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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
H01G4/30 201G
H01G4/30 516
H01G4/30 513
H01G4/30 201F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022066811
(22)【出願日】2022-04-14
(65)【公開番号】P2023157118
(43)【公開日】2023-10-26
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】錦織 諒
【審査官】多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-182599(JP,A)
【文献】特開平10-154633(JP,A)
【文献】特開平8-203329(JP,A)
【文献】特開平5-3132(JP,A)
【文献】国際公開第2015/045625(WO,A1)
【文献】特開2011-124542(JP,A)
【文献】特開2020-136553(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0314902(US,A1)
【文献】特開2018-163934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層方向に交互に積層された複数のセラミック層および複数の内部導体層を含むとともに、前記積層方向に相対する第1の主面および第2の主面と、前記積層方向に直交する長さ方向に相対する第1の端面および第2の端面と、前記積層方向および前記長さ方向に直交する幅方向に相対する第1の側面および第2の側面と、を含む積層体と、
前記積層体の長さ方向両端部のそれぞれに、互いに離間して配置された一対の外部電極と、を備え、
前記内部導体層は、
前記第1の端面に引き出される第1の内部導体層と、
前記第2の端面に引き出される第2の内部導体層と、を含み、
前記外部電極は、
前記第1の内部導体層に接続される第1の下地電極層を含む第1の外部電極と、
前記第2の内部導体層に接続される第2の下地電極層を含む第2の外部電極と、を有する積層セラミック電子部品であって、
前記第1の下地電極層および前記第2の下地電極層は、金属部と、前記金属部内に存在する複数の非金属部と、を有し、
前記幅方向と垂直な断面視において、
円形度が0.4以下の前記非金属部によって構成される第1の母集団における当該非金属部の平均面積が、12μm以下である、積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記第1の下地電極層および前記第2の下地電極層は、焼き付け層である、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記幅方向と垂直な断面視において、
前記第1の下地電極層および前記第2の下地電極層における前記非金属部の存在割合は、17.2%以下である、請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層セラミック電子部品として積層セラミックコンデンサが知られている。一般に、積層セラミックコンデンサは、誘電体層と内部電極層とが交互に複数積層された積層体と、積層体の両端面に設けられた外部電極と、を備えている。例えば特許文献1には、上述の構造を有し、かつ、外部電極が、焼き付けにより形成された下地電極層を含む積層セラミックコンデンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-243249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、外部電極の下地電極層は、内部電極層と電気的に接続する役割に加えて、外部から積層体の端面に水分が浸入することを防ぐ役割を有する。しかしながら、下地電極層は、空隙等の非金属部を含んでいる場合が多く、この場合、その非金属部が水分の浸入経路となり、耐湿信頼性を低下させる可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、耐湿信頼性の高い積層セラミック電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る積層セラミック電子部品は、積層方向に交互に積層された複数のセラミック層および複数の内部導体層を含むとともに、前記積層方向に相対する第1の主面および第2の主面と、前記積層方向に直交する長さ方向に相対する第1の端面および第2の端面と、前記積層方向および前記長さ方向に直交する幅方向に相対する第1の側面および第2の側面と、を含む積層体と、前記積層体の長さ方向両端部のそれぞれに、互いに離間して配置された一対の外部電極と、を備え、前記内部導体層は、前記第1の端面に引き出される第1の内部導体層と、前記第2の端面に引き出される第2の内部導体層と、を含み、前記外部電極は、前記第1の内部導体層に接続される第1の下地電極層を含む第1の外部電極と、前記第2の内部導体層に接続される第2の下地電極層を含む第2の外部電極と、を有する積層セラミック電子部品であって、前記第1の下地電極層および前記第2の下地電極層は、金属部と、前記金属部内に存在する複数の非金属部と、を有し、前記幅方向と垂直な断面視において、円形度が0.4以下の前記非金属部によって構成される第1の母集団における当該非金属部の平均面積が、12μm以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐湿信頼性の高い積層セラミック電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る積層セラミックコンデンサの外観斜視図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3図2のIII-III断面図である。
図4A図2のIVA-IVA断面図である。
図4B図2のIVB-IVB断面図である。
図5図2のR1で示す部分のSEM写真に基づく拡大断面図である。
図6】円形度が比較的低い非金属部の一例を示す図である。
図7A】2連構造の積層セラミックコンデンサを示す図である。
図7B】3連構造の積層セラミックコンデンサを示す図である。
図7C】4連構造の積層セラミックコンデンサを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態に係る積層セラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサ1について説明する。図1は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1の外観斜視図である。図2は、図1のII-II断面図である。図3は、図2のIII-III断面図である。図4Aは、図2のIVA-IVA断面図である。図4Bは、図2のIVB-IVB断面図である。
【0010】
図1に示すように、実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、略直方体形状を有している。積層セラミックコンデンサ1は、略直方体形状を有する積層体10と、積層体10の両端部のそれぞれに互いに離間して配置された一対の外部電極40と、を備えている。
【0011】
図1において、矢印Tは、積層セラミックコンデンサ1および積層体10の積層方向を示している。この積層方向Tは、積層セラミックコンデンサ1および積層体10の厚み方向および高さ方向でもある。図1において、矢印Lは、積層セラミックコンデンサ1および積層体10の、積層方向Tに直交する長さ方向を示している。図1において、矢印Wは、積層セラミックコンデンサ1および積層体10の、積層方向Tおよび長さ方向Lに直交する幅方向を示している。一対の外部電極40は、積層体10の長さ方向Lの一端部および他端部にそれぞれ配置されている。
【0012】
図1図4Bには、XYZ直交座標系が示されている。積層セラミックコンデンサ1および積層体10の長さ方向Lは、X方向と対応している。積層セラミックコンデンサ1および積層体10の幅方向Wは、Y方向と対応している。積層セラミックコンデンサ1および積層体10の積層方向Tは、Z方向と対応している。ここで、図2に示す断面は、LT断面とも称される。図3に示す断面は、WT断面とも称される。図4Aおよび図4Bに示す断面は、LW断面とも称される。
【0013】
図1図4Bに示すように、積層体10は、積層方向Tに相対する第1の主面TS1および第2の主面TS2と、積層方向Tに直交する長さ方向Lに相対する第1の端面LS1および第2の端面LS2と、積層方向Tおよび長さ方向Lに直交する幅方向Wに相対する第1の側面WS1および第2の側面WS2と、を含む。
【0014】
図1に示すように、積層体10は、略直方体形状を有している。なお、積層体10の長さ方向Lの寸法は、幅方向Wの寸法よりも必ずしも長いとは限らない。積層体10の角部および稜線部には、丸みがつけられていることが好ましい。角部は、積層体の3面が交わる部分であり、稜線部は、積層体の2面が交わる部分である。なお、積層体10を構成する表面の一部または全部に凹凸などが形成されていてもよい。
【0015】
積層体10の寸法は、特に限定されないが、積層体10の長さ方向Lの寸法をL寸法とすると、L寸法は、0.2mm以上6mm以下であることが好ましい。また、積層体10の積層方向Tの寸法をT寸法とすると、T寸法は、0.05mm以上5mm以下であることが好ましい。また、積層体10の幅方向Wの寸法をW寸法とすると、W寸法は、0.1mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0016】
図2および図3に示すように、積層体10は、内層部11と、積層方向Tにおいて内層部11を挟み込むように配置された第1の主面側外層部12および第2の主面側外層部13と、を有する。
【0017】
内層部11は、積層方向Tに交互に積層される複数のセラミック層としての複数の誘電体層20および複数の内部導体層としての複数の内部電極層30を含む。内層部11は、積層方向Tにおいて、最も第1の主面TS1側に位置する内部電極層30から最も第2の主面TS2側に位置する内部電極層30までを含む。内層部11では、複数の内部電極層30が誘電体層20を介して対向して配置されている。内層部11は、静電容量を発生させ実質的にコンデンサとして機能する部分である。
【0018】
複数の誘電体層20は、誘電体材料により構成される。誘電体材料は、例えば、BaTiO、CaTiO、SrTiO、またはCaZrOなどの成分を含む誘電体セラミックであってもよい。また、誘電体材料は、これらの主成分にMn化合物、Fe化合物、Cr化合物、Co化合物、Ni化合物などの副成分を添加したものであってもよい。誘電体材料は、主成分としてBaTiOを含む材料であることが特に好ましい。
【0019】
誘電体層20の厚みは、0.2μm以上10μm以下であることが好ましい。積層される誘電体層20の枚数は、15枚以上1200枚以下であることが好ましい。なお、この誘電体層20の枚数は、内層部11の誘電体層20の枚数と、第1の主面側外層部12および第2の主面側外層部13のそれぞれの誘電体層20の枚数との総数である。
【0020】
複数の内部電極層30は、複数の第1の内部導体層としての複数の第1の内部電極層31と、複数の第2の内部導体層としての複数の第2の内部電極層32と、を含む。第1の内部電極層31と第2の内部電極層32とが、その間に誘電体層20を挟んで積層方向Tに交互に配置されている。第1の内部電極層31は、第1の端面LS1に引き出されている。第2の内部電極層32は、第2の端面LS2に引き出されている。なお、以下においては、第1の内部電極層31と第2の内部電極層32とを区別して説明する必要のない場合には、第1の内部電極層31と第2の内部電極層32とをまとめて内部電極層30という場合がある。
【0021】
図4Aに示すように、第1の内部電極層31は、第1の対向部31Aと、第1の引き出し部31Bと、を有する。第1の対向部31Aは、誘電体層20を間に挟んで第2の内部電極層32に対向する領域であり、積層体10の内部に位置する。第1の引き出し部31Bは、第1の対向部31Aから第1の端面LS1に引き出されている部分であり、第1の端面LS1に露出している。
【0022】
図4Bに示すように、第2の内部電極層32は、第2の対向部32Aと、第2の引き出し部32Bと、を有する。第2の対向部32Aは、誘電体層20を間に挟んで第1の内部電極層31に対向する領域であり、積層体10の内部に位置する。第2の引き出し部32Bは、第2の対向部32Aから第2の端面LS2に引き出されている部分であり、第2の端面LS2に露出している。
【0023】
本実施形態では、第1の対向部31Aと第2の対向部32Aとが誘電体層20を介して互いに対向することにより容量が形成され、コンデンサの特性が発現する。
【0024】
第1の対向部31Aおよび第2の対向部32Aの形状は、特に限定されないが、矩形状であることが好ましい。もっとも、矩形形状のコーナー部が丸められていてもよいし、矩形形状のコーナー部が斜めに形成されていてもよい。第1の引出き出し部31Bおよび第2の引き出し部32Bの形状は、特に限定されないが、矩形状であることが好ましい。もっとも、矩形形状のコーナー部が丸められていてもよいし、矩形形状のコーナー部が斜めに形成されていてもよい。
【0025】
第1の対向部31Aの幅方向Wの寸法と第1の引き出し部31Bの幅方向Wの寸法は、同じ寸法で形成されていてもよく、どちらか一方の寸法が小さく形成されていてもよい。第2の対向部32Aの幅方向Wの寸法と第2の引き出し部32Bの幅方向Wの寸法は、同じ寸法で形成されていてもよく、どちらか一方の寸法が狭く形成されていてもよい。
【0026】
第1の内部電極層31および第2の内部電極層32は、例えば、Ni、Cu、Ag、Pd、Auなどの金属や、これらの金属の少なくとも一種を含む合金などの適宜の導電材料により構成される。合金を用いる場合、第1の内部電極層31および第2の内部電極層32は、例えばAg-Pd合金等により構成されてもよい。
【0027】
第1の内部電極層31および第2の内部電極層32のそれぞれの厚みは、例えば、0.2μm以上2.0μm以下であることが好ましい。第1の内部電極層31および第2の内部電極層32の枚数は、合わせて15枚以上1000枚以下であることが好ましい。
【0028】
図2および図3に示すように、第1の主面側外層部12は、積層体10の第1の主面TS1側に位置している。第1の主面側外層部12は、第1の主面TS1と、最も第1の主面TS1に近い内部電極層30との間に位置する複数の誘電体層20の集合体である。一方、第2の主面側外層部13は、積層体10の第2の主面TS2側に位置している。第2の主面側外層部13は、第2の主面TS2と、最も第2の主面TS2に近い内部電極層30との間に位置する複数の誘電体層20の集合体である。第1の主面側外層部12および第2の主面側外層部13で用いられる誘電体層20は、いずれも内層部11で用いられる誘電体層20と同じものであってもよい。
【0029】
なお、積層体10は、対向電極部11Eを有する。対向電極部11Eは、第1の内部電極層31の第1の対向部31Aと、第2の内部電極層32の第2の対向部32Aとが対向する部分である。対向電極部11Eは、内層部11の一部として構成されている。図4Aおよび図4Bには、対向電極部11Eの幅方向Wおよび長さ方向Lの範囲が示されている。なお、対向電極部11Eは、コンデンサ有効部ともいう。
【0030】
なお、積層体10は、側面側外層部を有する。側面側外層部は、第1の側面側外層部WG1と、第2の側面側外層部WG2とを有する。第1の側面側外層部WG1は、対向電極部11Eと、第1の側面WS1との間に位置する誘電体層20を含む部分である。第2の側面側外層部WG2は、対向電極部11Eと第2の側面WS2との間に位置する誘電体層20を含む部分である。図3図4Aおよび図4Bには、第1の側面側外層部WG1および第2の側面側外層部WG2の幅方向Wの範囲が示されている。なお、側面側外層部は、Wギャップまたはサイドギャップともいう。
【0031】
なお、積層体10は、端面側外層部を有する。端面側外層部は、第1の端面側外層部LG1と、第2の端面側外層部LG2とを有する。第1の端面側外層部LG1は、対向電極部11Eと第1の端面LS1との間に位置する、誘電体層20および第1の引き出し部31Bを含む部分である。すなわち、第1の端面側外層部LG1は、複数枚の誘電体層20の第1の端面LS1側の部分と複数枚の第1の引き出し部31Bとの集合体である。第2の端面側外層部LG2は、対向電極部11Eと第2の端面LS2との間に位置する、誘電体層20および第2の引き出し部32Bを含む部分である。すなわち、第2の端面側外層部LG2は、複数枚の誘電体層20の第2の端面LS2側の部分と複数枚の第2の引き出し部32Bとの集合体である。図2図4Aおよび図4Bには、第1の端面側外層部LG1および第2の端面側外層部LG2の長さ方向Lの範囲が示されている。なお、端面側外層部は、Lギャップまたはエンドギャップともいう。
【0032】
外部電極40は、図1および図2に示すように、積層体10の第1の端面LS1側に配置された第1の外部電極40Aと、積層体10の第2の端面LS2側に配置された第2の外部電極40Bと、を有する。
【0033】
なお、第1の外部電極40Aおよび第2の外部電極40Bの基本的な構成は同じである。また、第1の外部電極40Aおよび第2の外部電極40Bは、積層セラミックコンデンサ1の長さ方向Lの中央のWT断面に対して概ね面対称の形状を有する。よって以下においては、第1の外部電極40Aと第2の外部電極40Bとを区別して説明する必要のない場合には、第1の外部電極40Aと第2の外部電極40Bとをまとめて外部電極40という場合がある。
【0034】
第1の外部電極40Aは、第1の端面LS1上に配置されている。第1の外部電極40Aは、第1の端面LS1に露出する複数の第1の内部電極層31のそれぞれの第1の引き出し部31Bに接触している。これにより、第1の外部電極40Aは複数の第1の内部電極層31に電気的に接続している。第1の外部電極40Aは、第1の主面TS1の一部および第2の主面TS2の一部、ならびに第1の側面WS1の一部および第2の側面WS2の一部にも配置されていてよい。本実施形態では、第1の外部電極40Aは、第1の端面LS1上から第1の主面TS1の一部および第2の主面TS2の一部、ならびに第1の側面WS1の一部および第2の側面WS2の一部にまで延びて形成されている。
【0035】
第2の外部電極40Bは、第2の端面LS2上に配置されている。第2の外部電極40Bは、第2の端面LS2に露出する複数の第2の内部電極層32のそれぞれの第2の引き出し部32Bに接触している。これにより、第2の外部電極40Bは複数の第2の内部電極層32に電気的に接続している。第2の外部電極40Bは、第1の主面TS1の一部および第2の主面TS2の一部、ならびに第1の側面WS1の一部および第2の側面WS2の一部にも配置されていてよい。本実施形態では、第2の外部電極40Bは、第2の端面LS2上から第1の主面TS1の一部および第2の主面TS2の一部、ならびに第1の側面WS1の一部および第2の側面WS2の一部にまで延びて形成されている。
【0036】
前述のとおり、積層体10内においては、第1の内部電極層31の第1の対向部31Aと第2の内部電極層32の第2の対向部32Aとが誘電体層20を介して対向することにより、容量が形成される。そのため、第1の内部電極層31が接続された第1の外部電極40Aと第2の内部電極層32が接続された第2の外部電極40Bとの間で、コンデンサの特性が発現する。
【0037】
図2図4Aおよび図4Bに示すように、第1の外部電極40Aは、第1の下地電極層50Aと、第1の下地電極層50A上に配置された第1のめっき層60Aと、を有する。また、第2の外部電極40Bは、第2の下地電極層50Bと、第2の下地電極層50B上に配置された第2のめっき層60Bと、を有する。
【0038】
第1の下地電極層50Aは、第1の端面LS1上に配置されている。第1の下地電極層50Aは、第1の端面LS1に露出する複数の第1の内部電極層31のそれぞれの第1の引き出し部31Bに接続している。本実施形態においては、第1の下地電極層50Aは、第1の端面LS1上から第1の主面TS1の一部および第2の主面TS2の一部、ならびに第1の側面WS1の一部および第2の側面WS2の一部にまで延びて形成されている。
【0039】
第2の下地電極層50Bは、第2の端面LS2上に配置されている。第2の下地電極層50Bは、第2の端面LS2に露出する複数の第2の内部電極層32のそれぞれの第2の引き出し部32Bに接触している。本実施形態においては、第2の下地電極層50Bは、第2の端面LS2上から第1の主面TS1の一部および第2の主面TS2の一部、ならびに第1の側面WS1の一部および第2の側面WS2の一部にまで延びて形成されている。
【0040】
本実施形態の第1の下地電極層50Aおよび第2の下地電極層50Bは、焼き付け層である。焼き付け層は、金属成分と、ガラス成分もしくはセラミック成分のどちらか一方を含んでいるか、その両方を含んでいることが好ましい。金属成分は、例えば、Cu、Ni、Ag、Pd、Ag-Pd合金、Au等から選ばれる少なくとも1つを含む。ガラス成分は、例えば、B、Si、Ba、Mg、Al、Li等から選ばれる少なくとも1つを含む。セラミック成分は、誘電体層20と同種のセラミック材料を用いてもよいし、異なる種のセラミック材料を用いてもよい。セラミック成分は、例えば、BaTiO、CaTiO、(Ba,Ca)TiO、SrTiO、CaZrO等から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0041】
焼き付け層は、例えば、ガラスおよび金属を含む導電性ペーストを積層体10に塗布して焼き付けたものである。焼き付け層は、複数の内部電極および誘電体層を有する積層体10の素材である焼成前の積層チップと、その積層チップに塗布した導電性ペーストとを同時焼成して形成することができる。あるいは、その積層チップを焼成して積層体10を得た後、その積層体10に導電性ペーストを塗布して焼き付けることによっても形成してもよい。なお、上記コファイアの場合には、焼き付け層は、ガラス成分の代わりにセラミック材料を添加したものを焼き付けて形成することが好ましい。その場合、添加するセラミック材料として、誘電体層20と同種のセラミック材料を用いることが特に好ましい。なお、焼き付け層は、複数層であってもよい。
【0042】
第1の端面LS1上に位置する第1の下地電極層50Aの長さ方向Lに対応する厚みは、第1の下地電極層50Aの積層方向Tおよび幅方向Wの中央部において、例えば、10μm以上200μm以下程度であることが好ましい。
【0043】
第2の端面LS2上に位置する第2の下地電極層50Bの長さ方向Lに対応する厚みは、第2の下地電極層50Bの積層方向Tおよび幅方向Wの中央部において、例えば、10μm以上200μm以下程度であることが好ましい。
【0044】
第1の主面TS1または第2の主面TS2のうちの、少なくとも一方の面の一部にも第1の下地電極層50Aを設ける場合には、この部分に設けられる第1の下地電極層50Aの積層方向Tに対応する厚みは、この部分に設けられる第1の下地電極層50Aの長さ方向Lおよび幅方向Wの中央部において、例えば、3μm以上40μm以下程度であることが好ましい。
【0045】
第1の側面WS1または第2の側面WS2のうちの、少なくとも一方の面の一部にも第1の下地電極層50Aを設ける場合には、この部分に設けられる第1の下地電極層50Aの幅方向Wに対応する厚みは、この部分に設けられる第1の下地電極層50Aの長さ方向Lおよび積層方向Tの中央部において、例えば、3μm以上40μm以下程度であることが好ましい。
【0046】
第1の主面TS1または第2の主面TS2のうちの、少なくとも一方の面の一部にも第2の下地電極層50Bを設ける場合には、この部分に設けられる第2の下地電極層50Bの積層方向Tに対応する厚みは、この部分に設けられる第2の下地電極層50Bの長さ方向Lおよび幅方向Wの中央部において、例えば、3μm以上40μm以下程度であることが好ましい。
【0047】
第1の側面WS1または第2の側面WS2のうちの、少なくとも一方の面の一部にも第2の下地電極層50Bを設ける場合には、この部分に設けられる第2の下地電極層50Bの幅方向Wに対応する厚みは、この部分に設けられる第2の下地電極層50Bの長さ方向Lおよび積層方向Tの中央部において、例えば、3μm以上40μm以下程度であることが好ましい。
【0048】
第1のめっき層60Aは、第1の下地電極層50Aを覆うように配置されている。
【0049】
第2のめっき層60Bは、第2の下地電極層50Bを覆うように配置されている。
【0050】
第1のめっき層60Aおよび第2のめっき層60Bは、例えば、Cu、Ni、Sn、Ag、Pd、Ag-Pd合金、Au等から選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。第1のめっき層60Aおよび第2のめっき層60Bは、それぞれ複数層により形成されていてもよい。第1のめっき層60Aおよび第2のめっき層60Bは、Niめっき層の上にSnめっき層が形成された2層構造が好ましい。
【0051】
第1のめっき層60Aは、第1の下地電極層50Aを覆うように配置されている。本実施形態においては、第1のめっき層60Aは、第1のNiめっき層61Aと、第1のNiめっき層61A上に位置する第1のSnめっき層62Aと、を有する。
【0052】
第2のめっき層60Bは、第2の下地電極層50Bを覆うように配置されている。本実施形態においては、第2のめっき層60Bは、第2のNiめっき層61Bと、第2のNiめっき層61B上に位置する第2のSnめっき層62Bと、を有する。
【0053】
Niめっき層は、積層セラミックコンデンサ1を実装する際に、第1の下地電極層50Aおよび第2の下地電極層50Bがはんだによって侵食されることを防止する。また、Snめっき層は、積層セラミックコンデンサ1を実装する際に、はんだの濡れ性を向上させる。これにより、積層セラミックコンデンサ1の実装を容易にする。第1のNiめっき層61A、第1のSnめっき層62A、第2のNiめっき層61Bおよび第2のSnめっき層62Bのそれぞれの厚みは、2μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0054】
なお、本実施形態の外部電極40は、例えば、導電性粒子と熱硬化性樹脂を含む導電性樹脂層を有していてもよい。導電性樹脂層は、焼き付け層を覆うように配置されてもよい。導電性樹脂層が焼き付け層を覆うように配置される場合、導電性樹脂層は、焼き付け層とめっき層(第1のめっき層60A、第2のめっき層60B)との間に配置される。導電性樹脂層は、焼き付け層上を完全に覆っていてもよいし、焼き付け層の一部を覆っていてもよい。
【0055】
熱硬化性樹脂を含む導電性樹脂層は、例えば、めっき膜や導電性ペーストの焼成物からなる導電層よりも柔軟性に富んでいる。このため、積層セラミックコンデンサ1に物理的な衝撃や熱サイクルに起因する衝撃が加わった場合であっても、導電性樹脂層は、緩衝層として機能する。よって、導電性樹脂層は、積層セラミックコンデンサ1のクラック発生を抑制する。
【0056】
導電性粒子を構成する金属は、Ag、Cu、Ni、Sn、Biまたは、それらを含む合金であってもよい。導電性粒子は、好ましくはAgを含む。導電性粒子は、例えばAgの金属粉である。Agは、金属の中でもっとも比抵抗が低いため、電極材料に適している。また、Agは貴金属であるため、酸化しにくく、対候性が高い。よって、Agの金属粉は、導電性粒子として好適である。
【0057】
また、導電性粒子は、表面がAgコーティングされた金属粉であってもよい。金属粉の表面にAgコーティングされたものを使用する際には、金属粉は、Cu、Ni、Sn、Biまたはそれらの合金粉であることが好ましい。Agの特性は保ちつつ、母材の金属を安価なものにするために、Agコーティングされた金属粉を用いることが好ましい。
【0058】
さらに、導電性粒子は、Cu、Niに酸化防止処理を施したものであってもよい。また、導電性粒子は、金属粉の表面にSn、Ni、Cuをコーティングした金属粉であってもよい。金属粉の表面にSn、Ni、Cuをコーティングされたものを使用する際には、金属粉は、Ag、Cu、Ni、Sn、Biまたはそれらの合金粉であることが好ましい。
【0059】
導電性粒子の形状は、特に限定されない。導電性粒子は、球形状、扁平状などの形状を有するものを用いることができるが、球形状金属粉と扁平状金属粉とを混合して用いることが好ましい。
【0060】
導電性樹脂層に含まれる導電性粒子は、主に導電性樹脂層の通電性を確保する役割を担う。具体的には、複数の導電性粒子どうしが接触することにより、導電性樹脂層内部に通電経路が形成される。
【0061】
導電性樹脂層を構成する樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などの公知の種々の熱硬化性樹脂から選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。その中でも、耐熱性、耐湿性、密着性などに優れたエポキシ樹脂は、最も適切な樹脂の1つである。また、導電性樹脂層の樹脂は、熱硬化性樹脂とともに、硬化剤を含むことが好ましい。ベース樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂の硬化剤は、フェノール系、アミン系、酸無水物系、イミダゾール系、活性エステル系、アミドイミド系など公知の種々の化合物であってもよい。
【0062】
なお、導電性樹脂層は、複数層で形成されていてもよい。導電性樹脂層の最も厚い部分の厚みは、10μm以上150μm以下であることが好ましい。
【0063】
以上が実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1の基本構成である。なお、積層体10と外部電極40とを含む積層セラミックコンデンサ1の長さ方向の寸法をL寸法とすると、L寸法は、0.2mm以上6mm以下であることが好ましい。また、積層セラミックコンデンサ1の積層方向の寸法をT寸法とすると、T寸法は、0.05mm以上5mm以下であることが好ましい。また、積層セラミックコンデンサ1の幅方向の寸法をW寸法とすると、W寸法は、0.1mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0064】
さて、本願発明者は、検討、実験の積み重ねにより、積層セラミックコンデンサの耐湿信頼性を高めるために、積層体に直接接触する下地電極層、すなわち本実施形態の第1の下地電極層50Aおよび第2の下地電極層50Bが含む非金属部を適切な状態にすることが望ましいという知見を得た。この点について、以下に説明する。
【0065】
図5は、図2のR1で示す部分のSEM(走査型電子顕微鏡)写真に基づく拡大断面図である。図5は、積層セラミックコンデンサ1において、積層体10の幅方向Wと垂直なLT断面の一部である。図5においては、第1の下地電極層50A、第1のNiめっき層61Aの一部、および積層体10の一部が示されている。図5には、積層体10における誘電体層20および複数の第1の内部電極層31が示されている。積層体10の第1の端面LS1に露出する第1の内部電極層31に、第1の下地電極層50Aが接触している。
【0066】
本実施形態の第2の下地電極層50Bも、図5と同じような断面構造を有する。よって、図5に基づいて説明する第1の下地電極層50Aの構成は、すなわち第2の下地電極層50Bの構成である。そこで以下においては、第1の下地電極層50Aと第2の下地電極層50Bとを区別して説明する必要のない場合には、第1の下地電極層50Aと第2の下地電極層50Bとをまとめて下地電極層50という場合がある。
【0067】
図5に示すように、下地電極層50は、金属部70と、この金属部70内に存在する複数の非金属部80と、を有する。
【0068】
金属部70は、下地電極層50を形成する上述した焼き付け層が含むCu、Ni、Ag、Pd、Ag-Pd合金、Au等から選ばれる少なくとも1つの金属成分を含む。このような金属部70内に、複数の非金属部80が分散している。
【0069】
非金属部80は、主に空隙であるが、全てが空隙ではなく、BaまたはSiを含むガラス成分を一部含んでもいてもよい。また、非金属部80は、全てがBaまたはSiを含むガラス成分により構成されていてもよい。複数の非金属部80は、円形度および平均面積が異なっている。
【0070】
本実施形態の下地電極層50においては、図5に示すような幅方向Wと垂直なLT断面視において、円形度が0.4以下の非金属部80によって構成される第1の母集団における当該非金属部80の平均面積が、12μm以下であることが好ましい。
【0071】
また、本実施形態の下地電極層50においては、図5に示すような幅方向Wと垂直なLT断面視において、非金属部80の存在割合は、17.2%以下であることが好ましい。
【0072】
本実施形態の積層セラミックコンデンサ1においては、下地電極層50に存在する非金属部80のうち、円形度が低い非金属部80は、比較的面積が小さい。下地電極層を備える積層セラミックコンデンサにおいて、その下地電極層は、通常、本実施形態の非金属部80のような非金属部を含んでいる。
【0073】
非金属部80は、外部から内部への水分の浸入経路となり、積層セラミックコンデンサ1の耐湿信頼性を低下させる場合がある。特に、下地電極層50における非金属部80の存在割合が高くなると、耐湿信頼性が低下しやすい。また、非金属部80の存在割合がそれほど高くない場合であっても、例えば非金属部80が長細い形状である場合、その非金属部80の長さ方向の向きや、複数の非金属部80の繋がり具合などにより、水分が浸入しやすい構造となる可能性がある。積層セラミックコンデンサ1の耐湿信頼性を向上させるためには、下地電極層50の厚みを大きくすることが考えられる。しかしその場合には、積層セラミックコンデンサ1のチップサイズが大きくなってしまい、部品の微細化を妨げる。また、積層セラミックコンデンサ1のサイズを変えない場合には、下地電極層50の厚みを大きくした分、積層体10が小さくなることにより、コンデンサの容量の低下を招く。
【0074】
図6は、円形度が比較的低い非金属部80の一例である。この非金属部80の円形度は、0.25である。このような円形度の低い非金属部80が複数存在し、かつ、それら非金属部80のサイズが大きい場合には、水分が浸入しやすくなる可能性がある。
【0075】
本実施形態においては、下地電極層50のLT断面視において、円形度が0.4以下の非金属部80によって構成される母集団を第1の母集団としたとき、その第1の母集団を構成する複数の非金属部80の平均面積が12μm以下となっており、図5に示す領域では、具体的には6.3μmである。これにより、下地電極層50に非金属部80が含まれている場合においても、水分を浸入させやすくする円形度の低い非金属部80のサイズが小さいため、非金属部80が水分の浸入経路になりにくい。よって、耐湿信頼性が向上する。
【0076】
なお、本実施形態において、第1の母集団を構成する複数の非金属部80の平均面積は、好ましくは2μm以上12μm以下であり、より好ましくは、2μm以上9μm以下である。これにより、耐湿信頼性がより一層向上する。
【0077】
本実施形態の積層セラミックコンデンサ1は、LT断面視において、下地電極層50における非金属部80の存在割合は、例えば、1%以上30%以下であってもよいが、17.2%以下であることが好ましい。さらにいうならば、下地電極層50における非金属部80の存在割合は、例えば、1.5%以上17.2%以下が好ましく、より好ましくは、例えば、5%以上15%以下である。下地電極層50に非金属部80が含まれ、下地電極層50における非金属部80の存在割合がこのような範囲内であっても、本実施形態の効果、すなわち耐湿信頼性の向上という効果が得られる。
【0078】
次いで、本実施形態における、非金属部80の円形度、非金属部80の平均面積、下地電極層50における非金属部80の存在割合といった各種パラメータの測定方法について説明する。
【0079】
まず、積層セラミックコンデンサ1を、第1の側面WS1または第2の側面WS2から研磨することにより、幅方向W寸法の1/2の位置まで研磨する。これにより、積層セラミックコンデンサ1の幅方向Wにおける真ん中の位置におけるLT断面が露出する。次いで、研磨により露出させたLT断面を、SEMにより観察する。具体的には、LT断面における下地電極層50を含む部分を、反射電子像として撮像する。反射電子像においては、抵抗値の違いがコントラストとして反映され、金属部70は比較的白く、非金属部80は金属部70よりも黒く映る。なお、撮影倍率は2000倍とし、反射電子像における下地電極層50の部分を分析対象範囲とする。
【0080】
第1の下地電極層50Aの2箇所および第2の下地電極層50Bの2箇所、合計4箇所の反射電子像を取得する。図2に、4箇所の反射電子像取得位置を、R1、R2、R3、R4で示す。R1は、積層体10の内層部11に接触する第1の下地電極層50Aのうち、最も第1の主面TS1側の部分である。R2は、積層体10の内層部11に接触する第1の下地電極層50Aのうち、最も第2の主面TS2側の部分である。R3は、積層体10の内層部11に接触する第2の下地電極層50Bのうち、最も第1の主面TS1側の部分である。R4は、積層体10の内層部11に接触する第2の下地電極層50Bのうち、最も第2の主面TS2側の部分である。なお、R1、R2、R3、R4の積層方向Tの長さは、いずれも80μmとした。
【0081】
下地電極層50において、反射電子像取得位置R1、R2、R3、R4のそれぞれに対応する4箇所の領域は、長さ方向Lに対応する寸法である厚みが薄くなりやすく、耐湿信頼性への影響度が高い。よって、これらの部分の下地電極層50の状態は、耐湿信頼性の観点から重要である。
【0082】
画像解析ソフト「WinROOF(三谷商事社製)」により、取得した反射電子像を2値化し、金属部70と、金属部70内に存在する複数の非金属部80とを識別する。この2値化画像を用いて、下地電極層50内に存在する個々の非金属部80の面積等の各種パラメータを算出する。また、下地電極層50における非金属部80の存在割合を算出する。
【0083】
非金属部80の面積は、反射電子像を2値化した2値化画像に基づいて算出される。なお、非金属部80の面積が2.0μm未満の値となった場合、それは非金属部80ではなくノイズである可能性がある。よって、ノイズの影響を除外するため、2.0μm未満の非金属部80は分析対象から除外した。
【0084】
個々の非金属部80について、非金属部80の面積と、非金属部80の円周(輪郭線の長さ)に基づき、下記の式(1)によって非金属部80の円形度を算出する。
円形度=4π×(面積)/(円周の長さ)…(1)
【0085】
4箇所の反射電子像取得位置R1、R2、R3、R4で取得した反射電子像の分析対象範囲において識別された全ての非金属部80(上述のように面積が2.0μm未満の値となったものを除く)のうち、円形度が0.4以下の非金属部80の集合を、第1の母集団として設定する。この第1の母集団を構成する個々の非金属部80の面積に基づき、第1の母集団における非金属部80の平均面積を算出する。
【0086】
分析対象範囲の面積と、非金属部80の面積に基づき、下記の式(2)により、下地電極層50における非金属部80の存在割合を算出する。
非金属部の存在割合(%)=(非金属部の面積/分析対象範囲の面積)×100…(2)
【0087】
4箇所(R1、R2、R3、R4)の分析対象範囲について、それぞれ非金属部80の存在割合を算出する。そして、その平均値を、本実施形態の非金属部80の存在割合として算出する。
【0088】
以上のように、円形度が0.4以下の非金属部80によって構成される第1の母集団における非金属部80の平均面積を算出するための測定対象範囲は、上述の4箇所(R1、R2、R3、R4)の分析対象範囲の集合である。具体的には、測定対象範囲は、積層体10の内層部11に接触する第1の下地電極層50Aおよび第2の下地電極層50Bのうち、第1の主面TS1側の部分と、第2の主面TS2側の部分である。より詳細には、測定対象範囲は、第1の下地電極層50Aおよび第2の下地電極層50Bのうち、積層体10の内層部11と第1の外層部12の境界部の積層方向の位置から、積層体10の積層方向中心に向かって80μmの位置までの部分と、積層体10の内層部11と第2の外層部13の境界部の積層方向の位置から、積層体10の積層方向中心に向かって80μmの位置までの部分である。
【0089】
次に、本実施形態の積層セラミックコンデンサ1の製造方法について説明する。本実施形態の積層セラミックコンデンサ1は、上述した要件を満足する限り、その製造方法は限定されない。しかしながら好適な製造方法は、以下の工程を備える。各工程の詳細を以下に説明する。
【0090】
誘電体層20用の誘電体シートと、内部電極層30用の導電性ペーストを準備する。誘電体層20用の誘電体シートおよび内部電極層30用の導電性ペーストは、いずれもバインダおよび溶剤を含む。バインダおよび溶剤は、公知のものであってよい。導電性材料からなるペーストは、例えば、金属粉末に有機バインダおよび有機溶剤が加えられたものである。
【0091】
誘電体シート上に、内部電極層30用の導電性ペーストを、例えば、スクリーン印刷やグラビア印刷などにより、本実施形態の内部電極層30の形状になるようにパターン設計された印刷版を用いて印刷する。これにより、第1の内部電極層31のパターンが形成された誘電体シートと、第2の内部電極層32のパターンが形成された誘電体シートが準備される。
【0092】
内部電極層30のパターンが印刷されていない誘電体シートを所定枚数積層することにより、第1の主面TS1側の第1の主面側外層部12となる部分を形成する。その上に、第1の内部電極層31のパターンが印刷された誘電体シートおよび第2の内部電極層32のパターンが印刷された誘電体シートを順次交互に積層して、内層部11となる部分を形成する。この内層部11となる部分の上に、内部電極層30のパターンが印刷されていない誘電体シートを所定枚数積層して、第2の主面TS2側の第2の主面側外層部13となる部分を形成する。これにより、積層シートを得る。
【0093】
次いで、積層シートを、静水圧プレスなどの手段によって積層方向にプレスすることにより、積層ブロックを作製する。
【0094】
次いで、積層ブロックを所定のサイズにカットして個片化することにより、複数の積層チップを得る。この後、バレル研磨などにより積層チップを研磨して、角部および稜線部に丸みをつけてもよい。
【0095】
次いで、積層チップを焼成して積層体10を得る。このときの焼成温度は、誘電体層20や内部電極層30の材料にもよるが、例えば900℃以上1400℃以下であることが好ましい。
【0096】
積層体10の両端面に、下地電極層50となる導電性ペーストを塗布する。本実施形態においては、下地電極層50は、焼き付け層である。焼き付け層は、ガラス成分と金属とを含む導電性ペーストを、例えばディッピングなどの方法によって積層体10に塗布し、その後、焼き付け処理を行うことにより形成できる。このときの焼き付け処理の温度は、700℃以上900℃以下であることが好ましい。
【0097】
なお、焼成前の積層チップと、積層チップに塗布した導電性ペーストとを同時に焼成してもよい。その場合、焼き付け層は、ガラス成分の代わりにセラミック材料を添加したものを焼き付けて形成することが好ましい。このとき、添加するセラミック材料として、誘電体層20と同種のセラミック材料を用いることが特に好ましい。この場合は、焼成前の積層チップに対して、導電性ペーストを塗布し、積層チップと積層チップに塗布した導電性ペーストを同時に焼き付けて、焼き付け層が形成された積層体10を形成する。
【0098】
導電性ペーストに添加する銅粉末の形状および粒度分布を変更することにより、下地電極層50の内部に存在する非金属部80の円形度を制御することができる。銅粉末として球形粉を使用し、かつ、銅粉の粒度分布がシャープであるほど、非金属部80の円形度が向上する。逆に、銅粉末として扁平粉を使用し、かつ、銅粉の粒度分布がブロードであるほど、非金属部80の円形度は低下する。
【0099】
銅粉末およびガラス成分の、粒径および焼成温度を変更することにより、下地電極層50の内部に存在する非金属部80の平均面積を制御することができる。銅粉末およびガラス成分の粒径が小さく、かつ、焼成温度が高いほど、非金属部80の平均面積は小さくなる。逆に、銅粉末およびガラス成分の粒径が大きく、かつ、焼成温度が低いほど、非金属部80の平均面積は大きくなる。
【0100】
ガラス成分の添加量および焼成温度を変更することにより、下地電極層50における非金属部80の存在割合を制御することができる。ガラス成分の添加量が多く、かつ、焼成温度が低いほど、非金属部80の存在割合は高くなる。逆に、ガラス成分の添加量が少なく、かつ、焼成温度が高いほど、非金属部80の存在割合は低くなる。導電性ペーストの組成としては、銅粉50vol%以上80vol%以下、ガラス成分5vol%以上20vol%以下、その他溶媒および樹脂成分が含まれる。
【0101】
その後、焼き付け層からなる下地電極層50の表面に、めっき層を形成する。本実施形態においては、第1の下地電極層50Aの表面に、第1のめっき層60Aを形成する。また、第2の下地電極層50Bの表面に、第2のめっき層60Bを形成する。本実施形態では、めっき層として、Niめっき層およびSnめっき層が形成される。めっき処理を行うにあたっては、電解めっき、無電解めっきのどちらを採用してもよい。ただし、無電解めっきは、めっき析出速度を向上させるために、触媒などによる前処理が必要となることから、工程が複雑化するというデメリットがある。したがって、通常は、電解めっきを採用することが好ましい。Niめっき層およびSnめっき層は、例えばバレルめっきにより、順次形成する。
【0102】
なお、導電性樹脂層を設ける場合、導電性樹脂層は、焼き付け層を覆うように配置されてもよい。導電性樹脂層を設ける場合は、熱硬化性樹脂および金属成分を含む導電性樹脂ペーストを焼き付け層上に塗布した後、250~550℃以上の温度で熱処理する。これにより、熱硬化樹脂が熱硬化して導電性樹脂層が形成される。この熱処理時の雰囲気は、N雰囲気であることが好ましい。また、樹脂の飛散を防ぎ、かつ、各種金属成分の酸化を防ぐため、酸素濃度は100ppm以下であることが好ましい。
【0103】
以上の製造工程により、積層セラミックコンデンサ1が製造される。
【0104】
なお、積層セラミックコンデンサ1の構成は、図1~4Bに示す構成に限定されない。例えば、積層セラミックコンデンサ1は、図7A図7Bおよび図7Cに示すような、2連構造、3連構造、4連構造の積層セラミックコンデンサであってもよい。
【0105】
図7Aに示す積層セラミックコンデンサ1は、2連構造の積層セラミックコンデンサ1であり、内部電極層30として、第1の内部電極層33および第2の内部電極層34に加えて、第1の端面LS1および第2の端面LS2のどちらにも引き出されない浮き内部電極層35を備える。図7Bに示す積層セラミックコンデンサ1は、浮き内部電極層35として、第1の浮き内部電極層35Aおよび第2の浮き内部電極層35Bを備えた、3連構造の積層セラミックコンデンサ1である。図7Cに示す積層セラミックコンデンサ1は、浮き内部電極層35として、第1の浮き内部電極層35A、第2の浮き内部電極層35Bおよび第3の浮き内部電極層35Cを備えた、4連構造の積層セラミックコンデンサ1である。このように、内部電極層30として、浮き内部電極層35を設けることにより、積層セラミックコンデンサ1は、対向電極部が複数に分割された構造となる。これにより、対向する内部電極層30間において複数のコンデンサ成分が形成され、これらのコンデンサ成分が直列に接続された構成となる。よって、それぞれのコンデンサ成分に印加される電圧が低くなり、積層セラミックコンデンサ1の高耐圧化を図ることができる。なお、本実施形態の積層セラミックコンデンサ1は、4連以上の多連構造であってもよいことはいうまでもない。
【0106】
なお、積層セラミックコンデンサ1は、2個の外部電極を備える2端子型のものであってもよいし、多数の外部電極を備える多端子型のものであってもよい。
【0107】
なお、上述した実施形態では、積層セラミック電子部品として、誘電体セラミックにより構成される誘電体層20がセラミック層として用いられている積層セラミックコンデンサを例示した。しかしながら、本開示の積層セラミック電子部品はこれに限定されない。例えば、本開示のセラミック電子部品は、セラミック層として圧電体セラミックを用いた圧電部品、セラミック層として半導体セラミックを用いたサーミスタ等の種々の積層セラミック電子部品にも適用可能である。圧電体セラミックとしてはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)系セラミック等が挙げられ、半導体セラミックとしてはスピネル系セラミック等が挙げられる。
【0108】
以上説明した実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1によれば、以下の効果を奏する。
【0109】
実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、積層方向Tに交互に積層された複数のセラミック層としての誘電体層20および複数の内部導体層としての内部電極層30を含むとともに、積層方向Tに相対する第1の主面TS1および第2の主面TS2と、積層方向Tに直交する長さ方向Lに相対する第1の端面LS1および第2の端面LS2と、積層方向Tおよび長さ方向Lに直交する幅方向Wに相対する第1の側面WS1および第2の側面WS2と、を含む積層体10と、積層体10の長さ方向Lの両端部のそれぞれに、互いに離間して配置された一対の外部電極40と、を備え、内部電極層30は、第1の端面LS1に引き出される第1の内部導体層としての第1の内部電極層31と、第2の端面LS2に引き出される第2の内部導体層としての第2の内部電極層32と、を含み、外部電極40は、第1の内部電極層31に接続される第1の下地電極層50Aを含む第1の外部電極40Aと、第2の内部電極層32に接続される第2の下地電極層50Bを含む第2の外部電極40Bと、を有する積層セラミックコンデンサ1であって、第1の下地電極層50Aおよび第2の下地電極層50Bは、金属部70と、金属部70内に存在する複数の非金属部80と、を有し、幅方向Wと垂直な断面視において、円形度が0.4以下の非金属部80によって構成される第1の母集団における当該非金属部80の平均面積が、12μm以下である。
【0110】
これにより、第1の下地電極層50Aおよび第2の下地電極層50Bの非金属部80は、外部から内部への水分の浸入経路になりにくくなり、その結果、積層セラミックコンデンサ1は耐湿信頼性が高くなる。
【0111】
実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1においては、第1の下地電極層50Aおよび第2の下地電極層50Bは、焼き付け層であることが好ましい。
【0112】
これにより、第1の下地電極層50Aおよび第2の下地電極層50Bを形成するにあたり、例えばスパッタ法や蒸着法等の薄膜形成法により形成する場合と比べると、比較的簡便な方法で形成することができる。また、積層体10の焼成と同時に焼き付け層も形成することにより、製造工程の簡素化を図ることができる。
【0113】
実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1においては、幅方向Wと垂直な断面視において、第1の下地電極層50Aおよび第2の下地電極層50Bにおける非金属部80の存在割合は、17.2%以下であることが好ましい。
【0114】
これによっても、第1の下地電極層50Aおよび第2の下地電極層50Bの非金属部80は、外部から内部への水分の浸入経路になりにくくなり、その結果、積層セラミックコンデンサ1は耐湿信頼性が高くなる。
【0115】
本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、上記実施形態において記載する個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【実施例
【0116】
以下に、実施例を説明する。上記実施形態に記載された製造方法にしたがって、下地電極層内の第1の母集団における非金属部の平均面積が異なる値となるように作製された複数のロットの積層セラミックコンデンサを、実施例1~実施例6および比較例の試料として作製した。実施例1~実施例6は本発明を満足する積層セラミックコンデンサであり、比較例は本発明外の積層セラミックコンデンサである。同一ロットの試料は同じ製造条件で作製しており、下地電極層の仕様は同じとなっている。各ロット(実施例1~実施例6および比較例)について、それぞれ72個の試料を作製した。次いで、作製した試料を耐湿信頼性試験に供した。さらに、耐湿信頼性試験後の試料を研磨して、第1の母集団における非金属部の平均面積等のパラメータを前述の測定方法により測定した。
【0117】
なお、製造にあたっては、以下の仕様で各試料を作製した。
【0118】
・積層セラミックコンデンサの寸法:L×W×T=1.6mm×0.8mm×0.8mm
・誘電体層:BaTiO
・容量:10μF
・定格電圧:25V
・下地電極層:導電性金属(Cu)とガラス成分を含む電極(第1の端面、第2の端面それぞれに配置される下地電極層の厚み:36μm)
・めっき層:Niめっき層(2μm)およびSnめっき層(4μm)の2層形成
・内部電極層:Ni
【0119】
表1に、実施例1~実施例6および比較例の試料の、第1の母集団における非金属部の平均面積と、下地電極層における非金属部の存在割合についての測定結果を示す。なお、この測定結果は、各試料72個中から無作為に抽出した10個の平均値である。
【0120】
耐湿信頼性試験は、85℃/85%RHの条件下で行った。試験実施前後のIR値(絶縁抵抗)を定格電圧で測定し、変化量を確認した。具体的には、定格電圧で60秒の充電時間後のIR値を測定した。耐湿試験実施前のIR値に対して、耐湿試験後のIR値が1乗以上低下した試料(IR値が1/10以下の値となった試料)を、耐湿信頼性が不良である「NGサンプル」と判定した。また、耐湿試験実施前のIR値(絶縁抵抗)に対して、耐湿試験後のIR値が0.3乗以上1乗未満の範囲で低下した試料を、IR値が低下した「IR低下サンプル」と判定した。これらの結果を表1に併記する。
【0121】
【表1】
【0122】
表1によると、比較例で明らかなように、第1の母集団における非金属部の平均面積が12μmを超えると、耐湿信頼性がNGとなる試料が発生している。一方、実施例1~実施例6のように、第1の母集団における非金属部の平均面積が12μm以下であれば、耐湿信頼性の結果が良好である。よって、第1の母集団における非金属部の平均面積は、12μm以下であることが、耐湿信頼性を確保する上で好ましい。
【0123】
なお、実施例1は、耐湿信頼性がNGとなる試料は発生していないものの、耐湿信頼性試験でIRが低下した試料が発生している。よって、第1の母集団における非金属部の平均面積は、9μm以下であることがより好ましいといえる。
【0124】
例えば、第1の母集団を構成する非金属部の平均面積は、好ましくは、2μm以上12μm以下であり、より好ましくは、2μm以上9μm以下である。これにより、耐湿信頼性が向上する。
【0125】
また、下地電極層における非金属部の存在割合は、17.2%以下であることが好ましい。例えば、下地電極層における非金属部の存在割合は、好ましくは、1.5%以上17.2%以下である。
【符号の説明】
【0126】
1 積層セラミックコンデンサ(積層セラミック電子部品)
10 積層体
20 誘電体層(セラミック層)
30 内部電極層(内部導体層)
31 第1の内部電極層(第1の内部導体層)
32 第2の内部電極層(第2の内部導体層)
40 外部電極
40A 第1の外部電極
40B 第2の外部電極
50 下地電極層
50A 第1の下地電極層
50B 第2の下地電極層
70 金属部
80 非金属部
L 長さ方向
T 積層方向
W 幅方向
LS1 第1の端面
LS2 第2の端面
TS1 第1の主面
TS2 第2の主面
WS1 第1の側面
WS2 第2の側面
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C