合、短期間に、拡散用ファン40の運転と停止とを繰り返すことになるが、このような短期間の拡散用ファン40の運転や停止の繰り返しは、電力消費及び拡散用ファン40の耐久性の観点から避けた方が良い。そこで、酸素濃度が判定しきい値よりも大きい停止しきい値より大きくなった場合に(t=3)、拡散用ファン40を停止させると良い。もちろん、t=2で酸素濃度が判定しきい値より大きくなった場合に、拡散用ファン40を停止させても良い。
【0050】
例えば、t=4で、酸素濃度が判定しきい値以上の減速しきい値以上になった場合に、排気ファン41の回転数をR0からR0よりも少ないR1に変更するように、上述した減速制御、又は減速促進制御を実行すると良い。その後、例えば、酸素濃度が、減速しきい値未満に設定された減速リセットしきい値以下になると(t=5)、排気ファン41の回転数をR0に増大させると良い。また例えば、t=4から予め設定された設定時間経過後であって、酸素濃度が減速しきい値未満であることを条件として排気ファン41の回転数をR0に増大させても良い。
【0051】
2.その他の実施形態
次に、容器保管設備1のその他の実施形態について説明する。
【0052】
(1)上記の実施形態では、容器保管設備1が、周壁部14により容器保管棚10の周囲が囲まれた構成、すなわち、保管空間90が周壁部14で密閉されている空間である場合を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、容器保管棚10は、
図10に示されるバッファ(STB)のような、周囲が開放された構造であっても良い。また、
図10に示されるバッファが、第1方向X、第2方向Y、第3方向Zに対して、複数段設けられていても良い。この場合においても、容器保管設備1は、容器保管棚10の周辺に分散配置される複数の酸素濃度センサ31からなるセンサ群30と、容器保管棚10の必要箇所に対して送風できるように設置された1つ以上の拡散用ファン40と、を備える 。図示の例では、センサ群30は、容器保管棚10を囲むように、第1方向X、第2方向Y、及び、第3方向Zのそれぞれについて2個以上の酸素濃度センサ31が間隔を空けて分散するように配置されている。また、複数(図示の例では2個)の拡散用ファン40が、容器載置部11の配列方向に分かれて配置されている。本例では、拡散用ファン40は、容器載置部11に対して上方から下方へ向けて送風するように設けられている。
【0053】
(2)上記の実施形態では、容器保管設備1が拡散用ファン40を複数備えている場合を例示した。しかし、容器保管設備1の実施形態は、そのような構成に限定されるものではない。容器保管設備1が備える拡散用ファン40は、1つであっても良い。
【0054】
(3)上記の実施形態では、表示装置60が制御装置50のモニタであるとして説明した。しかし、容器保管設備1の実施形態は、そのような構成に限定されるものではない。表示装置60は、作業者が所持する携帯端末のモニタであっても良いし、作業者がスマートグラス(眼鏡と一体化された表示装置)を装着している場合には、スマートグラスであっても良い。
【0055】
(4)上記実施形態では、制御装置50が、監視エリア設定部51、酸素濃度推定部52、動作指令部53、マップ生成部54、排気ファン指令部55を備えて構成されるとして説明した。しかし、容器保管設備1の実施形態は、そのような構成に限定されるものではない。制御装置50を構成する機能部は、例示であって、機能部の分け方は適宜変更可能である。また、制御装置50が他の機能部を有するように構成することも可能である。
【0056】
(5)上記実施形態では、容器保管棚10の全域が、第1方向X、第2方向Y、及び第3方向Zのそれぞれに複数の監視エリアAが並ぶように区分されている構成を例として説明したが、これには限定されない。例えば、容器保管棚10の全域が、第1方向X、第2方向Y、及び第3方向Zのいずれかの方向のみについて複数に区分されていても良い。或いは、容器保管棚10の全域が、第1方向X、第2方向Y、及び第3方向Zの中のいずれか2方向について複数に区分され、残りの1方向については区分されていない構成であっても良い。
【0057】
(6)上記実施形態では、容器保管設備1が、周壁部14の開口70に対応して配置された拡散用ファン40と、開口70から離れて配置された拡散用ファン40とを備える構成を例として説明したが、これには限定されない。例えば、容器保管設備1が、周壁部14の開口70に対応して配置された拡散用ファン40のみを備える構成としても良い。或いは、容器保管設備1が、開口70から離れて配置された拡散用ファン40のみを備える構成としても良い。
【0058】
(7)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0059】
3.上記実施形態の概要
以下、上記において説明した容器保管設備の概要について説明する。
【0060】
容器保管設備は、
それぞれに容器が載置される容器載置部を複数備えた容器保管棚と、前記容器載置部に載置された前記容器のそれぞれに対して不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置と、を備えた容器保管設備であって、
前記容器保管棚の周辺に分散配置された複数の酸素濃度センサからなるセンサ群と、
前記容器保管棚の必要箇所に対して送風できるように設置された拡散用ファンと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記容器保管棚の全域を複数の監視エリアに区分し、前記センサ群を構成する複数の前記酸素濃度センサのそれぞれの検出値に基づいて、前記複数の監視エリアのそれぞれの酸素濃度を推定し、推定した前記酸素濃度が規定の判定しきい値以下である前記監視エリアである酸素濃度低下エリアがある場合には、当該酸素濃度低下エリアに対して送風するように前記拡散用ファンを動作させる。
【0061】
それぞれに容器が載置される容器載置部を複数備えた容器保管棚と、容器載置部に載置された容器のそれぞれに対して不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置と、を備えた容器保管設備において、容器からの不活性ガスの漏れの程度に応じて、局所的に酸素濃度が低下する場合がある。この場合、酸素濃度が低下したエリアには作業者が入ることができない。本構成によれば、容器保管棚の複数の監視エリアのそれぞれについて酸素濃度を監視し、容器保管設備内において酸素濃度低下エリアがある場合には、当該酸素濃度低下エリアに対して送風することにより、酸素濃度低下エリアの不活性ガスを拡散することができる。これにより、容器保管設備内における局所的な酸素濃度の低下を回避して、作業者の作業に支障が生じることを回避できる。
【0062】
ここで、
水平方向に沿う特定の方向を第1方向とし、上下方向に沿う上下方向視で前記第1方向に直交する方向を第2方向とし、前記上下方向に沿う方向を第3方向として、
前記センサ群は、前記第1方向、前記第2方向、及び、前記第3方向のそれぞれについて2個以上の前記酸素濃度センサが間隔を空けて分散するように配置され、
前記制御装置は、前記センサ群を構成する全ての前記酸素濃度センサの検出値に基づいて、空間補間により前記複数の監視エリアのそれぞれの酸素濃度の最低値を推定し、前記最低値が前記判定しきい値以下である前記監視エリアを、前記酸素濃度低下エリアと判定すると好適である。
【0063】
本構成によれば、容器保管棚の周辺に分散配置された酸素濃度センサの数が比較的少ない場合であっても、高精度に酸素濃度低下エリアの有無を判定することができる。
【0064】
また、
前記拡散用ファンは、前記制御装置からの指令に応じて送風方向を変更できるように構成されていると好適である。
【0065】
本構成によれば、容器保管設備が備える拡散用ファンの数が比較的少ない場合であっても、複数の監視エリアに対して送風することができる。また、本構成によれば、容器保管設備が備える拡散用ファンの数を減じることができるので、多数の拡散用ファンを設置する場合に比べて低コスト化を図り易い。
【0066】
また、
表示装置を更に備え、
前記制御装置は、前記複数の監視エリアのそれぞれについて推定した酸素濃度を、前記容器保管棚の位置に関連付けた酸素濃度マップとして前記表示装置に表示すると好適である。
【0067】
本構成によれば、容器保管棚の全域を区分した複数の監視エリア毎に酸素濃度を推定し、その結果を酸素濃度マップとして表示装置に表示するので、容器保管棚の各所における酸素濃度を分かり易く作業者に伝えることができる。
【0068】
また、
前記容器保管棚は、当該容器保管棚の周囲を囲む周壁部を備えた保管庫の内部に設置され、
前記周壁部の一部に開口が設けられ、
前記拡散用ファンは、前記保管庫の内部における前記開口に隣接するエリアに、前記開口の内側から外側に向かう方向に対して交差する方向の気流を生成すると好適である。
【0069】
本構成によれば、周壁部に設けられた開口の内側において酸素濃度の低い空気を拡散させることができるため、周壁部に設けられた開口から酸素濃度が低い空気が保管庫の外部に出ることを抑制できる。
【0070】
また、
前記容器保管棚は、当該容器保管棚の周囲を囲む周壁部を備えた保管庫の内部に設置され、
前記保管庫の内部から排気路に向かう気流を生成する排気ファンを更に備えると好適である。
【0071】
本構成によれば、不活性ガス供給装置により不活性ガスが供給される容器保管棚が保管庫の内部に設置されている場合であっても、排気ファンを備えることにより、保管庫の内部から排気路に向けて不活性ガスを排出することができる。従って、保管庫の内部に不活性ガスが溜まり続けることを回避でき、保管庫の内部における不活性ガスの濃度を低く抑え易い。
【0072】
また、
前記制御装置は、前記複数の監視エリアの全てにおける前記酸素濃度が前記判定しきい値以上に設定された減速しきい値以上である場合には、前記排気ファンにより生成する気流を減速させる減速制御を実行し、又は、前記排気ファンにより生成する気流を減速させる操作を作業者に促す減速促進制御を実行すると好適である。
【0073】
本構成によれば、酸素濃度に問題がない状態では排気ファンにより生成する気流を減速させることができるため、排気ファンを駆動するためのエネルギ損失を少なく抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本開示に係る技術は、それぞれに容器が載置される容器載置部を複数備えた容器保管棚と、容器載置部に載置された容器のそれぞれに対して不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置と、を備えた容器保管設備に利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 :容器保管設備
4 :容器
10 :容器保管棚
11 :容器載置部
14 :周壁部
30 :センサ群
31 :酸素濃度センサ
40 :拡散用ファン
41 :排気ファン
45 :不活性ガス供給装置
50 :制御装置
60 :表示装置
70 :開口
93 :床下空間(排気路)
A :監視エリア
A1 :酸素濃度低下エリア
X :第1方向
Y :第2方向
Z :第3方向