(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】ホルダーおよびそのキット
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20240611BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240611BHJP
C12N 5/02 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C12M1/00 A
C12N5/02
(21)【出願番号】P 2021516034
(86)(22)【出願日】2020-04-15
(86)【国際出願番号】 JP2020016595
(87)【国際公開番号】W WO2020218117
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2019081985
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【氏名又は名称】鮫島 睦
(72)【発明者】
【氏名】竹内 誠亮
(72)【発明者】
【氏名】松尾 桂
(72)【発明者】
【氏名】萩原 由以
(72)【発明者】
【氏名】安村 直朗
(72)【発明者】
【氏名】福田 邦宏
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/164232(WO,A1)
【文献】特開2017-006058(JP,A)
【文献】国際公開第2016/190312(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/190314(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/10
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する複数の培養バッグを離隔した状態で保持するホルダーであって、
各培養バッグの両側に位置する支持体と、所定間隔で離間した状態で支持体を保持し、培養バッグの離隔方向に延在する長尺部材と
を
有して成り、
各支持体はプレートであり、
長尺部材は、所定間隔で離れた箇所にて各プレートの縁部に結合できる接続手段を有し、
接続手段は、長尺部材の長手方向に沿って移動できるホルダー。
【請求項2】
培養バッグの厚さに対応して所定間隔を変更できる請求項1に記載のホルダー。
【請求項3】
隣接する複数の培養バッグを離隔した状態で保持するホルダーを構成するキットであって、
培養バッグの両側に位置する支持体と、所定間隔で離間した状態で支持体を保持し、培養バッグの離隔方向に延在する複数の長尺部材と
を有して成り、
支持体はプレートであり、
各長尺部材は、所定間隔で離れた箇所にて支持体の縁部に結合できる接続手段を有し、各長尺部材の接続手段の所定間隔は相互に異なり、
長尺部材は、その長手方向に沿って移動でき、各プレートの各縁部に結合できる接続手段を有するキット。
【請求項4】
培養バッグを用いて培養する方法において、
請求項1または2に記載のホルダーを用いて、複数のバッグを一体に保持する工程を含む培養方法。
【請求項5】
培養の途中で、支持体の所定間隔を変更する工程を含む請求項4に記載の培養方法。
【請求項6】
培養バッグに培地を入れて接着細胞を培養することを特徴とする請求項4または5に記載の培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の培養バッグを保持するホルダーおよびそれを構成するためのキットに関する。そのようなホルダーを用いることによって、培養バッグを用いる培養をより効率的に実施することができる。
【背景技術】
【0002】
培養バッグは、主表面を規定する樹脂フィルムを貼り合わせた構造を有し、その主表面の間に液状物(例えば細胞懸濁液)を収容する空間を形成できる。そのような培養バッグに液状物を入れて、それをインキュベータ上のトレイに載置して培養する。このような培養バッグは、それを構成する樹脂フィルムの性質および培養バッグの構造故に、主表面が立った状態では自立性を有さない。
【0003】
大量の液状物を用いて培養するために、複数の培養バッグが使用される。この場合、インキュベータ内のトレイ上で培養液を含む培養バッグを水平方向に配置して(即ち、配置した場合に培養バッグの主表面がトレイと接触した状態でその上に位置する、いわゆる横置きで)並べることが一般的に行われている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように複数の培養バッグを取り扱う場合、各培養バッグ(または横置きに並べた複数の培養バッグの各セット)に培養液を入れ、それをインキュベータ内のトレイ上で横置きに並べて所定時間培養する。その後、各培養バッグをインキュベータから取り出して、各培養バッグに培地を追加して、再び各培養バッグをインキュベータに戻して並べて培養を再開する作業が必要となる。この場合、個々の培養バッグ(または個々のセット)をひとつずつ取り扱う必要がある。この取り扱いは煩雑な作業であり、この作業を簡素化することが望まれる。
【0006】
更に、上述のように培養バッグ(または培養バッグのセット)を横置きに並べて培養する場合、複数の培養バッグ(または培養バッグのセット)を載置できるように幅が広い(即ち、間口が広い)トレイを収容できる必要がある。その結果、インキュベータはより大きいトレイを収容する必要があり、従って、インキュベータの設置面積は大きくなる。このような大きい設置面積は必ずしも好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、上記課題に鑑み、複数の培養バッグを用いて培養するに際して、培養バッグを横置きで積層した状態で保持して一緒に取り扱うことができる培養バッグのセットを形成することによって、より効率的な培養が可能なることを見出した。
【0008】
本発明は、第1の要旨において、
隣接する複数の培養バッグを離隔した状態で保持するホルダーであって、
各培養バッグの両側に位置する支持体と、この支持体を所定間隔で離間した状態で保持し、培養バッグの離隔した方向に延在する長尺部材と
を有して成るホルダーを提供する。このホルダーを用いて、各培養バッグがそれぞれ支持体の間に配置された培養バッグのセットを形成できる。
【0009】
本発明のホルダーの好ましい1つの態様では、支持体はプレートであり、長尺部材は各プレートの少なくとも縁部に結合できる接続手段を有する。具体的には、接続手段は、所定間隔で離れた箇所にて各支持体に、特に各プレートの縁部に結合できるのが好ましい。別の態様では、接続手段は、長尺部材の長手方向に沿って移動できる。特に好ましい態様では、本発明のホルダーを用いて、培養バッグの厚さ(従って、内容液量)に対応して所定間隔を変更できる。
【0010】
また、本発明は、第2の要旨において、本明細書において説明するホルダーを構成するキットを提供する。具体的には、本発明は、第2の要旨において、
隣接する複数の培養バッグを離隔した状態で保持するホルダーを構成するキットであって、
培養バッグの両側に位置する支持体と、この支持体を所定間隔で離間した状態で保持し、培養バッグの離隔した方向に延在する長尺部材と
を有して成るキットを提供する。
【0011】
本発明のキットの好ましい1つの態様では、支持体はプレートであり、長尺部材は各プレートの少なくとも縁部に結合できる接続手段を有する。具体的には、接続手段は、所定間隔で離れた箇所にて各支持体に、特に各プレートの縁部に結合できるのが好ましい。好ましい態様では、本発明のホルダーを用いて、培養バッグの厚さ(従って、内容液量)に対応して所定間隔を変更できる。この態様では、異なる所定間隔で支持体を保持できる複数の長尺部材を用いてよく、あるいは支持体の所定間隔を変更できる単一の長尺部材を用いてよい。
【0012】
更に、本発明は、別の要旨において、本明細書において説明するキットを構成するホルダーおよび長尺部材をもそれぞれ提供する。加えて、本発明は、本明細書において説明するホルダーを用いる培養方法を提供する。
【0013】
例えば、本発明の培養方法は、上述および後述の本発明のホルダーを用いて、所定間隔で離間した支持体の間に培養バッグが配置されたセットを準備する工程を含んで成る。この方法において、培養バッグへの液状物の供給は、セットを準備する前であっても、後であってもよい。即ち、液状物を既に含む培養バッグを用いてセットを形成しても、あるいは、セットを形成した後に培養バッグに液状物を供給してもよい。本発明のホルダーにおいて、長尺部材が保持する支持体の所定間隔を変更することができ、この変更を培養過程において実施できる。従って、本発明の培養方法は、支持体の所定間隔を変更する工程を含むことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のホルダーを用いると、複数の培養バッグを一体に保持することができるので、複数の培養バッグを一緒に取り扱うことができるので、培養バッグを用いて培養するに際して実施する作業を簡素化でき、複数の培養バッグを用いて同一の条件で培養することができる。また、培養バッグを横置きで積層した状態で培養できるので、単一の培養バッグの専有面積と実質的に同じ専有面積で複数の培養バッグを用いて培養できる。更に、培養バッグ内部の細胞の増殖に対応して、培養液を追加して培養バッグの厚さを順次広げていくことにより、効率的な細胞の拡大培養が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明のホルダーを用いて横置きで積層した3つの培養バッグを一体に保持する状態を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明のホルダーを用いて積層できる培養バッグの一例を平面図にて模式的に示す。
【
図3】
図3は、本発明のホルダーを用いて横置きで積層した6つの培養バッグを一体に保持する状態(但し、支持体間の所定間隔がD1である)を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3と同様に、本発明のホルダーを用いて横置きで積層した6つの培養バッグを一体に保持する状態(但し、支持体間の所定間隔がD2である)を模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明のホルダーを用いて縦置きで並列に配置した6つの培養バッグを一体に保持する状態を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明のホルダーを構成する長尺部材の1つの態様を模式的に斜視図にて示す。
【
図7】
図7は、
図6に示す長尺部材の構成要素を模式的に示す、長尺部材の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、図面を参照して本発明を更に詳細に説明する。尚、本発明のホルダーは、本発明のキットによって(従って、キットを構成する部材によって)構成され、また、本発明の培養方法は、本発明のホルダーを用いて実施できる。以下、ホルダーおよびそれを構成するキットの部材を例として、本発明を以下に詳細に説明するが、その内容は、特に不都合が無い限り、本発明のキットおよび培養方法にも同様に当て嵌まる。
【0017】
図1に、本発明のホルダーを用いて、横置き状態で培養バッグを一体に保持している態様の一例を模式的に断面図にて示す。本発明のホルダー10は、支持体12および長尺部材14を有して成る。図示した態様では、複数の例として3つの培養バッグ16-1、16-2および16-3が支持体12の厚さに相当する距離で離隔した状態で一体に保持されている。尚、図示した態様では、支持体12および培養バッグ16は、水平方向に(即ち、横置き状態で)延在し、長尺部材14は、これらに対して垂直に、従って、鉛直方向に延在している。このように、長尺部材は、所定間隔で離間した状態で支持体を保持する特徴および培養バッグの離隔方向に延在する特徴を有する。その結果、図示した態様では、培養バッグ16が支持体12の厚さに相当する距離で離隔した状態で一体に保持されている。尚、「離隔方向」とは、複数の培養バッグを離隔する方向、即ち、培養バッグの主表面に対して実質的に垂直な方向を意味する。
【0018】
支持体は、必要に応じて所定量の液状物を含む培養バッグをその上に支持できる部材である。具体的には、培養バッグを支持体上に載置した状態で、実質的に変形しないのが好ましい。別の態様では、支持体は、培養バッグを載置した状態で一時的に変形しても、培養バッグを取り除くと元の形状に戻るもの(従って、弾性的変形するもの)であってもよい。例えば、本発明に基づいて複数の培養バッグを積層状態で保持したセットを横置きで配置し場合に、変形した支持体がその下方に位置する培養バッグに悪影響を与えなければ、そのような変形を許容できる。塑性的な変形は、許容できる場合があるが、それほど好ましくはない。
【0019】
より具体的には、支持体は、紙、木材、プラスチック、金属等の種々の材料から選択される単一材料またはその組み合わせの部材、複数材料の複合部材で形成されたものであってよい。支持体はいずれの好ましい形態であってよく、例えばプレート状(具体的にはシート状、板状、ネット、薄板状等)であってよい。支持体は、全体としては実質的に平面状である。別の態様では、培養バッグが液状物を含む時に外側に膨らんだ湾曲形状の主表面に部分的に沿うように、支持体が少なくとも部分的に湾曲していてもよい。また支持体の形状は、培養バッグを支持するに必要な平面的な広がりを有するものであればよく、必要に応じて、例えばセットで保持している培養バッグへのアクセスを容易にするために、切り欠き部を有してよい。
【0020】
支持体は、培養バッグの両側に接触して位置し、あるいは所定の間隔を隔てて位置し、培養バッグを挟む。本明細書において、2つの部材が「隣接」すると呼ぶ場合、一方の部材の隣に他方の部材が位置することを意味し、2つの部材の間に空間が存在しても、あるいはしなくてもよい。特に前者の場合(空間が存在する場合)を意味する場合には、「離間」なる用語を使用し、空間に別の部材が存在しても、あるいは存在しなくてもよい。更に、この空間に別の部材が存在する場合は、「離隔」なる用語を用いる。尚、部材が横方向(例えば水平方向)に延在して隣接する場合に、特に「積層」なる用語を使用する。
【0021】
複数の培養バッグを保持する場合、支持体は、隣接する培養バッグの間に、通常1つ存在し、これが一般的には好ましい。この場合、積層した培養バッグの最外側に位置する培養バッグの外側にも1つの支持体が存在するが、この支持体は、特に問題が生じない限り、一方の外側または両方の外側については、省略してもよい。この支持体で培養バッグを挟み込むことにより培養バッグの表面が実質的に平面となり、接着細胞などを培養バッグの平面に安定して接着することができる。また、培養バッグの両方の外側に支持体を設けることによって、培養バッグの内側の両平面に接着細胞などを安定して接着することができる。
【0022】
尚、支持体が離間した状態で保持される「所定間隔」とは、培養バッグの空間部に含まれて所定量の液状物によって培養バッグが膨れた状態にある場合の培養バッグの厚さt(即ち、培養バッグの主表面に対して実質的に垂直な方向のバッグのディメンジョン)またはそれより大きい長さ距離Dを意味する(従って、D≧t、
図1参照)。厚さtは、液状物を含む状態にある培養バッグを横置きで(即ち、培養バッグの主表面が水平方向に延在するように)載置した時に最も膨らんだ部分(即ち、厚い部分)の培養バッグの厚さを意味する。所定間隔Dがtである場合、支持体間で培養バッグが緊密に挟まれた状態となり得ることを考慮して、所定間隔はtより多少大きめ(即ち、t≦D)、例えばtの1.05倍~1.5倍(1.05t≦D≦1.5t)であるのが好ましく、1.1倍~1.3倍(1.1t≦D≦1.3t)であるのがより好ましく、1.2倍程度(D≒1.2t)であるのが特に好ましい。この所定の間隔を制御することにより培養バッグ内の液状物の内容量を制御することが可能となり、また液状物の過剰な注入を防ぐことができる。
【0023】
容易に理解できるように、培養バッグ16は、その両側で離間して位置する支持体12によって挟まれて保持され、また、それによって隣接する他の培養バッグから離隔されている。詳しくは、培養バッグ12-1は、その両側に位置する支持体12-1および12-2によって挟まれて保持され、また、支持体12-2によって隣接する培養バッグ16-2から離隔されている。培養バッグ12-3についても、同様に、支持体12-3および12-4によって挟まれて保持され、また、離隔されている。培養バッグ16-2については、その両側に位置する支持体12-2および12-3によって挟まれて保持され、また、その両側に位置する他の培養バッグ16-1および16-3から離隔されている。
【0024】
このように複数の培養バッグを離隔する支持体12-1~4は、図示するように、その縁部で長尺部材14に結合している。即ち、長尺部材14は支持体12に結合できる接続手段を有する。接続手段は、支持体に、特に少なくともその縁部に、結合できるものであれば、特に限定されるものではない。図示した態様では、長尺部材14に設けた凹部18に支持体の縁部20が嵌まり込むことによって結合している。この結合は、例えば、縁部20を凹部18に押し込むことに嵌まり込むプレスフィット機構のような接続手段であってよい。このような接続手段として、他のいずれの適当な結合機構を用いてもよく、例えば、別の態様では、スナップフィットで結合してもよい。更に別の態様では、締結手段または握持(または把持)手段(例えばピンチ)を長尺部材に設けて、支持体の縁部を長尺部材に結合してよい。接続手段としては、上述のような一時的な接続を可能にするもの(即ち、可逆的な接続を可能にするもの)を用いるのが一般的に好都合であるが、接着剤のように永続的な接続を可能にするものも用いてもよい。
【0025】
尚、長尺部材14は、培養バッグの離隔方向または積層方向(
図1の矢印A参照)に沿って延在する。図示した態様では、ホルダー10は、長尺部材14を支持体12の両側の縁部20および21に有する。尚、支持体12および長尺部材14に用いる材料、これらの形状および/または長尺部材14と支持体12の結合強度(従って、例えば長尺部材の幅(即ち、
図1に垂直な方向の長さ))等に応じて、培養への悪影響が予測されない場合には、一方の長尺部材を省略してもよい。一般的には、本発明のホルダーは、図示するように支持体の対向する1組の縁部(20および21)の各々に結合するように、長尺部材を少なくとも1対有するのが好ましい。
【0026】
図示した態様では、複数の培養バッグ16の両側に支持体12が位置し、培養バッグの主表面に対して交差する方向に(好ましくは垂直方向に)延在する長尺部材の各接続手段が支持体に結合してこれを保持すると、隣接状態でありながらも支持体によって離隔された状態で複数の培養バッグを一体に保持することができる。このように一体に保持された複数の培養バッグは、培養バッグのセットとみなすことができる。従って、単一のセットを取り扱うことによって、複数の培養バッグを一緒に取り扱うことができる。その結果、培養バッグを用いる培養作業を簡素化・効率化できる。
【0027】
図2に、本発明のホルダーで一体に保持できる培養バッグ16の一例を模式的平面図にて示す。図示した態様では、容易に理解できるように、6枚の培養バッグ16を主表面に沿った方向で少しずらした状態で示している。図示した培養バッグ16は、例えばプラスチック材料のフィルムを2枚重ねた状態で周辺部分をヒートシールすることにより(図示した態様では、六角形状の周辺シール部19を形成している)、フィルム間に液状物を収容できる空間部23を形成できる。図示した態様では、培養バッグは、その下部に下部ポート24を有し、これを介して液状物を空間23内に供給できる。また、上部に上部ポート22を有し、そこから空間部内の気体および/または液状物を排出できる。培養バッグを縦置き(即ち、主表面が水平でない方向、好ましくは鉛直方向に延在するように配置する方式)に配置することによって気体が空間部の上方に集まるので、上部ポート22から気体排出するのが好都合である。ポートは、いずれの適当な態様であってもよく、例えば自己シール性を有するゴム栓であってよい。この場合、図示するように、チューブ(例えば弾性チューブ)28の先端部に設けたニードル部30を差し込んで、培養バッグ内の空間部との流体連通を確保できる。本発明が対象とする培養バッグは特に限定されるものではなく、一般的に用いられているものであってよい。ホルダーが一体に保持する培養バッグの数も特に限定されるものではないが、例えば2~10個、好ましくは3~8個、特に4~7個であってよい。
【0028】
本発明のホルダーを用いて、図示するように培養バッグ16(N個)を積層して一体に保持するには、例えば次のように実施できる:N+1個の支持体12を準備する。次に、支持体の厚さを考慮した上で、支持体間の距離が所定間隔Dとなるように設けたN+1個の接続手段18を有する長尺部材14-1を準備する。その後、接続手段18によって支持体の縁部20を長尺部材14-1に結合し、所定間隔Dで離間した状態で支持体が長尺部材14-1から延在させる。次に、支持体の間に培養バッグ16を挿入し、これらが支持体の間で延在するように配置して、培養バッグを一体に保持したセットを形成する。その後、必要に応じて、支持体の対向する縁部21に同じ構造の別の長尺部材14-2を結合してよく、このようにして、
図2に示すような構造とするのが通常好ましく、これによって、培養バッグのセットがより堅牢なものとなる。このようにして本発明のホルダーによって培養バッグを一体に保持する場合、別の態様では、培養バッグおよび支持体が水平方向で交互に積層された状態で支持体を長尺部材に結合してよい。更に別の態様では、培養バッグおよび支持体が水平でない方向で(即ち、縦置きで、例えば鉛直方向または斜め方向で)並んだ状態で支持体を長尺部材に結合してよい。支持体および培養バッグ16が実質的に水平方向に延在する
図1に示す状態を90°回転して長尺部材14が水平方向に延在する状態が後者の態様に対応する。
【0029】
上述のように複数の培養バッグを一体に保持したセットを、培養バッグが斜め方向、好ましくは鉛直方向またはそれに近い方向で延在するように配置して、培養バッグの下縁部に設けたポートから液状物を供給する。この場合、培養バッグに気体が予め存在していても、あるいは液状物と一緒に混入しても、培養バッグの上縁部に別のポートを設けておくと、そのポートを介してそのような気体を排出できる。例えば、
図2に示す培養バッグのように、下部ポート24から液状物を供給し、培養バッグの上縁に設けた上部ポート22から気体を排出できる。別の態様では、培養バッグの上縁部に2つのポートを設け、一方から液状物を供給し、他方から気体を排出できる。このように、培養バッグから気体を排出する作業が必要な場合、本発明のホルダーを用いて複数の培養バッグを一体に保持してセットを形成し、バッグを斜め~鉛直に延在するようにセットを配置すると、即ち、縦置きに配置すると、気体の排出を簡素化できるので好都合である。
【0030】
液状物の供給が完了した後、場合により気体の排出も完了した後、一体に保持した培養バッグのセットを横置きにしてよく、その状態で、インキュベータ内のトレイ上に配置して培養工程を実施できる。このように、本発明のホルダーを用いると、複数の培養バッグをセットとして一緒に扱うことができ、しかも、これらの培養バッグを横置きから縦置きに、また、その逆の配置に簡便に変更できる。その結果、それぞれの配置の問題点(例えば、横置きでは気体を排出し難いこと、縦置きでは沈降性の細胞ではその濃度が鉛直方向で大きく異なり得ること)を回避すると共に、それぞれの載置の利点(例えば、縦置きでは気体の排出が容易であること、横置きでは細胞の濃度変化が小さいこと)を容易に活用できる。
【0031】
図3に、本発明のホルダーを用いて、複数の培養バッグを保持する様子を斜視図にて模式的に示す。図示した態様では、簡単のため、培養バッグの図示を省略している。図示した態様では、台40上に、本発明のホルダーを用いて、4つの長尺部材46によって離間して配置された、合わせて7枚の支持体42の間に形成された、合わせて6つの間隙に、培養バッグがそれぞれ配置されて一体に保持されている様子を示す。即ち、本発明のホルダーは、支持体42および長尺部材46を有して成る。
【0032】
図示した態様では、それぞれの長尺部材46が7枚の支持体42を所定間隔D1を隔てて離間状態で保持している。即ち、支持体42は、培養バッグの上縁部付近でその両側に位置する2つの長尺部材46-1および46-2に、また、培養バッグの下縁部付近でその両側に位置する2つの長尺部材46-3および46-4に結合し、これらの支持体の間で培養バッグが一体に保持されている。図示した態様では、長尺部材46は、長手方向部分48およびそれから垂直に延びる握持部分(または把持部分)50を有して成る。図示した態様では、握持部分50は、長手方向部分の端部に位置するものが見えている(端部の間に位置する握持部分50は殆ど見えない状態)が、それぞれの長尺部材46の長手方向部分48は、支持体が所定間隔で離間するように離れた8つの握持部分50を有し、隣接する握持部分50の間に支持体42の縁部が押し込まれている。即ち、長手方向部分48および握持部分50が(厳密には隣接する握持部分50と長手方向部分48により規定される空隙部)が支持体の縁部に結合する接続手段として機能する。好ましい態様では、支持体の押し込まれる部分も若干のインデント部分を有し、その部分に長手方向部分が図示するように部分的に嵌まり込むようになっている。即ち、上記空隙部とインデント部が相互に係合するのが好ましく、図示した態様では、長手方向部分48の露出面が支持体42の縁部の露出面の近傍に存在する。
【0033】
本発明のホルダーを用いて、
図3に示すように培養バッグを一体に保持するには、支持体42および培養バッグを横置きで交互に積層した後に、
図3に示すように支持体の一方の縁部の両側にて長尺部材46-1および46-2を、他方の縁部の両側にて長尺部材46-3および46-4を結合することができる。別の態様では、長尺部材が例えば樹脂で形成され、その結果、弾性変形できる場合、
図3の最下位の支持体を長尺部材の最下位の接続手段に結合し、その支持体の上に培養バッグを載置し、その上に次の支持体を配置して長尺手段に結合し、その上に培養バッグを載置するというように、支持体の長尺部材への結合、その後の培養バッグの支持体上への載置を繰り返して一体に保持することもできる。
【0034】
尚、支持体間に配置する培養バッグは、所定量の液状物を含んで膨らんだ状態であってよく、別の態様では、空の状態であってよい。後者の態様では、培養バッグを一体に保持した後に所定量の液状物を供給できる。
【0035】
図3では、4つ長尺部材が配置されているが、例えば、長手方向部分48の幅方向の長さwを大きくすると、支持体の対向する縁部の間の中央部付近(矢印Bで示す箇所52参照)の両側に長尺部材を配置することで2つの長尺部材を配置して培養バッグを保持する態様も可能である。また、長手方向部分48から握持部分50が延びる距離を長くすると、例えば、図示する態様では、支持体の右側と左側との間の中央(×で示す箇所54参照)まで、またはそれ以上に握持部分50が延在するようにし、および/または握持部分に適切な材料を選択すると、単一の長尺部材を用いても培養バッグを保持することが可能となる。この意味で、本発明において、接続手段は、従って、その握持部分は、支持体の少なくとも縁部に結合できる。握持部分50の延在長さが大きくなると、その取り扱いが煩雑になる場合があるので、握持部分50の延在長さは、支持体の上記中央までの距離(即ち、支持体の幅の半分)の1/2以下、好ましくは1/4以下、特に好ましくは1/8以下である。1つの好ましい態様では、支持体の縁部に(例えば握持部分50の延在長さが中央までの距離の1/10程度の延在長さとなるように)結合でき、この場合、長尺部材と支持体との結合およびその解除が簡便になる。
【0036】
更に別の態様では、
図3のように、4つの長尺部材に加えて、支持体の縁部の中央付近52にて支持体に結合する長尺部材(両側で2箇所)を設けてもよい。長尺部材の数は、長尺部材と支持体の形状および材料、積層すべき培養バッグの形状および特性等に応じて適宜選択できる。従って、本発明のホルダーは、少なくとも1つの長尺部材を有し、好ましくは、支持体の両側の対向する縁部にて結合するように、偶数(例えば2、4または6)の長尺部材を有する。支持体の数が増えると、培養バッグのセットの形成およびその解体の作業が繁雑になるので、長尺部材の数は2、特に4であるのが一般的に望ましい。
【0037】
図4に、本発明のホルダーを用いて、複数の培養バッグを保持する様子を、
図3と同様に斜視図にて模式的に示す。図示した態様においても、簡単のため、培養バッグの図示を省略している。
図4の態様では、隣接する支持体42の間の所定間隔D2が
図3の態様より大きい点(即ち、D2>D1)で
図3に示す態様と異なる以外は、
図3の態様と実質的に同じである。その結果、
図3では見え難かった隣接する支持体の間に位置する握持部分50を
図4では図示している。
【0038】
図3に示す状態で培養バッグに液状物を供給して培養した後、(例えば細胞成長および.または細胞数増加のために)培養バッグに液状物を追加する場合、バッグの厚さが大きくなる。その場合、
図3の所定間隔D1で支持体が離間した状態では、厚さが大きくなった培養バッグを保持することは不可能となる。そこで、
図4に示すように、支持体42に挟まれた握持部分50の幅(または厚さ、即ち、長尺部材が延在する方向に沿ったディメンジョン)を大きくして支持体間の所定間隔をより大きいD2となるように構成した長手方向部分48を有する長尺部材46を用いて、培養バッグを一体に保持する。
【0039】
所定間隔をD1とする長尺部材の所定間隔をD2とする別の長尺部材による置換は、例えば次のように実施できる:本発明のホルダーによって一体に保持した培養バッグのセットを
図3に示すよう横置きにして台40上に配置する。次に、この状態で長尺部材46を支持体から引き抜くことにより外して、支持体42の間に培養バッグが挟まれている状態にする。その後、予め準備した、
図4に示す所定間隔D2にできる別の長尺部材46の接続手段の握持部分の間に支持体42の縁部を押し込んで結合することによって長尺部材を置換する。尚、台40の高さ(または厚さt0)は、長尺部材の端部に位置する握持部材50の厚さ(tg)より大きくして、支持体42に対する長尺部材46の着脱を容易にするのが好ましい。
【0040】
本発明のホルダーによって培養バッグを一体に保持する場合、上述のように支持体および培養バッグを交互に積層した、即ち、横置きに載置した後に長尺部材を
図3に示すように支持体の上方の両側と下方の両側に結合することができる。また、一体に保持した培養バッグのセットを解体する場合も、セットを横置きに配置した状態で長尺部材を取り外すことができる。
【0041】
別の態様では、支持体および培養バッグを縦置きに配置して、本発明のホルダーを用いて支持体の間に(好ましくは隣接するように)培養バッグが位置するようにして並べ、その後、長尺部材を支持体に結合することによって培養バッグが一体に保持されたセットを形成してよい。
図5に縦置きに配置して形成したセットを模式的に斜視図にて示す。
【0042】
図5に示すように、支持体42および培養バッグ43を交互に縦置きに並べ、支持体の側方の両縁部の上方に長尺部材46-1および46-2を、下方に長尺部材46-3および46-4をそれぞれ配置して長尺部材(合わせて4つの長尺部材)を支持体42に結合する。別の態様では、支持体42のみを予め隣接して縦置きで並べた後に長尺部材46を結合して、培養バッグが存在しない状態のセットを予め準備し、その後、支持体間に培養バッグ43を挿入することもできる。更に別の態様では、各長尺部材の端部に位置する接続手段に縦置き配置した支持体42-1(または42-7)の縁部を結合し、その支持体に隣接して培養バッグを縦置きで並べ、その培養バッグに隣接して次の支持体を縦置きで並べて長尺部材に結合し、その支持体に隣接して培養バッグを縦置きで並べ、その培養バッグに隣接して次の支持体を縦置きで並べて長尺部材に結合する。このように結合することおよび並べることを繰り返して、本発明のホルダーによって培養バッグが一体に保持された、
図5に示すセットを形成できる。
【0043】
このように培養バッグが縦置きで配置されたセットを用いると、そのままの状態で形成したセットに液状物を供給でき、培養バッグ内の存在し得る気体を簡単に排出できる。また、図示するように、培養バッグの排出ポート24が下方に位置するように培養バッグを縦置き配置となるようにセットを載置すると、例えば所定の培養後に培養バッグから液状物を容易に排出できる。この時、培養バッグ内への気体流入を確保すると、例えば図示するように、培養バッグの上方に設けたポート22から気体が流入できると、液状物の排出が更に容易になる。尚、図示した態様では、支持体42は、その上方および下方に切り欠き部49を有する。この切り欠き部49によって、培養バッグのポートへのアクセスが簡便になる。
【0044】
また、支持体および培養バッグが縦置きで並列した状態にある、図示するセットに用いた長尺部材46を、(例えば支持体間の所定間隔を変更するために)別の長尺部材に置換する場合、支持体および培養バッグの図示する並列状態を一時的に保持し、そのように保持したままで長尺部材46を支持体から外して別の長尺部材を結合できる。また、支持体および培養バッグが縦置きで並列した状態のセットから同様に長尺部材46を外した後に、培養バッグを取り出すことができる。
【0045】
このように並列状態を一時的に保持するには、例えばセットの周囲にベルト(好ましくは適度な弾性を有するベルト)を巻き付けて支持体および培養バッグ縦置き状態で束ねることができる。別の例としては、セットの状態で端に位置する支持体42-1および42-7が倒れないように支えることができる、例えばセットを包囲する周壁、好ましくは縦置きに並んだ支持体を挟むようにできるプレート(例えばブックエンド形態のもの)を用いてもよい。
【0046】
上述のように支持体および培養バッグのような部材を縦置きに並べてセットを形成する場合、意図して扱おうとする部材に隣接する他の部材によって、扱いが阻害され得ることを抑制できる。例えば、横置きで積層されている状態のセットにおいて、中央付近の支持体を取り外そうとする場合、そのまま支持体を引き出すと、当該支持体の下に位置する培養バッグも取り出される。従って、培養バッグが引き出されないようにするか、あるいは一緒に引き出して再び戻すことが必要となる。これに対して、支持体および培養バッグのような部材を縦置きに並べたセットの場合、意図する支持体だけを容易に取り出すことができる利点がある。このような利点は、セットとして並べる支持体および培養バッグの数が多くなるほど、顕著になる。
【0047】
図6に本発明の長尺部材60の好ましい態様の一例を模式的斜視図にて示す。長尺部材60は、支持体への接続手段62を有する。接続手段の数は、結合すべき支持体(図示せず)の数に対応する。図示した態様では、各接続手段62は、相互に対向してその間に支持体の縁部を挟み込むことによって支持体を結合できる握持部分64を有して成る。接続手段62は、長尺部材の長手方向(矢印C参照)に沿って移動可能である。詳しくは、長尺部材60の端部に位置するノブ66を回転することによって、接続手段62の長手方向位置を変えることができる。従って、支持体間の所定間隔を変えたい場合には、長尺部材60に結合している支持体を一旦外すことなく、所定間隔を変えることができる利点を有する。
【0048】
より詳しくは、
図6(a)は、接続手段62の握持部分64が実質的に接触状態で隣接している。この状態から、ノブ66を回転することによって、接続手段62が長尺部材の長手方向に沿って移動でき、その結果、例えば
図6(b)に示すように接続手段が離間した状態となる。尚、図示した態様では、接続手段62の数が奇数の場合、中央の接続手段は移動する必要は必ずしもなく、その両側に位置する接続手段が相互に反対の方向に移動して接続手段62間の距離が等しくなる。
【0049】
このような接続手段60の分解斜視図を
図7に模式的に示す。長尺部材60は、円筒部材70および筐体部材72を有して成る。円筒部材70は、その側面に沿って螺旋状に延在する長尺開口部(螺旋状開口部)77を保持すべき支持体の数と同数有する。螺旋状開口部とは、その開口部に沿って動く場合、円筒の側面に沿って移動しながら、同時に軸方向にも移動できる開口部を意味する。筐体部材72は、上側部材74および下側部材76から構成され、これらを組み合わせることによって筐体を構成する。この筐体は、その内側で円筒部材70が回転できるように円筒部材の周囲に位置し、長尺部材の長手方向に沿って延在する長尺開口部(線形開口部)78を有する。長尺部材60は、長尺開口部78に沿って移動できる接続手段62を更に有して成る。接続手段62は、端部分80および基部82を有して成り、基部82から握持部分64が突出している。接続手段82は、端部分80と基部82の間に位置してこれらを接続するくびれ部84を更に有して成り、握持部分64が支持体の縁部に結合する。
【0050】
図示した態様の長尺部材60では、接続手段62の端部分80が円筒部材70の内側に位置し、また、基部82が筐体部材の外部に位置し、そして、くびれ部84が双方の螺旋状開口部77および78に位置できるように構成されている。その結果、接続部材62は、螺旋状開口部77と線形開口部78とが交差する箇所においてのみ位置できるので、筐体部材72を固定した状態でそれに対して円筒部材70を軸回転すると、そのような交差箇所は筐体部材の長手方向に移動して存在するので、接続手段62は筐体部材72の線形開口部78に沿って移動できることになる。具体的には、筐体部材72に対する円筒部材70の所定の回転によって各接続部材62が位置すべき箇所が所定の等間隔で離間するように、線形開口部に沿って交差箇所が位置する螺旋状開口部77を形成すればよい。当然ながら、螺旋状開口部77の数は接続手段62の数と同じであり、移動する必要がない接続手段が移動する螺旋状開口部77-0は、実質的に円筒を規定する円の周である。即ち、回転方向に移動しても周方向にのみ移動し、軸方向に移動しない開口部となる。
【0051】
本発明のホルダーは、複数の培養バッグを保持するので、培養バッグ数をNとすると、支持体の数は通常N+1となり、従って、接続手段の数もN+1となる。従って、所定間隔D1で培養バッグを離隔状態で保持する場合にN+1の接続手段を配置すべき箇所(
図7にて●で示す)に、円筒部材の母線G1に沿ってN+1の開口部を設け、次に、所定間隔D2で培養バッグを離隔状態で保持する場合に接続手段を配置すべき箇所に、円筒部材の母線G2(G1の位置から所定の角度だけ(例えば60°だけ軸回転した箇所に存在する母線)に沿ってN+1の開口部(
図7にて○で示す)を設け、同様にして所定間隔D3に対応する箇所に接続手段を設け、ということを繰り返して開口部を設け、その後、特定のひとつの接続手段がD1の時に位置すべき開口部、D2の時に位置すべき開口部、D3の時に位置すべき開口部、・・・・をつないで円筒部材の螺旋状開口部77を形成し、他の接続手段についても同様にして螺旋状開口部77を形成する。これらの螺旋状開口部は、円筒部材の側面に沿って螺旋状に延在し、これらの螺旋と円筒部材の同一の母線との交差箇所にて接続手段が存在でき、これらの交差箇所は、等間隔で離れ、その箇所に接続部材が位置する場合に支持体が離間する所定間隔、例えばD2をもたらす。このような長尺部材60は、
図5において長尺部材に代えて使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
先の説明から明らかなように、本発明のホルダーを用いて複数の培養バッグをその主表面が隣接しながらも離隔された状態で一体に保持したセットを形成することができる。このセットは、単一で扱うことによって複数の培養バッグを一緒に扱うことができるので効率的な培養が可能となる。加えて、このセットでは、培養バッグの離隔は、培養バッグの主表面に対して実質的に垂直な方向に沿っているので、1つの培養バッグの上に支持体を介して別の培養バッグが位置する積層構造となる。その結果、培養バッグが向きが横置きになるようにセットを載置した場合、セットが占有する面積は、単一の培養バッグを横置きで配置する場合に占有する面積と同等である。従って、専有面積の点からも効率的な培養を可能にする。
【0053】
本発明が対象とするのは、培養バッグを用いる培養であれば特に限定されるものではなく、液状物もそのような培養に用いられるものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、培養バッグの内面に付着して増殖する接着細胞のような培養に好適であり、液状物としては、例えば目的の細胞に適した培地、血清、試薬を例示できる。
【符号の説明】
【0054】
10…ホルダー、12…支持体、14…長尺部材、16…培養バッグ、
18…接続手段(または凹部)、19…シール部、20,21…縁部、
22…上部ポート、24…下部ポート、28…チューブ、30…ニードル部、
40…台、42…支持体、43…培養バッグ、46…長尺部材、
48…長手方向部分、49…切り欠き部、50…握持部分、
52…中央部付近、54…中央付近、60…長尺部材、62…接続手段、
64…握持部分、66…ノブ、70…円筒部材、72…筐体部材、
74…上側部材、76…下側部材、77…螺旋状開口部、78…線形開口部、
80…端部、82…基部、84…くびれ部。