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特許7501826体内の治療領域を他の領域から分離する装置および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】体内の治療領域を他の領域から分離する装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
A61B17/12
【請求項の数】 45
(21)【出願番号】P 2021507810
(86)(22)【出願日】2019-08-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 US2019046282
(87)【国際公開番号】W WO2020036919
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-08-05
(31)【優先権主張番号】62/718,567
(32)【優先日】2018-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503423661
【氏名又は名称】ユナイテッド ステイツ エンドスコピー グループ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】マルカヒー,トーマス アイ.
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06589264(US,B1)
【文献】特表2003-529384(JP,A)
【文献】特表2008-515464(JP,A)
【文献】特表2015-524306(JP,A)
【文献】特表2014-533981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/12
A61B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体の管腔内で使用して、前記管腔の近位領域を前記管腔の遠位領域から分離する装置であって、
近位端、遠位端、および前記体の外部から、前記近位領域と前記遠位領域との間にある前記管腔内の遮蔽位置に達する寸法にされた、長手方向軸線に沿った長さを有する細長い軸であって、
前記の細長い軸は、前記の細長い軸の前記長手方向軸線に沿って延びている供給管腔と吸引管腔とを備える、細長い軸と、
前記の細長い軸の遠位端にある遮蔽部材と、
前記遮蔽部材の外縁の周囲に延びている、拡張可能チャンバと、
前記供給管腔および前記拡張可能チャンバと流体連通する、前記の細長い軸の前記遠位端にある供給ラインと、
前記拡張可能チャンバの近位部の周囲に配置された吸引チャネルと、
前記吸引管腔および前記吸引チャネルと流体連通する、前記の細長い軸の前記遠位端にある吸引ラインとを備え
前記吸引管腔から前記吸引ラインを通じて印加された真空圧によって、前記吸引チャネルに沿った吸引が生成される、装置。
【請求項2】
前記供給管腔から前記供給ラインを通って搬送される流体が、前記拡張可能チャンバを膨張させる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記流体が、空気、酸素、窒素、および二酸化炭素から選択された気体である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記遮蔽部材が、送達構成と展開構成とを有する、請求項1~のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記装置が、前記の細長い軸をこれに沿って摺動自在に受けるように構成された管腔を有する、細長い送達シースを備える、請求項1~のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記遮蔽部材が、前記展開構成から前記送達構成に移行可能な、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記拡張可能チャンバが前記管腔の周壁と係合するように拡張するのにつれて、前記遮蔽部材が前記送達構成から前記展開構成に移行するように構成される、請求項4又は6に記載の装置。
【請求項8】
前記遮蔽部材が前記展開構成になっているときは、前記吸引チャネルが、前記管腔の前記周壁に対して前記装置を封止係合させるように構成される、請求項に記載の装置。
【請求項9】
前記管腔が消化(GI)管である、請求項1~のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記遮蔽位置が、胃食道接合部の遠位に配置されている、請求項1~のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記近位領域が食道であり、前記遠位領域が胃である、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記遮蔽位置が、胃の基底領域に配置され、前記吸引チャネルが、前記基底領域で前記
装置を封止係合させるように構成される、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記遮蔽位置が、幽門の遠位に配置され、前記近位領域が胃であり、前記遠位領域が十二指腸である、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記管腔が肺の気道であり、前記近位領域が前記管腔の下位気道であり、前記遠位領域が前記管腔の上位気道であり、前記遮蔽位置が前記近位領域と前記遠位領域との間に配置される、請求項1~のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記拡張可能チャンバが、0.5psi~5psiの範囲の圧力まで膨張可能な、請求項1~14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記吸引チャネルが、380トル~1トルの範囲で印加される真空圧で動作可能な、請求項1~15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記遮蔽部材が、適合性材料(compliant material)を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記適合性材料が、プラスチック、ウレタン、ポリマー、および金属箔からなるグループから選択される、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記長さが20cm~120cmの範囲である、請求項1~18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記遮蔽部材が、前記送達構成では前記シース内で拘束可能な、請求項に記載の装置。
【請求項21】
前記供給ラインが、前記遮蔽部材の近位表面に沿って延びている、請求項1~20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
前記供給ラインが、前記遮蔽部材の近位表面と遠位表面との間に形成された内部間隙空間である、請求項1~20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記吸引チャネル、前記吸引ライン、および前記吸引管腔と流体連通する、前記吸引チャネルの近位部にある少なくとも1つの開口をさらに有する、請求項1~22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記少なくとも1つの開口が、前記吸引チャネルの近位の外部空間と流体連通する、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記吸引チャネルが、環状で表面が凸形の近位壁を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
前記供給管腔および吸引管腔が、前記供給管腔が前記吸引管腔内にある状態で、前記の細長い軸に沿って同軸に延びている、請求項1~25のいずれか一項に記載の装置。
【請求項27】
前記装置が、前記供給管腔または供給ラインのいずれかに沿って、解放可能な逆止弁を備える、請求項1~26のいずれか一項に記載の装置。
【請求項28】
前記供給管腔および前記吸引管腔が、前記の細長い軸に沿って、互いに平行に、かつ接触して延びている、請求項1~27のいずれか一項に記載の装置。
【請求項29】
前記遮蔽部材が、前記遮蔽部材の中心近くで遠位方向に付勢され、かつ前記外縁の近くで近位方向に付勢される、請求項1~28のいずれか一項に記載の装置。
【請求項30】
前記遮蔽部材が、前記中心から前記外縁にかけて凹状の外形を有する、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記拡張可能チャンバが、ドーナツ型のバルーンである、請求項1~30のいずれか一項に記載の装置。
【請求項32】
前記吸引チャネルの遠位表面の一部が、前記拡張可能チャンバの前記近位部の一部を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の装置。
【請求項33】
患者の体の管腔内で使用して、前記管腔の近位領域を前記管腔の遠位領域から分離する装置であって、
近位端、遠位端、および前記体の外部から、前記近位領域と前記遠位領域との間にある前記管腔内の遮蔽位置に達する寸法にされた、長手方向軸線に沿った長さを有する、細長い軸と、
前記細長い軸の前記遠位端に配置された、自己拡張遮蔽部材と、
前記自己拡張遮蔽部材の外縁の周囲に延びる、拡張可能チャンバと、
前記自己拡張遮蔽部材の近位部の周囲に配置された、吸引チャネルと、
前記吸引チャネルの周囲で、前記吸引チャネルの近位壁上で離間された複数の開口であって、前記開口は前記吸引チャネルと流体連通する、複数の開口と、
前記吸引チャネルと流体連通する、吸引ラインと、
前記細長い軸内にあって前記吸引ラインと流体連通する、吸引管腔とを備え、
前記吸引管腔から前記吸引ラインを通じて印加された真空圧によって、前記吸引チャネルに沿った吸引が生成される、
装置。
【請求項34】
前記自己拡張遮蔽部材が展開構成になっているときは、前記吸引チャネルが、前記管腔の周壁に対して前記装置を封止係合させるように構成される、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記遮蔽位置が、胃の基底領域に配置され、前記吸引チャネルが、前記装置を前記基底領域で封止係合させるように構成される、請求項33又は34に記載の装置。
【請求項36】
前記自己拡張遮蔽部材が、ガータばねを含む、請求項33~35のいずれか一項に記載の装置。
【請求項37】
前記自己拡張遮蔽部材が、円形であり、ほぼ平坦であり、かつ柔軟な、請求項33~36のいずれか一項に記載の装置。
【請求項38】
前記自己拡張遮蔽部材が、送達構成と展開構成とを有する、請求項33~37のいずれか一項に記載の装置。
【請求項39】
前記自己拡張遮蔽部材が、拡張可能チャンバとともに、前記送達構成から前記展開構成に移行するように構成され、前記拡張可能チャンバが、前記管腔の周壁と係合するように拡張可能であり、前記拡張可能チャンバが、前記自己拡張遮蔽部材の外縁の周囲に延びている、請求項38に記載の装置。
【請求項40】
前記装置が送達シースをさらに備え、前記自己拡張遮蔽部材が前記送達シース内で拘束を解除されたときに、前記送達構成から前記展開構成に移行するように構成される、請求項38または39に記載の装置。
【請求項41】
前記管腔がGI管である、請求項33~40のいずれか一項に記載の装置。
【請求項42】
前記遮蔽位置が、胃食道接合部の遠位に配置されている、請求項33~41のいずれか一項に記載の装置。
【請求項43】
前記近位領域が食道であり、前記遠位領域が前記胃である、請求項35に記載の装置。
【請求項44】
前記円形の自己拡張遮蔽部材が、中心と縁部とを有し、前記中心近くで遠位方向に付勢され、かつ前記縁部近くで近位方向に付勢される、請求項37に記載の装置。
【請求項45】
前記拡張可能チャンバと流体連通する、供給ラインと、
前記供給ラインと流体連通する前記細長い軸に沿って延びる、供給管腔とをさらに備える、請求項33~44のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条の下で、2018年8月14日に出願された米国仮出願特許第62/718,567号に対する優先権の利益を主張し、この特許は、参照することによってその全体があらゆる目的で本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は一般に医療機器の分野に関し、かつ消化管内の治療領域を消化管の他の領域から分離するなど、体内の治療領域を他の領域から分離する手順に関する。特に、本開示は、上部消化管、食道、胃食道接合部、および/または胃内で治療を行うための装置および方法に関し、治療中に導入された流体が領域間で実質的に連通しないように、消化管の近位領域を消化管の遠位領域から分離するために遮蔽部材を使用する。
【背景技術】
【0003】
血管系その他の人体の管腔、例えば、上部消化管、食道、胃食道接合部、胃、下部消化管、小腸、大腸、気道、気管、および気管支内でのさまざまな医療において、適用された処置が治療領域のみに届くように、さらには凍結療法用の凍結ガスなどの治療の副産物が、人体の望ましくない領域に流れ出ないよう保持し得るように、治療領域を分離することが望ましい場合がある。
【0004】
例として、凍結療法において、凍結アブレーションは、疾患のある、損傷した、あるいは望ましくない組織(本明細書では総称して「対象組織」および/または「治療領域」と呼ぶ)が、凍結剤スプレーを局所的に送達することによって破壊され得る外科治療である。他の凍結療法システムと併せたこのようなシステムは、通常は凍結アブレーションシステム、凍結剤スプレーシステム、凍結剤スプレーアブレーションシステム、凍結手術システム、凍結手術スプレーシステム、および/または凍結剤スプレーアブレーションシステムと呼ばれる。通常用いられる「凍結剤」は、凍結外科手術中に治療効果を高めるために使用される、沸点が充分に低い(すなわち約-153℃未満の)任意の流体(例えば、ガス、液化ガス、その他当業者に知られている流体)を指す。適した凍結剤は、例えば、液体アルゴン、液体窒素、および液体ヘリウムを含んでもよい。-153℃を上回りながらもまだ非常に低い沸騰温度を有する(例えば、液体NOでは-89℃)、液体二酸化炭素および液体亜酸化窒素などの疑似凍結剤が使用されてもよい。
【0005】
凍結剤スプレーアブレーションシステムでの手術中に、医療専門家(例えば、臨床医、技術者、医師、外科医)は、凍結剤送達カテーテルを通して凍結剤スプレーを治療領域の表面に向ける。医療専門家は、気管支鏡、内視鏡、結腸鏡、または尿管鏡などのビデオ補助装置またはスコープを介して、視覚的に凍結剤スプレーの的を絞ってもよい。凍結剤スプレーは、0℃~-196℃の範囲の温度で凍結剤送達カテーテルから出て、対象組織を凍らせる、または「凍結(cryofrost)」させる。液体凍結剤は、凍結剤送達カテーテルから出て対象物に衝突すると気体の状態に変換され、体積が著しく増加する。例えば、1立法センチメートル(cm)の液体窒素は、体温で694cmの窒素ガスに変換される。患者から適切に分離および/または通気されず、治療部位からさらに体内に進入することを許した場合、このような拡張するガスは不当な膨張を引き起こす場合があり、肺の気胸、および上部または下部消化(GI)管の穿孔などを含む、致命的な結果になり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、ガスが蓄積したり、治療領域を超えて遠位に進入したりするのを防止または有意に抑制するために食道および胃食道接合部を胃から分離するなど、人体内の治療領域を他の領域から分離する、本明細書で開示するような装置および方法によって、さまざまな利点が実現され得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
さまざまな実施形態における本開示は、人体内の治療領域を他の領域から分離するための、軸の端部にある遮蔽部材を備える。遮蔽部材は、治療中に導入された流体が領域間で実質的に連通しないように、消化管の近位領域を消化管の遠位領域から分離し得る。医療機器および手順は、別の領域を破壊することなく領域を治療し得る。
【0008】
一態様において、管腔の近位領域を管腔の遠位領域から分離するために患者の体内の管腔内で使用する装置は、近位端と、遠位端と、人体の外部から、近位領域と遠位領域との間にある管腔内の遮蔽位置に達する寸法にされた、長手方向軸線に沿った長さとを有する、細長い軸を備えてもよい。軸は、軸の長手方向軸線に沿って延びている供給管腔と吸引管腔とを備えてもよい。遮蔽部材は、軸の遠位端にあってもよい。拡張可能チャンバは、遮蔽部材の外縁の周囲に延びていてもよい。供給ラインは軸の遠位端にあってもよく、供給管腔および拡張可能チャンバと流体連通する。吸引チャネルが、拡張可能チャンバの近位部の周囲に配置されてもよい。吸引ラインは軸の遠位端にあってもよく、吸引管腔および吸引チャネルと流体連通する。供給管腔から供給ラインを通って搬送される流体が、拡張可能チャンバを膨張させてもよい。流体は、空気、酸素、窒素、および二酸化炭素から選択された気体であってもよい。吸引管腔から吸引ラインを通じて、吸引チャネルに沿った吸引を生成する真空圧が印加されてもよい。遮蔽部材は、送達構成と展開構成とを有してもよい。装置は、軸をこれに沿って摺動自在に受けるように構成された管腔を有する、細長い送達シースを備えてもよい。遮蔽部材は、展開構成から送達構成に移行可能であってもよい。遮蔽部材は、拡張可能チャンバが管腔の周壁と係合するように拡張されるのにつれて、送達構成から展開構成に移行するように構成されてもよい。遮蔽部材が展開構成になっているときは、吸引チャネルが、管腔の周壁に対して装置を封止係合させるように構成されてもよい。管腔は、消化(GI)管であってもよい。遮蔽位置は、胃食道接合部の遠位に配置されてもよい。近位領域は食道であってもよく、遠位領域は胃であってもよい。遮蔽位置は、胃の基底領域に配置されてもよい。吸引チャネルは、装置を基底領域で封止係合させるように構成されてもよい。遮蔽位置は幽門の遠位に配置されてもよく、この場合は近位領域が胃であり、遠位領域が十二指腸であってもよい。管腔は肺の気道であってもよく、この場合は近位領域が管腔の下位気道であり、遠位領域が管腔の上位気道であってもよい。遮蔽位置は、近位領域と遠位領域との間に配置されてもよい。拡張可能チャンバは、約0.5psi~約5psiの範囲の圧力まで膨張可能であってもよい。吸引チャネルは、約380トル~約1トルの範囲内で印加される真空圧で動作可能であってもよい。遮蔽部材は、適合性材料(compliant material)を含んでもよい。適合性材料は、プラスチック、ウレタン、ポリマー、および金属箔からなるグループから選択されてもよい。細長い軸の長さは、約20cm~約120cmの範囲内であってもよい。遮蔽部材は、送達構成ではシース内で拘束可能であってもよい。供給ラインは、遮蔽部材の近位表面に沿って延びていてもよい。供給ラインは、遮蔽部材の近位表面と遠位表面との間に形成された内部間隙空間であってもよい。吸引チャネルの近位部にある少なくとも1つの開口が、吸引チャネル、吸引ライン、および吸引管腔と流体連通してもよい。少なくとも1つの開口が、吸引チャネルの近位の外部空間と流体連通してもよい。吸引チャネルは、環状で表面が凸形の近位壁を備えてもよい。供給管腔および吸引管腔は、供給管腔が吸引管腔内にある状態で、軸に沿って同軸に延びていてもよい。装置は、供給管腔または供給ラインのいずれかに沿って、解放可能な逆止弁を備えてもよい。供給管腔および吸引管腔は、軸に沿って互いに平行に、かつ接触して延びていてもよい。遮蔽部材は、遮蔽部の中心近くで遠位方向に付勢され、かつ外縁の近くで近位方向に付勢されてもよい。遮蔽部材は、中心から外縁までの外形が凹状であってもよい。拡張可能チャンバは、ドーナツ型のバルーンであってもよい。吸引チャネルの遠位表面の一部が、拡張可能チャンバの近位部の一部を含んでもよい。
【0009】
別の態様において、管腔の近位領域を管腔の遠位領域から分離するために患者の体内の管腔内で使用する装置は、近位端と、遠位端と、人体の外部から、近位領域と遠位領域との間にある管腔内の遮蔽位置に達する寸法にされた、長手方向軸線に沿った長さとを有する、細長い軸を備えてもよい。自己拡張遮蔽部材が、細長い軸の遠位端に配置されてもよい。吸引チャネルが、自己拡張遮蔽部の近位部の周囲に配置されてもよい。吸引チャネルの周囲にある、吸引チャネルの近位壁上で、複数の開口が離間されてもよい。開口は、吸引チャネルと流体連通してもよい。吸引ラインは、吸引チャネルと流体連通してもよい。吸引管腔は、細長い軸内にあってもよく、かつ吸引ラインと流体連通してもよい。自己拡張遮蔽部材が展開構成になっているときは、吸引チャネルが、管腔の周壁に対して装置を封止係合させるように構成されてもよい。吸引チャネルに沿った吸引を生成するために、吸引管腔から吸引ラインを通じて、真空圧が印加されてもよい。遮蔽位置は、胃の基底領域に配置されてもよい。吸引チャネルは、装置を基底領域で封止係合させるように構成されてもよい。自己拡張遮蔽部材は、ガータばねを備えてもよい。自己拡張遮蔽部材は、円形で、ほぼ平坦で、かつ柔軟であってもよい。自己拡張遮蔽部材は、送達構成と展開構成とを有してもよい。自己拡張遮蔽部材は、拡張可能チャンバとともに、送達構成から展開構成に移行するように構成されてもよく、チャンバは、管腔の周壁と係合するように拡張可能である。拡張可能チャンバは、自己拡張遮蔽部材の外縁の周囲に延びていてもよい。装置は、送達シースを備えてもよい。自己拡張遮蔽部材は、シース内で拘束を解除されたときに、送達構成から展開構成に移行するように構成されてもよい。管腔は、GI管であってもよい。遮蔽位置は、胃食道接合部の遠位に配置されてもよい。近位領域は食道であってもよく、遠位領域は胃であってもよい。円形の自己拡張遮蔽部材は、中心と縁部とを有してもよく、中心近くで遠位方向に付勢され、縁部近くで近位方向に付勢されてもよい。拡張可能チャンバは、自己拡張遮蔽部材の外縁の周囲に延びていてもよい。供給ラインは、拡張可能チャンバと流体連通してもよい。供給管腔は、細長い軸に沿って延び、供給ラインと流体連通してもよい。
【0010】
別の態様において、患者の体内で、管腔の近位領域を管腔の遠位領域から分離する方法は、患者の体内に、管腔の近位領域と遠位領域との間の遮蔽位置まで細長い軸を挿入するステップを含んでもよい。軸は、近位端と、軸の遠位端にある遮蔽部材まで長手方向軸線に沿って延びる長さとを有してもよい。遮蔽部材は、送達構成と展開構成とを有してもよい。遮蔽部材は、送達構成から展開構成に移行してもよい。遮蔽部材の外縁を管腔の周壁と係合させてもよく、その結果、遮蔽部材は、遮蔽位置で遠位領域を近位領域から分離し得る。遮蔽部材の縁部で拡張可能チャンバに流体を供給してチャンバを膨張させ、遮蔽部材を展開してもよい。遮蔽位置において、管腔内で遮蔽部材を封止係合させるために、遮蔽部材の近位縁部に配置された吸引チャネル内で負圧を生成してもよい。近位領域で管腔の壁に凍結流体を適用してもよい。凍結流体は、凍結ガスであってもよい。ガスは遮蔽部材を用いて遠位領域から分離されてもよく、ガスは近位領域から患者の体外へ排気されてもよい。近位領域は、食道であってもよい。遠位領域は、胃であってもよい。遮蔽位置は、胃食道接合部の出口における、胃の内面であってもよい。供給管腔は軸内にあって、供給ラインと流体連通してもよい。遮蔽部材の外縁の周囲に延びている拡張可能チャンバを膨張させるために、供給管腔から供給ラインを通って膨張流体が搬送されてもよい。膨張流体は、空気、酸素、窒素、および二酸化炭素から選択された気体であってもよい。遮蔽部材は、チャンバが管腔の周壁と係合するように拡張されるのにつれて、送達構成から展開構成に移行してもよい。遮蔽部材が展開構成になっているときは、装置が周壁に対して封止係合され得る。管腔は、GI管であってもよい。遮蔽位置は、胃食道接合部の遠位に配置されてもよい。近位領域は、食道であってもよい。遠位領域は、胃であってもよい。遮蔽位置は、胃の基底領域に配置されてもよい。遮蔽部材は、基底領域内で、管腔の周壁と封止係合してもよい。遮蔽位置は、幽門の遠位に配置されてもよい。近位領域が、胃であってもよい。遠位領域が、十二指腸であってもよい。管腔が、肺の気道であってもよい。近位領域が、管腔の下位気道であってもよい。遠位領域が、管腔の上位気道であってもよい。遮蔽位置は、近位領域と遠位領域との間に配置されてもよい。
【0011】
本開示の限定的でない実施形態が、添付の図面を参照しながら例として説明されるが、これらは図式的であって、正確な縮尺率であることは意図されていない。図において、図示されている同一またはほぼ同一の各構成要素は、通常は1つの符号で表されている。明確にするために、当業者が本開示を理解するために必ずしも図示が必要でない箇所では、図面ごとにすべての構成要素が標識されることはなく、各実施形態のすべての構成要素が図示されることもない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施形態による、上部消化管の所定の位置にある装置を示す。
図2A】本開示の実施形態による、展開構成になっている装置の等角図を示す。
図2B】本開示の実施形態による、図2Aの装置の断面側面図を示す。
図3A】本開示の実施形態による、上部消化管内の送達カテーテルおよび装置を示す。
図3B】本開示の実施形態による、胃に送達されている図3Aの装置を示す。
図3C】本開示の実施形態による、上部消化管の所定の位置にある、プローブと図3Aおよび図3Bの装置とを備える、システムの断面図を示す。
図3D】本開示の実施形態による、胃から除去されている図3A図3Cの装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、説明されている特定の実施形態に限定されない。本明細書で使用されている用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものであり、添付の特許請求の範囲を超えて制限することは意図されていない。特に定義されない限り、本明細書で使用される技術用語はすべて、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。
【0014】
本開示の実施形態は、上部および下部消化管および呼吸器系で使用する凍結療法システムを特に参照して説明されているが、脈管系、泌尿器系、リンパ系、神経系などのさまざまな他の身体通路、臓器、および/または空洞で、さまざまなシステムおよび方法が使用されてもよい。本開示のさまざまな実施形態は必ずしも凍結療法手順に限定されるものではなく、管腔の近位領域を管腔の遠位領域から分離するために遮蔽部材を使用することが望ましい、他の医療処置に使用されてもよい。
【0015】
本明細書で使用されているように、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈上そうでないことが明確に示されていない限り、複数形も含むことが意図されている。「comprises」、および/または「comprising」、あるいは「includes」および/または「including」という用語は、本明細書で使用されるときは、規定された特徴、領域、ステップ要素、および/または構成要素があることを示しているが、他の特徴、領域、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそのグループのうちの1つ以上の存在、あるいはこれらの追加を妨げるものではないことがさらに理解されよう。
【0016】
本明細書で使用される接続詞「and」は、文脈上そうでないことが明確に示されない限り、そのように結合された構造、構成要素、特徴などのそれぞれを含み、接続詞「or」は、文脈上そうでないことが明確に示されない限り、単一で、かつ任意の組み合わせおよび数で、そのように結合された構造、構成要素、特徴などの1つまたは他方を含む。
【0017】
本明細書で使用される「遠位」という用語は、装置を患者の体内に導入しているときに、医療専門家から最も遠く離れている端部を指し、「近位」という用語は、装置を患者の体内に導入しているときに、医療専門家に最も近い端部を指す。
【0018】
本明細書で使用される「拡張可能な」という用語は、「畳まれた」、「未拡張の」、または「しぼんだ」構成から、「拡張した」または「膨張した」構成まで自己拡張する、または直径を拡張させられる能力を指す。本明細書で使用される「直径」とは2点間に延びる直線の距離を指し、必ずしも特定の形状を示すものではない。
【0019】
本明細書で使用される「受動通気」という用語は、体管腔内から外部位置への、体管腔および自然開口を通じた、あるいは前記と同じ場所を通過する通気チューブを通じた、補助されないガスの通気を指す。本明細書で使用される「能動通気」という用語は、(例えば、通気チューブを通じた、内視鏡作業チャネルを通じた、または凍結剤送達カテーテルその他のカテーテルの作業チャネルを通じた)体管腔内から外部位置への、(例えば、吸引源を介した)機械的に補助されたガスの通気を指す。
【0020】
本開示は一般に医療機器に関し、かつ消化管内の治療領域を消化管の他の領域から分離するなど、体内の治療領域を他の領域から分離する手順に関する。特に、本開示は、上部消化管、食道、胃食道接合部、および/または胃内で治療を行うための装置および方法に関し、治療中に導入された流体が領域間で実質的に連通しないように、消化管の近位領域を消化管の遠位領域から分離するために遮蔽部材を使用する。
【0021】
例えば、凍結療法システムに使用する装置および方法は、これに限定されないが、体管腔内で、凍結剤スプレーガス(以下「凍結剤スプレー」と呼ぶ)を含む材料および/または物質が蓄積したり遠位に進入したりするのを防止または有意に抑制するために、遮蔽位置に位置するように構成された遮蔽部材を有する、遮蔽装置を含んでもよい。本開示が実施され得る例示的な凍結療法システムは、これに限定されないが、同一出願人が所有する米国特許第9,820,797号明細書、米国特許第9,301,796号明細書、および米国特許第9,144,449号明細書、ならびに米国特許出願第11/956,890号明細書、米国特許出願第12/022,013号明細書、米国特許出願第14/012,320号明細書、および米国特許出願第14/869,814号明細書に記載されるシステムを含み、これらはそれぞれ、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0022】
凍結療法中は、例えばスプレー凍結療法中に、液体凍結剤が人体内に噴霧されると、凍結剤が著しい量のガスを生成しながら相が変化するが、このガスは、気腹または穿孔などの合併症を避けるために患者から安全に排気されねばならない。これは、凍結ガスを閉じ込めやすい領域、例えば胃から流体を抜くために、導管を挿入して、導管に負圧を印加することによって達成してもよい。あるいは、拡張する凍結ガスが遠位に進入するのを防止するために、食道下部の領域を分離するかまたは胃の容積の一部を置き換えるように遠位遮断バルーンを送達することによって、吸引導管の必要性を補完または排除してもよい。
【0023】
本開示のさまざまな実施形態において、遠位領域内でのガスの不必要な置換を防止または有意に抑制するために、消化管内などで、患者の体内の管腔の近位領域は、遠位領域から分離されてもよい。このような実施形態は、半径方向の力ではなく吸引を用いて遠位領域を分離してもよく、これによって、管腔が引き延ばされたり断裂したりする危険性を最小化し、より効果的な封止を提供し得る。また、このような実施形態により、所望の遮蔽位置に応じて、食道管腔全体、胃食道接合部、そしておそらくは胃の近位部へのアクセスが良好になり得る。
【0024】
さまざまな実施形態において、遮蔽位置に配置された遮蔽部材を有する装置は、患者の体の管腔の近位領域を遠位領域から分離し得る。遮蔽位置は、例えば、胃食道接合部(GEJ)の遠位に配置されてもよい。近位領域は食道であってもよく、遠位領域は胃であってもよい。あるいは、食道およびGEJへのアクセスを向上できるように、遮蔽位置は胃の基底領域に配置されてもよく、その一方で、装置の吸引チャネルは、GI管(胃の残部を含む)の管腔の遠位領域を分離するために、基底領域内の装置を封止係合するように構成されてもよい。遮蔽位置は幽門の遠位にあってもよく、治療する近位領域が胃であってもよく、分離される遠位領域が十二指腸であってもよい。別の例として、管腔は肺の気道であってもよく、近位領域は管腔の下位気道であってもよく、遠位領域は管腔の上位気道であってもよく、装置の遮蔽位置は近位治療領域と、分離された遠位領域との間の場所にあってもよい。
【0025】
図1を参照すると、管腔(GI管)の近位領域を管腔の遠位領域から分離するために、患者の体の管腔内で使用する装置の実施形態が示されている。図1の装置は、装置100の遮蔽部材を展開するための遮蔽位置まで食道に挿入するためのシース内に、装置の軸および遮蔽部材を含む、シース130(例えば、送達装置またはカテーテル)を備える。シース130は、装置の細長い軸をこれに沿って摺動自在に受けるように構成された管腔を有する、細長い送達シースであってもよい。遮蔽部材は、送達構成では、シース130内で拘束可能であってもよい。装置100は図示されているように展開されてもよく、食道およびGEJ134を伴う管腔の近位領域で医療が可能になるように、胃の基底部において遮蔽位置で周壁と封止係合し、胃136の近位部に入る。装置100は、食道132と胃食道接合部134とを、遮蔽部材の近位にある管腔の領域として、胃136の残部の大部分、およびGI管の残りから分離していることが示されている。
【0026】
本開示の実施形態は、患者の体管腔の近位領域を、管腔内の遠位領域から分離し得る。近位領域と遠位領域との間の領域が遮蔽位置であってもよく、遮蔽部材を有する装置がそこに配置される。遮蔽位置に配置された装置を用いて、近位領域内で医療が行われてもよく、流体および/または材料は、遮蔽位置を超えて管腔内で遠位に移動しないように、装置の遮蔽部材によって実質的に分離されている。遮蔽位置は、管腔の周壁と係合している遮蔽部材によって維持され得る。遮蔽部材は、管腔の周壁と係合するように、拡張可能であってもよく、あるいは自己拡張する。遮蔽部材は、遮蔽部材の外縁の周囲に延びる拡張可能チャンバを介して、拡張して管腔と係合してもよい。遮蔽部材は、吸引管腔および吸引ラインから、拡張可能チャンバの近位部の周囲に配置され得る吸引チャネルにかけて印加される吸引によって、管腔の壁に対して係合してもよい。あるいは、遮蔽部材が展開され、拡張可能チャンバを用いて吸引は用いずに管腔壁と係合してもよい。拡張可能部材と管腔の壁との間の接触は、遮蔽部材とシースとの間に接続されたばね装置を用いて機械的に達成されてもよい。ばねは、拡張可能部材が管腔の壁と係合し得るように、遮蔽部材を近位にかつ/または半径方向に引っ張ってもよい。あるいは、遮蔽部材にラインが接続されて、患者の体外に延びていてもよく、その結果、使用者は遮蔽部材に張力を与えるようにラインを制御でき、管腔の壁に対して拡張可能部材を封止係合する。
【0027】
図2Aを参照すると、本開示の実施形態は、近位端と、遠位端と、人体の外部から遮蔽位置に達する寸法にされた、長手方向軸線に沿った長さとを有する細長い軸202を伴う、遮蔽装置を備える。軸202は、軸202の長手方向軸線に沿って延びている供給管腔210と吸引管腔214とを有し、細長い軸202の遠位端には遮蔽部材204がある。図2Aおよび図2Bに示す遮蔽部材204は、展開構成になっている。拡張可能チャンバ206は、遮蔽部材204の外縁の周囲に延びている。拡張可能チャンバ206は、遮蔽部材204の周囲で、ドーナツ型の形状になっている。軸202の遠位端にある供給ライン208は、拡張可能チャンバ206と流体連通する。拡張可能チャンバ206は、遮蔽部材204の近位部に配置される。供給ライン208は、細長い軸202内で供給管腔210と流体連通する。拡張可能チャンバ206を拡張するために、供給管腔210には、供給ライン208に流れ込んで拡張可能チャンバ206に入る流体が供給される。
【0028】
図2Aおよび図2Bをさらに参照すると、装置は、吸引チャネル222を備える。吸引チャネル222は、拡張可能チャンバ206の近位部の周囲に配置される。吸引チャネル222は、細長い軸202の長手方向軸線に向かって、近位チャネル壁220によって近位方向に、拡張可能チャンバ206の近位表面214によって遠位方向に、半径方向チャネル壁216によって半径方向に仕切られている。半径方向チャネル壁216は、近位チャネル壁220と、拡張可能チャンバ206の近位表面214とに結合される。吸引ライン212は、吸引チャネル222と流体連通する。吸引ライン212は、軸202の遠位端にあり、細長い軸202内で吸引管腔214と流体連通する。一連の開口218は、環状の吸引チャネル222の周囲の近位チャネル壁220で離間され、吸引チャネル222と流体連通し、かつ近位チャネル壁220の近位の外部空間と流体連通する。開口218は、吸引ライン212および吸引管腔214とも流体連通する。吸引チャネル222内で真空を生成して、近位チャネル壁220の近位表面に沿った吸引力を生成するために、吸引管腔214に真空供給源(図示せず)が接続される。真空供給源は、吸引管腔に真空(負)圧を印加し、次に、吸引ライン212および吸引チャネル222内に吸引を生成する。
【0029】
図3A図3Dを参照すると、シース330を通して食道332に挿入された装置の実施形態が示されている。シース330は、本開示の装置300に装填される。シース300は対象領域338の遠位にあり、装置300は、シース300から遠位に展開される。図3Aでは、装置300の遮蔽部材304は送達構成になっており、遮蔽部材304の遠位表面の中心が食道332内で露出している。
【0030】
図3Bおよび図3Cを参照すると、装置300はシース330から延びて食道332に入り、胃食道接合部334を遠位方向に通過して、胃336の近位部に入る。装置300、遮蔽部材304、および拡張可能チャンバ306は、すべて展開構成になっている。細長い軸302内の供給管腔310には、拡張可能チャンバ306を満たす流体が供給され、遮蔽部材304および拡張可能チャンバ306を展開して展開構成にする。
【0031】
図3Cを参照すると、展開構成の装置300と、食道332の近位治療領域内にある凍結剤スプレーカテーテル342とを含むシステムが図示されている。遮蔽部材304が、遮蔽部材304の近位の対象領域338と、遮蔽部材304の遠位の分離領域との間にくるように、装置は遮蔽位置にある。また、遮蔽部材304は、胃食道接合部334に対しても遠位にある。吸引チャネルの近位チャネル壁320の近位表面に沿って、開口318を介して吸引力を生成する目的で、吸引管腔314、吸引ライン312、および吸引チャネルを排気するために、細長い軸302内の吸引管腔314に吸引源が接続されてもよい。近位チャネル壁320の近位表面を胃336の基底領域に近接させると、吸引力が、拡張可能チャンバ306内に供給された流体の拡張力と組み合わさって、装置300を胃壁336に対して封止係合し、装置300が配置されている遮蔽位置で、遮蔽部材304の近位にある近位領域を、遮蔽部材304の遠位にある遠位領域から分離する。近位チャネル壁320の、近位側の凹形の形状内にある開口318が、吸引力向上を補助する。吸引チャネルは排気され、組織(例えば、胃上部336の基底領域内の管腔の壁)と接触して配置され、近位チャネル壁320の外側で装置300の周囲を封止する正圧差が生成される。装置300がこの位置にあると、食道332と、対象組織領域338と、食道接合部334と、胃336の上壁とは、胃残部340から分離された近位領域を含む。遮蔽部材304の近位の近位領域内にある対象領域338を治療するために、流体(例えば、凍結ガス)その他の粒子が、遮蔽部材304を遠位方向に通過して胃残部340に入らないように防止する、またはほぼ抑制しながら、食道332に医療器具342(例えば、凍結剤スプレープローブ)が挿入されてもよい。
【0032】
図3Dを参照すると、本開示の実施形態を使用した医療の後で、医療器具342は、食道332から抜かれて患者の体外に出る。患者から装置300を抜くために、管腔の周壁から遮蔽部材304の係合を解除できるように、かつ展開構成から送達構成になるように畳む、または畳まれるように、印加された吸引がすべて除去され、拡張可能チャンバ306の膨張がすべて除去される。送達構成または部分的な送達構成では、細長い軸302は近位に移行される。これにより遮蔽部材304の中心が近位に引っ張られる一方で、拡張可能チャンバ306および近位チャネル壁320は、胃食道接合部334に対する近位方向への移動に抵抗する。遮蔽部材304は、拡張可能チャンバ306に対して遠位にある状態から、拡張可能チャンバ306に対して近位にある状態へと反転する。細長い軸302に、さらに近位方向への力がかかると、おそらくは装置が展開構成から送達構成にさらに移行するのと組み合わさって、装置300は、胃食道接合部334を通過して、食道332の中へと近位方向に除去される。装置300は、遮蔽部材304が反転した状態になる一方で、近位方向に移動を続けてシース330の中へ入ってもよい。あるいは、拡張可能チャンバ306は、細長い軸302が近位方向へ移動する前に、さらに排気されてもよい。細長い軸302内の供給管腔に吸引源を接続することによって、拡張可能チャンバ306が排気されてもよく、その結果、装置300は、図3Aに示す送達構成に移行する。その後、胃食道接合部334を通過してシース330に入るように装置300を抜くために、細長い軸302は近位に移行してもよい。
【0033】
図3A図3Dをさらに参照すると、対象治療領域338は、食道332内にある必要はない。胃食道接合部334および胃上部もまた、この特定の遮蔽位置において、展開構成の装置を使用して胃残部340から分離されて、治療することができる。医療器具342(例えば、凍結剤スプレープローブ)は、胃食道接合部334および/または胃336を治療するために、胃食道接合部334を通過して遠位に延び、胃336の上部に入ってもよい。
【0034】
本明細書で説明されていてもいなくても、本開示の範囲内のさまざまな実施形態において、遮蔽部材は拡張可能な遮蔽部材であってもよい。遮蔽部材は、自己拡張してもよい。遮蔽部材は、チューブ、シース、カテーテル、または内視鏡に引き込まれる際に畳むことができる、ばね定数を有するフレームを含んでもよい。シースを通して送達される装置は、シース内で拘束を解除されたときに送達構成から展開構成に移行する、自己拡張遮蔽部材を有してもよい。その拡張および/または収縮を補助するために、遮蔽部材にガータばねが結合されてもよい。遮蔽部材は、その中心近くで遠位方向に付勢され、その外縁で近位方向に付勢され得る、薄い隔膜であってもよい。遮蔽部材は、ほぼ円形で、ほぼ平坦で、かつ/または柔軟であってもよい。遮蔽部材は、中心から外縁までの外形が凹状であってもよい。遮蔽部材は、展開構成から送達構成に、またはその逆に移行可能であってもよい。遮蔽部材は、拡張可能チャンバが膨張される、あるいは管腔の周壁と係合するように拡張されるのにつれて、送達構成から展開構成に移行するように構成されてもよい。遮蔽部材は、薄い高分子膜であってもよい。遮蔽部材は、適合性材料、ポリマー、ウレタン、編組、メッシュ、フレーム、および/または金属箔を含んでもよい。被覆で遮蔽部材を部分的に、または完全に被覆してもよい。被覆は、遠位に進入しないように、流体をほぼ遮断するように構成されてもよい。被覆は、連続した流体遮蔽を形成するように、遮蔽部材の隙間をほぼ埋めてもよい。被覆は、遮蔽部材が送達構成と展開構成との間で移行するときは変形できるように、柔軟なエラストマー系被覆であってもよい。被覆は、拡張可能部材が展開構成になっている間に塗布されてもよく、その結果、遮蔽部材は、例えば、概して錐台形、漏斗形、凹形などの形状に形成される。被覆によって遮蔽部材の剛性が増す場合があり、その結果、被覆によって遮蔽部材の形状および半径方向の安定性が強化される。被覆は、ウレタン、熱可塑性樹脂成形体、熱可塑性ウレタン、熱硬化性ウレタン、ペバックス、熱可塑性エラストマーなどのさまざまな材料を含んでもよい。遮蔽部材は、拡張可能チャンバと流体連通する供給ラインを備える、遮蔽部材の近位表面と遠位表面との間に形成された内部間隙空間を有する、2つの層でできていてもよい。遮蔽部材、拡張可能チャンバ、近位チャネル壁、および/または半径方向チャネル壁にテザーラインが接続されてもよい。テザーは、装置を展開構成および送達構成に移行させるように操作されてもよい。また、テザーは、近位チャネル壁を操作して体管腔壁に近づけるのを補助し得る。
【0035】
さまざまな実施形態において、拡張可能チャンバは環状であってもよい。拡張可能チャンバの直径を変化させることによって、遮蔽部材の大きさと、分離できる領域の幅とを規定する。拡張可能チャンバの直径が大きいと、装置が係合し得る体管腔をより広げることが可能になる。いくつかの実施形態は、拡張可能チャンバを備えず、分離を遮蔽部材および/または吸引チャネルのみに依存してもよい。そのような遮蔽部材は、係合を維持するために、強いばね定数を有してもよい。拡張可能チャンバは、ガータばねなどの別の拡張機構に置き換えられてもよい。
【0036】
さまざまな実施形態において、近位チャネル壁は、さまざまな幾何学形状をとり得る。近位チャネル壁の近位表面は、近位方向に凹んでいてもよい。吸引チャネルの半径方向チャネル壁は、角度付けされてもよく、近位チャネルによって生成された封止、および/または装置と体管腔の壁との係合を強化し得る。
【0037】
さまざまな実施形態において、供給管腔と吸引管腔とは平行に延び、細長い軸に沿って互いに接触していてもよい。供給管腔および吸引管腔は、供給管腔が吸引管腔内にある状態で、軸に沿って同軸に延びていてもよい。供給管腔から供給ラインを通って搬送される流体が、拡張可能チャンバを膨張させてもよい。流体は、空気、酸素、窒素、および二酸化炭素から選択された気体であってもよい。吸引管腔から吸引ラインを通じて、吸引チャネルに沿った吸引を生成する真空圧が印加されてもよい。供給管腔または供給ラインのいずれかに沿って、解放可能な逆止弁が備えられてもよい。
【0038】
さまざまな実施形態において、装置はカテーテル、内視鏡、格納可能なシース、および/またはガイドワイヤによって送達されてもよい。装置は、挿入中に患者の体内でガイドワイヤが装置をガイドできるように、かつ遮蔽部材を展開できるように、遮蔽部材の中心で、または中心近くで開口と整列し、かつ遮蔽部材を通過して延びるガイドワイヤ管腔を有する、細長い軸を備えてもよい。軸の長さは、約20cm~約120cmであってもよい。
【0039】
さまざまな実施形態において、外部流体供給源と供給管腔との間に供給流体を流すことは、注射器などを使用して手動で、あるいは外部システムを使用して自動的に行われてもよい。注射器(または外部システム)は、凍結剤スプレーなどの流体が遠位方向に進入するのを防止または有意に抑制する目的で、拡張可能チャンバが過剰に拡張することなく、体管腔の対向壁に接触するように充分に膨張したこと、かつ/あるいは体管腔から安全に除去するために(または体管腔内で再位置決めするために)充分にしぼんだことを医療専門家が確認できるように構成された、圧力計を備えてもよい。例えば、自動的に動作する外部システムは、拡張可能チャンバが未拡張、あるいは拡張が不十分なために遮蔽部材が体管腔の組織壁と適切な接触を確立できない場合は、凍結剤の送達を防止するように構成された、圧力センサを備えてもよい。拡張可能チャンバは、約0.5psi~約5psiの範囲の圧力まで膨張可能であってもよい。全手順を通じて吸引封止が確実にしっかりと行われ、かつ望ましいレベルの吸引が維持されるように、同様の外部システムが、吸引チャネルの真空圧を監視してもよい。吸引チャネルは、約380トル~約1トルの範囲内で印加される真空圧で動作可能であってもよい。拡張可能チャンバおよび/または吸引チャネルは、凍結療法手順の全体を通じて、拡張可能チャンバの温度および/または圧力を監視できるように、1つ以上のセンサ(例えば、圧力センサ、温度センサ等)を備えてもよい。例えば、拡張可能チャンバの内面にある1つ以上の圧力センサによって、医療専門家が、所望のレベルの拡張(例えば、内圧)が達成されるまで、供給流体を導入または除去することが可能になる場合がある。これに加えて、またはこれに代えて、拡張可能チャンバの外面にある1つ以上の圧力センサによって、医療専門家が、拡張可能チャンバによって、体管腔の対向壁に加えられた圧力(例えば、外圧)を監視することが可能になる場合がある。医療専門家は、体管腔および患者に外傷を生じさせることなく、拡張可能チャンバと体管腔との望ましい接触を維持するために、必要に応じて拡張/未拡張の程度を調節(例えば、増加または低減)してもよい。1つの実施形態において、センサは、医療専門家が吸引チャネルおよび/または拡張可能チャンバを監視し得るように、圧力および/または温度の測定値を無線で送信するように構成されてもよい。例えば、凍結療法手順中に、拡張可能チャンバ内の圧力、または吸引チャネルの真空圧のレベルが、(例えば、供給流体の漏れ、または凍結剤スプレーに接近したための供給流体の凝結、または管腔壁に対する封止が不適当だったことなどが原因で)閾値レベルを下回っている場合、医療専門家は、凍結療法手順を停止し、拡張可能チャンバおよび/または吸引チャネルを再位置決めまたは再拡張してもよい。システムは、読み出した値が閾値レベルを下回る場合は、自動的に警告する、および/またはシステムを遮断する機能を備えてもよい。
【0040】
本明細書で説明した、または説明しなかったさまざまな実施形態において、装置を保護するために展開され、かつ体管腔内で/体管腔を通して送達することが容易になるまで、装置は折り畳まれる、ひだを付けられる、かつ/またはシースで覆われてもよい。X線透視撮像などの、患者の体内でX線不透過性材料を検知することが可能なシステムで遮蔽部材の位置を可視化できるように、装置内に、または装置上にX線不透過性材料が組み込まれてもよい。
【0041】
さまざまな実施形態において、患者の体内で、管腔の近位領域を管腔の遠位領域から分離する方法は、医療専門家が、患者の体内に、管腔の近位領域と遠位領域との間の遮蔽位置まで細長い軸を挿入するステップを含んでもよい。軸は、近位端と、軸の遠位端で遮蔽部材まで長手方向軸線に沿って延びる長さとを有してもよく、遮蔽部材は、送達構成と展開構成とを有する。医療専門家は、遮蔽部材を送達構成から展開構成に移行させてもよい。医療専門家は、遮蔽部材の外縁を管腔の周壁と係合させてもよく、その結果、遮蔽部材は、遮蔽位置で遠位領域を近位領域から分離する。医療専門家は、遮蔽位置において、管腔内で遮蔽部材を封止係合させるために、遮蔽部材の近位側で負圧を生成してもよい。医療専門家は、遮蔽部材の縁部で拡張可能チャンバに流体を供給してチャンバを膨張させ、遮蔽部材を展開して展開構成にしてもよい。医療専門家は、遮蔽位置において、管腔内で遮蔽部材を封止係合させるために、遮蔽部材の近位縁部に配置された吸引チャネル内で、負圧を生成してもよい。医療専門家は、近位領域で管腔の壁に凍結流体を適用してもよい。凍結流体は、凍結ガスであってもよい。医療専門家は、遮蔽部材を用いてガスを遠位領域から分離し、ガスを近位領域から患者の体外へ排気してもよい。
【0042】
本明細書で説明した実施形態はいずれも、内視鏡の作業チャネル、および/または凍結剤送達カテーテルの作業チャネルを通じた、治療領域の(すなわち拡張可能チャンバの近位の)受動通気または能動通気の恩恵をさらに受けてもよい。ガスの循環および流出を適切に維持するように体管腔を管理することによって、受動通気は、このような通気チューブおよび/または作業チャネルから独立して、いっそう容易になり得る。
【0043】
本明細書で開示され請求される装置および/または方法はすべて、本開示に照らして、不要な実験をすることなく作成し実行することができる。本開示の装置および方法は、好ましい実施形態の観点から説明されてきたが、本開示の概念、精神および範囲から逸脱することなく、装置および/または方法、ならびに本明細書で説明した方法のステップ、または一連のステップに、変形を適用できることが当業者には明らかであろう。当業者にとって明らかな、このような類似の代替物および変更はすべて、添付の特許請求の範囲で定義されている通り、本開示の精神、範囲、および概念の範囲内にあるものとする。

図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D