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特許7501831電池セルの電極タブの断線検査装置および断線検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】電池セルの電極タブの断線検査装置および断線検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/54 20200101AFI20240611BHJP
   G01R 31/396 20190101ALI20240611BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20240611BHJP
【FI】
G01R31/54
G01R31/396
G01R31/389
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023525094
(86)(22)【出願日】2022-08-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 KR2022011408
(87)【国際公開番号】W WO2023014056
(87)【国際公開日】2023-02-09
【審査請求日】2023-04-26
(31)【優先権主張番号】10-2021-0104021
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、サン ダエ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュ ヨウン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジュ ミ
(72)【発明者】
【氏名】チョ、イン フワン
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0035594(KR,A)
【文献】特開2013-050312(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112748367(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0034113(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/54
G01R 31/396
G01R 31/389
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象電池セルの周波数に応じたインピーダンス値およびインピーダンス角を測定する測定部と、
前記インピーダンス値およびインピーダンス角から前記検査対象電池セルの周波数に応じたインピーダンスの実数部抵抗値を算出する演算部と、
前記検査対象電池セルと同じ種類の良品電池セルの共振周波数領域帯における実数部抵抗値領域帯の実数部抵抗値と、前記共振周波数領域帯と同じ領域帯の周波数範囲における前記検査対象電池セルのインピーダンスの実数部抵抗値を対比して、前記検査対象電池セルの電極タブの断線の有無を検査する判定部とを含む、電池セルの電極タブの断線検査装置。
【請求項2】
前記判定部は、
前記共振周波数領域帯と同じ領域帯の周波数範囲における検査対象電池セルのインピーダンスの実数部抵抗値が前記良品電池セルの共振周波数領域帯における実数部抵抗値領域帯の実数部抵抗値より大きいと、前記検査対象電池セルの電極タブが断線されたと判断する、請求項1に記載の電池セルの電極タブの断線検査装置。
【請求項3】
前記測定部はEIS測定器である、請求項1または2に記載の電池セルの電極タブの断線検査装置。
【請求項4】
前記共振周波数領域帯の良品電池セルの実数部抵抗値領域帯のうちの一部が、前記共振周波数領域帯と同じ領域帯の周波数範囲における不良品の電池セルの実数部抵抗値変化ラインまたは不良品電池セルの実数部抵抗値領域帯と重なる場合、
前記判定部は、前記重なる変化ラインまたは領域帯を含むかあるいは除外した良品電池セルの実数部抵抗値領域帯の実数部抵抗値と前記検査対象電池セルの実数部抵抗値とを対比して、前記検査対象電池セルの電極タブの断線の有無を検査する、請求項1または2に記載の電池セルの電極タブの断線検査装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記良品電池セルの共振周波数領域帯の周波数データおよびその共振周波数領域帯における実数部抵抗値データに基づいて、良品電池セルの実数部抵抗値領域帯の実数部抵抗値を判定し、前記良品電池セルの実数部抵抗値領域帯の実数部抵抗値と、前記検査対象電池セルの実数部抵抗値とを対比して、前記検査対象電池セルの電極タブの断線の有無を検査する、請求項1または2に記載の電池セルの電極タブの断線検査装置。
【請求項6】
複数個の電池セルに対する共振周波数領域帯、前記共振周波数領域帯における良品電池セルの実数部抵抗値領域帯、前記共振周波数領域帯の周波数と実数部抵抗値との相関関係のうち、少なくとも1つ以上の情報が貯蔵された貯蔵部をさらに含む、請求項1または2に記載の電池セルの電極タブの断線検査装置。
【請求項7】
検査対象電池セルの周波数に応じたインピーダンス値およびインピーダンス角を測定するステップと、
前記インピーダンス値およびインピーダンス角から前記検査対象電池セルの周波数に応じたインピーダンスの実数部抵抗値を算出するステップと、
前記検査対象電池セルと同じ種類の良品電池セルの共振周波数領域帯における実数部抵抗値領域帯の実数部抵抗値と、前記共振周波数領域帯と同じ領域帯の周波数範囲における前記検査対象電池セルのインピーダンスの実数部抵抗値を対比して、前記検査対象電池セルの電極タブの断線の有無を判定するステップと、を含む、電池セルの電極タブの断線検査方法。
【請求項8】
前記良品電池セルの共振周波数領域帯は、複数個の良品電池セルに対してそれぞれ測定したインピーダンス値の虚数部抵抗が正(+)の値から負(-)の値に変わるときの周波数の範囲にある、請求項7に記載の電池セルの電極タブの断線検査方法。
【請求項9】
前記共振周波数領域帯の周波数に応じた各良品電池セルの実数部抵抗値を連結して個別の電池セルの良品インピーダンス実数部抵抗値ラインとして導出し、前記良品インピーダンス実数部抵抗値ラインが隣接する良品電池セルの実数部抵抗値ゾーンを前記良品電池セルの共振周波数領域帯における実数部抵抗値領域とする、請求項7または8に記載の電池セルの電極タブの断線検査方法。
【請求項10】
前記判定するステップにおいて、前記共振周波数領域帯と同じ領域帯の周波数範囲における検査対象電池セルのインピーダンスの実数部抵抗値が前記良品電池セルの実数部抵抗値ゾーンの実数部抵抗値より大きいと不良品とし、前記実数部抵抗値ゾーンの実数部抵抗値の範囲と同一か小さいと良品として判定する、請求項9に記載の電池セルの電極タブの断線検査方法。
【請求項11】
前記判定するステップにおいて、前記共振周波数領域帯の最小周波数、中間周波数、最大周波数の3ポイントにおける良品電池セルの実数部抵抗値ゾーンの各実数部抵抗値と検査対象電池セルの各実数部抵抗値とを対比して、電池セルの良否を判定する、請求項9に記載の電池セルの電極タブの断線検査方法。
【請求項12】
電極タブに断線がある複数個の不良品電池セルに対して、各周波数に応じた各電池セルの実数部抵抗値を連結して個別の電池セルの不良品実数部抵抗値ラインまたは複数個の不良品電池セルの実数部抵抗値ラインが隣接する不良品実数部抵抗値ゾーンを導出し、
前記不良品実数部抵抗値ラインまたは前記不良品実数部抵抗値ゾーンが前記良品電池セルの実数部抵抗値ゾーンと重なり合うとき、前記重なり合う部分を含むかあるいは除外した領域を電池セルの良否判定のための良品電池セルの実数部抵抗値領域帯とする、請求項9に記載の電池セルの電極タブの断線検査方法。
【請求項13】
複数個の良品電池セルに対する共振周波数領域帯における周波数データと実数部抵抗値データから前記共振周波数領域帯の周波数と前記実数部抵抗値との相関関係を導出し、前記導出された相関関係に基づいた前記共振周波数領域帯の実数部抵抗値の範囲を前記良品電池セルの共振周波数領域帯における実数部抵抗値領域帯とする、請求項7または8に記載の電池セルの電極タブの断線検査方法。
【請求項14】
前記判定するステップにおいて、前記共振周波数領域帯と同じ領域帯の周波数範囲における検査対象電池セルのインピーダンスの実数部抵抗値が前記相関関係に基づく良品電池セルの共振周波数領域帯における実数部抵抗値より大きいと不良品であり、小さいと良品であると判定する、請求項13に記載の電池セルの電極タブの断線検査方法。
【請求項15】
前記判定するステップにおいて、前記共振周波数領域帯の最小周波数、中間周波数、最大周波数の3ポイントにおける前記相関関係で表される良品の各実数部抵抗値と検査対象電池セルの各実数部抵抗値とを対比して、電池セルの良否を判定する、請求項13に記載の電池セルの電極タブの断線検査方法。
【請求項16】
前記判定するステップにおいて、前記共振周波数領域帯と同じ領域帯の周波数範囲における検査対象電池セルのインピーダンスの実数部抵抗値が、前記相関関係に基づく良品電池セルの共振周波数領域帯における実数部抵抗値より一定の範囲以上大きいとき、不良品として判定する、請求項13に記載の電池セルの電極タブの断線検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池セルの電極タブの断線を非破壊的に検査するための電極タブの断線検査装置および断線検査方法に関するものである。
【0002】
本出願は、2021年8月6日付の韓国特許出願第10-2021-0104021号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、充放電が可能な二次電池は、ワイヤレスモバイル機器のエネルギー源として広く使用されている。また、二次電池は、化石燃料を使用する既存のガソリン車、ディーゼル車などに起因する大気汚染などを解決するための方案として提示されている電気自動車、ハイブリッド電気自動車などのエネルギー源としても注目されている。したがって、二次電池を使用するアプリケーションの種類は二次電池の長所により非常に多様化しており、今後は今よりも多くの分野と製品に二次電池が適用されると予想される。
【0004】
このような二次電池は、電極と電解液の構成によってリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、リチウムポリマー電池などに分類されることもある。そのうち、電解液の漏液の可能性が少なく、製造が容易なリチウムイオンポリマー電池の使用量が増えている。一般的に、二次電池は、電池ケースの形状に応じて、電極組立体が円筒形または角形の金属缶に内蔵される円筒形電池および角形電池と、電極組立体がアルミニウムラミネートシートのパウチ型ケースに内蔵されるパウチ型電池とに分類される。そして、電池ケースに内蔵される電極組立体は、正極、負極、および上記正極と上記負極との間に介在された分離膜の構造からなる充放電が可能な発電素子であって、活物質が塗布された長いシート状の正極と負極との間に分離膜を介在して巻取したゼリーロール型と、所定のサイズの多数の正極と負極に分離膜が介在された状態で順次に積層したスタック型とに分類される。
【0005】
図1は、パウチ型電池セル10の電極タブ13に断線が発生する箇所を示す概略図である。
【0006】
図示したように、パウチ型電池セル10の電池ケース11内には電極組立体12が内蔵されており、この電極組立体12から電極タブ13が導出されて電極リード14と溶接される。電極タブと電極タブの溶接部、電極タブと電極リードの上記溶接部は、電池セルの製造過程で多様な方向の力を受けるので、溶接箇所の1つまたは複数の箇所で断線15が発生し得る。断線が発生すると、低電圧などの不良を誘発し得る。
【0007】
電極タブ断線を検出するために、従来には特許文献1のように電池セルを加圧して加圧による電池セルのインピーダンス変化を測定したり、CT撮影で溶接箇所を物理的に検査する方法が用いられた。
【0008】
特許文献1の技術では、インピーダンス変化を測定するために電池セルを別途に加圧する加圧機構が必要であるため、量産レベルの検査を適用することが困難であった。
【0009】
また、CT撮影の場合、電池セル1個当たりの検査に1分30秒程度がかかるため、量産レベルの検査はもちろん不可能であった。
【0010】
したがって、電池セルを加圧したり検査に長時間を要したりしない、迅速かつ量産レベルの検査が可能な電池セルの電極タブの断線検査技術の開発が要望される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0035594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記のような課題を解決するために案出されたものであり、短時間内で電極タブの断線検査が可能な電池セルの電極タブの断線検査装置および断線検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る電池セルの電極タブの断線検査装置は、検査対象電池セルの周波数に応じたインピーダンス値およびインピーダンス角を測定する測定部、上記インピーダンス値およびインピーダンス角から上記検査対象電池セルの周波数に応じたインピーダンスの実数部抵抗値を算出する演算部、上記検査対象電池セルと同じ種類の良品電池セルの共振周波数領域帯における実数部抵抗値領域帯の実数部抵抗値と、共振周波数領域帯と同じ領域帯の周波数範囲における上記検査対象電池セルのインピーダンスの実数部抵抗値とを対比して、上記検査対象電池セルの電極タブの断線の有無を検査する判定部を含む。
【0014】
一例として、上記判定部は、上記共振周波数領域帯と同一領域帯の周波数範囲における検査対象電池セルのインピーダンスの実数部抵抗値が上記良品電池セルの共振周波数領域帯における実数部抵抗値領域帯の実数部抵抗値よりも大きいと、上記検査対象電池セルの電極タブが断線されたものとして判断し得る。
【0015】
一例として、上記測定部はEIS(EIS:Electrochmical Impedance Spectroscopy)測定器であり得る。
【0016】
具体例として、上記共振周波数領域帯の良品電池セルの実数部抵抗値領域帯のうちの一部が、上記共振周波数領域帯と同じ領域帯の周波数範囲における不良品の電池セルの実数部抵抗値変化ライン、または不良品電池セルの実数部抵抗値領域帯と重なる場合、上記判定部は、上記重なる変化ラインまたは領域帯を含むかあるいは除外した良品電池セルの実数部抵抗値領域帯の実数部抵抗値と、上記検査対象電池セルの実数部抵抗値とを対比して、上記検査対象電池セルの電極タブの断線の有無を検査することができる。
【0017】
他の例として、上記判定部は、上記良品電池セルの共振周波数領域帯の周波数データおよびその共振周波数領域帯における実数部抵抗値データに基づいて、良品電池セルの実数部抵抗値領域帯の実数部抵抗値を判断し、上記良品電池セルの実数部抵抗値領域帯の実数部抵抗値と上記検査対象電池セルの実数部抵抗値とを対比して、上記検査対象電池セルの電極タブの断線の有無を検査することができる。
【0018】
また、上記電極タブの断線の検査装置は、複数個の電池セルに対する共振周波数領域帯、上記共振周波数領域帯における良品電池セルの実数部抵抗値領域帯、上記共振周波数領域帯の周波数と実数部抵抗値の相関関係のうち、少なくとも1つ以上の情報が貯蔵された貯蔵部をさらに含み得る。
【0019】
本発明の他の側面として、電池セルの電極タブの断線の検査方法は、検査対象電池セルの周波数に応じたインピーダンス値およびインピーダンス角を測定するステップと、上記インピーダンス値およびインピーダンス角から上記検査対象電池セルの周波数に応じたインピーダンスの実数部抵抗値を算出するステップと、上記検査対象電池セルと同じ種類の良品電池セルの共振周波数領域帯における実数部抵抗値領域帯の実数部抵抗値と上記共振周波数領域帯と同じ領域帯の周波数範囲における上記検査対象電池セルのインピーダンスの実数部抵抗値とを対比して上記検査対象の電池セルの電極タブの断線の有無を判定するステップと、を含む。
【0020】
上記良品電池セルの共振周波数領域帯は、複数個の良品電池セルに対してそれぞれ測定したインピーダンス値の虚数部抵抗が正(+)の値から負(-)の値に変わるときの周波数の範囲にある。
【0021】
一例として、上記共振周波数領域帯の周波数に応じた各良品電池セルの実数部抵抗値を連結して、個別電池セルの良品インピーダンス実数部抵抗値ラインとして導出し、上記良品インピーダンス実数部抵抗値ラインが隣接した良品電池セルの実数部抵抗値ゾーン(Zone)を上記良品電池セルの共振周波数領域帯における実数部抵抗値領域帯とすることができる。
【0022】
具体的には、上記判定ステップにおいて、上記共振周波数領域帯と同一の領域帯の周波数範囲における検査対象電池セルのインピーダンス実数部抵抗値が、上記良品電池セルの実数部抵抗値ゾーンの実数部抵抗値より大きいと不良品として判定し、上記実数部抵抗値ゾーンの実数部抵抗値の範囲と同じであるかあるいは小さい場合は良品として判定し得る。
【0023】
または、上記判定ステップにおいて、上記共振周波数領域帯の最小周波数、中間周波数、最大周波数の3ポイントにおける良品電池セルの実数部抵抗値ゾーンの各実数部抵抗値と、検査対象電池セルの各実数部抵抗値とを対比して、電池セルの良否を判定し得る。
【0024】
具体的な例として、電極タブに断線がある複数個の不良品電池セルに対して各周波数に応じた各電池セルの実数部抵抗値を連結して個別の電池セルの不良品実数部抵抗値ライン或いは複数個の不良品電池セルの実数部抵抗値ラインが隣接する不良品実数部抵抗値ゾーンを導出し、上記不良品実数部抵抗値ラインまたは上記不良品実数部抵抗値ゾーンが上記良品電池セルの実数部抵抗値ゾーンと重なるとき、上記重なる部分を含むかあるいは除外した領域を電池セルの良否判定のための良品電池セルの実数部抵抗値領域帯とすることができる。
【0025】
他の例として、複数個の良品電池セルに対する共振周波数領域帯における周波数データと実数部抵抗値のデータから、上記共振周波数領域帯の周波数と上記実数部抵抗値との相関関係を導出し、上記導出された相関関係に基づく上記共振周波数領域帯の実数部抵抗値範囲を上記良品電池セルの共振周波数領域帯における実数部抵抗値領域とすることができる。
【0026】
一例として、上記判定ステップにおいて、上記共振周波数領域帯と同一の領域帯の周波数範囲における検査対象電池セルのインピーダンスの実数部抵抗値が上記相関関係に基づく良品電池セルの共振周波数領域帯における実数部抵抗値より大きいと不良品、小さいと良品と判定することができる。
【0027】
他の例として、上記判定ステップにおいて、上記共振周波数領域帯の最小周波数、中間周波数、最大周波数の3ポイントにおける上記相関関係で表される良品の各実数部抵抗値と検査対象電池セルの各実数部抵抗値とを対比して、電池セルの良否を判定することができる。
【0028】
別の例として、上記判定ステップにおいて、上記共振周波数領域帯と同一の領域帯の周波数範囲における検査対象電池セルのインピーダンスの実数部抵抗値が上記相関関係に基づく良品電池セルの共振周波数領域帯における実数部抵抗値より一定の範囲以上の場合、不良品と判定することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明により電極タブの断線を迅速に検査し得るため、量産レベルの検査が可能である。また、本発明の断線検査により不良品の電池セルが流出されることを防止することができる。
【0030】
また、本発明によると、電池セルの製造段階での迅速な検査が可能であるのみならず、完成品電池セルを一定の期間を使用した後に再び使用するリサイクル段階またはリユース(reuse)段階での電池セルの欠陥(電極タブの断線の有無)を迅速に検査することができる。したがって、電池セルのリサイクル時に迅速に電池セルの欠陥を把握し、再使用の有無を簡便に決定し得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】パウチ型電池セルの電極タブに断線が発生する箇所を示す概略図である。
図2】電池セルのナイキストプロットの一例を図示したものである。
図3】インピーダンス値を複素平面に図示した概略図である。
図4】本発明の電池セルの電極タブの断線の検査装置の概略図である。
図5】本発明の電池セルの電極タブの断線の検査方法で適用される良品電池セルの実数部抵抗値領域帯を設定するプロセスを示したフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態の電極タブの断線検査方法による実数部抵抗値領域帯の導出および電池セルの良否判定のプロセスを説明するためのグラフである。
図7】本発明の他の実施形態の電極タブの断線の検査方法による実数部抵抗値領域帯の導出および電池セル良否判定のプロセスを説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明について詳細に説明する。その前に、本明細書および特許請求の範囲で使用される用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は彼自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適切に定義し得るという原則に立脚して、本発明の技術的思想に合致する意味と概念として解釈されるべきである。
【0033】
本出願において、「含む」や「有する」などの用語は、明細書に記載の特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはそれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部分品またはそれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものとして理解されるべきである。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あるとする場合、それは他の部分の「真上に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。逆に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」あるとする場合、それは他の部分の「真下に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。また、本出願において「上に」に配置されるということは、上部のみならず下部に配置される場合も含むものであり得る。
【0034】
一方、本出願において「長さ方向」とは、電池セルの電極リードが突出された方向を意味する。
【0035】
電池セルの電極タブが図1のように断線されると、電池セルのインピーダンス値に変化があると推定される。それに基づいて、特許文献1は、電池セルを加圧してインピーダンス変化を測定して断線の有無を検出する方式を採択した。
【0036】
しかしながら、上述したように、本発明は、加圧せずにインピーダンスに基づいて断線の有無を検出しようとしたものである。断線によってインピーダンスの変化が発生しても、インピーダンスは周波数に応じて変化する値であるため、どの周波数におけるインピーダンスに基づいて断線の有無を検査するかを特定しなければならない。
【0037】
共振周波数は、インピーダンスのリアクタンス成分が0になる周波数を言う。すなわち、インピーダンスの虚数成分が0になるときの周波数である。電池セルの共振周波数は100%一致するものではなく、電池セルの形状、化学的構成、種類などによって変わる。すなわち、電池セルの共振周波数自体が、当該電池セルの特性や物性を示す一つのパラメータである。したがって、共振周波数におけるインピーダンスを測定すると、電池セルの物理的特性の変化を観察し得ると本発明者は予測した。電池セルの電極タブの断線も物理的特性の変化の一例として見ることができる。電極タブの断線が発生しない良品の電池セルの共振周波数におけるインピーダンス値が分かり得ると、検査対象の電池セルと比較して、電極タブの断線の有無を迅速かつ容易に検査し得るということが本発明の出発点である。
【0038】
図2は、電池セルのナイキストプロットの一例を示す。特定の電池セルに対してインピーダンス測定器、例えば、EIS(Electrochemical Impedance Spectroscopy:電気化学インピーダンススペクトロスコピー)測定器で周波数が異なる微小な交流信号を加えると、図2のようなナイキストプロットを得ることができる。もちろん、実際にEIS測定器で測定したポイントは周波数の個数に限定されるが、適切なカーブフィッティングを通じて図2のようなプロットを得ることができる。ここで、共振周波数は、インピーダンスの虚数部抵抗が0になる地点の周波数である。すなわち、EIS測定器で電池セルのインピーダンスを測定するとき、インピーダンス値の虚数部抵抗が正(+)から負(-)の値に変わるとき(あるいはその逆に変わるとき)の周波数が共振周波数である。すなわち、図2において、Rsは共振周波数におけるインピーダンス、すなわち実数部抵抗値である。
【0039】
図3は、インピーダンス値を複素平面に図示した概略図である。図3のように、インピーダンスの実数部抵抗Rsは、│Z│cosθで表現される。本発明は、良品電池セルについての共振周波数の範囲(共振周波数領域帯)を求め、その共振周波数領域帯からの良品の実数部抵抗値領域帯を抽出することを前提とする。このような良品の抵抗値データが備えられる状態で、検査対象電池セル10の実数部抵抗値を周波数に応じて求め、それを同一の周波数領域帯(共振周波数領域帯)の良品実数部抵抗値と対比すると、電極タブに断線が発生した電池セル、すなわち不良品を容易に識別することができる。
【0040】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0041】
図4は、本発明の電池セルの電極タブの断線検査装置の概略図である。
【0042】
本発明に係る電池セル10の電極タブの断線検査装置100は、検査対象電池セル10の周波数に応じたインピーダンス値およびインピーダンス角を測定する測定部110、上記インピーダンス値およびインピーダンス角から上記検査対象電池セル10の周波数に応じたインピーダンスの実数部抵抗値Rsを算出する演算部120、上記検査対象電池セル10と同じ種類の良品電池セルの共振周波数領域帯における実数部抵抗値領域帯の実数部抵抗値Rsと、共振周波数領域帯と同じ領域帯の周波数範囲における上記検査対象電池セル10のインピーダンスの実数部抵抗値Rsとを対比して、上記検査対象電池セル10の電極タブの断線の有無を検査する判定部130を含む。
【0043】
本発明の電極タブの断線検査装置100は測定部110を含む。上記測定部110はEIS測定器であってもよい。EIS測定器によると、上述したように様々な周波数に対するインピーダンスパラメータを求めることができる。例えば、インピーダンスZ、リアクタンスX、インピーダンス角θ、電圧、温度などを求めることができる。また、虚数部抵抗であるリアクタンスの符号が変わる地点の周波数である共振周波数も確認し得る。測定部110によって検査対象電池セル10の周波数に応じたインピーダンス値、そしてインピーダンス角を測定することができる。
【0044】
また、本発明の電極タブの断線検査装置100は、上記インピーダンス値およびインピーダンス角から上記検査対象電池セル10の周波数に応じたインピーダンスの実数部抵抗値Rsを算出する演算部120を、備える。インピーダンスZとインピーダンス角θを知れば、上述した公式Rs=│Z│cosθにより実数部抵抗値Rsを求めることができる。すなわち、周波数の変化に応じて複数個の実数部抵抗値Rsを求めることができる。
【0045】
本発明は、検査対象電池セル10のインピーダンスの実数部抵抗値Rsと良品電池セルの共振周波数領域帯における実数部抵抗値領域帯の実数部抵抗値Rsとを対比する判定部130を含む。検査対象電池セル10と同じ種類の良品電池セルに対して、共振周波数領域帯における良品実数部抵抗値領域帯は、EIS測定器を用いて予め取得されている。良品実数部抵抗値領域帯の設定については、本発明の電池セルの電極タブの断線検査方法と繋げて後述する。
【0046】
電極タブの断線の有無を検査するために、検査対象電池セル10の実数部抵抗値Rsのうち良品電池セルの共振周波数領域帯と同じ領域帯の周波数範囲における実数部抵抗値Rsを選択する。検査対象電池セル10が良品と同じ種類の電池セルであるため、検査対象電池セル10の共振周波数は良品の共振周波数領域帯に含まれる可能性が高い。ただし、電池セルの内部状態に応じて、検査対象電池セル10の共振周波数が上記共振周波数領域帯に含まれないこともあり得る。しかしながら、本発明は、複数個の良品電池セルに対して検証された良品実数部抵抗値データと対比するものであるため、検査対象電池セル10の共振周波数が良品の共振周波数領域帯に必ずしも含まれるべきではない。すなわち、検査対象電池セル10の周波数のうち、良品の共振周波数領域帯と同じ領域帯の周波数の範囲になると十分であり、この周波数の範囲における検査対象電池セル10のインピーダンスの実数部抵抗値Rsと良品実数部抵抗値領域帯とを対比すると、検査対象電池セル10の電極タブの断線の有無を迅速に判定することができる。この場合、EIS測定器で測定された検査対象電池セル10の特定周波数範囲における実数部抵抗値は、既に設定された良品実数部抵抗値領域帯と対比のみをすればよいので、電池セルを加圧する必要がない。したがって、測定部110で測定し、実数部抵抗値Rsを演算部120で演算して判定部130で対比するアルゴリズムまたはコンピューティングプログラムによって電池セルの断線の有無を簡便に検査することができる。このような側面で、本発明の電極タブの断線検査装置100は、量産に適用し得るレベルで迅速に検査することができるので、工場の自動化にも非常に有利である。
【0047】
具体例として、上記共振周波数領域帯の良品電池セルの実数部抵抗値領域帯のうち、一部が上記共振周波数領域帯と同じ領域帯の周波数範囲における不良品の電池セルの実数部抵抗値の変化ラインまたは不良品電池セルの実数部抵抗値領域帯と重なる場合がある。すなわち、良品の実数部抵抗値領域帯が必ずしも不良品の実数部抵抗値Rsと完全に区分されるものではない。良品と不良品の実数部抵抗値領域帯のオーバーラップは、後述するように低周波数領域帯でシビアになる。ただし、後述するように、共振周波数領域帯におけるオーバーラップはより少なく、それが共振周波数領域帯で実数部抵抗値Rsを比較する理由でもある。
【0048】
上記判定部130は、上記重なり合う変化ラインまたは領域帯を含むかあるいは除外した良品電池セルの実数部抵抗値領域帯の実数部抵抗値Rsと上記検査対象電池セル10の実数部抵抗値Rsとを対比して、上記検査対象電池セル10の電極タブ断線の有無を検査することができる。例えば、品質基準が厳しく安全性などが非常に高く要求される分野の電池セルの場合には、不良品と実数部抵抗値変化ラインまたは抵抗値領域帯と重なりあう部分を除外した良品の実数部抵抗値領域帯のみを有して検査対象電池セル10の実数部抵抗値Rsを対比して断線の有無を検査する。この場合は、良品の電池セルも不良品とみなされて廃棄され得るが、安全性をより重要とする面でオーバーラップされる実数部抵抗値Rsを有する電池セルも不良品としてみなすことである。
【0049】
その反面、品質基準および安全性が相対的に高く要求されない分野の電池セルの場合には、製品生産性の観点から、オーバーラップされる領域の良品実数部抵抗値Rsも全て良品領域帯とみなして断線の有無を検査する。この場合には、断線が発生した不良品の電池セルが良品として判定される可能性があるが、生産性と安全性を比較衡量して、それを甘受するものである。
【0050】
一方、上記判定部130は、上記良品電池セルの共振周波数領域帯の周波数データとその共振周波数領域帯における実数部抵抗値データとの相関関係に基づいて導出された良品電池セルの実数部抵抗値領域帯の実数部抵抗値Rsと、上記検査対象電池セル10の実数部抵抗値Rsとを対比して、上記検査対象電池セル10の電極タブ断線の有無を検査することができる。例えば、良品電池セルのそれぞれについて、複数個の周波数に対して複数の実数部抵抗値データを取得することができる。この場合、周波数データと抵抗値データを座標平面に図示すると、分散された数個のデータポイントが表示される。それを、例えば線形回帰分析により、周波数データと実数部抵抗値データとの相関関係を求めることができる。このような相関関係を求めると、複数個の電池セルの共振周波数領域帯における1つの関数または相関関係を導出することができる。このようになれば、検査対象電池セルとこの一つの相関関係に従う良品の実数部抵抗値領域帯のみを対比すればよいので、より迅速かつ正確に断線の有無を検査することができる。これについてのより具体的な説明は、本発明の電極タブの断線検査方法と関連して説明する。
【0051】
本発明の電極タブの断線検査装置100は、さらに、複数個の電池セルに対する共振周波数領域帯、上記共振周波数領域帯における良品電池セルの実数部抵抗値領域帯、上記共振周波数領域帯の周波数と実数部抵抗値Rsとの相関関係のうち少なくとも1つ以上の情報が貯蔵された貯蔵部140をさらに含むことができる。図4に図示するように、上記貯蔵部140は、判定部130とは別のサーバやDBの形態で具備され得る(図4の(a)参照)。あるいは、判定部130にメモリ形態の貯蔵部131として含まれ得る(図4の(b)参照)。
【0052】
図4に示すように、検査対象電池セル10の周波数に応じたインピーダンス値およびインピーダンス角を測定部110により測定し、演算部120でこの値から周波数に応じた実数部抵抗値Rsを算出し、判定部130で良品電池セルの共振周波数領域帯における実数部抵抗値領域帯の実数部抵抗値Rsと上記検査対象電池セル10の同じ周波数範囲における実数部抵抗値Rsとを対比して断線の有無を迅速に検査することができる。上記演算部120および判定部130は、CPU、MCUなどの演算装置、ハードディスクなどの記憶装置を含むハードウェアを所定のソフトウェアで制御することによって実現されるコンピューティング装置であってもよく、互いに通信可能に設定される。また、実施形態によれば、演算部120および判定部130は、1つのプロセッサーで具現することもできる。
【0053】
以下では、本発明に係る電池セルの電極タブの断線検査方法について説明する。
【0054】
本発明の電池セルの電極タブの断線検査方法は、検査対象電池セルの周波数に応じたインピーダンス値およびインピーダンス角を測定するステップと、上記インピーダンス値およびインピーダンス角から上記検査対象電池セルの周波数に応じたインピーダンスの実数部抵抗値Rsを算出するステップと、上記検査対象電池セルと同じ種類の良品電池セルの共振周波数領域帯における実数部抵抗値領域帯の実数部抵抗値と、上記共振周波数領域帯と同じ領域帯の周波数範囲における上記検査対象電池セルのインピーダンスの実数部抵抗値を対比して、上記検査対象電池セルの電極タブの断線の有無を判定するステップとを含む。
【0055】
まず、図2のように検査対象電池セルがEIS測定器などの測定部110に連結されると、検査対象電池セルの周波数に応じたインピーダンス値およびインピーダンス角を測定する。上述のように、EIS測定器はインピーダンス関連の各種のパラメータを測定することができるので、インピーダンス値およびインピーダンス角を測定することができる。
【0056】
次に、上記インピーダンス値およびインピーダンス角から上記検査対象電池セルの周波数に応じたインピーダンスの実数部抵抗値Rsを算出する。これは、例えば、所定のコンピューティングプログラムが搭載された演算部120で、図3に図示された所定の公式により機械的および自動的に行われ得る。
【0057】
最後に、上記検査対象電池セルと同じ種類の良品電池セルの共振周波数領域帯における実数部抵抗値領域帯の実数部抵抗値Rsと、上記共振周波数領域帯と同じ領域帯の周波数範囲における上記検査対象電池セルのインピーダンスの実数部抵抗値Rsとを対比して、上記検査対象電池セルの電極タブの断線の有無を判定する。
【0058】
判定ステップにおいて、検査対象電池セルと同じ種類の良品電池セルの共振周波数領域帯における実数部抵抗値領域帯の実数部抵抗値Rsと対比する。したがって、良品電池セルの共振周波数領域帯に関する情報、そして、この共振周波数領域帯における良品実数部抵抗値領域帯に関する情報が必要である。また、どのような形態の良品実数部抵抗値領域帯を取得するかによって断線の有無を判定する方式も少しずつ異なり得る。
【0059】
上記情報は、検査対象電池セルの検査前に予め取得されるべきである。以下では、上記情報の取得およびそれに関連する本発明の断線検査方法または判定方法について説明する。
【0060】
図5は、本発明の電池セルの電極タブの断線検査方法に適用される良品電池セルの実数部抵抗値領域帯を設定するプロセスを示すフローチャートである。
【0061】
まず、電池セルの電極タブに断線がない複数個の良品電池セルに対して周波数を異なるようにしてインピーダンス値とインピーダンス角を測定する。上述したように、このプロセスはEIS測定器によって行うことができる。これにより、上述したインピーダンスパラメータを抽出することができる。
【0062】
その後、各電池セルの共振周波数を抽出して、複数個の良品電池セルに対する共振周波数領域帯を導出する。ここで、上記良品電池セルの共振周波数領域帯は、複数個の良品電池セルに対してそれぞれ測定したインピーダンス値の虚数部抵抗が正(+)の値から負(-)の値に変わるときの周波数の範囲にある。同じ種類の電池セルでも共振周波数が少しずつ相異なるため、複数個の電池セルのそれぞれについて共振周波数を求めると全体的には共振周波数の範囲を有することになる。これを当該良品電池セルに対する共振周波数領域で確認する。
【0063】
次に、上記インピーダンス値とインピーダンス角から図3の公式によって複数個の良品電池セルのインピーダンスの実数部抵抗値Rsを算出する。
【0064】
そして、上記共振周波数領域帯と上記算出されたRs値とから共振周波数領域帯の良品電池セルの実数部抵抗値領域帯を設定する。
【0065】
上記実数部抵抗値領域帯の設定に関しては、下記のように2つの実施形態がある。各場合における断線検査方法も相異なり得る。
【0066】
(第1実施形態)
図6は、本発明の一実施形態の電極タブの断線検査方法に係る実数部抵抗値領域帯の導出および電池セルの良否判定プロセスを説明するためのグラフである。
【0067】
図6のように、上記共振周波数領域帯の周波数fに応じた各良品電池セルの実数部抵抗値Rsを連結して、個別の電池セルの良品インピーダンス実数部抵抗値ラインとして導出することができる。本実施形態では、10個の良品電池セルの実数部抵抗値Rsを周波数fに応じて求め、それをラインとして連結した。
【0068】
この場合、上記良品インピーダンス実数部抵抗値ラインが隣接する良品電池セルの実数部抵抗値ゾーン(Zone)を、上記良品電池セルの共振周波数領域帯における実数部抵抗値領域帯とすることができる。図6では、良品ゾーンが周波数fに応じて図示されている。ただし、後述するように、低周波数では不良品の実数部抵抗値ゾーンとオーバーラップされるゾーンが多いため、共振周波数領域帯における実数部抵抗値領域帯のみを断線検査のための良品の実数部抵抗値領域帯として限定する。
【0069】
この場合、上記検査対象電池セルの実数部抵抗値Rsのうち、上記共振周波数領域帯と同じ領域帯の周波数範囲における実数部抵抗値と、図6の共振周波数領域帯と良品電池セルの実数部抵抗値ゾーンの実数部抵抗値を比較して、前者が後者より大きい場合は不良品であり、前者が後者の範囲に属するかそれより小さい場合は良品として判定することができる。
【0070】
または、上記判定ステップにおいて、上記共振周波数領域帯の最小周波数、中間周波数、最大周波数の3ポイントにおける、良品電池セルの実数部抵抗値ゾーンの各実数部抵抗値Rsと特定電池セルの各実数部抵抗値Rsを対比して、電池セルの良否を判定することができる。すなわち、10個の良品電池セルの共振周波数は範囲(共振周波数領域帯)を有するので、この範囲内の1ポイントの実数部抵抗値Rs同士を比較することは信頼性が低下し得る。したがって、図6の共振周波数領域帯の最小周波数(z)、中間周波数(y)、最大周波数(x)の3ポイントに該当する良品電池セルの各実数部抵抗値Rsと同一な3ポイントの周波数における検査対象電池セルの実数部抵抗値Rsをそれぞれ比較して良否を判定する。
【0071】
良品の実数部抵抗値領域帯と不良品の実数部抵抗値領域帯とが重ならないことが理想的であるが、実際には図6に示すように重なる領域が発生し得る。例えば、電極タブに断線がある複数個(5個)の不良品電池セルに対して、各周波数(f)に応じた各電池セルの実数部抵抗値を連結して、個別電池セルの不良品実数部抵抗値ラインあるいは複数個不良品電池セルの実数部抵抗値ラインは、隣接する不良品実数部抵抗値ゾーンを導出することができる。図6のように、不良品実数部抵抗値ゾーンは低周波数で良品ゾーンと多く重なる。ただし、図示のように、共振周波数領域帯では比較的に明確に良品ゾーンの実数部抵抗値Rsと区分され、一部のみが重なる。この場合、どの領域の実数部抵抗値Rsまで良品として判定するかは、上述したように、品質基準、安全性、生産性の観点を比較衡量して決定することができる。図6の拡大図に示すように、品質と安全性を重視する場合には、不良品実数部抵抗値ラインまたは上記不良品実数部抵抗値ゾーンが上記良品電池セルの実数部抵抗値ゾーンと重なる部分Bを除いて、その下の実数部抵抗値(Zone)Cと検査対象電池セルの実数部抵抗値Rsとを対比して良否を判定する。品質基準が厳しくなく生産性を考慮したときは、BとCを合わせた全体良品実数部抵抗値領域帯と検査対象電池セルの実数部抵抗値Rsとを対比して良否を判定する。
【0072】
(第2実施形態)
図7は、本発明の他の実施形態の電極タブの断線検査方法に係る実数部抵抗値領域帯の導出および電池セルの良否判定のプロセスを説明するためのグラフである。
【0073】
本実施形態は、図6のように個別良品電池セルの共振周波数における実数部抵抗値ラインを合計したものではなく、回帰分析などの統計的な手法によって良品の実数部抵抗値領域帯を単純化して断線検査をより簡便化した点に特徴がある。
【0074】
すなわち、複数個(例えば、10個、あるいは100個、あるいは1000個)の良品電池セルに対する共振周波数領域帯における周波数データと実数部抵抗値データを図6のような周波数-実数部抵抗値(Rs)の座標平面に図示する。この場合、電池セルの個数が多くなるほど、座標で表示されるデータの点の散布も大きくなる。このようなデータに基づいて周波数fを独立変数とし、実数部抵抗値Rsを従属変数としてデータを好適に反映する関係式を導出することができる。すなわち、回帰分析によりデータ間の相関関係を導出することができる。上記関係式は、一次関数、二次関数、その他の多項関数、指数関数、対数関数などの多様な形態を示すことができる。
【0075】
このように、上記共振周波数領域帯の周波数と上記実数部抵抗値Rsとの相関関係を導出し、上記導出された相関関係に基づく上記共振周波数領域帯の実数部抵抗値の範囲を上記良品電池セルの共振周波数領域帯における実数部抵抗値領域帯とすることができる。
【0076】
図7を参照すると、10個の良品電池セルの周波数データと実数部抵抗値データで、1つの相関関係が図示されている。
【0077】
したがって、検査対象電池セルに対して、上記共振周波数領域帯と同じ領域帯の周波数範囲における検査対象電池セルのインピーダンスの実数部抵抗値Rsが上記相関関係に基づく良品電池セルの共振周波数領域帯における実数部抵抗値より大きいと不良品、小さいと良品と判定することができる。
【0078】
具体的には、上記共振周波数領域帯の最小周波数(z)、中間周波数(y)、最大周波数(x)の3ポイントにおける上記相関関係で表される良品の各実数部抵抗値(r、q、p)と特定の電池セルの3ポイント周波数における各実数部抵抗値Rsとを対比して電池セルの良否を判定することができる。
【0079】
あるいは、上記判定ステップにおいて、上記共振周波数領域帯と同一領域帯の周波数範囲における特定電池セルのインピーダンスの実数部抵抗値が上記相関に基づく良品電池セルの共振周波数領域帯における実数部抵抗値より一定の範囲以上大きいとき、不良品として判定することができる。回帰分析は複数個のデータをモデリングしたものであるため、必然的に実際の測定データと相関関係式に沿ったデータとの間には誤差(残差、推定標準誤差)が発生するしかない。従って、図7に示す単一の関数関係の実数部抵抗値との大小を比較するとき、上記相関関係に基づく良品電池セルの共振周波数領域帯における実数部抵抗値よりも一定の範囲(例えば、統計的に発生する誤差範囲)ほど大きいとき、不良品として判定することができる。これは、図6の実施形態において不良品ゾーンとオーバーラップされる良品ゾーンの実数部抵抗値を断線の良否を判定するための実数部抵抗値領域帯から排除することと同様である。これにより、より厳密に電池セルの電極タブの断線の有無を検査することができる。
【0080】
以上の説明のように、本発明は、電池セルの-電極タブの断線の有無を、電池セルを加圧することなく迅速に測定することができる。すなわち、EIS測定器のような従来のインピーダンス測定器と所定の統計的手法を適用して良品電池セルの実数部抵抗値と対比するのみで迅速かつ簡便に電池セルの電極タブの断線の有無を検査することができる。
【0081】
また、本発明によると、電池セルの製造段階での迅速な検査が可能であるのみならず、完成品電池セルを一定期間使用した後に再び使用するリサイクル段階またはリユース(reuse)段階での電池セルの欠陥(電極タブの断線の有無)を迅速に検査することができる。したがって、電池セルのリサイクル時に迅速に電池セルの欠陥を把握して、再使用の有無を簡便に決定することができる。
【0082】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎないものであって、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で多様な修正および変形が可能である。したがって、本発明に開示された図面は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく説明するためのものであり、このような図面によって本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は特許請求の範囲によって解釈されるべきであり、それと同等の範囲内にあるすべての技術思想は本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【0083】
一方、本明細書では、上、下、左、右、前、後のような方向を示す用語が用いられているが、これらの用語は説明の便宜のためのものであり、対象となる物体の位置や観察者の位置などによって変わり得ることは自明である。
【符号の説明】
【0084】
10: 電池セル
11: 電池ケース
12: 電極組立体
13: 電極タブ
14: 電極リード
15: 断線
100:電極タブの断線検査装置
110: 測定部
120: 演算部
130:判定部
131:貯蔵部
140:貯蔵部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7