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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】耐火被覆構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20240611BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
E04B1/94 M
E04B1/58 509E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024027278
(22)【出願日】2024-02-27
【審査請求日】2024-02-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】田村 純太朗
(72)【発明者】
【氏名】榎本 浩之
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 博則
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-36489(JP,A)
【文献】特開2019-112795(JP,A)
【文献】特開平10-140705(JP,A)
【文献】実開平3-108707(JP,U)
【文献】特開2018-91134(JP,A)
【文献】特開2014-20054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/94
E04B 1/58
E04B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のフランジを接続するウェブに開口を有するH型鋼と、
前記一対のフランジの間に配設されて、前記開口を被覆する耐火材を含んで構成される内側耐火被覆部と、
前記H型鋼に固定され、前記内側耐火被覆部を支持する内側支持部と、を備え、
前記内側支持部は、前記H型鋼の成方向に延びる縦材と前記H型鋼の延在方向に延びる横材とで前記内側耐火被覆部を支持しており、
前記縦材は、前記内側耐火被覆部を前記H型鋼の延在方向で挟む位置に設けられ、
前記横材は、前記内側耐火被覆部を前記H型鋼の成方向で挟む位置に設けられている
耐火被覆構造。
【請求項2】
前記内側耐火被覆部は、前記H型鋼の幅方向に延びて前記開口に挿通される筒型耐火材によって構成され、
前記内側支持部は、前記縦材および前記横材が前記筒型耐火材に当接することにより、前記筒型耐火材を支持している
請求項1に記載の耐火被覆構造。
【請求項3】
前記H型鋼は、前記H型鋼の延在方向に並ぶ複数の開口を有し、
前記内側耐火被覆部は、前記H型鋼の幅方向に延びて前記複数の開口の各々に挿通される筒型耐火材によって構成され、
前記内側支持部は、前記横材が複数の前記筒型耐火材に当接することにより、前記筒型耐火材を支持している
請求項1に記載の耐火被覆構造。
【請求項4】
前記内側耐火被覆部は、前記H型鋼の延在方向が厚み方向となる第1板型耐火材と前記H型鋼の成方向が厚み方向となる第2板型耐火材とを含み、
前記内側支持部は、前記第1板型耐火材が前記縦材に接合され、かつ、前記第2板型耐火材が前記横材に接合されることにより、前記内側耐火被覆部を支持している
請求項1に記載の耐火被覆構造。
【請求項5】
前記H型鋼の幅方向における外側から前記H型鋼を被覆する幅側耐火被覆部を備え、
前記縦材および前記横材の少なくとも一方に前記幅側耐火被覆部が接合されている
請求項1~4のいずれか一項に記載の耐火被覆構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブに開口が形成されたH型鋼に適用される耐火被覆構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一対のフランジと一対のフランジを接続するウェブとを有するH型鋼の耐火被覆構造が開示されている。特許文献1では、H型鋼を外側から覆う耐火被覆部が各種の鋼材を用いてフランジの各端部に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2023-84597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、梁などに用いられるH型鋼においては、各種の配管などを通すための開口がウェブに形成されることがある。こうした構成の耐火被覆構造には、H型鋼を外側から覆う耐火被覆部にも配管などを通すための貫通孔が形成されるため、H型鋼の内側からH型鋼を被覆する内側耐火被覆部が必要となる。そして、例えば各種作業時の位置ずれや火災発生時の脱落などが抑えられるように、内側耐火被覆部をより確実に支持することのできる内側支持部がH型鋼に設けることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する耐火被覆構造は、一対のフランジを接続するウェブに開口を有するH型鋼と、前記一対のフランジの間に配設されて、前記開口を被覆する耐火材を含んで構成される内側耐火被覆部と、前記H型鋼に固定され、前記内側耐火被覆部を支持する内側支持部と、を備える。前記内側支持部は、前記H型鋼の成方向に延びる縦材と前記H型鋼の延在方向に延びる横材とで前記内側耐火被覆部を支持しており、前記縦材は、前記内側耐火被覆部を前記H型鋼の延在方向で挟む位置に設けられ、前記横材は、前記内側耐火被覆部を前記H型鋼の成方向で挟む位置に設けられている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、内側耐火被覆部をより確実に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態において、耐火被覆構造の概略構成を示す断面図である。
図2】第1実施形態において、H型鋼の幅方向外側から見た内側支持部を示す側面図である。
図3】第2実施形態において、耐火被覆構造の概略構成を示す断面図である。
図4】第2実施形態において、H型鋼の幅方向外側から見た内側支持部を示す側面図である。
図5】第1実施形態の変形例において、H型鋼の幅方向外側から見た内側被覆部および内側支持部を示す側面図である。
図6】第2実施形態の変形例において、H型鋼の幅方向外側から見た内側被覆部および内側支持部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
図1および図2を参照して、耐火被覆構造の第1実施形態について説明する。
図1に示すように、耐火被覆構造10は、床スラブ11を支持する梁として設置されるH型鋼12に適用される。H型鋼12は、上フランジ13、下フランジ14、および、ウェブ15を有している。ウェブ15には、各種の配管などを通すための開口16が形成されている。なお、以下では、図1における左右方向を幅方向といい、上下方向を成方向(H型鋼の高さ方向)といい、図1の紙面直交方向を延在方向という。
【0009】
耐火被覆構造10は、幅側被覆部20、フランジ側被覆部30、内側耐火被覆部50、および、内側支持部60を備える。
幅側被覆部20は、幅方向の外側からH型鋼12を被覆する幅側耐火被覆部である。幅側被覆部20には、各種の配管などを通すための貫通孔23が形成されている。フランジ側被覆部30は、成方向の外側からH型鋼12を被覆する耐火被覆部である。幅側被覆部20は、内側支持部60を介してH型鋼12に支持されている。フランジ側被覆部30は、幅側被覆部20および内側支持部60を介してH型鋼12に支持されている。
【0010】
被覆部20,30は、耐火材21,31と木質材22,32とを有する。耐火材21,31は、例えば、1枚あるいは積層された複数枚の石膏ボードなどで構成される。耐火材21は、幅方向における外側から上フランジ13および下フランジ14を覆うように設けられている。耐火材31は、空間を隔てて成方向における外側から下フランジ14に対向するように設けられている。
【0011】
木質材22,32は、例えばCLT(Cross Laminated Timber)で構成される。木質材22は、幅方向における外側から耐火材21に当接するように設けられている。木質材32は、成方向における外側から耐火材31に当接するように設けられている。木質材32は、木質材22の下端部に対して、木質材22が勝ち側となるようにして接合材33によって接合されている。接合材33は、例えばビスである。接合材33は、木質材22に形成された接合用小口34に挿入されたのち、木質材22を貫通するようにして木質材32に打ち込まれる。木質材22と木質材32の接合後、接合用小口34には、接合材33を覆い隠すように埋木35が配設される。
【0012】
内側耐火被覆部50は、開口16を含んでH型鋼12を内側から被覆している。内側耐火被覆部50は、耐火性を有する材料、例えば石膏やケイ酸カルシウムなどによって形成される。第1実施形態において、内側耐火被覆部50は、一対の幅側被覆部20の間を幅方向に延びる円筒型耐火材である(図2参照)。内側耐火被覆部50は、開口16に挿通されているとともに各端部が耐火材21に当接するように設けられている。
【0013】
(内側支持部)
内側支持部60は、H型鋼12に固定されている。内側支持部60は、内側耐火被覆部50を支持している。内側支持部60は、幅方向におけるウェブ15の両側において上フランジ13と下フランジ14との間に設けられている。
【0014】
また、内側支持部60には、接合材46によって幅側被覆部20が接合される。接合材46は、例えばビスである。接合材46は、木質材22に形成された接合用小口47に挿入されたのち、幅側被覆部20を貫通するようにして内側支持部60に接合される。幅側被覆部20の接合後、接合用小口47には、接合材46を覆い隠すように埋木48が配設される。
【0015】
図2に示すように、内側支持部60は、H型鋼12の延在方向で挟む一対の縦材61とH型鋼12の成方向で挟む一対の横材62とを有する。
縦材61は、溶接等によって上フランジ13と下フランジ14とに固定されて上フランジ13と下フランジ14との間をH型鋼12の成方向に延びる鋼材である。縦材61は、内側耐火被覆部50に当接することでH型鋼12の延在方向において内側耐火被覆部50を挟持するように設けられている。縦材61は、アングル材や角鋼管のほか、チャンネル材などによって構成される。
【0016】
横材62は、各縦材61に連結されて2つの縦材61の間をH型鋼12の延在方向に延びる鋼材である。横材62には、接合材46によって幅側被覆部20が接合される。横材62は、内側耐火被覆部50に当接することでH型鋼12の成方向において内側耐火被覆部50を挟持するように設けられている。横材62は、アングル材や角鋼管のほか、チャンネル材などによって構成される。
【0017】
横材62は、連結材65を介して縦材61に連結されている。連結材65は、縦材61と横材62とがなす角部に配設されている。連結材65は、例えばアングル材によって構成される。連結材65は、縦材61および横材62の各々に対して図示されない締結部材によって連結されることが好ましい。
【0018】
(耐火被覆構造の施工方法)
こうした構成の耐火被覆構造10においては、開口16に挿通させた内側耐火被覆部50をH型鋼12の延在方向で挟持するように2つの縦材61をH型鋼12に連結する。そして、内側耐火被覆部50をH型鋼12の成方向で挟持するように2つの横材62を連結材65を介して縦材61に連結する。これにより、内側耐火被覆部50が内側支持部60で支持される。
【0019】
第1実施形態の作用および効果について説明する。
(1-1)内側耐火被覆部50は、H型鋼12の幅方向に延びて開口16に挿通される円筒型耐火材によって構成されている。内側支持部60は、縦材61および横材62が内側耐火被覆部50に当接することにより、内側耐火被覆部50を支持している。こうした構成によれば、内側耐火被覆部50は、H型鋼12の成方向および延在方向の各々において内側支持部60によって挟持される。その結果、内側耐火被覆部50をより確実に支持することができる。
【0020】
(1-2)耐火被覆構造10は、H型鋼12の幅方向における外側からH型鋼12を被覆する幅側被覆部20を備える。幅側被覆部20は、接合材46によって横材62に接合されている。こうした構成によれば、幅側被覆部20を支持する支持材として横材62を利用することができる。
【0021】
(第2実施形態)
図3および図4を参照して、耐火被覆構造の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態においては、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、第1実施形態と同様の部分については同様の符号を付すことによりその詳細な説明は省略する。
【0022】
(内側耐火被覆部)
図3に示すように、内側耐火被覆部70は、H型鋼12を内側から被覆する各種耐火材によって構成されている。具体的には、内側耐火被覆部70は、第1板型耐火材71、第2板型耐火材72、矩形板型環状耐火材73、および、開口内環状耐火材74で構成されている。第1板型耐火材71、第2板型耐火材72、および、矩形板型環状耐火材73は、幅方向におけるウェブ15の両側に設けられている。
【0023】
第1板型耐火材71は、H型鋼12の延在方向が厚み方向となる耐火材であって、図示されない接合材によって縦材81に接合される耐火材である。第2板型耐火材72は、H型鋼12の成方向が厚み方向となる耐火材であって、接合材85によって横材82に接合される耐火材である。
【0024】
矩形板型環状耐火材73は、開口16よりも小さな開口75を中央部に有して幅方向において板型耐火材71,72とウェブ15とに挟まれる耐火材である。矩形板型環状耐火材73は、幅方向の外側からの貼付によりウェブ15に取り付けられる。開口内環状耐火材74は、開口16の内側に配設される耐火材である。開口内環状耐火材74は、矩形板型環状耐火材73に挟まれている。例えば、開口内環状耐火材74は、一対の矩形板型環状耐火材73の間に充填される耐火材である。また例えば、開口内環状耐火材74は、開口16の内周面に貼り付けられる耐火材である。
【0025】
(内側支持部)
図4に示すように、内側支持部80において、縦材81は、H型鋼12の成方向における各端部が横材82に連結されている。横材82は、H型鋼12の延在方向における縦材81の外側において、アングル材などで構成された固定材86を介してウェブ15に固定されている。
【0026】
(耐火被覆構造の施工方法)
こうした構成の耐火被覆構造10においては、幅方向の外側からの貼付によりウェブ15に一対の矩形板型環状耐火材73が取り付けられるとともにそれら一対の矩形板型環状耐火材73の間に開口内環状耐火材74が設けられる。また、内側支持部80が設置される。そして、縦材81に対する第1板型耐火材71の接合と横材82に対する第2板型耐火材72の接合とが行われる。
【0027】
第2実施形態の耐火被覆構造によれば、第1実施形態の(1-2)に記載した作用および効果に加えて、以下のような作用および効果を得ることができる。
(2-1)内側耐火被覆部70は、H型鋼12の延在方向が厚み方向となる第1板型耐火材71とH型鋼12の成方向が厚み方向となる第2板型耐火材72とを含んでいる。内側支持部80は、第1板型耐火材71が縦材81に接合され、かつ、第2板型耐火材72が横材82に接合されることにより、内側耐火被覆部70を支持している。こうした構成によれば、ウェブ15に形成されている開口16が小さい場合であっても、内側支持部80で内側耐火被覆部70を支持することができる。また、板型耐火材71,72をより強固に内側支持部80に支持させることができる。
【0028】
第1および第2実施形態は、以下のように変更して実施することができる。第1実施形態、第2実施形態、および、以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0029】
・内側支持部80は、H型鋼12に固定されて内側耐火被覆部70を支持していればよい。そのため、縦材61および横材62の双方がH型鋼12に固定されていてもよい。
・幅側被覆部20は、縦材61に接合されてもよい。幅側被覆部20は、縦材61および横材62の双方に接合されてもよい。
【0030】
・縦材61は、幅方向における横材62の外側に配設されてもよい。
・横材62は、幅方向における縦材61の外側に配設されてもよい。
・耐火被覆構造は、梁として設置されるH型鋼12に限らず、柱として設置させるH型鋼12に適用されてもよい。
【0031】
図5に示すように、H型鋼12に延在方向に並ぶ複数の開口16が形成されている場合、第1実施形態の内側支持部60は、両端部が縦材61に連結された一対の横材62で複数の内側耐火被覆部50を支持する構成であってもよい。こうした構成によれば、内側支持部60の施工性などの観点から、複数の内側耐火被覆部50を効率よく支持することができる。なお、内側被覆部50は、図5における左右方向については例えばビスなどによって固定される。
【0032】
図6に示すように、H型鋼12に複数の開口16が形成されている場合、第2実施形態の内側耐火被覆部70は、各開口16に対応する開口75が形成された矩形板型環状耐火材73と、各開口16に対応する開口内環状耐火材74と、を有していてもよい。
【符号の説明】
【0033】
10…耐火被覆構造、11…床スラブ、12…H型鋼、13…上フランジ、14…下フランジ、15…ウェブ、16…開口、20…幅側被覆部、21…耐火材、22…木質材、23…貫通孔、30…フランジ側被覆部、31…耐火材、32…木質材、33…接合材、34…接合用小口、35…埋木、46…接合材、47…接合用小口、48…埋木、50…内側耐火被覆部、60…内側支持部、61…縦材、62…横材、65…連結材、70…内側耐火被覆部、71…第1板型耐火材、72…第2板型耐火材、73…矩形板型環状耐火材、74…開口内環状耐火材、75…開口、80…内側支持部、81…縦材、82…横材、85…接合材、86…固定材。
【要約】
【課題】内側耐火被覆部をより確実に支持することのできる耐火被覆構造を提供する。
【解決手段】耐火被覆構造10は、一対のフランジ13,14を接続するウェブ15に開口16を有するH型鋼12と、一対のフランジ13,14の間に配設されて、H型鋼12の成方向における内側からH型鋼12を被覆する内側耐火被覆部50と、H型鋼12に固定され、内側耐火被覆部50を支持する内側支持部60と、を備える。内側支持部60は、H型鋼12の成方向に延びる縦材61とH型鋼12の延在方向に延びる横材62とで内側耐火被覆部50を支持している。縦材61は、内側耐火被覆部50をH型鋼12の延在方向で挟む位置に設けられている。横材62は、内側耐火被覆部50をH型鋼12の成方向で挟む位置に設けられている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6