(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】電子装置、電子装置の制御方法及び電子装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20240611BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
A61B5/02 310B
A61B5/11 230
(21)【出願番号】P 2021207560
(22)【出願日】2021-12-21
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】川口 洋平
(72)【発明者】
【氏名】野村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】落合 史章
(72)【発明者】
【氏名】関塚 達也
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-297272(JP,A)
【文献】特開2011-198032(JP,A)
【文献】特開2016-110460(JP,A)
【文献】特開2003-240716(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0145457(US,A1)
【文献】特開2015-104428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03
A61B 5/06-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1動作を周期的に実行する第1回路部であって前記第1動作に対応して所定の割込み信号を出力する第1回路部と、所定の動作指示に応じて第2動作を実行する第2回路部と、に接続された、少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記割込み信号を受信すると、前記第1動作が前記第2動作に影響を及ぼす期間に、前記第2動作が実行されないように、前記第2回路部に対する前記動作指示を行うことが可能で、前記割込み信号の受信に基づいて前記割込み信号を許可してから、第1の所定時間後に前記第2回路部に前記第2動作を行わせ、
前記第1の所定時間は、前記割込み信号の優先度、前記第1動作が実行される周期、及び前記第1動作が前記第2動作に影響を及ぼす期間に基づいて設定される、
電子装置。
【請求項2】
第1動作を周期的に実行する第1回路部であって前記第1動作に対応して所定の割込み信号を出力する第1回路部と、所定の動作指示に応じて第2動作を実行する第2回路部と、に接続された、少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記割込み信号を受信すると、前記第1動作が前記第2動作に影響を及ぼす期間に、前記第2動作が実行されないように、前記第2回路部に対する前記動作指示を行うことが可能で、前記割込み信号を受信してから前記割込み信号を許可するまでの時間を計測し、計測された時間に基づいて前記第2回路部に前記第2動作を行わせるか否かを判定する、
電子装置。
【請求項3】
第1動作を周期的に実行する第1回路部であって前記第1動作に対応して所定の割込み信号を出力する第1回路部と、所定の動作指示に応じて第2動作を実行する第2回路部と、に接続された、少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記第1動作は、前記第2動作と比べて電源に対する負荷の高い動作であり、
前記第2動作は
、電子装置に電源を供給する電池の電圧を測定する動作であり、
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記割込み信号を受信すると、前記第1動作が前記第2動作に影響を及ぼす期間に、前記第2動作が実行されないように、前記第2回路部に対する前記動作指示を行う、
電子装置。
【請求項4】
発光素子を有し、前記発光素子で発せられる光に基づいて自装置の装用者の脈波を測定するセンサ部であり、且つ、前記発光素子の発光動作である第1動作を周期的に実行する第1回路部であって前記第1動作に対応して所定の割込み信号を出力する第1回路部と、
所定の動作指示に応じて第2動作を実行する第2回路部と、
前記第1回路部と前記第2回路部とに接続された、少なくとも1つのプロセッサと、を備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記割込み信号を受信すると、前記第1動作が前記第2動作に影響を及ぼす期間に、前記第2動作が実行されないように、前記第2回路部に対する前記動作指示を行う、
電子装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記割込み信号を受信したタイミングに基づいて前記第2回路部に前記第2動作を行わせるタイミングを決定する、
請求項1に記載の電子装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記計測された時間が第2の所定時間を超える場合、前記動作指示を行わない、
請求項2に記載の電子装置。
【請求項7】
前記第2の所定時間は、前記割込み信号の優先度、前記第1動作が実行される周期、前記第1動作が前記第2動作に影響を及ぼす期間、及び前記少なくとも1つのプロセッサが前記割込み信号を許可してから前記第2回路部による前記第2動作が行われるまでの時間に基づいて、設定される、
請求項6に記載の電子装置。
【請求項8】
第1動作を周期的に実行する第1回路部であって前記第1動作に対応して所定の割込み信号を出力する第1回路部と、所定の動作指示に応じて第2動作を実行する第2回路部と、に接続され、前記割込み信号を受信すると、前記第1動作が前記第2動作に影響を及ぼす期間に、前記第2動作が実行されないように、前記第2回路部に対する前記動作指示を行わせることが可能なコンピュータに、前記割込み信号の受信に基づいて前記割込み信号を許可してから、第1の所定時間後に前記第2回路部に前記第2動作を行わせる制御方法であって、
前記第1の所定時間は、前記割込み信号の優先度、前記第1動作が実行される周期、及び前記第1動作が前記第2動作に影響を及ぼす期間に基づいて設定される、
電子装置の制御方法。
【請求項9】
第1動作を周期的に実行する第1回路部であって前記第1動作に対応して所定の割込み信号を出力する第1回路部と、所定の動作指示に応じて第2動作を実行する第2回路部と、に接続され、前記割込み信号を受信すると、前記第1動作が前記第2動作に影響を及ぼす期間に、前記第2動作が実行されないように、前記第2回路部に対する前記動作指示を行わせることが可能なコンピュータに、前記割込み信号を受信してから前記割込み信号を許可するまでの時間を計測させ、計測された時間に基づいて前記第2回路部に前記第2動作を行わせるか否かを判定させる、
電子装置の制御方法。
【請求項10】
第1動作を周期的に実行する第1回路部であって前記第1動作に対応して所定の割込み信号を出力する第1回路部と、所定の動作指示に応じて第2動作を実行する第2回路部と、に接続されたコンピュータに、前記割込み信号を受信すると、前記第1動作が前記第2動作に影響を及ぼす期間に、前記第2動作が実行されないように、前記第2回路部に対する前記動作指示を行わせる制御方法であって、
前記第1動作は、前記第2動作と比べて電源に対する負荷の高い動作であり、
前記第2動作は、電子装置に電源を供給する電池の電圧を測定する動作である、
電子装置の制御方法。
【請求項11】
発光素子を有し、前記発光素子で発せられる光に基づいて自装置の装用者の脈波を測定するセンサ部であり、且つ、前記発光素子の発光動作である第1動作を周期的に実行する第1回路部であって前記第1動作に対応して所定の割込み信号を出力する第1回路部と、所定の動作指示に応じて第2動作を実行する第2回路部と、を備える電子装置の、前記第1回路部と前記第2回路部とに接続されたコンピュータに、前記割込み信号を受信すると、前記第1動作が前記第2動作に影響を及ぼす期間に、前記第2動作が実行されないように、前記第2回路部に対する前記動作指示を行わせる、
電子装置の制御方法。
【請求項12】
第1動作を周期的に実行する第1回路部であって前記第1動作に対応して所定の割込み信号を出力する第1回路部と、所定の動作指示に応じて第2動作を実行する第2回路部と、に接続され、前記割込み信号を受信すると、前記第1動作が前記第2動作に影響を及ぼす期間に、前記第2動作が実行されないように、前記第2回路部に対する前記動作指示を行わせることが可能なコンピュータに、前記割込み信号の受信に基づいて前記割込み信号を許可してから、第1の所定時間後に前記第2回路部に前記第2動作を行わせる制御プログラムであって、
前記第1の所定時間は、前記割込み信号の優先度、前記第1動作が実行される周期、及び前記第1動作が前記第2動作に影響を及ぼす期間に基づいて設定される、
電子装置の制御プログラム。
【請求項13】
第1動作を周期的に実行する第1回路部であって前記第1動作に対応して所定の割込み信号を出力する第1回路部と、所定の動作指示に応じて第2動作を実行する第2回路部と、に接続され、前記割込み信号を受信すると、前記第1動作が前記第2動作に影響を及ぼす期間に、前記第2動作が実行されないように、前記第2回路部に対する前記動作指示を行わせることが可能なコンピュータに、前記割込み信号を受信してから前記割込み信号を許可するまでの時間を計測させ、計測された時間に基づいて前記第2回路部に前記第2動作を行わせるか否かを判定させる、
電子装置の制御プログラム。
【請求項14】
第1動作を周期的に実行する第1回路部であって前記第1動作に対応して所定の割込み信号を出力する第1回路部と、所定の動作指示に応じて第2動作を実行する第2回路部と、に接続されたコンピュータに、前記割込み信号を受信すると、前記第1動作が前記第2動作に影響を及ぼす期間に、前記第2動作が実行されないように、前記第2回路部に対する前記動作指示を行わせる制御プログラムであって、
前記第1動作は、前記第2動作と比べて電源に対する負荷の高い動作であり、
前記第2動作は、電子装置に電源を供給する電池の電圧を測定する動作である、
電子装置の制御プログラム。
【請求項15】
発光素子を有し、前記発光素子で発せられる光に基づいて自装置の装用者の脈波を測定するセンサ部であり、且つ、前記発光素子の発光動作である第1動作を周期的に実行する第1回路部であって前記第1動作に対応して所定の割込み信号を出力する第1回路部と、所定の動作指示に応じて第2動作を実行する第2回路部と、を備える電子装置の、前記第1回路部と前記第2回路部とに接続されたコンピュータに、前記割込み信号を受信すると、前記第1動作が前記第2動作に影響を及ぼす期間に、前記第2動作が実行されないように、前記第2回路部に対する前記動作指示を行わせる、
電子装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、電子装置、電子装置の制御方法及び電子装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生体情報を検出可能な電子装置が知られている。例えば特許文献1に、この種の電子装置の具体的構成が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の電子装置は、センサを点滅させ、これにより得られる散乱光に基づいて脈波等の生体情報を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子装置の制御部のなかには、センサ等の他の回路部にクロックを出力できないものがある。この場合、センサは、制御部に対して非同期で動作することとなる。そのため、制御部がセンサの動作タイミングを正確に把握することは難しい。制御部は、センサの動作タイミングとは無関係に、例えば電子装置の電池の電圧を測定する等の処理を実行する。
【0006】
センサの動作時に大きな電流が必要になる場合を考える。この場合、センサの動作時に電池の電圧が一時的に降下する。このタイミングで電池の電圧が測定されると、正確な測定値が得られない虞がある。正確な測定値を得るため、例えばセンサの動作を停止することにより、センサの動作に伴う一時的な電圧降下を電圧測定時に生じさせない、という措置が考えられる。しかし、センサの動作を停止させている間、生体情報を検出できないという、新たな弊害が発生してしまう。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、センサ等の回路部の動作が別の回路部の動作結果に及ぼす影響を抑えることができる電子装置、電子装置の制御方法及び電子装置の制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る電子装置は、第1動作を周期的に実行する第1回路部であって前記第1動作に対応して所定の割込み信号を出力する第1回路部と、所定の動作指示に応じて第2動作を実行する第2回路部と、に接続された、少なくとも1つのプロセッサを備え、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記割込み信号を受信すると、前記第1動作が前記第2動作に影響を及ぼす期間に、前記第2動作が実行されないように、前記第2回路部に対する前記動作指示を行うことが可能で、前記割込み信号の受信に基づいて前記割込み信号を許可してから、第1の所定時間後に前記第2回路部に前記第2動作を行わせ、前記第1の所定時間は、前記割込み信号の優先度、前記第1動作が実行される周期、及び前記第1動作が前記第2動作に影響を及ぼす期間に基づいて設定される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、センサ等の回路部の動作が別の回路部の動作結果に及ぼす影響を抑えることができる電子装置、電子装置の制御方法及び電子装置の制御プログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電子装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る電子装置に備えられる電池の電圧の測定精度を改善させる処理を説明するための図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る電子装置に備えられる脈波センサ及びMCU(Micro Controller Unit)の動作並びに電池の電圧レベルを時間軸上で示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態においてMCUにより実行されるプログラムを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して、本発明の一実施形態に係る電子装置、電子装置の制御方法及び電子装置の制御プログラムについて詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子装置1の構成を示すブロック図である。
図1に示されるように、電子装置1は、MCU100、電池102、フラッシュROM104、脈波センサ106、加速度センサ108、地磁気センサ110、気圧センサ112、GPS(Global Positioning System)レシーバ114、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)モジュール116及びLCD(Liquid Crystal Display)118を備える。
【0013】
電子装置1は、人が装用可能なウェアラブル装置である。例示的には、電子装置1は、腕時計型のウェアラブル装置であり、装用者の手首の脈拍を検出することができる。なお、本実施形態で示す電子装置1はあくまで一例にすぎない。電子装置1は、腕時計型とは異なる形態のウェアラブル装置であってもよく、また、ウェアラブル装置とは異なる形態の装置(例えばスマートフォン、タブレット端末等)であってもよい。
【0014】
MCU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含む素子である。MCU100は、ROMに格納されたプログラム及びデータを読み出し、RAMをワークエリアとして用いることにより、電子装置1を制御する。MCU100は、例えばバスを介して、
図1に示される各回路部と接続される。
【0015】
MCU100は、例えば、単一のCPUコアを有するシングルコアプロセッサ又は複数のCPUコアを有するマルチコアプロセッサであり、少なくとも1つのプロセッサを含む構成となっている。すなわち、MCU100は、「少なくとも1つのプロセッサ」の一例である。複数のプロセッサを含む構成とした場合、MCU100は、単一の装置としてパッケージ化されたものであってもよく、電子装置1内で物理的に分離した複数の装置で構成されてもよい。
【0016】
電池102は、電子装置1の電源であり、例えば充放電可能なリチウムイオン電池である。電池102から電子装置1内の各部に電源ラインを通じて電力供給が行われる。これにより、電子装置1が動作する。
【0017】
フラッシュROM104は、不揮発性の半導体メモリであり、二次記憶装置又は補助記憶装置としての役割を担う。フラッシュROM104には、例えば各センサより収集されたデータが格納される。
【0018】
脈波センサ106は、例えば光学式の脈波センサであり、発光素子106a、受光素子106b及びメモリ106cを備える。発光素子106aは、例えば、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)等である。
【0019】
脈波センサ106は、発光素子106aで発せられる光に基づいて装用者の脈波を測定するセンサ部である。例示的には、脈波センサ106は、発光素子106aを一定の周期で点滅させる。発光素子106aで発せられた光は、腕時計型のウェアラブル装置である電子装置1を装用する装用者の手首に照射される。この光の波長は、例えば動脈中の酸化ヘモグロビンに対する吸光度の高い550nm付近の緑色波長である。そのため、心臓の脈動に伴って変化する血流量(言い換えると、動脈の容量変化)に応じて手首からの散乱光の光量が変化する。脈波センサ106は、受光素子106bにて散乱光を受光すると、その受光量に応じた信号を発生させて、脈波データとしてメモリ106cに保存する。
【0020】
脈波センサ106は、例えば発光素子106aを発光させたタイミングで所定の割込み信号をMCU100に送信する。この割込み信号は、例えばメモリ106cに蓄積された脈波データをMCU100に取り込ませるための信号である。割込み信号は、発光素子106aが発光される都度(言い換えると、1つの脈波データが取得される都度)、MCU100に送信されてもよく、また、発光素子106aが複数回発光される都度(言い換えると、複数の脈波データが取得される都度)、MCU100に送信されてもよい。
【0021】
このように、脈波センサ106は、第1動作(本実施形態では、発光素子106aの発光動作)を周期的に実行する第1回路部の一例であり、第1動作に対応して所定の割込み信号を出力する。
【0022】
加速度センサ108は、電子装置1(言い換えると装用者)の移動速度が変化する際に発生する、直交3軸方向の慣性力を検知し、検知された慣性力に応じた電気信号をMCU100に送信する。また、地磁気センサ110は、直交3軸方向の磁力の値を検知し、検知された磁力の値に応じた電気信号をMCU100に送信する。MCU100は、加速度センサ108及び地磁気センサ110より入力される電気信号に基づいて、例えば電子装置1の向き、移動方向、移動速度、移動距離等を推定する。
【0023】
気圧センサ112は、大気の圧力を検知し、検知された圧力に応じた電気信号をMCU100に送信する。MCU100は、気圧センサ112より入力される電気信号に基づいて、気圧を算出する。
【0024】
GPSレシーバ114は、複数のGPS衛星から電波信号を受信し、受信された電波信号に基づいて電子装置1の位置を測定する。なお、GPSレシーバ114が電波信号を受信できないエリア(例えばトンネルや地下)に電子装置1が位置する場合、MCU100は、例えば加速度センサ108及び地磁気センサ110を用いたデッドレコニングにより、電子装置1の位置を推定してもよい。また、MCU100は、加速度センサ108及び地磁気センサ110の出力値並びにGPSレシーバ114による測位結果をカルマンフィルタに入力して、電子装置1の位置を推定してもよい。
【0025】
BLEモジュール116は、電子装置1と外部装置とを無線で接続する通信インタフェースである。MCU100は、例えば、各センサより収集したデータを、BLEモジュール116を介して外部装置に送信することができる。電子装置1は、例えば、BLEモジュール116に代えて又は加えて、NFC(Near field communication)規格に準拠した通信インタフェース、Wi-Fi規格に準拠した通信インタフェース等を備えてもよい。
【0026】
LCD118は、例えばタッチパネルディスプレイであり、表示部と操作部とを兼ねる。LCD118には、例えば、脈波センサ106により取得された脈拍、加速度センサ108及び地磁気センサ110により取得された移動距離等、気圧センサ112により取得された気圧、GPSレシーバ114により取得された現在位置等が表示される。装用者は、LCD118に対するタッチ操作により電子装置1を操作することができる。
【0027】
MCU100は、第2回路部の一例である電圧測定回路部100aを含む。電圧測定回路部100aは、定期的に、電池102の電圧を測定する。MCU100は、測定された電圧に基づいて電池残量を推定する。推定された電池残量は、例えばLCD118に表示される。装用者は、例えば、LCD118に表示された電池残量を視認して、電子装置1を充電すべきか否かを判断することができる。なお、電圧測定回路部100aは、MCU100の制御下で動作する、MCU100とは物理的に分離された、別の回路部として構成されてもよい。
【0028】
ここで、MCU100は、他の回路部にクロックを出力することができない。そのため、脈波センサ106等の各回路部は、MCU100に対して非同期で動作する。MCU100と各回路部とが非同期で動作することから、例えば各回路部の動作に伴って大きな電流が消費されたタイミングで電圧測定回路部100aが電池102の電圧を測定すると、正確な測定値が得られない虞がある。各回路部の動作に伴って大きな電流が消費されると、電池102の電圧が一時的に降下するからである。
【0029】
そこで、本実施形態では、電子装置1が次の処理を実行する。この処理の実行により、電池102の電圧の測定精度が改善する。
【0030】
図2及び
図3は、電池102の電圧の測定精度を改善させる処理を説明するための図である。
図2においては、MCU100の機能ブロック構成を示す。
図3は、脈波センサ106及びMCU100の動作並びに電池102の電圧レベルを時間軸上で示す図である。
【0031】
MCU100は、機能ブロックとして、計測時間取得部100A、動作指示判定部100B及び動作指示部100Cを備える。
図2及び
図3の例では、これらの機能ブロックの動作により、発光素子106aの発光動作に伴って電池102の電圧が一時的に降下する期間に、電圧測定回路部100aによる電圧測定動作が実行されないように、電圧測定回路部100aに対する動作指示(所定の動作指示)が行われる。
【0032】
本実施形態において、MCU100の各機能ブロックは、コンピュータの一例であるMCU100が実行するプログラムにより実現される。各機能ブロックは、一部又は全部が専用の論理回路等のハードウェアにより実現されてもよい。
【0033】
なお、電圧測定回路部100aによる電圧測定動作は、電子装置1に電源を供給する電池102の電圧を測定する動作であり、第2動作の一例である。発光素子106aの発光動作は、第2動作と比べて電源に対する負荷の高い動作であり、第1動作の一例である。
【0034】
このように、電圧測定回路部100aに対する動作指示が行われることにより、センサ等の回路部の動作が別の回路部の動作結果に及ぼす影響を抑えることができる。例示的には、発光素子106aの発光動作に伴う一時的な電圧降下の発生時に電池102の電圧が測定されることが避けられる。電圧測定回路部100aは、上記の一時的な電圧降下が発生していないタイミングで電池102の電圧を測定することができる。そのため、電池102の電圧の測定精度が改善される。
【0035】
図3に示されるように、脈波センサ106は、発光素子106aを一定の周期で点滅させる。脈波センサ106は、発光素子106aを発光させる毎に脈波データを取得してメモリ106cに保存するとともに、割込み信号INTをMCU100に出力する。割込み信号INTは、メモリ106cに蓄積された脈波データをMCU100に取り込ませるための割込み信号である。
【0036】
また、
図3に示されるように、脈波センサ106において発光素子106aが発光されると、電池102の電圧が一時的に降下する。
【0037】
図2に示されるように、MCU100は、計時手段であるタイマ100bを含む。MCU100にて割込み信号INTが受信されると、タイマ100bが自動的に起動する。起動したタイマ100bは、割込み信号INTの受信時点を基点としてカウントアップを開始する。
【0038】
MCU100は、割込み信号INTを受信してから例えば数ミリ秒経過後に、割込み信号INTを許可(言い換えると認識)する。
【0039】
便宜上、
図3中、発光素子106aの最初の発光開始時点を「発光開始時点T
10」と記し、これに対応する、電池102の電圧降下期間の始点、終点を、それぞれ「電圧降下始点T
11」、「電圧降下終点T
12」と記す。また、最初の割込み信号INTの受信時点、許可時点を、それぞれ「受信時点T
13」、「許可時点T
14」と記す。また、
図3中、発光素子106aの2回目の発光開始時点を「発光開始時点T
20」と記し、これに対応する、電池102の電圧降下期間の始点、終点を、それぞれ「電圧降下始点T
21」、「電圧降下終点T
22」と記す。また、2回目の割込み信号INTの受信時点、許可時点を、それぞれ「受信時点T
23」、「許可時点T
24」と記す。また、
図3中、発光素子106aの3回目の発光開始時点を「発光開始時点T
30」と記し、これに対応する、電池102の電圧降下期間の始点を「電圧降下始点T
31」と記す。電池102の電圧降下期間は、第1動作が第2動作に影響を及ぼす期間の一例である。
【0040】
図4は、本発明の一実施形態においてMCU100により実行されるプログラム(及び方法)を示すフローチャートである。MCU100は、例えば、割込み信号INTを許可すると、
図4に示される処理の実行を開始する。なお、割込み信号INTが許可されると、MCU100は、例えば、
図4に示される処理と並行して、脈波センサ106のメモリ106cに蓄積された脈波データの取り込み処理を行う。
【0041】
図4に示されるように、MCU100は、タイマ100bにより計測された、割込み信号INTの許可時点での時間Tを取得する(ステップS101)。すなわち、MCU100は、割込み信号INTを受信してから割込み信号INTを許可するまでの時間Tを取得する計測時間取得部100Aとして動作する。例えば、MCU100による時間Tの取得後、タイマ100bは停止し、そのカウント値はリセットされる。
【0042】
MCU100は、ステップS101にて取得された時間Tが所定時間PT1を超えるか否かを判定する(ステップS102)。
【0043】
ここで、MCU100は、脈波センサ106以外の回路部から割込み信号を受信することもある。各割込み信号(言い換えると、割込み処理)には、例えば割込み処理用のコントローラ(不図示)により優先度が設定される。MCU100は、高い優先度が設定された割込み処理を実行する間、これよりも低い優先度が設定された割込み処理を許可しない。そのため、割込み信号INTが許可されるまでの時間Tは、割込み信号INTの受信時におけるMCU100の処理状況に応じて変わる。
【0044】
図3中、受信時点T
13では、MCU100は、割込み信号INTに応じた割込み処理(すなわち、脈波データの取り込み処理)よりも優先度の高い割込み処理を実行していない。そのため、MCU100は、割込み信号INTを受信してから速やかに割込み信号INTを許可する。この場合、ステップS101にて取得された時間T、すなわち受信時点T
13から許可時点T
14までの経過時間は、所定時間PT
1以下となる。
【0045】
時間Tが所定時間PT1以下の場合(ステップS102:NO)、現時点(すなわち許可時点T14)から次回の電圧降下始点T21に至るまでに十分な時間がある。そのため、電圧測定回路部100aによる電圧測定動作を速やかに実行すれば、この電圧測定動作の実行期間が、電池102の次回の電圧降下期間と重複しない。
【0046】
そこで、MCU100は、現時点(すなわち許可時点T14)から所定時間PT2後(例えば5ミリ秒)に電池102の電圧を測定するように、電圧測定回路部100aに対して動作指示を行う(ステップS103)。これにより、発光素子106aの発光動作に伴う電池102の電圧降下期間外に、電圧測定回路部100aによる電圧測定動作が実行される。そのため、正確な測定値が得られる。MCU100は、電池残量を高い精度で推定することができる。
【0047】
許可時点T14の直後に電圧測定回路部100aに電池102の電圧を測定させると、場合によっては、電圧測定動作が最初の電圧降下期間(すなわち、電圧降下始点T11から電圧降下終点T12までの期間)と時間的に重複したタイミングで実行されてしまう。このような問題をより確実に避けるため、本実施形態では、許可時点T14の直後でなく所定時間PT2後に電圧測定回路部100aに電池102の電圧を測定させている。
【0048】
このように、ステップS103において、MCU100は、受信時点T13から許可時点T14までの経過時間(時間T)に基づいて電圧測定回路部100aに電圧測定動作を行わせるタイミングを決定している。MCU100は、割込み信号INTを受信したタイミング(すなわち受信時点T13)に基づいて電圧測定回路部100aに電圧測定動作を行わせるタイミングを決定しているとも言え、また、割込み信号INTを許可したタイミング(すなわち許可時点T14)に基づいて電圧測定回路部100aに電圧測定動作を行わせるタイミングを決定しているとも言える。
【0049】
図3中、受信時点T
23では、MCU100は、脈波データの取り込み処理よりも優先度の高い割込み処理を実行している。MCU100は、脈波データの取り込み処理よりも優先度の高い全ての割込み処理が完了するまで、割込み信号INTを許可しない。この場合、ステップS101にて取得された時間T、すなわち受信時点T
23から許可時点T
24までの経過時間は、所定時間PT
1を超える。
【0050】
時間Tが所定時間PT1を超える場合(ステップS102:YES)、現時点(すなわち許可時点T24)から次回の電圧降下始点T31に至るまで十分な時間がない。そのため、電圧測定回路部100aによる電圧測定動作を速やかに実行した場合でも、この電圧測定動作の実行期間が、電池102の次回の電圧降下期間と重複する可能性が高い。
【0051】
そこで、MCU100は、電圧測定回路部100aに対する動作指示を行うことなく、
図4のフローチャートに示される処理を終了する。これにより、発光素子106aの発光動作に伴う電池102の電圧降下期間内に、電池102の電圧が測定されることが避けられる。
【0052】
このように、ステップS102~S103において、MCU100は、ステップS101にて取得された時間Tに基づいて電圧測定回路部100aに対して動作指示を行うか否かを判定する動作指示判定部100Bとして動作する。また、ステップS103において、MCU100は、電圧測定回路部100aに対して動作指示を行う動作指示部100Cとして動作する。
【0053】
MPU100が割込み信号INTを許可してから電圧測定回路部100aによる電圧測定動作が行われるまでの所定時間PT2(本実施形態では5ミリ秒)は、第1の所定時間の一例である。電圧測定動作の実行期間と電池102の電圧降下期間との重複をより確実に避けるため、所定時間PT2は、例えば次の事項(1)~(3)に基づいて予め設定される。
【0054】
(1)割込み信号INTの優先度
(2)発光素子106aの発光動作が実行される周期
(3)発光動作が電圧測定動作に影響を及ぼす期間(すなわち電池102の電圧降下期間)
【0055】
電圧測定回路部100aに対して動作指示を行うか否かを判定するための所定時間PT1は、第2の所定時間の一例である。電圧測定動作の実行期間と電池102の電圧降下期間との重複をより確実に避けるため、所定時間PT1は、例えば上記の事項(1)~(3)及び所定時間PT2に基づいて予め設定される。
【0056】
以上のように、本実施形態によれば、センサ等の回路部の動作が別の回路部の動作結果に及ぼす影響を抑えることができる電子装置、電子装置の制御方法及び電子装置の制御プログラムが提供される。
【0057】
その他、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上述した実施形態で実行される機能は可能な限り適宜組み合わせて実施しても良い。上述した実施形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件による適宜の組み合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、効果が得られるのであれば、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0058】
上記の実施形態では、第1動作、第2動作として、それぞれ、発光素子106aの発光動作、電圧測定回路部100aによる電圧測定動作を挙げたが、本発明の構成はこれに限らない。例えば、脈波センサ106とは異なる回路部の動作が、電池102の電圧を一時的に降下させる場合も考えられる。この場合も、MPU100は、例えば、該当する回路部から割込み信号を受信したとき、電池102の電圧降下期間に電圧測定動作が実行されないように、電圧測定回路部100aに対する動作指示を行う。これにより、電池102の電圧の測定精度が改善される。
【0059】
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
第1動作を周期的に実行する第1回路部であって、前記第1動作に対応して所定の割込み信号を出力する前記第1回路部と、所定の動作指示に応じて第2動作を実行する第2回路部と、に接続された、少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記割込み信号を受信すると、前記第1動作が前記第2動作に影響を及ぼす期間に、前記第2動作が実行されないように、前記第2回路部に対する前記動作指示を行う、
電子装置。
[付記2]
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記割込み信号を受信したタイミングに基づいて前記第2回路部に前記第2動作を行わせるタイミングを決定する、
付記1に記載の電子装置。
[付記3]
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記割込み信号を受信してから前記割込み信号を許可し、前記割込み信号を許可したタイミングに基づいて前記第2回路部に前記第2動作を行わせるタイミングを決定する、
付記1に記載の電子装置。
[付記4]
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記割込み信号を許可してから第1の所定時間後に前記第2回路部に前記第2動作を行わせ、
前記第1の所定時間は、前記割込み信号の優先度、前記第1動作が実行される周期及び前記第1動作が前記第2動作に影響を及ぼす期間に基づいて設定される、
付記3に記載の電子装置。
[付記5]
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記割込み信号を受信してから前記割込み信号を許可するまでの時間を計測し、計測された時間に基づいて前記動作指示を行うか否かを判定する、
付記3又は付記4に記載の電子装置。
[付記6]
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記計測された時間が第2の所定時間を超える場合、前記動作指示を行わない、
付記5に記載の電子装置。
[付記7]
前記第2の所定時間は、前記割込み信号の優先度、前記第1動作が実行される周期、前記第1動作が前記第2動作に影響を及ぼす期間、及び前記少なくとも1つのプロセッサが前記割込み信号を許可してから前記第2回路部による前記第2動作が行われるまでの時間に基づいて、設定される、
付記6に記載の電子装置。
[付記8]
前記第2動作は、前記電子装置に電源を供給する電池の電圧を測定する動作であり、
前記第1動作は、前記第2動作と比べて電源に対する負荷の高い動作である、
付記1から付記7の何れか一項に記載の電子装置。
[付記9]
前記第1回路部と、
前記第2回路部と、を更に備える、
付記1から付記8の何れか一項に記載の電子装置。
[付記10]
前記電子装置は、人が装用可能なウェアラブル装置であり、
前記第1回路部は、発光素子を備え、前記発光素子で発せられる光に基づいて装用者の脈波を測定するセンサ部であり、
前記第1動作は、前記発光素子の発光動作である、
付記9に記載の電子装置。
[付記11]
第1動作を周期的に実行する第1回路部であって、前記第1動作に対応して所定の割込み信号を出力する前記第1回路部と、所定の動作指示に応じて第2動作を実行する第2回路部と、に接続されたコンピュータに、
前記割込み信号を受信すると、前記第1動作が前記第2動作に影響を及ぼす期間に、前記第2動作が実行されないように、前記第2回路部に対する前記動作指示を行わせる、
電子装置の制御方法。
[付記12]
第1動作を周期的に実行する第1回路部であって、前記第1動作に対応して所定の割込み信号を出力する前記第1回路部と、所定の動作指示に応じて第2動作を実行する第2回路部と、に接続されたコンピュータに、
前記割込み信号を受信すると、前記第1動作が前記第2動作に影響を及ぼす期間に、前記第2動作が実行されないように、前記第2回路部に対する前記動作指示を行わせる、
電子装置の制御プログラム。
【符号の説明】
【0060】
1 :電子装置
100 :MPU
100A :計測時間取得部
100B :動作指示判定部
100C :動作指示部
100a :電圧測定回路部
100b :タイマ
102 :電池
104 :フラッシュROM
106 :脈波センサ
106a :発光素子
106b :受光素子
106c :メモリ
108 :加速度センサ
110 :地磁気センサ
112 :気圧センサ
114 :GPSレシーバ
116 :BLEモジュール
118 :LCD