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  • 特許-擁壁の施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】擁壁の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/02 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
E02D29/02 310
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020153676
(22)【出願日】2020-09-14
(65)【公開番号】P2022047737
(43)【公開日】2022-03-25
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】397079904
【氏名又は名称】松六コンクリート工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517419445
【氏名又は名称】ヒロセ補強土株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】浅田 修
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 登
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-060413(JP,A)
【文献】特開2019-019616(JP,A)
【文献】特開2002-188148(JP,A)
【文献】特開2020-012310(JP,A)
【文献】特開2004-218256(JP,A)
【文献】特開2015-031105(JP,A)
【文献】特開平09-264031(JP,A)
【文献】特開平08-042141(JP,A)
【文献】特開2020-090865(JP,A)
【文献】特開平08-165727(JP,A)
【文献】特開2003-020746(JP,A)
【文献】特開平11-222870(JP,A)
【文献】特開2006-328720(JP,A)
【文献】登録実用新案第3115887(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル本体と、前記パネル本体の背面から離間しつつ前記パネル本体の幅方向に沿って延在する背面鉄筋と、を備える壁面パネルを用いて、斜面又は直壁からなる施工面の前面にハーフプレキャスト擁壁を構築する、擁壁の施工方法であって、
前記施工面前面の地盤上に基礎コンクリートを設置する、基礎構築工程と、
前記基礎コンクリート上に、前記壁面パネルを立設し、前記壁面パネルを前記基礎コンクリートに連結する、基礎連結工程と、
前記パネル本体の背面と前記背面鉄筋の間に、短辺側の2つの側面と長辺側の2つの側面を有する長尺状の平鋼からなる連結杆を挿入して固定し、前記連結杆の上部を前記壁面パネルより上方に突出させる、連結杆固定工程と、
前記壁面パネルの背面と前記施工面の間に、間詰コンクリートを打設して硬化させる、打設工程と、
前記壁面パネルの上に、上段の壁面パネルを立設し、前記上段の壁面パネルのパネル本体の背面と背面鉄筋の間に前記連結杆を挿通する、パネル立設工程と、
前記上段の壁面パネルのパネル本体の背面と背面鉄筋の間に、上段の前記連結杆を挿入して固定し、前記上段の連結杆の上部を前記上段の壁面パネルより上方に突出させる、連結杆延長工程と、を備え、
前記打設工程と、前記パネル立設工程と、前記連結杆延長工程と、を繰り返し、最上段の前記パネル立設工程に続いて前記打設工程を行い、
前記パネル立設工程において、前記上段の壁面パネルのパネル本体の背面を、下段の前記連結杆の短辺側の側面に沿わせることで、前記上段の壁面パネルの勾配を、下段の前記壁面パネルの勾配に対応させ
前記連結杆延長工程において、前記下段の連結杆の長辺側の側面と前記上段の連結杆の長辺側の側面を接面させ、前記下段の連結杆及び前記上段の連結杆と前記背面鉄筋の間にクサビ材を打ち込むことで、前記下段の連結杆及び前記上段の連結杆を前記パネル本体の背面に押し付けて一体に固定することを特徴とする、
擁壁の施工方法。
【請求項2】
前記連結杆延長工程において、前記上段の連結杆の側面を、前記下段の連結杆の側面に接面させ、2本の前記連結杆を挟持具で挟み込むことで、前記2本の連結杆を連結したことを特徴とする、請求項に記載の擁壁の施工方法。
【請求項3】
前記基礎コンクリートが、前記基礎コンクリートの上部に一部突起したアンカー筋を備え、前記基礎連結工程において、前記壁面パネルの背面鉄筋と、前記アンカー筋を、連結鉄筋で接続し、前記背面鉄筋、前記連結鉄筋、及び前記アンカー筋をそれぞれ溶接して相互に固定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の擁壁の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擁壁の施工方法に関し、特に壁面パネル背面側での溶接作業が少なく、簡易な手段によって壁面パネルを確実に支保可能な、施工効率の高い擁壁の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
施工面の前面側にプレキャスト製の壁面パネルを積み上げ、壁面パネルの背面に間詰コンクリートを打設して構築する、ハーフプレキャスト擁壁が知られている。
特許文献1には、裏込材の施工において、メッシュホルダと透水性シート材を組み合わせて配置することを特徴としたハーフプレキャスト擁壁が開示されている。このハーフプレキャスト擁壁は、基礎コンクリート及び間詰コンクリートの各段にアンカー筋を埋設し、壁面パネルの積み上げごとに、アンカー筋と壁面パネルの背面の間に連結鉄筋を架け渡し、アンカー筋、連結鉄筋、及び壁面パネルの背面鉄筋とを、相互に溶接することで、壁面パネルを施工面に支保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-12310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術には以下の問題点が存在する。
<1>壁面パネルの積み上げごとに、間詰コンクリートへのアンカー筋の設置と、壁面パネルとアンカー筋の溶接が必要となるため、工程が多く施工効率が悪い。
<2>壁面パネル背面側の狭隘なスペースでアンカー筋や連結鉄筋の溶接を行う作業は煩雑で、施工の難度が高い。特に、壁面パネルの勾配を設計勾配に維持しつつ、アンカー筋に溶接する作業が難しい。
<3>雨天には溶接ができないため、施工が天候に左右される。
【0005】
本発明の目的は、以上のような問題点を解決できる、擁壁の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の擁壁の施工方法は、パネル本体と、パネル本体の背面から離間しつつパネル本体の幅方向に沿って延在する背面鉄筋と、を備える壁面パネルを用いて、斜面又は直壁からなる施工面の前面にハーフプレキャスト擁壁を構築する、擁壁の施工方法であって、施工面前面の地盤上に基礎コンクリートを設置する、基礎構築工程と、基礎コンクリート上に、壁面パネルを立設し、壁面パネルを基礎コンクリートに連結する、基礎連結工程と、パネル本体の背面と背面鉄筋の間に、長尺状の連結杆を挿入して固定し、連結杆の上部を壁面パネルより上方に突出させる、連結杆固定工程と、壁面パネルの背面と施工面の間に、間詰コンクリートを打設して硬化させる、打設工程と、壁面パネルの上に、上段の壁面パネルを立設し、上段の壁面パネルのパネル本体の背面と背面鉄筋の間に連結杆を挿通する、パネル立設工程と、上段の壁面パネルのパネル本体の背面と背面鉄筋の間に、上段の連結杆を挿入して固定し、上段の連結杆の上部を上段の壁面パネルより上方に突出させる、連結杆延長工程と、を備え、打設工程と、パネル立設工程と、連結杆延長工程と、を繰り返し、最上段のパネル立設工程に続いて打設工程を行い、パネル立設工程において、上段の壁面パネルのパネル本体の背面を、下段の連結杆に沿わせることで、上段の壁面パネルの勾配を、下段の壁面パネルの勾配に対応させることを特徴とする。
【0007】
本発明の擁壁の施工方法は、連結杆固定工程及び連結杆延長工程において、連結杆と背面鉄筋の間にクサビ材を介挿することで、連結杆をパネル本体の背面に押し付けて固定してもよい。
【0008】
本発明の擁壁の施工方法は、連結杆が、短辺側の2つの側縁と長辺側の2つの側面を有する長尺の面材からなり、連結杆固定工程及び連結杆延長工程において、パネル本体の背面に連結杆の側縁を接面させて固定してもよい。
【0009】
本発明の擁壁の施工方法は、連結杆延長工程において、上段の連結杆の側面を、下段の連結杆の側面に接面させ、2本の連結杆を挟持具で挟み込むことで、2本の連結杆を連結してもよい。
【0010】
本発明の擁壁の施工方法は、基礎コンクリートが、基礎コンクリートの上部に一部突起したアンカー筋を備え、基礎連結工程において、壁面パネルの背面鉄筋と、アンカー筋を、連結鉄筋で接続し、背面鉄筋、連結鉄筋、及びアンカー筋をそれぞれ溶接して相互に固定してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の擁壁の施工方法は、次の効果のうち少なくとも一つを備える。
<1>壁面パネルの背面に連結杆を固定しながら連結杆を上方に延長するだけで、壁面パネルを確実に支保できるため、工数が少なく施工効率が高い。
<2>壁面パネル背面側における溶接作業がないため、施工が容易で狭隘な現場でも施工できる。
<3>壁面パネルを連結杆に沿って積み上げるだけで、上下の壁面パネルの勾配を自律的に一致させることができる。このため、施工が容易で施工精度が高い。
<4>基礎との連結以降、溶接作業がないため、天候に左右されず施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】基礎連結工程の説明図。
図2A】連結杆固定工程の説明図。
図2B】連結杆固定工程の説明図。
図3】打設工程の説明図。
図4】パネル立設工程の説明図。
図5A】連結杆延長工程の説明図。
図5B】連結杆延長工程の説明図。
図5C】連結杆延長工程の説明図。
図6】パネル立設工程(3段目)の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の擁壁の施工方法について詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
[擁壁の施工方法]
<1>全体の構成。
本発明の擁壁の施工方法は、斜面又は直壁からなる施工面の前面に、ハーフプレキャスト擁壁を構築する施工方法である。
本例では、施工面が斜面である場合について例示するが、同様の手順で直壁にも適用することができる。
本発明の擁壁の施工方法は、基礎構築工程S1と、基礎連結工程S2と、連結杆固定工程S3と、打設工程S4と、パネル立設工程S5、連結杆延長工程S6と、を少なくとも備える。
【0015】
<1.1>壁面パネル(図2B)。
壁面パネル20は、上下左右に並列して擁壁1の壁面を構成する面材である。
壁面パネル20は、正面視矩形のコンクリート板からなるパネル本体21と、パネル本体21の背面側に延在する背面鉄筋22と、を少なくとも備える、プレキャストコンクリートパネルである。
本例では背面鉄筋22として、パネル本体21内の鉄筋を一部背面側に突起して構成した複数のトラス筋22aと、複数のトラス筋22aに溶接した直線状の固定筋22bの組合せからなる一体構造を採用する。
詳細には、パネル本体21の背面から、複数のトラス筋22aをパネル本体21の幅方向に沿って上下4列に並列し、2本の固定筋22bをパネル本体21の幅方向に沿って配置し、各固定筋22bをそれぞれ上下2列のトラス筋22aの先端に溶接して固定する。
ただし背面鉄筋22の構成はこれに限らず、例えばトラス筋22aを設けず、パネル本体21内の鉄筋の一部をパネル本体21の背面側に露出させ、パネル本体21の幅方向に沿って延在させて背面鉄筋22を構成してもよい。
要は、背面鉄筋22がパネル本体21と一体であって、パネル本体21の背面から離間しつつ、パネル本体21の幅方向に沿って延在する構造であればよい。
【0016】
<2>基礎構築工程。
基礎構築工程S1は、基礎コンクリート10を設置する工程である。
基礎構築工程S1は、詳細には例えば以下の手順で施工する。
施工面の前面の地盤を、施工範囲にわたって所定深さに掘削する。
掘削面上に基礎砕石を敷き均し、ランマ―等で転圧する。基礎砕石上に基礎コンクリート10を打設する。
本例では、基礎コンクリート10内に、所定の間隔で壁面パネル20支保用のアンカー筋31を埋設し、アンカー筋31の上部を基礎コンクリート10の上部から突起させる。アンカー筋31には、例えば逆V字状に屈曲した鉄筋を用いることができる。
打設後、基礎コンクリート10を所定時間養生する。
【0017】
<3>基礎連結工程(図1)。
基礎連結工程S2は、基礎コンクリート10上に、1段目の壁面パネル20を立設して基礎コンクリート10に連結する工程である。
基礎連結工程S2は、詳細には例えば以下の手順で施工する。
基礎コンクリ―ト10上に壁面パネル20を吊り下ろし、壁面パネル20の前面を施工面の勾配に対応した設計上の勾配に傾斜させる。
同時に基礎コンクリート10上に設置したアンカー筋31と、壁面パネル20の固定筋22bとの間を連結鉄筋32で接続し、アンカー筋31と連結鉄筋32、連結鉄筋32と固定筋22b、をそれぞれ接点で溶接して相互に固定する。
なお、連結鉄筋32の溶接先は固定筋22bでなくトラス筋22aであってもよい。また、その他の公知の支保部材を用いてもよい。要は基礎コンクリート10に1段目の壁面パネル20を確実に連結できればよい。
以上によって、1段目の壁面パネル20が、基礎連結材30(アンカー筋31及び連結鉄筋32)を介して基礎コンクリート10に確実に連結される。
本発明の擁壁の施工方法では、溶接作業は基礎連結工程S2に限られ、他の工程では行わないため、施工性及び施工の安全性が高い。
【0018】
<4>連結杆固定工程(図2A)。
連結杆固定工程S3は、1段目の壁面パネル20の背面に連結杆40を固定する工程である。
連結杆40は、後続する打設工程S4までの間、壁面パネル20を支保する支保機能と、上下の壁面パネル20の勾配を一致させる定規材の機能を併有する部材である。
本例では連結杆40として、短辺側の2つの側縁40aと長辺側の2つの側面40bを有する鋼製のフラットバー(平鋼)を採用する。
フラットバーは、長さが壁面パネル20の高さより長く、2つの側縁40a間の幅が、パネル本体21の背面と固定筋22bの間隔より小さいものを使用する。
なお、連結杆40は、フラットバーに限らず、円形鋼棒や角形鋼棒等であってもよい。
連結杆固定工程S3は、詳細には例えば以下の手順で施工する。
【0019】
<4.1>連結杆の挿入。
1段目の壁面パネル20のパネル本体21の背面と上下2本の固定筋22bの間に、連結杆40を挿入する。連結杆40の上部は、壁面パネル20の上縁より上方に突起させる。
本例では、連結杆40のフラットバーを、パネル本体21の背面に対して縦向きに当接させる。換言すると、フラットバーの側縁40aをパネル本体21の背面に接面させる。
これによって、壁面パネル20の荷重による連結杆40の屈折を防ぎ、壁面パネル20を安定して支保することができる。
連結杆40の本数は、本例では1枚の壁面パネル20に付き各2本である。ただしこれに限らず、例えば1枚の壁面パネル20に付き3本以上としてもよい。
【0020】
<4.2>クサビ材による固定(図2B)。
連結杆40の側縁40aと固定筋22bとの間に上方からクサビ材50を差し込む。
続いて、クサビ材50の頭部をハンマーで叩く等することで、連結杆40を、パネル本体21の背面と固定筋22bで前後方向に挟んで固定する。
同様の作業を連結杆40と固定筋22bの全ての交点において行う。
本例では、連結杆40にクサビ材50を組み合わせることで、連結杆40の側縁40aをパネル本体21の背面に押し付けて、連結杆40の勾配を壁面パネル20の勾配と一致させることができる。
なお、連結杆40は、パネル本体21の背面と固定筋22bの間に限らず、例えばパネル本体21の背面とトラス筋22aの間に挟んで固定してもよい。
また、パネル本体21と固定筋22bの間隔と連結杆40の幅とのクリアランスが僅かである場合には、クサビ材50を用いなくてもよい。
【0021】
<5>打設工程(図3)。
打設工程S4は、壁面パネル20の背面側に、間詰コンクリート60を打設する工程である。
打設工程S4は、詳細には例えば以下の手順で施工する。
壁面パネル20の背面と施工面の間に、壁面パネル20の上縁から数cm程度下がった高さまで、間詰コンクリート60を打設する。これは、壁面パネル20の継ぎ目と、間詰コンクリート60の打ち継ぎ目とを、重ねないためである。
打設後、間詰コンクリート60を所定時間養生する。
間詰コンクリート60の硬化によって、壁面パネル20背面に固定した連結杆40が、間詰コンクリート60及び背面鉄筋22と一体化し、2段目の壁面パネル20を支持可能な安定性を備える。
なお、本例では壁面パネル20背面の施工面上に直接間詰コンクリート60を打設しているが、実際の施工では、施工面に沿って裏込材を設置したり、壁面パネル20に類似した構造の背面パネルを配置することができる。ただし、これらの構成は本発明の要点ではないため、記載を省略する。
【0022】
<6>パネル立設工程(図4)。
パネル立設工程S5は、下段の壁面パネル20の上部に上段の壁面パネル20を立設する工程である。
パネル立設工程S5は、詳細には例えば以下の手順で施工する。
1段目の壁面パネル20の上部に、重機等を用いて、2段目の壁面パネル20を吊り下ろす。この際、作業員は1段目の間詰コンクリート60上を足場にして作業することができる。
吊り下ろし時、2段目の壁面パネル20のパネル本体21の背面と上下2列の固定筋22bとの隙間に、1段目の壁面パネル20に固定した連結杆40の上部を挿通させる。
吊り下ろし後、壁面パネル20を連結杆40に凭せ掛け、パネル本体21の背面を連結杆40の側縁40aに接面させる。
【0023】
<7>連結杆延長工程(図5A)。
連結杆延長工程S6は、下段の連結杆40の上部に、上段の連結杆40を接続する工程である。
連結杆延長工程S6は、詳細には例えば以下の手順で施工する。
【0024】
<7.1>2本の連結杆の接続(図5B)。
2段目のパネル本体21の背面と固定筋22bの間に、2段目の連結杆40を挿入し、上部を2段目の壁面パネル20より上方に突起させる。
続いて、2段目の連結杆40の側面を1段目の連結杆40の側面に接面させ、2段目の連結杆40の長手方向を1段目の連結杆40の長手方向に沿わせた状態で、2本の連結杆40を側面40bから挟持具70で挟み込んで接続する。
本例では挟持具70として、事務用のダブルクリップを採用する。
ここで、挟持具70による接続は、後述するクサビ材50による固定に先立つ仮留めにすぎず、挟持具70のみをもって上段の壁面パネル20を支持するものではない。よって、連結杆40の接続は、事務用のダブルクリップのような簡素な挟持具70を用いて簡易に作業することができる。
なお、挟持具70はダブルクリップに限らず、目玉クリップ、山形クリップ、樹脂製の結束帯等であってもよい。また、挟持具70を使用せず、例えば連結杆40として長孔のボルト孔を有するフラットバーを採用し、接面させた2本の連結杆40のボルト孔にボルトを挿通して締結してもよい。
【0025】
<7.2>クサビ材による固定(図5C)。
仮固定した2本の連結杆40の側縁40aと、固定筋22bとの間に上方からクサビ材50を差し込み、クサビ材50の頭部をハンマーで叩く等することで、連結杆40を、パネル本体21の背面と固定筋22bとで前後方向に挟んで固定する。
同様の作業を連結杆40と固定筋22bの全ての交点において行う。
これによって、連結杆40を介して、1段目の壁面パネル20が2段目の壁面パネル20と確実に連結されると共に、2本の連結杆40が一体に固定される。
また、1段目の連結杆40は、1段目のパネル本体21の背面に接面しているため、2段目のパネル本体21の背面をこの連結杆40の側縁40aに接面させることで、2段目の壁面パネル20の勾配を1段目の壁面パネル20の勾配と一致させることができる。
【0026】
<8>工程の繰り返し。
以後、2段目の打設工程、3段目のパネル立設工程(図6)、3段目の連結杆延長工程・・・のように、壁面パネル20の所定の段数まで、打設工程S4、パネル立設工程S5、及び連結杆延長工程S6、を繰り返す。
ただし最上段より上方に連結杆40を延長する必要はないので、最上段のパネル立設工程S5の後に打設工程S4を行い、施工を完了する。
【符号の説明】
【0027】
1 擁壁
10 基礎コンクリート
20 壁面パネル
21 パネル本体
22 背面鉄筋
22a トラス筋
22b 固定筋
30 基礎連結材
31 アンカー筋
32 連結鉄筋
40 連結杆(フラットバー)
40a 側縁
40b 側面
50 クサビ材
60 間詰コンクリート
70 挟持具(ダブルクリップ)
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6