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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】凹凸構造体及び凹凸構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/00 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
C04B38/00 303Z
C04B38/00 304Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024508399
(86)(22)【出願日】2023-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2023021724
【審査請求日】2024-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2022156355
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】片木 世維
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-502936(JP,A)
【文献】国際公開第2014/133135(WO,A1)
【文献】齊藤祐太,カテコール基含有両親媒性高分子によるハニカム状無機ナノ粒子多孔質膜の作製,第60回応用物理学会春季学術講演会 講演予稿集,日本,応用物理学会,2013年,p.12-468
【文献】LI, Hong,Self-Organization of Honeycomb-like Porous TiO2 Films by means of the Breath-Figure Method for Surfa,Chemistry - European Journal,ドイツ,2013年,Vol.19, No.17,p.5306-5313
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 38/00-38/10
C04B 35/00-35/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の主面に、複数の水滴状の凹部が形成された膜状のフレーム部からなり、
前記フレーム部は、空隙率が45%以下の多孔質セラミックス焼結体であり、
前記フレーム部の厚さ方向において、前記凹部の最大深さの平均値は、前記フレーム部の厚さの0.01倍以上1.0倍未満であり、
前記フレーム部の前記一方の主面を平面視した際に、複数の前記凹部は、ハニカム状に整列している凹凸構造体。
【請求項2】
前記フレーム部の厚さ方向において、前記凹部の最大深さの平均値は、0.1μm以上、100μm以下である請求項1に記載の凹凸構造体。
【請求項3】
前記凹凸構造体の厚さ方向に平行な断面において、前記フレーム部が占める面積及び前記凹部が占める面積の合計に対する前記凹部が占める面積の割合は50%以上である請求項1又は2に記載の凹凸構造体。
【請求項4】
前記フレーム部は、酸化アルミ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化イットリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化マンガン、フォルステライト、ステアタイト、コージライト、炭化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タングステン、窒化ケイ素、窒化アルミ、窒化チタン、ヒドロキシアパタイト、ホウ化カルシウム、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化バナジウム、ホウ化ニオブ、ホウ化タンタル、ホウ化クロム、ホウ化モリブデン、ホウ化タングステン、ホウ化ランタン、ホウ化ハフニウム、ケイ化鉄、ケイ化チタン、ケイ化ジルコニウム、ケイ化ニオブ、ケイ化タンタル、ケイ化クロム、ケイ化モリブデン、ケイ化タングステン及びケイ化ハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種からなる多孔質セラミックス焼結体である請求項1又は2に記載の凹凸構造体。
【請求項5】
前記フレーム部の前記一方の主面を平面視した際、隣り合う前記凹部の間に位置する前記フレーム部の最小長さの平均値は、前記凹部の円相当径の平均値よりも小さい請求項1又は2に記載の凹凸構造体。
【請求項6】
前記フレーム部の外表面には微細な凸構造が形成されている請求項1又は2に記載の凹凸構造体。
【請求項7】
前記フレーム部の前記一方の主面を平面視した際、隣り合う前記凹部の間に位置する前記フレーム部の最小長さの平均値は、前記微細な凸構造の平均高さよりも大きい請求項に記載の凹凸構造体。
【請求項8】
セラミックス粒子と有機物とを含むセラミックススラリーを準備するセラミックススラリー準備工程と、
基材に前記セラミックススラリーを塗布し、セラミックススラリー膜を形成するセラミックススラリー膜形成工程と、
前記基材と接触していない前記セラミックススラリー膜の一方の主面に高湿度空気を吹き付け、前記セラミックススラリー膜の前記一方の主面に水滴を結露させ、前記水滴を成長させることにより前記セラミックススラリー膜の前記一方の主面に複数の水滴状の凹部を形成する結露工程と、
前記セラミックススラリー膜を加熱することにより前記水滴を蒸発させる蒸発工程と、
前記有機物が分解する温度以上の温度で前記セラミックススラリー膜を焼成し、前記セラミックス粒子を焼結させることにより、空隙率が45%以下の多孔質セラミックス焼結体からなり、一方の主面に、複数の水滴状の凹部が形成された膜状のフレーム部を得る焼成工程とを含み、
前記有機物は界面活性剤を含む凹凸構造体の製造方法。
【請求項9】
前記フレーム部の厚さ方向において、前記凹部の最大深さの平均値が、前記フレーム部の厚さの0.01倍以上1.0倍未満となるように、前記セラミックススラリー準備工程、前記セラミックススラリー膜形成構成工程、前記結露工程、前記蒸発工程及び前記焼成工程を行う請求項に記載の凹凸構造体の製造方法。
【請求項10】
前記セラミックス粒子の平均粒子径は、前記フレーム部の厚さ方向における前記凹部の最大深さの平均値の1/10倍以下である請求項又はに記載の凹凸構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸構造体及び凹凸構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細な凹凸構造を表面に持つ凹凸構造体は、光学材料や電子材料等の工学分野だけでなく、再生医療分野等、幅広い分野で利用されている。
凹凸構造体の用途としては、例えば、画像表示面に用いられる反射防止フィルムや指紋付着抑制フィルムのような用途が挙げられる。
このような凹凸構造体の中には、フィルム面に一定のピッチで複数の孔か形成されているハニカム構造のフィルム(以下、「ハニカム構造フィルム」とも記載する)がある。
【0003】
このようなハニカム構造フィルムを製造する方法としてはBreath Figure法が知られている。
Breath Figure法は、基材に膜形成用材料を塗布して材料層を形成し、材料層の表面に水滴を結露させ、水滴を成長させることにより凹部を形成し、水滴を蒸発させることにより凹部が形成されたハニカム構造フィルムを製造する方法である。
【0004】
特許文献1では、膜形成用材料としてセラミックス粒子、樹脂及び有機溶媒の混合物を用い、Breath Figure法により凹部を形成し、有機溶媒を蒸発させることによりハニカム構造フィルムを形成する方法が開示されている。
非特許文献1では、膜形成用材料としてセラミックス粒子、樹脂及び界面活性剤の混合物を用い、Breath Figure法により凹部を形成した後、焼成を行うことにより、セラミックスからなるハニカム構造フィルムを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/133135号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Breath Figures of Nanoscale Bricks:A Universal Method for Creating HieFarChiC Porous Materials from lnorganic NanoPartiCles Stabilized wtth Mussel‐InsPired CoPolymer, Macromolecular Rapid Communications Volume35, Issue20, October 2014, Pages 1763-1769
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のハニカム構造フィルムは、樹脂を含むので薬剤耐性が低く、例えば、クロロホルムといった腐食性の高い薬剤が付着すると、樹脂が溶解してしまい、長時間の使用に耐えることができないという問題がある。
【0008】
また、非特許文献1のハニカム構造フィルムは、焼成されて作製されるので、セラミックスのみで構成されているものの、焼成温度が低くセラミックス粒子同士が充分に結合できておらず、実用に耐えうる強度を有しておらず、破損しやすいという問題がある。なお、非特許文献1に係るハニカム構造フィルムの製造方法において、焼成温度を高くしようとすると、焼成中に膜形成用材料が崩れ、凹部の形状を維持できないという問題が生じる。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされた発明であり、本発明の目的は、薬剤耐性が充分に高く、破損しにくい凹凸構造体及び当該凹凸構造体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の凹凸構造体は、一方の主面に、複数の水滴状の凹部が形成された膜状のフレーム部からなり、上記フレーム部は、空隙率が45%以下の多孔質セラミックス焼結体であり、上記フレーム部の厚さ方向において、上記凹部の最大深さの平均値は、上記フレーム部の厚さの0.01倍以上、1.0倍未満である。
【0011】
本発明の凹凸構造体の製造方法は、セラミックス粒子と有機物とを含むセラミックススラリーを準備するセラミックススラリー準備工程と、基材に上記セラミックススラリーを塗布し、セラミックススラリー膜を形成するセラミックススラリー膜形成工程と、上記基材と接触していない上記セラミックススラリー膜の一方の主面に高湿度空気を吹き付け、上記セラミックススラリー膜の上記一方の主面に水滴を結露させ、上記水滴を成長させることにより上記セラミックススラリー膜の上記一方の主面に複数の水滴状の凹部を形成する結露工程と、上記セラミックススラリー膜を加熱することにより上記水滴を蒸発させる蒸発工程と、上記有機物が分解する温度以上の温度で上記セラミックススラリー膜を焼成し、上記セラミックス粒子を焼結させることにより、空隙率が45%以下の多孔質セラミックス焼結体からなり、一方の主面に、複数の水滴状の凹部が形成された膜状のフレーム部を得る焼成工程とを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、薬剤耐性が充分に高く、破損しにくい凹凸構造体及び当該凹凸構造体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A図1Aは本発明の凹凸構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
図1B図1Bは、図1Aに示す本発明の凹凸構造体の凹部が形成されている側の主面を平面視した平面図である。
図1C図1Cは、図1Bに示す本発明の凹凸構造体のA-A線断面の一部拡大図である。
図1D図1Dは、図1Bに示す本発明の凹凸構造体のB-B線断面の一部拡大図である。
図2A図2Aは、本発明の凹凸構造体における水滴状の凹部の一例を模式的に示す断面図である。
図2B図2Bは、本発明の凹凸構造体における水滴状の凹部の一例を模式的に示す断面図である。
図3図3は、本発明の凹凸構造体の別の一例を模式的に示す断面図である。
図4図4は、本発明の凹凸構造体の製造方法におけるセラミックススラリー膜形成工程の一例を模式的に示す断面図である。
図5A図5Aは、本発明の凹凸構造体の製造方法における結露工程における高湿度空気吹き付けサブステップの一例を模式的に示す断面図である。
図5B図5Bは、本発明の凹凸構造体の製造方法における結露工程における水滴成長サブステップの一例を模式的に示す断面図である。
図6図6は、本発明の凹凸構造体の製造方法における蒸発工程の一例を模式的に示す断面図である。
図7図7は、本発明の凹凸構造体の製造方法における焼成工程の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の凹凸構造体及び本発明の凹凸構造体の製造方法について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0015】
本明細書において、要素間の関係性を示す用語(例えば「垂直」、「平行」、「直交」等)及び要素の形状を示す用語は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0016】
本発明の凹凸構造体は、一方の主面に、複数の水滴状の凹部が形成された膜状のフレーム部からなり、上記フレーム部は、空隙率が45%以下の多孔質セラミックス焼結体であり、上記フレーム部の厚さ方向において、上記凹部の最大深さの平均値は、上記フレーム部の厚さの0.01倍以上、1.0倍未満である。
本発明の凹凸構造体は、上記構成を満たせば、本発明の効果を奏する範囲で、どのような構成を含んでいても良い。
【0017】
以下、本発明の凹凸構造体について図面を用いて詳述する。
図1Aは本発明の凹凸構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
図1Bは、図1Aに示す本発明の凹凸構造体の凹部が形成されている側の主面を平面視した平面図である。
図1Cは、図1Bに示す本発明の凹凸構造体のA-A線断面の一部拡大図である。
図1Dは、図1Bに示す本発明の凹凸構造体のB-B線断面の一部拡大図である。
【0018】
図1Aに示す凹凸構造体1は、一方の主面20aに複数の水滴状の凹部10が形成された膜状のフレーム部20からなる。
【0019】
フレーム部20は、空隙率が45%以下の多孔質セラミックス焼結体である。
凹凸構造体1では、フレーム部20は、多孔質セラミックス焼結体のみから構成されていてもよい。
また、フレーム部20は、有機物を含んでいないことが好ましい。
【0020】
なお、フレーム部20の空隙率は、45%以下であることが好ましく、0.1%以上、20%以下であることがより好ましい。
フレーム部20の空隙率が45%以下であるとフレーム部20の硬度が高くなり、その結果、凹凸構造体1が破損しにくくなる。
なお、本明細書において、「フレーム部の空隙率」とは、多孔質セラミックス焼結体部分における細孔の割合であり、「フレーム部の空隙率」の算出に当たって凹部は考慮しない。
本明細書において、「フレーム部の空隙率」とは、以下の方法で測定した値を意味する。
まず、本発明の凹凸構造体を切断し、その断面における1μm×1μmの範囲の走査電子顕微鏡(SEM)画像を取得する。
当該SEM画像を白黒二値化し、セラミックス焼結体が存在する部分と、細孔部分を区別し、各部分の画素数を測定する。セラミックス焼結体が存在する部分及び細孔部分の合計画素数に対する細孔部分の画素数の割合を算出する。
任意の10箇所において上記値を算出し、その平均値を「フレーム部の空隙率」とする。
【0021】
凹凸構造体1では、フレーム部20の硬度は、0.5GPa以上、30.0GPa以下であることが好ましい。
フレーム部20の硬度が上記範囲であるということは、多孔質セラミックス焼結体が高温で充分に焼結されていることを意味する。
なお、本明細書において、「フレーム部の硬度」は、ナノインテンダー(製品名:NET-1100a、製造元:株式会社エリオニクス)により測定した値を意味する。
【0022】
図1Bに示すように、凹凸構造体1の凹部10が形成されている側の主面(すなわち、一方の主面20a)を平面視した際、複数の凹部10はハニカム状に整列している。
凹部10がハニカム状に整列していると、凹凸構造体1における部位の違いによる物性差が小さくなり、凹凸構造体1が均一な性質になる。
詳しくは後述するが、凹凸構造体1を製造する際、凹部10は、水滴を結露させることにより形成される。このような方法で凹部10を形成すると、凹部10はハニカム状に整列することになる。
なお、本明細書において「凹部がハニカム状に整列」とは、凹部が、一定の間隔及びパターンでハニカム状に配列していることを意味する。なお、「一定の間隔及びパターン」とは、正確に同じ間隔及びパターンだけでなく、凹部同士の間隔にばらつきがある場合や、凹部のパターンにずれがある場合を含む概念である。
【0023】
図1Bに示すように、凹凸構造体1の一方の主面20aを平面視した際の凹部10の形状は、円形であるが、本発明の凹凸構造体において上記凹部の形状は、正円でなくてもよく、歪みがあってもよい。
【0024】
凹凸構造体1の一方の主面20aを平面視した際、すなわち、一方の主面20aを真上からみた際、隣り合う凹部10の間に位置するフレーム部20の最小長さ(図1B中、符号「L」で示す長さ)の平均値は、凹部10の平均円相当径(図1B中、符号「S」で示す部分の円相当径の平均値)よりも小さいことが好ましい。
上記長さLの平均値は、0.01μm以上、10μm以下であることが好ましい。
凹部10の円相当径の平均値は、0.1μm以上、100μm以下であることが好ましい。
上記長さLの平均値が、凹部10の平均円相当径よりも小さいということは、凹凸構造体1において、凹部10を形成する壁部が薄いため、凹部10が破損しやすいようにも思われる。
しかし、凹凸構造体1では、フレーム部20が、空隙率が45%以下の多孔質セラミックス焼結体であるため硬度が高い。そのため、このように凹部10を構成する壁部が薄かったとしても、凹部10が破損しにくい。
また、上記長さLの平均値が、凹部10の平均円相当径よりも小さいということは、フレーム部20が細くなることを意味しており、このような場合、凹凸構造体1において、凹部10の内部の空間の割合の方が大きくなる。この場合、凹部10の表面積が広くなり、フレーム部20を構成する多孔質セラミックス焼結体が疎水性である場合、凹凸構造体1の一方の主面20aの撥水性が向上する。
【0025】
図1Cは、図1Bに示す凹凸構造体1のA-A断面図である。つまり、図1Cは、凹凸構造体1の一方の主面20aを平面視した際に、各凹部10の重心を通るように、かつ、凹凸構造体1の厚さ方向に平行になるように、凹凸構造体1を切断した断面図である。
図1Cに示すように、凹凸構造体1では、隣り合う凹部10は、一部が接触し連結している。
【0026】
図1Cに示すように、凹凸構造体1では、フレーム部20の厚さ方向(図1C中、矢印Aで示す方向)において、凹部10の最大深さ(図1C中、符号「D」で示す距離)の平均値は、フレーム部20の厚さTの0.01倍以上、1.0倍未満である。
なお、凹部10の最大深さDの平均値は、フレーム部20の厚さTの0.05倍以上、1.0倍未満であることが好ましく、0.1倍以上、1.0倍未満であることがより好ましい。
凹部10の最大深さDの平均値が上記範囲内であるということは、凹部10が深く形成されており、凹凸構造体1が破損しやすいようにも思われる。
しかし、凹凸構造体1では、フレーム部20が、空隙率が45%以下の多孔質セラミックス焼結体であるため硬度が高い。そのため、このように凹部10が深く形成されていたとしても、凹凸構造体1は破損しにくい。
【0027】
また、凹部10の最大深さDの平均値は、0.1μm以上、100μm以下であることが好ましく、0.3μm以上、10μm以下であることがより好ましい。
凹部10の最大深さDの平均値が上記範囲であると、凹凸構造体1を反射防止膜として使用した際に、光の反射を好適に抑えることができる。また、凹凸構造体1を細胞培養の足場として使用した際に、細胞が好適に定着することができる。
【0028】
また、フレーム部20の厚さTは、0.3μm以上、10μm以下であることが好ましい。
【0029】
本明細書において「フレーム部の厚さ」とは、フレーム部の最大厚さのことを意味する。
本明細書において「凹部の最大深さの平均値」とは、以下の方法により測定された距離のことを意味する。
まず、仮想平面αを、フレーム部20の一方の主面20aと丁度重なるように配置する。各凹部の底面から当該仮想平面αまで垂線を引いた際に最も長くなる距離を、「各凹部の最大深さ」とする。
このようにして測定した各凹部の最大深さの平均値が、「凹部の最大深さの平均値」である。
【0030】
凹凸構造体1では、図1Cに示す断面において、フレーム部20が占める面積及び凹部10が占める面積の合計に対する凹部10が占める面積の割合は50%以上であることが好ましく、60%以上、90%以下であることが好ましい。
フレーム部20が占める面積及び凹部10が占める面積の合計に対する凹部10が占める面積の割合が50%以上であるということは、凹凸構造体1において、凹部10が占める割合が大きく、凹凸構造体1が破損しやすいようにも思われる。
しかし、凹凸構造体1では、フレーム部20が、空隙率が45%以下の多孔質セラミックス焼結体であるため硬度が高い。そのため、このように凹部10が占める割合が大きかったとしても、凹凸構造体1は破損しにくくなる。
なお、本明細書において、「凹部が占める面積」とは、以下の方法により測定された面積のことを意味する。
まず、図1C示す断面において、仮想平面αを、フレーム部20の一方の主面20aと丁度重なるように配置する。
凹凸構造体の厚さ方向に平行な断面において、仮想平面αと、凹部10の壁面11で囲まれた部分の面積(図1Bにおいて符号「S」で示す部分の面積)が、「凹凸構造体の厚さ方向に平行な断面における凹部の面積」である。
【0031】
図1Dは、図1Bに示す本発明の凹凸構造体のB-B線断面の一部拡大図である。
図1Dに示すように、凹凸構造体1の厚さ方向の断面において、凹部10は、輪郭が途切れずに、連続している部分を有する。
【0032】
凹凸構造体1における水滴状の凹部10は、後述するように、本発明の凹凸構造体の製造方法において、結露による水滴で形成することができる。
なお、本明細書において「水滴状の凹部」とは、以下の特徴を有する凹部のことを意味する。
図1Dに示すように、水滴状の凹部10は、壁面11が曲面を含む。
また、水滴状の凹部10は、一方の主面20aから他方の主面20bに向かって、厚さ方向Aに垂直な仮想直線を移動させた際に、凹部10に囲まれる仮想直線の距離が極大となる極大部12を有する。
また、水滴状の凹部10は、極大部12から他方の主面20bに向かって徐々に狭くなる。
【0033】
このような特徴を有する水滴状の凹部としては、例えば以下の形状の凹部を例示することができる。
図2A及び図2Bは、本発明の凹凸構造体における水滴状の凹部の一例を模式的に示す断面図である。
図2Aに示すように、凹部10Aは、壁面11Aが曲面を含む。また、極大部12Aが一方の主面20aと他方の主面20bの間に位置している。凹部10Aは、開口部13Aから極大部12Aに向かって広がり、極大部12Aから他方の主面20bに向かって徐々に狭くなる。
図2Bに示すように、凹部10Bは、壁面11Bが曲面を含む。また、極大部12Bが、凹部10の開口部13B(すなわち、一方の主面20a)に位置している。そして、凹部10Bは、極大部12Bから他方の主面20bに向かって徐々に狭くなる。
【0034】
凹凸構造体1において、フレーム部20は、酸化物系セラミックスや非酸化物系セラミックスの材料から構成される多孔質セラミックス焼結体であってもよい。
酸化物系セラミックスとしては、酸化アルミ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化イットリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化マンガン、フォルステライト、ステアタイト、コージライト等が挙げられる、また、非酸化物系セラミックスとしては、炭化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タングステン等の炭化物セラミックス、窒化ケイ素、窒化アルミ、窒化チタン等の窒化物セラミックス、ヒドロキシアパタイト等の水酸化物セラミックス、ホウ化カルシウム、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化バナジウム、ホウ化ニオブ、ホウ化タンタル、ホウ化クロム、ホウ化モリブデン、ホウ化タングステン、ホウ化ランタン、ホウ化ハフニウム等のホウ化物セラミックス、ケイ化鉄、ケイ化チタン、ケイ化ジルコニウム、ケイ化ニオブ、ケイ化タンタル、ケイ化クロム、ケイ化モリブデン、ケイ化タングステン、ケイ化ハフニウム等のケイ化物セラミックス等が挙げられる。
フレーム部20がこれらの材料からなる多孔質セラミックス焼結体であると、フレーム部の硬度が高くなり、凹凸構造体は破損しにくくなる。
フレーム部20の材料は、凹凸構造体1の用途に合わせ適宜決定することが好ましい。
【0035】
本発明の凹凸構造体では、フレーム部の外表面には微細な凸構造が形成されていてもよい。
このような態様について以下に図面を用いて説明する。
図3は、本発明の凹凸構造体の別の一例を模式的に示す断面図である。
図3に示す凹凸構造体101では、フレーム部120の外表面に微細な凸構造130が形成されている。
このような凸構造130は、セラミックス粒子を焼結させる際に形成される。
このような凸構造130が形成されていると、フレーム部120の表面積を大きくすることができる。そのため、フレーム部120を構成する多孔質セラミックス焼結体が疎水性である場合、凹凸構造体101の撥水性が向上する。
【0036】
本発明の凹凸構造体では、フレーム部120の一方の主面120aを平面視した際、隣り合う凹部110の間に位置するフレーム部120の最小長さLの平均値は、微細な凸構造130の平均高さよりも大きいことが好ましい。
また、微細な凸構造130の平均高さは、0.01μm以上、1μm以下であることが好ましい。
本明細書において、「微細な凸構造の平均高さ」は、以下の方法により測定した値を意味する。
まず、FIB(Focused Ion Beam)や機械研磨等によりフレーム部の断面を、レーザー顕微鏡やSEM(Scanning Electron Microscope)を用いて画像を取得する。得られた画像をもとに画像解析ソフトWinROOF(三谷商事製)を用いてJIS B 0601:2013に規定されて算出される算術平均粗さ(Ra)が微細な凸構造の平均高さである。
【0037】
本発明の凹凸構造体は、光反射防止膜や、細胞培養を行う際の培養足場、電池材料、油分付着防止フィルム、インクジェット液体吐出ヘッド等の用途に用いることができる。
【0038】
次に、本発明の凹凸構造体の製造方法について説明する。
本発明の凹凸構造体の製造方法は、<セラミックススラリー準備工程>と、<セラミックススラリー膜形成工程>と、<結露工程>と、<蒸発工程>と、<焼成工程>とを含む。
各工程について以下に詳述する。
【0039】
<セラミックススラリー準備工程>
まず、セラミックス粒子と、有機物とを混合し、セラミックススラリーを作製する。
セラミックス粒子としては、酸化物系セラミックスや非酸化物系セラミックスからなることが好ましい。
酸化物系セラミックスとしては、酸化アルミ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化イットリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化マンガン、フォルステライト、ステアタイト、コージライト等が挙げられ、非酸化物系セラミックスとしては、炭化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タングステン等の炭化物セラミックス、窒化ケイ素、窒化アルミ、窒化チタン等の窒化物セラミックス、ヒドロキシアパタイト等の水酸化物セラミックス、ホウ化カルシウム、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化バナジウム、ホウ化ニオブ、ホウ化タンタル、ホウ化クロム、ホウ化モリブデン、ホウ化タングステン、ホウ化ランタン、ホウ化ハフニウム等のホウ化物セラミックス、ケイ化鉄、ケイ化チタン、ケイ化ジルコニウム、ケイ化ニオブ、ケイ化タンタル、ケイ化クロム、ケイ化モリブデン、ケイ化タングステン、ケイ化ハフニウム等のケイ化物セラミックス等が挙げられる。
また、セラミックス粒子の平均粒子径は、後述する工程を経て得られる凹凸構造体のフレーム部の厚さ方向における凹部の最大深さの平均値の1/10倍以下であることが好ましく、1/100倍以下であることがより好ましい。
また、セラミックス粒子の平均粒子径は、0.01μm以上、1μm以下であることが好ましい。
このようなセラミックス粒子を用いることにより、製造される凹凸構造体において、凹部が球形に近くなる。
【0040】
有機物としては、界面活性剤、分散安定剤、樹脂ポリマー、有機溶媒が挙げられる。
【0041】
セラミックススラリーに界面活性剤が含まれると、後述する結露工程において、凹部を均一に形成しやすくなる。
界面活性剤としては、両親媒性ポリアクリルアミド、レシチン等の親水基と疎水基の両方をもつ両親媒性化合物等を用いることができる。
【0042】
セラミックススラリーに分散安定剤が含まれると、セラミックス粒子を好適に分散させることができる。
分散安定剤としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アミノメチルヒドロキシプロピルセルロース、アミノエチルヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、トラガント、ペクチン、グルー、アルギン酸又はその塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸又はその塩ポリメタクリル酸又はその塩、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、酢酸ビニルとマレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等不飽和酸との共重合体、スチレンと上記不飽和酸との共重合体、ビニルエーテルと上記不飽和酸との共重合体及び前記共重合体の塩類又はエステル類等を用いることができる。
【0043】
有機溶媒としては、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、二硫化炭素等の不水和性有機溶媒等を用いることができる。
【0044】
セラミックススラリーに含まれるセラミックス粒子の質量割合は、70質量%以上、95質量%以下であることが好ましい。
このような範囲であると、後述する結露工程において凹部を形成する際に、凹部が崩れにくく、また、後述する焼成工程において、セラミックス粒子同士が確実に焼結することができる。
【0045】
<セラミックススラリー膜形成工程>
図4は、本発明の凹凸構造体の製造方法におけるセラミックススラリー膜形成工程の一例を模式的に示す断面図である。
次に、図4に示すように基材40にセラミックススラリーを塗工し、セラミックススラリー膜20´を形成する。
本工程では、セラミックススラリー膜20´を厚さ0.1μm以上、100μm以下となるように塗工することが好ましい。
【0046】
<結露工程>
次に、セラミックススラリー膜20´の表面に水滴を結露させて凹部を形成する結露工程を行う。
本発明の凹凸構造体の製造方法における結露工程は、≪高湿度空気吹き付けサブステップ≫と、≪水滴成長サブステップ≫とを含む。
図5Aは、本発明の凹凸構造体の製造方法における結露工程における高湿度空気吹き付けサブステップの一例を模式的に示す断面図である。
図5Bは、本発明の凹凸構造体の製造方法における結露工程における水滴成長サブステップの一例を模式的に示す断面図である。
【0047】
≪高湿度空気吹き付けサブステップ≫
高湿度空気吹き付けサブステップでは、図5Aに示すように、基材40と接触していないセラミックススラリー膜20´の一方の主面20a´に高湿度空気50を吹き付け、セラミックススラリー膜20´の一方の主面20a´に水滴60を結露させる。
高湿度空気50の湿度は、80%以上、90%以下であることが好ましい。
また、高湿度空気50の温度は、10℃以上、40℃以下であることが好ましい。
また、高湿度空気50を吹き付ける際の流速は、0.1m/s以上、20m/s以下であることが好ましい。
【0048】
≪水滴成長サブステップ≫
次に、図5Bに示すように、高湿度空気50を供給し続けることにより水滴60を成長させる。水滴60は、互いに接触し毛細管力等が働く結果、一定のパターンに配列する。これにより、一方の主面20a´に複数の水滴状の凹部10´を形成することができる。
凹部10´の密度や、大きさ等は、高湿度空気50の湿度、温度、流速、流量、吹き付け角度、供給時間等を調整することにより制御することができる。
また、この行程中にスラリー内に含まれる有機溶媒成分は揮発する。
【0049】
<蒸発工程>
図6は、本発明の凹凸構造体の製造方法における蒸発工程の一例を模式的に示す断面図である。
次に、図6に示すように、水滴60が結露したセラミックススラリー膜20´を加熱することにより水滴60を蒸発させる。
加熱条件は、水滴60が蒸発できれば特に限定されないが、例えば、20℃以上、40℃以下で、1min以上、60min以下、相対湿度60%以下の雰囲気の条件で加熱する方法が挙げられる。
【0050】
<焼成工程>
図7は、本発明の凹凸構造体の製造方法における焼成工程の一例を模式的に示す断面図である。
次に、図7に示すように、有機物が分解する温度以上の温度でセラミックススラリー膜20´を焼成し、セラミックス粒子を焼結させる。
これにより、セラミックススラリー膜20´中の有機物は分解され、セラミックス粒子同士が充分に焼結する。
焼成工程を行うことにより、セラミックススラリー膜20´及び凹部10´は、それぞれ、フレーム部20及び凹部10となる。
つまり、焼成工程を行うことにより、多孔質セラミックス焼結体からなり、一方の主面20aに、複数の水滴状の凹部10が形成された膜状のフレーム部20を得ることができる。
なお、焼成工程では、フレーム部を構成する多孔質セラミックス焼結体の空隙率が45%以下となる条件で焼成を行う。このような焼成条件としては、例えば、空気雰囲気下で、昇温速度0.1℃/min以上、50℃/min以下で、1000℃以上、1600℃以下となるまで加熱し、この状態で1min以上、1440min以下保持する方法が挙げられる。
【0051】
以上の工程を経て、本発明の凹凸構造体を製造することができる。
【0052】
本発明の凹凸構造体の製造方法では、<蒸発工程>及び<焼成工程>を連続して行ってもよく、分けて行ってもよい。
【0053】
本発明の凹凸構造体の製造方法では、フレーム部の厚さ方向において、凹部の最大深さの平均値が、フレーム部の厚さの0.01倍以上、1.0倍未満となるように、セラミックススラリー準備工程、セラミックススラリー膜形成構成工程、結露工程、蒸発工程及び焼成工程を行うことが好ましい。
凹部の最大深さの平均値は、セラミックススラリーの組成、セラミックススラリー膜の厚さ、水滴を結露させる際の条件、焼成条件を調整することにより制御することができる。
フレーム部の厚さは、セラミックススラリーの組成、セラミックススラリー膜の厚さ、蒸発工程の加熱条件、焼成条件を調整することにより制御することができる。
【0054】
本明細書には、以下の内容が開示されている。
【0055】
本開示(1)は、一方の主面に、複数の水滴状の凹部が形成された膜状のフレーム部からなり、上記フレーム部は、空隙率が45%以下の多孔質セラミックス焼結体であり、上記フレーム部の厚さ方向において、上記凹部の最大深さの平均値は、上記フレーム部の厚さの0.01倍以上、1.0倍未満である凹凸構造体である。
【0056】
本開示(2)は、上記フレーム部の厚さ方向において、上記凹部の最大深さの平均値は、0.1μm以上、100μm以下である本開示(1)に記載の凹凸構造体である
【0057】
本開示(3)は、上記フレーム部の上記一方の主面を平面視した際に、複数の上記凹部は、ハニカム状に整列している本開示(1)又は(2)に記載の凹凸構造体。
【0058】
本開示(4)は、上記凹凸構造体の厚さ方向に平行な断面において、上記フレーム部が占める面積及び上記凹部が占める面積の合計に対する上記凹部が占める面積の割合は50%以上である本開示(1)~(3)のいずれかに記載の凹凸構造体。
【0059】
本開示(5)は、上記フレーム部は、酸化アルミ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化イットリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化マンガン、フォルステライト、ステアタイト、コージライト、炭化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タングステン、窒化ケイ素、窒化アルミ、窒化チタン、ヒドロキシアパタイト、ホウ化カルシウム、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化バナジウム、ホウ化ニオブ、ホウ化タンタル、ホウ化クロム、ホウ化モリブデン、ホウ化タングステン、ホウ化ランタン、ホウ化ハフニウム、ケイ化鉄、ケイ化チタン、ケイ化ジルコニウム、ケイ化ニオブ、ケイ化タンタル、ケイ化クロム、ケイ化モリブデン、ケイ化タングステン及びケイ化ハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種からなる多孔質セラミックス焼結体である本開示(1)~(4)のいずれかに記載の凹凸構造体。
【0060】
本開示(6)は、上記フレーム部の上記一方の主面を平面視した際、隣り合う上記凹部の間に位置する上記フレーム部の最小長さの平均値は、上記凹部の円相当径の平均値よりも小さい本開示(1)~(5)のいずれかに記載の凹凸構造体。
【0061】
本開示(7)は、上記フレーム部の外表面には微細な凸構造が形成されている本開示(1)~(6)のいずれかに記載の凹凸構造体。
【0062】
本開示(8)は、上記フレーム部の上記一方の主面を平面視した際、隣り合う上記凹部の間に位置する上記フレーム部の最小長さの平均値は、上記微細な凸構造の平均高さよりも大きい本開示(7)に記載の凹凸構造体。
【0063】
本開示(9)は、セラミックス粒子と有機物とを含むセラミックススラリーを準備するセラミックススラリー準備工程と、基材に上記セラミックススラリーを塗布し、セラミックススラリー膜を形成するセラミックススラリー膜形成工程と、上記基材と接触していない上記セラミックススラリー膜の一方の主面に高湿度空気を吹き付け、上記セラミックススラリー膜の上記一方の主面に水滴を結露させ、水滴を成長させることにより上記セラミックススラリー膜の上記一方の主面に複数の水滴状の凹部を形成する結露工程と、上記セラミックススラリー膜を加熱することにより上記水滴を蒸発させる蒸発工程と、上記有機物が分解する温度以上の温度で上記セラミックススラリー膜を焼成し、上記セラミックス粒子を焼結させることにより、空隙率が45%以下の多孔質セラミックス焼結体からなり、一方の主面に、複数の水滴状の凹部が形成された膜状のフレーム部を得る焼成工程とを含む凹凸構造体の製造方法。
【0064】
本開示(10)は、上記フレーム部の厚さ方向において、上記凹部の最大深さの平均値が、上記フレーム部の厚さの0.01倍以上、1.0倍未満となるように、上記セラミックススラリー準備工程、上記セラミックススラリー膜形成構成工程、上記結露工程、上記蒸発工程及び上記焼成工程を行う本開示(9)に記載の凹凸構造体の製造方法。
【0065】
本開示(11)は、上記セラミックス粒子の平均粒子径は、上記フレーム部の厚さ方向における上記凹部の最大深さの平均値の1/10倍以下である本開示(9)又は(10)に記載の凹凸構造体の製造方法。
【実施例
【0066】
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、この実施例のみに限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
<セラミックススラリー準備工程>
セラミックス粒子としてAlナノ粉体(平均粒子径:0.2μm、製品名:AKP-50、製造元:住友化学株式会社)を500mgと、有機物である界面活性剤として特開2001-157574号公報に記載されている方法をもとに調製した両親媒性ポリアクリルアミド(重量平均分子量85,000)を20mgと、有機物である分散安定剤としてエチルセルロース(製造元:日進化成株式会社)を20mgとをビーカーにそれぞれ投入し、有機物として有機溶媒であるクロロホルム(製造元:富士フイルム和光純薬株式会社)を15g投入し、1時間攪拌しセラミックススラリーを準備した。
【0068】
<セラミックススラリー膜形成工程>
耐熱性の基材(アルミナ基板)に、セラミックススラリーを塗工し、膜厚が400μmのセラミックススラリー膜を形成した。
【0069】
<結露工程>
次に、基材と接触していないセラミックススラリー膜の一方の主面に高湿度空気を吹き付け、セラミックススラリー膜の一方の主面に水滴を結露させた。この際、高湿度空気の湿度を90%とし、温度30℃、流速1m/sの条件で吹き付けた。
その後、10min、湿度90%、温度30℃、流速1m/sの条件で高湿度空気を供給し続け、水滴を成長させることにより、セラミックススラリー膜の一方の主面に水滴状の凹部を形成した。
【0070】
<蒸発工程>
次に、水滴が結露したセラミックススラリー膜を温度40℃、時間20min、相対湿度50%の雰囲気の条件で加熱し、水滴を蒸発させた。
【0071】
<焼成工程>
水滴が結露したセラミックススラリー膜を、焼成炉で、空気雰囲気下、昇温速度20℃/minで1400℃となるまで加熱し、60min保持することにより、有機物を分解し、セラミックス粒子同士を焼結させ、多孔質セラミックス焼結体とした。
これにより、一方の主面に、複数の水滴状の凹部が形成された膜状のフレーム部を得た。
【0072】
以上の工程を経て実施例1に係る凹凸構造体を製造した。
実施例1に係る凹凸構造体では、多孔質セラミックス焼結体の空隙率は、4%であった。
また、ナノインテンダー(製品名:NET-1100a、製造元:株式会社エリオニクス)で測定したフレーム部の硬度は、18.2GPaであった。
実施例1に係る凹凸構造体の一方の主面を平面視した際、隣り合う凹部の間に位置するフレーム部の最小長さの平均値は0.9μmであり、凹部の平均円相当径は3.2μmであった。
実施例1に係る凹凸構造体では、フレーム部の厚さは12μmであり、凹部の最大深さの平均値は3.0μmであった。
また、実施例1に係る凹凸構造体では、フレーム部の外表面には微細な凸構造が形成されておりその高さは、0.2μmであった。
【0073】
(実施例2)、(実施例3)、(比較例1)及び(比較例2)
焼成条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に、実施例2、実施例3、比較例1及び比較例2に係る凹凸構造体を製造した。
実施例2、実施例3、比較例1及び比較例2に係る凹凸構造体では、多孔質セラミックス焼結体の空隙率及びフレーム部の硬度が表1に示すように異なる以外、他の構成(凹部の形状等)は同じであった。
なお、表1における「硬度(GPa)が0.1以下」とはナノインテンダー(製品名:NET-1100a、製造元:株式会社エリオニクス)で測定した硬度が測定限界未満であることを意味する。
【0074】
【表1】
【0075】
表1に示すように、実施例1~実施例3に係る凹凸構造体では、フレーム部を構成する多孔質セラミックス焼結体の空隙率が45%以下であり、フレーム部の硬度が高かった。
これは、セラミックス粒子同士が充分に焼結したためであると考えられる。そのため、実施例1~実施例3に係る凹凸構造体は、破損しにくいと言える。
【0076】
また、実施例1~実施例3に係る凹凸構造体は、多孔質セラミックス焼結体から構成され、有機物が残っていないので、薬剤耐性が充分に強いと言える。
【符号の説明】
【0077】
1、101 凹凸構造体
10、110 凹部
10´ 凹部
11 凹部の壁面
12、12A、12B 極大部
13A、13B 開口部
20、120 フレーム部
20a、120a 一方の主面
20b 他方の主面
20´ セラミックススラリー膜
20a´ 一方の主面
130 微細な凸部
40 基材
50 高湿度空気
60 水滴

【要約】
薬剤耐性が充分に高く、破損しにくい凹凸構造体を提供する。
本発明の凹凸構造体(1)は、一方の主面(1a)に、複数の水滴状の凹部(10)が形成された膜状のフレーム部(20)からなり、上記フレーム部(20)は、空隙率が45%以下の多孔質セラミックス焼結体であり、上記フレーム部(20)の厚さ方向において、上記凹部(20)の最大深さ(D)の平均値は、上記フレーム部の厚さ(T)の0.01倍以上、1.0倍未満である。

図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7