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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】車両の乗員検出システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/04 20060101AFI20240611BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240611BHJP
【FI】
B60R11/04
G06T7/00 650Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021209719
(22)【出願日】2021-12-23
(65)【公開番号】P2023094317
(43)【公開日】2023-07-05
【審査請求日】2023-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大矢 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】伊津野 貴裕
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-107817(JP,A)
【文献】特開2009-279970(JP,A)
【文献】特開平2-51050(JP,A)
【文献】特開2000-272863(JP,A)
【文献】特開平6-112700(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/8958(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/04
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内上側に設置され、車内フロアの予め定められた乗員検出領域を含む領域を撮影して撮影画像を取得するカメラと、
前記撮影画像における前記乗員検出領域の位置情報を記憶するメモリと、
前記乗員検出領域の位置情報を用いて前記撮影画像の中の前記乗員検出領域を抽出し、その領域に現れる乗員を検出するプロセッサと、を備える、車両の乗員検出システムであって、
前記プロセッサは、
車両ドアの閉鎖時にその下に位置して前記車両ドアの開放時に露出する、線状に延びる金属フレームを、前記車両ドアの開放時に前記カメラで撮影して得られる補正用画像を用いて、前記乗員検出領域の位置情報を補正する補正モードを実行し、
前記プロセッサは、前記補正モードにおいて、
前記補正用画像における前記金属フレームの実位置を検出し、
前記金属フレームの実位置と、前記メモリに予め記憶された、前記補正用画像における前記金属フレームの期待位置との差を、ズレ量として算出し、
前記乗員検出領域の位置情報に示される現在の前記撮影画像の前記乗員検出領域を、前記ズレ量だけ移動させた領域を、新たな前記撮影画像の前記乗員検出領域とするように、前記撮影画像の前記乗員検出領域の位置情報を更新する、
ことを特徴とする車両の乗員検出システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の乗員検出システムにおいて、
前記プロセッサは、
前記補正用画像を解析することで前記車内に乗員がいるか否かを検出し、
前記車内に乗員がいないことを検出した際に、前記補正モードを実行する、
ことを特徴とする車両の乗員検出システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両の乗員検出システムにおいて、
前記プロセッサは、前記補正モードにおいて、
前記補正用画像における前記金属フレームと前記車内フロアの色差から、その画像における前記金属フレームの前記車内フロア側の外郭の実位置を検出し、
前記金属フレームの外郭の実位置と、前記メモリに予め記憶された、前記補正用画像における前記金属フレームの前記車内フロア側の外郭の期待位置との差を、前記ズレ量として算出する、
ことを特徴とする車両の乗員検出システム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の車両の乗員検出システムにおいて、
前記プロセッサは、前記補正モードにおいて、
前記補正用画像における前記金属フレームと車体外部の色差から、その画像における前記金属フレームの前記車体外部側の外郭の実位置を検出し、
前記金属フレームの外郭の実位置と、前記メモリに予め記憶された、前記補正用画像における前記金属フレームの前記車体外部側の外郭の期待位置との差を、前記ズレ量として算出する、
ことを特徴とする車両の乗員検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗員検出システムに関し、特に、車内カメラの撮影画像における乗員検出領域を補正する機能を有するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バス等の車両において、車内上側に設置されたカメラで車内を撮影し、そのカメラの撮影画像から、車内フロアの予め定められた乗員検出領域に乗員がいるか否かを検出する乗員検出システムが知られている。
【0003】
特許文献1には、バス車内に設定された観察領域をカメラで撮影した撮影画像から、観察領域で起立状態にある乗員を検出した際に、運転席前のディスプレイ装置に警報を表示する、車内事故防止システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-107817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乗員検出システムでは、車内上側に設置されたカメラが、車内フロアの予め定められた乗員検出領域を含む領域を撮影して撮影画像を取得し、プロセッサが、撮影画像における乗員検出領域の位置情報をメモリから読み出して、その位置情報を用いて撮影画像の中の乗員検出領域を抽出し、その領域に現れる乗員を検出する。
【0006】
カメラは、それが車体に設置される際、または、車両が走行した際などに所望の位置からずれる可能性があり、その場合には、撮影画像の中の乗員検出領域もずれるため、正確な乗員検出を行うことができなくなってしまう。よって、カメラが所望の位置からずれた場合であっても、撮影画像における乗員検出領域の位置情報を補正して、正確な乗員検出を行うことができるようにすることが望まれている。
【0007】
本発明の目的は、車両の乗員検出システムにおいて、カメラの撮影画像における乗員検出領域の位置を補正することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両の乗員検出システムは、車内上側に設置され、車内フロアの予め定められた乗員検出領域を含む領域を撮影して撮影画像を取得するカメラと、前記撮影画像における前記乗員検出領域の位置情報を記憶するメモリと、前記乗員検出領域の位置情報を用いて前記撮影画像の中の前記乗員検出領域を抽出し、その領域に現れる乗員を検出するプロセッサと、を備える、車両の乗員検出システムであって、前記プロセッサは、車両ドアの閉鎖時にその下に位置して前記車両ドアの開放時に露出する、線状に延びる金属フレームを、前記車両ドアの開放時に前記カメラで撮影して得られる補正用画像を用いて、前記乗員検出領域の位置情報を補正する補正モードを実行し、前記プロセッサは、前記補正モードにおいて、前記補正用画像における前記金属フレームの実位置を検出し、前記金属フレームの実位置と、前記メモリに予め記憶された、前記補正用画像における前記金属フレームの期待位置との差を、ズレ量として算出し、前記乗員検出領域の位置情報に示される現在の前記撮影画像の前記乗員検出領域を前記ズレ量だけ移動させた領域を、新たな前記撮影画像の前記乗員検出領域とするように、前記撮影画像の前記乗員検出領域の位置情報を更新する、ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る車両の乗員検出システムにおいて、前記プロセッサは、前記補正用画像を解析することで前記車内に乗員がいるか否かを検出し、前記車内に乗員がいないことを検出した際に、前記補正モードを実行する、としてもよい。
【0010】
本発明に係る車両の乗員検出システムにおいて、前記プロセッサは、前記補正モードにおいて、前記補正用画像における前記金属フレームと前記車内フロアの色差から、その画像における前記金属フレームの前記車内フロア側の外郭の実位置を検出し、前記金属フレームの外郭の実位置と、前記メモリに予め記憶された、前記補正用画像における前記金属フレームの前記車内フロア側の外郭の期待位置との差を、前記ズレ量として算出する、としてもよい。
【0011】
本発明に係る車両の乗員検出システムにおいて、前記プロセッサは、前記補正モードにおいて、前記補正用画像における前記金属フレームと車体外部の色差から、その画像における前記金属フレームの前記車体外部側の外郭の実位置を検出し、前記金属フレームの外郭の実位置と、前記メモリに予め記憶された、前記補正用画像における前記金属フレームの前記車体外部側の外郭の期待位置との差を、前記ズレ量として算出する、としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車内のデザイン変更等により変化する可能性が低く、かつ、周りとの色差や線状(線形状)から補正用画像での検出が容易である金属フレームをカメラにより撮影するので、補正用画像において金属フレームの位置を的確に捕捉することができる。従って、カメラの位置ズレにともなう補正用画像における金属フレームのズレ量を把握することができ、そのズレ量を撮影画像の乗員検出領域の位置に反映して、それを補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る車両の斜視図である。
図2】ドアが開いた状態を示す車両の斜視図である。
図3】車両の車室内を示す図である。
図4】車両の乗降口付近を上から見た図である。
図5】車両の乗員検出システムの機能ブロック図である。
図6】補正指示ボタンが押下された際の処理の流れを示すフローチャートである。
図7】撮影画像の一例を示す図である。
図8】補正用画像の一例を示す図である。
図9】補正用画像の別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。以下で述べる構成は、説明のための例示であって、車両の仕様等に合わせて適宜変更が可能である。全ての図面において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図において、矢印FRの向きが車両前方、矢印UPの向きが車両上方、矢印RWの向きが車両右方を表す。
【0015】
図1は、実施形態に係る車両10の斜視図であり、図2は、車両10のドア50が開いた状態を示す斜視図であり、図3は、車両10の車室内を示す図である。
【0016】
車両10は、図1に示すように略直方体の形状を有し、自動運転可能な自動車である。具体的には、車両10は、自動運転モード及び手動運転モードを含む複数の運転モードで運転することが可能となっている。車両10は、図示しない回転電機を駆動源とする電気自動車である。車両10には、回転電機に電力を供給するバッテリが搭載されている。なお、別の実施形態として、車両10は、内燃機関を駆動源とする自動車であってもよい。
【0017】
車両10は、不特定多数の乗員が乗り合うバスとして利用される。車両10の車体側部には、乗降口52が設けられている。乗降口52は、車両前後方向の略中央にあり、車両走行時はドア50により閉じられている。ドア50は、スライドドアであり、図2に示すように、前方側ドア50が前方に移動すると共に、後方側ドア50が後方に移動することで、乗降口52が開かれる。
【0018】
車両10は、ドア50外面に配置されたドアボタン56と、車室内(図3参照)の乗降口52近傍の壁に配置されたドアボタン58を備える。ドア50の閉状態において、ドアボタン56,58のいずれか1つが押下されることで、ドア50が開くようになっている。また、ドア50の開状態において、ドアボタン56,58のいずれか1つが押下されることで、ドア50が閉まるようになっている。
【0019】
車両10は、図2に示すように、乗降口52の下部のステップ部分に、車両前後方向に線状に延びる金属フレーム14を備える。金属フレーム14は、アルミ製である。金属フレーム14は、2つのドア50の閉鎖時にそれらの下に位置して隠れた状態となり、2つのドア50の開放時に露出状態となるものである。金属フレーム14は、車両前後方向の中央に2つの穴(不図示、以下、係止穴と言う)を備える。車両10は、2つドア50が閉じられた際に各ドア50の下から突出してくる係止棒(不図示)が金属フレーム14の2つの係止穴のそれぞれに入り込むことで、2つのドア50がロック状態となるように構成される。
【0020】
金属フレーム14は、車内のデザイン変更等により変化する可能性が低い部分であり、、その周り(車内フロアや車体外部)との色差や特徴的な形状(線状)から、以降説明するカメラ20で撮影して得られた撮像画像において検出することが容易な部分である。
【0021】
図3に示すように、車内フロア60には、金属フレーム14に隣接して、乗員の立ち乗り禁止領域16が設けられる。図3および以下説明する図において、立ち乗り禁止領域16の外郭が仮想線(一点鎖線)で示されている。立ち乗り禁止領域16は、安全配慮の観点から、車両走行時に乗員が立ち入ることが禁止される領域である。以下に説明するように、カメラ20により立ち乗り禁止領域16を撮影して、その領域に乗員がいるか否かを検出する。以下、立ち乗り禁止領域16を、乗員検出領域16と言う。
【0022】
乗降口52近くの天井には、カメラ20が設置されている。カメラ20は、乗員検出領域16と金属フレーム14を含む領域を撮影するものである。カメラ20は、広角レンズ、魚眼レンズ等を用いた180度以上の範囲(例えば360度)を撮影可能なものであってよい。
【0023】
車内の天井には、照明18が設置されている。照明18からの照明光は、金属フレーム14で反射されて、カメラ20の撮像素子に入射するので、カメラ20の撮影画像に金属フレーム14が明確に現れることになる。
【0024】
図4は、車両の乗降口52付近を上から見た図である。乗降口52が開いた状態では、2つのドア50はボディ70の外側にある。乗員検出領域16と金属フレーム14の外郭は、いずれも矩形である。金属フレーム14は、車内フロア60と車体外部62の間に位置する。以下に説明するように、補正モードにおいて、カメラ20で金属フレーム14を撮影して補正用画像を取得する。そして、補正用画像において、金属フレーム14の車内フロア60側の外郭の位置(1つの角(特徴点FLU)の位置と外郭線FILINの傾き)を検出する。また、以下で説明する別の実施形態では、補正用画像において、金属フレーム14の車体外部62側の外郭の位置(1つの角(特徴点FLB)の位置と外郭線FOLINの傾き)を検出する。
【0025】
図5は、車両に搭載された乗員検出システム12の機能ブロック図である。乗員検出システム12は、コントローラ24と、カメラ20と、サイネージ30と、ドア検出センサ32と、補正指示ボタン34とを備える。
【0026】
コントローラ24は、CPUを有するプロセッサ26と、メモリ28とを備える。プロセッサ26は、メモリ28に記憶された制御プログラム、制御データ(いずれも不図示)に従って動作する。なお、プロセッサ26は、CPUに代えて、またはそれと伴にASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を含んでもよい。メモリ28は、例えばRAM、ROM、フラッシュメモリ等である。メモリ28には、制御プログラム、制御データ、撮影画像38、補正用画像40、検出領域の位置情報42(乗員検出領域の位置情報42とも言う)、金属フレームの期待位置46、金属フレームの実位置47、およびズレ量48が記憶される。
【0027】
補正用画像40は、カメラ20の撮影画像38の内、補正モードに用いられる画像である。検出領域の位置情報42、金属フレームの期待位置46、金属フレームの実位置47、およびズレ量48は、いずれも、補正モードに用いられるデータである。検出領域の位置情報42と金属フレームの期待位置46は、車両10の出荷検査前に、予めメモリ28に記憶されるものである。金属フレームの実位置47とズレ量48は、補正モードの処理の中で、一時的にメモリ28に記憶されるものである。
【0028】
サイネージ30は、車内の乗降口52付近の壁に配置されたディスプレイ装置である。サイネージ30は、乗員検出領域16に乗員がいることが検出された際に、その乗員に対して乗員検出領域16から出ることを促す警告を表示するものである(図3には不図示)。
【0029】
ドア検出センサ32は、車両のドア50が開放されているか否かを検出するものである。
【0030】
補正指示ボタン34は、車両10の運転席の近くに設けられた押しボタンである。補正指示ボタン34は、補正モードの実行指示を乗務員等から受け付けるものである。
【0031】
コントローラ24には、カメラ20、サイネージ30、ドア検出センサ32、および補正指示ボタン34が電気的に接続されている。
【0032】
次に、乗員検出システム12の乗員検出について説明する。車内上側に設置されたカメラ20は、金属フレーム14と乗員検出領域16を含む領域を、予め定められた時間間隔で撮影し、撮影画像38をコントローラ24に出力する。コントローラ24のプロセッサ26は、カメラ20から撮影画像38を取得して、それをメモリ28に記憶する。図7は、撮影画像38の一例を示す図である。撮影画像38は、x方向とy方向に画素が並んで構成され、それぞれの画素の位置はxy座標により特定される。撮影画像38の左上画素の位置が、座標(0,0)となる。
【0033】
メモリ28には、検出領域の位置情報42が予め記憶されている。検出領域の位置情報42は、撮影画像38における乗員検出領域16iの原点位置(Xd,Yd)(左上角の座標)、サイズ(dw,dh)(幅dwと高さdh(いずれも画素数))および傾きθd(領域16iの上辺のx方向に対する傾き)を含む。
【0034】
プロセッサ26は、検出領域の位置情報42を用いて撮影画像38の中の乗員検出領域16iを抽出し、その領域を既存技術(パターンマッチング等)を用いて解析することで、その領域に現れる乗員を検出する。そして、プロセッサ26は、乗員検出領域16にいる乗員を検出した際には、サイネージ30に警告を表示する制御を行う。
【0035】
次に、乗員検出システム12の補正モードについて説明する。カメラ20(図3参照)は、それが車体に設置される際、または、車両が走行した際などに所望の位置からずれることがある。その場合には、図8に示すように、撮影画像38の中の乗員検出領域16iも、検出領域の位置情報42で示される乗員検出領域16piからずれるため、正確な乗員検出を行うことができなくなってしまう。この実施形態では、カメラ20が所望の位置からずれた場合であっても、補正モードを実行して、メモリ28にある検出領域の位置情報42を補正することで、正確な乗員検出を維持できるようにする。
【0036】
メモリ28には、金属フレームの期待位置46が予め記憶されている。金属フレームの期待位置46は、撮影画像38における金属フレーム14i(図7参照)の特徴点iFLUの期待位置(Xfe,Yfe)(左上角の座標)および外郭線iFILINの期待傾きθfe(金属フレーム14iの上辺のx方向に対する傾き)を含む。
【0037】
車両10の出荷検査前に、検出領域の位置情報42と金属フレームの期待位置46がメモリ28に記憶される。これらの情報は、カメラ20が所望の位置に設置された際の撮影画像38における乗員検出領域16iと金属フレーム14iの位置を示している。図7の撮影画像38にはこれらの位置が示されている。
【0038】
図6は、補正指示ボタン34が押下された際の処理の流れを示すフローチャートである。図6のS100~S104が、補正モードの実行可否を判断する処理であり、S106~S114が補正モードの処理である。車両10の検査員や乗務員は、車両10の出荷検査時、および、車両10が使用されている期間の予め定められた時間間隔で補正指示ボタン34を押下して、図6のフローが実行されるようにする。ここでは、まず、車両10の出荷検査時に、補正指示ボタン34が押下された例について説明する。
【0039】
コントローラ24のプロセッサ26は、補正指示ボタン34の押下を検出した際に、S100から処理を開始する。S100で、プロセッサ26は、ドア検出センサ32から検出信号を受け付けて、ドア50が開状態になっているかを確認する。ドア50が閉状態の場合には、カメラ20の撮影画像38に金属フレーム14iが現れないので、ここでは、撮影画像38に金属フレーム14iが現れるようにするために、ドア50の開状態を確認する。S100がNoの場合(ドア閉状態の場合)は、ドア50が開状態になるのを待つ。一方、S100がYesの場合(ドア開状態の場合)は、S102に進む。
【0040】
S102で、プロセッサ26は、カメラ20の撮影画像38を補正用画像40として取得し、それをメモリ28に記憶する。S104で、プロセッサ26は、補正用画像40を既存技術(パターンマッチング等)を用いて解析することで、車内に乗員がいるか否かを確認する。車内に乗員がいる場合には、乗員が金属フレーム14を跨いだり、金属フレーム14の近くにいたりすることで、補正用画像40に金属フレーム14iが明確に現れない可能性がある。ここでは、補正用画像40に金属フレーム14iが明確に現れるようにするために、車内に乗員がいないことを確認する。S104がNoの場合(車内に乗員がいる場合)は、S102とS104を繰り返し実行し、車内に乗員がいなくなるのを待つ。一方、S104がYesの場合(車内に乗員がいない場合)は、S106に進む。
【0041】
S106以降が、補正モードの処理である。S106で、プロセッサ26は、補正用画像40に対して画像処理を行う。具体的には、プロセッサ26は、補正用画像40をグレースケール画像に変換し、さらに、グレースケール画像に対してエッジ抽出処理を行う。図8には、カメラが所望の位置からずれている場合の補正用画像40Aの例が示されている。補正用画像40Aにおいて金属フレーム14iとその周囲(車内フロア60iと車体外部62i)の間には大きな色差があるため、エッジ抽出処理後の画像には、金属フレーム14iの外郭がくっきり現れることになる。また、金属フレーム14iは、線状を有しているため、エッジ抽出処理後の画像において金属フレーム14iの位置を特定することも容易である。
【0042】
なお、図8および以降説明する図9において、金属フレーム14i(ハッチングを付した四角)は、補正用画像40A(40B)に現れる金属フレームであり、金属フレーム14pi(外郭が点線の四角)は、現在の金属フレームの期待位置46が示す金属フレームであり、乗員検出領域16iは、以下説明する補正の後の検出情報の位置情報42が示す乗員検出領域であり、乗員検出領域16piは、現在(補正前)の検出情報の位置情報42が示す乗員検出領域である。また、乗員検出領域16piの原点位置(Xd,Yd)を(Xpd,Ypd)と記し、乗員検出領域16piの傾きθdをθpdと記している。
【0043】
図6のS108で、プロセッサ26は、S106のエッジ抽出処理後の画像から、補正用画像40Aにおける金属フレーム14iの実位置を取得する。具体的には、プロセッサ26は、補正用画像40Aにおける金属フレーム14iの特徴点iFLUの実位置(Xfr,Yfr)(左上角の座標)および外郭線iFILINの実傾きθfr(上辺のx方向に対する傾き)を取得する。プロセッサ26は、これらを、金属フレームの実位置47としてメモリ28に記憶する。
【0044】
S110で、プロセッサ26は、金属フレームの実位置47と、メモリ28に予め記憶された、金属フレームの期待位置46との差を、ズレ量48として算出する。具体的には、プロセッサ26は、特徴点iFLUの実位置(Xfr,Yfr)と期待位置(Xfe,Yfe)との差を、位置ズレ量(ΔXf,ΔYf)として算出する(ΔXf=Xfr-Xfe,ΔYf=Yfr-Yfe)。また、プロセッサ26は、外郭線iFILINの実傾きθrと期待傾きθeとの差を、傾きズレ量Δθfとして算出する(Δθf=θfr-θfe)。
【0045】
S112で、プロセッサ26は、検出情報の位置情報42が示す現在の乗員検出領域16piを、S110で算出されたズレ量だけ移動させた領域16iが、新たな乗員検出領域となるように、検出領域の位置情報42を補正(更新)する。具体的には、プロセッサ26は、現在の乗員検出領域16piの原点位置(Xpd,Ypd)に、位置ズレ量(ΔXf,ΔYf)を加算したものを、補正後の乗員検出領域16iの原点位置(Xd,Yd)とする(Xd=Xpd+ΔXf,Yd=Ypd+ΔYf)。また、プロセッサ26は、現在の乗員検出領域16piの傾きθpdに、傾きズレ量Δθfを加算したものを、補正後の乗員検出領域16iの傾きθdとする(θd=θpd+Δθf)。
【0046】
S114で、プロセッサ26は、金属フレームの期待位置46を更新する。具体的には、プロセッサ26は、特徴点iFLUの期待位置(Xfe,Yfe)を、その実位置(Xfr,Yfr)に更新する(Xfe=Xfr,Yfe=Yfr)。また、プロセッサ26は、外郭線iFILINの期待傾きθfeを、その実傾きθfrに更新する(θfe=θfr)。
【0047】
以上が補正モードの処理である。以上説明した実施形態によれば、カメラ20が所望の位置からずれた場合であっても、撮影画像38における乗員検出領域の位置情報42が補正されるので、正確な乗員検出を維持することができる。また、車内のデザイン変更等により変化する可能性が低く、かつ、周りとの色差や線状(線形状)から補正用画像40での検出が容易である金属フレーム14をカメラ20により撮影するので、補正用画像40において金属フレーム14iの位置を的確に捕捉することができる。従って、カメラ20の位置ズレにともなう補正用画像40における金属フレーム14iのズレ量48を正確に把握することができ、そのズレ量48を撮影画像の乗員検出領域の位置情報42に反映するので、それを正確に補正することができる。
【0048】
図9には、車両10が出荷された後、車両が使用されている際に、再び補正指示ボタン34が押下されて補正モードが実行された時に取得された補正用画像40Bが示されている。同図には、車両10が使用されることで、カメラ20の位置が出荷検査の時点(図8参照)からさらにずれた場合の補正用画像40Bが示されている。
【0049】
前回の補正モードの実行により、コントローラ24のメモリ28には、出荷検査時のカメラ20の位置に対応した、検出領域の位置情報42(乗員検出領域16pi)と金属フレームの期待位置46(金属フレーム14pi)が記憶されている。今回の補正モードでは、図6のS110で、出荷検査時のカメラ20の位置に対応した、金属フレーム14piの位置(Xfe,Yfe,θfe)を基準に、ズレ量(ΔXf,ΔYf,Δθf)が算出されることになる。そして、S112で、出荷検査時のカメラ20の位置に対応した、乗員検出領域16piの位置(Xpd,Ypd,θpd)に対してズレ量(ΔXf,ΔYf,Δθf)が加算されて、検出領域の位置情報42が補正されることになる(乗員検出領域16iのXd,Yd,θdが得られることになる)。そして、S114で、現在のカメラ20の位置に対応した、金属フレーム14iの位置(Xfr,Yfr,θfr)に、金属フレームの期待位置46(Xfe,Yfe,θfe)が更新されることになる(Xfe=Xfr,Yfe=Yfr,θfe=θfr)。このように、補正モードが実行されるごとに、現在のカメラ20の位置に対応した、検出領域の位置情報42と金属フレームの期待位置46が得られることになる。
【0050】
以上説明した実施形態では、プロセッサ26が、補正用画像40における金属フレーム14iの車内フロア60i側の外郭の位置(特徴点iFLU(左上角)の位置と外郭線iFILIN(上辺)の傾き)を検出することで、ズレ量(ΔXf,ΔYf,Δθf)を算出した。しかし、別の実施形態として、プロセッサ26が、補正用画像40における金属フレーム14iの車体外部62i側の外郭の位置(特徴点iFLB(左下角、図7参照)の位置と外郭線iFOLIN(下辺)の傾き)を検出することで、ズレ量(ΔXf,ΔYf,Δθf)を算出してもよい。この場合には、金属フレームの期待位置46に関し、カメラ20が所望の位置に設置された際の撮影画像38における、特徴点iFLBの位置を期待位置(Xfe,Yfe)とし、その撮影画像38における、外郭線iFOLINの傾きを期待傾きθfeとして予めメモリ28に記憶しておく。そして、プロセッサ26は、補正用画像40における金属フレーム14iと車体外部62iの色差から、その画像における金属フレーム14iの車体外部62i側の外郭の実位置(特徴点iFLBの実位置(Xfr,Yfr)、外郭線iFOLINの実傾きθfr)を検出する(図6のS106,S108)。そして、プロセッサ26は、その金属フレーム14iの外郭の実位置と、メモリ28に予め記憶された、補正用画像40における金属フレーム14piの車体外部62i側の外郭の期待位置(特徴点iFLBの期待位置(Xfe,Yfe)、外郭線iFOLINの期待傾きθfe)との差を、ズレ量(ΔXf,ΔYf,Δθf)として算出する(図6のS110)。以降の補正モードの処理は、上記した実施形態と同じである。この別の実施形態でも、検出領域の位置情報42を正確に補正することができる。
【0051】
なお、以上説明した各実施形態において、図6のS110のズレ量(ΔXf,ΔYf,Δθf)が、予め定められた閾値XTh,YTh,θThのそれぞれより小さい場合(ΔXf<XTh、かつ、ΔYf<YTh、かつ、Δθf<θTh)には、検出領域の位置情報42の補正を行わない(S112,S114をスキップ)としてもよい。この場合は、条件(ΔXf≧XTh、または、ΔYf≧YTh、または、Δθf≧θTh)が成立する場合に、検出領域の位置情報42の補正が行われること(S112,S114の実行)になる。
【符号の説明】
【0052】
10 車両、12 乗員検出システム、14,14i,14pi 金属フレーム、16,16i,16pi 乗員検出領域(検出領域,立ち乗り禁止領域)、18 照明、20 カメラ、24 コントローラ、26 プロセッサ、28 メモリ、30 サイネージ、32 ドア検出センサ、34 補正指示ボタン、38 撮影画像、40,40A,40B 補正用画像、42 乗員検出領域の位置情報(検出領域の位置情報)、46 金属フレームの期待値、47 金属フレームの実位置、48 ズレ量、50 ドア(スライドドア)、52 乗降口、56,58 ドアボタン、60,60i 車内フロア、62,62i 車体外部、70 ボディ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9