(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20240611BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20240611BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20240611BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240611BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08G59/40
C08K9/04
C08L101/00
H05K1/03 610L
(21)【出願番号】P 2022076093
(22)【出願日】2022-05-02
【審査請求日】2024-01-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋介
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 真俊
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-136291(JP,A)
【文献】特開2016-027097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00-63/10
C08G 59/00-59/72
C08K 9/04
C08L 101/00
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び、(C)カルボジイミド化合物で表面処理された無機充填材、を含む、樹脂組成物
であって、
(C)成分の量が、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、55質量%以上であり、
(B)成分が、活性エステル系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤からなる群より選ばれる1種類以上を含み、
質量比(「活性エステル系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤の合計」/(C)成分)が、0.05以上、0.5以下である、樹脂組成物。
【請求項2】
カルボジイミド化合物が、下記式(C-1)で表される構造単位を含有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式(C-1)において、Yは、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表す。)
【請求項3】
カルボジイミド化合物が、エチレン性不飽和結合を含有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(D)硬化促進剤を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(E)熱可塑性樹脂を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
2000poise未満の最低溶融粘度を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
樹脂組成物を200℃にて90分間加熱して硬化物を得た場合に、当該硬化物が1%以上の破断点伸度を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
樹脂組成物を170℃にて30分間加熱して硬化物を得て、当該硬化物に疎化処理を施した場合に、当該硬化物が300nm未満の算術平均粗さRaを有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
絶縁層形成用である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~
9の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項11】
請求項1~
9の何れか1項に記載の樹脂組成物を含む、シート状積層材料。
【請求項12】
支持体と、当該支持体上に形成された樹脂組成物層と、を備え、
樹脂組成物層が、請求項1~
9の何れか1項に記載の樹脂組成物を含む、樹脂シート。
【請求項13】
請求項1~
9の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、回路基板。
【請求項14】
請求項1~
9の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、半導体チップパッケージ。
【請求項15】
請求項
13に記載の回路基板を備える、半導体装置。
【請求項16】
請求項
14に記載の半導体チップパッケージを備える、半導体装置。
【請求項17】
カルボジイミド化合物及び無機充填材を混合して、(C)カルボジイミド化合物で表面処理された無機充填材を得る第一工程と、
(C)カルボジイミド化合物で表面処理された無機充填材、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤を混合する第二工程と、
を含む、樹脂組成物の製造方法
であって、
(C)成分の量が、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、55質量%以上であり、
(B)成分が、活性エステル系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤からなる群より選ばれる1種類以上を含み、
質量比(「活性エステル系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤の合計」/(C)成分)が、0.05以上、0.5以下である、樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及びその製造方法に関する。また、本発明は、前記の樹脂組成物を用いた硬化物、シート状積層材料、樹脂シート、回路基板、半導体チップパッケージ及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板及び半導体チップパッケージには、一般に、絶縁層が設けられる。例えば、回路基板の一種としてのプリント配線板には、絶縁層として層間絶縁層が設けられることがある。また、例えば、半導体チップパッケージには、絶縁層として再配線形成層が設けられることがある。これらの絶縁層は、樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物によって形成されうる(特許文献1~2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-136542号公報
【文献】特開2020-63392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、回路基板及び半導体チップパッケージの配線の高密度化が進行している。そこで、微細な配線を樹脂組成物で隙間なく埋め込み、半導体装置の高性能化及び高信頼性化を達成する観点から、樹脂組成物の最低溶融粘度を低くできる技術の開発が求められている。
【0005】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、低い最低溶融粘度を得ることができる樹脂組成物及びその製造方法;当該樹脂組成物の硬化物;当該樹脂組成物を含む、シート状積層材料及び樹脂シート;当該樹脂組成物の硬化物を含む回路基板、半導体チップパッケージ及び半導体装置;を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、エポキシ樹脂、硬化剤、及び、特定の表面処理を施された無機充填材を組み合わせて含む樹脂組成物が、前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
【0007】
[1] (A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び、(C)カルボジイミド化合物で表面処理された無機充填材、を含む、樹脂組成物。
[2] カルボジイミド化合物が、下記式(C-1)で表される構造単位を含有する、[1]に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式(C-1)において、Yは、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表す。)
[3] カルボジイミド化合物が、エチレン性不飽和結合を含有する、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] (C)成分の量が、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、50質量%以上である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[5] (B)成分が、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤からなる群より選ばれる1種類以上を含む、[1]~[4]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[6] (D)硬化促進剤を含む、[1]~[5]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[7] (E)熱可塑性樹脂を含む、[1]~[6]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[8] 2000poise未満の最低溶融粘度を有する、[1]~[7]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[9] 樹脂組成物を200℃にて90分間加熱して硬化物を得た場合に、当該硬化物が1%以上の破断点伸度を有する、[1]~[8]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[10] 樹脂組成物を170℃にて30分間加熱して硬化物を得て、当該硬化物に疎化処理を施した場合に、当該硬化物が300nm未満の算術平均粗さRaを有する、[1]~[9]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[11] 絶縁層形成用である、[1]~[10]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[12] [1]~[11]の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
[13] [1]~[11]の何れか1項に記載の樹脂組成物を含む、シート状積層材料。
[14] 支持体と、当該支持体上に形成された樹脂組成物層と、を備え、
樹脂組成物層が、[1]~[11]の何れか1項に記載の樹脂組成物を含む、樹脂シート。
[15] [1]~[11]の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、回路基板。
[16] [1]~[11]の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、半導体チップパッケージ。
[17] [15]に記載の回路基板を備える、半導体装置。
[18] [16]に記載の半導体チップパッケージを備える、半導体装置。
[19] カルボジイミド化合物及び無機充填材を混合して、(C)カルボジイミド化合物で表面処理された無機充填材を得る第一工程と、
(C)カルボジイミド化合物で表面処理された無機充填材、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤を混合する第二工程と、
を含む、樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低い最低溶融粘度を得ることができる樹脂組成物及びその製造方法;当該樹脂組成物の硬化物;当該樹脂組成物を含む、シート状積層材料及び樹脂シート;当該樹脂組成物の硬化物を含む回路基板、半導体チップパッケージ及び半導体装置;を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体チップパッケージの一例としてのFan-out型WLPを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して説明する。ただし、本発明は、下記に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施されうる。
【0011】
以下の説明において、化合物又は基についていう「置換基を有していてもよい」という用語は、該化合物又は基の水素原子が置換基で置換されていない場合、及び、該化合物又は基の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されている場合の双方を意味する。
【0012】
以下の説明において、用語「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸、メタクリル酸及びその組み合わせを包含する。また、用語「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、メタクリレート及びその組み合わせを包含する。
【0013】
以下の説明において、用語「誘電率」は、別に断らない限り比誘電率を表す。
【0014】
[樹脂組成物の概要]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び、(C)カルボジイミド化合物で表面処理された無機充填材、を組み合わせて含む。「(C)カルボジイミド化合物で表面処理された無機充填材」を、以下、「(C)処理充填材」ということがある。
【0015】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、低い最低溶融粘度を有することができる。また、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物によれば、通常は、機械的強度に優れる硬化物を得ることができ、例えば、破断点伸度が大きい硬化物を得ることができる。さらに、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物によれば、通常、粗化処理後の表面粗さを小さくすることが可能な硬化物を得ることができる。また、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、通常、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を小さくできる。
【0016】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物によって前記のように優れた効果が得られる仕組みを、本発明者は、下記のように推察する。ただし、本発明の範囲は、下記に説明する仕組みに制限されるものではない。
【0017】
カルボジイミド化合物で表面処理を施されたことにより、(C)処理充填材は、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤等の樹脂成分と高い混和性を有することができる。また、カルボジイミド化合物は、通常、(A)エポキシ樹脂と反応でき、さらに、(A)エポキシ樹脂と反応可能な(B)硬化剤等の成分とも反応できる。よって、カルボジイミド化合物で表面処理された(C)処理充填材は、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤を含む樹脂組成物において多くの成分と大きな相互作用を得ることができる。したがって、樹脂組成物が高い均一性を有することができるから、溶融状態において高い流動性を発揮でき、よって、最低溶融粘度を低くすることができる。さらに、樹脂組成物が高い均一性を有するので、局所的に組成が異なる部分が形成されることを抑制できる。よって、応力が加えられた場合に当該部分を起点とした破壊を抑制できるから、破断点伸度等の機械的強度を高めることができる。さらに、前記のように局所的に組成が異なる部分の形成を抑制できるので、粗化処理の際に粗化を高い水準で均一に進行させることができる。よって、粗化処理の際、通常は、大きな塊が除かれたり残留したりすることが抑制されるので、表面粗さを小さくすることが可能である。
【0018】
[(A)エポキシ樹脂]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、(A)成分としての(A)エポキシ樹脂を含む。(A)エポキシ樹脂は、エポキシ基を有する硬化性樹脂でありうる。
【0019】
(A)エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、イソシアヌラート型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂等が挙げられる。(A)エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
(A)エポキシ樹脂は、耐熱性に優れる硬化物を得る観点から、芳香族構造を含有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。芳香族構造とは、一般に芳香族と定義される化学構造であり、多環芳香族及び芳香族複素環をも含む。芳香族構造を含有するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビシキレノール型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するグリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、芳香族構造を有する線状脂肪族エポキシ樹脂、芳香族構造を有するブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、芳香族構造を有する脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、芳香族構造を有するスピロ環含有エポキシ樹脂、芳香族構造を有するシクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するトリメチロール型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するテトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0021】
樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。(A)エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0022】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物は、エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよい。
【0023】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0024】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0025】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「828EL」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、「604」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「ED-523T」(グリシロール型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-3950L」、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」、日本曹達社製の「JP-100」、「JP-200」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0027】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0028】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「HP-7200L」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3000FH」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂)、「ESN4100V」(ナフタレン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN375」(ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YX4000HK」、「YL7890」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7700」(フェノールアラルキル型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「WHR991S」(フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
(A)エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの質量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、好ましくは20:1~1:20、より好ましくは10:1~1:10、特に好ましくは7:1~1:7である。
【0030】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5,000g/eq.、より好ましくは60g/eq.~3,000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2,000g/eq.、特に好ましくは110g/eq.~1,000g/eq.である。エポキシ当量は、エポキシ基1当量あたりの樹脂の質量を表す。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0031】
(A)エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0032】
樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。(A)エポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0033】
樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。樹脂組成物の樹脂成分とは、樹脂組成物の不揮発成分のうち(C)処理充填材等の無機充填材を除いた成分を表す。(A)エポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0034】
(A)エポキシ樹脂と(C)処理充填剤との質量比((A)エポキシ樹脂/(C)処理充填材)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上であり、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.5以下、特に好ましくは0.2以下である。質量比((A)エポキシ樹脂/(C)処理充填材)が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0035】
[(B)硬化剤]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、(B)成分としての(B)硬化剤を含む。(B)硬化剤は、(A)エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させる機能を有しうる。(B)硬化剤には、別に断らない限り、上述した(A)成分に該当するものは含めない。(B)硬化剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
好ましい(B)硬化剤としては、例えば、活性エステル系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、チオール系硬化剤などが挙げられる。中でも、(B)硬化剤は、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤からなる群より選ばれる1種類以上を含むことが特に好ましい。
【0037】
活性エステル系硬化剤としては、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0038】
具体的には、活性エステル系硬化剤としては、ジシクロペンタジエン型活性エステル系硬化剤、ナフタレン構造を含むナフタレン型活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤が好ましく、中でもジシクロペンタジエン型活性エステル系硬化剤、及びナフタレン型活性エステル系硬化剤から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。ジシクロペンタジエン型活性エステル系硬化剤としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤が好ましい。
【0039】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、例えば、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「EXB-8000L」、「EXB-8000L-65M」、「EXB-8000L-65TM」、「HPC-8000L-65TM」、「HPC-8000」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H」、「HPC-8000H-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤として「HP-B-8151-62T」、「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150-60T」、「EXB-8150-62T」、「EXB-9416-70BK」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」、「EXB-8」(DIC社製);りん含有活性エステル系硬化剤として、「EXB9401」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);スチリル基及びナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤として「PC1300-02-65MA」(エア・ウォーター社製)等が挙げられる。
【0040】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、活性エステル系硬化剤の活性エステル基数は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上、特に好ましくは0.5以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは2以下である。「(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在する(A)エポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で割り算した値を全て合計した値を表す。また、「活性エステル系硬化剤の活性エステル基数」とは、樹脂組成物中に存在する活性エステル系硬化剤の不揮発成分の質量を活性エステル基当量で割り算した値を全て合計した値を表す。活性エステル系硬化剤の活性エステル基数が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0041】
樹脂組成物中の活性エステル系硬化剤の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。活性エステル系硬化剤の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0042】
樹脂組成物中の活性エステル系硬化剤の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。活性エステル系硬化剤の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0043】
活性エステル系硬化剤と(C)処理充填材との質量比(活性エステル系硬化剤/(C)処理充填材)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、特に好ましくは0.05以上、特に好ましくは0.1以上であり、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.3以下である。質量比(活性エステル系硬化剤/(C)処理充填材)が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0044】
シアネートエステル系硬化剤としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のシアネート基を有する化合物を用いうる。シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート))、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネートエステル系硬化剤、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネートエステル系硬化剤、これらシアネートエステル系硬化剤が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル系硬化剤)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0045】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、シアネートエステル系硬化剤のシアネート基数は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは1以下である。「シアネートエステル系硬化剤のシアネート基数」とは、樹脂組成物中に存在するシアネートエステル系硬化剤の不揮発成分の質量をシアネート基当量で割り算した値を全て合計した値を表す。シアネートエステル系硬化剤のシアネート基数が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0046】
樹脂組成物中のシアネートエステル系硬化剤の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。シアネートエステル系硬化剤の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0047】
樹脂組成物中のシアネートエステル系硬化剤の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。シアネートエステル系硬化剤の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0048】
シアネートエステル系硬化剤と(C)処理充填材との質量比(シアネートエステル系硬化剤/(C)処理充填材)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.05以上であり、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.3以下である。質量比(シアネートエステル系硬化剤/(C)処理充填材)が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0049】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、活性エステル系硬化剤の活性エステル基数及びシアネートエステル系硬化剤のシアネート基数の合計は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.5以上、特に好ましくは1以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは2以下である。活性エステル系硬化剤の活性エステル基数とシアネートエステル系硬化剤のシアネート基数との合計が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0050】
樹脂組成物中の活性エステル系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤の合計量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、特に好ましくは15質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。活性エステル系硬化剤とシアネートエステル系硬化剤の合計量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0051】
樹脂組成物中の活性エステル系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤の合計量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。活性エステル系硬化剤とシアネートエステル系硬化剤の合計量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0052】
活性エステル系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤の合計と(C)処理充填材との質量比(「活性エステル系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤の合計」/(C)処理充填材)は、好ましくは0.01上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上、特に好ましくは0.21以上であり、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.3以下である。質量比(「活性エステル系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤の合計」/(C)処理充填材)が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0053】
フェノール系硬化剤としては、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環に結合した水酸基を1分子中に1個以上、好ましくは2個以上有する化合物を用いうる。耐熱性及び耐水性の観点からは、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤が好ましい。また、密着性の観点からは、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び密着性を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤が好ましい。フェノール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-375」、「SN-395」、DIC社製の「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「LA-1356」、「TD2090」、「TD-2090-60M」等が挙げられる。
【0054】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、フェノール系硬化剤のフェノール性水酸基数は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上であり、好ましくは2以下、より好ましくは1以下、更に好ましくは0.5以下である。「フェノール性水酸基」とは、芳香環に結合した水酸基を表す。また、「フェノール系硬化剤のフェノール性水酸基数」とは、樹脂組成物中に存在するフェノール系硬化剤の不揮発成分の質量をフェノール性水酸基当量で割り算した値を全て合計した値を表す。フェノール系硬化剤のフェノール性水酸基数が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0055】
樹脂組成物中のフェノール系硬化剤の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。フェノール系硬化剤の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0056】
樹脂組成物中のフェノール系硬化剤の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。フェノール系硬化剤の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0057】
フェノール系硬化剤と(C)処理充填材との質量比(フェノール系硬化剤/(C)処理充填材)は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上であり、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.3以下である。質量比(フェノール系硬化剤/(C)処理充填材)が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0058】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、活性エステル系硬化剤の活性エステル基数及びフェノール系硬化剤のフェノール性水酸基数の合計は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上、特に好ましくは1以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは2以下である。活性エステル系硬化剤の活性エステル基数とフェノール系硬化剤のフェノール性水酸基数との合計が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0059】
樹脂組成物中の活性エステル系硬化剤及びフェノール系硬化剤の合計量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。活性エステル系硬化剤とフェノール系硬化剤の合計量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0060】
樹脂組成物中の活性エステル系硬化剤及びフェノール系硬化剤の合計量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。活性エステル系硬化剤とフェノール系硬化剤の合計量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0061】
活性エステル系硬化剤及びフェノール系硬化剤の合計と(C)処理充填材との質量比(「活性エステル系硬化剤及びフェノール系硬化剤の合計」/(C)処理充填材)は、好ましくは0.01上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上、特に好ましくは0.2以上であり、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.3以下である。質量比(「活性エステル系硬化剤及びフェノール系硬化剤の合計」/(C)処理充填材)が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0062】
カルボジイミド系硬化剤としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のカルボジイミド基を有する化合物を用いうる。カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサンビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)等の脂肪族ビスカルボジイミド;フェニレン-ビス(キシリルカルボジイミド)等の芳香族ビスカルボジイミド等のビスカルボジイミド;ポリヘキサメチレンカルボジイミド、ポリトリメチルヘキサメチレンカルボジイミド、ポリシクロヘキシレンカルボジイミド、ポリ(メチレンビスシクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(イソホロンカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミド;ポリ(フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(トリレンカルボジイミド)、ポリ(メチルジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(キシリレンカルボジイミド)、ポリ(テトラメチルキシリレンカルボジイミド)、ポリ(メチレンジフェニレンカルボジイミド)、ポリ[メチレンビス(メチルフェニレン)カルボジイミド]等の芳香族ポリカルボジイミド等のポリカルボジイミドが挙げられる。カルボジイミド系硬化剤の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル社製の「カルボジライトV-02B」、「カルボジライトV-03」、「カルボジライトV-04K」、「カルボジライトV-07」及び「カルボジライトV-09」;ラインケミー社製の「スタバクゾールP」、「スタバクゾールP400」、「ハイカジル510」等が挙げられる。
【0063】
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上の酸無水物基を有する化合物を用いうる。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系硬化剤の市販品としては、例えば、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」、「MTA-15」、「DDSA」、「OSA」;三菱ケミカル社製の「YH-306」、「YH-307」;日立化成社製の「HN-2200」、「HN-5500」;クレイバレイ社製「EF-30」、「EF-40」「EF-60」、「EF-80」等が挙げられる。
【0064】
アミン系硬化剤としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のアミノ基を有する化合物を用いうる。アミン系硬化剤としては、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、芳香族アミン類が好ましい。アミン系硬化剤は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系硬化剤の市販品としては、例えば、セイカ社製「SEIKACURE-S」;日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」;三菱ケミカル社製の「エピキュアW」;住友精化社製「DTDA」等が挙げられる。
【0065】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OP100D」、「ODA-BOZ」;昭和高分子社製の「HFB2006M」;四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」などが挙げられる。
【0066】
チオール系硬化剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0067】
(B)硬化剤の活性基当量は、好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~500g/eq.、特に好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。活性基当量は、活性基1当量あたりの樹脂の質量を表す。
【0068】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、(B)硬化剤の活性基数は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.5以上、特に好ましくは1以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下である。「(B)硬化剤の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する(B)硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で割り算した値を全て合計した値を表す。(B)硬化剤の活性基数が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0069】
樹脂組成物中の(B)硬化剤の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、特に好ましくは15質量%以上であり、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。(B)硬化剤の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0070】
樹脂組成物中の(B)硬化剤の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは50質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。(B)硬化剤の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0071】
(B)硬化剤と(C)処理充填材との質量比((B)硬化剤/(C)処理充填材)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.18以上、特に好ましくは0.22であり、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.3以下である。質量比((B)硬化剤/(C)処理充填材)が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0072】
[(C)カルボジイミド化合物で表面処理された無機充填材(処理充填材)]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、(C)成分としての(C)処理充填材を含む。(C)処理充填材は、カルボジイミド化合物で表面処理された無機充填材である。(C)処理充填材は、通常、粒子の状態で樹脂組成物に含まれる。
【0073】
(C)処理充填材は、通常、無機化合物の粒子としての無機充填材を含し、この無機充填材の表面にカルボジイミド化合物を有しうる。カルボジイミド化合物は、共通結合又はイオン結合等の化学結合によって無機充填材に結合していてもよく、物理吸着によって無機充填材に付着していてもよい。また、カルボジイミド化合物は、無機充填材の表面に直接に結合又は付着していてもよく、任意の表面処理剤等の他の成分を介して間接的に結合又は付着していてもよい。ここで、無機充填材の表面にカルボジイミド化合物が「直接に」結合又は付着する、とは、無機充填材の表面とカルボジイミド化合物との間に他の成分が無いことを表す。また、無機充填材の表面にカルボジイミド化合物が「間接的に」結合又は付着する、とは、無機充填材の表面とカルボジイミド化合物との間に他の成分があることを表す。
【0074】
(C)処理充填材が含む無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。無機充填材の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカ、アルミナが好適であり、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては球形シリカが好ましい。無機充填材の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いても負い。
【0075】
無機充填材は、内部に空孔を有する中空無機充填材と、内部に空孔を有さない中実無機充填材とに分類できる。無機充填材としては、中空無機充填材のみを用いてもよく、中実無機充填材のみを用いてもよく、中空無機充填材と中実無機充填材とを組み合わせて用いてもよい。中空無機充填材を用いる場合、通常は、樹脂組成物の硬化物の比誘電率を特に低くできる。
【0076】
中空無機充填材は、空孔を有するので、通常、0体積%より大きい空孔率を有する。樹脂組成物の硬化物の比誘電率を低くする観点から、中空無機充填材の空孔率は、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、特に好ましくは15体積%以上である。また、樹脂組成物の硬化物の機械的強度の観点から、中空無機充填材の空孔率は、好ましくは95体積%以下、より好ましくは90体積%以下、特に好ましくは85体積%以下である。
【0077】
粒子の空孔率P(体積%)は、粒子の外面を基準とした粒子全体の体積に対する粒子内部に1個又は2個以上存在する空孔の合計体積の体積基準割合(空孔の合計体積/粒子の体積)として定義される。この空孔率Pは、粒子の実際の密度の測定値DM(g/cm3)、及び、粒子を形成する材料の物質密度の理論値DT(g/cm3)を用いて、下記式(M1)により算出できる。
【0078】
【0079】
中空無機充填材は、例えば、特許第5940188号公報及び特許第5864299号公報に記載の方法又はこれに準ずる方法により製造してもよい。
【0080】
(D)無機充填材の市販品としては、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」、「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;デンカ社製の「UFP-30」、「DAW-03」、「FB-105FD」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;日揮触媒化成社製「エスフェリークBA-1」、「BA-S」;太平洋セメント社製「MG-005」、「セルフィアーズ」などが挙げられる。
【0081】
無機充填材の平均粒径は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは0.2μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。
【0082】
無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出しうる。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0083】
無機充填材の比表面積は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.1m2/g以上、より好ましくは0.5m2/g以上、さらに好ましくは1m2/g以上、特に好ましくは3m2/g以上であり、好ましくは100m2/g以下、より好ましくは70m2/g以下、さらに好ましくは50m2/g以下、特に好ましくは40m2/g以下である。無機充填材の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで測定できる。
【0084】
無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
カルボジイミド化合物は、1分子中にカルボジイミド基(-N=C=N-)を1個以上有する化合物を表す。カルボジイミド化合物が1分子中に有するカルボジイミド基の数は、2個以上が好ましい。カルボジイミド化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
カルボジイミド化合物は、下記式(C-1)で表される構造単位を含有することが好ましい。
【0087】
【0088】
式(C-1)において、Yは、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表す。Yにおける2価の炭化水素基の炭素原子数は、通常1以上、好ましくは2以上であり、通常30以下である。2価の炭化水素基は、2価の飽和炭化水素基であってもよく、2価の不飽和炭化水素基であってもよい。2価の不飽和炭化水素基とは、別に断らない限り、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合又は芳香族炭化水素環を有する炭化水素基を表し、直鎖状、分枝鎖状及び環状のいずれも包含する。
【0089】
Yにおける好ましい2価の炭化水素基としては、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、及びこれらを組み合わせた基が挙げられる。
【0090】
Yにおけるアルキレン基の炭素原子数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~10、更に好ましくは1~6、更に好ましくは1~4、更に好ましくは1~3である。該炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。アルキレン基の好適な例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられる。
【0091】
Yにおけるシクロアルキレン基の炭素原子数は、好ましくは3~20、より好ましくは3~12、更に好ましくは3~6である。該炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。シクロアルキレン基の好適な例としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基が挙げられる。
【0092】
Yにおけるアリーレン基は、芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子を2個除いた基を表す。アリーレン基の炭素原子数は、好ましくは6~24、より好ましくは6~18、更に好ましくは6~14、更に好ましくは6~10である。該炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。アリーレン基の好適な例としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基が挙げられる。
【0093】
Yにおける置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、アルキル-オキシ基、アルケニル-オキシ基、アリール-オキシ基、アルキル-オキシ-カルボニル基、アルケニル-オキシ-カルボニル基、アリール-オキシ-カルボニル基、アルキル-カルボニル-オキシ基、アルケニル-カルボニル-オキシ基、アリール-カルボニル-オキシ基等が挙げられる。中でも、Yにおける2価の炭化水素基は、置換基を有さないことが好ましい。
【0094】
より好ましくは、Yは、置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の2価の飽和炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の2価の不飽和炭化水素基を示す。更に好ましくは、Yは、置換基を有していてもよく且つ環構造(例えばシクロアルカン環、ベンゼン環、及びナフタレン環から選ばれる環構造)を有する炭素原子数2~30の2価の飽和炭化水素基、又は置換基を有していてもよく且つ環構造(例えばシクロアルカン環、ベンゼン環、及びナフタレン環から選ばれる環構造)を有する炭素原子数2~30の2価の不飽和炭化水素基を表す。
【0095】
特に好ましくは、Yは、下記式(C-2)で表される2価の基を表す。
【0096】
【0097】
(式(C-2)において、
Ya、Yb及びYcは、それぞれ独立して、単結合、又はC(Ry)2を表し;
Ryは、それぞれ独立して、水素原子、又はメチル基を表し;
環Y1及び環Y2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素原子数4~10のシクロアルカン環、置換基を有していてもよいベンゼン環、又は、置換基を有していてもよいナフタレン環を表し;
nyは、0又は1を表し;
*は、結合部位を表す。)
【0098】
式(C-2)において、Ya、Yb及びYcは、それぞれ独立して、単結合、又はC(Ry)2を表す。好ましくは、Ya及びYcが単結合であり且つYbがC(Ry)2を表す。Ryは、それぞれ独立して、水素原子、又はメチル基を示し、好ましくは水素原子である。
【0099】
式(C-2)において、環Y1及び環Y2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素原子数4~10のシクロアルカン環、置換基を有していてもよいベンゼン環、又は、置換基を有していてもよいナフタレン環を表す。好ましくは、環Y1及び環Y2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素原子数4~10のシクロアルカン環を表す。炭素原子数4~10のシクロアルカン環としては、例えば、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロノナン環、シクロデカン環等の単環系の飽和炭化水素環;ビシクロ[2.2.1]ヘプタン環(ノルボルナン環)、ビシクロ[4.4.0]デカン環(デカリン環)、ビシクロ[5.3.0]デカン環、ビシクロ[4.3.0]ノナン環(ヒドリンダン環)、ビシクロ[3.3.0]オクタン環、ビシクロ[3.3.1]ノナン環等の二環系の飽和炭化水素環;トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環(テトラヒドロジシクロペンタジエン環)、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン環(アダマンタン環)等の三環系の飽和炭化水素環等が挙げられる。より好ましくは、環Y1及び環Y2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいシクロヘキサン環を表す。シクロアルカン環、ベンゼン環及びナフタレン環における置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリール-アルキル基(アリール基で置換されたアルキル基)、アルキル-アリール基(アルキル基で置換されたアリール基)、アルキル-オキシ基、アルケニル-オキシ基、アリール-オキシ基、アルキル-オキシ-カルボニル基、アルケニル-オキシ-カルボニル基、アリール-オキシ-カルボニル基、アルキル-カルボニル-オキシ基、アルケニル-カルボニル-オキシ基、アリール-カルボニル-オキシ基等が挙げられる。中でも、環Y1及び環Y2は、無置換のシクロヘキサン環が特に好ましい。
【0100】
Yの具体例としては、式(Y1)~(Y14)で表される2価の基が挙げられ、式(Y1)で表される2価の基が特に好ましい。
【0101】
【0102】
(式(Y1)~(Y14)中、*は、結合部位を示す。)
【0103】
好ましい一例において、カルボジイミド化合物が含有する式(C-1)で表される構造単位の割合は、カルボジイミド化合物の分子全体の質量100質量%に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、90質量%以上でもよい。カルボジイミド化合物は、末端構造を除いて、式(C-1)で表される構造単位から実質的になってもよい。カルボジイミド化合物の末端構造としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。
【0104】
カルボジイミド化合物が、エチレン性不飽和結合を含有していてもよく、エチレン性不飽和結合を含有していなくてもよい。エチレン性不飽和結合を含有するカルボジイミド化合物を用いた場合、樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度を効果的に高くできる。また、エチレン性不飽和結合を含有しないカルボジイミド化合物を用いた場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くできる。
【0105】
エチレン性不飽和結合を含有するカルボジイミド化合物は、エチレン性不飽和結合を含むラジカル重合性基を有しうる。ラジカル重合性基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、3-シクロヘキセニル基、3-シクロペンテニル基、2-ビニルフェニル基、3-ビニルフェニル基、4-ビニルフェニル基等の不飽和炭化水素基;アクリロイル基、メタクリロイル基、マレイミド基(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル基)等のα,β-不飽和カルボニル基等が挙げられる。カルボジイミド化合物は、ラジカル重合性基を1個有していてもよく、2個以上有していてもよい。
【0106】
カルボジイミド化合物は、ウレタン結合(-O-CO-NH-)を含有していてもよい。カルボジイミド化合物が1分子中に含有するウレタン結合の数は、1個でもよく、2個以上でもよい。
【0107】
エチレン性不飽和結合を含有カルボジイミド化合物の好ましい例としては、下記式(C-3)で表される化合物が挙げられる。
【0108】
【0109】
(式(C-3)において、
Rは、それぞれ独立して、水素原子、又はメチル基を表し;
X1は、それぞれ独立して、カルボニル基、メチレン基、フェニレン基、又はフェニレン-メチレン基を表し;
X2は、それぞれ独立して、炭素原子数2~4の2価の飽和炭化水素基を表し;
Zは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素原子数2~300の2価の飽和炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素原子数2~300の2価の不飽和炭化水素基を表し;
aは、それぞれ独立して、0、又は1以上の整数を表し;
bは、それぞれ独立して、1以上の整数を表し;
cは、それぞれ独立して、1以上の整数を表し;
dは、0、又は1以上の整数を表し;、
Yは、それぞれ独立して、上述した基を表す。a単位、b単位、c単位及びd単位は、それぞれ、単位毎に同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
【0110】
式(C-3)において、Rは、それぞれ独立して、水素原子、又はメチル基を示す。
【0111】
式(C-3)において、X1は、それぞれ独立して、カルボニル基、メチレン基、フェニレン基、又はフェニレン-メチレン基(結合方向は特に限定されないが、フェニレン側が「R-C」におけるCと結合していることが好ましい)を表す。好ましくは、X1は、それぞれ独立して、メチレン基、又はカルボニル基である。フェニレン-メチレン基は、1,2-フェニレン-メチレン基、1,3-フェニレン-メチレン基、及び1,4-フェニレン-メチレン基を含む。
【0112】
式(C-3)において、X2は、それぞれ独立して、炭素原子数2~4の2価の飽和炭化水素基を表す。2価の飽和炭化水素基は、直鎖状でもよく、分枝鎖状でもよく、環状でもよい。炭素原子数2~4の2価の飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等の炭素原子数2~4の直鎖アルキレン基;エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、エチルメチルメチレン基等の炭素原子数2~4の分枝鎖アルキレン基等が挙げられる。X2は、一実施形態において、それぞれ独立して、好ましくは、炭素原子数2又は3の2価の飽和炭化水素基であり、より好ましくは、エチレン基(-CH2-CH2-)を示す。
【0113】
式(C-3)において、Zは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素原子数2~300の2価の飽和炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素原子数2~300の2価の不飽和炭化水素基を表す。好ましくは、Zは、それぞれ独立して、炭素原子数2~300の2価の飽和炭化水素基、又は炭素原子数2~300の2価の不飽和炭化水素基を表す。より好ましくは、Zは、それぞれ独立して、下記式(Z1)~(Z8)からなる群より選ばれる構造単位を有する炭素原子数300以下の2価の炭化水素基を表す。更に好ましくは、Zは、それぞれ独立して、式(Z1)~(Z8)からなる群より選ばれる構造単位からなる炭素原子数300以下の2価の炭化水素基を表す。
【0114】
【0115】
Zは、それぞれ独立して、式(Z1)で表される構造単位を有する炭素原子数300以下の2価の炭化水素基を表すことが更に好ましく;式(Z1)~(Z8)から選ばれる構造単位からなり、且つ、少なくとも式(Z1)で表される構造単位を有する炭素原子数300以下の2価の炭化水素基を表すことが更に好ましい。中でも、Zは、下記式(Z1’)で表される炭素原子数300以下の2価の炭化水素基を表すことが特に好ましい。
【0116】
【0117】
(式(Z1’)において、nzは、1以上の整数を示し;*は、結合部位を示す。)
【0118】
式(C-3)において、aは、それぞれ独立して、0、又は1以上の整数を表し、好ましくは、0、又は1~10の整数であり、より好ましくは、0、又は1である。
【0119】
式(C-3)において、bは、それぞれ独立して、1以上の整数を示し、好ましくは、1~100の整数であり、より好ましくは、1~10の整数である。
【0120】
式(C-3)において、cは、それぞれ独立して、1以上の整数を示し、好ましくは、1~100の整数であり、より好ましくは、1~10の整数であり、さらに好ましくは、1である。
【0121】
式(C-3)において、dは、それぞれ独立して、0、又は1以上の整数を示し、好ましくは、0、又は1~100の整数であり、より好ましくは、0、又は1~10の整数である。
【0122】
カルボジイミド化合物は、その製法に由来して、分子中にイソシアネート基(-N=C=O)を含有する場合がある。カルボジイミド化合物中のイソシアネート基の含有量(「NCO含有量」ともいう。)は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、さらにより好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下又は0.5質量%以下である。
【0123】
カルボジイミド化合物の重量平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは600以上、更に好ましくは700以上、更に好ましくは800以上、更に好ましくは900以上、更に好ましくは1000以上であり、好ましくは10,000以下、より好ましくは8,000以下、更に好ましくは7,000以下、更に好ましくは6,000以下である。カルボジイミド化合物の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)で測定できる。
【0124】
カルボジイミド化合物は、市販品を使用してもよい。市販のカルボジイミド化合物としては、例えば、日清紡ケミカル製のカルボジライト(登録商標)V-02B、V-03、V-04K、V-07及びV-09;ラインケミー社製のスタバクゾール(登録商標)P、P400、及びハイカジル510が挙げられる。また、カルボジイミド化合物は、ケイ素を含有しないことが好ましい。
【0125】
カルボジイミド化合物による(C)処理充填材の表面処理の程度は、本発明の効果を顕著に得る観点から、特定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材を表面処理するカルボジイミド化合物の量は、表面処理前の無機充填材100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0126】
(C)処理充填材は、カルボジイミド化合物に組み合わせて、任意の表面処理剤で表面処理されていてもよい。例えば、(C)処理充填材は、無機充填材をカルボジイミド化合物で表面処理した後に、任意の表面処理剤で表面処理されたものであってもよい。また、(C)処理充填材は、無機充填材を任意の表面処理剤で表面処理した後に、カルボジイミド化合物で表面処理されたものであってもよい。さらに、(C)処理充填材は、無機充填材がカルボジイミド化合物及び任意の表面処理剤で同時に表面処理されたものであってもよい。本発明の効果を顕著に得る観点から、(C)処理充填材は、無機充填材を任意の表面処理剤で表面処理した後に、カルボジイミド化合物で表面処理されたものが好ましい。
【0127】
任意の表面処理剤としては、カルボジイミド化合物以外の表面処理剤を用いることができ、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤等のシラン系カップリング剤;アルコキシシラン;オルガノシラザン化合物;チタネート系カップリング剤;等が挙げられる。
【0128】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。任意の表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。任意の表面処理剤の中でも、ケイ素を含有する表面処理剤が好ましく、シラン系カップリング剤がより好ましい。
【0129】
任意の表面処理剤による(C)処理充填材の表面処理の程度は、本発明の効果を顕著に得る観点から、特定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材を表面処理する任意の表面処理剤の量は、表面処理前の無機充填材100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。
【0130】
カルボジイミド化合物と任意の表面処理剤とを組み合わせて表面処理に用いる場合、本発明の効果を顕著に得る観点から、カルボジイミド化合物と任意の表面処理剤との質量比(任意の表面処理剤/カルボジイミド化合物)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上、特に好ましくは1以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは5以下である。
【0131】
カルボジイミド化合物及び任意の表面処理剤といった表面処理剤による表面処理の程度は、(C)処理充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。(C)処理充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.05mg/m2以上がより好ましく、0.1mg/m2以上がさらに好ましく、1.0mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下がさらに好ましい。
【0132】
(C)処理充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、(C)処理充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。詳細には、溶剤として十分な量のMEKを(C)処理充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、例えば、堀場製作所社製「EMIA-320V」を使用できる。具体的な操作は、例えば、後述する実施例の<単位面積当たりのカーボン量の測定>で説明する方法を採用しうる。
【0133】
樹脂組成物中の(C)処理充填材の量(質量%)は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。(C)処理充填材の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0134】
樹脂組成物中の(C)処理充填材の量(体積%)は、樹脂組成物の不揮発成分100体積%に対して、好ましくは30体積%以上、より好ましくは40体積%以上、更に好ましくは50体積%以上であり、好ましくは80体積%以下、より好ましくは70体積%以下、更に好ましくは60体積%以下である。(C)処理充填材の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度を効果的に低くでき、更に通常は、当該樹脂組成物の硬化物の破断点伸度等の機械的強度、粗化処理後の表面粗さ、並びに、比誘電率及び誘電正接等の誘電特性を特に良好にできる。
【0135】
[(D)硬化促進剤]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、(D)硬化促進剤を更に含んでいてもよい。(D)成分としての(D)硬化促進剤には、上述した(A)~(C)成分に該当するものは含めない。(D)硬化促進剤は、(B)エポキシ樹脂の硬化を促進させる硬化触媒としての機能を有する。
【0136】
(D)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、ウレア系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤等が挙げられる。中でも、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。(D)硬化促進剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0137】
リン系硬化促進剤としては、例えば、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムラウレート、ビス(テトラブチルホスホニウム)ピロメリテート、テトラブチルホスホニウムハイドロジェンヘキサヒドロフタレート、テトラブチルホスホニウム2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノラート、ジ-tert-ブチルジメチルホスホニウムテトラフェニルボレート等の脂肪族ホスホニウム塩;メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、プロピルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、p-トリルトリフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラp-トリルボレート、トリフェニルエチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(3-メチルフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(2-メトキシフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等の芳香族ホスホニウム塩;トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン等の芳香族ホスフィン・ボラン複合体;トリフェニルホスフィン・p-ベンゾキノン付加反応物等の芳香族ホスフィン・キノン付加反応物;トリブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、ジ-tert-ブチル(2-ブテニル)ホスフィン、ジ-tert-ブチル(3-メチル-2-ブテニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の脂肪族ホスフィン;ジブチルフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリス(4-エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチル-4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル等の芳香族ホスフィン等が挙げられる。
【0138】
ウレア系硬化促進剤としては、例えば、1,1-ジメチル尿素;1,1,3-トリメチル尿素、3-エチル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロヘキシル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロオクチル-1,1-ジメチル尿素等の脂肪族ジメチルウレア;3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(2-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジメチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-イソプロピルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メトキシフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-ニトロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-メトキシフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-クロロフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、N,N-(1,4-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)、N,N-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)〔トルエンビスジメチルウレア〕等の芳香族ジメチルウレア等が挙げられる。
【0139】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。
【0140】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。イミダゾール系硬化促進剤の市販品としては、例えば、四国化成工業社製の「1B2PZ」、「2E4MZ」、「2MZA-PW」、「2MZ-OK」、「2MA-OK」、「2MA-OK-PW」、「2PHZ」、「2PHZ-PW」、「Cl1Z」、「Cl1Z-CN」、「Cl1Z-CNS」、「C11Z-A」;三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0141】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0142】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられる。アミン系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、味の素ファインテクノ社製の「MY-25」等が挙げられる。
【0143】
樹脂組成物中の(D)硬化促進剤の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0質量%であってもよく、0質量%より大きくてもよく、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、更に好ましくは0.03質量%以上であり、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。
【0144】
樹脂組成物中の(D)硬化促進剤の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、0質量%であってもよく、0質量%より大きくてもよく、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0145】
[(E)熱可塑性樹脂]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、(E)熱可塑性樹脂を更に含んでいてもよい。(E)成分としての(E)熱可塑性樹脂には、上述した(A)~(D)成分に該当するものは含めない。
【0146】
(E)熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。(E)熱可塑性樹脂は、1種類単独で用いてもよく、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0147】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」、「YL7482」及び「YL7891BH30」;等が挙げられる。
【0148】
ポリイミド樹脂の具体例としては、信越化学工業社製「SLK-6100」、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」等が挙げられる。
【0149】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」;積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ;等が挙げられる。
【0150】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリプロピレン、エチレン-プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィン系重合体等が挙げられる。
【0151】
ポリブタジエン樹脂としては、例えば、水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂、ヒドロキシ基含有ポリブタジエン樹脂、フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂、カルボキシ基含有ポリブタジエン樹脂、酸無水物基含有ポリブタジエン樹脂、エポキシ基含有ポリブタジエン樹脂、イソシアネート基含有ポリブタジエン樹脂、ウレタン基含有ポリブタジエン樹脂、ポリフェニレンエーテル-ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。
【0152】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0153】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0154】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0155】
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、SABIC製「NORYL SA90」等が挙げられる。ポリエーテルイミド樹脂の具体例としては、GE社製の「ウルテム」等が挙げられる。
【0156】
ポリカーボネート樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂の具体例としては、三菱瓦斯化学社製の「FPC0220」、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「スミプロイK」等が挙げられる。
【0157】
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0158】
(E)熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5,000より大きく、より好ましくは8,000以上、さらに好ましくは10,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは70,000以下、さらに好ましくは60,000以下、特に好ましくは50,000以下である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0159】
樹脂組成物中の(E)熱可塑性樹脂の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0質量%であってもよく、0質量%より大きくてもよく、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
【0160】
樹脂組成物中の(E)熱可塑性樹脂の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、0質量%であってもよく、0質量%より大きくてもよく、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0161】
[(F)ラジカル重合性化合物]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、(F)任意のラジカル重合性化合物を更に含んでいてもよい。(F)成分としての(F)ラジカル重合性化合物には、上述した(A)~(E)成分に該当するものは含めない。(F)ラジカル重合性化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0162】
(F)ラジカル重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を含有しうる。よって、(F)ラジカル重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を含むラジカル重合性基を有しうる。ラジカル重合性基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、3-シクロヘキセニル基、3-シクロペンテニル基、2-ビニルフェニル基、3-ビニルフェニル基、4-ビニルフェニル基等の不飽和炭化水素基;アクリロイル基、メタクリロイル基、マレイミド基(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル基)等のα,β-不飽和カルボニル基等が挙げられる。(F)ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性基を2個以上有することが好ましい。
【0163】
(F)ラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物、スチレン系ラジカル重合性化合物、アリル系ラジカル重合性化合物、マレイミド系ラジカル重合性化合物などが挙げられる。
【0164】
(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物は、例えば、1個以上、好ましくは2個以上のアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有する化合物である。(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物としては、例えば、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン-1,3-ジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの低分子量(分子量1000未満)の脂肪族(メタ)アクリル酸エステル化合物;ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、3,6,9-トリオキサウンデカン-1,11-ジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートなどの低分子量(分子量1000未満)のエーテル含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;トリス(3-ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートなどの低分子量(分子量1000未満)のイソシアヌレート含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;(メタ)アクリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂などの高分子量(分子量1000以上)のアクリル酸エステル化合物などが挙げられる。(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物の市販品としては、例えば、新中村化学工業社製の「A-DOG」(ジオキサングリコールジアクリレート)、共栄社化学社製の「DCP-A」(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)、「DCP」(トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート)、日本化薬株式会社の「KAYARAD R-684」(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)、「KAYARAD R-604」(ジオキサングリコールジアクリレート)、SABICイノベーティブプラスチックス社製の「SA9000」、「SA9000-111」(メタクリル変性ポリフェニレンエーテル)などが挙げられる。
【0165】
スチレン系ラジカル重合性化合物は、例えば、芳香族炭素原子に直接結合した1個以上、好ましくは2個以上のビニル基を有する化合物である。スチレン系ラジカル重合性化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、2,4-ジビニルトルエン、2,6-ジビニルナフタレン、1,4-ジビニルナフタレン、4,4’-ジビニルビフェニル、1,2-ビス(4-ビニルフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ビニルフェニル)プロパン、ビス(4-ビニルフェニル)エーテルなどの低分子量(分子量1000未満)のスチレン系化合物;ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル樹脂、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体などの高分子量(分子量1000以上)のスチレン系化合物などが挙げられる。スチレン系ラジカル重合性化合物の市販品としては、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ODV-XET(X03)」、「ODV-XET(X04)」、「ODV-XET(X05)」(スチレン-ジビニルベンゼン共重合体)、三菱ガス化学社製の「OPE-2St 1200」、「OPE-2St 2200」(ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル樹脂)が挙げられる。
【0166】
アリル系ラジカル重合性化合物は、例えば、1個以上、好ましくは2個以上のアリル基を有する化合物である。アリル系ラジカル重合性化合物としては、例えば、ジフェン酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジアリル、2,3-ナフタレンカルボン酸ジアリルなどの芳香族カルボン酸アリルエステル化合物;1,3,5-トリアリルイソシアヌレート、1,3-ジアリル-5-グリシジルイソシアヌレートなどのイソシアヌル酸アリルエステル化合物;2,2-ビス[3-アリル-4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパンなどのエポキシ含有芳香族アリル化合物;ビス[3-アリル-4-(3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン-3-イル)フェニル]メタンなどのベンゾオキサジン含有芳香族アリル化合物;1,3,5-トリアリルエーテルベンゼンなどのエーテル含有芳香族アリル化合物;ジアリルジフェニルシランなどのアリルシラン化合物などが挙げられる。アリル系ラジカル重合性化合物の市販品としては、例えば、日本化成社製の「TAIC」(1,3,5-トリアリルイソシアヌレート)、日触テクノファインケミカル社製の「DAD」(ジフェン酸ジアリル)、和光純薬工業社製の「TRIAM-705」(トリメリット酸トリアリル)、日本蒸留工業社製の商品名「DAND」(2,3-ナフタレンカルボン酸ジアリル)、四国化成工業社製「ALP-d」(ビス[3-アリル-4-(3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン-3-イル)フェニル]メタン)、日本化薬社製の「RE-810NM」(2,2-ビス[3-アリル-4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパン)、四国化成社製の「DA-MGIC」(1,3-ジアリル-5-グリシジルイソシアヌレート)などが挙げられる。
【0167】
マレイミド系ラジカル重合性化合物は、例えば、1個以上、好ましくは2個以上のマレイミド基を有する化合物である。マレイミド系ラジカル重合性化合物は、脂肪族アミン骨格を含む脂肪族マレイミド化合物であっても、芳香族アミン骨格を含む芳香族マレイミド化合物であってもよい。マレイミド系ラジカル重合性化合物の市販品としては、例えば、信越化学工業社製の「SLK-2600」、デジクナーモレキュールズ社製の「BMI-1500」、「BMI-1700」、「BMI-3000J」、「BMI-689」、「BMI-2500」(ダイマージアミン構造含有マレイミド化合物)、デジクナーモレキュールズ社製の「BMI-6100」(芳香族マレイミド化合物)、日本化薬社製の「MIR-5000-60T」、「MIR-3000-70MT」(ビフェニルアラルキル型マレイミド化合物)、ケイ・アイ化成社製の「BMI-70」、「BMI-80」、大和化成工業社製「BMI-2300」、「BMI-TMH」などが挙げられる。また、マレイミド系ラジカル重合性化合物として、発明協会公開技報公技番号2020-500211号に開示されているマレイミド樹脂(インダン環骨格含有マレイミド化合物)を用いてもよい。
【0168】
(F)ラジカル重合性化合物のエチレン性不飽和結合当量は、好ましくは20g/eq.~3,000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~2,500g/eq.、さらに好ましくは70g/eq.~2,000g/eq.、特に好ましくは90g/eq.~1,500g/eq.である。エチレン性不飽和結合当量は、エチレン性不飽和結合1当量あたりのラジカル重合性化合物の質量を表す。
【0169】
(F)ラジカル重合性化合物の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは40,000以下、より好ましくは10,000以下、さらに好ましくは5,000以下、特に好ましくは3,000以下である。下限は、特に限定されるものではないが、例えば、150以上などとしうる。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0170】
樹脂組成物中の(F)ラジカル重合性化合物の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、0質量%であってもよく、0質量%より大きくてもよく、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
【0171】
樹脂組成物中の(F)ラジカル重合性化合物の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、0質量%であってもよく、0質量%より大きくてもよく、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0172】
[(G)任意の添加剤]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として(G)任意の添加剤を更に含んでいてもよい。(G)任意の添加剤としては、例えば、ゴム粒子等の有機充填材;有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤、が挙げられる。(G)任意の添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0173】
[(H)溶剤]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、上述した(A)~(G)成分といった不揮発成分に組み合わせて、任意の揮発性成分として(H)溶剤を更に含んでいてもよい。(H)溶剤としては、通常、有機溶剤を用いる。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、アニソール等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。(H)溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0174】
(H)溶剤の量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物の全成分100質量%に対して、例えば、60質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下等でありえ、0質量%であってもよい。
【0175】
[樹脂組成物の製造方法]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、
カルボジイミド化合物及び無機充填材を混合して(C)処理充填材を得る第一工程と、
(C)処理充填材、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤を混合する第二工程と、
を含む製造方法によって、製造できる。
【0176】
第一工程は、カルボジイミド化合物及び無機充填材を混合することを含む。カルボジイミド化合物及び無機充填材を混合することにより、無機充填材がカルボジイミド化合物によって表面処理されるので、(C)処理充填材を得ることができる。
【0177】
カルボジイミド化合物と混合される前の無機充填材は、任意の表面処理剤によって表面処理されていなくてもよく、任意の表面処理剤によって表面処理されていてもよい。よって、第一工程は、カルボジイミド化合物及び無機充填材を混合する前に、無機充填材と任意の表面処理剤とを混合することを含んでいてもよい。また、第一工程は、カルボジイミド化合物及び無機充填材を混合した後に、無機充填材と任意の表面処理剤とを混合することを含んでいてもよい。さらに、第一工程は、カルボジイミド化合物、無機充填材及び任意の表面処理剤を同時に混合することを含んでいてもよい。
【0178】
カルボジイミド化合物及び無機充填材の混合は、乾式法によって行ってもよく、湿式法によって行ってもよい。乾式法は、溶剤を含まない系においてカルボジイミド化合物及び無機充填材を混合する方法を表す。また、湿式法は、溶剤を含む系においてカルボジイミド化合物及び無機充填材を混合する方法を表す。溶剤としては、例えば、(H)溶剤として例示したものからカルボジイミド化合物を溶解しうるものを選択して用いうる。湿式法を採用する場合、カルボジイミド化合物と溶剤とを混合した後で、更に無機充填材を混合してもよい。また、無機充填材と溶剤とを混合した後で、更にカルボジイミド化合物を混合してもよい。
【0179】
例えば、無機充填材にカルボジイミド化合物を噴霧しながら当該無機充填材を攪拌することにより、カルボジイミド化合物及び無機充填材を混合して、(C)処理充填材を得てもよい。前記の混合は、例えば、0℃~50℃の温度条件において行いうる。
【0180】
(C)処理充填材を得た後で、その(C)処理充填材と(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤とを混合する第二工程を行って、樹脂組成物を得ることができる。また、(D)~(H)成分等の任意の成分を含む樹脂組成物を製造する場合には、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)処理充填材に組み合わせて任意の成分を混合してもよい。混合は、一部又は全部を同時に混合してもよく、順に混合してもよい。各成分を混合する過程で、温度を適切に設定するために、一時的に又は終始にわたって、加熱及び/又は冷却を行ってもよい。さらに、各成分を混合する過程において、撹拌又は振盪を行ってもよい。
【0181】
[樹脂組成物の物性]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、低い最低溶融粘度を有することができる。例えば、60℃から200℃までの温度範囲において、昇温速度5℃/min、測定温度間隔2.5℃、振動周波数1Hzの測定条件で測定した場合、最低溶融粘度が、好ましくは2,000poise未満、より好ましくは1,900poise以下、更に好ましくは1,800poise以下、特に好ましくは1,700poise以下である。下限は、厚い絶縁層の形成を円滑に行う観点から、例えば、100poise以上、200poise以上などでありうる。樹脂組成物の最低溶融粘度は、具体的には、後述する実施例の<試験例1:最低溶融粘度の測定>で説明する方法しうる。
【0182】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を硬化することにより、硬化物が得られる。前記の硬化の際、通常は、樹脂組成物には熱が加えられる。よって、通常、樹脂組成物に含まれる成分のうち、(H)溶剤等の揮発成分は硬化時の熱によって揮発しうるが、(A)~(G)成分といった不揮発成分は、硬化時の熱によっては揮発しない。よって、樹脂組成物の硬化物は、樹脂組成物の不揮発成分又はその反応生成物を含みうる。
【0183】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物によれば、通常は、機械的強度に優れる硬化物を得ることができ、例えば、破断点伸度が大きい硬化物を得ることができる。具体例を挙げると、25℃大気圧中において日本工業規格JIS K7127に準拠して硬化物の引張試験を行った場合、当該引張試験で測定される硬化物の破断点伸度は、好ましくは1.0%以上、より好ましくは1.1%以上である。上限は、多いほど好ましいが、通常5%以下である。一例において、破断点伸度は、樹脂組成物を200℃にて90分間加熱して得られる硬化物を用いて、後述する実施例の<試験例4:破断点伸度の評価>に記載の方法で測定できる。
【0184】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物によれば、通常、粗化処理後の表面粗さを小さくすることが可能な硬化物を得ることができる。具体例を挙げると、硬化物に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び水酸化ナトリウムを含有する水溶液に10分間浸漬すること、KMnO4を60g/L及びNaOHを40g/L含む水溶液に80℃で20分間浸漬すること、及び、硫酸水溶液に40℃で5分間浸漬すること、をこの順で含む疎化処理を施した場合に、当該硬化物が、特定範囲の算術平均粗さRaを有することができる。前記の算術平均粗さRaの範囲は、好ましくは300nm未満、より好ましくは290nm未満、更に好ましくは280nm未満、特に好ましくは250nm未満である。下限は、特段の制限はなく、例えば、10nm以上、30nm以上、50nm以上などでありうる。一例において、前記の硬化物の算術平均粗さRaは、樹脂組成物を170℃にて30分間加熱して得られる硬化物を用いて、後述する実施例の<試験例2:算術平均粗さ(Ra)の測定>に記載の方法で測定できる。
【0185】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、通常、優れた誘電特性を有することができる。例えば、硬化物の比誘電率は、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.6以下、特に好ましくは3.4以下である。比誘電率の下限は、特段の制限は無く、例えば、1.5以上、2.0以上などでありうる。また、例えば、硬化物の誘電正接は、好ましくは0.0100以下、より好ましくは0.0090以下、更に好ましくは0.0080以下、特に好ましくは0.0070以下である。誘電正接の下限は、特に制限は無く、例えば、0.0010以上でありうる。一例において、前記の硬化物の比誘電率及び誘電正接は、樹脂組成物を200℃にて90分間加熱して得られる硬化物を用いて、後述する実施例の<試験例3:比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)の測定>で説明する方法で測定できる。
【0186】
[樹脂組成物の用途]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、絶縁用途の樹脂組成物として使用でき、特に、絶縁層を形成するための樹脂組成物(絶縁層形成用の樹脂組成物)として好適に使用することができる。例えば、本実施形態に係る樹脂組成物は、半導体チップパッケージの絶縁層を形成するための樹脂組成物(半導体チップパッケージの絶縁層用の樹脂組成物)、及び、回路基板(プリント配線板を含む。)の絶縁層を形成するための樹脂組成物(回路基板の絶縁層用の樹脂組成物)として、好適に使用することができる。特に、樹脂組成物は、導体層と導体層との間に設けられる層間絶縁層を形成するために好適である。
【0187】
半導体チップパッケージとしては、例えば、FC-CSP、MIS-BGAパッケージ、ETS-BGAパッケージ、Fan-out型WLP(Wafer Level Package)、Fan-in型WLP、Fan-out型PLP(Panel Level Package)、Fan-in型PLPが挙げられる。
【0188】
また、前記の樹脂組成物は、アンダーフィル材として用いてもよく、例えば、半導体チップを基板に接続した後に用いるMUF(Molding Under Filling)の材料として用いてもよい。
【0189】
さらに、前記の樹脂組成物は、樹脂シート、プリプレグ等のシート状積層材料、ソルダーレジスト、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が用いられる広範な用途に使用できる。
【0190】
[シート状積層材料]
樹脂組成物は、ワニス状態で塗布して使用してもよいが、工業的には、該樹脂組成物を含むシート状積層材料の形態で用いることが好適である。
【0191】
シート状積層材料としては、以下に示す樹脂シート、プリプレグが好ましい。
【0192】
一実施形態において、樹脂シートは、支持体と、該支持体上に形成された樹脂組成物層と、を備える。樹脂組成物層は、上述した樹脂組成物で形成されている。よって、樹脂組成物層は、通常は樹脂組成物を含み、好ましくは樹脂組成物のみを含む。
【0193】
樹脂組成物層の厚さは、薄型化の観点、及び、樹脂組成物によって薄くても絶縁性に優れた硬化物を提供できるという観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、5μm以上、10μm以上等でありうる。
【0194】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0195】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0196】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0197】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
【0198】
支持体として、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0199】
支持体の厚さは、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0200】
一実施形態において、樹脂シートは、さらに必要に応じて、任意の層を含んでいてもよい。斯かる任意の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、支持体に準じた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミの付着及びキズを抑制することができる。
【0201】
樹脂シートは、例えば、液状(ワニス状)の樹脂組成物をそのまま、或いは溶剤に樹脂組成物を溶解して液状(ワニス状)の樹脂組成物を調製し、これを、ダイコーター等の塗布装置を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0202】
溶剤としては、樹脂組成物の成分として説明した(H)溶剤と同様のものが挙げられる。溶剤は1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0203】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の乾燥方法により実施してよい。乾燥条件は、特に限定されないが、樹脂組成物層中の溶剤の含有量が通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂組成物中の溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の溶剤を含む樹脂組成物を用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0204】
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、通常は、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0205】
一実施形態において、プリプレグは、シート状繊維基材に上述した樹脂組成物を含浸させて形成される。
【0206】
プリプレグに用いるシート状繊維基材は、例えば、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。薄型化の観点から、シート状繊維基材の厚さは、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下である。シート状繊維基材の厚さの下限は特に限定されず、通常10μm以上である。
【0207】
プリプレグは、ホットメルト法、ソルベント法等の方法により製造することができる。
【0208】
プリプレグの厚さは、上述した樹脂シートにおける樹脂組成物層と同様の範囲でありうる。
【0209】
シート状積層材料は、例えば、半導体チップパッケージの製造において絶縁層を形成するため(半導体チップパッケージの絶縁用樹脂シート)に好適に使用できる。適用可能な半導体チップパッケージとしては、例えば、Fan-out型WLP、Fan-in型WLP、Fan-out型PLP、Fan-in型PLP等が挙げられる。また、シート状積層材料は、例えば、回路基板の絶縁層を形成するため(回路基板の絶縁層用樹脂シート)に使用できる。さらに、シート状積層材料は、半導体チップを基板に接続した後に用いるMUFの材料に用いてもよい。特に、シート状積層材料は、層間絶縁層を形成するために好適である。
【0210】
[回路基板]
本発明の一実施形態に係る回路基板は、樹脂組成物の硬化物を含む。通常、回路基板は、樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層を備える。絶縁層は、上述した樹脂組成物の硬化物を含み、好ましくは上述した樹脂組成物の硬化物のみを含む。この回路基板は、例えば、下記の工程(I)及び工程(II)を含む製造方法によって、製造できる。
(I)内層基板上に、樹脂組成物層を形成する工程。
(II)樹脂組成物層を硬化して、絶縁層を形成する工程。
【0211】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、回路基板の基材となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。また回路基板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も、前記の「内層基板」に含まれる。回路基板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
【0212】
最低溶融粘度が小さく、よって配線埋め込み性に優れるという上述した樹脂組成物であるため、内層基板が備える導体層がパターン加工されている場合、その導体層の最小ライン/スペース比が小さくても良好な埋め込み性を示す。「ライン」とは、導体層の回路幅を表し、「スペース」とは回路間の間隔を表す。最小ライン/スペース比の範囲は、好ましくは20/20μm以下(即ちピッチが40μm以下)、より好ましくは15/15μm以下、さらに好ましくは10/10μm以下である。下限は、例えば、0.5/0.5μm以上でありうる。ピッチは、導体層の全体にわたって均一でもよく、不均一でもよい。導体層の最小ピッチは、例えば、40μm以下、36μm以下、又は30μm以下であってもよい。
【0213】
内層基板上への樹脂組成物層の形成は、例えば、内層基板と樹脂シートとを積層することによって行いうる。内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール等)が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0214】
内層基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施される。
【0215】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0216】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0217】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
【0218】
工程(II)において、樹脂組成物層を硬化して、樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を形成する。樹脂組成物層の硬化は、通常、熱硬化によって行う。樹脂組成物層の具体的な硬化条件は、樹脂組成物の種類によっても異なりうる。一例において、硬化温度は、好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~210℃である。硬化時間は、好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間でありうる。
【0219】
回路基板の製造方法は、樹脂組成物層の熱硬化の前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱することを含むことが好ましい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、通常50℃~150℃、好ましくは60℃~140℃、より好ましくは70℃~130℃の温度にて、樹脂組成物層を通常5分間以上、好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間予備加熱してもよい。
【0220】
回路基板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層をデスミア処理する工程、(V)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至工程(V)は、回路基板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(I)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層プリント配線板等の多層構造を有する回路基板を製造してもよい。
【0221】
他の実施形態において、回路基板は、上述のプリプレグを用いて製造することができる。製造方法は基本的に樹脂シートを用いる場合と同様でありうる。
【0222】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法及び形状は、回路基板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0223】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。通常、この工程(IV)において、スミアの除去も行われる。よって、前記の粗化処理は「デスミア処理」と呼ばれることがある。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、回路基板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。
【0224】
粗化処理に用いる膨潤液としては、例えば、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液である。該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
【0225】
粗化処理に用いる酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は、5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0226】
粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0227】
工程(V)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0228】
導体層は、単層構造であってもよく、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0229】
導体層の厚さは、所望の回路基板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0230】
一実施形態において、導体層は、メッキにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にメッキして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法が好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0231】
まず、絶縁層の表面に、無電解メッキによりメッキシード層を形成する。次いで、形成されたメッキシード層上に、所望の配線パターンに対応してメッキシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出したメッキシード層上に、電解メッキにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なメッキシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0232】
他の実施形態において、導体層は、金属箔を使用して形成してよい。金属箔を使用して導体層を形成する場合、工程(V)は、工程(I)と工程(II)の間に実施することが好適である。例えば、工程(I)の後、支持体を除去し、露出した樹脂組成物層の表面に金属箔を積層する。樹脂組成物層と金属箔との積層は、真空ラミネート法により実施してよい。積層の条件は、工程(I)について説明した条件と同様としてよい。次いで、工程(II)を実施して絶縁層を形成する。その後、絶縁層上の金属箔を利用して、サブトラクティブ法、モディファイドセミアディティブ法等の従来の公知の技術により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0233】
金属箔は、例えば、電解法、圧延法等の公知の方法により製造することができる。金属箔の市販品としては、例えば、JX日鉱日石金属社製のHLP箔、JXUT-III箔、三井金属鉱山社製の3EC-III箔、TP-III箔等が挙げられる。
【0234】
[半導体チップパッケージ]
本発明の一実施形態に係る半導体チップパッケージは、樹脂組成物の硬化物を含む。通常、半導体チップパッケージは、樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層を含む。絶縁層は、上述した樹脂組成物の硬化物を含み、好ましくは上述した樹脂組成物の硬化物のみを含む。この半導体チップパッケージとしては、例えば、下記のものが挙げられる。
【0235】
第一の例に係る半導体チップパッケージは、上述した回路基板と、この回路基板に搭載された半導体チップとを含む。この半導体チップパッケージは、回路基板に半導体チップを接合することにより、製造することができる。
【0236】
回路基板と半導体チップとの接合条件は、半導体チップの端子電極と回路基板の回路配線とが導体接続できる任意の条件を採用できる。例えば、半導体チップのフリップチップ実装において使用される条件を採用できる。また、例えば、半導体チップと回路基板との間に、絶縁性の接着剤を介して接合してもよい。
【0237】
接合方法の例としては、半導体チップを回路基板に圧着する方法が挙げられる。圧着条件としては、圧着温度は通常120℃~240℃の範囲(好ましくは130℃~200℃の範囲、より好ましくは140℃~180℃の範囲)、圧着時間は通常1秒間~60秒間の範囲(好ましくは5秒間~30秒間の範囲)である。
【0238】
また、接合方法の他の例としては、半導体チップを回路基板にリフローして接合する方法が挙げられる。リフロー条件は、120℃~300℃の範囲としてもよい。
【0239】
半導体チップを回路基板に接合した後、半導体チップをモールドアンダーフィル材で充填してもよい。このモールドアンダーフィル材として、上述した樹脂組成物を用いてもよい。
【0240】
第二の例に係る半導体チップパッケージは、半導体チップと、樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層とを含む。第二の例に係る半導体チップパッケージとしては、例えば、Fan-out型WLP、Fan-out型PLP等が挙げられる。
【0241】
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体チップパッケージの一例としてのFan-out型WLPを模式的に示す断面図である。Fan-out型WLPとしての半導体チップパッケージ100は、例えば、
図1に示すように、半導体チップ110;半導体チップ110の周囲を覆うように形成された封止層120;半導体チップ110の封止層120とは反対側の面に設けられた、絶縁層としての再配線形成層130;導体層としての再配線層140;ソルダーレジスト層150;及び、バンプ160を備える。
【0242】
このような半導体チップパッケージの製造方法は、
(i)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(ii)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(iii)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(iv)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(v)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に再配線形成層を形成する工程、
(vi)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程、並びに、
(vii)再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程、
を含む。また、前記の半導体チップパッケージの製造方法は、
(viii)複数の半導体チップパッケージを、個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程
を含んでいてもよい。
【0243】
(工程(i))
工程(i)は、基材に仮固定フィルムを積層する工程である。基材と仮固定フィルムとの積層条件は、回路基板の製造方法における内層基板と樹脂シートとの積層条件と同様でありうる。
【0244】
基材としては、例えば、シリコンウエハ;ガラスウエハ;ガラス基板;銅、チタン、ステンレス、冷間圧延鋼板(SPCC)等の金属基板;FR-4基板等の、ガラス繊維にエポキシ樹脂等をしみこませ熱硬化処理した基板;BT樹脂等のビスマレイミドトリアジン樹脂からなる基板;などが挙げられる。
【0245】
仮固定フィルムは、半導体チップから剥離でき、且つ、半導体チップを仮固定することができる任意の材料を用いうる。市販品としては、日東電工社製「リヴァアルファ」等が挙げられる。
【0246】
(工程(ii))
工程(ii)は、半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程である。半導体チップの仮固定は、例えば、フリップチップボンダー、ダイボンダー等の装置を用いて行うことができる。半導体チップの配置のレイアウト及び配置数は、仮固定フィルムの形状、大きさ、目的とする半導体チップパッケージの生産数等に応じて適切に設定できる。例えば、複数行で、かつ複数列のマトリックス状に半導体チップを整列させて、仮固定してもよい。
【0247】
(工程(iii))
工程(iii)は、半導体チップ上に封止層を形成する工程である。封止層は、例えば、感光性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物によって形成しうる。この封止層を、上述した実施形態に係る樹脂組成物の硬化物によって形成してもよい。封止層は、通常、半導体チップ上に樹脂組成物層を形成する工程と、この樹脂組成物層を硬化させて封止層を形成する工程とを含む方法で形成できる。
【0248】
(工程(iv))
工程(iv)は、基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程である。剥離方法は、仮固定フィルムの材質に応じた適切な方法を採用することが望ましい。剥離方法としては、例えば、仮固定フィルムを加熱、発泡又は膨張させて剥離する方法が挙げられる。また、剥離方法としては、例えば、基材を通して仮固定フィルムに紫外線を照射して、仮固定フィルムの粘着力を低下させて剥離する方法が挙げられる。
【0249】
前記のように基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離すると、封止層の面が露出する。半導体チップパッケージの製造方法は、この露出した封止層の面を研磨することを含んでいてもよい。研磨により、封止層の表面の平滑性を向上させることができる。
【0250】
(工程(v))
工程(v)は、半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程である。通常、この再配線形成層は、半導体チップ及び封止層上に形成される。再配線形成層は、上述した実施形態に係る樹脂組成物の硬化物によって形成しうる。再配線形成層は、通常、半導体チップ上に樹脂組成物層を形成する工程と、この樹脂組成物層を硬化させて再配線形成層を形成する工程とを含む方法で形成できる。半導体チップ上への樹脂組成物層の形成は、例えば、内層基板の代わりに半導体チップを用いること以外は、前記の回路基板の製造方法で説明した内層基板上への樹脂組成物層の形成方法と同じ方法で行いうる。
【0251】
半導体チップ上に樹脂組成物層を形成した後で、この樹脂組成物層を硬化させて、樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層としての再配線形成層を得る。樹脂組成物層の硬化条件は、回路基板の製造方法における樹脂組成物層の硬化条件と同じ条件を採用してもよい。樹脂組成物層を熱硬化させる場合には、その熱硬化の前に、樹脂組成物層に対して、硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。この予備加熱処理の処理条件は、回路基板の製造方法における予備加熱処理と同じ条件を採用してもよい。通常、再配線形成層を形成した後、半導体チップと再配線層とを接続するために、再配線形成層にホールを形成する。
【0252】
(工程(vi))
工程(vi)は、再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程である。再配線形成層上に再配線層を形成する方法は、回路基板の製造方法における絶縁層上への導体層の形成方法と同様でありうる。また、工程(v)及び工程(vi)を繰り返し行い、再配線層及び再配線形成層を交互に積み上げて(ビルドアップ)もよい。
【0253】
(工程(vii))
工程(vii)は、再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程である。ソルダーレジスト層の材料は、絶縁性を有する任意の材料を用いることができる。中でも、半導体チップパッケージの製造のしやすさの観点から、感光性樹脂組成物及び熱硬化性樹脂組成物が好ましい。ソルダーレジスト層は、上述した実施形態に係る樹脂組成物の硬化物によって形成してもよい。
【0254】
また、工程(vii)では、必要に応じて、バンプを形成するバンピング加工を行ってもよい。バンピング加工は、半田ボール、半田めっきなどの方法で行うことができる。また、バンピング加工におけるビアホールの形成は、工程(v)と同様に行ってもよい。
【0255】
(工程(viii))
半導体チップパッケージの製造方法は、工程(i)~(vii)以外に、工程(viii)を含んでいてもよい。工程(viii)は、複数の半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程である。半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングする方法は特に限定されない。
【0256】
[半導体装置]
半導体装置は、上述した回路基板又は半導体チップパッケージを備える。半導体装置としては、例えば、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、タブレット型デバイス、ウェラブルデバイス、デジタルカメラ、医療機器、及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例】
【0257】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。特に温度の指定が無い場合の温度条件及び圧力条件は、室温(25℃)及び大気圧(1atm)であった。
【0258】
<合成例1:ポリカルボジイミド化合物1の合成>
【化8】
【0259】
ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(HMDI)100質量部、及びカルボジイミド化触媒として3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド0.5質量部を、還流管及び撹拌機付き反応容器に入れた。窒素気流下、185℃で24時間撹拌してカルボジイミド化反応を行い、式(S1)に示すイソシアネート末端ポリカルボジイミドを得た。得られたイソシアネート末端ポリカルボジイミドについて、IRスペクトル測定を行った結果、波長2150cm-1前後におけるカルボジイミド基による吸収ピークが確認された。また、末端NCO量は8.19質量%であり、上記測定方法により求められたカルボジイミド基の平均重合度は3.5であった。
【0260】
【0261】
上記の方法で得られたイソシアネート末端ポリカルボジイミドに、エチレングリコールモノアクリレート8.8質量部および両末端水酸基ポリブタジエン(日本曹達社製「G-1000」、数平均分子量1400、1,2-付加構造単位85%以上、trans-1,4-付加構造単位15%以下)4質量部を添加し、180℃まで加熱して2時間撹拌して反応させた。IRスペクトル測定にて、波長2200cm-1~2300cm-1のイソシアネート基の吸収ピークが消失したことを確認した。その後、反応容器から反応生成物を取り出し、室温まで冷却して、淡黄色透明な固形状のポリカルボジイミド化合物1(カルボジイミド構造を有するラジカル重合性基含有化合物)を得た。得られたポリカルボジイミド化合物1の主成分は上記式(S2)の化合物であった。式(S2)において、b’はカルボジイミド基の平均重合度を意味する。d’はポリブタジエンとポリカルボジイミドの組み合わせ単位の平均重合度を意味する。e’は上記数平均分子量に相当するブタジエン単位の平均重合度を意味する。e’単位として、1,2-付加構造単位のみを表記しているが、1,4-付加構造単位(cis、trans)も含まれていた。
【0262】
<単位面積当たりのカーボン量の測定>
表面処理された無機充填材の3gを試料として用いた。試料と30gのMEK(メチルエチルケトン)とを遠心分離機の遠心管に入れ、撹拌して固形分を懸濁させて、500Wの超音波を5分間照射した。その後、遠心分離により固液分離し、上澄液を除去した。さらに、30gのMEKを足し、撹拌して固形分を懸濁させて、500Wの超音波を5分間照射した。その後、遠心分離により固液分離し、上澄液を除去した。固形分を150℃にて30分間乾燥させた。この乾燥試料0.3gを測定用坩堝に正確に量りとり、さらに測定用坩堝に助燃剤(タングステン3.0g,スズ0.3g)を入れた。測定用坩堝をカーボン分析計にセットし、カーボン量を測定した。カーボン分析計は、堀場製作所製EMIA-320Vを使用した。測定したカーボン量を無機充填材の比表面積で割った値を、単位面積当たりのカーボン量として得た。
【0263】
<製造例1:表面処理された球形シリカ1の製造>
球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m2/g))100質量部をヘンシェル型混粉機に投入し、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)0.3質量部を噴霧しながら球状シリカを10分間攪拌した。その後、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216g/eq.、不揮発成分率50%のトルエン溶液)0.3質量部を噴霧しながら球状シリカを10分間攪拌し、処理済シリカ1(単位面積あたりのカーボン量0.20mg/m2)を作製した。
【0264】
<製造例2:表面処理された球形シリカ2の製造>
球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m2/g))100質量部をヘンシェル型混粉機に投入し、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)0.3質量部を噴霧しながら球状シリカを10分間攪拌した。その後、合成例1で得られた「ポリカルボジイミド化合物1」0.3質量部を噴霧しながら球状シリカを10分間攪拌し、処理済シリカ2(単位面積あたりのカーボン量0.18mg/m2)を作製した。
【0265】
<製造例3:表面処理された中空アルミノシリケート3の製造>
中空アルミノシリケート粒子(太平洋セメント社製「MG-005」、中空無機充填材、平均粒径1.6μm、空孔率80体積%)100質量部をヘンシェル型混粉機に投入し、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)0.5質量部を噴霧しながら中空アルミノシリケート粒子を10分間攪拌した。その後、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216g/eq.、不揮発成分率50%のトルエン溶液)0.5質量部を噴霧しながら中空アルミノシリケート粒子を10分間攪拌し、処理済アルミノシリケート3(単位面積あたりのカーボン量0.22mg/m2)を作製した。
【0266】
<製造例4:表面処理された中空アルミノシリケート4の製造>
中空アルミノシリケート粒子(太平洋セメント社製「MG-005」、中空無機充填材、平均粒径1.6μm、空孔率80体積%)100質量部をヘンシェル型混粉機に投入し、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)0.5質量部を噴霧しながら中空アルミノシリケート粒子を10分間攪拌した。その後、合成例1で得られた「ポリカルボジイミド化合物1」0.5質量部を噴霧しながら中空アルミノシリケート粒子を10分間攪拌し、処理済アルミノシリケート4(単位面積あたりのカーボン量0.21mg/m2)を作製した。
【0267】
<製造例5:表面処理された球形シリカ5の製造>
製造例1において、球形シリカ100質量部に対するシランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)の量を、0.3質量部から0.4質量部に変更した。また、球形シリカ100質量部に対するカルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216g/eq.、不揮発成分率50%のトルエン溶液)の量を、0.3質量から0.2質量部に変更した。以上の事項以外は、製造例1と同様にして、処理済シリカ5(単位面積あたりのカーボン量0.21mg/m2)を作製した。
【0268】
<製造例6:表面処理された球形シリカ6の製造>
製造例1において、球形シリカ100質量部に対するシランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)の量を、0.3質量部から0.1質量部に変更した。また、球形シリカ100質量部に対するカルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216g/eq.、不揮発成分率50%のトルエン溶液)の量を、0.3質量部から0.5質量部に変更した。以上の事項以外は、製造例1と同様にして、処理済シリカ6(単位面積あたりのカーボン量0.17mg/m2)を作製した。
【0269】
<製造例7:表面処理された球形シリカ7の製造>
製造例1において、球形シリカに対するシランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)処理とカルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216g/eq.、不揮発成分率50%のトルエン溶液)処理の順番を入れ替えた。すなわち、球形シリカにカルボジイミド系硬化剤を噴霧しながら攪拌した後で、更にシランカップリング剤を噴霧しながら攪拌した。以上の事項以外は、製造例1と同様にして、処理済シリカ7(単位面積あたりのカーボン量0.19mg/m2)を作製した。
【0270】
<実施例1>
ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量約269g/eq.)5部と、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4032-SS」、1,6-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、エポキシ当量約145g/eq.)5部を、ソルベントナフサ20部に撹拌しながら加熱溶解させて、溶液を得た。この溶液を室温にまで冷却し、エポキシ樹脂の溶解組成物を調製した。
【0271】
このエポキシ樹脂の溶解組成物に、製造例1で得られた「処理済シリカ1」80部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8150-62T」、活性エステル基当量約220g/eq.、不揮発成分率62質量%のトルエン溶液)30部、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、活性基当量約151g/eq.、不揮発成分率50%の2-メトキシプロパノール溶液)2部、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216g/eq.、不揮発成分率50%のトルエン溶液)5部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業社製「1B2PZ」、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール)0.1部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)5部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物を調製した。
【0272】
<実施例2>
実施例1において、「処理済シリカ1」の量を80部を60部に変更した。また、樹脂組成物に、製造例3で得られた「処理済アルミノシリケート3」を5部追加した。さらに、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)の量を5部から2部に変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0273】
<実施例3>
実施例1において、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4032-SS」、1,6-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、エポキシ当量約145g/eq.)5部をビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828EL」、エポキシ当量約180g/eq.)5部に変更した。また、「処理済シリカ1」80部を、製造例2で得られた「処理済シリカ2」60部及び製造例4で得られた「処理済アルミノシリケート4」5部に変更した。さらに、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)の量を5部から2部に変更した。また、樹脂組成物に、ビフェニルアラルキルノボラック型マレイミド(日本化薬社製「MIR-3000-70MT」、不揮発成分率70%のMEK/トルエン混合溶液)を3部追加した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0274】
<実施例4>
実施例3において、「処理済シリカ2」の量を60部を80部に変更し、「処理済アルミノシリケート4」16部を用いなかった。また、ビフェニルアラルキルノボラック型マレイミド(日本化薬社製「MIR-3000-70MT」、不揮発成分率70%のMEK/トルエン混合溶液)3部をビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル(三菱瓦斯化学社製「OPE-2St 2200」、不揮発成分率65%のトルエン溶液)3部に変更した。さらに、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216g/eq.、不揮発成分率50%のトルエン溶液)5部を用いなかった。以上の事項以外は、実施例3と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0275】
<実施例5>
ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4032-SS」、1,6-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、エポキシ当量約145g/eq.)10部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828EL」、エポキシ当量約180g/eq.)10部、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC社製「HP-6000」、エポキシ当量250g/eq.)15部を、ソルベントナフサ50部に撹拌しながら加熱溶解させて、溶液を得た。この溶液を室温にまで冷却し、エポキシ樹脂の溶解組成物を調製した。
【0276】
このエポキシ樹脂の溶解組成物に、製造例1で得られた「処理済シリカ1」120部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8150-62T」、活性エステル基当量約220g/eq.、不揮発成分率62質量%のトルエン溶液)15部、ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン社製「Primaset BA230S75」、シアネート基当量約232g/eq.、不揮発成分75質量%のMEK溶液)20部、硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP))0.2部、コバルト(III)アセチルアセトナート(東京化成社製、Co(III)AcAc)0.01部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)8部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物を調製した。
【0277】
<実施例6>
実施例1において、「処理済シリカ1」80部を製造例5で得られた「処理済シリカ5」80部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0278】
<実施例7>
実施例1において、「処理済シリカ1」80部を製造例6で得られた「処理済シリカ6」80部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0279】
<実施例8>
実施例1において、「処理済シリカ1」80部を製造例7で得られた「処理済シリカ7」80部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0280】
<比較例1>
実施例1において、「処理済シリカ1」80部を未処理の球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m2/g)80部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0281】
<樹脂シートの製造>
支持体として、離型層を備えたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。この支持体の離型層上に、上述した実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmとなるように均一に塗布した。その後、樹脂組成物を80℃~100℃(平均90℃)で4分間乾燥させて、支持体及び樹脂組成物層を含む樹脂シートを得た。
【0282】
<試験例1:最低溶融粘度の測定>
前記の樹脂シートの樹脂組成物層を25枚重ね合わせて、1mm厚の樹脂組成物層を得た。この樹脂組成物層を直径20mmに打ち抜き、測定試料を調製した。調製した測定試料について、動的粘弾性測定装置(UBM社製「Rheogel-G3000」)を使用して、開始温度60℃から200℃まで、昇温速度5℃/min、測定温度間隔2.5℃、振動周波数1Hzの測定条件にて動的粘弾性率を測定することで、最低溶融粘度(poise)を求めた。
【0283】
<試験例2:算術平均粗さ(Ra)の測定>
(1)内装基板の下地処理:
内層基板として、表面に銅箔を有するガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.8mm、パナソニック社製「R1515A」)を用意した。この内層基板の表面の銅箔を、マイクロエッチング剤(メック社製「CZ8101」)を用いて、銅エッチング量1μmにてエッチングして、粗化処理を行った。その後、190℃にて30分乾燥を行った。
【0284】
(2)樹脂シートの積層・硬化:
前記の樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が前記の内層基板と接合するように、内層基板の両面にラミネートした。このラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、温度100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着することにより、実施した。
【0285】
次いで、ラミネートされた樹脂シートを、大気圧下、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間、熱プレスして平滑化した。さらにこれを、130℃のオーブンに投入して30分間加熱し、次いで170℃のオーブンに移し替えて30分間加熱した。前記の加熱によって樹脂組成物層が硬化して、絶縁層が形成された。
【0286】
(3)ビアホールの形成:
ビアメカニクス社製のCO2レーザー加工機(LK-2K212/2C)を使用して、周波数2000Hzでパルス幅3μ秒、出力0.95W、ショット数3の条件で絶縁層を加工して、ビアホールを形成した。絶縁層表面におけるビアホールの開口径(トップ径、直径)が50μm、絶縁層底面におけるビアホールの直径は40μmであった。その後、支持体としてのポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離して、絶縁層/内層基板/絶縁層の層構成を有する試料基板を得た。
【0287】
(4)粗化処理
試料基板を、膨潤液であるアトテックジャパン社製のスエリングディップ・セキュリガントP(ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び水酸化ナトリウムを含有する水溶液)に60℃で10分間浸漬した。次に、試料基板を、粗化液であるアトテックジャパン社製のコンセントレート・コンパクトP(KMnO4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で20分間浸漬した。最後に、試料基板を、中和液であるアトテックジャパン社製のリダクションソリューション・セキュリガントP(硫酸水溶液)に40℃で5分間浸漬して、粗化処理後の試料基板として評価基板Aを得た。
【0288】
(5)算術平均粗さ(Ra)の測定:
得られた評価基板Aの絶縁層の表面の算術平均粗さRaを、非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製WYKO NT3300)を用いて、VSIモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmの測定条件で測定した。それぞれの評価基板Aについて、無作為に選んだ10点の算術平均粗さRaを測定し、その平均値を求めた。
【0289】
<試験例3:比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)の測定>
前記の樹脂シートを200℃にて90分間加熱して樹脂組成物層を熱硬化させた後、支持体を剥離することで、樹脂組成物の硬化物で形成された硬化物フィルムを得た。硬化物フィルムを、幅2mm、長さ80mmに切り出し、評価用硬化物Aを得た。
【0290】
得られた評価用硬化物Aについて、アジレントテクノロジーズ社製「HP8362B」を用いて、空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて比誘電率(Dk値)と誘電正接(Df値)を測定した。3本の試験片について測定を行い、平均値を算出した。
【0291】
<試験例4:破断点伸度の評価>
試験例3で得られた硬化物フィルムについて、日本工業規格JIS K7127に準拠して、テンシロン万能試験機(オリエンテック社製「RTC-1250A」)により引っ張り試験を行い、破断点伸度[%]を測定した。
【0292】
<結果>
以下、上述した実施例及び比較例の結果を、表に示す。下記の表において、略称の意味は、以下の通りである。
Ra:硬化物の表面の算術平均粗さ。
【0293】
【0294】
【0295】
処理済シリカ1:KBM-573(0.3%)及びV-03(0.3%)の順で処理された球形シリカ。
処理済シリカ2:KBM-573(0.3%)及びポリカルボジイミド化合物1(0.3%)の順で処理された球形シリカ。
処理済アルミノシリケート3:KBM-573(0.5%)及びV-03(0.5%)の順で処理された中空アルミノシリケート粒子。
処理済アルミノシリケート4:KBM-573(0.5%)及びポリカルボジイミド化合物1(0.5%)の順で処理された中空アルミノシリケート粒子。
処理済シリカ5:KBM-573(0.4%)及びV-03(0.2%)の順で処理された球形シリカ。
処理済シリカ6:KBM-573(0.1%)及びV-03(0.5%)の順で処理された球形シリカ。
処理済シリカ7:V-03(0.3%)及びKBM-573(0.3%)の順で処理された球形シリカ。
【符号の説明】
【0296】
100 半導体チップパッケージ
110 半導体チップ
120 封止層
130 再配線形成層
140 再配線層
150 ソルダーレジスト層
160 バンプ