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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】光学式判別装置及び光学式選別装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20240611BHJP
   G01N 21/01 20060101ALI20240611BHJP
   B07C 5/342 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G01N21/27 A
G01N21/01 D
B07C5/342
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023210131
(22)【出願日】2023-12-13
【審査請求日】2023-12-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮本 知幸
(72)【発明者】
【氏名】檜和田 貫児
(72)【発明者】
【氏名】勝部 史也
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-125709(JP,A)
【文献】特開2022-098183(JP,A)
【文献】特開2014-130080(JP,A)
【文献】特開2022-073554(JP,A)
【文献】特開2001-356051(JP,A)
【文献】特開平04-095756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/958
G01N 33/00-33/98
G01J 3/00-3/52
B07C 5/00-5/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
200~2500nmの波長領域において対象物の撮像が可能なセンサ手段と、
前記対象物に照射するとともにそれぞれ照射する波長領域が異なる複数種類の照明手段と、
前記照明手段の発光態様を制御することが可能な照明制御手段と、
前記センサ手段により取得した撮像データに基づいて前記対象物の品質を判別する判別手段と、
前記複数種類の照明手段における光量バランスを生成する光量バランス生成手段と、を有し、
前記光量バランス生成手段は、
前記複数種類の照明手段による複数種類の照明条件下で予め品質の異なる対象物サンプルの高次元サンプルデータを取得し、該高次元サンプルデータを多変量解析して前記複数種類の照明手段における前記光量バランスを生成し、
前記照明制御手段は、
前記光量バランスに基づいて前記複数種類の照明手段における発光態様を制御する
ことを特徴とする光学式判別装置。
【請求項2】
記光量バランス生成手段は、
記高次元サンプルデータを多変量解析することで低次元化して前記光量バランスを生成することが可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の光学式判別装置。
【請求項3】
前記複数の照明手段は、
赤光源と、緑光源と、青光源と、近赤外光源と、を含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学式判別装置。
【請求項4】
前記複数の照明手段は、
波長の異なる複数の近赤外光源とした
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学式判別装置。
【請求項5】
前記請求項1又は2に記載の光学式判別装置を備えるとともに、前記判別手段による対象物の判別結果に基づいて、該対象物を選別除去するエジェクタ手段を有する
ことを特徴とする光学式選別装置。
【請求項6】
前記請求項3に記載の光学式判別装置を備えるとともに、前記判別手段による対象物の判別結果に基づいて、該対象物を選別除去するエジェクタ手段を有する
ことを特徴とする光学式選別装置。
【請求項7】
前記請求項4に記載の光学式判別装置を備えるとともに、前記判別手段による対象物の判別結果に基づいて、該対象物を選別除去するエジェクタ手段を有する
ことを特徴とする光学式選別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の種類や状態等を判別及び選別することが可能な、光学式判別装置及び光学式選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラスチック等の樹脂の材質を特定し、識別を行うために種々の技術が開示されている。例えば特許文献1には、分別装置に使用される光源として、赤外線からX線領域までの電磁波を利用する技術が開示されている。
【0003】
具体的には波長範囲が2~20μmの赤外光を利用してプラスチック板5種類(塩化ビニル、ポリプロピレン、ウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン)を識別する構成や、波長308nmのXeClエキシマレーザを利用して上記同様のプラスチック板5種類を識別する構成が開示されている。
【0004】
また特許文献2には、分類装置の光源として、約400nmから約2000nmの範囲の波長を出力する複数の照明源を備える構成が開示されている。さらに、特許文献3には、照明デバイスとして、物体に電磁エネルギーを向けるものや、特定の波長の光を物体に向けるものが開示され、撮像デバイスによって少なくとも1つの照明デバイスからの反射光を検出し得ることが開示されている。
【0005】
また特許文献4には、選別すべき材質に応じて適切な波長域を選択する技術として、粒状物の精密判定を行うため、適切な周波数帯域の照明光を用いることができるように、粒状物の欠陥の種類に適した色分布を有する照明光を作出する照明ユニットが開示されている。具体的には、発光波長の異なる複数のLED素子を内蔵する多色発光パッケージを備え、「未成熟玄米」を検出する場合、強い赤色系照明光を作り出す発光パターンに制御され、「カメムシ被害粒」を検出する場合、赤色系と緑色系の光度が強い照明光を作り出すパターンに制御されることなどが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平06-003260号公報
【文献】特開2016-014673号公報
【文献】特開2020-524328号公報
【文献】特開2022-098183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば上記特許文献4に開示された技術は、手動操作具を用いて予め指定された熟練者の見解に基づいて、多色発光パッケージの所定の点灯パターンにより適切な波長域の照明光を選択するものであり、熟練者の経験と勘に頼る非科学的な手法による制御であった。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、熟練者の経験と勘に頼らず、数学的な分析結果に基づいて適切な照明光の発光制御が実行され、対象物の品質を精度よく判別し、さらに選別可能な、光学式判別装置及び光学式選別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)に係る発明は、200~2500nmの波長領域において対象物の撮像が可能なセンサ手段と、前記対象物に照射するとともにそれぞれ照射する波長領域が異なる複数の照明手段と、前記照明手段の発光態様を制御することが可能な照明制御手段と、前記センサ手段により取得した撮像データに基づいて前記対象物の品質を判別する判別手段と、を有し、前記照明制御手段は、判別対象となる前記対象物の品質に応じて、多変量解析に基づく複数の前記照明手段における光量バランスを設定することを特徴とする光学式判別装置である。
【0010】
(2)に係る発明は、前記光量バランスを生成する光量バランス生成手段を有し、前記光量バランス生成手段は、前記照明手段による複数種類の光量バランスの下で、予め品質の異なる対象物サンプルの高次元サンプルデータを取得し、前記高次元サンプルデータを多変量解析することで低次元化して前記光量バランスを生成することが可能であることを特徴とする上記(1)に記載の光学式判別装置である。
【0011】
(3)に係る発明は、前記複数の照明手段は、赤光源と、緑光源と、青光源と、近赤外光源と、を含むことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の光学式判別装置である。
【0012】
(4)に係る発明は、前記複数の照明手段は、波長の異なる複数の近赤外光源としたことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の光学式判別装置である。
【0013】
(5)~(7)に係る発明は、上記(1)乃至(4)に記載の光学式判別装置を備えるとともに、前記判別手段による対象物の判別結果に基づいて、該対象物を選別除去するエジェクタ手段を有することを特徴とする光学式選別装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来のように熟練者の経験や勘に頼ることなく、数学的な分析手法に基づいて適切な照明光の発光制御が可能となり、対象物を精度よく判別、さらに選別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態における、光学式判別装置及び光学式選別装置の検査部の概略図面である。
図2】本発明の実施形態における、光学式判別装置及び光学式選別装置の制御構成を説明する概略ブロック図である。
図3】本発明の一実施形態において、照明手段に5種類の波長領域を有する光源を使用した概略図面である。
図4】本発明の一実施形態において、多変量解析(主成分分析)の態様を説明する図である。
図5】本発明の一実施形態において、多変量解析(主成分分析)によって照明手段の光量バランスの生成方法を説明する図である。
図6】本発明の一実施形態において、多変量解析(主成分分析)によって高次元照明条件によって得られたデータを低次元化する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の一例を図面に基づいて説明する。本実施形態における光学式判別装置1及び光学式選別装置2は、図1の概略図面に示されるように、対象物として、例えば、粒状の物体(粒状物20)を想定しており、光学的に粒状物20の品質を検査する検査部を有している。
【0017】
そして上記検査部は、図示されるように200~2500nmの波長領域において粒状物20の撮像が可能なセンサ手段10と、当該粒状物20に照射するとともにそれぞれ照射する波長領域が異なる複数の照明手段11とを少なくとも有している。
【0018】
加えて、図2の概略ブロック図に示されるように、上記照明手段11の発光態様を制御することが可能な照明制御手段31と、上記センサ手段10により取得した撮像データに基づいて粒状物20の品質を判別する判別手段30とを少なくとも有している。そして、上記照明制御手段31は、判別対象となる粒状物20の品質に応じて、多変量解析に基づく複数の照明手段11における光量バランスを設定することが可能となっている。
【0019】
より詳細に説明すると、本実施形態のセンサ手段10は、広帯域イメージセンサを利用することができ、例えば、可視光から近赤外光までの分光感度があるような広帯域のイメージセンサ(広帯域モノセンサ)を利用することが可能である。このような広帯域モノセンサを利用することにより、波長領域が異なる複数の照明手段11に対応する複数のセンサ手段を設置する必要がなくなり、コスト低減を図ることができる。
【0020】
なお、必ずしもセンサ手段10は広帯域モノセンサに限定されるものではなく、センサ手段10として、所定の波長領域において撮像が可能な各種イメージセンサを複数配置し、上記した200~2500nmの波長領域において粒状物20を撮像可能に構成することもできる。
【0021】
また、本実施形態では前述したように、照射する波長領域が異なる複数の照明手段11を有しており、具体的には照明手段11として赤光源(R)と、緑光源(G)と、青光源(B)と、近赤外光源(NIR)とを少なくとも備えている。そして照明制御手段31によって各光源における光量バランスが設定される。すなわち、各光源における光量がそれぞれ設定されることになる。なお、上記した光源の種類、さらにその数はあくまで一例であり、任意の光源を2つ以上配置することが可能である。
【0022】
上記した光量バランスは、光量バランス生成手段32によって生成される。具体的には、上記光量バランス生成手段32では、照明手段11による複数種類の光量バランスの下で、予め品質の異なる粒状物サンプルの高次元サンプルデータを取得し、当該高次元サンプルデータを多変量解析することで低次元化して光量バランスを生成している。
【0023】
上記した光量バランス生成手段32における多変量解析に関して、以下では主成分分析を例に、図3に示した5種類の波長領域を有する光源(照明手段11A~11E)を使用する場合について説明する。
【0024】
まず、前処理として、予め品質の異なる粒状物サンプルを用意し、上記5種類の光源による高次元照明条件下において、粒状物の品質を判別するための高次元サンプルデータを取得する。すなわち、図4に示されるように、光量X~Xの、ある高次元照明条件下において、品質の異なる粒状物サンプルを撮像して、高次元サンプルデータを取得する。
【0025】
続いて、上記高次元サンプルデータに対して主成分分析を行う。図5には、各主成分の寄与率の一例と、主成分分析の基本式が示されているが、図示されるように第3主成分までの累積寄与率は約90%にもなることから、5次元から3次元以下の主成分に次元削減(低次元化)を行うことができる。
【0026】
そして、主成分分析で求めた主成分係数を基に、各照明手段11A~11Eの光量バランス(変数X~X)を変更(生成)し、同時に判別対象となる粒状物20の撮像情報を得ることで、図6に示されるような第1主成分で現わす1次元空間、又は、第1主成分と第2主成分で現わす2次元空間、又は、第1主成分と第2主成分と第3主成分で現わす3次元空間に次元削減して撮像情報が得られることになる。
【0027】
上記したような処理によって、各照明手段11A~11Eの光量バランスを特殊に制御(例えば、図6の照明パターン1のみ、又は照明パターン1と2、又は照明パターン1と2と3のような制御)することで、例えば、赤光源(R)、緑光源(G)、青光源(B)の反射透過光や反射光、透過光、及び、複数の近赤外光源(NIR)の反射透過光や反射光、透過光による全部、又は、これらの内の複数からなる高次元照明条件下と同等の品質判別性能を得ることができる。つまり、各照明手段11A~11Eの光量を多変量解析によってバランスさせることで、粒状物20の品質(例えば、良品、不良品、異物ほか)を低次元照明条件下で高精度に判別することが可能となる。
【0028】
上記のような処理によって、粒状物20の撮像情報を3次元以下の空間で表現できるため、ディスプレイ上に個々の粒状物20の三次元光学相関図を作成し、撮像情報をプロット表示することが可能となる。これにより、操作者によって粒状物20の判別閾値を容易に入力・編集することが可能となる。
【0029】
(光学式選別装置)
以上、本実施形態における光学式判別装置1の判別処理構成の一例について説明したが、上記光学式判別装置1を、公知の粒状物等の選別装置に備えるようにして、光学式選別装置2とすることが可能である。
【0030】
光学式選別装置2は、例えば、装置本体内に粒状物20の移送手段である傾斜したシュートと、当該シュートから落下する粒状物20に、前述したセンサ手段10と照明手段11とを少なくとも備えて光学的検査を行う検査部と、当該検査部の下方に設けられるとともに、例えば粒状物20の不良品を噴風で吹き飛ばすことができるエジェクタ手段を備えることができる。
【0031】
また、光学式選別装置2の制御部3には、図1に示されるように、エジェクタ制御部33が備えられ、エジェクタ駆動回路40を介してエジェクタ手段41の動作が制御される。すなわち、前述した判別手段30による粒状物20の判別結果に基づいて、当該粒状物20をエジェクタ手段41によって選別除去することが可能となる。
【0032】
(その他の実施形態)
以上、本発明の光学式判別装置及び光学式選別装置の一実施形態について説明した。しかし、本発明は前述の実施形態に必ずしも限定されるものではなく、例えば以下のような変形例も含まれる。
【0033】
例えば、判別対象となる対象物として、米を判別対象とすることが可能である。すなわち、判別対象となる米の中から、良品の白米と、不良品の着色米や薄焼け米、しらたを判別して選別することが可能である。
【0034】
また、判別対象となる対象物は上記した米に限らず、麦類、豆類、ナッツ類等の穀粒の他、ペレット、ビーズ等の樹脂片、医薬品、鉱石類、シラス等の細かい物品とすることができる。そして、判別対象なる原料を良品と不良品とに選別したり、原料に混入する異物等を排除したりする場合に、本発明の光学式判別装置及び光学式選別装置は有効に適用することが可能である。
【0035】
前述した実施形態では、多変量解析の一例として主成分分析による実施形態を説明したが、必ずしもこのような分析手法に限定されるものではなく、次元削減を可能とするものであれば、分類するモデルとできるような線形判別分析(LDA)など、他の手法を利用することが可能である。
【0036】
以上、本発明の実施形態及び一部の変形例について説明してきたが、これらの説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 光学式判別装置
2 光学式選別装置
3 制御部
10 センサ手段
11(11A、11B、11C、11D、11E) 照明手段
20 粒状物
30 判別手段
31 照明制御手段
32 光量バランス生成手段
33 エジェクタ制御部
40 エジェクタ駆動回路
41 エジェクタ手段
【要約】
【課題】熟練者の経験と勘に頼らず、数学的な分析結果に基づいて適切な照明光の発光制御が実行され、対象物を精度よく判別、さらに選別可能な、光学式判別装置及び光学式選別装置を提供すること。
【解決手段】200~2500nmの波長領域において対象物(粒状物20)の撮像が可能なセンサ手段10と、前記対象物に照射するとともにそれぞれ照射する波長領域が異なる複数の照明手段11と、前記照明手段11の発光態様を制御することが可能な照明制御手段31と、前記センサ手段10により取得した撮像データに基づいて前記対象物の品質を判別する判別手段30と、を有し、前記照明制御手段31は、判別対象となる前記対象物の品質に応じて、多変量解析に基づく複数の前記照明手段11における光量バランスを設定することを特徴とする。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6