(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】電動車両用モータ
(51)【国際特許分類】
B60K 7/00 20060101AFI20240611BHJP
B60B 21/02 20060101ALI20240611BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B60K7/00
B60B21/02 P
B60B21/02 Q
H02K7/14 C
(21)【出願番号】P 2022184729
(22)【出願日】2022-11-18
(62)【分割の表示】P 2019068659の分割
【原出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-11-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 雄平
(72)【発明者】
【氏名】三分一 浩司
(72)【発明者】
【氏名】青野 真郷
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-083440(JP,A)
【文献】国際公開第2016/148239(WO,A1)
【文献】特開2003-264949(JP,A)
【文献】特開2015-044551(JP,A)
【文献】国際公開第2013/018657(WO,A1)
【文献】特開2013-126859(JP,A)
【文献】特開2020-164114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 7/00
B60B 21/02
H02K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる中心軸に沿って延びるシャフトを含むステータと、
前記中心軸を中心に、前記ステータの径方向外側を回転可能なロータと、
を備え、
前記ロータは、
環状のヨークと、
前記ヨークの外周側に配置されるリムと、
を含み、
前記リムは、第1材料で構成され、
前記ヨークは、前記第1材料と異なる第2材料で構成され、
前記リムは、
前記ヨークの外周面と径方向に重なるリム本体部と、
前記リム本体部の上端部及び下端部にそれぞれ配置され、前記上端部および前記下端部から径方向外側にそれぞれ延びるリムフランジ部と、
を有し、
前記リムは、前記ヨークの外周面の少なくとも一部を覆い、
前記リム本体部及び前記ヨークには、回り止め部を有し、
前記回り止め部は、
前記リム本体部の径方向内周面の突出部と、
前記ヨークの径方向外周面の切欠き部と、
を有し、
前記突出部は、前記切欠き部に嵌
り、
前記リム本体部は、軸方向一方側端部において、前記リム本体部の内周面から径方向内側に突出する段部を有し、
前記段部は、
前記リム本体部の軸方向一方側端面に連なり、軸方向一方側を向く第1面と、
前記第1面の径方向内側の内端から軸方向他方側に延び、径方向内側を向く第2面と、
前記第2面の軸方向他方側の端から径方向外側に延び、軸方向他方側を向く第3面と、
を有し、
前記ヨークの軸方向一方側を向く端面は、前記第3面と接し、
前記段部は、前記第3面から軸方向他方側に延びる前記突出部を有し、
前記ヨークは、前記軸方向一方側を向く端面から軸方向他方側に凹む前記切欠き部を有する、電動車両用モータ。
【請求項2】
前記切欠き部の軸方向長さは、前記ヨークの軸方向長さの10パーセント以上20パーセント以下である、請求項
1に記載の電動車両用モータ。
【請求項3】
前記切欠き部の周方向長さは、前記ヨークの周方向長さの3.0パーセント以上3.5パーセント以下である、請求項
1又は
2に記載の電動車両用モータ。
【請求項4】
前記第2面の径方向位置は、前記突出部の内周面の径方向位置と同じである、請求項
1~
3のいずれか1項に記載の電動車両用モータ。
【請求項5】
前記リムは、鋳造品である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の電動車両用モータ。
【請求項6】
前記第1材料の比重は、前記第2材料の比重よりも小さい、請求項1~
5のいずれか1項に記載の電動車両用モータ。
【請求項7】
前記第1材料は、アルミニウム合金であり、
前記第2材料は、鉄合金である、請求項
6に記載の電動車両用モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両用モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動輪の近傍にモータが配置される、いわゆるインホイールモータが知られている。例えば、特開2008-155769号公報(特許文献1)には、ステータ及びロータをその回転軸方向に対向配置してなるアキシャルモータと、ロータを内側に固定した有底円筒状のホイールの回転を制動する制動手段とを備えるインホイールモータが開示されている。特許文献1のホイールは、中心部に孔部が形成されたディスク部と、ディスク部の周縁部から車体側へ延設された筒部とを有する。筒部の外周面にはタイヤが装着されるホイールリムが溶接される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、筒部とリムとが溶接される。このため、筒部及びリムは、溶接が容易な金属材料に限られる。この場合、筒部及びリムを構成する材料選択の範囲が限定されるので、モータを軽量にすることは難しい。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み、電動車両用モータの軽量化を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動車両用モータの一つの態様は、上下方向に延びる中心軸に沿って延びるシャフトを含むステータと、中心軸を中心に、ステータの径方向外側を回転可能なロータと、を備え、ロータは、環状のヨークと、ヨークの外周側に配置されるリムと、を含み、リムは、第1材料で構成され、ヨークは、第1材料と異なる第2材料で構成され、リムは、ヨークの外周面と径方向に重なるリム本体部と、リム本体部の上端部及び下端部にそれぞれ配置され、上端部および下端部から径方向外側にそれぞれ延びるリムフランジ部と、を有し、リム本体部の径方向内周面及びヨーク部の径方向外周面には、一方に突出部、他方に切欠き部を有し、突出部は、切欠き部に嵌る。
【0007】
本発明の電動車両用モータの一つの態様は、上下方向に延びる中心軸に沿って延びるシャフトを含むステータと、中心軸を中心に、ステータの径方向外側を回転可能なロータと、を備え、ロータは、環状のヨークと、ヨークの外周側に配置されるリムと、を含み、リムは、第1材料で構成され、ヨークは、第1材料と異なる第2材料で構成され、リムは、ヨークの外周面と径方向に重なるリム本体部と、リム本体部の上端部及び下端部にそれぞれ配置され、上端部および下端部から径方向外側にそれぞれ延びるリムフランジ部と、を有し、リムは、リム本体部の外周面から径方向外側に突出し、少なくとも一方のリムフランジ部の軸方向端面に連なる凸部と、を有し、凸部は、締結部材を通す凹部を有する。
【0008】
本発明の電動車両用モータの一つの態様は、上下方向に延びる中心軸に沿って延びるシャフトを含むステータと、中心軸を中心に、ステータの径方向外側を回転可能なロータと、を備え、ロータは、環状のヨークと、ヨークの外周側に配置されるリムと、を含み、リムは、第1材料で構成され、ヨークは、第1材料と異なる第2材料で構成され、リムは、ヨークの外周面と径方向に重なるリム本体部と、リム本体部の上端部及び下端部にそれぞれ配置され、上端部および下端部から径方向外側にそれぞれ延びるリムフランジ部と、を有し、ロータ及びステータの軸方向上側及び下側の少なくとも一方に配置され、シャフトに取り付けられるカバーをさらに備え、カバーは、リムに締結される取付部を有し、リムには、隣り合う取付部の周方向の間において溝が設けられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一つの態様によれば、電動車両用モータの軽量化ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態における電動車両の模式図である。
【
図2】
図2は、
図1におけるII-II線に沿った断面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態における電動車両用モータの断面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態におけるヨーク及びリムの斜視図である。
【
図5】
図5は、ヨークを径方向外側から見た図である。
【
図6】
図6は、
図4のVI-VI線に沿ったリムの断面図である。
【
図7】
図7は、リムを軸方向下側から見た図である。
【
図8】
図8は、
図7におけるVIII-VIII線に沿った部分断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態におけるステータ及びホルダ断面図である。
【
図10】
図10は、シャフトとステータホルダの断面模式図である。
【
図11】
図11は、シャフトとステータホルダの変形例の断面模式図である。
【
図12】
図12は、シャフトとステータホルダの別の変形例の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0012】
また、以下の説明において、
図2及び
図3の中心軸Jの延びる方向を上下方向とする。中心軸Jの軸方向の一側を単に「上側」と呼び、他側を単に「下側」と呼ぶ。なお、上下方向は、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係や方向を限定しない。また、中心軸Jに平行な方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0013】
また、本明細書において「軸方向に延びる」とは、厳密に軸方向に延びる状態と、軸方向に対して45度未満の範囲で傾いた方向に延びる状態とを含む。同様に、本明細書において「径方向に延びる」とは、厳密に径方向に延びる状態と、径方向に対して45度未満の範囲で傾いた方向に延びる状態とを含む。
【0014】
(車両)
図1を参照して、本発明の一実施形態である電動車両について説明する。
図1は、本発明の一実施形態における電動車両の模式図である。本実施形態では、電動車両として、電動二輪車を例に挙げて説明する。
【0015】
図1に示すように、電動二輪車1は、前輪2と、後輪3と、車体4と、ハンドル5と、ECU(electronic control unit)6と、スロットル7と、バッテリ8と、モータ10と、を備える。
【0016】
前輪2及び後輪3は、一対の車輪である。車体4には、前輪2及び後輪3が取り付けられる。車体4の前部には、ハンドル5が取り付けられる。
【0017】
ECU6は、車体4の内部に配置される。ECU6は、制御装置である。ECU6には、スロットル7が接続される。スロットル7は、速度調整機構である。
【0018】
バッテリ8は、車体4の内部に配置される。バッテリ8は、ECU6に接続される。バッテリ8は、充電器9により充電される。
【0019】
モータ10は、後輪3に取り付けられる。モータ10は、ECU6に接続される。
【0020】
(モータ)
図面を参照して、本発明の一実施形態であるモータについて説明する。本実施形態のモータ10は、アウターロータ型のインホイールモータである。
図2は、
図1におけるII-II線に沿った断面図である。
図3は、
図2の部分拡大図である。
図2及び
図3に示すように、モータ10は、固定部20と、回転部30と、カバー40と、ガスケット50と、ホルダ60と、を主に備える。
【0021】
<固定部>
図2及び
図3に示すように、固定部20は、シャフト21と、ステータ22と、リード線23と、を含む。
【0022】
シャフト21は、上下方向に延びる中心軸Jに沿って延びる。本実施形態のシャフト21は、固定軸である。シャフト21は、例えば金属製である。
【0023】
図3に示すように、シャフト21は、大径部211と、小径部212と、を有する。小径部212の直径は、大径部211の直径より小さい。小径部212の外周面は、例えばベアリング11、シール部材などが接する。本実施形態の小径部212は、シャフト21の上端部及び下端部に位置し、大径部は中央部に位置する。シャフトは、端部から中央部に向けて段階的に直径が大きくなってもよい。
【0024】
図2及び
図3に示すように、ステータ22は、円環状である。ステータ22の中心は、モータ10の中心軸Jと一致する。ステータ22は、ステータコア221と、インシュレータ222と、コイル223と、を有する。
【0025】
ステータコア221は、例えば磁性鋼板を軸方向に積層して構成される。ステータコア221は、コアバックと、複数のティースと、を有する。コアバックは、中心軸Jと同心の環状である。ティースは、コアバックから径方向外側に向けて突出する。ティースは、複数設けられ、コアバックから径方向に延び、周方向にスロットを隔てて配置される。
【0026】
インシュレータ222は、ステータコア221の少なくとも一部を覆う。インシュレータ222は、ステータコア221とコイル223とを電気的に絶縁する絶縁性部材である。インシュレータ222は、各ティースに取り付けられる。
【0027】
コイル223は、通電時にステータコア221を励磁することができる。コイル223は、例えば、インシュレータ222を介して各ティースにコイル線を巻き付けることによって構成される。コイル223は、周方向に複数配置される。
【0028】
リード線23は、ステータ22の上側においてステータ22に接続される。リード線23は、後述するホルダ60の板部65の板部貫通孔651を通って、ステータ22の上側に引き出される。なお、
図3では、コイル線と接続されるリード線23は、板部65の板部貫通孔651を通って、上側へ引き出されるが、引き出される経路などはこれに限定されない。回路基板またはコイル線と接続されるリード線は、上側から下側に引き出されてもよく、下側から上側に引き出されてもよい。
【0029】
<回転部>
回転部30は、固定部20に対し、相対的に回転することができる。回転部30は、ロータ31を含む。ロータ31は、中心軸Jを中心に、ステータ22の径方向外側を回転する。
【0030】
図2及び
図3に示すように、ロータ31は、マグネット311と、ヨーク312と、リム313と、を含む。
【0031】
マグネット311は、ステータ22の径方向外側に配置される。マグネット311は、周方向にN極とS極とが交互に並ぶように構成される。マグネット311は、例えば、周方向に並ぶ複数の永久磁石によって構成されてもよく、円環状の1つの永久磁石によって構成されてもよい。
【0032】
図4は、一実施形態におけるヨーク及びリムの斜視図である。
図4において、ヨーク及びリム以外の部品については図示を省略する。
図5は、ヨークのみを示す図である。
図2~
図4に示すように、ヨーク312は、マグネット311の径方向外側に配置される。ヨーク312は、環状である。詳細には、
図5に示すように、ヨーク312は、軸方向一端側を向く端面から軸方向他方側に凹む切欠き部312aを有する。
図2及び
図3に示すように、カバー40は、リム313に締結される取付部312bを有する。
【0033】
図2に示すように、リム313は、タイヤ3aを取り付ける。
図3及び
図4に示すように、リム313は、ヨーク312の外周側に配置される。ヨーク312は、接着剤によりリム313に固定される。
【0034】
リム313は、第1材料で構成される。ヨーク312は、第1材料と異なる第2材料で構成される。このように、リム313とヨーク312とは、任意の異なる材料で構成される。このため、リム313及びヨーク312は、例えば、その機能を維持しつつ、軽量化を図るための材料を選択することができる。その結果、軽量化を図るモータ10を提供することができる。
【0035】
第1材料の比重は、第2材料の比重よりも小さい。第1材料は、例えばアルミニウムを含有し、第2材料は、例えば鉄を含有する。具体的には、第1材料は、アルミニウム合金であり、第2材料は、鉄合金である。これにより、リム313をヨーク312よりも軽量にできる。その結果、リム313とヨーク312とを同じ材料で構成する場合と比較して、モータ10の重量を小さくすることができる。
【0036】
本実施形態において、ヨーク312は、プレス加工により形成される。リム313は、鋳造により形成される。すなわち、本実施形態において、ヨーク312は、プレス品である。リム313は、鋳造品である。ヨーク312は、リム313に接着により固定される。ヨーク312の外周面とリム313との間には、接着剤がある。これにより、リム313及びヨーク312の一体品を容易に製造できる。このため、ネジ等の部品を使ってリム313及びヨーク312を一体に構成する場合と比較して、容易にモータ10を軽量にできる。
【0037】
リム313は、ヨーク312の外周面の少なくとも一部を覆う。
図4では、リム313は、ヨーク312の外周面全体を覆う。詳細には、リム313は、ヨーク312の外周面と径方向に重なるリム本体部313dと、リム本体部313dの上端部及び下端部から径方向外側に延びるリムフランジ部313eと、を有する。
【0038】
図4及び
図6に示すとおり、リム本体部313dは、軸方向一方側端部において、リム本体部313dの内周面から径方向内側に突出する段部313bを有する。本実施形態では、段部313bは、リム本体部313dの下側の端部から径方向内側に突出する。段部313bは、第1面313b1と、第2面313b2と、第3面313b3と、を有する。第1面313b1は、リム本体部313dの軸方向一方側端面に連なり、軸方向一方側を向く。第2面313b2は、第1面313b1の内端から軸方向他方側に延び、径方向内側を向く。第3面313b3は、第2面313b2の他方側の端から径方向外側に延び、軸方向他方側を向く。
【0039】
本実施形態では、第1面313b1は、リム本体部313dの下面に連なり、下側を向く。第2面313b2は、第1面313b1の内端から上側に延び、径方向内側を向く。第3面313b3は、第2面313b2の上端から径方向外側に延び、上側を向く。
【0040】
リム本体部313dの内周面に接着剤を塗布後、ヨーク312は、軸方向他方側からリム本体部313d内に挿入され、ヨーク312の軸方向一方側を向く端面は、第3面313b3と接する。本実施形態では、ヨーク312は、上側からリム本体部313d内に挿入され、ヨーク312の下面は、第3面313b3と接する。接着剤は、アクリル性の2液混合接着剤が好ましいが、エポキシ性の接着剤でもよい。
【0041】
段部313bは、第3面313b3から軸方向他方側に延びる突出部313b4を有する。本実施形態では、突出部313b4は、第3面313b3から上側に延びる。突出部313b4は、切欠き部312aに嵌る。これにより、ヨーク312がリム313に対し、周方向にずれることを抑制できる。すなわち、突出部313b4及び切欠き部312aは、回り止めとして機能する。突出部313b4は、マグネット311と径方向に重なる。なお、突出部313b4及び切欠き部312aは複数設けられてもよい。
【0042】
切欠き部312aの軸方向長さは、ヨーク312の軸方向長さの10パーセント以上20パーセント以下であることが好ましい。切欠き部312aの周方向長さは、ヨーク312の周方向長さの3.0パーセント以上3.5パーセント以下であることが好ましい。切欠き部312aの軸方向長さまたは周方向長さが長すぎる場合、切欠き部312a周辺の磁束密度が低下してしまう。切欠き部312aの軸方向長さまたは周方向長さが短すぎる場合、回り止めとして十分な強度が得られない。
【0043】
第2面313b2の径方向位置は、突出部313b4の内周面の径方向位置と同じである。これにより、マグネット311をヨーク312の内周面に配置した際に、マグネット311ががたつくことを防止できる。
【0044】
リム313には、隣り合う取付部312bの周方向の間において溝313aが設けられる。この場合、リム313の体積(すなわち、リム313の重量)を減らすことができるので、モータ10をより軽量にできる。本実施形態において、溝313aは、周方向に延びる。
【0045】
図4に示すように、リム313は、リム本体部313dの外周面から径方向外側に突出する凸部313fを有する。本実施形態において、リム313は、凸部313fを複数有する。凸部313fは、第1凸部313f1と第2凸部313f2とを含む。具体的には、凸部313fは、少なくとも一方のリムフランジ部313eの軸方向端面に連なる。
図4では、一方のリムフランジ部313eの軸方向端面に連なる第1凸部313f1と、他方のリムフランジ部313eの軸方向端面に連なる第2凸部313f2と、が設けられる。周方向において、第1凸部313f1の位置は、第2凸部313f2の位置と、異なる。この場合、第1凸部313f1と第2凸部313f2とを周方向にずらして配置できるため、締結に必要な凹部313cの長さを確保できる。また、軸方向において、第1凸部313f1の位置は、第2凸部313f2の位置と、異なる。リム本体部313dとリムフランジ部313eと凸部313fとは、1つの部材で構成される。
【0046】
リム313の軸方向の厚みは、ヨーク312の軸方向の厚みよりも大きい。リム313の径方向の長さは、ヨーク312の径方向の長さよりも大きい。
【0047】
リム313は、バルブ孔313e1を有する。より詳細には、
図4、
図7及び
図8に示すとおり、リムフランジ部313eは、リムフランジ部313eを例えば軸方向に貫通するバルブ孔313e1を有する。バルブ孔313e1には、タイヤ3a内に空気を注入するバルブ(不図示)が配置される。
【0048】
図7は、リム313を下側から見た図である。
図8は、
図7のVI-VI線に沿った断面図である。
図7及び
図8に示すように、バルブ孔313e1は、溝313a内に配置される。また、突出部313b4は、溝313a内に配置される。バルブ孔313e1の周方向位置は、突出部313b4の周方向位置と同じである。このようにバルブ孔313e1と、突出部313b4とを配置することにより、バルブ孔313e1の径方向内側におけるリム313の厚みを確保し、バルブ孔313e1周辺の強度が低下することを防ぐ。
【0049】
<カバー>
図2及び
図3に示すように、カバー40は、ロータ31及びステータ22の軸方向上側及び下側の少なくとも一方に配置される。本実施形態のカバー40は、ロータ31及びステータ22の軸方向上側及び下側に配置される。カバー40は、例えばホイールカバーである。カバー40は、シャフト21に取り付けられる。
【0050】
カバー40は、円盤形状を有する。カバー40は、シャフト21に取り付けられる。カバー40には、シャフト21を貫通する貫通孔が設けられる。
【0051】
カバー40は、ヨーク312に締結される。この場合、溶接を省略して、カバー40を取り付けることができる。
図2及び
図3では、カバー40は、締結部材41により、リム313と締結される。カバー40は、リム313に締結される取付部312bを有する。詳細には、
図3に示すように、カバー40の取付部312bには、締結部材41を通す貫通孔411が設けられる。締結部材41は、取付部312bの貫通孔411と、リム313の凹部313c(
図6参照)とを通って、リム313と、カバー40とを締結する。カバー40がリム313に締結されることで、ヨーク312に締結孔を設ける必要がなくなり、ヨーク312の径方向の厚みを薄くできる。これにより、モータ10をより軽量化できる。締結部材41により、リム313及びヨーク312と、カバー40とを締結する。
【0052】
上側に位置する取付部312bの周方向位置と、下側に位置する取付部312bの周方向位置とは、互いに異なる。具体的には、
図4に示すように、取付部312bの上端及び下端から径方向外側に延びる周方向位置は、互いに異なる。取付部312bの貫通孔312b1の周方向位置に合わせてカバー40に貫通孔411が設けられる。
【0053】
<ガスケット>
図2に示すように、ガスケット50は、リム313とカバー40との間に配置される。ガスケット50は、例えばリム313とカバー40との境界面に液状ガスケットが塗布されて、乾燥されることにより形成される。なお、ガスケットは、リード線23が挿通される部分などにさらに配置されてよい。
【0054】
<ホルダ>
図2及び
図3に示すように、ホルダ60は、シャフト21に取り付けられる。詳細には、ホルダ60は、シャフト21の大径部211に固定される。小径部212側からホルダ60を挿入することにより、シャフト21の小径部212の外周面を傷つけずに、ホルダを大径部211に圧入できる。
【0055】
ホルダ60は、固定部20または回転部30を保持する。本実施形態のホルダ60は、ステータ22を保持する。
【0056】
図9は、実施形態におけるステータ及びホルダの断面図である。
図9では、ステータ及びステータホルダ以外の部品については図示を省略する。
図9に示すように、ホルダ60は、第1筒部61と、屈曲部62と、第2筒部63と、凸部64と、板部65と、第3筒部66と、ホルダフランジ部67と、を含む。径方向内側から外側に向けて、第1筒部61、屈曲部62、第2筒部63、凸部64、板部65、第3筒部66、及びホルダフランジ部67の順に配置される。ホルダ60は、1つの部材で構成される。具体的には、ホルダ60は、プレス品である。
【0057】
詳細には、ホルダ60は、金属製である。ホルダ60は、例えば、板状の金属部材が折り曲げられることにより成形される。ホルダ60及びシャフト21は、同じ材料で構成されるのが好ましい。例えば、ホルダ60及びシャフト21は、鉄で構成される。同じ材料の場合、ホルダ60とシャフト21との溶接が容易である。
【0058】
第1筒部61は、シャフト貫通孔611を有する。シャフト貫通孔611の内周面には、シャフトが圧入される。第1筒部61は、シャフト21と溶接されてもよい。また、第2筒部63が、シャフト21と溶接されてもよい。
【0059】
第2筒部63は、第1筒部61の少なくとも一部と接し、第1筒部61の径方向に重なる。第1筒部61と第2筒部63とは、同じ方向に延びる。本実施形態では、第1筒部61、第2筒部63、及びシャフト21は、軸方向に延びる。
【0060】
ホルダ60においてシャフト21に圧入される第1筒部61は、第2筒部63と径方向に重なり、互いに少なくとも一部が接触する。したがって、モータ10の締結強度を向上することができる。
【0061】
図10は、シャフト及びステータホルダの断面模式図である。
図11は、シャフトとステータホルダの変形例における断面模式図である。
図12は、シャフトとステータホルダの別の変形例における断面模式図である。
図10~
図12では、シャフト及びステータホルダ以外の部品については図示を省略する。
図10~
図12に示すように、第1筒部61の軸方向長さLaと第2筒部63のLbとの関係は、Lb/2≦La≦2Lbである。より好ましくは、
図10及び
図11に示すように、La≦2Lbである。
【0062】
第1筒部61と第2筒部63とは、互いに接する溶接部を有する。溶接部は、第1筒部61と第2筒部63との径方向に重なる部分に設けられる。すなわち、板状の金属部材が折り返されて重なる部分は、溶接される。溶接部は、第1筒部61と第2筒部63との径方向に重なる部分全体に設けられてもよく、一部に設けられてもよい。後者の場合、溶接部は、軸方向において屈曲部62と反対側の端部に設けられる。すなわち、第1筒部61の下端部と第2筒部63の下端部とが溶接される。なお、シャフト21と第1筒部61が溶接される場合は、シャフト21と第1筒部61とが、互いに接する溶接部を有する。また、シャフト21と第2筒部63が溶接される場合は、シャフト21と第2筒部63とが、互いに接する溶接部を有する。
【0063】
なお、第1筒部61及び第2筒部63の屈曲部62と反対側の端部は、接合されなくてもよいが、接合されることが好ましい。接合は、溶接に限定されず、接着などの他の方法を用いてもよい。
【0064】
図9に示すように、屈曲部62は、第1筒部61の上端部と第2筒部63の上端部とを繋ぐ。屈曲部62は、R形状を有する。R形状とは、円弧状に湾曲する形状である。
【0065】
本実施形態では、ホルダ60は、1つの金属部材で構成される。屈曲部62により、第1筒部61と第2筒部63とは金属部材が折り返される。ホルダ60において強度が要求される部分は、第1筒部61と第2筒部63とが折り返されて重なるので、第1筒部61と第2筒部63とが折り返されて重なる部分の強度を高くすることができる。ホルダ60において強度が要求されない部分は、軽量化のため、金属部材が重ならない。
【0066】
凸部64は、第2筒部63の下端と連なる。凸部64は、周方向全体に設けられる。凸部64は、板部65と第2筒部63との間において、下側に隆起する。凸部64を設けることにより、第2筒部63の軸方向長さを長くできる。このため、第1筒部61と重なる第2筒部63を長くできるので、締結強度をより向上できる。
【0067】
板部65は、第2筒部63の下端部から径方向に延びる。詳細には、板部65は、凸部64を介して、第2筒部63の下端部から径方向に延びる。板部65は、板部貫通孔651を有する。板部貫通孔651には、リード線が挿通される。
【0068】
板部65は、径方向外側に向けて延び、軸方向下側に傾斜する。詳細には、板部65と中心軸Jとのなす角度θは、70度以上90度以下が好ましい。板部65と中心軸Jとのなす角度θがこの範囲内であると、第2筒部63の軸方向長さLbを長くできる。このため、第1筒部61と重なる第2筒部63を長くできるので、締結強度をより向上できる。リード線などに緩衝しないように、板部65と中心軸Jとのなす角度θは適宜設定される。この観点及び締結強度の向上から、角度θは、80度以上90度未満がより好ましい。
【0069】
第3筒部66は、板部65の外縁から上側に延びる。第3筒部66と板部65との接続領域はR形状である。第3筒部66は、第1筒部61及び第2筒部63と径方向に重なる。すなわち、第3筒部66は、第1筒部61及び第2筒部63と同じ方向に延びる。これにより、ホルダ60を軸方向に小さくできるので、モータ10の小型化が実現できる。
【0070】
ホルダフランジ部67は、第3筒部66から径方向に延びる。詳細には、ホルダフランジ部67は、第3筒部66の上端部から径方向外側に延びる。ホルダフランジ部67と第3筒部66との境界領域はR形状である。
【0071】
ステータ22の上面は、ホルダフランジ部67の下面に接する。ステータ22の上面がホルダフランジ部67の下面に接することで、ステータ22の軸方向位置の精度を向上できる。
【0072】
ホルダフランジ部67は、周方向の全体に設けられてもよく、周方向の一部に設けられてもよい。またホルダフランジ部67の径方向の長さは、ステータ22の径方向長さよりも小さくてもよい。詳細には、ホルダフランジ部67の下面は、ステータ22の上面全体と接してもよく、ステータ22の上面の一部と接してもよい。なお、
図9では、ホルダフランジ部67は、ステータ22のステータコアと接するが、コイル等の他の部材と接してもよい。
【0073】
(変形例)
上述した実施形態の電動車両用モータでは、電動二輪車のインホイールモータを例に挙げて説明した。本発明の電動車両用モータは、電動二輪車に限定されず、例えば電動四輪車などのモータでもよい。また本発明の電動車両用モータは、電動車両に用いられるモータであれば、インホイールモータに限定されない。
【0074】
本実施形態では、段部313b、突出部313b4、切欠き部312a、バルブ孔313e1は、リム313の下端側に設けられたが、上端側に設けられてもよい。言い換えると、段部313b、突出部313b4、切欠き部312a、バルブ孔313e1は、リム313の上側または下側のどちらに設けられてもよいが、同じ側に設けられればよい。
【0075】
また、上述した実施形態では、ホルダ60においてシャフト21との締結部は、第1筒部61及び第2筒部63であり、屈曲部62を介して2回折り曲げた2重構造を有する。ホルダ60においてシャフト21との締結部は、3重構造を有してもよい。なお、軽量化の観点からは、2重構造が好ましい。
【0076】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施形態ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0077】
1 電動二輪車、2 前輪、3 後輪、3a タイヤ、4 車体、5 ハンドル、6 ECU、7 スロットル、8 バッテリ、9 充電器、10 モータ、11 ベアリング、20 固定部、21 シャフト、22 ステータ、23 リード線、30 回転部、31 ロータ、40 カバー、41 締結部材、50 ガスケット、60 ホルダ、61 第1筒部、62 屈曲部、63 第2筒部、64 凸部、65 板部、66 第3筒部、67 フランジ、211 大径部、212 小径部、221 ステータコア、222 インシュレータ、223 コイル、311 マグネット、312 ヨーク、312a 切欠き部、312b 取付部、313 リム、313a 溝、313b 段部、313b1 第1面、313b2 第2面、313b3 第3面、313b4 突出部、313c 凹部、313d リム本体部、313e リムフランジ部、313e1 バルブ孔、313f 凸部、313f1 第1凸部、313f2 第2凸部、611 シャフト貫通孔、651 板部貫通孔、J 中心軸、θ 角度。