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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/218 20170101AFI20240611BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20240611BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240611BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240611BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20240611BHJP
【FI】
B29C64/218
B29C64/386
B33Y30/00
B33Y50/02
B29C64/118
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023539812
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2022045998
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】506329292
【氏名又は名称】スターテクノ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516262549
【氏名又は名称】エス.ラボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134326
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 聡
(72)【発明者】
【氏名】菱川 辰巳
(72)【発明者】
【氏名】柚山 精一
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-140392(JP,A)
【文献】特表2022-532714(JP,A)
【文献】国際公開第2021/054965(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/160299(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0236722(US,A1)
【文献】特開2016-026915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/218
B29C 64/386
B33Y 30/00
B33Y 50/02
B29C 64/118
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部から硬化可能な流動体を吐出する吐出部と、
その吐出部から吐出された前記流動体を押圧可能な回転ローラと、
を備え、
前記吐出部及び前記回転ローラを移動させて、前記吐出部から吐出される前記流動体を積層して三次元造形物を製造する三次元造形装置において、
前記回転ローラの温度を検出する回転ローラ温度センサーと、
その回転ローラ温度センサーの検出値に基づき、前記回転ローラの温度を調節する回転ローラ温度調節部と、
を備えたことを特徴とする三次元造形装置。
【請求項2】
前記回転ローラ温度調節部は、積層される前記流動体のうち、最下層を形成する前記流動体に対する前記回転ローラの温度を、他の層を形成する前記流動体に対する前記回転ローラの温度よりも高くまたは低く調節したことを特徴とする請求項1に記載の三次元造形装置。
【請求項3】
前記回転ローラ温度調節部が前記温度を調節する前記回転ローラの幅は、前記吐出部の幅よりも大きく設定され、前記回転ローラの縦断面は、その中央部がその両端部よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の三次元造形装置。
【請求項4】
前記回転ローラ温度調節部が前記温度を調節する前記回転ローラの幅は、前記吐出部の幅よりも大きく設定され、前記回転ローラの縦断面は、その中央部がその両端部よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項2に記載の三次元造形装置。
【請求項5】
前記吐出部に対する前記回転ローラの高さを変更可能としたことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出部の開口部から流動体を突出しながら積層して、三次元造形物を製造する三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、流動体を突出しながら積層して、三次元造形物を製造する三次元造形装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ノズル51の開口部から熱可塑性素材を吐出するアプリケータヘッド43と、そのアプリケータヘッド43の近傍に配置されたビード成形ローラ59と、を備え、アプリケータヘッド43を移動させて、アプリケータヘッド43から吐出される熱可塑性素材を積層する積層造形装置において、積層されたビード53の温度を検出する温度センサ49と、その温度センサ49の検出値に基づき、アプリケータヘッド43の速度を変化させる積層造形装置が記載されているものと認められる(「0027」段落の記載、図5等参照)。
【0004】
そして、特許文献1に記載の積層造形装置によれば、積層造形における層間結合をより一体化させることができるとのことである(「0003」段落の記載等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2022-140392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の積層造形装置においては、温度センサ49とビード成形ローラ59とが別個に設けられていることから、積層造形装置自体が大型化するという問題があった。
【0007】
また、特許文献1に記載の積層造形装置(以下、「三次元造形装置)と記す)は、温度センサ49によって検出された温度に応じて、アプリケータヘッド43の移動速度を変更させ、積層造形(以下、「三次元造形物」記す)における層間結合を一体化させるものであるが、層間結合を一体化させる観点からは未だ十分ではなかった。
【0008】
本発明は、従来技術が有する上述した問題に対応してなされたものであり、比較的単純な構成で、積層された流動体間の接合強度を向上させた三次元造形物を製造することができる三次元造形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の第1の態様は、開口部から硬化可能な流動体を吐出する吐出部と、その吐出部から吐出された前記流動体を押圧可能な回転ローラと、を備え、前記吐出部及び前記回転ローラを移動させて、前記吐出部から吐出される前記流動体を積層して三次元造形物を製造する三次元造形装置において、前記回転ローラの温度を検出する回転ローラ温度センサーと、その回転ローラ温度センサーの検出値に基づき、前記回転ローラの温度を調節する回転ローラ温度調節部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様の三次元造形装置において、前記回転ローラ温度調節部は、積層される前記流動体のうち、最下層を形成する前記流動体に対する前記回転ローラの温度を、他の層を形成する前記流動体に対する前記回転ローラの温度よりも高くまたは低く調節したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第3の態様は、第1の態様の三次元造形装置において、前記回転ローラ温度調節部が前記温度を調節する前記回転ローラの幅は、前記吐出部の幅よりも大きく設定され、前記回転ローラの縦断面は、その中央部がその両端部よりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の第4の態様は、第2の態様の三次元造形装置において、前記回転ローラ温度調節部が前記温度を調節する前記回転ローラの幅は、前記吐出部の幅よりも大きく設定され、前記回転ローラの縦断面は、その中央部がその両端部よりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明の第5の態様は、第1の態様乃至第4の態様の何れかの三次元造形装置において、前記吐出部に対する前記回転ローラの高さを変更可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、開口部から硬化可能な流動体を吐出する吐出部と、その吐出部から吐出された流動体を押圧可能な回転ローラと、を備え、吐出部及び回転ローラを移動させて、吐出部から吐出される流動体を積層して三次元造形物を製造する三次元造形装置において、回転ローラの温度を検出する回転ローラ温度センサーと、その回転ローラ温度センサーの検出値に基づき、前記回転ローラの温度を調節する回転ローラ温度調節部と、を備えているので、比較的単純な構成で、積層された流動体間の接合強度を向上させた三次元造形物を製造することができる。
【0015】
また、本発明の第2の態様によれば、第1の態様の三次元造形装置において、回転ローラ温度調節部は、積層される流動体のうち、最下層を形成する流動体に対する回転ローラの温度を、他の層を形成する前記流動体に対する回転ローラの温度よりも高くまたは低く調節したので、第1の態様の三次元造形装置の効果に加え、三次元造形物を、三次元造形物を製造する造形台と一体的にすることができ、または、三次元造形物を、三次元造形物を製造する造形台から分離し易くすることができる。
【0016】
また、本発明の第3の態様によれば、第1の態様の三次元造形装置において、回転ローラ温度調節部が温度を調節する回転ローラの幅は、吐出部の幅よりも大きく設定され、回転ローラの縦断面は、その中央部がその両端部よりも大きく設定されているので、第1の態様の三次元造形装置の効果に加え、流動体の幅を容易に拡げることができ、流動体の幅が拡がった場合にも、積層された流動体間の接合強度を向上させることができる。
【0017】
また、本発明の第4の態様によれば、第2の態様の三次元造形装置において、回転ローラ温度調節部が温度を調節する回転ローラの幅は、吐出部の幅よりも大きく設定され、回転ローラの縦断面は、その中央部がその両端部よりも大きく設定されているので、第2の態様の三次元造形装置の効果に加え、流動体の幅を容易に拡げることができ、流動体の幅が拡がった場合にも、積層された流動体間の接合強度を向上させることができる。
【0018】
さらに、本発明の第5の態様によれば、第1の態様乃至第4の態様の何れかの三次元造形装置において、吐出部に対する回転ローラの高さを変更可能としたので、第1の態様乃至第4の態様の何れかの三次元造形装置の効果に加え、吐出部からの流動体の吐出状態を維持したまま、流動体の幅及び高さを容易に変更することができ、流動体の幅及び高さが変更された場合にも、積層された流動体間の接合強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態の三次元造形装置の全体斜視図である。
図2】第1実施形態の塗布機において、吐出部に対して回転ローラが上がった状態を示す塗布機の全体斜視図である。
図3】第1実施形態の塗布機において、吐出部に対して回転ローラが下がった状態を示す塗布機の全体斜視図である。
図4図3の背面図である。
図5】第1実施形態の三次元造形装置のブロック図である。
図6】第1実施形態の三次元造形装置のメインコントローラのブロック図である。
図7】第1実施形態の三次元造形装置における三次元造形プログラムのフローチャートである。
図8】第1実施形態の三次元造形装置におけるN層塗布プログラムのフローチャートである。
図9】第1実施形態の三次元造形装置における湾曲領域塗布プログラムのフローチャートである。
図10】第1実施形態の三次元造形装置におけるポンプ回転割り込み処理プログラムのフローチャートである。
図11】第1実施形態の三次元造形装置における温度調節部割り込み処理プログラムのフローチャートである。
図12】塗布機が、回転ローラが上がった状態で造形台に移動され、吐出部から流動体を吐出する前の状態を示す図である。
図13】回転ローラが造形台との隙間をD1に設定された状態で、吐出部から流動体を吐出している状態を示す図である。
図14】回転ローラが造形台との隙間をD2(D1よりも小さな距離)に設定された状態で、吐出部から流動体を吐出している状態を示す図である。
図15】回転ローラを上げた状態で、吐出部から流動体を吐出している状態を示す図である。
図16】湾曲領域塗布プログラムの第1回転処理において、第1段階の吐出部及び回転ローラの動作状態例を示す説明図(底面図)である。
図17】湾曲領域塗布プログラムの第1回転処理において、第2段階の吐出部及び回転ローラの動作状態例を示す説明図(底面図)である。
図18】湾曲領域塗布プログラムの第1回転処理において、第3段階の吐出部及び回転ローラの動作状態例を示す説明図(底面図)である。
図19】湾曲領域塗布プログラムの第1回転処理において、第4段階の吐出部及び回転ローラの動作状態例を示す説明図(底面図)である。
図20】湾曲領域塗布プログラムの第1回転処理において、最終段階の吐出部及び回転ローラの動作状態例を示す説明図(底面図)である。
図21】湾曲領域塗布プログラムの第2回転処理において、吐出部及び回転ローラの動作状態例を示す説明図である。
図22】回転ローラが各層の距離を一定にした状態で、三次元造形物を造形している状態例を示す図である。
図23】回転ローラが各層の距離を変更させた状態で、三次元造形物を造形している状態例を示す図である。
図24】回転ローラが各層の距離を変更させて三次元造形物を造形している場合の距離変更部における状態を示す図である。
図25】第2実施形態の三次元造形装置の回転ローラを示す図(底面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、本実施形態に使用する図面は、理解を容易にするために誇張して表現されており、その寸法は実際の寸法とは異なる。特に、第1実施形態の後述する回転ローラについては、その幅を狭く記載しているが、実際には、流動体の幅を変更可能なように、十分に幅の広いものである(図25参照)ことを事前に述べておく。
【0021】
(第1実施形態)
先ず、本実施形態の三次元造形装置の構成について説明する。図1は、本発明の第1実施形態の三次元造形装置の全体斜視図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の三次元造形装置1は、筐体H内に配置された平板状の造形台P上に硬化可能な流動体R(図22乃至図24参照)を積層して三次元造形物を製造するものであり、筐体Hと、その筐体H上を+Y方向及び-Y方向に移動する移動台59と、造形台P上に流動体Rを吐出及び積層する塗布機3a及び造形台Pに積層され硬化された造形物を整形する加工機3bを有するヘッド部3と、移動台59及びヘッド部3等の動作を制御する制御盤2と、三次元造形装置1の操作者Mが三次元造形装置1に指令を送るための操作パネル8と、流動体Rになる前の紛体を貯留するためのタンク80と、を備える。
【0023】
なお、本実施形態に使用する流動体Rは、後述する吐出部7(図2参照)から吐出前は流動性を有し、吐出部7から吐出後は硬化可能な材料であることが必要であり、例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)、ASA樹脂(アクリロニトリル・スチレン・アクリル酸エステル樹脂)、PC-ABS樹脂(ポリカーボネート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)、PLA(ポリ乳酸樹脂)、ナイロン6、ナイロン12、ポリカーボネート、ポリプロピレン等の熱可塑性樹、光硬化性樹脂、石膏、ワックス等の材料が使用可能である。因みに、本実施形態に使用する流動体Rは、ナイロン6(融点:225℃)である。
【0024】
筐体Hは、図1に示すように、3つの壁部79a、79b及び79cと、梁部79dとによって略ロの字状に形成された中空の直方体形状を呈しており、壁部79a及び壁部79cの上部には、移動台59を+Y方向及び-Y方向に移動させるための歯切りされたラック55a及び55bを備える。
【0025】
移動台59は、制御盤2内に配置されたメインコントローラ4(図5参照)からの指令によって、移動台59内に配置されたY軸スライドモータ37(図5参照)を動作させ、塗布機3a及び加工機3bを備えるヘッド部3とともに、ラック55a及び55b上を+Y方向及び-Y方向に移動するものである。
【0026】
また、移動台59は、側面にヘッド部3を+X方向及び-X方向に移動させるための歯切りされたラック57を備える。
【0027】
ヘッド部3は、上述のように、造形台P上に流動体Rを吐出及び積層する塗布機3aと、造形台Pに積層され硬化された流動体Rを整形する加工機3bと、を備え、制御盤2内に配置されたメインコントローラ4(図5参照)からの指令によって、ヘッド部3内に配置されたX軸スライドモータ35(図5参照)を動作させ、移動台59のラック57上を+X方向及び-X方向に移動するものである。
【0028】
加工機3bは、加工機本体45と、加工機本体45を+Z方向及び-Z方向に移動させるための加工機Z軸スライドモータ27と、加工機本体45の先端に配置され、造形台Pに積層され硬化された造形物を整形するためのトリマー41と、加工機本体45内に配置され、トリマー41をアーム47に対して回転させるための加工機回転モータ29(図5参照)と、トリマー41を駆動するための加工機駆動モータ31と、を備える。
【0029】
図2は、第1実施形態の塗布機において、吐出部に対して回転ローラが上がった状態を示す塗布機の全体斜視図であり、図3は、その塗布機において、吐出部に対して回転ローラが下がった状態を示す塗布機の全体斜視図であり、図4は、図3の背面図である。
【0030】
図1乃至図4に示すように、塗布機3aは、塗布機本体43と、塗布機本体43を+Z方向及び-Z方向に移動させるための塗布機Z軸スライドモータ39と、塗布機本体43の先端に配置され、造形台Pに流動体Rを吐出するための吐出部7と、を備える。
【0031】
また、塗布機3aは、塗布機本体43内に配置され、回転ローラ回転移動モータ9と、その回転ローラ回転移動モータ9のモータ軸に接続されたモータギア11と、そのモータギア11に螺合する従動ギア13と、その従動ギア13に一体的に形成された回転軸15と、一端が回転軸15の側面に挟持された2本の回転レバー17と、その回転レバー17の他端に回転可能(回転軸15に対して回転可能)に接続された回転ローラ5と、を備える。
【0032】
そして、回転ローラ5は、回転ローラ回転移動モータ9のモータ軸に接続されたモータギア11が回転すると、その回転力が従動ギア13に伝達され、従動ギア13と一体的に形成された回転軸15及び他端が回転軸15に接続された回転レバー17が回転することにより、吐出部7を中心にして回転することとなる。
【0033】
また、塗布機3aは、塗布機本体43内に配置された回転ローラ上下移動モータ23と、その回転ローラ上下移動モータ23のモータ軸に接続されたモータギア(図示せず)と、そのモータギア(図示せず)に螺合する従動ギア(図示せず)と、その従動ギア(図示せず)と同軸に接続されたボールねじ(図示せず)と、そのボールねじ(図示せず)に螺合された回転軸15と、を備える。
【0034】
そして、回転ローラ5は、回転ローラ上下移動モータ23のモータ軸に固定されたモータギア(図示せず)が回転すると、その回転力が従動ア(図示せず)及びボールねじ(図示せず)に伝達され、回転軸15及び回転レバー17とともに、吐出部7に対して+Z方向及び-Z方向にも移動することとなる。
【0035】
なお、前述のように、図2は、回転ローラ5が吐出部7に対して上がった状態を示しており、この状態においては、回転ローラ5は、吐出部7から吐出された流動体Rに接触せず、一方、図3は、回転ローラ5が吐出部7に対して下がった状態を示しており、この状態においては、回転ローラ5は、吐出部7から吐出された流動体Rに接触することとなる。
【0036】
また、塗布機3aは、回転ローラ5に配置され、回転ローラ5の温度を検出するための回転ローラ温度センサー21と、その回転ローラ温度センサー21の検出値に基づいて、回転ローラ5の温度を調節する回転ローラ温度調節部19と、を備える。なお、図2乃至図4に示すように、回転ローラ温度調節部19は、回転ローラ5の回転軸25の内部に配置されている。
【0037】
なお、吐出部7は、略中空円筒形状を呈し、中空円筒形状の吐出部本体7aと、先端先細りの中空テーパ形状の吐出先端部7bと、流動体Rを吐出する開口部7cと、を備える。
【0038】
また、塗布機3aは、筐体Hの外部に設置されたタンク80内に配置されたタンク側ポンプ(図示せず)をタンク側ポンプ駆動モータ33(図5参照)によって駆動することによって、タンク80に貯留された紛体(図示せず)をヒーター36(図5参照)によって加熱溶融し、その溶融された流動体Rを、チューブ49を介して流入口51から流入させ、塗布機3a内に配置されたヘッド側ポンプ(図示せず)をヘッド側ポンプ駆動モータ34(図5参照)によって駆動することによって、塗布機3a内に流入された流動体Rを吐出部7の先端から吐出するように構成されている。
【0039】
なお、流入口51の近傍には、チューブ49内を流れる流動体Rの圧力を検出するための流入圧力センサー53が備えられている。
【0040】
次に、制御盤2について説明する。図5は、第1実施形態の三次元造形装置のブロック図であり、図6は、第1実施形態の三次元造形装置のメインコントローラのブロック図である。
【0041】
図5において、制御盤2は、外部からの電源6によって動作するものであり、メインコントローラ4と、そのメインコントローラ4に電気的に接続され、塗布機3aのタンク側ポンプ駆動モータ33、ヘッド側ポンプ駆動モータ34、X軸スライドモータ35、Y軸スライドモータ37、塗布機Z軸スライドモータ39、回転ローラ上下移動モータ23、回転ローラ回転移動モータ9、温度調節部19及びヒーター36を駆動するための第1ドライバー回路10と、メインコントローラ4に電気的に接続され、加工機3bの加工機Z軸スライドモータ27、加工機回転モータ29及び加工機駆動モータ31を駆動するための第2ドライバー回路12と、を備える。
【0042】
また、メインコントローラ4は、その他、三次元造形装置1の操作者Mが三次元造形装置1に指令を送るための操作パネル8、回転ローラ5の温度を検出するための回転ローラ温度センサー21、及びチューブ49内を流れる流動体Rの圧力を検出するための流入圧力センサー53にも電気的に接続されている。
【0043】
また、図6において、メインコントローラ4は、CPU(中央演算処理装置)14と、そのCPU14に入出力可能に接続されたRAM(Random Access Memory)16と、CPU14に入出力可能に接続されたROM(Read Only Memory)18と、を備える。
【0044】
RAM16は、製造する三次元造形物の造形データ(造形物の三次元データ、積層される層毎の吐出部に対する回転ローラの高さデータ等)を記憶した三次元造形データテーブル16aと、吐出部7に対する回転ローラ5の高さを設定するためのデータを格納する回転ローラ高さ指示値16bと、ヘッド側ポンプ駆動モータ34の回転速度を設定するためのデータを格納するポンプ回転指示値16cと、回転ローラ温度センサー21の検出値を格納するローラ温度センサー指示値16d、及び回転ローラ5の温度を設定するためのデータを格納する回転ローラ温度指示値16eと、を備える。
【0045】
また、ROM18は、本実施形態の塗布機3a全体の動作を司る三次元造形プログラム18aと、塗布機3aの一層ごとの塗布動作を司るN層塗布プログラム18bと、塗布機3aが湾曲領域を塗布する際の動作を司る湾曲領域塗布プログラム18cと、ヘッド側ポンプ駆動モータ34の回転速度を割り込みで処理するためのポンプ回転割り込み処理プログラム18dと、温度調節部19の温度を割り込みで処理するための温度調節部割り込み処理プログラム18eと、を備える。
【0046】
次に、上述した構成の三次元造形装置1の動作について説明する。図7は、第1実施形態の三次元造形装置における三次元造形プログラムのフローチャートであり、図8は、三次元造形装置におけるN層塗布プログラムのフローチャートであり、図9は、三次元造形装置における湾曲領域塗布プログラムのフローチャートである。
【0047】
また、図10は、三次元造形装置におけるポンプ回転割り込み処理プログラムのフローチャートであり、図11は、三次元造形装置における温度調節部割り込み処理プログラムのフローチャートである。
【0048】
図7において、先ず、三次元造形装置1の使用者Mが装置の電源スイッチを入れた後、操作パネル8上の操作ボタンによって特定の三次元造形物を選択して、スタートボタンを押下すると、三次元造形装置1は、初期状態にセットされ(S1)、RAM16の三次元造形データテーブル16aに記憶された選択された三次元造形物に対応する、層毎の造形位置及び造形高さに関する三次元造形データを取得する(S3)。
【0049】
なお、ヘッド部3は、初期状態において、図1に示された位置にセットされ、塗布機3a及び加工機3bは、三次元造形物を造形する平板状の造形台Pから上方に退避した状態にセットされる(図1参照)。
【0050】
そして、塗布機3aが造形する層を示すパラメータNに「1」(「1」は、第1層を意味する)をセットし(S5)、塗布機3a及び加工機3bを塗布開始位置へ移動させ(S7)、N層塗布プログラム18bを実行する(S9)。
【0051】
図12は、塗布機3aが、回転ローラ5が上がった状態で平板状の造形台Pに移動され、吐出部7から流動体Rを吐出する前の状態を示す図である。
【0052】
図8に示すように、N層塗布プログラム18bでは、先ず、三次元造形データテーブル16aに格納された三次元造形データに基づいて回転ローラ5の高さをセットし(S31)、吐出部7から流動体Rを吐出して、塗布開始位置から塗布を実行する(S33)。
【0053】
なお、本実施形態では、上述のように、回転ローラ5は、吐出部7に対して+Z方向及び-Z方向に移動可能であるので、吐出部7から流動体Rを吐出しながら、回転ローラ5と造形台Pとの隙間を種々変更して、所望の厚みの流動体Rを塗布することが可能である。
【0054】
例えば、図13は、回転ローラ5が造形台Pとの隙間をD1に設定された状態で、吐出部7から流動体Rを吐出している状態を示す図であり、図14は、回転ローラ5が造形台Pとの隙間をD2(D2は、D1よりも小さな距離である)に設定された状態で、吐出部7から流動体Rを吐出している状態を示す図である。
【0055】
因みに、回転ローラ5を、吐出部7から吐出される流動体Rから離間するように上げた場合には、図15に示すように、吐出部7から吐出される流動体Rの高さはD3(D3は、D1よりも大きな距離である)である。
【0056】
なお、回転ローラ5を、吐出部7から吐出される流動体Rから離間するように上げた場合には、後述するように、吐出部7の移動方向を変更時に発生する流動体Rのムラを解除して、所望の三次元造形物を容易に製造することができる。
【0057】
また、本実施形態の三次元造形装置1は、吐出部7に対して回転ローラ5の高さを変更可能とすることによって、吐出部7から吐出された流動体Rの幅及び高さを容易に変更することができ、延いては、所望の三次元造形物を容易に製造することができる。
【0058】
塗布が実行されるとほぼ同時に、塗布する形態が直線領域か湾曲領域かが判断され(S35)、塗布する形態が直線領域と判断された場合には(S35:No)、そのまま三次元造形プログラム18aに戻り(S39)、塗布する形態が湾曲領域と判断された場合には(S35:Yes)、湾曲領域塗布プログラム18cが実行される(S37)。
【0059】
図9に示すように、湾曲領域塗布プログラム18cでは、先ず、吐出部7の回転予定角度が90°以下か否かが判断され(S41)、吐出部7の回転予定角度が90°以下でないと判断された場合には(S41:No)、後述する第2回転処理(S59乃至S65の処理)が実行され、吐出部7の回転予定角度が90°以下と判断された場合には(S41:Yes)、後述する第1回転処理(S43乃至S57の処理)が実行される。
【0060】
なお、本実施形態では、第1回転処理と第2回転処理との判断を回転予定角度=90°を境として判断するようにして説明するが、必ずしも回転予定角度=90°である必要はなく、第1回転処理と第2回転処理とを選択するため回転予定角度は、吐出部7の速度、移動軌跡等によって随時変更することが可能である。
【0061】
また、第1回転処理と第2回転処理とを選択するための条件も回転予定角度のみに限定されるものではなく、他の条件を設定することも可能であり、すべての湾曲領域塗布を第1回転処理のみまたは第2回転処理のみで処理するようにしても良い。
【0062】
さらに、本実施形態では、第1回転処理の回転角度例を90°、第2回転処理の回転角度例170°として説明する。
【0063】
先ず、第1回転処理について説明する。吐出部7の回転予定角度が90°以下と判断された場合には(S41:Yes)、回転ローラ5の回転速度、並びに吐出部7の移動速度及び方向変更速度が演算され(S43及びS45)、吐出部7の移動方向が変更されない状態で、回転ローラ5の回転が開始される(S47)。
【0064】
なお、図16は、湾曲領域塗布プログラムの第1回転処理において、吐出部7(N)及び回転ローラ5(R)が動作する前の動作状態(N=0°、R=0°)を示す説明図(底面図)であり、図17は、湾曲領域塗布プログラムの第1回転処理において、吐出部7(N)が移動方向を変更せずに(N=0°)、回転ローラ5(R)のみが回転を開始した動作状態(R=10°)を示す説明図(底面図)である。
【0065】
そして、所定の第1時間(通常は、数msec~数秒)後(S49)に吐出部7の移動方向の変更が開始され(S51)、吐出部7の移動方向の変更が終了したか否かが判断され(S53)、吐出部7の移動方向の変更が終了していないと判断された場合には(S53:No)、回転ローラ5の回転と吐出部7の移動方向の変更が継続される。
【0066】
なお、図18は、湾曲領域塗布プログラムの第1回転処理において、吐出部7(N)及び回転ローラ5(R)が回転し、中間位置での動作状態(N=45°、R=45°)を示す説明図(底面図)である。
【0067】
また、第1時間を数msec~数秒のように幅を設けるのは、本実施形態の三次元造形装置1においては、吐出部7に対する回転ローラ5の高さに応じて第1時間が異なっているからであり、例えば、吐出部7に対する回転ローラ5の高さが低い場合(図14参照)には、第1時間は比較的短く設定されており、一方、吐出部7に対する回転ローラ5の高さが高い場合(図13参照)には、第1時間は比較的長く設定されており、流動体Rがムラなく積層されるようになっている。
【0068】
一方、吐出部7の移動方向の変更が終了していると判断された場合には(S53:Yes)、所定の第2時間(通常は、数msec~数秒)後(S55)に回転ローラ5の回転を終了し(S57)、N層塗布プログラム18bに戻る(S67)。
【0069】
なお、図19は、湾曲領域塗布プログラムの第1回転処理において、吐出部7(N)の移動方向の変更が終了し(N=90°)、回転ローラ5(R)の回転が終了していない動作状態(R=80°)を示す説明図(底面図)であり、図20は、湾曲領域塗布プログラムの第1回転処理において、吐出部7(N)及び回転ローラ5(R)の動作が終了した動作状態(N=90°、R=90°)を示す説明図(底面図)である。
【0070】
また、第2時間を数msec~数秒のように幅を設けるのは、上述の第1時間と同様に、本実施形態の三次元造形装置1においては、吐出部7に対する回転ローラ5の高さに応じて第2時間が異なっているからであり、例えば、吐出部7に対する回転ローラ5の高さが低い場合(図14参照)には、第2時間は比較的短く設定されており、一方、吐出部7に対する回転ローラ5の高さが高い場合(図13参照)には、第2時間は比較的長く設定されており、流動体Rがムラなく積層されるようになっている。
【0071】
次に、第2回転処理について説明する。吐出部7の回転予定角度が90°以下でないと判断された場合には(S41:No)、先ず、回転ローラ5を流動体Rから離間させるために上昇させ(S59、図15参照)、吐出部7の移動方向を170°変更させ(S61)、回転ローラ5を上昇させた状態で、回転ローラ5を170°回転させ(S63)、その後、回転ローラ5を流動体Rに接触するように下降させ(S65)、N層塗布プログラム18bに戻る(S67)。
【0072】
なお、図21は、湾曲領域塗布プログラムの第2回転処理において、吐出部7(N)及び回転ローラ5(R)の動作が終了した動作状態(N=170°、R=170°)を示す説明図(底面図)である。
【0073】
N層塗布プログラム18b(S9)を終了して、三次元造形プログラム18aに戻ると、N層(最初は、第1層)全体の塗布が完了したが否かが判断され(S11)、N層全体の塗布が完了していないと判断された場合には(S11:No)、N層全体の塗布が完了するまでN層塗布プログラム18b(S9)が実行され、N層全体の塗布が完了していると判断された場合には(S11:Yes)、N層を1増加させて(S13)、吐出部7の高さを1層上方へ移動させる(S15)。
【0074】
そして、三次元造形物の全データを処理したか否かが判断され(S17)、三次元造形物の全データを処理していないと判断された場合には(S17:No)、S7乃至S17の処理を繰り返し、三次元造形物の全データを処理していると判断された場合には(S17:Yes)、N層を1(第1層を意味する)にセットし(S19)、ヘッド部3を初期位置へ移動させ(S21)、処理を完了する(S23)。
【0075】
図22は、回転ローラ5が各層の距離を一定にした状態(距離=D4)で、三次元造形物を造形台P上に造形している状態例を示す図であり、図23は、回転ローラ5が各層の距離を変更させた状態(第1層から上部に向かって距離=D5、D6、D7、D8)で、三次元造形物を造形台P上に造形している状態例を示す図であり、図24は、回転ローラ5が各層の距離を変更させて(第1層から上部に向かって距離=D9、D10、D11、D12、D13)で三次元造形物を造形台P上に造形している場合の距離変更部における状態を示す図である。
【0076】
次に、本実施形態の三次元造形装置1において、三次元造形プログラム18aとは別個に独立して定期的に動作する割込み処理について説明する。
【0077】
先ず、ポンプ駆動モータ33の回転数を決定するポンプ回転割り込み処理18dについて説明する。
【0078】
本実施形態の三次元造形装置1は、ヘッド側ポンプ駆動モータ34の回転速度によって、吐出部7から吐出される単位時間当たりの流動体Rの量が決定されるものである。そして、ヘッド側ポンプ駆動モータ34の回転速度は、RAM16のポンプ回転指示値16cに格納されたデータに基づいて決定される。
【0079】
一方、本実施形態の三次元造形装置1は、回転ローラ5の高さ(造形台Pからの高さではなく、層内において塗布される流動体の高さを意味する)によって、塗布される層の厚さが決定されることから、ヘッド側ポンプ駆動モータ34の回転速度は、回転ローラ5の高さによって、異なるように調整されている。
【0080】
ポンプ回転割り込み処理18dにおいては、先ず、RAM16の回転ローラ高さ指示値16bから回転ローラ5の高さデータ(造形台Pからの高さではなく、層内において塗布される流動体の高さ)を取得し(S71)、その回転ローラ5の高さデータに基づいて、ヘッド側ポンプ駆動モータ34の回転速度が計算され(S73)、その計算された回転速度がポンプ回転指示値16cに格納されて(S75)、割り込み処理を終了する(S77)。
【0081】
そして、前述のように、ヘッド側ポンプ駆動モータ34の回転速度は、RAM16のポンプ回転指示値16cに格納されたデータに基づいて制御されることとなる。
【0082】
したがって、本実施形態の三次元造形装置1において、回転ローラ5が、吐出部7が流動体Rを吐出しているときにその高さを変更した場合には、ポンプ回転割り込み処理18dによって、吐出部7は、流動体Rの吐出量を自動的に調整可能であるので、流動体Rを過不足なく塗布して、所望の三次元造形物を容易に製造することができる。
【0083】
次に、温度調節部19の温度制御を司る温度調節部割り込み処理18eについて説明する。
【0084】
本実施形態の三次元造形装置1は、温度調節部19によって、回転ローラ5の温度が調節されるとともに、吐出部7から吐出される流動体Rの温度も調節されて、積層される流動体間の接合強度を向上するように構成されている。そして、温度調節部19の温度は、RAM16の回転ローラ温度指示値16eに格納されたデータに基づいて決定される。
【0085】
また、前述のように、本実施形態の三次元造形装置1は、回転ローラ温度センサー21を備えており、その回転ローラ温度センサー21の温度は、常時、RAM16のローラ温度センサー検出値16dに格納されている。
【0086】
温度調節部割り込み処理18eにおいては、先ず、RAM16の回転ローラ温度指示値16eに格納された第1指示値データを取得するとともに(S81)、RAM16のローラ温度センサー検出値16dに格納されたセンサー値データを取得する(S83)。
【0087】
そして、センサー値データが第1指示値データ(例えば、230℃)以下であるか否かが判断され(S85)、センサー値データが第1指示値データ(例えば、230℃)以下でないと判断された場合には(S85:No)、第1指示値データより小さな第2指示値データを回転ローラ温度指示値16bに格納し、温度調節部19の温度を下げるように(例えば、5℃下げるように)制御する(S89)。
【0088】
一方、センサー値データが第1指示値データ(例えば、230℃)以下であると判断された場合には(S85:Yes)、第1指示値データより大きな第3指示値データを回転ローラ温度指示値16bに格納し、温度調節部19の温度を上げるように(例えば、5℃上げるように)制御する(S87)。
【0089】
そして、N層が最下層であるか否かが判断され(S91)、N層が最下層でないと判断された場合には(S91:No)、そのまま割り込み処理を終了し(S99)、N層が最下層であると判断された場合には(S91:Yes)、三次元造形物を造形台と一体的に製造するか否かが判断される(S93)。
【0090】
なお、三次元造形物を造形台と一体的に製造するか否かを判断するのは、本実施形態の三次元造形装置1は、製造された三次元造形物を造形台と一体的に使用する場合と、製造された三次元造形物を造形台と分離して使用する場合との両方に対応しているからである。
【0091】
すなわち、本実施形態の三次元造形装置1は、本実施形態の造形台Pのように固定した場所に三次元造形物を製造する場合には、三次元造形物が造形台Pから分離し易くしており、一方で、本実施形態の造形台Pの上に他の第2の造形台を載置して、その第2の造形台と一体的に三次元造形物を製造する場合には、三次元造形物が第2の造形台と一体的になるように構成されているのである。
【0092】
また、造形台に隣接する最下層について、温度調節部19の温度を特別に制御するのは、最下層においては、流動体Rに加えて造形台を含む熱容量を加味して、流動体Rの接合強度を考慮する必要があるからである。
【0093】
そして、三次元造形物を造形台と一体的に製造する場合には(S93:Yes)、指示値データを上げて回転ローラ温度指示値16bに格納し、温度調節部19の温度を上げるように指示した後(S95)、割り込み処理を終了し(S99)、三次元造形物を造形台と分離して製造する場合には(S93:No)、指示値データを下げて回転ローラ温度指示値16bに格納し、温度調節部19の温度を下げるように指示した後(S97)、割り込み処理を終了する(S99)。
【0094】
本実施形態の三次元造形装置1によれば、開口部7cから硬化可能な流動体Rを吐出する吐出部7と、その吐出部7から吐出された流動体Rを押圧可能な回転ローラ5と、を備え、吐出部7及び回転ローラ5を移動させて、吐出部7から吐出される流動体Rを積層して三次元造形物を製造するものを対象として、特に、回転ローラ5の温度を検出する回転ローラ温度センサー21と、その回転ローラ温度センサー21の検出値に基づき、回転ローラ5の温度を調節する回転ローラ温度調節部19と、を備えているので、比較的単純な構成で、積層された流動体R間の接合強度を向上させた三次元造形物を製造することができる。
【0095】
また、本実施形態の三次元造形装置1によれば、回転ローラ温度調節部19は、積層される流動体Rのうち、最下層を形成する流動体Rに対する回転ローラ5の温度を、他の層を形成する流動体Rに対する回転ローラ5の温度よりも高くまたは低く調節したので、三次元造形物を、三次元造形物を製造する造形台と一体的にすることができ、または、三次元造形物を、三次元造形物を製造する造形台から分離し易くすることができる。
【0096】
さらに、本実施形態の三次元造形装置1によれば、吐出部7に対する回転ローラ5の高さを変更可能としたので、吐出部7からの流動体Rの吐出状態を維持したまま、流動体Rの幅及び高さを容易に変更することができ、流動体Rの幅及び高さが変更された場合にも、積層された流動体R間の接合強度を向上させることができる。
【0097】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態に使用する図面も、理解を容易にするために誇張して表現されており、その寸法は実際の寸法とは異なる。
【0098】
以下、本発明の第2実施形態を説明するが、本実施形態の三次元造形装置61は、回転ローラの形状を除けば、第1実施形態の三次元造形装置1と同様であるため、第1実施形態と共通する部分については、同じ符号を付し説明を省略する。
【0099】
図25は、第2実施形態の三次元造形装置の回転ローラを示す図(底面図)である。
【0100】
ヘッド部3は、上述のように、造形台Pに流動体Rを吐出及び積層する塗布機63aと、造形台Pに積層され硬化された流動体Rを整形する加工機3bと、を備え、制御盤2内に配置されたメインコントローラ4(図5参照)からの指令によって、ヘッド部3内に配置されたX軸スライドモータ35(図5参照)を動作させ、移動台59上を+X方向及び-X方向に移動するものである。
【0101】
また、塗布機63aは、塗布機本体43内に配置された回転ローラ回転移動モータ9と、その回転ローラ回転移動モータ9のモータ軸に接続されたモータギア71と、そのモータギア71に螺合する従動ギア13と、その従動ギア13に一体的に形成された回転軸81と、一端が回転軸81の側面に挟持された2本の回転レバー67と、その回転レバー67の他端に回転可能(回転軸75に対して回転可能)に接続された回転ローラ65と、を備える。
【0102】
そして、回転ローラ65は、回転ローラ回転移動モータ9のモータ軸に接続されたモータギア71が回転すると、その回転力が従動ギア13に伝達され、従動ギア13と一体的に形成された回転軸81及び他端が回転軸81の側面に接続された回転レバー67が回転することにより、吐出部77を中心にして回転することとなる。
【0103】
また、塗布機63aは、塗布機本体43内に配置された回転ローラ上下移動モータ23と、その回転ローラ上下移動モータ23のモータ軸に接続されたモータギア(図示せず)と、そのモータギア(図示せず)に螺合する従動ギア(図示せず)と、その従動ギア(図示せず)と同軸に接続されたボールねじ(図示せず)と、そのボールねじ(図示せず)に螺合された回転軸81と、を備える。
【0104】
そして、回転ローラ65は、回転ローラ上下移動モータ23のモータ軸に固定されたモータギア(図示せず)が回転すると、その回転力が従動ギア(図示せず)及びボールねじ(図示せず)に伝達され、回転軸65及び回転レバー67とともに、吐出部77に対して+Z方向及び-Z方向に移動することとなる。
【0105】
また、実施形態の回転ローラ65は、その幅が、吐出部77の幅よりも大きく設定され、回転ローラ65の縦断面は、その中央部がその両端部よりも大きく設定されている。したがって、本実施形態の三次元造形装置61は、吐出部77の開口部77cから吐出された流動体Rを効率良く加圧して、その幅を容易に拡げることができ、延いては、所望の三次元造形物を容易に製造することができる。
【0106】
また、塗布機63aは、回転ローラ65に配置され、回転ローラ65の温度を検出するための回転ローラ温度センサー73と、その回転ローラ温度センサー73の検出値に基づいて、回転ローラ65の温度を調節する回転ローラ温度調節部69と、を備える。
【0107】
なお、吐出部77は、第1実施形態の吐出部7と同様であって、略中空円筒形状を呈し、中空円筒形状の吐出部本体77a(図示せず)と、先端先細りの中空テーパ形状の吐出先端部77b(図示せず)と、流動体Rを吐出する開口部77cと、を備える。
【0108】
本実施形態の三次元造形装置61によれば、開口部77cから硬化可能な流動体Rを吐出する吐出部77と、その吐出部77から吐出された流動体Rを押圧可能な回転ローラ65と、を備え、吐出部77及び回転ローラ65を移動させて、吐出部77から吐出される流動体Rを積層して三次元造形物を製造するものを対象として、特に、回転ローラ65の温度を検出する回転ローラ温度センサー21と、その回転ローラ温度センサー21の検出値に基づき、回転ローラ65の温度を調節する回転ローラ温度調節部19と、を備えているので、比較的単純な構成で、積層された流動体R間の接合強度を向上させた三次元造形物を製造することができる。
【0109】
また、本実施形態の三次元造形装置61によれば、回転ローラ温度調節部19は、積層される流動体Rのうち、最下層を形成する流動体Rに対する回転ローラ5の温度を、他の層を形成する流動体Rに対する回転ローラ5の温度よりも高くまたは低く調節したので、三次元造形物を、三次元造形物を製造する造形台と一体的にすることができ、または、三次元造形物を、三次元造形物を製造する造形台から分離し易くすることができる。
【0110】
また、本実施形態の三次元造形装置61によれば、回転ローラ65の幅は、吐出部77の幅よりも大きく設定され、回転ローラ65の縦断面は、その中央部がその両端部よりも大きく設定されているので、流動体Rの幅を容易に拡げることができ、流動体Rの幅が拡がった場合にも、積層された流動体R間の接合強度を向上させることができる。
【0111】
さらに、本実施形態の三次元造形装置61によれば、吐出部77に対する回転ローラ65の高さを変更可能としたので、吐出部77からの流動体Rの吐出状態を維持したまま、流動体Rの幅及び高さを容易に変更することができ、流動体Rの幅及び高さが変更された場合にも、積層された流動体R間の接合強度を向上させることができる。
【0112】
以上、本発明の実施形態における三次元造形装置について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更して実施することが可能である。
【0113】
例えば、上述の実施形態の三次元造形装置においては、回転ローラの縦断面形状を、回転ローラ5のように長方形状、回転ローラ65のように、その中央部がその両端部よりも大きく設定されているクラウン形状としたが、その形状に限られるものではなく、回転ローラの縦断面形状を、その中央部がその両端部よりも小さく設定された逆クラウン形状であっても良く、その逆クラウン形状に類似した中央部が平坦な台形であっても良い。
【0114】
但し、回転ローラの縦断面形状を、回転ローラ5のように長方形状、回転ローラ65のように、その中央部がその両端部よりも大きく設定されているクラウン形状とした方が、流動体Rの幅を拡げるにはより良い。
【符号の説明】
【0115】
1,61・・・三次元造形装置
2・・・制御盤
3・・・ヘッド
3a,63a・・・塗布機
3b・・・加工機
4・・・メインコントローラ
5,65・・・回転ローラ
6・・・電源
7,77・・・吐出部
8・・・操作パネル
9・・・回転ローラ回転移動モータ
16・・・RAM
18・・・ROM
19・・・温度調節部
21・・・回転ローラ温度センサー
23・・・回転ローラ上下移動モータ
39・・・塗布機Z軸スライドモータ
H・・・筐体
P・・・造形台
R・・・流動体
【要約】
【課題】 比較的単純な構成で、積層された流動体間の接合強度を向上させた三次元造形物を製造することができる三次元造形装置を提供する。
【解決手段】 三次元造形装置1は、開口部7cから硬化可能な流動体Rを吐出する吐出部7と、その吐出部7から吐出された流動体Rを押圧可能な回転ローラ5と、を備え、吐出部7及び回転ローラ5を移動させて、吐出部7から吐出される流動体Rを積層して三次元造形物を製造するものであって、回転ローラ5の温度を検出する回転ローラ温度センサー21と、その回転ローラ温度センサー21の検出値に基づき、回転ローラ5の温度を調節する回転ローラ温度調節部19と、を備えている。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25