(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】マイクロ流体デバイスおよびシステム
(51)【国際特許分類】
B03B 5/00 20060101AFI20240611BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240611BHJP
C12M 1/26 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B03B5/00 Z
C12M1/00 A
C12M1/26
(21)【出願番号】P 2021531483
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(86)【国際出願番号】 GB2019053643
(87)【国際公開番号】W WO2020128497
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-12
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521235774
【氏名又は名称】ユーフラクチョン8 リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、ブライアン マックスデル
(72)【発明者】
【氏名】トメッカ、モニカ ヤゴダ
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/179064(WO,A1)
【文献】特開2008-137003(JP,A)
【文献】特表2018-528391(JP,A)
【文献】特表2016-511647(JP,A)
【文献】SIDDHARTHA TRIPATHI; ET AL,MICRODEVICE FOR PLASMA SEPARATION FROM WHOLE HUMAN BLOOD USING BIO-PHYSICAL AND GEOMETRICAL EFFECTS,SCIENTIFIC REPORTS,2016年06月09日,VOL:6, NR:1,PAGE(S):26749(1-15),http://dx.doi.org/10.1038/srep26749
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03B 5/00-5/74
B01J 19/00
C12M 1/00
C12M 1/26
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた閾値を上回る主要寸法を有する粒子を液体から分離するマイクロ流体デバイスであって、前記マイクロ流体デバイスは、入口、入口チャネル、曲線チャネル、分離室、第1出口及び第2出口を備え、
前記入口は前記入口チャネルに接続され、前記入口チャネルは前記曲線チャネルに接続され、前記曲線チャネルは前記分離室に接続され、前記分離室は第1出口チャネルによって前記第1出口に接続され、前記分離室は第2出口チャネルによって前記第2出口に接続されており、
前記第1出口チャネルは正弦波状/蛇行状部分を含み、前記第2出口チャネルは、前記第1出口チャネルに対して実質的に垂直に前記分離室から分岐しており、前記曲線チャネルは150から270度の曲率角度を有しており、
前記入口チャネル、前記曲線チャネル、前記分離室、前記第1出口チャネル、及び前記第2出口チャネルのそれぞれのアスペクト比は、前記入口チャネル、前記曲線チャネル、前記分離室、前記第1出口チャネル、及び前記第2出口チャネルのそれぞれの幅をそれぞれの深さで除算した値であり、
前記入口チャネル、前記曲線チャネル、前記分離室、前記第1出口チャネル、及び前記第2出口チャネルは、同じ前記深さ又は実質的に同じ前記深さを有し、前記入口チャネルの幅は、前記曲線チャネルの幅より1.5倍から3倍大きく、
前記入口チャネルの
前記アスペクト比は10から20であり、前記曲線チャネルの
前記アスペクト比は5から10であり、
前記分離室に隣接する前記第1出口チャネルの
最初の前記アスペクト比は1.5から6であり、
前記分離室に隣接する前記第2出口チャネルの
前記アスペクト比は15から25であり、その結果、使用中に、
液体は前記入口から前記第1出口及び前記第2出口へと、前記入口チャネル、前記曲線チャネル、前記分離室、前記第1出口チャネル、及び前記第2出口チャネルのそれぞれを介して流れ、前記入口における前記液体内の、前記予め定められた閾値を上回る主要寸法を有する粒子は前記第2出口に実質的に集束され、前記第1出口で収集された前記液体は、前記予め定められた閾値を上回る主要寸法を有する粒子を実質的に有しない、マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
前記第1出口チャネルは、前記第1出口チャネルにおける液体の流路方向において前記分離室側から前記第1出口側にかけて前記アスペクト比が増加するフレア部を含む、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項3】
前記第1出口チャネルの前記最初の前記アスペクト比は、前記第1出口チャネルと前記分離室との接合部におけるアスペクト比である、請求項1または2に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
前記予め定められた閾値は、0.01μmから500μmである、請求項1
から3のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
前記第2出口チャネルの
前記幅又は
前記アスペクト比は、前記第1出口チャネルの
前記幅又は
前記アスペクト比の少なくとも3倍である、請求項1から
4のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項6】
前記第2出口チャネルは、屈曲部分又は湾曲部分を含む、請求項1から
5のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項7】
前記マイクロ流体デバイスの前記入口チャネル、前記曲線チャネル、前記第1出口チャネル、及び前記第2出口チャネルの前記深さは、20μmから3000μmである、請求項
1から6
のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス
を複数備える、液体からの粒子の集団を除去するシステムであって、第1デバイスの前記第1出口は、後続の第2デバイスの前記入口と流体連通しており、前記第1デバイスの前記入口チャネル、前記曲線チャネル、前記第1出口チャネル、及び前記第2出口チャネルは、第1直径範囲の粒子を前記第1デバイスの前記第2出口に集束させるように寸法決めされ、前記第2デバイスの前記入口チャネル、前記曲線チャネル、前記第1出口チャネル、及び前記第2出口チャネルは、第2直径範囲の粒子を前記第2デバイスの前記第2出口に集束させるように寸法決めされ、その結果、前記第1直径範囲及び/又は前記第2直径範囲内の直径を有する粒子の集団を含む液体は、前記液体が複数の前記マイクロ流体デバイスを通過する際に前記液体から順次除去される、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、マイクロ流体デバイスの分野、より具体的には、粒子を含む液体サンプルを濃縮及び/又は濾過するマイクロ流体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
粒子が液体媒体から分離される又は検出される必要がある多くの応用が存在する。例えば、水質のモニタリング及び処理を可能にするために、又は培養培地などの媒体若しくは血液などの体液内における細胞の効率的な除去又は精製を可能にするために、水からの粒子の検出及び潜在的に除去を可能にすることが重要である。
【0003】
粒子状の汚染物質を除去又は検出するための液体の処理は、例えば水の供給における及び/又は水の供給からのクリプトスポリジウム又はジアルジアなどの水媒介病原体を検出及び/又は除去することにおいて特に重要である。他の例は、細胞培養物、又は、例えば血液などの体液などの媒体から細胞を分離することを含む。
【0004】
マイクロ流体デバイスは、小容量の液体(15μl/分から5ml/分)を処理するのに使用され(例えば、Nugen,S.R.,et al.,PMMA biosensor for nucleic acids with integrated mixer and electrochemical detection.Biosensors and Bioelectronics,2009.24(8):p.2428-2433,及びXu,S.and R.Mutharasan,Detection of Cryptosporidium parvum in buffer and in complex matrix using PEMC sensors at 5 oocysts mL-1.Analytica Chimica Acta.669(1-2):p.81-86を参照)、一般的には、例えばバイオセンサなどの検出器を備える。したがって、そのようなデバイスは、非常に低い濃度の粒子又は他の汚染物質を問題なく検出可能である。しかしながら、例えば生物学的種の検出は、小さい濃縮サンプルを必要とし、したがって、バイオセンサデバイス及び環境モニタリングのための他の検出デバイスの使用は、多くの場合、低い体積スループットによって、且つ統計的に関連する処理水サンプルを処理するのに必要な時間は実世界で適用するには長すぎるため、限定される。
【0005】
血液などの体液が処理される場合、低用量デバイスが純粋な血液サンプルからの純粋な血漿サンプルを提供するのに成功したことが証明されている(Tripathi,S et al.Microdevice for plasma separation from whole human blood using bio-physical and geometrical effects.Sci.Rep.6,26749,2016)。しかしながら、これらのデバイスが動作可能であることが証明された低用量は、それらの適用を限定する。
【0006】
マイクロ流体デバイスの高度に並列化されたアレイは(例えば、Di Carlo,D.,et al.,Equilibrium Separation and Filtration of Particles Using Differential Inertial Focusing.Analytical Chemistry,2008.80(6):p.2204‐2211,Beech,J.P.,P.Jonsson,及びJ.O.Tegenfeldt,Tipping the balance of deterministic lateral displacement devices using dielectrophoresis.Lab on a Chip,2009.9(18):p.2698‐2706,及びHolm,S.H.,et al.,Separation of parasites from human blood using deterministic lateral displacement.Lab on a Chipを参照)、所与のタイムスケールでより大量の液体が処理されること、又は、テスト対象のサンプルを濃縮及び/又は富化するためにサンプルの前処理を実行することを可能にする。しかしながら、そのようなアレイは、一般的に、デバイスの設置面積及びコストを大幅に増加させ、結果としてそのようなデバイスの適用可能性を限定する。
【0007】
したがって、費用対効果が高く設置面積が小さい現実的なタイムスケールで高いスループットの液体を処理することを可能にするデバイスが依然として必要である。
【0008】
一般的に、デバイスは、粒子を検出すること又は分析のために収集することを可能にするように、処理対象の液体の濾過形態を使用する。しかしながら、時間が経つにつれて、特に処理される液体の量が多い場合、使用されるフィルタは、一般的に粒子で詰まっている又は塞がれており、さらなる量の液体が処理され得る前に交換しなければならない。
【0009】
したがって、本発明の目的は、大量の液体を処理するための改良されたデバイスを提供することである。
【発明の概要】
【0010】
第1態様によると、予め定められた閾値を上回る主要寸法を有する粒子を液体から分離するマイクロ流体デバイスであって、当該デバイスは、入口、入口チャネル、曲線チャネル、分離室、第1出口及び第2出口を備え、入口は入口チャネルに接続され、入口チャネルは曲線チャネルに接続され、曲線チャネルは分離室に接続され、分離室は第1出口チャネルによって第1出口に接続され、分離室は第2出口チャネルによって第2出口に接続されており、第1出口チャネルは蛇行状部分を含み、ここで第2出口チャネルは、第1出口チャネルに対して実質的に垂直に分離室から分岐しており、曲線チャネルは150から270度の曲率角度を有しており、ここで入口チャネルのアスペクト比は10から20であり、曲線チャネルのアスペクト比は5から10であり、第1出口チャネルのアスペクト比は1.5から6であり、第2出口チャネルのアスペクト比は15から25であり、その結果、使用中に、液体は入口から第1出口及び第2出口へと、入口チャネル、曲線チャネル、分離室、第1出口チャネル、及び第2出口チャネルのそれぞれを介して流れ、ここで、入口における液体内の、予め定められた閾値を上回る主要寸法を有する粒子は第2出口に実質的に集束され、第1出口で収集された液体は、予め定められた閾値を上回る主要寸法を有する粒子を実質的に有しない、デバイスが提供される。
【0011】
驚くべきことに、本態様によると、マイクロ流体システムは、同等のシステムと同じ又はそれより大きい範囲で、長さが予め定められた閾値より大きい主要寸法を有する粒子を問題なく集束させ得るが、より大きいスループットを有することが確認された。理論に拘束されることを望むものではないが、アスペクト比が10から20の入口チャネル、及び/又はアスペクト比が5から10の曲線チャネル、及び/又はアスペクト比が1.5から6の第1出口チャネル、及び/又はアスペクト比が15から25の第2出口チャネルを設けることは、濾過済の粒子に対して同じ又は実質的に同じ効果と、同じ閾値とを依然として維持しながら、より大量の液体がデバイスによって処理できるようにすることが示唆されている。
【0012】
当技術分野における従来の教示(例えば、Zhou et al.Fundamentals of inertial focusing in microchannels,Lab on a Chip,doi:10.1039/c2I241248a)は、マイクロ流体デバイスの1又は複数のチャネルのアスペクト比を変更することは、デバイスの効果に著しい影響を与え、デバイスの濾過機能を根本的に変更することを示唆する。
【0013】
しかしながら、発明者らは、チャネルの高さ又は深さを変更することなくチャネルの幅を増加させた本態様のデバイスが、所与の期間内に処理し得る液体の量を増加させながら、同じ濾過機能を提供することを確認した。
【0014】
入口チャネルは、入口に隣接する第1端部と曲線チャネルに隣接する第2端部とを有し得る。いくつかの実施形態において、入口チャネルは直線部分を備える。直線部分は、曲線チャネルに接続された入口チャネルの第2端部にあってよい。
【0015】
入口チャネルの幅は、曲線チャネルの幅より1.5倍から3倍大きくてよい。したがって、入口チャネルと曲線チャネルとの間には不連続性が存在する場合がある。
【0016】
予め定められた閾値は一般的に、デバイスのチャネルの寸法、デバイスを通って流れる液体の流量、曲線チャネルの曲率の程度、及び第1出口チャネルと第2出口チャネルとの相対的な寸法によって決定される。したがって、デバイスの具体的な構成は、処理される液体から分離される特定の粒子の種類及び主要寸法によって決定され得る。
【0017】
例えば、除去される粒子が藻細胞である実施形態において、すべての藻細胞が閾値を上回ることを確実にすべく、所望の予め定められた閾値は約1μmであり得る(一般的な藻細胞の長さは2μmから25μmである)。
【0018】
再び、血漿画分及び濃縮された血球サンプルを残すべく血球が全体の血液から分離される実施形態では、血小板、赤血球、白血球等が閾値を上回り効果的に濾過されることを確実にすべく、所望の閾値は約1μmであり得る。
【0019】
したがって、予め定められた閾値は0.01μmから500μmであり得る。予め定められた閾値は、0.01μmから250μmであり得る。予め定められた閾値は、0.01μmから100μmであり得る。予め定められた閾値は、0.01μmから50μmであり得る。予め定められた閾値は、0.01μmから10μmであり得る。予め定められた閾値は、0.1μmから10μmであり得る。予め定められた閾値は、0.01μm、0.05μm、0.1μm、0.5μm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm又は10μm、又はそれより大きくてよい。
【0020】
一般的に、第2出口チャネルの幅又はアスペクト比は、第1出口チャネルの幅又はアスペクト比の少なくとも3倍であり、少なくとも4倍、少なくとも5倍、又は少なくとも10倍である。
【0021】
理論に拘束されることを望むものではないが、第1出口チャネルの断面が第2出口チャネルの断面より著しく小さいデバイスを設けることは、第1出口チャネルに流れる抵抗が第2出口チャネルに流れる抵抗より大きいことを意味することを示唆する。結果として、デバイスを通って流れる液体の大部分は、第2出口チャネルに流れる。
【0022】
疑いを回避すべく、本明細書で使用されるような「アスペクト比」という用語は、所与の点におけるチャネルの幅を、その点におけるチャネルの深さで除算した値(w/d)を指す。したがって、深さが一定である場合、チャネルの幅が増加することは、結果としてそのチャネルのアスペクト比が増加させる。
【0023】
第2出口チャネルは、屈曲部分又は湾曲部分を備え得る。屈曲部分又は湾曲部分は、40度~70度の角度で屈曲又は湾曲され得る。
【0024】
いくつかの実施形態において、デバイスのチャネルの深さは同じであるか又は実質的に同じである。代替的に、デバイスの1又は複数のチャネルの深さは、デバイスの他のチャネルとは異なる深さを有し得る。
【0025】
いくつかの実施形態において、デバイスのチャネルの深さは、20μmから3000μmであり得る。デバイスのチャネルの深さは、20μmから1000μmであり得る。デバイスのチャネルの深さは、20μmから500μmであり得る。チャネルの深さは、20μmから100μmであり得る。チャネルの深さは、30μmから80μmであり得る。例えば、チャネルの深さは、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm又は80μmであり得る。
【0026】
いくつかの実施形態において、デバイスのチャネルの深さは、500μmから3000μm、1000μmから3000μm、又は2000μmから3000μmであり得る。
【0027】
入口チャネルのアスペクト比は、10、11、12、13、14、15、16、17,18,19,20であってもよく、又はそれより大きくてよい。入口チャネルのアスペクト比は、13、14、15,16、17又は18であってよい。入口チャネルのアスペクト比は、14,15又は16であってよい。例えば、入口チャネルのアスペクト比は、約15であってもよく、又は15から16であってもよい。
【0028】
曲線チャネルのアスペクト比は、5,6,7,8,9、10であってもよく、又はそれより大きくてよい。曲線チャネルのアスペクト比は、7,8,9又は10であってよい。曲線チャネルのアスペクト比は、8から9であってよい。
【0029】
曲線チャネルの曲率角度は、曲線チャネルが固定点の周りにどのくらい長く延伸しているかを指す。例えば、曲線チャネルが180°の曲率角度を有する場合、曲線チャネルは半円を表す。
【0030】
第1出口チャネルの最初のアスペクト比は、1.5、1.75、2、2.5、3,4,5又は6であってよい。第1出口チャネルの最初のアスペクト比は、3,4,5又は6であってよい。例えば、第1出口チャネルの最初のアスペクト比は4であってよい。
【0031】
第2出口チャネルのアスペクト比は、15,16,17,18,19,20、21,22,23,24又は25であってよい。第2出口チャネルのアスペクト比は、18,19,20、21又は22であってよい。例えば、第2出口チャネルのアスペクト比は20であってよい。
【0032】
分離室は、曲線チャネル、第1出口チャネル及び第2出口チャネルの間の接合部にあってよい。したがって、それは、粒子を含む液体のストリームが第2出口チャネルに誘導され、粒子を含まない液体のストリームが第1出口チャネルに誘導される分離チャネル内にある。
【0033】
理論に拘束されることを望むものではないが、入口チャネル及び曲線チャネルは、液体から分離されるべき粒子が曲線チャネルの外壁に隣接する液体の一部に濃縮される、液体の流れを生成する。この液体の流れが曲線チャネルから分離室に入ると、第1出口チャネルと第2出口チャネルとの間に渦が形成される。曲線チャネルの外壁に隣接した液体は、渦を通り過ぎて第2出口チャネルに誘導される。曲線チャネルの内壁に隣接した液体は、渦を通り過ぎて第1出口チャネルに誘導される。したがって、液体のきれいな画分は第1出口チャネルに誘導され、それによって第1出口に誘導される。
【0034】
疑いを回避すべく、本明細書に使用される「蛇行」という用語は、正弦波に近似する、交互の方向に曲がるチャネルの形状を指し、ここで各曲線は共通の曲率半径を有する。
【0035】
一般的に、第1出口チャネルの蛇行状部分は、複数の曲線又は円弧を含む。第1出口チャネルの蛇行状部分の各円弧は、1mmから5mmの曲率半径を有し得る。例えば、第1出口チャネルの蛇行状部分の各円弧は、1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、3mm、3.5mm、4mm、4.5mm又は5mmの曲率半径を有し得る。
【0036】
入口は、リザーバに接続され得る。
【0037】
第2態様において、予め定められた閾値を上回る主要寸法を有する粒子を液体から分離するマイクロ流体デバイスであって、当該デバイスは複数の層を備え、複数の層内の各層は入口、入口チャネル、曲線チャネル、分離室、第1出口及び第2出口を含み、入口は入口チャネルに接続され、入口チャネルは曲線チャネルに接続され、曲線チャネルは分離室に接続され、分離室は第1出口チャネルによって第1出口に接続され、分離室は第2出口チャネルによって第2出口に接続されており、第1出口チャネルは蛇行状部分を含み、ここで第2出口チャネルは、第1出口チャネルに対して実質的に垂直に分離室から分岐しており、曲線チャネルは150から270度の曲率角度を有しており、ここで入口チャネルのアスペクト比は10から20であり、曲線チャネルのアスペクト比は5から10であり、第1出口チャネルのアスペクト比は1.5から6であり、第2出口チャネルのアスペクト比は15から25であり、複数の層内の各層の入口は共通の入口マニホールドと流体連通しており、複数の層内の各層の第1出口は共通の第1出口マニホールドと流体連通しており、複数の層内の各層の第2出口は共通の第2出口マニホールドと流体連通しており、その結果、使用中に、液体は共通の入口マニホールドから共通の第1出口マニホールド及び共通の第2出口マニホールドへと、複数の層内の各層の入口、入口チャネル、曲線チャネル、分離室、第1出口チャネル、及び第2出口チャネルを介して流れ、ここで、複数の層内の各層について、入口における液体内の、予め定められた閾値を上回る主要寸法を有する粒子は第2出口に実質的に集束され、第1出口で収集された液体は、予め定められた閾値を上回る主要寸法を有する粒子を実質的に有しない、デバイスが提供される。
【0038】
複数の層の各層は、第1態様のデバイスに対応し得る。したがって、複数の層内の各層は、第1態様のデバイスについて説明された1又は複数の特徴を有し得る。
【0039】
第1出口チャネルの幅は、分離室から第1出口まで異なることが好ましい。第1出口チャネルはフレア部を備え、その結果、第1出口チャネルの幅は、第1出口チャネルが分離室から当該フレア部の端部まで分岐する接合部から増加し得る。第1出口チャネルはテーパー部を備え、その結果、第1出口チャネルの幅は、第1出口チャネルが分離室から当該テーパー部の端部まで分岐する接合部から減少し得る。
【0040】
フレア部又はテーパー部は、第1出口チャネルに沿って部分的に延伸し得、その結果、第1出口チャネルの残りの幅は一定である。例えば、フレア部又はテーパー部は、第1出口チャネルの長さの5%、第1出口チャネルの長さの10%、第1出口チャネルの長さの15%、又は第1出口チャネルの長さの20%であり得る。
【0041】
第1出口チャネルは、その中にチャネルが第1幅を有する第1部分と、フレア又はテーパー部に対応する第2部分と、その中にチャネルが第2幅を有する第3部分とを備え得る。
【0042】
フレア部を含む実施形態において、フレア部は、チャネルの幅を1.5倍から3倍増加させる。
【0043】
フレア部又はテーパー部は、第1出口チャネルの蛇行状部分の一部に対応することが好ましい。
【0044】
理論に拘束されることを望むものではないが、デバイスのチャネルのアスペクト比がデバイスの分離メカニズムの性能に影響を与える主要領域が、第1出口チャネル及び第2出口チャネルが分離室から分岐する点にあることが発明者らにより確認された。これが渦の形成が発生する領域であることが示されており(Tripathi,S et al.Microdevice for plasma separation from whole human blood using bio-physical and geometrical effects.Sci.Rep.6,26749,2016)、これは、2次流れ(ディーン流れとしても既知である)、直線状チャネル慣性集束及びピンチドフローフラクショネーションなどの他の流体効果の性能に重要な所与の流速に対して、渦はほぼ安定した効果領域を維持するとみなされる。流れがこの接合部又は分岐点を通過した後、分離は既に発生しているので、チャネルのアスペクト比は性能に影響を与えず、第1及び/又は第2出口チャネルの幅を調整することが可能である。
【0045】
最適流速は、デバイスのチャネルの深さに依存し得る。
【0046】
第1出口チャネルの幅をテーパー又はフレアすることが可能であることの影響は、デバイスの性能に悪い影響を与えることなく、分離室と第1出口との間の第1出口チャネルの長さを変えることが可能であり、それによって第1出口と第2出口との間の距離を変えることが可能であることである。チャネルの幅をフレアリングすることなく第1出口チャネルの長さが増加する場合、第1出口チャネルの流動抵抗が増加して、デバイスの入口における所与の流量に対する第1出口チャネルを通る流量の減少につながる。
【0047】
例えば、第1出口チャネルの幅が2倍フレアする場合(すなわち、チャネルの幅が、第1出口チャネルの接合部から、その接合部から離れている距離まで2倍になる場合)、第1出口チャネルは、デバイスの流量及びデバイスの分離効果に悪い影響を与えることなく、長さが2倍になり得る。
【0048】
本態様に係るデバイスなどの、複数の層を使用するデバイスの場合、第1及び第2出口の各々に誘導された液体を個別にプール又は収集可能である必要がある。一般的に、マニホールドが、所与の出口から液体を収集して、別個のリザーバにそれを誘導するのに使用される。しかしながら、そのようなマニホールドは一般的に大型であり、大きな物理空間を占有する。上述のTripathiで説明されるものなどの既知のデバイスの場合、例えば、第1及び第2出口は互いに近接しており、第1出口マニホールドと第2出口マニホールドとの両方を収容するのに十分な物理空間が存在しない。
【0049】
しかしながら、驚くべきことに、発明者らは、第1出口チャネルにフレア部を設けることで、第1出口が第2出口から十分に遠く離間していることを可能にして、その結果、共通の第1出口マニホールドと共通の第2出口マニホールドとがデバイスに取り付けられ得ることを確認した。
【0050】
共通の入口マニホールドは、複数の層内の各層のチャネルを通過する液体の流量が実質的に同じであることを確実にするように構成され得る。
【0051】
共通の第1出口マニホールドは、複数の層内の各層のチャネルを通過する液体の流量が実質的に同じであることを確実にするように構成され得る。
【0052】
共通の第2出口マニホールドは、複数の層内の各層のチャネルを通過する液体の流量が実質的に同じであることを確実にするように構成され得る。
【0053】
共通の入口マニホールド、共通の第1出口マニホールド、及び共通の第2出口マニホールドは、複数の層内の各層のチャネルを通過する液体の流量が実質的に同じであることを確実にするように構成され得ることが好ましい。
【0054】
共通の入口マニホールドは、入口、分岐部、開放部、及びマニホールド出口を備え得る。マニホールド出口は、複数の層内の各層の入口と直接流体連通し得、その結果、液体は、共通のマニホールドの単一入口から、分岐部、開放部、及び共通のマニホールドのマニホールド出口を介して、複数の層内の各層の入口に流れ得る。
【0055】
マニホールド出口は細長い形状であり得る。
【0056】
開放部は一般的に、分岐部の下流側にある。
【0057】
共通の入口マニホールドの入口は、リザーバに接続され得る。
【0058】
共通の第1出口マニホールドは、入口、開放部、分岐部、及びマニホールド出口を備え得る。入口は、複数の層内の各層の第1出口と直接流体連通し得、その結果、液体は、各第1出口から、入口、開放部、分岐部、及び共通の第1出口マニホールドのマニホールド出口を介して、第1出口リザーバに流れ得る。
【0059】
マニホールド入口は細長い形状であり得る。
【0060】
開放部は一般的に、分岐部の上流側にある。
【0061】
共通の第1出口マニホールドの出口は、リザーバに接続され得る。
【0062】
共通の第2出口マニホールドは、入口、開放部、分岐部、及びマニホールド出口を備え得る。入口は、複数の層内の各層の第2出口と直接流体連通し得、その結果、液体は、各第2出口から、入口、開放部、分岐部、及び共通の第2出口マニホールドのマニホールド出口を介して、第2出口リザーバに流れ得る。
【0063】
マニホールド入口は細長い形状であり得る。
【0064】
開放部は一般的に、分岐部の上流側にある。
【0065】
共通の第2出口マニホールドの出口は、リザーバに接続され得る。
【0066】
共通流量の液体をデバイスの各層の入口に提供するために共通の入口マニホールド及び/又は共通の第1出口マニホールド及び/又は共通の第2出口マニホールドを設けることは、デバイスの各層が同じ方法で液体を処理することを確実にする。すなわち、各層の第1出口は、同じ標的粒子集団を含む又は同じ標的粒子集団を含まない。したがって、本発明のデバイスの複数の層は、液体を並列して処理し、それによって、各チャネルによって処理され得る量が少ない場合であっても、大量の液体がデバイスによって一度に処理されることを可能にする。複数の層が20個の層を備える実施形態において、デバイスは1L/分を処理するように構成され得るが、各層は2~150ml/分のみ処理可能であり得る。例えば、複数の層が750個の層を備える実施形態において、デバイスは6ml/分を処理する個別の層からなり、4.5L/分を処理するように構成され得る。
【0067】
さらに、共通の入口マニホールドを設けることは、デバイスによって処理される液体が、単一の流入(共通のマニホールドの流入)によってデバイスに導入されることを可能にし、したがって、例えば1つのポンプなどの単一圧力源、及び使用対象の一組のフィッティングのみを設ける必要がある。1つのポンプ、又は他の単一圧力源を使用することは、複数の層内の各層の入口を通る流量、したがってチャネルを通る流量をより一層容易に制御してバランスを保つことで、各チャネルを通る流量が実質的に同じであることを確実にすることを可能にする。さらに、一組のフィッティング及び単一圧力源のみを必要とするデバイスは一般的に、デバイスのチャネルが圧力源に接続するのに必要な空間を減らす。したがって、本発明のデバイスは、液体の処理のための簡単な解決手段であり、当技術分野における既知のデバイスより費用対効果が高く、空間効率的である。
【0068】
一般的に、共通の入口マニホールドは、封止手段を介してデバイスの複数の層に接続される。封止手段は、デバイスと共通の入口マニホールドとの間に位置付けられ得る。封止手段は、共通の入口マニホールドからの液体が、共通の入口マニホールドとデバイスとの間のインタフェースにおいて漏出することなく、デバイスの複数の層内の各層の入口に流れることを確実にするために、液密封止を提供し得る。一般的に、封止手段は、共通の入口マニホールドを共通の入口マニホールドとデバイスとの間の接触点に向けて付勢することによって変形され得る弾性材料から形成される。例えば、封止手段は、ゴム又は同様のもので形成されたガスケットであり得る。
【0069】
同様に、共通の第1出口マニホールド及び共通の第2出口マニホールドは、封止手段を介してデバイスの複数の層に接続され得る。
【0070】
第3態様によると、第2態様によるデバイスの使用方法であって、当該方法は、
a 標的粒子集団を含む液体を提供する段階と、
b 液体を、デバイスの共通の入口マニホールドの単一入口に、第1流量で運ぶ段階と、
c 複数の層内の各層の第1及び第2出口から液体を収集する段階であって、各層の第2出口からの液体は標的粒子集団を含み、第1出口からの液体は標的粒子集団を実質的に含まない、段階と
といった段階を備える方法が提供される。
【0071】
第2出口からの液体は、標的粒子集団の大部分を含むことが好ましい。第2出口からの液体は、標的粒子集団の実質的にすべてを含むことが好ましい。
【0072】
複数の層を備えるデバイスを設けることにより、複数の層内の各層の入口が、共通のマニホールドを介して、ポンプなどの単一圧力源と流体連通して、大量の液体を処理するために必要な機械を減らすことで、各入口に液体を提供するのに1つのポンプのみを必要とし、デバイスの複数の層内の各層に対して、すべての入口にわたっての圧力の等化又はバランスを保つことを大幅に簡略化する。したがって、複数の層内の各層は、それを通過する液体を、複数の層内のあらゆる他の層と実質的に同じ方法で処理する。
【0073】
第4態様において、第1態様又は第2態様に係る複数のデバイスを備える、液体からの粒子の集団を除去するシステムであって、第1デバイスの第1出口は、後続の第2デバイスの入口と流体連通しており、ここで、第1デバイスのチャネルは、第1直径範囲の粒子を第1デバイスの第2出口に集束させるように寸法決めされ、第2デバイスのチャネルは、第2直径範囲の粒子を第2デバイスの第2出口に集束させるように寸法決めされ、その結果、第1直径範囲及び/又は第2直径範囲内の直径を有する粒子の集団を含む液体は、液体が複数のデバイスを通過する際に液体から順次除去される、システムが提供される。
【0074】
第2態様に係るデバイスを使用する実施形態において、液体は、第3態様の方法を使用して、システムにおける各デバイスによって処理されることが好ましい。
【0075】
システム内における各後続のデバイスによって除去された標的集団の直径又は直径範囲は、以前のデバイスより小さい場合があり、その結果、各後続のデバイスは、システムにおける以前のデバイスより小さい粒子を除去することが好ましい。
【0076】
結果としてシステムにより生成される液体は、粒子を実質的に含まない又は標的粒子集団を実質的に含まない場合がある。
【0077】
本発明のシステムにおける各デバイスの各層の第2出口は、そのデバイスの共通のマニホールドの入口内で流体連通してよく、その結果、標的粒子集団を含む液体はそのデバイスによってさらに処理され、標的粒子集団を含む液体の量を減らし、それによって標的粒子集団を濃縮する。例えば、希薄な粒子集団を濃縮することは、粒子集団がより容易に検出されることを可能にし得る。さらに、標的粒子集団を含む液体を再処理することは、標的粒子集団のない液体をより大量に取得することと、標的粒子集団の液体を濾過する機能を効果的に提供することとを可能にし得る。
【0078】
一般的に、複数のデバイス内の各デバイスの共通のマニホールドは、そのデバイス用のリザーバと流体連通し得る。デバイスの第2出口は、そのデバイス用のリザーバに供給し、その結果、液体はデバイスを通して再循環され得る。
【0079】
したがって、システムは複数のリザーバを備え得、各リザーバは複数のデバイス内のデバイスに関連付けられている。
【0080】
液体は水性液体であることが好ましい。例えば、液体は、様々な直径の粒子で汚染され得る水であってよい。代替的に、液体は体液であってよい。例えば、液体は、血液、創傷液、血漿、血清、尿、大便、唾液、臍帯血、絨毛膜絨毛サンプル、羊水、経頸管洗浄液又はそれらの任意の組み合わせであってよい。
【0081】
本態様のシステムによって処理された液体は、目標直径を有する粒子に対してテストを行う準備ができている場合がある。例えば、本態様のシステムを使用して処理された水は、別様で存在し得るより大きい粒子の従来の濾過を必要とすることなく、クリプトスポリジウム又はジアルジアなどの水媒介病原体の存在をテストするのに適している場合がある。代替的に、異なる標的粒子集団は、本態様のシステムの複数のデバイス内の各デバイスによって濃縮され得、例えば、それによって、バルク液体内の複数の標的希釈種が、その標的種に対してテストを行うのにより適している可能性がある小量の液体に濃縮されることを可能にする。したがって、複数の標的種は、液体が処理されることにつれて、システムによる検出のために濃縮され得る。
【0082】
所与の目標直径の粒子の集団は、本態様のシステム内のデバイスのうちの1つによって濃縮され得、生成された濃縮済の目標直径の粒子の集団は、検出されるために十分に濃縮され得る。目標直径より大きい直径を有する粒子がシステム内の前のデバイスにおいて濃縮された後に目標直径の粒子が濃縮される実施形態において、目標直径の粒子は、それらのより大きい粒子が存在しない状況で濃縮され得る。
【0083】
システムは、さらなる共通マニホールドによって並列に接続された第2態様に従って複数のデバイスを備え得る。さらなる共通マニホールドは、複数のデバイス内の各デバイスの各共通のマニホールドの入口と流体連通し得、その結果、液体は、さらなる共通マニホールドから、それぞれの共通のマニホールドの流入を介して、複数のデバイス内の各デバイスの各共通のマニホールドによって、複数のデバイス内の各デバイスの各層の第1及び第2出口に流れ得る。さらなる共通マニホールドは、複数のデバイス内の各デバイスの各共通のマニホールドの入口を通過する液体の流量が実質的に同じであることを確実にするように構成され得る。
【0084】
したがって、さらなる共通マニホールドによって接続される複数のデバイスを使用することは、より一層大量の液体が均一な方式で処理されることを可能にし得る。すなわち、各デバイスの各層を通過する液体の流量は実質的に同じであり、その結果、実質的に同じ標的粒子集団が、複数のデバイスにおける各デバイスの各層によって集束される。
【0085】
さらに、複数のデバイスによって処理された液体は、1つのポンプによって運ばれ得、それによって、コストを節約し、複数のデバイスにわたってのポンピングの均一性を確保する。
【0086】
複数のデバイスは、少なくとも20個のデバイス、少なくとも30個のデバイス、少なくとも50個のデバイス、少なくとも100個のデバイス、少なくとも200個のデバイス、少なくとも500個のデバイス、又は少なくとも1000個のデバイスを備え得る。複数のデバイスは、2個から500個のデバイスを備え得る。複数のデバイスは、2個から200個のデバイスを備え得る。複数のデバイスは、2個から10個のデバイスを備え得る。例えば、複数のデバイスは、2個、5個、7個、10個、15個、20個、25個、又は30個のデバイスを備え得る。
【図面の簡単な説明】
【0087】
ここから、添付図面を参照して、本発明の実施形態について、限定ではない例示として説明する。
【
図1】実施形態に係るマイクロ流体デバイスの図である。
【
図2】
図1において点線の円で示されている、実施形態に係るデバイスの一部のズームインされた図である。
【
図3】各マイクロチャネルの第1及び第2出口に結合された第1及び第2のマニホールドと、各マイクロチャネルの入口に結合された入口マニホールドとを有する実施形態に係る、マイクロチャネルのスタックを含むデバイスの写真である。
【
図4】共通の入口マニホールドを通過する流量を示すマイクロチャネルのスタックを備えるデバイスと共に使用され得る共通の入口マニホールドの例の図である。
【
図5】ある期間のサンプルからセネデスムス・クアドリカウダをフィルタリングする実施形態に係る750個のデバイスのスタックの効果を示すグラフであり、ここで、点線グラフは%回復を示し、破線グラフはその回復のための操作時間を15分間隔で示す。
【発明を実施するための形態】
【0088】
以下に、本発明の様々な実施形態の作成および使用について詳しく説明するが、本発明が多種多様な特定の文脈の中で具現化できる多くの適用可能な発明概念を提供することを理解されたい。本明細書で説明する特定の実施形態は、本発明の作成および使用の特定の方法を例示するに過ぎず、本発明の範囲を画定するものではない。
【0089】
本発明の理解を容易にするために、複数の用語を以下に定義する。本明細書において定義される用語は、本発明に関連する当業者によって一般に理解される意味を有する。「a」、「an」、「the」などの用語は単数形の主体のみを指すことを意図したものではなく、説明のために具体的な例が使用され得るその一般的なクラスを含む。本明細書の用語は、本発明の特定の実施形態を説明するために使用されるが、特許請求の範囲に略述されている場合を除いて、それらの使用は本発明を画定しない。
【0090】
デバイスの効果を証明すべく、以下の実験が実行された。
【0091】
例1-単一流路
【0092】
サンプルから除去され得るバイオマスのパーセンテージを決定するために、様々な藻類種を含むテストサンプルが使用された。この実験は、「脱水」実験と呼ばれた。
【0093】
図1及び
図2に示されるようなデバイスは、テストサンプルを処理するのに使用された。デバイス1は、入口2、直線入口チャネル4(入口チャネルとして機能する)、曲線チャネル6、分離室8、第1出口チャネル10、第1出口12、第2出口チャネル14、及び第2出口16を備える。
【0094】
使用中に、液体は、入口2から、入口チャネル4、曲線チャネル6、分離室8及び第1出口チャネル10を介して第1出口12に流れるか、又は、入口チャネル4、曲線チャネル6、分離室8及び第2出口チャネル14を介して第2出口16に流れる。
【0095】
すべてのチャネルの深さは60μmである。
【0096】
入口チャネル4の幅は0.92mmであり、アスペクト比は15.33である。曲線チャネル6の幅は0.52mmであり、アスペクト比は8.67であり、曲率角度24は180°である。したがって、入口チャネル4と曲線チャネル6とが接続する場合、不連続性18が存在する。
【0097】
第1出口チャネル10の最初の幅は0.24mm(アスペクト比は4)であり、フレア部20において幅は0.51mm(アスペクト比は8.5)まで増加する。第2出口チャネルの幅は1.2mmであり、アスペクト比は20である。
【0098】
第1出口チャネルは正弦波状部22を有する。
【0099】
各テストサンプルからの液体は、デバイスの入口においてリザーバに入れられる。液体は、6ml/分の速度で入口に注入される。液体は、第1出口で収集され(浸透(permeate))、第2出口で収集される(残余(retentate))。最初のテストサンプル、残余物及び浸透物の光学密度はフォトスペクトロメータを使用して測定され、その結果を以下の表1に提供する。
【0100】
【0101】
表1におけるこれらの両方の培養物の最初の濃度が比較的に高かった(OD=1.5~1.59)ことを考慮して、バイオマス回復の最大99%の最良の結果が、ファエオダクチルム・トリコルヌツム及びセネデスムス・クアドリカウダに対して示されている。他の種の脱水は85%から95%の範囲の結果で、効率がより低かった。効率がより低い脱水は、スピルリナ・マキシマに対して潜在的に行われる。これは、この培養物がフィラメント形成の特定の形を有するからである。
【0102】
加えて、デバイスを通過する液体の最適流量は表2に提供される通りであることが確認された。
【0103】
表2:所与の深さのチャネルを有するデバイスに対して決定された最適の流量
【表2】
【0104】
最適の流量は、粒子分離効果に否定的な影響を与えることなくデバイスを通過する液体の最大流量であるように決定される。
【0105】
例2-積層型デバイス
【0106】
並列して動作する750個のマイクロチャネルを有する積層型デバイス200(例えば、
図3を参照)は、分離効果を失うことなく大量の液体が処理できることを証明するためにテストされた。
【0107】
積層型デバイスの各マイクロチャネルは、第1の例に説明されるようなデバイスに対応する。各マイクロチャネルの入口(層として機能する)は、入口マニホールド202(共通の入口マニホールドとして機能する)に結合された。入口マニホールド202(
図4を参照)は、入口204、分岐部206、開放部208、及びマニホールド出口210を備える。
【0108】
各マイクロチャネルの第1出口は、第1出口マニホールド212(共通の第1出口マニホールドとして機能する)に結合された。各マイクロチャネルの第2出口は、第2出口マニホールド214(共通の第2出口マニホールドとして機能する)に結合された。第1出口マニホールド及び第2出口マニホールドの各々は、
図4に示されている入口マニホールドのそれと同様の構造を有した。
【0109】
セネデスムス・クアドリカウダを含むテストサンプルは入口マニホールドの入口に注入され、それによってデバイスにより処理された。第1出口マニホールド及び第2出口マニホールドによって収集された液体の粒子含有量は、光学密度測定によって決定される。積層型デバイス200の分離効率は
図5に示されており、少なくとも4時間の間、良好な分離性能が維持されたことを示している。
【0110】
消費電力がモニタリングされ、その結果は、処理されたサンプルのエネルギー要件が1.25kWh/m3までであることを示す。膜濾過などの液体から粒子を分離する代替的な方法のエネルギー消費量は2.23kWh/m3であり(Gerardo et al.,Journal of Membrane Science 464:86‐99,2014)、遠心分離のエネルギー消費量は一般的に8kWh/m3の領域である。したがって、積層型デバイスは、粒子分離に使用される代替的なデバイスよりエネルギー効率が良い。
【0111】
このエネルギー効率は、重大ではないことが示されたデバイスの寸法において断面積を増加させることによって可能となる。これは、以前に性能を損なうとみなされていた、アスペクト比を増加させる効果を有する。しかしながら、本デバイスは、少なくともいくつかのチャネルのアスペクト比を増加させることによって所与の時間内に処理できる液体の量を増加させながら、液体から所望の寸法の粒子を問題なく分離できことが示されている。
【0112】
さらに、フレア部を有する第1出口チャネルを提供することによって第1出口と第2出口との間の距離を変更する能力は、第1及び第2出口が十分に分離されてマニホールドが位置決めされることを空間的に可能とさせて、その結果、積層型デバイスにおける各マイクロチャネルの第1及び第2出口からの液体は収集され得、それによって、複数のマイクロチャネルが並列に液体を処理することが可能になり、それによって、デバイスの効率が著しく向上し、はるかに大量の液体がコンパクトデバイスにおいて処理されることを可能とする。
[項目1]
予め定められた閾値を上回る主要寸法を有する粒子を液体から分離するマイクロ流体デバイスであって、前記マイクロ流体デバイスは、入口、入口チャネル、曲線チャネル、分離室、第1出口及び第2出口を備え、
前記入口は前記入口チャネルに接続され、前記入口チャネルは前記曲線チャネルに接続され、前記曲線チャネルは前記分離室に接続され、前記分離室は第1出口チャネルによって前記第1出口に接続され、前記分離室は第2出口チャネルによって前記第2出口に接続されており、
前記第1出口チャネルは正弦波状/蛇行状部分を含み、前記第2出口チャネルは、前記第1出口チャネルに対して実質的に垂直に前記分離室から分岐しており、前記曲線チャネルは150から270度の曲率角度を有しており、前記入口チャネルのアスペクト比は10から20であり、前記曲線チャネルのアスペクト比は5から10であり、前記第1出口チャネルのアスペクト比は1.5から6であり、前記第2出口チャネルのアスペクト比は15から25であり、その結果、使用中に、
液体は前記入口から前記第1出口及び前記第2出口へと、前記入口チャネル、前記曲線チャネル、前記分離室、前記第1出口チャネル、及び前記第2出口チャネルのそれぞれを介して流れ、前記入口における前記液体内の、前記予め定められた閾値を上回る主要寸法を有する粒子は前記第2出口に実質的に集束され、前記第1出口で収集された前記液体は、前記予め定められた閾値を上回る主要寸法を有する粒子を実質的に有しない、マイクロ流体デバイス。
[項目2]
前記入口チャネルの幅は、前記曲線チャネルの幅より1.5倍から3倍大きい、項目1に記載のマイクロ流体デバイス。
[項目3]
前記予め定められた閾値は、0.01μmから500μmである、項目1又は2に記載のマイクロ流体デバイス。
[項目4]
前記第2出口チャネルの幅又はアスペクト比は、前記第1出口チャネルの幅又はアスペクト比の少なくとも3倍である、項目1から3のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
[項目5]
前記第2出口チャネルは、屈曲部分又は湾曲部分を含む、項目1から4のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
[項目6]
前記マイクロ流体デバイスの前記入口チャネル、前記曲線チャネル、前記第1出口チャネル、及び前記第2出口チャネルの深さは、同じであるか又は実質的に同じである、項目1から5のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
[項目7]
前記マイクロ流体デバイスの前記入口チャネル、前記曲線チャネル、前記第1出口チャネル、及び前記第2出口チャネルの前記深さは、20μmから3000μmである、項目6に記載のマイクロ流体デバイス。
[項目8]
予め定められた閾値を上回る主要寸法を有する粒子を液体から分離するマイクロ流体デバイスであって、前記マイクロ流体デバイスは複数の層を備え、
前記複数の層内の各層は入口、入口チャネル、曲線チャネル、分離室、第1出口及び第2出口を含み、
前記入口は前記入口チャネルに接続され、前記入口チャネルは前記曲線チャネルに接続され、前記曲線チャネルは前記分離室に接続され、前記分離室は第1出口チャネルによって前記第1出口に接続され、前記分離室は第2出口チャネルによって前記第2出口に接続されており、
前記第1出口チャネルは正弦波状/蛇行状部分を含み、前記第2出口チャネルは、前記第1出口チャネルに対して実質的に垂直に前記分離室から分岐しており、前記曲線チャネルは150から270度の曲率角度を有しており、前記入口チャネルのアスペクト比は10から20であり、前記曲線チャネルのアスペクト比は5から10であり、前記第1出口チャネルのアスペクト比は1.5から6であり、
前記複数の層内の各層の前記入口は共通の入口マニホールドと流体連通しており、前記複数の層内の各層の前記第1出口は共通の第1出口マニホールドと流体連通しており、前記複数の層内の各層の前記第2出口は共通の第2出口マニホールドと流体連通しており、その結果、使用中に、
液体は前記共通の入口マニホールドから前記共通の第1出口マニホールド及び前記共通の第2出口マニホールドへと、前記複数の層内の各層の前記入口、前記入口チャネル、前記曲線チャネル、前記分離室、前記第1出口チャネル、及び前記第2出口チャネルを介して流れ、
前記複数の層内の各層について、前記入口における前記液体内の、予め定められた閾値を上回る主要寸法を有する粒子は前記第2出口に実質的に集束され、前記第1出口で収集された前記液体は、前記予め定められた閾値を上回る主要寸法を有する粒子を実質的に有しない、マイクロ流体デバイス。
[項目9]
前記複数の層の各層は、項目1から7のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイスに対応する、項目8に記載のマイクロ流体デバイス。
[項目10]
前記第1出口チャネルの幅は、前記分離室から前記第1出口まで異なる、項目8又は9に記載のマイクロ流体デバイス。
[項目11]
前記第1出口チャネルはフレア部を含み、前記フレア部の幅は、前記分離室から、前記第1出口に最も近い前記フレア部の端部まで増加する、項目10に記載のマイクロ流体デバイス。
[項目12]
前記フレア部は、前記第1出口チャネルに沿って部分的に延伸し、その結果、前記第1出口チャネルの残りの幅は一定である、項目11に記載のマイクロ流体デバイス。
[項目13]
前記フレア部は、前記第1出口チャネルの前記蛇行状部分の一部に対応する、項目11又は12に記載のマイクロ流体デバイス。
[項目14]
項目8から13のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイスを使用する方法であって、前記方法は、
a 標的粒子集団を含む液体を提供する段階と、
b 前記液体を、前記マイクロ流体デバイスの前記入口又は前記マイクロ流体デバイスの前記共通の入口マニホールドの前記入口に、第1流量で運ぶ段階と、
c 前記マイクロ流体デバイスの前記第1出口及び前記第2出口から又は前記複数の層内の各層から前記液体を収集する段階であって、前記第2出口からの又は各層からの前記液体は前記標的粒子集団を含み、前記第1出口からの前記液体は前記標的粒子集団を実質的に含まない、段階と
といった段階を備える、方法。
[項目15]
項目1から13のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイスのうち複数を備える、液体からの粒子の集団を除去するシステムであって、第1デバイスの前記第1出口は、後続の第2デバイスの前記入口と流体連通しており、前記第1デバイスの前記入口チャネル、前記曲線チャネル、前記第1出口チャネル、及び前記第2出口チャネルは、第1直径範囲の粒子を前記第1デバイスの前記第2出口に集束させるように寸法決めされ、前記第2デバイスの前記入口チャネル、前記曲線チャネル、前記第1出口チャネル、及び前記第2出口チャネルは、第2直径範囲の粒子を前記第2デバイスの前記第2出口に集束させるように寸法決めされ、その結果、前記第1直径範囲及び/又は前記第2直径範囲内の直径を有する粒子の集団を含む液体は、前記液体が複数の前記マイクロ流体デバイスを通過する際に前記液体から順次除去される、システム。