(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】自動車用ロック、特に電気的に作動可能な自動車用ロック
(51)【国際特許分類】
E05B 81/14 20140101AFI20240611BHJP
E05B 79/08 20140101ALI20240611BHJP
【FI】
E05B81/14
E05B79/08
(21)【出願番号】P 2021510127
(86)(22)【出願日】2019-08-19
(86)【国際出願番号】 DE2019100740
(87)【国際公開番号】W WO2020038527
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】102018120551.1
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510222604
【氏名又は名称】キーケルト アクツィーエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100094318
【氏名又は名称】山田 行一
(72)【発明者】
【氏名】ノーブルス, クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】エイチェル, ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ヘンセ, クラウス
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/206666(WO,A1)
【文献】特開2011-94346(JP,A)
【文献】特開2008-101337(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0051540(US,A1)
【文献】特開昭58-106074(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0052336(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 81/00-81/90
E05B 79/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用ロック(1)において、
回転キャッチ(3)及び少なくとも1つの爪部(4)を備えたロック機構(2)と解除レバー(9)とを有し、前記回転キャッチ(3)は、前記爪部(4)によって少なくとも1つのラッチ位置(HR)にラッチ可能であり、ラッチされた前記ロック機構(2)は、前記解除レバー(9)によってアンロック可能であり、
前記解除レバー(9)が駆動外形部(15)によって前記爪部(4)を前記回転キャッチ(3)の係合区域(10)から移動させる、自動車用ロック(1)であって、
前記解除レバー(9)は、前記爪部(4)と共通の旋回軸(8)上に装着され、
前記回転キャッチ(3)と前記解除レバー(9)とを緩やかに係合解除する為に、前記回転キャッチ(3)の外形部および前記解除レバー(9)の径方向端部
(17)で前記回転キャッチ(3)の外形部と係合する転動手段を更に備え、
前記回転キャッチ(3)は、前記ロック機構(2)を前記解除レバー(9)によってアンロックするために、前記少なくとも1つのラッチ位置(HR)とは異なる位置(UH)に旋回し、
前記自動車用ロック(1)の開放は、前記転動手段が前記回転キャッチ(3)の外形部上を転動することによって行われ、転動中、前記外形部上の前記転動手段の転動運動に対応する力の連続的な減少が続く、自動車用ロック(1)。
【請求項2】
前記回転キャッチ(3)の外形部は前記回転キャッチ(3)から突出する円筒状ピンまたはボルト(13)
であることを特徴とする、請求項1に記載の自動車用ロック(1)。
【請求項3】
前記転動手段が、
前記係合区域(10)に配置されることを特徴とする、請求項
2に記載の自動車用ロック(1)。
【請求項4】
前記転動手段は、転動体(14)であることを特徴とする、請求項
3に記載の自動車用ロック(1)。
【請求項5】
前記転動
体(14)は、深溝玉軸受であることを特徴とする、請求項
4に記載の自動車用ロック(1)。
【請求項6】
前記解除レバー(9)の前記径方向端部(17)は、円形経路(R)上で、前記爪部(4)の前記旋回軸(8)の周りの円形経路(R)上で移動することを特徴とする、請求項5に記載の自動車用ロック(1)。
【請求項7】
前記ロック機構(2)の開放動作において、開放力(F、M)が、少なくとも一部の領域において、前記転動手段にもたらされることを特徴とする、請求項
1~6のいずれか一項に記載の自動車用ロック(1)。
【請求項8】
請求項
1~7のいずれか一項に記載の自動車用ロック(1)のロック機構(2)をアンロックするための方法において、
前記回転キャッチ(3)は、
前記爪部(4)によってメインラッチ位置(HR)にロックされ、開放運動が前記解除レバー(9)によって前記爪部(4)にもたらされる前に、前記回転キャッチ(3)が最初に前記解除レバー(9)によって移動されることを特徴とする方法。
【請求項9】
前記回転キャッチ(3)は、前記解除レバー(9)によって、かつ転動体(14)を介して、上げられた位置(UH)に移動することを特徴とする、請求項
8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ロック、特に電気的に作動可能な自動車用ロックに関し、自動車用ロックは、回転キャッチおよび少なくとも1つの爪部を有するロック機構と解除レバーとを有し、回転キャッチは、少なくとも1つのラッチ位置において爪部によってラッチ可能であり、ラッチされたロック機構は、解除レバーによってアンロック可能である。
【0002】
自動車用ロックは、自動車上で旋回可能に、変位可能に、または他の何らかの方法で移動可能に配置されたコンポーネントを固定しなければならない自動車に使用される。 特に、側部扉や後尾扉については、操作性を考慮して高い基準が設定されている。 従って、自動車用ロックの開発者は、自動車用ロックの操作の快適性を高める努力を常にしている。
【0003】
自動車用ロック、特に自動車用ロック内に配置されたロック機構は、通常、自動車の本体に固定されたロックホルダと、閉鎖中に相互作用する。 回転キャッチおよび爪部からなるロック機構は、ロックホルダによってラッチ位置に移動される。 このラッチ位置は、プレラッチ位置およびメインラッチ位置が可能であり、自動車の使用中に可動コンポーネントを確実に位置決めし保持することを可能にする。ラッチ位置は、例えば、ロック機構がメインラッチ位置に移動することができるように、回転キャッチのラッチ表面における爪部の係合によって達成される。 ロック機構部、即ち、回転キャッチと爪部との間の相互作用は、自動車用ロックの快適性に大きく影響する開閉時のノイズを引き起こす。
【0004】
DE10 2016 215 336A1から知られるようになった自動車用ロックでは、自動車用ロックの良好なハプティック及び音響効果を達成するために、例えばボール状のロック要素が、回転キャッチと爪部との間の係合区域に配置されている。 ボールが確実に回転キャッチと爪との間の係合領域に案内されるようにするために、この文献はガイドケージを開示しており、このガイドケージは爪上又はキャッチ上に配置されている。
【0005】
DE10 2007 003 948A1から、ロック機構を備えたロックユニットが知られており、このロックユニットには、第1の爪部が存在し、この第1の爪部は、阻止レバーによって回転キャッチと係合状態に保持される。 ロック機構は、プレラッチとメインラッチを備えている。プレラッチを達成することができるように解除レバーが使用されるが、解除レバーは、回転キャッチ上のボルトと係合することができるので、プレラッチ位置が達成可能である。メインラッチ位置において、第1の爪部は、回転キャッチと爪部との相互作用が開放モーメントをもたらすように回転キャッチに係合し、第1の爪部が第1の爪部の開放モーメントに反作用する阻止レバーが設けられる。ロック機構を開放するには、まず、阻止レバーを爪部から係合解除し、次に、解除レバーが、回転キャッチから爪部を係合解除することができる。
【0006】
本発明の目的は、改良された自動車ロックを提供することである。本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロック機構の開放ノイズを最小限に抑え、ロック機構の開放を容易にすることができる自動車用ロックを提供することにある。さらに、本発明の目的は、電気的アンロックに特に適したロック機構を提供することである。最後に、本発明の目的は、静かで容易に開放するための構造的に有利な解決策を提供することである。
【0007】
この目的は、独立クレーム1の特徴によって達成される。本発明の有利な実施形態は、従属クレームにおいて特定される。以下に記載される例示的な実施形態は、限定するものではなく、むしろ、説明および従属クレームに記載される特徴の任意の可能な変形が可能であることに留意されたい。
【0008】
請求項1に記載の本発明の目的は、自動車用ロック、特に電気的に作動可能な自動車用ロックにおいて、回転キャッチ及び少なくとも1つの爪部を備えたロック機構と解除レバーとを有し、回転キャッチは、爪部によって少なくとも1つのラッチ位置にラッチ可能であり、ラッチされたロック機構は、解除レバーによってアンロック可能であり、回転キャッチは、ロック機構を解除レバーによって少なくとも間接的にアンロックするために、特に上げられた位置に移動可能である、自動車用ロックの提供によって達成される。本発明に係る自動車用ロック装置の構成によれば、静かで容易な開放が可能な自動車用ロックを提供することができる。特に、開放過程における解除レバーと回転キャッチとの相互作用によって、爪部を回転キャッチによって係合区域から移動させることができるので、分離ノイズ、すなわち、爪部が回転キャッチから滑り落ちるノイズを防止するか、または少なくとも最小限に抑えることができる。解除レバーが、開放過程中に回転キャッチに係合し、爪部が回転キャッチから解除可能な閉鎖位置まで少なくとも回転キャッチを移動させる場合、解除レバーは、爪部と同時に、または少なくとも一時的にずらして係合することができ、爪部は、回転キャッチとの係合区域から容易かつ静かに移動することができる。
【0009】
ロック機構は、爪部によってラッチ位置に保持される。爪部および回転キャッチのラッチ解除または係合解除は、アンロックとも呼ばれる。1つまたは2つのラッチ位置を有するロック機構があり、ロック機構がまだ完全に閉鎖していないプレラッチ位置と、ロック機構がロックの閉鎖位置にあるメインラッチ位置とが区別される。例えば、閉鎖位置から開始して、解除レバーは、回転キャッチがメイン戻り止め位置を越えた上げられた位置に移動するように回転キャッチと相互作用するので、爪部がアンロードされる。アンロードされた爪部は、回転キャッチとの係合区域から容易に移動することができる。回転キャッチからの荷重、例えば、ドアシール圧力からの荷重は、ロック機構をアンロックするために解除レバーによって加えられる。有利な態様においては、解除レバーは、回転キャッチを上昇させることができ、すなわち、爪部を回転キャッチの負荷から解放することができる。
【0010】
本発明の意味の範囲内で自動車用ロックを参照すると、例えば、側部扉、スライドドア、フラップ、フード及び/又はカバーで使用される自動車用ロックが含まれ、ここで、旋回可能または変位可能なコンポーネントが自動車内に配置される。また、シートの背もたれに自動車用ロックを配置することも考えられる。
【0011】
自動車用ロックは、回転キャッチと少なくとも1つの爪部とを有するロック機構を有する。好ましくは、特に、少なくとも1つの爪部は、回転キャッチと平面に配置され、ラッチ要素およびロックホルダと協働して、回転キャッチを1つの位置にロックすることができる。 ロック機構が開放しているとき、回転キャッチの入口マウスはロックホルダの方向を向いており、回転キャッチはロックホルダと回転キャッチとの間の相対運動の結果として旋回する。爪部は、通常、回転キャッチの方向に予張力がかけられ、ラッチ位置に達すると、爪部、特にラッチ要素が回転キャッチと係合する。ここで、ロック機構のプレラッチ位置およびメインラッチ位置を想定することができる。
【0012】
さらに、ロックシステムまたは自動車用ロックはロックハウジングを有することができ、ロックハウジングには、ロック機構、ロックユニット、作動ユニット、電気駆動装置および/またはギア部品を配置することができるる。このリストはもちろん網羅的なものではなく、用途および機能の範囲に応じて使用可能な自動車用ロックのコンポーネントを単に記載したものである。ロックハウジングは、好ましくは、プラスチック射出成形部品として設計され、少なくとも1つのロックハウジングカバーおよびロックハウジングシェルから構成可能である。ロックハウジングは、主に、例えば、浸透する湿気および/または汚れから機能コンポーネントを保護する役割を果たす。ロックハウジングコンポーネントは、互いに密閉して連結される。
【0013】
ロック用ケースは、プレス加工された曲げ部品として設計することができ、少なくとも特定の領域および/または両側でハウジングを囲む。ロック用ケースは、ロックホルダの入口マウスを囲むことができ、ロックをさらに安定させるのに役立つ。自動車用ロックは、ロック用ケースまたは平坦なロック用ケースとしてのロックプレートを介して、自動車本体に直接連結されてネジ止めされることが好ましい。
【0014】
ロックプレートには、好ましくはネジとして、例えば装着開口部を装着するための手段が設けられている。
【0015】
解除レバーは、手動および/または電気的に作動可能である。 特に、解除レバーを電気的に作動させることができるロックシステムの場合、電気的ロックシステムが参照される。 ここで、自動車の様々な実施形態において、例えば外部作動レバーによる機械的冗長性を完全になくすことができる。しかしながら、ロック機構の電気的および機械的なアンロックが可能なハイブリッド実施形態も可能である。解除レバーは、解除レバーによって爪部が爪部から係合解除するように自動車内に配置される。また、本発明によれば、解除レバーは、爪部を回転キャッチとの係合区域から移動させることによって、回転キャッチを作動させ、それを上昇位置に直接移動させることができる。
【0016】
この上昇位置は、爪部をアンロードし、これにより、アンロックが容易になり、その結果、ロック機構のアンロックが静かになる。もちろん、ロック用爪部を阻止レバーと共に使用するオプションもあり、この場合、2爪ロック機構も使用され、解除レバーは、両方の爪部と回転キャッチを作動させることができる。本発明において、解除レバーが、回転キャッチと直接係合している爪部をアンロードすることが重要である。このようにして、回転キャッチと爪部との間の相対的な運動によるノイズを低減および/または排除することができる。これにより、ロック機構を静かに開放することができる。
【0017】
本発明の一実施形態の変形例において、解除レバーは、回転キャッチの外形部、特に円筒形のピンまたはボルトと係合させることができる。回転キャッチの外形部に直接係合した結果、解除レバー、特に解除レバーと回転キャッチとの間の相互作用は、低ノイズ発生の観点から解釈することができる。特に、解除レバーと回転キャッチとが相互に作用することで、解除レバーが回転キャッチを転動するのに好適な係合比を得ることができる。解除レバーが半径に対して静止するように、円筒状のピンまたはボルトの形状の外形部が回転キャッチ上に配置されることが考えられる。
【0018】
例えば、ボルトと係合する解除レバーの端部にも半径が設けられている場合、転動が発生する可能性がある。転動機能により、解除レバーと回転キャッチを緩やかに係合解除できる。勿論、円筒状のピンやボルトの配置に加えて、解除レバーに係合をもたらすことができる形状を直接回転キャッチに組み込んでも良い。回転キャッチは、好ましくは、プラスチック製ケーシングを備えたスチール部品から形成される。同様に、好ましくは、解除レバーの金属領域が回転キャッチの金属領域と相互作用することにより、一方では永久的に安定した力を伝達することができ、他方では良好な係合状態を長期間にわたって確保することができる。
【0019】
解除レバーが爪部と共通の旋回軸に装着されている場合、本発明の別の実施形態が得られる。解除レバーを爪部の軸受個所に配置することにより、自動車用ロックをコンパクトに設計することができる。さらに、解除レバーを旋回可能に装着することにより、回転キャッチと係合している解除レバーの端部を通る円形の経路を達成することができる。これにより、回転キャッチ上の解除レバーの回転を積極的に支えることができる。一方、解除レバーの軸受個所は、好ましくは、爪部および回転キャッチがロックケース内に装着され、さらに/または、自動車用ロック内の補強プレートによって装着されるので、解除レバーを装着するための固定手段を形成する。
【0020】
この安定した装着を解除レバーに用いることができるので、解除レバーも十分に安定した装着を設けることができる。特に、解除レバーの適切なレバー比は、回転キャッチからの持ち上げ又は爪部からの回転キャッチの持ち上げを容易にすることができる。好適なレバー比により、解除レバーは、電気駆動装置によって、上げられた位置に回転キャッチを確実に移動させることもできる。
【0021】
また、一軸上での解除レバーと爪部とのジョイント装着に加えて、別体の装着を設けることも考えられる。ピボット軸、または、別個の装着の場合には、2つのピボット軸は、好ましくは、金属製ロックケースに装着される。また、例えば、補強プレートに装着することもできる。同様に好適な金属製補強プレートをロックケースに受容させて、旋回軸または2つの旋回軸に対してベアリングケージを設けることもできる。
【0022】
また、回転キャッチ自体の外形部が、回転キャッチ上で旋回または回転できるように配置されると有利である。旋回可能な又は回転可能な外形部の配置によって、回転キャッチ間の転動を達成することができる。
【0023】
本発明のさらに有利な実施形態の変形例において、回転運動を達成するための手段が、回転キャッチと解除レバーとの間の係合区域に配置される場合に得られる。転動運動を達成するための手段、すなわち転動手段は、一方では、解除レバーと回転キャッチ上の外形部との間の更なる平行移動を達成することができる可能性を提供し、他方では、解除レバーと回転キャッチとの間の係合条件を設計および/または最適化する可能性を提供する。 特に、転動手段の転動運動によって、解除レバーが回転キャッチの外形部から滑り落ちないようにすることができる。これにより、ロック機構の静かなアンロックを達成することができる。
【0024】
この例示的な実施形態において、ロック機構のロック解除が好ましい場合には、解除レバーによる本発明による回転キャッチの移動も、ロック機構をロックするために有利に使用することができることを指摘すべきである。解除レバーをロック機構の閉鎖位置に移動させるには、解除レバーを回転キャッチとの係合区域に移動させて、上げられた位置に回転キャッチを持ってくる。この上げられた位置において、爪部は、回転キャッチとの係合区域に確実に落下することができる。これにより、解除レバーと回転キャッチとの相互作用によりロック機構を確実にロックすることができる。
【0025】
転動手段は、有利には、本発明のさらなる実施形態の変形をもたらす円筒状の本体、特に転動体である。円筒状本体、特に転動体は、回転キャッチ外形部と解除レバーとの間の好ましい係合状態の利点を提供する。また、好ましくは、円筒体が回転キャッチ外形部に対して転動運動を行うことができるように、回転キャッチ外形部は半径を有する。回転キャッチの外形部は、好ましくはボルトまたは円筒形ピンである。一実施例として、転動手段の直径は、例えば、5~15mm、好ましくは8~12mm、さらに好ましくは10mmであることを挙げる。円筒体または転動体が回転キャッチ上で転動可能である場合、転動体と係合する解除レバーの端部にも転動に好適な表面を形成することができる。
【0026】
ここで、半径や平坦な表面を形成することも考えられる。次に、解除レバーと回転キャッチ外形部との間で転動体を転動させることができる。自動車用ロック内で、転動体は、解除レバーおよび/または回転キャッチおよび/またはロックハウジングおよび/または補強プレートによって案内できることが考えられる。案内は、爪部を回転キャッチから離脱させることができる程度に転動体の転動を確保し、転動体の確実な転動を可能とし、転動体または回転キャッチとの係合区域から解除レバーを容易かつ静かに係合解除させることができるように設計される。
【0027】
本発明の別の実施形態の変形例において、転動手段は軸受、特に深溝玉軸受である。市販の深溝玉軸受のような標準部品を使用することによって、回転キャッチを作動させるための構造的に好ましい解決策を提供することができる。さらに、シリーズ部品または市販の部品は、長期間にわたって確実な作動を保証できるという利点を提供する。
【0028】
解除レバーの径方向端部が転動手段と係合している場合、本発明の別の実施形態が得られる。解除レバーの係合表面の目標設計は、解除レバーと転動手段との間の力の伝達に有利に影響を与えることができる。特に、解除レバーによって大きな力とモーメントを転動手段に導入することが可能である。転動手段における小さな並進では、解放レバー上の大きなレバーアームが好適な力比を生成することができるので、回転キャッチを上昇位置に移動させるために大きな力も利用できる。メインラッチ位置では、例えば、ロック機構によって扉のシール圧力の全体が吸収される位置に回動キャッチがある。したがって、メインラッチ位置から上げられた位置への回転キャッチの移動は、大きな力またはモーメントを必要とし、この力またはモーメントは、レバー比および力の印加点の有利な設計によって、例えばリリースレバーの半径方向端部において達成することができる。
【0029】
解除レバーの径方向端部が円形経路上を移動する場合、本発明の別の実施形態の変形例が得られる。解除レバーの円形経路は、解除レバー上での転動の可能性を提供する。解除レバー上の当接表面または接触表面は、転動手段の転動経路が設けられるように設計されているので、回転キャッチの、上げられた位置への確実な移動と同時に、回転キャッチとの係合区域からの爪部の係合解除を確保することができる。有利な態様において、転動体または転動手段と回転キャッチとの間の転動運動を、転動体によって達成することができる。 ここで、転動手段または転動体は同義語として理解することができ、転動体は、解除レバーと回転キャッチ外形部との間の結合手段として機能するものである。回転キャッチ上の当接外形としての円筒体の実施形態に加えて、転動体が円弧状、凸状または楕円形状の表面に対面することも考えられる。 解除レバーの端部の円形セグメント形状の運動と、転動体の転動運動と、回転キャッチ上の係合外形との相互作用によって、回転キャッチを爪部から持ち上げることができる。これにより、ロック機構を簡単かつ静かにアンロックまたはロックすることができる。
【0030】
別の実施形態の変形例では、ロック機構の開放動作において、少なくとも一部の区域で、転動体、特に解除レバーに開放力をもたらすことができる。解除レバーおよび/または転動体と回転キャッチ外形部との相互作用は、ロック機構が完全にロックされたとき、すなわち、メインラッチ位置にあるとき、解除レバーおよび/または転動体が、解除レバーおよび/または転動体を閉鎖位置に保持できる位置に移動するように設計することができる。ロック機構が開放されると、次に、解除レバーは、移動され、転動体又は回転キャッチ外形部に抗して移動する。この場合、力またはモーメントが回転キャッチにもたらされ、回転キャッチを爪部から持ち上げる。爪部が回転キャッチとの係合の外側の区域に移動された後、開放レバーを開放位置に移動させる開放モーメントまたは力を、回転キャッチによってもたらすことができる。したがって、回転キャッチは、ロック機構または自動車ロックの開放を補助する。これにより、回転キャッチまたは回転キャッチに作用する力が、ロックの開放動作を補助することができる。
【0031】
また、本発明の目的は、自動車のロックを容易かつ静かに開放することができる方法を提供することにある。
【0032】
この目的は、回転キャッチと少なくとも1つの爪部とを有する自動車用ロックのロック機構をアンロックする方法によって達成され、この方法では、回転キャッチは、爪部によってメインラッチ位置にロックされ、解除レバーによって開放動作が爪部にもたらされる前に、解除レバーによって回転キャッチが最初に移動される。本発明による方法によれば、開放作の前に爪部をアンロードすることが可能となり、これにより、爪部と回転キャッチとの間の相対運動中に発生するノイズを防止し、特に開放動作時の衝撃、すなわち、爪部と回転キャッチとの間の係合の妨害を防止することができる。
【0033】
有利な態様において、ロック機構の確実な閉鎖を可能にする方法も提供することができる。 この目的のために、爪部が係合する前に、解除レバーおよび/または転動体によって回転キャッチが、上げられた位置に移動され、それによって爪部を確実に落下させることができる。回転キャッチは、爪部が確実に係合することを保証する強制位置に保持される。 さらに有利な方法ステップにおいて、回転キャッチは、解除レバーによって、かつ回転キャッチと解除レバーとの間の係合区域に配置された転動体を介して、特に上げられた位置に移動される。転動体を用いることにより、伝達ステップを設けることができ、ロック機構を開閉する過程で確実に転動する転動体が得られるという利点がある。いずれにしても、本発明に係る自動車用ロックの構成によれば、ロック機構を確実に閉鎖し、容易かつ静かに開放してアンロックすることができる。
【0034】
以下、本発明を添付の図面を参照して、好適な例示的実施形態および力-時間曲線に基づいて、より詳細に説明する。しかしながら、例示的な実施形態は本発明を限定するものではなく、単に実施形態を表すものであるという原理が適用される。示された特徴は、個別にまたは組み合わせて、明細書およびクレームの更なる特徴と組み合わせて実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本発明による自動車のロックの基本的な表示の平面図であり、特に、メインラッチ位置にある回転キャッチ上の解除レバー、転動体及び円筒状の当接形状を有するロック機構の詳細図である。
【
図2】
図2は、解除レバーが回動キャッチを上昇位置に移動させた位置の
図1に係る本発明のロック機構を示す。
【
図3】
図3は、
図1に係る本発明のロック機構を示す図であり、解除レバーが回動キャッチを移動させて爪との係合を解除し、同時に爪を回動キャッチとの係合を解除する位置にある。
【
図4】
図4は、ロック解除プロセス中に解除レバーに作用する力に関する力-時間線図を示す。
【0036】
【発明の詳細な説明】
【0037】
図1は、自動車用ロック1、特に、回転キャッチ3及び爪部4を含むロック機構の上面図を示す。 ロック機構2は、メインラッチ位置に配置され、ロックホルダ5は、自動車用ロック1によって、例えば側部扉内の閉鎖位置に保持される。ロックホルダ5は、回転キャッチ3の軸6を中心として時計回り方向にモーメントMを発生させる力Fを回転キャッチにもたらす。回転キャッチの軸6は、ロックプレート7に旋回可能に受容される。別の軸8もロックプレート7に保持されるが、この軸8は、同時に解除レバー9の軸受軸8として機能する。爪部4と回転キャッチ3との間の係合区域10において、爪部4と回転キャッチ3との裸金属領域は互いに接触しているのが好ましい。
図1に示すメインラッチ位置において、爪部4は、係合区域内の回転キャッチ3上に載置され、一部の領域において、回転キャッチ3のプラスチック製ケーシング11上に載置される。このようなプラスチック製ケーシング11は、有利なことに、回転キャッチを軸内で静かに支持し、回転キャッチ3上に減衰手段12を形成するために使用される。
【0038】
この例示的実施形態において、ボルト13は、回転キャッチ3上に形成され、回転キャッチ3の平面から突出するので、ボルト13は、回転キャッチ3に対して平行な平面と解除レバー9の平面上に配置される。転動体14は、解除レバー9とボルト13との間には配置され、メインラッチ位置に案内され、本実施形態ではボルト13から離間している。 転動体14の案内は、例えば、解除レバー9により、例えば、案内ケージ形式で、ロックハウジング及び/又は回転キャッチ3の軸6,8と爪部4との間の補強プレートにより形成することができる。
図1は、本発明の機能原理を説明するための、解除レバー9、転動体14及びボルト13の基本的な相互作用を示す。転動体14の案内ケージは、図面を見やすくするために示されていない。
【0039】
ここで
図1を考えると、回転キャッチ3と爪部4の金属領域は、回転キャッチ3と爪部4との間の係合区域10内で互いに対向している。従来技術から知られているように、解除レバー9が駆動外形部15によって爪部4を回転キャッチ3の係合区域から移動させると、係合区域10のロック機構部品3,4の間に摩擦が生じ、ノイズが発生するとともに、容易な開放が妨げられる。本発明に係る自動車用ロックの構成により、解除レバーは、摩擦を低減または完全になくすことができる。従って、ロック機構の静かで容易な開放が保証される。
【0040】
図2において、
図1による発明に係るロック機構は、解除レバー9、転動体14及びボルト13によって、爪部4が解除された位置に示されている。
図1と
図2との比較から分かるように、矩形16は旋回されており、矩形16は単に転動体14の旋回又は回転運動を示すために図示されている。
図2において、解除レバー9が矢印P1の方向に時計回りに移動することにより、メイン戻り止め位置HRから上げられた位置に回転キャッチが移動している。これは、回転キャッチが閉鎖方向に更に移動したことを意味する。このとき、解除レバー5は、駆動外形部15に係合しているので、爪部4を回転キャッチ3から容易にかつ音を立てずに解除することができる。したがって、ロック機構部品3,4の解除は、トルクを加えずに、または回転キャッチのトルクMによる僅かなトルクを加えるだけで行われ、回転キャッチ3からの爪部4の、ノイズのない解除が可能である。
【0041】
図3では、再び上げられた位置に回転キャッチの位置が示される。転動体14内の矩形16から明らかなように、転動体14はボルト13上を転動しており、この転動体14の転動は、解除レバー9の端部17の円形経路R上の運動または回転運動が初期化されたことに起因する。爪部4は、解除レバー9によって、回転キャッチ3との係合区域から、駆動外形部15を介して移動され、ロック機構2は、ほとんどまたは全くノイズを発生させることなく開放させることができる。転動体14の摺動および自動車用ロック1の開放は、転動体14が回転キャッチ3のボルト13上を転動することによっても行われる。これにより、ロック機構2を容易かつ静かに開放することができる。
【0042】
図4では、ロック機構の開放プロセスの間の解除レバー上の様々な力の曲線が経時的に示される。曲線18は、爪部4と回転キャッチ3との間の摩擦係数が約0.3の従来のロック機構を開放するために、解除レバー9によってロック機構にもたらされなければならない力を示す。時刻t1において、解除レバー9が移動し、時刻t2までは、回転キャッチ3と爪部4との間の摩擦力を克服しなければならない。次に、爪部4のみを解除レバー9によって移動させなければならないので、力は急激に低下する。
【0043】
ライン19による力のプロファイルは、摩擦係数0.5を有する従来のロック機構の開放プロセスを示す。このような高い摩擦係数は、例えば、非常に古くて汚れたロックにおいて発生し、例えば、塵が回転キャッチ3と爪部4との間に侵入する可能性があるので、係合区域10は非常に汚れており、ロック機構を開放するには高い摩擦を克服しなければならない。
【0044】
これに対して、力プロファイル20は、全く異なる力プロファイルを示す。時刻t0において、上げられた位置に回転キャッチ3が移動され、解除レバー9にピーク荷重が発生する。ボルト13上の転動体14の転動運動に対応する力の連続的な減少が続く。時刻t3において、回転キャッチ3により解除レバー9に力Fがもたらされ、ロック機構2の開放作が補助される。
図4から明らかなように、開放プロセス又はアンロックプロセスは、公知のロック機構の通常の力プロファイル18,19とは著しく異なる。本発明に係る自動車用ロック1の構造によれば、ロック機構を容易かつ静かに開放することができるとともに、ロック機構は開放動作を補助することができる。
【0045】
【符合の説明】
【0046】
1 …自動車用ロック、2…ロック機構、3…回転ラッチ、4…爪部、5…ロックホルダ、6, 8…軸、7…ロックプレート、9…解除レバー、10…係合区域、11…プラスチックケーシング、12…減衰手段、13…ボルト、シリンダ、14…転動体、15…駆動外形部、16…矩形、17…解除レバーの端部、18, 19, 20…力プロファイル、F…力、M…モーメント、P1…矢印、MR…メインラッチ、H…上げられた位置、R…円形経路、t0,t1,t3,t3…時刻。