(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】ロボットハンド
(51)【国際特許分類】
B25J 15/00 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
B25J15/00 B
(21)【出願番号】P 2023100932
(22)【出願日】2023-06-20
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 佑太
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-104687(JP,A)
【文献】特開2008-272867(JP,A)
【文献】特開2013-082027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームの先端部に取り付けられるハンド本体と、
前記ハンド本体から突出して設けられ、互いに離隔する開位置と互いに接近する閉位置との間を移動して前記閉位置で被把持物を把持可能な複数の爪と、
前記閉位置にある前記複数の爪の周囲に位置することにより、前記複数の爪に前記開位置の方向への力が作用した際に前記複数の爪に当接して前記複数の爪の移動を規制するロック部材と、
を備え、
前記ロック部材は、前記複数の爪を包囲する四角形の枠形状である、
ロボットハンド。
【請求項2】
ロボットアームの先端部に取り付けられるハンド本体と、
前記ハンド本体から突出して設けられ、互いに離隔する開位置と互いに接近する閉位置との間を移動して前記閉位置で被把持物を把持可能な複数の爪と、
前記閉位置にある前記複数の爪の周囲に位置することにより、前記複数の爪に前記開位置の方向への力が作用した際に前記複数の爪に当接して前記複数の爪の移動を規制するロック部材と、
を備え、
前記ロック部材は、前記複数の爪を包囲する四角形の枠形状の一部に切り欠きを備える形状である、
ロボットハンド。
【請求項3】
ロボットアームの先端部に取り付けられるハンド本体と、
前記ハンド本体から突出して設けられ、互いに離隔する開位置と互いに接近する閉位置との間を移動して前記閉位置で被把持物を把持可能な複数の爪と、
前記閉位置にある前記複数の爪の周囲に位置することにより、前記複数の爪に前記開位置の方向への力が作用した際に前記複数の爪に当接して前記複数の爪の移動を規制するロック部材と、
を備え、
前記ロック部材は、前記複数の爪の周囲に位置するロック位置と、前記複数の爪の周囲に位置しない非ロック位置との間を移動可能に設けられており、
前記複数の爪には、前記ロック部材を前記ロック位置で係止する係合部が形成されており、
前記係合部は、前記被把持物の大きさに応じて複数形成されている、
ロボットハンド。
【請求項4】
前記係合部は、段差部を有する、請求項3に記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記係合部は、テーパー部を有する、請求項3に記載のロボットハンド。
【請求項6】
前記ロック部材を移動させるロック部材移動手段を有する、請求項1乃至3のいずれかに記載のロボットハンド。
【請求項7】
前記複数の爪を開閉する爪開閉駆動手段と、前記ロック部材を移動させるロック部材移動手段とを備え、
前記爪開閉駆動手段が前記爪を閉位置へ移動させた後、前記ロック部材移動手段が前記ロック部材を非ロック位置からロック位置へ移動させる、請求項1乃至3のいずれかに記載のロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボットハンドの爪が不意に開くことを防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットは各種製品の製造現場等で活用されている。ロボットアームの先端にロボットハンドを設けたロボットは、ロボットハンドの爪で部品を把持して移動させたり、ねじ等の締付部材を爪で把持及び回動して他の部材に締め付けたりといった各種作業を行っている。部品等を把持する爪の把持力は強力であり、人間の指等がロボットの爪に挟まれると大怪我につながるので、ロボットの作業空間へ人間が立ち入ることは規制されているのが一般的であった。
【0003】
より多様な作業をロボットで行うためには、人間と協働で作業を行うことが有効な場合があるが、人間と協働で作業を行う協働ロボットにおいては、万一人間の指等が協働ロボットの爪に挟まれた場合に備えて、爪の把持力を弱く設定しておく必要があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
把持力の弱い協働ロボットでねじ等の締付部材を回動して締め付ける場合、強い力で締め付けようとすると締め付けの反力によって爪が開いてしまう場合がある。しかしながら協働ロボットでは爪の把持力に制限があるため、強い力が必要な締め付け作業ができないという問題があった。締め付け作業以外にも、爪に開方向の力が作用した場合に爪が開いてしまうという問題があった。
【0005】
本開示の目的は、ロボットが締め付け作業等を行う場合に、爪の把持力が弱くても爪に作用する力によって爪が開かないロボットハンドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のロボットハンドは、ロボットアームの先端部に取り付けられるハンド本体と、前記ハンド本体から突出して設けられ、互いに離隔する開位置と互いに接近する閉位置との間を移動して前記閉位置で被把持物を把持可能な複数の爪と、前記閉位置にある前記複数の爪の周囲に位置することにより、前記複数の爪に前記開位置の方向への力が作用した際に前記複数の爪に当接して前記複数の爪の移動を規制するロック部材と、を備え、前記ロック部材は、前記複数の爪を包囲する四角形の枠形状である。
【0007】
また、本開示のロボットハンドは、ロボットアームの先端部に取り付けられるハンド本体と、前記ハンド本体から突出して設けられ、互いに離隔する開位置と互いに接近する閉位置との間を移動して前記閉位置で被把持物を把持可能な複数の爪と、前記閉位置にある前記複数の爪の周囲に位置することにより、前記複数の爪に前記開位置の方向への力が作用した際に前記複数の爪に当接して前記複数の爪の移動を規制するロック部材と、を備え、前記ロック部材は、前記複数の爪を包囲する四角形の枠形状の一部に切り欠きを備える形状である。
【0008】
また、本開示のロボットハンドは、ロボットアームの先端部に取り付けられるハンド本体と、前記ハンド本体から突出して設けられ、互いに離隔する開位置と互いに接近する閉位置との間を移動して前記閉位置で被把持物を把持可能な複数の爪と、前記閉位置にある前記複数の爪の周囲に位置することにより、前記複数の爪に前記開位置の方向への力が作用した際に前記複数の爪に当接して前記複数の爪の移動を規制するロック部材と、を備え、前記ロック部材は、前記複数の爪の周囲に位置するロック位置と、前記複数の爪の周囲に位置しない非ロック位置との間を移動可能に設けられており、前記複数の爪には、前記ロック部材を前記ロック位置で係止する係合部が形成されており、前記係合部は、前記被把持物の大きさに応じて複数形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、閉位置にある複数の爪の周囲にロック部材が位置することによって、締付反力等によって爪が開く方向の力が爪に作用しても、爪が開位置方向へ移動することが規制されるので、爪の把持力が弱くても爪が不意に開くことなく各種作業を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】爪でワークを把持している状態を示す図である。
【
図4】ロック部材で爪をロックしている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に沿って本開示の一例である実施の形態を説明する。
【0012】
図1は、ロボットアームの先端に取り付けられたロボットハンド1の斜視図である。ロボットハンド1はロボットアームの先端に該ロボットアームの軸周りに回動可能に設けられている。また、ロボットアームはその関節周りの屈伸や回動が可能となっている。そして、ロボットアームの関節の屈伸や回動により、ロボットハンドを所定の軌跡に沿って移動して所定の作業を行うことができる。
【0013】
ロボットハンド1は、ロボットアームの先端部に取り付けられたハンド本体10と、ハンド本体10から突出して設けられ、相対的に接近及び離隔して開閉可能な一対の爪2、2と、略四角形の枠状のロック部材3と、前記ロック部材3をハンド本体10の外周に位置する非ロック位置と一対の爪2、2の外周に位置するロック位置との間で移動させる駆動手段としてのエアシリンダ4と、を有している。
【0014】
一対の爪2、2は、ハンド本体10に設けられた図示しない駆動手段によりハンド本体10に対して平行移動して、互いに接近及び離隔して開閉可能に構成されている。駆動手段としては、エアシリンダ、電動アクチュエータ等、公知の駆動手段が採用される。
【0015】
図2は一対の爪2、2のうち一方の爪2の詳細を示す。他方の爪2と対向する側(図示向かって右側)には、把持面21が形成されている。また、爪2の前記把持面21と反対側(図示向かって左側)には、複数の段差部(係合部の一例)が形成されている。複数の段差部は、下から順に水平面部22、24、26と垂直面部23、25、27が交互に形成されている。さらに垂直面部27の上には傾斜面部28(テーパー部の一例)と垂直面部29が連続して形成されている。垂直面部23、25、27、29は、把持面21からそれぞれL1、L2、L3、L4だけ離れた位置に形成されている。
【0016】
一対の爪2、2は同一形状から成り、それぞれの把持面21、21が対向するようにハンド本体10に設けられている。そして、一対の爪2、2が互いに接近することにより、対向する把持面21、21の間にワークを把持する。
【0017】
図1に戻って、ロック部材3は、ハンド本体10及び一対の爪2、2を包囲するように枠状に形成された枠本体31と、枠本体31から水平方向に突出して形成されたフランジ32とからなる。
【0018】
エアシリンダ4はハンド本体10の側面にシリンダ部41が取り付けられ、ピストン42がシリンダ部41から下方に伸縮するように配置されている。ピストン42は前記ロック部材3のフランジ32と結合されている。ピストン42が伸縮することにより、ロック部材3は、ハンド本体10を囲む非ロック位置と一対の爪2、2を囲むロック位置との間を移動する。
【0019】
次に、ロボットハンド1の動作を
図3及び4に基づいて説明する。ここで、枠本体31の
図3で左右方向の内径をL、ワークの同じく左右方向の長さをWとする。ロック部材3が非ロック位置にあり、一対の爪2、2が開位置にある状態で、一対の爪2、2がワーク100を間に挟んで両側に位置するようにロボットハンド1が移動する。次に、一対の爪2、2は駆動手段により互いに接近するように移動してワーク100を把持する(
図3)。この時、一対の垂直面部23、23間の距離は2×L1+W、一対の垂直面部25、25間の距離は2×L2+W、一対の垂直面部27、27間の距離は2×L3+W、一対の垂直面部29、29間の距離は2×L4+Wとなっている。また、一対の傾斜面部28、28間の距離は、2×L3+Wと2×L4+Wの間で
図3の上に行くにしたがって逓減している。そして、ピストン42が伸長することによりロック部材3が非ロック位置からロック位置に下降する。この時、垂直面部23、25、27、29又は傾斜面部28のうち、互いの距離が枠本体31の左右方向の内径Lと一致する垂直面部又は傾斜面部の位置まで、ロック部材3は下降する。
図3及び4の例では、枠本体31の幅方向の内径と、一対の垂直面部27、27間の距離が、両者ともLで一致しているので、枠本体31は垂直面部27、27の位置まで下降して、垂直面部27、27の直下の水平面部26、26に当接して停止する。このとき、枠本体31の幅方向の内側面が一対の爪2、2の垂直面部27、27に嵌るように対向している。
【0020】
また、ワーク100の大きさによっては、枠本体31が傾斜面部28に当接して下降を停止する。傾斜面部28は把持面21からの距離がL3とL4の間で連続して傾斜して形成されているので、WがL-2×L3<W<L-2×L4の範囲にある場合には、枠本体31は傾斜面部28に係合してロックする。すなわち、傾斜面部28が形成されていれば、ワーク100の大きさに応じた段差部を複数形成しなくとも、ワーク100の大きさに無段階に対応できる。
【0021】
次に、ロボットアームが移動することによりロボットハンド1及びワーク100も移動する。そして、ワーク100を他の部材に組み付けたり、他の部材に対して締め付け固定したりといった所定の作業を行う。このとき、作業によっては一対の爪2、2の把持面21、21に一対の爪2、2が開く方向に大きな反力が作用する。しかしながら、垂直面部27、27に対向するようにロック部材3の枠本体31が位置しているので、ロック部材3が一対の爪2、2の移動を規制して、一対の爪2、2が開くことが阻止される。
【0022】
図5乃至7は、ロック部材3の種々の形態を模式的に表す平面図である。
図5では、ロック部材は一対の爪2、2を囲む四角形状であるが、ロック部材は四角形状に限られず、
図6のようなコの字状、
図7のように左右別部材であっても、一対の爪2、2の開方向の側面に対向する形状であればいずれでも構わない。
【0023】
図8及び9は、ロボットハンドが3つの爪2、2、2を有する場合のロック部材3の形態を模式的に表す平面図である。ロック部材3は3つの爪2、2、2を囲む形状(
図8では六角形)や、
図9のように各爪2、2、2に対応して分割された形状であっても構わない。
【0024】
以上、図面に沿って説明したが、本願の特許請求の範囲に係る発明は上記の実施の形態に限定されるわけではない。例えば、ロック部材は爪の開方向の側面に対向して位置することにより爪の開方向への移動を規制するものであれば、どのような形態のものでも構わない。また、爪の開方向の側面は、必ずしも水平面部と垂直面部から成る段差形状である必要なく、水平面部の代わりに傾斜面部が形成されているものや、垂直面部又は傾斜面部のみからなるものでも構わない。さらに、ロック部材を移動させる駆動手段は必ずしも必要ではなく、手動式でも構わない。上記の実施の形態では、非ロック位置はロボットハンドの基端側に、ロック位置はロボットハンドの先端側に位置しているが、非ロック位置がロボットハンドの先端側に、ロック位置がロボットハンドの基端側に位置していても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本開示は、各種ロボットのロボットハンドに適用可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 ロボットハンド
2 爪
23、25、27、29 垂直面部
28 傾斜面部
3 ロック部材
4 エアシリンダ
10 ハンド本体
100 ワーク
【要約】
【課題】ロボットが締め付け作業等を行う場合に、爪の把持力が弱くても反力によって爪が開かないロボットハンドを提供する。
【解決手段】ロボットアームの先端部に取り付けられるハンド本体と、前記ハンド本体から突出して設けられ、互いに離隔する開位置と互いに接近する閉位置との間を移動して前記閉位置で被把持物を把持可能な複数の爪と、前記閉位置にある前記複数の爪の周囲に位置することにより、前記複数の爪に前記開位置の方向への力が作用した際に前記複数の爪に当接して前記複数の爪の移動を規制するロック部材と、を備える、ロボットハンド。
【選択図】
図1