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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】積層型コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20240611BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F17/00 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021197166
(22)【出願日】2021-12-03
(65)【公開番号】P2023083061
(43)【公開日】2023-06-15
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】生越 貴大
(72)【発明者】
【氏名】松永 季
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-238912(JP,A)
【文献】特開2016-157823(JP,A)
【文献】特開2010-080550(JP,A)
【文献】特開2016-096259(JP,A)
【文献】特開2007-242800(JP,A)
【文献】国際公開第2013/183452(WO,A1)
【文献】特開2019-054018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23-27/30
H01F 27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 38/42-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層方向に積層されている複数の絶縁体層、及び複数の前記絶縁体層を前記積層方向に貫通する貫通孔を有する積層体と、
前記積層体の内部で、前記貫通孔の外側を囲むように延びているコイルと、
合成樹脂及び磁性材料を含み、前記貫通孔内に充填された磁性樹脂と、
前記積層体の外面のうちの前記積層方向を向く面に積層されている接着樹脂層と、
前記接着樹脂層を介して前記積層体と接着している磁性体基板と、を備え、
前記接着樹脂層は、前記貫通孔に繋がった収容空間を有しており、
前記積層方向を向いて視たとき、前記収容空間の外縁は、前記貫通孔の外縁よりも外側に位置しており、
前記磁性樹脂の一部は、前記収容空間内に位置しており、
前記収容空間は、前記接着樹脂層のうちの前記積層体側の外面から前記積層方向に向かって窪んだ形状であり、前記収容空間と前記磁性体基板との間に前記接着樹脂層の一部が存在している
積層型コイル部品。
【請求項2】
積層方向に積層されている複数の絶縁体層、及び複数の前記絶縁体層を前記積層方向に貫通する貫通孔を有する積層体と、
前記積層体の内部で、前記貫通孔の外側を囲むように延びているコイルと、
合成樹脂及び磁性材料を含み、前記貫通孔内に充填された磁性樹脂と、
前記積層体の外面のうちの前記積層方向を向く面に積層されている接着樹脂層と、
前記接着樹脂層を介して前記積層体と接着している磁性体基板と、を備え、
前記接着樹脂層は、前記貫通孔に繋がった収容空間を有しており、
前記積層方向を向いて視たとき、前記収容空間の外縁は、前記貫通孔の外縁よりも外側に位置しており、
前記磁性樹脂の一部は、前記収容空間内に位置しており、
前記コイルのうち、当該コイルの内側の端から360度巻き回された箇所までの範囲を最内ターンとしたとき、
前記積層方向を向いて視たとき、前記収容空間は、前記最内ターンのみと重複している
積層型コイル部品。
【請求項3】
前記収容空間は、前記積層方向において前記接着樹脂層を貫通している
請求項2に記載の積層型コイル部品。
【請求項4】
前記磁性体基板を上層磁性体基板としたとき、
前記積層体に対して前記積層方向とは反対方向側に位置する下層磁性体基板を、さらに有し、
前記磁性樹脂は、前記下層磁性体基板と接している
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の積層型コイル部品。
【請求項5】
前記積層体の外面のうち前記積層方向を向く面を上面としたとき、前記貫通孔の前記上面での開口面積は、前記上面及び前記開口面積を足した面積に対して、8%以上11%以下である
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の積層型コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の積層型コイル部品は、積層体と、コイルと、磁性樹脂と、を備えている。積層体は、複数の絶縁体層を有している。複数の絶縁体層は、積層方向に積層されている。積層体は、積層方向に貫通する四角柱状の貫通孔を有している。コイルは、積層体の内部で貫通孔を外側から囲むように螺旋状に延びている。磁性樹脂は、貫通孔の内部に充填されている。そのため、磁性樹脂は、貫通孔の形状を反映して略四角柱状である。また、積層型コイル部品は、2つの磁性体基板を備えている。2つの磁性体基板は積層方向及びその反対方向から積層体を挟んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-80594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の積層型コイル部品において、磁性樹脂を貫通孔の内部に充填する過程では、貫通孔の全領域に磁性樹脂を充填することは難しく、貫通孔の内部には空隙が生じてしまう。貫通孔の内部に空隙が多く存在してしまうと、その分だけ磁性樹脂の量が少なくなるため、積層型コイル部品の特性に悪影響を与えかねない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、積層方向に積層されている複数の絶縁体層、及び複数の前記絶縁体層を前記積層方向に貫通する貫通孔を有する積層体と、前記積層体の内部で、前記貫通孔の外側を囲むように延びているコイルと、合成樹脂及び磁性材料を含み、前記貫通孔内に充填された磁性樹脂と、前記積層体の外面のうちの前記積層方向を向く面に積層されている接着樹脂層と、前記接着樹脂層を介して前記積層体と接着している磁性体基板と、を備え、前記接着樹脂層は、前記貫通孔に繋がった収容空間を有しており、前記積層方向を向いて視たとき、前記収容空間の外縁は、前記貫通孔の外縁よりも外側に位置しており、前記磁性樹脂の一部は、前記収容空間内に位置している積層型コイル部品である。
【0006】
上記構成によれば、接着樹脂層の収容空間が、積層型コイル部品の製造過程において、貫通孔に充填される磁性樹脂が逃げるスペースとして機能できる。つまり、磁性樹脂の充填量として、最大で貫通孔の容積と収容空間の容積とを加算した量を設定することができる。そのため、製造上の誤差等によって磁性樹脂の充填量にばらつきが生じても、磁性樹脂の充填量が貫通孔の容積を下回るような事態は生じにくい。その結果、貫通孔の全体に磁性樹脂が行き亘る可能性が高まる。
【発明の効果】
【0007】
貫通孔の全体に磁性樹脂を充填しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態の積層型コイル部品の斜視図である。
図2図2は、同実施形態の積層型コイル部品の斜視図である。
図3図3は、同実施形態の積層型コイル部品の分解斜視図である。
図4図4は、同実施形態の第2層L2の平面図である。
図5図5は、図4に示す5-5線に沿う積層型コイル部品の断面図である。
図6図6は、変更例の積層型コイル部品の断面図である。
図7図7は、変更例の積層型コイル部品の断面図である。
図8図8は、変更例の積層型コイル部品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<一実施形態>
以下、積層型コイル部品の一実施形態について説明する。なお、図面は理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。また、構成要素の寸法比率は実際のものと、又は別の図中のものと異なる場合がある。
【0010】
(全体構成について)
図1に示すように、積層型コイル部品10は、下層磁性体基板20と、下層接着樹脂層51と、積層体30と、上層接着樹脂層52と、上層磁性体基板40と、を備えている。下層磁性体基板20と、下層接着樹脂層51と、積層体30と、上層接着樹脂層52と、上層磁性体基板40とは、積層方向にこの順番で積層されている。また、積層型コイル部品10は、積層された上記各構成に加え、磁性樹脂56を備えている。
【0011】
図3に示すように、下層磁性体基板20は、概ね直方体状である。下層磁性体基板20は、第1主面MF1を有している。第1主面MF1は、下層磁性体基板20の外面を構成する平面のうち、最も面積の大きな面である。また、図2に示すように、下層磁性体基板20は、第2主面MF2を有している。第2主面MF2は、第1主面MF1に平行になっている。
【0012】
図3に示すように、第1主面MF1に垂直な方向を向いて下層磁性体基板20を視たときに、下層磁性体基板20は、4つの角が切り欠かれたような概ね長方形状である。したがって、下層磁性体基板20は、第1主面MF1に垂直な方向を向いて視たときに、直線状の4つの辺を有する。以下の説明では、第1主面MF1に垂直な方向を向いて下層磁性体基板20を視たときに、4つの辺のうちの特定の1つの辺と平行な軸を第1軸Xとする。また、第1主面MF1に垂直な方向を向いて下層磁性体基板20を視たときに、第1軸Xと垂直な軸を第2軸Yとする。さらに、第1主面MF1に垂直な軸を第3軸Zとする。そして、第1軸Xに平行な方向の一方を第1正方向X1とし、第1軸Xに沿う方向の第1正方向X1と反対方向を第1負方向X2とする。また、第2軸Yに沿う方向の一方を第2正方向Y1とし、第2軸Yに沿う方向のうち第2正方向Y1と反対方向を第2負方向Y2とする。さらに、第3軸Zに沿う方向のうち第1主面MF1が向く方向を第3正方向Z1とし、第3正方向Z1と反対方向を第3負方向Z2とする。なお、第3正方向Z1は、積層方向である。
【0013】
下層磁性体基板20の第2軸Yに沿う方向の寸法は、下層磁性体基板20の第1軸Xに沿う方向の寸法よりも大きくなっている。すなわち、下層磁性体基板20の第1主面MF1及び第2主面MF2は、全体として、第2軸Yに沿う方向に長い長方形状になっている。下層磁性体基板20は、磁性体からなっている。磁性体は、例えば、フェライトセラミックスの焼結体である。
【0014】
下層磁性体基板20は、第1主面MF1と第2主面MF2とを接続する4つの切り欠き21A~21Dを備えている。各切り欠き21は、第3正方向Z1を向いて下層磁性体基板20を視たときに、4つの角にそれぞれ存在している。つまり、切り欠き21は、下層磁性体基板20の4つの角に存在する空間である。また、第3正方向Z1を向いて下層磁性体基板20を視たときの各切り欠き21の面積は、第2主面MF2から第1主面MF1に近づくほど小さくなっている。なお、以下では、4つの切り欠き21A~21Dを区別しないときには、切り欠き21と称呼する。
【0015】
切り欠き21Aは、下層磁性体基板20の中心から視て、第1正方向X1側且つ第2正方向Y1側の角に位置している。切り欠き21Bは、下層磁性体基板20の中心から視て、第1負方向X2側且つ第2正方向Y1側の角に位置している。切り欠き21Cは、下層磁性体基板20の中心から視て、第1負方向X2側且つ第2負方向Y2側の角に位置している。切り欠き21Dは、下層磁性体基板20の中心から視て、第1正方向X1側且つ第2負方向Y2側の角に位置している。
【0016】
図3に示すように、積層型コイル部品10は、下層磁性体基板20に対して第3正方向Z1側に、第1層L1~第11層L11からなる積層構造を有している。各層の主面は、下層磁性体基板20の第1主面MF1と平行になっている。第1層L1~第11層L11は、第3正方向Z1にこの順番で並んでいる。
【0017】
第1層L1は、下層接着樹脂層51と、第1磁性部56Aと、を備えている。下層接着樹脂層51は、ポリイミド樹脂などの有機系の接着剤からなっている。第3負方向Z2を向いて第1層L1を視たときに、第1層L1は、下層磁性体基板20の第1主面MF1の大部分を覆っている。そのため、第3負方向Z2を向いて第1層L1を視たときに、第1層L1は、下層磁性体基板20と同様に、4つの角が切り欠かれたような概ね長方形状となっている。
【0018】
下層接着樹脂層51は、第3軸Zに沿う方向に貫通する孔H1を有している。孔H1は、第3正方向Z1を向いて下層接着樹脂層51を視たときに、四角形状になっている。孔H1は、第3負方向Z2を向いて下層接着樹脂層51を視たときに、当該下層接着樹脂層51の長方形状の略中心に位置している。
【0019】
第1磁性部56Aは、孔H1の内部に位置している。第1磁性部56Aは、孔H1の内部空間を満たしている。第1磁性部56Aの材質は、合成樹脂及び磁性材料である。具体的には、合成樹脂は、エポキシ樹脂である。磁性材料は、フェライト粉及び鉄からなる磁性粉などの金属磁性粉である。
【0020】
図4に示すように、第2層L2は、第1コイル61と、6つの引出部71A~71Fと、第1絶縁体層81と、第2磁性部56Bと、を備えている。第3負方向Z2を向いて第2層L2を視たときに、第2層L2は、第1軸Xに沿う寸法及び第2軸Yに沿う寸法が第1層L1と同じ長方形状となっている。なお、第2層L2は、第1層L1のように角が切り欠かれたような形状にはなっていない。第2層L2の厚さは、例えば、9μm以上11μm以下である。
【0021】
引出部71Aは、第2層L2のうちの第1正方向X1側且つ第2正方向Y1側の角に位置している。引出部71Bは、第2層L2のうちの第1負方向X2側且つ第2正方向Y1側の角に位置している。引出部71Cは、第2層L2のうちの第1負方向X2側且つ第2負方向Y2側の角に位置している。引出部71Dは、第2層L2のうちの第1正方向X1側且つ第2負方向Y2側の角に位置している。引出部71Eは、第2層L2の中心に対して第2正方向Y1側であり、且つ第1軸Xに沿う方向の中央に位置している。引出部71Fは、第2層L2の中心に対して第2負方向Y2側であり、且つ第1軸Xに沿う方向の中央に位置している。引出部71A~71Fは、銅や銀などの導電性材料からなっている。
【0022】
第3負方向Z2を向いて第2層L2を視たときに、第1コイル61は全体として、第2層L2の中心を中心として渦巻状に延びている。第1コイル61の第1端は、引出部71Aに接続している。第1コイル61の第2端は、引出部71Eに接続している。第3負方向Z2を向いて第2層L2を視たときに、第1コイル61は、第1端から第2端に向かうにつれて時計回りに進むように巻いている。第1コイル61は、銅や銀などの導電性材料からなっている。本実施形態では、第1コイル61は、引出部71A~71Fと同じ導電性材料からなっている。
【0023】
第2層L2において、第1コイル61と、引出部71A~71Fと、を除く部分の大半は、第1絶縁体層81である。第1絶縁体層81は、ガラス、樹脂、アルミナなどの非磁性の絶縁体からなっている。本実施形態では、第1絶縁体層81は、下層接着樹脂層51と同じ材料のポリイミド樹脂からなっている。
【0024】
第1絶縁体層81は、第3軸Zに沿う方向に貫通する孔H2を有している。孔H2は、第3正方向Z1を向いて第1絶縁体層81を視たときに、四角形状になっている。孔H2は、第3負方向Z2を向いて第1絶縁体層81を視たときに、第2層L2の略中心に位置している。孔H2の内部空間は、孔H1の内部空間と繋がっている。また、孔H2は、第1コイル61の内側に位置している。つまり、第1コイル61は、孔H2の外側を囲んでいる。
【0025】
第2磁性部56Bは、孔H2の内部に位置している。第2磁性部56Bは、孔H2の内部空間を満たしている。そのため、第2磁性部56Bは、第1磁性部56Aと繋がっている。第2磁性部56Bの材質は、第1磁性部56Aと同じ合成樹脂及び磁性材料である。
【0026】
図3に示すように、第3層L3は、6つの引出部72A~72Fと、第2絶縁体層82と、第3磁性部56Cと、を備えている。第3負方向Z2を向いて第3層L3を視たときに、第3層L3は、第2層L2と同じ長方形状になっている。第3層L3の厚さは、第2層L2の厚さより小さくなっている。
【0027】
引出部72Aは、第3層L3のうちの第1正方向X1側且つ第2正方向Y1側の角に位置している。そのため、引出部72Aは、第2層L2の引出部71Aの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0028】
引出部72Bは、第3層L3のうちの第1負方向X2側且つ第2正方向Y1側の角に位置している。そのため、引出部72Bは、第2層L2の引出部71Bの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0029】
引出部72Cは、第3層L3のうちの第1負方向X2側且つ第2負方向Y2側の角に位置している。そのため、引出部72Cは、第2層L2の引出部71Cの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0030】
引出部72Dは、第3層L3のうちの第1正方向X1側且つ第2負方向Y2側の角に位置している。そのため、引出部72Dは、第2層L2の引出部71Dの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0031】
引出部72Eは、第3層L3の中心に対して視て第2正方向Y1側であり、且つ第1軸Xに沿う方向の中央に位置している。つまり、第3層L3の引出部72Eは、第3負方向Z2を向いて積層型コイル部品10を視たときに、第2層L2の引出部71Eと同じ箇所に位置している。そのため、引出部72Eは、第2層L2の引出部71Eの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0032】
引出部72Fは、第3層L3の中心に対して第2負方向Y2側であり、且つ第1軸Xに沿う方向の中央に位置している。つまり、第3層L3の引出部72Fは、第3負方向Z2を向いて積層型コイル部品10を視たときに、第2層L2の引出部71Fと同じ箇所に位置している。そのため、引出部72Fは、第2層L2の引出部71Eの第3正方向Z1を向く面に積層されている。引出部72A~72Fは、銅や銀などの導電性材料からなっている。本実施形態では、引出部72A~72Fは、第1コイル61と同じ導電性材料からなっている。
【0033】
第3層L3において、引出部72A~72Fを除く部分の大半は、第2絶縁体層82である。第2絶縁体層82は、ガラス、樹脂、アルミナなどの非磁性の絶縁体からなっている。本実施形態では、第2絶縁体層82は、第1絶縁体層81と同じ材料の絶縁体からなっている。
【0034】
第2絶縁体層82は、第3軸Zに沿う方向に貫通する孔H3を有している。孔H3は、第3正方向Z1を向いて第2絶縁体層82を視たときに、四角形状になっている。孔H3は、第3負方向Z2を向いて第2絶縁体層82を視たときに、第3層L3の略中心に位置している。孔H3の内部空間は、孔H2の内部空間と繋がっている。
【0035】
第3磁性部56Cは、孔H3の内部に位置している。第3磁性部56Cは、孔H3の内部空間を満たしている。そのため、第3磁性部56Cは、第2磁性部56Bと繋がっている。第3磁性部56Cの材質は、第1磁性部56Aと同じ合成樹脂及び磁性材料である。
【0036】
第4層L4は、第2コイル62と、6つの引出部73A~73Fと、第3絶縁体層83と、第4磁性部56Dと、を備えている。第3負方向Z2を向いて第4層L4を視たときに、第4層L4は、第3層L3と同じ長方形状になっている。第4層L4の厚さは、第2層L2の厚さと同じになっている。
【0037】
引出部73Aは、第4層L4のうちの第1正方向X1側且つ第2正方向Y1側の角に位置している。そのため、引出部73Aは、第3層L3の引出部72Aの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0038】
引出部73Bは、第4層L4のうちの第1負方向X2側且つ第2正方向Y1側の角に位置している。そのため、引出部73Bは、第3層L3の引出部72Bの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0039】
引出部73Cは、第4層L4のうちの第1負方向X2側且つ第2負方向Y2側の角に位置している。そのため、引出部73Cは、第3層L3の引出部72Cの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0040】
引出部73Dは、第4層L4のうちの第1正方向X1側且つ第2負方向Y2側の角に位置している。そのため、引出部73Dは、第3層L3の引出部72Dの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0041】
引出部73Eは、第4層L4の中心に対して第2正方向Y1側であり、且つ第1軸Xに沿う方向の中央に位置している。つまり、第4層L4の引出部73Eは、第3負方向Z2を向いて積層型コイル部品10を視たときに、第3層L3の引出部72Eと同じ箇所に位置している。そのため、引出部73Eは、第3層L3の引出部72Eの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0042】
引出部73Fは、第4層L4の中心に対して第2負方向Y2側であり、且つ第1軸Xに沿う方向の中央に位置している。引出部73A~引出部73Fは、銅や銀などの導電性材料からなっている。本実施形態では、引出部73A~引出部73Fは、第1コイル61と同じ導電性材料からなっている。
【0043】
第3負方向Z2を向いて第4層L4を視たときに、第2コイル62は全体として、第4層L4の中心を中心として渦巻状に延びている。第2コイル62の第1端は、引出部73Dに接続している。第2コイル62の第2端は、引出部73Fに接続している。第3負方向Z2を向いて第4層L4を視たときに、第2コイル62は、第1端から第2端に向かうにつれて時計回りに進むように巻いている。また、第2コイル62は、第1コイル61から視て第3正方向Z1側に位置している。第2コイル62は、銅や銀などの導電性材料からなっている。本実施形態では、第2コイル62は、第1コイル61と同じ材料の導電性材料からなっている。
【0044】
第4層L4において、第2コイル62と、引出部73A~73Fと、を除く部分の大半は、第3絶縁体層83である。第3絶縁体層83は、ガラス、樹脂、アルミナなどの非磁性の絶縁体からなっている。本実施形態では、第3絶縁体層83は、第1絶縁体層81と同じ材料の絶縁体からなっている。
【0045】
第3絶縁体層83は、第3軸Zに沿う方向に貫通する孔H4を有している。孔H4は、第3正方向Z1を向いて第3絶縁体層83を視たときに、四角形状になっている。孔H4は、第3負方向Z2を向いて第3絶縁体層83を視たときに、第3層L3の略中心に位置している。孔H4の内部空間は、孔H3の内部空間と繋がっている。また、孔H4は、第2コイル62の内側に位置している。つまり、第2コイル62は、孔H4の外側を囲んでいる。
【0046】
第4磁性部56Dは、孔H4の内部に位置している。第4磁性部56Dは、孔H4の内部空間を満たしている。第4磁性部56Dは、第3磁性部56Cと繋がっている。第4磁性部56Dの材質は、第1磁性部56Aと同じ合成樹脂及び磁性材料である。
【0047】
第5層L5は、6つの引出部74A~74Fと、第4絶縁体層84と、第5磁性部56Eと、を備えている。第3負方向Z2を向いて第5層L5を視たときに、第5層L5は、第4層L4と同じ長方形状になっている。第5層L5の厚さは、第3層L3の厚さと同じになっている。
【0048】
引出部74Aは、第5層L5のうちの第1正方向X1側且つ第2正方向Y1側の角に位置している。そのため、引出部74Aは、第4層L4の引出部73Aの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0049】
引出部74Bは、第5層L5のうちの第1負方向X2側且つ第2正方向Y1側の角に位置している。そのため、引出部74Bは、第4層L4の引出部73Bの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0050】
引出部74Cは、第5層L5のうちの第1負方向X2側且つ第2負方向Y2側の角に位置している。そのため、引出部74Cは、第4層L4の引出部73Cの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0051】
引出部74Dは、第5層L5のうちの第1正方向X1側且つ第2負方向Y2側の角に位置している。そのため、引出部74Dは、第4層L4の引出部73Dの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0052】
引出部74Eは、第5層L5の中心に対して第2正方向Y1側であり、且つ第1軸Xに沿う方向の中央に位置している。つまり、第5層L5の引出部74Eは、第3負方向Z2を向いて積層型コイル部品10を視たときに、第4層L4の引出部73Eと同じ箇所に位置している。そのため、引出部74Eは、第4層L4の引出部73Eの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0053】
引出部74Fは、第5層L5の中心に対して第2負方向Y2側であり、且つ第1軸Xに沿う方向の中央に位置している。つまり、第5層L5の引出部74Fは、第3負方向Z2を向いて積層型コイル部品10を視たときに、第4層L4の引出部73Fと同じ箇所に位置している。そのため、引出部74Fは、第4層L4の引出部74Fの第3正方向Z1を向く面に積層されている。引出部74A~74Fは、銅や銀などの導電性材料からなっている。本実施形態では、引出部74A~74Fは、第1コイル61と同じ導電性材料からなっている。
【0054】
第5層L5において、引出部74A~74Fを除く部分の大半は、第4絶縁体層84である。第4絶縁体層84は、ガラス、樹脂、アルミナなどの非磁性の絶縁体からなっている。本実施形態では、第4絶縁体層84は、第1絶縁体層81と同じ材料の絶縁体からなっている。
【0055】
第4絶縁体層84は、第3軸Zに沿う方向に貫通する孔H5を有している。孔H5は、第3正方向Z1を向いて第4絶縁体層84を視たときに、四角形状になっている。孔H5は、第3負方向Z2を向いて第4絶縁体層84を視たときに、第5層L5の略中心に位置している。孔H5の内部空間は、孔H4の内部空間と繋がっている。
【0056】
第5磁性部56Eは、孔H5の内部に位置している。第5磁性部56Eは、孔H5の内部空間を満たしている。第5磁性部56Eは、第4磁性部56Dと繋がっている。第5磁性部56Eの材質は、第1磁性部56Aと同じ合成樹脂及び磁性材料である。
【0057】
第6層L6は、第3コイル63と、6つの引出部75A~75Fと、第5絶縁体層85と、第6磁性部56Fと、を備えている。第3負方向Z2を向いて第6層L6を視たときに、第6層L6は、第5層L5と同じ長方形状になっている。第6層L6の厚さは、第2層L2の厚さよりも小さくなっている。具体的には、第6層L6の厚さは、例えば、7μm以上9μm未満である。
【0058】
引出部75Aは、第6層L6のうちの第1正方向X1側且つ第2正方向Y1側の角に位置している。そのため、引出部75Aは、第5層L5の引出部74Aの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0059】
引出部75Bは、第6層L6のうちの第1負方向X2側且つ第2正方向Y1側の角に位置している。そのため、引出部75Bは、第5層L5の引出部74Bの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0060】
引出部75Cは、第6層L6のうちの第1負方向X2側且つ第2負方向Y2側の角に位置している。そのため、引出部75Cは、第5層L5の引出部74Cの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0061】
引出部75Dは、第6層L6のうちの第1正方向X1側且つ第2負方向Y2側の角に位置している。そのため、引出部75Dは、第5層L5の引出部74Dの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0062】
引出部75Eは、第6層L6の中心に対して第2正方向Y1側であり、且つ第1軸Xに沿う方向の中央に位置している。つまり、第6層L6の引出部75Eは、第3負方向Z2を向いて積層型コイル部品10を視たときに、第5層L5の引出部74Eと同じ箇所に位置している。そのため、引出部75Eは、第5層L5の引出部74Eの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0063】
引出部75Fは、第6層L6の中心に対して第2負方向Y2側であり、且つ第1軸Xに沿う方向の中央に位置している。つまり、第6層L6の引出部75Fは、第3負方向Z2を向いて積層型コイル部品10を視たときに、第5層L5の引出部74Fと同じ箇所に位置している。そのため、引出部75Fは、第5層L5の引出部75Fの第3正方向Z1を向く面に積層されている。引出部75A~75Fは、銅や銀などの導電性材料からなっている。本実施形態では、引出部74A~75Fは、第1コイル61と同じ導電性材料からなっている。
【0064】
第3負方向Z2を向いて第6層L6を視たときに、第3コイル63は全体として、第6層L6の中心を中心として渦巻状に延びている。第3コイル63の第1端は、引出部75Eに接続している。第3コイル63の第2端は、引出部75Bに接続している。第3負方向Z2を向いて第6層L6を視たときに、第3コイル63は、第1端から第2端に向かうにつれて時計回りに進むように巻いている。第3コイル63は、銅や銀などの導電性材料からなっている。本実施形態では、第3コイル63は、第1コイル61と同じ導電性材料からなっている。
【0065】
第6層L6において、第3コイル63と、引出部75A~75Fと、を除く部分の大半は、第5絶縁体層85である。第5絶縁体層85は、ガラス、樹脂、アルミナなどの非磁性の絶縁体からなっている。本実施形態では、第5絶縁体層85は、第1絶縁体層81と同じ材料の絶縁体からなっている。
【0066】
第5絶縁体層85は、第3軸Zに沿う方向に貫通する孔H6を有している。孔H6は、第3正方向Z1を向いて第5絶縁体層85を視たときに、四角形状になっている。孔H6は、第3負方向Z2を向いて第5絶縁体層85を視たときに、第6層L6の略中心に位置している。孔H6の内部空間は、孔H5の内部空間と繋がっている。また、孔H6は、第3コイル63の内側に位置している。つまり、第3コイル63は、孔H6の外側を囲んでいる。
【0067】
第6磁性部56Fは、孔H6の内部に位置している。第6磁性部56Fは、孔H6の内部空間を満たしている。第6磁性部56Fは、第5磁性部56Eと繋がっている。第6磁性部56Fの材質は、第1磁性部56Aと同じ合成樹脂及び磁性材料である。
【0068】
第7層L7は、6つの引出部76A~76Fと、第6絶縁体層86と、第7磁性部56Gと、を備えている。第3負方向Z2を向いて第7層L7を視たときに、第7層L7は、第6層L6と同じ長方形状になっている。第7層L7の厚さは、第3層L3の厚さと同じになっている。
【0069】
引出部76Aは、第7層L7のうちの第1正方向X1側且つ第2正方向Y1側の角に位置している。そのため、引出部76Aは、第6層L6の引出部75Aの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0070】
引出部76Bは、第7層L7のうちの第1負方向X2側且つ第2正方向Y1側の角に位置している。そのため、引出部76Bは、第6層L6の引出部75Bの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0071】
引出部76Cは、第7層L7のうちの第1負方向X2側且つ第2負方向Y2側の角に位置している。そのため、引出部76Cは、第6層L6の引出部75Cの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0072】
引出部76Dは、第7層L7のうちの第1正方向X1側且つ第2負方向Y2側の角に位置している。そのため、引出部76Dは、第6層L6の引出部75Dの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0073】
引出部76Eは、第7層L7の中心に対して第2正方向Y1側であり、且つ第1軸Xに沿う方向の中央に位置している。つまり、第7層L7の引出部76Eは、第3負方向Z2を向いて積層型コイル部品10を視たときに、第6層L6の引出部75Eと同じ箇所に位置している。そのため、引出部76Eは、第6層L6の引出部75Eの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0074】
引出部76Fは、第7層L7の中心に対して第2負方向Y2側であり、且つ第1軸Xに沿う方向の中央に位置している。つまり、第7層L7の引出部76Fは、第3負方向Z2を向いて積層型コイル部品10を視たときに、第6層L6の引出部75Fと同じ箇所に位置している。そのため、引出部76Fは、第6層L6の引出部75Fの第3正方向Z1を向く面に積層されている。引出部76A~76Fは、銅や銀などの導電性材料からなっている。本実施形態では、引出部76A~76Fは、第1コイル61と同じ導電性材料からなっている。
【0075】
第7層L7において、引出部76A~76Fを除く部分の大半は、第6絶縁体層86である。第6絶縁体層86は、ガラス、樹脂、アルミナなどの非磁性の絶縁体からなっている。本実施形態では、第6絶縁体層86は、第1絶縁体層81と同じ材料の絶縁体からなっている。
【0076】
第6絶縁体層86は、第3軸Zに沿う方向に貫通する孔H7を有している。孔H7は、第3正方向Z1を向いて第6絶縁体層86を視たときに、四角形状になっている。孔H7は、第3負方向Z2を向いて第6絶縁体層86を視たときに、第7層L7の略中心に位置している。孔H7の内部空間は、孔H6の内部空間と繋がっている。
【0077】
第7磁性部56Gは、孔H7の内部に位置している。第7磁性部56Gは、孔H7の内部空間を満たしている。第7磁性部56Gは、第6磁性部56Fと繋がっている。第7磁性部56Gの材質は、第1磁性部56Aと同じ合成樹脂及び磁性材料である。
【0078】
第8層L8は、第4コイル64と、6つの引出部77A~77Fと、第7絶縁体層87と、第8磁性部56Hと、を備えている。第3負方向Z2を向いて第8層L8を視たときに、第8層L8は、第7層L7と同じ長方形状になっている。第8層L8の厚さは、第6層L6の厚さと同じになっている。
【0079】
引出部77Aは、第8層L8のうちの第1正方向X1側且つ第2正方向Y1側の角に位置している。そのため、引出部77Aは、第7層L7の引出部76Aの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0080】
引出部77Bは、第8層L8のうちの第1負方向X2側且つ第2正方向Y1側の角に位置している。そのため、引出部77Bは、第7層L7の引出部75Bの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0081】
引出部77Cは、第8層L8のうちの第1負方向X2側且つ第2負方向Y2側の角に位置している。そのため、引出部77Cは、第7層L7の引出部76Cの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0082】
引出部77Dは、第8層L8のうちの第1正方向X1側且つ第2負方向Y2側の角に位置している。そのため、引出部77Dは、第7層L7の引出部76Dの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0083】
引出部77Eは、第8層L8の中心に対して第2正方向Y1側であり、且つ第1軸Xに沿う方向の中央に位置している。つまり、第8層L8の引出部77Eは、第3負方向Z2を向いて積層型コイル部品10を視たときに、第7層L7の引出部76Eと同じ箇所に位置している。そのため、引出部77Eは、第7層L7の引出部76Eの第3正方向Z1を向く面に積層されている。
【0084】
引出部77Fは、第8層L8の中心に対して第2負方向Y2側であり、且つ第1軸Xに沿う方向の中央に位置している。つまり、第8層L8の引出部77Fは、第3負方向Z2を向いて積層型コイル部品10を視たときに、第7層L7の引出部76Fと同じ箇所に位置している。そのため、引出部77Fは、第7層L7の引出部76Fの第3正方向Z1を向く面に積層されている。引出部77A~77Fは、銅や銀などの導電性材料からなっている。本実施形態では、引出部77A~77Fは、第1コイル61と同じ導電性材料からなっている。
【0085】
第3負方向Z2を向いて第8層L8を視たときに、第4コイル64は全体として、第8層L8の中心を中心として渦巻状に延びている。第4コイル64の第1端は、引出部77Fに接続している。第4コイル64の第2端は、引出部77Cに接続している。第3負方向Z2を向いて第8層L8を視たときに、第4コイル64は、第1端から第2端に向かうにつれて時計回りに進むように巻いている。また、第4コイル64は、第3コイル63から視て第3正方向Z1側に位置している。第4コイル64は、銅や銀などの導電性材料からなっている。本実施形態では、第4コイル64は、第1コイル61と同じ材料の導電性材料からなっている。
【0086】
第8層L8において、第4コイル64と、引出部77A~77Fと、を除く部分の大半は、第7絶縁体層87である。第7絶縁体層87は、ガラス、樹脂、アルミナなどの非磁性の絶縁体からなっている。本実施形態では、第7絶縁体層87は、第1絶縁体層81と同じ材料の絶縁体からなっている。
【0087】
第7絶縁体層87は、第3軸Zに沿う方向に貫通する孔H8を有している。孔H8は、第3正方向Z1を向いて第7絶縁体層87を視たときに、四角形状になっている。孔H8は、第3負方向Z2を向いて第7絶縁体層87を視たときに、第8層L8の略中心に位置している。孔H8の内部空間は、孔H7の内部空間と繋がっている。また、孔H8は、第4コイル64の内側に位置している。つまり、第4コイル64は、孔H8の外側を囲んでいる。
【0088】
第8磁性部56Hは、孔H8の内部に位置している。第8磁性部56Hは、孔H8の内部空間を満たしている。第8磁性部56Hは、第7磁性部56Gと繋がっている。第8磁性部56Hの材質は、第1磁性部56Aと同じ合成樹脂及び磁性材料である。
【0089】
第9層L9は、第8絶縁体層88と、第9磁性部56Iと、を備えている。第3負方向Z2を向いて第9層L9を視たときに、第9層L9は、第8層L8と同じ長方形状になっている。第9層L9の厚さは、第3層L3の厚さと同じになっている。
【0090】
第8絶縁体層88は、ガラス、樹脂、アルミナなどの非磁性の絶縁体からなっている。本実施形態では、第8絶縁体層88は、第1絶縁体層81と同じ材料の絶縁体からなっている。
【0091】
第8絶縁体層88は、第3軸Zに沿う方向に貫通する孔H9を有している。孔H9は、第3正方向Z1を向いて第8絶縁体層88を視たときに、四角形状になっている。孔H9は、第3負方向Z2を向いて第8絶縁体層88を視たときに、第9層L9の略中心に位置している。孔H9の内部空間は、孔H8の内部空間と繋がっている。
【0092】
第9磁性部56Iは、孔H9の内部に位置している。第9磁性部56Iは、孔H9の内部空間を満たしている。第9磁性部56Iは、第8磁性部56Hと繋がっている。第9磁性部56Iの材質は、第1磁性部56Aと同じ合成樹脂及び磁性材料である。
【0093】
第10層L10は、第1接着部52Aと、第10磁性部56Jと、を備えている。第3負方向Z2を向いて第10層L10を視たときに、第10層L10は、第9層L9と同じ長方形状になっている。
【0094】
第1接着部52Aは、ポリイミド樹脂などの有機系の接着剤からなっている。本実施形態では、第1接着部52Aは、下層接着樹脂層51と同じ材料からなっている。
第1接着部52Aは、第3軸Zに沿う方向に貫通する孔H10を有している。なお、孔H10の形状及び大きさについては、後述する。孔H10の内部空間は、孔H9の内部空間と繋がっている。
【0095】
第10磁性部56Jは、孔H10の内部に位置している。第10磁性部56Jは、孔H10の内部空間を満たしている。第10磁性部56Jは、第9磁性部56Iと繋がっている。第10磁性部56Jの材質は、第1磁性部56Aと同じ合成樹脂及び磁性材料である。
【0096】
第11層L11は、第2接着部52Bからなっている。第3負方向Z2を向いて第11層L11を視たときに、第11層L11は、第10層L10と同じ長方形状になっている。第2接着部52Bは、ポリイミド樹脂などの有機系の接着剤からなっている。第2接着部52Bは、第1接着部52Aと一体化している。
【0097】
上述した第2層L2~第9層L9が積層されることによって、第1絶縁体層81~第8絶縁体層88からなる積層体30が構成されている。また、第10層L10の第1接着部52A及び第11層L11の第2接着部52Bによって、上層接着樹脂層52が構成されている。さらに、第1磁性部56A~第10磁性部56Jによって、磁性樹脂56が構成されている。
【0098】
そして、積層体30の内部で、第1コイル61~第4コイル64が伸びている。第1コイル61及び第3コイル63は、引出部71E~75Eによって、電気的に接続している。渦巻状の第1コイル61と渦巻状の第3コイル63とが、第3正方向Z1にこの順番で並ぶことで、第1コイル61及び第3コイル63は、全体として螺旋状に延びている。また、第1コイル61及び第3コイル63は、引出部71Aと、引出部71B~75Bと、によって、積層体30及び下層接着樹脂層51の外部に露出している。
【0099】
また、第2コイル62及び第4コイル64は、引出部73F~77Fによって、電気的に接続している。渦巻状の第2コイル62と渦巻状の第4コイル64とが、第3正方向Z1にこの順番で並ぶことで、第2コイル62及び第4コイル64は、全体として螺旋状に延びている。また、第2コイル62及び第4コイル64は、引出部71D~73Dと、引出部71C~77Cと、によって、積層体30及び下層接着樹脂層51の外部に露出している。これにより、第2コイル62及び第4コイル64は、第1コイル61及び第3コイル63と共にコモンモードチョークコイルを構成している。
【0100】
上層磁性体基板40は、直方体状である。上層磁性体基板40は、磁性体からなっている。磁性体は、例えば、フェライトセラミックスの焼結体である。本実施形態では、上層磁性体基板40は、下層磁性体基板20と同じ磁性体からなっている。上層磁性体基板40は、上層接着樹脂層52の第3正方向Z1を向く面である上面30Aに積層されている。そのため、上層磁性体基板40は、上層接着樹脂層52を介して積層体30の上面30Aと接着している。
【0101】
図2及び図3に示すように、積層型コイル部品10は、4つの接続体91A~91Dと、4つの外部電極92A~92Dと、を備えている。
接続体91Aは、切り欠き21Aの内面に位置している。接続体91Aは、切り欠き21Aの内面全体に亘って存在している。接続体91Bは、切り欠き21Bの内面に位置している。接続体91Bは、切り欠き21Bの内面全体に亘って存在している。接続体91Cは、切り欠き21Cの内面に位置している。接続体91Cは、切り欠き21Cの内面全体に亘って存在している。接続体91Dは、切り欠き21Dの内面に位置している。接続体91Dは、切り欠き21Dの内面全体に亘って存在している。これら接続体91A~91Dは、銅を主成分とする導電体からなっている。
【0102】
接続体91Aが切り欠き21Aの内面全体に亘って存在していることで、積層体30及び下層接着樹脂層51の外部に露出している引出部71Aと接続体91Aとが接続している。同様に、接続体91Bが切り欠き21Bの内面全体に亘って存在していることで、積層体30及び下層接着樹脂層51の外部に露出している引出部71Bと接続体91Bとが接続している。接続体91Cが切り欠き21Cの内面全体に亘って存在していることで、積層体30及び下層接着樹脂層51の外部に露出している引出部71Cと接続体91Cとが接続している。接続体91Dが切り欠き21Dの内面全体に亘って存在していることで、積層体30及び下層接着樹脂層51の外部に露出している引出部71Dと接続体91Dとが接続している。
【0103】
外部電極92Aは、第2主面MF2上に存在しており、接続体91Aに接続している。外部電極92Bは、第2主面MF2上に存在しており、接続体91Bに接続している。外部電極92Cは、第2主面MF2上に存在しており、接続体91Cに接続している。外部電極92Dは、第2主面MF2上に存在しており、接続体91Dに接続している。外部電極92A~92Dは、互いに接続していない。
【0104】
このようにして、外部電極92Aは、接続体91A及び引出部71Aを介して、第1コイル61に接続している。外部電極92Bは、接続体91B及び引出部71Bを介して、第1コイル61に接続している。外部電極92Cは、接続体91C及び引出部71Cを介して、第2コイル62に接続している。外部電極92Dは、接続体91D及び引出部71Dを介して、第2コイル62に接続している。
【0105】
外部電極92A~92Dは、銅を主成分とする導電体からなっている。本実施形態では、外部電極92A~92Dは、接続体91A~91Dと同じ導電体の材料からなっている。
【0106】
このようにして構成される積層型コイル部品10の第1軸Xに沿う方向の寸法は、0.35mm以下となっている。また、積層型コイル部品10の第2軸Yに沿う方向の寸法は、0.50mm以下となっている。
【0107】
(貫通孔及び収容空間について)
図5に示すように、積層体30は、貫通孔THを有している。貫通孔THは、積層体30を第3軸Zに沿う方向に貫通している。貫通孔THは、上述した孔H2~H9によって構成されている。貫通孔THは、第3負方向Z2に進むにつれて、断面積が小さくなるように、四角錐台状になっている。すなわち、孔H2~H9は、いずれも平面視で四角形状であるが、孔H9から孔H2に向かうにつれて、開口面積が徐々に小さくなっている。
【0108】
第1コイル61~第4コイル64は、同じ層内に存在する孔H2~H8のそれぞれの外側を囲んでいる。そのため、第1コイル61~第4コイル64は、全体として、貫通孔THの外側を囲むように螺旋状に延びている。
【0109】
上層接着樹脂層52は、収容空間CSを有している。収容空間CSは、上述した孔H10の内部空間である。収容空間CSは、孔H9の内部空間と繋がっている。つまり、収容空間CSは、貫通孔THと繋がっている。
【0110】
そして、第3正方向Z1を向いて積層型コイル部品10を視たとき、収容空間CSの外縁は、貫通孔THの外縁よりも外側に位置している。つまり、第10層L10の孔H10は、第9層L9の孔H9と比較して、面積の大きな四角形状である。また、孔H10の開口縁は、全域に亘って、孔H9の開口縁から離れている。その結果、収容空間CSは、貫通孔THよりも第3軸Zに垂直な方向に広がっている。なお、ここでいう積層型コイル部品10を視たときというのは、実際に視認することを指すのではなく、積層型コイル部品10を透過して収容空間CSの外縁及び貫通孔THの外縁を視ることを指す。
【0111】
また、第3正方向Z1を向いて積層型コイル部品10を視たときに、収容空間CSの一部は、第1コイル61~第4コイル64と重複している。具体的には、第1コイル61の内側の端から360度巻き回された箇所までの範囲を最内ターンとする。なお、第1コイル61の内側の端とは、第1コイル61のうちの引出部71Eに接続している箇所である。そして、第3正方向Z1を向いて積層型コイル部品10を視たとき、収容空間CSは、当該最内ターンのみと重複している。つまり、第3正方向Z1を向いて積層型コイル部品10を視たとき、収容空間CSは、第1コイル61の内側の端から360度を超えて巻き回された箇所まで広がっていない。
【0112】
上述したとおり、第11層L11の全体が、第2接着部52Bである。そして、第2接着部52Bは、孔を有していない。したがって、収容空間CSは、貫通孔TH側に開口している一方で、上層磁性体基板40側には開口していない。そのため、収容空間CSと上層磁性体基板40との間には、上層接着樹脂層52が存在している。なお、収容空間CSが開口しているとは、上層接着樹脂層52によって塞がれていなければよい。つまり、上層接着樹脂層52単独で視たときに収容空間CSが開口を有していれば、収容空間CSの開口全域が他の部材で占められていても、収容空間CSが開口しているという。
【0113】
さらに、磁性樹脂56は、貫通孔TH及び収容空間CSを満たしている。つまり、磁性樹脂56は、貫通孔TH及び収容空間CSに充填されている。なお、収容空間CSとは、積層型コイル部品10において、必ずしも隙間、空隙又は真空などの空間になっている必要はない。そのため、収容空間CSは他の部材で充填されていてもよい。具体的には、収容空間CSは、本実施形態のように、全て磁性樹脂56に充填されていて、空隙又は真空として存在していない場合も含む。さらに、磁性樹脂56は、貫通孔TH及び収容空間CSに加えて、孔H1の内部空間も満たしている。そのため、磁性樹脂56は、下層磁性体基板20と接している。なお、図3及び図5では、磁性樹脂56が収容空間CSの全体を満たしているように図示しているが、磁性樹脂56が収容空間CSの一部に行き亘らずに、収容空間CSの一部に空隙が生じることもある。
【0114】
また、貫通孔THの上面30Aの開口面積は、上面30A及び貫通孔THの開口面積を足した面積に対して、8%以上11%以下となっている。つまり、第3負方向Z2を向いて積層型コイル部品10を視たときに、上面30A上における積層体30の外形の面積に対して、貫通孔THの開口面積は、8%以上11%以下となっている。
【0115】
(磁性樹脂を形成する方法について)
上述した積層型コイル部品10の製造方法のうち、磁性樹脂56を形成する工程について説明する。
【0116】
まず、貫通孔THを有しない積層体30を準備する。具体的には、下層磁性体基板20の第1主面MF1上に、フォトリソグラフィによって所望の回路パターンが得られるように、絶縁性樹脂及び導電性樹脂を積層させることで、孔H1を有しない下層接着樹脂層51及び貫通孔THを有しない積層体30を準備する。
【0117】
次に、積層体30の第3正方向Z1を向く面上に第1接着部52Aを形成する。例えば、フォトリソグラフィによって、収容空間CSの範囲に孔H10が開口させる。
次に、積層体30に貫通孔THを開口させる。例えば、レーザ照射及びショットブラストなどの方法で、貫通孔THを形成する。このとき、下層接着樹脂層51に孔H1を開口させる。なお、レーザ照射及びショットブラスト等で貫通孔THを形成する場合、貫通孔THの内周面を第3軸Zに対して平行に形成することは難しい。そのため、貫通孔THは、第3負方向Z2に向かうに連れて開口が小さくなる。
【0118】
そして、貫通孔THに磁性樹脂56を充填する。まず、磁性樹脂56を貫通孔THから収容空間CSにまであふれ出るように充填する。次に、上層磁性体基板40の第3負方向Z2を向く面に第2接着部52Bを形成する。次に、第1接着部52Aと第2接着部52Bとを張り合わせるように、積層体30と上層磁性体基板40を積層させる。これにより、磁性樹脂56は、貫通孔THを充填するよりも多い量が含まれた状態で挟まれることで、磁性樹脂56は、貫通孔THの内部に充填されやすい。そのため、貫通孔THの内部には空隙が形成されにくくなる。また、貫通孔THから溢れ出た磁性樹脂56は、収容空間CSに収容される。
【0119】
(実施形態の効果について)
上記実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)上記実施形態によれば、上層接着樹脂層52は、収容空間CSを有している。上層接着樹脂層52の収容空間CSが、積層型コイル部品10の製造過程において、充填される磁性樹脂56が逃げるスペースとして機能できる。つまり、磁性樹脂56の充填量として、最大で貫通孔THの容積と収容空間CSの容積とを加算した量を設定することができる。そのため、製造上の誤差等によって磁性樹脂56の充填量にばらつきが生じても、磁性樹脂56の充填量が貫通孔THの容積を下回るような事態は生じにくい。その結果、貫通孔THの全体に磁性樹脂56が行き亘る可能性が高まる。
【0120】
なお、磁性樹脂56を充填する際に貫通孔THから溢れた磁性樹脂56は、収容空間CSに収容される。したがって、溢れた磁性樹脂56は、第3軸Zに沿う方向において上層接着樹脂層52の範囲内に存在することになる。この位置であれば、磁性樹脂56が存在していても、積層型コイル部品10の特性などに悪影響を与える可能性は低い。
【0121】
(2)上記実施形態によれば、第3正方向Z1を向いて積層型コイル部品10を視たとき、収容空間CSの一部は、第1コイル61~第4コイル64と重複している。つまり、収容空間CSは、貫通孔THが存在し得ない第1コイル61~第4コイル64と重複する箇所にまで広がっている。そのため、収容空間CSの容積として相当の容積を確保できる。したがって、磁性樹脂56を充填する際に、磁性樹脂56の充填量として貫通孔THの容積を相当に超えた量を設定できる。そのため、磁性樹脂56が貫通孔THの全体に行き亘る可能性がより高まる。
【0122】
(3)上記実施形態によれば、第3正方向Z1を向いて積層型コイル部品10を視たときに、収容空間CSは、最内ターンのみと重複している。そのため、収容空間CSは、過度に広がっていない。換言すれば、上層接着樹脂層52のうち第1接着部52Aの面積が過度に小さくならない。よって、上層接着樹脂層52による積層体30と上層磁性体基板40との接着性を十分に確保できる。
【0123】
(4)上記実施形態によれば、収容空間CSは、貫通孔TH側に開口しており、且つ上層磁性体基板40側には開口していない。そのため、収容空間CSに充填された磁性樹脂56と上層磁性体基板40との間にも、上層接着樹脂層52が存在する。よって、積層体30を上層磁性体基板40で強固に接着することができ、貫通孔THの存在が積層体30に対する接着剤を低下させることを防げる。
【0124】
(5)上記実施形態によれば、磁性樹脂56は、下層磁性体基板20と接している。そのため、磁性樹脂56は、貫通孔THの第3負方向Z2側の開口まで充填している。よって、磁性樹脂56から下層磁性体基板20へと至る磁束の密度を向上させることができる。その結果、積層型コイル部品10から得られるインダクタンス値がより向上する。
【0125】
(6)上記実施形態によれば、貫通孔THの上面30Aでの開口面積は、上面30A及び当該開口面積を足した面積に対して、8%以上11%以下である。そのため、貫通孔THを充填する磁性樹脂56が過度に大きくなることを抑制できる。よって、第1コイル61~第4コイル64が延びる領域を十分に確保できる。また、貫通孔THの開口面積として8%以上が確保されている結果、インダクタンス値を向上させるに足る十分な量の磁性樹脂56が存在する。磁性樹脂56が存在しない場合に比較して、積層型コイル部品10から得られるインダクタンス値が有意に向上する。
【0126】
<その他の実施形態>
上記実施形態は以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で組み合わせて実施することができる。
【0127】
・積層型コイル部品10の大きさは、上記実施形態の例に限られない。積層型コイル部品10の第1軸Xに沿う方向の寸法は、0.35mmを超えていてもよい。積層型コイル部品10の第2軸Yに沿う方向の寸法は、0.50mmを超えていてもよい。
【0128】
・下層磁性体基板20は、第3正方向Z1を向いて下層磁性体基板20を視たときに、正方形状であってもよい。すなわち、下層磁性体基板20の第1軸Xに沿う方向の最大の寸法は、下層磁性体基板20の第2軸Yに沿う方向の最大の寸法と等しくてもよい。また、下層磁性体基板20の形状にあわせて、積層体30及び上層磁性体基板40についても、形状を変更すればよい。
【0129】
・積層体30の構成は、適宜変更できる。例えば、各コイルの延び方、コイルの数、各引出部の位置、各位引出部の形状などは、積層型コイル部品10として求められる特性に合わせて適宜変更できる。積層体30が、少なくとも、複数の絶縁体層と、複数の絶縁体層を貫通する貫通孔THを有していれば、上記収容空間CSに関する技術を適用できる。また、各層の厚さについても、すべて同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0130】
・下層磁性体基板20は、省略してもよいし、焼結体ではなく磁性粉を含有した樹脂であってもよい。上層磁性体基板40は、焼結体ではなく磁性粉を含有した樹脂であってもよい。
【0131】
・下層接着樹脂層51は、省略してもよい。この場合、下層磁性体基板20と積層体30とを、圧着などによって接続してもよい。なお、下層接着樹脂層51を省略した場合、磁性樹脂56は、下層磁性体基板20に接する。
【0132】
・下層接着樹脂層51は、孔H1を有していなくてもよい。この場合、磁性樹脂56は、下層磁性体基板20と接しない。
・第3正方向Z1を向いて積層型コイル部品110を視たときの収容空間CSの大きさは、当該収容空間CSの外縁が貫通孔THの外縁よりも外側に位置していれば、適宜に変更できる。例えば、図6に示す変更例の積層型コイル部品110では、第3正方向Z1を向いて積層型コイル部品110を視たときに、収容空間CSは、第1コイル61~第4コイル64のいずれとも重複していない。このように、収容空間CSは、貫通孔THを充填させる量よりも多い量の磁性樹脂156を収容できれば、例えば、第3正方向Z1を向いて積層型コイル部品110を視たときに、第1コイル61~第4コイル64まで広がっていなくてもよい。
【0133】
・また、例えば、図7に示す変更例の積層型コイル部品210では、第3正方向Z1を向いて積層型コイル部品110を視たときに、収容空間CSの一部は、第1コイル61の内側の端から1080度巻き回された箇所までと重複している。換言すると、収容空間CSは、第1コイル61の内側の端から、第1コイル61の長さの概ね半分の箇所までの範囲で重複している。そのため、より多くの磁性樹脂256が漏れるスペースを確保しやすい。そして、図7に示す変更例に限らず、第3正方向Z1を向いて積層型コイル部品110を視たときに、収容空間CSの一部は、第1コイル61の巻き回された範囲の半分以上と重複していてもよいし、第1コイル61の全体と重複していてもよい。このように、収容空間CSが第1コイル61と重複している範囲は、上記実施形態の例に限られない。
【0134】
・第2接着部52Bを省略してもよい。この場合、図8に示す変更例の積層型コイル部品310のように、上層接着樹脂層52は、第1接着部52Aのみで構成される。そして、孔H10は、上層接着樹脂層52である第1接着部52Aを貫通しているので、当該孔H10は、貫通孔TH側及び上層磁性体基板40側の双方に開口している。このように、収容空間CSが、第3軸Zに沿う方向において、上層接着樹脂層52を貫通していると、磁性樹脂356は、上層磁性体基板40に接することができる。これにより、磁性樹脂356は、積層体30及び上層接着樹脂層52を貫通して上層磁性体基板40へと至っている。したがって、第1コイル61~第4コイル64に電流を流したときに、磁性樹脂356から上層磁性体基板40へと至る磁束の密度が向上する。そのため、積層型コイル部品10から得られるインダクタンス値を向上できる。
【0135】
・貫通孔THの形状は、上記実施形態の例に限られない。例えば、貫通孔THは、円柱状であってもよいし、多角柱状であってもよいし、これら以外の柱状であってもよい。
・貫通孔THの上面30Aでの開口面積は、積層体30の上面30A及び開口面積を足した面積に対して、8%未満であってもよいし、11%を超えていてもよい。
【0136】
・第1コイル61~第4コイル64の構成は、適宜変更されればよい。例えば、第2コイル62~第4コイル64を省いてもよい。この場合、第1コイル61は、貫通孔THの外側を囲みながら延びていればよい。なお、貫通孔THの外側を囲むためには、コイルは、同一の層又は異なる層にわたって、360度以上巻き回されていることが必要である。
【0137】
・磁性樹脂56を形成する方法については、上記実施形態における形成方法に限られない。例えば、以下のように磁性樹脂56を形成してもよい。先ず、積層体30にレーザ照射及びショットブラストで貫通孔THを形成する。次に、貫通孔THに対して、貫通孔THの容積以上の磁性樹脂56を充填して、貫通孔THから磁性樹脂56をあふれさせる。これにより、貫通孔THの開口面積以上に積層体30の第3正方向Z1を向く面上に磁性樹脂56が広がるようにする。その後に、積層体30の第3正方向Z1を向く面上のみに接着樹脂を塗布してもよい。この場合、磁性樹脂56に接着樹脂を塗布しなければ、第2接着部52Bを省略できる。また、磁性樹脂56の第3正方向Z1を向く面上に接着樹脂を塗布すれば、第2接着部52Bを形成できる。さらに、この方法であれば、上層接着樹脂層52を加工する必要がないため、積層体30に用いる絶縁体層のような感光性機能は必要なくなるため、感光性機能を有しない樹脂を使用できる。
【0138】
・上記実施形態では、積層方向は第3正方向Z1であったが、積層方向は第3負方向Z2であってもよい。
【符号の説明】
【0139】
10,110,210、310…積層型コイル部品
20…下層磁性体基板
30…積層体
40…上層磁性体基板
51…下層接着樹脂層
52…上層接着樹脂層
56,156,256、356…磁性樹脂
61…第1コイル
62…第2コイル
63…第3コイル
64…第4コイル
81…第1絶縁体層
82…第2絶縁体層
83…第3絶縁体層
84…第4絶縁体層
85…第5絶縁体層
86…第6絶縁体層
87…第7絶縁体層
88…第8絶縁体層
CS…収容空間
TH…貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8