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特許7501503車両挙動推定システム及び車両挙動推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】車両挙動推定システム及び車両挙動推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20240611BHJP
   G01M 17/06 20060101ALI20240611BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20240611BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20240611BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20240611BHJP
   B62D 137/00 20060101ALN20240611BHJP
【FI】
G01M17/007 H
G01M17/06
B62D6/00 ZYW
B62D101:00
B62D113:00
B62D137:00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021188161
(22)【出願日】2021-11-18
(65)【公開番号】P2023074946
(43)【公開日】2023-05-30
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川村 有輔
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-140506(JP,A)
【文献】特開2021-051688(JP,A)
【文献】特開平07-047970(JP,A)
【文献】特開2006-111226(JP,A)
【文献】特開2004-217178(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0308656(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111028623(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00 - 17/10
G08G 1/00 - 1/16
B62D 6/00 - 6/10
B62D 101/00
B62D 113/00
B62D 137/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断対象車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサと、
前記診断対象車両の車速を検出する車速センサと、
プロセッサと、
を備え、
前記プロセッサが、
前記ヨーレート及び前記車速に基づいて、前記診断対象車両の走行軌跡の曲率である第1曲率を求め、
前記診断対象車両とは別の車両である基準車両のステアリグホイールの操舵角に基づく値である操舵角関連値と操舵に起因する前記基準車両の挙動との関係性を規定した判定基準、及び、前記第1曲率に基づく値である曲率関連値に基づいて、前記診断対象車両の操舵に関する運転診断を行う車両挙動推定システム。
【請求項2】
前記診断対象車両の操舵角センサである第1操舵角センサの検出値と前記第1曲率との関係を示す第1マップと、
前記基準車両の操舵角センサである第2操舵角センサの検出値と、前記基準車両の走行軌跡の曲率である第2曲率との関係を示す第2マップと、
を備え、
前記プロセッサが、前記第1操舵角センサの検出値を前記第1マップに適用することにより取得した前記第1曲率を引数として前記第2マップに適用することにより、前記診断対象車両の操舵角の補正値である補正操舵角を取得し、且つ、前記補正操舵角に基づく値である補正曲率関連値と前記判定基準とに基づいて前記診断対象車両の操舵に関する運転診断を行う請求項1に記載の車両挙動推定システム。
【請求項3】
前記第1マップが、前記第1曲率及び前記第1操舵角センサの検出値によって求められる値の平均値に基づいて作成され、
前記第2マップが、前記第2曲率及び前記第2操舵角センサの検出値によって求められる値の平均値に基づいて作成された請求項2に記載の車両挙動推定システム。
【請求項4】
前記プロセッサが、
前記診断対象車両の前記ヨーレートセンサ、前記車速センサ及び前記第1操舵角センサの検出値に基づいて前記第1マップを作成する請求項2又は請求項3に記載の車両挙動推定システム。
【請求項5】
診断対象車両に設けられたプロセッサが、
前記診断対象車両のヨーレート及び車速に基づいて、前記診断対象車両の走行軌跡の曲率である第1曲率を求め、
前記診断対象車両とは別の車両である基準車両のステアリグホイールの操舵角に基づく値である操舵角関連値と操舵に起因する前記基準車両の挙動との関係性を規定した判定基準、及び、前記第1曲率に基づく値である曲率関連値に基づいて、前記診断対象車両の操舵に関する運転診断を行う車両挙動推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両挙動推定システム及び車両挙動推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角センサの検出値を用いて車両を制御する発明が開示されている。この発明では、操舵角センサが出力するパルスが途絶えた場合に、パルスが途絶える前まで操舵角センサにより測定されていた車両の実操舵角と、車両の実ヨーレート及び車速により推定された推定操舵角と、を比較する。実操舵角と推定操舵角が一致しない場合、操舵角センサを利用した車両の制御が禁止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-71925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両毎に、車輪の径が異なる。さらに車両毎に、ステアリングホイールの操舵角が単位角だけ変化したときの転舵輪の転舵角の変化量は異なる。そのため操舵角センサの検出値と、ステアリングホイールの操舵に起因する車両の挙動との関係性は車両毎に異なる。従って、操舵角センサの検出値とステアリングホイールの操舵に起因する車両の挙動との関係を規定した一つの判定基準と、に基づいて、操舵に関する各車両の運転診断を実行できなかった。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、一つの判定基準に基づいて、複数の車両の操舵に関する運転診断を実行可能な車両挙動推定システム及び車両挙動推定方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の車両挙動推定システムは、診断対象車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサと、前記診断対象車両の車速を検出する車速センサと、プロセッサと、を備え、前記プロセッサが、前記ヨーレート及び前記車速に基づいて、前記診断対象車両の走行軌跡の曲率である第1曲率を求め、前記診断対象車両とは別の車両である基準車両のステアリグホイールの操舵角に基づく値である操舵角関連値と操舵に起因する前記基準車両の挙動との関係性を規定した判定基準、及び、前記第1曲率に基づく値である曲率関連値に基づいて、前記診断対象車両の操舵に関する運転診断を行う。
【0007】
請求項1に記載の車両挙動推定システムのプロセッサは、ヨーレート及び車速に基づいて、診断対象車両の走行軌跡の曲率である第1曲率を求める。さらにプロセッサは、診断対象車両とは別の車両である基準車両の操舵角に基づく値である操舵角関連値と操舵に起因する基準車両の挙動との関係性を規定した判定基準、及び、第1曲率に基づく値である曲率関連値に基づいて、診断対象車両の操舵に関する運転診断を行う。車両が操舵されたときの走行軌跡の曲率とステアリングホイールの操舵に起因する車両の挙動との関係性は、全ての車両について実質的に同一である。さらに車両における曲率と操舵角との間には相関関係がある。そのため、基準車両の操舵角関連値と操舵に起因する車両の挙動との関係性を規定した判定基準と、診断対象車両の曲率関連値と、に基づいて、診断対象車両の操舵に関する運転診断を実行可能である。即ち、請求項1に記載の車両挙動推定システム及び車両挙動推定方法は、一つの判定基準に基づいて、基準車両及び診断対象車両の操舵に関する運転診断を実行可能である。
【0008】
請求項2に記載の発明に係る車両挙動推定システムは、請求項1の発明において、前記診断対象車両の操舵角センサである第1操舵角センサの検出値と前記第1曲率との関係を示す第1マップと、前記基準車両の操舵角センサである第2操舵角センサの検出値と、前記基準車両の走行軌跡の曲率である第2曲率との関係を示す第2マップと、を備え、前記プロセッサが、前記第1操舵角センサの検出値を前記第1マップに適用することにより取得した前記第1曲率を引数として前記第2マップに適用することにより、前記診断対象車両の操舵角の補正値である補正操舵角を取得し、且つ、前記補正操舵角に基づく値である補正曲率関連値と前記判定基準とに基づいて前記診断対象車両の操舵に関する運転診断を行う。
【0009】
請求項2に記載の発明では、プロセッサが、第1操舵角センサの検出値を第1マップに適用することにより取得した第1曲率を引数として第2マップに適用することにより、診断対象車両の操舵角の補正値である補正操舵角を取得する。さらにプロセッサが、補正操舵角に基づく値である補正曲率関連値と判定基準とに基づいて、診断対象車両の操舵に関する運転診断を行う。車両における曲率と操舵角との間には相関関係があることが知られている。第1マップ及び第2マップは、この相関関係を表している。さらに、診断対象車両の操舵角が所定の曲率に対応する場合の診断対象車両の操舵に起因する挙動は、基準車両の操舵角が当該曲率に対応する場合の基準車両の操舵に起因する挙動と実質的に同じである。そのため、判定基準と補正曲率関連値とに基づいて、診断対象車両の操舵に関する運転診断を行うことが可能である。さらに、一般的に操舵角センサの検出精度は、ヨーレートセンサの検出精度より高い。そのため請求項2に記載の発明に係る車両挙動推定システムは、請求項1に記載の発明に係る車両挙動推定システムよりも、診断対象車両の操舵に関する運転診断を高い精度で実行できる。
【0010】
請求項3に記載の発明に係る車両挙動推定システムは、請求項2記載の発明において、前記第1マップが、前記第1曲率及び前記第1操舵角センサの検出値によって求められる値の平均値に基づいて作成され、前記第2マップが、前記第2曲率及び前記第2操舵角センサの検出値によって求められる値の平均値に基づいて作成される。
【0011】
請求項3に記載の発明では、第1マップが、第1曲率及び第1操舵角センサの検出値によって求められる値の平均値に基づいて作成される。一般的にヨーレートセンサの検出精度は高くない。しかしこのように作成された第1マップは、平均値に基づかずに作成された第1マップと比べて、診断対象車両の操舵角と曲率との関係をより正確に表す。そのため、請求項3に記載の発明の第1マップの信頼性は高い。
【0012】
請求項4に記載の発明に係る車両挙動推定システムは、請求項2又は請求項3の発明において、前記プロセッサが、前記診断対象車両の前記ヨーレートセンサ、前記車速センサ及び前記第1操舵角センサの検出値に基づいて前記第1マップを作成する。
【0013】
請求項4に記載の発明では、プロセッサが、診断対象車両のヨーレートセンサ、車速センサ及び第1操舵角センサの検出値に基づいて第1マップを作成する。そのため、プロセッサは、ヨーレートセンサ、車速センサ及び第1操舵角センサの検出値に基づいて、第1マップを更新できる。そのため、診断対象車両の曲率に影響を及ぼす部品の最新の状態が第1マップに反映される。従って、請求項4に記載の発明の第1マップの信頼性は高い。
【0014】
請求項5に記載の発明に係る車両挙動推定方法は、診断対象車両に設けられたプロセッサが、前記診断対象車両のヨーレート及び車速に基づいて、前記診断対象車両の走行軌跡の曲率である第1曲率を求め、前記診断対象車両とは別の車両である基準車両のステアリグホイールの操舵角に基づく値である操舵角関連値と操舵に起因する前記基準車両の挙動との関係性を規定した判定基準、及び、前記第1曲率に基づく値である曲率関連値に基づいて、前記診断対象車両の操舵に関する運転診断を行う。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に係る車両挙動推定システム及び車両挙動推定方法は、一つの判定基準に基づいて複数の車両の操舵に関する運転診断を実行可能である、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る車両挙動推定システムを示す模式図である。
図2】第1実施形態に係る車両挙動推定システムの診断対象車両及び基準車両を示す模式図である。
図3】診断対象車両及び基準車両のECUの制御ブロック図である。
図4】ECUの機能ブロック図である。
図5】車両挙動推定システムの外部サーバの機能ブロック図である。
図6】診断対象車両のECUのROMに記録された変換マップを示す図である。
図7】外部サーバに記録された操舵診断マップを示す図である。
図8】診断対象車両のECUが実行する処理を示すフローチャートである。
図9】外部サーバが実行する処理を示すフローチャートである。
図10】携帯端末が実行する処理を示すフローチャートである。
図11】第2実施形態に係る診断対象車両及び基準車両のECUの機能ブロック図である。
図12】第2実施形態に係る外部サーバの機能ブロック図である。
図13】第2実施形態に係る第1マップを示す図である。
図14】第2実施形態に係る第2マップを示す図である。
図15】第2実施形態に係る第1マップ及び第2マップの作成方法を説明するための図である。
図16】第2実施形態に係る診断対象車両及び基準車両のECUが実行する処理を示すフローチャートである。
図17】第2実施形態に係る外部サーバが実行する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る車両挙動推定システム10及び車両挙動推定方法の第1実施形態について、図1図10を参照しながら説明する。図1に示されるように、車両挙動推定システム10は、診断対象車両20、基準車両40、外部サーバ60及び携帯端末70を有する。
【0018】
車両挙動推定システム10は、複数台の診断対象車両20を有する。便宜上、図1では診断対象車両20が一台のみ図示されている。診断対象車両20は、外部サーバ60と、ネットワークを介してデータ通信可能である。このネットワークは、通信事業者の通信網及びインターネット網を含んでいる。
【0019】
図2に示されるように、車両挙動推定システム10による診断を受信可能な診断対象車両20は、4つの車輪、ECU(Electronic Control Unit)21、車速センサ30、ステアリグホイール31、操舵角センサ32(第1操舵角センサ)、GPS受信機33、ヨーレートセンサ34及びイグニッションスイッチ35を有する。各診断対象車両20には車両IDが付されている。2つの前輪20FWが転舵輪である。そのため、ステアリグホイール31の操舵角が変化すると、左右の転舵輪20FWの転舵角が変化する。車速センサ30、操舵角センサ32、GPS受信機33、ヨーレートセンサ34及びイグニッションスイッチ35はECU21に接続されている。イグニッションスイッチ35がオフ状態にあるとき診断対象車両20の駆動源は作動不能になり、イグニッションスイッチ35がオン状態にあるとき駆動源は作動可能になる。なお駆動源には、例えば、エンジン及び電動モータの少なくとも一方が含まれる。そのため本明細書の「イグニッションスイッチ35」には、キーによって操作されるイグニッションスイッチ及びその他のスイッチが含まれる。その他のスイッチには、例えばプッシュ式のスタートボタンが含まれる。
【0020】
イグニッションスイッチ35がオン状態にあるとき、所定時間が経過する毎に、車速センサ30は、診断対象車両20の車速V1を取得し且つ取得した車速V1をECU21へ送信する。イグニッションスイッチ35がオン状態にあるとき、所定時間が経過する毎に、操舵角センサ32は、ステアリグホイール31の回転角である操舵角ST1を取得し且つ取得した操舵角ST1をECU21へ送信する。イグニッションスイッチ35がオン状態にあるとき、所定時間が経過する毎に、GPS受信機33は、GPS衛星から送信されたGPS信号を受信する。即ち、GPS受信機33は、診断対象車両20が走行している位置に関する情報(以下、「位置情報」と呼ぶ)を取得する。イグニッションスイッチ35がオン状態にあるとき、所定時間が経過する毎に、ヨーレートセンサ34は、診断対象車両20のヨーレートYR1を取得し且つ取得したヨーレートYR1をECU21へ送信する。ECU21へ送信された車速センサ30、操舵角センサ32及びヨーレートセンサ34の検出値は、診断対象車両20のID情報、上記位置情報及び時刻情報と関連付けられながら後述するストレージ25に記録される。
【0021】
図3に示されるようにECU21は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)22、ROM(Read Only Memory)23、RAM(Random Access Memory)24、ストレージ25、通信I/F(Inter Face)26及び入出力I/F27を含んで構成されている。CPU22、ROM23、RAM24、ストレージ25、通信I/F26及び入出力I/F27は、バス28を介して相互に通信可能に接続されている。ECU21は、タイマー(図示省略)から日時に関する情報を取得可能である。
【0022】
CPU22は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU22は、ROM23又はストレージ25からプログラムを読み出し、RAM24を作業領域としてプログラムを実行する。CPU22は、ROM23又はストレージ25に記録されているプログラムに従って、各構成の制御及び各種の演算処理(情報処理)を行う。
【0023】
ROM23は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM24は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ25は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置により構成され、各種プログラム及び各種データを格納する。通信I/F26は、診断対象車両20の外部に位置する機器と通信可能なインタフェースである。例えば通信I/F26は外部サーバ60と無線通信可能である。通信I/F26は、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)等の通信規格が用いられる。さらに通信I/F26は、診断対象車両20に設けられたECU21とは別のECUと、外部バスを介して通信可能である。
【0024】
図4に示されるようにECU21は、機能構成として、曲率演算部221、推定操舵角演算部222及び通信制御部223を有する。曲率演算部221、推定操舵角演算部222及び通信制御部223は、ECU21のCPU22がROM23に記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0025】
曲率演算部221は、ヨーレートセンサ34が検出したヨーレートYR1及び車速センサ30が検出した車速V1に基づいて、診断対象車両20の走行軌跡の曲率Cv1=ヨーレートYR1÷車速V1を演算する。
【0026】
推定操舵角演算部222は、曲率演算部221が演算した曲率Cv1と、図6に記載された変換マップ38とに基づいて、診断対象車両20の推定操舵角STe1を演算する。変換マップ38の縦軸は操舵角ST1を表し、横軸は曲率Cv1を表す。なお、ステアリグホイール31が時計方向に操舵されたときの操舵角ST1の符号が+(プラス)であり、ステアリグホイール31が反時計方向に操舵されたときの操舵角ST1の符号が-(マイナス)である。また、診断対象車両20が右旋回するときの曲率Cv1の符号が+(プラス)であり、診断対象車両20が左旋回するときの曲率Cv1の符号が-(マイナス)である。変換マップ38は、走行中の診断対象車両20の車速センサ30が検出した大量の車速V1を表すデータ及び操舵角センサ32が検出した大量の操舵角ST1を表すデータに基づいて作成されたものである。車両の操舵角と走行軌跡の曲率はほぼ比例することが知られている。そのため変換マップ38が示すグラフは略直線状である。推定操舵角演算部222は、演算された曲率Cv1を引数として変換マップ38に適用することにより操舵角ST1を推定操舵角STe1として取得する。さらに推定操舵角演算部222は、取得した推定操舵角STe1を、診断対象車両20のID情報、上記位置情報及び時刻情報と関連付けながらストレージ25に記録する。
【0027】
通信制御部223は、所定時間が経過する毎に、ストレージ25に記録された車速V1、ヨーレートYR1、曲率Cv1及び推定操舵角STe1を外部サーバ60へ無線送信するように、通信I/F26を制御する。
【0028】
車両挙動推定システム10は、一台の基準車両40を有する。基準車両40は、外部サーバ60とネットワークを介してデータ通信可能である。
【0029】
図2に示されるように、基準車両40は、2つの転舵輪(前輪)40FWを含む4つの車輪、ECU41、車速センサ30、ステアリグホイール31、操舵角センサ(第2操舵角センサ)32、GPS受信機33、ヨーレートセンサ34及びイグニッションスイッチ35を有する。基準車両40には車両IDが付されている。車速センサ30、操舵角センサ32、GPS受信機33、ヨーレートセンサ34及びイグニッションスイッチ35はECU41に接続されている。ステアリグホイール31の操舵角が変化すると、左右の転舵輪40FWの転舵角が変化する。
【0030】
図2に示されるようにECU41は、CPU(プロセッサ)42、ROM43、RAM44、ストレージ45、通信I/F46及び入出力I/F47を含んで構成されている。CPU42、ROM43、RAM44、ストレージ45、通信I/F46及び入出力I/F47は、バス48を介して相互に通信可能に接続されている。CPU42、ROM43、RAM44、ストレージ45、通信I/F46及び入出力I/F47の仕様は、CPU22、ROM23、RAM24、ストレージ25、通信I/F26及び入出力I/F27とそれぞれ同一である。
【0031】
図1に示された外部サーバ60は、ハードウェア構成として、CPU(プロセッサ)、ROM、RAM、ストレージ、通信I/F及び入出力I/Fを含んで構成されている。CPU、ROM、RAM、ストレージ、通信I/F及び入出力I/Fは、バスを介して相互に通信可能に接続されている。外部サーバ60のCPUは、タイマーから時刻に関する情報を取得可能である。
【0032】
図5に示されるように外部サーバ60のハードウェアは、機能構成として、運転診断部601及び通信制御部602を有する。運転診断部601及び通信制御部602は、外部サーバ60のCPUがROM又はストレージに記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0033】
運転診断部601は、診断対象車両20から受信した推定操舵角STe1を二階微分することにより、推定操舵角STe1の加速度である操舵角加速度(曲率関連値)STa1を取得する。さらに運転診断部601は、取得した操舵角加速度STa1を、診断対象車両20のID情報、上記位置情報及び時刻情報と関連付けながら、外部サーバ60のストレージに記録する。
【0034】
外部サーバ60のROM又はストレージには、図7に示された操舵診断マップ(判定基準)65が記録されている。操舵診断マップ65は、基準車両40の車速V2、操舵角ST2の二階微分値である操舵角加速度STa2(操舵角関連値)、及び操舵に関する得点について規定する。車速V2は、基準車両40の車速センサ30の検出値である。操舵角ST2は、基準車両40の操舵角センサ32の検出値である。この得点は、基準車両40の操舵に起因する挙動に基づいて規定されている。即ち、操舵診断マップ65は、基準車両40の操舵角加速度と、基準車両40の操舵に起因する挙動との関係性を、車速毎に規定している。従って、操舵角加速度STa2を操舵診断マップ65に適用することにより、基準車両40の操舵に起因する挙動を表す得点を取得できる。
【0035】
第1実施形態の操舵診断マップ65は、車速V2を、3つの領域に分けて規定している。この3つの領域は、A(km/h)未満の領域、A以上且つB(km/h)未満の領域、及びB以上の領域である。なお、B>Aであり且つA、Bは正の値である。操舵診断マップ65が表すように、車速V2がA未満の場合、操舵角加速度STa2がX1未満のときの得点は10点であり、操舵角加速度STa2がX1以上のときの得点は1点である。車速V2がA以上且つB未満の場合、操舵角加速度STa2がX2未満のときの得点は10点であり、操舵角加速度STa2がX2以上のときの得点は1点である。車速V2がB以上の場合、操舵角加速度STa2がX3未満のときの得点は10点であり、操舵角加速度STa2がX3以上のときの得点は1点である。なお、X1<X2<X3である。X1、X2、X3は絶対値である。運転診断部601は、車速V1及び操舵角加速度STa1を、操舵診断マップ65に適用することにより、各診断対象車両20の操舵に関する得点を取得する。例えば、車速V1がA未満且つ操舵角加速度STa1がX1未満のときの得点は10点である。さらに運転診断部601は、取得した得点を、診断対象車両20のID情報、位置情報及び時刻情報と関連付けながら、外部サーバ60のストレージに記録する。
【0036】
通信制御部602は、ストレージに記録され且つ上記位置情報及び時刻情報と関連付けられた診断対象車両20の得点に関する情報を、この得点が与えられた診断対象車両20の乗員が所持する携帯端末70へ無線送信するように、外部サーバ60の通信I/Fを制御する。
【0037】
図1に示される携帯端末70は、ハードウェア構成として、CPU、ROM、RAM、ストレージ、通信I/F及び入出力I/Fを含んで構成されている。携帯端末70は、例えば、スマートフォン又はタブレット型コンピュータである。携帯端末70のCPU、ROM、RAM、ストレージ、通信I/F及び入出力I/Fは、バスを介して相互に通信可能に接続されている。携帯端末70の通信I/Fは、外部サーバ60の通信I/Fと無線通信可能である。携帯端末70は、タイマー(図示省略)から日時に関する情報を取得可能である。携帯端末70にはタッチパネルを有するディスプレイ71が設けられている。さらに携帯端末70のストレージには、地図データが記録されている。携帯端末70は、例えば、診断対象車両20の運転者が所持する。携帯端末70には、所定の運転診断表示アプリケーションがインストールされている。
【0038】
(作用並びに効果)
次に、第1実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0039】
まず各診断対象車両20のECU21が行う処理の流れについて、図8のフローチャートを用いて説明する。ECU21は、所定時間が経過する毎に、図8のフローチャートの処理を繰り返し実行する。
【0040】
まずステップS10においてECU21の曲率演算部221は、ヨーレートセンサ34が検出したヨーレートYR1及び車速センサ30が検出した車速V1に基づいて曲率Cv1を演算する。
【0041】
ステップS10の処理を終えたECU21はステップS11へ進む。ステップS11において、ECU21の推定操舵角演算部222は、曲率Cv1を引数として変換マップ38に適用することにより、推定操舵角STe1を取得する。
【0042】
ステップS11の処理を終えたECU21はステップS12へ進む。ステップS12においてECU21の通信制御部223は、ストレージ25に記録され且つ位置情報及び時刻情報と関連付けられた車速V1、ヨーレートYR1、曲率Cv1及び推定操舵角STe1を外部サーバ60へ無線送信するように、通信I/F26を制御する。
【0043】
ステップS12の処理を終えたとき、ECU21は図8のフローチャートの処理を一旦終了する。
【0044】
次に外部サーバ60が行う処理の流れについて、図9のフローチャートを用いて説明する。外部サーバ60は、所定時間が経過する毎に、図9のフローチャートの処理を繰り返し実行する。
【0045】
まずステップS20において外部サーバ60の通信制御部602は、通信I/Fが診断対象車両20から、車速V1、ヨーレートYR1、曲率Cv1及び推定操舵角STe1を受信したか否かを判定する。
【0046】
ステップS20でYesと判定した外部サーバ60はステップS21へ進み、運転診断部601が、推定操舵角STe1の加速度である操舵角加速度STa1を演算する。さらに運転診断部601が、車速V1及び操舵角加速度STa1を操舵診断マップ65に適用することにより、診断対象車両20の操舵に関する得点を取得する。さらに運転診断部601は、取得した得点を、診断対象車両20のID情報、位置情報及び時刻情報と関連付けながら、外部サーバ60のストレージに記録する。
【0047】
ステップS21の処理を終えた外部サーバ60はステップS22へ進む。ステップS22において外部サーバ60の通信制御部602は、ストレージに記録され且つ位置情報及び時刻情報と関連付けられた得点に関する情報を携帯端末70へ無線送信するように、通信I/F46を制御する。
【0048】
ステップS20でNoと判定したとき又はステップS22の処理を終えたとき、外部サーバ60は図9のフローチャートの処理を一旦終了する。
【0049】
次に携帯端末70が行う処理の流れについて、図10のフローチャートを用いて説明する。携帯端末70は、所定時間が経過する毎に、図10のフローチャートの処理を繰り返し実行する。
【0050】
まずステップS30において携帯端末70のCPUは、運転診断表示アプリケーションが起動中か否かを判定する。
【0051】
ステップS30でYesと判定された携帯端末70はステップS31へ進み、携帯端末70の通信I/Fが外部サーバ60の通信I/Fから、携帯端末70の所持者が乗車する診断対象車両20に関する得点情報を受信したか否かを判定する。
【0052】
ステップS31でYesと判定した携帯端末70はステップS32へ進み、CPUが、得点を表す画像(図示省略)をディスプレイ71に表示させる。このときディスプレイ71は、携帯端末70のストレージに記録された地図データが表す地図画像を表示し、且つ、得点に対応する操舵操作が行われた位置を、特定の画像として地図画像に重ねて表示してもよい。さらにディスプレイ71は、得点に対応する操舵操作が行われた時刻を表す情報を、得点と関連付けながら表示してもよい。
【0053】
ステップS30でNoと判定したとき又はステップS32の処理を終えたとき、携帯端末70は図9のフローチャートの処理を一旦終了する。
【0054】
以上説明したように第1実施形態の車両挙動推定システム10及び車両挙動推定方法では、診断対象車両20のヨーレートYR1及び車速V1に基づいて、診断対象車両20の走行軌跡の曲率Cv1が求められる。さらに操舵診断マップ65と曲率Cv1に基づく値である操舵角加速度STa1(曲率関連値)に基づいて、診断対象車両20の操舵に関する運転診断が行われる。上記のように操舵診断マップ65は、基準車両40の操舵角加速度と基準車両40の挙動との関係性を規定したものである。即ち、操舵診断マップ65は、診断対象車両20の操舵角加速度STa1と診断対象車両20の挙動との関係性を規定したものではない。しかし、走行軌跡の曲率と車両の操舵に起因する挙動との関係性は、車両の車種(仕様)に拘わらず、実質的に同一であることが知られている。さらに、上述のように、車両の操舵角を走行軌跡の曲率から求めることが可能である。そのため、診断対象車両20の曲率Cv1に基づく値である操舵角加速度STa1を操舵診断マップ65に適用することにより得られた得点は、診断対象車両20の操舵に起因する挙動を表す。そのため第1実施形態の車両挙動推定システム10及び車両挙動推定方法は、操舵診断マップ65(判定基準)と診断対象車両20の操舵角加速度STa1(曲率関連値)とに基づいて、診断対象車両20の操舵に関する運転診断を実行可能である。さらに、操舵角加速度STa2を操舵診断マップ65に適用することにより、基準車両40の操舵に関する運転診断を実行可能である。即ち、第1実施形態の車両挙動推定システム10及び車両挙動推定方法は、一つの判定基準に基づいて、基準車両40及び診断対象車両20の操舵に関する運転診断を実行可能である。
【0055】
続いて、本発明に係る車両挙動推定システム10及び車両挙動推定方法の第2実施形態について、図11図17を参照しながら説明する。なお、第1実施形態と同じ構成及び機能には同じ符号を付すにとどめて、その詳細な説明は省略する。
【0056】
図11に示されるように、第2実施形態の各診断対象車両20のECU21は機能構成として、曲率演算部221及び通信制御部223を有する。さらに第2実施形態の基準車両40のECU41は機能構成として、曲率演算部421及び通信制御部423を有する。曲率演算部421及び通信制御部423の機能は、曲率演算部221及び通信制御部223の機能とそれぞれ同一である。曲率演算部421及び通信制御部423は、ECU41のCPU42がROM43に記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0057】
曲率演算部221は、診断対象車両20のヨーレートセンサ34が検出したヨーレートYR1及び診断対象車両20の車速センサ30が検出した車速V1に基づいて曲率Cv1を演算し、且つ、演算された曲率Cv1を、診断対象車両20のID情報、位置情報及び時刻情報と関連付けながらストレージ25に記録する。
【0058】
通信制御部223は、所定時間が経過する毎に、ストレージ25に記録され且つ上記位置情報及び時刻情報と関連付けられた車速V1、操舵角ST1、ヨーレートYR1、及び曲率Cv1を外部サーバ60へ無線送信するように、通信I/F26を制御する。
【0059】
曲率演算部421は、基準車両40のヨーレートセンサ34が検出したヨーレートYR2及び基準車両40の車速センサ30が検出した車速V2に基づいて、基準車両40の走行軌跡の曲率Cv2=ヨーレートYR2÷車速V2を演算する。
【0060】
通信制御部423は、所定時間が経過する毎に、ストレージ45に記録され且つ上記位置情報及び時刻情報と関連付けられた車速V2、操舵角ST2、ヨーレートYR2、及び曲率Cv2を外部サーバ60へ無線送信するように、通信I/F46を制御する。
【0061】
図12に示されるように、第2実施形態の外部サーバ60のハードウェアは機能構成として、運転診断部601、通信制御部602及びマップ作成部603を有する。
【0062】
マップ作成部603は、各診断対象車両20から受信した操舵角ST1及び曲率Cv1に基づいて、図13に示された第1マップ75を作成する。第1マップ75の縦軸は操舵角ST1を表し、横軸は曲率Cv1を表す。外部サーバ60は各診断対象車両20から操舵角ST1及び曲率Cv1を表す大量のデータを受信する。マップ作成部603は、受信した全ての操舵角ST1及び曲率Cv1を表すデータを第1マップ75上にプロットする。さらにマップ作成部603は、プロットされた全データに基づいて第1マップ75を作成する。このときマップ作成部603はデータの平均化を行う。即ち、例えば図15に示されるように、曲率Cv1の所定値であるP1に対応する操舵角ST1が、〇(丸)で表された4つの操舵角ST1を含む場合を想定する。この場合にマップ作成部603は、□(四角)で表された4つの操舵角ST1の平均値を、P1に対応する操舵角ST1の値Q1と見做す。
【0063】
さらにマップ作成部603は、これと同じ要領によって、基準車両40から受信した操舵角ST2及び曲率Cv2に基づいて、図14に示された第2マップ80を作成する。一般的にヨーレートセンサ34の検出精度は高くない。しかしこのように作成された第1マップ75及び第2マップ80は、平均値に基づかずに作成された第1マップ75及び第2マップ80と比べて、診断対象車両20及び基準車両40の操舵角と曲率との関係をより正確に表す。従って、このようにして作成された第1マップ75及び第2マップ80の信頼性は高い。
【0064】
(作用並びに効果)
次に、第2実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0065】
まず各診断対象車両20のECU21及び基準車両40のECU41が行う処理の流れについて、図16のフローチャートを用いて説明する。ECU21、41は、所定時間が経過する毎に、図16のフローチャートの処理を繰り返し実行する。
【0066】
まずステップS10においてECU21、41の曲率演算部221、421は、曲率Cv1、Cv2を演算する。
【0067】
ステップS10の処理を終えたECU21、41はステップS12へ進む。ステップS12においてECU21の通信制御部223は、ID情報、位置情報及び時刻情報と関連付けられた車速V1、操舵角ST1、ヨーレートYR1、及び曲率Cv1を外部サーバ60へ無線送信するように、通信I/F26を制御する。ステップS12においてECU41の通信制御部423は、ID情報、位置情報及び時刻情報と関連付けられた車速V2、操舵角ST2、ヨーレートYR2、及び曲率Cv2を外部サーバ60へ無線送信するように、通信I/F46を制御する。
【0068】
ステップS12の処理を終えたとき、ECU21、41は図16のフローチャートの処理を一旦終了する。
【0069】
次に外部サーバ60が行う処理の流れについて、図17のフローチャートを用いて説明する。外部サーバ60は、所定時間が経過する毎に、図17のフローチャートの処理を繰り返し実行する。
【0070】
まずステップS40において外部サーバ60の通信制御部602は、通信I/Fが、診断対象車両20から車速V1、操舵角ST1、ヨーレートYR1及び曲率Cv1を受信したか、又は、基準車両40から車速V2、操舵角ST2、ヨーレートYR2及び曲率Cv2を受信したか否かを判定する。
【0071】
ステップS40でYesと判定した外部サーバ60はステップS41へ進み、マップ作成部603が、受信した操舵角ST1及び曲率Cv1に基づいて第1マップ75を作成(更新)する。
【0072】
ステップS41の処理を終えた外部サーバ60はステップS42へ進む。ステップS42においてマップ作成部603は、第1マップ75が使用可能条件を満たすか否かを判定する。即ち、第1マップ75を構成する操舵角ST1及び曲率Cv1の数が所定数以上であり且つ第1マップ75を構成する操舵角ST1及び曲率Cv1が様々な大きさの絶対値を有する値を含んでいるか、をマップ作成部603が判定する。
【0073】
ステップS42でYesと判定した外部サーバ60はステップS43へ進み、マップ作成部603が、第1マップフラグを「1」に設定する。なお、第1マップフラグの初期値は「0」である。
【0074】
ステップS42でNoと判定した外部サーバ60はステップS44へ進み、マップ作成部603が、第1マップフラグを「0」に設定する。
【0075】
ステップS43又はS44の処理を終えた外部サーバ60はステップS47へ進み、マップ作成部603が、受信した操舵角ST2及び曲率Cv2に基づいて第2マップ80を作成(更新)する。
【0076】
ステップS47の処理を終えた外部サーバ60はステップS48へ進む。ステップS48において外部サーバ60のマップ作成部603は、第2マップ80が使用可能条件を満たすか否かを判定する。即ち、第2マップ80を構成する操舵角ST2及び曲率Cv2の数が所定数以上であり且つ第2マップ80を構成する操舵角ST2及び曲率Cv2が様々な大きさの絶対値を有する値を含んでいるか、をマップ作成部603が判定する。
【0077】
ステップS48でYesと判定した外部サーバ60はステップS49へ進み、マップ作成部603が、第2マップフラグを「1」に設定する。なお、第2マップフラグの初期値は「0」である。
【0078】
ステップS48でNoと判定した外部サーバ60はステップS50へ進み、マップ作成部603が、第2マップフラグを「0」に設定する。
【0079】
ステップS49又はS50の処理を終えた外部サーバ60はステップS53へ進み、マップ作成部603が、第1マップフラグ及び第2マップフラグが「1」か否かを判定する。
【0080】
ステップS53でYesと判定した外部サーバ60はステップS54へ進み、第1マップ75及び第2マップ80を用いて診断対象車両20の補正操舵角Stc1を演算する。より詳細には、マップ作成部603は、診断対象車両20の操舵角ST1を第1マップ75に引数として適用することにより、この操舵角ST1に対応する曲率Cv1を取得する。この際、マップ作成部603は必要に応じて第1マップ75の補間処理を実行する。例えば、この操舵角ST1の大きさが、図13に示された操舵角ST-Aである場合を想定する。この操舵角ST-Aを第1マップ75に引数として適用することにより取得される曲率Cv1の大きさは曲率Cv-Aである。さらにマップ作成部603は、この曲率Cv-Aを第2マップ80に引数として適用することにより、曲率Cv-Aに対応する基準車両40の操舵角ST2である操舵角ST-Bを取得する。この際、マップ作成部603は必要に応じて第2マップ80の補間処理を実行する。この操舵角ST-Bが、診断対象車両20の補正操舵角Stc1である。
【0081】
ステップS54の処理を終えた外部サーバ60はステップS55へ進み、運転診断部601が、補正操舵角Stc1の加速度である操舵角加速度(曲率関連値)(補正曲率関連値)STca1を演算する。さらに運転診断部601が、車速V1及び操舵角加速度STca1を操舵診断マップ65に適用することにより、診断対象車両20の操舵に関する得点を取得する。さらに運転診断部601は、取得した得点を、診断対象車両20のID情報、位置情報及び時刻情報と関連付けながら、外部サーバ60のストレージに記録する。
【0082】
ステップS55の処理を終えた外部サーバ60はステップS56へ進む。ステップS56において外部サーバ60の通信制御部602は、ストレージに記録され且つID情報、位置情報及び時刻情報と関連付けられた得点に関する情報を70へ無線送信するように、通信I/F46を制御する。
【0083】
ステップS40、S53でNoと判定したとき又はステップS56の処理を終えたとき、外部サーバ60は図17のフローチャートの処理を一旦終了する。
【0084】
さらに携帯端末70が、所定時間が経過する毎に、図10のフローチャートの処理を繰り返し実行する。従って、携帯端末70のCPUがステップS32へ進んだとき、CPUが得点を表す画像(図示省略)をディスプレイ71に表示させる。
【0085】
以上説明したように第2実施形態の車両挙動推定システム10及び車両挙動推定方法の外部サーバ60は、診断対象車両20の操舵角センサ32の検出値(操舵角ST-A)を第1マップ75に引数として適用することにより、曲率(曲率Cv-A)を取得する。さらに外部サーバ60は、曲率Cv-Aを引数として第2マップ80に適用することにより、診断対象車両20のステアリグホイール31の操舵角の補正値である補正操舵角STc1を取得する。さらに外部サーバ60は、補正操舵角STc1の二階微分値である操舵角加速度STca1と操舵診断マップ65とに基づいて、診断対象車両20の操舵に関する運転診断を行う。第1マップ75及び第2マップ80に示されたように、診断対象車両20の操舵角ST1と曲率Cv1との間、及び、基準車両40の操舵角ST2と曲率Cv2との間には相関関係がある。さらに診断対象車両20の操舵角ST-Aと基準車両40の操舵角ST-Bは共通の曲率Cv-Aに対応する値である。即ち、診断対象車両20の操舵角が操舵角ST-Aのときの診断対象車両20の挙動は、基準車両40の操舵角が操舵角ST-Bのときの基準車両40の挙動と実質的に同じである。そのため、診断対象車両20の操舵角加速度STca1を操舵診断マップ65に適用することにより得られた得点は、診断対象車両20の挙動を正確に表す。そのため第2実施形態の車両挙動推定システム10及び車両挙動推定方法は、操舵診断マップ65(判定基準)と診断対象車両20の操舵角ST1とに基づいて、診断対象車両20の操舵に関する運転診断を実行可能である。
【0086】
さらに、一般的に操舵角センサの検出精度は、ヨーレートセンサの検出精度より高い。そのため第2実施形態の操舵角加速度STca1は、第1実施形態の操舵角加速度STa1よりも、診断対象車両20の操舵角の加速度をより正確に表している可能性が高い。従って、第2実施形態の診断対象車両20の運転診断結果は、第1実施形態の診断対象車両20の運転診断結果よりも信頼性が高い。
【0087】
さらに外部サーバ60が、診断対象車両20の操舵角ST1及び曲率Cv1に基づいて第1マップ75を作成し、且つ、基準車両40の操舵角ST2及び曲率Cv2に基づいて第2マップ80を作成する。そのため、外部サーバ60は第1マップ75及び第2マップ80を簡単に作成できる。
【0088】
さらに外部サーバ60は、診断対象車両20及び基準車両40から受信した最新のデータに基づいて、第1マップ75及び第2マップ80を更新する。そのため、診断対象車両20の曲率Cv1に影響を及ぼす部品の最新の状態が第1マップ75に反映され、且つ、基準車両40の曲率Cv2に影響を及ぼす部品の最新の状態が第2マップ80に反映される。これらの部品には、例えばタイヤが含まれる。従って、第2実施形態の第1マップ75及び第2マップ80の信頼性は高い。
【0089】
以上、第1及び第2実施形態に係る車両挙動推定システム10及び車両挙動推定方法について説明したが、車両挙動推定システム10及び車両挙動推定方法は本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能である。
【0090】
例えば、第1実施形態の操舵診断マップ65が、基準車両40の曲率Cv2の二階微分値(操舵角関連値)と操舵に起因する挙動との関係性を、車速毎に規定したものであってもよい。この場合は、外部サーバ60が診断対象車両20の曲率Cv1の二階微分値(曲率関連値)を操舵診断マップ65に適用することにより、診断対象車両20の運転操作に関する得点を演算する。
【0091】
第2実施形態の操舵診断マップ65が、基準車両40の曲率Cv2の二階微分値と操舵に起因する挙動との関係性を、車速毎に規定したものであってもよい。この場合は、外部サーバ60が第1マップ75及び操舵角ST1に基づいて取得した診断対象車両20の曲率Cv1の二階微分値(曲率関連値)を操舵診断マップ65に適用することにより、診断対象車両20の運転操作に関する得点を演算する。
【0092】
第1及び第2実施形態の車両挙動推定システム10がインターネットに接続されていなくてもよい。この場合は、例えば診断対象車両20及び基準車両40から取得した検出値データ群をポータブル式の記録媒体(例えば、USB)に記録させ、且つ、この記録媒体内の検出値データ群を外部サーバ60のストレージにコピーする。
【0093】
第1及び第2実施形態の外部サーバ60が診断結果を診断対象車両20へ無線送信し、診断対象車両20に設けられたディスプレイ(図示省略)が診断結果を表示してもよい。
【0094】
第1及び第2実施形態の診断対象車両20のECU21が外部サーバ60の機能を有してもよい。この場合、車両挙動推定システム10から外部サーバ60を省略可能である。
【0095】
第1及び第2実施形態の外部サーバ60が、曲率演算部221及び推定操舵角演算部222に相当する機能を有し、診断対象車両20から無線送信された情報に基づいて、診断対象車両20の走行軌跡の曲率及び推定操舵角を演算してもよい。
【0096】
作成された第2マップ80の内容が、作成後に更新されなくてもよい。
【0097】
診断対象車両20及び基準車両40がGPS受信機33の代わりに、GPS以外の全地球航法衛星システム(例えばガリレオ)の衛星からの情報を受信可能な受信機を備えてもよい。
【符号の説明】
【0098】
10 車両挙動推定システム
20 診断対象車両
22 CPU(プロセッサ)
30 車速センサ
31 ステアリグホイール
32 操舵角センサ(第1操舵角センサ)(第2操舵角センサ)
34 ヨーレートセンサ
40 基準車両
42 CPU(プロセッサ)
65 操舵診断マップ(判定基準)
75 第1マップ
80 第2マップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17