(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】物品搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 1/04 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
B65G1/04 539Z
B65G1/04 551D
(21)【出願番号】P 2021187790
(22)【出願日】2021-11-18
【審査請求日】2023-12-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】安部 健史
(72)【発明者】
【氏名】岸 遼司
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-75357(JP,A)
【文献】国際公開第2019/035286(WO,A1)
【文献】特開2004-277066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送する物品搬送装置であって、
前記物品の搬送のために移動する移動体と、
前記移動体に支持され、搬送中の前記物品が収容される収容領域の側周囲の少なくとも一部を覆うカバー部と、
前記物品の保持と、移載対象箇所との間での前記物品の移載とを行う移載機構と、
前記移動体及び前記移載機構を制御する制御部と、を備え、
前記移載機構は、前記移動体に支持され、前記物品を保持する保持状態と前記物品の保持を解除する解除状態とに状態変更可能である保持部と、前記保持部を上下方向に沿う旋回軸心回りに旋回させる旋回部と、前記保持部を前記収容領域の中の内部位置と前記収容領域の外の外部位置との間で昇降移動させる昇降部とを備え、
前記カバー部は、前記収容領域に面する内面構造を備え、
前記内面構造は、上下方向における特定箇所において前記収容領域側へ突出するように形成された突出部を含み、
前記移載機構は、前記昇降部による前記保持部の昇降高さが規定の干渉高さ範囲内である場合には、前記旋回部により前記保持部を旋回させることによって前記突出部と干渉する場合があり、前記昇降部による前記保持部の昇降高さが前記干渉高さ範囲外の高さである場合には、前記旋回部により前記保持部を旋回させても前記内面構造と干渉せず、
前記制御部は、作業者により操作される操作端末からの指令に従って前記移載機構を動作させる保守モードを実行可能であり、
前記制御部は、前記保守モードにおいて、前記操作端末から前記移載機構の動作指令を受け付けた場合に、前記昇降高さが前記干渉高さ範囲内であるか否かを判定し、前記昇降高さが前記干渉高さ範囲外の高さである場合は、前記動作指令に従って前記移載機構の動作を実行し、前記昇降高さが前記干渉高さ範囲内である場合は、前記動作指令に従った前記移載機構の動作のうち、前記旋回部による前記保持部の旋回動作を禁止する、物品搬送装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記保守モードにおいて、前記操作端末から前記移載機構の動作指令を受け付けた場合であって、前記昇降高さが前記干渉高さ範囲内であった場合には、前記旋回部による前記保持部の旋回動作を禁止しつつ、前記動作指令に前記昇降部による前記保持部の昇降動作が含まれる場合には、当該昇降動作を実行し、前記昇降高さが前記干渉高さ範囲外の高さとなった場合には、前記動作指令に従って前記旋回部による前記保持部の旋回動作も実行する、請求項1に記載の物品搬送装置。
【請求項3】
前記保持部の高さを検出する高さ検出部を更に備え、
前記制御部は、前記高さ検出部による検出結果に基づいて、前記昇降高さが前記干渉高さ範囲内であるか否かを判定する、請求項1又は2に記載の物品搬送装置。
【請求項4】
前記移載機構は、スライド部を更に備え、
前記スライド部は、前記保持部を水平方向に沿ってスライド移動させ、
前記制御部は、前記保守モードにおいて、前記操作端末から前記移載機構の動作指令を受け付けた場合であって、前記昇降高さが前記干渉高さ範囲内である場合は、前記旋回部による前記保持部の旋回動作に加えて、前記スライド部による前記保持部のスライド移動動作も禁止する、請求項1から3のいずれか一項に記載の物品搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を搬送する物品搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、搬送システムについて開示されている。以下、この背景技術の説明では、特許文献1における名称及び符号を括弧内に引用する。
【0003】
この搬送システム(SYS)は、移動体(走行部11)とカバー部(本体部12)と移載機構(移載部13)と制御部(14)とを備える物品搬送装置(天井搬送車10)を有している。移動体(走行部11)は軌道に沿って走行し、カバー部(本体部12)は移動体(走行部11)に取り付けられ、物品(M)を収容可能に構成されている。移載機構(移載部13)は、物品(M)を保持する保持部(15)と、保持部(15)を回転軸(AX)の軸周りに回転させる旋回部(回転機構19)と、保持部(15)及び旋回部(回転機構19)をカバー部(本体部12)に対して移動させる移動部(移動機構16)とを有し、制御部(14)は移動体(走行部11)及び移載機構(移載部13)の各部の動作を制御する。物品搬送装置(天井搬送車10)は、保持部(15)により保持された物品(M)がカバー部(本体部12)から抜け出す脱出位置にあるときに旋回部(回転機構19)による回転が許容され、物品(M)がカバー部(本体部12)の内壁(23a)に接触することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/035286号(〔0012〕段落、〔0021〕段落、〔0022〕段落、〔0024〕段落、〔0038〕段落)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、物品搬送装置の保守点検を行う場合や物品搬送装置の故障が生じた場合等に、作業者が操作する操作端末からの動作指令によって物品搬送装置を動作させる場合がある。また、カバー部には、物体を収容する収容領域に面する内面に、当該収容領域側へ突出する突出部が設けられているものもある。このような場合において、例えば保持部が、カバー部で覆われた収容領域に収容されている状態において、移載機構を所定の姿勢に移行させる動作指令に応じて動作させると、当該動作指令があった時点の保持部の旋回角度によっては、保持部が突出部に干渉(接触)する可能性がある。
【0006】
そこで、保持部と突出部との干渉を回避しつつ、適切に移載機構を動作させることが可能な物品搬送装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記に鑑みた、物品搬送装置の特徴構成は、
物品を搬送する物品搬送装置であって、
前記物品の搬送のために移動する移動体と、
前記移動体に支持され、搬送中の前記物品が収容される収容領域の側周囲の少なくとも一部を覆うカバー部と、
前記物品の保持と、移載対象箇所との間での前記物品の移載とを行う移載機構と、
前記移動体及び前記移載機構を制御する制御部と、を備え、
前記移載機構は、前記移動体に支持され、前記物品を保持する保持状態と前記物品の保持を解除する解除状態とに状態変更可能である保持部と、前記保持部を上下方向に沿う旋回軸心回りに旋回させる旋回部と、前記保持部を前記収容領域の中の内部位置と前記収容領域の外の外部位置との間で昇降移動させる昇降部とを備え、
前記カバー部は、前記収容領域に面する内面構造を備え、
前記内面構造は、上下方向における特定箇所において前記収容領域側へ突出するように形成された突出部を含み、
前記移載機構は、前記昇降部による前記保持部の昇降高さが規定の干渉高さ範囲内である場合には、前記旋回部により前記保持部を旋回させることによって前記突出部と干渉する場合があり、前記昇降部による前記保持部の昇降高さが前記干渉高さ範囲外の高さである場合には、前記旋回部により前記保持部を旋回させても前記内面構造と干渉せず、
前記制御部は、作業者により操作される操作端末からの指令に従って前記移載機構を動作させる保守モードを実行可能であり、
前記制御部は、前記保守モードにおいて、前記操作端末から前記移載機構の動作指令を受け付けた場合に、前記昇降高さが前記干渉高さ範囲内であるか否かを判定し、前記昇降高さが前記干渉高さ範囲外の高さである場合は、前記動作指令に従って前記移載機構の動作を実行し、前記昇降高さが前記干渉高さ範囲内である場合は、前記動作指令に従った前記移載機構の動作のうち、前記旋回部による前記保持部の旋回動作を禁止する点にある。
【0008】
この特徴構成によれば、保守モードにおいて作業者が誤った移載機構の動作指令を出した場合であっても、保持部の旋回動作を行うことにより保持部が突出部と干渉する可能性がある場合に保持部の旋回動作を行わせないようにできると共に、それ以外の場合には移載機構に動作指令に従った動作を行わせることができる。これより、保持部と突出部との干渉を回避しつつ、適切に動作指令に応じた移載機構の動作を行わせることができる。
【0009】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】制御部による移載機構の制御に係る制御ブロック図
【
図6】制御部による移載機構の制御の手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.物品搬送装置の実施形態
物品搬送装置の実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、物品搬送装置1は、例えば工場やプラント内の複数の搬送対象場所90の間に設けられる、移動経路Rに沿って移動して物品Wを搬送するように構成され、物品Wを搬送する際に当該物品Wの姿勢を変更することができるようになっている。
【0012】
以下では、物品搬送装置1が移動経路Rに沿って走行する方向を「進行方向X」とし、平面視で進行方向Xに直交する方向を「幅方向Y」として説明する。また、進行方向X及び幅方向Yの双方に直交する方向を「鉛直方向Z」として説明する。ここで、進行方向Xにおける前方側を「前側X1」とし、後方側を「後側X2」として説明する。また、進行方向Xの前側X1を向いた状態を基準として左右を定義するものとし、具体的には、進行方向Xの前側X1に向かって、幅方向Yにおける左側を「左側Y1」とし、右側を「右側Y2」として説明する。
【0013】
物品Wは、物品搬送装置1によって搬送される搬送対象物にあたる。本実施形態では、物品Wは、半導体基板が収納される容器であって、直方体状に形成されており、複数枚の半導体基板を複数段に分けて収納可能に構成されている。物品Wの上面及び底面は、塞がった状態であり、特に上面には物品Wの搬送時に物品搬送装置1により把持されるフランジ部W1(
図2参照)が設けられる。また、物品Wの4つの側面のうちの一面には、半導体基板を出し入れするための開口部が設けられる。物品Wの残りの3つの側面は塞がった状態とされている。
【0014】
搬送対象場所90は、物品Wの搬送元や、物品Wの搬送先となる場所である。
図1に示すように、搬送対象場所90は、移動経路Rに沿って複数箇所に設けられている。搬送対象場所90では、例えば物品Wの処理が行われる。搬送対象場所90は、半導体基板に対する処理を行う処理装置90aと、物品搬送装置1と物品Wを授受するための授受部90bとが含まれる。授受部90bは、いわゆるロードポートである。授受部90bで受け取った物品Wに収納された半導体基板が、処理装置90aが備える取出装置等によって取り出されると、処理装置90aにおいて、例えば基板洗浄や、ベーキングや、レジストの塗布や剥離等の処理が行われる。
【0015】
移動経路Rとは、物品搬送装置1が移動する経路である。本実施形態では、移動経路Rは物品搬送装置1が利用される建屋の天井から吊り下げ支持されたレール99(
図2参照)により規定される。したがって、本実施形態では、物品搬送装置1は、所謂天井搬送車として構成される。
【0016】
図2は、物品搬送装置1が物品Wを搬送する状態の側面図である。
図2に示されるように、物品搬送装置1は、移動体2、カバー部3、移載機構4、制御部5、高さ検出部15を備えている。移動体2は、物品Wの搬送のために移動する。本実施形態では、移動体2は、レール99の上側に位置しており、車輪2Aを駆動する走行用モータ2Mを有する。この走行用モータ2Mによって車輪2Aが回転駆動することで、進行方向Xに対する推進力が移動体2に付与される。物品Wの搬送のための移動とは、物品Wの搬送元から物品Wの搬送先までの移動経路Rに沿っての走行を意味する。したがって、移動体2は、物品Wの搬送元から物品Wの搬送先までの移動経路Rに沿って走行する。
【0017】
カバー部3は、移動体2に支持され、搬送中の物品Wが収容される収容領域Sの側周囲の少なくとも一部を覆う。「移動体2に支持され、」とは、移動体2に連結固定され、移動体2の移動に合わせてカバー部3が一体的に移動することを意味する。本実施形態では、カバー部3は、レール99よりも下側に位置する状態で、移動体2に吊り下げ支持されている。搬送中の物品Wが収容される収容領域Sとは、移動経路Rに沿って物品Wの搬送元から物品Wの搬送先までの搬送中において物品Wが配置される物品搬送装置1の領域であって、カバー部3により覆われた領域をいう。このような物品Wが配置される領域は、カバー部3により側方から覆われることから、収容領域Sと称せられる。カバー部3による収容領域Sの覆い(カバー)は、物品Wの側方の全て(全周囲)であっても良いし、全側方のうちの一部であっても良い。
【0018】
本実施形態では、カバー部3は、物品Wを側方(水平方向)から覆う一対の側方カバー部3Bと、物品Wを上方から覆う上方カバー部3Cとを備えて構成される。
図2の例では、一対の側方カバー部3Bの夫々と上方カバー部3Cとが互いに連結され、カバー部3が構成されている。また、上方カバー部3Cにおける、移動経路Rに沿う方向(進行方向X)の両端部の夫々から、側方カバー部3Bが下方に延在している。これにより、一対の側方カバー部3Bの夫々が、保持部10に保持された物品Wを進行方向Xの両側から覆っている。また、カバー部3は、幅方向Yの両側及び下方が開放された形状で構成され、幅方向Yの外側から見た場合に角ばった逆U字状に形成されている。このため、収容領域Sは、幅方向Yの両側及び下側において、カバー部3の外側と連通した状態とされている。
【0019】
移載機構4は、物品Wの保持と、移載対象箇所との間での物品Wの移載とを行う。物品Wの保持とは、移動体2が移動経路Rに沿って移動する際に、物品Wが落下しないように保持することを意味する。例えば、このような保持としては、物品Wに設けられたフランジ部W1を把持するように行うと好適である。移載対象箇所とは、上述した物品Wの搬送元や物品Wの搬送先、すなわち搬送対象場所90が相当する。物品Wの移載とは、物品Wの授受にあたる。したがって、移載機構4は、移動体2が移動経路Rに沿って移動する際に、物品Wが落下しないように、物品Wに設けられたフランジ部W1を上方から把持し、物品Wの搬送元や物品Wの搬送先である搬送対象場所90との間で物品Wの授受を行う。
【0020】
本実施形態では、移載機構4は、保持部10と、旋回部20と、昇降部31と、スライド部32とを備える。保持部10は、移動体2に支持され、物品Wを保持する保持状態と物品Wの保持を解除する解除状態とに状態変更可能である。「移動体2に支持され、」とは、カバー部3と同様に、移動体2に連結され、移動体2の移動に応じて保持部10が移動することを意味する。物品Wを保持する保持状態とは、上述した物品Wに設けられたフランジ部W1を把持している状態をいう。物品Wの保持を解除する解除状態とは、物品Wに設けられたフランジ部W1を把持していない状態をいう。本実施形態では、保持部10は、把持用モータ10Mと、一対の把持爪10Cとを有している。一対の把持爪10Cは、把持用モータ10Mにより駆動されて把持姿勢と解除姿勢との間で姿勢変更可能である。一対の把持爪10Cは、互いに接近する方向に移動することで把持姿勢となり、互いに離間する方向に移動することで解除姿勢となる。一対の把持爪10Cが把持姿勢にて物品Wのフランジ部W1を把持することで、保持部10が物品Wを保持する保持状態となり、一対の把持爪10Cがフランジ部W1を把持した状態から解除姿勢となることで、保持部10が物品Wの保持を解除する解除状態となる。保持部10は、フランジ部W1を把持することから、チャックに相当する。
【0021】
旋回部20は、保持部10を上下方向に沿う旋回軸心回りに旋回させる。本実施形態では、旋回部20は、鉛直方向Zに沿う旋回軸4b周りに物品Wを旋回させて当該物品Wの姿勢を変更するように構成されている。本実施形態では、旋回部20は、鉛直方向Zに沿う旋回軸4bと、当該旋回軸4bを駆動する旋回用モータ20Mとが設けられている。旋回軸4bは、保持部10と連結されており、旋回用モータ20Mに駆動されて保持部10と共に旋回する。これにより、保持部10及び当該保持部10に把持された状態の物品Wを、鉛直方向Zに沿う旋回軸4b周りに旋回させることが可能となる。
【0022】
昇降部31は、保持部10を収容領域Sの中の内部位置と収容領域Sの外の外部位置との間で昇降移動させる。上述したように、本実施形態では、収容領域Sは、幅方向Yの両側及び下方が開放された状態でカバー部3により覆われている。この収容領域S内の位置(すなわち、収容領域Sに含まれる位置)が内部位置にあたる。したがって、
図2において実線で示した物品Wは内部位置において支持されている状態となる。一方、収容領域S外の位置(すなわち、収容領域Sに含まれない位置)が外部位置にあたる。
図2において破線で示されるように、物品Wが授受部90bに載置される状態となる場合には、物品Wは外部位置において支持されている状態となる。昇降部31は、保持部10(保持部10で保持された物品W)をこのような内部位置と外部位置との間で昇降移動可能に構成されている。
【0023】
本実施形態では、昇降部31による保持部10の昇降移動に応じて、保持部10に保持された状態の物品Wが、収容領域Sの内部位置と、授受部90bが設けられる位置との間で、昇降移動される。本実施形態では、昇降部31は、保持部10に連結された昇降ベルト30Aと、昇降用プーリ(図示しない)を駆動させて当該昇降ベルト30Aを巻き取り又は繰り出す昇降用モータ31Mとを有している。これにより、昇降用モータ31Mを駆動することで、保持部10に保持された状態の物品Wを、収容領域Sの中の内部位置と授受部90bとの間において上昇したり下降したりすることが可能となる。この昇降部31により物品Wを昇降移動させることで、移動経路Rに対して上下方向の異なる位置(本例では下側)になる搬送対象場所90に対して物品Wを移載することができる。またこの際、昇降部31による保持部10の昇降高さを調整することにより、搬送対象場所90に対する保持部10の位置ずれを、鉛直方向Zにおいて調整することが可能である。
【0024】
スライド部32は、保持部10を水平方向に沿ってスライド移動させる。本実施形態では、スライド部32による保持部10のスライド移動に応じて、保持部10に保持された状態の物品Wがスライド移動される。本実施形態では、スライド部32は、カバー部3に取り付けられており、スライド用ベルト(図示しない)と、スライド用プーリ(図示しない)を駆動させてスライド用ベルトを巻き取り又は繰り出すスライド用モータ32Mとを有している。スライド部32は、スライド用モータ32Mの駆動に伴い、保持部10及び保持部10に保持された状態の物品Wを幅方向Yに沿ってスライド移動させる。このスライド部32により物品Wを幅方向Yにスライド移動させることで、物品Wの移載時に、搬送対象場所90に対する位置ずれを、幅方向Yにおいて調整することが可能である。
【0025】
制御部5は、移動体2及び移載機構4を制御する。移動体2を制御するとは、移動体2による移動経路Rに沿った走行や停止を制御することを意味する。また、移載機構4を制御するとは、移載機構4による物品Wの保持や物品Wの搬送元や物品Wの搬送先との間で行われる物品Wの授受を制御することを意味する。具体的には、制御部5は、保持部10による物品Wの保持及び保持解除に関する制御を行ったり、旋回部20、昇降部31、及びスライド部32による物品Wの移動や旋回に関する制御を行ったりして、搬送元や搬送先との間での物品Wの授受を行う。
図2には、制御部5がカバー部3に設けられているように示しているが、制御部5はカバー部3とは異なる他の箇所に設けられていても良い。
【0026】
ここで、上述したように、カバー部3により収容領域Sが構成されるが、カバー部3は収容領域Sに面する内面構造を備えている。「収容領域Sに面する内面構造」とは、収容領域Sの外縁を区画する面が相当する。この内面構造には、カバー部3の内壁面3A及び当該内壁面3Aよりも収容領域S側に配置された全ての構造物が含まれる。具体的には、内面構造には、カバー部3の内壁面3A、物品Wの下方への落下を規制するための落下規制部6、保持部10により保持された物品Wの揺動を規制する揺動規制機構7、収容領域Sに突出するように設けられたセンサ等が含まれる。
【0027】
内面構造は、上下方向における特定箇所において収容領域S側へ突出するように形成された突出部8を含む。上下方向における特定箇所とは、収容領域Sのうち、鉛直方向Zにおける保持部10よりも下側(下側の箇所)である。収容領域S側へ突出するとは、カバー部3の内壁面3Aから収容領域S側へ突出することをいう。したがって、内面構造は、収容領域Sのうち、鉛直方向Zにおける保持部10よりも下側において、カバー部3の内壁面3Aから収容領域S側へ突出するように配置された突出部8を有する。本実施形態では、突出部8として落下規制部6が挙げられる。
【0028】
落下規制部6は、鉛直方向Zにおける収容領域Sに収容された物品Wよりも下側において、カバー部3の内壁面3Aから収容領域S側へ突出するように配置される。この落下規制部6は、カバー部3の内壁面3Aのうち、保持部10により保持された物品Wを挟んで互いに対向する一対の側面に設けられている。また、落下規制部6は、図示しないリンク機構を備えており、保持部10により保持された物品Wが収容領域Sに収容された状態で、一対の規制体駆動部6Mの夫々がリンク機構を動作させることで、収容領域Sの側に突出した突出姿勢となる。落下規制部6は、このような突出姿勢となった状態で、少なくとも一部が、鉛直方向Zに沿う鉛直方向視で、物品Wと重複するように配置される。これにより、仮に物品Wの搬送中に保持部10が解除状態になった場合であっても、落下規制部6が物品Wを下側から支えることになるため、例えば床への物品Wの落下を規制することが可能となる。また、落下規制部6は、物品Wの移載時等、移載機構4が物品Wを収容領域Sの外部位置へ移動させる場合には引退姿勢となる。落下規制部6は、引退姿勢となった状態では、全体が、鉛直方向Zに沿う鉛直方向視で、物品Wと重複しないように配置される。
【0029】
揺動規制機構7は、支持部7Aと当接部7Bと当接駆動部7Mとを備えている。支持部7Aは、当接部7Bを支持している。この揺動規制機構7は、カバー部3の内壁面3Aのうち、保持部10により保持された物品Wを挟んで互いに対向する一対の側面に設けられている。本例では、落下規制部6が設けられた一対の側面のそれぞれに揺動規制機構7が設けられている。また、本実施形態では、支持部7Aが当接駆動部7Mによって駆動されることにより、当接部7Bをカバー部3から収容領域Sの側に突出させる突出姿勢と、当該突出姿勢よりもカバー部3の側へ引退させた引退姿勢と、に姿勢変更されるように構成されている。保持部10により保持された物品Wが収容領域Sに収容された状態で、一対の当接部7Bが突出姿勢となることで、当該一対の当接部7Bが、物品Wの側面に対して両側から当接する。これにより、物品Wの搬送時や、移載機構4による移載時に物品Wが揺動することを規制する。一方、物品Wの移載時等、移載機構4が物品Wを収容領域Sの外部位置へ移動させる場合には、一対の当接部7Bが引退姿勢となることで、当該一対の当接部7Bが物品Wから離間する。これにより、物品Wの移動を適切に行うことができる。
【0030】
ここで、
図3は、本実施形態における干渉高さ範囲の説明図であり、
図4は、収容領域Sに収容された物品Wの状態を示した図である。移載機構4は、昇降部31による保持部10の昇降高さが規定の干渉高さ範囲外の高さである場合には、旋回部20により保持部10を移動させても内面構造と干渉しないが、昇降部31による保持部10の昇降高さが干渉高さ範囲内の高さである場合には、旋回部20により保持部10を旋回させることによっては突出部8と干渉する場合がある。上述したように、保持部10は、昇降部31により鉛直方向Zに沿って昇降移動させられる。よって、昇降部31による保持部10の昇降高さとは、昇降部31により昇降移動させられた保持部10の高さが相当する。
図3では、一対の把持爪10Cを含まない保持部10の下面を基準面10Dとし、保持部10が鉛直方向Zにおいて最も高い位置に上昇させられた場合の保持部10の基準面10Dの位置を基準位置RPとして、当該基準位置RPから下方への移動量が昇降高さhとして示される。「旋回部20により保持部10を移動させ」とは、旋回部20により鉛直方向Zに沿う旋回軸4b周りに行われる、所定の旋回角度での旋回が相当する。
図4では、このような旋回角度がθとして示されている。内面構造とは、収容領域Sを構成する面であって、本実施形態では、カバー部3の内壁面3A、落下規制部6、揺動規制機構7、収容領域Sに突出するように設けられたセンサ等が相当する。干渉とは本実施形態では接触を意味する。
【0031】
ここで、
図4に示されるように、移載機構4により保持された物品Wにおける幅方向Yの左側Y1の端縁に沿う位置であって、進行方向Xの中央部を点Qとし、物品Wが旋回移動を行われる際の旋回中心を点Oとした場合において、線分OQが幅方向Yと平行になる旋回角度を0度とする。そして、
図3に示されるように、干渉高さ範囲の上限値がh1であり、下限値がh2であるとする。この時、保持部10の基準面10Dが、干渉高さ範囲に含まれない場合、すなわち、昇降高さhがh1より小さい場合(本例では、保持部10の基準面10Dがh1よりも上方に位置している場合)、或いは、昇降高さhがh2より大きい場合(本例では、保持部10の基準面10Dがh2よりも下方に位置している場合)には、旋回部20による物品Wの旋回移動(旋回角度が0度からθだけ回転する移動)や、スライド部32による物品Wのスライド移動が行われても、移載機構4は、カバー部3の内面構造(内壁面3A、落下規制部6、揺動規制機構7、収容領域Sに突出するように設けられたセンサ等)に接触することはない。しかしながら、保持部10の基準面10Dが、干渉高さ範囲に含まれる場合(本例では、保持部10の基準面10Dがh1からh2までの間に位置している場合)には、
図4において二点鎖線で示されるように、旋回部20による物品Wの旋回移動が行われた場合に、移載機構4は、突出部8(本例では落下規制部6)に接触することがある。同様に、保持部10の基準面10Dが、干渉高さ範囲に含まれる場合において、スライド部32による物品Wのスライド移動が行われると、その時の旋回角度θによっては、移載機構4が突出部8(本例では落下規制部6)に接触することがある。
【0032】
このような移載機構4が内面構造と接触しない昇降高さの範囲が干渉高さ範囲外であり、移載機構4が突出部8(本例では落下規制部6)と接触する場合がある昇降高さの範囲が干渉高さ範囲内である。このような干渉高さ範囲が
図3に示される。
図3に示されるように、干渉高さ範囲は、基準位置RPを基準として、昇降高さhが、昇降高さがh1からh2の範囲に亘って設けられる。したがって、保持部10の基準面10Dの昇降高さが、h1より小さい場合であるか、或いは、h2より大きい場合には、旋回部20による物品Wの旋回移動や、スライド部32による物品Wのスライド移動が行われても、移載機構4は、カバー部3の内面構造に干渉しない。
【0033】
保持部10の高さ、すなわち保持部10の昇降高さは、高さ検出部15(
図2及び
図3参照)が検出するように構成することが可能である。高さ検出部15が、基準位置RPからの保持部10の昇降高さhを直接検出するように構成する場合には、例えば基準位置RPから保持部10までの距離を検出する距離センサを用いて構成することが可能である。そして、保持部10の基準面10Dが基準位置RPにある状態を基準とし、そこからの距離センサの検出値の変化量を昇降高さhとして検出すると好適である。また、物品搬送装置1が昇降用モータ31Mの回転量を検出するエンコーダを備えるように構成する場合には、高さ検出部15が、エンコーダの検出結果に基づき基準位置RPからの保持部10の昇降高さhを算定して検出するように構成することも可能である。エンコーダが検出した回転量を利用して、高さ検出部15が昇降高さhを算定する場合には、エンコーダや高さ検出部15に対する電力供給が停止された場合であっても、エンコーダが検出した回転量を継続して記憶しておくことが可能な記憶部を備えておくと良い。ここで、「継続して記憶しておく」とは、エンコーダや高さ検出部15に対する電力供給が停止された場合であっても、エンコーダが検出した回転量が消失されずに記憶しておくことを指す。
【0034】
図5に示されるように、高さ検出部15による保持部10の昇降高さの検出結果(算定結果)は、制御部5に伝達される。これにより、制御部5は、高さ検出部15による検出結果に基づいて、昇降高さが干渉高さ範囲内であるか否かを判定することが可能となる。具体的には、高さ検出部15による検出結果である保持部10の基準面10Dの算定結果が、h1以上、且つ、h2以下である場合に、制御部5は、保持部10の昇降高さが干渉高さ範囲内であると判定する。
【0035】
図5に示されるように、物品搬送装置1に対して、制御部5は作業者により操作される操作端末100からの指令に従って移載機構4を動作させることができるように構成される。作業者とは、物品搬送装置1の管理や保守等を行う人である。操作端末100とは、移載機構4をはじめ、上述した物品搬送装置1の各機能部を遠隔操作することが可能な制御部5と有線又は無線により接続された端末である。物品搬送装置1の保守点検を行う場合や物品搬送装置1の故障が生じた場合等に、作業者が操作端末100を操作して動作指令を発信し、物品搬送装置1の移動体2と、保持部10、旋回部20、昇降部31、及びスライド部32を備えた移載機構4とを動作させることが可能である。特に、作業者により操作される操作端末100からの指令に従って移載機構4を動作させるモードは、保守モードと称される。
【0036】
制御部5は、このような保守モードにおいて、操作端末100から移載機構4の動作指令を受け付けた場合に、昇降高さが干渉高さ範囲内であるか否かを判定する。本例では、移載機構4の動作指令とは、旋回部20、昇降部31、及びスライド部32の姿勢を規定の基準姿勢とするための基準姿勢復帰動作の指令である。規定の基準姿勢とは、予め規定された基準となる姿勢である。例えば、旋回部20の基準姿勢とは、上述した旋回角度が0度の姿勢である。例えば、昇降部31の基準姿勢は、保持部10が昇降移動範囲の上限付近に位置する姿勢である。例えば、スライド部32の基準姿勢とは、保持部10がスライド移動範囲の中央付近に位置する姿勢である。従って、本例では、旋回部20、昇降部31、及びスライド部32が全て基準姿勢である場合には、保持部10に保持された物品Wの全体が収容領域Sの内部に収容される。このように、基準姿勢は、いわゆるホームポジションと称されるものである。旋回部20、昇降部31、及びスライド部32の姿勢を、このような基準姿勢に復帰させるための動作の指令が、基準姿勢復帰動作の指令に相当する。制御部5は、操作端末100から基準姿勢復帰動作の指令を受け付けると、保持部10の昇降高さが干渉高さ範囲内であるか否かを判定する。昇降高さの判定は、上述した高さ検出部15の検出結果に基づき行われる。
【0037】
制御部5は、保持部10の昇降高さが干渉高さ範囲外である場合は、旋回部20による物品Wの旋回移動や、スライド部32による物品Wのスライド移動が行われた場合であっても、移載機構4がカバー部3の内面構造に接触しない。そこで、制御部5は、上述した判定の結果、保持部10の昇降高さが干渉高さ範囲外である場合は、操作端末100からの動作指令に従って移載機構4の動作を実行する。具体的には、制御部5は、把持用モータ10M、旋回用モータ20M、昇降用モータ31M、スライド用モータ32Mの夫々を駆動させる。これにより、操作端末100を操作する作業者の指令に従って移載機構4が動作する。
【0038】
一方、保持部10の昇降高さが干渉高さ範囲内である場合は、旋回部20による物品Wの旋回移動や、スライド部32による物品Wのスライド移動が行われた場合に、移載機構4が突出部8(本例では落下規制部6)に接触する可能性がある。そこで、制御部5は、保持部10の昇降高さが干渉高さ範囲内である場合には、動作指令に従った移載機構4の動作のうち、旋回部20による保持部10の旋回動作を禁止する。ここで、保持部10の昇降高さが干渉高さ範囲内である場合とは、上述した判定を行った結果、保持部10の昇降高さが干渉高さ範囲内の場合である。動作指令に従った移載機構4の動作とは、作業者が操作端末100を操作して発信された動作指令に応じた、物品搬送装置1の移動体2と、保持部10、旋回部20、昇降部31、及びスライド部32を備えた移載機構4との動作である。このため、動作指令に従った移載機構4の動作のうち、旋回部20による保持部10の旋回動作を禁止するとは、保持部10、旋回部20、昇降部31、及びスライド部32を備えた移載機構4の動作のうち、旋回部20による保持部10の旋回動作を禁止し、保持部10、昇降部31、及びスライド部32の動作を許容することを意味する。
【0039】
本実施形態では、制御部5は、保守モードにおいて、操作端末100から移載機構4の動作指令を受け付けた場合であって、保持部10の昇降高さが干渉高さ範囲内である場合は、旋回部20による保持部10の旋回動作に加えて、スライド部32による保持部10のスライド移動動作も禁止する。この場合には、制御部5は、動作指令に従った移載機構4の動作のうち、保持部10、旋回部20、昇降部31、及びスライド部32を備えた移載機構4の動作のうち、旋回部20による保持部10の旋回動作、及び、スライド部32による保持部10のスライド移動動作の双方を禁止し、保持部10、及び、昇降部31の動作を許容する。
【0040】
このように、制御部5は、現在の移載機構4の姿勢が、保持部10を移動させた場合に、移載機構4がカバー部3の内面構造に接触する可能性がある場合には、旋回部20による保持部10の旋回動作、及びスライド部32による保持部10のスライド移動動作を禁止させる。これにより、作業者の操作ミス等によってカバー部3の内面構造への保持部10の接触を防止できる。
【0041】
また、制御部5は、保守モードにおいて、上述した操作端末100から移載機構4の動作指令を受け付けた場合であって、保持部10の昇降高さが干渉高さ範囲内であった場合には、旋回部20による保持部10の旋回動作を禁止しつつ、動作指令に昇降部31による昇降動作が含まれる場合には、当該昇降動作を実行し、昇降高さが干渉高さ範囲外の高さとなった場合には、当該動作指令に従って旋回部20による保持部10の旋回動作も実行するように構成することが可能である。保守モードとは、作業者により操作される操作端末100からの指令に従って移載機構4を動作するモードである。制御部5は、上述したように、操作端末100から移載機構4の動作指令を受け付けた場合であって、保持部10の昇降高さが干渉高さ範囲内であった場合には、旋回部20による保持部10の旋回動作を禁止する。これにより、カバー部3の内面構造への保持部10の接触を防止できる。そして、動作指令に昇降部31による昇降動作が含まれる場合には、まず、保持部10の基準面10Dが干渉高さ範囲外の高さになるように、昇降部31の昇降動作を実行し、その後、動作指令に従って旋回部20による保持部10の旋回動作を実行する。これにより、動作指令に従って旋回部20が保持部10を旋回させた場合であっても、保持部10がカバー部3の内面構造に接触しない動作をさせることが可能となる。
【0042】
図6は、以上のような制御部5の処理を示すフローチャートである。まず、制御部5が操作端末100から動作指令を受け付けると(ステップ#10:Yes)、処理を開始する。制御部5が操作端末100から動作指令を受け付けると、制御部5が保持部10の昇降高さを判定する。保持部10の昇降高さが干渉高さ範囲外である場合には(ステップ#11:Yes)、制御部5は、受け付けた動作指令に従って移載機構4を動作させる(ステップ#12)。動作指令に従った動作が完了すると、制御部5が処理を終了する。
【0043】
ステップ#11において、制御部5により判定された保持部10の昇降高さが干渉高さ範囲外でない場合には(ステップ#11:No)、制御部5は旋回部20による保持部10の旋回動作を禁止する(ステップ#13)。更に、操作端末100から受け付けた動作指令に、スライド部32による保持部10のスライド移動動作が含まれている場合には(ステップ#14:Yes)、制御部5は、このスライド部32による保持部10のスライド移動動作も禁止する(ステップ#15)。
【0044】
ステップ#15において、スライド部32による保持部10のスライド移動動作が禁止された場合(ステップ#15)、或いは、ステップ#14において、操作端末100から受け付けた動作指令に、スライド部32による保持部10のスライド移動動作が含まれていない場合には(ステップ#14:No)、操作端末100から受け付けた動作指令に、昇降部31による保持部10の昇降動作が含まれているか否かが判定される(ステップ#16)。
【0045】
操作端末100から受け付けた動作指令に、昇降部31による保持部10の昇降動作が含まれている場合には(ステップ#16:Yes)、制御部5が、受け付けた動作指令に従って昇降部31による保持部10の昇降動作を実行する(ステップ#17)。この昇降動作は、保持部10の昇降高さが干渉高さ範囲外となるまで行われる(ステップ#18:No)。保持部10の昇降高さが干渉高さ範囲外となると(ステップ#18:Yes)、制御部5は、昇降部31による保持部10の昇降動作を終了させる(ステップ#19)。続いて、制御部5は、操作端末100から受け付けた動作指令に従って、旋回部20による保持部10の旋回動作を実行する(ステップ#20)。なお、この時、フローチャートでは示していないが、ステップ#14において、操作端末100から受け付けた動作指令に、スライド部32による保持部10のスライド移動動作が含まれていた場合には(ステップ#14:No)、ステップ#20の処理の後、操作端末100から受け付けた動作指令に従って、スライド部32による保持部10のスライド移動動作を実行すると良い。動作指令に従った動作が完了すると、制御部5が処理を終了する。
【0046】
一方、ステップ#16において、操作端末100から受け付けた動作指令に、昇降部31による保持部10の昇降動作が含まれていない場合には(ステップ#16:No)、制御部5は、移載機構4を動作させることなく処理を終了する。この時、制御部5は、例えば
図7に示されるように、操作端末100の表示画面100Aに「(保持部10の)昇降高さが干渉高さ範囲内です」といったメッセージを表示したり、保持部10がカバー部3の内面構造に接触する姿勢、或いは、接触する可能性がある姿勢であることを示す図形を表示したりすると良い。或いは、操作端末100のスピーカ100Bから「(保持部10の)昇降高さが干渉高さ範囲内です」といった音声を出力したりすると良い。もちろん、他のメッセージの表示や音声の出力でも良い。また、物品搬送装置1が表示デバイスを備えている場合には、当該表示デバイスに上述したメッセージを表示することも可能であるし、物品搬送装置1がスピーカを備えている場合には、当該スピーカから上述した音声を出力するように構成しても良い。
【0047】
保持部10の昇降高さが干渉高さ範囲内である場合に、制御部5が、保持部10の昇降高さが干渉高さ範囲外となるように昇降動作を行った上で、旋回部20による保持部10の旋回動作やスライド部32による保持部10のスライド移動動作を実行することで、移載機構4がカバー部3の内面構造に接触することを防止しつつ、操作端末100から受け付けた動作指令に従って移載機構4を動作させることが可能となる。
【0048】
2.物品搬送装置のその他の実施形態
次に、物品搬送装置1のその他の実施形態について説明する。
【0049】
(1)上記の実施形態では、物品搬送装置1は、所謂天井搬送車として構成される例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、物品搬送装置1は無人搬送車や有軌道台車等の各種搬送車であっても良い。また、レール99に沿って移動しない搬送装置(例えばドローン等)であっても良い。
【0050】
(2)上記の実施形態では、突出部8が落下規制部6であるとして説明した。しかし、そのような構成に限定されるのではなく、突出部8が、カバー部3の内壁面3A、揺動規制機構7、収容領域Sに突出するように設けられたセンサ等であっても良い。
【0051】
(3)上記の実施形態では、移載機構4がスライド部32を含む場合の例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることはなく、移載機構4はスライド部32を含まないように構成しても良い。この場合、制御部5は、保持部10の昇降高さが干渉高さ範囲内である場合には、旋回部20による保持部10の旋回動作のみを禁止するように構成すると良い。
【0052】
(4)上記の実施形態では、内面構造は、収容領域Sを構成する面であって、カバー部3の内壁面3A、落下規制部6、揺動規制機構7、収容領域Sに突出するように設けられたセンサ等が相当するとして説明した。しかし、内面構造は、落下規制部6や揺動規制機構7や収容領域Sに突出するように設けられたセンサ等が設けられていない場合には、カバー部3の内壁面3Aのみが相当する。
【0053】
(5)上記の実施形態では、制御部5が、保持部10の昇降高さが干渉高さ範囲内であった場合には、旋回部20による保持部10の旋回動作を禁止しつつ、動作指令に昇降部31による保持部10の昇降動作が含まれる場合には、当該昇降動作を実行し、昇降高さが干渉高さ範囲外の高さとなった場合には、動作指令に従って旋回部20による保持部10の旋回動作も実行するとして説明した。しかし、そのような構成に限定されるのではなく、制御部5は、保持部10の昇降高さが干渉高さ範囲内であった場合には、旋回部20による保持部10の旋回動作を禁止すると共に、昇降部31による保持部10の昇降動作も禁止しても良い。
【0054】
(6)上記の実施形態では、保持部10が鉛直方向Zにおいて最も高い位置に上昇させられた場合の保持部10の基準面10Dの位置を基準位置RPとして、当該基準位置RPから下方への移動量が昇降高さhであるとして説明した。しかし、そのような構成に限定されるのではなく、例えば保持部10が鉛直方向Zにおいて最も高い位置に上昇させられた場合の保持部10の基準面10D(一対の把持爪10Cを含まない保持部10の下面)の位置とは異なる位置(例えば保持部10の上面の位置等)を基準位置RPとして、当該基準位置RPから下方への移動量を昇降高さhとしても良い。或いは、保持部10が鉛直方向Zにおいて最も低い位置に下降させられた場合の保持部10の所定の位置(例えば下面の位置や上面の位置等)を基準位置RPとして、当該基準位置RPから上方への移動量を昇降高さhとしても良い。更には、昇降高さは、干渉高さ範囲の上端部、中央部、下端部等のいずれかからの高さとしても良い。
【0055】
(7)上記の実施形態では、高さ検出部15が、距離センサを用いて構成することが可能であり、或いは、昇降用モータ31Mの回転量を検出するエンコーダの検出結果に基づき昇降高さを検出する構成を例示して説明した。しかし、そのような構成に限定されるのではなく、例えば保持部10の移動方向(鉛直方向Z)に沿って静電容量センサを配置し、この静電容量センサの検出結果に基づき、保持部10の昇降高さを検出するように構成しても良いし、抵抗値やインピーダンスの変化に基づき、保持部10の昇降高さを検出するように構成しても良い。
【0056】
(8)上記の実施形態では、動作指令は、旋回部20、昇降部31、及びスライド部32の姿勢を規定の基準姿勢とするための基準姿勢復帰動作の指令であるとして説明した。しかし、そのような構成に限定されるものではなく、動作指令は、所定の基準姿勢とは異なる他の姿勢(例えばメンテナンスを行い易いようにする姿勢等)であっても良い。
【0057】
(9)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0058】
3.上記実施形態の概要
【0059】
以下、上記において説明した物品搬送装置の概要について説明する。
【0060】
物品搬送装置は、
物品を搬送する物品搬送装置であって、
前記物品の搬送のために移動する移動体と、
前記移動体に支持され、搬送中の前記物品が収容される収容領域の側周囲の少なくとも一部を覆うカバー部と、
前記物品の保持と、移載対象箇所との間での前記物品の移載とを行う移載機構と、
前記移動体及び前記移載機構を制御する制御部と、を備え、
前記移載機構は、前記移動体に支持され、前記物品を保持する保持状態と前記物品の保持を解除する解除状態とに状態変更可能である保持部と、前記保持部を上下方向に沿う旋回軸心回りに旋回させる旋回部と、前記保持部を前記収容領域の中の内部位置と前記収容領域の外の外部位置との間で昇降移動させる昇降部とを備え、
前記カバー部は、前記収容領域に面する内面構造を備え、
前記内面構造は、上下方向における特定箇所において前記収容領域側へ突出するように形成された突出部を含み、
前記移載機構は、前記昇降部による前記保持部の昇降高さが規定の干渉高さ範囲内である場合には、前記旋回部により前記保持部を旋回させることによって前記突出部と干渉する場合があり、前記昇降部による前記保持部の昇降高さが前記干渉高さ範囲外の高さである場合には、前記旋回部により前記保持部を旋回させても前記内面構造と干渉せず、
前記制御部は、作業者により操作される操作端末からの指令に従って前記移載機構を動作させる保守モードを実行可能であり、
前記制御部は、前記保守モードにおいて、前記操作端末から前記移載機構の動作指令を受け付けた場合に、前記昇降高さが前記干渉高さ範囲内であるか否かを判定し、前記昇降高さが前記干渉高さ範囲外の高さである場合は、前記動作指令に従って前記移載機構の動作を実行し、前記昇降高さが前記干渉高さ範囲内である場合は、前記動作指令に従った前記移載機構の動作のうち、前記旋回部による前記保持部の旋回動作を禁止する。
【0061】
本構成によれば、保守モードにおいて作業者が誤った移載機構の動作指令を出した場合であっても、保持部の旋回動作を行わせないようにできると共に、それ以外の場合には移載機構に動作指令に従った動作を行わせることができる。これより、保持部と突出部との干渉を回避しつつ、適切に動作指令に応じた移載機構の動作を行わせることができる。
【0062】
ここで、
前記制御部は、前記保守モードにおいて、前記操作端末から前記移載機構の動作指令を受け付けた場合であって、前記昇降高さが前記干渉高さ範囲内であった場合には、前記旋回部による前記保持部の旋回動作を禁止しつつ、前記動作指令に前記昇降部による前記保持部の昇降動作が含まれる場合には、当該昇降動作を実行し、前記昇降高さが前記干渉高さ範囲外の高さとなった場合には、前記動作指令に従って前記旋回部による前記保持部の旋回動作も実行すると好適である。
【0063】
本構成によれば、保守モードにおいて作業者が誤った移載機構の動作指令を出した場合であって、保持部の旋回動作を禁止した場合であっても、昇降動作を行うことによって保持部が旋回動作をしても保持部が突出部に干渉しない高さになった場合には、動作指令に従って保持部の旋回動作も実行する。従って、保持部と突出部との干渉を回避しつつ、適切に動作指令に応じた移載機構の動作を行わせることができる。
【0064】
また、
前記保持部の高さを検出する高さ検出部を更に備え、
前記制御部は、前記高さ検出部による検出結果に基づいて、前記昇降高さが前記干渉高さ範囲内であるか否かを判定すると好適である。
【0065】
本構成によれば、例えば電力供給が行われていない状態の物品搬送装置に対して電力供給を開始した場合等、制御部がこれまでの制御結果に基づいて保持部の昇降高さを判定できない場合であっても、高さ検出部を備えることにより、昇降高さを適切に判定できる。
【0066】
また、
前記移載機構は、スライド部を更に備え、
前記スライド部は、前記保持部を水平方向に沿ってスライド移動させ、
前記制御部は、前記保守モードにおいて、前記操作端末から前記移載機構の動作指令を受け付けた場合であって、前記昇降高さが前記干渉高さ範囲内である場合は、前記旋回部による前記保持部の旋回動作に加えて、前記スライド部による前記保持部のスライド移動動作も禁止すると好適である。
【0067】
物品搬送装置においては、保持部の旋回動作を行わなくても、スライド移動動作を行って保持部の位置が水平方向に移動することで、保持部と突出部とが干渉する可能性がある。そこで、本構成によれば、このような干渉も適切に回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本開示に係る技術は、物品を搬送する物品搬送装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 :物品搬送装置
2 :移動体
3 :カバー部
4 :移載機構
5 :制御部
8 :突出部
10 :保持部
15 :高さ検出部
20 :旋回部
31 :昇降部
32 :スライド部
100 :操作端末
S :収容領域
W :物品