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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】固体電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/048 20060101AFI20240611BHJP
   H01G 9/15 20060101ALI20240611BHJP
   H01G 9/08 20060101ALI20240611BHJP
   H01G 2/06 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H01G9/048 H
H01G9/048 F
H01G9/15
H01G9/08 E
H01G2/06 500
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021562754
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2020045308
(87)【国際公開番号】W WO2021112239
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2019221482
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 順一
(72)【発明者】
【氏名】鴛海 健一
(72)【発明者】
【氏名】藤本 耕治
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 和豊
(72)【発明者】
【氏名】谷 智之
(72)【発明者】
【氏名】有富 克朋
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/074407(WO,A1)
【文献】特開2018-198297(JP,A)
【文献】特開2008-270447(JP,A)
【文献】特開2001-358032(JP,A)
【文献】特開2011-216638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/048
H01G 9/15
H01G 9/08
H01G 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子積層体と、絶縁基板と、前記素子積層体の周囲を封止する封止樹脂とを備える直方体状の樹脂成形体と、
前記樹脂成形体の第1端面に設けられる第1外部電極と、
前記樹脂成形体の第2端面に設けられる第2外部電極と、を備える固体電解コンデンサであって、
前記素子積層体においては、第1層及び第2層が積層され、
前記第1層は、表面に誘電体層が形成された弁作用金属基体、及び、前記誘電体層上に設けられた固体電解質層を備え、
前記第2層は、電極引き出し層からなり、
前記樹脂成形体の前記第1端面には、前記弁作用金属基体が露出し、
前記樹脂成形体の前記第2端面には、前記電極引き出し層が露出し、
前記第1外部電極は、前記弁作用金属基体に接続され、
前記第2外部電極は、前記電極引き出し層に接続され、
前記素子積層体の積層方向のいずれか一方の主面には、コンデンサ容量に寄与しないダミー層が設けられており、
前記絶縁基板は、前記ダミー層と隣接する位置に配置されている、ことを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項2】
前記素子積層体の積層方向に沿った方向、かつ、20℃から260℃までの温度範囲における、前記絶縁基板と前記第1外部電極の平均線膨張係数の差、及び、前記絶縁基板と前記第2外部電極の平均線膨張係数の差は、いずれも50[ppm/K]以上である、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
前記ダミー層は、前記樹脂成形体の前記第2端面に露出した弁作用金属基体である、又は、前記樹脂成形体の前記第1端面に露出した電極引き出し層である、請求項1又は2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
前記ダミー層は、絶縁シートである請求項1又は2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項5】
前記ダミー層は、表面に誘電体層が形成されているが、前記誘電体層の表面に固体電解質層が設けられていない弁作用金属基体である、請求項1又は2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項6】
前記ダミー層は、前記素子積層体の積層方向のいずれか一方の主面に2連続で配置された前記第1層又は前記第2層のうちの前記絶縁基板側の層である、請求項1又は2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項7】
前記素子積層体の積層方向に沿った方向、かつ、20℃から260℃までの温度範囲における、前記絶縁基板の平均線膨張係数は、80[ppm/K]以上、160[ppm/K]以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項8】
前記絶縁基板は、ガラエポ樹脂、ガラスコンポジット、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂及びビスマレイミドトリアジン樹脂からなる群から選択される1種以上の絶縁性材料からなる、請求項1~のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項9】
前記素子積層体の積層方向に沿った方向、かつ、20℃から260℃までの温度範囲における、前記第1外部電極の平均線膨張係数、及び、前記第2外部電極の平均線膨張係数は、いずれも5[ppm/K]以上、80[ppm/K]以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の固体電解コンデンサを効率良く製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-79866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、第1のシートと第2のシートを積層して得られた積層シートを切断して複数個の素子積層体を作製し、素子積層体に外部電極を形成することによって、効率的に固体電解コンデンサを作製する方法を開示している。
【0005】
第1のシート及び第2のシートには、切断後に個々の固体電解コンデンサを構成する要素が区画されているため、第1のシートと第2のシートの積層位置を正確に合わせることが求められる。
そのような方法としては、例えば、位置合わせ用のガイド等を備えた基板上に第1のシート及び第2のシートを積層していく方法が挙げられる。
【0006】
このような方法で作製された固体電解コンデンサから基板を除去しない場合、底部に基板が配置されたままとなる。底部に基板が配置された固体電解コンデンサは、リフロー等の熱処理によって加熱されると、基板と外部電極の線膨張係数の差に起因して、基板に最も近い位置に配置されるシートが剥離してしまい、リフロー前後で等価直列抵抗(ESR)が変化してしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、リフロー前後でESRの変化が少ない固体電解コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の固体電解コンデンサは、素子積層体と、絶縁基板と、上記素子積層体の周囲を封止する封止樹脂とを備える直方体状の樹脂成形体と、上記樹脂成形体の第1端面に設けられる第1外部電極と、上記樹脂成形体の第2端面に設けられる第2外部電極と、を備える固体電解コンデンサであって、上記素子積層体においては、第1層及び第2層が積層され、上記第1層は、表面に誘電体層が形成された弁作用金属基体、及び、上記誘電体層上に設けられた固体電解質層を備え、上記第2層は、電極引き出し層からなり、上記樹脂成形体の上記第1端面には、上記弁作用金属基体が露出し、上記樹脂成形体の上記第2端面には、上記電極引き出し層が露出し、上記第1外部電極は、上記弁作用金属基体に接続され、上記第2外部電極は、上記電極引き出し層に接続され、上記素子積層体の積層方向のいずれか一方の主面には、コンデンサ容量に寄与しないダミー層が設けられており、上記絶縁基板は、上記ダミー層と隣接する位置に配置されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、リフロー前後でESRの変化が少ない固体電解コンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の固体電解コンデンサの一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す固体電解コンデンサのA-A線断面図である。
図3図3は、本発明の固体電解コンデンサの別の一例を模式的に示す断面図である。
図4図4は、本発明の固体電解コンデンサのさらに別の一例を模式的に示す断面図である。
図5図5は、本発明の固体電解コンデンサのさらに別の一例を模式的に示す断面図である。
図6図6は、試料1のリフロー前後のESRを示すグラフである。
図7図7は、試料2のリフロー前後のESRを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の固体電解コンデンサについて説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0012】
[固体電解コンデンサ]
本発明の固体電解コンデンサは、素子積層体と、絶縁基板と、上記素子積層体の周囲を封止する封止樹脂とを備える直方体状の樹脂成形体と、上記樹脂成形体の第1端面に設けられる第1外部電極と、上記樹脂成形体の第2端面に設けられる第2外部電極と、を備える固体電解コンデンサであって、上記素子積層体においては、第1層及び第2層が積層され、上記第1層は、表面に誘電体層が形成された弁作用金属基体、及び、上記誘電体層上に設けられた固体電解質層を備え、上記第2層は、電極引き出し層からなり、上記樹脂成形体の上記第1端面には、上記弁作用金属基体が露出し、上記樹脂成形体の上記第2端面には、上記電極引き出し層が露出し、上記第1外部電極は、上記弁作用金属基体に接続され、上記第2外部電極は、上記電極引き出し層に接続され、上記素子積層体の積層方向のいずれか一方の主面には、コンデンサ容量に寄与しないダミー層が設けられており、上記絶縁基板は、上記ダミー層と隣接する位置に配置されている、ことを特徴とする。
【0013】
特許文献1に記載された方法において積層位置の寸法を高めるために基板を使用した場合に得られる、底部に基板が配置された固体電解コンデンサは、リフロー等の熱処理によって加熱されると、基板と外部電極の線膨張係数の差に起因して、基板に最も近い位置に配置されるシートが剥離してしまい、リフロー前後で等価直列抵抗(ESR)が変化してしまう。
一方、本発明の固体電解コンデンサでは、コンデンサ容量に寄与しないダミー層が素子積層体と絶縁基板との間に設けられているため、ダミー層が剥離した場合であっても固体電解コンデンサのESRは変化しない。そのため、本発明の固体電解コンデンサは、リフロー前後でESRの変化が少ない。
【0014】
本発明の固体電解コンデンサの一例について、図1及び図2を参照しながら説明する。
図1は、本発明の固体電解コンデンサの一例を模式的に示す斜視図であり、図2は、図1に示す固体電解コンデンサのA-A線断面図である。
図1には固体電解コンデンサ1を構成する直方体状の樹脂成形体9を示している。
樹脂成形体9は、長さ方向(L方向)、幅方向(W方向)、厚さ方向(T方向)を有しており、長さ方向に対向する第1端面9a及び第2端面9bを備えている。第1端面9aには第1外部電極11が形成され、第2端面9bには第2外部電極13が形成されている。
樹脂成形体9は、厚さ方向に対向する底面9c及び上面9dを備えている。
また、樹脂成形体9は、幅方向に対向する第1側面9e及び第2側面9fを備えている。
【0015】
なお、本明細書においては、固体電解コンデンサ又は樹脂成形体の長さ方向(L方向)及び厚さ方向(T方向)に沿う面をLT面といい、長さ方向(L方向)及び幅方向(W方向)に沿う面をLW面といい、厚さ方向(T方向)及び幅方向(W方向)に沿う面をWT面という。
【0016】
樹脂成形体9は、直方体状を有し、LW面となる上面9d、底面9cと、LT面となる第1側面9e、第2側面9fと、WT面となる第1端面9a及び第2端面9bを有する。
樹脂成形体9の底部には支持基板となる絶縁基板9gが設けられていて、絶縁基板9gの底部表面が樹脂成形体9の底面9cとなっている。
絶縁基板は複数のコンデンサ素子を積層してなる素子積層体を一体化させるために設けられたものであり、ガラエポ樹脂からなることが好ましい。
【0017】
樹脂成形体9は、樹脂モールド後のバレル研磨により、角部に面取りとなるR(曲率半径)が形成されている。樹脂成形体の場合、セラミック素体に比べて柔らかく、バレル研磨による角部のRの形成が難しいが、メディアの組成や粒径、形状、バレルの処理時間等を調整することにより、Rを小さくして形成することができる。
【0018】
図2に示すように、樹脂成形体9は、素子積層体30、ダミー層40a及び絶縁基板50並びに素子積層体30の周囲を封止する封止樹脂8からなる。
素子積層体30は、第1層5と第2層7とが積層されてなる。
第1層5と第2層7によってコンデンサ素子20が構成されているため、素子積層体30は、コンデンサ素子20が積層されたものであるともいえる。
素子積層体30において、積層された第1層5及び第2層7の間は、導電性接着剤(図示しない)を介して互いに接合されていてもよい。
樹脂成形体9の第1端面9aに第1外部電極11が形成されていて、第1外部電極11は第1端面9aから露出する弁作用金属基体5aと電気的に接続されている。
樹脂成形体9の第2端面9bに第2外部電極13が形成されていて、第2外部電極13は第2端面9bから露出する電極引き出し層7aと電気的に接続されている。
コンデンサ素子20を構成する弁作用金属基体5aの第2端面9b側の端部は、封止樹脂8により封止されており、弁作用金属基体5aと、固体電解質層5c又は導電層5dとは直接接触していない。一方、弁作用金属基体5aの第2端面9b側の端部が誘電体層5bで覆われているなど、絶縁処理が施されている場合には、弁作用金属基体5aの第2端面9b側の端部が、固体電解質層5c及び導電層5dで覆われていてもよい。
第1外部電極及び第2外部電極をまとめて、単に外部電極ともいう。
【0019】
[第1層]
第1層5は、弁作用金属基体5aを中心に有し、エッチング層等の多孔質層(図示しない)を表面に有している。多孔質層の表面には誘電体層5bが設けられている。誘電体層5b上にはさらに、固体電解質層5cが設けられている。固体電解質層5c上にはさらに導電層5dが設けられている。
第1層5は、樹脂成形体9の第1端面9aに引き出されて第1外部電極11に電気的に接続される。
【0020】
弁作用金属基体は、いわゆる弁作用を示す弁作用金属からなる。弁作用金属としては、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウム等の金属単体、又は、これらの金属を含む合金等が挙げられる。これらの中では、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。
【0021】
弁作用金属基体の形状は特に限定されないが、平板状であることが好ましく、箔状であることがより好ましい。
【0022】
弁作用金属基体の表面には、多孔質部が設けられていることが好ましい。
弁作用金属基体の表面に多孔質部が設けられていると、弁作用金属基体の比表面積を大きくして、固体電解コンデンサの静電容量を高めることができる。
多孔質部としては、弁作用金属基体の表面に形成されたエッチング層、弁作用金属基体の表面に印刷、焼結により形成された多孔質層が挙げられる。弁作用金属がアルミニウム又はアルミニウム合金の場合はエッチング層が好ましく、チタン又はチタン合金の場合は多孔質層であることが好ましい。
【0023】
弁作用金属基体の厚みは特に限定されないが、多孔質部を除く部分の厚みは、5μm以上、100μm以下であることが好ましい。また、多孔質部の厚み(片面の厚み)は、5μm以上、200μm以下であることが好ましい。
【0024】
多孔質部の表面に形成される誘電体層は、多孔質部の表面状態を反映して多孔質になっており、微細な凹凸状の表面形状を有している。誘電体層は、上記弁作用金属の酸化皮膜からなることが好ましい。
【0025】
誘電体層は、上記弁作用金属の酸化皮膜からなることが好ましい。例えば、弁作用金属基体としてアルミニウム箔が用いられる場合、ホウ酸、リン酸、アジピン酸、又は、それらのナトリウム塩、アンモニウム塩等を含む水溶液中で陽極酸化することにより、誘電体層となる酸化皮膜を形成することができる。
誘電体層は多孔質層の表面に沿って形成されることにより細孔(凹部)が形成されている。誘電体層の厚さは固体電解コンデンサに要求される耐電圧、静電容量に合わせて設計されるが、10nm以上であることが好ましく、100nm以下であることが好ましい。
【0026】
また、製造効率を高める観点から、誘電体層が表面に形成された弁作用金属基体として、予め化成処理が施された化成箔を用いてもよい。
【0027】
固体電解質層を構成する材料としては、例えば、ピロール類、チオフェン類、アニリン類等を骨格とした導電性高分子等が挙げられる。チオフェン類を骨格とする導電性高分子としては、例えば、PEDOT[ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)]が挙げられ、ドーパントとなるポリスチレンスルホン酸(PSS)と複合化させたPEDOT:PSSであってもよい。
【0028】
固体電解質層は、例えば、3,4-エチレンジオキシチオフェン等のモノマーを含む処理液を用いて、誘電体層の表面にポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)等の重合膜を形成する方法や、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)等のポリマーの分散液を誘電体層の表面に塗布して乾燥させる方法等によって形成される。なお、細孔(凹部)を充填する内層用の固体電解質層を形成した後、誘電体層全体を被覆する外層用の固体電解質層を形成することが好ましい。
固体電解質層は、上記の処理液または分散液を、スポンジ転写、スクリーン印刷、スプレー塗布、ディスペンサ、インクジェット印刷等によって誘電体層上に塗布することにより、所定の領域に形成することができる。固体電解質層の厚さは2μm以上であることが好ましく、20μm以下であることが好ましい。
【0029】
導電層は、固体電解質層と電極引き出し層とを電気的におよび機械的に接続させるために設けられている。例えば、カーボンペースト、グラフェンペースト、銀ペーストのような導電性ペーストを付与することによって形成されてなるカーボン層、グラフェン層又は銀層であることが好ましい。また、カーボン層やグラフェン層の上に銀層が設けられた複合層や、カーボンペーストやグラフェンペーストと銀ペーストを混合する混合層であってもよい。
【0030】
導電層は、カーボンペースト等の導電性ペーストをスポンジ転写、スクリーン印刷、スプレー塗布、ディスペンサ、インクジェット印刷等によって固体電解質層上に形成することにより形成することができる。なお、導電層が乾燥前の粘性のある状態で、次工程の電極引き出し層を積層することが好ましい。導電層の厚みは2μm以上であることが好ましく、20μm以下であることが好ましい。
【0031】
導電層上には、導電性接着剤層が設けられていてもよい。
導電性接着剤層を構成する材料としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の絶縁性樹脂と、カーボンや銀等の導電性粒子との混合物が挙げられる。
【0032】
[第2層]
第2層7は、電極引き出し層7aからなる。
電極引き出し層7aは、樹脂成形体9の第2端面9bに引き出されて第2外部電極13に電気的に接続される。
【0033】
電極引き出し層は、Al、Cu、Ag及びこれらの金属を主成分とする合金からなる群より選択される少なくとも一種の金属箔からなることが好ましい。電極引き出し層が上記の金属箔からなると、電極引き出し層の抵抗値を低減させることができ、ESRを低減させることができる。
また、電極引き出し層として、表面にスパッタや蒸着等の成膜方法によりカーボンコートやチタンコートがされた金属箔を用いてもよい。カーボンコートされたAl箔を用いることがより好ましい。電極引き出し層の厚みは特に限定されないが、製造工程でのハンドリング、小型化、およびESRを低減させる観点からは、20μm以上であることが好ましく、50μm以下であることが好ましい。
電極引き出し層は、アルミニウム、銅、銀及びこれらの金属を主成分とする合金からなる群より選択される少なくとも一種の金属箔からなることが好ましい。
電極引き出し層が上記の金属箔からなると、電極引き出し層の抵抗値を低減させることができ、ESRを低減させることができる。
【0034】
電極引き出し層の厚みは特に限定されないが、ESRを低減させる観点からは、5μm以上、100μm以下であることが好ましい。
【0035】
電極引き出し層の表面には、粗化面が形成されていることが好ましい。
電極引き出し層の表面に粗化面が形成されていると、電極引き出し層と導電性接着剤層との密着性、又は、電極引き出し層と他の導電層との密着性が改善されるため、ESRを低減させることができる。
粗化面の形成方法は、特に限定されず、エッチング等により粗化面を形成してもよい。特にアルミニウムを用いる場合は、粗面化処理(エッチング処理)が施されたものにカーボンコートやチタンコートを行うことが低抵抗化の上で好ましい。
【0036】
また、電極引き出し層の表面には、アンカーコート剤からなるコート層が形成されていてもよい。
電極引き出し層の表面にアンカーコート剤からなるコート層が形成されていると、電極引き出し層と固体電解質層との密着性、又は、電極引き出し層と他の導電層との密着性が改善されるため、ESRを低減させることができる。
【0037】
[ダミー層]
素子積層体30の積層方向の一方の主面にはダミー層40aが設けられている。
ダミー層はコンデンサ容量に寄与しない層である。
ダミー層40aは、樹脂成形体9の第2端面9bに露出した弁作用金属基体5aと弁作用金属基体5aの表面に形成された誘電体層5bと、誘電体層5bの表面に形成された固体電解質層5cと、固体電解質層5cの表面に形成された導電層5dからなる。
ダミー層40aを構成する弁作用金属基体5aは、第2外部電極13を通じて対向する電極引き出し層7aと接続されているため、コンデンサ容量に寄与しない。
【0038】
[絶縁基板]
絶縁基板50はダミー層40aと隣接する位置に配置されている。
絶縁基板は、絶縁性材料からなる。
絶縁性材料としては、例えばガラエポ樹脂、ガラスコンポジット、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキシド(PPO)樹脂及びビスマレイミドトリアジン(BT)樹脂等が挙げられる。
【0039】
素子積層体の積層方向に沿った方向、かつ、20℃から260℃までの温度範囲における絶縁基板の平均線膨張係数は、80[ppm/K]以上、160[ppm/K]以下であることが好ましい。
上記平均線膨張係数が上記範囲であると、絶縁基板に最も近い位置に配置される層(第1層又は第2層)がリフロー処理によって剥離してESRが変化しやすくなるが、本発明の固体電解コンデンサでは、コンデンサ容量に寄与しないダミー層が剥離するため、ESRの変化を抑制することができる。
【0040】
[封止樹脂]
封止樹脂8は、素子積層体30の周囲を封止している。
【0041】
素子積層体の面のうち、弁作用金属基体が露出している面は、樹脂成形体の第1端面である。
素子積層体の面のうち、電極引き出し層が露出している面は、樹脂成形体の第2端面である。
素子積層体の面のうち、ダミー層及び絶縁基板が配置される面と反対側の面は、封止樹脂によって封止されている。
ダミー層の周囲は、必要に応じて、封止樹脂により覆われていてもよい。
【0042】
封止樹脂は、少なくとも樹脂を含み、好ましくは樹脂及びフィラーを含む。
封止樹脂に含まれる樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、液晶ポリマー等が挙げられる。また、封止樹脂に含まれるフィラーとしては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、金属粒子等が挙げられる。
【0043】
また、封止樹脂が樹脂及びフィラーを含む場合、封止樹脂の充填性を確保する観点から、フィラーの最大径は、電極引き出し層の最小厚みよりも小さいことが好ましい。
【0044】
封止樹脂に含まれるフィラーの最大径は、例えば、30μm以上、40μm以下の範囲にあることが好ましい。
【0045】
樹脂成形体の成形方法としては、固形封止材を用いる場合は、コンプレッションモールド、トランスファーモールド等の樹脂モールドを用いることが好ましく、コンプレッションモールドを用いることがより好ましい。また、液状封止材を用いる場合は、ディスペンス法や印刷法等の成形方法を用いることが好ましい。コンプレッションモールドで素子積層体、ダミー層及び絶縁基板を封止樹脂で封止して樹脂成形体とすることが好ましい。
【0046】
封止樹脂の配色は特に限定されないが、絶縁基板と異なる配色とすることが好ましい。
封止樹脂と絶縁基板の配色が異なっていると、封止樹脂と絶縁基板とを視覚的に分離することが可能となり、封止樹脂及び絶縁基板の状態を確認しやすい。
【0047】
[外部電極]
第1外部電極及び第2外部電極は、例えば、めっきやスパッタ、浸漬塗布、印刷等により形成することができる。めっきの場合は、めっき層としてはZn・Ag・Ni層、Ag・Ni層、Ni層、Zn・Ni・Au層、Ni・Au層、Zn・Ni・Cu層、Ni・Cu層等を使用することができる。これらのめっき層の上に、例えば、Cuめっき層、Niめっき層、Snめっき層の順に(あるいは一部を除いて)めっき層をさらに形成することが好ましい。
【0048】
素子積層体の積層方向に沿った方向、かつ、20℃から260℃までの温度範囲における第1外部電極及び第2外部電極の平均線膨張係数は、いずれも5[ppm/K]以上、80[ppm/K]以下であることが好ましい。
第1外部電極及び第2外部電極の上記平均線膨張係数がいずれも上記範囲であると、絶縁基板と外部電極の線膨張係数の差に起因して、リフロー時の熱によって固体電解コンデンサに応力がかかり、素子積層体に層間剥離が起こってESRが変化するという問題が生じやすいが、本発明の固体電解コンデンサではこのESRの変化を抑制することができる。
【0049】
なお、絶縁基板の平均線膨張係数は、JIS C 6481(1996)に準拠して測定される、20℃~260℃における線膨張係数の平均値である。また、第1外部電極及び第2外部電極の材料の線膨張係数は、熱機械分析(TMA)で測定される、20℃~260℃における線膨張係数の平均値である。
【0050】
素子積層体の積層方向に沿った方向、かつ、20℃から260℃までの温度範囲における、絶縁基板と第1外部電極の平均線膨張係数の差、及び、絶縁基板と第2外部電極の平均線膨張係数の差は、いずれも50[ppm/K]以上であることが好ましい。
上記平均線膨張係数の差がいずれも上記範囲であると、絶縁基板と外部電極の線膨張係数の差に起因して、リフロー時の熱によって固体電解コンデンサに応力がかかり、素子積層体に層間剥離が起こってESRが変化するという問題が生じやすいが、本発明の固体電解コンデンサではこのESRの変化を抑制することができる。
【0051】
[その他の実施形態]
本発明の固体電解コンデンサを構成するダミー層の他の例を説明する。
図2に示した構成以外のダミー層としては、絶縁シート、表面に誘電体層が形成されているが誘電体層の表面に固体電解質層が形成されていない弁作用金属基体、及び、樹脂成形体の第1端面に露出した電極引き出し層等が挙げられる。
【0052】
ダミー層が絶縁シートである場合の例について、図3を参照しながら説明する。
図3は、本発明の固体電解コンデンサの別の一例を模式的に示す断面図である。
図3に示す固体電解コンデンサ2は、素子積層体30、ダミー層40b及び絶縁基板50並びに素子積層体30の周囲を封止する封止樹脂8からなる樹脂成形体9を有する。
ダミー層40bは絶縁シートで構成されており、第1外部電極及び第2外部電極と電気的に接続されないため、コンデンサ容量に寄与しない。
【0053】
絶縁シートを構成する材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、シリコン樹脂、液晶ポリマー等が挙げられる。
絶縁シートを構成する材料は、後述する絶縁基板や封止樹脂と同じ材料であってもよい。
【0054】
ダミー層が、表面に誘電体層が形成されているが誘電体層の表面に固体電解質層が形成されていない弁作用金属基体である場合の例について、図4を参照しながら説明する。
図4は、本発明の固体電解コンデンサのさらに別の一例を模式的に示す断面図である。
図4に示す固体電解コンデンサ3は、素子積層体30、ダミー層40c及び絶縁基板50並びに素子積層体30の周囲を封止する封止樹脂8からなる樹脂成形体9を有する。
ダミー層40cは、弁作用金属基体5aと、その表面に形成された誘電体層5bと、誘電体層5b上に形成された導電層5dとを備える。
ダミー層40cでは、弁作用金属基体5aの表面に誘電体層5bが形成されているが、誘電体層5bの表面に固体電解質層が形成されていないため、電極引き出し層7aと対向していてもコンデンサ容量に寄与しない。
【0055】
ダミー層が、樹脂成形体の第1端面に露出した電極引き出し層である場合の例について、図5を参照しながら説明する。
図5は、本発明の固体電解コンデンサのさらに別の一例を模式的に示す断面図である。
図5に示す固体電解コンデンサ4は、素子積層体30、ダミー層40d及び絶縁基板50並びに素子積層体30の周囲を封止する封止樹脂8からなる樹脂成形体9を有する。
固体電解コンデンサ4は、図2図3及び図4に示す固体電解コンデンサ1、固体電解コンデンサ2及び固体電解コンデンサ3とは異なり、素子積層体30の最底面側(ダミー層側)に第1層5が配置されている。
ダミー層40dは、樹脂成形体9の第1端面9aに露出する電極引き出し層7aで構成されている。
ダミー層40dを構成する電極引き出し層7aは第1層5と対向しているが、第1外部電極11を通じて対向する第1層5と電気的に接続されているため、コンデンサ容量に寄与しない。
【0056】
また、素子積層体の積層方向のいずれか一方の主面に第1層又は第2層を2層連続で配置し、その外側に絶縁基板を配置することによって、外側(絶縁基板側)の層をダミー層とすることができる。
例えば、素子積層体の底面側に第1層が2層連続で配置され、その外側に絶縁基板が配置されている場合、1層目の第1層(絶縁基板から遠い第1層)は第2層と対向しておりコンデンサ容量に寄与する。一方、2層目の第1層(絶縁基板に隣接する第1層)には対向する第2層が存在しないため、コンデンサ容量に寄与しない。従って、2層目の第1層がダミー層となる。
素子積層体の絶縁基板側に第2層が2層連続で配置されている場合も第1層の場合と同様であり、1層目の第2層はコンデンサ容量に寄与するが、2層目の第2層はダミー層となる。
【0057】
[固体電解コンデンサの製造方法]
本発明の固体電解コンデンサは、例えば、以下の方法により製造することができる。
[コンデンサ素子の作製]
エッチング層等の多孔質層を表面に有する、アルミニウム箔等の弁作用金属基体を準備し、多孔質層の表面に陽極酸化を行って誘電体層を形成する。
誘電体層上にスクリーン印刷により固体電解質層を形成し、続けて固体電解質層上にスクリーン印刷により導電層となるカーボン層を形成して第1層を作製する。
さらに、第1層のカーボン層上に第2層となる電極引き出し層を配置する。
上記工程によりコンデンサ素子が得られる。
【0058】
[コンデンサ素子の積層、樹脂封止]
複数のコンデンサ素子を積層して素子積層体とし、ダミー層及び絶縁基板とともに積層した後、コンプレッションモールドにより封止樹脂で封止して樹脂成形体とする。
素子積層体の作製は、支持基板となる絶縁基板上で行うことが好ましい。
素子積層体の作製を絶縁基板上で行う方法としては、例えば、まず、絶縁基板上にダミー層を積層し、ダミー層上にコンデンサ素子を積層する方法が挙げられる。このとき、コンデンサ素子を積層するのではなく、第1層及び第2層を交互に積層してもよい。
上記手順によって、素子積層体、ダミー層、絶縁基板及び封止樹脂からなる樹脂成形体を得ることができる。
【0059】
[外部電極の形成]
樹脂成形体の第1端面及び第2端面に、第1外部電極及び第2外部電極を形成する。
上記工程により本発明の固体電解コンデンサを得ることができる。
【実施例
【0060】
以下、本発明の固体電解コンデンサにつき、リフロー前後のESRの変化を評価した。
【0061】
[試料1の作製]
図1及び図2に示す構成の素子積層体、ダミー層及び絶縁基板を、エポキシ樹脂とシリカ粒子を含む封止樹脂で封止して樹脂成形体を得た。素子積層体の最も底面側(ダミー層側)には第2層である電極引き出し層が配置されている。素子積層体の底面には、ダミー層が配置されている。
ダミー層は、弁作用金属基体の表面に誘電体層が形成され、その表面に、固体電解質層及び導電層がこの順で配置されて構成されているが、弁作用金属基体が樹脂成形体の第1端面ではなく第2端面に露出している。
続いて、樹脂成形体の第1端面及び第2端面に電解Niめっき、無電解Niめっき及び電解Snめっきをこの順で施して第1外部電極及び第2外部電極を形成した。素子積層体の積層方向に沿った方向における、第1外部電極及び第2外部電極の平均線膨張係数は、いずれも30ppm/K~60ppm/Kであった。
絶縁基板としては、利昌工業株式会社製 CS-3356S[素子積層体の積層方向に沿った方向における線膨張係数α:160ppm/K]を用いた。
【0062】
[試料2の作製]
ダミー層を配置しないほかは試料1と同様の手順で、試料2を作製した。
【0063】
[リフロー前後のESRの測定]
インピーダンスアナライザを用いて、試料1及び試料2のリフロー前後のESRを100個ずつ測定した。
リフロー条件は、260℃、30秒間とした。結果を図6及び図7に示す。
図6は、試料1のリフロー前後のESRを示すグラフであり、図7は、試料2のリフロー前後のESRを示すグラフである。
横軸はリフロー前のESR、縦軸はリフロー後のESRである。従って、図6及び図7では太線で示す傾き1の線よりも上側にある点ほど、リフローによってESRが増加していることを示す。図6及び図7より、本発明の固体電解コンデンサである試料1は、試料2と比較して、リフロー前後のESRの変化が少ないことがわかる。
【符号の説明】
【0064】
1、2、3、4 固体電解コンデンサ
5 第1層
5a 弁作用金属基体
5b 誘電体層
5c 固体電解質層
5d 導電層
7 第2層
7a 電極引き出し層
8 封止樹脂
9 樹脂成形体
9a 樹脂成形体の第1端面
9b 樹脂成形体の第2端面
9c 樹脂成形体の第1側面
9d 樹脂成形体の第2側面
9e 樹脂成形体の上面
9f 樹脂成形体の底面
11 第1外部電極
13 第2外部電極
20 コンデンサ素子
30 素子積層体
40a 樹脂成形体の第2端面に露出する第1層(ダミー層)
40b 絶縁シート(ダミー層)
40c 誘電体層の表面に固体電解質層が形成されていない第1層(ダミー層)
40d 樹脂成形体の第1端面に露出する電極引き出し層(ダミー層)
50 絶縁基板

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7