(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】振動デバイス、電子機器及び移動体
(51)【国際特許分類】
H03H 9/02 20060101AFI20240611BHJP
H03H 9/10 20060101ALI20240611BHJP
H03H 9/19 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H03H9/02 K
H03H9/10
H03H9/19 D
(21)【出願番号】P 2022123794
(22)【出願日】2022-08-03
(62)【分割の表示】P 2021123134の分割
【原出願日】2014-07-30
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】山下 剛
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-142691(JP,A)
【文献】特開2012-253630(JP,A)
【文献】米国特許第6362700(US,B1)
【文献】特開2012-129341(JP,A)
【文献】特開2014-135423(JP,A)
【文献】特開2013-102315(JP,A)
【文献】特開2014-165684(JP,A)
【文献】特開2014-175998(JP,A)
【文献】特開2015-139079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H9/00-9/135
H03H9/15-9/215
H03B5/32-5/38
H01C7/00-7/06
H01L25/00-25/18
H01L23/02-23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視における中央部の厚さが、平面視で前記中央部を囲んでいる周辺部の厚さよりも小さい振動片と、
両端部に電極を備えたサーミスタと、
セラミック系の絶縁性材料からなり、互いに表裏の関係にある第1主面と第2主面、および、前記第2主面側に開口を有し前記第1主面側に向かって凹んでいる凹部を備え、平面視で略矩形である絶縁基板と、を備え、
前記振動片は、前記絶縁基板の前記第1主面側に搭載され、
前記凹部は、底面、および、前記開口と前記底面とを繋いでいる側面を備え、
前記底面には、一対の電極パッドが設けられており、
前記サーミスタは、前記凹部内において、前記側面と離間し、且つ、平面視で、前記両端部の電極の一方と前記一対の電極パッドの一方とが重なり、前記両端部の電極の他方と前記一対の電極パッドの他方とが重なるように配置されており、
前記両端部の電極と前記一対の電極パッドは、接合部材を介して接合されており、
前記絶縁基板には、前記第2主面側からの平面視で前記略矩形の隅部に電極端子が設けられており、
前記電極端子の実装面から前記サーミスタまでの、前記第1主面と直交する第1方向における距離が0.05mm以上であり、且つ、
前記電極端子の前記実装面から前記凹部の前記底面までの前記第1方向における距離が、0.3mm未満であり、
前記電極端子は、第1電極端子、第2電極端子、第3電極端子、および、第4電極端子を含み、前記第1電極端子と前記第3電極端子とが前記略矩形の一方の対角に位置し、前記第2電極端子と前記第4電極端子とが前記略矩形の他方の対角に位置しており、
前記第1電極端子および前記第3電極端子が前記振動片に接続され、前記第2電極端子および前記第4電極端子が前記サーミスタに接続されていることを特徴とする振動デバイス。
【請求項2】
請求項1において、
前記サーミスタの前記第1方向における中心を通り、前記第1主面に沿って延びる第1仮想中心線と、前記振動片の前記第1方向における中心を通り、前記第1主面に沿って延びる第2仮想中心線との、前記第1方向における距離が、0.18mm以上0.32mm以下の範囲内であることを特徴とする振動デバイス。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記絶縁基板は、前記第1主面と前記第2主面を有する第1基板部、前記第1主面側に配置され、前記第1主面を底面とする凹所を構成している枠状の第2基板部、および、前記第2主面側に配置され、前記第2主面を底面とする前記凹部を構成している孔部を有する第3基板部を備え、
前記第1基板部、前記第2基板部、および前記第3基板部が前記セラミック系の絶縁性材料からなり、
前記振動片は、前記凹所内に搭載されていることを特徴とする振動デバイス。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記凹部の前記開口は、前記略矩形の長辺に沿った第2方向における寸法が、前記略矩形の短辺に沿った第3方向における寸法よりも大きいことを特徴とする特徴とする振動デバイス。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記凹部の前記開口は、前記略矩形の長辺に沿った第2方向における寸法が、前記略矩形の短辺に沿った第3方向における寸法よりも小さいことを特徴とする特徴とする振動デバイス。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
前記第1電極端子および前記第2電極端子は、前記略矩形の一方の長辺側に位置し、前記第3電極端子および前記第4電極端子は、前記略矩形の他方の長辺側に位置しており、
前記第1電極端子は、平面視において、前記第2電極端子側に突出した突出部を備え、
前記第1電極端子と前記第2電極端子との間の距離は、前記第3電極端子と前記第4電極端子との間の距離よりも短いことを特徴とする振動デバイス。
【請求項7】
請求項6において、
前記突出部の輪郭に曲線が含まれていることを特徴とする振動デバイス。
【請求項8】
請求項1ないし請求項
7のいずれか一項に記載の振動デバイスを備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
請求項1ないし請求項
7のいずれか一項に記載の振動デバイスを備えていることを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動デバイス、この振動デバイスを備えている電子機器及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振動デバイスの一例として、圧電振動素子と、感温部品と、圧電振動素子を収容する第1の収容部、及び感温部品を収容する第2の収容部を有した容器と、を備え、容器が、第2の収容部を構成する貫通孔を有し且つ底部に複数の実装端子を備えた第1の絶縁基板と、第1の絶縁基板に積層固定され、表面に圧電振動素子搭載用の第1の電極パッドが設けられ、裏面に感温部品搭載用の第2の電極パッドが設けられた第2の絶縁基板と、第2の絶縁基板の表面に積層固定され、第1の収容部を構成する第3の基板と、を備えている圧電デバイスが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この圧電デバイスは、少なくとも1つの実装端子と第1の電極パッドとが、第1の熱伝導部及び第1の配線パターンにより電気的に接続され、他の少なくとも1つの実装端子と第2の電極パッドとが、第2の熱伝導部及び第2の配線パターンにより電気的に接続されることにより、圧電振動素子の温度と感温部品の検知する温度との温度差を縮小することが可能となり、良好な周波数温度特性が得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記圧電デバイスは、第1の絶縁基板の実装端子から、第2の収容部内の感温部品までの厚さ方向の距離によっては、電子機器などの外部部材に実装された際、第2の収容部内に滞留する温度上昇時に暖められた大気の断熱効果によって、例えば、温度下降時における圧電振動素子の温度と、感温部品の検知する温度との温度差が大きくなる虞がある。
この結果、上記圧電デバイスは、周波数温度特性が悪化する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかる振動デバイスは、振動片と、電子素子と、互いに表裏の関係にある第1主面と第2主面とを有する基板と、を備え、前記振動片は、前記基板の前記第1主面側に搭載され、前記電子素子は、前記基板の前記第2主面側に設けられている凹部内に収容され、前記基板の前記第2主面側には、前記振動片または前記電子素子と接続されている複数の電極端子が設けられ、前記電極端子の実装面から前記電子素子までの、前記第1主面と直交する第1方向における距離が0.05mm以上であることを特徴とする。
【0008】
これによれば、振動デバイスは、電極端子の実装面から電子素子までの、第1方向(換言すれば基板の厚さ方向)における距離が0.05mm以上であることから、例えば、電子機器などの外部部材に実装された際に、凹部内の大気の流動が促され、凹部内の大気の滞留に起因する電子素子の温度降下の遅延を低減することができる。
この結果、振動デバイスは、例えば、電子素子が感温素子(感温部品)の場合には、振動片の温度と感温素子の検知する温度との温度差を縮小することができる。
これにより、振動デバイスは、良好な周波数温度特性を得ることができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例にかかる振動デバイスにおいて、前記電極端子の前記実装面から前記凹部の底面までの前記第1方向における距離が、0.3mm未満であることが好ましい。
【0010】
これによれば、振動デバイスは、電極端子の実装面から凹部の底面までの第1方向における距離が、0.3mm未満であることから、振動片の温度と感温素子の検知する温度との温度差を縮小しつつ、薄型化を図ることができる。
これにより、振動デバイスは、薄型化を図りつつ良好な周波数温度特性を得ることができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかる振動デバイスにおいて、前記電子素子の前記第1方向における中心を通り、前記第1主面に沿って延びる第1仮想中心線と、前記振動片の前記第1方向における中心を通り、前記第1主面に沿って延びる第2仮想中心線との、前記第1方向における距離が、0.18mm以上0.32mm以下の範囲内であることが好ましい。
【0012】
これによれば、振動デバイスは、電子素子の第1仮想中心線と振動片の第2仮想中心線との、第1方向における距離が、0.18mm以上0.32mm以下の範囲内であることから、例えば、電子素子が感温素子の場合には、振動片の温度と感温素子の検知する温度との温度差を縮小しつつ、更に薄型化を図ることができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例にかかる振動デバイスにおいて、前記電極端子の1つは、平面視において他の電極端子よりも面積が大きくなるように突出部を備え、前記突出部の輪郭に曲線が含まれていることが好ましい。
【0014】
これによれば、振動デバイスは、電極端子の1つが、平面視において他の電極端子よりも面積が大きくなるように突出部を備え、突出部の輪郭に曲線が含まれていることから、電極端子の識別機能に加えて、この電極端子が基点となり振動デバイスのセルフアライメント効果(振動デバイスの外部基板へのハンダを介して取り付ける際の、リフロー実装時における自律的位置修復現象)を容易に引き出すことができる。
【0015】
[適用例5]上記適用例にかかる振動デバイスにおいて、前記電子素子は、感温素子であることが好ましい。
【0016】
これによれば、振動デバイスは、電子素子が感温素子であることから、振動片の温度と感温素子の検知する温度との温度差を縮小することができる。
【0017】
[適用例6]上記適用例にかかる振動デバイスにおいて、前記感温素子は、サーミスターまたは測温用半導体であることが好ましい。
【0018】
これによれば、振動デバイスは、感温素子がサーミスターまたは測温用半導体であることから、サーミスター及び測温用半導体の特性により周囲の温度を正確に検知することができる。
【0019】
[適用例7]本適用例にかかる電子機器は、上記適用例のいずれか一例に記載の振動デバイスを備えていることを特徴とする。
【0020】
これによれば、本構成の電子機器は、上記適用例のいずれか一例に記載の振動デバイスを備えていることから、上記適用例のいずれか一例に記載の効果が奏され、優れた性能を発揮する電子機器を提供することができる。
【0021】
[適用例8]本適用例にかかる移動体は、上記適用例のいずれか一例に記載の振動デバイスを備えていることを特徴とする。
【0022】
これによれば、本構成の移動体は、上記適用例のいずれか一例に記載の振動デバイスを備えていることから、上記適用例のいずれか一例に記載の効果が奏され、優れた性能を発揮する移動体を提供することができる。
【0023】
[適用例9]本適用例にかかる振動デバイスは、振動片と、感温素子と、前記振動片及び前記感温素子が収容されている容器と、を備え、前記振動片の温度と前記感温素子で検出される温度との温度差dTが、|dT|≦0.1(℃)を満たすことを特徴とする。
【0024】
この結果、振動デバイスは、振動片の温度と感温素子の検知する温度との温度差を縮小することができる。
これにより、振動デバイスは、良好な周波数温度特性を得ることができる。
【0025】
[適用例10]上記適用例9にかかる振動デバイスにおいて、前記感温素子は、サーミスターまたは測温用半導体であることが好ましい。
【0026】
これによれば、振動デバイスは、感温素子がサーミスターまたは測温用半導体であることから、サーミスター及び測温用半導体の特性により周囲の温度を正確に検知することができる。
【0027】
[適用例11]本適用例にかかる電子機器は、上記適用例9または適用例10に記載の振動デバイスを備えていることを特徴とする。
【0028】
これによれば、本構成の電子機器は、上記適用例9または適用例10に記載の振動デバイスを備えていることから、上記適用例9または適用例10に記載の効果が奏され、優れた性能を発揮する電子機器を提供することができる。
【0029】
[適用例12]本適用例にかかる移動体は、上記適用例9または適用例10に記載の振動デバイスを備えていることを特徴とする。
【0030】
これによれば、本構成の移動体は、上記適用例9または適用例10に記載の振動デバイスを備えていることから、上記適用例9または適用例10に記載の効果が奏され、優れた性能を発揮する移動体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】第1実施形態の水晶振動子の概略構成を示す模式図であり、(a)はリッド(蓋体)側から見た平面図、(b)は(a)のA-A線での断面図、(c)は底面側から見た平面図。
【
図2】第1実施形態の水晶振動子に収容された電子素子としての感温素子を含む水晶振動子の駆動に関わる回路図。
【
図3】距離L1と水晶振動片の温度変化時におけるサーミスターの温度変化の追随性との関係について説明するグラフ。
【
図4】距離L1と水晶振動子の温度ヒステリシスの歩留まりとの関係を説明するグラフ。
【
図5】サーミスターの検出温度と振動片の温度との温度差を示すグラフ。
【
図6】第1実施形態の変形例の水晶振動子の概略構成を示す模式図であり、(a)はリッド側から見た平面図、(b)は(a)のA-A線での断面図、(c)は底面側から見た平面図。
【
図7】第2実施形態の水晶振動子の概略構成を示す模式図であり、(a)はリッド側から見た平面図、(b)は(a)のA-A線での断面図、(c)は底面側から見た平面図。
【
図8】電子機器としての携帯電話を示す模式斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。
【0033】
(第1実施形態)
最初に、振動デバイスの一例としての水晶振動子について説明する。
図1は、第1実施形態の水晶振動子の概略構成を示す模式図である。
図1(a)は、リッド(蓋体)側から見た平面図であり、
図1(b)は、
図1(a)のA-A線での断面図であり、
図1(c)は、底面側から見た平面図である。なお、
図1(a)を含む以下のリッド側から見た平面図では、リッドを省略してある。また、分かり易くするために、各構成要素の寸法比率は実際と異なる。
図2は、第1実施形態の水晶振動子に収容された電子素子としての感温素子を含む水晶振動子の駆動に関わる回路図である。
【0034】
図1に示すように、水晶振動子1は、振動片としての水晶振動片10と、電子素子としての感温素子の一例としてのサーミスター20と、水晶振動片10及びサーミスター20が収容されているパッケージ30と、を備えている。
【0035】
水晶振動片10は、例えば、水晶の原石などから所定の角度で切り出されたATカット型の水晶基板であって、平面形状が略矩形に形成され、厚みすべり振動が励振される振動部11と振動部11に接続された基部12とを一体で有している。
水晶振動片10は、振動部11の一方の主面13及び他方の主面14に形成された略矩形の励振電極15,16から引き出された引き出し電極15a,16aが、基部12に形成されている。
【0036】
引き出し電極15aは、一方の主面13の励振電極15から、水晶振動片10の長手方向(紙面左右方向)に沿って基部12に引き出され、基部12の側面に沿って他方の主面14に回り込み、基部12の他方の主面14まで延在している。
引き出し電極16aは、他方の主面14の励振電極16から、水晶振動片10の長手方向に沿って基部12に引き出され、基部12の側面に沿って一方の主面13に回り込み、基部12の一方の主面13まで延在している。
励振電極15,16及び引き出し電極15a,16aは、例えば、Cr(クロム)を下地層とし、その上にAu(金)またはAuを主成分とする金属が積層された構成の金属被膜となっている。
【0037】
サーミスター20は、例えば、チップ型(直方体形状)の感温素子(感温抵抗素子)であって、両端部に電極21,22を有し、温度変化に対して電気抵抗の変化の大きい抵抗体である。
サーミスター20には、例えば、温度の上昇に対して抵抗が減少するNTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスターと呼ばれるサーミスターが用いられている。NTCサーミスターは、温度と抵抗値の変化の関係が直線的なため、温度センサーとして多用されている。
サーミスター20は、パッケージ30に収容され、水晶振動片10近傍の温度を検知することにより、温度センサーとして水晶振動片10の温度変化に伴う周波数変動の補正に資する機能を果たしている。
【0038】
パッケージ30は、平面形状が略矩形で略平板状であって、互いに表裏の関係にある第1主面33と第2主面34とを有する基板としてのパッケージベース31と、パッケージベース31の第1主面33側を覆う平板状のリッド32と、を有し、略直方体形状に構成されている。
パッケージベース31は、一方の面が第1主面33となる平板状の第1層31aと、中央部に開口部を有し、第1層31aの第1主面33とは反対側に積層され、この積層面とは反対側の面が第2主面34となる第2層31bと、第1層31aの第1主面33側に積層された枠状の第3層31cと、を備えている。
パッケージベース31の第1層31a及び第2層31bには、セラミックグリーンシートを成形して積層し焼成した酸化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、炭化珪素質焼結体、ガラスセラミックス焼結体などのセラミックス系の絶縁性材料、または、水晶、ガラス、シリコン(高抵抗シリコン)などが用いられている。
パッケージベース31の第3層31c及びリッド32には、パッケージベース31と同材料、または、コバール、42アロイなどの金属が用いられている。
【0039】
パッケージベース31の第1主面33には、水晶振動片10の引き出し電極15a,16aに対向する位置に、内部端子33a,33bが設けられている。
水晶振動片10は、引き出し電極15a,16aが、金属フィラーなどの導電性物質が混合された、エポキシ系、シリコーン系、ポリイミド系などの導電性接着剤40を介して内部端子33a,33bに接合されている。これにより、水晶振動片10は、第1主面33側に搭載されたことになる。
【0040】
水晶振動子1は、水晶振動片10がパッケージベース31の内部端子33a,33bに接合された状態で、パッケージベース31の第3層31cがリッド32により覆われ、パッケージベース31とリッド32とがシーム溶接や、低融点ガラス、接着剤などの接合部材で接合されることにより、パッケージベース31の第1層31a、第3層31c及びリッド32を含んで構成された内部空間Sが気密に封止されている。
図1では、一例として、金属製の第3層31cと金属製のリッド32とがシーム溶接により接合されている形態を示している。なお、この場合、第3層31cは、第1層31aのメタライズ層(図示せず)に、ろう付けされている。
パッケージ30の気密に封止された内部空間S内は、減圧された真空状態(真空度の高い状態)または窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスが充填された状態となっている。
【0041】
パッケージベース31の第2主面34側には、第2層31bの開口部と第1層31aの積層面とにより凹部35が設けられている。凹部35の平面形状は、例えば、トラック状に形成されている。
凹部35の底面36(第1層31aの積層面)には、サーミスター20の電極21,22に対向する位置に電極パッド36a,36bが設けられている。
サーミスター20は、電極21,22が導電性接着剤またはハンダなどの接合部材41を介して電極パッド36a,36bに接合されている。これにより、サーミスター20は、凹部35内に収容されたことになる。
なお、サーミスター20は、長手方向(電極21と電極22とを結ぶ方向)がパッケージベース31の長手方向(紙面左右方向)に沿うようにして、凹部35の略中央部に配置されている。
【0042】
パッケージベース31の第2主面34の四隅には、それぞれ電極端子37a,37b,37c,37dが設けられている。
4つの電極端子37a~37dの内、例えば、一方の対角に位置する2つの電極端子37b,37dは、水晶振動片10の引き出し電極15a,16aに繋がる内部端子33a,33bと接続され、他方の対角に位置する残りの2つの電極端子37a,37cは、サーミスター20の電極21,22に繋がる電極パッド36a,36bと接続されている。
【0043】
4つの電極端子37a~37dは、平面形状が矩形から凹部35側の一部が切り欠かれた形状に形成されている。電極端子37cは、平面視において他の電極端子37a,37b,37dよりも面積が大きくなるように電極端子37bに向かって延びる突出部38を備え、突出部38の先端部が略半円状に形成されている(換言すれば、突出部38の輪郭に曲線が含まれている)。
【0044】
なお、電極端子37cは、リッド32及びパッケージベース31の第3層31cが金属の場合、
図1(b)に破線で示すように、パッケージベース31の第1層31a、第2層31bをそれぞれ貫通する導通ビア(スルーホールに金属または導電性を有する材料が充填された導通電極)及び内部配線、あるいはパッケージベース31の外側の角部に設けられた図示しないキャスタレーション(凹部)に形成された導電膜のいずれかにより、第3層31cを介してリッド32と電気的に接続されていることがシールド性を向上させる観点から好ましい。なお、第3層31cが絶縁性材料の場合には、第3層31cにも導通ビアを設けることになる。
また、水晶振動子1は、電極端子37cをアース端子(GND端子)として接地することによりシールド性を更に向上させることができる。
【0045】
なお、内部端子33a,33b、電極パッド36a,36b、電極端子37a~37dは、例えば、W(タングステン)、Mo(モリブデン)などのメタライズ層にNi(ニッケル)、Auなどの各被膜をメッキなどにより積層した金属被膜からなる。
【0046】
水晶振動子1は、電極端子37a~37dの実装面(外部部材への取り付け面)からサーミスター20までの、第1主面33と直交する第1方向(パッケージベース31の厚さ方向)における距離L1が0.05mm以上と規定されている。
また、水晶振動子1は、電極端子37a~37dの実装面から凹部35の底面36までの第1方向における距離L2が、0.3mm未満と規定されている。
【0047】
一例として、水晶振動子1は、パッケージベース31の第2層31bに厚さ0.25mm±0.01mm(0.24mm以上0.26mm以下)の材料を用い、電極端子37a~37dの厚さを0.02mm±0.01mm(0.01mm以上0.03mm以下)、電極パッド36a,36bの厚さを0.02mm±0.01mm(0.01mm以上0.03mm以下)、接合部材41の厚さを0.01mm±0.005mm(0.005mm以上0.015mm以下)で管理し、サーミスター20に厚さ0.12mm±0.015mm(0.105mm以上0.135mm以下)の薄型品を用いている。
これにより、水晶振動子1は、距離L1が0.12mm±0.05mm(0.07mm以上0.17mm以下)となり、最小でも0.07mmであることから、0.05mm以上の規定を十分に満たすことになる。
また、水晶振動子1は、距離L2が0.27mm±0.02mm(0.25mm以上0.29mm以下)となり、最大でも0.29mmであることから、0.3mm未満の規定を十分に満たすことになる。
これらのことから、水晶振動子1は、公差(ばらつき)を考慮しても距離L1、距離L2の規定をクリアし、充分に量産製造可能といえる。
【0048】
また、水晶振動子1は、サーミスター20の第1方向における中心を通り、第1主面33に沿って延びる第1仮想中心線O1と、水晶振動片10の第1方向における中心を通り、第1主面33に沿って延びる第2仮想中心線O2との、第1方向における距離L3が、0.18mm以上0.32mm以下の範囲内となっている。
【0049】
一例として、水晶振動子1は、パッケージベース31の第1層31aに厚さが0.09mm~0.11mmの材料を用い、内部端子33a,33bの厚さを0.003mm~0.013mm、導電性接着剤40の厚さを0.01mm~0.03mm、水晶振動片10の厚さ(共振周波数の範囲を約19~52MHzとして)を0.032mm~0.087mm、電極パッド36a,36bの厚さを0.01mm~0.03mm、接合部材41の厚さを0.005mm~0.015mmの範囲で管理し、サーミスター20に厚さが0.105mm~0.135mmの範囲で管理されている薄型品を用いている。
これにより、水晶振動子1は、距離L3が0.187mm~0.309mmの範囲となることから、0.18mm以上0.32mm以下の規定を十分に満たし、公差を考慮しても距離L3の規定をクリアし、充分に量産製造可能といえる。
なお、水晶振動片10が傾斜している(基部12から反対側の先端部に行くほど第1主面33に近づいている)場合には、距離L3は、紙面左右方向の位置が
図1(b)の内部端子33a(33b)の範囲内における第1仮想中心線O1と第2仮想中心線O2との距離とする。
【0050】
図2に示すように、水晶振動子1は、例えば、電子機器のICチップ70内に集積化された発振回路61から、電極端子37b,37dを経由して印加される駆動信号によって、水晶振動片10が厚みすべり振動を励振されて所定の周波数で共振(発振)し、電極端子37b,37dから共振信号(発振信号)を出力する。
この際、水晶振動子1は、サーミスター20が温度センサーとして水晶振動片10近傍の温度を検知し、それを電源62から供給される電圧値の変化に変換し、電極端子37aから検出信号として出力する。
【0051】
出力された検出信号は、例えば、電子機器のICチップ70内に集積化されたA/D変換回路63によりA/D変換され、同じくICチップ70内に集積化された温度補償回路64に入力される。そして、温度補償回路64は、入力された検出信号に応じて温度補償データに基づいた補正信号を発振回路61に出力する。
発振回路61は、入力された補正信号に基づいて補正された駆動信号を水晶振動片10に印加し、温度変化に伴い変動する水晶振動片10の共振周波数を、所定の周波数になるように補正する。発振回路61は、この補正された周波数の発振信号を増幅し外部へ出力する。
【0052】
上述したように、第1実施形態の水晶振動子1は、電極端子37a~37dの実装面からサーミスター20までの、第1方向における距離L1が0.05mm以上である。
このように、水晶振動子1は、薄型のサーミスター20を用いるなどして電極端子37a~37dの実装面からサーミスター20までの距離L1を0.05mm以上とすることによって、電子機器などの外部部材に実装された際に、凹部35内の大気の流動が促され、凹部35内の大気の滞留に起因するサーミスター20の温度降下の遅延を低減することができる。
【0053】
ここで、上記の内容について詳述する。
図3は、距離L1と水晶振動片の温度変化時におけるサーミスターの温度変化の追随性との関係について説明するグラフであり、
図4は、距離L1と水晶振動子の温度ヒステリシスの歩留まりとの関係について説明するグラフである。なお、
図3のグラフは、本願発明者のシミュレーション及び実験による解析結果に基づいている。
図3の横軸は経過時間を表し、縦軸は温度を表す。
図4の横軸は距離L1を表し、縦軸は水晶振動子の温度ヒステリシスの歩留まりを表す。
【0054】
図3に示すように、電極端子37a~37dの実装面からサーミスター20までの距離L1が0.05mmの場合には、水晶振動片10の温度変化にサーミスター20の検知する温度変化が、温度上昇時、温度下降時ともに殆ど遅延なく追随している。つまり、距離L1が0.05mmの場合には、水晶振動片10の温度とサーミスター20の検知する温度との温度差が殆どないことになる。
これに対して、距離L1が0.05mm未満の場合には、距離L1が0.04mm、0.03mmと小さくなるにしたがって、水晶振動片10の温度下降時におけるサーミスター20の検知する温度変化(温度下降)に遅延が生じ、水晶振動片10の温度とサーミスター20の検知する温度との温度差が大きくなっている。
これは、距離L1が小さくなることによる凹部35内の大気の滞留に起因し、温度上昇時に暖められた大気の断熱効果によって、サーミスター20の温度下降が阻害されたためと考えられる。
【0055】
これらにより、
図4に示すように、距離L1が0.05mm以上の場合には、水晶振動子1の温度ヒステリシス(温度上昇時における周波数変移と、温度下降時における周波数変移とのずれ)の歩留まりが100%となっている。
一方、距離L1が0.05mm未満の場合には、水晶振動子1の温度ヒステリシスの歩留まりが100%に達せず、距離L1が0.04mm、0.03mmと小さくなるほど歩留まりが悪くなっている。
このような結果から、水晶振動子1は、距離L1を0.05mm以上とすることにより、水晶振動片10の温度とサーミスター20の検知する温度との温度差を縮小することができる。
これにより、水晶振動子1は、良好な周波数温度特性を得ることができる。
【0056】
次に、水晶振動片10の温度変化時におけるサーミスター20の温度変化の追随性について、本願発明者は検証実験を行ったので、その結果について以下に説明する。
前述の
図3及び
図4の解析結果により、水晶振動片10の温度とサーミスター20の検知する温度との温度差が殆どなかった距離L1=0.05mmにおいて、水晶振動片10の温度に対するサーミスター20で検出される温度の追随性について、実験を行った。
【0057】
第1実施形態にかかる水晶振動子1を外部基板に実装し、外部基板に熱を加えていき、サーミスター20で検出される温度と、その時の水晶振動片10の温度とを比較し、温度差がどの程度あるのかを評価した。
まず、外部基板を29.0℃から32.0℃まで昇温させていった。そのとき、サーミスター20が0.1℃ステップで検出していった29.5℃から31.5℃までの各検出温度での、水晶振動片10の周波数を各々測定し、サーミスター20が検出した29.5℃の時の水晶振動片10の周波数を基準として、周波数偏差を求めた。
次に、外部基板を32.0℃から29.0℃まで降温させていった。そのとき、サーミスター20が0.1℃ステップで検出していった31.5℃から29.5℃までの各検出温度での、水晶振動片10の周波数を各々測定し、サーミスター20が昇温時に検出した29.5℃の時の水晶振動片10の周波数を基準として、周波数偏差を求めた。
それらが以下の表1である。
【0058】
【0059】
ここで、水晶振動片10は、ATカット型の水晶振動片であるため、その周波数温度特性は三次曲線を呈する。本願発明者は事前に測定しておいた水晶振動片10の周波数温度特性のデータに基づいて、サーミスター20が検出した各温度での水晶振動片10の周波数偏差から水晶振動片10の温度を算出した。
それらが以下の表2である。
【0060】
【0061】
次に、表2からサーミスター20が検出した各温度におけるサーミスター20の検出温度と水晶振動片10の温度との温度差を算出した。
それらが以下の表3である。
【0062】
【0063】
図5は、サーミスターの検出温度と水晶振動片の温度との温度差を示すグラフであり、表3の算出結果をグラフにしたものである。横軸はサーミスターが検出した温度(℃)を表し、縦軸はサーミスターの検出温度と水晶振動片の温度との温度差(℃)を表す。
サーミスター20の検出温度と水晶振動片10の温度との温度差dTは、-0.07℃以上0.00℃以下であることが分かった。つまり、この検証実験から水晶振動片10の温度に対するサーミスター20で検出される温度の追随性としては、
|dT|≦0.1(℃)を満たしていれば、良好な周波数温度特性を備えた振動デバイス(水晶振動子1)を得ることができることが分かった。
また、サーミスター20で検出される温度の追随性としての|dT|≦0.1(℃)は、
図1のような第1実施形態の水晶振動子1の概略構成に限定されるものではなく、振動片と感温素子とが一つの収容部の中に一緒に収納された、所謂シングルシールタイプのパッケージを備えた振動デバイスにも適用できる。
【0064】
また、水晶振動子1は、電極端子37a~37dの実装面から凹部35の底面36までの第1方向における距離L2が、0.3mm未満であることから、水晶振動片10の温度とサーミスター20の検知する温度との温度差を縮小しつつ、薄型化を図ることができる。
これにより、水晶振動子1は、薄型化を図りつつ、良好な周波数温度特性を得ることができる。
【0065】
また、水晶振動子1は、サーミスター20の第1仮想中心線O1と水晶振動片10の第2仮想中心線O2との、第1方向における距離L3が、0.18mm以上0.32mm以下の範囲内であることから、水晶振動片10の温度とサーミスター20の検知する温度との温度差を縮小しつつ、更に薄型化を図ることができる。
なお、上記距離L3が、0.18mm未満の場合には、(サーミスター20の更なる薄型化が当面困難であるという前提で)パッケージベース31の第1層31aの厚さが0.09mmよりも薄くなることになり、パッケージベース31の強度が問題となる。
また、上記距離L3が、0.32mmを超える場合には、水晶振動片10の温度とサーミスター20の検知する温度との温度差が拡大し、周波数温度特性が悪化することから、水晶振動子1の高精度化に対する対応が困難となる虞がある。
【0066】
また、水晶振動子1は、4つの電極端子37a~37dの内、電極端子37cが、平面視において他の電極端子37a,37b,37dよりも面積が大きくなるように突出部38を備え、突出部38の先端部が略半円状に形成されている(換言すれば、突出部38の輪郭に曲線が含まれている)。
このことから、水晶振動子1は、突出部38が電極端子37cの識別マークとして機能するとともに、面積が大きいこの電極端子37cが基点となり、水晶振動子1のセルフアライメント効果(水晶振動子1の外部基板へのハンダを介して取り付ける際の、リフロー実装時における自律的位置修復現象)を容易に引き出すことができる。
【0067】
また、水晶振動子1は、電子素子が感温素子であることから、水晶振動片10の温度と感温素子の検知する温度との温度差を縮小しつつ、薄型化を図ることができる。
【0068】
また、水晶振動子1は、感温素子がサーミスター20であることから、サーミスター20の特性により周囲の温度を正確に検知することができる。なお、感温素子には、サーミスター20に代えて、測温用半導体を用いてもよく、測温用半導体の特性により周囲の温度を正確に検知することができる。測温用半導体としては、ダイオードまたはトランジスターが挙げられる。
詳述すると、ダイオードの場合には、ダイオードの順方向特性を利用し、ダイオードのアノード端子からカソード端子に一定電流を流しておいて、温度によって変化する順方向電圧を測定することによって温度を検知することができる。また、トランジスターの場合には、ベースとコレクター間を短絡し、コレクターとエミッター間をダイオードとして機能させることにより、上記と同様に温度を検知することができる。
水晶振動子1は、感温素子にダイオードまたはトランジスターを用いることにより、ノイズの重畳を低減することができる。
【0069】
(変形例)
次に、第1実施形態の変形例について説明する。
図6は、第1実施形態の変形例の水晶振動子の概略構成を示す模式図である。
図6(a)は、リッド側から見た平面図であり、
図6(b)は、
図6(a)のA-A線での断面図であり、
図6(c)は、底面側から見た平面図である。
なお、第1実施形態との共通部分には、同一符号を付して詳細な説明を省略し、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0070】
図6に示すように、変形例の水晶振動子2は、第1実施形態と比較して、サーミスター20の配置方向が異なる。
水晶振動子2は、サーミスター20の長手方向(電極21と電極22とを結ぶ方向)が、パッケージベース31の長手方向(紙面左右方向)と交差する(ここでは直交する)方向になるようにサーミスター20が配置されている。
【0071】
これにより、水晶振動子2は、第1実施形態の効果に加えて、傾向的に長手方向の反りが大きいとされているパッケージベース31の反りに伴うサーミスター20の固定強度(接合強度)の低下を低減することができる。
なお、上記変形例の構成は、以下の実施形態にも適用可能である。
【0072】
(第2実施形態)
次に、振動デバイスとしての水晶振動子の他の構成について説明する。
図7は、第2実施形態の水晶振動子の概略構成を示す模式図である。
図7(a)は、リッド側から見た平面図であり、
図7(b)は、
図7(a)のA-A線での断面図であり、
図7(c)は、底面側から見た平面図である。
なお、第1実施形態との共通部分には、同一符号を付して詳細な説明を省略し、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0073】
図7に示すように、第2実施形態の水晶振動子3は、第1実施形態と比較して、パッケージベース31及びリッド32の構成が異なる。
水晶振動子3は、パッケージベース31の第3層31cが除去され、代わりにリッド32との接合部材39が配置されている。
リッド32は、コバール、42アロイなどの金属を用いて、全周につば部32aが設けられたキャップ状に形成されている。
水晶振動子3は、リッド32のキャップ部分の膨らみにより、水晶振動片10を収容する内部空間Sが確保されている。
【0074】
リッド32は、つば部32aがシームリング、ろう材、導電性接着剤などの導電性を有する接合部材39を介してパッケージベース31の第1主面33に接合されている。
これにより、リッド32は、パッケージベース31内の導通ビア、内部配線などを介して電極端子37cと電気的に接続され、シールド効果が発揮されている。
なお、リッド32は、接合部材39及びパッケージベース31の外側の角部に設けられた図示しないキャスタレーションに形成された導電膜を介して電極端子37cと電気的に接続されてもよい。
【0075】
上述したように、第2実施形態の水晶振動子3は、パッケージベース31の第3層31cが除去されていることから、第1実施形態と比較してパッケージベース31の製造が容易となる。
なお、水晶振動子3は、シールドに支障がなければ、リッド32が電極端子37cと電気的に接続されていなくてもよい。これにより、接合部材39は、絶縁性のものでもよい。
【0076】
(電子機器)
次に、上述した振動デバイスを備えている電子機器として、携帯電話を一例に挙げて説明する。
図8は、電子機器としての携帯電話を示す模式斜視図である。
携帯電話700は、上記各実施形態及び変形例で述べた振動デバイスとしての水晶振動子を備えている。
図8に示す携帯電話700は、上述した水晶振動子(1~3のいずれか)を、例えば、基準クロック発振源などのタイミングデバイスとして用い、更に液晶表示装置701、複数の操作ボタン702、受話口703、及び送話口704を備えて構成されている。なお、携帯電話の形態は、図示のタイプに限定されるものではなく、いわゆるスマートフォンタイプの形態でもよい。
【0077】
上述した水晶振動子などの振動デバイスは、上記携帯電話に限らず、電子ブック、パーソナルコンピューター、テレビ、デジタルスチールカメラ、ビデオカメラ、ビデオレコーダー、ナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、ゲーム機器、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類、フライトシミュレーターなどを含む電子機器のタイミングデバイスとして好適に用いることができ、いずれの場合にも上記各実施形態及び変形例で説明した効果が奏され、優れた性能を発揮する電子機器を提供することができる。
【0078】
(移動体)
次に、上述した振動デバイスを備えている移動体として、自動車を一例に挙げて説明する。
図9は、移動体としての自動車を示す模式斜視図である。
自動車800は、上記各実施形態及び変形例で述べた振動デバイスとしての水晶振動子を備えている。
自動車800は、上述した水晶振動子(1~3のいずれか)を、例えば、搭載されている各種電子制御式装置(例えば、電子制御式燃料噴射装置、電子制御式ABS装置、電子制御式一定速度走行装置など)の基準クロック発振源などのタイミングデバイスとして用いている。
これによれば、自動車800は、上記水晶振動子を備えていることから、上記各実施形態及び変形例で説明した効果が奏され、優れた性能を発揮することができる。
【0079】
上述した水晶振動子などの振動デバイスは、上記自動車800に限らず、自走式ロボット、自走式搬送機器、列車、船舶、飛行機、人工衛星などを含む移動体の基準クロック発振源などのタイミングデバイスとして好適に用いることができ、いずれの場合にも上記各実施形態及び変形例で説明した効果が奏され、優れた性能を発揮する移動体を提供することができる。
【0080】
なお、水晶振動子の振動片の形状は、図示した平板状のタイプに限定されるものではなく、中央部が厚く周辺部が薄いタイプ(例えば、コンベックスタイプ、ベベルタイプ、メサタイプ)、逆に中央部が薄く周辺部が厚いタイプ(例えば、逆メサタイプ)などでもよく、音叉型形状でもよい。
【0081】
なお、振動片の材料としては、水晶に限定されるものではなく、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、四ホウ酸リチウム(Li2B4O7)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)などの圧電体、またはシリコン(Si)などの半導体でもよい。
また、厚みすべり振動の駆動方法は、圧電体の圧電効果によるものの他に、クーロン力による静電駆動でもよい。
【符号の説明】
【0082】
1,2,3…振動デバイスとしての水晶振動子、10…振動片としての水晶振動片、11…振動部、12…基部、13…一方の主面、14…他方の主面、15,16…励振電極、15a,16a…引き出し電極、20…電子素子としての感温素子の一例としてのサーミスター、21,22…電極、30…パッケージ、31…基板としてのパッケージベース、31a…第1層、31b…第2層、31c…第3層、32…リッド、32a…つば部、33…第1主面、33a,33b…内部端子、34…第2主面、35…凹部、36…底面、36a,36b…電極パッド、37a,37b,37c,37d…電極端子、38…突出部、39…接合部材、40…導電性接着剤、41…接合部材、61…発振回路、62…電源、63…A/D変換回路、64…温度補償回路、70…ICチップ、700…電子機器としての携帯電話、701…液晶表示装置、702…操作ボタン、703…受話口、704…送話口、800…移動体としての自動車、S…内部空間。