(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】制御装置、制御システム、制御方法、制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
G08G1/00 A
(21)【出願番号】P 2021185010
(22)【出願日】2021-11-12
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】林 文城
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/077685(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト車両(Vh)においてセンサ系(3)により取得されたセンシングデータ(Dso)の、ロガーユニット(5)への収集処理を制御する制御装置であって、
前記ホスト車両の走行シーンがモデル化されたシーンモデル(Ms)
であって、前記ロガーユニットへの収集に向けてインタラクションの想定が必要なオブジェクトの相対位置に応じた認識率分布を収集必要シーン毎に規定するシーンモデルを記憶する記憶媒体(104)と、
前記センシングデータに基づき認識された前記走行シーンと、記憶された前記シーンモデルとの、マッチング度を監視することにより、前記ロガーユニットへの収集に必要な必要範囲外に前記マッチング度が低下した前記走行シーンである、除外シーン(se)に取得された前記センシングデータの収集対象からの除外を前記ロガーユニットへ指令する監視プロセッサ(102)とを、備える制御装置。
【請求項2】
前記センシングデータを前記センサ系から前記ロガーユニットへ伝送するデータ伝送経路(80)と、
前記監視プロセッサ及び前記データ伝送経路間を中継する中継経路(19)とを、さらに備え、
前記監視プロセッサは、前記除外シーンに取得された前記センシングデータの収集対象からの除外を指令するように生成した収集指令データ(Dcl)を、前記中継経路から前記データ伝送経路を通じて前記ロガーユニットへ伝送する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記センシングデータに基づき認識した前記走行シーンを、前記監視プロセッサへ与える認識プロセッサ(202)を、さらに備える請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記認識プロセッサは、認識した前記走行シーンに応じて、前記ホスト車両の運転を計画する請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
ホスト車両(Vh)においてセンサ系(3)により取得されたセンシングデータ(Dso)の、収集処理を制御する制御システムであって、
請求項1~4のいずれか一項に記載の制御装置(1)と、
前記センシングデータを記憶するロガーユニット(5)であって、前記除外シーンに取得された前記センシングデータを、前記監視プロセッサからの指令に応答して収集対象から除外するロガーユニットとを、含んで構成される制御システム。
【請求項6】
少なくとも一つのプロセッサ(102,202)を含んで構成され、ホスト車両(Vh)においてセンサ系(3)により取得されたセンシングデータ(Dso)の、ロガーユニット(5)への収集処理を制御する制御装置であって、
前記プロセッサは、
前記センシングデータに基づき認識された前記ホスト車両の走行シーンと、当該走行シーンがモデル化されたシーンモデル(Ms)
であって、前記ロガーユニットへの収集に向けてインタラクションの想定が必要なオブジェクトの相対位置に応じた認識率分布を収集必要シーン毎に規定するシーンモデルとの、マッチング度を監視することと、
前記ロガーユニットへの収集に必要な必要範囲外に前記マッチング度が低下した前記走行シーンである、除外シーン(se)に取得された前記センシングデータの収集対象からの除外を前記ロガーユニットへ指令することとを、実行するように構成される制御装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記ホスト車両の走行シーンを前記センシングデータに基づき認識することを、さらに実行するように構成される請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
ホスト車両(Vh)においてセンサ系(3)により取得されたセンシングデータ(Dso)の、ロガーユニット(5)への収集処理を制御するために、少なくとも一つのプロセッサ(102,202)により実行される制御方法であって、
前記センシングデータに基づき認識された前記ホスト車両の走行シーンと、当該走行シーンがモデル化されたシーンモデル(Ms)
であって、前記ロガーユニットへの収集に向けてインタラクションの想定が必要なオブジェクトの相対位置に応じた認識率分布を収集必要シーン毎に規定するシーンモデルとの、マッチング度を監視することと、
前記ロガーユニットへの収集に必要な必要範囲外に前記マッチング度が低下した前記走行シーンである、除外シーン(se)に取得された前記センシングデータの収集対象からの除外を前記ロガーユニットへ指令することを、含む制御方法。
【請求項9】
ホスト車両(Vh)においてセンサ系(3)により取得されたセンシングデータ(Dso)の、ロガーユニット(5)への収集処理を制御するために少なくとも一つの記憶媒体(103,203)に記憶され、少なくとも一つのプロセッサ(102,202)に実行させる命令を含む制御プログラムであって、
前記命令は、
前記センシングデータに基づき認識された前記ホスト車両の走行シーンと、当該走行シーンがモデル化されたシーンモデル(Ms)
であって、前記ロガーユニットへの収集に向けてインタラクションの想定が必要なオブジェクトの相対位置に応じた認識率分布を収集必要シーン毎に規定するシーンモデルとの、マッチング度を監視させることと、
前記ロガーユニットへの収集に必要な必要範囲外に前記マッチング度が低下した前記走行シーンである、除外シーン(se)に取得された前記センシングデータの収集対象からの除外を前記ロガーユニットへ指令させることを、含む制御プログラム。
【請求項10】
少なくとも一つのプロセッサ(102,202,502,702)を含んで構成され、ホスト車両(Vh)においてセンサ系(3)により取得されたセンシングデータ(Dso)の、ロガーユニット(5)への収集処理を制御する制御システムであって、
前記プロセッサは、
前記センシングデータに基づき認識された前記ホスト車両の走行シーンと、当該走行シーンがモデル化されたシーンモデル(Ms)
であって、前記ロガーユニットへの収集に向けてインタラクションの想定が必要なオブジェクトの相対位置に応じた認識率分布を収集必要シーン毎に規定するシーンモデルとの、マッチング度を監視することと、
前記ロガーユニットへの収集に必要な必要範囲外に前記マッチング度が低下した前記走行シーンである、除外シーン(se)に取得された前記センシングデータを前記ロガーユニットにおいて収集対象から除外することとを、実行するように構成される制御システム。
【請求項11】
ホスト車両(Vh)においてセンサ系(3)により取得されたセンシングデータ(Dso)の、ロガーユニット(5)への収集処理を制御するために、少なくとも一つのプロセッサ(102,202,502,702)により実行される制御方法であって、
前記センシングデータに基づき認識された前記ホスト車両の走行シーンと、当該走行シーンがモデル化されたシーンモデル(Ms)
であって、前記ロガーユニットへの収集に向けてインタラクションの想定が必要なオブジェクトの相対位置に応じた認識率分布を収集必要シーン毎に規定するシーンモデルとの、マッチング度を監視することと、
前記ロガーユニットへの収集に必要な必要範囲外に前記マッチング度が低下した前記走行シーンである、除外シーン(se)に取得された前記センシングデータを前記ロガーユニットにおいて収集対象から除外することとを、含む制御方法。
【請求項12】
ホスト車両(Vh)においてセンサ系(3)により取得されたセンシングデータ(Dso)の、ロガーユニット(5)への収集処理を制御するために少なくとも一つの記憶媒体(103,203,503,703)に記憶され、少なくとも一つのプロセッサ(102,202,502,702)に実行させる命令を含む制御プログラムであって、
前記命令は、
前記センシングデータに基づき認識された前記ホスト車両の走行シーンと、当該走行シーンがモデル化されたシーンモデル(Ms)
であって、前記ロガーユニットへの収集に向けてインタラクションの想定が必要なオブジェクトの相対位置に応じた認識率分布を収集必要シーン毎に規定するシーンモデルとの、マッチング度を監視させることと、
前記ロガーユニットへの収集に必要な必要範囲外に前記マッチング度が低下した前記走行シーンである、除外シーン(se)に取得された前記センシングデータを前記ロガーユニットにおいて収集対象から除外させることとを、含む制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両におけるセンシングデータの収集処理を制御する、制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両において取得されたセンシングデータとしての画像キャプチャデータを、低容量でメモリデバイスに記憶するためにダウンサンプリングする技術が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の開示技術では、記憶される画像キャプチャデータにおいて、関心領域外の解像度が関心領域内の解像度よりも低くなるように、ダウンサンプリングが行なわれている。このとき関心領域は、記憶された画像キャプチャデータに基づく物体の認識処理といった、車両アプリケーションに対して適合される。そのため、例えば車両制御モデル等の車両開発に向けて画像キャプチャデータがメモリデバイスへの蓄積によって収集される場合、車両の走行シーンのうち一部に取得された解像度が低下した低品質の画像キャプチャデータでは、当該開発に支障をきたすおそれがあった。
【0005】
本開示の課題は、高品質のセンシングデータを効率的に収集する制御装置を、提供することにある。本開示の別の課題は、高品質のセンシングデータを効率的に収集する制御システムを、提供することにある。本開示のまた別の課題は、高品質のセンシングデータを効率的に収集する制御方法を、提供することにある。本開示のさらに別の課題は、高品質のセンシングデータを効率的に収集する制御プログラムを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、課題を解決するための本開示の技術的手段について、説明する。尚、特許請求の範囲及び本欄に記載された括弧内の符号は、後に詳述する実施形態に記載された具体的手段との対応関係を示すものであり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
本開示の第一態様は、
ホスト車両(Vh)においてセンサ系(3)により取得されたセンシングデータ(Dso)の、ロガーユニット(5)への収集処理を制御する制御装置であって、
ホスト車両の走行シーンがモデル化されたシーンモデル(Ms)であって、ロガーユニットへの収集に向けてインタラクションの想定が必要なオブジェクトの相対位置に応じた認識率分布を収集必要シーン毎に規定するシーンモデルを記憶する記憶媒体(104)と、
センシングデータに基づき認識された走行シーンと、記憶されたシーンモデルとの、マッチング度を監視することにより、ロガーユニットへの収集に必要な必要範囲外にマッチング度が低下した走行シーンである、除外シーン(se)に取得されたセンシングデータの収集対象からの除外をロガーユニットへ指令する監視プロセッサ(102)とを、備える。
【0008】
このように第一態様では、センサ系からのセンシングデータに基づき認識されたホスト車両の走行シーンと、走行シーンがモデル化されて記憶媒体に記憶されたシーンモデルとの、マッチング度が監視プロセッサにより監視される。そこで第一態様によると、ロガーユニットへの収集に必要な必要範囲外にマッチング度が低下した走行シーンである、除外シーンに取得されたセンシングデータについては、収集対象からの除外が監視プロセッサからロガーユニットへ指令される。これによれば、シーンモデルとのマッチング度がロガーユニットへの収集に必要な必要範囲内となる走行シーンでの、高品質のセンシングデータに収集対象を限定して、センシングデータの選別収集を効率的に行うことが可能となる。
【0009】
本開示の第二態様は、
ホスト車両(Vh)においてセンサ系(3)により取得されたセンシングデータ(Dso)の、収集処理を制御する制御システムであって、
第一態様の制御装置(1)と、
センシングデータを記憶するロガーユニット(5)であって、除外シーンに取得されたセンシングデータを、監視プロセッサからの指令に応答して収集対象から除外するロガーユニットとを、含んで構成される。
【0010】
このような第二態様によると、走行シーンとシーンモデルとのマッチング度が必要範囲外にマッチング度が低下した走行シーンである、除外シーンに取得されたセンシングデータは、ロガーユニットではマッチング度の監視に基づく指令に応答して収集対象から除外されることになる。これによれば、シーンモデルとのマッチング度がロガーユニットへの収集に必要な必要範囲内となる走行シーンでの、高品質のセンシングデータに収集対象を限定して、センシングデータの選別収集を効率的に行うことが可能となる。
【0011】
本開示の第三態様は、
少なくとも一つのプロセッサ(102,202)を含んで構成され、ホスト車両(Vh)においてセンサ系(3)により取得されたセンシングデータ(Dso)の、ロガーユニット(5)への収集処理を制御する制御装置であって、
プロセッサは、
センシングデータに基づき認識されたホスト車両の走行シーンと、当該走行シーンがモデル化されたシーンモデル(Ms)であって、ロガーユニットへの収集に向けてインタラクションの想定が必要なオブジェクトの相対位置に応じた認識率分布を収集必要シーン毎に規定するシーンモデルとの、マッチング度を監視することと、
ロガーユニットへの収集に必要な必要範囲外にマッチング度が低下した走行シーンである、除外シーン(se)に取得されたセンシングデータの収集対象からの除外をロガーユニットへ指令することとを、実行するように構成される。
【0012】
本開示の第四態様は、
ホスト車両(Vh)においてセンサ系(3)により取得されたセンシングデータ(Dso)の、ロガーユニット(5)への収集処理を制御するために、少なくとも一つのプロセッサ(102,202)により実行される制御方法であって、
センシングデータに基づき認識されたホスト車両の走行シーンと、当該走行シーンがモデル化されたシーンモデル(Ms)であって、ロガーユニットへの収集に向けてインタラクションの想定が必要なオブジェクトの相対位置に応じた認識率分布を収集必要シーン毎に規定するシーンモデルとの、マッチング度を監視することと、
ロガーユニットへの収集に必要な必要範囲外にマッチング度が低下した走行シーンである、除外シーン(se)に取得されたセンシングデータの収集対象からの除外をロガーユニットへ指令することを、含む。
【0013】
本開示の第五態様は、
ホスト車両(Vh)においてセンサ系(3)により取得されたセンシングデータ(Dso)の、ロガーユニット(5)への収集処理を制御するために少なくとも一つの記憶媒体(103,203)に記憶され、少なくとも一つのプロセッサ(102,202)に実行させる命令を含む制御プログラムであって、
命令は、
センシングデータに基づき認識されたホスト車両の走行シーンと、当該走行シーンがモデル化されたシーンモデル(Ms)であって、ロガーユニットへの収集に向けてインタラクションの想定が必要なオブジェクトの相対位置に応じた認識率分布を収集必要シーン毎に規定するシーンモデルとの、マッチング度を監視させることと、
ロガーユニットへの収集に必要な必要範囲外にマッチング度が低下した走行シーンである、除外シーン(se)に取得されたセンシングデータの収集対象からの除外をロガーユニットへ指令させることを、含む。
【0014】
これら第三~第五態様では、センサ系からのセンシングデータに基づき認識されたホスト車両の走行シーンと、走行シーンがモデル化されたシーンモデルとの、マッチング度が監視される。そこで第三~第五態様によると、ロガーユニットへの収集に必要な必要範囲外にマッチング度が低下した走行シーンである、除外シーンに取得されたセンシングデータについては、収集対象からの除外がロガーユニットへ指令される。これによれば、シーンモデルとのマッチング度がロガーユニットへの収集に必要な必要範囲内となる走行シーンでの、高品質のセンシングデータに収集対象を限定して、センシングデータの選別収集を効率的に行うことが可能となる。
【0015】
本開示の第六態様は、
少なくとも一つのプロセッサ(102,202,502,702)を含んで構成され、ホスト車両(Vh)においてセンサ系(3)により取得されたセンシングデータ(Dso)の、ロガーユニット(5)への収集処理を制御する制御システムであって、
プロセッサは、
センシングデータに基づき認識されたホスト車両の走行シーンと、当該走行シーンがモデル化されたシーンモデル(Ms)であって、ロガーユニットへの収集に向けてインタラクションの想定が必要なオブジェクトの相対位置に応じた認識率分布を収集必要シーン毎に規定するシーンモデルとの、マッチング度を監視することと、
ロガーユニットへの収集に必要な必要範囲外にマッチング度が低下した走行シーンである、除外シーン(se)に取得されたセンシングデータをロガーユニットにおいて収集対象から除外することとを、実行するように構成される。
【0016】
本開示の第七態様は、
ホスト車両(Vh)においてセンサ系(3)により取得されたセンシングデータ(Dso)の、ロガーユニット(5)への収集処理を制御するために、少なくとも一つのプロセッサ(102,202,502,702)により実行される制御方法であって、
センシングデータに基づき認識されたホスト車両の走行シーンと、当該走行シーンがモデル化されたシーンモデル(Ms)であって、ロガーユニットへの収集に向けてインタラクションの想定が必要なオブジェクトの相対位置に応じた認識率分布を収集必要シーン毎に規定するシーンモデルとの、マッチング度を監視することと、
ロガーユニットへの収集に必要な必要範囲外にマッチング度が低下した走行シーンである、除外シーン(se)に取得されたセンシングデータをロガーユニットにおいて収集対象から除外することとを、含む。
【0017】
本開示の第八態様は、
ホスト車両(Vh)においてセンサ系(3)により取得されたセンシングデータ(Dso)の、ロガーユニット(5)への収集処理を制御するために少なくとも一つの記憶媒体(103,203,503,703)に記憶され、少なくとも一つのプロセッサ(102,202,502,702)に実行させる命令を含む制御プログラムであって、
命令は、
センシングデータに基づき認識されたホスト車両の走行シーンと、当該走行シーンがモデル化されたシーンモデル(Ms)であって、ロガーユニットへの収集に向けてインタラクションの想定が必要なオブジェクトの相対位置に応じた認識率分布を収集必要シーン毎に規定するシーンモデルとの、マッチング度を監視させることと、
ロガーユニットへの収集に必要な必要範囲外にマッチング度が低下した走行シーンである、除外シーン(se)に取得されたセンシングデータをロガーユニットにおいて収集対象から除外させることとを、含む。
【0018】
これら第六~第八態様では、センサ系からのセンシングデータに基づき認識されたホスト車両の走行シーンと、走行シーンがモデル化されたシーンモデルとの、マッチング度が監視される。そこで第六~第八態様によると、ロガーユニットへの収集に必要な必要範囲外にマッチング度が低下した走行シーンである、除外シーンに取得されたセンシングデータは、ロガーユニットにおいて収集対象から除外される。これによれば、シーンモデルとのマッチング度がロガーユニットへの収集に必要な必要範囲内となる走行シーンでの、高品質のセンシングデータに収集対象を限定して、センシングデータの選別収集を効率的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態による制御システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態による制御システムの詳細構成を示すブロック図である。
【
図3】一実施形態によるシーンモデルを説明するための模式図である。
【
図4】一実施形態による監視処理を説明するための模式図である。
【
図5】一実施形態による制御フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の一実施形態を図面に基づき説明する。
【0021】
図1,2に示す一実施形態の制御システム9は、ホスト車両Vhにおいて取得されたデータDsoのロガーユニット5への収集処理を、制御する。ここでホスト車両Vhを中心とする視点において、ホスト車両Vhは自車両(ego-vehicle)であるともいえる。ホスト車両Vhは、乗員の搭乗状態において走行路を走行可能な、例えば自動車等の移動体である。
【0022】
本実施形態のホスト車両Vhでは、運転タスクにおける乗員の手動介入度に応じてレベル分けされる、自動運転制御が実行可能となっている。自動運転制御は、条件付運転自動化、高度運転自動化、又は完全運転自動化といった、作動時のシステムが全ての運転タスクを実行する自律走行制御により、実現されてもよい。自動運転制御は、運転支援、又は部分運転自動化といった、乗員が一部若しくは全ての運転タスクを実行する高度運転支援制御により、実現されてもよい。自動運転制御は、それら自律走行制御と高度運転支援制御とのいずれか一方、組み合わせ、又は切り替えにより実現されてもよい。
【0023】
制御システム9は、車外制御装置1、車内制御系4及び中継ケーブル系8を含んで構成されている。車外制御装置1は、ホスト車両Vhのボディ内に配置されている。車内制御系4は、ホスト車両Vhのボディ内に配置されている。中継ケーブル系8は、ホスト車両Vhのボディ内に這い回しされることで、車外制御装置1と車内制御系4との間を相互通信可能に接続している。ここで、中継ケーブル系8には、例えばLVDS(Low Voltage Differential Signaling)ケーブル、CAN(Controller Area Network)ケーブル、及びイーサネット(Ethernet)用のLAN(Local Area Network)ケーブル等のうち、複数種類が含まれる。以上より、中継ケーブル系8を介して通信する車外制御装置1と車内制御系4とでは、例えばPTP(Precision Time Protocol)又はgPTP等に準拠する時刻同期が、実現されている。
【0024】
車外制御装置1は、ホスト車両Vhにおける取得データDsoのロガーユニット5への収集処理を制御するために、自動運転に特化した制御モジュールとして構築されている。車外制御装置1は、ハウジング2、車外センサ系3、監視ユニット10及び認識ユニット20を備えている。ハウジング2は、例えば中空扁平状の矩形箱形等に形成されている。ハウジング2は、ホスト車両Vhのボディを構成するルーフ上に、設置されている。ハウジング2は、車外制御装置1における他の構成要素3,10,20を内部に収容している。
【0025】
図2に示すように車外センサ系3は、複数の外界センサ30を有している。各外界センサ30は、例えばカメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging / Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダ及びソナー等のうち、それぞれ個別の一種類である。各外界センサ30は、ホスト車両Vhの外界においてハウジング2内での配置位置及び個々の視野角に応じたエリアを、センシングする。各外界センサ30は、センシングの結果としてホスト車両Vhの自動運転制御に活用可能な外界情報を表す車外センシングデータDsoを、制御周期毎に生成する。このとき車外センシングデータDsoは、取得された時刻を表すタイムスタンプ情報を含むように、取得される。
【0026】
監視ユニット10には、通信インタフェース12,14,16、監視SoC(System on a Chip)101及びモデル記憶媒体104が設けられている。監視ユニット10において例えばデシリアライザ等の通信インタフェース12は、車外センサ系3の各外界センサ30に接続されている。それと共に通信インタフェース12は、ユニット間バスを介して認識ユニット20に接続されることで、内部伝送経路17を形成している。
【0027】
監視ユニット10において例えばシリアライザ等の通信インタフェース14は、同ユニット10の通信インタフェース12に内部バスを介して且つ車内制御系4に中継ケーブル系8を介してそれぞれ接続されることで、データ伝送経路80を形成している。これにより監視ユニット10は、車外センサ系3の各外界センサ30からロガーユニット5へ車外センシングデータDsoを、データ伝送経路80を通じて伝送可能となっている。監視ユニット10において例えばCAN、又はイーサネットといったLAN等の通信インタフェース16は、監視SoC101に内部バスを介して且つ車内制御系4に中継ケーブル系8を介してそれぞれ接続されることで、データ伝送経路82を形成している。
【0028】
監視SoC101は、監視プロセッサ102及び監視メモリ103を含む専用コンピュータである。監視プロセッサ102は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)及びRISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU等のうち、少なくとも一種類をコアとして含む。監視メモリ103は、コンピュータにより読み取り可能なプログラム及びデータを非一時的に記憶する、例えば半導体メモリ等の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。
【0029】
監視ユニット10において監視SoC101は、ユニット間バスを介して認識ユニット20に接続されることで、内部伝送経路18を形成している。それと共に監視SoC101は、内部バスを介して通信インタフェース14に接続されることで、監視プロセッサ102とデータ伝送経路80との間を中継する中継経路19を形成している。
【0030】
監視ユニット10においてモデル記憶媒体104は、内部バスを介して監視SoC101に接続されている。モデル記憶媒体104は、コンピュータにより読み取り可能なデータ等を非一時的に記憶する、例えばSSD(Solid State Drive)といった半導体メモリ等の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。特に本実施形態のモデル記憶媒体104は、ホスト車両Vhに想定可能な各種走行シーンのうち、
図3に示すようにロガーユニット5への収集に複数必要な収集必要シーンsnをモデル化した、シーンモデルMsを記憶している。
【0031】
ここでシーンモデルMsは、例えば走行様式及び外部走行環境等の組み合わせ種別毎に区別した走行シーンのうち、ホスト車両Vhに関する複数の収集必要シーンsnを、
図3の如く少なくとも規定する。シーンモデルMsは、ホスト車両Vh以外の移動体と構造物とのうち、ロガーユニット5への収集に向けてインタラクションの想定が必要なオブジェクトを、収集必要シーンsn毎に規定するモデルであってもよい。シーンモデルMsは、ロガーユニット5への収集に向けてインタラクションの想定が必要なオブジェクトまでの距離、及び当該オブジェクトの相対位置に応じた認識率のうち、少なくとも一方の分布を収集必要シーンsn毎に規定するモデルであってもよい。シーンモデルMsは、ホスト車両Vhの走行が想定されるマップ情報のうち、ロガーユニット5への収集に必要なロケーションを、収集必要シーンsn毎に規定するモデルであってもよい。
【0032】
このような構成の監視ユニット10において監視プロセッサ102は、監視メモリ103及びモデル記憶媒体104と協働することで、監視処理及び指令処理を実行する。具体的に、監視処理において
図2に示す監視プロセッサ102は、認識ユニット20から内部伝送経路18を通じて認識データDrを取得する。ここで認識データDrは、後述するように車外センサ系3からの車外センシングデータDsoに基づくことで認識ユニット20によって認識される、ホスト車両Vhの走行シーン(以下、認識走行シーンともいう)を表している。このとき認識データDrには、走行シーンの認識に用いられた車外センシングデータDsoの取得時刻を表すタイムスタンプ情報が、含まれている。
【0033】
そこで、監視処理において監視プロセッサ102は、取得したホスト車両Vhの走行シーンと、モデル記憶媒体104に記憶されたシーンモデルMsとの、マッチング度を監視する。このときマッチング度は、
図4に示すようにシーンモデルMsに含まれる複数の収集必要シーンsnのうち、設定ルール又は機械学習モデルによって判定される一致率が最大となる最大マッチングシーンsnmの、当該最大一致率に規定される。またこのとき認識プロセッサ202は、後述するようにホスト車両Vhの運転状態を表す実運転データDadを、車内制御系4からデータ伝送経路82を通じて取得することで、当該実運転データDadをマッチング度の演算に反映可能となっている。
【0034】
さらにこのとき、例えばサービスカー等のようにリモートセンタから遠隔指示又は遠隔操作を受けるホスト車両Vhに搭載された制御システム9の場合には、それら遠隔指示又は遠隔操作に関連する情報を認識プロセッサ202がマッチング度の演算に反映させてもよい。ここで遠隔指示又は遠隔操作に関連する情報とは、例えば遠隔指示又は遠隔操作の判断材料となったリモートセンタでの提示情報、及びリモートセンタにおけるオペレータの音声等のうち、少なくとも一種類である。
【0035】
こうした監視処理により監視プロセッサ102は、シーンモデルMsのうち最大マッチングシーンsnmと認識走行シーンとのマッチング度が、ロガーユニット5への収集に必要な必要範囲外にまで
図4の如く低下しているか否かを、判定する。その結果、最大マッチングシーンsnmと認識走行シーンとのマッチング度が必要範囲外まで低下している場合の指令処理として監視プロセッサ102は、当該マッチング度低下の認識走行シーンを除外シーンseと判断する。ここでマッチング度の判定基準となる必要範囲は、例えば車両制御モデル等の車両開発において要求される走行シーンをカバー可能な範囲に、予め設定される。
【0036】
そこで、指令処理において
図2に示す監視プロセッサ102は、除外シーンseに取得された車外センシングデータDsoを収集対象から除外するようにロガーユニット5へと指令する、収集指令データDclを生成する。このとき収集指令データDclは、除外シーンseに取得された車外センシングデータDsoの取得時刻を表すタイムスタンプ情報を含むように、取得される。
【0037】
指令処理において監視プロセッサ102は、生成した収集指令データDclを、中継経路19から通信インタフェース14へと出力する。このとき通信インタフェース14は、例えばデータ伝送前におけるバッファリング処理等により、車外センサ系3からの車外センシングデータDsoの伝送フレーム間に収集指令データDclを割り込ませる。これにより監視プロセッサ102は、中継経路19からロガーユニット5への収集指令データDclを、データ伝送経路80を通じて伝送可能となっている。
【0038】
認識ユニット20は、車外制御装置1のハウジング2内に収容される基板上に、監視ユニット10と共に実装されている。認識ユニット20には、認識SoC201及び認識記憶媒体204が設けられている。認識SoC201は、認識プロセッサ202及び認識メモリ203を含む専用コンピュータである。認識プロセッサ202は、例えばCPU、GPU及びRISC-CPU等のうち、少なくとも一種類をコアとして含む。認識メモリ203は、コンピュータにより読み取り可能なプログラム及びデータを非一時的に記憶する、例えば半導体メモリ等の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。
【0039】
認識ユニット20において認識SoC201は、ユニット間バスを介して通信インタフェース12に接続されることで、内部伝送経路17を形成している。それと共に認識SoC201は、ユニット間バスを介して監視SoC101に接続されることで、内部伝送経路18を形成している。さらに認識SoC201は、ユニット間バスを介して通信インタフェース16に接続されることで、内部伝送経路22を形成している。
【0040】
このような構成の認識ユニット20において認識プロセッサ202は、認識メモリ203と協働することで、認識処理及び運転計画処理を実行する。具体的に、認識処理において認識プロセッサ202は、車外センサ系3の各外界センサ30から内部伝送経路17を通じて車外センシングデータDsoを取得する。それと共に、認識処理において認識プロセッサ202は、後述するようにホスト車両Vhの運転状態を表す実運転データDadを、車内制御系4からデータ伝送経路82及び内部伝送経路22を通じて取得する。
【0041】
そこで、認識処理において認識プロセッサ202は、車外センシングデータDso及び実運転データDadに基づきホスト車両Vhの現在走行シーンを認識することで、当該認識走行シーンを表す認識データDrを生成する。このとき、認識走行シーンのタイムスタンプ情報を含んで生成される認識データDrは、内部伝送経路18を通じて監視ユニット10に伝送されることで、認識プロセッサ202から監視プロセッサ102へと与えられることとなる。
【0042】
こうした認識処理に基づく運転計画処理は、認識データDrを与えられた監視プロセッサ102による監視処理及び指令処理のうち、少なくとも監視処理と並行して実行される。このとき運転計画処理として認識プロセッサ202は、ホスト車両Vhの将来運転を規定する将来走行パス及び将来走行軌道を、認識走行シーンに応じて計画する。本実施形態の認識プロセッサ202はさらに、計画した将来走行パス及び将来走行軌道をホスト車両Vhに与えるための運転制御を車内制御系4へ指令する、運転指令データDcdを生成する。このとき生成された運転指令データDcdは、内部伝送経路22及びデータ伝送経路82を通じて車内制御系4に伝送される。
【0043】
車内制御系4は、ロガーユニット5、車内センサ系6及び運転制御ユニット7を備えている。ロガーユニット5には、通信インタフェース50、ロギングSoC501及びロギング記憶媒体504が設けられている。ロガーユニット5において例えばデシリアライザ等の通信インタフェース50は、監視ユニット10の通信インタフェース14に中継ケーブル系8を介して接続されることで、データ伝送経路80を構成している。
【0044】
ロガーユニット5においてロギングSoC501は、内部バスを介して通信インタフェース50に接続されている。ロギングSoC501は、収集プロセッサ502及び収集メモリ503を含む専用コンピュータである。収集プロセッサ502は、例えばCPU、GPU及びRISC-CPU等のうち、少なくとも一種類をコアとして含む。収集メモリ503は、コンピュータにより読み取り可能なプログラム及びデータを非一時的に記憶する、例えば半導体メモリ等の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。
【0045】
ロガーユニット5においてロギング記憶媒体504は、内部バスを介してロギングSoC501に接続されている。ロギング記憶媒体504は、コンピュータにより読み取り可能なデータ等を非一時的に記憶する、例えばSSDといった半導体メモリ、又はHDD(Hard Disk Drive)といった磁気媒体等の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。
【0046】
このような構成のロガーユニット5において収集プロセッサ502は、収集メモリ503及びロギング記憶媒体504と協働することで、収集処理及び選別処理を実行する。具体的に、収集処理において収集プロセッサ502は、車外センサ系3の各外界センサ30からデータ伝送経路80を通じて車外センシングデータDsoを取得する。そこで収集処理における収集プロセッサ502は、順次取得した車外センシングデータDsoを、それぞれのタイムスタンプ情報に基づき時系列にロギング記憶媒体504へと記憶する。
【0047】
こうした収集処理に対して収集プロセッサ502は、監視ユニット10の監視プロセッサ102からデータ伝送経路80を通じて収集指令データDclを取得するのに応答して、即ち同プロセッサ102からの指令に応答して、選別処理を実行する。選別処理において収集プロセッサ502は、収集処理によりロギング記憶媒体504に記憶された車外センシングデータDsoのうち、収集指令データDclに含まれる除外シーンseのタイムスタンプ情報と対応したデータを、削除することで間引く。これは、除外シーンseに取得された車外センシングデータDsoを、ロガーユニット5における収集対象から除外することを意味する。
【0048】
車内センサ系6は、外界センサ60及び内界センサ62を複数ずつ有している。外界センサ60は、例えばカメラ、LiDAR、レーザレーダ、ミリ波レーダ及び超音波ソナー等のうち、ホスト車両Vh内から外界をセンシング可能な複数種類である。外界センサ60は、ホスト車両Vhの測位情報を外界から受信可能な、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機等を含んでいてよい。外界センサ60は、ホスト車両Vhの位置情報を外界から受信可能な、例えばDSRC(Dedicated Short Range Communications)通信機、又はセルラV2X(C-V2X)通信機等を含んでいてもよい。内界センサ62は、例えば車速センサ、加速度センサ及びジャイロセンサ等のうち、ホスト車両Vhの内界において運転に関する物理量を検出可能な複数一種類である。外界センサ60及び内界センサ62は、それぞれセンシング結果及び検出結果を表す車内センシングデータDsiを、生成する。
【0049】
運転制御ユニット7には、通信インタフェース70及び運転制御ECU(Electronic Control Unit)701が設けられている。運転制御ユニット7において例えばCAN、又はイーサネットといったLAN等の通信インタフェース70は、監視ユニット10の通信インタフェース16に中継ケーブル系8を介して接続されることで、データ伝送経路82を構成している。それと共に通信インタフェース70は、内部を介して運転制御ECU701に接続されている。さらに通信インタフェース70は、ホスト車両Vh内における、例えばCAN、又はイーサネットといったLAN等の車内ネットワークを介して、車内センサ系6の外界センサ60及び内界センサ62に接続されている。
【0050】
運転制御ECU701は、運転制御プロセッサ702及び運転制御メモリ703を含む専用コンピュータである。運転制御プロセッサ702は、例えばCPU、GPU及びRISC-CPU等のうち、少なくとも一種類をコアとして含む。運転制御メモリ703は、コンピュータにより読み取り可能なプログラム及びデータを非一時的に記憶する、例えば半導体メモリ等の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。
【0051】
このような構成の運転制御ユニット7において運転制御プロセッサ702は、運転制御メモリ703と協働することで、運転制御処理を実行する。具体的に運転制御処理において運転制御プロセッサ702は、認識ユニット20の認識プロセッサ202から内部伝送経路22及びデータ伝送経路82を通じて運転指令データDcdを取得する。それと共に運転制御プロセッサ702は、車内ネットワークを通じて車内センサ系6の外界センサ60及び内界センサ62から車内センシングデータDsiを取得する。
【0052】
そこで、運転制御処理において運転制御プロセッサ702は、運転指令データDcdと車内センシングデータDsiとに基づくことで、自動運転制御を含むホスト車両Vhの運転タスクを制御する。さらに、運転制御処理において運転制御プロセッサ702は、運転タスクに従って実行した運転制御の結果として、位置、運動状態(例えば加減速度及び操舵量等)、及び走行環境(例えば地図情報等)をホスト車両Vhに関して表す実運転データDadを、生成する。このとき生成された実運転データDadは、監視ユニット10及び認識ユニット20の各プロセッサ102,202へ、伝送経路82,22を通じて伝送されることになる。
【0053】
以上説明した制御システム9が、ホスト車両Vhにおいて車外センサ系3により取得された車外センシングデータDsoの、ロガーユニット5への収集処理を制御する制御方法は、
図5に示す制御フローに従って実行される。ここで制御フローは、各ユニット10,20,5,7においてメモリ103,203,503,703に記憶された個別制御プログラムの集合によって構成される制御プログラムがプロセッサ102,202,502,702にそれぞれ命令を実行させることで、ホスト車両Vhの起動中に制御周期毎に繰り返される。尚、制御フローにおける各「S」は、個別制御プログラム毎に含まれた命令により実行されるステップを、それぞれ意味している。
【0054】
S101において車外センサ系3は、ホスト車両Vhの外界をセンシングすることで、現在制御周期での車外センシングデータDsoを取得する。制御フローでは、S101でのデータDsoの取得に応答して、S102とS103とが並列的に処理される。
【0055】
S102においてロガーユニット5は、車外センサ系3からの車外センシングデータDsoをロギング記憶媒体504へ記憶する。一方、S103において認識ユニット20は、車外センサ系3からの車外センシングデータDso及び運転制御ユニット7からの実運転データDadに基づきホスト車両Vhの現在走行シーンを認識した、認識データDrを生成する。制御フローでは、S103での認識データDrの生成に応答して、S104~S106とS107~S109とが並列的に処理される。
【0056】
S104において認識ユニット20は、認識した走行シーンに応じてホスト車両Vhの将来運転を計画した、運転指令データDcdを生成する。S105において運転制御ユニット7は、認識ユニット20からの運転指令データDcd及び車内センサ系6からの車内センシングデータDsiとに基づき、ホスト車両Vhの運転を制御する。S106において運転制御ユニット7は、実行した運転制御によるホスト車両Vhの実運転データDadを、生成する。
【0057】
これらのS104~S106に対し、S107において監視ユニット10は、認識ユニット20からの認識データDr及び運転制御ユニット7からの実運転データDadに基づき、現在走行シーンとシーンモデルMsとのマッチング度を監視する。S107において監視されたマッチング度が必要範囲外まで低下している場合には、制御フローがS108へ移行する。S108において監視ユニット10は、マッチング度が必要範囲外に低下した走行シーンを除外シーンseとして、当該除外シーンseに取得された車外センシングデータDsoの収集対象からの除外をロガーユニット5へと指令する収集指令データDclを、生成する。
【0058】
S109においてロガーユニット5は、監視ユニット10からの収集指令データDclに応答して、S102によりロギング記憶媒体504に記憶された車外センシングデータDsoのうち、収集指令データDclに含まれる除外シーンseと対応したデータを、削除する。これにより、除外シーンseに取得された車外センシングデータDsoは、ロガーユニット5における収集対象から除外されることになる。尚、S107において監視されたマッチング度が必要範囲内に収まっている場合に制御フローでは、S108,S109がスキップされる。
【0059】
(作用効果)
以上説明した本実施形態の作用効果を、以下に説明する。
【0060】
本実施形態では、車外センサ系3からの車外センシングデータDsoに基づき認識されたホスト車両Vhの走行シーンと、走行シーンがモデル化されてモデル記憶媒体104に記憶されたシーンモデルMsとの、マッチング度が監視プロセッサ102により監視される。そこで本実施形態によると、ロガーユニット5への収集に必要な必要範囲外にマッチング度が低下した走行シーンである、除外シーンseに取得された車外センシングデータDsoについては、収集対象からの除外が監視プロセッサ102からロガーユニット5へ指令される。これによれば、シーンモデルMsとのマッチング度がロガーユニット5への収集に必要な必要範囲内となる走行シーンでの、高品質の車外センシングデータDsoに収集対象を限定して、車外センシングデータDsoの選別収集を効率的に行うことが可能となる。
【0061】
本実施形態によると、車外センシングデータDsoを車外センサ系3からロガーユニット5へ伝送するデータ伝送経路80と、監視プロセッサ102との間は、中継経路19により中継される。これによれば、監視プロセッサ102の生成した収集指令データDclが中継経路19から車外センシングデータDsoのデータ伝送経路80を通じて伝送されることで、除外シーンseに取得された車外センシングデータDsoの収集対象からの除外がロガーユニット5へと指令されることになる。これによれば、シーンモデルMsとのマッチング度がロガーユニット5への収集に必要な必要範囲内となる走行シーンでの、高品質の車外センシングデータDsoに収集対象を限定して、車外センシングデータDsoの選別収集を効率的に行うための構成を、簡素化することが可能となる。
【0062】
本実施形態によると、車外センシングデータDsoに基づき認識プロセッサ202が認識した走行シーンは、当該認識プロセッサ202から監視プロセッサ102へ与えられる。これによれば、マッチング度の監視及び除外の指令は、処理負荷の比較的高くなる走行シーンの認識処理とは別のプロセッサ102によることで、高速に処理され得る。故に、次々に取得される車外センシングデータDsoの選別収集であっても、効率的に行うことが可能となる。
【0063】
本実施形態の認識プロセッサ202は、認識した走行シーンに応じてホスト車両Vhの運転を計画する。これによれば、認識された走行シーンに基づくマッチング度の監視及び除外の指令は、当該走行シーンに応じたホスト車両Vhの運転計画処理とは別のプロセッサ102により迅速に処理され得る。故に、次々に取得される車外センシングデータDsoの選別収集を、同じセンシングデータDsoを用いる他の処理と同時的に、効率的に行うことが可能となる。
【0064】
本実施形態によると、走行シーンとシーンモデルMsとのマッチング度が必要範囲外にマッチング度が低下した除外シーンseに取得の車外センシングデータDsoは、ロガーユニット5ではマッチング度の監視に基づく指令に応答して収集対象から除外されることになる。これによれば、シーンモデルMsとのマッチング度がロガーユニット5への収集に必要な必要範囲内となる走行シーンでの、高品質の車外センシングデータDsoに収集対象を限定して、車外センシングデータDsoの選別収集を効率的に行うことが可能となる。
【0065】
さて、別の視点で本実施形態では、車外センサ系3からの車外センシングデータDsoに基づき認識されたホスト車両Vhの走行シーンと、走行シーンがモデル化されたシーンモデルMsとの、マッチング度が監視される。そこで本実施形態によると、ロガーユニット5への収集に必要な必要範囲外にマッチング度が低下した走行シーンである、除外シーンseに取得された車外センシングデータDsoについては、収集対象からの除外がロガーユニット5へ指令される。さらに本実施形態によると、除外シーンseに取得された車外センシングデータDsoは、ロガーユニット5において収集対象から除外される。これらによれば、シーンモデルMsとのマッチング度がロガーユニット5への収集に必要な必要範囲内となる走行シーンでの、高品質の車外センシングデータDsoに収集対象を限定して、車外センシングデータDsoの選別収集を効率的に行うことが可能となる。
【0066】
(他の実施形態)
以上、一実施形態について説明したが、本開示は、当該説明の実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
【0067】
変形例において監視SoC101、認識SoC201、ロギングSoC501及び運転制御ECU701を構成する専用コンピュータのうち少なくとも一種類は、デジタル回路及びアナログ回路の少なくとも一方をプロセッサとして有していてもよい。ここでデジタル回路とは、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System on a Chip)、PGA(Programmable Gate Array)、及びCPLD(Complex Programmable Logic Device)等のうち、少なくとも一種類である。またこうしたデジタル回路は、プログラムを記憶したメモリを、有していてもよい。
【0068】
変形例では、監視ユニット10(監視プロセッサ102)の一部処理が、ホスト車両Vhと通信可能な外部センタにおけるコンピュータ(プロセッサ)により実現されていてもよい。変形例では、認識ユニット20(認識プロセッサ202)の一部処理が、ホスト車両Vhと通信可能な外部センタにおけるコンピュータ(プロセッサ)により実現されていてもよい。変形例では、ロガーユニット5(収集プロセッサ502)の一部処理が、ホスト車両Vhと通信可能な外部センタにおけるコンピュータ(プロセッサ)により実現されていてもよい。変形例では、運転制御ユニット7(運転制御プロセッサ702)の一部処理が、ホスト車両Vhと通信可能な外部センタにおけるコンピュータ(プロセッサ)により実現されていてもよい。
【0069】
変形例では、車外センサ系3が車外制御装置1とは別の装置を構成していてもよい。変形例では、認識ユニット20が車外制御装置1とは別の装置を構成していてもよい。変形例では、認識ユニット20による認識処理及び運転計画処理が監視ユニット10により実行されることで、認識ユニット20が省かれていてもよい。変形例では、認識ユニット20により運転計画処理が実行されないことで、運転制御ユニット7及び車内センサ系6が制御システム9の範疇と、制御方法及び制御プログラムの適用対象とからは外れていてもよい。
【0070】
変形例では、車外センサ系3における少なくとも一部の外界センサ30が、車内センサ系6における外界センサ60のいずれかにより代替されていてもよい。ここで特に、一部の外界センサ30が外界センサ60のいずれかにより代替されている場合、又は代替されていない場合には、監視ユニット10及び認識ユニット20のうち少なくとも後者がホスト車両Vhのボディ内に配置されることで、車内制御系4を構成していてもよい。あるいは、全ての外界センサ30が外界センサ60のいずれかにより代替されている場合には、それら外界センサ30が省かれていてもよい。さらに、全ての外界センサ30が省かれている場合、監視ユニット10及び認識ユニット20がホスト車両Vhのボディ内に配置されることで、いずれも車内制御系4を構成していてもよい。尚、車内制御系4を構成する場合の認識ユニット20は、運転制御ユニット7とは別又は運転制御ECU701とは別の専用ユニットとして設けられていてもよいし、運転制御ユニット7又は運転制御ECU701により代替されていてもよい。
【0071】
変形例では、ロガーユニット5がハウジング2内に収容されることで、車外制御装置1を構成していてもよい。変形例では、運転制御ユニット7がハウジング2内に収容されることで、車外制御装置1を構成していてもよい。変形例では、監視メモリ103及びモデル記憶媒体104が同一の記憶媒体により実現されていてもよい。変形例では、収集メモリ503及びロギング記憶媒体504が同一の記憶媒体により実現されていてもよい。変形例では、最大マッチングシーンsnmの一致率に変えて、シーンモデルMsと走行シーンとの間のコスト関数乃至は評価関数による演算結果が、マッチング度として規定されてもよい。
【0072】
変形例の指令処理において監視ユニット10では、通信インタフェース12に接続された監視プロセッサ102により、通信インタフェース12又は車外センサ系3の各外界センサ30へと収集指令データDclがフィードバックされてもよい。これにより、通信インタフェース12又は車外センサ系3の各外界センサ30において車外センシングデータDsoの伝送レートが調整されることで、車外センシングデータDsoの伝送フレーム間にロガーユニット5への収集指令データDclが割り込まれてもよい。
【0073】
変形例において制御システム9の適用されるホスト車両Vhは、例えば走行をリモート制御可能な走行ロボット等であってもよい。ここまでの説明形態の他、上述の実施形態及び変形例による制御装置1は、監視ユニット10を実現する半導体装置(例えば半導体チップ等)として、実施されてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1:制御装置、3:センサ系、5:ロガーユニット、19:中継経路、80:データ伝送経路、102:監視プロセッサ、202:認識プロセッサ、502:収集プロセッサ、702:運転制御プロセッサ、103:監視メモリ、203:認識メモリ、503:収集メモリ、703:運転制御メモリ、104:モデル記憶媒体、Dcl:収集指令データ、Dso:車外センシングデータ、Ms:シーンモデル、Vh:ホスト車両、se:除外シーン