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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】支持バンド
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20240611BHJP
   F16B 2/10 20060101ALI20240611BHJP
   F16B 7/04 20060101ALI20240611BHJP
   E04H 12/00 20060101ALI20240611BHJP
   E04B 1/18 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
E04B1/58 508Z
F16B2/10 B
F16B7/04 301U
E04H12/00 A
E04B1/18 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021042808
(22)【出願日】2021-03-16
(65)【公開番号】P2022142585
(43)【公開日】2022-09-30
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000115360
【氏名又は名称】ヨシモトポール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122183
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】北村 仁司
(72)【発明者】
【氏名】大坂 将人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直紀
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-152579(JP,A)
【文献】実開平06-034018(JP,U)
【文献】特開2000-096524(JP,A)
【文献】特開平09-021405(JP,A)
【文献】特開2016-044736(JP,A)
【文献】特開2018-035906(JP,A)
【文献】特開2020-094678(JP,A)
【文献】特開2012-188842(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0089059(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
F16B 2/10
F16B 7/04
E04H 12/00
E04B 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁材を支柱に対して固定する支持バンドであって、
梁材を支持する第1部材と、
支柱を前記第1部材との間に挟む第2部材と、
前記第2部材に対して前記第1部材が開閉可能な状態で前記第2部材と前記第1部材とを結合するヒンジ構造と、を備え
前記第1部材は、
前記第2部材との間で支柱を挟持する第1半円筒部と、
前記第1半円筒部の外周方向の端部にある直線状の第1フランジ部と、
前記第1半円筒部の外周面から径方向に延びるように設けられた、前記梁材が固定される筒部と、
前記第1フランジ部から前記第1半円筒部の外周方向に沿って延びる第1リブと、を有し、
前記第1リブは、流線形状であることを特徴とする支持バンド。
【請求項2】
前記第2部材は、
前記第1部材との間で支柱を挟持する第2半円筒部と、
前記第2半円筒部の外周方向の端部にある直線状の第2フランジ部と、
前記第2フランジ部から前記第2半円筒部の外周方向に沿って延びる第2リブと、を有し、
前記第2リブは、流線形状であることを特徴とする請求項に記載の支持バンド。
【請求項3】
前記ヒンジ構造は、
前記第1半円筒部の外周方向の一方の端部にある第1ヒンジ片と、
前記第2半円筒部の外周方向の一方の端部にある第2ヒンジ片と、
前記第1ヒンジ片の穴及び前記第2ヒンジ片の穴を通るピンと、
を有していることを特徴とする請求項に記載の支持バンド。
【請求項4】
前記第1ヒンジ片の穴及び前記第2ヒンジ片の穴の一方が丸穴であり、
前記第1ヒンジ片の穴及び前記第2ヒンジ片の穴の他方が長穴である、
ことを特徴とする請求項に記載の支持バンド。
【請求項5】
前記第1半円筒部は、周方向の中央部の肉厚が周方向の両端部の肉厚よりも厚いことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の支持バンド。
【請求項6】
前記第1半円筒部は、内周面に前記筒部に向かう開口部が形成されており、前記開口部から下方に向けてスリットが形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の支持バンド。
【請求項7】
前記筒部は、外周面が連続した曲面からなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の支持バンド。
【請求項8】
前記第1部材及び前記第2部材は、鋳鉄からなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の支持バンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梁材を支柱に対して固定する支持バンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道用架線支柱と梁材との固定には、鉄道用架線支柱及び梁材とは別の部品が使用されている。例えば、一対の半円筒状の挟持部材の一方に形成されている円形の開口に梁材が挿入された状態で、一対の挟持部材で支柱を囲み、フランジ同士をボルトで締結することで、梁材を支柱に固定する接合部品が考案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-39873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の接合部品を構成する一対の挟持部材は別々の部材であり、フランジ同士をボルトで締結するまでは複数の作業員がそれぞれの挟持部材を扱う必要がある。そのため、施工現場での人員の確保や作業効率の観点から、接合部品の更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、支柱と梁材とを固定する際の作業性が良好な新たな支持バンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の支持バンドは、梁材を支柱に対して固定する支持バンドであって、梁材を支持する第1部材と、支柱を第1部材との間に挟む第2部材と、第2部材に対して第1部材が開閉可能な状態で第2部材と第1部材とを結合するヒンジ構造と、を備える。
【0007】
この態様によると、第1部材と第2部材とがヒンジ構造で結合されているため、一人の作業員で支持バンドを取り扱うことができる。
【0008】
第1部材は、第2部材との間で支柱を挟持する第1半円筒部と、第1半円筒部の外周方向の端部にある直線状の第1フランジ部と、第1半円筒部の外周面から径方向に延びるように設けられた、梁材が固定される筒部と、第1フランジ部から第1半円筒部の外周方向に沿って延びる第1リブと、を有してもよい。第1リブは、流線形状であってもよい。これにより、第1半円筒部への応力集中が緩和される。
【0009】
第2部材は、第1部材との間で支柱を挟持する第2半円筒部と、第2半円筒部の外周方向の端部にある直線状の第2フランジ部と、第2フランジ部から第2半円筒部の外周方向に沿って延びる第2リブと、を有してもよい。第2リブは、流線形状であってもよい。これにより、第2半円筒部への応力集中が緩和される。
【0010】
ヒンジ構造は、第1半円筒部の外周方向の一方の端部にある第1ヒンジ片と、第2半円筒部の外周方向の一方の端部にある第2ヒンジ片と、第1ヒンジ片の穴及び第2ヒンジ片の穴を通るピンと、を有していてもよい。これにより、第1部材と第2部材とを結合した状態で開閉できる。
【0011】
第1ヒンジ片の穴及び第2ヒンジ片の穴の一方が丸穴であり、第1ヒンジ片の穴及び第2ヒンジ片の穴の他方が長穴であってもよい。これにより、ピンが長穴の中でスライドすることで、第1部材と第2部材との間隔が調整できる。その結果、仕様や公差で外径が異なる支柱に対しても支持バンドにより梁材を固定できる。
【0012】
第1半円筒部は、周方向の中央部の肉厚が周方向の両端部の肉厚よりも厚い。これにより、梁材が固定される筒部にかかる大きな応力に対して第1半円筒部の強度を向上できる。
【0013】
第1半円筒部は、内周面に筒部に向かう開口部が形成されており、開口部から下方に向けてスリットが形成されていてもよい。これにより、第1半円筒部と第2半円筒部との間に浸入した水を外部へ排出できる。
【0014】
筒部は、外周面が連続した曲面からなってもよい。これにより、筒部の外周面に着雪したり鳥が営巣したりすることが低減される。
【0015】
第1部材及び第2部材は、鋳鉄からなってもよい。これにより、複雑な形状や部分的に厚みが異なる部材を簡易に製造できる。
【0016】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、支柱と梁材とを固定する際の作業性が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施の形態に係る架線柱の模式図である。
図2】本実施の形態に係る支持バンドの斜視図である。
図3】本実施の形態に係る第1部材の斜視図である。
図4図3とは異なる方向から見た本実施の形態に係る第1部材の斜視図である。
図5】本実施の形態に係る第1部材の上面図である。
図6】本実施の形態に係る第1部材の側面図である。
図7】本実施の形態に係る第2部材の斜視図である。
図8図7とは異なる方向から見た本実施の形態に係る第2部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述される全ての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0020】
本実施の形態に係る支持バンドは、梁材に支柱を固定するためのものであり、例えば、鉄道用架線柱や道路の門型標識柱といった両端固定梁を支柱に固定した構造物や、道路の案内標識柱といった片持ち梁を支柱に固定した構造物に利用できる。以下では、両端固定梁を有する鉄道用架線柱を例に説明する。
【0021】
(架線柱)
図1は、本実施の形態に係る架線柱の模式図である。架線柱10は、線路脇にそれぞれ立てられた2本の支柱12と、支柱12の上部に両端が固定されている梁材14と、梁材14を支柱12に対して固定する一対の支持バンド16と、を備える。
【0022】
(支持バンド)
図2は、本実施の形態に係る支持バンドの斜視図である。図2に示す支持バンド16は、梁材14を支持する第1部材18と、支柱12を第1部材18との間に挟む第2部材20と、第2部材20に対して第1部材18が開閉可能な状態で第2部材20と第1部材18とを結合するヒンジ構造22と、ヒンジ構造22の一部を構成するピン24と、を備える。
【0023】
これにより、例えば、梁材14が固定された第1部材18に対してヒンジ構造22により第2部材20を開き、第1部材18を支柱12の所定位置に保持した状態で、第2部材20で支柱12を挟むことで、支持バンド16で梁材14を支柱12に固定できる。このように、支持バンド16は、第1部材18と第2部材20とがヒンジ構造22で結合されているため、一人の作業員で支持バンドを取り扱うことができる。なお、第1部材18及び第2部材20を含む支持バンド16の重さは、例えば、20~80kgの範囲である。また、支持バンド16が取り付けられる支柱12の外径は、例えば、200~500mmの範囲である。
【0024】
(第1部材)
図3は、本実施の形態に係る第1部材18の斜視図である。図4は、図3とは異なる方向から見た本実施の形態に係る第1部材18の斜視図である。図5は、本実施の形態に係る第1部材18の上面図である。図6は、本実施の形態に係る第1部材18の側面図である。
【0025】
図3乃至図6に示す第1部材18は、第2部材20との間で支柱12を挟持する第1半円筒部26と、第1半円筒部26の外周方向R1の端部にある直線状の第1フランジ部28と、第1半円筒部26の外周面26aから径方向L1に延びるように設けられた、梁材14が固定される筒部30と、第1フランジ部28から第1半円筒部26の外周方向R1に沿って延びる複数の第1リブ32と、を有している。第1フランジ部28は、第1部材18と第2部材20とを締結する際に用いるボルトが挿入される複数のボルト穴34が形成されている。
【0026】
次に、第1リブ32の形状について説明する。通常の鋼管のように一定の厚みの金属板をリブ形状の部品に加工し、その部品を溶接により第1半円筒部26の外周に接合した場合、リブを構成する面のほとんどは平面である。そのため、第1半円筒部26の外周面26aや第1フランジ部28とリブとの境界は不連続な屈曲面であり、その部分に応力が集中しやすい。
【0027】
そこで、本実施の形態に係る第1リブ32は、流線形状としている。ここで、流線形状とは、第1リブ32を構成する面が平面ではなくなだらかな曲面で構成されている場合を含む。金属板で作ったリブを流線形状にするには、リブを第1半円筒部26に溶接した後に追加工が必要であり、コスト増大の要因になる。しかしながら、例えば、材料として鋳鉄を用いて鋳型で第1部材18や第2部材20を製造することで、複雑な形状や部分的に厚みが異なる部材であってもコストの上昇を抑えつつ簡易に実現できる。このように、流線形状の第1リブ32を設けることで、第1半円筒部26への応力集中が緩和される。また、流線形状の第1リブ32は、平坦な面が少ないため、着雪したり鳥が営巣したりすることが低減される。
【0028】
また、第1半円筒部26は、周方向の中央部の肉厚t1が周方向の両端部の肉厚t2よりも厚い。これにより、梁材14が固定される筒部30にかかる大きな応力に対して第1半円筒部26の強度を向上できる。
【0029】
また、第1半円筒部26は、内周面26bに筒部30に向かう開口部30aが形成されており、開口部30aから下方に向けてスリット26cが形成されている。これにより、第1部材18と第2部材20との間に浸入した水を外部へ排出できる。
【0030】
リング状のフランジ部30bの端面の下部には、筒部30に浸入した水を排出するためのスリット30dが設けられている。また、筒部30は、外周面30cが連続した曲面からなっている。つまり、外周面30cには他のリブや突起物がない。これにより、筒部30の外周面30cに着雪したり鳥が営巣したりすることが低減される。
【0031】
(第2部材)
図7は、本実施の形態に係る第2部材20の斜視図である。図8は、図7とは異なる方向から見た本実施の形態に係る第2部材20の斜視図である。
【0032】
図7図8に示す第2部材20は、第1部材18との間で支柱12を挟持する第2半円筒部38と、第2半円筒部38の外周方向R2の端部にある直線状の第2フランジ部40と、第2フランジ部40から第2半円筒部38の外周方向R2に沿って延びる第2リブ42と、を有している。第2フランジ部40は、第1部材18と第2部材20とを締結する際に用いるボルトが挿入される複数のボルト穴44が形成されている。第2リブ42は、第1リブ32と同様に流線形状である。これにより、第2半円筒部38への応力集中が緩和される。
【0033】
(ヒンジ構造)
次に、第1部材18と第2部材20とを結合するヒンジ構造22について説明する。本実施の形態に係るヒンジ構造22は、第1部材18の第1半円筒部26の外周方向R1の一方の端部にある第1ヒンジ片46と、第2部材20の第2半円筒部38の外周方向R2の一方の端部にある2つの第2ヒンジ片48と、第1ヒンジ片46の長穴46a及び第2ヒンジ片48の丸穴48aを通るピン24と、を有している。これにより、第1部材18と第2部材20とを結合した状態で開閉できるため、一人の作業員で支持バンド16を取り扱うことが容易となる。
【0034】
また、第1ヒンジ片46の穴が長穴46aであり、第2ヒンジ片48の穴が丸穴48aの場合、ピン24が長穴46aの中でスライドすることで、第1部材18と第2部材20との間隔が調整できる。その結果、仕様や公差で外径が異なる支柱12に対しても支持バンド16により梁材14を固定できる。なお、第1部材18に丸穴が形成された第1ヒンジ片を2つ設け、第2部材20に長穴が形成された第2ヒンジ片を1つ設けてもよい。あるいは、第1部材18に長穴が形成された第1ヒンジ片を2つ設け、第2部材20に丸穴が形成された第2ヒンジ片を1つ設けてもよい。
【0035】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0036】
10 架線柱、 12 支柱、 14 梁材、 16 支持バンド、 18 第1部材、 20 第2部材、 22 ヒンジ構造、 24 ピン、 26 第1半円筒部、 26a 外周面、 26b 内周面、 26c スリット、 28 第1フランジ部、 30 筒部、 30a 開口部、 30b フランジ部、 30c 外周面、 30d スリット、 32 第1リブ、 34 ボルト穴、 38 第2半円筒部、 40 第2フランジ部、 42 第2リブ、 44 ボルト穴、 46 第1ヒンジ片、 46a 長穴、 48 第2ヒンジ片、 48a 丸穴、 L1 径方向、 R1 外周方向、 R2 外周方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8