(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】PHF6を標的にするヒストンH2Bエピジェネティクスス調節剤スクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/50 20060101AFI20240611BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240611BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240611BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20240611BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20240611BHJP
C12Q 1/02 20060101ALN20240611BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240611BHJP
【FI】
G01N33/50 Z
A61P35/02
A61K45/00
G01N33/68
G01N33/15 Z
C12Q1/02 ZNA
C12N15/09
(21)【出願番号】P 2022563022
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(86)【国際出願番号】 KR2021009223
(87)【国際公開番号】W WO2022025502
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】10-2020-0095058
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509329800
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(73)【特許権者】
【識別番号】515131404
【氏名又は名称】アジュ ユニバーシティー インダストリー-アカデミック コーオペレイション ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】AJOU UNIVERSITY INDUSTRY-ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION
(73)【特許権者】
【識別番号】517428355
【氏名又は名称】カンウォン ナショナル ユニバーシティ-インダストリー コーポレーション ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ベク ソンヒ
(72)【発明者】
【氏名】オ ソンリョン
(72)【発明者】
【氏名】ブ ギョンジン
(72)【発明者】
【氏名】パク デチャン
(72)【発明者】
【氏名】イ ジミン
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-083193(JP,A)
【文献】特表2015-512630(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0192111(US,A1)
【文献】Jiawen Wang,Flow-enhanced priming of hESCs through H2B acetylation and chromatin decondensation,Stem Cell Research & Therapy,2019年11月27日,10:349,pp.1-16,https://doi.org/10.1186/s13287-019-1454-z
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/15
G01N33/50
G01N33/53
G01N33/68
C12Q 1/25
C12N 9/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PHF6(PHD finger-containing protein 6)タンパク質及び12番目リシン残基がアセチル化で修飾されたヒストン2B(H2BK12-Ac)タンパク質を発現する真核細胞を提供する段階;
前記真核細胞を前記PHF6の前記H2BK12-Acの認識を調節すると期待される試験物質の存在中で接触する段階;
前記
アセチル化で修飾されたヒストン
2B(H2BK12-Ac)タンパク質の120番目リシン残基のユビキチン化(H2BK120-ub)を測定する段階;及び
測定の結果、前記試験物質で処理されなかった対照群と比較して、前記試験物質で処理された細胞で前記
アセチル化で修飾されたヒストン
2B(H2BK12-Ac)タンパク質の120番目リシン残基のユビキチン化水準に変化がある場合、前記試験物質をPHF6活性調節候補物質として選別する段階;を含む、PHF6によるヒストンエピジェネティクス調節剤スクリーニング方法。
【請求項2】
前記PHF6タンパク質及び前記H2BK12-Acは、ヒトを除いた動物モデルとして提供されるものである、請求項1に記載のPHF6によるヒストンエピジェネティクス調節剤スクリーニング方法。
【請求項3】
前記真核細胞は、ヒトを除いた動物の胚性幹細胞である、請求項1に記載のPHF6によるヒストンエピジェネティクス調節剤スクリーニング方法。
【請求項4】
前記PHF6タンパク質は、PHD1及びPHD2ドメインを含み、前記H2BK12-Acは、前記PHD2ドメインによって認識されて、前記H2BK120のユビキチン化は、前記PHD1によるものである、請求項1~3のいずれか一項に記載のPHF6によるヒストンエピジェネティクス調節剤スクリーニング方法。
【請求項5】
前記エピジェネティクス調節剤は、白血病治療剤で開発されるものである、請求項1~3のいずれか一項に記載のPHF6によるヒストンエピジェネティクス調節剤スクリーニング方法。
【請求項6】
PHF6のPHD1ドメイン;またはPHD2ドメインが欠失または突然変異されたPHF6タンパク質及びヒストン2Bタンパク質を発現する真核細胞を提供する段階;
前記真核細胞と前記ヒストン2Bタンパク質の結合を促進させると期待される物質の存在中で前記タンパク質を接触する段階;
前記ヒストン2Bタンパク質の120番目リシン残基のユビキチン化水準を測定する段階;及び
測定の結果、試験物質と処理されなかった対照群と比較して、処理された場合、ヒストン2Bタンパク質の120番目リシン残基のユビキチン化が増加した場合、前記試験物質をPHF6活性調節候補物質として選別する段階;を含む、PHF6によるヒストンエピジェネティクス調節剤スクリーニング方法。
【請求項7】
前記PHD1ドメイン;またはPHD2ドメインが欠失または突然変異されたPHF6タンパク質及びヒストン2Bタンパク質は、ヒトを除いた動物モデルとして提供されるものである、請求項6に記載のPHF6によるヒストンエピジェネティクス調節剤スクリーニング方法。
【請求項8】
前記真核細胞は、ヒトを除いた動物の胚性幹細胞である、請求項6に記載のPHF6によるヒストンエピジェネティクス調節剤スクリーニング方法。
【請求項9】
前記エピジェネティクス調節剤は、白血病治療剤で開発されるものである、請求項6~8のいずれか一項に記載のPHF6によるヒストンエピジェネティクス調節剤スクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はPHF6のヒストンH2Bエピジェネティクス調節を究明した分子機構に基づいた薬物スクリーニング技術に関連した分野である。
【背景技術】
【0002】
ヒストン修飾(histone modification)は、細胞のクロマチン(chromatin)変化を引き起こすことによって、遺伝子発現を調節する重要な生物学的現象の中の一つである。クロマチンには、大きくH2A、H2B、H3及びH4の4種類のヒストンタンパク質に結合されており、各ヒストンタンパク質のN-末端には、アセチル化のような様々な修飾が存在すると知られている。このような修飾は、特定遺伝子発現を活性化したり抑制するが、これをエピジェネティクス調節という。このようなヒストンの修飾に関与するエピジェネティクス調節タンパク質/遺伝子は、機能的にライター(writer)、イレーザー(eraser)、そしてリーダー(reader)に分類される。
【0003】
このうちリーダーは、ヒストンの修飾を認知する機能を有したタンパク質で、その重要性浮上しているが、これはライターやイレーザーとは異なり、互いに異なる種類のヒストン修飾間の相互作用(histone modification crosstalk)現象を理解するのに最も核心となる因子であるからである。
【0004】
このようなヒストン修飾間相互作用は、生体内遺伝子の発現が精巧に調節されなければならない複雑系を理解するのに必須概念である。また、これたのヒストン修飾間相互作用が壊れる場合、癌をはじめとする様々な病気を引き起こすようになるとの報告があるが、知られているヒストン修飾の種類に比べてこれらの間の相互作用は多くは知られていない(Wright,D.E.,et al.Front Biosci(Landmark Ed),17,1051-1078;Chen,S.et al..Cell Res,22,1402-1405.)。
【0005】
国際公開第2013-138237号は、急性白血病の治療、診断または予後用方法及び組成物に関し、PHF6を白血病予後と関連した判断のためのマーカーの一つで開示している。ヒストンタンパク質問エピジェネティクス調節機構に基づいた標的の発掘が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願では白血病及びBFL症候群のような遺伝病疾患で核心突然変異遺伝子として知られているPHF6によるヒストンH2Bのエピジェネティクス調節機構に基づいた薬物スクリーニング方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一様態で本願は、PHF6(PHD finger-containing protein 6)タンパク質及び12番目リシン残基がアセチル化で修飾されたヒストン2B(H2BK12-Ac)タンパク質を提供する段階;前記PHF6タンパク質及びH2BK12-Acタンパク質を前記PHF6の前記H2BK12-Acの認識を調節すると期待される試験物質の存在中で接触する段階;前記ヒストンタンパク質の120番目リシン残基のユビキチン化(H2BK120-ub)を測定する段階;及び前記測定の結果、前記試験物質で処理されなかった対照群と比較して、前記試験物質で処理された細胞で前記ヒストンタンパク質の120番目リシン残基のユビキチン化水準に変化がある場合、前記試験物質を前記PHF6活性調節候補物質として選別する段階を含む、PHF6によるヒストンエピジェネティクス調節剤スクリーニング方法を提供する。
【0008】
本願に係る方法で水準の変化は、処理されなかった対照群と比較して増加または減少を意味し、H2BK120-ubの増加または減少に影響を与えることができる物質は、ヒストンエピジェネティクス調節剤として有用に使われることができる。当業者ならば具体的な目的に応じて減少または増加を選択することができるはずである。
【0009】
本願の方法により選別、開発されたエピジェネティクス調節剤は白血病治療用に開発されることができる。
【0010】
本願の方法で、PHF6タンパク質及びヒストン2Bは、ヒトを含む哺乳類由来のものが使われて、当業者ならば実験条件などを考慮して適切なものを選択することができるはずである。一実現例ではヒト由来のものが使われる。
【0011】
一実現例で、本願に係る方法は、本願の方法に使われるタンパク質を(過)発現する真核細胞、例えばヒトを除いた動物の胚性幹細胞またはヒトを除いた動物モデルで実行されることができる。
【0012】
本願に係るPHF6によるヒストン2Bタンパク質問エピジェネティクス調節は、PHF6タンパク質のPHD1及びPHD2ドメインが関与して、前記H2BK12-Acは、前記PHD2ドメインによって認識されて、前記H2BK120のユビキチン化は、前記PHD1によるものである。
【0013】
そこで他の様態で本願は、PHF6のPHD1ドメイン;またはPHD2ドメインが欠失または突然変異(点、欠失、置換などの突然変異による機能喪失突然変異)されたPHF6タンパク質及びヒストン2Bタンパク質を提供する段階;前記PHD1ドメインまたは前記PHD2ドメインが欠失または突然変異されたPHF6タンパク質と前記ヒストン2Bタンパク質の結合を促進させると期待される物質の存在中前記タンパク質を接触する段階;前記ヒストン2Bタンパク質の120番目リシン残基のユビキチン化水準を測定する段階;及び前記測定の結果、試験物質と処理されなかった対照群と比較して、処理された場合、ヒストン2Bタンパク質の120番目リシン残基のユビキチン化が増加した場合、前記試験物質を前記PHF6活性調節候補物質として選別する段階を含む、PHF6によるヒストンエピジェネティクス調節剤スクリーニング方法を提供する。
【0014】
一実現例で、前記PHD1ドメイン;またはPHD2ドメインが欠失または突然変異されたPHF6タンパク質及びヒストン2Bタンパク質は、真核細胞またはヒトを除いた動物モデルとして提供されることができる。
【0015】
一実現例で前記真核細胞は、ヒトを除いた動物の胚性幹細胞である。
【発明の効果】
【0016】
本願は従来独立的であると知らされた転写調節に関与する二つのヒストン修飾、即ちH2BK12(ヒストン2B、12番目リシン残基)のアセチル化及びH2BK120(ヒストン2B、120番目リシン残基)に対するユビキチン化がPHF6によって機能単位で作動するのを究明した。このような機構に基づいて開発されたPHF6によるヒストンエピジェネティクス機能を調節することができる物質は、PHF6の問題に起因する様々な疾患の治療剤の開発に効果的に使用できる。
【0017】
本願の方法によって選別、開発されたエピジェネティクス調節剤は、白血病治療用に開発されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】Phf6欠乏で胚性幹細胞の胚盤胞分化段階で欠陥が発生する。(A)CRISPR-Cas9遺伝子システムを使ったPhf6遺伝子ノックアウト(KO)作製の概略図。Phf6遺伝子に対するガイドRNA配列及び変更された配列が表示されている。(B)Phf6 KO胚性幹細胞でのPHF6欠乏及びshRNAによるPhf6ノックダウンを示す免疫ブロット分析。陽性対照群としてNanog、及びローディング対照群としてβ-actin。(C)Phf6 KO胚性幹細胞の成長曲線とWT胚性幹細胞の成長曲線、及びshPhf6の成長率曲線とshNSの成長曲線。(D)WT、Phf6 KO、shNS及びshPhf6胚性幹細胞でAP染色によって測定された分化能の比較。イメージは100倍拡大率で撮影された。(E)DOX処理で誘導された胚盤胞系統リプログラミング及びRA処理で誘導された神経外胚葉分化の間のWTとPhf6 KO ZHBTc4の間のDEG分析の概略図。(F)WTとPhf6 KO ZHBTc4との間の上位50%遺伝子(n=7,389)の比較発現。カットオフ((Phf6 KO対WT)|=3のフォルド変化)を赤色点線で示した。Phf6 KOで有意に下向き調節された遺伝子は、赤点(n=15)で、上向き調節された遺伝子は青点(n=1)で示した。(G)DOX処理とRA処理との間の化学的依存性誘導遺伝子の遺伝子オントロジー(GO)分析。発現差が3倍以上大きい遺伝子は、化学的処理による有意に上向き調節された遺伝子として選択された。遺伝子オントロジーの有意味性=log10(調整されたP-値=0.1)。(H)薬物処理で発現が増加した遺伝子群でPhf6依存的に発現された遺伝子のGO分析。遺伝子オントロジーの有意味性=log10(調整されたP-値=0.05)。
【
図2】RNA-seq分析結果、PHF6は、胚盤胞分化遺伝子の転写活性因子である。(A)DOX処理有無に応じだWT及びPfh6 KO胚性幹細胞で発現した遺伝子のk-平均群集ヒートマップ(n=1,775、k=6)。遺伝子は、発現類似性に基づいて六つのクラスターに分類された。(B)WT及びPhf6 KO胚性幹細胞に対するDOX反応の差。DOX反応は、胚性幹細胞でDOX処理による遺伝子の平均z-点数差を使って計算した。(C)クラスター1遺伝子のZ-点数セントロイド。中間値は赤色で強調表示した。(D)クラスター1遺伝子群のオントロジー(GO)分析による機能分析。胎盤発達がクラスター1で最も有意味な生物学的機能である。(E)DEGの代表的な遺伝子セット分析(GSEA)。胚芽胎盤の発達及び栄養亜細胞巨大細胞分化に関与する遺伝子セットは、有意味性を示した。(C)の中間値を遺伝子発現のパターン分析の基準に使った。(F)WTと比較してPhf6 KO胚性幹細胞で下向き調節された胚盤胞分化遺伝子群。色棒は各比較で発現変化値のlog2値を示す。GSEAから抽出された遺伝子が選択された。(G)DOX処理の有無によるWT及びPhf6 KO ESCで胚盤胞遺伝子のqRT-PCR分析。各遺伝子のmRNA水準は、Gapdhに対する相対的な値に決定されて、WT-DOXに基づいて相対的に比較された。統計的有意性は、ANOVAテストによって計算された(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001)。
【
図3】PHF6は、胚盤胞系統決定のために胚盤胞マーカー遺伝子の発現を活性化する。(A)胚芽体(EB)分化7日目にWT及びPhf6 KO EBの形態学的特徴。各EBを成長させて個別的に観察した。倍率X10。外部細胞層の平均面積(mm2)をWT(n=11、左側)とPhf6 KO(n=9、右側) EBとの間で比較した。統計的有意性はANOVAテストによって計算された(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001)。(B-C)WT EBの外部細胞層でCDX2及びPHF6の免疫染色。倍率X100(B)及びX200(C)。(D)WT及びPhf6 KO EB分化の間胚盤胞系統マーカー遺伝子のqRT-PCR分析。WT及びPhf6 KO EBをLIFなしに維持して各々表示された日にサンプリングした。各遺伝子のmRNA水準は、Gapdhまたはb-actinに対する相対的な値として決定されてWT0日を基準に相対的に比較された。統計的有意性はANOVAテストによって計算された(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001)。
【
図4】PHF6は、H2BK12Acを認知してH2BK120の単一ユビキチン化を調節する。(A)GSTまたはGST-PHF6タンパク質を使ったヒストンタンパク質のFar western分析。ZHBTc4胚性幹細胞から得たヒストン抽出物に対して分析を行った。ヒストン抽出物は、SDS-PAGE相の大きさに応じてH3、H2B、H2A及びH4に分離した。(B)GST-PHF6に最も高い親和力を示す上位五つのヒストン修飾。スクリーニングは、ヒストンペプチドアレイキットを使って行われた。(C)上位五つの修飾されたヒストンペプチド候補に対するGST-PHF6の認知能力を確認。ヒストンペプチドプルダウン分析を行った。(D)多様な種でPHF6の一番目の拡張PHDドメイン(ePHD1)及び2番目の拡張PHDドメイン(ePHD2)のアミノ酸配列。赤色と表示されたアミノ酸は、ePHD2で負に荷電されたアミノ酸が集まっている領域を示す。アミノ酸整列は、ClustalXで行った。(E)試験管内ペプチド結合分析をGST-PHF6 WTまたはE223S突然変異で行った。(F)陰性対照群としてGST-PHF6 WT及びE223S突然変異(左側軸)及びGST (右側軸)を有するH2Bペプチド(1-20)(非修飾及びK12Ac)のMST結合曲線。誤差棒は三つの独立的な実験の標準偏差を示す。測定されたKD値は各結合曲線に対して表示された。*N.B.バインディングがないことを示す。(G)DOX処理でWT及びPhf6 KO胚性幹細胞で各々の表記された抗体を使って免疫ブロット分析を行った。(H)DOX処理後p300またはCBPをsiRNAでノックダウン後表記された抗体を使って免疫ブロット分析を行った。(I)H2B K12R/K120R突然変異を利用したK12AcとK120ubの相関関係比較。これらのH2B WT及び各突然変異を含有する単一ヌクレオソームを抽出するためにMNase酵素を使って、これらの単一ヌクレオソームのヒストン修飾状態を免疫ブロット分析で確認した。(J)DOX処理でWTとPhf6 KOとの間の免疫ブロットによったRNF20及びRNF40タンパク質水準。(K)共同免疫沈殿分析を行ってDOX処理有無に応じた胚性幹細胞でPHF6とUSF44、RNF20またはRNF40との相互作用を確認。(L)DOX処理の有無に応じてPhf6、Rnf20及びRnf40のノックダウンの間のH2BK120ub水準の免疫ブロット。(M)DOX処理を使ったPhf6、Rnf20及びRnf40ノックダウン胚性幹細胞でCdx2及びGata2のqRT-PCR分析。各遺伝子のmRNA水準は、Gapdhに対する相対的な値に決定さて、shNS+DOXに基づいて相対的に比較された。統計的有意性は、ANOVAテストによって計算された(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001)。(N)DOX処理と共にPhf6、Rnf20及びRnf40ノックダウンESCでH2BK120ub抗体を使ってCdx2及びGata2のプロモーターに対してCHIP分析を行った。統計的有意性は、ANOVAテストによって計算された(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001)。
【
図5】PHF6は、K120のヒストンH2Bに対するアセチル化-依存的E3ユビキチンリガーゼである。(A)試験管内のユビキチン化分析のフローチャート。(B)H2B WTまたはK12R突然変異が含まれた単一ヌクレオソームを使った試験管内のユビキチン化分析。単一ヌクレオソームは、DOX処理したPhf6 KO ZHBTc4から抽出した。(C)GST-PHF6 WT、C82AまたはE223S突然変異と共にH2B-Flag WTが含まれた単一ヌクレオソームに対する試験管内ユビキチン化分析。(D)DOX処理によるPhf6 KO ZHBTc4でのPHF6 WT、C82AまたはE223S突然変異の発現水準。(E)PHF6の一番目の拡張PHDの概略図。黒色文字は亜鉛捕獲のためのPHDコアアミノ酸である;赤色文字は鐘間保存されたE3リガーゼ活性に必要な新しい残基候補である。(F)PHF6突然変異を利用した試験管内のユビキチン化分析。(G)His-UBCH3のGST、GST-PHF6 WTまたは突然変異を利用した試験管内GST-プルダウン分析。(H)PHF6で各ドメインの機能概略図。
【
図6】PHF6によるH2Bでのアセチル化-ユビキチン化連結は、胚盤胞遺伝子発現に重要である。(A)PHF6と結合した単一ヌクレオソームを確認するためのH2BK12Ac及びH3K4me1抗体を使ったMNase-ChIP分析の免疫ブロット。Flag抗体を使って染色質の免疫沈殿を行った。Flag-PHF6 WT、M125A及びE223Sは、Phx6 KO胚性幹細胞において2日間DOX処理で過発現された。IP:IgG及びIP:Flagで各抗体のブロッティングは、同じ露出状態で比較した。1% Inputが使われた。(B)pLVX-PHF6 WT及び突然変異の過発現後、H2BK120ub及びPHF6水準の免疫ブロット分析。(C)WTとPhf6 KOでIgG、PHF6、H2BK120ub、H3K4me3及びH2BK12Ac抗体を使ってPhf6依存的に発現した遺伝子であるCdx2及びGata2のプロモーターに対してChIP分析。統計的有意性はANOVAテストによって計算された(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001)。(D)WT及びPhf6 KOでIgG、PHF6、H2BK120ub、H3K4me3及びH2BK12Ac抗体を使ってDOX処理によってPhf6非依存的発現遺伝子であるMsx2のプロモーターに対するCHIP分析。統計的有意性はANOVAテストによって計算された(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001)。(E-F)Phf6 KO ESCでレンチウィルス感染によるpLVX-PHF6 WTまたはMTs安定細胞の生成。DOX処理によるPhf6 WTまたはMTの安定した構造のPhf6 KO ESCのヒストンH2BK120ub及びPHF6水準の免疫ブロット分析(E)。DOX処理によるPhf6 WTまたは突然変異をPhf6 KO胚性幹細胞で持続発現させた後、胚盤胞マーカー遺伝子発現のqRT-PCR分析(F)。各遺伝子のmRNA水準は、Gapdhに対する相対的な値に決定されてPhf6 WT安定細胞に基づいて比較された。統計的有意性はANOVAテストによって計算された(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001)。
【
図7】胚盤胞遺伝子の発現に対するPHF6の機能に対する模式図である。図式モデルは、PHF6が胚盤胞リプログラミングの間、胚盤胞遺伝子の転写活性因子として機能することを示している。PHF6は、2番目の拡張PHDドメインを介してH2BK12Acを認識して、胚盤胞遺伝子のプロモーター上の一番目の拡張PHDドメインを介してH2BK120残基をユビキチン化する(上)。しかし、PHF6が欠乏した時、胚盤胞遺伝子のプロモーター上のH2BK120ub水準は増加しないため、胚盤胞遺伝子の転写活性化の失敗につながるのを示す(下)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願は、PHF6(PHD finger protein 6)が従来に独立的であると知らされた転写調節に関与する二つのヒストン修飾、即ちH2BK12(ヒストン2B、12番目リシン残基)のアセチル化及びH2BK120(ヒストン2B、120番目リシン残基)のユビキチン化を一つの機能単位で作動するようにするエピジェネティクス調節子との発見に基づいたものである。
【0020】
そこで、一様態で本願は、PHF6タンパク質及び12番目リシン残基がアセチル化された修飾されたヒストン2B(H2BK12-Ac)タンパク質を提供する段階;前記タンパク質を前記PHF6の前記H2BK12-Acの認識を調節すると期待される試験物質の存在中で接触する段階;前記H2Bの120番目リシン残基のユビキチン化(H2BK120-ub)を測定する段階;及び前記測定の結果、前記試験物質で処理されなかった対照群と比較して、前記試験物質で処理された細胞で前記H2Bの120番目リシン残基のユビキチン化水準に変化がある場合、前記試験物質を前記PHF6活性調節候補物質として選別する段階を含む、PHF6によるヒストンエピジェネティクス調節剤スクリーニング方法に関するものである。
【0021】
PHF(PHD finger-containing protein)6は、後述するように二つの拡張されたPHDドメインを有するタンパク質としてその構造が知られている。PHF6は、白血病で最も多く研究されたが、多くの白血病報告で、PHF6の突然変異が知られており(Van Vlierberghe,P.et al.(2010)PHF6 mutations in T-cell acute lymphoblastic leukemia.Nat Genet,42,338-342.;Van Vlierberghe,P.et al.(2011) PHF6 mutations in adult acute myeloid leukemia.Leukemia,25,130-134.)。この突然変異によるPHF6のヒストン修飾認知機能及び転写調節機能が壊れたのが、白血病を誘発する主な原因の中の一つと知られている(Meacham,C.E.et al.(2015)A genome-scale in vivo loss-of-function screen identifies Phf6 as a lineage-specific regulator of leukemia cell growth.Genes Dev,29,483-488.)。またPHF6の突然変異は、Borjeson-Forssman-Lehmann(BFL)症候群でも多く知られている(Crawford,J.et al.(2006) Mutation screening in Borjeson-Forssman-Lehmann syndrome:identification of a novel de novo PHF6 mutation in a female patient.J Med Genet,43,238-243.;Berland,S.et al.(2011)PHF6 Deletions May Cause Borjeson-Forssman-Lehmann Syndrome in Females.Mol Syndromol,1,294-300.;Zweier,C.et al.(2013)A new face of Borjeson-Forssman-Lehmann syndrome?De novo mutations in PHF6 in seven females with a distinct phenotype.J Med Genet,50,838-847.)。PHF6は、転写調節因子としての機能は知られているが、このようなヒストン修飾を認知するのかに対する分子的機構については明らかになっていない。
【0022】
本願では、PHF6がH2BK12アセチル化-H2BK120ユビキチン化相互作用の核心機能を行うことを究明した。具体的に、PHF6に含まれたPHD2及び1と呼ばれる二つのリーダー(reader)ドメインが各々H2BK12アセチル化認識及びH2BK120ユビキチン化に関与することを究明した(
図7等参照)。
【0023】
エピジェネクティンreaderであるPHD(Plant Homeodomain)ドメインは、従来ヒストンH3のK4me2/3を認知する機能が最も多く知られているドメインで、亜鉛カチオンを二つキャプチャーする構造を有することによってreaderでの機能を取得すると知られている。しかし、PHDドメインは、他のドメインに比べて遺伝子毎に多様性が大きい方に属するが、PHDドメインがさらに半分があって、亜鉛カチオンを三つキャプチャーする場合も知られていて、一つのPHDドメインがすぐに連結されて亜鉛カチオンを四つキャプチャーするケースも知られている。本願で機能が究明されたPHF6は、PHDの半分がさらに付いている二つの拡張されたPHD(extended PHD)ドメインを含む。このようなPHF6配列及びこれに含まれた配列自体は、公知されたもので、例えばヒト及びマウスPHF6に対する情報は次のようなIDで探すことができる:ヒトPHF6 Gene ID:84295;マウスPHF6 Gene ID:70998 DB(NCBIデータベース)。本願で、ヒトPHF6タンパク質配列は、配列番号1の配列と表示される。前記配列番号1の配列でPHD1ドメインは、14から132までであり、PHD2は209から330である。タンパク質配列が知らされると、これをコートする遺伝子配列は当業者なら容易に決定することができるはすである。一実現例で、ヒトPHF6遺伝子配列は、配列番号2と表示される。
【0024】
一般的に、ヒストンタンパク質は、真核細胞でDNAをパッキングしてヌクレオソームという構造的ユニットを作る塩基性タンパク質である。ヒストンにはH1/H5、H2A、H2B、H3、及びH4の5種類のファミリーがあって、H2A、H2B、H3及びH4は、ヌクレオソームのコアを構成して、H1/H5リンカーヒストンである。コアヒストンは、ダイマーとして存在する。本願に係るPHF6 PHD2ドメインは、H2Bのアセチル化された12番目残基を認識する。PHF6のPHD1ドメインは、E3ユビキチンリガーゼであってH2Bの120番目リシン残基をユビキチン化させる。ユビキチンは、76個のアミノ酸からなるタンパク質で、ユビキチンが結合されたヒストンに巻かれたクロマチンでは遺伝子転写が促進される。
【0025】
ヒト及びマウスのH2B NCBIの遺伝子IDは、各々:8347及び68024である。H2Bタンパク質及び遺伝子配列は、NCBIに次のように公知されている:H2Bのヒトタンパク質配列:NP_001368918.1、H2Bのヒト遺伝子配列:NM_001381989.1;マウスタンパク質配列:NP_001277309.1、遺伝子配列:NM_001290380.1.
【0026】
本願に係る方法で、候補物質を選別するために、PHF6タンパク質及び12番目残基がアセチル化された修飾されたヒストン2B(H2BK12-Ac)タンパク質は、分離されたタンパク質または前記タンパク質を発現する細胞または動物モデルとして提供されることができる。
【0027】
一実現例で、前記タンパク質は、真核細胞から分離/精製されて使われることができる。分離されたヒストンタンパク質は、真核細胞でタンパク質合成後、生成される翻訳後修飾(PTM)でヒストンタンパク質のN-末端部位にアセチル化を含む。本願では、H2Bの12番目リシン残基がアセチル化されたタンパク質である。必要な場合、原核細胞から分離されて使われることができる。この場合、分離されたタンパク質は、必要に応じてアセチル化酵素を利用してイン・ビトロでアセチル化されることもできる(David Kuninger et al.,J Biotechnol,15;131(3):253-260.)。
【0028】
他の実現例では、真核細胞が使われることができる。前記真核細胞は、確立された真核細胞または動物の胚性幹細胞が使われることができる。
【0029】
一実現例で、本願に係る方法に使われる細胞は、ヒトまたはマウスを含む哺乳類由来の細胞でPHF6を過発現する真核細胞である。例えば、真核細胞はZHBTc4(mouse embryonic stem cell)、E14Tg2A.4 (mouse embryonic stem cell)、HEK293T(embryonic kidney)、またはHela(cervix cancer cell line)等が使われることができ、前記細胞株は市中で購入できる。特定細胞株で特定遺伝子を過発現する方法は、公知されたもので、例えばヒトPHF6タンパク質をコートするプラスミドを目的する細胞株に伝達移入して使うことができる。しかし、細胞株はこれに制限されず、本願に係る目的を達成できる様々な細胞が使われることができる。
【0030】
本願に係る方法は、試験物質で処理されたタンパク質または細胞で前記ヒストンタンパク質のユビキチン化程度を測定する段階を含む。ヒストンH2Bのユビキチン化を測定する方法は公知されていて、例えば本願実施例に記載されたものを参照することができる(Zhang et al.Nat.Commun 8:14799 (2017))。前記測定する段階で、前記試験物質で処理されたタンパク質または細胞で、処理されなかった細胞と比較して、前記ヒストン2Bのユビキチン化水準に変化がある場合、前記試験物質をヒストンエピジェネティクス調節剤候補物質として選別することができる。
【0031】
他の実現例で、本願に係る方法に使われる細胞は、動物モデル、例えばマウスの一部である。本願に係る方法でマウスが使われる。
【0032】
本願に係る方法に使われる細胞は、このような細胞を含むオルガノイドまたはヒトを除いた動物モデルとして提供されることができる。このような動物モデルは、本願実施例または当業界公知された方法を利用して製造されることができる。本願でオルガノイドとは、実際の臓器の微細構造を示す3次元環境のイン・ビトロで産生されたミニ臓器である。これは、自己回復及び分化能を有する細胞が3次元培養環境で作られる。オルガノイドを製造する方法は、公示(Organoid Culture handbook,Ambiso)されたものを参考することができる。
【0033】
本願は、PHF6が既に独立的であると知らされた転写調節に関与する二つのヒストン修飾、即ちH2BK12 ヒストン2B、12番目リシン残基)のアセチル化及びH2BK120(ヒストン2B、120番目リシン残基)のユビキチン化をPHD1及びPHD2のドメインを介して機能単位で作動させて、PHD2のH2BK12-Ac認識がH2BK120-Ubに先行しなければならないとの発見に基づいたものである。特に本願では、白血病で発見されるPHF6の突然変異がPHD2ドメインのH2BK12-Ac認識部位に存在するのを明らかにして、H2BK120のユビキチン化に影響を与えることを究明した。そこで、PHD2ドメインと独立的にPHF6がPHD1ドメインを介してH2BK120ユビキチン化を促進/増加/向上させることができる物質は、PHF6の特にPHD2突然変異による白血病の治療剤として開発されることができる。
【0034】
そこで他の様態で本願は、PHF6のPHD1ドメイン;またはPHD2ドメインが欠失または突然変異されたPHF6タンパク質及びヒストン2Bタンパク質を提供する段階;前記タンパク質を前記PHD1ドメインまたは前記PHF6タンパク質に含まれたPHD1ドメインと前記ヒストン2Bタンパク質との結合を促進させると期待される物質の存在中で接触する段階;前記ヒストン2Bタンパク質の120番目リシン残基のユビキチン化水準を測定する段階;及び前記測定の結果、試験物質と処理されなかった対照群と比較して、処理された場合、ヒストン2Bタンパク質の120番目のユビキチン化が増加した場合、PHF6によるヒストンエピジェネティクス調節剤スクリーニング方法に関するものである。
【0035】
PHF6のPHD1ドメイン;またはPHD2ドメインが全部または一部欠失または突然変異されたPHF6タンパク質は、本願実施例及び本願に開示されたヒト遺伝子及びタンパク質配列を根拠に遺伝的方法によって当業者なら製造できるはずである。PHD2ドメイン突然変異は、機能喪失突然変異を意味するが、特にH2BK12Ac認識に重要なグルタミン酸豊富モチーフ(
図4参照)が欠失または置換などにより他のアミノ酸に突然変異されたものである。
【0036】
前記方法に使われるタンパク質は、前記タンパク質を発現する真核細胞、動物モデルまたはオルガノイド形態で提供されることができ、これに対しては、先述したものを参照することができる。
【0037】
また、前記方法に使われるユビキチン化測定方法も先述したものを参照することができる。
【0038】
本願に係る方法に使われる試験物質は、本願で究明されたPHF6のH2BK12-Acの認識を調節して、これと連結されたH2BK120ユビキチン化の調節を持ってくると期待される物質、例えば低分子量化合物、高分子量化合物、化合物の混合物(例えば、天然抽出物または細胞または組織培養物)、または、バイオ医薬品(例えば、タンパク質、抗体、ペプチド、DNA、RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、RNAi、アプタマー、RNAzyme及びDNAzyme)または糖及び脂質などを含むが、これに限定しない。
【0039】
本願に係る一実現例では、低分子化合物が試験物質として使われることができる。前記試験物質は、合成または天然化合物のライブラリーから得ることができて、このような化合物のライブラリーを得る方法は、当業界に公知されている。合成化合物ライブラリーは、Maybridge Chemical Co.(UK)、Comgenex(USA)、Brandon Associates(USA)、Microsource(USA)及びSigma-Aldrich(USA)から購入可能で、天然化合物のライブラリーは、Pan Laboratories(USA)及びMycoSearch(USA)から購入可能である。試験物質は、当業界に公知された様々な組み合わせライブラリー方法によって得ることができて、例えば、生物学的ライブラリー、空間アドレッサブルパラレル固相または液相ライブラリー(spatially addressable parallel solid phase or solution phase libraries)、デコンボリューションが要求される合成ライブラリー方法、「1-ビーズ1-化合物」ライブラリー方法、そして親和性クロマトグラフィー選別を利用する合成ライブラリー方法によって得ることができる。分子ライブラリーの合成方法は、DeWitt et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90,6909,1993;Erb et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91,11422,1994;Zuckermann et al.,J.Med.Chem.37,2678,1994;Cho et al.,Science 261,1303,1993;Carell et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33,2059,1994;Carell et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33,2061;Gallop et al.,J.Med.Chem.37,1233,1994等に開示されている。例えば、薬物のスクリーニング目的のためには、化合物は低分子量の治療効果を有するものが使われることができる。例えば、重量が400Da、600Daまたは800Daのような約1000Da内外の化合物が使われることができる。目的に応じてこのような化合物は、化合物ライブラリーの一部を構成することができ、ライブラリーを構成する化合物の数字も数十個から数百万個まで多様である。このような化合物ライブラリーは、ペプチド、ペプトイド及びその他環状または線状のオリゴマー性化合物、及び鋳型を基本とする低分子化合物、例えばベンゾジアゼピン、ヒダントイン、ビアリール、カーボサイクル及びポリサイクル化合物(例えば、ナフタリン、フェノチアジン、アクリジン、ステロイドなど)、カーボハイドレート及びアミノ酸誘導体、ジヒドロピリジン、ベンズヒドリル及びへテロサイクル(例えば、トリアジン、インドール、チアゾリジンなど)を含むことものであってもよいが、これは単に例示的であって、これに限定されない。
【0040】
また、例えばバイオロジックスがスクリーニングに使われることができる。バイオロジックスは、細胞またはバイオ分子を称するもので、バイオ分子とは、タンパク質、核酸、炭水化物、脂質または生体内及び生体外で細胞システムなどを利用して産生された物質を称するものである。バイオ分子を単独でまたは他のバイオ分子または細胞と組み合わせで提供されることができる。バイオ分子は、例えば、ポリヌクレオチド、ペプチド、抗体、または、その他血漿で発見されるタンパク質または生物学的有機物質を含むものである。
【0041】
一実現例で、本願に係る方法で候補物質を選別することができる増加または減少は、当業者なら本願に開示された結果及び当業者の常識を考慮して適切に選択することができて、例えばこれに制限しないが試験物質と接触しなかった対照群と比較して、試験物質の存在下で約10%以上増加または減少、約20%以上増加または減少、約30%以上増加または減少、約40%以上増加または減少、約50%以上増加または減少、約60%以上増加または減少、約70%以上増加または減少、約80%以上増加または減少、約80%以上増加または減少、約100%増加または減少、またはその間の範囲を含む試験物質を候補物質として選別することができるが、前記を超える範囲を除くのではない。
【0042】
以下、本発明の理解を助けるために実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をより理解しやすくするために提供されるだけであって、本発明が下記の実施例に限定されるのではない。
【0043】
実施例
実験材料及び方法
細胞培養及び試薬条件付きでOct4欠乏を誘導することができる(ZHBTc4)マウス胚性幹細胞ラインは既に知られている。細胞培養は簡略に、初1~2継代でマウス胚芽繊維亜細胞が敷かれている状態で維持した。この状態で安定化後、0.1%ゼラチンがコーティングされた培養皿を使って胚性幹細胞を培養した。培養液は、Dulbecco’s modified Eagle medium(DMEM;Welgene)に15%牛胎児血清(FBS;Hyclone)、0.055mMβ-メルカプトエタノール(b-mercaptoethanol)、2 mML-グルタミン酸(L-glutamine)、0.1mM非必須アミノ酸(non-essential amino acids)、5,000units/mlペニシリン/ストレプトマイシン(penicillin/streptomycin)(GIBCO)、そして1,000units/ml leukemia inhibitory factor(LIF)(Chemicon)が添加されて、37℃の加湿インキュベーターで培養した。すべての細胞株は、定期的にマイコプラズマ汚染に対してテストされた。ZHBTc4の胚盤胞分化リプログラミングのために、0.5mg/mlドキシサイクリン(DOX)(#D3072,SIGMA)を2日間処理した。ZHBTc4の神経外胚葉分化のために、10mg/mlトランス-レチノイン酸(RA)(#R2625,SIGMA)を4日間LIFなしで処理した。マウス胚性幹細胞でのDNA トランスフェクションはLipofectamine 3000(Invitrogen)を使って行われた。CBP及びp300のノックダウンに対するsiRNA配列は、ttp://gesteland.genetics.utah.edu/siRNA_scalesで設計した。RNF20のノックダウンに対するsiRNA配列は、前に報告された通りに使われた。実験に使われた抗体の情報は次のとおりである。:Novus社の抗-PHF6(#68262);Abcam社の抗-ナノグ(ab21624)、抗-H3(ab1791)、抗-H2B(ab1790)、抗-H4(ab10158)、抗-H3K4me3(ab8580)、抗-H3K4me1(ab8895)、抗-H3K27me3(ab6002)、抗-H3K27Ac(ab4729)、抗-H3K9me3(ab8898)、抗-H2BK12Ac(ab195494)、抗-RNF40(ab191309)及び抗-Cdx2(ab157524);Santacruz社の抗-USP44(sc-377203)、抗-p300(sc-584)、抗-CBP(sc-1211)、抗-Oct4(sc-5279)、抗-GAPDH(sc-25778)及び抗-GST(sc-459);Bethly社の抗-RNF20(A300-714A);Active Motif社の抗-H2BK120ub(#39623);シグマ社の抗-Flag(#F3165)及び抗-β-actin(#A1978);Abm社の抗-His(#G020)。
【0044】
短いヘアピンRNA(shRNA)shRNAノックダウン細胞を作製するために、レンチウィルスshRNAをウイルスパッケージングプラスミド(psPAX2及びpMD2.G)と共にHEK293T細胞にトランスフェクションした。細胞が60~70%程度育った状態であるトランスフェクション1日後、新しい培地に取り替えてウイルス収集のために24時間の間維持した。ウイルス収集後、培地をろ過して4X Lenti-X収集器(#631232、TAKARA)と混合して、4℃で一晩中インキュベーション下した。以後収集したウイルスをポリブレンと混ぜて細胞に感染させた。shRNA配列は次のとおりである:
shPhf6fwd
5’-CCGGGTTCAGCTCACAACAACATCACTCGAGTGATGTTGTTGTGTGAGCTGAACTTTTTG-3’
rev
5’-AATTCAAAAAGTTCAGCTCACAACAACATCACTCGAGTGATGTTGTTGTGAGCTGAAC-3’.
shRnf20
fwd
5’-CCGGCGCATCATCCTTAAACGTTATCTCGAGATAACGTTTAAGGATGATGCGTTTTTG-3’
rev
5’-AATTCAAAAACGCATCATCCTTAAACGTTATCTCGAGATAACGTTTAAGGATGATGCG-3’.
shRnf40
fwd
5’-CCGGGACCACTCTAATCGAACCCATCTCGAGATGGGTTCGATTAGAGTGGTCTTTTTG-3’
rev
5’-AATTCAAAAAGACCACTCTAATCGAACCCATCTCGAGATGGGTTCGATTAGAGTGGTC-3’。
【0045】
Phf6 Knock Out(KO)マウスESC生成
Phf6 KOマウス胚性幹細胞作製は、CRISPR-Cas9システムを使った。Phf6標的化のために、単一ガイドRNA(sgRNA)デザインをGPP sgRNA Designer(CRISPRko)から行った。選択したsgRNAをpRGEN-U6ベクターにクローニングしてZHBTc4にトランスフェクションした。ピューロマイシン処理による単一コロニー選択後、Phf6 KOコロニーを収得して、免疫ブロッティングで確認した後、サンガーシーケンシングによってフレームシフト突然変異を確認した。
【0046】
胚芽体(EB)形成
ZHBTc4胚性幹細胞をハンギングドロップ方法によって1000個の細胞/滴で開始した。滴状態で2日間維持した後、各滴はコーティングされなかった滅菌カパーガラス及び丸い底の96ウェルプレートに移して培養した。培地は、毎日添加あるいは取り替えて、プレート移動は、EBに対する物理的影響を最小化するために最小で固定された。すべてのEBは、LIFがない培地を使って培養された。
【0047】
アルカリフォスファターゼ(AP)染色
AP染色のために、野生型(WT)及びPhf6 KO ZHBTc4を12ウェルプレートで0.1%ゼラチンコーティングされたカパーガラス上で培養した。ウェル当たり104個の細胞が初めにまかれた。2日後、AP染色は、アルカリ性フォスファターゼ検出キット(#SCR004,Millipore)を使って行われた。提供されたプロトコルにより染色を行った。簡略に、各細胞を1-2%の間4%パラホルムアルデヒドで固定させて、室温で溶液(ナフトール/ファーストレッドバイオレットミックス)と15-20分の間反応させた。反応後溶液を洗い落としてイメージスライドを作った。
【0048】
生きている細胞イメージング
ZHBTc4幹細胞及び胚芽体の成長を追跡するために、JuLI Stageリアルタイム細胞履歴記録器(NanoEnTeK)が使われた。胚性幹細胞成長を追跡するために、104細胞を0.1%ゼラチンコーティングされた12ウェル培養皿に撒いて、12時間毎に細胞が育った程度を記録した。記録が完了した後、細胞成長曲線は、JuLIによって提供されたソフトによって分析された。胚芽体形成の場合、各々の滴を96ウェル丸い形プレートの各々のウェルに移動させて12時間毎に細胞形態を記録した。そうした後、提供されたソフトでイメージを撮影した。胚芽体コアの他に細胞領域を計算するために、ImageJプログラムを使って7日に撮影したイメージで領域の大きさを計算した。
【0049】
免疫細胞化学染色法
免疫蛍光撮影のための胚芽体を実験前にカバースリップで成長させた(カバースリップ当たり一つの胚芽体)。胚芽体をPBSに混ぜた2%パラホルムアルデヒドで10分の間固定させた後、室温においてDPBSで2回洗浄した。固定細胞を室温で5分の間PBS(PBS-T)中0.5%トリトンX-100で透過化させた。0.1% PBS-T中10% FBSで30分の間ブロッキングを行った。染色のために、細胞を室温で4時間の間1次抗体と共にインキュベーションして、0.1% PBS-Tで4回洗浄して、蛍光標識された2次抗体(Invitrogen)と共に1時間の間インキュベーションした。細胞を洗浄してDAPI(Sigma)と共にVECTASHIELD(H-1200、Vector Laboratories)によって固定した。蛍光は、Zeiss LSM700共焦点顕微鏡(Carl Zeiss)で撮影した。
【0050】
細胞融解(Lysis)
融解前細胞は冷たいPBSで簡単にすすいだ。プロテアーゼ抑制剤が添加された溶解液(50mM Tris-HCl pH8.0、200mM NaCl及び0.5% NP-40)に細胞を溶解した後、ブランソンソニファイア450を使って超音波処理で細胞を溶解した(出力4、10~12パルス)。溶解物はブラッドフォード方法で定量してSDS-PAGEで分析した。
【0051】
Far westernブロッティング
大腸菌でGSTビーズを使ってGST-PHF6タンパク質を精製した。ZHBTc4胚性幹細胞からヒストン抽出物をSDS-PAGEで分離した。大きさに応じてH3、H2B、H2A及びH4順にヒストンオクタマーを分離した後、精製されたGST-PHF6タンパク質0.1mg/mlを緩衝溶液(100mM NaCl、20mM Tris-HCl[pH7.6]、10%グリセロール、0.1%ツイン-20、50mM ZnCl2、2%脱脂粉乳及び1mM DTT)でヒストン抽出物と共に反応させた。ヒストンが分離されたメンブレイン上にGST-PHF6の結合後、抗-GST抗体を使って免疫ブロット分析を行った。
【0052】
試験管内ヒストンペプチドプルダウン分析
分析緩衝液(250mM NaCl、50mM Tris-HCl[pH7.5]、0.05% NP-40、及び50mM ZnCl2)で0.3μgのGST精製したタンパク質と0.5μgのビオチン化されたヒストンペプチドを一晩インキュベーションした。続いて、50%スラリーのストレプトアビジンビーズを添加して1時間の間追加でインキュベーションした。この後、洗浄で非特異的相互作用を除去した後、ビーズをサンプリング緩衝液で沸騰させてペプチド-タンパク質相互作用を免疫ブロッティングによって検出した。ヒストンH3修飾に対するビオチン化されたヒストンペプチドはBoston BioChemsから購入して、ヒストンH2B修飾についてはJPT peptide technologyから購入した。
【0053】
試験管内ヒストンペプチド結合アレイ
ヒストンペプチド結合アレイキットは、ActiveMotif(#13005)から購入した。提供されたプロトコルにより次の分析が進行された。簡単に、4℃で一晩中5%牛乳が混ざったTTBS(10mM Tris-HCl[pH7.5]、150mM NaCl及び0.05%ツイン-20)でキットをブロッキングした。以後、キットを室温で1時間の間結合緩衝剤(100mM KCl、20mM HEPES[pH7.9]、1mM EDTA、10%グリセロール及び0.1mM DTT)中0.3μgの溶離されたGST-PHF6と共に培養した。続いて、GST 1次抗体及び2次抗体をキットで室温で1時間の間順次インキュベーションした。各段階の間にTTBSで3回洗浄作業を進めた。
【0054】
タンパク質発現及び精製
PHF6 WT及びE223S突然変異体(MT)は、ロゼッタ(DE3)大腸菌細胞でGST融合タンパク質として発現した。0.25mMイソプロフィール1-チオ-β-D-ガラクトピラノシド(IPTG)に誘導した後、20℃で一晩中成長させた後、細胞を収穫して、500mM NaCl及び1mMフェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)が補充されたホスフェート緩衝食塩水(PBS)中エマルシーフレックスC3(アバスチン)を使って溶解させた。15分の間14,000rpmで遠心分離した後、上澄み液をグルタチオンアガロースカラム(Thermo Scientific)にローディングした。平衡緩衝液(20mM HEPES-NaOH[pH7.5]及び300mM NaCl)でカラム洗浄した後、各タンパク質を溶離緩衝液(100mM HEPES-NaOH[pH7.5]、300mM NaCl及び20mM還元グルタチオン)で溶離させた。各々のGST-PHF6(WT及びE223S)をゲルろ過緩衝液(20mM HEPES-NaOH[pH7.5]及び150mM NaCl)で予め平衡化したSuperdex 200のサイズ排除カラムであるHiTrap SPカチオン交換カラムで精製した。対照実験のために、GSTはRosetta(DE3)大腸菌細胞で発現されて、HiTrap SPカラムの代わりにHiTrap Qアニオン交換カラムを使うことを除いては前述したのと類似するように精製された。
【0055】
MST(MicroScale Thermophoresis)測定
結合性測定は、Nanotemper Monolith NT.115picoで行われた。H2Bペプチド(1-20)WT及びK12Ac修飾を有するペプチドは、Genscriptから購入して、各々のGST-PHF6(WT及びE223S MT)及びGSTは、染料NT-647(Cy5)(Lumiprobe)で標識された。標識されたGST及びGST-PHF6は、~90nMの濃度で使われた。各々のH2BペプチドをMST緩衝液(20mM HEPES-NaOH[pH7.5]、150mM NaCl、0.05%ツイン-20及び0.5mg/mL BSA)で~880mMから26nMに希釈して、標識されたタンパク質と共に10分の間室温で培養した。MST測定は、40% MST電力及び25% LED電力(GST-PHF6 WT)または12% LED電力(GST-PHF6 E223S及びGST)において22℃で行われた。各データセットは、MOを使って分析された(Nanotemper Technology)。
【0056】
試験管内のユビキチン化分析
基質の場合、H2B-Flag WT/K12RをPhf6 KO胚性幹細胞に形質感染させて、モノヌクレオソームを含有するH2B-FlagをMNase消化によって精製した。精製後、これらのヌクレオソームをE1、E2、E3酵素、ユビキチン、50mM ZnCl2及び10x緩衝液(500mM Tris-HCl[pH7.5]、20mM ATP、10mM MgCl2,2mM DTT)と50μlで混合した。続いて37℃で1時間の間インキュベーションした。反応を停止させるために、サンプリング緩衝液を添加して、サンプルを100℃で10分の間沸騰させた。E1、E2(UBCH3、UBCH6)及びユビキチンは、Boston Biochemsから購入した。精製されたGST-PHF6 WT/突然変異は、E3リガーゼと見なされた。
【0057】
試験管内GST-プルダウン分析
E2及びE3関係として、PHF6とUCBH3間の相互作用を確認するために、試験管内ユビキチン化分析によってHis-UBCH3をユビキチン化した。UBCH3-ユビキチンコンジュゲーションのために、50ngのE1、0.5μgのHis-UBCH3及びユビキチンをユビキチン化分析緩衝液と共に37℃で1時間の間培養した。次に、1μgのユビキチン接合されたHis-UBCH3を1ml体積のプルダウン検定緩衝剤(20mM Tris-HCl[pH7.8]、125mM NaCl、10%グリセロール、0.1% NP-40及びプロテアーゼ抑制剤)でビーズ結合されたGST単独またはGST-PHF6 WTまたは突然変異と共に4℃で一晩中培養した。反応後、同じ緩衝液でビーズを4回洗浄して、サンプリング緩衝液でビーズを沸騰させた。
【0058】
ChIP(Chromatin-Immunoprecipitation)及びMNase-ChIP分析
ChIP分析は、基本的に報告された通り行われた。ChIP分析のために、細胞を室温で15分の間1%ホルムアルデヒドによって架橋させた。核ペレットをRIPA緩衝液で超音波処理した。MNase-ChIPの場合、核ペレットをMNase溶解緩衝液に溶解させて超音波処理の代わりに37℃で10分の間MNaseと反応させた。逆架橋は65℃で一晩中行われた。MNase-ChIPサンプルの逆架橋及び免疫ブロッティングのために、免疫沈殿されたビーズを2Xサンプリング緩衝液と混合して100℃で45分の間沸騰させた。精製カラム(#28105、QIAGEN)によってDNAを単離した。溶離されたDNAはqRT-PCRによって検出された。すべての反応を3回行った。この研究に使用されたChIP-qRT-PCRプライマーは次の表1のとおりである。
【0059】
【0060】
定量的RT-PCR
総RNAをTrizol(Invitrogen)を使って抽出して、M-MLV cDNA Synthesis Kit(Enzynomics)を使って1~2μgの総RNAで逆転写を行った。mRNAの量は、SYBR TOPreal qPCR 2X PreMix(Enzynomics)を有するABIプリズム7500システムまたはBioRad CFX384によって検出された。mRNAの量は、ddCt方法を使って計算してGapdh及びβ-actinを対照群として使用した。すべての反応を3回行った。この研究に使用されたqRT-PCRプライマーは表1のとおりである。
【0061】
RNAシーケンシング分析
総RNAは、DOX処理有無により各々WT及びPhf6欠乏細胞から抽出された。その後、IlluminaのTruSeqプロトコルに従って、鎖mRNA-seqライブラリーを準備した。HiSeqプラットホームで生データを生成した後、Trimmomatic(v0.36)によって品質が低いアダプタ及びべースを除去するために読み取りを事前処理した。次にSTAR(v2.5.3)を使って読み取り値を整列して、TPM(transcripts per Million)をRSEM(v1.3.0)で計算した。遺伝子当たり読み取り回数を使って、正常状態、DOX処理及びRA処理でWTとPhf6 KOのすべての可能な6種類対別比較のために、DESeq2(v1.18.1)で差別的に発現された遺伝子(DEG)を確認した。R-(v3.4.3)で4セットのDEGの結合に対してk-平均群集化を行った。遺伝子セット濃縮分析(GSEA)の場合、表現型ラベルは2:2:50:10=WT-DOX:KO-DOX:WT+DOX:KO+DOXと定義されて、遺伝子当たりピアソン相関係数は、順位のために使われた。その後、分子シグネチャデータベース(MSigDB)v6.2の遺伝子セットに対して濃縮点数を計算した。各クラスターに対するWTとPhf6 KO細胞間のDOX反応性の差を分析するために、まず各サンプルに対して各クラスターにある遺伝子のz-点数平均を求めた。その後、各々のWT及びPhf6 KO細胞でDOXの存在または不在に応じた平均値の差を計算して、これはWT及びPhf6 KO細胞のDOX反応性と見なされた。最終的に、クラスターによるWT及びPhf6 KO細胞間のDOX反応性の差は計算されて、クラスター当たりPHF6の存在または不在に応じてDOX反応性であるものと見なされた。
応答差=|(Σ(+DOXz-点数)-WT(/DOXz-点数)WT)/n-(Σ(+DOXz-点数)-Σ(-DOXz-点数)KO)/n|
【0062】
統計分析
すべての実験は3回独立的に行われた。値は平均±SEMで表示された。ANOVAテストを使って有意性を分析した。0.05未満のP-値は統計的に有意であると見なされた。
【0063】
実施例1.Phf6欠乏による胚盤胞分化及びリプログラミングの問題究明
哺乳動物の初期発達段階で、PHF6の潜在的な機能を確認するために、本発明者等はPhf6欠乏胚性幹細胞(Phf6 KO ESCs)を作り、Phf6の欠乏が胚性幹細胞の多能性及び分化に影響を及ぼすか否かを調べた(
図1A)。本発明者等はZHBTc4マウス胚性幹細胞ラインを使ったが、これはテトラサイクリン(Tc)またはドキシサイクリン(DOX)処理によってOct4が欠乏するように設計されている幹細胞である。胚性幹細胞は、Oct4の発現抑制後、初期胚盤胞系統でリプログラミングされることが知られている。従って、ZHBTc4胚性幹細胞システムは、試験管内で初期段階胚芽の全体系統を確認することができる利点がある。免疫ブロット分析によって本発明者等は、Phf6欠乏ZHBTc4胚性幹細胞ライン(以下Phf6 KO ESC)でPHF6の発現が完全に消えたことを確認した(
図1B)。また、短いヘアピンRNA(short-hairpin RNA)でPhf6の発現を抑制した時にも、ZHBTc4でPHF6発現が相当に減少されたのを確認した(
図1B)。
【0064】
本発明者等は、この野生型(WT)とPhf6 KO胚性幹細胞を比較して、PHF6が自己回復及び多能性のような胚性幹細胞の主な特性に影響を及ぼすか否かを確認した。その結果、WTとPhf6 KO胚性幹細胞の細胞成長率は、互いに大きく異ならないことを確認した(
図1C)。また、胚性幹細胞の多能性に対するPHF6の影響を調べるために、アルカリ性フォスファターゼ(AP)活性を染色して測定した結果、二つの間のAP染色に差がないことを確認した(
図1D)。このような結果は、Phf6をshRNAノックダウンでもPhf6 KOと同じ結果が出るのを確認した(
図1C及びD)。次に、mRNA-シーケンシングによる差別発現遺伝子(DEG)分析を行うことによって、WT及びPhf6 KO胚性幹細胞間の遺伝体の発現程度を比較した(
図1E)。その結果、単にいくつかの遺伝子の発現がPHF6によって影響を受けたが、胚性幹細胞で発現程度が上位50%に属する遺伝子の全体的な発現には影響を及ぼさないことを発見した(
図1F)。また、Oct4、Nanog、Sox2及びKlf4を含むいくつかの胚性幹細胞のマーカー遺伝子の発現もPhf6欠乏によって影響を受けなかった(
図1F)。これにより本発明者等はPHF6が胚性幹細胞の機能維持には影響を及ぼさないことを確認した。
【0065】
次に、PHF6が分化段階で系統特異的な遺伝子発現に影響を及ぼすのか確認するために、本発明者等は胚性幹細胞を初期胚盤胞段階でリプログラムするDOXを処理したり神経外胚葉で分化させるレチノイン酸(RA)を処理した後、WTとPhf6 KO ESC間の遺伝子発現プロファイルを比較した(
図1E)。まず、DOXまたはRA処理によって相当上向き調節された遺伝子に対する遺伝子オントロジー(GO)分析を行った。GO分析の結果、ZHBTc4胚性幹細胞は、DOX処理によって胎盤発達に進む胚盤胞系統でリプログラミングして、RA処理による神経系発達に進む神経外胚葉系統でのESCの分化がよく誘導されたことを確認した(
図1G)。次に、DOXまたはRA処理下でWTとPhf6 KOを比較して、DEGを分析した結果、予想した通り異なる分化状態の間では単にいくつかの遺伝子のみ共有するのを確認した。GO分析結果、興味深いことにDOX処理下でPhf6欠乏によって発現が低くなった遺伝子群には、胎盤発達に関連した遺伝子が多く属した一方、RA処理下でPhf6欠乏によって発現に影響を受けた遺伝子群には神経分化に知らされた遺伝子が殆ど属しないことを確認した(
図1H)。これにより、PHF6が系統特異的方式で機能して、特に胚盤胞系統の分化段階に重要な遺伝子の発現に役割をすることを確認することができた。
【0066】
実施例2.PHF6は胚盤胞分化マーカー遺伝子の転写活性因子であることを究明
胚性幹細胞の胚盤胞細胞でのリプログラミングの間PHF6の機能を詳しく識別するために、本発明者等はDOX処理有無に応じたWTとPhf6 KO ESCsの間DEGに対するk-平均クラスタリング(k=6)を行った(
図2A)。その後、各クラスターでWTとPhf6 KO胚性幹細胞との間のDOX反応の差を測定した結果、クラスター1がWTとPhf6 KOと間のDOX反応の差が最も大きいことを確認することができた(
図2B)。この結果は、クラスター1内で遺伝子発現の調節がPHF6に大きく依存することを示唆する。クラスター1内の遺伝子発現の様子を確認した結果、胚性幹細胞状態(-DOX)でWTとPhf6 KOとの間に殆どまたは全く差を見せなかったが、胚盤胞細胞でのリプログラミング状態(+DOX)で発現が相当増加して、この増加した発現がPhf6 KOで相当減少した遺伝子が集まったクラスターであることを確認することができた(
図2C)。また、DOX処理をより発現が抑制される遺伝子のクラスター(クラスター2及び4)に対するWTとPhf6 KOの差を確認して結果、これらのクラスターの遺伝子発現の差は、クラスター1に比べて高くないことを確認することができた(
図2B)。クラスター1に属した遺伝子の生物学的機能をGO分析によって確認した結果、予想した通り胚盤胞分化から派生する胎盤発生が最も有意味な生物学的機能と確認された(
図2D)。この結果は、PHF6が胚盤胞細胞リプログラミングの間転写活性因子として機能することを示す。
【0067】
実施例3.PHF6は胚盤胞系統決定のための初期胚盤胞系統決定遺伝子の発現を活性化させることを究明
PHF6が胚盤胞系統決定に対する遺伝子の発現に重要な役割をするのを確認したため、本発明者等は実際にPHF6が全体分化状態で胚盤胞分化に重要な役割をするか確認した。これのために胚芽体(EB)形成方法を活用してPhf6 KO及びWT胚性幹細胞から抽出したEBを比較して、分化過程でPHF6の役割を確認した。胚芽体形成実験は、本来胚性幹細胞を三つの系統(内胚葉、中胚葉、外胚葉)に分化させる方法であるが、近年このような胚芽体を付着させて分化させながら三つの胚葉に分化するEBコアだけでなく、胚芽体系統に分化する外部細胞層を生成できることが報告された。この方法を使って確認した結果、Phf6 KO胚性幹細胞で形成した胚芽体が、WT胚芽体とは異なって外部細胞層の形成に失敗することを確認した(
図3A)。また、この胚芽体を胚芽体分化のマーカー遺伝子であるCDX2と共に免疫染色をした結果、WT胚芽体の外部細胞層でCDX2が高く発現することを確認することによって、この外部細胞層が胚芽体系統に分化していく細胞層であることを確認した(
図3B)。興味深いことに、PHF6は外部細胞層でCDX2と共に発現するのを確認することができた(
図3C)。また、Phf6 KO胚芽体での分化の間、Cdx2、Plac1、Ascl2及びGata2を含む胚盤胞マーカー遺伝子のmRNA水準を確認した結果、WT胚盤胞に比べて相当低く発現するのを確認することができた(
図3D)。これによりPHF6が胚盤胞分化でのマーカー遺伝子の転写活性化に決定的な役割をするのを確認することができた。
【0068】
実施例4.PHF6はH2BK12Ac認識によってH2BK120ubレベルを調節するエピジネティク調節因子であることを究明
次に、本発明者等はPHF6がどのようなヒストン修飾を認識して、このような転写調節因子としての機能を有するかを確認した。まずPHF6が4種類のヒストン中どのようなヒストンの修飾を認知するのか確認するために、ZHBTc4 ESCからヒストンを抽出した後、GST-PHF6組換えタンパク質と共にFar-western実験技法によってPHF6が直接認知するヒストンを確認した。その結果、GST-PHF6組換えタンパク質が、ヒストンH2B及びH3を選択的に認知することを発見した(
図4A)。次に、PHF6によって認識されるH2B及びH3の特定修飾を確認するために、ヒストンペプチド配列キットを使ってスクリーニングを進めた。以前のFar-western実験結果と一致するように、スクリーニング結果、PHF6がいくつかの種類のヒストンH2B及びH3の修飾が入っているペプチドに特異的に結合することを確認した。これを分析した結果、上位五つのヒストン修飾は、H2BK15Ac、H3K27Ac、H2BK12Ac、H3R26me2a及びH3K27me2であった(
図4B)。これらを独立的に確認するために、各々のH2BまたはH3修飾に対してペプチド結合分析実験を行って、その結果PHF6が試験管内でH2BK12Acに特異的に結合することを確認した(
図4C)。
【0069】
PHF6は、二つの拡張PHDドメインを有しているので、どちらの拡張PHDによってH2BK12Acを読み取るPHF6の能力が付与されるか否かを明確にするために、PHF6の二つの拡張PHDのアミノ酸配列を比較した。興味深いことに、2回目拡張PHDドメインだけ特異的に負に荷電されたアミノ酸が集まっている部位が存在するのを確認した(
図4D)。既に報告されたPHDドメインによるアセチル化認識の場合、負に荷電されたアミノ酸のカルボニル酸素がアセチル化のアセチルアミドと相互作用することによって認知機能に重要であるとの報告がある。また、報告されたPHF6の拡張PHD2の結晶構造を確認した結果、負電荷を有する四つのグルタミン酸(E219、E220、E221及びE223)がアセチル化された基質認識モチーフを形成する主な残基としての可能性を確認することができた。これを確認するために、タンパク質の構造には影響を及ぼさないながら電荷をなくすグルタミン酸→セリン置換突然変異を使った結果、PHF6の223番グルタミン酸残基をセリンに置き換えた突然変異(E223S)は、H2BK12アセチル化認識が壊れるのを確認した(
図4E)。また、MST分析を使った結合親和度測定は、GST-PHF6 WTがH2B WTペプチドよりもH2BK12アセチルペプチドに対して~5倍高い親和力を有する一方、GST-PHF6 E223Sは、WT及びK12Acペプチドの両方に共に低い親和度で結合するのを確認した(
図4F)。これらのデータは、PHF6の2回目拡張PHDドメインでグルタミン酸モチーフがH2BK12Ac認識に決定的な役割をするのを示す。
【0070】
従来の癌研究で、H2BK12アセチル化は、転写活性化マーカーで知られていた。このために、本発明者等はPHF6のアセチル認知機能が系統特異的遺伝子の発現を調節するのに重要であるとの仮設を立てた。WT及びPhf6 KO胚性幹細胞でH2BK120ub、H3K4me3、H3K27me3、H3K9me3及びH2BK12Acを含む様々なヒストン修飾を調べた。その中でも、H2B 120番残基のユビキチン化(H2BK120ub)のレベルがDOX処理時WT ESCのものに比べてPhf6 KOで相当減少しているのを確認した(
図4G)。Phf6 KO胚性幹細胞でH2BK120ユビキチン化の顕著な減少は、H2BK120ユビキチン化とH2BK12アセチル化との間の潜在的な相互作用をうかがい知ることができる。これを確認するために、本発明者等はヒストンH2BK12アセチル化をはじめとする様々なアセチル化のアセチル化酵素であるCBP/p300をDOXを処理したWT及びPhf6 KO胚性幹細胞でsiRNAによってノックダウンして、p300またはCBPのノックダウンがH2BK120ユビキチン化に影響を及ぼすのか確認した。興味深いことに、p300またはCBPのノックダウンは、DOX処理状態でH2BK120ユビキチン化及びH2BK12アセチル化の両方ともに減少する結果を誘発し、これはH2BK120ubとH2BK12Acとの間の相互作用があることを暗示する(
図4H)。より直接的に二つのヒストン修飾間の相互作用を確認するために、本発明者等はH2Bのリシン12番残基をアルギニンに置き換えたH2BK12R突然変異と、リシン120番残基をアルギニンに置き換えたH2BK120R突然変異を使って、各々のヒストン修飾が起きない突然変異で相対ヒストン修飾がどのように変わるかを確認した。その結果、アセチル化欠乏突然変異(H2BK12R)は、H2B WTと比較してH2BK120ユビキチン化が顕著な減少したのを確認した一方、H2BK120Rユビキチン化欠乏突然変異は、H2BK12アセチル化に影響を及ぼさないことを確認することができた(
図4I)。これにより本発明者等はPHF6が先行H2BK12アセチル化認識によってH2BK120ユビキチン化を調節することを確認することができた。
【0071】
PHDを有するタンパク質は、典型的にヒストン修飾状態の変更のために、他の酵素を動員するリンカータンパク質として作用する。従って、本発明者等はPHF6がH2BK120ユビキチン化に知らされたE3ユビキチンリガーゼまたは脱ユビキチナーゼを募集してH2BK120ユビキチン化を調節する可能性を確認した。RNF20/40は、胚性幹細胞が神経外胚葉に分化する間、H2BK120ユビキチン化に対するE3リガーゼとして知られており、USP44はこれに対する脱ユビキチナーゼとして機能すると知られている。まず本発明者等は、RNF20/40及びUSP44発現水準を調べて、これらの酵素の発現がPHF6によって調節されるかを確認したが、これらの中でいずれもWT ESCに比べてPhf6 KO ESCで発現水準が有意味に変わらないことを確認した(
図4J)。また、共同免疫沈殿分析により物理的結合があるか確認した結果、PHF6はこれらの中のいずれのタンパク質とも結合しないことを確認することができた(
図4K)。このデータは、PHF6がRNF20/40及びUSP44と独立的にH2BK120ユビキチン化を調節することを暗示する。さらに、H2BK120ユビキチン化の調節のためのPHF6の機能が、RNF20/40のE3リガーゼ機能と独立的であるか否かを追加で証明するために、DOX処理の有無でPhf6、Rnf20及びRnf40のノックダウンに応じだH2BK120ユビキチン化を比較した。その結果、Phf6でないRnf20/40のノックダウンは、DOX処理がない時にもH2BK120ユビキチン化を減少させることを確認することができた(
図4L)。しかし、Phf6のノックダウンは、DOX処理時にだけH2BK120ユビキチン化の減少を招いた(
図4L)。より重要には、Phf6のノックダウンは、Cdx2及びGata2を含む胚盤胞分化マーカー遺伝子の発現を特異的に減少させる一方、Rnf20及びRnf40のノックダウンは、DOX処理時Cdx2及びGata2の発現に影響を及ぼさないことを確認した(
図4M)。また、クロマチン免疫沈殿分析結果、Phf6のノックダウンによってはCdx2及びGata2のプロモーターでH2BK120ユビキチン化が減少するが、RNF20/40ノックダウンでは影響を受けないことを確認することができた(
図4N)。これらのデータは、PHF6が胚盤胞分化遺伝子の転写活性化のために、H2BK120ub水準を特異的に調節して、これは既に知らされたE3リガーゼとは関係ないことを示す。
【0072】
実施例5.PHF6はヒストンH2Bタンパク質の120番目リシン(H2BK120)に対するE3ユビキチンリガーゼとして機能することを究明
従来の報告でPHDドメイン自体がE3リガーゼ活性を有する場合が報告された。PHF6は、2回目拡張PHDドメインを介してH2BK12Acを認識して、H2BでK12AcとK120ubとの間にPHF6依存性が存在するため、PHF6がPHDドメインを介してH2BK120ubに対するE3ユビキチンリガーゼ活性を有するか否かを調べた。まず、Micrococcal Nucleaseを使って、Phf6 KO胚性幹細胞でH2BK12Rアセチル化欠乏突然変異及びH2B WTが入っているモノヌクレオソームを溶離させた。続いて、精製されたGST-PHF6と溶離されたモノヌクレオソームを混合して試験管内のユビキチン化分析実験を行った(
図5A)。その結果、E2リガーゼパートナーとしてUBCH6でないUBCH3が作動した時、PHF6がE3ユビキチンリガーゼとして機能することを発見した(
図5B)。この時、PHF6は、H2BK12Rアセチル化突然変異には、H2BK120をユビキチンすることができないことを確認することによって、PHF6が先行H2BK12Ac認識によってH2BK120ubに対するE3ユビキチンリガーゼとして機能することを追加で確認した。次に、この時、PHF6の最初の拡張PHDドメインが、PHF6のE3ユビキチンリガーゼ活性を有するかを確認した。試験管内ユビキチン化分析により、PHF6 WTはH2BK120をユビキチン化するが、C82A(亜鉛イオン捕捉を妨げることによって一番目の拡張PHDドメインの機能的活性が壊れた突然変異)またはE223S(2番目の拡張PHDドメインのH2BK12Acを認識できない突然変異)で、二つ共H2BK120をユビキチン化できないことを確認した(
図5C)。この結果は、PHF6が2番目の拡張PHDを介してH2BK12Acを認識して、続いて一番目の拡張PHDドメインを介してH2BK120残基をユビキチン化することを暗示する。
【0073】
次に胚性幹細胞の胚盤胞細胞でのリプログラミング段階でPHF6のE3ユビキチンリガーゼとしての機能を確認するために、本発明者等はPhf6 KO胚性幹細胞でPHF6 WT、C82AまたはE223S突然変異を再び発現させた。しかし予想外に、C82A突然変異の発現水準が、細胞内では顕著に減少するのを観察した(
図5D)。従来のBFl症候群でのPHF6突然変異に対する研究で、PHF6の一番目のコアPHDドメインの突然変異(C45Y及びC99F)は、PHF6のタンパク質安定性を減少させることが報告された。従って、本発明者等はタンパク質安定性に影響を与えないながらPHF6のE3リガーゼ活性が壊れる一番目の拡張PHDドメインの他の主なアミノ酸残基を探した。PHDドメインと類似する構造であってE3リガーゼ活性を有すると知られるRINGドメインに対する以前の研究で、亜鉛カチオンをキャプチャーするコア残基(システインあるいはヒスチジン)の近くにある疏水性アミノ酸残基が、E3リガーゼ活性に重要であることが知られていたため、本発明者等はPHF6の一番目の拡張PHDドメイン内でこのような疏水性アミノ酸残基がPHF6のE3リガーゼ活性を発揮するのに重要であるか否かを調べた(
図5E)。これのために、一番目の拡張PHDドメインで鐘間保存された疏水性残基を探して、これらに対する突然変異を作製して試験管内のユビキチン化分析を行った。興味深いことに、125番メチオニン残基(M125)及び129番アルギニン残基(R129)に対する突然変異は、PHF6のE3リガーゼ活性が消えることを確認した(
図5F)。また、PHF6 WT及びE223S突然変異は、二つ共UBCH3 E2酵素に結合する能力を維持する一方、M125A及びR129A突然変異は、UBCH3に結合できないことを確認して、このような結果は、PHF6の一番目のPHDドメインがE3リガーゼ活性を有するドメインであることを示唆する(
図5G)。このような研究結果を基に、本発明者等は、PHF6がH2BK12AcとH2BK120ubを連結するE3ユビキチンリガーゼの役割をするという、従来に認識できなかった調節分子基盤を提示する(
図5H)。
【0074】
実施例6.PHF6はH2BK120のユビキチン化によって胚盤胞系統マーカー遺伝子の発現に及ぼす影響を究明
PHF6の2番目の拡張PHDドメインは、H2BK12Acの認識を担当して、PHF6の一番目の拡張PHDドメインは、E3リガーゼ活性を発揮するため、DOX処理をした胚性幹細胞の胚盤胞分化への分化過程で、PHF6のこのような活性を追加で確認した。まず、MNase-ChIP分析を行って、E223残基がPHF6のH2BK12Ac認識に重要であることを確認した。実際に、PHF6 E223S突然変異は、H2BK12Acが含まれたモノヌクレオソームに対する結合が相当減少した一方、PHF6 WT及びE3リガーゼ突然変異M125Aは、H2BK12Acが含まれたモノヌクレオソーム結合能力を維持することを確認した(
図6A)。また、PHF6 WTが、エンハンサーのマーカーであるH3K4me1が含まれたモノヌクレオソームとは結合できないことを発見した。このような結果は、PHF6がH2BK12Acを認識することによって標的遺伝子のプロモーター領域で機能をすることを示唆する。次に、PHF6 WTまたは突然変異をPhf6 KO胚性幹細胞に発現させた後、H2BK120ubの変化を確認した。その結果、PHF6 WTを発現させた時は、H2BK120ub水準が再び回復するのを確認したが、H2BK12Acを認識することはできない突然変異であるE223SまたはE3リガーゼ活性がない突然変異であるM125AやR129Aの発現は、H2BK120ub水準が回復されないことを確認した(
図6B)。次に、DOX処理有無に応じだWT及びPhf6 KO胚性幹細胞でCdx2及びGata2のプロモーターに対してChIP分析を行った。その結果、DOX処理は、WT胚性幹細胞で、このような遺伝子のプロモーターでH2BK120ub水準と共にPHF6の募集が増加するのを確認したが、Phf6 KO胚性幹細胞では、この増加が見られないことを確認した(
図6C)。また、Phf6と有無と関係なく発現する遺伝子であるMsx2のプロモーターに対するChIP分析では、WTとPhf6 KO胚性幹細胞との間にPHF6募集及びH2BK120ub水準の有意味な変化が現れないことを確認した(
図6D)。これに加えて、プロモーター領域でH2BK120ubに続いて現れるH3K4me3の水準も確認した。予想した通り、Cdx2及びGata2プロモーターでのH3K4me3水準は、DOX処理に依存してH2BK120ub及びPhf6増加に応じて共に増加するのを確認した(
図6C)。しかし、PHF6と関係がない遺伝子であるMsx2のプロモーターでは、H3K4me3水準もPHF6の有無と関係がなく増加するのを確認した(
図6D)。次に、本発明者等はlenti-virus方法によって、Phf6 KO胚性幹細胞でPHF6 WTまたは突然変異を持続的に発現する細胞株を作製して、ここでPHF6 WTまたは突然変異が発現するPhf6 KO胚性幹細胞で胚盤胞分化マーカー遺伝子のmRNA水準を比較した(
図6E)。qRT-PCR分析によって遺伝子の発現を確認した結果、PHF6突然変異を発現した胚性幹細胞はPHF6 WTが発現するPhf6 KO胚性幹細胞と比較した時、Cdx2、Ascl2、Wnt7b、Fgfr2及びPlac1を含む胚盤胞分化マーカー遺伝子の発現が有意に低くなっていることを確認した(
図6F)。
【0075】
以上で本願の例示的な実施例について詳細に説明したが、本願の権利範囲は、これに限定されず下記の請求範囲で定義している本願の基本概念を利用した当業者の様々な変形及び改良形態も本願の権利範囲に属する。
【0076】
本発明で使われるすべての技術用語は、別に定義されない以上、本発明の関連分野で通常の当業者が一般的に理解するのと同じような意味で使われる。本明細書で参考文献として記載されるすべての刊行物の内容本発明に受け入れられる。
【配列表】