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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】磁性粒子及び検査薬
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20240611BHJP
   G01N 33/553 20060101ALI20240611BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G01N33/543 541A
G01N33/553
G01N33/53 U
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020538880
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2020013816
(87)【国際公開番号】W WO2020196787
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2019058531
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大日方 秀平
(72)【発明者】
【氏名】脇屋 武司
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 祐也
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-078595(JP,A)
【文献】特開2010-083803(JP,A)
【文献】特開2005-098974(JP,A)
【文献】特開2002-090366(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0118757(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0014442(US,A1)
【文献】特表2017-509900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的物質と特異的に相互作用させるために用いられる磁性粒子であって、
樹脂粒子と、
前記樹脂粒子の外表面上に配置され、かつフェライトとは異なる磁性体を含む磁性層と、
前記磁性層の外表面上に配置されたシェル層と、
前記磁性層の外表面側に担持されており、かつ前記目的物質と特異的に相互作用する物質とを備え、
前記磁性層が、連続層であり、
前記シェル層が、前記磁性層の外表面上に配置された第1のシェル層と、前記第1のシェル層の外表面上に配置された第2のシェル層とを備え、
前記第2のシェル層の材料が、無機酸化物であり、前記無機酸化物が、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、チタン原子又はジルコニウム原子を有する無機酸化物である、磁性粒子。
【請求項2】
前記磁性体が、金属である、請求項1に記載の磁性粒子。
【請求項3】
記シェル層と、前記物質とが結合している、請求項1又は2に記載の磁性粒子。
【請求項4】
記第1のシェル層の材料が、無機酸化物又は非磁性の金属であり、
記第2のシェル層と、前記物質とが結合している、請求項1~のいずれか1項に記載の磁性粒子。
【請求項5】
前記第1のシェル層の材料における前記無機酸化物又は前記非磁性の金属が、銅、銀、金、パラジウム-銀合金、白金-銀合金、インジウム-銀合金、スズ-銀合金、ビスマス-銀合金、タングステン-銀合金、モリブデン-銀合金、ルテニウム-銀合金、ロジウム-銀合金、イリジウム-銀合金、リン、又はホウ素を含む、請求項4に記載の磁性粒子。
【請求項6】
前記物質が、抗原又は抗体である、請求項1~のいずれか1項に記載の磁性粒子。
【請求項7】
前記物質が、アビジン又はストレプトアビジンである、請求項1~のいずれか1項に記載の磁性粒子。
【請求項8】
磁性粒子100体積%中、前記磁性体の含有量が、2体積%以上60体積%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の磁性粒子。
【請求項9】
検査薬として用いられる、請求項1~のいずれか1項に記載の磁性粒子。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の磁性粒子を含む、検査薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体を含む磁性粒子に関する。また、本発明は、上記磁性粒子を用いた検査薬に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品の研究開発及び臨床検査等の分野において、検体中の目的物質の濃度等を測定するために磁性粒子が用いられている。例えば、化学発光免疫測定法(CLIA法)等のイムノアッセイでは、表面に抗体又は抗原等を有する磁性粒子が広く用いられている。この磁性粒子は、一般に、目的物質である抗原又は抗体等と結合した後、磁石等によって集磁される。
【0003】
下記の特許文献1には、ポリマー粒子の外周に多数の磁性微粒子が凝集し、さらにその外周にポリマー被膜が形成された磁性ポリマー粒子であって、当該磁性ポリマー粒子中の前記磁性微粒子の質量割合が20~70質量%である磁性ポリマー粒子が開示されている。この磁性ポリマー粒子は、検査薬として用いることができる。
【0004】
下記の特許文献2には、核粒子の表面に、金属及び/又は金属酸化物の微粒子の凝集層が形成されており、最外表面に有機高分子の樹脂層が形成されており、平均粒子径が0.05~0.5μm、粒子径のCV値が10%以下であり、常磁性を有する免疫測定用金属含有樹脂粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-282310号公報
【文献】特開2005-098974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、特許文献1,2に記載のように、磁性体の微粒子が凝集しかつ層状に形成された磁性層を有する磁性粒子が用いられている。しかしながら、磁性体の微粒子が凝集しかつ層状に形成された磁性層では、該磁性層の表面積が大きくなり、また、磁性層の内部まで酸素が到達しやすいため、磁性体が酸化しやすい。磁性層における磁性体が酸化すると、集磁性が低下する。
【0007】
集磁性が低い磁性粒子を用いた場合には、抗原や抗体等の目的物質の濃度等を測定する際に、測定精度及び測定感度が低下することがある。
【0008】
本発明の目的は、集磁性を高めることができ、かつ高い集磁性を維持することができる磁性粒子を提供することである。また、本発明の限定的な目的は、長期間集磁性を高く維持することができる磁性粒子を提供することである。また、本発明の目的は、上記磁性粒子を用いた検査薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の広い局面によれば、目的物質と特異的に相互作用させるために用いられる磁性粒子であって、樹脂粒子と、前記樹脂粒子の外表面上に配置され、かつフェライトとは異なる磁性体を含む磁性層と、前記磁性層の外表面側に担持されており、かつ前記目的物質と特異的に相互作用する物質とを備え、前記磁性層が、連続層である、磁性粒子が提供される。
【0010】
本発明に係る磁性粒子のある特定の局面では、前記磁性体が、金属である。
【0011】
本発明に係る磁性粒子のある特定の局面では、前記磁性層の外表面上に配置されたシェル層を備え、前記シェル層の材料が、無機酸化物、有機ポリマー又は非磁性の金属であり、前記シェル層と、前記物質とが結合している。
【0012】
本発明に係る磁性粒子のある特定の局面では、前記シェル層が、前記磁性層の外表面上に配置された第1のシェル層と、前記第1のシェル層の外表面上に配置された第2のシェル層とを備え、前記第1のシェル層の材料が、無機酸化物又は非磁性の金属であり、前記第2のシェル層の材料が、無機酸化物又は有機ポリマーであり、前記第2のシェル層と、前記物質とが結合している。
【0013】
本発明に係る磁性粒子のある特定の局面では、前記第1のシェル層の材料における前記無機酸化物又は前記非磁性の金属が、銅、銀、金、パラジウム-銀合金、白金-銀合金、インジウム-銀合金、スズ-銀合金、ビスマス-銀合金、タングステン-銀合金、モリブデン-銀合金、ルテニウム-銀合金、ロジウム-銀合金、イリジウム-銀合金、リン、又はホウ素を含む。
【0014】
本発明に係る磁性粒子のある特定の局面では、前記第2のシェル層の材料が、前記無機酸化物であり、前記無機酸化物が、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、チタン原子又はジルコニウム原子を有する無機酸化物である。
【0015】
本発明に係る磁性粒子のある特定の局面では、前記物質が、抗原又は抗体である。
【0016】
本発明に係る磁性粒子のある特定の局面では、前記物質が、アビジン又はストレプトアビジンである。
【0017】
本発明に係る磁性粒子のある特定の局面では、磁性粒子100体積%中、前記磁性体の含有量が、2体積%以上60体積%以下である。
【0018】
本発明に係る磁性粒子のある特定の局面では、前記磁性粒子は、検査薬として用いられる。
【0019】
本発明の広い局面によれば、上述した磁性粒子を含む、検査薬が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る磁性粒子は、目的物質と特異的に相互作用させるために用いられる。本発明に係る磁性粒子は、樹脂粒子と、上記粒子の外表面上に配置され、かつフェライトとは異なる磁性体を含む磁性層と、前記磁性層の外表面側に担持されており、かつ前記目的物質と特異的に相互作用する物質とを備え、上記磁性層が、連続層である。本発明に係る磁性粒子では、上記の構成が備えられているので、集磁性を高めることができ、かつ高い集磁性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る磁性粒子を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の第2の実施形態に係る磁性粒子を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0023】
(磁性粒子)
本発明に係る磁性粒子は、目的物質と特異的に相互作用させるために用いられる。本発明に係る磁性粒子は、目的物質と特異的に相互作用させることができる磁性粒子である。本発明に係る磁性粒子は、樹脂粒子と、上記粒子の外表面上に配置され、かつフェライトとは異なる磁性体を含む磁性層と、上記磁性層の外表面側に担持されており、かつ上記目的物質と特異的に相互作用する物質とを備え、上記磁性層が、連続層である。
【0024】
本発明に係る磁性粒子では、上記の構成が備えられているので、集磁性を高めることができ、かつ高い集磁性を維持することができる。本発明では、長期間集磁性を高く維持することができる。本発明に係る磁性粒子では、集磁性の経時的な低下を抑えることができる。また、本発明に係る磁性粒子では、磁性粒子の分散性を高めることができる。また、本発明に係る磁性粒子では、該磁性粒子を用いた目的物質の測定において、該目的物質との結合量を多くすることができ、従って、測定精度及び測定感度を高めることができる。
【0025】
本発明では、フェライトとは異なる磁性体として、飽和磁化の高い磁性体を用いることができ、集磁性をより一層高くすることができる。また、飽和磁化の高い磁性体を用いることで磁性体の含有量を少なくすることができ、磁性粒子の比重を小さくすることができる。このため、磁性粒子の分散性もより一層高めることができる。
【0026】
上記磁性粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、更に好ましくは5μm以下、特に好ましくは4.5μm以下、最も好ましくは4μm以下である。上記磁性粒子の平均粒子径が上記下限以上であると、集磁性をより一層高めることができる。上記磁性粒子の平均粒子径が上記上限以下であると、単位重量あたりの上記目的物質と特異的に相互作用する物質の含有量を多くすることができ、目的物質の結合量を多くすることができる。
【0027】
上記磁性粒子の平均粒子径は、数平均粒子径である。上記磁性粒子の粒子径は、例えば、任意の磁性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各磁性粒子の粒子径の平均値を算出することにより求められる。上記磁性粒子を乾燥させた試料を作製し、得られた試料を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察することが好ましい。
【0028】
上記磁性粒子の平均粒子径の変動係数(CV値)は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。上記磁性粒子の平均粒子径の変動係数が上記上限以下であると、磁性粒子を用いた目的物質の測定において、測定精度をより一層高めることができる。
【0029】
上記変動係数(CV値)は、以下のようにして測定できる。
【0030】
CV値(%)=(ρ/Dn)×100
ρ:磁性粒子の粒子径の標準偏差
Dn:磁性粒子の粒子径の平均値
【0031】
以下、図面を参照しつつ、本発明を具体的に説明する。
【0032】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る磁性粒子を模式的に示す断面図である。
【0033】
図1に示す磁性粒子1は、目的物質を相互作用させるために用いられる。磁性粒子1は、樹脂粒子2と、磁性層3と、第1のシェル層41と、第2のシェル層42と、目的物質と相互作用する物質5とを備える。物質5は、例えば、アビジン、ストレプトアビジン、抗原及び抗体等の生理活性物質等である。
【0034】
磁性層3は、フェライトとは異なる磁性体を含む磁性層である。磁性層3は、連続層である。磁性層3は、例えば、磁性体の微粒子が凝集しかつ層状に形成された層とは異なる。
【0035】
磁性層3は、樹脂粒子2の外表面上に配置されている。第1のシェル層41は、磁性層3の外表面上に配置されている。第2のシェル層42は、第1のシェル層41の外表面上に配置されている。磁性層3の外表面側に、物質5が担持されている。第2のシェル層42の外表面上に、物質5が担持されている。第2のシェル層42と、物質5とが結合している。物質5は、磁性粒子1の表面に存在する。
【0036】
磁性層3は、単層の磁性層である。磁性層3は、樹脂粒子2の外表面の全体を覆っている。上記磁性粒子では、上記磁性層が上記樹脂粒子の外表面の全体を覆っていてもよく、上記磁性層が上記樹脂粒子の表面の一部を覆っていてもよい。上記磁性粒子では、上記磁性層は、単層の磁性層であってもよく、2層以上の層から構成される多層の磁性層であってもよい。
【0037】
第1のシェル層41は、単層のシェル層である。第1のシェル層41は、磁性層3の外表面の全体を覆っている。上記磁性粒子では、上記第1のシェル層が上記磁性層の外表面の全体を覆っていてもよく、上記第1のシェル層が上記磁性層の表面の一部を覆っていてもよい。
【0038】
第2のシェル層42は、単層のシェル層である。第2のシェル層42は、磁性層3の外表面の全体を覆っている。上記磁性粒子では、上記第2のシェル層が上記第1のシェル層の外表面の全体を覆っていてもよく、上記第2のシェル層が上記第1のシェル層の表面の一部を覆っていてもよい。
【0039】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る磁性粒子を模式的に示す断面図である。
【0040】
図2に示す磁性粒子1Aは、目的物質を相互作用させるために用いられる。磁性粒子1Aは、樹脂粒子2と、磁性層3と、シェル層4と、目的物質と相互作用する物質5とを備える。物質5は、例えば、アビジン、ストレプトアビジン、抗原及び抗体等である。
【0041】
磁性層3は、フェライトとは異なる磁性体を含む磁性層である。磁性層3は、連続層である。磁性層3は、例えば、磁性体の微粒子が凝集しかつ層状に形成された層とは異なる。
【0042】
磁性層3は、樹脂粒子2の外表面上に配置されている。シェル層4は、磁性層3の外表面上に配置されている。磁性層3の外表面側に、物質5が担持されている。シェル層4の外表面上に、物質5が担持されている。シェル層4と、物質5とが結合している。物質5は、磁性粒子1の表面に存在する。
【0043】
磁性層3は、単層の磁性層である。磁性層3は、樹脂粒子2の外表面の全体を覆っている。上記磁性粒子では、上記磁性層が上記樹脂粒子の外表面の全体を覆っていてもよく、上記磁性層が上記樹脂粒子の表面の一部を覆っていてもよい。上記磁性粒子では、上記磁性層は、単層の磁性層であってもよく、2層以上の層から構成される多層の磁性層であってもよい。
【0044】
シェル層4は、単層のシェル層である。シェル層4は、磁性層3の外表面の全体を覆っている。上記磁性粒子では、上記シェル層が上記磁性層の外表面の全体を覆っていてもよく、上記シェル層が上記磁性層の表面の一部を覆っていてもよい。
【0045】
本発明に係る磁性粒子では、フェライトとは異なる磁性体を含む上記磁性層を第1の磁性層として備え、該第1の磁性層の外表面上に非磁性層を備え、かつ該非磁性層の外表面上に磁性体を含む第2の磁性層が備えられている磁性粒子であってもよい。上記非磁性層は、非磁性の物質により形成される層である。上記非磁性層は、例えば、有機ポリマー層、無機酸化物層及び非磁性の金属層等が挙げられる。この場合、上記第1の磁性層は連続層であり、上記第2の磁性層は連続層であることが好ましい。この場合、上記第2の磁性層がある程度酸化されたとしても、磁性粒子において第2の磁性層よりも内側に位置する第1の磁性層はより一層酸化されにくいため、集磁性の経時的な低下をより一層効果的に抑えることができ、集磁性を高く維持することができる。
【0046】
また、本発明に係る磁性粒子は、フェライトとは異なる磁性体を含む上記磁性層を第1の磁性層として備え、該第1の磁性層の外表面上に2層以上の非磁性層及び2層以上の磁性層が配置されており、該第1の磁性層の外表面上において、上記磁性粒子の中心から外表面に向かって、該非磁性層と該磁性層とが交互に配置されている磁性粒子であってもよい。上記非磁性層は、非磁性の物質により形成される層である。上記非磁性層は、例えば、有機ポリマー層、無機酸化物層及び非磁性の金属層等が挙げられる。この場合、上記第1の磁性層は連続層であり、2層以上の上記磁性層は、それぞれ連続層であることが好ましい。磁性層を複数層設けることによって、酸化する磁性層の割合を少なくすることができ、集磁性の経時的な低下をより一層効果的に抑えることができ、集磁性を高く維持することができる。
【0047】
以下、磁性粒子の他の詳細について説明する。
【0048】
(樹脂粒子)
上記樹脂粒子の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂;ポリメチルメタクリレート及びポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂;ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ジビニルベンゼン重合体、並びにジビニルベンゼン共重合体等が挙げられる。上記ジビニルベンゼン共重合体等としては、ジビニルベンゼン-スチレン共重合体及びジビニルベンゼン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。上記樹脂粒子の材料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0049】
上記樹脂粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、更に好ましくは5μm以下、特に好ましくは4.5μm以下、最も好ましくは4μm以下である。上記樹脂粒子の平均粒子径が上記下限以上であると、集磁性をより一層高めることができる。上記樹脂粒子の平均粒子径が上記上限以下であると、磁性粒子の沈降を効果的に抑え、分散性をより一層高めることができ、また、磁性粒子の粒子径を小さくすることができるので、目的物質を効果的に相互作用させることができる。
【0050】
上記樹脂粒子の平均粒子径は、数平均粒子径である。上記樹脂粒子の平均粒子径は、任意の樹脂粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各樹脂粒子の粒子径の平均値を算出することにより求められる。上記磁性粒子又は上記樹脂粒子を乾燥させた試料を作製し、得られた試料を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察することが好ましい。
【0051】
上記樹脂粒子は、多孔質構造を有していてもよく、多孔質構造を有していなくてもよい。上記樹脂粒子は、該樹脂粒子の表層部において多孔質構造を有し、中心部において多孔質構造を有さない樹脂粒子であってもよい。樹脂粒子の表層部が多孔質構造を有することによって、樹脂粒子の内部に上記磁性層が至っていてもよい。
【0052】
(磁性層)
本発明に係る磁性粒子は、フェライトとは異なる磁性体を含む磁性層を備える。上記磁性体を含む磁性層は、上記樹脂粒子の外表面上に配置される。
【0053】
上記磁性層は、連続層である。上記磁性層は、樹脂粒子の外表面上の全部を被覆していてもよく、一部を被覆していてもよい。また、上記連続層は、樹脂粒子の外表面上の全部を被覆していてもよく、一部を被覆していてもよい。上記磁性層は、例えば、磁性体の微粒子が凝集しかつ層状に形成された層(凝集層)とは異なる。上記連続層は、例えば、微粒子の凝集体のように磁性層に無数の継ぎ目(例えば磁性粒子1個あたり1000個以上)が存在する形状とは異なり、継ぎ目が少ない或いは継ぎ目が無い構造を有する層を指す。上記磁性層は、めっき層であることが好ましい。上記磁性層は、海島構造を有していてもよい。
【0054】
上記磁性体は、フェライトとは異なる磁性体である。上記フェライトとしては、マグへマイト(γFe)及びMFeで表される化合物(MFe中、Mは、Co、Ni、Mn、Zn、Mg、Cu、Fe、Li0.5Fe0.5等)等が挙げられる。上記磁性体は、金属であることが好ましく、強磁性体であることがより好ましい。
【0055】
上記磁性体としては、コバルト、ニッケル、鉄、ホルミウム、ジスプロシウム、及びテルビウム等が挙げられる。上記磁性体は、合金であってもよい。上記合金としては、ニッケル-コバルト合金、コバルト-タングステン合金、鉄-白金合金、鉄-コバルト合金、サマリウム-コバルト合金、アルミニウム-ニッケル-コバルト合金、及びネオジム-鉄-ホウ素合金等が挙げられる。また、上記金属は、金属イオンであってもよい。上記磁性体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0056】
上記磁性体は、鉄原子を含まない磁性体であってもよい。
【0057】
集磁性をより一層高め、集磁性の経時的な低下をより一層効果的に抑え、かつ高い集磁性をより一層長期間維持する観点からは、上記磁性体は、ニッケル-コバルト合金、コバルト又はニッケルであることが好ましく、ニッケル-コバルト合金であることがより好ましい。
【0058】
上記磁性粒子100体積%中、上記磁性体の含有量は、好ましくは1体積%以上、より好ましくは2体積%以上、好ましくは70体積%以下、より好ましくは60体積%以下である。上記磁性体の含有量が上記下限以上であると、集磁性をより一層高めることができる。上記磁性体の含有量が上記上限以下であると、分散性をより一層高めることができる。
【0059】
上記樹脂粒子の外表面の全表面積100%中、上記磁性層により覆われている表面積は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上、最も好ましくは100%である。上記表面積が上記下限以上であると、集磁性をより一層高めることができ、集磁性の経時的な低下をより一層効果的に抑えることができ、かつ高い集磁性をより一層長期間維持することができる。
【0060】
上記磁性層の厚みは、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上であり、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下である。上記磁性層の厚みは、磁性層が多層である場合には磁性層全体の厚みである。上記磁性層の厚みが上記下限以上であると、集磁性をより一層高めることができ、集磁性の経時的な低下をより一層効果的に抑えることができ、かつ高い集磁性をより一層長期間維持することができる。上記磁性層の厚みが上記上限以下であると、磁性粒子の沈降を効果的に抑え、分散性をより一層高めることができ、また、磁性粒子の粒子径を小さくすることができるので、磁性粒子の単位重量当たりの目的物質の結合量を多くすることができる。
【0061】
上記磁性層の厚みは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、磁性粒子の断面を観察することにより測定できる。上記磁性層の厚みについては、任意の磁性層の厚み5箇所の平均値を1個の磁性粒子の磁性層の厚みとして算出することが好ましく、磁性層全体の厚みの平均値を1個の磁性粒子の磁性層の厚みとして算出することがより好ましい。上記磁性層の厚みは、任意の磁性粒子10個について、各磁性粒子の磁性層の厚みの平均値を算出することにより求めることが好ましい。
【0062】
上記樹脂粒子の外表面上に磁性層を形成させる方法としては、還元することで磁性体となる金属イオンを用いて、上記樹脂粒子の表面にめっきする方法等が挙げられる。
【0063】
(シェル層)
本発明に係る磁性粒子は、シェル層を備えることが好ましい。上記シェル層の材料は、無機酸化物、有機ポリマー又は非磁性の金属を含む。上記シェル層は、該シェル層の材料として上記無機酸化物を含む無機酸化物シェル層であるか、該シェル層の材料として上記有機ポリマーを含む有機ポリマーシェル層であるか、又は該シェル層の材料として上記非磁性の金属を含む金属層である。上記シェル層の材料は、無機酸化物、有機ポリマー又は非磁性の金属であることが好ましい。上記シェル層は、上記磁性層の外表面上に配置されることが好ましい。上記磁性粒子が上記シェル層を備えることにより、上記目的物質と特異的に相互作用する上記物質を磁性粒子の表面に良好に配置することができ、また、磁性粒子の分散性を高めることができる。
【0064】
上記シェル層は、磁性体を含んでもよく、磁性体を含まなくてもよい。上記シェル層は、磁性体を含まないことがより好ましい。
【0065】
上記シェル層は、上記磁性層の外表面上に配置された第1のシェル層と、該第1のシェル層の外表面上に配置された第2のシェル層とを備えることが好ましい。この場合に、上記第1のシェル層の材料が、無機酸化物又は非磁性の金属であり、上記第2のシェル層の材料が、無機酸化物又は有機ポリマーであることが好ましく、上記第2のシェル層と、上記目的物質と特異的に相互作用する上記物質とが結合していることが好ましい。
【0066】
上記第1のシェル層における無機酸化物と、上記第2のシェル層における無機酸化物とは異なることが好ましい。
【0067】
磁性粒子の分散性をより一層高める観点からは、上記シェル層の材料又は第2のシェル層の材料は、上記無機酸化物であることが好ましく、無機酸化物シェル層であることが好ましい。
【0068】
<第1のシェル層>
上記第1のシェル層は、上記磁性層の外表面上に配置される層である。磁性粒子が第2のシェル層を備えない場合に、上記第1のシェル層は、上記シェル層である。磁性粒子が第2のシェル層を備えない場合に、上記第1のシェル層と上記物質とが結合していることが好ましい。
【0069】
上記第1のシェル層の材料は、無機酸化物又は非磁性の金属であることが好ましい。上記無機酸化物とは、金属元素又は半金属元素と、酸素原子とを少なくとも有する化合物を意味する。上記第1のシェル層の材料は1種のみ用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0070】
上記第1のシェル層の材料における上記無機酸化物又は上記非磁性の金属は、銅、銀、金、パラジウム-銀合金、白金-銀合金、インジウム-銀合金、スズ-銀合金、ビスマス-銀合金、タングステン-銀合金、モリブデン-銀合金、ルテニウム-銀合金、ロジウム-銀合金、イリジウム-銀合金、リン、又はホウ素を含むことが好ましい。この場合、磁性層の酸化を効果的に抑え、高い集磁性をより一層長期間維持することができる。
【0071】
上記第1のシェル層は、めっき層であってもよい。
【0072】
<第2のシェル層>
上記第2のシェル層は、上記第1のシェル層の外表面上に配置される層である。磁性粒子が第1のシェル層を備えない場合に、上記第2のシェル層は、上記シェル層である。磁性粒子が第1のシェル層を備えない場合に、上記第2のシェル層と上記物質とが結合していることが好ましい。
【0073】
上記第2のシェル層の材料は、無機酸化物又は有機ポリマーであることが好ましい。上記無機酸化物とは、金属元素又は半金属元素と、酸素原子とを少なくとも有する化合物を意味する。上記第1のシェル層の材料は1種のみ用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0074】
上記無機酸化物とは、金属元素又は半金属元素と、酸素原子とを少なくとも有する化合物を意味する。上記無機酸化物としては、特に限定されない。上記無機酸化物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が用いられてもよい。
【0075】
上記無機酸化物は、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、チタン原子又はジルコニウム原子を有する無機酸化物であることが好ましい。また、上記無機酸化物は、上記磁性層の外表面と反応可能な官能基を有することが好ましい。
【0076】
上記無機酸化物としては、具体的には、オルトケイ酸テトラエチル等のアルコキシシラン及びその加水分解物に代表されるシラン化合物、ゲルマニウムテトラエトキシド等のアルコキシゲルマニウム及びその加水分解物に代表されるゲルマニウム化合物、チタンテトラエトキシド等のアルコキシチタン及びその加水分解物に代表されるチタン化合物、ジルコニウムテトラブトキシド等のアルコキシジルコニウム及びその加水分解物に代表されるジルコニウム化合物等が挙げられる。
【0077】
磁性粒子の分散性を高く維持する観点からは、上記無機酸化物は、比重の小さい化合物であることが好ましく、上記の例示の中では上記シラン化合物であることが最も好ましい。
【0078】
上記シラン化合物としては、例えば、オルトケイ酸テトラエチル;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、7-オクテニルトリメトキシシラン等のビニル基含有シラン化合物;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シラン化合物;p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基含有シラン化合物;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、8-メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン等のメタクリル基含有シラン化合物;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル基含有シラン化合物;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、N-2-(アミノエチル)-8-アミノオクチルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シラン化合物;トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート基含有シラン化合物;3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン等のウレイド基含有シラン化合物;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シラン化合物;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シラン化合物;3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物含有シラン化合物;3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物の加水分解物等のカルボン酸含有シラン化合物等が挙げられる。
【0079】
例えば、磁性層の表面を種々の官能基を有するシランカップリング剤で処理することにより、上記磁性層の外表面上にケイ素原子を有する無機酸化物シェル層を形成させることができる。また、同様にして、第1のシェル層の外表面上にケイ素原子を有する無機酸化物シェル層を形成させることができる。
【0080】
上記無機酸化物シェル層100重量%中、上記無機酸化物の含有量は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
【0081】
上記有機ポリマーは、特に限定されないが、ビニル系ポリマーであることが好ましい。
【0082】
上記ビニル系ポリマーの材料に用いられるビニル系モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等のビニルエーテル化合物;酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の酸ビニルエステル化合物;塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の酸素原子含有(メタ)アクリレート化合物;トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート等のハロゲン含有(メタ)アクリレート化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシシラン、ジメトキシエチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジエトキシエチルビニルシラン、エチルメチルジビニルシラン、メチルビニルジメトキシシラン、エチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、エチルビニルジエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性二重結合含有シランアルコキシド等が挙げられる。
【0083】
上記ビニル系ポリマーは1種のビニル系モノマーが重合した単独重合体であってもよく、2種以上のビニル系モノマーが重合した共重合体であってもよい。
【0084】
例えば、母粒子の存在下で、主原料としてのビニル系モノマー等の共重合モノマーと、必要に応じて副原料である重合開始剤、乳化剤、分散剤、界面活性剤、電解質、架橋剤、分子量調節剤等を添加し、液体中で重合を行うことにより、上記磁性層の外表面上に有機ポリマーシェル層を形成させることができる。
【0085】
上記有機ポリマーシェル層100重量%中、上記有機ポリマーの含有量は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
【0086】
上記シェル層は、上記目的物質と特異的に相互作用する上記物質と結合する前において、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、トシル基、チオール基、トリエチルアンモニウム基、ジメチルアミノ基及びスルホン酸基等の官能基を有することが好ましい。上記シェル層が上記官能基を有する場合には、上記目的物質と特異的に相互作用する上記物質を上記シェル層の外表面上に良好に担持させることができ、該物質を磁性粒子の表面に良好に配置することができる。
【0087】
上記シェル層は、外表面上にリンカー部を有していてもよい。上記シェル層が上記リンカー部を有することにより、上記目的物質と特異的に相互作用する上記物質との結合点である上記官能基を、上記シェル層の最表面からより離れた位置に配置することができ、立体的な障害がより少ない位置で上記官能基と上記物質とが接触可能になる。このため、上記物質が結合しやすくなり、上記物質を磁性粒子の表面に良好に配置することができる。
【0088】
上記リンカー部は、上記目的物質と特異的に相互作用する上記物質と結合する前において、末端に、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、トシル基、チオール基等の目的物質と共有結合可能な官能基を有していることが好ましい。上記官能基と、上記目的物質と特異的に相互作用する上記物質の官能基とを反応させることにより、上記シェル層と、該物質とを化学結合させることができる。上記エポキシ基は、グリシジル基含有モノマー由来のエポキシ基であってもよい。上記水酸基は、上記エポキシ基の開環により生じる水酸基であってもよい。
【0089】
上記リンカー部の材料は、複数のエポキシ基を末端に有するエポキシ化合物であることが好ましい。上記複数のエポキシ基を末端に有するエポキシ化合物は、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、又はトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルであることが好ましい。上記複数のエポキシ基を末端に有するエポキシ化合物は、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルであることがより好ましい。
【0090】
上記磁性層の外表面の全表面積100%中、上記シェル層により覆われている表面積は、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上、最も好ましくは100%である。上記表面積が上記下限以上であると、上記目的物質と特異的に相互作用する上記物質の含有量を多くすることができ、その結果、磁性粒子を用いた目的物質の測定において、測定精度及び測定感度を高めることができる。
【0091】
上記シェル層の厚み(第1のシェル層の厚みと第2のシェル層の厚みとの合計)は、好ましくは20nm以上、より好ましくは40nm以上であり、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下である。上記シェル層の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、磁性粒子の沈降を効果的に抑え、分散性をより一層高めることができ、また、磁性粒子の粒子径を小さくすることができるので、目的物質を効果的に結合させることができる。さらに、上記シェル層の厚みが上記下限以上であると、磁性層の酸化を防止し、集磁性の経時的な低下をより一層抑えることができる。
【0092】
上記シェル層の厚みは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、磁性粒子の断面を観察することにより測定できる。上記シェル層の厚みについては、任意のシェル層の厚み5箇所の平均値を1個の磁性粒子のシェル層の厚みとして算出することが好ましく、シェル層全体の厚みの平均値を1個の磁性粒子のシェル層の厚みとして算出することがより好ましい。上記シェル層の厚みは、任意の磁性粒子10個について、各磁性粒子のシェル層の厚みの平均値を算出することにより求めることが好ましい。
【0093】
(目的物質と特異的に相互作用する物質)
本発明に係る磁性粒子の表面において、目的物質と特異的に相互作用する物質が存在する。上記物質としては、糖鎖、ペプチド鎖、タンパク質、抗原、及びヌクレオチド鎖等が挙げられる。上記物質は、該目的物質の種類によって適宜変更可能である。上記物質は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0094】
上記物質と上記目的物質との相互作用としては、例えば、抗原抗体反応及び酵素と基質の相互作用等が挙げられる。上記物質と上記目的物質との相互作用は、上記物質と上記目的物質との非共有結合的な相互作用であってもよく、上記物質と上記目的物質との共有結合であってもよい。上記非共有結合的な相互作用としては、疎水性相互作用、静電的相互作用、ファンデルワールス力、水素結合、配位結合及びイオン結合等が挙げられる。
【0095】
上記目的物質と特異的に相互作用する物質は、上記目的物質と非共有結合的な相互作用が可能な物質であること好ましい。
【0096】
上記目的物質と特異的に相互作用する上記物質と、該目的物質の組み合わせとしては、抗体と抗原との組み合わせ、糖鎖とレクチン等のタンパク質との組み合わせ、酵素等のタンパク質とインヒビターとの組み合わせ、ペプチドとタンパク質との組み合わせ、ヌクレオチド鎖とヌクレオチド鎖との組み合わせ、ヌクレオチド鎖とタンパク質との組み合わせ等が挙げられる。
【0097】
上記目的物質と特異的に相互作用する上記物質は、タンパク質であることが好ましく、アビジン又はストレプトアビジンであることがより好ましい。また、上記目的物質と特異的に相互作用する上記物質は、抗原又は抗体であることが好ましい。
【0098】
上記抗体は、ポリクローナル抗体であってもよく、モノクロナール抗体であってもよい。上記抗体は、パパイン及びペプシン等のタンパク質分解酵素により処理されていてもよく、Fab及びF(ab’)2フラグメント等であってもよい。
【0099】
上記目的物質と特異的に相互作用する上記物質の配置方法は、特に限定されない。例えば、上記物質と、該物質が担持される前の磁性粒子とを混合することにより、該物質を該磁性粒子の表面に配置することができる。
【0100】
(目的物質)
上記目的物質とは、上述した物質と特異的に相互作用する物質である。
【0101】
上記目的物質としては、タンパク質、核酸、ホルモン、癌マーカー、呼吸器関連マーカー、心疾患マーカー及び薬物等挙げられる。
【0102】
上記タンパク質としては、高比重リポタンパク質(HDL)、低比重リポタンパク質(LDL)、超低比重リポタンパク質等の脂質タンパク質;アルカリホスファターゼ、アミラーゼ、酸性ホスファターゼ、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(γ-GTP)、リパーゼ、クレアチンキナーゼ(CK)、乳酸脱水素酵素(LDH)、グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)、レニン、プロテインキナーゼ(PK)、チロシンキナーゼ等の酵素;IgG、IgM、IgA、IgD、IgE等の免疫グロブリン(又はこれらのFc部、Fab部及びF(ab)2部等の断片);例えばフィブリノーゲン、フィブリン分解産物(FDP)、プロトロンビン、トロンビン等の血液凝固関連因子;抗ストレプトリジンO抗体、抗ヒトB型肝炎ウイルス表面抗原抗体(HBs抗原)、抗ヒトC型肝炎ウイルス抗体、抗リュウマチ因子等の抗体;アルブミン、ヘモグロビン、ミオグロビン、トランスフェリン、プロテインA、C反応性蛋白質(CRP)等が挙げられる。
【0103】
上記核酸としては、DNA及びRNA等が挙げられる。
【0104】
上記ホルモンとしては、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、甲状腺ホルモン(FT3、FT4、T3、T4)、副甲状腺ホルモン(PTH)、及びヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)エストラジオール(E2)等が挙げられる。
【0105】
上記癌マーカーとしては、α-フェトプロテイン(AFP)、PIVKA-II、癌胎児性抗原(CEA)、CA19-9、及び前立腺特異抗原(PSA)等が挙げられる。
【0106】
上記呼吸器関連マーカーとしては、KL-6等が挙げられる。
【0107】
上記心疾患マーカーとしては、トロポニンT(TnT)、及びヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)等が挙げられる。
【0108】
上記薬物としては、抗てんかん薬、抗生物質、及びテオフィリン等が挙げられる。
【0109】
(磁性粒子の他の詳細)
上記磁性粒子は、放射免疫測定法(RIA)、酵素免疫測定法(EIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、電気化学発光法(ECLIA)、化学発光免疫測定法(CLIA及びCLEIA)、吸光度測定、並びに表面プラズモン共鳴等の測定において、好適に用いられる。上記磁性粒子は、サンドイッチ法及び競合法の測定において、好適に用いられる。
【0110】
上記磁性粒子は、検体中の上記目的物質の濃度を測定にするために好適に用いられる。
【0111】
上記磁性粒子は、検査薬として好適に用いられる。上記磁性粒子は、検査薬として用いることができる磁性粒子であることが好ましい。
【0112】
上記磁性粒子を用いた目的物質の濃度測定は、例えば、以下のようにして行うことができる。
【0113】
上記磁性粒子を含む液(例えば、後述の検査薬)と、目的物質を含む検体とを混合し、混合液を得る。得られた混合液を加温等して、磁性粒子における上記目的物質と特異的に相互作用する上記物質と、検体中の目的物質を結合させた反応液を得る(第1の反応工程)。次いで、磁石等により、反応液に磁力を加え、磁性粒子を集める(集磁工程)。未反応の検体を除去したのち、洗浄液を添加し、混合する(洗浄工程)。なお、集磁工程及び洗浄工程は、複数回繰り返されてもよい。次いで、洗浄液を除去した後、該目的物質と標識物質とを反応させて、目的物質の濃度を測定する(第2の反応工程)。
【0114】
上記標識物質としては、例えば酵素免疫測定法(EIA)において好適に用いられるアルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース-6-リン酸脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素、ルシフェラーゼ、チロシナーゼ、酸性ホスファターゼ等の酵素;例えば放射免疫測定法(RIA)において好適に用いられる99mTc、131I、125I、14C、3H、32P等の放射性同位元素;例えば蛍光免疫測定法(FIA)において好適に用いられるフルオレセイン、ダンシル、フルオレスカミン、クマリン、ナフチルアミン及びこれらの誘導体、グリーン蛍光タンパク質(GFP)等の蛍光性物質、例えばルシフェリン、イソルミノール、ルミノール、ビス(2,4,6-トリフロロフェニル)オキザレート等の発光性物質、例えばフェノール、ナフトール、アントラセン及びこれらの誘導体等の紫外部に吸収を有する物質、例えば4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、3-アミノ-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシル、2,6-ジ-t-ブチル-α-(3,5-ジ-t-ブチル-4-オキソ-2,5-シクロヘキサジエン-1-イリデン)-p-トリオキシル等のオキシル基を有する化合物等のスピンラベル化剤としての性質を有する化合物等が挙げられる。測定感度を高める観点からは、上記標識物質は、酵素又は蛍光性物質であることが好ましく、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ又はグルコースオキシダーゼであることがより好ましく、ペルオキシダーゼであることが更に好ましい。
【0115】
(検査薬)
上記検査薬は、上述した磁性粒子を含む。
【0116】
上記検査薬は、緩衝液を含むことが好ましい。
【0117】
上記緩衝液は、pH5.0以上9.0以下において緩衝能を有する緩衝液であることが好ましい。上記緩衝液としては、リン酸緩衝液、グリシン緩衝液、ベロナール緩衝液、トリス緩衝液、ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液、及びグッド緩衝液等が挙げられる。
【0118】
上記検査薬は、増感剤、タンパク質等の高分子化合物、アミノ酸、及び界面活性剤等の他の成分を含んでいてもよい。
【0119】
上記検査薬が上記増感剤を含むことにより、目的物質と該目的物質と特異的に相互作用する上記物質との反応を効率的に進行させることができ、また、測定精度を高めることができる。上記増感剤としては、メチルセルロース及びエチルセルロース等のアルキル化多糖化合物、プルラン、並びにポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0120】
上記タンパク質としては、アルブミン(牛血清アルブミン及び卵性アルブミン等)、カゼイン、及びゼラチン等が挙げられる。
【0121】
上記検査薬100重量%中、上記磁性粒子の含有量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは2重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。上記磁性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、目的物質の測定精度をより一層高めることができる。
【0122】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。なお、以下の実施例1,2,4~11は参考例である。
【0123】
(実施例1)
樹脂粒子として、積水化学工業社製「ミクロパールEX-003」を用いた。
【0124】
磁性層の形成:
パラジウム触媒液5.0重量%を含むアルカリ溶液100重量部に、平均粒子径2.98μmのミクロパールEX-003(積水化学工業社製)10重量部を、超音波分散器を用いて分散させた後、得られた溶液をろ過することにより、上記樹脂粒子を取り出した。
【0125】
次いで、この樹脂粒子をジメチルアミンボラン1.0重量%溶液100重量部に添加し、該樹脂粒子の表面を活性化させた。表面が活性化された上記樹脂粒子を十分に水洗した後、蒸留水500重量部に加え、分散させることにより、懸濁液を得た。
【0126】
得られた懸濁液を硫酸ニッケル80g/L、硝酸タリウム10ppm、硝酸ビスマス5.0ppm、クエン酸3ナトリウム2.0g/L、及びアンモニア水10g/Lを含む溶液中に添加し、粒子混合液を得た。
【0127】
また、硫酸コバルト30g/L、硝酸タリウム10ppm、硝酸ビスマス5.0ppm、クエン酸3ナトリウム2.0g/L、及びアンモニア水10g/Lを蒸留水に溶解した、コバルトめっき液を用意した。
【0128】
60℃に調整した分散状態の粒子混合液にジメチルアミンボラン1.0重量%溶液を40mL/分で10分間滴下したところで、コバルトめっき液を40mL/分で滴下開始し、上記樹脂粒子の表面にニッケル-コバルト合金めっきを行った。その後、ろ過することにより粒子を取り出し、水洗した。このようにして、樹脂粒子の外表面上に磁性体としてニッケル-コバルト合金を含む磁性層(連続層)を有する樹脂粒子を得た。
【0129】
目的物質と特異的に相互作用する物質の配置:
磁性層を有する樹脂粒子の水分散液0.5mLを試験管に加え、PBS溶液を用いて3回洗浄した。分散媒を除去した後、シアル化糖鎖抗原KL-6(以下、KL-6と略記)抗体を含むPBS溶液(0.75mg/mL)0.5mLを加え、25℃にて一夜撹拌した。その後、1.0重量%BSA溶液を1.5mL添加し、25℃にて4時間撹拌した。続いて、1.0重量%BSA溶液1.5mLを用いて分散と磁石を用いた試験管壁面への集磁を3回繰り返し、抗KL-6抗体が感作された磁性粒子分散液を調製した。
【0130】
(実施例2)
シェル層の形成:
実施例1で得られた磁性層を有する樹脂粒子1重量部に、エタノール400重量部及び28%アンモニア水溶液(ナカライテスク社製)20重量部を加えた。次いで、オルトケイ酸テトラエチルを5.0重量部及び8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン15重量部を加え、1時間撹拌した。得られた分散液をろ過後、水で洗浄した。このようにして、表面に官能基を有する無機酸化物シェル層及び磁性層を有する樹脂粒子を得た。
【0131】
目的物質と特異的に相互作用する物質の配置:
実施例1と同様にして、磁性粒子の表面に抗KL-6抗体が存在する磁性粒子を得た。
【0132】
(実施例3)
第1のシェル層の形成:
実施例1で得られた磁性層を有する樹脂粒子1.0重量部を蒸留水300重量部に分散させ、粒子混合液を得た。無電解銀めっき液として、硝酸銀30g/L、コハク酸イミド100g/L、及びホルムアルデヒド20g/Lの混合液を、アンモニア水にてpH8.0に調整した銀めっき液を上記粒子混合液に徐々に滴下し、無電解銀めっきを行った。その後、ろ過することにより粒子を取り出し、水洗した。このようにして、非磁性の銀層(第1のシェル層)及び磁性層を有する樹脂粒子を得た。
【0133】
第2のシェル層の形成:
非磁性の銀層(第1のシェル層)及び磁性層を有する樹脂粒子を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、表面に官能基を有する無機酸化物シェル層(第2のシェル層)を形成した。
【0134】
目的物質と特異的に相互作用する物質の配置:
実施例1と同様にして、磁性粒子の表面に抗KL-6抗体が存在する磁性粒子を得た。
【0135】
(実施例4~11)
磁性粒子の構成を表1,2のように変更したこと以外は、実施例2と同様にして磁性粒子を得た。
【0136】
(比較例1)
樹脂粒子の作製:
実施例1と同様の樹脂粒子を用いた。
【0137】
磁性層の形成:
平均粒子径3.00μmのミクロパールEX-003(積水化学工業社製)1.0重量部と、磁性流体(平均粒子径約10nmの四酸化三鉄ナノ粒子の水分散液、フェローテック社製「EMG707」)4.0重量部(但し、そのうち磁性体の含有量は約17重量%)とを250rpmで10分間撹拌した。得られた粒子分散液を、水を用いてろ過及び洗浄し、樹脂粒子の外表面上に磁性体として四酸化三鉄を含む磁性層(凝集層)を有する樹脂粒子を得た。
【0138】
シェル層の形成:
実施例2と同様にしてシェル層を有する磁性粒子を得た。
【0139】
目的物質と特異的に相互作用する物質の配置:
実施例1と同様にして、磁性粒子の表面に抗KL-6抗体が存在する磁性粒子を得た。
【0140】
(比較例2)
樹脂粒子の作製:
実施例1と同様の樹脂粒子を用いた。
【0141】
磁性層の形成:
油性磁性流体(平均粒子径約10nmの四酸化三鉄ナノ粒子の有機溶剤分散液、フェローテック社製「EXPシリーズ」)にアセトンを加えて粒子を析出沈殿させた後、これを乾燥することにより、疎水化処理された表面を有するフェライト系の磁性体微粒子(平均一次粒子径:10nm)を得た。
【0142】
次いで、上記樹脂粒子1.0重量部と上記疎水化された表面を有するフェライト系の磁性体微粒子1.0重量部とをミキサーでよく混合した。得られた混合物を、ハイブリダイゼーションシステムNHS-0型(奈良機械製作所社製)を用いて、羽根(撹拌翼)の周速度100m/秒(16200rpm)で5分間処理し、樹脂粒子の外表面上に第2の磁性体により磁性層を形成した。
【0143】
シェル層の形成:
得られた磁性層を有する粒子10重量部と、分散剤としてノニオン性乳化剤(花王社製「エマルゲン150」)の0.5%水溶液300重量部とを1Lセパラブルフラスコに投入し、撹拌した。これに、モノマーとして、シクロヘキシルメタクリレート24重量部及び2-メタクリロイロキシエチルコハク酸60重量部と、開始剤として、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド(日油社製「パーロイル355」)1重量部とを添加し、80℃、200rpmで8時間撹拌した。このようにして、該磁性層の外表面上にカルボキシル基を有する有機ポリマーシェル層を形成した。上記有機ポリマーは、シクロヘキシルメタクリレートと2-メタクリロイロキシエチルコハク酸との共重合体である。
【0144】
目的物質と特異的に相互作用する物質の配置:
得られたシェル層及び磁性層を有する樹脂粒子を用いて、実施例1と同様にして、抗KL-6抗体を配置した。このようにして、磁性粒子を得た。
【0145】
(比較例3)
硫酸ニッケル10重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1重量部及びイオン交換水200重量部を均一に攪拌し、攪拌物の温度を60℃に調整した。上記攪拌物にジメチルアミンボラン5重量%溶液を4重量部/分で10分間滴下し、平均粒子径約10nmのニッケルナノ粒子水分散液を得た。次いで、上記ニッケルナノ粒子水分散液にアセトンを加えて粒子を沈殿させた後、ろ過し、エタノールで洗浄した。ろ紙上のニッケルナノ粒子の沈殿物をドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1重量部%水溶液に分散させ、固形分約17%の分散液を調製した。この分散液4.0重量部とミクロパールEX-003(平均粒子径2.99μm、積水化学工業社製)1.0重量部とを、250rpmで10分間撹拌して、粒子分散液を得た。得られた粒子分散液を、エタノール及び水を用いてろ過及び洗浄し、樹脂粒子の外表面上に磁性体としてニッケルを含む磁性層(凝集層)を有する樹脂粒子を得た。さらに、磁性層の外表面上に、シェル層として、ポリスチレン(PSt)を含むシェル層(有機ポリマーシェル層)を形成して、磁性粒子を得た。
【0146】
(比較例4)
硫酸ニッケル10重量部を硫酸ニッケル5重量部及び硫酸コバルト5重量部に変更したこと以外は、比較例3と同様にして、樹脂粒子の外表面上に磁性体としてニッケル-コバルト合金を含む磁性層(凝集層)を有する樹脂粒子を得た。さらに、比較例1と同様にして、シェル層及びシェル層の外表面上に抗KL-6抗体が存在する磁性粒子を得た。
【0147】
(評価)
(1)樹脂粒子及び磁性粒子の平均粒子径
得られた樹脂粒子及び磁性粒子について、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製「Regulus8220」)を用いて、樹脂粒子及び磁性粒子の平均粒子径を算出した。具体的には、得られた磁性粒子を乾燥させた試料を作製し、得られた試料を走査型電子顕微鏡にて観察し、任意の50個の磁性粒子、及び磁性粒子における樹脂粒子の粒子径を測定し、平均値を算出することにより求めた。
【0148】
(2)磁性粒子100体積%中の磁性体の含有量
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて磁性粒子の断面を観察した。観察された磁性粒子の断面において、磁性層の厚みをr、樹脂粒子の半径をr、磁性粒子の半径をrとし、以下の式を用いて磁性体の含有量(体積%)を算出した。
【0149】
磁性体の含有量(体積%)=[{(r+r-(r}/(r]×100
【0150】
(3)磁性層及びシェル層の厚み
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、磁性粒子の断面を観察した。
【0151】
任意の磁性層の厚み5箇所の平均値を1個の磁性粒子の磁性層の厚みとして算出し、かつ磁性層全体の厚みの平均値を1個の磁性粒子の磁性層の厚みとして算出した。磁性層の厚みは、任意の磁性粒子10個について、各磁性粒子の磁性層の厚みの平均値を算出することにより求めた。
【0152】
任意のシェル層の厚み5箇所の平均値を1個の磁性粒子のシェル層の厚みとして算出し、かつシェル層全体の厚みの平均値を1個の磁性粒子のシェル層の厚みとして算出した。シェル層の厚みは、任意の磁性粒子10個について、各磁性粒子のシェル層の厚みの平均値を算出することにより求めた。
【0153】
(4)集磁率
磁性粒子を水に分散させることによって、波長550nmにおける吸光度が0.9~1.1に調整された試料溶液を用意した。スペーサー(W10mm×D10mm×H8mm)を介し磁石(2800G、W10mm×D10mm×H1mm)をあてた状態で分光光度計(日立製作所社製「U-3900H」)に設置した石英セルに、試料溶液1.6mLを投入し、試料溶液投入後5秒後~155秒後の波長550nmにおける吸光度を測定した。この150秒間での吸光度減衰率を以下の式により算出し、集磁率とした。
【0154】
集磁率(%)=[{(5秒後の吸光度)-(155秒後の吸光度)}/(5秒後の吸光度)]×100
【0155】
[集磁率の判定基準]
○○:集磁率が90%以上
○:集磁率が60%以上90%未満
△:集磁率が40%以上60%未満
×:集磁率が40%未満
【0156】
(5)集磁率(1カ月放置後)
得られた磁性粒子を1カ月25℃で放置した。放置後の磁性粒子を用いて、(4)集磁率と同様の方法で集磁率を求めた。
【0157】
[集磁率(1カ月放置後)の判定基準]
○○:集磁率が90%以上
○:集磁率が60%以上90%未満
△:集磁率が40%以上60%未満
×:集磁率が40%未満
【0158】
(6)分散率
磁性粒子を水に分散させることによって、波長550nmにおける吸光度が0.9~1.1に調整された試料溶液を用意した。分光光度計(日立製作所社製「U-3900H」)に設置した石英セルに、試料溶液1.3mLを投入し、波長550nmにおける吸光度を測定した。次いで、磁石(28000G、W40mm×D40mm×H10mm)を用いて、上澄みの吸光度が0になるまで集磁した。その後、ボルテックスにより2000rpm、5秒間、磁性粒子を分散させて、波長550nmにおける吸光度を測定した。集磁前の吸光度と、集磁及び分散後の吸光度とから、吸光度の変化率を以下の式により算出し、分散率とした。
【0159】
分散率(%)={(集磁及び分散後の吸光度)/(集磁前の吸光度)}×100
【0160】
[分散率の判定基準]
○○:分散率が95%以上
○:分散率が90%以上95%未満
△:分散率が85%以上90%未満
×:分散率が85%未満
【0161】
(7)免疫測定(磁性粒子の単位重量当たりの発光量)
KL-6を含まない溶液(抗原未含有溶液)と、5000U/mLのKL-6を含む溶液(抗原含有溶液)を用意した。抗原未含有溶液を用いた免疫測定における発光量と、抗原含有溶液を用いた免疫測定における発光量との差を求めることにより、磁性粒子と目的物質(KL-6)との結合能を評価した。具体的には、以下の手順で評価を行った。
【0162】
ルテニウム錯体標識抗KL-6抗体(二次抗体)の作製:
ポリプロピレンチューブに抗KL-6抗体のPBS-1溶液(抗KL-6抗体濃度2.0mg/mL)0.5mLを加え、次いでRu-NHS(10mg/mL)を13μL加えた。25℃にて振動撹拌した後、Sephadex G25カラムを用いて精製し、ルテニウム錯体標識抗KL-6抗体を得た。
【0163】
免疫測定:
電気化学発光免疫測定法を測定原理としたECLIA自動分析装置(積水メディカル社製「ピコルミIII」)を用いて、以下のようにして発光量の測定を行った。反応溶液(正常ウサギ血清を含む緩衝液)200μLに5000U/mLのKL-6を含む溶液(抗原含有溶液)20μLを加えたのち、磁性粒子25μLを加えた。30℃で9分間反応させたのち、ピコルミBF洗浄液(10mMトリス緩衝液)を350μL加え、磁性粒子を磁石でトラップしながら3回洗浄した。次いで、1.0μg/mLのルテニウム錯体標識抗KL-6抗体を含むルテニウム標識抗体含有液200μLを加え、30℃で9分間反応させたのち、ピコルミBF洗浄液(10mMトリス緩衝液)を350μL加え、磁性粒子を磁石でトラップしながら3回洗浄した。次いで、0.1Mトリプロピルアミンを含むピコルミ発光電解液300μLを加え、電極表面に送液し、磁性粒子に結合したルテニウム錯体の発光量を測定した。抗原未含有溶液を用いた免疫測定における発光量と、抗原含有溶液を用いた免疫測定における発光量との差Xを求めた。
【0164】
[磁性粒子の単位重量当たりの発光量の判定基準]
○○:差Xが150000以上
○:差Xが125000以上150000未満
△:差Xが100000以上125000未満
×:差Xが100000未満
【0165】
磁性粒子の構成及び結果を下記の表1,2に示す。
【0166】
【表1】
【0167】
【表2】
【符号の説明】
【0168】
1,1A…磁性粒子
2…樹脂粒子
3…磁性層
4…シェル層
5…物質
41…第1のシェル層
42…第2のシェル層
図1
図2