(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 41/04 20060101AFI20240611BHJP
B65D 41/34 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B65D41/04 500
B65D41/34
B65D41/34 110
(21)【出願番号】P 2021058363
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000145219
【氏名又は名称】株式会社CSIジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】相澤 恒
(72)【発明者】
【氏名】金野 誠
(72)【発明者】
【氏名】亀田 克巳
(72)【発明者】
【氏名】坂井 良嗣
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 忠幸
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-79106(JP,A)
【文献】特開2008-296931(JP,A)
【文献】特開平8-175560(JP,A)
【文献】特開2009-286013(JP,A)
【文献】米国特許第5755345(US,A)
【文献】中国実用新案第209337267(CN,U)
【文献】独国特許出願公開第102007001779(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 41/04
B65D 41/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板と、前記天板の外周縁から下方に延びる筒状体とを有する本体部と、
前記本体部の前記筒状体の外面に設けられた開栓用把持部とを備え、
前記開栓用把持部は、薄肉部と、前記筒状体の円周方向において前記薄肉部に隣接する厚肉部とを有し、
前記筒状体のうち、前記厚肉部に覆われる部分に、径方向外方に突出する凸部が形成されている、キャップ。
【請求項2】
前記開栓用把持部は、エラストマー樹脂を含む、請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記筒状体のうち、前記開栓用把持部に覆われる部分に、径方向内方に窪む凹部が形成され、前記凸部は、前記凹部内に形成され、前記凸部の上端の上下方向位置は、前記凹部の円周方向中央部から、円周方向に沿って離れるにつれて、徐々に高くなる、請求項1または2に記載のキャップ。
【請求項4】
前記凸部は、前記円周方向中央部に対して対称に配置されている、請求項3に記載のキャップ。
【請求項5】
前記薄肉部は、前記円周方向中央部を覆い、前記厚肉部は、前記円周方向中央部の円周方向両側に位置する部分を覆う、請求項3または4に記載のキャップ。
【請求項6】
前記凸部は、円周方向に沿って互いに離間して配置された複数のリブを含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のキャップ。
【請求項7】
前記筒状体に連結されたピルファープルーフバンドを更に備える、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、飲料用の容器に用いられるキャップとして、円筒形状のキャップが用いられている。このようなキャップでは、キャップ開栓時のグリップ性を向上させるために、キャップの外径を大きくし、キャップを握りやすくするなど、様々な工夫がなされている。
【0003】
例えば、キャップ開栓時のグリップ性を向上させるための手段として、キャップの外周面に開栓用すべり止めが設けられたキャップが提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に示すキャップでは、その表面に凹部が設けられた開栓用すべり止めが設けられており、開栓用すべり止めは、軟質材の熱可塑性樹脂エラストマーにて構成され、二色成形によってキャップ本体成形時に一体化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、開栓用すべり止めの形状が複雑な形状になる場合、二色成形によって開栓用すべり止めを形成する際に、開栓用すべり止めを形成する樹脂を所望の領域に行き渡らせることが困難になる場合がある。この場合、キャップ本体の外周面のうち、開栓用すべり止めによって覆われるべき外周面が露出してしまう、いわゆるショートショットが発生する可能性がある。そして、このようなショートショットが発生した場合、製品の品質が低下してしまうおそれがある。
【0006】
本開示はこのような点を考慮してなされたものであり、所望の領域に射出樹脂を行き渡らせることが可能な、キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施の形態によるキャップは、天板と、前記天板の外周縁から下方に延びる筒状体とを有する本体部と、前記本体部の前記筒状体の外面に設けられた開栓用把持部とを備え、前記開栓用把持部は、薄肉部と、前記筒状体の円周方向において前記薄肉部に隣接する厚肉部とを有し、前記筒状体のうち、前記厚肉部に覆われる部分に、径方向外方に突出する凸部が形成されている、キャップである。
【0008】
本開示の一実施の形態によるキャップにおいて、前記開栓用把持部は、エラストマー樹脂を含んでいてもよい。
【0009】
本開示の一実施の形態によるキャップにおいて、前記筒状体のうち、前記開栓用把持部に覆われる部分に、径方向内方に窪む凹部が形成され、前記凸部は、前記凹部内に形成され、前記凸部の上端の上下方向位置は、前記凹部の円周方向中央部から、円周方向に沿って離れるにつれて、徐々に高くなっていてもよい。
【0010】
本開示の一実施の形態によるキャップにおいて、前記凸部は、前記円周方向中央部に対して対称に配置されていてもよい。
【0011】
本開示の一実施の形態によるキャップにおいて、前記薄肉部は、前記円周方向中央部を覆い、前記厚肉部は、前記円周方向中央部の円周方向両側に位置する部分を覆っていてもよい。
【0012】
本開示の一実施の形態によるキャップにおいて、前記凸部は、円周方向に沿って互いに離間して配置された複数のリブを含んでいてもよい。
【0013】
本開示の一実施の形態によるキャップにおいて、前記筒状体に連結されたピルファープルーフバンドを更に備えていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、所望の領域に射出樹脂を行き渡らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、一実施の形態によるキャップを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施の形態によるキャップを示す正面図である。
【
図3】
図3は、一実施の形態によるキャップを示す平面図である。
【
図4】
図4は、一実施の形態によるキャップを示す分解斜視図である。
【
図5】
図5は、一実施の形態によるキャップの本体部を示す側面図である。
【
図6A】
図6Aは、一実施の形態によるキャップを示す断面図(
図3のVIA-VIA線断面図)である。
【
図6B】
図6Bは、一実施の形態によるキャップを示す断面図(
図3のVIB-VIB線断面図)である。
【
図6C】
図6Cは、一実施の形態によるキャップの変形例を示す断面図(
図6AのVIC部に対応する断面図)である。
【
図7】
図7は、一実施の形態によるキャップを示す断面図(
図2のVII-VII線断面図)である。
【
図8A】
図8Aは、一実施の形態によるキャップを作製するための第1金型を示す断面図である。
【
図8B】
図8Bは、一実施の形態によるキャップを作製するための第2金型を示す断面図である。
【
図9A】
図9A(a)-(b)は、一実施の形態によるキャップの製造方法を示す断面図である。
【
図9B】
図9B(a)-(b)は、一実施の形態によるキャップの製造方法を示す断面図である。
【
図10A】
図10A(a)-(b)は、一実施の形態によるキャップの製造方法を示す断面図である。
【
図10B】
図10B(a)-(b)は、一実施の形態によるキャップの製造方法を示す断面図である。
【
図10C】
図10C(a)-(b)は、一実施の形態によるキャップの製造方法を示す断面図である。
【
図11A】
図11Aは、一実施の形態によるキャップの変形例(第1変形例)を示す平面図である。
【
図11B】
図11Bは、一実施の形態によるキャップの変形例(第1変形例)を示す斜視図である。
【
図11C】
図11Cは、一実施の形態によるキャップの変形例(第1変形例)の本体部を示す斜視図である。
【
図12A】
図12Aは、一実施の形態によるキャップの変形例(第2変形例)を示す平面図である。
【
図12B】
図12Bは、一実施の形態によるキャップの変形例(第2変形例)を示す斜視図である。
【
図12C】
図12Cは、一実施の形態によるキャップの変形例(第2変形例)の本体部を示す斜視図である。
【
図13A】
図13Aは、一実施の形態によるキャップの変形例(第3変形例)を示す平面図である。
【
図13B】
図13Bは、一実施の形態によるキャップの変形例(第3変形例)を示す斜視図である。
【
図13C】
図13Cは、一実施の形態によるキャップの変形例(第3変形例)の本体部を示す斜視図である。
【
図14A】
図14Aは、一実施の形態によるキャップの変形例(第4変形例)を示す平面図である。
【
図14B】
図14Bは、一実施の形態によるキャップの変形例(第4変形例)を示す斜視図である。
【
図14C】
図14Cは、一実施の形態によるキャップの変形例(第4変形例)の本体部を示す斜視図である。
【
図15】
図15は、一実施の形態によるキャップの変形例(第5変形例)の本体部を示す側面図である。
【
図16】
図16は、一実施の形態によるキャップの変形例(第5変形例)を示す断面図(
図15のXVI-XVI線断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。
図1乃至
図10Cは本開示の一実施の形態を示す図である。
【0017】
キャップの構成
まず、
図1乃至
図7Bにより、本実施の形態によるキャップの概要について説明する。本実施の形態によるキャップは、例えばスパウト付き容器や、PETボトル等の容器を閉栓する際に好適に使用することができる。なお、本明細書中、「上」および「下」とは、それぞれキャップ20を正立させた状態(
図2)における上方および下方のことをいう。
【0018】
図1乃至
図4に示すように、キャップ20は、天板30と、天板30の外周縁30eから下方に延びる筒状体40とを有する本体部50と、本体部50の筒状体40の外面に設けられた開栓用把持部60とを備えている。また、キャップ20は、本体部50の筒状体40の後述する小径部41に設けられ、円周方向に沿って互いに離間して配置された複数の開栓補助部61と、本体部50の天板30に設けられ、天板30の中心から放射状に広がる複数の放射状部62とを更に備えていてもよい。さらに、また、キャップ20は、筒状体40に連結されたピルファープルーフバンド70(
図1、
図2および
図4参照)を更に備えていてもよい。
【0019】
(本体部)
次に、キャップ20の本体部50について説明する。上述したように、本体部50は、天板30と、筒状体40とを有している。また、本体部50は、筒状体40の下方に設けられ、平面視において多角形状をもつ台座46を有している。なお、台座46の形状は平面視において、円形状や、多角形と円の複合形状でも構わない。
【0020】
図3および
図4に示すように、本体部50の天板30は、円盤状に形成されており、天板30には、天板30の中心から放射状に広がる複数の放射状部用溝31が形成されている。この放射状部用溝31は、後述する放射状部62が射出成形により形成される際に、射出樹脂の流路としての役割を果たす。
【0021】
図4に示すように、複数の放射状部用溝31は、天板30の径方向に沿って延びる一対の第1部分311と、第1部分311同士の間に広がり、略扇形形状をもつ第2部分312とを含んでいる。このうち、第1部分311の溝の深さは、第2部分312の溝の深さよりも深くなっている。
【0022】
なお、第1部分311および第2部分312の溝の形状や深さは、キャップ20のサイズに応じて、適宜変更することができる。また、放射状部用溝31は、第2部分312のみから構成されていても良い。
【0023】
本実施の形態では、天板30には3つの放射状部用溝31が形成されている。また、各々の放射状部用溝31は、天板30の円周方向に沿って略等間隔に配置されている。3つの放射状部用溝31は、天板30の中心に位置する中央部30cで互いに連結されている。
【0024】
また、
図4および
図5に示すように、複数の放射状部用溝31は、それぞれ対応する、後述する補助部用溝43に連結されている。この場合、放射状部用溝31の第1部分311は、補助部用溝43の後述する第1部分431に連結されており、放射状部用溝31の第2部分312は、補助部用溝43の後述する第2部分432に連結されている。複数の放射状部用溝31が、それぞれ対応する補助部用溝43に連結されていることにより、開栓用把持部60を形成する際に、放射状部用溝31を通過した射出樹脂が、補助部用溝43に供給されるように構成されている。このため、開栓用把持部60を形成する際に、開栓補助部61を容易に形成することができるようになっている。なお、放射状部用溝31の個数は、形成する放射状部62の個数に基づいて任意に変更することができる。
【0025】
本体部50の筒状体40は、
図1、
図2、
図4および
図5に示すように、天板30の下方に配置された小径部41と、小径部41の下方に配置された大径部42と、大径部42の下方に設けられた環状溝47とを有している。このうち小径部41は、筒状体40の略上半分の領域に配置されている。一方、大径部42は、筒状体40の略下半分の位置に配置されている。
【0026】
小径部41および大径部42は、それぞれ全体として略均一な径をもつ略円筒形状を有しており、大径部42は、小径部41よりも径が大きくなっている。なお、小径部41および大径部42は、六角形筒形状や八角形筒形状等の多角形筒形状を有していても良い。この場合、小径部41および大径部42が互いに異なる筒形状を有していても良い。
【0027】
小径部41には、円周方向に沿って互いに離間して配置された複数の補助部用溝43が形成されている。この補助部用溝43は、後述する開栓補助部61が射出成形により形成される際に、射出樹脂の流路としての役割を果たす。
【0028】
図4および
図5に示すように、複数の補助部用溝43は、上下方向に沿って延びる一対の第1部分431と、第1部分431同士の間に広がる第2部分432と、第2部分432の円周方向中央部に形成された第3部分433とを含んでいる。このうち、第1部分431および第3部分433の溝の深さは、それぞれ第2部分432の溝の深さよりも深くなっている。
【0029】
なお、第1部分431および第2部分432の溝の形状や深さは、キャップ20のサイズに応じて、適宜変更することができる。また、補助部用溝43は、第2部分432のみから構成されていても良い。
【0030】
本実施の形態では、小径部41には3つの補助部用溝43が形成されている(
図3参照)。各々の補助部用溝43は、小径部41の円周方向に沿って略等間隔に配置されている。また、上述したように、これらの複数の補助部用溝43の上端は、それぞれ対応する、天板30に設けられた放射状部用溝31に連結されている。また、
図4および
図5に示すように、複数の補助部用溝43の下端は、それぞれ対応する、後述する把持部用溝44に連結されている。この場合、補助部用溝43の第3部分433は、把持部用溝44の後述する第1部分441に連結されており、補助部用溝43の第2部分432は、把持部用溝44の後述する第2部分442に連結されている。複数の補助部用溝43の下端が、それぞれ対応する把持部用溝44に連結されていることにより、開栓用把持部60を形成する際に、補助部用溝43を通過した射出樹脂が、把持部用溝44に供給されるように構成されている。このため、開栓用把持部60を容易に形成することができるようになっている。
【0031】
また、小径部41には、キャッピング用のローレットKが複数形成されている。なお、ローレットKは、円周方向に隣接する補助部用溝43の間に配置されており、本実施の形態ではローレットKは、円周方向に隣接する補助部用溝43の間に5本ずつ、合計15本設けられている。ただし、ローレットKの本数は、これより多くても少なくても良い。
【0032】
筒状体40の大径部42には、円周方向に沿って互いに離間して配置された複数の把持部用溝(凹部)44が形成されている。把持部用溝44は、筒状体40のうち、後述する開栓用把持部60に覆われる部分に形成されており、径方向内方に窪んでいる。この把持部用溝44は、後述する開栓用把持部60が射出成形により形成される際に、射出樹脂の流路としての役割を果たす。
【0033】
複数の把持部用溝44は、上下方向に沿って延びる第1部分441と、大径部42の円周方向に沿って第1部分441の両側に広がる第2部分442と、大径部42の円周方向に沿って第2部分442の両側に広がるとともに、上下方向に沿って広がる第3部分443とを含んでいる。このうち、第1部分441の溝の深さは、第2部分442の溝の深さよりも深くなっている。また、第2部分442の溝の深さは、第3部分443の溝の深さよりも深いが、第2部分442の溝の深さは、下方に向かうにつれて徐々に浅くなるようになっている。これにより、第2部分442を通過する射出樹脂を第2部分442に滞留させることなく、第3部分443に供給することができるようになっている。
【0034】
なお、第1部分441、第2部分442および第3部分443の溝の形状や深さは、キャップ20のサイズに応じて、適宜変更することができる。また、把持部用溝44は、第3部分443のみから構成されていても良い。あるいは、把持部用溝44が、第3部分443および第1部分441の2つ、または第3部分443および第2部分442の2つから構成されていても良い。
【0035】
本実施の形態では、大径部42には3つの把持部用溝44が形成されている(
図3参照)。各々の把持部用溝44は、大径部42の円周方向に沿って略等間隔に配置されている。また、上述したように、これらの複数の把持部用溝44の上端は、それぞれ対応する、小径部41に設けられた補助部用溝43に連結されている。また、
図4および
図5に示すように、複数の把持部用溝44のうち、第1部分441および第2部分442の下端は、それぞれ大径部42で終端している。この場合、第1部分441の下端は、第2部分442の下端よりも下方に位置している。これにより、第1部分441を通過した射出樹脂を第3部分443に供給することができ、開栓用把持部60の成形性を向上させることができる。
【0036】
一方、第3部分443は、大径部42の高さ方向の全域に亘って広がっている。なお、把持部用溝44のうち、第1部分441が大径部42の高さ方向の全域に亘って延びていても良い。
【0037】
なお、大径部42の外面42aのうち、円周方向において互いに隣接する把持部用溝44間の外面421aは、平面視において直線状に形成されている。
【0038】
また、大径部42の下方に設けられた環状溝47は、全周にわたって形成されている。この環状溝47は、本体部50と金型との間に意図しない隙間が形成されてしまうことによってバリが発生した場合であっても、バリの存在を目立たなくさせる役割を果たすものである。把持部用溝44が設けられた領域において、環状溝47の深さD(外面42aから径方向内方への凹み量、
図6C参照)は、0.05mm以上であることが好ましく、大径部42の厚みの50%以下であることが好ましい。深さDが0.05mm以上であることにより、金型がしっかりと樹脂を受け止めてバリの発生を抑えることができる。また、深さDが大径部42の厚みの50%以下であることにより、大径部42の厚みが薄くなり過ぎることを抑制することができる。すなわち、大径部42を形成する樹脂の流路が狭くなり過ぎることを抑制することができ、大径部42の成形性を向上させることができる。また、深さDが大径部42の厚みの50%以下であることにより、金型の耐久性の低下も抑えることができる。
【0039】
ここで、
図4および
図5に示すように、筒状体40のうち、開栓用把持部60の後述する厚肉部66に覆われる部分に、径方向外方に突出する凸部10が形成されている。この凸部10は、大径部42の把持部用溝(凹部)44内に形成されている。本実施の形態では、一の把持部用溝44内に、2つの凸部10が形成されている。このように、径方向外方に突出する凸部10が、開栓用把持部60の後述する厚肉部66に覆われる部分に形成されていることにより、開栓用把持部60を形成する射出樹脂の流れを制御することができるようになっている。
【0040】
すなわち、開栓用把持部60の後述する厚肉部66に覆われる部分に凸部10が形成されていない場合、把持部用溝44の第1部分441および第2部分442から第3部分443に到達した射出樹脂は、肉厚の厚い厚肉部66が形成される領域に向かって勢いよく流れる。これにより、開栓用把持部60の後述する薄肉部65が形成される領域に、射出樹脂が十分に行き渡らなくなる可能性がある。
【0041】
これに対して、開栓用把持部60の厚肉部66に覆われる部分に凸部10が形成されていることにより、厚肉部66が形成される領域に流れてきた射出樹脂の流れを制御させることができる。すなわち、厚肉部66が形成される領域に流れてきた射出樹脂は、凸部10によって、その流れが妨害される。そして、凸部10によって流れを妨害された射出樹脂は、薄肉部65が形成される領域へと案内される。これにより、開栓用把持部60を形成する射出樹脂が、把持部用溝44の全体に行き渡りやすくなる。このため、開栓用把持部60から把持部用溝44が露出してしまう、いわゆるショートショットの発生を抑制できる。
【0042】
図5に示すように、凸部10の上端10aの上下方向位置は、把持部用溝44の円周方向中央部440から、円周方向に沿って離れるにつれて、徐々に高くなっていることが好ましい。後述するように、薄肉部65は、把持部用溝44の円周方向中央部440を覆い、厚肉部66は、薄肉部65の円周方向両側に位置している。このため、把持部用溝44の第1部分441および第2部分442から第3部分443に到達した射出樹脂は、把持部用溝44の円周方向中央部440から、円周方向中央部440の円周方向両側に向かって勢いよく流れる。このため、凸部10の上端10aの上下方向位置が、円周方向中央部440から、円周方向に沿って離れるにつれて、徐々に高くなっていることにより、把持部用溝44の円周方向両端に射出樹脂が流れ過ぎてしまうことを抑制することができる。このため、開栓用把持部60を形成する射出樹脂を、把持部用溝44の全体にまんべんなく行き渡らせることができる。
【0043】
なお、凸部10の下端の上下方向位置は、全体として略均一になっていてもよい。この場合、凸部10の下端の上下方向位置は、把持部用溝44の下端の上下方向位置と等しくなっていてもよい。
【0044】
凸部10は、円周方向中央部440に対して対称に配置されていることが好ましい。後述するように、薄肉部65は、把持部用溝44の円周方向中央部440を覆い、厚肉部66は、円周方向中央部440の円周方向両側に位置する部分を覆っている。このため、凸部10が円周方向中央部440に対して対称に配置されていることにより、円周方向中央部440の円周方向両側に向かって勢いよく流れる射出樹脂を、把持部用溝44の全体にまんべんなく行き渡らせることができる。図示された例において、各々の凸部10が、円周方向中央部440に対して、互いに対称に配置されている。なお、図示はしないが、把持部用溝44内に単一の凸部が形成され、当該単一の凸部が、円周方向中央部440に対して対称な形状をもっていてもよい。
【0045】
本実施の形態では、凸部10は、円周方向に沿って互いに離間して配置された複数のリブ11を含んでいる。この場合、複数のリブ11同士の間に、開栓用把持部60を形成する射出樹脂が流れ込む。このため、使用者がキャップ20を開栓方向に回転させた際に、開栓用把持部60が、本体部50に対して円周方向に沿って移動してしまうことを効果的に抑制できる。
【0046】
図示された例において、一の凸部10は、3つのリブ11を含んでいる。すなわち、一の凸部10は、第1リブ11aと、第1リブ11aよりも円周方向中央部440から遠い第2リブ11bと、第2リブ11bよりも円周方向中央部440から遠い第3リブ11cとを含んでいる。上述したように、凸部10の上端10aの上下方向位置は、把持部用溝44の円周方向中央部440から、円周方向に沿って離れるにつれて、徐々に高くなっていてもよい。また、上述したように、凸部10の下端の上下方向位置は、全体として略均一になっていてもよい。このため、各々のリブ11は、それぞれ、把持部用溝44の円周方向中央部440から、円周方向に沿って離れるにつれて、徐々に長さ(上下方向距離)が長くなっていてもよい。すなわち、第2リブ11bの長さ(L2)は第1リブ11aの長さ(L1)よりも長く、第3リブ11cの長さ(L3)は、第2リブ11bの長さ(L2)よりも長くなっていてもよい(L1<L2<L3)。なお、一の凸部は、1つ又は2つのリブ11を含んでいてもよく、4つ以上のリブ11を含んでいてもよい。
【0047】
ところで、第3リブ11cの長さ(L3)と第2リブ11bの長さ(L2)との比(L3/L2)は、第2リブ11bの長さ(L2)と第1リブ11aの長さ(L1)との比(L2/L1)以上であることが好ましい((L3/L2)≧(L2/L1))。上述したように、凸部10(リブ11)は、厚肉部66が形成される領域に流れてきた射出樹脂の流れを妨害する役割を果たし、把持部用溝44の全体に射出樹脂が行き渡りやすくする役割を果たす。これにより、開栓用把持部60を形成する射出樹脂が、把持部用溝44の全体に更に行き渡りやすくなる。このため、開栓用把持部60から把持部用溝44が露出してしまう、いわゆるショートショットの発生を更に抑制できる。
【0048】
なお、
図6A及び
図6Bに示すように、上述した天板30の内面のうち、略中央部には下方に突出した栓部32が設けられている。また、栓部32の先端部には環状アンダーカット33が設けられ、環状アンダーカット33が、図示しない容器の口部に嵌合するように構成されている。さらに、上述した筒状体40の大径部42の内面に、図示しない容器の口部のねじ部に螺合するねじ部45が形成されている。
【0049】
(開栓用把持部)
次に、キャップ20の開栓用把持部60について説明する。
【0050】
図1乃至
図3に示すように、開栓用把持部60は、筒状体40の大径部42の外面42aに設けられている。この場合、上述したように、大径部42は、筒状体40の略下半分の領域に配置されている。このため、大径部42に設けられた開栓用把持部60は、キャップ20の略下半分の領域に配置されている。このように、開栓用把持部60が大径部42に設けられることにより、使用者が開栓用把持部60を把持しやすくすることができ、キャップ20のグリップ性を向上させることができる。
【0051】
この開栓用把持部60は、
図3に示すように、筒状体40の円周方向に沿って互いに離間して配置されている。これにより、開栓用把持部60を形成する際の樹脂量を削減することができ、キャップ20の製造コストを低減することができる。本実施の形態では、3つの開栓用把持部60が設けられており、各々の開栓用把持部60は、大径部42の円周方向に沿って略等間隔に配置されている。また、円周方向において互いに隣接する開栓用把持部60の間からは、筒状体40の大径部42の外面421aが露出している。
【0052】
なお、開栓用把持部60が配置される個数は任意であり、各々の開栓用把持部60は、平面視において約45°ずつ等配となるように配置されていても良く、あるいは約72°ずつ等配となるように配置されていても良い。また、開栓用把持部60の第1突起60cの円周方向両側に、窪み部60bが設けられていなくても良い。
【0053】
また、
図3に示すように、各々の開栓用把持部60には、平面視において、それぞれ多角形(この場合は、正六角形)の角部に位置し、半径方向外方に突出する第1突起60cと、第1突起60cの円周方向両側に配置され、半径方向内方に窪む窪み部60bと、窪み部60bの円周方向両側に配置された第2突起60dとをそれぞれ有している。このような開栓用把持部の外面のうち、上述した第1突起60c、窪み部60b第2突起60dが形成されていない部分の外面60aは、平面視において、直線状に形成されている。また、外面60aのうち、円周方向において互いに隣接する開栓用把持部60の間から露出する大径部42の外面421aに隣接する外面60aが、当該外面421aと同一平面上に位置するように形成されている。これにより、キャップ20のうち、上下方向において開栓用把持部60が形成された部分は、平面視において、多角形状(この場合は、正六角形状)の輪郭を有している。
【0054】
第1突起60cは、第2突起60dよりも高さ(径方向距離)が高くなっている。このように、開栓用把持部60が第1突起60cと第2突起60dとを有することにより、使用者がキャップ20を開栓する際に、使用者の指掛かり性を向上させることができる。このような3つの開栓用把持部60は、それぞれ開栓補助部61に連結されている。
【0055】
上述したように、筒状体40の大径部42の外面42aに開栓用把持部60が設けられていることにより、使用者がキャップ20を開栓する際に、開栓用把持部60に対する使用者の指の指掛かり性を向上させることができ、キャップ20のグリップ性を向上させることができる。すなわち、使用者がキャップ20を開栓する際に、まず、使用者の指が、互いに隣接する開栓用把持部60や各々の開栓用把持部60の間から露出した筒状体40の大径部42の外面42aに当接する。そして、使用者がキャップ20を開栓方向に回転させると、使用者の指が、開栓用把持部60の第1突起60cや第2突起60dに引っ掛かる。このように、使用者の指が開栓用把持部60の第1突起60cや第2突起60dに引っ掛かることにより、開栓用把持部60に対する使用者の指の指掛かり性を向上させることができ、キャップ20のグリップ性を向上させることができる。このため、キャップ20に対して、開栓方向の力を作用させやすくなり、容易にキャップ20を開栓することができる。
【0056】
図1および
図2に示すように、この開栓用把持部60は、高さ方向において、筒状体40の大径部42の外面42aの全域を覆うように設けられている。これにより、使用者がキャップ20を開栓する際に、使用者の指が開栓用把持部60に確実に当接し、開栓用把持部60に対する使用者の指の指掛かり性を更に向上させることができる。
【0057】
図7に示すように、開栓用把持部60は、薄肉部65と、筒状体40の円周方向において薄肉部65に隣接する厚肉部66とを有している。薄肉部65は、把持部用溝44の円周方向中央部440を覆っている。一方、厚肉部66は、円周方向中央部440の円周方向両側に位置する部分を覆っている。すなわち、厚肉部66は、薄肉部65の円周方向両側に位置している。ここで、本明細書中、「薄肉部」とは、厚み(大径部42の外面42aのうち、把持部用溝44の第3部分443における外面42aからの径方向距離)が0.8mm未満の領域を意味する。また、「厚肉部」とは、厚み(大径部42の外面42aのうち、把持部用溝44の第3部分443における外面42aからの径方向距離)が0.8mm以上の領域を意味する。
【0058】
ここで、
図2に示すように、上述した本体部50の台座46と、開栓用把持部60とが、上下方向において間隔を空けて設けられている。これにより、開栓用把持部60の下面60eにバリが発生することを抑制することができるようになっている。
【0059】
すなわち、本体部50の台座46と、開栓用把持部60とが、上下方向において接触している場合、開栓用把持部60を形成する射出樹脂は、台座46上に射出される。一方、台座46を有する本体部50は、後述するように合成樹脂材料により作製されている。このため、射出樹脂によって開栓用把持部60を形成する際に、例えば台座46が射出圧や熱等によって変形することによって、台座46と金型との間に意図しない隙間が形成されてしまう可能性がある。この場合、開栓用把持部60を形成する射出樹脂が当該隙間内に入り込んでしまうことにより、開栓用把持部60に、台座46の外面46aを覆うバリが発生する恐れがある。
【0060】
これに対して、本実施の形態では、本体部50の台座46と、開栓用把持部60とが、上下方向において間隔を空けて設けられている。この場合、後述するように、開栓用把持部60を形成する射出樹脂は、台座46上ではなく、金型上(具体的には、後述する第2金型80Bのスライド83上、
図8B参照)に射出される。すなわち、開栓用把持部60を形成する射出樹脂は、金型によって受け止められる。このため、台座46と金型との間に意図しない隙間が形成されてしまった場合であっても、開栓用把持部60を形成する射出樹脂が金型によって受け止められることにより、射出樹脂が当該隙間内に入り込んでしまうことを抑制することができる。このため、開栓用把持部60に、台座46の外面46aを覆うバリが発生することを抑制することができる。
【0061】
この場合、開栓用把持部60は、筒状体40の全周にわたって、台座46から離間していることが好ましい。これにより、開栓用把持部60に、台座46の外面46aを覆うバリが発生することを、全周にわたって抑制することができる。
【0062】
また、台座46の上面46bと、開栓用把持部60の下面60eとの間の距離L4は、0.3mm以上3.0mm以下であることが好ましい。距離L4が0.3mm以上であることにより、キャップ20を作製する際に、台座46の上面46bと、開栓用把持部60の下面60eとの間に配置される後述するスライド83の突出部83bの厚み(上下方向距離)が0.3mm以上となる。このため、突出部83bの耐久性が向上する。また、距離L4が3.0mm以下であることにより、キャップ20の意匠性が低下してしまうことを抑制できる。
【0063】
さらに、垂直断面において、開栓用把持部60の外面60fは、台座46の外面46aよりも径方向内方に位置するか、または台座46の外面と同一平面上に位置していることが好ましい。これにより、使用者が、図示しない容器を持ち上げた際に、使用者の指が開栓用把持部60の下面60eに接触してしまうことを抑制することができる。このため、開栓用把持部60に対して意図しない力が加わってしまうことを抑制することができ、開栓用把持部60が、本体部50から剥がされてしまうことを抑制することができる。
【0064】
(開栓補助部)
次に、開栓補助部61について説明する。上述したように、開栓補助部61は、本体部50の筒状体40の小径部41に設けられている。上述したように、小径部41は、筒状体40の略上半分の領域に配置されている。このため、小径部41に設けられた各々の開栓補助部61は、キャップ20の略上半分の領域に配置されている。このように、小径部41に開栓補助部61が設けられることにより、使用者がキャップ20を開栓する際に、開栓補助部61に使用者の指が当接する。これにより、キャップ20に対する使用者の指の指掛かり性を更に向上させることができる。
【0065】
また、
図3に示すように、本実施の形態では、小径部41には3つの開栓補助部61が設けられている。この開栓補助部61は、上述した補助部用溝43に対応する位置に設けられており、各々の開栓補助部61は、平面視において約120°ずつ等配となるように配置されている。また、
図1及び
図2に示すように、開栓補助部61は、上下方向および円周方向に沿って広がっている。これらの複数の開栓補助部61の上端は、それぞれ対応する、天板30に設けられた放射状部62に連結されている。また、複数の開栓補助部61の下端は、上述したようにそれぞれ対応する開栓用把持部60に連結されている。この開栓補助部61は、後述するように、開栓用把持部60を形成する際に、補助部用溝43を通る射出樹脂により設けられたものである。
【0066】
(放射状部)
次に、放射状部62について説明する。上述したように、放射状部62は、本体部50の天板30に設けられている。
図1乃至
図3に示すように、本実施の形態では、天板30には3つの放射状部62が設けられている。この放射状部62は、上述した放射状部用溝31に対応する位置に設けられており、それぞれ略扇形形状をもっている。各々の放射状部62は、平面視において約120°ずつ等配となるように配置されている。3つの放射状部62は、天板30の中心に位置する中央部62cで互いに連結されている。また、上述したように、複数の放射状部62は、それぞれ対応する開栓補助部61に連結されている。この放射状部62は、後述するように、開栓用把持部60を形成する際に、放射状部用溝31を通る射出樹脂により設けられたものである。なお、図示された例においては、各々の放射状部62が、それぞれ略扇形形状をもっているが、これに限られない。例えば、図示はしないが、各々の放射状部62が、それぞれ略長方形形状をもっていてもよい。また、3つの放射状部62が中央部62cで互いに連結されているが、これに限られない。例えば、図示はしないが、中央部62cが設けられることなく、放射状部62同士が互いに連結されていてもよい。
【0067】
(ピルファープルーフバンド)
次に、ピルファープルーフバンドについて説明する。
図2、
図6A及び
図6Bに示すように、ピルファープルーフバンド70は、筒状体40の下端部に、台座46に結合された複数のブリッジ71を介して連結されている。この複数のブリッジ71のうち、少なくとも1つは、破断可能になっている。また、ピルファープルーフバンド70は、周方向に分割された複数のリング分割体70aを有している。この場合、周方向で互いに隣接するリング分割体70aは、破断可能な連結部材72により、互いに連結されている。
【0068】
キャップ20が上述したピルファープルーフバンド70を備えていることにより、ブリッジ71が破断されているかどうかを確認することにより、あるいは、連結部材72が破断されているかどうかを確認することにより、キャップ20の不正な開封が生じていたかどうかを判断することができる。
【0069】
また、ピルファープルーフバンド70の上端に、円周方向において、キャップ20の開栓用把持部60の多角形状の第1突起60cに重なるように位置する複数の座部73が形成されている。これにより、キャップ20を、後述する筒状の払い出し部品84によって後述する第2金型80Bから離型させる際に、ピルファープルーフバンド70の変形を抑制することができ、キャップ20をスムーズに離型させることができる。
【0070】
ところで、上述したキャップ20のうち、キャップ20の本体部50、ピルファープルーフバンド70、ブリッジ71及び連結部材72は、合成樹脂材料を射出成形することにより一体に製作することができる。この場合の材料としては、例えば、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)等を用いることができる。
【0071】
また、上述した開栓用把持部60、開栓補助部61及び放射状部62は、エラストマー樹脂を含んでいても良い。開栓用把持部60、開栓補助部61及び放射状部62が、エラストマー樹脂を含んでいることにより、キャップ20の滑り防止機能を向上させることができる。また、この場合、開栓用把持部60、開栓補助部61及び放射状部62は、互いに同一の材料からなっていても良い。開栓用把持部60、開栓補助部61及び放射状部62が、互いに同一の材料からなっていることにより、開栓用把持部60、開栓補助部61および放射状部62を容易に形成することができ、キャップ20の生産性を向上させることができる。また、この場合、エラストマー樹脂としては、従来公知の熱可塑性エラストマー、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等が挙げられる。また、これらの熱可塑性エラストマーの1種のみ使用しても良く、また2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0072】
金型の構成
次に、
図8Aおよび
図8Bにより、合成樹脂材料を射出成形してキャップ20を作製する第1金型80A、および第2金型80Bについて、説明する。
【0073】
図8Aに示すように、第1金型80Aは、キャップ20の本体部50を作製するための第1キャビティ付き金型81Aと、第1キャビティ付き金型81A内に収容される第1コア82aおよび第2コア82bと、一対のスライド83と、筒状の払い出し部品84とを有している。このうち、第1キャビティ付き金型81Aには、本体部50の放射状部用溝31、補助部用溝43及び把持部用溝44にそれぞれ対応する突起部31a、43a、44aが形成されている。
【0074】
また、第1キャビティ付き金型81Aのうち、本体部50の天板30の中心に対応する位置に、射出樹脂を射出するためのゲート(注入口)81aが形成されている。この場合、第1キャビティ付き金型81A内に第1コア82aおよび第2コア82bが収容された状態で、第1キャビティ付き金型81Aと、第1コア82aおよび第2コア82bとによって形成される空間に射出樹脂(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)が射出されることにより、キャップ20の本体部50が作製されるようになっている。また、一対のスライド83には、ピルファープルーフバンド70に対応する窪み部83aが形成されている。
【0075】
一方、
図8Bに示すように、第2金型80Bは、キャップ20の開栓用把持部60、開栓補助部61および放射状部62を作製するための第2キャビティ付き金型81Bと、第2キャビティ付き金型81B内に収容される、上述した第1コア82aおよび第2コア82bと、上述した一対のスライド83と、上述した筒状の払い出し部品84とを有している。
【0076】
ここで、第2キャビティ付き金型81Bと、第1コア82aおよび第2コア82bとによって形成される空間は、上述した第1キャビティ付き金型81Aと、第1コア82aおよび第2コア82bとによって形成される空間よりも広くなっている。具体的には、第1金型80Aによって作製された本体部50と、第2キャビティ付き金型81Bとの間に空間が形成されるように構成されている。この場合、本体部50のうち、放射状部用溝31、補助部用溝43及び把持部用溝44と、第2キャビティ付き金型81Bとの間に隙間が形成されるようになっている。このため、第1金型80Aによって作製された本体部50の外周面上に、開栓用把持部60、開栓補助部61および放射状部62を形成することができるように構成されている。
【0077】
また、第2キャビティ付き金型81Bのうち、本体部50の天板30の中心に対応する位置に、射出樹脂を射出するためのゲート(注入口)81bが形成されている。この場合、第2キャビティ付き金型81B内に、作製された本体部50および第1コア82aおよび第2コア82bが収容された状態で、作製された本体部50と、第2キャビティ付き金型81Bとの間の空間に射出樹脂(例えば、エラストマー樹脂)が射出されることにより、キャップ20の開栓用把持部60、開栓補助部61および放射状部62が形成されるようになっている。なお、図示はしないが、第2キャビティ付き金型81Bには、開栓用把持部60の第1突起60cや窪み部60bに対応する窪み部や突起部が形成されている。
【0078】
また、一対のスライド83の上端には、それぞれ径方向内方に突出する突出部83bが形成されている。この突出部83bは、開栓用把持部60を形成する射出樹脂を受け止める役割を果たす。
【0079】
次に、本実施の形態による作用について説明する。ここでは、キャップ20の製造方法について、
図9A乃至
図10Cにより説明する。
【0080】
キャップの製造方法
まず、第1キャビティ付き金型81Aと、第1コア82aと、第2コア82bと、一対のスライド83と、筒状の払い出し部品84とを有する第1金型80Aを準備する。
【0081】
次に、
図9A(a)に示すように、第1キャビティ付き金型81A内に第1コア82aおよび第2コア82bを収容するとともに、一対のスライド83と、筒状の払い出し部品84とを装着する。このようにして、
図9A(b)に示すように、第1キャビティ付き金型81Aと、第1コア82aと、第2コア82bと、一対のスライド83と、筒状の払い出し部品84とが型締めされる。
【0082】
次いで、
図9B(a)に示すように、第1金型80A内に、射出樹脂を射出する。この際、第1キャビティ付き金型81Aと、第1コア82aおよび第2コア82bとによって形成された空間に、ゲート81aから射出樹脂を射出する。射出樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンを用いることができる。
【0083】
射出された射出樹脂は、第1キャビティ付き金型81Aおよび一対のスライド83と、第1コア82aおよび第2コア82bとの間に侵入し、この射出樹脂によりキャップ20の本体部50およびピルファープルーフバンド70が成形される。この際、第1キャビティ付き金型81Aには、本体部50の放射状部用溝31、補助部用溝43及び把持部用溝44にそれぞれ対応する突起部31a、43a、44aが形成されている(
図8A参照)。これにより、本体部50に、放射状部用溝31、補助部用溝43及び把持部用溝44がそれぞれ形成される。
【0084】
そして、
図9B(b)に示すように、第1金型80Aのうち、第1キャビティ付き金型81Aが、作製された本体部50から取り外される。
【0085】
次に、第2金型80Bの第2キャビティ付き金型81Bを準備する。次いで、
図10A(a)に示すように、第2キャビティ付き金型81Bを、作製された本体部50に装着する。このようにして、
図10A(b)に示すように、第2キャビティ付き金型81Bと、第1コア82aと、第2コア82bと、一対のスライド83と、筒状の払い出し部品84とが型締めされる。
【0086】
次いで、
図10B(a)に示すように、第2金型80B内に、射出樹脂を射出する。この際、第2キャビティ付き金型81Bと本体部50との間の空間に、ゲート81bから射出樹脂を射出する。射出樹脂としては、例えば、エラストマー樹脂を用いることができる。
【0087】
射出された射出樹脂は、第2キャビティ付き金型81Bと本体部50との間に侵入する。ここで、第2キャビティ付き金型81Bと第2コア82bとの間の空間は、第1キャビティ付き金型81Aと第2コア82bとの間の空間よりも広くなっている。すなわち、第2コア82bに取り付けられた本体部50と、第2キャビティ付き金型81Bとの間に空間が形成されるように構成されている。この場合、第2コア82bに取り付けられた本体部50のうち、放射状部用溝31、補助部用溝43及び把持部用溝44と、第2キャビティ付き金型81Bとの間に隙間が形成されている。このため、射出された射出樹脂は、天板30の中心から、放射状部用溝31を通って天板30上を放射状に広がり、補助部用溝43に到達する。そして、補助部用溝43に到達した射出樹脂は、把持部用溝44に到達する。その後、把持部用溝44に到達した射出樹脂は、本体部50の筒状体40の大径部42と、第2キャビティ付き金型81Bと一対のスライド83との間に広がり、開栓用把持部60、開栓補助部61および放射状部62が形成される。
【0088】
ここで、大径部42の把持部用溝44内には、凸部10が形成されている。これにより、把持部用溝44のうち厚肉部66が形成される領域に流れてきた射出樹脂は、凸部10によって、その流れが妨害される。そして、凸部10によって流れを妨害された射出樹脂は、把持部用溝44のうち薄肉部65が形成される領域へと案内される。これにより、開栓用把持部60を形成する射出樹脂が、把持部用溝44の全体に行き渡る。このため、開栓用把持部60から把持部用溝44が露出してしまう、いわゆるショートショットの発生を抑制できる。
【0089】
また、開栓用把持部60を形成する射出樹脂は、スライド83の突出部83bによって受け止められる。このため、環状溝47とスライド83との間に意図しない隙間が形成されてしまった場合に、開栓用把持部60を形成する射出樹脂が当該隙間内に入り込んでしまっても、バリが環状溝47の内部で収まる。このため、開栓用把持部60に、台座46の外面46aを覆うバリが発生することを抑制することができる。
【0090】
このようにして、第2金型80B内でキャップ20が得られる。次に、
図10B(b)に示すように、第2金型80Bのうち、第2キャビティ付き金型81Bが、作製されたキャップ20から取り外される。また、この際、第1コア82aが、第2コア82bから離れるように移動するとともに、一対のスライド83を互いに離間する方向へスライドさせる。
【0091】
次に、
図10C(a)に示すように、第1コア82aおよび第2コア82bが、キャップ20から取り外される。
【0092】
次いで、筒状の払い出し部品84をキャップ20に対して押し付けることにより、キャップ20が取り出される。このようにして、本体部50と、本体部50の筒状体40の外面42aに設けられた開栓用把持部60とを備えるキャップ20が得られる。
【0093】
ここで、筒状体40の大径部42の外面42aに、開栓用把持部60が設けられている(
図1乃至
図3参照)。これにより、使用者がキャップ20を開栓する際に、開栓用把持部60に対する使用者の指の指掛かり性を向上させることができる。すなわち、使用者がキャップ20を開栓する際に、まず、使用者の指が、互いに隣接する開栓用把持部60や各々の開栓用把持部60の間から露出した筒状体40の大径部42の外面42aに当接する。そして、使用者がキャップ20を開栓方向に回転させると、使用者の指が、開栓用把持部60の第1突起60cや第2突起60dに引っ掛かる。このように、使用者の指が開栓用把持部60の第1突起60cや第2突起60dに引っ掛かることにより、開栓用把持部60に対する使用者の指の指掛かり性を向上させることができ、キャップ20のグリップ性を向上させることができる。このため、キャップ20に対して、開栓方向の力を作用させやすくなり、容易にキャップ20を開栓することができる。
【0094】
以上のように本実施の形態によれば、キャップ20が、天板30と、天板30の外周縁30eから下方に延びる筒状体40とを有する本体部50と、本体部50の筒状体40の外面42aに設けられた開栓用把持部60とを備えている。また、開栓用把持部60が、薄肉部65と、筒状体40の円周方向において薄肉部65に隣接する厚肉部66とを有している。さらに、筒状体40のうち、厚肉部66に覆われる部分に、径方向外方に突出する凸部10が形成されている。これにより、厚肉部66が形成される領域に流れてきた射出樹脂の流れを制御させることができる。すなわち、厚肉部66が形成される領域に流れてきた射出樹脂は、凸部10によって、その流れが妨害される。そして、凸部10によって流れを妨害された射出樹脂は、薄肉部65が形成される領域へと案内される。これにより、開栓用把持部60を形成する射出樹脂を所望の領域(すなわち、把持部用溝44の全体)に行き渡らせることができる。このため、開栓用把持部60から把持部用溝44が露出してしまう、いわゆるショートショットが発生することを抑制することができる。
【0095】
また、本実施の形態によれば、開栓用把持部60が、エラストマー樹脂を含んでいる。これにより、キャップ20の滑り防止機能を向上させることができる。このため、容易にキャップ20を開栓することができる。
【0096】
また、本実施の形態によれば、凸部10の上端10aの上下方向位置が、把持部用溝44の円周方向中央部440から、円周方向に沿って離れるにつれて、徐々に高くなっている。これにより、把持部用溝44の円周方向両端に射出樹脂が流れ過ぎてしまうことを抑制することができる。このため、開栓用把持部60を形成する射出樹脂を、把持部用溝44の全体にまんべんなく行き渡らせることができる。
【0097】
また、本実施の形態によれば、凸部10が、円周方向中央部440に対して対称に配置されている。また、薄肉部65は、把持部用溝44の円周方向中央部440を覆い、厚肉部66は、円周方向中央部440の円周方向両側に位置する部分を覆っている。このため、凸部10が円周方向中央部440に対して対称に配置されていることにより、円周方向中央部440の円周方向両側に向かって勢いよく流れる射出樹脂を、把持部用溝44の全体にまんべんなく行き渡らせることができる。
【0098】
さらに、本実施の形態によれば、凸部10は、円周方向に沿って互いに離間して配置された複数のリブ11を含んでいる。この場合、複数のリブ11同士の間に、開栓用把持部60を形成する射出樹脂が流れ込む。このため、使用者がキャップ20を開栓方向に回転させた際に、開栓用把持部60が、本体部50に対して円周方向に沿って移動してしまうことを効果的に抑制することができる。
【0099】
なお、上述した本実施の形態において、ピルファープルーフバンド70が、複数のブリッジ71を介して連結されている例について説明したが、これに限られない。例えば、図示はしないが、ピルファープルーフバンド70が、単一のブリッジ71を介して筒状体40に連結されていても良い。
【0100】
また、上述した本実施の形態において、ピルファープルーフバンド70が、周方向に分割された複数のリング分割体70aを有している例について説明したが、これに限られない。例えば、図示はしないが、単一の部材により構成されていても良い。
【0101】
変形例
次に、
図11A乃至
図16を参照して、キャップの各種変形例について説明する。
図11A乃至
図16は、キャップまたはキャップの本体部の各種変形例を示す図である。
図11A乃至
図16において、
図1乃至
図10Cに示す形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0102】
(第1変形例)
図11Aおよび
図11Bは、第1変形例によるキャップ20を示している。
図11Aおよび
図11Bにおいて、キャップ20の大径部42および開栓用把持部60は、平面視において、四角形状の輪郭を有している。また、本変形例では、開栓用把持部60、開栓補助部61および放射状部62は、それぞれ2つずつ設けられている。さらに、本変形例では、
図11Cに示すように、放射状部用溝31、補助部用溝43および把持部用溝44は、それぞれ2つずつ設けられている。なお、
図11A乃至
図11Cにおいて、図面を明瞭にするためにローレットKや、第1部分311、431、441等の図示は省略している。
【0103】
(第2変形例)
図12Aおよび
図12Bは、第2変形例によるキャップ20を示している。
図12Aおよび
図12Bにおいて、厚肉部66が、把持部用溝44の円周方向中央部440を覆い、薄肉部65が、厚肉部66の円周方向両側に位置している。また、
図12Aおよび
図12Bにおいて、第1変形例と同様に、キャップ20の大径部42および開栓用把持部60は、平面視において、四角形状の輪郭を有している。また、本変形例では、開栓用把持部60、開栓補助部61および放射状部62は、それぞれ4つずつ設けられている。さらに、本変形例では、
図12Cに示すように、放射状部用溝31、補助部用溝43および把持部用溝44は、それぞれ4つずつ設けられている。なお、
図12A乃至
図12Cにおいて、図面を明瞭にするためにローレットKや、第1部分311、431、441等の図示は省略している。
【0104】
(第3変形例)
図13Aおよび
図13Bは、第3変形例によるキャップ20を示している。
図13Aおよび
図13Bにおいて、第2変形例と同様に、厚肉部66が、把持部用溝44の円周方向中央部440を覆い、薄肉部65が、厚肉部66の円周方向両側に位置している。また、
図13Aおよび
図13Bにおいて、キャップ20の大径部42および開栓用把持部60は、平面視において、三角形状の輪郭を有している。また、本変形例では、開栓用把持部60、開栓補助部61および放射状部62は、それぞれ3つずつ設けられている。さらに、本変形例では、
図13Cに示すように、放射状部用溝31、補助部用溝43および把持部用溝44は、それぞれ3つずつ設けられている。なお、
図13A乃至
図13Cにおいて、図面を明瞭にするためにローレットKや、第1部分311、431、441等の図示は省略している。
【0105】
(第4変形例)
図14Aおよび
図14Bは、第4変形例によるキャップ20を示している。
図14Aおよび
図14Bにおいて、第2変形例と同様に、厚肉部66が、把持部用溝44の円周方向中央部440を覆い、薄肉部65が、厚肉部66の円周方向両側に位置している。また、
図14Aおよび
図14Bにおいて、キャップ20の大径部42および開栓用把持部60は、平面視において、六角形状の輪郭を有している。また、本変形例では、開栓用把持部60、開栓補助部61および放射状部62は、それぞれ6つずつ設けられている。さらに、本変形例では、
図14Cに示すように、放射状部用溝31、補助部用溝43および把持部用溝44は、それぞれ6つずつ設けられている。なお、
図14A乃至
図14Cにおいて、図面を明瞭にするためにローレットKや、第1部分311、431、441等の図示は省略している。
【0106】
(第5変形例)
図15および
図16は、第5変形例によるキャップ20の本体部50を示している。
図15において、凸部10が、正面視において、台形状に形成されている。また、凸部10の周囲には、テーパー部12が形成されている。
図16に示すように、テーパー部12は、凸部10から遠ざかるにつれて、徐々に厚みが薄くなるように形成されている。これにより、凸部10が、射出樹脂の流れを妨害し過ぎないようにすることができる。このため、開栓用把持部60を形成する射出樹脂を、把持部用溝44の全体に行き渡らせやすくすることができる。
【0107】
上述した第1変形例乃至第5変形例においても、開栓用把持部60の下面60eにバリが発生することを抑制することができる。また、開栓用把持部60を形成する射出樹脂を、把持部用溝44の全体に行き渡りやすくすることができ、開栓用把持部60から把持部用溝44が露出してしまう、いわゆるショートショットが発生することを抑制することができる。
【0108】
上記実施の形態および各変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記実施の形態および各変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0109】
10 凸部
10a 上端
11 リブ
20 キャップ
30 天板
30e 外周縁
40 筒状体
44 把持部用溝
50 本体部
60 開栓用把持部
65 薄肉部
66 厚肉部
70 ピルファープルーフバンド
440 円周方向中央部