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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】キャビネット及び引出しのロック機構
(51)【国際特許分類】
   A47B 88/50 20170101AFI20240611BHJP
【FI】
A47B88/50
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021023891
(22)【出願日】2021-02-18
(65)【公開番号】P2022126048
(43)【公開日】2022-08-30
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】505227043
【氏名又は名称】野村ユニソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】上原 伸二
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106837009(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第04315452(DE,A1)
【文献】特開2016-019663(JP,A)
【文献】実開昭63-013042(JP,U)
【文献】特開2004-344187(JP,A)
【文献】特開2012-243951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 67/04
A47B 88/00 - 88/994
E05B 1/00 - 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの引出しを開けていると、同じ方向に他の段の前記引出しを開けることができないキャビネットであって、
前記引出しを開ける側の先端面から上面にかけて連続する傾斜面、及び前記先端面と前記上面に平行な下面との交差部に切り欠きを有し、前記引出しの側面に固定されるスライダーと、
キャビネット本体を構成する縦フレームに形成される床面に垂直な溝に沿って配置され、かつ前記溝に倣って移動可能であり、前記引出しの段毎に対応して設けられる複数のスライド板と、から構成されるロック機構を有し、
各前記スライド板は、前記引出しを開ける際に前記傾斜面の移動によって前記スライド板を上昇させるローラ、上段に配置されている前記スライダーの前記切り欠きに入り込むことが可能な係止部、及び上段に配置されている前記スライド板を押し上げる押し上げ部、及び下段に配置されている前記スライド板の前記押し上げ部に接続可能な接続部を有し、
開けられている前記引出しより上段側の前記引出しにおいては、前記スライド板の前記係止部に、新たに開けようとする前記引出しの前記スライダーの前記切り欠きが係合して前記スライダーがロックされ、
開けられている前記引出しより下段側の前記引出しにおいては、新たに開けようとする前記引出しの前記スライダーの前記傾斜面と、開けられている前記引出しの前記スライダーの前記下面との間に配設されている前記スライド板がロックされるように構成されている、
ことを特徴とするキャビネット。
【請求項2】
請求項1に記載のキャビネットにおいて、
前記ローラと前記係止部との間の最長長さをL1とし、互いに隣接する上段の前記スライダー及び下段の前記スライダーのうち、上段の前記スライダーの前記下面と下段の前記スライダーの前記上面との距離をL2とし、上段の前記スライダーの前記切り欠きの底面と下段の前記スライダーの前記上面との距離をL3としたとき、L3>L1、L1>L2の関係となるように構成されている、
ことを特徴とするキャビネット。
【請求項3】
請求項1に記載のキャビネットにおいて、
前記押し上げ部及び前記接続部の一部は前記溝に挿入され、
前記スライド板は、前記溝に倣って移動可能に構成されている
ことを特徴とするキャビネット。
【請求項4】
請求項1に記載のキャビネットにおいて、
前記ローラは、ベアリング軸受によって各前記スライド板の下方に軸支されている、
ことを特徴とするキャビネット。
【請求項5】
請求項1に記載のキャビネットにおいて、
前記引出しが前記キャビネット本体に収納されているとき、前記係止部と、前記切り欠きの底面に垂直な壁部との間には、前記スライダーの移動方向に隙間を有し、且つ前記傾斜面の傾斜角が凡そ30度に設定されている、
ことを特徴とするキャビネット。
【請求項6】
請求項1に記載のキャビネットにおいて、
最上段に配置された前記スライド板は、全段の前記引出しについて当該キャビネットの内部に収納された状態にロックする全段ロック機構により、前記スライド板の上方への移動を規制するストッパ部を有し、
最下段に配置された前記スライド板の下方には、前記スライド板が降下する位置を規制するストッパ部材が配置されている、
ことを特徴とするキャビネット。
【請求項7】
請求項6に記載のキャビネットにおいて、
前記全段ロック機構は、ロックレバー取付け板に第1回転軸によって軸支されるロックレバー、前記ストッパ部の上方位置を規制する押さえ部材、前記第1回転軸とは離れた位置の第2回転軸によって軸支される押さえ軸レバー、及び、前記ロックレバーと前記押さえ軸レバーとを連結するリンクレバーを有し、前記ロックレバーの操作によって、前記押さえ部材が前記スライド板の移動を規制する位置と、規制を解除する位置とに切り換えることが可能なトグル機構によって構成されている、
ことを特徴とするキャビネット。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のキャビネットにおいて、
視覚センサによって検出するためのマークであって、前記キャビネット本体及び前記引出し毎にそれぞれ配置された第1ターゲットマーク及び第2ターゲットマークをさらに有し、
前記第1ターゲットマークは、前記キャビネット本体における前記視覚センサに対向する位置に設けられ、
前記第2ターゲットマークは、物品を載置するテーブルにおける前記視覚センサに対向する面に設けられている、
ことを特徴とするキャビネット。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のキャビネットにおいて、
前記引出しは、前記キャビネット本体の手前側及び該手前側とは反対側の奥側の両方に開けることが可能であって、
前記ロック機構は、前記キャビネット本体の手前側及び奥側の両方に配置されている、
ことを特徴とするキャビネット。
【請求項10】
一つの引出しを開けていると、同じ方向に他の段の前記引出しを開けることを防止する引出しのロック機構であって、
前記引出しを開ける側の先端面から上面に連続する傾斜面、及び前記先端面と前記上面に平行な下面との交差部に切り欠きを有し、前記引出しの側面に固定されるスライダーと、
キャビネット本体を構成する縦フレームに形成される床面に垂直な溝に沿って配置され、かつ前記溝に倣って移動可能であり、前記引出しの段毎に対応して設けられる複数のスライド板と、から構成されるロック機構を有し、
各前記スライド板は、前記引出しを開ける際に前記傾斜面の移動によって前記スライド板を上昇させるローラ、上段に配置されている前記スライダーの前記切り欠きに入り込むことが可能な係止部、及び上段に配置されている前記スライド板を押し上げる押し上げ部、及び下段に配置されている前記スライド板の前記押し上げ部に接続可能な接続部を有し、
開けられている前記引出しより上段側の前記引出しにおいては、前記スライド板の前記係止部に、新たに開けようとする前記引出しの前記スライダーの前記切り欠きが係合して前記スライダーがロックされ、
開けられている前記引出しより下段側の前記引出しにおいては、新たに開けようとする前記引出しの前記スライダーの前記傾斜面と、開けられている前記引出しの前記スライダーの前記下面との間に配設されている前記スライド板がロックされるように構成されている、
ことを特徴とする引出しのロック機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビネット及び引出しのロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
複数個の引出しを上下縦列に配置し複数個の引出しを開閉自在に収納するキャビネットは、複数の引出しが同時に開けられると転倒するおそれがある。特にキャビネットに重量物を収納する場合においては、複数の引出しを開けるとキャビネットの重心がずれることによって転倒しやすい。そこで、引出しの一つを開けると他の引出しを開けることができないキャビネットが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1には、多段の引出しが同時に開くことを防止する安全装置(引出しのロック機構)を有するキャビネットが開示されている。このキャビネットは、各引出しの側壁外面にロックピンを突設させ、キャビネット本体の内側には上下方向に移動可能なロックバーを有している。ロックバーには、各引出しに対応して幅方向に傾斜する切れ目が形成されている。全部の引出しがキャビネット本体の内側に収納されているときには、各ロックピンが切れ目に侵入可能な位置にある。一つの引出しを開けると、ロックピンが切れ目に侵入し切れ目の傾斜を利用してロックバーを上昇させる(又は降下させる)。すると、他の引出しは、切れ目の位置がロックピンに対してずれるために、ロックピンが切れ目に侵入できずに開けることができなくなる。
【0004】
また、特許文献2には、インターロックアセンブリー(引出しのロック機構に相当)を有するキャビネットが開示されている。このキャビネットは、キャビネット本体に固定された固定部材(固定レールに相当)と、各引出しに取付けられ、且つ引出しと共に移動可能な伸縮部材(スライダーに相当)とを有している。固定部材の前端には、上下一対のスライド板が上方又は下方に移動可能に嵌め込まれている。上部スライド板と、その上に配置される下部スライド板とはロッドによって接続されている。伸縮部材の先端には上下に傾斜面を有する作動部材が固定されている。一つの引出しを開ける際には、傾斜面が移動し上下一対のスライド板を上方又は下方に移動させるため、伸縮部材の移動を妨げることはない。一つの引出しを開けると作動部材の傾斜面が上部スライド板を押上げ、上部スライド板は、さらにその上段にある下部スライド板を上方に押上げる。この下部スライド板が上段の伸縮部材の移動を遮ることによって、当該引出しを開けることができなくなる。また、開けられた引出しの下部にある下部スライド板は、その下段にある上部スライド板が上方に移動することを阻止する。すなわち、開けられた引出しの上段及び下段に配置される引出しは、スライド板によって伸縮部材(作動部材)の移動が遮られ、開けることができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-39707号公報
【文献】特開平10-57168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のキャビネットは、ロックピンによってロックバーを上方又は下方に移動させることによって、引出しの一つを開けると他の引出しは開けることができない構成となっている。このキャビネットは、全部の引出しをキャビネット本体に収納した状態においては、いずれか一つの引出しを開けることが可能となっている。但し、同時に全部の引出しをロックすることができない構成であり、振動や揺れなどで引出しが開いてしまうことがある。また、ロックピンが金属板を曲げて形成されたロックバーの切れ目を摺動しながらロックバーを移動させる構造であり、ロックピンとロックバーの摺動面との接触面積が小さいため摩擦負荷が大きく、耐久性に課題がある。
【0007】
特許文献2に記載のキャビネットにおいては、作動部材の傾斜面の移動によって上下のスライド板を昇降させることによって、引出しの一つを開けると他の引出しは開けることができない構成となっている。傾斜面の角度は伸縮部材の移動方向に対して45度であることからスライド板を昇降させるときの摩擦負荷が大きくなり、それに加えて作動部材が樹脂製であるために摩耗しやすく十分な耐久性が得られないという課題がある。
【0008】
また、各スライド板は、その先端部を固定部材の先端部付近に設けられる開口部に上下に移動可能に篏合させている。上部スライド板と、その上段の下部スライド板とはロッドによって連結され、上段の下部スライド板は上段に配置される固定部材の開口部に篏合される。このような構成においては、伸縮部材を移動させるときに対向するスライド板の間で屈曲し上下一対のスライド板の直進性が失われることから、各スライド板の上下移動に支障をきたすおそれがある。すなわち、ロックしたい引出しが開いてしまったり、開けたい引出しがロックされたりすることがある。特に、引出しの数が3段より増えると、各段のスライド板の間の屈曲箇所が増え、直進性が失われることによる影響が大きく出やすくなる。
【0009】
また、特許文献2のキャビネットにおいては、全部の引出しをロックするために、複数のスライド板の最上段又は中段に全段ロック部材を配設し、全段ロック部材の下方側のスライド板は自重で落下させる構成としている。しかし、各スライド板の間で直進性が失われるとスライド板が落下せず、全部の引出しをロックすることができない場合が考えられる。なお、以降の説明において、引出しが開かない状態にすること、換言すると、引出しがキャビネットの内部に収納された状態でロックすることを「引出しをロックする」という。
【0010】
また、特許文献2のキャビネットは、上下一対のスライド板は作動部材の傾斜面の移動に追従して上下に移動する構成である。作動部材とスライド板との接触面は相互に傾斜角度を45度としていることから、引き出しを僅かに開閉操作してもスライド板が引出しと同じストロークで上下に敏感に追従移動するため、ロックしたい引出しが開いたり、開けたい引出しがロックされたりすることが考えられる。
【0011】
そこで、本発明は、このような課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、開けたい引出しは開けることができ、開けられた引出し以外の段の引出しが開くことを防止することが可能であり、優れた耐久性を有するキャビネット及び引出しのロック機構を実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1]本発明のキャビネットは、一つの引出しを開けていると、同じ方向に他の引出しを開けることができないキャビネットであって、前記引出しを開ける方向の先端面から上面に連続する傾斜面、及び前記先端面と前記上面に平行な下面との交差部に切り欠きを有し、前記引出しの側面に固定されるスライダーと、キャビネット本体を構成する縦フレームに形成される床面に垂直な溝に沿って配置され、前記溝に倣って移動可能であり、前記引出し毎に対応して設けられる複数のスライド板と、から構成されるロック機構を有し、前記スライド板は、前記引出しを開ける際に前記傾斜面の移動によって前記スライド板を上昇させるローラ、上段の前記スライダーの前記切り欠きに入り込むことが可能な係止部、及び上段に配置されている前記スライド板を押し上げる押し上げ部、及び下段に配置されている前記スライド板の前記押し上げ部に接続可能な接続部を有し、前記スライド板の前記係止部に、開けようとする前記引出しの前記スライダーの前記切り欠き部が係合して前記スライダーがロックされ、開けられている前記引出しより下段側の引出しにおいては、開けようとする前記引出しの前記スライダーの前記傾斜面と開けられている前記スライダーの前記下面との間に配設されている前記スライド板がロックされるように構成されていることを特徴とする。
【0013】
[2]本発明のキャビネットにおいては、前記ローラと前記係止部との間の最長長さをL1とし、互いに隣接する上段の前記スライダー及び下段の前記スライダーのうち、上段の前記スライダーの前記下面と下段の前記スライダーの前記上面との距離をL2とし、上段の前記スライダーの前記切り欠きの底面と下段の前記スライダーの前記上面との距離をL3としたとき、L3>L1、L1>L2の関係となるように構成されていることが好ましい。
【0014】
[3]本発明のキャビネットにおいては、前記押し上げ部及び前記接続部は前記溝に挿入され、前記スライド板は、前記溝に倣って移動可能に構成されていることが好ましい。
【0015】
[4]本発明のキャビネットにおいては、前記ローラは、ベアリング軸受によって各前記スライド板の下方に軸支されていることが好ましい。
【0016】
[5]本発明のキャビネットにおいては、前記引出しが前記キャビネット本体に収納されているとき、前記係止部と、前記切り欠きの底面に垂直な壁部との間には、前記スライダーの移動方向に隙間を有し、且つ前記傾斜面の傾斜角が凡そ30度に設定されていることが好ましい。
【0017】
[6]本発明のキャビネットにおいては、最上段に配置された前記スライド板は、全段の前記引出しについて当該キャビネットの内部に収納された状態にロックする全段ロック機構により、前記スライド板の上方への移動を規制するストッパ部を有し、
最下段に配置された前記スライド板の下方には、前記スライド板が降下する位置を規制するストッパ部材が配置されていることが好ましい。
【0018】
[7]本発明のキャビネットにおいては、前記全段ロック機構は、ロックレバー取付け板に第1回転軸によって軸支されるロックレバー、前記ストッパ部の上方位置を規制する押さえ部材、前記第1回転軸とは離れた位置の第2回転軸によって軸支される押さえ軸レバー、及び、前記ロックレバーと前記押さえ軸レバーとを連結するリンクレバーを有し、前記ロックレバーの操作によって、前記押さえ部材が前記スライド板の移動を規制する位置と、規制を解除する位置とに切り換えることが可能なトグル機構によって構成されていることが好ましい。
【0019】
[8]本発明のキャビネットにおいては、視覚センサによって検出するためのマークであって、前記キャビネット本体及び前記引出し毎にそれぞれ配置された第1ターゲットマーク及び第2ターゲットマークをさらに有し、前記第1ターゲットマークは、前記キャビネット本体における前記視覚センサに対向する位置に設けられ、前記第2ターゲットマークは、物品を載置するテーブルにおける前記視覚センサに対向する面に設けられていることが好ましい。
【0020】
[9]本発明のキャビネットにおいては、前記引出しは、前記キャビネット本体の手前側及び手前側とは反対側の奥側の両方に開けることが可能であって、前記ロック機構は、前記キャビネット本体の手前側及び奥側の両方に配置されていることが好ましい。
【0021】
[10]本発明の引出しのロック機構は、一つの引出しを開けていると、他の引出しを開けることを防止する引出しのロック機構であって、前記引出しの手前側の先端面から上面に連続する傾斜面、及び前記先端面と前記上面に平行な下面との交差部に切り欠きを有し、前記引出しの側面に固定されるスライダーと、キャビネット本体を構成する縦フレームに形成される床面に垂直な溝に沿って配置され、前記溝に倣って移動可能であり、前記引出し毎に対応して設けられる複数のスライド板と、を有し、前記スライド板は、前記引出しを開ける際に前記傾斜面の移動によって前記スライド板を上昇させるローラ、それより上段の前記スライダーの前記切り欠きに入り込むことが可能な係止部、及び上段に配置される前記スライド板を押し上げる押し上げ部、及び下段の前記スライド板の前記押し上げ部に接続可能な接続部を有し、開けられている前記引出しより上段側の引出しにおいては、前記スライド板の前記係止部に開けようとする前記引出しの前記スライダーの前記切り欠き部が係合して前記スライダーがロックされ、開けられている前記引出しより下段側の引出しにおいては、開けようとする前記引出しの前記スライダーの前記傾斜面と開けられている前記スライダーの前記下面と間に配設されている前記スライド板がロックされるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明のキャビネット及び引出しのロック機構は、スライダーの水平方向への移動及びスライド板の垂直方向への移動の相互作用で、引出しを開けることと、引出しを開けられなくすることを実現している。引出し毎に配置されるスライド板は、縦フレームに形成された溝に倣って移動する構成にしていることから直進性を有し、スライド板が傾くことによって上下のスライド板の連結位置で屈曲し、スライド板がロックして移動できなくなることを防止できる。
【0023】
本発明のキャビネット及び引出しのロック機構は、スライダーの傾斜面を移動させてスライド板を上方に移動させながら、引出しを開けるというものである。スライド板はローラを有し、ローラが傾斜面を転動しながらスライド板を上昇させる。また、傾斜面の傾斜角が凡そ30度に設定されていることから、傾斜面とローラとの間の摩擦負荷を抑え、優れた耐久性を有するキャビネットを実現できる。
【0024】
また、開けられた引出しの上段側の引出しにおいては、下段のスライド板が上方に移動し係止部が上段のスライダーの切り欠きに係合してスライダーの移動をロックする。開けられた引出しの下段側の引出しは、下段の傾斜面と引き出されたスライダーの下面によってスライド板の移動がロックされる。このように構成することによって、開けたい引出しは開けることができ、開けられた引出し以外の段の引出しを開けることを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1の実施の形態に係るキャビネット1の全体構成を示す斜視図である。
図2】引出し11A側から見たスライドレール22を示す斜視図である。
図3図2の矢印P側から見たスライダー36の手前側先端部の正面図である。
図4】最上段に配置されるスライド板30Aの構成を示す図である。
図5】縦フレーム14Aにスライド板30Bを取付けた状態を示す図である。
図6】全段ロック機構31の構成を示す斜視図である。
図7】引出し11A~11Eがキャビネット本体10に収納されているときのロック機構25を示す図である。
図8】上方から3段目の引出し11Cを開けた状態のロック機構25を示す図である。
図9】開けられた引出し11Cより上段の引出し11A、11Bがロックされている状態を示す図である。
図10】開けられた引出し11Cより下段の引出し11D、11Eがロックされている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明のキャビネット1及び引出し11のロック機構25について、図1図10を参照しながら説明する。なお、以下に説明する図は、形状の一部を簡略化した模式図である。
【0027】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係るキャビネット1の全体構成を示す斜視図である。キャビネット1は、フレーム構造のキャビネット本体10と、キャビネット本体10の内部に収納される複数の引出し11で構成されている。図1に示すキャビネット1の例では、キャビネット本体10を上下方向5段に仕切った各スペースに引出し11が収納されており、上方から順に引出し11A,11B,11C,11D、11Eと呼ぶ。図1では、上段の引出し11Aが開けられ、それよりも下段側の引出し11B~11Eが閉じられた状態を例示している。なお、以下の説明においては、引出し11A~11Eを特定せずに共通に説明できる場合に引出し11と記載することがある。キャビネット1においては、引出し11の構成は5段構成に限らず、例えば、2段構成、3段構成又は6段構成というように増減させることができる。なお、以降の説明では、各引出しを開ける方向(引き出す側)を手前側、その反対側を奥側、手前側から見て右方を右側、左方を左側とする。
【0028】
キャビネット本体10の下部には4個の車輪12が固定されており、キャビネット1を運搬することが可能となっている。キャビネット本体10の下部には、4方向にアウトリガー13が展開されている。アウトリガー13は上下に伸縮させることが可能であり、床面に対して位置ずれが発生しないようにキャビネット1を水平に固定することが可能となっている。図1に示すキャビネット1は、車輪12を有し運搬することが可能な、いわゆるキャビネット台車であるが、車輪12及びアウトリガー13がない固定キャビネットとすることも可能である。なお、図示は省略するが、キャビネット本体10には、左右両側に側面カバー、奥側に背面カバー、上方に上面カバーが設けられる。側面カバー、背面カバー及び上面カバーは、透明な板で構成され、引出し11に載置される物品を外部より視認することが可能な構成としている。但し、側面カバー、背面カバー及び上面カバーのいずれか又は全部を省略することができる。
【0029】
キャビネット本体10はフレーム構造であって、床面に対して垂直方向に延びる4本の縦フレーム14A,14B,14C,14D、縦フレーム14Aと縦フレーム14Bとを連結する横フレーム15A、及び縦フレーム14Cと縦フレーム14Dとを連結する横フレーム15Bを有している。縦フレーム14A~14Dは、上部で4辺の上部フレーム16で固定されている。各段の横フレーム15A,15B及び上部フレーム16は、各縦フレームとの交差部において固定具によって各縦フレームに固定される。図1に示す例では、横フレーム15A,15Bは引出し11の段毎に共通に使用し、各段の上下間隔を同じにしている例である。
【0030】
引出し11A~11Dは同じ構成のため、引出し11Aを代表例として説明する。引出し11Aは、4辺で構成されるフレーム枠17、フレーム枠17の上面に固定されるテーブル用ベース18、及びテーブル用ベース18の上面に配置され、物品(例えば、ワークなど)を載置するテーブル(図示は省略)によって構成されている。テーブルは、テーブル用ベース18に立設された案内ピン19で位置決めされる。テーブルは、載置する物品に対応した形状、及び物品を載置した際に撓まない程度の剛性を有する板材によって構成される。フレーム枠17の手前側には、引出し11Aを開けたり、閉めたりするための取手20が固定されている。縦フレーム14A~14Dには、それぞれ左右方向に突出し、キャビネット1を運搬するための運搬用取手21が固定されている。各引出しは、左側の横フレーム15A及び右側の横フレーム15Bとの間においてスライドレール22,23によってスライド移動し開閉することができる。スライドレール22,23は、引出し11A~11Eそれぞれ対応して設けられている。スライドレール22,23の構成は、図2及び図3を参照して説明する。
【0031】
左側前方の縦フレーム14Aには、引出し11Aの上方に配置されるスライド板30A、引出し11Aと引出し11Bの間に配置されるスライド板30B、引出し11Bと引出し11Cとの間に配置されるスライド板30C、引出し11Cと引出し11Dとの間に配置されるスライド板30D、及び引出し11Dと引出し11Eとの間に配置されるスライド板30Eが、上下方向にスライド移動することが可能に取付けられている。スライド板30A~30Eの配置は図7を参照する。スライドレール22,23及びスライド板30A~30Eによって、引出し11A,11B,11C,11D,11Eのいずれかを開けられる状態と、開けられた引出し以外の段の引出し11を閉じた状態とに切り換えるロック機構25が構成される(図7参照)。スライド板30Eの下方には、スライド板30A~30Eの降下位置を規制するストッパ部材65が配置されている。最上段のスライド板30Aの上方には、スライド板30A~30E全部の上下移動をロックしたり、ロックを解除したりする全段ロック機構31が配設されている。全段ロック機構31は、縦フレーム14Aに固定される。全段ロック機構31の構成は、図6を参照して説明する。
【0032】
なお、キャビネット1が、物品としてのワークを運搬するキャビネット台車であって、ロボット装置のマニピュレータ(図示は省略)などによってテーブルに載置されている物品を搬送する場合には、キャビネット1及びテーブルとマニピュレータとの相対位置を管理することが求められる。そのために、キャビネット1には、マニピュレータが有する視覚センサ(例えば、CCDカメラなど)に対向する位置に、キャビネット本体10及び各テーブルにそれぞれの位置を検出するためのマークが設けられている。第1ターゲットマーク32及び第2ターゲットマーク33は、キャビネット本体10及び各引出しに毎にそれぞれ配置され、キャビネット本体10及びテーブルそれぞれの位置を視覚センサによって検出するためのマークである。図1に示すように、キャビネット本体10の手前側上部に第1ターゲットマーク32が設けられている。テーブルの手前側上面(図1では、テーブルの図示は省略しているため、テーブル用ベース18に点線で図示している)に第2ターゲットマーク33が設けられている。第2ターゲットマーク33は、引出し11A~11Eの各テーブルに配置されている。
【0033】
第1ターゲットマーク32によって、キャビネット本体10のマニピュレータの基準点に対する距離及び傾きを検出することが可能となる。例えば、図1に示すように、引出し11Aを開けたときに視覚センサで第2ターゲットマーク33を検出することによって、開けられたときの引出し11Aのマニピュレータに対する傾きを含む相対位置を検出することが可能となる。すなわち、マニピュレータは、テーブルに載置されたワークを確実に掴んで搬送することが可能となる。引出し11B~11Eにおいても同じように、マニピュレータに対するテーブルの傾きを含む相対位置を検出することが可能となっている。第1ターゲットマーク32は、識別機能のあるマークを用いることによって、キャビネット1が搬送対象のものかを検出することができる。また、第2ターゲットマーク33は、識別機能のあるマークを用いることによって各段のテーブルを判別することが可能である。
【0034】
(スライドレールの構成)
図2は、引出し11A側から見たスライドレール22を示す斜視図である。スライドレール22は引出し毎にそれぞれ配設されており、互いに同じ構成を有している。なお、図2は、引出し11Aを全開したときのスライドレール22を示している。スライドレール22は、スライドレール22全体を支持しながら横フレーム15Aの内側側面に固定する固定レール35、固定レール35に対向する位置で引出し11Aを構成するフレーム枠17(図1参照)に固定されるスライダー36A、及び固定レール35とスライダー36Aとの間に配置される中間レール37で構成されている。スライダー36Aは、フレーム枠17の奥行方向の長さとほぼ同じ長さを有し、側面部36aでフレーム枠17に固定される。中間レール37は固定レール35に嵌合し、固定レール35に倣ってスライド移動することが可能であり、スライダー36Aは中間レール37に嵌合し中間レール37に倣ってスライド移動することが可能に構成されている。スライドレール22は、いわゆるテレスコピック構造を有し、スライダー36Aが固定レール35に対して伸縮可能となっている。
【0035】
キャビネットのオペレータ又はマニピュレータが取手20(図1参照)を掴んで引出し11を開けると、スライダー36Aは中間レール37と共に固定レール35に倣って中間レール37の長さ方向の中央付近まで移動し、さらに中間レール37に倣って全開位置まで移動する。スライダー36Aは、スライダー本体38及び金属製の作動部材39で構成される。
【0036】
図3は、図2の矢印P側から見たスライダー36Aの手前側先端部の正面図である。スライダー36Aは、中間レール37に嵌合するスライダー本体38及び作動部材39で構成されている。作動部材39は、奥側端面39aをスライダー本体38の先端面38aに突き当て、引出し11Aのフレーム枠17(図1参照)の側面にネジ41によって固定される。スライダー本体38の上面38b及び作動部材39の上面39cの延長線は同じ高さ位置で連続している。また、スライダー本体38の下面38c及び作動部材39の下面39fの延長線は同じ高さ位置で連続している。
【0037】
作動部材39には、先端面39dから上面39cにかけて接続する傾斜面39eが形成されている。傾斜面39eは手前側から奥側に向かって高くなるように構成され、上面39cに対する傾斜角θは凡そ30度である。作動部材39の先端面39dの延長線と上面39cに平行な下面39fの延長線の交差部には切り欠き40が形成されている。切り欠き40は、上面39cに平行な底面40a及び下面39fに直交する壁部40bで構成される。なお、本例では、スライダー本体38と作動部材39とを別体構成としたが、一体構成とすることも可能である。
【0038】
キャビネット本体10の右方向に配設されるスライドレール23(図1参照)は、前述したスライドレール22と同じ構成である。但し、スライドレール22が有している作動部材39は必要としない。引出し11Aは、スライドレール22,23によって開けたり、閉めたりすることが可能となっている。続いて、スライド板30A~30Eの構成について、図4図5を参照して説明する。なお、以降の説明において、スライド板30A~30Eを特定せずに共通に説明できる場合にスライド板30と記載することがある。
【0039】
(スライド板の構成)
図4は、最上段に配置されるスライド板30Aの構成を示す図である。図4(a)は、スライド板30Aを示す斜視図、図4(b)は、縦フレーム14Aにスライド板30Aを取付けた状態を示す斜視図である。図4(a)及び図4(b)に示すように、スライド板30Aは、基部45の下方端部において縦フレーム14Aに向かってL字状に曲げられた接続部47、基部45から奥側に延長されるアーム部48、及び上下方向2か所に配置される長孔49を有している。接続部47の先端には突起部47aが形成されており、突起部47aは縦フレーム14Aに形成された床面に対して垂直方向に延びる溝50に挿入される。アーム部48は、上方に延長されたストッパ部51を有している。ストッパ部51は、後述する全段ロック機構31(図1及び図6参照)によってスライド板30A~30Eが上方へ移動することを規制するために設けられている。接続部47は、スライド板30Aの下方に配置されるスライド板30Bに固定された連結板46によって押し上げられる際の接続部分である。
【0040】
スライド板30Aは、長孔49においてネジ52によってスペーサ57(図5(b)参照)を介してスライド移動が可能となるように取付け板53に固定される。取付け板53は、2本のボルト54が縦フレーム14Aの溝50に挿し込まれ、溝63に挿入されたナット(図示は省略)によって縦フレーム14Aに固定される。スライド板30Aは、スライド板30Bに固定された連結板46によって溝50に倣ってスライド移動することが可能となっている。スライド板30Aの下端には、ベアリング軸受55を有するローラ56が回転自在に軸支されている。図1に示すキャビネット1は、上方から見て正方形の例である。取付け板53の縦フレーム14Aへの固定方法は、図5を参照して説明する。次いで、スライド板30B~30Eの構成について図5を参照して説明する。なお、スライド板30B~30Eのそれぞれは、互いに同じ構成であることからスライド板30Bを代表例として説明する。
【0041】
図5は、縦フレーム14Aにスライド板30Bを取付けた状態を示す図である。図5(a)は斜視図、図5(b)は断面図である。スライド板30Bは、基部60の下方端部において縦フレーム14Aに向かってL字状に曲げられた接続部47、基部60の上方端部において接続部47とは反対側にL字状に曲げられた係止部61、及び上下方向2か所に配置される長孔49を有している。接続部47の先端には、スライド板30Aと同じ形状の突起部47aが形成されており、突起部47aは縦フレーム14Aに形成された溝50に挿入される。スライド板30Bの上方端部には、係止部61に対して反対側に曲げられ、さらに上方に延びる連結板46が固定されている。連結板46は、2本の固定ネジ62によってスライド板30Bに固定され、縦フレーム14Aの溝50に挿入される。
【0042】
スライド板30Bは、2か所の長孔49においてスペーサ57を介してネジ52によってスライド移動可能に取付け板53に固定される。取付け板53は、2本のボルト54を溝50に挿し込み、溝50より中心寄りの溝63にナット64を挿入して縦フレーム14Aに固定される。溝63の幅は溝50の幅より大きい。スライド板30Bの下端には、ベアリング軸受55を有するローラ56が回転自在に軸支されている。スライド板30Bは、上方側の連結板46、下方側の突起部47aを縦フレーム14Aの溝50に挿入することによって、溝50に倣って垂直方向にスライド移動することができる。
【0043】
スライド板30A~30Eは、それぞれ縦フレーム14Aの溝50に倣って上下方向に直線的にスライド移動することが可能な構成である。引出し11A~11Eの全部がキャビネット本体10に収納されている時には、スライド板30A~30Eは下方側の所定位置まで自重で落下する。なお、図5において、前述した図4と同じ符号を付した部品及び部分は、スライド板30Aと共通に使用可能、部分的に同じ構成、又は同じ機能を有している。以上説明したスライダー36A~36E及びスライド板30A~30Eからなる構成をロック機構25という。ロック機構25の作用については、図7図10を参照して説明する。続いて、ロック機構25の一部である全段ロック機構31の構成について説明する。
【0044】
図6は、全段ロック機構31の構成を示す斜視図である。図6(a)は全部の引出し11をロックした状態を示し、図6(b)は全部の引出し11のロックを解除した状態を示している。全段ロック機構31は、引出し11A~11Eをロックする状態とロックを解除する状態とを切換えるロックレバー70、ロックレバー70を回動可能に支持するロックレバー取付け板71、及びロックレバー70の操作に連動しスライド板30A~30Eの移動を規制するための押さえ部材72を有している。ロックレバー取付け板71は、フレーム取付け部71aによって縦フレーム14Aの奥側の面74に固定される。全段ロック機構31は、スライド板30Aの側方に重なるように、且つ、スライド板30Aの移動を妨げないように縦フレーム14Aに固定される。
【0045】
ロックレバー70は、第1回転軸である軸部材75によって軸支され、ロックレバー取付け板71に固定されている。押さえ部材72は押さえ軸レバー77に固定され、押さえ軸レバー77は第2回転軸である軸部材78によってロックレバー取付け板71に軸支されている。押さえ軸レバー77とロックレバー70とは、リンクレバー79によって連結され、ロックレバー70の回転をリンクレバー79及び押さえ軸レバー77を介して押さえ部材72に伝達する。リンクレバー79は、一方の端部がロックレバー70に軸部材81によって軸支され、他方の端部が押さえ軸レバー77に軸部材82によって軸支されている。ロックレバー70、押さえ軸レバー77及びリンクレバー79はトグル機構を構成する。トグル機構は、押さえ部材72に下方のスライド板30Aから押し上げ力が加えられても押さえ部材72(ロックレバー70)が容易に逆方向に押し戻されないものとなっている。また、トグル機構は、ロックレバー70の作動角度に対して押さえ部材72の作動角度を約2倍に拡大する。
【0046】
図6(a)は、全段ロック機構31が全部の引出し11をキャビネット本体10に収納してロックしている状態を示している。つまり、スライド板30A~30Eがストッパ部51(図1図7参照)で規制される位置まで降下しているときに、押さえ部材72とストッパ部51とによって、スライド板30A~30Eが移動することを規制している。なお、引出し11の全段ロック状態において、ロックレバー70はキャビネット本体10から外側に出ない範囲にあることが好ましい。
【0047】
図6(a)に示す状態からロックレバー70を反時計回り(矢印方向)に動かすと、図6(b)に示すように、押さえ部材72がスライド板30Aのストッパ部51から離れる。すると、スライド板30Aの上方への移動の規制が解除されることから、スライド板30A~30Eは上方へ移動することが可能となり、引出し11A~11Eのいずれか一つを開けることが可能な全段ロック解除の状態となる。図6(b)に示す状態からロックレバー70を時計回り(矢印方向)に動かすと、図6(a)に示す全段ロック状態に切換えることが可能となる。
【0048】
(ロック機構の作用)
図7は、引出し11A~11Eがキャビネット本体10に収納されているときのロック機構25を示す図である。図7は、任意の引出し11を開けることが可能な状態を表している。図7(a)は斜視図、図7(b)は引出し配置側から見た正面図、図7(c)は、図7(b)の円Aで示す部分を拡大して示す図である。図7は、全段ロック機構31の図示を省略している。なお、以降の説明において、スライダー36A~36Eを特定せず共通に説明可能な場合にスライダー36と記載することがある。全段ロック機構31が引出し11のロックを解除しているときには、スライド板30A~30Eの全てが下方側に自重によって降下している。
【0049】
最下段のスライド板30Eの下方には、ストッパ部材65が縦フレーム14Aに固定されている。ストッパ部材65は、スライド板30Eの下端にある接続部47の下方位置を決める。従って、スライド板30Eより上段に配置される各スライド板は、それぞれ下段側のスライド板30の連結板46に上段のスライド板30の接続部47が当接するまで降下し、溝50に沿って配列される。スライド板30Aはスライダー36Aの上方に配置される。スライド板30Bはスライダー36Aとスライダー36Bとの間に配置される、スライド板30Cはスライダー36Bとスライダー36Cとの間に配置される、スライド板30Dはスライダー36Cとスライダー36Dとの間に配置され、スライダー36Eはスライダー36Dとスライダー36Eとの間に配置されている。
【0050】
図7(c)に示すように、最上段のスライド板30Aは、接続部47が下段のスライド板30Bの連結板46に当接するまで降下している。下段のスライド板30Bの係止部61は、上段のスライダー36Aの切り欠き40から離れた位置にあり、係止部61と切り欠き40の壁部40bとの間には隙間D1、係止部61とスライダー36Aの下面38cとの間には隙間D2が形成される。ローラ56は、スライダー36Aの傾斜面39eに接触するかしない程度の隙間を有した位置にある。全段ロック機構31が解除されていることから、引出し11Aを開けようとすると(実線の矢印方向)、傾斜面39eの移動によってスライド板30Aを押し上げる(点線の矢印方向)。下段のスライド板30Bの係止部61は、切り欠き40が係合しないため、引出し11Aを開けることができる。ローラ56は傾斜面39eの移動に伴い転動するため、ローラ56と傾斜面39eとの間の摩擦負荷は極めて小さく、容易に引出し11Aを開けることができる。
【0051】
上方から2段目、3段目、4段目及び5段目の各段においても、それぞれに配置されるスライド板30とスライダー36とが、図7(c)で説明した状態と同じ位置関係になっている。そのために、全部の引出し11をキャビネット本体10に収納し、全段ロック機構31によるロックが解除されている状態においては、任意の引出し11を開けることができる。
【0052】
なお、本例においては、傾斜面39eの傾斜角θを凡そ30度にしているため、スライダー36の水平方向の移動量に対して各スライド板の垂直方向への移動量は約半分となる。従って、引出し11を開ける力に対してスライド板30を上昇させる負荷も小さくなる。また、スライダー36の移動量に対して各スライド板の移動は鈍感であり、スライダー36を僅か(引出し11のがたつき分程度)に移動させたとしても、上段のスライド板30は切り欠き40に係合するほど上昇しないことから、引出し11を開けることが可能である。なお、傾斜角θは30±5度の範囲であれば、上記作用効果を得ることが可能となる。このため、本発明においては、この範囲の角度を「凡そ30度」というものとする。
【0053】
次いで、隣接する上下段のスライダー36と、それらの間に配設されるスライド板30との関係について、図7(b)を参照して説明する。スライド板30Cの係止部61からローラ56までの最長長さ(スライド板30の長手方向である溝50に沿った方向における係止部61の端からローラ56の端までの長さ)をL1とし、スライダー36Bのスライダー本体38の下面38cとスライダー36Cのスライダー本体38の上面38b(作動部材39の上面39cと同じ位置)との距離をL2とし、スライダー36Bの切り欠き40の底面40aとスライダー36Cの上面38bとの距離をL3としたとき、L3>L1、L1>L2となるように各寸法を設定している。このように構成することによって、いずれか一つの引出し11を開けたときに、他の引出し11を開けることを防止することについて図8を参照して説明する。
【0054】
図8は、上方から3段目の引出し11Cを開けた状態のロック機構25を示す図である。全段ロック機構31は、スライド板30A~30Eのロックを解除している。引出し11Cを開けると、ローラ56は傾斜面39eを乗り越えながらスライド板30Cを上方に押し上げる。スライド板30Cの係止部61はスライダー36Bの切り欠き40内に入り込む。スライド板30Cは、スライド板30Cに固定された連結板46でスライド板30Bを押し上げ、スライド板30Bの係止部61はスライダー36Aの切り欠き40内に入り込む。スライド板30Bは、スライド板30Bに固定された連結板46でスライド板30Aを押し上げる。このような作用によって、開けられた引出し11Cより上段の引出し11B,11Aを開けることはできなくなる。このことについては、図9を参照してさらに詳しく説明する。
【0055】
引出し11Cより下段の引出し11D,11Eは、図8に示すように、スライド板30Eがストッパ部材65に当接するまで降下している。スライド板30Dは、スライド板30Eの連結板46に当接するまで降下している。つまり、引出し11Dを開けようとすると、スライダー36Eの傾斜面39eはスライド板30Eを押し上げる。すると、スライド板30Dの係止部61がスライダー36Cの下面38cに当たって停止する。つまり、スライド板30Dは、スライダー36Cとスライダー36Dの傾斜面39eとの間でロックされ、引出し11Dを開けることはできない。引出し11Eを開けようとすると、スライド板30D,30Eが、スライダー36Cとスライダー36Eの傾斜面39eとの間でロックされ、引出し11Eを開けることはできない。このことについては、図10を参照してさらに詳しく説明する。
【0056】
図9は、開けられた引出し11Cより上段の引出し11A、11Bがロックされている状態を示す図である。スライド板30Cは、スライダー36Cによって押し上げられている。スライド板30Cの係止部61は、スライダー36Bの切り欠き40の内部に入り込む。引出し11Bを開けようとすると、スライド板30Cの係止部61にスライダー36Bの切り欠き40の壁部40bが係合するため、引出し11Bを開けることができない。スライド板30Cで押し上げられたスライド板30Bは、スライダー36Aの切り欠き40に入り込む。引出し11Aを開けようとすると、スライド板30Bの係止部61にスライダー36Aの切り欠き40の壁部40bが係合するため、引出し11Aを開けることができない。スライド板30A,30Bが有する各ローラ56は、傾斜面39eから離れた位置にある。
【0057】
例えば、最下段の引出し11Eが開けられているときに、それより上段の引出し11A~11Dは開けることができないことについて説明する。最下段の引出し11Eを開けた状態においては、それより上段の引出し11Dを開けようとすると、下段のスライド板30Eの係止部61が上段のスライダー36Dの切り欠き40に入り込んでいるため、引出し11Dを開けることはできない。引出し11Cを開けようとすると、下段のスライド板30Dの係止部61が上段のスライダー36Cの切り欠き40に入り込んでいるため、引出し11Cを開けることはできない。上段の引出し11A,11Bは、図9で説明した作用によって開けることはできない。
【0058】
図10は、開けられた引出し11Cより下段の引出し11D、11Eがロックされている状態を示す図である。引出し11Cが開けられているとき、下段のスライド板30D,30Eは、スライド板30Eがストッパ部材65に当接する位置まで降下している。引出し11Dを開けようとすると、スライド板30Dのローラ56はスライダー36Dの傾斜面39eによってスライド板30Dを押し上げようとする。しかし、スライド板30Dの係止部61が引き出されているスライダー36Cの下面38cに当たり、それ以上押し上げることができない。ローラ56は、スライダー36Dの傾斜面39eを乗り越えられずに停止する。つまり、スライド板30Dは、スライダー36Dの傾斜面39eと、上段のスライダー36Cの下面38cとの間でロックされるため、引出し11Dを開けることができない。
【0059】
引出し11Eを開けようとすると、スライド板30Eのローラ56はスライダー36Eの傾斜面39eの移動によってスライド板30Eを押し上げようとする。スライド板30Eは、連結板46によってスライド板30Dを押し上げ、スライド板30Dの係止部61が引き出されているスライダー36Cの下面38cに当たり、それ以上押し上げることができない。スライド板30Eのローラ56は、スライダー36Eの傾斜面39eを乗り越えられずに停止する。つまり、スライド板30Eはスライド板30Dを介して、スライダー36Eの傾斜面39eと、スライダー36Cの下面38cとの間でロックされるため、引出し11Eを開けることができない。
【0060】
例えば、最上段の引出し11Aが開けられているときに、下段の引出し11B~11Eは開けることができないことについて説明する。最上段の引出し11Aを開けた状態においては、最下段の引出し11Eを開けようとすると、スライド板30Eのローラ56がスライダー36Eの傾斜面39eが移動しようとする。しかし、スライド板30Eがスライド板30D、スライド板30C、スライド板30Bの順に押し上げ、スライド板30Bの係止部61がスライダー36Aの下面38cに当たり、それ以上押し上げることができない。つまり、スライド板30E,30D,30C,スライド板30Bがスライダー36Eの傾斜面39eと最上段のスライダー36Aの下面38cとの間でロックされるため、引出し11Eを開けることができない。
【0061】
引出し11Dを開けようとすると、スライダー36Dの傾斜面39eが移動しようとする。しかし、スライド板30Dが、スライド板30C、スライド板30Bの順に押し上げ、スライド板30Bの係止部61がスライダー36Aの下面38cと当たり、それ以上押し上げることができない。つまり、スライド板30D,30C,30Bがスライダー36Dの傾斜面39eと最上段のスライダー36Aの下面38cとの間でロックされるため、引出し11Dを開けることができない。同じ作用によって、引出し11Cを開けようとすると、スライド板30C,30Bがスライダー36Cの傾斜面39eと最上段のスライダー36Aの下面38cとの間でロックされ、引出し11Cを開けることができない。引出し11Bを開けようとすると、スライド板30Bがスライダー36Bの傾斜面39eと上段のスライダー36Aの下面38cとの間でロックされ、引出し11Bを開けることができない。
【0062】
以上説明したように、開けられている引出し11より上段側の引出し11は、開けられた引出し11に対応して設けられているスライド板30の係止部61が、上段のスライダー36の切り欠き40に入り込むことによって開けることができなくなる。一方、開けられている引出し11より下段側の引出し11は、開けようとする引出し11のスライダー36の傾斜面39eと、開けられている引出し11のスライダー36の下面39fとの間で、開けようとする引出し11と引き出されている引出し11との間に介在されるスライド板30がロックされることによって開けることができなくなる。
【0063】
キャビネット1は、一つの引出し11を開けていると、当該一つの引出し11が開いている側に他の段の引出し11を開けることができないキャビネットである。キャビネット1は、引出し11を開ける側の先端面39dから上面39cにかけて連続する傾斜面39e、及び先端面39dと上面39c(上面38b)に平行な下面38cとの交差部に切り欠き40を有し、引出し11の側面に固定されるスライダー36と、キャビネット本体10を構成する縦フレーム14Aに形成される当該キャビネット1が配設される床面に垂直な溝50に沿って配置され、かつ溝50に倣って移動可能であり、引出し11の段毎に対応して設けられる複数のスライド板30A~30Eと、から構成されるロック機構25を有している。
【0064】
各スライド板は、引出し11を開ける際に傾斜面39eが引出し11を開ける側に移動すること(傾斜面39eの移動)によって、当該ローラ56の外周面が傾斜面39eに押され、それによってスライド板30を上昇させるように構成されているローラ56、上段に配置されているスライダー36の切り欠き40に入り込むことが可能な係止部61、及び上段に配置されているスライド板30を押し上げる押し上げ部としての連結板46、及び下段に配置されているスライド板30の連結板46に接続可能な接続部47を有している。開けられている引出し11より上段側の引出し11においては、スライド板30の係止部61に、新たに開けようとする引出し11のスライダー36の切り欠き40が係合してスライダー36をロックする。開けられている引出し11より下段側の引出し11においては、新たに開けようとする引出し11のスライダー36の傾斜面39eと開けられているスライダー36の下面38cとの間に配設されているスライド板30がロックされるように構成されている。
【0065】
キャビネット1をこのように構成することによって、複数の引出し11のうち、一つの引出し11を開けようとするとき、この引出し11の下段にあるスライド板30の係止部61は開けようとするスライダー36の切り欠き40に係合することがない。また、開けようとする引出し11の上段のスライド板30は上方のスライダー36の切り欠き40に入り込むために、引出し11を開けることができる。開けられている引出し11より上段側の引出し11は、スライド板30の係止部61が開けようとする引出し11のスライダー36の切り欠き40に係合するため、開けることができない。開けられている引出し11より下段側の引出し11は、開けようとする引出し11のスライダー36の傾斜面39eと開けられているスライダー36の下面38cとの間で、開けられている引出し11と開けようとする引出し11との間にあるスライド板30が挟まれロックされることによって開けることができなくなる。
【0066】
スライド板30A~30Eは、縦フレーム14Aに設けられた溝50に沿って配設されると共に溝50に倣って上下移動するため各スライド板の直進性があるため、各スライド板が屈曲することがなく、低負荷でスムーズに移動させることが可能となる。また、スライド板30A~30Eは、ローラ56を有しているため、スライダー36の傾斜面39eとの間の摩擦負荷を減らすことが可能であり、摩耗を抑え優れた耐久性を有する。
【0067】
このようにキャビネット1を構成することによって、開けたい引出し11は開けることができ、開けられた引出し以外の引出し11を開けることを確実に防止することが可能であり、優れた耐久性を有するキャビネット1を実現することが可能となる。
【0068】
キャビネット1においては、ローラ56と係止部61との間の最長長さをL1とし、上段及び下段に隣接する2本のスライダー36のうち、上段のスライダー36の下面38cと下段のスライダー36の上面38b(39c)との距離をL2とし、上段のスライダー36の切り欠き40の底面40aと下段のスライダー36の上面38b(39c)との距離をL3としたとき、L3>L1、L1>L2となるように構成されている。
【0069】
L1,L2,L3をこのように設定することによって、複数の引出し11のうち一つは開けることができ、開けられた引出し11以外の引出し11を開けることを確実に防止することが可能となる。
【0070】
キャビネット1は、各スライド板に設けられる押し上げ部としての連結板46及び接続部47の一部である突起部47aは溝50に挿入され、各スライド板は、溝50に倣って移動可能に構成されている。このように構成することによって、移動の妨げとなるスライド間の屈曲を抑え、各スライド板を低負荷でスムーズに移動させることが可能となる。
【0071】
キャビネット1において、ローラ56は、ベアリング軸受55によって各スライド板に軸支されている。各スライド板は、スライダー36の傾斜面39eによって上方に移動される。この際、傾斜面39eに当接するローラ56がベアリング軸受55を有しているため、負荷を抑えることができる。例えば、スライド板30A~30Eの全ての重量を一つのローラ56で支える場合においても負荷を抑えることが可能である。また、引出し11を開ける際の負荷を抑えスムーズに開けることが可能となり、さらに傾斜面39eの摩耗を抑えることによって耐久性を高めることが可能となる。
【0072】
また、引出し11A~11Eがキャビネット本体10に収納されているとき、係止部61と、係止部61と、切り欠き40の上面39cに垂直な壁部40bとの間には、スライダー36の移動方向に隙間D1を有し、且つ傾斜面39eの傾斜角θ(スライダー36の上面39cに対する傾斜面39eなす角度)が凡そ30度に設定されている。
【0073】
前述した特許文献2に記載の伸縮部材先端の作動部材39の傾斜角を45度としており、わずかな傾斜面39eの移動(引出し11の移動)に敏感に反応してスライド板30が移動され、引出し11を開けることができなくなる可能性がある。このことに対して、本例の傾斜角θは凡そ30度であり、傾斜面39eの移動に対してスライド板30の移動は鈍感である。また、スライダー36の移動に対してスライド板30を上昇させる負荷が小さい。また、スライド板30の係止部61とスライダー36の切り欠き40との間には隙間D1を有していることから、引出し11のがたつき分程度の移動にスライド板30が反応しない。そのことによって、引出し11のうち一つを開けることができ、開けられた引出し11以外の引出し11を開けることを確実に防止することが可能となる。
【0074】
また、最上段に配置されたスライド板30Aは、全段の引出し11について当該キャビネット1の内部に収納された状態にロックする全段ロック機構31により、スライド板30Aの上方への移動を規制するストッパ部51を有し、最下段に配置されるスライド板30Eの下方には、スライド板30Eが降下する位置を規制するストッパ部材65が配置されている。
【0075】
このように構成することによって、スライド板30A~30Eの上下方向の移動を規制することができる。キャビネット1は、スライダー36の傾斜面39eによって各スライド板を移動させて、引出し11を開けたり、ロックしたりする構成となっている。従って、全段ロック機構31とストッパ部材65とで各スライダーの移動を規制することによって引出し11A~11Eを開けられない状態にすることが可能となる。引出し11A~11Eの全部をロックしておくことによって、物品を収納したキャビネット1を運搬したり、揺れや振動が加わったりしたときに引出し11A~11Eが開いてしまうことを防止することが可能となる。
【0076】
また、全段ロック機構31は、ロックレバー取付け板71に第1回転軸である軸部材75によって軸支されるロックレバー70、ストッパ部51の上方位置を規制する押さえ部材72、軸部材75とは離れた位置の第2回転軸である軸部材78によって軸支される押さえ軸レバー77、及び、ロックレバー70と押さえ軸レバー77とを連結するリンクレバー79と、を有し、ロックレバー70の操作によって、押さえ部材72がスライド板30Aの移動を規制する位置と規制を解除する位置とに切り換えることが可能なトグル機構によって構成されている。
【0077】
このような構成の全段ロック機構31を使用することによって、ロックレバー70の操作で、引出し11の全段を開けることができない全段ロック状態と、全段の引出し11のいずれかを引き出すことが可能なロック解除状態とに、簡単に切換えることが可能となる。なお、全段ロック機構31はトグル機構で構成されていることから、クランプ力が大きく下方のスライド板30Aからの押し上げ力で押さえ部材72(ロックレバー70)が逆方向に押し戻されない。ロックレバー70の操作で簡単に全段ロック状態と、全段ロック解除の状態とに切換えることが可能となる。
【0078】
キャビネット1は、視覚センサによって検出するための第1ターゲットマーク32及び第2ターゲットマーク33を有し、第1ターゲットマーク32は、キャビネット本体10における視覚センサに対向する位置に設けられ、第2ターゲットマーク33は、テーブルにおける視覚センサに対向する面に設けられている。
【0079】
このように第1ターゲットマーク32及び第2ターゲットマーク33を設け、視覚センサで検出することによって、マニピュレータに対するキャビネット本体10及びテーブルの相対位置を検出することができる。また、第1ターゲットマーク32でキャビネット1が搬送対象物であるかを認識し、第2ターゲットマーク33で各段のテーブルを判別し、載置された物品を確実にマニピュレータで掴んで搬送することが可能となる。
【0080】
(第2の実施の形態)
続いて、第2の実施の形態に係るキャビネット1の構成について説明する。第1の実施の形態に係るキャビネット1は、引出し11A~11Eが手前側の一方向にだけ開けることが可能な構成である。このことに対して、第2の実施の形態に係るキャビネット1は、引出し11A~11Eが、キャビネット本体10の手前側及び手前側とは反対側の奥側の両方向に開けることが可能な構成である。第2の実施の形態は、図2図10に示す全段ロック機構31を含むロック機構25の位置を変えて使用することによって成立するため、図示を省略し、図1図10を参照しながら説明する。
【0081】
第2の実施の形態においては、図1に示す右側のスライドレール23は左側のスライドレール22と同じ構成を有している。但し、作動部材39は、スライドレール22のスライダー本体38奥側に配置される。すなわち、スライドレール23は、作動部材39を奥側に向けて右側の固定レール35に取り付けられる。スライドレール22,23は、図1で示す手前側及び奥側の両方にスライド移動可能な構成である。図示は省略するが、固定レール35には、引出し11A~11Eを手前側に全開するときのストッパと、奥側に全開するときのストッパとがそれぞれ設けられている。図1に示す右奥側の縦フレーム14Cには、縦フレーム14Aと同じ溝50が形成されており、ロック機構25は縦フレーム14Aに取り付ける場合と同じように縦フレーム14Cに取り付けられる。全段ロック機構31を含むロック機構25をキャビネット本体10の左手前側及び右奥側に設けることによって、手前側に引出し11A~11Eのいずれかを開けるときには、左手前側のロック機構25が作用し、奥側に引出し11A~11Eのいずれかを開けるときには、右奥側のロック機構25が作用する。
【0082】
なお、ロック機構25は、縦フレーム14B、14Dに取り付ける構成にすることが可能である。例えば、最上段のスライド板30Aのストッパ部51を引出し11を開ける方向に突設させ、全段ロック機構31を押さえ部材72がストッパ部51の上方に位置するように配置する。このように構成することによって、縦フレーム14B、14Dにロック機構25を取り付けることが可能となる。なお、ロック機構25を縦フレーム14A及び縦フレーム14Bに取り付け、1本のスライダー36の手前側及び奥側の両先端に作動部材39を取り付けることによって引出し11のいずれか一つを手前側及奥側の両方に開けることが可能なキャビネット1を実現できる。このような構成においては、右側の配置されるスライドレール23は、作動部材39がない単純な構成にすることができる。
【0083】
第2の実施の形態のキャビネット1においては、引出し11A~11Eは、キャビネット本体10の手前側及び手前側とは反対側の奥側の両方に開けることが可能となっている。ロック機構25は、キャビネット本体10の手前側及び奥側の両方に配置されている。このような構成にすることによって、手前側及び奥側両方において、開けたい引出し11は開けることができ、一つの引出し11を開けていると、他の引出し11は開けることをできない。また、手前側に一つの引出し11を開けているときに、奥側に一つの引出し11を開けることも可能である。
【0084】
また、このような構成にすれば、例えば、キャビネット1の手前側及び奥側の両方から物品の給除材を行うことが可能となる。或いは、手前側に引出し11のいずれかを開けて除材している間に、奥側の他の引出し11を開けて給材することが可能となる。また、第1ターゲットマーク32と第2ターゲットマーク33とをキャビネット本体10及びテーブルの手前側及び奥側の両方に配置すれば、マニピュレータに対しての方向を意識せずにキャビネット1を運搬して配置することが可能となる。
【0085】
引出しのロック機構25は、一つの引出し11を開けていると、同じ方向に他の段の引出し11を開けることを防止するロック機構である。ロック機構25は、引出し11を開ける側の先端面39dから上面39cにかけて連続する傾斜面39e、及び先端面39dと上面39c(上面38b)に平行な下面38cとの交差部に切り欠き40を有し、引出し11の側面に固定されるスライダー36と、キャビネット本体10を構成する縦フレーム14Aに形成される床面に垂直な溝50に沿って配置され、かつ溝50に倣って移動可能であり、引出し11の段毎に対応して設けられるスライド板30A~30Eと、から構成されている。
【0086】
各スライド板は、引出し11を開ける際に傾斜面39eの移動によってスライド板30を上昇させるローラ56、上段に配置されているスライダー36の切り欠き40に入り込むことが可能な係止部61、及び上段に配置されているスライド板30を押し上げる押し上げ部としての連結板46、及び下段のスライド板30の連結板46に接続可能な接続部47を有している。開けられている引出し11より上段側の引出し11においては、スライド板30の係止部61に、新たに開けようとする引出し11のスライダー36の切り欠き40が係合してスライダー36をロックする。開けられている引出し11より下段側の引出し11においては、新たに開けようとする引出し11のスライダー36の傾斜面39eと開けられているスライダー36の下面38cとの間に配設されているスライド板30がロックされるように構成されている。
【0087】
引出しのロック機構25をこのように構成することによって、複数の引出し11のうち、一つの引出し11を開けようとするとき、この引出し11の下段にあるスライド板30の係止部61は開けようとするスライダー36の切り欠き40に係合することがない。また、開けようとする引出し11の上段に配置されているスライド板30は上方のスライダー36の切り欠き40に入り込むために、引出し11を開けることができる。開けられている引出し11より上段側の引出し11は、スライド板30の係止部61が開けようとする引出し11のスライダー36の切り欠き40に係合するため、開けることができない。開けられている引出し11より下段側の引出し11は、開けようとする引出し11のスライダー36の傾斜面39eと開けられているスライダー36の下面38cとの間で、スライド板30が挟まれロックされることによって開けることができなくなる。
【0088】
スライド板30A~30Eは、縦フレーム14Aに設けられた溝50に沿って配設されると共に溝50に倣って上下移動するため横振れがなく、各スライド板が屈曲することがないため、低負荷でスムーズに移動させることが可能となる。また、スライド板30A~30Eは、ローラ56を有しているため、スライダー36の傾斜面39eとの間の摩擦負荷を減らすことが可能であり、摩耗を抑え優れた耐久性を有する。
【0089】
スライド板30A~30Eは、縦フレーム14Aに設けられた溝50に沿って配設されると共に溝50に倣って上下移動するため横振れがなく、各スライド板が屈曲することがないため、低負荷でスムーズに移動させることが可能となる。また、スライド板30A~30Eは、ローラ56を有しているため、スライダー36の傾斜面39eとの間の摩擦負荷を減らすことが可能であり、摩耗を抑え優れた耐久性を有する。
【0090】
このような構成の引出しのロック機構25を使用することによって、開けたい引出し11は開けることができ、開けられた引出し以外の引出し11を開けることを防止することが可能であり、優れた耐久性を有する引出しのロック機構25を実現することが可能となる。
【符号の説明】
【0091】
1…キャビネット、10…キャビネット本体、11,11A,11B,11C,11D、11E…引出し、14A,14B,14C,14D…縦フレーム、15A、15B…横フレーム、16…上部フレーム、18…テーブル用ベース、20…取手、22,23…スライドレール、25…引出しのロック機構、30,30A,30B,30C,30D,30E…スライド板、31…全段ロック機構、32…第1ターゲットマーク、33…第2ターゲットマーク、35…固定レール、36,36A,36B,36C,36D,36E…スライダー、37…中間レール、38…スライダー本体、38b,39c…上面、38c,39f…下面、39…作動部材、39d…先端面、39e…傾斜面、40…切り欠き、40a…底面、40b…壁部、46…連結板、47…接続部、47a…突起部、50,63…溝、51…ストッパ部、53…取付け板、55…ベアリング軸受、56…ローラ、60…基部、61…係止部、65…ストッパ部材、70…ロックレバー、71…ロックレバー取付け板、72…押さえ部材、75…軸部材(第1回転軸)、77…押さえ軸レバー、78…軸部材(第2回転軸)、79…リンクレバー、D1,D2…隙間、θ…傾斜角。
図1
図2
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図10