(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
B62M 7/02 20060101AFI20240611BHJP
B62J 43/16 20200101ALI20240611BHJP
B62J 43/23 20200101ALI20240611BHJP
B62J 25/04 20200101ALI20240611BHJP
【FI】
B62M7/02 A
B62M7/02 D
B62J43/16
B62J43/23
B62J25/04
(21)【出願番号】P 2023139278
(22)【出願日】2023-08-29
【審査請求日】2023-09-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】津島 寿夫
(72)【発明者】
【氏名】山村 理
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆世
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-135371(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106476954(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0192908(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105667682(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103935438(CN,A)
【文献】国際公開第2008/062306(WO,A1)
【文献】特開平4-358981(JP,A)
【文献】中国実用新案第210734391(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第104386179(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 43/00,25/04,11/00,
B62K 19/00,
B62M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの電力によって走行可能な鞍乗型車両であって、
シート前方で車体フレームに設置された低床のフロアボードと、
前記バッテリからの電力によって駆動輪を駆動させるモータと、
前記モータを支持するモータブラケットと、
前記バッテリを支持するバッテリブラケットと、を備え、
前記フロアボードの下方に前記モータが設置され
、
前記フロアボードの上方に前記バッテリが設置され、
前記モータの一部が前記バッテリの真下に位置し、
前記フロアボードには切欠きが形成されており、
前記モータブラケット及び前記バッテリブラケットが前記フロアボードの切欠きを通じて連結されていることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項2】
前記モータブラケットが前記車体フレームに着脱可能に取り付けられていることを特徴とする
請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記フロアボードが前記車体フレームのロアフレームに下側から支持され、
前記モータが前記ロアフレームの下方に位置していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記駆動輪がリアフレームを介して前記車体フレームに支持され、
前記モータが前記リアフレームの基端部よりも下方に位置していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
停車状態で前記モータの駆動軸中心が前記駆動輪の回転軸中心よりも下方に位置していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力によって走行する電動式の鞍乗型車両が開発されている。この種の鞍乗型車両として低床のフロアボードと後輪の間にモータを設置したスクータタイプの車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の鞍乗型車両では、フロアボードの下方をロアフレームが通り、ロアフレームの後端からシートに向けてサイドフレームが後向きに立ち上がっている。ロアフレームの下方にはバッテリや充電器が設置されており、サイドフレームの後方にはモータが設置されている。サイドフレームにはモータ及び後輪がブラケット等を介して支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の鞍乗型車両では、バッテリとモータが前後に並んで車体が前後に延びて大型化する。フロアボードの前後長を狭めることで車体の大型化が抑えられるが、フロアボードの踏面が狭くなって運転時の利便性が低下する。また、サイドフレームの後方にモータが設置されると、シート下方の収容ボックスのスペースが狭くなって利便性が低下する。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、車体の大型化を抑えると共に利便性を向上することができる鞍乗型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の鞍乗型車両は、バッテリの電力によって走行可能な鞍乗型車両であって、シート前方で車体フレームに設置された低床のフロアボードと、前記バッテリからの電力によって駆動輪を駆動させるモータと、前記モータを支持するモータブラケットと、前記バッテリを支持するバッテリブラケットと、を備え、前記フロアボードの下方に前記モータが設置され、前記フロアボードの上方に前記バッテリが設置され、前記モータの一部が前記バッテリの真下に位置し、前記フロアボードには切欠きが形成されており、前記モータブラケット及び前記バッテリブラケットが前記フロアボードの切欠きを通じて連結されていることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の鞍乗型車両によれば、フロアボードの下方にモータが設置されることで、車体の前後長が短くなって大型化が抑えられ、フロアボードの踏面及びシート下方の収容ボックスが広く確保される。よって、車体の大型化を抑えつつ、鞍乗型車両の利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】
図2の鞍乗型車両をA-A線に沿って切断した断面図である。
【
図5】本実施例のバッテリブラケット及びモータブラケットの斜視図である。
【
図6】
図4の車体後部をB-B線に沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の鞍乗型車両は、バッテリの電力によってモータが駆動輪を駆動させて走行する。鞍乗型車両のシート前方には車体フレームに低床のフロアボードが設置され、フロアボードの下方にモータが設置されている。フロアボードの下方にモータが設置されることで、車体の前後長が短くなって大型化が抑えられ、フロアボードの踏面及びシート下方の収容ボックスが広く確保される。よって、車体の大型化を抑えつつ、鞍乗型車両の利便性を向上することができる。
【実施例】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例の鞍乗型車両について説明する。
図1は本実施例の鞍乗型車両の左側面図である。
図2は本実施例の鞍乗型車両の右側面図である。なお、以下の図では、鞍乗型車両から車体カバーを取り外した状態を示している。また、以下の図では、矢印Frは車両前方、矢印Reは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1及び
図2に示すように、鞍乗型車両1の車体フレーム10にはシート41前方に低床のフロアボード45が設置されている。車体フレーム10の前端部にはヘッドパイプ11が設けられており、ヘッドパイプ11から後斜め下方にフロントフレーム12が延びている。フロントフレーム12の下部には左右一対のロアフレーム13が接続され、一対のロアフレーム13がフロアボード45の下側を後方に延びている。一対のロアフレーム13の後部からシート41に向かって一対のサイドフレーム14が立ち上がり、一対のサイドフレーム14の上部が後方に屈曲してシートフレーム15が形成されている。
【0012】
ヘッドパイプ11にはステアリングシャフト(不図示)を介してフロントフォーク31が操舵可能に支持されている。ステアリングシャフトの上部にはハンドル32が設けられており、フロントフォーク31の下部には前輪33が回転可能に支持されている。一対のサイドフレーム14から後方にU字状の一対のリアフレーム16が延びており、一対のリアフレーム16の後端の一対のリアブラケット18には後輪(駆動輪)34が回転可能に支持されている。また、リアブラケット18及びリアフレーム16の上部にはリアフェンダ35が取り付けられ、リアフェンダ35によって後輪34が上方から覆われている。
【0013】
一対のシートフレーム15上にはシート41が支持されており、シートフレーム15の下方には収容ボックス29が設置されている。収容ボックス29は一対のサイドフレーム14の内側に位置しており、収容ボックス29の上部の出し入れ口がシート41によって上方から覆われている。一対のロアフレーム13上にはフロアボード45が設置されており、フロアボード45上の踏面にはシート41に座った運転者の脚部が載置される。フロアボード45の後部上面にはバッテリホルダ50を介してバッテリ53が設置されており、フロアボード45の後部下側にはモータ60が設置されている。
【0014】
なお、詳細は後述するが、本実施例の鞍乗型車両1には、バッテリホルダ50としてメインホルダ51とサブホルダ52が設置されている。メインホルダ51にはモータ60に対して電力を供給するメインバッテリ54が着脱可能に保持されており、サブホルダ52にはモータ60に対して予備電力を供給するサブバッテリ55が着脱可能に保持されている。以下においては、メインホルダ51及びサブホルダ52を区別しないときにはバッテリホルダ50と総称して説明し、メインバッテリ54及びサブバッテリ55を区別しないときにはバッテリ53と総称して説明する。
【0015】
モータ60の出力軸にはドライブスプロケット36が設けられ、後輪34の車軸にはドリブンスプロケット37が設けられている。モータ60のドライブスプロケット36と後輪34のドリブンスプロケット37がチェーン38を介して連結されている。バッテリ53からモータ60に電力が供給されて、モータ60によってドライブスプロケット36、チェーン38、ドリブンスプロケット37を介して後輪34が駆動されている。左側のロアフレーム13にはサイドスタンド39が設けられており、サイドスタンド39を立てることによって車体が左側(車幅方向一方側)に傾けられた状態で自立される。
【0016】
電動式の鞍乗型車両1では、モータレイアウトによってはフロアボード45の踏面や収容ボックス29を十分に確保できない。また、一般的な鞍乗型車両では車体フレームに一体接合されたブラケットにモータが支持され、ホイールサイズやタイヤ幅の変更に伴ってチェーンラインを調整することが難しい。そこで、本実施例の鞍乗型車両1ではフロアボード45の下方にモータ60を設置してフロアボード45の踏面等を十分に確保し、一対のロアフレーム13に着脱可能なブラケットを介してモータ60が設置されることでホイールサイズ等の変更に対応している。
【0017】
以下、
図3及び
図4を参照して、鞍乗型車両の後部構造について説明する。
図3は本実施例の車体後部の右側面図である。
図4は
図2の鞍乗型車両をA-A線に沿って切断した断面図である。
【0018】
図3に示すように、一対のシートフレーム15上にはシート41が支持されており、収容ボックス29の前面よりもシート41が前方に突き出している。側面視にて収容ボックス29の前面は一対のサイドフレーム14と平行に形成され、一対のサイドフレーム14を覆うボディカバー26の内側に収容ボックス29が設置されている。ボディカバー26の内側では一対のサイドフレーム14の下部を連ねるフレームブリッジ21に収容ボックス29の下部が支持され、一対のシートフレーム15の後側を連ねるフレームブリッジ22に収容ボックス29の上部が支持されている。
【0019】
フロアボード45の後方からシート41に向けて一対のサイドフレーム14は立ち上がり、一対のサイドフレーム14よりも前方にシート41が突き出している。シート41の前半部はフロアボード45に対向しており、シート41の前半部によってフロアボード45の後部が上方から覆われている。一対のサイドフレーム14及び収容ボックス29がボディカバー26の内側に位置し、ボディカバー26の外側はフロアボード45とシート41に上下から挟まれた外部スペースになっている。フロアボード45とシート41の間の外部スペースが後方を除いて周囲に開放されている。
【0020】
フロアボード45とシート41の間の外部スペースには、メインホルダ51(
図4参照)及びサブホルダ52が設置されている。メインホルダ51にはメインバッテリ54が保持され、サブホルダ52にはサブバッテリ55が保持されている。側面視にてサイドフレーム14にメインバッテリ54及びサブバッテリ55が重ならないように、メインバッテリ54及びサブバッテリ55よりも後方に一対のサイドフレーム14が位置付けられている。ボディカバー26からメインバッテリ54及びサブバッテリ55が外部に露出されることで、メインバッテリ54及びサブバッテリ55の着脱性が向上されている。
【0021】
メインホルダ51及びサブホルダ52がシート41前端とサイドフレーム14の間に位置している。メインホルダ51及びサブホルダ52にメインバッテリ54及びサブバッテリ55が保持されると、メインバッテリ54及びサブバッテリ55もシート41前端よりも後方に位置付けられる。このように、運転者の脚部よりも後方のスペースを利用してメインバッテリ54及びサブバッテリ55が設置される。運転者が脚部を真下に下ろした状態では、メインバッテリ54及びサブバッテリ55が運転者の脚部に干渉することがなく、シート41前方のフロアボード45には脚部を載せるのに十分な踏面が確保される。
【0022】
メインバッテリ54及びサブバッテリ55はサイドフレーム14に沿うようにメインホルダ51及びサブホルダ52に保持されており、メインバッテリ54及びサブバッテリ55の後面の傾きがサイドフレーム14の傾きと略平行になっている。また、メインバッテリ54及びサブバッテリ55の上端部が下端部よりも前方になるように前傾している。メインバッテリ54及びサブバッテリ55がサイドフレーム14に近づけられると共に、メインバッテリ54及びサブバッテリ55の下端部が後方に位置付けられることでフロアボード45の踏面が広く確保されている。
【0023】
フロアボード45の上方にメインバッテリ54及びサブバッテリ55が設置され、これらメインバッテリ54及びサブバッテリ55の真下にモータ60の一部が位置されている。すなわち、フロアボード45を挟んでメインホルダ51及びサブホルダ52の真下にモータ60が設置されている。側面視にてメインバッテリ54及びサブバッテリ55とモータ60が上下に並べられることで、メインバッテリ54及びサブバッテリ55とモータ60がコンパクトに設置されている。フロアボード45の下方にモータ60が設置されることで、フロアボード45が庇として機能して降雨時に雨水がモータ60に付着し難くなっている。
【0024】
フロアボード45が一対のロアフレーム13に下側から支持され、ロアフレーム13の下方にモータ60が位置付けられている。また、ロアフレーム13とサイドフレーム14の境界付近にリアフレーム16の基端部17が位置しており、このリアフレーム16の基端部17よりもモータ60が下方に位置付けられている。重量物であるモータ60が低位置にあるため、車体の重心が下がって走行安定性が向上する。さらに、停車状態でモータ60の駆動軸中心O1が後輪34の回転軸中心O2よりも下方に位置しているため、より車体の重心が下がって走行安定性が向上している。
【0025】
図4に示すように、フロアボード45上にはメインホルダ51とサブホルダ52が車幅方向に並んで設置されている。メインホルダ51は上方及び左側方を開放した凹状に形成されており、メインホルダ51に対して左側からメインバッテリ54が着脱可能になっている。メインホルダ51の前後壁には一対のガイド穴(不図示)が形成され、メインバッテリ54の下部にはガイド穴に嵌る一対のガイド軸(不図示)が形成されている。また、メインホルダ51の底面からホルダ端子(不図示)が突き出しており、メインバッテリ54の底面の挿込口内にバッテリ端子(不図示)が設けられている。
【0026】
サブホルダ52は上方及び前方を開放した凹状に形成されており、サブホルダ52に対して前側からサブバッテリ55が着脱可能になっている。サブホルダ52の左右壁には一対のガイド穴(不図示)が形成され、サブバッテリ55の下部にはガイド穴に嵌る一対のガイド軸(不図示)が形成されている。また、サブホルダ52の底面からホルダ端子(不図示)が突き出しており、サブバッテリ55の底面の挿込口内にバッテリ端子(不図示)が設けられている。このように、メインホルダ51に対するメインバッテリ54の着脱方向とサブホルダ52に対するサブバッテリ55の着脱方向が異なっている。
【0027】
この場合、メインホルダ51に対してサイドスタンド39側からメインバッテリ54が着脱可能になっている。車体左側にはサイドスタンド39が設けられており、鞍乗型車両1の停車時には車体が左側に傾けて自立される。メインホルダ51が左側に傾けられているため、メインホルダ51に対して左側からスムーズにメインバッテリ54が着脱される。また、サブホルダ52に対して前側からサブバッテリ55が着脱可能になっている。サブバッテリ55は前傾姿勢でサブホルダ52に保持されている。サブホルダ52が前側に傾けられているため、サブバッテリ55に対して前側からスムーズにサブバッテリ55が着脱される。
【0028】
メインバッテリ54及びサブバッテリ55の右側にはロック機構56、57が設けられている。ロック機構56、57は一対のサイドフレーム14を繋ぐ横断プレート25に取り付けられている。ロック機構56、57にはそれぞれロック片(不図示)が設けられており、メインバッテリ54及びサブバッテリ55にはそれぞれロック穴(不図示)が設けられている。ロック機構56、57の前面にはキーシリンダ58、59が設けられており、メカニカルキーによってキーシリンダ58、59が回転されることで、ロック片がロック穴に嵌ってメインバッテリ54及びサブバッテリ55が着脱不能にロックされる。
【0029】
図5及び
図6を参照して、バッテリブラケット及びモータブラケットの詳細構成について説明する。
図5は本実施例のバッテリブラケット及びモータブラケットの斜視図である。
図6は
図4の車体後部をB-B線に沿って切断した断面図である。
【0030】
図5及び
図6に示すように、車体フレーム10にモータブラケット63が取り付けられており、モータブラケット63上にバッテリブラケット71が取り付けられている。モータブラケット63によってモータ60が上側から支持されており、バッテリブラケット71によってバッテリホルダ50を介してバッテリ53が下側から支持されている。モータブラケット63のベースプレート64は上面部と両側面部を有するように形成され、ベースプレート64の両側面部が車幅方向に向けられた状態で、一対のロアフレーム13の内側にベースプレート64が位置付けられている。
【0031】
ベースプレート64の前側には両側面部を貫いた長尺のパイプ材65が接合されており、ベースプレート64の後側には各側面部のそれぞれに短尺のパイプ材66が接合されている。一対のロアフレーム13には長尺のパイプ材65に対応した一対の懸架ブラケット23が接合されており、一対のリアフレーム16には一対の短尺のパイプ材65に対応した一対の懸架ブラケット24が接合されている。ベースプレート64の前側はパイプ材65を通した固定ボルトで一対の懸架ブラケット23にネジ止めされ、ベースプレート64の後側は一対のパイプ材66を通した一対の固定ボルトで一対の懸架ブラケット24にネジ止めされる。
【0032】
ベースプレート64の下面前側及び長尺のパイプ材65には前方支持プレート67が接合されており、ベースプレート64の下面中央には後方支持プレート68が接合されている。モータ60の上部前側には前方支持プレート67に対応した前方取付部61が形成されており、モータ60の上部中央には後方支持プレート68に対応した後方取付部62が形成されている。前方支持プレート67にはモータ60の前方取付部61がネジ止めされ、後方支持プレート68にはモータ60の後方取付部62がネジ止めされる。このようにして、モータ60がモータブラケット63を介して車体フレーム10に取り付けられている。
【0033】
バッテリブラケット71は、ロアプレート72とアッパプレート73を支柱部材74で接合して形成されている。バッテリブラケット71のロアプレート72は、モータブラケット63のベースプレート64の上面部にネジ止めされている。バッテリブラケット71のロアプレート72の上面後側から支柱部材74が立ち上がっている。フロアボード45の後側には切欠き46が形成されており、切欠き46を通じて支柱部材74がフロアボード45よりも上方に突き出している。支柱部材74の上端にはアッパプレート73が支持されており、アッパプレート73がフロアボード45上に位置付けられている。
【0034】
バッテリブラケット71のアッパプレート73は車幅方向に長く形成されている。アッパプレート73の上面左側にはメインホルダ51(
図4参照)がネジ止めされ、アッパプレート73の上面右側にはサブホルダ52がネジ止めされている。このように、バッテリブラケット71がフロアボード45の切欠き46を通じてモータブラケット63に連結されている。モータブラケット63及びバッテリブラケット71が一体構造となって各ブラケットの取付構造が簡略化される。モータブラケット63にバッテリブラケット71が設置されることで、バッテリブラケット71用に懸架ブラケットを用意する必要がない。
【0035】
上記したように、モータブラケット63が車体フレーム10にボルト等で着脱可能に取り付けられている。モータブラケット63を交換してモータ60の高さ方向、前後方向、車幅方向の位置等のモータレイアウトを変更することができる。この場合、ホイールサイズやタイヤ幅に応じて、複数種類のモータブラケット63が用意されている。鞍乗型車両1のホイールサイズ等が変更になった場合には、変更後のホイールサイズ等に対応したモータブラケット63に交換することで、ホイールサイズ等の変更に応じてチェーンラインを適切に調整することができる。
【0036】
以上、本実施例の鞍乗型車両1によれば、フロアボード45の下方にモータ60が設置されることで、車体の前後長が短くなって大型化が抑えられ、フロアボード45の踏面及びシート41下方の収容ボックス29が広く確保される。よって、車体の大型化を抑えつつ、鞍乗型車両1の利便性を向上することができる。
【0037】
なお、本実施例においては、鞍乗型車両にバッテリとしてメインバッテリ及びサブバッテリが設置されたが、鞍乗型車両には少なくとも1つのバッテリが設置されていればよい。
【0038】
また、本実施例においては、フロアボードの下方でバッテリブラケットとモータブラケットが連結されているが、フロアボードの上方でバッテリブラケットとモータブラケットが連結されていてもよい。例えば、モータブラケットのベースプレートから支柱部材が立ち上がり、この支柱部材がフロアボードの切欠きを通ってバッテリブラケットに固定されてもよい。
【0039】
また、本実施例においては、モータブラケットがベースプレートにパイプ材や支持プレートを接合して形成されたが、モータブラケットはモータを支持可能に形成されていればよい。
【0040】
また、本実施例においては、バッテリブラケットがロアプレート、支柱部材、アッパプレートを接合して形成されたが、バッテリブラケットはバッテリを支持可能に形成されていればよい。
【0041】
また、本実施例のモータのレイアウトは上記の鞍乗型車両には限定されず、他の鞍乗型車両に採用されてもよい。なお、鞍乗型車両とは、運転者がシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、運転者がシートに跨らずに乗車するスクータタイプの車両も含んでいる。
【0042】
以上の通り、第1態様は、バッテリ(53)の電力によって走行可能な鞍乗型車両(1)であって、シート(41)前方で車体フレーム(10)に設置された低床のフロアボード(45)と、バッテリからの電力によって駆動輪(後輪34)を駆動させるモータ(60)と、を備え、フロアボードの下方にモータが設置されている。この構成によれば、フロアボードの下方にモータが設置されることで、車体の前後長が短くなって大型化が抑えられ、フロアボードの踏面及びシート下方の収容ボックスが広く確保される。よって、車体の大型化を抑えつつ、鞍乗型車両の利便性を向上することができる。
【0043】
第2態様は、第1態様において、フロアボードの上方にバッテリが設置され、モータの一部がバッテリの真下に位置している。この構成によれば、モータとバッテリが上下に並べられ、モータとバッテリがコンパクトに設置される。
【0044】
第3態様は、第2態様において、モータを支持するモータブラケット(63)と、バッテリを支持するバッテリブラケット(71)と、を備え、フロアボードには切欠き(46)が形成されており、モータブラケット及びバッテリブラケットがフロアボードの切欠きを通じて連結されている。この構成によれば、モータブラケットとバッテリブラケットを一体構造にして各ブラケットの取付構造を簡略化することができる。
【0045】
第4態様は、第3態様において、モータブラケットが車体フレームに着脱可能に取り付けられている。この構成によれば、モータブラケットの交換によってモータレイアウトが変更可能となり、ホイールサイズやタイヤ幅の変更に伴ってチェーンラインを調整することができる。
【0046】
第5態様は、第1態様から第4態様のいずれか1態様において、フロアボードが車体フレームのロアフレーム(13)に下側から支持され、モータがロアフレームの下方に位置している。この構成によれば、重量物であるモータが低位置にあるため、車体の重心が下がって走行安定性が向上する。
【0047】
第6態様は、第1態様から第5態様のいずれか1態様において、駆動輪がリアフレーム(16)を介して車体フレームに支持され、モータがリアフレームの基端部(17)よりも下方に位置している。この構成によれば、重量物であるモータが低位置にあるため、車体の重心が下がって走行安定性が向上する。
【0048】
第7態様は、第1態様から第6態様のいずれか1態様において、停車状態でモータの駆動軸中心(O1)が駆動輪の回転軸中心(O2)よりも下方に位置している。この構成によれば、重量物であるモータの駆動軸が低位置にあるため、車体の重心が下がって走行安定性が向上する。
【0049】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0050】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0051】
1 :鞍乗型車両
10 :車体フレーム
13 :ロアフレーム
16 :リアフレーム
17 :リアフレームの基端部
34 :後輪(駆動輪)
41 :シート
45 :フロアボード
46 :フロアボードの切欠き
53 :バッテリ
60 :モータ
63 :モータブラケット
71 :バッテリブラケット
O1 :駆動軸中心
O2 :回転軸中心
【要約】
【課題】車体の大型化を抑えると共に利便性を向上する。
【解決手段】鞍乗型車両(1)は、バッテリ(53)の電力によって走行可能である。鞍乗型車両には、シート(41)前方で車体フレーム(10)に設置された低床のフロアボード(45)と、バッテリからの電力によって駆動輪(34)を駆動させるモータ(60)と、が設けられている。フロアボードの下方にモータが設置されている。
【選択図】
図1