(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】電池用電極およびその製造方法、ならびに電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240611BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240611BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240611BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20240611BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20240611BHJP
H01M 4/02 20060101ALN20240611BHJP
H01M 4/04 20060101ALN20240611BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/139
H01M10/052
H01M10/0566
H01M10/0585
H01M4/02 Z
H01M4/04 A
(21)【出願番号】P 2023500651
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 JP2022001932
(87)【国際公開番号】W WO2022176492
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2021023410
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏宣
(72)【発明者】
【氏名】赤平 幸郎
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/141279(WO,A1)
【文献】特開2009-081066(JP,A)
【文献】特表2014-522558(JP,A)
【文献】国際公開第2013/031938(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01M 4/139
H01M 10/052
H01M 10/0566
H01M 10/0585
H01M 4/02
H01M 4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、前記集電体の上に設けられた活物質層とを含む電極本体と、
前記集電体に連結され、第1方向に延在する電極タブと
を備え、
前記電極本体は、
前記第1方向と交差する第2方向において前記電極タブよりも後側に位置する凸状の第1湾曲端部と、
前記第1湾曲端部に連結され、前記第1湾曲端部に対する連結箇所に前記後側に向かって凸状の第1角部を形成する第1非湾曲端部と、
前記第2方向において前記電極タブよりも前側に位置する凸状の第2湾曲端部と、
前記第2湾曲端部に連結され、前記第2湾曲端部に対する連結箇所に前記前側に向かって凸状の第2角部を形成する第2非湾曲端部と
を有し、
前記第1湾曲端部の曲率半径と前記第2湾曲端部の曲率半径とは、互いに異なっており、
前記第1角部の角度および前記第2角部の角度のそれぞれは、鈍角である、
電池用電極。
【請求項2】
前記第1湾曲端部の曲率半径は、0.5mm以上2.5mm以下であり、
前記第2湾曲端部の曲率半径は、1.0mm以上5.0mm以下である、
請求項1記載の電池用電極。
【請求項3】
前記電極本体は、さらに、
前記第2方向において前記電極タブよりも後側に位置する凸状の第3湾曲端部と、
前記第2方向において前記電極タブよりも前側に位置する凸状の第4湾曲端部と、
を有し、
前記第1非湾曲端部は、前記第3湾曲端部に連結され、前記第3湾曲端部に対する連結箇所に前記後側に向かって凸状の第3角部を形成し、
前記第2非湾曲端部は、前記第4湾曲端部に連結され、前記第4湾曲端部に対する連結箇所に前記前側に向かって凸状の第4角部を形成し、
前記第3湾曲端部の曲率半径と前記第4湾曲端部の曲率半径とは、互いに異なっており、
前記第3角部の角度および前記第4角部の角度のそれぞれは、鈍角であり、
前記電極本体の平面形状は、前記第1湾曲端部、前記第2湾曲端部、前記第3湾曲端部および前記第4湾曲端部を四隅に有する略四角形である、
請求項1または請求項2に記載の電池用電極。
【請求項4】
電極板と前記電極板に連結された複数の電極タブとを備え、前記複数の電極タブのそれぞれが第1方向に延在し、前記複数の電極タブが前記第1方向と交差する第2方向において互いに離隔されながら前記電極板に連結された、電極前駆体を準備し、
前記電極前駆体のうちの1つの前記電極タブを含む範囲において、前記第2方向における前記電極タブよりも後側において第1切断刃を用いて前記電極板を切断したのち、前記第2方向における前記電極タブよりも前側において第2切断刃を用いて前記第1切断刃により切断された前記電極板を切断し、
前記電極板は、
前記複数の電極タブが連結された集電体と、
前記集電体の上に設けられた活物質層と
を含み、
前記第1切断刃は、
前記後側に向かって凸状に湾曲する第1湾曲刃部と、
前記第1湾曲刃部に連結され、前記第1湾曲刃部に対する連結箇所に前記後側に向かって凸状の刃角部を形成する非湾曲刃部と
を含み、
前記第2切断刃は、前記第2方向において前記第1湾曲刃部に対応する位置に、前記前側に向かって凸状に湾曲する第2湾曲刃部を含み、
前記第2湾曲刃部の曲率半径は、前記第1湾曲刃部の曲率半径よりも大きく、
前記刃角部の角度は、鈍角であり、
前記第2切断刃を用いて前記電極板を切断する際に、前記第1切断刃のうちの前記非湾曲刃部により前記電極板が切断された箇所に前記第2湾曲刃部が重なるように、前記電極前駆体に対して前記第2切断刃を位置合わせする、
電池用電極の製造方法。
【請求項5】
前記電極前駆体のうちの1つの前記電極タブを含む範囲ごとに、前記第1切断刃および前記第2切断刃を用いて前記電極板を切断することを繰り返す、
請求項4記載の電池用電極の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電池用電極と、
電解液と
を備えた、電池。
【請求項7】
正極および負極を備えリチウムイオン二次電池であり、
前記電池用電極は、前記正極である、
請求項6記載の電池。
【請求項8】
前記負極は、前記正極の全体に対向しており、前記第1湾曲端部および前記第2湾曲端部のそれぞれに対応する位置に凸状の角部を有する、
請求項7記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電池用電極およびその製造方法、ならびに電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、電池用電極と共に電解液を備えており、その電池用電極を備えた電池の構成および製造方法に関しては、様々な検討がなされている。
【0003】
具体的には、コーナー部の形状に制約を受けない多様なデザインの電池を得るために、そのコーナー部の形状を略曲面状にしている(例えば、特許文献1参照。)。このコーナー部は、互いに連結された凸状の曲面部および凹状の曲面部を有しており、そのコーナー部を有する電池を製造するために、複数の電極タブが接続された電極前駆体を形成したのち、その電極前駆体を切断している。
【0004】
また、電極の脱落を防止するために、その電極に面取部を設けている(例えば、特許文献2参照。)。この面取部は、互いに連結された曲線部および外周接続部を有しており、その面取部の角度は、鈍角である。この面取部の角度は、曲線部と外周接続部との交点における接線と、その外周接続部に沿った直線とにより規定される角度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2014-522558号公報
【文献】国際公開第2013/031938号パンフレット
【発明の概要】
【0006】
電池用電極の構成および製造方法に関する様々な検討がなされているが、その電極用電極を備えた電池の安全性および製造効率は未だ十分でないため、改善の余地がある。
【0007】
よって、優れた安全性および優れた製造効率を得ることが可能である電池用電極およびその製造方法、ならびに電池が望まれている。
【0008】
本技術の一実施形態の電池用電極は、集電体とその集電体の上に設けられた活物質層とを含む電極本体と、その集電体に連結され、第1方向に延在する電極タブとを備えたものである。電極本体は、第1方向と交差する第2方向において電極タブよりも後側に位置する凸状の第1湾曲端部と、その第1湾曲端部に連結され、第1湾曲端部に対する連結箇所に後側に向かって凸状の第1角部を形成する第1非湾曲端部と、その第2方向において電極タブよりも前側に位置する凸状の第2湾曲端部と、その第2湾曲端部に連結され、第2湾曲端部に対する連結箇所に前側に向かって凸状の第2角部を形成する第2非湾曲端部とを有する。第1湾曲端部の曲率半径と第2湾曲端部の曲率半径とは互いに異なっており、第1角部の角度および第2角部の角度のそれぞれは鈍角である。
【0009】
本技術の一実施形態の電池用電極の製造方法は、電極板とその電極板に連結された複数の電極タブとを備え、その複数の電極タブのそれぞれが第1方向に延在し、その複数の電極タブが第1方向と交差する第2方向において互いに離隔されながら電極板に連結された電極前駆体を準備し、その電極前駆体のうちの1つの電極タブを含む範囲において、第2方向における電極タブよりも後側において第1切断刃を用いて電極板を切断したのち、その第2方向における電極タブよりも前側において第2切断刃を用いて第1切断刃により切断された電極板を切断するようにしたものである。電極板は、複数の電極タブが連結された集電体と、その集電体の上に設けられた活物質層とを含む。第1切断刃は、後側に向かって凸状に湾曲する第1湾曲刃部と、その第1湾曲刃部に連結され、第1湾曲刃部に対する連結箇所に後側に向かって凸状の刃角部を形成する非湾曲刃部とを含み、第2切断刃は、第2方向において第1湾曲刃部に対応する位置に前側に向かって凸状に湾曲する第2湾曲刃部を含む。第2湾曲刃部の曲率半径は第1湾曲刃部の曲率半径よりも大きく、刃角部の角度は鈍角である。第2切断刃を用いて電極板を切断する際に、第1切断刃のうちの非湾曲刃部により電極板が切断された箇所に第2湾曲刃部が重なるように、電極前駆体に対して第2切断刃を位置合わせする。
【0010】
本技術の一実施形態の電池は、電池用電極と電解液とを備え、その電池用電極が上記した本技術の一実施形態の電池用電極の構成と同様の構成を有するものである。
【0011】
本技術の一実施形態の電池用電極によれば、その電池用電極が電極本体および電極タブを備えており、その電極本体が第1湾曲端部、第1非湾曲端部、第1角部、第2湾曲端部、第2非湾曲端部および第2角部を有しており、その第1湾曲端部の曲率半径と第2湾曲端部の曲率半径とが互いに異なっており、その第1角部の角度および第2角部の角度のそれぞれが鈍角であるので、優れた安全性および優れた製造効率を得ることができる。
【0012】
本技術の一実施形態の電池用電極の製造方法によれば、電極板と複数の電極タブとを備えた電極前駆体のうちの1つの電極端部を含む範囲において、第1湾曲刃部、非湾曲刃部および刃角部を含む第1切断刃を用いて電極板を切断したのち、第2湾曲刃部を含む第2切断刃を用いて第1切断刃により切断された電極板を切断しており、その第2湾曲刃部の曲率半径が第1湾曲刃部の曲率半径よりも大きく、刃角部の角度が鈍角であり、その第2切断刃を用いて電極板を切断する際に非湾曲刃部により電極板が切断された箇所に第2湾曲刃部が重なるように電極前駆体に対して第2切断刃を位置合わせしているので、優れた安全性および優れた製造効率を有する電極を得ることができる。
【0013】
本技術の一実施形態の電池によれば、上記した構成を有する電池用電極を備えているので、優れた安全性および優れた製造効率を有する電池を得ることができる。
【0014】
なお、本技術の効果は、必ずしもここで説明された効果に限定されるわけではなく、後述する本技術に関連する一連の効果のうちのいずれの効果でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本技術の一実施形態における電極の構成を表す平面図である。
【
図2】
図1に示した電極の構成を表す断面図である。
【
図3】本技術の一実施形態における電極の製造方法を説明するための平面図である。
【
図4】
図3に続く電極の製造方法を説明するための平面図である。
【
図5】
図4に続く電極の製造方法を説明するための平面図である。
【
図6】
図5に続く電極の製造方法を説明するための平面図である。
【
図7】
図6に続く電極の製造方法を説明するための平面図である。
【
図8】本技術の一実施形態における電池の構成を表す斜視図である。
【
図9】
図8に示した電池素子の構成を表す断面図である。
【
図10】
図9に示した正極の構成を表す平面図である。
【
図11】
図9に示した負極の構成を表す断面図である。
【
図12】変形例3の電極の構成を表す平面図である。
【
図13】変形例3の電極の製造方法を説明するための平面図である。
【
図14】電池の適用例の構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本技術の一実施形態に関して、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.電池用電極
1-1.全体の構成
1-2.電極本体の形状
1-3.製造方法
1-4.作用および効果
2.電池
2-1.構成
2-2.動作
2-3.製造方法
2-4.作用および効果
3.変形例
4.電池の用途
【0017】
<1.電池用電極>
まず、本技術の一実施形態の電池用電極に関して説明する。なお、本技術の一実施形態の電池用電極の製造方法は、ここで説明する電池用電極を製造する方法であるため、その電池用電極の製造方法に関しては、以下で併せて説明する。
【0018】
この電池用電極(以下、単に「電極」と呼称する。)は、電気化学デバイスに用いられる。この場合において、電極は、正極として用いられてもよいし、負極として用いられてもよいし、正極および負極のそれぞれとして用いられてもよい。
【0019】
電極が用いられる電池は、一次電池でもよいし、二次電池でもよい。ただし、電極は、電池に限られず、キャパシタなどの他の電気化学デバイスに用いられてもよい。
【0020】
<1-1.全体の構成>
図1は、本技術の一実施形態の電極である電極10の平面構成を表していると共に、
図2は、
図1に示した電極10の断面構成を表している。
【0021】
以下の説明では、便宜上、
図1中の上側、下側、右側および左側のそれぞれを電極10の上側、下側、右側および左側とする。
【0022】
この電極10は、
図1および
図2に示したように、電極本体1および電極タブ2を備えている。なお、
図1では、電極本体1に濃い網掛けを施していると共に、電極タブ2に淡い網掛けを施している。
【0023】
図1に示した方向D1,D2は、電極10の構成を説明するために用いられる2種類の方向を表している。方向D1は、後述するように、電極タブ2の延在方向(第1方向)であり、
図1中の上側に向かう方向である。方向D2は、後述するように、方向D1と交差する方向(第2方向)であり、
図1中の右側に向かう方向である。ここでは、方向D1は、Y軸に沿った方向であると共に、方向D2は、そのY軸と直交する方向、すなわちX軸に沿った方向である。
【0024】
[電極本体]
電極本体1は、電極反応を進行させる電極10の主要部である。この電極本体1は、電極10を用いた電池の安全性および製造効率を向上させるために、特徴的な形状(平面形状)を有している。電極本体1の形状の詳細に関しては、後述する。
【0025】
具体的には、電極本体1は、集電体1Aおよび活物質層1Bを含んでおり、その活物質層1Bは、集電体1Aの上に設けられている。
【0026】
(集電体)
集電体1Aは、活物質層1Bを支持する導電性の支持体であり、その活物質層1Bが設けられる一対の面を有している。この集電体1Aは、金属材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0027】
(活物質層)
活物質層1Bは、集電体1Aの上に設けられている。ここでは、活物質層1Bは、集電体1Aの両面に設けられているため、電極10は、2つの活物質層1Bを含んでいる。ただし、活物質層1Bは、集電体1Aの片面だけに設けられているため、電極10は、1つの活物質層1Bだけを含んでいてもよい。
【0028】
この活物質層1Bは、活物質のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、活物質層1Bは、さらに、結着剤および導電剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。活物質の種類は、特に限定されないが、具体的には、電極10の用途、すなわち電極10が正極および負極のうちのどちらとして用いられるかなどの条件に応じて決定される。電極10の用途に応じた活物質の具体的な種類に関しては、後述する。
【0029】
結着剤は、合成ゴムおよび高分子化合物などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。合成ゴムは、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムおよびエチレンプロピレンジエンなどである。高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミドおよびカルボキシメチルセルロースなどである。
【0030】
導電剤は、炭素材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その炭素材料は、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックなどである。ただし、導電性材料は、金属材料および高分子化合物などでもよい。
【0031】
活物質層1Bの形成方法は、特に限定されないが、具体的には、塗布法、気相法、液相法、溶射法および焼成法(焼結法)などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。
【0032】
[電極タブ]
電極タブ2は、電極本体1のうちの集電体1Aに連結されている。この電極タブ2は、方向D1に延在している。
【0033】
この方向D1は、
図1から明らかなように、電極タブ2が電極本体1に連結されている側(下側)を起点として、その電極本体1から離れる側(上側)に向かう方向である。これにより、電極タブ2は、電極本体1から方向D1に向かって突出するように、その電極本体1に連結されている。
【0034】
電極タブ2の形成材料は、特に限定されないが、具体的には、集電体1Aの形成材料と同様である。ただし、電極タブ2の形成材料と集電体1Aの形成材料とは、互いに同じでもよいし、互いに異なってもよい。
【0035】
ここでは、電極タブ2は、集電体1Aの一部(突出部分)であるため、その集電体1Aとは一体化されている。
図2では、電極本体1と電極タブ2とを互いに区別しやすくするために、その電極本体1と電極タブ2との境界に破線を示している。
【0036】
ただし、電極タブ2は、集電体1Aから物理的に分離されているため、その集電体1Aとは別体化されていてもよい。この場合には、溶接法などを用いて電極タブ2が集電体1Aに連結されていてもよい。
【0037】
<1-2.電極本体の形状>
ここで、
図1を参照しながら、電極本体1の平面形状に関して具体的に説明する。この平面形状とは、XY面に沿った電極本体1の平面の形状である。
【0038】
ここでは、電極本体1の平面形状は、略矩形である。すなわち、電極本体1は、4つの直線端部L1~L4を有しているため、その電極本体1の平面形状は、主に、4つの直線端部L1~L4により画定されている。具体的には、電極本体1の平面形状は、方向D2の寸法よりも方向D1の寸法が大きい略長方形である。
【0039】
以下では、方向D2において電極タブ2よりも後側(左側)を「電極タブ2よりも後側」または単に「後側」と説明すると共に、その方向D2において電極タブ2よりも前側(右側)を「電極タブ2よりも前側」または単に「前側」と説明する。
【0040】
直線端部L1は、電極タブ2よりも後側に位置する第1非湾曲端部であり、ここでは、方向D1に延在している。直線端部L2は、電極タブ2よりも前側に位置する第2非湾曲端部であり、方向D1に延在している。これにより、直線端部L1,L2は、方向D2において互いに対向している。
【0041】
直線端部L3は、直線端部L4よりも電極タブ2に近い側に位置しており、方向D2に延在している。直線端部L4は、直線端部L3よりも電極タブ2から遠い側に位置しており、方向D2に延在している。これにより、直線端部L3,L4は、方向D1において互いに対向している。ここでは、電極タブ2は、直線端部L3において電極本体1のうちの集電体1Aに連結されていると共に、直線端部L2よりも直線端部L1に近い側に配置されている。
【0042】
また、電極本体1は、四隅に湾曲端部R1~R4を有している。すなわち、略矩形(略長方形)である電極本体1の平面形状は、4つの直線端部L1~L4と共に4つの湾曲端部R1~R4により画定されている。
【0043】
湾曲端部R1は、電極タブ2よりも後側に位置する凸状の第1湾曲端部であり、曲率半径V1を有している。この湾曲端部R1は、直線端部L1,L3のそれぞれに連結されている。
【0044】
湾曲端部R1に対する直線端部L1の連結箇所には、電極タブ2よりも後側に向かって凸状の角部C1(第1角部)が形成されている。この角部C1は、湾曲端部R1と直線端部L1との連結箇所(連結点P1)を頂点とする角部であり、角度θ1を有している。この角度θ1は、連結点P1において湾曲端部R1に対する接線S1を引いた際に、直線端部L1に沿った直線と接線S1とにより規定される角度であり、鈍角(90°よりも大きい角度)である。
【0045】
湾曲端部R2は、電極タブ2よりも前側に位置する凸状の第2湾曲端部であり、曲率半径V2を有している。この湾曲端部R2は、直線端部L2,L3のそれぞれに連結されている。
【0046】
湾曲端部R2に対する直線端部L2の連結箇所には、電極タブ2よりも前側に向かって凸状の角部C2(第2角部)が形成されている。この角部C2は、湾曲端部R2と直線端部L2との連結箇所(連結点P2)を頂点とする角部であり、角度θ2を有している。この角度θ2は、連結点P2において湾曲端部R2に対する接線S2を引いた際に、直線端部L2に沿った直線と接線S2とにより規定される角度であり、鈍角である。
【0047】
すなわち、湾曲端部R1に関する「(方向D2において)電極タブ2よりも後側)」とは、
図1に示したように、電極タブ2が上側に位置するように電極10を配置した場合において、その電極タブ2よりも左側であり、より具体的には、電極タブ2よりも遠い側ではなく電極タブ2に近い側において、その電極タブ2よりも左側である。
【0048】
一方、湾曲端部R2に関する「(方向D2において)電極タブ2よりも前側)」とは、
図1に示したように、電極タブ2が上側に位置するように電極10を配置した場合において、その電極タブ2よりも右側であり、より具体的には、電極タブ2よりも遠い側ではなく電極タブ2に近い側において、その電極タブ2よりも右側である。
【0049】
電極本体1が湾曲端部R1,R2および角部C1,C2を有しているのは、電極10を用いた電池において、短絡が発生しにくくなると共に電極10の製造ロスが発生しにくくなるため、安全性および製造効率のそれぞれが向上するからである。ここで説明した理由の詳細に関しては、後述する。
【0050】
ただし、湾曲端部R1の曲率半径V1と湾曲端部R2の曲率半径V2とは、互いに異なっている。この場合には、曲率半径V1が曲率半径V2より大きくてもよいし、曲率半径V1が曲率半径V2より小さくてもよい。
【0051】
曲率半径V1,V2が互いに異なっているのは、電極10の製造ロスがより発生しにくくなるため、電池の製造効率がより向上するからである。ここで説明した理由の詳細に関しては、後述する。
【0052】
ここでは、
図1に示したように、電極タブ2より後側に位置する湾曲端部R1の曲率半径V1よりも、その電極タブ2より前側に位置する湾曲端部R2の曲率半径V2が大きくなっている。ここで説明した曲率半径V1,V2の大小関係が成立していれば、その曲率半径V1,V2のそれぞれの値は、特に限定されない。
【0053】
一例を挙げると、曲率半径V1は、0.5mm~2.5mmであると共に、曲率半径V2は、1.0mm~5.0mmである。曲率半径V1,V2の差異が十分に大きくなるため、短絡が十分に発生しにくくなると共に、電極10の製造ロスが十分に発生しにくくなるからである。
【0054】
ここでは、湾曲端部R3,R4のそれぞれの構成は、上記した湾曲端部R1,R2のそれぞれの構成と同様である。
【0055】
湾曲端部R3は、電極タブ2よりも後側に位置する凸状の第3湾曲端部であり、曲率半径V3を有している。この湾曲端部R3は、直線端部L1,L4のそれぞれに連結されている。
【0056】
湾曲端部R3に対する直線端部L1の連結箇所には、電極タブ2よりも後側に向かって凸状の角部C3(第3角部)が形成されている。この角部C3は、湾曲端部R3と直線端部L1との連結箇所(連結点P3)を頂点とする角部であり、角度θ3を有している。この角度θ3は、連結点P3において湾曲端部R3に対する接線S3を引いた際に、直線端部L1に沿った直線と接線S3とにより規定される角度であり、鈍角である。
【0057】
湾曲端部R4は、電極タブ2よりも前側に位置する凸状の第4湾曲端部であり、曲率半径V4を有している。この湾曲端部R4は、直線端部L2,L4のそれぞれに連結されている。
【0058】
湾曲端部R4に対する直線端部L2の連結箇所には、電極タブ2よりも前側に向かって凸状の角部C4(第4角部)が形成されている。この角部C4は、湾曲端部R4と直線端部L2との連結箇所(連結点P4)を頂点とする角部であり、角度θ4を有している。この角度θ4は、連結点P4において湾曲端部R4に対する接線S4を引いた際に、直線端部L2に沿った直線と接線S4とにより規定される角度であり、鈍角である。
【0059】
すなわち、湾曲端部R3に関する「(方向D2において)電極タブ2よりも後側)」とは、
図1に示したように、電極タブ2が上側に位置するように電極10を配置した場合において、その電極タブ2よりも左側であり、より具体的には、電極タブ2に近い側ではなく電極タブ2よりも遠い側において、その電極タブ2よりも左側である。
【0060】
一方、湾曲端部R4に関する「(方向D2において)電極タブ2よりも前側)」とは、
図1に示したように、電極タブ2が上側に位置するように電極10を配置した場合において、その電極タブ2よりも右側であり、より具体的には、電極タブ2に近い側ではなく電極タブ2よりも遠い側において、その電極タブ2よりも右側である。
【0061】
電極本体1が湾曲端部R3,R4および角部C3,C4を有しているのは、その電極本体1が湾曲端部R1,R2および角部C1,C2を有している場合と同様に、電池において安全性および製造効率のそれぞれが向上するからである。
【0062】
ただし、湾曲端部R3の曲率半径V3と湾曲端部R4の曲率半径V4とは、互いに異なっている。この場合には、曲率半径V3が曲率半径V4より大きくてもよいし、曲率半径V3が曲率半径V4より小さくてもよい。曲率半径V3,V4が互いに異なっているのは、曲率半径V1,V2が互いに異なっている場合と同様に、電池の製造効率がより向上するからである。
【0063】
ここでは、
図1に示したように、電極タブ2より後側に位置する湾曲端部R3の曲率半径V3よりも、その電極タブ2より前側に位置する湾曲端部R4の曲率半径V4が大きくなっている。ここで説明した曲率半径V3,V4の大小関係が成立していれば、その曲率半径V3,V4のそれぞれの値は、特に限定されない。一例を挙げると、曲率半径V3の範囲は、上記した曲率半径V1の範囲と同様であると共に、曲率半径V4の範囲は、上記した曲率半径V3の範囲と同様である。
【0064】
ただし、曲率半径V3は、曲率半径V1と同じでもよいし、その曲率半径V1とは異なっていてもよい。同様に、曲率半径V4は、曲率半径V2と同じでもよいし、その曲率半径V2とは異なっていてもよい。
【0065】
これにより、電極本体1の平面形状は、四隅に湾曲端部R1~R4を有する略矩形(略四角形)である。なお、
図1では、電極本体1が湾曲端部R1~R4を有していない場合、すなわち電極本体1の平面形状が四隅に角部を有する矩形(長方形)である場合と比較しやすくするために、その平面形状が長方形である場合における電極本体1の外縁を破線で示している。
【0066】
<1-3.製造方法>
図3~
図7のそれぞれは、電極10の製造方法を説明するために、
図1に対応する平面構成を表している。以下の説明では、随時、
図3~
図7と共に、既に説明した
図1および
図2を参照する。
【0067】
電極10を製造する場合には、以下で説明するように、その電極10を製造するための前駆体(電極前駆体20)を用いると共に、その電極前駆体20を加工(切断処理)するために2種類の切断刃T1,T2を用いる。電極前駆体20および切断刃T1,T2のそれぞれの構成に関しては、後述する。
【0068】
以下では、電極前駆体20と共に切断刃T1,T2を用いて連続的に切断処理を行うことにより、複数の電極10を連続的に製造する場合に関して説明する。この電極10の製造工程では、以下で説明するように、電極前駆体20の形成処理と、前切断処理と、切断刃T1を用いた第1切断処理と、切断刃T2を用いた第2切断処理とをこの順に行う。
【0069】
[電極前駆体の形成処理]
最初に、
図3および
図4に示したように、電極前駆体20を形成する。
【0070】
電極前駆体20を形成する場合には、最初に、活物質、結着剤および導電剤などが互いに混合された混合物(合剤)を溶媒に投入することにより、ペースト状の合剤スラリーを調製する。この溶媒は、水性溶媒でもよいし、非水溶媒(有機溶媒)でもよい。
【0071】
続いて、
図3に示したように、集電体1Aの両面に合剤スラリーを連続的に塗布することにより、活物質層1Bを形成する。ここでは、集電体1Aは、方向D2に延在する帯状であるため、活物質層1Bは、方向D2に延在する帯状となるように形成される。この場合には、方向D1における活物質層1Bの寸法よりも方向D1における集電体1Aの寸法を大きくすることにより、その活物質層1Bよりも集電体1Aの一部を上側に突出させる。続いて、必要に応じて、ロールプレス機などを用いて活物質層1Bを圧縮成型する。この場合には、活物質層1Bを加熱してもよいし、活物質層1Bの圧縮成型処理を複数回繰り返してもよい。これにより、集電体1Aの両面に活物質層1Bが形成されるため、電極板21が形成される。
【0072】
最後に、複数の電極タブ2の形成用の切断刃(図示せず)を用いて、活物質層1Bよりも上側に突出している集電体1Aの一部を切断することにより、
図4に示したように、複数の電極タブ2を形成する。この場合には、複数の電極タブ2のそれぞれが方向D1に延在すると共に、その複数の電極タブ2が方向D2において互いに離隔されながら配列されるようにする。これにより、集電体1Aの両面に活物質層1Bが形成されるため、電極板21が形成されると共に、その電極板21のうちの集電体1Aに複数の電極タブ2が連結されるため、その電極板21および複数の電極タブ2を備えた電極前駆体20が形成される。
【0073】
ここでは、電極前駆体20のうちの電極板21(集電体1Aおよび活物質層1B)の平面形状は、方向D2の寸法が方向D1の寸法よりも大きい長方形であり、直線端部L21~L24により画定されている。直線端部L21,L22のそれぞれは、直線端部L1,L2に対応しているため、方向D1に延在していると共に、直線端部L23,L24のそれぞれは、直線端部L3,L4に対応しているため、方向D2に延在している。
【0074】
[前切断処理]
続いて、
図4および
図5に示したように、切断刃T1(第1切断刃)を備えた切断装置を用いて、電極前駆体20の前切断処理を行う。この前切断処理は、電極前駆体20を用いて電極10を形成するための前処理である。なお、
図4では、切断刃T1の構成(形状)を説明するために、その切断刃T1を用いて電極前駆体20が切断される箇所を破線で示している。
【0075】
(切断刃T1の構成)
この切断刃T1は、電極10の平面形状(湾曲端部R1、直線端部L1および角部C1)に対応する形状を有している。すなわち、切断刃T1は、湾曲端部R1に対応する湾曲刃部X1と、直線端部L1に対応する直線刃部X3とを含んでいる。ここでは、直線刃部X3は、方向D1に延在している非曲線刃部である。
【0076】
湾曲刃部X1は、電極タブ2よりも後側に向かって凸状に湾曲する第1湾曲刃部であり、曲率半径W1を有している。この湾曲刃部X1は、直線刃部X3に連結されており、その湾曲刃部X1の曲率半径W1は、湾曲端部R1の曲率半径V1と同様である。
【0077】
湾曲刃部X1に対する直線刃部X3の連結箇所には、電極タブ2よりも後側に向かって凸状の刃角部K1が形成されている。この刃角部K1は、角部C1に対応しているため、湾曲刃部X1と直線刃部X3との連結箇所(連結点Q1)を頂点とする角部であり、角度ω1を有している。この角度ω1は、連結点Q1において湾曲刃部X1に対する刃接線H1を引いた際に、直線刃部X3に沿った直線と刃接線H1とにより規定される角度であり、角度C1の角度θ1と同様に鈍角である。
【0078】
ここでは、切断刃T1は、電極10の平面形状(湾曲端部R1,R3、直線端部L1および角部C1,C3)に対応する形状を有しているため、上記した湾曲刃部X1および直線刃部X3と共に、湾曲端部R3に対応する湾曲刃部X2を含んでいる。
【0079】
湾曲刃部X2は、電極タブ2よりも後側に向かって凸状に湾曲する第2湾曲刃部であり、曲率半径W2を有している。この湾曲刃部X2は、直線刃部X3に連結されており、その湾曲刃部X2の曲率半径W2は、湾曲端部R3の曲率半径V3と同様である。
【0080】
湾曲刃部X2に対する直線刃部X3の連結箇所には、電極タブ2よりも後側に向かって凸状の刃角部K2が形成されている。この刃角部K2は、角部C3に対応しているため、湾曲刃部X2と直線刃部X3との連結箇所(連結点Q2)を頂点とする角部であり、角度ω2を有している。この角度ω2は、連結点Q2において湾曲刃部X2に対する刃接線H2を引いた際に、直線刃部X3に沿った直線と刃接線H2とにより規定される角度であり、角度C3の角度θ3と同様に鈍角である。
【0081】
(前切断処理)
切断刃T1を用いた電極前駆体20の前切断処理では、
図4に示したように、1つの電極タブ2、より具体的には複数の電極タブ2のうちの最も前側に位置する1つの電極タブ2を含む範囲において、切断刃T1(湾曲刃部X1,X2および直線刃部X3)を用いて電極板21を切断する。
【0082】
これにより、
図5に示したように、切断後の電極前駆体20では、1つの電極タブ2を含む電極前駆体20の一部が除去される。この場合には、電極板21が切断刃T1により切断された箇所に新たな直線端部L22が形成されると共に、その電極板21が湾曲刃部X1,X2により切断された箇所に2つの突起部21Fが形成される。この直線端部L22は、直線刃部X3により電極板21が切断された箇所である切断部L22Xを有しており、その切断部L22Xは、方向D1に延在している。なお、
図5では、除去された電極前駆体20の一部の図示を省略している。
【0083】
[第1切断処理]
続いて、
図5および
図6に示したように、切断刃T1を備えた切断装置を再び用いて、電極前駆体20の第1切断処理を行う。この第1切断処理は、電極前駆体20を用いて電極10の一部(湾曲端部R1,R3、直線端部L1および角部C1,C3)を形成するための切断処理である。切断刃T1の構成は、上記した通りである。なお、
図5では、切断刃T1を用いて電極前駆体20が切断される箇所を破線で示している。
【0084】
切断刃T1を用いた電極前駆体20の第1切断処理では、
図5に示したように、複数の電極タブ2のうちの最も前側に位置する1つの電極タブ2を含む範囲、すなわち1つの電極タブ2よりも後側において、切断刃T1(湾曲刃部X1,X2および直線刃部X3)を用いて電極板21を切断する。
【0085】
これにより、
図6に示したように、切断後の電極前駆体20では、1つの電極タブ2を含む電極前駆体20の一部が分離される。この場合には、電極板21が湾曲刃部X1,X2により切断された箇所に湾曲端部R1,R3および角部C1,C3が形成されると共に、その電極板21が直線刃部X3により切断された箇所に直線端部L1が形成される。
【0086】
[第2切断処理]
最後に、
図6および
図7に示したように、切断刃T2(第2切断刃)を備えた切断装置を用いて、電極前駆体20の第2切断処理を行う。この第2切断処理は、電極前駆体20を用いて電極10の残りの部分(湾曲端部R2,R4、直線端部L2~L4および角部C2,C4)を形成するための切断処理である。なお、
図6では、切断刃T2の構成(形状)を特定するために、その切断刃T2を用いて電極前駆体20が切断される箇所を破線で示している。
【0087】
(切断刃T2の構成)
この切断刃T2は、電極10の平面形状(湾曲端部R2)に対応する形状を有している。すなわち、切断刃T2は、方向D2において湾曲刃部X1に対応する位置に、湾曲端部R2に対応する湾曲刃部Y1を含んでいる。より具体的には、切断刃T2は、上記した湾曲刃部Y1と共に直線刃部Y3を含んでいる。ここでは、直線刃部Y3は、方向D1に延在している。
【0088】
湾曲刃部Y1は、電極タブ2よりも前側に向かって凸状に湾曲する第2湾曲刃部であり、曲率半径W3を有している。この湾曲刃部Y1は、直線刃部Y3に連結されており、その湾曲刃部Y1の曲率半径W3は、湾曲端部R2の曲率半径V2と同様である。すなわち、湾曲刃部Y1の曲率半径W3は、湾曲刃部X1の曲率半径W1よりも大きくなっている。
【0089】
なお、湾曲刃部Y1は、直線刃部Y3に対する連結箇所に、電極タブ2よりも前側に向かって凸状の刃角部を形成していてもよいし、その刃角部を形成していなくてもよい。
図6では、湾曲刃部Y1と直線刃部Y3との連結箇所に刃角部が形成されていない場合を示している。
【0090】
ここでは、切断刃T2は、電極10の平面形状(湾曲端部R2,R4)に対応する形状を有しているため、上記した湾曲刃部Y1および直線刃部Y3と共に、湾曲端部R4に対応する湾曲刃部Y2を含んでいる。
【0091】
湾曲刃部Y2は、電極タブ2よりも前側に向かって凸状に湾曲しており、曲率半径W4を有している。この湾曲刃部Y2は、直線刃部Y3に連結されており、その湾曲刃部Y2の曲率半径W4は、湾曲端部R4の曲率半径V4と同様である。すなわち、湾曲刃部Y2の曲率半径W4は、湾曲刃部X2の曲率半径W2よりも大きくなっている。
【0092】
なお、湾曲刃部Y2は、直線刃部Y3に対する連結箇所に、電極タブ2よりも前側に向かって凸状の刃角部を形成していてもよいし、その刃角部を形成していなくてもよい。
図6では、湾曲刃部Y2と直線刃部Y3との連結箇所に刃角部が形成されていない場合を示している。
【0093】
ただし、切断刃T2は、直線刃部Y3を含んでおらずに、湾曲刃部Y1,Y2だけを含んでいてもよい。
【0094】
(第2切断処理)
切断刃T2を用いた電極前駆体20の第2切断処理では、
図6に示したように、切断刃T1を用いて第1切断処理された電極前駆体20のうちの電極タブ2よりも前側において、切断刃T2(湾曲刃部Y1,Y2および直線刃部Y3)を用いて電極板21を切断する。
【0095】
この場合には、切断刃T1のうちの直線刃部X3により電極板21が切断された箇所(切断部L22X)に湾曲刃部Y1が重なるように、電極前駆体20に対して切断刃T2を位置合わせする。また、切断部L22Xに湾曲刃部Y2が重なるように、電極前駆体20に対して切断刃T2を位置合わせする。
【0096】
これにより、
図7に示したように、切断後の電極前駆体20では、2つの余剰部20Zが除去される。この場合には、電極板21が湾曲刃部Y1,Y2により切断された箇所に湾曲端部R2,R4および角部C2,C4が形成されると共に、直線端部L22~L24を利用して直線端部L2~L4が形成される。
【0097】
2つの余剰部20Zは、電極10を形成するためには用いられずに破棄される部分である。
図7から明らかなように、2つの余剰部20Zのそれぞれの平面形状は、略三角形であるため、方向D1における余剰部20Zの寸法は、その方向D1における電極板21の寸法よりも著しく小さくなる。これにより、2つの余剰部20Zのそれぞれの面積は、十分に小さくなるため、電極10を製造するために方向D2において電極前駆体20を切断しているにも関わらず、その電極10を製造するために用いられない電極前駆体20のロス量(廃棄量)は十分に減少する。
【0098】
よって、
図1に示したように、湾曲端部R1~R4および角部C1~C4を有する電極本体1が形成されるため、その電極本体1と共に電極タブ2を備えた電極10が完成する。
【0099】
こののち、
図5~
図7に示した手順、すなわち1つの電極タブ2を含む範囲において電極板21を第1切断処理したのちに第2切断処理する手順を繰り返すことにより、電極前駆体20を用いて複数の電極10が連続的に製造される。
【0100】
<1-4.作用および効果>
この電極10によれば、以下で説明する作用および効果が得られる。
【0101】
[電極に関する作用および効果]
電極10は、電極本体1(集電体1Aおよび活物質層1B)および電極タブ2を備えていると共に、その電極本体1は、湾曲端部R1,R2、直線端部L1,L2および角部C1,C2を有している。また、湾曲端部R1の曲率半径V1と湾曲端部R2の曲率半径V2とは、互いに異なっていると共に、角部C1の角度θ1および角部C2の角度θ2のそれぞれは、鈍角である。
【0102】
この場合には、第1に、電極本体1が湾曲端部R1を有しているため、その電極本体1が湾曲部R1の代わりに角部を有している場合と比較して、その電極10を用いた電池において短絡が発生しにくくなる。
【0103】
詳細には、電極10がセパレータを介して他方の電極(対極)に対向している電池では、電極本体1が角部を有していると、振動および圧力などに起因して角部がセパレータに突き刺さりやすくなるため、電極本体1がセパレータを突き破りやすくなる。これにより、電極本体1が意図せずに露出しやすくなるため、その電極本体1が他方の電極と接触することに起因して短絡が発生しやすくなる。より具体的には、電極10である正極がセパレータを介して負極と対向していると、その正極が意図せずに負極に接触しやすくなるため、短絡が発生しやすくなる。
【0104】
これに対して、電極本体1が湾曲端部R1を有していると、その湾曲端部R1がセパレータに突き刺さりにくくなるため、電極本体1がセパレータを突き破りにくくなる。これにより、電極本体1が露出しにくくなるため、短絡が発生しにくくなる。すなわち、電極10である正極がセパレータを介して負極と対向していても、その正極が負極に接触しにくくなるため、短絡が発生しにくくなる。
【0105】
ここで湾曲端部R1に関して説明した利点は、湾曲端部R2に関しても同様に得られる。すなわち、電極本体1が湾曲端部R2を有していると、その電極本体1がセパレータを突き破りにくくなるため、短絡が発生しにくくなる。
【0106】
第2に、電極本体1が角部C1を有しているものの、その角部C1の角度θ1が鈍角であるため、その角度θ1が鋭角である場合と比較して、短絡が発生しにくくなる。
【0107】
詳細には、角度θ1が鋭角であると、上記したように、振動および圧力などに起因して電極本体1がセパレータを突き破りやすくなるため、短絡が発生しやすくなる。
【0108】
これに対して、角部θが鈍角であると、電極本体1が角部C1を有していても、その電極本体1がセパレータを突き破りにくくなるため、短絡が発生しにくくなる。
【0109】
ここで角部C1に関して説明した利点は、角部C2に関しても同様に得られる。すなわち、角部C2の角度θ2が鈍角であると、その電極本体1がセパレータを突き破りにくくなるため、短絡が発生しにくくなる。
【0110】
第3に、湾曲端部R1の曲率半径V1と湾曲端部R2の曲率半径V2とが互いに異なっているため、その曲率半径V1,V2が互いに同じである場合と比較して、電極10を用いた電池において性能上の不具合および製造上の不具合が発生しにくくなる。
【0111】
詳細には、電極前駆体20を用いた電極10の製造工程において、曲率半径V1,V2が互いに同じであると、切断刃を備えた切断装置を用いて電極板21を切断する際に、その電極板21に対する切断刃の位置合わせの精度に起因して、以下で説明する不具合が発生しやすくなる。
【0112】
ここで、切断刃T2の構成が切断刃T1の構成と同様であるため、湾曲刃部X1の曲率半径W1と湾曲刃部Y1の曲率半径W3とが互いに同じであるとする。この場合には、切断刃T2を用いた第2切断処理において、その切断刃T2の位置が所望の位置よりも前側にシフトすると、湾曲刃部Y1が直線端部L22Xに重ならなくなる。これにより、角部C2がバリ状に突出するため、その角部C2の角度θ2が鋭角になる。よって、電極本体1(角部C1)がセパレータを突き破りやすくなるため、短絡が発生しやすくなる。
【0113】
一方、切断刃T2を用いた第2切断処理において、その切断刃T2の位置が所望の位置よりも後側にシフトすると、意図せずに直線刃部Y3により電極板21が切断されるため、余剰部20Zの面積が増加する。この場合には、方向D1における余剰部20Zの寸法が方向D1における電極本体1の寸法と同じになるため、その余剰部20Zの面積が著しく増加する。これにより、電極10を製造するために用いられない電極前駆体20の面積が増加することに起因して、その電極前駆体20の製造ロス量(廃棄量)が増加するため、電極10の製造ロスが発生しやすくなる。
【0114】
よって、曲率半径V1,V2が互いに同じであると、短絡が発生しにくくなると電極10の製造ロスがしやすくなると共に、その電極10の製造ロスが発生しにくくなると短絡が発生しやすくなるというトレードオフの問題が発生する。
【0115】
これに対して、曲率半径V1,V2が互いに異なっていると、電極前駆体20に対する切断刃の位置合わせの精度に依存せずに、電極10を用いた電池において性能上の不具合および製造上の不具合が発生しにくくなる。
【0116】
詳細には、切断刃T2を用いた第2切断処理において、その切断刃T2の位置が所望の位置よりも前側にシフトしても、湾曲刃部Y1が直線端部L22Xと重なるように電極前駆体20に対して切断刃T2が位置合わせされるため、角部C2の角度θ2が鈍角になる。これにより、電極本体1(角部C1)がセパレータを突き破りにくくなるため、短絡が発生しにくくなる。
【0117】
しかも、切断刃T2を用いた第2切断処理において、その切断刃T2の位置が所望の位置よりも後側にシフトしても、直線刃部Y3により電極板21が切断されにくいため、余剰部20Zの面積が減少する。これにより、電極10を製造するために用いられない電極前駆体20の面積が減少することに応じて、その電極前駆体20の製造ロス量が減少するため、電極10の製造ロスが発生しにくくなる。
【0118】
よって、曲率半径V1,V2が互いに異なっていると、短絡が発生しにくくなると共に、電極10の製造ロスが発生しにくくなるため、上記したトレードオフの問題が解消される。
【0119】
これらのことから、電極10では、短絡が発生しにくくなると共に、トレードオフの問題が解消されるため、優れた安全性および優れた製造効率を得ることができる。これにより、製造効率の向上に応じて製造コストを低下させることもできる。
【0120】
特に、湾曲端部R1の曲率半径V1が0.5mm~2.5mmであると共に、湾曲端部R2の曲率半径V2が1.0mm~5.0mmであれば、その曲率半径V1,V2の差異が十分に大きくなる。よって、短絡が十分に発生しにくくなると共にトレードオフの問題が十分に解消されるため、より高い効果を得ることができる。
【0121】
また、電極本体1がさらに湾曲端部R3,R4および角部C3,C4を有しており、その湾曲端部R3の曲率半径V3と湾曲端部R4の曲率半径V4とが互いに異なっており、その角部C3の角度θ3および角部C4の角度θ4のそれぞれが鈍角であるため、その電極本体1の平面形状が四隅に湾曲端部R1~R4を有する略四角形であれば、その湾曲端部R3,R4および角部C3,C4に関しても、上記した湾曲端部R1,R2および角部C1,C2に関する利点と同様の利点が得られる。よって、安全性がより向上すると共に、製造効率もより向上するため、より高い効果を得ることができる。
【0122】
[電極の製造方法に関する作用および効果]
電極10の製造方法によれば、電極前駆体20(電極板21および複数の電極タブ2)のうちの1つの電極タブ2を含む範囲において、切断刃T1(湾曲刃部X1および直線刃部X3)を用いて電極板21を切断したのち、切断刃T2(湾曲刃部X2)を用いて切断刃T1により切断された電極板21をさらに切断している。この切断刃T2を用いて電極板21を切断する場合には、湾曲刃部Y2の曲率半径W3を湾曲刃部X1の曲率半径W1よりも大きくしていると共に、その湾曲刃部Y2が直線端部L22Xと重なるように電極前駆体20に対して切断刃T2を位置合わせしている。
【0123】
よって、上記したように、湾曲端部R1,R2および角部C1,C2を有し、その湾曲端部R2の曲率半径V2が湾曲端部R1の曲率半径V1よりも大きくなり、角部C1の角度θ1および角部C2の角度θ2のそれぞれが鈍角になるように電極10が製造されるため、優れた安全性および優れた製造効率を有する電極10を得ることができる。この場合には、1つの電極タブ2を含む範囲ごとに切断刃T1,T2を用いて電極板21を切断することを繰り返せば、電極前駆体20を用いて複数の電極10を連続的に形成可能になるため、より高い効果を得ることができる。
【0124】
<2.電池>
次に、上記した電極を用いた電池に関して説明する。
【0125】
ここで説明する電池は、電極反応物質の吸蔵放出を利用して電池容量が得られる二次電池であり、正極および負極と共に、液状の電解質である電解液を備えている。
【0126】
電極反応物質の種類は、特に限定されないが、具体的には、アルカリ金属およびアルカリ土類金属などの軽金属である。アルカリ金属は、リチウム、ナトリウムおよびカリウムなどであると共に、アルカリ土類金属は、ベリリウム、マグネシウムおよびカルシウムなどである。
【0127】
以下では、電極反応物質がリチウムである場合を例に挙げる。リチウムの吸蔵放出を利用して電池容量が得られる二次電池は、いわゆるリチウムイオン二次電池であり、そのリチウムイオン二次電池では、リチウムがイオン状態で吸蔵放出される。
【0128】
ここで説明するリチウムイオン二次電池では、負極の充電容量が正極の放電容量よりも大きくなっている。すなわち、負極の単位面積当たりの電気化学容量は、正極の単位面積当たりの電気化学容量よりも大きくなるように設定されている。充電途中において負極の表面に電極反応物質が析出することを防止するためである。
【0129】
以下では、電極が正極として用いられる場合を例に挙げる。
【0130】
<2-1.構成>
図8は、本技術の一実施形態の電池である二次電池の断面構成を表していると共に、
図9は、
図8に示した電池素子40の断面構成を表している。
図10は、
図9に示した正極41の平面構成を表していると共に、
図11は、
図9に示した負極42の平面構成を表している。ただし、
図9では、電池素子40の一部だけを示していると共に、
図10および
図11のそれぞれは、
図1に対応している。
【0131】
以下の説明では、随時、既に説明した電極10に関する
図1および
図2を参照すると共に、その電極10に関する一連の構成要素を引用する。
【0132】
この二次電池は、
図8~
図11に示したように、外装フィルム30と、電池素子40と、正極リード51および負極リード52と、封止フィルム61,62とを備えている。ここで説明する二次電池は、可撓性(または柔軟性)を有する外装フィルム30を用いたラミネートフィルム型の二次電池である。
【0133】
[外装フィルムおよび封止フィルム]
外装フィルム30は、
図8に示したように、電池素子40を収納する可撓性の外装部材であり、その電池素子40が内部に収納された状態において封止された袋状の構造を有している。このため、外装フィルム30は、後述する正極41および負極42と共に電解液を収納している。
【0134】
ここでは、外装フィルム30は、1枚のフィルム状の部材であり、折り畳み方向Rに折り畳まれている。この外装フィルム30には、電池素子40を収容するための窪み部30U(いわゆる深絞り部)が設けられている。
【0135】
具体的には、外装フィルム30は、融着層、金属層および表面保護層が内側からこの順に積層された3層のラミネートフィルムであり、その外装フィルム30が折り畳まれた状態において互いに対向する融着層のうちの外周縁部同士が互いに融着されている。融着層は、ポリプロピレンなどの高分子化合物を含んでいる。金属層は、アルミニウムなどの金属材料を含んでいる。表面保護層は、ナイロンなどの高分子化合物を含んでいる。
【0136】
ただし、外装フィルム30の構成(層数)は、特に、限定されないため、1層または2層でもよいし、4層以上でもよい。
【0137】
封止フィルム61は、外装フィルム30と正極リード51との間に挿入されていると共に、封止フィルム62は、外装フィルム30と負極リード52との間に挿入されている。ただし、封止フィルム61,62のうちの一方または双方は、省略されてもよい。
【0138】
この封止フィルム61は、外装フィルム30の内部に外気などが侵入することを防止する封止部材である。具体的には、封止フィルム61は、正極リード51に対して密着性を有するポリオレフィンなどの高分子化合物を含んでおり、そのポリオレフィンは、ポリプロピレンなどである。
【0139】
封止フィルム62の構成は、負極リード52に対して密着性を有する封止部材であることを除いて、封止フィルム61の構成と同様である。すなわち、封止フィルム62は、負極リード52に対して密着性を有するポリオレフィンなどの高分子化合物を含んでいる。
【0140】
[電池素子]
電池素子40は、
図8~
図11に示したように、正極41と、負極42と、セパレータ43と、電解液(図示せず)とを含む発電素子であり、外装フィルム30の内部に収納されている。
【0141】
この電池素子40は、いわゆる積層電極体である。すなわち、電池素子40では、正極41および負極42がセパレータ43を介して互いに積層されている。正極41、負極42およびセパレータ43のそれぞれの積層数は、特に限定されないが、ここでは、複数の正極41および複数の負極42がセパレータ43を介して交互に積層されている。電解液は、正極41、負極42およびセパレータ43のそれぞれに含浸されている。
【0142】
(正極)
正極41は、上記した電極10の構成と同様の構成を有しているため、その正極41の平面形状は、略矩形である。すなわち、正極41は、
図9および
図10に示したように、集電体1Aに対応する正極集電体41Aと、活物質層1Bに対応する正極活物質層41Bと、電極タブ2に対応する正極タブ41Cとを含んでいる。なお、
図9では、正極タブ41Cの図示を省略している。
【0143】
正極集電体41Aは、正極活物質層41Bが設けられる一対の面を有している。この正極集電体41Aは、金属材料などの導電性材料を含んでおり、その金属材料は、アルミニウムなどである。
【0144】
ここでは、正極活物質層41Bは、正極集電体41Aの両面に設けられており、リチウムを吸蔵放出可能である正極活物質のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、正極活物質層41Bは、正極41が負極42に対向する側において正極集電体41Aの片面だけに設けられていてもよい。また、正極活物質層41Bは、さらに、正極結着剤および正極導電剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
【0145】
正極活物質の種類は、特に限定されないが、具体的には、リチウム含有化合物などである。このリチウム含有化合物は、リチウムと共に1種類または2種類以上の遷移金属元素を構成元素として含む化合物であり、さらに、1種類または2種類以上の他元素を構成元素として含んでいてもよい。他元素の種類は、リチウムおよび遷移金属元素のそれぞれ以外の元素であれば、特に限定されないが、具体的には、長周期型周期表中の2族~15族に属する元素である。リチウム含有化合物の種類は、特に限定されないが、具体的には、酸化物、リン酸化合物、ケイ酸化合物およびホウ酸化合物などである。
【0146】
酸化物の具体例は、LiNiO2 、LiCoO2 、LiCo0.98Al0.01Mg0.01O2 、LiNi0.5 Co0.2 Mn0.3 O2 、LiNi0.8 Co0.15Al0.05O2 、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2 、Li1.2 Mn0.52Co0.175 Ni0.1 O2 、Li1.15(Mn0.65Ni0.22Co0.13)O2 およびLiMn2 O4 などである。リン酸化合物の具体例は、LiFePO4 、LiMnPO4 、LiFe0.5 Mn0.5 PO4 およびLiFe0.3 Mn0.7 PO4 などである。
【0147】
正極結着剤および正極導電剤のそれぞれに関する詳細は、上記した結着剤および導電剤のそれぞれに関する詳細と同様である。
【0148】
正極タブ41Cの構成は、電極タブ2の構成と同様である。ここでは、正極タブ41Cは、正極集電体41Aの一部(突出部分)であるため、その正極集電体41Aと一体化されている。複数の正極タブ41Cは、溶接法などを用いて互いに接合されているため、1本のリード状の接合部41Zを形成している。
【0149】
ここで、正極集電体41Aおよび正極活物質層41Bは、電極本体1に対応する正極本体41Nを形成している。これにより、正極タブ41Cは、正極本体41Nに連結されており、より具体的には接合部41Zに連結されている。
【0150】
この正極本体41Nの平面形状は、
図10に示したように、電極本体1の平面形状と同様である。すなわち、正極本体41Nは、湾曲端部R1~R4および角部C1~C4を有している。ここでは、正極本体41Nの平面形状は、方向D2の寸法に対応する寸法I41と方向D1の寸法に対応する寸法J41とが互いに同じである略正方形である。
【0151】
(負極)
負極42は、上記した電極10の構成とは異なる構成を有している。すなわち、負極42は、
図9および
図11に示したように、負極集電体42A、負極活物質層42Bおよび負極タブ42Cを含んでいる。
【0152】
負極集電体42Aは、負極活物質層42Bが設けられる一対の面を有している。この負極集電体42Aは、金属材料などの導電性材料を含んでおり、その金属材料は、銅などである。
【0153】
ここでは、負極活物質層42Bは、負極集電体42Aの両面に設けられており、リチウムを吸蔵放出可能である負極活物質のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、負極活物質層42Bは、負極42が正極41に対向する側において負極集電体42Aの片面だけに設けられていてもよい。また、負極活物質層42Bは、さらに、負極結着剤および負極導電剤などを含んでいてもよい。負極結着剤および負極導電剤のそれぞれに関する詳細は、正極結着剤および正極導電剤のそれぞれに関する詳細と同様である。
【0154】
負極活物質は、炭素材料および金属系材料のうちの一方または双方などを含んでいる。高いエネルギー密度が得られるからである。炭素材料は、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素および黒鉛(天然黒鉛および人造黒鉛)などである。金属系材料は、リチウムと合金を形成可能である金属元素および半金属元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を構成元素として含む材料であり、その金属元素および半金属元素の具体例は、ケイ素およびスズのうちの一方または双方などである。ただし、金属系材料は、単体でもよいし、合金でもよいし、化合物でもよいし、それらの2種類以上の混合物でもよいし、それらの2種類以上の相を含む材料でもよい。金属系材料の具体例は、TiSi2 およびSiOx (0<x≦2または0.2<x<1.4)などである。
【0155】
負極タブ42Cは、正極タブ41Cと重ならない位置に配置されている。このため、負極タブ42Cの位置は、方向D2において正極タブ41Cの位置に対してずれている。ここでは、負極タブ42Cは、負極集電体42Aの一部(突出部分)であるため、その負極集電体42Aと一体化されている。複数の負極タブ42Cは、溶接法などを用いて互いに接合されているため、1本のリード状の接合部42Zを形成している。
【0156】
ここで、負極集電体42Aおよび負極活物質層42Bは、負極本体42Nを形成している。これにより、負極タブ42Cは、負極本体42Nに連結されており、より具体的には接合部42Zに連結されている。
【0157】
この負極本体42Nの平面形状は、
図11に示したように、矩形である。ここでは、負極本体42Nの平面形状は、寸法I41に対応する寸法I42と寸法J41に対応する寸法J42とが互いに同じである正方形である。この負極本体42Nは、湾曲端部R1~R4の代わりに凸状の角部C5~C8を有している。角部C5の角度θ5、角部C6の角度θ6、角部C7の角度θ7および角部C8の角度θ8のそれぞれは、特に限定されないが、具体的には、90°である。
【0158】
ただし、寸法I42は、寸法I41よりも大きくなっている。すなわち、負極42は、負極タブ42Cよりも前側において正極41よりも突出していると共に、その負極タブ42Cよりも後側において正極41よりも突出している。
【0159】
また、寸法J42は、寸法J41よりも大きくなっている。このため、負極42は、正極41よりも上側に突出していると共に、その正極41よりも下側に突出している。
【0160】
これにより、負極42は、正極41の全体に対向している。正極41から放出されたリチウムイオンが負極42の表面において意図せずに析出することを抑制するためである。
【0161】
(セパレータ)
セパレータ43は、
図9に示したように、正極41と負極42との間に介在している絶縁性の多孔質膜であり、その正極41と負極42との接触(短絡)を防止しながらリチウムイオンを通過させる。このセパレータ43は、ポリエチレンなどの高分子化合物を含んでおり、単層でもよいし、多層でもよい。
【0162】
(電解液)
電解液は、正極41、負極42およびセパレータ43のそれぞれに含浸されており、溶媒および電解質塩を含んでいる。溶媒は、炭酸エステル系化合物、カルボン酸エステル系化合物およびラクトン系化合物などの非水溶媒(有機溶剤)のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その非水溶媒を含んでいる電解液は、いわゆる非水電解液である。電解質塩は、リチウム塩などの軽金属塩のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0163】
[正極リードおよび負極リード]
正極リード51は、
図8に示したように、接合部41Zに接続された正極端子である。この正極リード51は、外装フィルム30の外部に導出されており、アルミニウムなどの導電性材料を含んでいる。正極リード51の形状は、特に限定されないが、具体的には、薄板状および網目状などのうちのいずれかである。
【0164】
負極リード52は、
図8に示したように、接合部42Zに接続された負極端子である。この負極リード52は、外装フィルム30の外部に導出されており、銅などの導電性材料を含んでいる。ここでは、負極リード52の導出方向は、正極リード51の導出方向と同様の方向である。なお、負極リード52の形状に関する詳細は、正極リード51の形状に関する詳細と同様である。
【0165】
<2-2.動作>
二次電池の充電時には、電池素子40において、正極41からリチウムが放出されると共に、そのリチウムが電解液を介して負極42に吸蔵される。一方、二次電池の放電時には、電池素子40において、負極42からリチウムが放出されると共に、そのリチウムが電解液を介して正極41に吸蔵される。これらの充電時および放電時には、リチウムがイオン状態で吸蔵および放出される。
【0166】
<2-3.製造方法>
二次電池を製造する場合には、以下で説明する手順により、正極41および負極42のそれぞれを作製すると共に、電解液を調製したのち、その正極41、負極42および電解液を用いて二次電池を作製する。
【0167】
[正極の作製]
上記した電極10の製造手順と同様の手順により、正極41を製造する。
【0168】
具体的には、最初に、正極活物質、正極結着剤および正極導電剤などが互いに混合された混合物(正極合剤)を溶媒に投入することにより、ペースト状の正極合剤スラリーを調製する。続いて、帯状の正極集電体41Aの両面に正極合剤スラリーを塗布することにより、正極活物質層41Bを形成する。続いて、ロールプレス機などを用いて正極活物質層41Bを圧縮成型してもよい。この場合には、正極活物質層41Bを加熱してもよいし、圧縮成型処理を複数回繰り返してもよい。
【0169】
続いて、複数の正極タブ41Cの形成用の切断刃を用いて正極集電体41Aを切断することにより、複数の正極タブ41Cを形成する。これにより、複数の正極タブ41Cが連結されている帯状の正極集電体41Aの両面(複数の正極タブ41Cを除く。)に正極活物質層41Bが形成されるため、電極前駆体20に対応する正極前駆体が形成される。ここでは具体的に図示しないが、正極前駆体は、電極本体1(集電体1Aおよび活物質層1B)および電極タブ2に対応する正極集電体41A、正極活物質層41Bおよび正極タブ41Cを含んでいる。
【0170】
最後に、上記した切断装置(切断刃T1,T2)を用いた正極前駆体の切断処理(前切断処理、第1切断処理および第2切断処理)を行う。これにより、正極本体41N(正極集電体41Aおよび正極活物質層41B)および正極タブ41Cを備えた正極41が作製される。
【0171】
[負極の作製]
最初に、負極活物質、負極結着剤および負極導電剤などが互いに混合された混合物(負極合剤)を溶媒に投入することにより、ペースト状の負極合剤スラリーを調製したのち、負極タブ42Cが一体化されている負極集電体42Aの両面に負極合剤スラリーを塗布することにより、負極活物質層42Bを形成する。こののち、負極活物質層42Bを圧縮成型してもよい。これにより、負極集電体42Aの両面に負極活物質層42Bが形成されるため、負極42が作製される。
【0172】
[電解液の調製]
溶媒に電解質塩を投入する。これにより、溶媒中において電解質塩が分散または溶解されるため、電解液が調製される。
【0173】
[二次電池の組み立て]
最初に、セパレータ43を介して正極41および負極42を交互に積層させることにより、積層体を作製する。ここでは具体的に図示しないが、積層体は、正極41、負極42およびセパレータ43のそれぞれに電解液が含浸されていないことを除いて、電池素子40の構成と同様の構成を有している。
【0174】
続いて、溶接法などを用いて複数の正極タブ41Cを互いに接合させることにより、接合部41Zを形成すると共に、溶接法などを用いて複数の負極タブ42Cを互いに接合させることにより、接合部42Zを形成する。続いて、溶接法などを用いて接合部41Zに正極リード51を接続させると共に、溶接法などを用いて接合部42Zに負極リード52を接続させる。
【0175】
続いて、窪み部30Uの内部に積層体を収容したのち、外装フィルム30(融着層/金属層/表面保護層)を折り畳むことにより、その外装フィルム30同士を互いに対向させる。続いて、熱融着法などを用いて、互いに対向する外装フィルム30(融着層)のうちの2辺の外周縁部同士を互いに接合させることにより、袋状の外装フィルム30の内部に積層体を収納する。
【0176】
最後に、袋状の外装フィルム30の内部に電解液を注入したのち、熱融着法などを用いて外装フィルム30(融着層)のうちの残りの1辺の外周縁部同士を互いに接合させる。この場合には、外装フィルム30と正極リード51との間に封止フィルム61を挿入すると共に、外装フィルム30と負極リード52との間に封止フィルム62を挿入する。これにより、積層体に電解液が含浸されるため、積層電極体である電池素子40が作製されると共に、袋状の外装フィルム30の内部に電池素子40が封入されるため、二次電池が組み立てられる。
【0177】
[二次電池の安定化]
組み立て後の二次電池を充放電させる。環境温度、充放電回数(サイクル数)および充放電条件などの各種条件は、任意に設定可能である。これにより、正極41および負極42のそれぞれの表面に被膜が形成されるため、二次電池の状態が電気化学的に安定化する。よって、二次電池が完成する。
【0178】
<2-4.作用および効果>
この二次電池によれば、正極41が上記した電極の構成と同様の構成を有している。よって、電極に関して説明した場合と同様の理由により、短絡が発生しにくくなると共にトレードオフの問題が解消されるため、優れた安全性および優れた製造効率を得ることができる。
【0179】
特に、二次電池が正極41および負極42を備えたリチウムイオン二次電池であり、上記した電極が正極41であれば、リチウムの吸蔵放出を利用して十分な電池容量が安定に得られるため、より高い効果を得ることができる。
【0180】
また、負極42が正極41の全体に対向しており、その負極42が湾曲端部R1,R2のそれぞれに対応する位置に角部C5,C6を有していれば、その正極41から放出されたリチウムイオンが負極42の表面において意図せずに析出することが抑制される。よって、安全性がより向上するため、より高い効果を得ることができる。この場合には、負極42がさらに湾曲端部R3,R4のそれぞれに対応する位置に角部C7,C8を有していれば、リチウムイオンの析出がより抑制されるため、さらに高い安全性を得ることができる。
【0181】
この二次電池に関する他の作用および効果は、上記した電極に関する他の作用および効果と同様である。
【0182】
<3.変形例>
上記した二次電池の構成は、以下で説明するように、適宜、変更可能である。ただし、以下で説明する一連の変形例のうちの任意の2種類以上は、互いに組み合わされてもよい。
【0183】
[変形例1]
図1に示した電極10では、湾曲端部R1の曲率半径V1と湾曲端部R2との曲率半径V2とが互いに異なっていると共に、湾曲端部R3の曲率半径V3と湾曲端部R4の曲率半径V4とが互いに異なっている。
【0184】
しかしながら、曲率半径V1,V2が互いに異なっているのに対して、曲率半径V3,V4が互いに同じでもよい。または、曲率半径V1,V2が互いに同じであるのに対して、曲率半径V3,V4が互いに異なっていてもよい。
【0185】
これらの場合においても、曲率半径V1,V2が互いに同じであると共に、曲率半径V3,V4が互いに同じである場合と比較して、短絡が発生しにくくなると共にトレードオフの問題が解消されるため、同様の効果を得ることができる。
【0186】
[変形例2]
図1に示した電極10の平面形状は、四隅に湾曲端部R1~R4を有する略矩形である。
【0187】
しかしながら、電極10の平面形状は、湾曲端部R1,R2を有していると共に曲率半径V1,V2が互いに異なっていれば、特に限定されない。一例を挙げると、電極10の平面形状は、略三角形でもよいし、略五角形でもよいし、それら以外の略多角形でもよい。
【0188】
この場合においても、湾曲端部R1,R2を有していない場合および曲率半径V1,V2が互いに同じである場合と比較して、短絡が発生しにくくなると共にトレードオフの問題が解消されるため、同様の効果を得ることができる。
【0189】
もちろん、電極10の平面形状は、湾曲端部R3,R4を有していると共に曲率半径V3,V4が互いに異なっていれば、特に限定されないため、略三角形でもよいし、略五角形でもよいし、それら以外の略多角形でもよい。この場合においても、同様の効果を得ることができる。
【0190】
[変形例3]
図1に示した電極10では、湾曲端部R1に対する直線端部L3の連結箇所に角部が形成されていないと共に、湾曲端部R2に対する直線端部L3の連結箇所に凸状の角部が形成されていない。
【0191】
しかしながら、
図1に対応する
図12に示したように、湾曲端部R1に対する直線端部L3の連結箇所に凸状の角部C11が形成されていると共に、湾曲端部R2に対する直線端部L3の連結箇所に凸状の角部C12が形成されていてもよい。
【0192】
角部C11は、湾曲端部R1と直線端部L3との連結箇所(連結点P11)を頂点とする角部であり、角度θ11を有している。この角度θ11は、連結点P11において湾曲端部R1に対する接線S11を引いた際に、直線端部L3に沿った直線と接線S11とにより規定される角度であり、鈍角である。
【0193】
角部C12は、湾曲端部R2と直線端部L3との連結箇所(連結点P12)を頂点とする角部であり、角度θ12を有している。この角度θ12は、連結点P12において湾曲端部R2に対する接線S12を引いた際に、直線端部L3に沿った直線と接線S12とにより規定される角度であり、鈍角である。
【0194】
もちろん、
図12に示したように、湾曲端部R3に対する直線端部L4の連結箇所に凸状の角部C13が形成されていると共に、湾曲端部R4に対する直線端部L4の連結箇所に凸状の角部C14が形成されていてもよい。
【0195】
角部C13は、湾曲端部R3と直線端部L4との連結箇所(連結点P13)を頂点とする角部であり、角度θ13を有している。この角度θ13は、連結点P13において湾曲端部R3に対する接線S13を引いた際に、直線端部L4に沿った直線と接線S13とにより規定される角度であり、鈍角である。
【0196】
角部C14は、湾曲端部R4と直線端部L4との連結箇所(連結点P14)を頂点とする角部であり、角度θ14を有している。この角度θ14は、連結点P14において湾曲端部R4に対する接線S14を引いた際に、直線端部L4に沿った直線と接線S14とにより規定される角度であり、鈍角である。
【0197】
この角部C11~C14を有する電極10は、
図4~
図7に対応する
図13に示したように、切断刃T1,T2を用いた電極前駆体20の切断処理(前切断処理、第1切断処理および第2切断処理)を行うことにより製造される。なお、
図13では、図示内容を簡略化するために、切断刃T1を用いて電極板21を切断する箇所と、切断刃T2を用いて電極板21を切断する箇所との双方を破線で示している。
【0198】
切断刃T1を用いた第1切断処理では、湾曲刃部X1が直線端部L23に重なると共に、湾曲刃部X2が直線端部L24に重なるように、電極前駆体20に対して切断刃T1を位置合わせする。
【0199】
また、切断刃T2を用いた第2切断処理では、湾曲刃部Y1が直線端部L23に重なると共に、湾曲刃部Y2が直線端部L24に重なるように、電極前駆体20に対して切断刃T2を位置合わせする。
【0200】
この場合においても、短絡が発生しにくくなると共にトレードオフの問題が解消されるため、同様の効果を得ることができる。
【0201】
この場合には、特に、切断刃T1を用いた第1切断処理において、電極前駆体20に対する切断刃T1(湾曲刃部X1,X2)の位置が方向D1において前後にずれても、角部C11,C12のそれぞれが鈍角となるように安定に形成されやすくなる。これにより、電極10がセパレータを突き破る要因となるバリが形成されにくくなるため、安全性をより向上させることができる。
【0202】
ここで切断刃T1を用いた第1切断処理に関して説明した利点は、切断刃T2を用いた第2切断処理に関しても同様に得られる。すなわち、電極板21に対する切断刃T2(湾曲刃部Y1,Y2)の位置が方向D1において前後にずれてもバリが形成されにくくなるため、安全性をより向上させることができる。
【0203】
[変形例4]
図10および
図11に示した二次電池では、正極41が電極10の構成と同様の構成を有しているのに対して、負極42が電極10の構成とは異なる構成を有している。
【0204】
しかしながら、正極41が電極10の構成と同様の構成を有しているだけでなく、負極42も電極10の構成と同様の構成を有していてもよい。
【0205】
この場合においても、正極41が電極10の構成と同様の構成を有していないと共に、負極42が電極10の構成と同様の構成を有していない場合と比較して、短絡が発生しにくくなると共にトレードオフの問題が解消されるため、同様の効果を得ることができる。
【0206】
[変形例5]
図9に示した二次電池は、多孔質膜であるセパレータ43を備えている。しかしながら、ここでは具体的に図示しないが、二次電池は、多孔質膜であるセパレータ43の代わりに、高分子化合物層を含む積層型のセパレータを備えていてもよい。
【0207】
具体的には、積層型のセパレータは、一対の面を有する多孔質膜と、その多孔質膜の片面または両面に配置された高分子化合物層とを含んでいる。正極41および負極42のそれぞれに対するセパレータの密着性が向上するため、電池素子40の位置ずれ(巻きずれ)が発生しにくくなるからである。これにより、電解液の分解反応などが発生しても、二次電池が膨れにくくなる。高分子化合物層は、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子化合物を含んでいる。ポリフッ化ビニリデンなどは、物理的強度に優れていると共に、電気化学的に安定だからである。
【0208】
なお、多孔質膜および高分子化合物層のうちの一方または双方は、複数の絶縁性粒子のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。二次電池の発熱時において複数の絶縁性粒子が放熱するため、その二次電池の安全性(耐熱性)が向上するからである。絶縁性粒子は、無機粒子および樹脂粒子などである。無機粒子の具体例は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ベーマイト、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化マグネシウムおよび酸化ジルコニウムなどの粒子である。樹脂粒子の具体例は、アクリル樹脂およびスチレン樹脂などの粒子である。
【0209】
積層型のセパレータを作製する場合には、高分子化合物および溶媒などを含む前駆溶液を調製したのち、多孔質膜の片面または両面に前駆溶液を塗布する。この場合には、必要に応じて、前駆溶液に複数の絶縁性粒子を添加してもよい。
【0210】
この積層型のセパレータを用いた場合においても、正極41と負極42との間においてリチウムイオンが移動可能になるため、同様の効果を得ることができる。
【0211】
[変形例6]
図9に示した二次電池は、液状の電解質である電解液を備えている。しかしながら、ここでは具体的に図示しないが、二次電池は、電解液の代わりに、ゲル状の電解質である電解質層を備えていてもよい。
【0212】
電解質層を用いた電池素子40では、セパレータ43および電解質層を介して正極41および負極42が互いに積層されている。この電解質層は、正極41とセパレータ43との間に介在していると共に、負極42とセパレータ43との間に介在している。
【0213】
具体的には、電解質層は、電解液と共に高分子化合物を含んでおり、その電解液は、高分子化合物により保持されている。電解液の漏液が防止されるからである。電解液の構成は、上記した通りである。高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデンなどを含んでいる。電解質層を形成する場合には、電解液、高分子化合物および溶媒などを含む前駆溶液を調製したのち、正極41および負極42のそれぞれの片面または両面に前駆溶液を塗布する。
【0214】
この電解質層を用いた場合においても、正極41と負極42との間において電解質層を介してリチウムイオンが移動可能になるため、同様の効果を得ることができる。
【0215】
<4.電池の用途>
電池の用途(適用例)は、特に限定されない。以下では、電池の一例である二次電池の用途に関して説明する。
【0216】
電源として用いられる二次電池は、電子機器および電動車両などの主電源でもよいし、補助電源でもよい。主電源とは、他の電源の有無に関係なく、優先的に用いられる電源である。補助電源は、主電源の代わりに用いられる電源、または主電源から切り替えられる電源である。
【0217】
二次電池の用途の具体例は、以下の通りである。ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯電話機、ノート型パソコン、ヘッドホンステレオ、携帯用ラジオおよび携帯用情報端末などの電子機器である。バックアップ電源およびメモリーカードなどの記憶用装置である。電動ドリルおよび電動鋸などの電動工具である。電子機器などに搭載される電池パックである。ペースメーカおよび補聴器などの医療用電子機器である。電気自動車(ハイブリッド自動車を含む。)などの電動車両である。非常時などに備えて電力を蓄積しておく家庭用または産業用のバッテリシステムなどの電力貯蔵システムである。これらの用途では、1個の二次電池が用いられてもよいし、複数個の二次電池が用いられてもよい。
【0218】
電池パックは、単電池を用いてもよいし、組電池を用いてもよい。電動車両は、二次電池を駆動用電源として作動(走行)する車両であり、その二次電池以外の駆動源を併せて備えたハイブリッド自動車でもよい。家庭用の電力貯蔵システムでは、電力貯蔵源である二次電池に蓄積された電力を利用して家庭用の4電気製品などを使用可能である。
【0219】
ここで、二次電池の適用例の一例に関して具体的に説明する。以下で説明する適用例の構成は、あくまで一例であるため、適宜、変更可能である。
【0220】
図14は、電池パックのブロック構成を表している。ここで説明する電池パックは、1個の二次電池を用いた電池パック(いわゆるソフトパック)であり、スマートフォンに代表される電子機器などに搭載される。
【0221】
この電池パックは、
図14に示したように、電源71と、回路基板72とを備えている。この回路基板72は、電源71に接続されていると共に、正極端子73、負極端子74および温度検出端子75を含んでいる。
【0222】
電源71は、1個の二次電池を含んでいる。この二次電池では、正極リードが正極端子73に接続されていると共に、負極リードが負極端子74に接続されている。この電源71は、正極端子73および負極端子74を介して外部と接続可能であるため、充放電可能である。回路基板72は、制御部76と、スイッチ77と、熱感抵抗素子(PTC素子)78と、温度検出部79とを含んでいる。ただし、PTC素子78は省略されてもよい。
【0223】
制御部76は、中央演算処理装置(CPU)およびメモリなどを含んでおり、電池パック全体の動作を制御する。この制御部76は、必要に応じて電源71の使用状態の検出および制御を行う。
【0224】
なお、制御部76は、電源71(二次電池)の電圧が過充電検出電圧または過放電検出電圧に到達すると、スイッチ77を切断することにより、電源71の電流経路に充電電流が流れないようにする。過充電検出電圧は、特に限定されないが、具体的には、4.2V±0.05Vであると共に、過放電検出電圧は、特に限定されないが、具体的には、2.4V±0.1Vである。
【0225】
スイッチ77は、充電制御スイッチ、放電制御スイッチ、充電用ダイオードおよび放電用ダイオードなどを含んでおり、制御部76の指示に応じて電源71と外部機器との接続の有無を切り換える。このスイッチ77は、金属酸化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(MOSFET)などを含んでおり、充放電電流は、スイッチ77のON抵抗に基づいて検出される。
【0226】
温度検出部79は、サーミスタなどの温度検出素子を含んでおり、温度検出端子75を用いて電源71の温度を測定すると共に、その温度の測定結果を制御部76に出力する。温度検出部79により測定される温度の測定結果は、異常発熱時において制御部76が充放電制御を行う場合および残容量の算出時において制御部76が補正処理を行う場合などに用いられる。
【0227】
以上、一実施形態および実施例を挙げながら本技術に関して説明したが、その本技術の構成は、一実施形態および実施例において説明された構成に限定されないため、種々に変形可能である。
【0228】
二次電池の電池構造がラミネートフィルム型である場合に関して説明したが、その電池構造の種類は、特に限定されない。具体的には、電池構造は、円筒型、角型、コイン型およびボタン型などでもよい。
【0229】
また、電池素子の素子構造が積層型である場合に関して説明したが、その素子構造の種類は、特に限定されない。具体的には、素子構造は、電極がジグザグに折り畳まれた九十九折り型などでもよい。
【0230】
さらに、電極反応物質がリチウムである場合に関して説明したが、その電極反応物質の種類は、特に限定されない。具体的には、電極反応物質は、上記したように、ナトリウムおよびカリウムなどの他のアルカリ金属でもよいし、ベリリウム、マグネシウムおよびカルシウムなどのアルカリ土類金属でもよい。この他、電極反応物質は、アルミニウムなどの他の軽金属でもよい。
【0231】
本明細書中に記載された効果は、あくまで例示であるため、本技術の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されない。よって、本技術に関して、他の効果が得られてもよい。