(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】電流制御回路、バイアス供給回路及び増幅装置
(51)【国際特許分類】
H03F 1/32 20060101AFI20240611BHJP
H03F 1/30 20060101ALI20240611BHJP
H03F 3/24 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H03F1/32
H03F1/30 210
H03F3/24
(21)【出願番号】P 2022547592
(86)(22)【出願日】2021-09-06
(86)【国際出願番号】 JP2021032735
(87)【国際公開番号】W WO2022054771
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2020153774
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】石本 一彦
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-56606(JP,A)
【文献】特開2005-228196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F1/00-3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号を増幅する増幅トランジスタに供給されるバイアス電流を制御する電流制御回路であって、
第1ノードと、
前記第1ノードに第1電流を供給する第1定電流源回路と、
前記第1ノードの電位と参照電位との比較結果に基づいて、前記第1ノードに第2電流を供給する可変電流源回路と、を備え、
前記第1ノードは、前記第1電流と前記第2電流とを含む、前記バイアス電流を制御するための制御電流を出力する、
電流制御回路。
【請求項2】
前記参照電位は、前記高周波信号の信号強度が閾値以下の場合の前記第1ノードの電位である、
請求項1に記載の電流制御回路。
【請求項3】
前記参照電位は、前記増幅トランジスタの温度が閾値以下の場合の前記第1ノードの電位である、
請求項1又は2に記載の電流制御回路。
【請求項4】
前記可変電流源回路は、
所定のタイミングにおける前記第1ノードの電位を前記参照電位として保持するサンプルホールド回路と、
第1入力端子、第2入力端子及び第1出力端子を有する第1オペアンプと、を含み、
前記第1入力端子は、前記サンプルホールド回路を介して前記第1ノードに接続されており、
前記第2入力端子及び前記第1出力端子は、前記第1ノードに接続されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電流制御回路。
【請求項5】
前記可変電流源回路は、さらに、前記サンプルホールド回路が前記第1ノードの電位を前記参照電位として保持するタイミングを制御する制御部を備える、
請求項4に記載の電流制御回路。
【請求項6】
さらに、前記第1ノードと前記サンプルホールド回路との間に接続され、前記高周波信号の信号周波数を含む周波数帯を遮断周波数帯域として有するフィルタを備える、
請求項4又は5に記載の電流制御回路。
【請求項7】
前記第1定電流源回路は、
定電流源と、
互いに制御端子が接続された第1トランジスタ及び第2トランジスタを含む第1カレントミラー回路と、を含み、
前記第2トランジスタの一の入出力端子及び制御端子は、前記定電流源に接続されており、
前記第1トランジスタの一の入出力端子は、前記第1ノードに接続されており、
前記第1トランジスタの他の入出力端子及び前記第2トランジスタの他の入出力端子は、電圧源に接続されている、
請求項1~6のいずれか1項に記載の電流制御回路。
【請求項8】
さらに、
負荷回路が接続される第2ノードと、
前記第2ノードを介して前記負荷回路に第3電流を供給する第2定電流源回路と、を備え、
前記参照電位は、前記第2ノードの電位である、
請求項1に記載の電流制御回路。
【請求項9】
前記可変電流源回路は、第1入力端子、第2入力端子及び第1出力端子を有する第1オペアンプを含み、
前記第1入力端子は、前記第2ノードに接続されており、
前記第2入力端子及び前記第1出力端子は、前記第1ノードに接続されている、
請求項8に記載の電流制御回路。
【請求項10】
前記第1定電流源回路は、第1トランジスタを含み、
前記第2定電流源回路は、定電流源と、第2トランジスタと、を含み、
前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタは、互いに制御端子が接続されてカレントミラー回路を構成し、
前記第1トランジスタの一の入出力端子は、前記第1ノードに接続されており、
前記第2トランジスタの一の入出力端子及び制御端子は、前記定電流源に接続されており、
前記第1トランジスタの他の入出力端子及び前記第2トランジスタの他の入出力端子は、電圧源に接続されている、
請求項8又は9に記載の電流制御回路。
【請求項11】
前記第2定電流源回路は、さらに、第3トランジスタを含み、
前記第2トランジスタ及び前記第3トランジスタは、互いに制御端子が接続されてカレントミラー回路を構成し、
前記第3トランジスタの一の入出力端子は、前記第2ノードに接続されており、
前記第3トランジスタの他の入出力端子は、前記電圧源に接続されている、
請求項10に記載の電流制御回路。
【請求項12】
さらに、
前記負荷回路と、
第3入力端子、第4入力端子及び第2出力端子を有する第2オペアンプと、を含み、
前記第3入力端子は、前記第2ノードに接続されており、
前記第4入力端子は、前記第1ノードに接続されており、
前記負荷回路は、前記第2ノードと前記定電流源との間に接続された第4トランジスタを含み、
前記第2トランジスタの前記一の入出力端子は、前記第4トランジスタを介して前記定電流源に接続されており、
前記第2出力端子は、前記第4トランジスタの制御端子に接続されている、
請求項10に記載の電流制御回路。
【請求項13】
前記第1オペアンプは、前記第1入力端子に印加される電位と前記第2入力端子に印加される電位との差分に応じた大きさの電流を、前記第1出力端子から前記第2電流として前記第1ノードに供給する、
請求項4~6及び9のいずれか1項に記載の電流制御回路。
【請求項14】
前記可変電流源回路は、前記第1ノードの電位が下降した場合に前記第2電流を増大させ、前記第1ノードの電位が上昇した場合に前記第2電流を減少させる、
請求項1~13のいずれか1項に記載の電流制御回路。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の電流制御回路と、
前記第1ノードに接続され、前記バイアス電流を前記増幅トランジスタに供給するバイアス回路と、を備え、
前記バイアス回路は、互いに制御端子が接続された第5トランジスタ及び第6トランジスタを含む第2カレントミラー回路を含み、
前記第5トランジスタの一の入出力端子及び制御端子は、前記第1ノードに接続されており、
前記第6トランジスタの一の入出力端子は、前記増幅トランジスタの制御端子に接続されている、
バイアス供給回路。
【請求項16】
請求項8~11のいずれか1項に記載の電流制御回路と、
前記第1ノードに接続され、前記バイアス電流を前記増幅トランジスタに供給するバイアス回路と、
前記負荷回路と、を備え、
前記バイアス回路は、互いに制御端子が接続された第5トランジスタ及び第6トランジスタを含む第2カレントミラー回路を含み、
前記第5トランジスタの一の入出力端子及び制御端子は、前記第1ノードに接続されており、
前記第6トランジスタの一の入出力端子は、前記増幅トランジスタの制御端子に接続されており、
前記負荷回路は、
互いに制御端子が接続された第7トランジスタ及び第8トランジスタを含む第3カレントミラー回路と、
第9トランジスタと、を含み、
前記第7トランジスタの一の入出力端子及び制御端子は、前記第2ノードに接続されており、
前記第8トランジスタの一の入出力端子は、前記第9トランジスタの制御端子に接続されており、
前記第7トランジスタ及び前記第8トランジスタはそれぞれ、前記第5トランジスタ及び前記第6トランジスタと同種のトランジスタであり、
前記第9トランジスタは、前記増幅トランジスタと同種のトランジスタである、
バイアス供給回路。
【請求項17】
前記バイアス回路は、さらに、前記第5トランジスタの他の入出力端子と基準電位との間に、ダイオード接続された第10トランジスタを含む、
請求項15又は16に記載のバイアス供給回路。
【請求項18】
請求項15~17のいずれか1項に記載のバイアス供給回路と、
前記増幅トランジスタと、を備える、
増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流制御回路、バイアス供給回路及び増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高周波信号を増幅する高周波増幅回路が知られている。例えば、特許文献1には、増幅トランジスタと、当該増幅トランジスタにバイアスを供給するバイアス電圧供給回路と、を備える高周波増幅回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の高周波増幅回路において、大電力信号の入力、又は、増幅トランジスタの発熱の影響などによって、増幅トランジスタのベースに供給されるバイアス電流が減少すると、増幅トランジスタの利得が減少する。この結果、増幅トランジスタは、入力電力の線形性を保つことができず、出力歪が増大する。
【0005】
そこで、本発明は、増幅トランジスタの歪特性の劣化を抑制することができる電流制御回路、バイアス供給回路及び増幅装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電流制御回路は、高周波信号を増幅する増幅トランジスタに供給されるバイアス電流を制御する電流制御回路であって、第1ノードと、第1ノードに第1電流を供給する第1定電流源回路と、第1ノードの電位と参照電位との比較結果に基づいて、第1ノードに第2電流を供給する可変電流源回路と、を備え、第1ノードは、第1電流と第2電流とを含む、バイアス電流を制御するための制御電流を出力する。
【0007】
本発明の一態様に係るバイアス供給回路は、上記一態様に係る電流制御回路と、第1ノードに接続され、バイアス電流を増幅トランジスタに供給するバイアス回路と、を備え、バイアス回路は、互いに制御端子が接続された第5トランジスタ及び第6トランジスタを含む第2カレントミラー回路を含み、第5トランジスタの一の入出力端子及び制御端子は、第1ノードに接続されており、第6トランジスタの一の入出力端子は、増幅トランジスタの制御端子に接続されている。
【0008】
本発明の一態様に係る増幅装置は、上記一態様に係るバイアス供給回路と、増幅トランジスタと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、増幅トランジスタの歪特性の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る増幅装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る電力増幅器の回路構成を示す回路図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る電流制御回路の機能構成を示す図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係る電流制御回路の回路構成を示す回路図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1に係る増幅トランジスタの利得の出力電力特性(入力電力特性)を示す図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1の変形例に係る電流制御回路の回路構成を示す回路図である。
【
図7】
図7は、実施の形態2に係る電流制御回路の機能構成を示す図である。
【
図8】
図8は、実施の形態2に係る電流制御回路の回路構成を示す回路図である。
【
図9】
図9は、実施の形態2に係る電流制御回路に接続された負荷回路の回路構成を示す回路図である。
【
図10】
図10は、実施の形態3に係る電流制御回路の回路構成を示す回路図である。
【
図11】
図11は、各実施の形態に係る増幅装置の実施例1を示す図である。
【
図12】
図12は、各実施の形態に係る増幅装置の実施例2を示す図である。
【
図13】
図13は、実施の形態2に係る増幅装置の実施例3を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本発明の実施の形態に係る電流制御回路、バイアス供給回路及び増幅装置について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0012】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0013】
また、本発明の回路構成において、「直接接続される」とは、他の回路素子を介さずに接続端子及び/又は配線導体で直接接続されることを意味する。一方、「接続される」とは、接続端子及び/又は配線導体で直接接続される場合だけでなく、他の回路素子を介して電気的に接続される場合も含む。また、「AとBとの間に接続される」とは、AとBとの間でA及びBの両方に接続されることを意味する。
【0014】
また、本明細書において、「第1」、「第2」などの序数詞は、特に断りの無い限り、構成要素の数又は順序を意味するものではなく、同種の構成要素の混同を避け、区別する目的で用いられている。
【0015】
(実施の形態1)
[1-1.増幅装置の構成]
まず、実施の形態1に係る増幅装置の構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施の形態に係る増幅装置1の構成を示す図である。
【0016】
図1に示されるように、増幅装置1は、電力増幅器10と、電流制御回路20とを備える。
【0017】
電力増幅器10は、入力端子Pinと、出力端子Poutと、を有する。入力端子Pinは、例えば、RFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)に接続される。出力端子Poutは、例えば、アンテナ素子(図示せず)に接続される。
【0018】
電力増幅器10は、入力端子Pinから入力された高周波信号を増幅し、出力端子Poutから出力する。高周波信号は、例えば、Wi-Fi(登録商標)、LTE(Long Term Evolution)又は5G(5th Generation)などの通信規格に準拠した信号である。電力増幅器10は、送信用の高周波信号を増幅するパワーアンプである。電力増幅器10は、例えば、マルチモード/マルチバンド対応の携帯電話のフロントエンド部に配置される。
【0019】
電流制御回路20は、電力増幅器10が備える増幅トランジスタ11(
図2を参照)に供給されるバイアス電流Ibpaを制御する。具体的には、電流制御回路20は、ノードN1から出力する制御電流Ibを電力増幅器10に供給する。制御電流Ibは、増幅トランジスタ11のバイアス電流Ibpaを制御するための電流である。制御電流Ibとバイアス電流Ibpaとの関係については、後で説明する。電流制御回路20は、PAC(Power Amplifier Controller)とも呼ばれ、バイアス電流Ibpaを制御することによって、電力増幅器10の動作を制御する。
【0020】
[1-2.電力増幅器の構成]
次に、電力増幅器10の構成について、
図2を用いて説明する。
図2は、本実施の形態に係る電力増幅器10の回路構成を示す回路図である。
【0021】
図2に示されるように、電力増幅器10は、増幅トランジスタ11と、バイアス回路12と、DCカット用キャパシタC1と、を備える。
【0022】
増幅トランジスタ11は、入力された高周波信号を増幅するトランジスタである。増幅トランジスタ11は、バイポーラトランジスタであり、ベース、コレクタ及びエミッタを有する。増幅トランジスタ11は、例えばシリコン(Si)、シリコンゲルマニウム(SiGe)又はヒ化ガリウム(GaAs)を用いて形成されたnpn型のバイポーラトランジスタである。
【0023】
増幅トランジスタ11のベースは、制御端子の一例であり、DCカット用キャパシタC1を介して入力端子Pinに接続されている。増幅トランジスタ11のコレクタは、出力端子Poutに接続されている。増幅トランジスタ11のエミッタは、グランドに接続(すなわち、接地)されている。
【0024】
なお、電力増幅器10は、複数の増幅トランジスタ11を備えてもよい。複数の増幅トランジスタ11は、マルチセル型のバイポーラトランジスタを構成していてもよい。
【0025】
バイアス回路12は、バイアス電流Ibpaを増幅トランジスタ11に供給する。バイアス回路12は、電流制御回路20のノードN1に接続される。具体的には、バイアス回路12は、制御入力端子13と、電源端子14と、を有する。制御入力端子13がノードN1に接続される。
【0026】
図2に示されるように、バイアス回路12は、トランジスタTr1、Tr2及びTr3と、抵抗R1と、を含む。
【0027】
トランジスタTr1及びTr2は、互いに制御端子が接続されてカレントミラー回路を構成している。当該カレントミラー回路は、第2カレントミラー回路の一例であり、増幅トランジスタ11に接続されている。トランジスタTr1及びTr2は、同種のトランジスタである。具体的には、トランジスタTr1及びTr2はそれぞれ、バイポーラトランジスタであり、ベース、コレクタ及びエミッタを有する。ベースは、制御端子の一例であり、コレクタ及びエミッタはそれぞれ、入出力端子の一例である。トランジスタTr1及びTr2は、例えばSi、SiGe又はGaAsを用いて形成されたnpn型のバイポーラトランジスタである。
【0028】
トランジスタTr1は、第5トランジスタの一例である。トランジスタTr1のコレクタ及びベースは、互いに接続され、抵抗R1を介して制御入力端子13に接続されている。つまり、トランジスタTr1のコレクタ及びベースは、電流制御回路20のノードN1に接続される。トランジスタTr1のエミッタは、トランジスタTr3を介してグランドに接続されている。
【0029】
トランジスタTr2は、第6トランジスタの一例である。トランジスタTr2のコレクタは、電源端子14に接続されている。トランジスタTr2のベースは、トランジスタTr1のベースに接続されている。トランジスタTr2のエミッタは、増幅トランジスタ11のベースに接続されている。例えば、トランジスタTr2のエミッタは、増幅トランジスタ11のベースに直接接続されていてもよく、インダクタなどの回路素子を介して接続されていてもよい。
【0030】
トランジスタTr3は、増幅トランジスタ11と同種のトランジスタである。トランジスタTr3は、バイポーラトランジスタであり、ベース、コレクタ及びエミッタを有する。トランジスタTr3は、例えば、Si、SiGe又はGaAsを用いて形成されたnpn型のバイポーラトランジスタである。
【0031】
トランジスタTr3は、第10トランジスタの一例であり、トランジスタTr1のエミッタと基準電位との間に、ダイオード接続されている。具体的には、トランジスタTr3のベースとコレクタとが互いに接続され、トランジスタTr1のエミッタに接続されている。トランジスタTr3のエミッタは、基準電位の一例であるグランドに接続されている。
【0032】
[1-3.電流制御回路の構成]
続いて、電流制御回路20の構成について説明する。
【0033】
[1-3-1.機能構成]
まず、電流制御回路20の機能構成について、
図3を用いて説明する。
図3は、本実施の形態に係る電流制御回路20の機能構成を示す図である。
【0034】
図3に示されるように、電流制御回路20は、ノードN1と、定電流源回路30と、可変電流源回路40と、を備える。
【0035】
定電流源回路30は、第1定電流源回路の一例であり、ノードN1に第1電流Ib1を供給する。第1電流Ib1は、定電流である。
【0036】
可変電流源回路40は、ノードN1の電位と参照電位との比較結果に基づいて、ノードN1に第2電流Ib2を供給する。第2電流Ib2は、比較結果に基づいて大きさが変わる可変電流である。具体的には、可変電流源回路40は、ノードN1の電位が下降した場合に第2電流Ib2を増大させ、ノードN1の電位が上昇した場合に第2電流Ib2を減少させる。
【0037】
ノードN1は、第1ノードの一例であり、電力増幅器10のバイアス回路12に接続されている。ノードN1は、定電流源回路30とバイアス回路12とを結ぶ経路上に位置している。ノードN1は、制御電流Ibを出力する出力端子である。制御電流Ibは、バイアス電流Ibpaを制御するための電流である。制御電流Ibは、第1電流Ib1と第2電流Ib2とを含む。つまり、制御電流Ibの電流量は、第1電流Ib1の電流量と第2電流Ib2の電流量との和である。
【0038】
可変電流源回路40は、
図3に示されるように、可変電流源41と、電位監視部42と、を機能として含む。
【0039】
可変電流源41は、第2電流Ib2を生成して出力する。具体的には、可変電流源41は、電位監視部42による監視結果(具体的には、電位の比較結果)に基づいて大きさが変化する第2電流Ib2を生成して出力する。
【0040】
電位監視部42は、ノードN1の電位を監視する。電位監視部42は、ノードN1の電位と参照電位とを比較し、比較結果に基づいて可変電流源41を制御する。本実施の形態では、参照電位は、所定のタイミングにおけるノードN1の電位である。つまり、参照電位は、電位の監視を行うタイミングよりも過去の時点でのノードN1の電位である。
【0041】
具体的には、参照電位は、電力増幅器10の入力端子Pinに入力される高周波信号の信号強度が閾値以下の場合のノードN1の電位である。あるいは、参照電位は、増幅トランジスタ11の温度が閾値以下の場合のノードN1の電位であってもよい。また、参照電位は、高周波信号の信号強度が閾値以下であり、かつ、増幅トランジスタ11の温度が閾値以下の場合のノードN1の電位であってもよい。閾値は、例えば、可変電流源回路40が第2電流Ib2を供給せずに定電流源回路30から供給される第1電流Ib1のみが制御電流Ibとしてバイアス回路12に供給された場合に増幅トランジスタ11に適切なバイアス電流Ibpaが流れている時の、高周波信号の信号強度又は増幅トランジスタ11の温度である。なお、閾値は、これらに限定されなくてもよい。
【0042】
可変電流源回路40は、ノードN1の電位が参照電位を下回った場合、ノードN1の電位と参照電位との電位差に応じた大きさの第2電流Ib2をノードN1に供給する。この場合、ノードN1からは、第1電流Ib1と第2電流Ib2とを合わせた電流が制御電流Ibとして出力され、バイアス回路12に供給される。
【0043】
可変電流源回路40は、ノードN1の電位が参照電位以上である場合、第2電流Ib2を供給しない。つまり、ノードN1からは、第1電流Ib1が制御電流Ibとして出力され、バイアス回路12に供給される。
【0044】
[1-3-2.回路構成]
次に、電流制御回路20の具体的な回路構成について、
図4を用いて説明する。
図4は、本実施の形態に係る電流制御回路20の回路構成を示す回路図である。
【0045】
[1-3-2-1.定電流源回路]
図4に示されるように、定電流源回路30は、トランジスタ31及び32と、定電流源33と、を含む。定電流源回路30は、定電流源33が出力する定電流と同じ大きさ、又は、当該定電流に比例する大きさの電流を第1電流Ib1としてノードN1に供給する。
【0046】
トランジスタ31及び32は、互いに制御端子が接続されてカレントミラー回路を構成している。当該カレントミラー回路は、第1カレントミラー回路の一例であり、定電流源33及びノードN1に接続されている。
【0047】
トランジスタ31及び32は、同種のトランジスタである。具体的には、トランジスタ31及び32はそれぞれ、電界効果トランジスタであり、ゲート、ドレイン及びソースを有する。ゲートは、制御端子の一例であり、ドレイン及びソースはそれぞれ、入出力端子の一例である。トランジスタ31及び32は、例えばSiを用いて形成されたpチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。
【0048】
トランジスタ31は、第1トランジスタの一例である。トランジスタ31のソースは、電圧源Vbattに接続され、ドレインはノードN1に接続されている。トランジスタ31のゲートは、定電流源33に接続されている。
【0049】
トランジスタ32は、第2トランジスタの一例である。トランジスタ32のソースは、電圧源Vbattに接続されている。トランジスタ32のドレイン及びゲートは、定電流源33に接続されている。
【0050】
定電流源33は、定電流を出力する。定電流源33は、例えば、電流出力DAC(Digital to Analog Converter)、又は、電圧-電流変換回路などである。また、定電流源33は、電圧-電流変換回路に加えて、入力電力又は出力電力を検波して電圧に変換する回路を備えてもよい。当該回路が変換した電圧を、電圧-電流変換回路によって電流に変換し出力してもよい。また、定電流源33は、熱を電流に変換することで、定電流を出力してもよい。
【0051】
なお、定電流源回路30のカレントミラー回路をMOSFETで構成することにより、カレントミラー回路をゲート電圧制御で動作させることができる。これにより、消費電力を抑制することができる。また、定電流源33が出力する電流を精度良く第1電流Ib1に変換することができる。
【0052】
[1-3-2-2.可変電流源回路]
図4に示されるように、可変電流源回路40は、サンプルホールド回路43と、制御部44と、オペアンプ45と、を含む。
図3に示される可変電流源41の機能は、オペアンプ45によって実現される。また、
図3に示される電位監視部42の機能は、サンプルホールド回路43、制御部44及びオペアンプ45によって実現される。つまり、オペアンプ45は、可変電流源41及び電位監視部42の各々の機能の少なくとも一部を担っている。
【0053】
サンプルホールド回路43は、参照電位を保持する保持回路の一例である。具体的には、サンプルホールド回路43は、所定のタイミングにおけるノードN1の電位を参照電位として保持する。本実施の形態では、サンプルホールド回路43は、ノードN1に直接接続されている。
【0054】
図示されていないが、サンプルホールド回路43は、例えば、キャパシタと、当該キャパシタとノードN1との導通及び非導通を切り替えるスイッチと、を含む。スイッチの導通及び非導通は、制御部44から入力されるタイミング信号の信号レベルによって制御される。
【0055】
制御部44は、サンプルホールド回路43がノードN1の電位を参照電位として保持するタイミングを制御する。制御部44は、タイミング入力端子21を介して入力される信号の信号レベルを調整するレベルシフタである。タイミング入力端子21を介して入力される信号は、ノードN1の電位を保持するタイミングを示す信号、すなわち、ノードN1の電位を参照電位として取得するタイミングを示す信号である。制御部44は、当該信号が入力された場合に、サンプルホールド回路43に供給するタイミング信号の信号レベルをローレベルからハイレベル(又は、ハイレベルからローレベル)に変更する。これにより、サンプルホールド回路43のスイッチが導通して、キャパシタにノードN1の電位が保持される。
【0056】
オペアンプ45は、第1オペアンプの一例であり、非反転入力端子(+)、反転入力端子(-)及び出力端子を有する。非反転入力端子は、第1入力端子の一例であり、サンプルホールド回路43を介してノードN1に接続されている。反転入力端子は、第2入力端子の一例であり、ノードN1に接続されている。出力端子は、第1出力端子の一例であり、ノードN1に接続されている。例えば、反転入力端子及び出力端子は、ノードN1に直接接続されている。
【0057】
オペアンプ45は、誤差増幅器として動作する。つまり、オペアンプ45は、非反転入力端子に印加される電位と、反転入力端子に印加される電位との差分に応じた大きさの電流を、出力端子から第2電流Ib2として出力する。非反転入力端子には、サンプルホールド回路43で保持された参照電位が印加される。反転入力端子には、ノードN1の電位が印加される。反転入力端子に印加される電位は、監視時点でのノードN1の電位である。オペアンプ45は、参照電位と監視時点でのノードN1の電位との電位差に応じた電流を出力端子から第2電流Ib2としてノードN1に供給する。
【0058】
なお、タイミング入力端子21は、電流制御回路20が備える外部入力端子である。タイミング入力端子21は、例えば、BBIC(Baseband Integrated Circuit)又はRFICなどに接続される。BBIC又はRFICは、高周波信号と閾値との比較、及び、増幅トランジスタ11の温度と閾値との比較の少なくとも一方を行い、参照電位としてノードN1の電位を保持すべきタイミングを決定する。BBIC又はRFICは、決定したタイミングを指示する信号を出力する。出力された信号がタイミング入力端子21を介して制御部44に入力される。
【0059】
なお、制御部44がタイミングを決定してもよい。例えば、タイミング入力端子21には、高周波信号の信号電力を示す電力情報、及び、増幅トランジスタ11の温度を示す温度情報の少なくとも一方が入力されてもよい。制御部44は、閾値を記憶するメモリを備えており、電力情報及び温度情報の少なくとも一方に基づいて、参照電位としてノードN1の電位を保持するタイミングを決定してもよい。
【0060】
また、制御部44がタイミングを決定する場合、タイミング入力端子21は設けられていなくてもよい。例えば、制御部44は、高周波信号の信号電力、及び、増幅トランジスタ11の温度の少なくとも一方を検出する検出部を含み、検出部が検出した信号電力及び信号電力の少なくとも一方に基づいて、ノードN1の電位を保持するタイミングを決定してもよい。例えば、制御部44は、さらに、検出部とサンプルホールド回路43とに接続された遅延回路を含む。遅延回路は、検出結果に基づいて所定のタイミング信号を生成し、生成したタイミング信号をサンプルホールド回路43に入力する。これにより、サンプルホールド回路43は、ノードN1の電位を保持すべきタイミングで保持することができる。
【0061】
[1-4.動作]
続いて、本実施の形態に係る増幅装置1の動作について説明する。
【0062】
まず、電力増幅器10に入力される高周波信号の信号電力が小電力であり、かつ、増幅トランジスタ11の温度が低い場合について、
図2及び
図4を参照しながら説明する。
【0063】
電流制御回路20は、
図4に示されるように、定電流源回路30が供給する第1電流Ib1を制御電流IbとしてノードN1から出力する。制御電流Ibは、
図2に示されるように、電流制御回路20のノードN1から制御入力端子13を介してバイアス回路12に入力される。
【0064】
バイアス回路12ではトランジスタTr1とトランジスタTr2とがカレントミラー回路を構成しているので、制御電流Ibに応じた電流が電源端子14からトランジスタTr2を介して流れ、バイアス電流Ibpaとして増幅トランジスタ11のベースに供給される。電力増幅器10に入力される高周波信号の信号電力が小電力であり、かつ、増幅トランジスタ11の温度が低い場合には、バイアス電流Ibpaによって増幅トランジスタ11が安定した動作を行うので、高周波信号を適切に増幅することができる。このとき、増幅トランジスタ11の利得は安定している。
【0065】
次に、電力増幅器10に入力される高周波信号の信号電力が大電力である場合について説明する。
【0066】
増幅トランジスタ11に入力される高周波信号の信号電力が大電力の場合、増幅トランジスタ11のベースの時間平均的な電位が上昇するので、トランジスタTr2のエミッタ電位も上昇する。エミッタ電位の上昇によってトランジスタTr2のベース-エミッタ間電圧が小さくなるので、トランジスタTr1及びTr2で構成されるカレントミラー回路が理想的なカレントミラー動作をできなくなる。このため、トランジスタTr2のコレクタ電流であるバイアス電流Ibpaが減少し始める。
【0067】
バイアス電流Ibpaの減少を抑制するために、制御電流Ibのうち、トランジスタTr2のベースに流れる電流が多くなる。このため、制御電流Ibのうち、トランジスタTr1及びTr3を流れる電流が少なくなる。トランジスタTr1及びTr3を流れる電流が少なくなることにより、トランジスタTr1及びTr3での電圧降下が小さくなるので、トランジスタTr1のコレクタ電位が低下する。トランジスタTr1のコレクタ電位はトランジスタTr2のベース電位に等しいので、当該ベース電位が低下することにより、トランジスタTr2のベース-エミッタ間電圧が低下し、結局、バイアス電流Ibpaを維持することができなくなる。したがって、バイアス電流Ibpaの低下に伴って、増幅トランジスタ11の利得が低下する。
【0068】
図5は、本実施の形態に係る増幅トランジスタ11の利得の出力電力特性(入力電力特性)を示す図である。
図5において、縦軸は、増幅トランジスタ11の利得(ゲイン)を表している。横軸は、電力増幅器10の出力端子Poutから出力される高周波信号の信号電力(出力電力)を表している。なお、横軸は、電力増幅器10の入力端子Pinに入力される高周波信号の信号電力(入力電力)と置き換えることが可能である。
【0069】
図5には、比較例として、電流制御回路20が可変電流源回路40を備えず、制御電流Ibとして定電流を供給する場合における増幅トランジスタ11の利得の出力電力特性が表されている。
図5に示される例では、27.5dBm出力に対応したバイアス電流Ibpaが流れるように、無信号時にバイアス電流Ibpaを設定した場合を表している。比較例では、20dBm以上の範囲において、増幅トランジスタ11の利得の低下が確認される。
【0070】
このように、制御電流Ibが一定の大きさの場合には、高周波信号の信号電力が大電力のときに、ノードN1の電位が低下し、結果として、バイアス電流Ibpaを確保することができず、増幅トランジスタ11の利得が低下する。つまり、入力電力に対する利得の線形性を保つことができず、大電力の場合に出力歪が増大する。
【0071】
これに対して、本実施の形態では、電流制御回路20が可変電流源回路40を備える。可変電流源回路40は、ノードN1の電位が低下した場合に、第1電流Ib1に対して追加的に第2電流Ib2をノードN1に供給する。具体的には、
図4に示されるように、オペアンプ45の反転入力端子がノードN1に接続されているので、ノードN1の電位が低下すると、非反転入力端子と反転入力端子との電位差が大きくなる。オペアンプ45は、当該電位差の大きさに応じた電流を出力端子から第2電流Ib2としてノードN1に供給する。これにより、ノードN1からは、第1電流Ib1と第2電流Ib2とを含む電流が制御電流Ibとして出力される。
【0072】
制御電流Ibが増大することで、バイアス回路12のトランジスタTr2のベースに供給する電流を増大させながら、トランジスタTr1及びTr3を流れる電流量を確保することができる。このため、トランジスタTr1及びTr3の電圧降下量を維持することができ、トランジスタTr1のコレクタ電位、すなわち、トランジスタTr2のベース電位を維持することができる。したがって、バイアス電流Ibpaを確保することができるので、増幅トランジスタ11の利得を維持することができる。例えば、
図5に実施例として示されるように、27.5dBm程度においても、増幅トランジスタ11の利得が維持できていることが確認された。
【0073】
なお、増幅トランジスタ11の温度が上昇した場合も、入力電力が大電力である場合と同様である。
【0074】
例えば、増幅トランジスタ11に対して継続的に高周波信号が入力される場合、電力増幅器10は、電力を消費することにより発熱し、その温度が上昇する。増幅トランジスタ11の温度が上昇すると、増幅トランジスタ11のベース-エミッタ間電圧が低下するので、利得も低下する。このため、一定のバイアス電流Ibpaを増幅トランジスタ11のベースに供給するだけでは、増幅トランジスタ11の利得を維持することができない。
【0075】
ここで、電力増幅器10の温度が上昇すると、トランジスタTr1、Tr2及びTr3の各々のベース-エミッタ間電圧も低下する。制御電流Ibが定電流(第1電流Ib1のみ)である場合、バイアス電流Ibpaを大きくするためには、トランジスタTr2のベースに流す電流を増大させる必要がある。このため、入力電力が大電力である場合と同様に、ノードN1の電位が低下する。
【0076】
したがって、本実施の形態に係る電流制御回路20によれば、ノードN1の電位の低下を検出することによって、第2電流Ib2がノードN1に供給される。このため、制御電流Ibを増大させることができ、バイアス電流Ibpaを増大させることができ、増幅トランジスタ11の利得の低下を抑制することができる。
【0077】
[1-5.効果など]
以上のように、本実施の形態に係る電流制御回路20は、高周波信号を増幅する増幅トランジスタ11に供給されるバイアス電流を制御する電流制御回路であって、ノードN1と、ノードN1に第1電流Ib1を供給する定電流源回路30と、ノードN1の電位と参照電位との比較結果に基づいて、ノードN1に第2電流Ib2を供給する可変電流源回路40と、を備える。ノードN1は、第1電流Ib1と第2電流Ib2とを含む、バイアス電流Ibpaを制御するための制御電流Ibを出力する。
【0078】
これにより、ノードN1の電位と参照電位との比較結果に基づいて第2電流Ib2が追加的にノードN1から出力される。制御電流Ibの電流量が調整されることによって、増幅トランジスタ11に供給されるバイアス電流Ibpaの電流量も調整することができる。例えば、バイアス電流Ibpaの減少を抑制することができるので、増幅トランジスタ11の歪特性の劣化を抑制することができる。
【0079】
また、例えば、参照電位は、高周波信号の信号強度が閾値以下の場合のノードN1の電位である。
【0080】
これにより、増幅トランジスタ11に入力される高周波信号の信号電力が大きい場合であっても、バイアス電流Ibpaを維持することができ、増幅トランジスタ11の利得の低下を抑制することができる。このため、大電力の場合の出力歪を抑制することができるので、増幅トランジスタ11の歪特性の劣化を抑制することができる。
【0081】
また、例えば、参照電位は、増幅トランジスタ11の温度が閾値以下の場合のノードN1の電位であってもよい。
【0082】
これにより、増幅トランジスタ11の温度が上昇した場合であっても、バイアス電流Ibpaを増大させることができ、増幅トランジスタ11の利得の低下を抑制することができる。このため、高温時の出力歪を抑制することができるので、増幅トランジスタ11の歪特性の劣化を抑制することができる。
【0083】
また、例えば、可変電流源回路40は、所定のタイミングにおけるノードN1の電位を参照電位として保持するサンプルホールド回路43と、非反転入力端子、反転入力端子及び出力端子を有するオペアンプ45と、を含む。オペアンプ45の非反転入力端子は、サンプルホールド回路43を介してノードN1に接続されている。オペアンプ45の反転入力端子及び出力端子は、ノードN1に接続されている。
【0084】
これにより、サンプルホールド回路43によって、小電力の信号入力時又は低温時などの通常時のノードN1の電位を参照電位として保持しておくことができる。また、オペアンプ45によって、ノードN1の電位と参照電位との電位差に基づいた第2電流Ib2を供給することができる。このように、簡単な回路構成によって、歪特性の劣化を抑制することができる。
【0085】
また、例えば、可変電流源回路40は、さらに、サンプルホールド回路43がノードN1の電位を参照電位として保持するタイミングを制御する制御部44を備える。
【0086】
これにより、適切なタイミングでノードN1の電位を参照電位として保持することができる。ノードN1との比較対象としての参照電位の精度を高めることができるので、状況に応じた適切な制御電流Ibをバイアス回路12に供給することができる。したがって、増幅トランジスタ11の歪特性の劣化を適切に抑制することができる。
【0087】
また、例えば、定電流源回路30は、定電流源33と、互いに制御端子が接続されたトランジスタ31及び32を含む第1カレントミラー回路と、を含む。トランジスタ32の一の入出力端子及び制御端子は、定電流源33に接続されている。トランジスタ31の一の入出力端子は、ノードN1に接続されている。トランジスタ31の他の入出力端子及びトランジスタ32の他の入出力端子は、電圧源Vbattに接続されている。
【0088】
これにより、例えば、電流出力DACなどの小型の電流源を定電流源として用いることができるので、低消費電力で、かつ、回路構成の配置の自由度が高い電流制御回路20を実現することができる。
【0089】
また、例えば、オペアンプ45は、非反転入力端子に印加される電位と反転入力端子に印加される電位との差分に応じた大きさの電流を、出力端子から第2電流Ib2としてノードN1に供給する。
【0090】
これにより、オペアンプ45を利用した簡易な構成で、歪特性の劣化を適切に抑制することができる。
【0091】
また、例えば、可変電流源回路140は、ノードN1の電位が下降した場合に第2電流Ib2を増大させ、ノードN1の電位が上昇した場合に第2電流Ib2を減少させる。
【0092】
これにより、ノードN1の電位に応じた適切な第2電流Ib2を供給することができるので、歪特性の劣化をより適切に抑制することができる。
【0093】
また、本実施の形態に係るバイアス供給回路は、電流制御回路20と、ノードN1に接続され、バイアス電流Ibpaを増幅トランジスタ11に供給するバイアス回路12と、を備える。バイアス回路12は、互いに制御端子が接続されたトランジスタTr1及びTr2を含む第2カレントミラー回路を含む。トランジスタTr1の一の入出力端子及び制御端子は、ノードN1に接続されている。トランジスタTr2の一の入出力端子は、増幅トランジスタ11の制御端子に接続されている。
【0094】
これにより、上述した電流制御回路20と同様の効果を得ることができる。
【0095】
また、例えば、バイアス回路12は、さらに、トランジスタTr1の他の入出力端子と基準電位との間に、ダイオード接続されたトランジスタTr3を含む。
【0096】
これにより、制御電流Ibの大きさに応じてバイアス電流Ibpaが調整されるので、歪特性の劣化をより適切に抑制することができる。
【0097】
また、本実施の形態に係る増幅装置1は、上記バイアス供給回路と、増幅トランジスタ11と、を備える。
【0098】
これにより、上述した電流制御回路20と同様の効果を得ることができる。
【0099】
[1-6.変形例]
ここで、本実施の形態に係る電流制御回路20の変形例について、
図6を用いて説明する。
図6は、本実施の形態の変形例に係る電流制御回路20aの回路構成を示す回路図である。
【0100】
図6に示されるように、電流制御回路20aは、実施の形態1に係る電流制御回路20と比較して、新たにフィルタ22を備える点が相違する。フィルタ22は、ノードN1とサンプルホールド回路43との間に接続されている。フィルタ22は、高周波信号の信号周波数を含む周波数帯を遮断周波数帯域として有する。具体的には、フィルタ22は、ローパスフィルタ又はバンドパスフィルタである。
【0101】
このように、本変形例に係る電流制御回路20aは、ノードN1とサンプルホールド回路43との間に接続され、高周波信号の信号周波数を含む周波数帯を遮断周波数帯域として有するフィルタ22を備える。
【0102】
これにより、高周波成分がサンプルホールド回路43に入力されるのを抑制することができるので、サンプルホールド回路43は、ノードN1の電位の直流成分を安定して保持することができる。このため、参照電位の精度を高めることができ、歪特性の劣化を抑制することができる。
【0103】
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2について説明する。実施の形態2では、実施の形態1とは電流制御回路の構成が相違する。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0104】
[2-1.電流制御回路の構成]
以下では、本実施の形態に係る電流制御回路の構成について説明する。なお、本実施の形態において、電流制御回路のノードN1が接続される電力増幅器10の構成は、実施の形態1と同じである。
【0105】
[2-1-1.機能構成]
まず、本実施の形態に係る電流制御回路の機能構成について、
図7を用いて説明する。
図7は、本実施の形態に係る電流制御回路120の機能構成を示す図である。
【0106】
図7に示されるように、電流制御回路120は、ノードN1及びN2と、定電流源回路130及び131と、可変電流源回路140と、を備える。
【0107】
ノードN1は、実施の形態1と同じであり、電力増幅器10のバイアス回路12の制御入力端子13(
図2を参照)に接続される。
【0108】
ノードN2は、第2ノードの一例であり、負荷回路150に接続されている。ノードN2は、定電流源回路131と負荷回路150とを結ぶ経路上に位置している。
【0109】
定電流源回路130は、第1定電流源回路の一例であり、ノードN1に第1電流Ib1を供給する。第1電流Ib1は、定電流である。
【0110】
定電流源回路131は、第2定電流源回路の一例であり、ノードN2に第3電流Ib3を供給する。定電流源回路131は、ノードN2を介して負荷回路150に第3電流Ib3を供給する。第3電流Ib3は、定電流である。具体的には、第3電流Ib3は、第1電流Ib1と同じ大きさである。
【0111】
可変電流源回路140は、ノードN1の電位と参照電位との比較結果に基づいて、ノードN1に第2電流Ib2を供給する。本実施の形態では、参照電位は、ノードN2の電位である。
【0112】
可変電流源回路140は、
図7に示されるように、可変電流源41と、電位差監視部142と、を機能として含む。可変電流源41は、実施の形態1と同じである。
【0113】
電位差監視部142は、ノードN1の電位とノードN2の電位との電位差を監視する。つまり、電位差監視部142は、ノードN1の電位と、参照電位であるノードN2の電位と、を比較する。参照電位がノードN2の電位である点を除いて、可変電流源回路140の動作は実施の形態1に係る可変電流源回路40と同じである。
【0114】
[2-1-2.回路構成]
次に、電流制御回路120の具体的な回路構成について、
図8を用いて説明する。
図8は、本実施の形態に係る電流制御回路120の回路構成を示す回路図である。
【0115】
[2-1-2-1.定電流源回路]
図8に示されるように、定電流源回路130及び131は、トランジスタ31、32及び132と、定電流源33と、を含む。具体的には、定電流源回路130は、トランジスタ31及び32と、定電流源33と、を含む。定電流源回路131は、トランジスタ32及び132と、定電流源33と、を含む。つまり、トランジスタ32及び定電流源33は、定電流源回路130及び131の各々の機能の一部を担っている。
【0116】
定電流源回路130は、実施の形態1に係る定電流源回路30と同じ構成を有する。つまり、トランジスタ31及び32並びに定電流源33は、実施の形態1と同じである。
【0117】
また、定電流源回路131は、定電流源回路130と同等の構成を有する。具体的には、定電流源回路131では、トランジスタ32及び132は、互いに制御端子が接続されてカレントミラー回路を構成している。当該カレントミラー回路は、定電流源33及びノードN2に接続されている。
【0118】
トランジスタ132は、トランジスタ32と同種のトランジスタである。具体的には、トランジスタ132は、電界効果トランジスタであり、ゲート、ドレイン及びソースを有する。ゲートは、制御端子の一例であり、ドレイン及びソースはそれぞれ、入出力端子の一例である。トランジスタ132は、例えばSiを用いて形成されたpチャネルMOSFETである。
【0119】
トランジスタ132は、第3トランジスタの一例である。トランジスタ132のソースは、電圧源Vbattに接続され、ドレインはノードN2に接続されている。トランジスタ132のゲートは、定電流源33に接続されている。
【0120】
トランジスタ132は、例えば、トランジスタ31と同じ特性を有するトランジスタである。これにより、トランジスタ132を流れる第3電流Ib3は、トランジスタ31を流れる第1電流Ib1と同じにすることができる。
【0121】
[2-1-2-2.可変電流源回路]
図8に示されるように、可変電流源回路140は、オペアンプ45を含む。つまり、オペアンプ45は、可変電流源41及び電位差監視部142の各々の機能を担っている。
【0122】
オペアンプ45の非反転入力端子は、ノードN2に接続されている。オペアンプ45の反転入力端子及び出力端子は、ノードN1に接続されている。本実施の形態では、オペアンプ45の各端子は、ノードN1又はN2に直接接続されている。これにより、非反転入力端子には、ノードN2の電位が参照電位として印加される。反転入力端子には、ノードN1の電位が印加される。オペアンプ45は、参照電位と監視時点でのノードN1の電位との電位差に応じた電流を出力端子から第2電流Ib2としてノードN1に供給する。
【0123】
[2-2.負荷回路]
図8に示されるように、ノードN2には、負荷回路150が接続されている。本実施の形態に係る増幅装置は、負荷回路150を備える。負荷回路150は、電力増幅器10と同等の回路構成を有する。
【0124】
図9は、本実施の形態に係る負荷回路150の回路構成を示す回路図である。
図9に示されるように、負荷回路150は、トランジスタ151~154と、抵抗R2と、を備える。また、負荷回路150は、電流入力端子155と、電源端子156と、を有する。電流入力端子155が、電流制御回路120のノードN2に接続される。
【0125】
トランジスタ151~154はそれぞれ、電力増幅器10のトランジスタTr1~Tr3及び増幅トランジスタ11に対応している。トランジスタ151~154の接続関係は、トランジスタTr1~Tr3及び増幅トランジスタ11の接続関係と同じである。
【0126】
例えば、トランジスタ151及び152は、互いに制御端子が接続されてカレントミラー回路を構成している。当該カレントミラー回路は、第3カレントミラー回路の一例であり、トランジスタ154に接続されている。トランジスタ151及び152は、互いに同種のトランジスタであり、バイアス回路12のトランジスタTr1及びTr2と同種のトランジスタである。トランジスタ151及び152は、例えばSi、SiGe又はGaAsを用いて形成されたnpn型のバイポーラトランジスタである。
【0127】
トランジスタ151は、第7トランジスタの一例である。トランジスタ151のコレクタ及びベースは、互いに接続され、抵抗R2を介して電流入力端子155に接続されている。つまり、トランジスタ151のコレクタ及びベースは、電流制御回路120のノードN2に接続される。トランジスタ151のエミッタは、トランジスタ153を介してグランドに接続されている。
【0128】
トランジスタ152は、第8トランジスタの一例である。トランジスタ152のコレクタは、電源端子156に接続されている。トランジスタ152のベースは、トランジスタ151のベースに接続されている。トランジスタ152のエミッタは、トランジスタ154のベースに接続されている。
【0129】
トランジスタ153は、バイアス回路12のトランジスタTr3と同種のトランジスタである。言い換えれば、トランジスタ153は、バイポーラトランジスタであり、ベース、コレクタ及びエミッタを有する。トランジスタ153は、例えばSi、SiGe又はGaAsを用いて形成されたnpn型のバイポーラトランジスタである。なお、バイアス回路12のトランジスタTr3がFETであった場合には、トランジスタ153もFETとなる。
【0130】
トランジスタ153は、第11トランジスタの一例であり、トランジスタ151のエミッタと基準電位との間に、ダイオード接続されている。具体的には、トランジスタ153のベースとコレクタとが互いに接続され、トランジスタ151のエミッタに接続されている。トランジスタ153のエミッタは、基準電位の一例であるグランドに接続されている。
【0131】
トランジスタ154は、バイアス回路12の増幅トランジスタ11と同種のトランジスタである。トランジスタ154は、バイポーラトランジスタであり、ベース、コレクタ及びエミッタを有する。トランジスタ154は、例えばSi、SiGe又はGaAsを用いて形成されたnpn型のバイポーラトランジスタである。
【0132】
トランジスタ154は、第9トランジスタの一例である。トランジスタ154は、増幅トランジスタ11とは異なり、ベースに高周波信号が入力されない。つまり、トランジスタ154のベースは、トランジスタ152のエミッタに接続されており、入力端子Pinには接続されていない。トランジスタ154のエミッタは、基準電位の一例であるグランドに接続されている。トランジスタ154のコレクタは、電源端子156に接続されている。
【0133】
このように、負荷回路150は、電力増幅器10が備える回路素子と同種の回路素子を有し、電力増幅器10を模した回路構成を有する。負荷回路150は、高周波信号が入力されない点が電力増幅器10とは異なっている。例えば、負荷回路150のトランジスタ151~154及び抵抗R2はそれぞれ、電力増幅器10のトランジスタTr1~Tr3及び増幅トランジスタ11並びに抵抗R1と同じ特性(例えば、同じ温度特性)を有してもよい。これにより、電力増幅器10と同じ負荷作用を負荷回路150に発揮させることができるので、ノードN2の電位、すなわち、参照電位の精度を高めることができる。
【0134】
あるいは、負荷回路150のトランジスタ151~154及び抵抗R2はそれぞれ、電力増幅器10のトランジスタTr1~Tr3及び増幅トランジスタ11並びに抵抗R1を、スケールダウン(サイズダウン)した構成を有してもよい。この場合、ノードN2に接続されたトランジスタ132も、ノードN1に接続されたトランジスタ31を、スケールダウンした構成を有してもよい。例えば、各々の回路素子として1/10サイズの素子を利用することで、第3電流Ib3を減少させることができ、消費電力を低減することができる。
【0135】
[2-3.動作]
続いて、本実施の形態に係る増幅装置の動作について説明する。なお、電力増幅器10の動作は、実施の形態1と同じであるので、以下では、電流制御回路120の動作について説明する。
【0136】
本実施の形態では、ノードN2には、
図9に示される負荷回路150が接続されている。負荷回路150には、高周波信号が入力されない。また、負荷回路150は、電力増幅器10とは熱的に結合していない。このため、ノードN2の電位は、高周波信号の信号電力の大小、及び、電力増幅器10の温度の影響を受けずに安定している。つまり、ノードN2の電位である参照電位は、一定に保たれている。このため、
図8に示されるオペアンプ45は、ノードN2の電位と比較することによってノードN1の電位の低下を監視することができる。
【0137】
ノードN1の電位が低下した場合に、可変電流源回路140は、第1電流Ib1に対して追加的に第2電流Ib2をノードN1に供給する。具体的には、
図8に示されるように、オペアンプ45の反転入力端子がノードN1に接続されているので、ノードN1の電位が低下すると、非反転入力端子と反転入力端子との電位差が大きくなる。オペアンプ45は、当該電位差の大きさに応じた電流を出力端子から第2電流Ib2としてノードN1に出力する。これにより、ノードN1からは、第1電流Ib1と第2電流Ib2とを含む電流が制御電流Ibとして出力される。したがって、実施の形態1と同様に、増幅トランジスタ11に供給されるバイアス電流Ibpaを確保することができ、増幅トランジスタ11の利得を維持することができる。本実施の形態に係る電流制御回路120においても、
図5に実施例として示されるように、27.5dBm程度においても、増幅トランジスタ11の利得が維持できていることが確認された。高周波信号の信号電力が大電力の場合だけでなく、電力増幅器10の温度が上昇した場合も同様に、増幅トランジスタ11の利得を維持することができる。
【0138】
[2-4.効果など]
以上のように、本実施の形態に係る電流制御回路120は、ノードN1と、定電流源回路130と、可変電流源回路140と、負荷回路150が接続されるノードN2と、ノードN2を介して負荷回路150に第3電流Ib3を供給する定電流源回路131と、を備える。参照電位は、第2ノードN2の電位である。
【0139】
これにより、ノードN1の電位を保持するタイミングの管理が不要となるので、可変電流源回路140の制御を簡単にすることができる。また、ノードN1が接続される経路とは異なる経路上のノードN2の電位を参照電位として用いることで、高周波信号の影響が抑制され、参照電位を安定させることができる。これにより、可変電流源回路140の動作を安定させることができる。したがって、増幅トランジスタ11の歪特性の劣化を適切に抑制することができる。
【0140】
また、例えば、可変電流源回路140は、非反転入力端子、反転入力端子及び出力端子を有するオペアンプ45を含む。非反転入力端子は、ノードN2に接続されている。反転入力端子及び出力端子は、ノードN1に接続されている。
【0141】
これにより、ノードN1の電位とノードN2の電位との電位差に基づいた第2電流Ib2を供給することができる。このように、簡単な回路構成によって、歪特性の劣化を抑制することができる。
【0142】
また、例えば、定電流源回路130は、トランジスタ31を含む。定電流源回路131は、定電流源33と、トランジスタ32と、を含む。トランジスタ31及び32は、互いに制御端子が接続されてカレントミラー回路を構成している。トランジスタ31の一の入出力端子は、ノードN1に接続されており、トランジスタ32の一の入出力端子及び制御端子は、定電流源33に接続されている。トランジスタ31の他の入出力端子及びトランジスタ32の他の入出力端子は、電圧源Vbattに接続されている。
【0143】
これにより、例えば、電流出力DACなどの小型の電流源を定電流源として用いることができるので、低消費電力で、かつ、回路構成の配置の自由度が高い電流制御回路を実現することができる。
【0144】
また、例えば、定電流源回路131は、さらに、トランジスタ132を含む。トランジスタ32及び132は、互いに制御端子が接続されてカレントミラー回路を構成している。トランジスタ132の一の入出力端子は、ノードN2に接続されている。トランジスタ132の他の入出力端子は、電圧源Vbattに接続されている。
【0145】
これにより、カレントミラー回路によって精度良く負荷回路150に電流を流すことができ、参照電位であるノードN2の電位を安定させることができる。したがって、増幅トランジスタ11の歪特性の劣化を適切に抑制することができる。
【0146】
また、本実施の形態に係るバイアス供給回路は、電流制御回路120と、ノードN1に接続され、バイアス電流Ibpaを増幅トランジスタ11に供給するバイアス回路12と、負荷回路150と、を備える。バイアス回路12は、互いに制御端子が接続されたトランジスタTr1及びTr2を含む第2カレントミラー回路を含む。トランジスタTr1の一の入出力端子及び制御端子は、ノードN1に接続されている。トランジスタTr2の一の入出力端子は、増幅トランジスタ11の制御端子に接続されている。負荷回路150は、互いに制御端子が接続されたトランジスタ151及び152を含む第3カレントミラー回路と、トランジスタ154と、を含む。トランジスタ151の一の入出力端子及び制御端子は、ノードN2に接続されている。トランジスタ152の一の入出力端子は、トランジスタ154の制御端子に接続されている。トランジスタ151及び152はそれぞれ、トランジスタTr1及びTr2と同種のトランジスタである。トランジスタ154は、増幅トランジスタ11と同種のトランジスタである。
【0147】
これにより、例えば、電力増幅器10をスケールダウンした構成として負荷回路150を構成することにより、負荷回路150で消費される電力を低減することができる。したがって、低消費電力で増幅トランジスタ11の歪特性の劣化を適切に抑制することができる。
【0148】
(実施の形態3)
続いて、実施の形態3について説明する。実施の形態3では、実施の形態2とは電流制御回路の具体的な回路構成が相違する。以下では、実施の形態2との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0149】
[3-1.電流制御回路及び負荷回路の回路構成]
以下では、本実施の形態に係る電流制御回路の具体的な回路構成について、
図10を用いて説明する。
図10は、本実施の形態に係る電流制御回路120aの回路構成を示す回路図である。なお、電流制御回路120aの機能構成は、
図7に示される電流制御回路120及び負荷回路150を合わせた構成に相当する。
【0150】
具体的には、
図10に示されるように、電流制御回路120aは、定電流源回路130及び131aと、可変電流源回路140と、負荷回路150aと、オペアンプ160と、を備える。
【0151】
定電流源回路130及び131aは、トランジスタ31及び32と、定電流源33と、を含む。具体的には、定電流源回路130は、トランジスタ31及び32と、定電流源33と、を含む。定電流源回路131aは、トランジスタ32と、定電流源33と、を含む。つまり、トランジスタ32及び定電流源33は、定電流源回路130及び131aの各々の機能の少なくとも一部を担っている。
【0152】
本実施の形態に係る定電流源回路130は、実施の形態2に係る定電流源回路130と同じである。
【0153】
定電流源回路131aでは、トランジスタ32のドレインと定電流源33との間に負荷回路150aが接続されている。つまり、本実施の形態では、ノードN2は、トランジスタ32のドレインと負荷回路150aとを結ぶ経路上に位置する内部端子であり、定電流源回路131aの出力端子ではない。トランジスタ32のゲートは、定電流源33に直接接続されている。トランジスタ32のゲートは、負荷回路150aを介してトランジスタ32のドレインと接続されている。
【0154】
負荷回路150aは、トランジスタ151aを含む。トランジスタ151aは、第4トランジスタの一例である。トランジスタ151aは、電界効果トランジスタであり、ゲート、ドレイン及びソースを有する。ゲートは、制御端子の一例であり、ドレイン及びソースはそれぞれ、入出力端子の一例である。トランジスタ151aは、例えばSiを用いて形成されたpチャネルMOSFETである。
【0155】
トランジスタ151aのソースは、ノードN2に接続されている。トランジスタ151aのドレインは、定電流源33に接続されている。トランジスタ151aのゲートは、オペアンプ160の出力端子に接続されている。トランジスタ151aは、オペアンプ160の出力電圧に応じてオン抵抗が変更されることにより、ノードN2の電位を安定させる。
【0156】
オペアンプ160は、第2オペアンプの一例であり、非反転入力端子(+)、反転入力端子(-)及び出力端子を有する。非反転入力端子は、第3入力端子の一例であり、ノードN2に接続されている。反転入力端子は、第4入力端子の一例であり、ノードN1に接続されている。出力端子は、第2出力端子の一例であり、トランジスタ151aのゲートに接続されている。
【0157】
オペアンプ160は、誤差増幅器として動作する。つまり、オペアンプ160は、非反転入力端子に印加される電位と、反転入力端子に印加される電位との差分に応じた大きさの電圧を出力端子から出力する。非反転入力端子には、ノードN2の電位が印加される。反転入力端子には、ノードN1の電位が印加される。したがって、オペアンプ45は、ノードN2の電位と監視時点でのノードN1の電位との電位差に応じた電圧を出力端子からトランジスタ151aのゲートに供給する。
【0158】
[3-2.動作]
続いて、本実施の形態に係る増幅装置の動作について説明する。なお、電力増幅器10の動作は、実施の形態2と同じであるので、以下では、電流制御回路120aの動作について説明する。
【0159】
本実施の形態では、ノードN2には、
図10に示されるように、トランジスタ151aが接続されている。また、トランジスタ151aのゲートには、ノードN1とノードN2との電位差に応じた電圧を出力するように構成されたオペアンプ160の出力端子が接続されている。
【0160】
オペアンプ160は、イマジナリーショート作用によってノードN2の電位がノードN1の電位と同じになるように調整する。つまり、オペアンプ160は、ノードN1の電位とノードN2の電位との電位差が0Vになるように出力端子から出力電圧をトランジスタ151aのゲートに電圧を供給する。ノードN1の電位とノードN2の電位とが同じになることで、負荷の異なるトランジスタ31及び32のカレントミラー精度を向上させることができる。
【0161】
ノードN1の電位が低下した場合には、実施の形態2と同様に、オペアンプ45が、ノードN1とノードN2との電位差の大きさに応じた電流を出力端子から第2電流Ib2としてノードN1に供給する。これにより、ノードN1からは、第1電流Ib1と第2電流Ib2とを含む電流が制御電流Ibとして出力される。したがって、実施の形態1と同様に、増幅トランジスタ11に供給されるバイアス電流Ibpaを確保することができ、増幅トランジスタ11の利得を維持することができる。本実施の形態に係る電流制御回路120においても、
図5に実施例として示されるように、27.5dBm程度においても、増幅トランジスタ11の利得が維持できていることが確認された。高周波信号の信号電力が大電力の場合だけでなく、電力増幅器10の温度が上昇した場合も同様に、増幅トランジスタ11の利得を維持することができる。
【0162】
[3-3.効果など]
以上のように、本実施の形態に係る電流制御回路120aは、負荷回路150aと、非反転入力端子、反転入力端子及び出力端子を有するオペアンプ160と、を含む。オペアンプ160の非反転入力端子は、ノードN2に接続されている。オペアンプ160の反転入力端子は、N1ノードに接続されている。負荷回路150aは、ノードN2と定電流源33との間に接続されたトランジスタ151aを含む。トランジスタ32の一の入出力端子は、トランジスタ151aを介して定電流源33に接続されている。オペアンプ160の出力端子は、トランジスタ151aの制御端子に接続されている。
【0163】
これにより、オペアンプ160が用いられることによって、オペアンプ160のイマジナリーショート作用により、ノードN1の電位とノードN2の電位とは同じであるとみなすことができ、高精度で第1電流Ib1を供給することができる。また、オペアンプ160は、電流制御回路120a内に含まれ、直流電圧として安定しているので、ノードN1の電位と同じ電位であるノードN2をオペアンプ160の非反転入力端子に接続することで、ノードN1の変化に応じた第2電流Ib2をノードN1に供給することができる。このため、ノードN2とノードN1との電位差に基づいて、オペアンプ45は、ノードN1の変化に応じて適切な第2電流Ib2をノードN1に供給することができる。
【0164】
(実施例)
以下では、上述した各実施の形態に係る増幅装置の複数の実施例について説明する。
【0165】
[実施例1]
図11は、各実施の形態に係る増幅装置の実施例1を示す図である。
図11に示される増幅装置1では、電流制御回路20が1つの半導体基板90に形成され、電力増幅器10が別の半導体基板91に形成されている。例えば、半導体基板90は、Si基板であり、半導体基板91は、GaAs基板である。本実施例では、バイアス回路12のトランジスタTr1及びTr2によって構成されるカレントミラー回路と増幅トランジスタ11とは、同一の半導体基板91に形成されている。
【0166】
これにより、バイアス回路12のカレントミラー回路と増幅トランジスタ11とが同一の半導体基板91に形成されるので、外乱の影響を抑制しながら安定してバイアス電流Ibpaを増幅トランジスタ11に供給することができる。
【0167】
[実施例2]
図12は、各実施の形態に係る増幅装置の実施例2を示す図である。
図12に示される増幅装置1Aでは、バイアス回路12のトランジスタTr1及びTr2によって構成されるカレントミラー回路と、電流制御回路20とは、同一の半導体基板90に形成されている。また、トランジスタTr3と増幅トランジスタ11とは、同一の半導体基板91に形成されている。
【0168】
これにより、電流制御回路20及びカレントミラー回路と、増幅トランジスタ11とが熱的に結合するのを抑制することができる。
【0169】
[実施例3]
図13は、実施の形態2に係る増幅装置の実施例3を示す図である。
図13に示される増幅装置1Bでは、電流制御回路120が1つの半導体基板90に形成され、負荷回路150及び電力増幅器10が別の半導体基板91に形成されている。つまり、本実施例では、トランジスタTr1及びTr2によって構成されるカレントミラー回路と、増幅トランジスタ11と、負荷回路150とは、同一の半導体基板91に形成されている。
【0170】
これにより、負荷回路150に含まれる各トランジスタと、カレントミラー回路を構成するトランジスタ及び増幅トランジスタ11とで閾値電圧を容易に等しくすることができる。各トランジスタの温度特性を同じにすることができるので、動作を安定させることができる。
【0171】
なお、実施例1及び2において、電流制御回路20の代わりに、電流制御回路20a、120又は120aが半導体基板90に形成されていてもよい。また、実施例3において、電流制御回路120と、電力増幅器10のカレントミラー回路(トランジスタTr1及びTr2)と、負荷回路150のカレントミラー回路(トランジスタ151及び152)とは、同一の半導体基板に形成されていてもよい。この場合において、増幅トランジスタ11と、トランジスタTr3及び153とは、同一の半導体基板に形成されていてもよい。
【0172】
また、電流制御回路20と電力増幅器10とが同一の半導体基板に形成されていてもよい。つまり、各実施の形態に係る増幅装置は、単一の半導体基板に形成されていてもよい。各実施の形態に係る増幅装置は、各回路素子が3つ以上の半導体基板に分散配置されて形成されていてもよい。
【0173】
(その他)
以上、本発明に係る電流制御回路、バイアス供給回路及び増幅装置について、上記の実施の形態などに基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0174】
例えば、増幅トランジスタ11は、nチャネルMOSFETであってもよい。この場合、nチャネルMOSFETのゲート、ドレイン及びソースはそれぞれ、npn型のバイポーラトランジスタのベース、コレクタ及びエミッタに対応する。また、増幅トランジスタ11は、pnp型のバイポーラトランジスタ又はpチャネルMOSFETであってもよい。
【0175】
また、例えば、バイアス回路12、電流制御回路20、20a、120若しくは120a、又は、負荷回路150に含まれる各トランジスタも同様に、pnp型若しくはnpn型のバイポーラトランジスタであってもよく、pチャネル若しくはnチャネルMOSFETであってもよい。このとき、カレントミラー回路を構成するトランジスタは、同種のトランジスタが用いられる。
【0176】
なお、各実施の形態において、電流制御回路20、20a、120又は120aは、バイアス電流を制御するために用いられたが、これに限らない。例えば、電流制御回路20、20a、120又は120aは、電流の出力端子であるノードN1の電位の変動を抑制し、ノードN1から出力される電流を安定させることができる。このため、電流制御回路20、20a、120又は120aは、安定した電流供給源として、ノードN1が電力増幅器10以外の負荷回路に接続されて使用されてもよい。
【0177】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明は、例えば、マルチバンド対応のフロントエンド部に配置される高周波モジュールの増幅装置として携帯電話などの通信機器に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0179】
1、1A、1B 増幅装置
10 電力増幅器
11 増幅トランジスタ
12 バイアス回路
13 制御入力端子
14、156 電源端子
20、20a、120、120a 電流制御回路
21 タイミング入力端子
22 フィルタ
30、130、131、131a 定電流源回路
31、32、132、151、151a、152、153、154、Tr1、Tr2、Tr3 トランジスタ
33 定電流源
40、140 可変電流源回路
41 可変電流源
42 電位監視部
43 サンプルホールド回路
44 制御部
45、160 オペアンプ
90、91 半導体基板
142 電位差監視部
150、150a 負荷回路
155 電流入力端子
C1 DCカット用キャパシタ
Ib 制御電流
Ib1 第1電流
Ib2 第2電流
Ib3 第3電流
Ibpa バイアス電流
N1、N2 ノード
Pin 入力端子
Pout 出力端子
R1、R2 抵抗