(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】脂肪細胞を介した抗癌治療薬の送達
(51)【国際特許分類】
C12N 5/077 20100101AFI20240611BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20240611BHJP
A61K 35/35 20150101ALI20240611BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240611BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20240611BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
C12N5/077
A61K31/704
A61K35/35
A61K47/12
A61K47/54
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2021523857
(86)(22)【出願日】2019-11-01
(86)【国際出願番号】 US2019059370
(87)【国際公開番号】W WO2020092887
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-07
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517366013
【氏名又は名称】ノース カロライナ ステート ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】NORTH CAROLINA STATE UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】グ,ヂェン
(72)【発明者】
【氏名】ウェン,ディ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,シュードン
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/193413(WO,A1)
【文献】五十嵐美樹ほか,脂質がガンを抑える-共役脂肪酸の有効性,化学と生物,2000年,Vol. 38, No. 8,pp. 529-531
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/35
A61K 47/00
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗癌プロドラッグと共役脂肪酸とを含む、操作された脂肪細胞。
【請求項2】
前記共役脂肪酸が、共役リノール酸異性体9シス、11トランス、10トランス、および/または12シスを含む、請求項1に記載の操作された脂肪細胞。
【請求項3】
脂質輸送タンパク質をさらに含む、請求項1に記載の操作された脂肪細胞。
【請求項4】
前記脂質輸送タンパク質が、脂肪酸結合タンパク質4(FABP4)を含む、請求項3に記載の操作された脂肪細胞。
【請求項5】
前記プロドラッグが、ドキソルビシンプロドラッグ(pDox)を含む、請求項1に記載の操作された脂肪細胞。
【請求項6】
前記プロドラッグが、活性酸素種応答性リンカーを介して前記共役脂肪酸にコンジュゲートされている、請求項1に記載の操作された脂肪細胞。
【請求項7】
対象における癌を治療する
ための、請求項1~6のいずれかに記載の操作された脂肪細胞を
含む、
医薬組成物。
【請求項8】
腫瘍への抗癌剤の持続放出を提供する
ための医薬組成物であって、
前記抗癌剤
が共役脂肪酸にコンジュゲート
されており、コンジュゲートされた抗癌剤
が脂肪細胞内に封入
されている、操作された脂肪細胞
を含み、前記操作された脂肪細胞が腫瘍に送達
されるためのものである、
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、2018年11月1日に出願された米国仮特許出願第62/754,280号の利益を主張するものであり、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
1. 癌細胞は、腫瘍を発達させるために非悪性細胞を動員することによって支持的な微小環境を生成する。近年、腫瘍関連脂肪細胞(TAA)は、ホルモン、増殖因子、サイトカインを含むアディポカインを分泌することで血管新生を促進する内分泌および炎症細胞と見なされている。これらのアディポカインは、リンパ球およびマクロファージの動員ならびに腫瘍への浸潤を引き起こし、したがって、軽度の慢性炎症を確立する。この腫瘍微小環境では、脂肪細胞の脂肪滴中の脂肪酸が、腫瘍組織の脂肪分解の増加によって引き起こされる脂肪酸結合タンパク質4(FABP4)を介して癌細胞にエネルギーを提供することができる。さらに、腫瘍周囲脂肪組織が、循環する単球に由来する腫瘍関連マクロファージ(TAM)の動員を促進し、続いてTAMのM2表現型へのシフトを誘導する。したがって、脂肪細胞は、腫瘍の微小環境との高い適合性で腫瘍の増殖を調節する可能性が高いことを表す。脂肪細胞の微小環境を標的とし、脂肪分解を誘発する癌組織を使用して治療薬の放出を提供することができる新しい治療薬が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
2. 抗癌治療薬の持続放出および癌の治療のための脂肪細胞の使用に関連する組成物および方法を開示する。
【0004】
3. 一態様では、本明細書に開示されるのは、抗癌プロドラッグ(例えば、ドキソルビシンプロドラッグなど)と、共役脂肪酸(例えば、9シス、11トランス、10トランス「、および/または12シスを含むがこれらに限定されない共役リノール酸の1つ以上の異性体など)と、を含む操作された脂肪細胞である。一態様では、プロドラッグは、環境反応性リンカー(例えば、pH感受性、酵素的、および/または活性酸素種応答性リンカーなど)を介してコンジュゲート脂肪酸にコンジュゲートすることができる。一態様では、共役脂肪酸は、ルーメン酸(9シス、11トランスリノール酸)を含む。したがって、一態様では、抗癌プロドラッグがドキソルビシンプロドラッグおよびルーメン酸を含む、任意の先行する態様の操作された脂肪細胞である。
【0005】
4. 脂質輸送タンパク質(例えば、)脂肪酸結合タンパク質4(FABP4)、をさらに含む、任意の先行する態様の脂肪細胞も本明細書に開示される。
【0006】
5. 一態様では、本明細書に開示されるのは、対象における癌または転移を治療、阻害、低減、および/または予防する方法であり、先行する態様のいずれかの操作された脂肪細胞を対象に投与することを含む。
【0007】
6. 本明細書に開示されるのはまた、腫瘍への抗癌剤の持続放出を提供する方法であって、抗癌剤を共役脂肪酸にコンジュゲートさせ、コンジュゲートした抗癌剤を脂肪細胞内に封入して、操作された脂肪細胞を作製することと、操作された脂肪細胞を腫瘍に送達させることと、を含む、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
7. この仕様に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、いくつかの実施形態を示し、説明とともに、開示された組成物および方法を示す。
【0009】
【
図1】8.
図1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H、1I、1Jおよび1Kでは、RAが脂肪細胞の悪性の役割を逆転させたことを示す。計画全体のスキーム。(
図1A)pDoxおよびRAが脂肪細胞に封入され、さらに腫瘍内または術後的に注射されたことを示す。(
図1B)Doxプロドラッグとルーメン酸の構造を示す。(
図1C)脂肪細胞中のpDox+RAと腫瘍細胞の間のクロストークを示す。(
図1D)脂肪細胞中のpDox+RAの治療効果を示す。(
図1E、1F、1G、および1H)正常な脂肪細胞は、B16F10(1E)、A375(1F)、E0771(1G)、およびMCF-7(1H)を含むトランスウェルシステムで腫瘍細胞の増殖を促進し得ることを示す。(
図1Iおよび1J)分化中にRAまたはCLAが追加された場合、新しい脂肪細胞がB16F10(1I)およびE0771(1J)細胞の増殖を抑制することができることを示す。(
図1K)同じトランスウェルシステムにおけるB16F10のPD-L1発現は、ウエスタンブロットによって決定されたことを示す。すべてのバーは平均±s.d.を表す。(n=3)。対応のないスチューデントのt検定が実行された。
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001。
【
図2】9.
図2A、2B、2C、2D、2E、2F、2G、2H、2I、2J、2K、および2Lは、RAがB16F10腫瘍の腫瘍増殖と術後再発を抑制したことを示す。(
図2A、2B、および2C)脂肪細胞中のRAの腫瘍内注入後の腫瘍増殖が、対照群および治療群における個々(対照(2A)と脂肪細胞中のRA(2B))の腫瘍増殖動態でならびに平均(2C)の腫瘍増殖動態で示されるようにモニターされたことを示す。(
図2D、2E、および2F)フローサイトメトリーによって決定されたPD-L1発現(2D)、CD8 T細胞(2E)およびTreg(2F)の集団を示す。(
図2G、2H、および2I)術後の腫瘍増殖が個々(対照(2G)と脂肪細胞中のRA(2H))でおよび平均(2I)の腫瘍増殖動態で示されたことを示す。(
図2J、2K、および2L)フローサイトメトリーによって決定されたPD-L1の発現(2J)、CD8 T細胞(2K)およびTreg(2L)の集団を示す。:2c、2i、バーは平均±s.e.mを表す。(n=6)。分析を行うために、二元配置分散分析を実行した。2d,2e、2f、2j、2k、2l、バーは平均±s.d.を表す。(n=3)。対応のないスチューデントのt検定が実行された。
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001
【
図3】10.
図3A、3B、3C、3D、3E、および3Fは、腫瘍内モデルでの脂肪細胞中のRAの抗腫瘍効果を示す。(
図3A)対照群および脂肪細胞中のRA治療群でのB16F10腫瘍のインビボ生物発光イメージングを示す。(
図3B)対照群および脂肪細胞中のRA治療群における体重を示す。(
図3C)対照群および脂肪細胞中のRA治療群の生存曲線を示す。PD-L1陰性細胞(3D)、CD8 T細胞(3E)、およびTreg(3F)のフローサイトメトリーの代表的な図。
【
図4】11. (
図4A、4B、4C、4D、4E、および4F)対照群および脂肪細胞中のRA治療群でのB16F10腫瘍のインビボ生物発光イメージング(4A)を示す。(
図4B)対照群および脂肪細胞中のRA治療群の生存曲線を示す。(
図4C)対照群および脂肪細胞中のRA治療群における体重を示す。PD-L1陰性細胞(4D)、CD8 T細胞(4E)、およびTreg(4F)のフローサイトメトリーの代表的な図。
【
図5】12.
図5はドキソルビシンプロドラッグの合成を示す。
【
図6】13. (
図6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G、6H、6I、6J、6K、6L、および6M)脂肪細胞ベースの送達システムのためのドキソルビシンプロドラッグの特性を示す。a、pDoxおよびFABP4結合のシミュレーション。b、c、Dox(b)とpDox(c)の結合親和性は蛍光偏光によって決定された。d~g、Doxと比較したpDoxの細胞毒性は、B16F10(d)、A375(e)、E0771(f)、およびMCF-7(g)細胞株で測定された。h~j、pDoxおよびDoxは脂肪細胞にさらに封入され、これらの薬物負荷脂肪細胞の抗癌効果はB16F10(h)およびE0771(i)細胞株で評価され、一方、pDoxに対するFABP4阻害剤の効果は、B16F10細胞株を使用して評価された(j)。k、脂質蓄積に対するDoxおよびpDoxの阻害効果は、オイルレッド染色によって決定された。l、pDoxの局在は蛍光顕微鏡(スケールバー:20μM)で決定された。m、癌細胞のpDoxの取り込み効率は、トランスウェルシステムでB16F10細胞と脂肪細胞中のpDoxを共培養した後のフローサイトメトリーによって決定された。すべてのバーは平均±s.d.(n=3)を表す。対応のないスチューデントのt検定が実行された。
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001。
【
図7】14. (
図7A、7B、7C、7D、7E、7F、7G、7H、7I、および7J)癌治療に対するRAとpDoxの併用効果を示す。a、b、RAとDoxまたはpDoxの併用療法の抗癌効果は、B16F10(a)およびE0771(b)細胞株で測定された。c、脂肪細胞における脂質蓄積は、オイルレッド染色によって評価された。d、脂肪細胞中のRAのDoxとpDoxの負荷容量を比較した。e、負荷容量を強化したRAは、共焦点蛍光顕微鏡で測定された(スケールバー:20μM)。f、FABP4を介したトランスウェルシステムにおけるB16F10と脂肪細胞のクロストークをフローサイトメトリーによって決定した。g、トランスウェルシステムの脂肪細胞中のpDox+RAの細胞毒性は、MTTアッセイによって決定された。h-j脂肪細胞からのDox(h)およびpDox(i)の放出プロファイル、および遊離脂肪酸(j)の濃度をトランスウェルシステムで測定した。すべてのバーは平均±s.d.を表す。(n=3)。c、g、対応のないスチューデントのt検定が実行された。
*P<0.05、
**P<0.01。
【
図8】15. (
図8A、8B、8C、8D、8E、および8F)局所的な薬物負荷脂肪細胞が腫瘍増殖を抑制したことを示す。a、個々の腫瘍増殖動態。b、各群の平均腫瘍サイズ。c、様々な治療の生存曲線。d-f、PD-L1陽性細胞(d)、CD8細胞(e)およびTreg(f)の集団は、フローサイトメトリーによって定量化された。b、バーは平均±s.e.mを表す。(n=6~7)。分析を行うために、二元配置分散分析を実行した。d~f、バーは平均±s.d.を表す。(n=4)。対応のないスチューデントのt検定が実行された。
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001。
【
図9】16. (
図9A、9B、9C、9D、9E、および9F)局所的な薬物負荷脂肪細胞が腫瘍増殖を抑制したことを示す。a、個々の腫瘍増殖動態。b、各群の平均腫瘍サイズ。c、様々な治療の生存曲線。d~f、CD8陽性細胞(d)、PD-L1細胞(e)およびTreg(f)の集団は、フローサイトメトリーによって定量化された。b、バーは平均±s.e.mを表す。(n=6~8)。分析を行うために、二元配置分散分析を実行した。d~f、バーは平均±s.d.を表す。(n=4)。対応のないスチューデントのt検定が実行された。
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001、
****P<0.0001。
【発明を実施するための形態】
【0010】
17. 本発明の化合物、組成物、物品、デバイス、および/または方法を開示および記載する前に、それらは、他に指定されない限り、特定の合成方法または特定の組換えバイオテクノロジー方法に限定されず、または、他に指定されない限り、当然ながら変化し得る特定の試薬に限定されないことを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定を意図しないこともまた理解されるべきである。
【0011】
A. 定義
18. 本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「薬学的担体」への言及は、2つ以上のそのような担体の混合物などを含む。
【0012】
19. 範囲は、本明細書では、ある特定の値について「約」から、および/または別の特定の値について「約」までとして表すことができる。そのような範囲が表現される場合、別の実施形態は、1つの特定の値からおよび/または他の特定の値までを含む。同様に、値が近似として表される場合、先行詞「約」を使用することにより、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるであろう。さらに、各範囲の終点は、他の終点に関して、および他の終点とは独立して、重要であることが理解されよう。本明細書に開示される多くの値があり、各値はまた、値自体に加えて、その特定の値について「約」として本明細書に開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「約10」も開示される。また、当業者が適切に理解するように、ある値がその値「以下」であると開示される場合、「その値以上」、および値間の可能な範囲が開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「10以下」ならびに「10以上」も開示される。また、本出願全体で、データは多数の異なる形式で提供され、このデータは終点と開始点、およびデータ点の任意の組み合わせの範囲を表すことも理解される。例えば、特定のデータ点「10」および特定のデータ点15が開示される場合、10ならびに15超、10ならびに15以上、10ならびに15未満、10ならびに15以下および10ならびに15に等しい、ならびに10~15の間が開示されると見なされることが理解される。2つの特定のユニット間の各ユニットも開示されることも理解される。たとえば、10と15が開示される場合、11、12、13、および14も開示される。
【0013】
20. 本明細書および以下の特許請求の範囲では、以下の意味を有するように定義されるべきいくつかの用語が参照される。
【0014】
21. 「任意選択的」または「任意選択的に」とは、以下に説明する事象または状況が発生する場合と発生しない場合があり、その説明には、当該事象または状況が発生する場合と発生しない場合が含まれることを意味する。
【0015】
22. 対象への「投与」には、対象に薬剤を導入または送達する任意の経路が含まれる。投与は、経口、局所、静脈内、皮下、経皮的(transcutaneous)、経皮性(transdermal)、筋肉内、関節内(intra-joint)、非経口、小動脈内(intra-arteriole)、皮内、心室内、頭蓋内、腹腔内、病巣内、鼻腔内、直腸、膣を含む、任意の好適な経路で、吸入により、埋め込み型リザーバーを介して、非経口(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、関節内(intra-articular)、滑膜内(intra-synovial)、胸骨内、髄腔内、腹腔内、肝内、病巣内、および頭蓋内注射または注入技術)で、などによって実施することができる。
【0016】
本明細書で使用される「同時の投与」、「組み合わせ投与」、「同時投与」または「同時に投与される」は、化合物が同じ時点で、または本質的に互いに直後に投与されることを意味する。後者の場合、2つの化合物は、観察された結果が、化合物が同じ時点で投与されたときに達成された結果と区別できないほど十分に近い時間で投与される。「全身投与」とは、対象に、対象の体の広範囲の領域(例えば、体の50%超)に薬剤を導入または送達する経路を介して、例えば循環器系やリンパ系への入口を介して、薬剤を導入または提供することを指す。
【0017】
対照的に、「局所投与」は、投与領域または投与点に直接隣接する領域に薬剤を導入または送達し、治療上の相当量で薬剤を全身的に導入しない経路を介した薬剤の対象への導入または送達を指す。例えば、局所的に投与された薬剤は、投与点の局所的な近傍で容易に検出可能であるが、対象の体の遠位部分では検出できないか、またはごく少量で検出可能である。投与は、自己投与および他者による投与が含まれる。
【0018】
23. 「生体適合性」は、一般に、レシピエントに対して一般に無毒であり、対象に重大な悪影響を引き起こさない材料および任意のその代謝産物または分解産物を指す。
【0019】
24. 「含む」とは、組成物、方法などが列挙された要素を含むが、他のものを除外しないことを意味することを意図する。組成物および方法を定義するために使用される場合、「から本質的になる」とは、列挙された要素を含むが、組み合わせにとって本質的に重要ないずれかの他の要素を除外することを意味する。したがって、本明細書で定義されるように、要素から本質的になる組成物は、単離および精製方法からの微量汚染物質、ならびにリン酸緩衝生理食塩水、防腐剤などの薬学的に許容される担体を除外しない。「からなる」とは、本発明の組成物を投与するための他の成分の微量元素および実質的な方法工程を超えるものを除外することを意味する。これらの移行用語の各々によって定義される実施形態は、本発明の範囲内である。
【0020】
25. 「対照」は、比較の目的で実験で使用される代替の対象または試料である。対照は「陽性」または「陰性」であり得る。
【0021】
26. 「制御放出」または「持続放出」は、インビボで所望の薬物動態プロファイルを達成するために、制御された様式で所与の剤形から薬剤を放出することを指す。「制御放出」薬剤送達の態様は、薬剤放出の所望の動力学を確立するために、製剤および/または剤形を操作する能力である。
【0022】
27. 薬剤の「有効量」とは、所望の効果を提供するのに十分な量の薬剤を指す。「有効な」薬剤の量は、対象の年齢および全身状態、特定の薬剤(複数可)などの多くの要因に応じて、対象ごとに異なる。したがって、定量化された「有効量」を常に規定することが可能とは限らない。しかしながら、任意の対象の場合における適切な「有効量」は、日常的な実験を使用して当業者によって決定され得る。また、本明細書で使用される場合、特に別段の記載がない限り、薬剤の「有効量」はまた、治療有効量および予防有効量の両方をカバーする量を指し得る。治療効果を達成するために必要な薬剤の「有効量」は、対象の年齢、性別、および体重などの要因によって異なり得る。投与レジメンは、最適な治療反応を提供するように調整され得る。例えば、いくつかの分割された用量が毎日投与され得るか、または用量は、治療状況の緊急性によって示されるように比例して低減され得る。
【0023】
28. 「減少」とは、症状、疾患、組成、状態、または活動のより少ない量をもたらす任意の変化を指す。物質はまた、物質を伴う遺伝子産物の遺伝的出力が、物質を伴わない遺伝子産物の出力と比較してより少ない場合に、遺伝子の遺伝的出力を減少させると理解される。また、例えば、減少は、症状が以前に観察されたものよりも少なくなるような障害の症状の変化であり得る。減少は、統計的に有意な量での状態、症状、活動、組成におけるいずれかの個々の減少、中央値の減少、または平均的減少であり得る。したがって、減少が統計的に有意である限り、減少は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100%の減少であり得る。
【0024】
29. 「阻害する」、「阻害すること」、および「阻害」は、活動、応答、状態、疾患、または他の生物学的パラメーターを減少させることを意味する。これには、活動、応答、状態、または疾患の完全な除去が含まれるが、これらに限定されない。これはまた、例えば、天然レベルまたは対照レベルと比較して、活性、応答、状態、または疾患の10%の低減を含み得る。したがって、低減は、天然レベルまたは対照レベルと比較して、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%、またはその間の任意の量の低減であり得る。
【0025】
30. 「増加」とは、症状、疾患、組成、状態、または活動のより大きい量をもたらす任意の変化を指す。増加は、統計的に有意な量での状態、症状、活動、組成におけるいずれかの個々の増加、中央値の増加、または平均的増加であり得る。したがって、増加が統計的に有意である限り、増加は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100%の増加であり得る。
【0026】
31. 「薬学的に許容される」成分は、生物学的または他の方法で望ましくないものでない成分を指すことができ、すなわち、成分は、重大な望ましくない生物学的効果を引き起こし、またはそれが含まれる製剤の他の成分のいずれかと有害な様式で相互作用することなく、本発明の医薬製剤に組み込まれ、本明細書に記載の対象に投与され得る。ヒトへの投与に関して使用される場合、この用語は一般に、成分が毒物学的および製造試験の必要な基準を満たしていること、または米国食品医薬品局によって作成された不活性成分ガイドに含まれていることを意味する。
【0027】
32. 「薬学的に許容される担体」(「担体」と呼ばれることもある)は、一般に安全で無毒であり、獣医および/またはヒトの薬学的または治療上の使用に許容される担体を含む、医薬または治療用組成物を調製するのに有用な担体または賦形剤を意味する。「担体」または「薬学的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩水、水、エマルジョン(油/水または水/油エマルジョンなど)および/または様々なタイプの湿潤剤を含み得るが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「担体」という用語は、医薬製剤で使用するための当技術分野で周知のおよび本明細書でさらに説明される、賦形剤、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤、脂質、安定剤、または他の材料を含むが、これらに限定されない。
【0028】
33. 「薬理学的に活性な」誘導体または類似体などでの、「薬理学的に活性な」(または単に「活性な」)は、親化合物と同じタイプの薬理学的活性を有し、程度がほぼ同等である誘導体または類似体(例えば、塩、エステル、アミド、コンジュゲート、代謝物、異性体、断片など)を指すことができる。
【0029】
34. 「ポリマー」は、天然または合成の比較的高分子量の有機化合物を指し、その構造は、繰り返し小単位であるモノマーによって表すことができる。ポリマーの非限定的な例には、ポリエチレン、ゴム、セルロースが含まれる。合成ポリマーは、通常、モノマーの付加または縮合重合によって形成される。「コポリマー」という用語は、2つ以上の異なる繰り返し単位(モノマー残基)から形成されたポリマーを指す。例として、限定されないが、コポリマーは、交互コポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、またはグラフトコポリマーであり得る。特定の態様において、ブロックコポリマーの様々なブロックセグメントは、それ自体がコポリマーを含むことができることも企図される。「ポリマー」という用語は、天然ポリマー、合成ポリマー、ホモポリマー、ヘテロポリマーまたはコポリマー、付加ポリマーなどを含むがこれらに限定されないすべての形態のポリマーを包含する。
【0030】
35. 「治療薬」は、有益な生物学的効果を有する任意の組成物を指す。有益な生物学的効果には、例えば、障害または他の望ましくない生理学的状態の治療などの治療効果と、例えば、障害または他の望ましくない生理学的状態(例えば、非免疫原性癌)の予防などの予防効果の両方が含まれる。これらの用語はまた、塩、エステル、アミド、プロエージェント(proagent)、活性代謝物、異性体、断片、類似体などを含むがこれらに限定されない、本明細書で具体的に言及される有益な薬剤の薬学的に許容される薬理学的に活性な誘導体を包含する。「治療薬」という用語が使用される場合、または特定の薬剤が具体的に特定される場合、この用語は、薬剤自体、ならびに薬学的に許容される薬理学的に活性な塩、エステル、アミド、プロエージェント、コンジュゲート、活性代謝物、異性体、断片、類似体などを含むことが理解されるべきである。
【0031】
36. 組成物(例えば、薬剤を含む組成物)の「治療有効量」または「治療有効用量」は、所望の治療結果を達成するのに有効な量を指す。いくつかの実施形態では、所望の治療結果は、I型糖尿病の制御である。いくつかの実施形態では、所望の治療結果は、肥満の制御である。所与の治療薬の治療有効量は、通常、治療される障害または疾患のタイプおよび重症度、ならびに対象の年齢、性別、および体重などの要因に関して変化するであろう。この用語はまた、疼痛緩和などの所望の治療効果を促進するのに有効な、治療薬の量、または治療薬の送達速度(例えば、経時的な量)を指すことができる。正確に望まれる治療効果は、治療される状態、対象の耐性、投与される薬剤および/または薬剤製剤(例えば、治療薬の効力、製剤中の薬剤の濃度など)、および当業者によって理解される他の様々な要因によって変化するであろう。場合によっては、所望の生物学的または医学的応答は、数日、数週間、または数年の期間にわたって対象に組成物の複数回の投与量を投与した後に達成される。
【0032】
37. 本出願全体を通して、様々な刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、これが関係する最新技術をより完全に説明するために、参照によりその全体が本出願に組み込まれる。開示された参考文献はまた、参考文献が依拠されている文で考察されるそれらに含まれる資料について、個別かつ具体的に参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
B. 組成物
38. 開示された組成物を調製するために使用される成分と、本明細書に開示された方法内で使用される組成物自体が開示される。これらおよび他の材料が本明細書に開示され、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、グループ等が開示される場合、これらの化合物の各様々な個々のおよび集合的な組み合わせおよび並べ換えの特定の参照が明示的に開示されない場合があるが、各々が具体的に企図され、本明細書に記載されることが理解されよう。例えば、特定の脂肪細胞に封入された抗癌剤が開示および考察され、脂肪細胞に封入された抗癌剤を含むいくつかの分子に加えることができるいくつかの改変が考察される場合、特に企図されるのは、脂肪細胞に封入された抗癌剤のありとあらゆる組み合わせおよび順列、ならびに特に反対に示されない限り可能な改変である。したがって、分子A、B、およびCのクラスが開示され、ならびに分子D、E、およびFのクラスが開示され、そして組み合わせ分子の例であるA~Dが開示される場合、各々が個別に列挙されなくても、各々が個別におよび集合的に企図される意味の組み合わせ、A-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E、およびC-Fが開示されると考えられる。同様に、これらの任意のサブセットまたは組み合わせもまた開示される。したがって、例えば、A-E、B-F、およびC-Eのサブグループが開示されると考えられる。この概念は、開示された組成物を作製および使用する方法における工程を含むが、これらに限定されない、本出願のすべての態様に適用される。したがって、実施可能な様々な追加工程がある場合、これらの追加工程の各々は、開示された方法の任意の特定の実施形態または実施形態の組み合わせで実施可能であることが理解される。
【0034】
39. この研究では、脂肪細胞を化学療法剤の持続放出のための薬物送達デポーとして利用して、抗癌効果を高め、同時に腫瘍免疫微小環境を調節してエフェクターCD4およびCD8 T細胞浸潤を促進した(
図1a)。したがって、一態様では、本明細書に開示されるのは、抗癌剤および共役脂肪酸を含む操作された脂肪細胞である。
【0035】
40. 開示された操作された脂肪細胞は、癌細胞に直接持続的な治療的放出を送達する目的で抗癌剤を含むことが理解され、本明細書で企図される。治療用抗癌剤は、抗体、小分子、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣体、ポリマー、または核酸を含み得ることが理解され、本明細書で企図される。例えば、治療薬は、1つ以上の化学療法剤を搭載する。開示されたヒドロゲルマトリックスで使用することができる化学療法剤は、以下を含むがこれらに限定されない、当技術分野で知られている任意の抗癌剤を含むことができる:アベマシクリブ、アビラテロン酢酸エステル、アビトレキサート(メトトレキサート)、アブラキサン(パクリタキセルアルブミン安定化ナノ粒子製剤)、ABVD、ABVE、ABVE-PC、AC、AC-T、アドセトリス(ブレンツキシマブベドチン)、ADE、アド-トラスツズマブエムタンシン、アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)、アファチニブジマレイン酸塩、アフィニトール(エベロリムス)、アキンゼオ(ネツピタントおよびパロノセトロン塩酸塩)、アルダラ(イミキモド)、アルデスロイキン、アレセンサ(アレクチニブ)、アレクチニブ、アレムツズマブ、アリムタ(ペメトレキセド二ナトリウム)、アリコパ(コパンリシブ塩酸塩)、アルケラン注射剤(メルファラン塩酸塩)アルケラン錠(メルファラン)、アロキシ(パロノセトロン塩酸塩)、アルンブリグ(ブリガチニブ)、アンボクロリン(クロラムブシル)、アンボクロリン(クロラムブシル)、アミホスチン、アミノレブリン酸、アナストロゾール、アプレピタント、アレディア(パミドロン酸二ナトリウム)、アリミデックス(アナストロゾール)、アロマシン(エキセメスタン)、アラノン(ネララビン)、亜ヒ酸、アーゼラ(オファツムマブ)、アスパラギナーゼエルウィニアクリサンチミ、アテゾリズマブ、アバスチン(ベバシズマブ)、アベルマブ、アキシチニブ、アザシチジン、バベンチオ(アベルマブ)、BEACOPP、ベセナム(Becenum)(カルムスチン)、ベレオダック(ベリノスタット)、ベリノスタット、ベンダムスチン塩酸塩、BEP、ベスポンサ(イノツズマブオゾガマイシン)、ベバシズマブ、ベキサロテン、ベクサール(トシツモマブおよびヨウ素I 131トシツモマブ)、ビカルタミド、BiCNU(カルムスチン)、ブレオマイシン、ブリナツモマブ、ビーリンサイト(Blincyto)(ブリナツモマブ)、ボルテゾミブ、ボシュリフ(ボスチニブ)、ボスチニブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリガチニブ、BuMel、ブスルファン、ブスルフェクス(ブスルファン)、カバジタキセル、カボメティクス(カボザンチニブ-s-リンゴ酸塩)、カボザンチニブ-s-リンゴ酸塩、CAF、キャンパス(アレムツマブ)、カンプトサ(Camptosar)、(イリノテカン塩酸塩)、カペシタビン、CAPOX、キャラック(Carac)(フルオロウラシル-局所)、カルボプラチン、カルボプラチン-タキソール、カルフィルゾミブ、カルムブリス(Carmubris)(カルムスチン)、カルムスチン、カルムスチンインプラント、カソデックス(ビカルタミド)、CEM、セリチニブ、セルビジン(Cerubidine)(ダウノルビシン塩酸塩)、サーバリックス(遺伝子組換えHPV二価ワクチン)、セツキシマブ、CEV、クロラムブシル、クロラムブシル-プレドニゾン、CHOP、シスプラチン、クラドリビン、クラフェン(シクロホスファミド)、クロファラビン、クロファレックス(Clofarex)(クロファラビン)、クロラール(Clolar)(クロファラビン)、CMF、コビメチニブ、コメトリク(Cometriq)(カボザンチニブ-s-リンゴ酸塩)、コパンリシブ塩酸塩、COPDAC、COPP、COPP-ABV、コスメゲン(ダクチノマイシン)、コテリック(コビメチニブ)、クリゾチニブ、CVP、シクロホスファミド、シフォス(Cyfos)(イフォスファミド)、サイラムザ(ラムシルマブ)、シタラビン、シタラビンリポソーム、サイトサーU(Cytosar-U)(シタラビン)、シトキサン(Cytoxan)(シクロホスファミド)、ダブラフェニブ、ダカルバジン、ダコゲン(Dacogen)(デシタビン)、ダクチノマイシン、ダラツムマブ、ダルザレックス(ダラツムマブ)、ダサチニブ、ダウノルビシン塩酸塩、ダウノルビシン塩酸塩およびシタラビンリポソーム、デシタビン、デフィブロチドナトリウム、デファイテリオ(デフィブロチドナトリウム)、デガレリクス、デニロイキンジフチトクス、デノスマブ、DepoCyt(シタラビンリポソーム)、デキサメタゾン、デクスラゾキサン塩酸塩、ジヌツキシマブ(Dinutuximab)、ドセタキセル、ドキシル(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、ドキソルビシン塩酸塩、ドキソルビシン塩酸塩リポソーム、Dox-SL(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、DTIC-ドーム(ダカルバジン)、デュルバルマブ、エフデックス(フルオロウラシル-局所)、エリテック(ラスブリカーゼ)、エレンス(エピルビシン塩酸塩)、エロツズマブ、エロキサチン(オキサリプラチン)、エルトロンボパグオラミン、エメンド(アプレピタント)、エムプリシティ(エロツズマブ)、エナシデニブメシル酸塩、エンザルタミド、エピルビシン塩酸塩、EPOCH、エルビタックス(セツキシマブ)、エリブリンメシル酸塩、エリベッジ(Erivedge)(ビスモデギブ)、エルロチニブ塩酸塩、エルウィナーゼ(アスパラギナーゼエルウィニアクリサンチミ)、エチオール(Ethyol)(アミホスチン)、エトポホス(Etopophos)(リン酸エトポシド)、エトポシド、リン酸エトポシド、エバセット(Evacet)(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、エベロリムス、エビスタ、(ラロキシフェン塩酸塩)、エボメラ(Evomela)(メルファラン塩酸塩)、エキセメスタン、5-FU(フルオロウラシル注射剤)、5-FU(フルオロウラシル-局所)、フエアストン(Fareston)(トレミフェン)、ファリーダック(パノビノスタット)、フェソロデックス(フルベストラント)、FEC、フェマーラ(レトロゾール)、フィルグラスチム、フルダラ(フルダラビンリン酸エステル)、フルダラビンリン酸エステル、フルオロプレックス(Fluoroplex)(フルオロウラシル-局所)、フルオロウラシル-注射剤、フルオロウラシル-局所、フルタミド、フォレックス(Folex)(メトトレキサート)、フォレックスPFS(メトトレキサート)、フォルフィリ(FOLFIRI)、フォルフィリ-ベバシズマブ、フォルフィリ-セツキシマブ、フォルフィリノックス(FOLFIRINOX)、フォルフォックス(FOLFOX)、フォロチン(プララトレキサート)、FU-LV、フルベストラント、ガーダシル(遺伝子組換えHPV4価ワクチン)、ガーダシル9(遺伝子組換えHPV9価ワクチン)、ガジバ(Gazyva)(オビヌツズマブ)、ゲフィチニブ、ゲムシタビン塩酸塩、ゲムシタビン-シスプラチン、ゲムシタビン-オキサリプラチン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ジェムザール(ゲムシタビン塩酸塩)、ジオトリフ(Gilotrif)(アファチニブジマレアート)、グリベック(メシル酸イマチニブ)、ギリアデル(カルムスチンインプラント)、ギリアデルウエハー(カルムスチンインプラント)、グルカルピダーゼ、ゴセレリン酢酸塩、ハラヴェン(エリブリンメシル酸塩)、ヘマンゲオール(Hemangeol)(プロプラノロール塩酸塩)、ハーセプチン(トラスツズマブ)、HPV2価ワクチン、組換え体;HPV9価ワクチン、組換え体、HPV4価ワクチン、組換え体、ハイカムチン(トポテカン塩酸塩)、ハイドレア(ヒドロキシ尿素)、ヒドロキシ尿素、ハイパーCVAD、イブランス(パルボシクリブ)、イブリツモマブチウキセタン、イブルチニブ、ICE、アイクルシグ(ポナチニブ塩酸塩)、イダマイシン(イダルビシン塩酸塩)、イダルビシン塩酸塩、イデラリシブ(Idelalisib)、アイディファ(Idhifa)(エナシデニブメシル酸塩)、アイフェックス(Ifex)(イフォスファミド)、イホスファミド、イホスファミダム(Ifosfamidum)(イホスファミド)、IL-2(アルデスロイキン(Aldesleukin))、イマチニブメシル酸塩、イムブルビカ(イブルチニブ)、イミフィンジ(Imfinzi)(デュルバルマブ)、イミキモド、イムリジク(Imlygic)(タリモジンラヘルパレプベク(Talimogene Laherparepvec))、インリタ(Inlyta)(アキシチニブ)、イノツズマブオゾガマイシン、インターフェロンアルファ-2b、組換体;インターロイキン-2(アルデスロイキン)、イントロンA(組換体インターフェロンアルファ-2b)、ヨウ素 I 131トシツモマブおよびトシツモマブ、イピリムマブ、イレッサ(ゲフィチニブ)、イリノテカン塩酸塩、イリノテカン塩酸塩リポソーム、イストダックス(ロミデプシン)、イキサベピロン、イキサゾミブクエン酸エステル、イクセンプラ(Ixempra)(イキサベピロン)、ジャカフィ(Jakafi)(ルキソリチニブリン酸塩)、JEB、ジェブタナ(カバジタキセル)、カドサイラ(Kadcyla)(アド-トラスツズマブエムタンシン)、ケオキシフェン(ラロキシフェン塩酸塩)、ケピバンス(Kepivance)(パリフェルミン)、キートルーダ(Keytruda)(ペンブロリズマブ)、キスカリ(Kisqali)(リボシクリブ(Ribociclib))、キムリア(チサゲンレクロイセル)、カイプロリス(カルフィルゾミブ)、ランレオチド酢酸塩、ラパチニブジトシレート、ラルトルボ(Lartruvo)(オララツマブ(Olaratumab))、レナリドミド、レンバチニブメシル酸塩、レンビマ(レンバチニブメシル酸塩)、レトロゾール、ロイコボリンカルシウム、ロイケラン(クロラムブシル)、リュープロリド酢酸塩、ロイスタチン(クラドリビン)、レブラン(アミノレブリン酸)、リンフォリジン(Linfolizin)(クロラムブシル)、リポドックス(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、ロムスチン、ロンサーフ(トリフルリジンおよびチピラシル塩酸塩)、リュープロン(Lupron)(リュープロリド酢酸塩)、リュープロンデポ(Lupron Depot)(リュープロリド酢酸塩)、リュープロンデポ-ペド(Lupron Depot-Ped)(リュープロリド酢酸塩)、リンパルザ(オラパリブ)、マルキボ(Marqibo)(ビンクリスチン硫酸塩リポソーム)、マツラン(Matulane)(プロカルバジン塩酸塩)、メクロレタミン塩酸塩、メゲストロール酢酸エステル、メキニスト(トラメチニブ)、メルファラン、メルファラン塩酸塩、メルカプトプリン、メスナ、メスネックス(メスナ)、メタゾラストン(テモゾロミド)、メトトレキサート、メトトレキサートLPF(メトトレキサート)、メチルナルトレキソン臭化物、メキサート(メトトレキサート)、メトトレキサート-AQ(メトトレキサート)、ミドスタウリン、マイトマイシンC、ミトキサントロン塩酸塩、ミトザイトレックス(マイトマイシンC)、MOPP、モゾビル(プレリキサホル)、ムスタルゲン(メクロレタミン塩酸塩)、ミュータマイシン(マイトマイシンC)、ミレラン(ブスルファン)、マイロサー(Mylosar)(アザシチジン)、マイロターグ(ゲムツズマブオゾガマイシン)、ナノ粒子パクリタキセル(パクリタキセルアルブミン安定化ナノ粒子製剤)、ナベルビン(ビノレルビン酒石酸塩)、ネシツムマブ、ネララビン、ネオサール(シクロホスファミド)、ネラチニブマレイン酸塩、ネリンクス(ネラチニブマレイン酸塩)、ネツピタントおよびパロノセトロン塩酸塩、ニューラスタ(ペグフィルグラスチム)、ニューポゲン(フィルグラスチム)、ネクサバール(ソラフェニブトシル酸塩)、ニランドロン(ニルタミド)、ニロチニブ、ニルタミド、ニンラーロ(イキサゾミブクエン酸エステル)、ニラパリブトシレート一水和物
、ニボルマブ、ノルバデックス(タモキシフェンクエン酸塩)、Nプレート(ロミプロスチム)、オビヌツズマブ、オドムゾ(ソニデギブ)、OEPA、オファツムマブ、OFF、オラパリブ、オララタマブ、オマセタキシンメペスクシネート、オンカスパー(Oncaspar)(ペグアスパラガーゼ))、オンダンセトロン塩酸塩、オニバイド(Onivyde)(イリノテカン塩酸塩リポソーム)、オンタック(デニロイキンディフティトックス)、オプジーボ(ニボルマブ)、OPPA、オシメルチニブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パクリタキセルアルブミン安定化ナノ粒子製剤、PAD、パルボシクリブ、パリフェルミン、パロノセトロン塩酸塩、パロノセトロン塩酸塩およびネツピタント、パミドロン酸二ナトリウム、パニツムマブ、パノビノスタット、パラプラット(カルボプラチン)、パラプラチン(カルボプラチン)、パゾパニブ塩酸塩、PCV、PEB,ペガスパルガーゼ、ペグインターフェロンα-2b、PEG-イントロン(ペグインターフェロンα-2b)、ペムブロリズマブ、ペメトレキセド二ナトリウム、パージェタ(ペルツズマブ)、ペルツズマブ、プラチノール(シスプラチン)、プラチノール-AQ(シスプラチン)、プレリキサホル、ポマリドミド、ポマリスト(ポマリドミド)、ポナチニブ塩酸塩、ポルトラザ(ネシツムマブ)、プララトレキサート、プレドニゾン、プロカルバジン塩酸塩、プロロイキン(アルデスロイキン)、プロリア(デノスマブ)、プロマクタ(エルトロンボパグオラミン)、プロプラノロール塩酸塩、プロベンジ(シプロイセル-T)、プリネトール(Purinethol)(メルカプトプリン)、プリキサン(Purixan)(メルカプトプリン)、二塩化ラジウム223、ラロキシフェン塩酸塩、ラムシルマブ、ラスブリカーゼ、R-CHOP、R-CVP、遺伝子組換えヒトパピローマウイルス(HPV)2価ワクチン、遺伝子組換えヒトパピローマウイルス(HPV)9価ワクチン、遺伝子組換えヒトパピローマウイルス(HPV)4価ワクチン、遺伝子組換えインターフェロンα-2b、レゴラフェニブ、レリスター(Relistor)(メチルナルトレキソン臭化物)、R-EPOCH、レブリミド(レナリドマイド)、リウマトレックス(メトトレキサート)、リボシクリブ、R-ICE、リツキサン(リツキシマブ)、リツキサンハイセラ(リツキシマブおよびヒアルロニダーゼヒト)、リツキシマブ、リツキシマブおよび、ヒアルロニダーゼヒト、ロラピタント塩酸塩、ロミデプシン、ロミプロスチム、ルビドマイシン(ダウノルビシン塩酸塩)、ルブラカ(ルカパリブカンシル酸塩)、ルカパリブカンシル酸塩、ルキソリチニブリン酸塩、リダプト(ミドスタウリン)、スクレロソル胸膜内エアロゾル(Sclerosol Intrapleural Aerosol)(タルク)、シルツキシマブ、シプリューセル-T、ソマチュリンデポ(ランレオチド酢酸塩)、ソニデジブ、ソラフェニブトシル酸塩、スプリセル(ダサチニブ)、STANFORD V、滅菌タルクパウダー(タルク)、ステリタルク(タルク)、スチバーガ(レゴラフェニブ)、スニチニブリンゴ酸塩、スーテント(スニチニブリンゴ酸塩)、サイラトロン(Sylatron)(ペグインターフェロンα-2b)、シルバント(シルツキシマブ)、シンリボ(オマセタキシンメペスクシナート)、タブロイド(チオグアニン)、TAC、タフィンラー(ダブラフェニブ)、タグリッソ(オシメルチニブ)、タルク、タリモジーンラハーパレプベック、タモキシフェンクエン酸塩、タラビンPFS(シタラビン)、タルセバ(エルロチニブ塩酸塩)、タルグレチン(ベキサロテン)、タシグナ(ニロチニブ)、タキソール(パクリタキセル)、タキソテール(ドセタキセル)、テセントリク(Tecentriq)、(アテゾリズマブ)、テモダール(テモゾロミド)、テモゾロミド、テムシロリムス、サリドマイド、サロミド(サリドマイド)、チオグアニン、チオテパ、チサゲンレクロイセル、トラク(Tolak)(フルオロウラシル局所)、トポテカン塩酸塩、トレミフェン、トリセル(テムシロリムス)、トシツモマブおよびヨウ素I 131トシツモマブ、トテクト(デクスラゾキサン塩酸塩)、TPF、トラベクテジン、トラメチニブ、トラスツズマブ、トレアンダ(ベンダムスチン塩酸塩)、トリフルリジンおよびチピラシル塩酸塩、トリセノックス(亜ヒ酸)、タイカーブ(ラパチニブジトシル酸塩)、ユニツキシン(ジヌツキシマブ)、ウリジントリアセテート、VAC、バンデタニブ、VAMP、バルビ(Varubi)(ロラピタント塩酸塩)、ベクティビックス(パニツムマブ)、VeIP、ベルバン(ビンブラスチン硫酸塩)、ベルケイド(ボルテゾミブ)、ベルサール(ビンブラスチン硫酸塩)、ベムラフェニブ、ベンクレクタ(Venclexta)(ベネトクラクス(Venetoclax))、ベネトクラクス、ベージニオ(Verzenio)(アベマシクリブ)、ビアドゥール(Viadur)(リュープロリド酢酸塩)、ビダーザ(アザシチジン)、ビンブラスチン硫酸塩、ビンカサールPFS(ビンクリスチン硫酸塩)、ビンクリスチン硫酸塩、ビンクリスチン硫酸塩リポソーム、ビノレルビン酒石酸塩、VIP、ビスモデギブ、ビストガード(Vistogard)(ウリジントリアセテート)、ボラキサーゼ(Voraxaze)(グルカルピダーゼ)、ボリノスタット、ヴォトリエント(パゾパニブ塩酸塩)、ヴィキセオス(Vyxeos)(ダウノルビシン塩酸塩およびシタラビンリポソーム)、ウェルコボリン(ロイコボリンカルシウム)、ザーコリ(クリゾチニブ)、ゼローダ(カペシタビン)、XELIRI、XELOX、Xgeva(デノスマブ)、ゾーフィゴ(二塩化ラジウム223)、イクスタンジ(Xtandi)(エンザルタミド)、ヤーボイ(イピリムマブ)、ヨンデリス(トラベクテジン)、ザルトラップ(Ziv-アフリベルセプト)、ザルジオ(フィルグラスチム)、ゼジュラ(Zejula)(ニラパリブトシル酸塩一水和物)、ゼルボラフ(ベムラフェニブ)、ゼヴァリン(イブリツモマブチウキセタン)、ザインカード(Zinecard)(デクスラゾキサン塩酸塩)、Ziv-アフリベルセプト、ゾフラン(オンダンセトロン塩酸塩)、ゾラデックス(ゴセレリン酢酸塩)、ゾレドロン酸、ゾリンザ(ボリノスタット)、ゾメタ(ゾレドロン酸)、ザイデリグ(イデラリシブ)、ジカディア(セリチニブ)、および/またはザイティガ(アビラテロン酢酸エステル)、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、またはCTLA-4阻害剤(例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、BMS-936559、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、またはアベルマブなど)、またはそれらの任意の塩、エステル、アミド、プロドラッグ、プロエージェント、コンジュゲート、活性代謝物、異性体、フラグメント、および/もしくは類似体。いくつかの脂肪酸(例えば、ドコサヘキサエン酸(DHA)およびエイコサペンタエン酸(EPA)など)が抗癌治療効果を有し、開示された方法および組成物において、操作された脂肪細胞の共役脂肪酸と一緒に抗癌剤として使用することができることが理解され、本明細書で企図される。そのような抗癌脂肪酸はまた、本明細書に開示される任意の他の抗癌剤に加えて使用され得る。
【0036】
41. 操作された脂肪細胞は、複数のタイプの抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤を含み得ることがさらに理解され、本明細書で企図される。例えば、ナノ粒子は、1、2、3、4、5、6、7、8、910、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個の抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤の任意の組み合わせを含むことができる。
【0037】
42. 本明細書に開示される操作された脂肪細胞は、抗癌剤がコンジュゲートしている脂肪酸を負荷することができる。共役脂肪酸は、1つの単結合のみで分離された少なくとも1つの二重結合の対を含む多価不飽和脂肪酸である。一態様では、共役脂肪酸は、9シス、11トランス、10トランス、および/または12シスを含むがこれらに限定されない、共役リノール酸の1つ以上の異性体を含むことができる。例えば、一態様では、共役脂肪酸は、ルーメン酸(9シス、11トランスリノール酸)を含む。開示された方法および操作された脂肪細胞で使用するための追加の脂肪酸には、ドコサヘキサエン酸(DHA)およびエイコサペンタエン酸(EPA)が挙げられる。
【0038】
43. 一態様では、プロドラッグは、環境的反応性リンカーを介して共役脂肪酸にコンジュゲートすることができる。本明細書で使用される「リンカー」は、隣接する分子を結合する分子を指す。一般に、リンカーは、隣接する分子を結合するか、それらの間の最小距離または他の空間的関係を維持する以外に、特定の生物学的活性を有しない。場合によっては、分子のフォールディング、正味電荷、疎水性など、隣接する分子のいくつかの特性に影響を与えまたは安定させるようにリンカーを選択することができる。環境的応答性リンカーの例には、pH応答性リンカー(例えば、エステルリンカー、ヒドラジン、カルボキシジメチルマレイン酸無水物、オルトエステル、イミン、β-チオプロピオン酸塩、ビニルエーテル、およびホスホルアミデート)、酵素応答性リンカー、グルコース応答性リンカー(例えば、ボロン酸、エチレングリコールジメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、ポリ (エチレングリコール)ジアクリレート、およびエチレングリコールジメタクリレート)、またはH2O2もしくは他の活性酸素種応答性リンカー(チオエーテル、セレン化物、テルル化物、ジセレニド、、チオケタールアリールボロン酸エステル、アミノアクリレート、ペルオキサレートエステル、メソポーラスシリコン、およびオリゴプロリン)が挙げられるが、これらに限定されない。リンカーはまた、上記に開示された任意のリンカーに加えて、ペプチドリンカーであり得る。
【0039】
44. 脂質輸送タンパク質が腫瘍微小環境の癌細胞に脂肪酸を提供することが理解され、本明細書で企図される。操作された脂肪細胞内に脂質輸送タンパク質を提供することにより、脂肪酸に結合したプロドラッグを同様に癌細胞に送達することができる。したがって、一態様では、本明細書に開示されるのは、脂質輸送タンパク質をさらに含む任意の先行する態様の脂肪細胞である。脂質輸送タンパク質は、脂肪酸結合タンパク質(FABP)4(FABP4)、FABP1、FABP2、FABP3、FABP5、FABP6、FABP7。FABP8、FABP9、FABP11、FABP12、FABP5-like1、FABP5-like2、FABP5-like3、FABP5-like4、FABP5-like 5、FABP 5-like 6、FABP 5-like7、脂肪酸輸送タンパク質(FATP)1(FATP1)、FATP2、FATP3、FATP4、FATP5、および/またはFATP6を含むがこれらに限定されない、当技術分野で既知の任意の脂質輸送タンパク質であり得る。
【0040】
45. 本明細書に開示されるのはまた、腫瘍への抗癌剤の持続放出を提供する方法であって、抗癌剤を共役脂肪酸にコンジュゲートさせ、コンジュゲートされた抗癌剤を脂肪細胞内に封入して、操作された脂肪細胞を作製することと、操作された脂肪細胞を腫瘍に送達させることと、を含む、方法である。
【0041】
1. 薬学的担体/医薬製品の送達
46. 上記のように、組成物はまた、薬学的に許容される担体中でインビボで投与され得る。「薬学的に許容される」とは、生物学的または他の方法で望ましくないものでない材料を意味し、すなわち、材料は、望ましくない生物学的影響を引き起こし、またはそれが含有される医薬組成物の他の成分のいずれかと有害な様式で相互作用することなく、核酸またはベクターとともに対象に投与され得る。当業者に周知であるように、担体は、有効成分の分解を最小限に抑え、対象における有害な副作用を最小限に抑えるように自然に選択されるであろう。
【0042】
47. 組成物は、経口で、非経口(例えば、静脈内)で、筋肉内注射により、腹腔内注射により、経皮的に、体外的に、局所的になどによって投与され得、局所鼻腔内投与または吸入剤による投与を含む。本明細書で使用される場合、「局所鼻腔内投与」は、鼻孔の一方または両方を介した鼻および鼻腔への組成物の送達を意味し、噴霧メカニズムまたは液滴メカニズムによる、または核酸またはベクターのエアロゾル化による送達を含み得る。吸入剤による組成物の投与は、噴霧または液滴メカニズムによる送達を介して、鼻または口を通して行うことができる。挿管を介して呼吸器系の任意の領域(肺など)に直接送達することもできる。必要な組成物の正確な量は、対象の人種、年齢、体重および全身状態、治療されるアレルギー性障害の重症度、使用される特定の核酸またはベクター、その投与様式などに応じて、対象ごとに異なる。したがって、すべての組成物に正確な量を指定することは不可能である。しかしながら、適切な量は、本明細書の教示を与えられた日常的な実験のみを使用して当業者によって決定され得る。
【0043】
48. 使用される場合、組成物の非経口投与は、一般に注射によって特徴付けられる。注射剤は、液体溶液または懸濁液、注射前の液体中の懸濁液の溶液に好適な固体形態、またはエマルジョンのいずれかとして、従来の形態で調製することができる。非経口投与のためのより最近改訂されたアプローチは、一定の投与量が維持されるように徐放または持続放出システムの使用を含む。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,610,795号を参照されたい。
【0044】
49. 材料は、溶液、懸濁液であり得る(例えば、微粒子、リポソーム、または細胞に組み込まれる)。これらは、抗体、受容体、または受容体リガンドを介して特定の細胞型を標的にすることができる。以下の参考文献は、特定のタンパク質を腫瘍組織に標的化するためのこのテクノロジーの使用例である(Senter,et al.,Bioconjugate Chem.,2:447-451,(1991);Bagshawe,K.D.,Br.J.Cancer,60:275-281,(1989);Bagshawe,et al.,Br.J.Cancer,58:700-703,(1988);Senter,et al.,Bioconjugate Chem.,4:3-9,(1993);Battelli,et al.,Cancer Immunol.Immunother.,35:421-425,(1992);Pietersz and McKenzie,Immunolog.Reviews,129:57-80,(1992);およびRoffler,et al.,Biochem.Pharmacol,42:2062-2065,(1991))。「ステルス」などのビヒクルおよび他の抗体結合リポソーム(結腸癌を標的とする脂質媒介薬物を含む)、細胞特異的リガンドを介した受容体媒介性のDNA標的化、リンパ球指向性腫瘍標的化、およびインビボでのマウス神経膠腫細胞の高度に特異的な治療的レトロウイルス標的化。以下の参考文献は、特定のタンパク質を腫瘍組織に標的化するためのこのテクノロジーの使用例である(Hughes et al.,Cancer Research,49:6214-6220,(1989);およびLitzinger and Huang,Biochimica et Biophysica Acta,1104:179-187,(1992))。一般に、受容体は、構成的またはリガンド誘導のいずれかのエンドサイトーシスの経路に関与する。これらの受容体はクラスリン被覆ピットに集まり、クラスリン被覆小胞を介して細胞に入り、受容体が分類される酸性化エンドソームを通過し、細胞表面にリサイクルされるか、細胞内に貯蔵されるか、リソソームで分解される。内在化経路は、栄養素の取り込み、活性化タンパク質の除去、高分子のクリアランス、ウイルスと毒素の日和見的侵入、リガンドの解離と分解、および受容体レベルの調節など、様々な機能を果たす。多くの受容体は、細胞のタイプ、受容体の濃度、リガンドのタイプ、リガンドの価数、およびリガンドの濃度に応じて、複数の細胞内経路をたどる。受容体を介したエンドサイトーシスの分子および細胞メカニズムがレビューされている(Brown and Greene,DNA and Cell Biology 10:6,399-409(1991))
【0045】
a) 薬学的に許容される担体
50. 抗体を含む組成物は、薬学的に許容される担体と組み合わせて治療的に使用することができる。
【0046】
51. 好適な担体およびそれらの製剤は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(19th ed.)ed.A.R.Gennaro,Mack Publishing Company,Easton,PA 1995に記載されている。典型的には、適切な量の薬学的に許容される塩が、製剤を等張にするために製剤に使用される。薬学的に許容される担体の例には、生理食塩水、リンゲル液、およびデキストロース溶液が挙げられるが、これらに限定されない。溶液のpHは、好ましくは約5~約8、より好ましくは約7~約7.5である。さらなる担体には、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの持続放出性調製物が挙げられ、このマトリックスは、成形品、例えば、フィルム、リポソーム、または微小粒子の形態である。例えば、投与経路および投与される組成物の濃度に応じて、特定の担体がより好ましい可能性があることは、当業者には明らかであろう。
【0047】
52. 薬学的担体は当業者に周知である。これらは、最も一般的には、滅菌水、生理食塩水、および生理学的pHの緩衝液などの溶液を含む、ヒトへの薬物投与のための標準的な担体である。組成物は、筋肉内または皮下に投与することができる。他の化合物は、当業者によって使用される標準的な手順に従って投与されるであろう。
【0048】
53. 医薬組成物は、選択される分子に加えて、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝液、防腐剤、界面活性剤などを含み得る。医薬組成物はまた、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔薬などのような1つ以上の有効成分を含み得る。
【0049】
54. 医薬組成物は、局所的または全身的治療が望まれるかどうか、および治療される領域に応じて、いくつかの方式で投与することができる。投与は、局所的(眼科的、経膣的、直腸的、鼻腔内を含む)、経口的、吸入による、または非経口的、例えば静脈内点滴、皮下、腹腔内または筋肉内注射によるものであり得る。開示された抗体は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、または経皮的に投与することができる。
【0050】
55. 非経口投与の調製物には、滅菌水溶液または非水溶液、懸濁液、およびエマルジョンが含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体には、水、アルコール/水溶液、エマルジョン、または懸濁液で生理食塩水や緩衝媒体を含むものが挙げられる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンガーのデキストロース、デキストロースと塩化ナトリウム、乳酸菌リンガー、または固定油が含まれる。静脈内ビヒクルには、液体および栄養素補充剤、電解質補充剤(リンゲルのデキストロースに基づくものなど)などが含まれる。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなどの防腐剤および他の添加剤も存在し得る。
【0051】
56. 局所投与用の製剤には、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、点滴薬、坐剤、スプレー剤、液剤および粉末剤が含まれ得る。従来の薬学的担体、水性、粉末または油性の基剤、増粘剤などが必要または望ましい場合がある。
【0052】
57. 経口投与用の組成物には、粉末または顆粒、水または非水性媒体中の懸濁液または溶液、カプセル、小袋、または錠剤が含まれる。増粘剤、香料、希釈剤、乳化剤、分散助剤または結合剤が望ましい場合がある。
【0053】
58. いくつかの組成物は、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、リン酸などの無機酸、およびギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸などの有機酸との反応によって、または水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムなどの無機塩基、およびモノ-、ジ-、トリアルキル、アリールアミン、置換エタノールアミンなどの有機塩基との反応によって形成される、薬学的に許容される酸または塩基付加塩として投与される可能性がある。
【0054】
b) 治療用途
59. 組成物を投与するための有効な投与量およびスケジュールは、経験的に決定することができ、そのような決定を行うことは、当業者の技術の範囲内である。組成物の投与のための投薬量範囲は、障害の症状が影響を受ける所望の効果を生み出すのに十分な大きさのものである。投与量は、望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応などの有害な副作用を引き起こすほど多くてはならない。一般に、投与量は、患者の年齢、状態、性別および疾患の程度、投与経路、または他の薬物がレジメンに含まれるかどうかによって異なり、当業者によって決定され得る。禁忌が発生した場合は、個々の医師が投与量を調整することができる。投与量は変動する可能性があり、1日または数日間、毎日1回または複数回の投与で投与することができる。所与のクラスの医薬製品の適切な投与量に関するガイダンスは、文献に記載されている。例えば、抗体の適切な用量を選択する際のガイダンスは、抗体の治療的使用に関する文献に記載されており、例えば、Handbook of Monoclonal Antibodies,Ferrone et al.,eds.,Noges Publications,Park Ridge,N.J.,(1985)ch.22 and pp.303-357;Smith et al.,Antibodies in Human Diagnosis and Therapy,Haber et al.,eds.,Raven Press,New York(1977)pp.365-389である。単独で使用される抗体の典型的な1日投与量は、上記の要因に応じて、1日あたり約1μg/kg~最大100mg/kg体重以上の範囲であり得る。
【0055】
C. 癌の治療方法
60. 開示された組成物は、癌などの制御されない細胞増殖が起こる任意の疾患を治療するために使用することができる。したがって、一態様では、本明細書に開示されるのは、本明細書に開示される1つ以上の操作された脂肪細胞を対象に投与することを含む、対象に含まれる癌または転移を治療、予防、阻害、または低減する方法である。例えば、本明細書に開示されるのは、抗癌プロドラッグ(例えば、ドキソルビシンプロドラッグなど)および共役脂肪酸(例えば、9シス、11トランス、10トランス、および/または12シスを含むがこれらに限定されない共役リノール酸の1つ以上の異性体など)を含む1つ以上の操作された脂肪細胞を対象に投与することを含む、対象に含まれる癌または転移を治療、予防、阻害、または低減する方法である。
【0056】
61. 開示された操作された脂肪細胞を使用して治療、阻害、低減、および/または予防することができる異なるタイプの癌の非限定的なリストは以下の通りである:リンパ腫(ホジキンおよび非ホジキン)、白血病、癌腫、固形組織の癌腫、扁平上皮癌、腺癌、肉腫、神経膠腫、高悪性度神経膠腫、芽細胞腫、神経芽細胞腫、形質細胞腫、組織球腫、黒色腫、腺腫、低酸素腫瘍、黒色腫、AIDS関連リンパ腫または肉腫、転移性癌、または一般的な癌。
【0057】
62. 開示された組成物が治療に使用され得る代表的で非限定的な癌の一覧は、以下の通りである:リンパ腫;B細胞リンパ腫;T細胞リンパ腫;菌状息肉腫;ホジキン病;骨髄性白血病;膀胱癌;脳癌、神経系癌、頭頸部癌、頭頸部扁平上皮癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌などの肺(lung)癌、神経芽細胞腫/神経膠芽腫、卵巣癌、皮膚癌、肝臓癌、黒色腫;口、咽喉、喉頭および肺の扁平上皮癌;子宮頸癌;子宮頸癌腫;乳癌;および上皮癌;腎癌、尿生殖器癌;肺(pulmonary)癌;食道癌;頭頸部癌腫;大腸癌;造血癌(hematopoietic cancer);精巣癌;結腸癌、直腸癌、前立腺癌、または膵臓癌。
【0058】
63. 本明細書に開示される方法のいずれかで癌を治療するために開示される操作された脂肪細胞に封入される脂肪酸にコンジュゲートすることができる化学療法剤は、以下を含むがこれに限定されない、当技術分野で知られる任意の抗癌剤を含むことができる:アベマシクリブ、アビラテロン酢酸エステル、アビトレキサート(メトトレキサート)、アブラキサン(パクリタキセルアルブミン安定化ナノ粒子製剤)、ABVD、ABVE、ABVE-PC、AC、AC-T、アドセトリス(ブレンツキシマブベドチン)、ADE、アド-トラスツズマブエムタンシン、アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)、アファチニブジマレイン酸塩、アフィニトール(エベロリムス)、アキンゼオ(ネツピタントおよびパロノセトロン塩酸塩)、アルダラ(イミキモド)、アルデスロイキン、アレセンサ(アレクチニブ)、アレクチニブ、アレムツズマブ、アリムタ(ペメトレキセド二ナトリウム)、アリコパ(コパンリシブ塩酸塩)、アルケラン注射剤(メルファラン塩酸塩)アルケラン錠(メルファラン)、アロキシ(パロノセトロン塩酸塩)、アルンブリグ(ブリガチニブ)、アンボクロリン(クロラムブシル)、アンボクロリン(クロラムブシル)、アミホスチン、アミノレブリン酸、アナストロゾール、アプレピタント、アレディア(パミドロン酸二ナトリウム)、アリミデックス(アナストロゾール)、アロマシン(エキセメスタン)、アラノン(ネララビン)、亜ヒ酸、アーゼラ(オファツムマブ)、アスパラギナーゼエルウィニアクリサンチミ、アテゾリズマブ、アバスチン(ベバシズマブ)、アベルマブ、アキシチニブ、アザシチジン、バベンチオ(アベルマブ)、BEACOPP、ベセナム(Becenum)(カルムスチン)、ベレオダック(ベリノスタット)、ベリノスタット、ベンダムスチン塩酸塩、BEP、ベスポンサ(イノツズマブオゾガマイシン)、ベバシズマブ、ベキサロテン、ベクサール(トシツモマブおよびヨウ素I 131トシツモマブ)、ビカルタミド、BiCNU(カルムスチン)、ブレオマイシン、ブリナツモマブ、ビーリンサイト(Blincyto)(ブリナツモマブ)、ボルテゾミブ、ボシュリフ(ボスチニブ)、ボスチニブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリガチニブ、BuMel、ブスルファン、ブスルフェクス(ブスルファン)、カバジタキセル、カボメティクス(カボザンチニブ-s-リンゴ酸塩)、カボザンチニブ-s-リンゴ酸塩、CAF、キャンパス(アレムツマブ)、カンプトサ(Camptosar)、(イリノテカン塩酸塩)、カペシタビン、CAPOX、キャラック(Carac)(フルオロウラシル-局所)、カルボプラチン、カルボプラチン-タキソール、カルフィルゾミブ、カルムブリス(Carmubris)(カルムスチン)、カルムスチン、カルムスチンインプラント、カソデックス(ビカルタミド)、CEM、セリチニブ、セルビジン(Cerubidine)(ダウノルビシン塩酸塩)、サーバリックス(組換えHPV二価ワクチン)、セツキシマブ、CEV、クロラムブシル、クロラムブシル-プレドニゾン、CHOP、シスプラチン、クラドリビン、クラフェン(シクロホスファミド)、クロファラビン、クロファレックス(Clofarex)(クロファラビン)、クロラール(Clolar)(クロファラビン)、CMF、コビメチニブ、コメトリク(Cometriq)(カボザンチニブ-s-リンゴ酸塩)、コパンリシブ塩酸塩、COPDAC、COPP、COPP-ABV、コスメゲン(ダクチノマイシン)、コテリック(コビメチニブ)、クリゾチニブ、CVP、シクロホスファミド、シフォス(Cyfos)(イフォスファミド)、サイラムザ(ラムシルマブ)、シタラビン、シタラビンリポソーム、サイトサーU(Cytosar-U)(シタラビン)、シトキサン(Cytoxan)(シクロホスファミド)、ダブラフェニブ、ダカルバジン、ダコゲン(Dacogen)(デシタビン)、ダクチノマイシン、ダラツムマブ、ダルザレックス(ダラツムマブ)、ダサチニブ、ダウノルビシン塩酸塩、ダウノルビシン塩酸塩およびシタラビンリポソーム、デシタビン、デフィブロチドナトリウム、デファイテリオ(デフィブロチドナトリウム)、デガレリクス、デニロイキンジフチトクス、デノスマブ、DepoCyt(シタラビンリポソーム)、デキサメタゾン、デクスラゾキサン塩酸塩、ジヌツキシマブ(Dinutuximab)、ドセタキセル、ドキシル(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、ドキソルビシン塩酸塩、ドキソルビシン塩酸塩リポソーム、Dox-SL(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、DTIC-ドーム(ダカルバジン)、デュルバルマブ、エフデックス(フルオロウラシル-局所)、エリテック(ラスブリカーゼ)、エレンス(エピルビシン塩酸塩)、エロツズマブ、エロキサチン(オキサリプラチン)、エルトロンボパグオラミン、エメンド(アプレピタント)、エムプリシティ(エロツズマブ)、エナシデニブメシル酸塩、エンザルタミド、エピルビシン塩酸塩、EPOCH、エルビタックス(セツキシマブ)、エリブリンメシル酸塩、エリベッジ(Erivedge)(ビスモデギブ)、エルロチニブ塩酸塩、エルウィナーゼ(アスパラギナーゼエルウィニアクリサンチミ)、エチオール(Ethyol)(アミホスチン)、エトポホス(Etopophos)(リン酸エトポシド)、エトポシド、リン酸エトポシド、エバセット(Evacet)(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、エベロリムス、エビスタ、(ラロキシフェン塩酸塩)、エボメラ(Evomela)(メルファラン塩酸塩)、エキセメスタン、5-FU(フルオロウラシル注射剤)、5-FU(フルオロウラシル-局所)、フエアストン(Fareston)(トレミフェン)、ファリーダック(パノビノスタット)、フェソロデックス(フルベストラント)、FEC、フェマーラ(レトロゾール)、フィルグラスチム、フルダラ(フルダラビンリン酸エステル)、フルダラビンリン酸エステル、フルオロプレックス(Fluoroplex)(フルオロウラシル-局所)、フルオロウラシル-注射剤、フルオロウラシル-局所、フルタミド、フォレックス(Folex)(メトトレキサート)、フォレックスPFS(メトトレキサート)、フォルフィリ(FOLFIRI)、フォルフィリ-ベバシズマブ、フォルフィリ-セツキシマブ、フォルフィリノックス(FOLFIRINOX)、フォルフォックス(FOLFOX)、フォロチン(プララトレキサート)、FU-LV、フルベストラント、ガーダシル(遺伝子組み換えHPV4価ワクチン)、ガーダシル9(遺伝子組換えHPV9価ワクチン)、ガジバ(Gazyva)(オビヌツズマブ)、ゲフィチニブ、ゲムシタビン塩酸塩、ゲムシタビン-シスプラチン、ゲムシタビン-オキサリプラチン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ジェムザール(ゲムシタビン塩酸塩)、ジオトリフ(Gilotrif)(アファチニブジマレアート)、グリベック(メシル酸イマチニブ)、ギリアデル(カルムスチンインプラント)、ギリアデルウエハー(カルムスチンインプラント)、グルカルピダーゼ、ゴセレリン酢酸塩、ハラヴェン(エリブリンメシル酸塩)、ヘマンゲオール(Hemangeol)(プロプラノロール塩酸塩)、ハーセプチン(トラスツズマブ)、HPV2価ワクチン、組換え体;HPV9価ワクチン、組換え体、HPV4価ワクチン、組換え体、ハイカムチン(トポテカン塩酸塩)、ハイドレア(ヒドロキシ尿素)、ヒドロキシ尿素、ハイパーCVAD、イブランス(パルボシクリブ)、イブリツモマブチウキセタン、イブルチニブ、ICE、アイクルシグ(ポナチニブ塩酸塩)、イダマイシン(イダルビシン塩酸塩)、イダルビシン塩酸塩、イデラリシブ(Idelalisib)、アイディファ(Idhifa)(エナシデニブメシル酸塩)、アイフェックス(Ifex)(イホスファミド)、イホスファミド、イホスファミダム(Ifosfamidum)(イホスファミド)、IL-2(アルデスロイキン(Aldesleukin))、イマチニブメシル酸塩、イムブルビカ(イブルチニブ)、イミフィンジ(Imfinzi)(デュルバルマブ)、イミキモド、イムリジク(Imlygic)(タリモジンラヘルパレプベク(Talimogene Laherparepvec))、インリタ(Inlyta)(アキシチニブ)、イノツズマブオゾガマイシン、インターフェロンアルファ-2b、組換体;インターロイキン-2(アルデスロイキン)、イントロンA(組換体インターフェロンアルファ-2b)、ヨウ素 I 131トシツモマブおよびトシツモマブ、イピリムマブ、イレッサ(ゲフィチニブ)、イリノテカン塩酸塩、イリノテカン塩酸塩リポソーム、イストダックス(ロミデプシン)、イキサベピロン、イキサゾミブクエン酸エステル、イクセンプラ(Ixempra)(イキサベピロン)、ジャカフィ(Jakafi)(ルキソリチニブリン酸塩)、JEB、ジェブタナ(カバジタキセル)、カドサイラ(Kadcyla)(アド-トラスツズマブエムタンシン)、ケオキシフェン(ラロキシフェン塩酸塩)、ケピバンス(Kepivance)(パリフェルミン)、キートルーダ(Keytruda)(ペンブロリズマブ)、キスカリ(Kisqali)(リボシクリブ(Ribociclib))、キムリア(チサゲンレクロイセル)、カイプロリス(カルフィルゾミブ)、ランレオチド酢酸塩、ラパチニブジトシレート、ラルトルボ(Lartruvo)(オララツマブ(Olaratumab))、レナリドミド、レンバチニブメシル酸塩、レンビマ(レンバチニブメシル酸塩)、レトロゾール、ロイコボリンカルシウム、ロイケラン(クロラムブシル)、リュープロリド酢酸塩、ロイスタチン(クラドリビン)、レブラン(アミノレブリン酸)、リンフォリジン(Linfolizin)(クロラムブシル)、リポドックス(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、ロムスチン、ロンサーフ(トリフルリジンおよびチピラシル塩酸塩)、リュープロン(Lupron)(リュープロリド酢酸塩)、リュープロンデポ(Lupron Depot)(リュープロリド酢酸塩)、リュープロンデポ-ペド(Lupron Depot-Ped)(リュープロリド酢酸塩)、リンパルザ(オラパリブ)、マルキボ(Marqibo)(ビンクリスチン硫酸塩リポソーム)、マツラン(Matulane)(プロカルバジン塩酸塩)、メクロレタミン塩酸塩、メゲストロール酢酸エステル、メキニスト(トラメチニブ)、メルファラン、メルファラン塩酸塩、メルカプトプリン、メスナ、メスネックス(メスナ)、メタゾラストン(テモゾロミド)、メトトレキサート、メトトレキサートLPF(メトトレキサート)、メチルナルトレキソン臭化物、メキサート(メトトレキサート)、メトキサート-AQ(メトトレキサート)、ミドスタウリン、マイトマイシンC、ミトキサントロン塩酸塩、ミトザイトレックス(マイトマイシンC)、MOPP、モゾビル(プレリキサホル)、ムスタルゲン(メクロレタミン塩酸塩)、ミュータマイシン(マイトマイシンC)、ミレラン(ブスルファン)、マイロサー(Mylosar)(アザシチジン)、マイロターグ(ゲムツズマブオゾガマイシン)、ナノ粒子パクリタキセル(パクリタキセルアルブミン安定化ナノ粒子製剤)、ナベルビン(ビノレルビン酒石酸塩)、ネシツムマブ、ネララビン、ネオサール(シクロホスファミド)、ネラチニブマレイン酸塩、ネリンクス(ネラチニブマレイン酸塩)、ネツピタントおよびパロノセトロン塩酸塩、ニューラスタ(ペグフィルグラスチム)、ニューポゲン(フィルグラスチム)、ネクサバール(ソラフェニブトシル酸塩)、ニランドロン(ニルタミド)、ニロチニブ、ニルタミド、ニンラーロ(イキサゾミブクエン酸エステル)、ニラパリブトシレート一水和物、ニボルマブ、ノルバデックス(タモキシフェンクエン酸塩)、Nプレート(ロミプロスチム)、オビヌツズマブ、オドムゾ(ソニデギブ)、OEPA、オファツムマブ、OFF、オラパリブ、オララツマブ、オマセタキシンメペスクシネート、オンカスパー(Oncaspar)(
ペグアスパルガーゼ))、オンダンセトロン塩酸塩、オニバイド(Onivyde)(イリノテカン塩酸塩リポソーム)、オンタック(デニロイキンディフティトックス)、オプジーボ(ニボルマブ)、OPPA、オシメルチニブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パクリタキセルアルブミン安定化ナノ粒子製剤、PAD、パルボシクリブ、パリフェルミン、パロノセトロン塩酸塩、パロノセトロン塩酸塩およびネツピタント、パミドロン酸二ナトリウム、パニツムマブ、パノビノスタット、パラプラット(カルボプラチン)、パラプラチン(カルボプラチン)、パゾパニブ塩酸塩、PCV、PEB,ペグアスパルガーゼ、ペグインターフェロンα-2b、PEG-イントロン(ペグインターフェロンα-2b)、ペムブロリズマブ、ペメトレキセド二ナトリウム、パージェタ(ペルツズマブ)、ペルツズマブ、プラチノール(シスプラチン)、プラチノール-AQ(シスプラチン)、プレリキサホル、ポマリドミド、ポマリスト(ポマリドミド)、ポナチニブ塩酸塩、ポルトラザ(ネシツムマブ)、プララトレキサート、プレドニゾン、プロカルバジン塩酸塩、プロロイキン(アルデスロイキン)、プロリア(デノスマブ)、プロマクタ(エルトロンボパグオラミン)、プロプラノロール塩酸塩、プロベンジ(シプロイセル-T)、プリネトール(Purinethol)(メルカプトプリン)、プリキサン(Purixan)(メルカプトプリン)、二塩化ラジウム223、ラロキシフェン塩酸塩、ラムシルマブ、ラスブリカーゼ、R-CHOP、R-CVP、遺伝子組換えヒトパピローマウイルス(HPV)2価ワクチン、遺伝子組換えヒトパピローマウイルス(HPV)9価ワクチン、遺伝子組換えヒトパピローマウイルス(HPV)4価ワクチン、遺伝子組換えインターフェロンα-2b、レゴラフェニブ、レリスター(Relistor)(メチルナルトレキソン臭化物)、R-EPOCH、レブリミド(レナリドマイド)、リウマトレックス(メトトレキサート)、リボシクリブ、R-ICE、リツキサン(リツキシマブ)、リツキサンハイセラ(リツキシマブおよびヒアルロニダーゼヒト)、リツキシマブ、リツキシマブおよび、ヒアルロニダーゼヒト、ロラピタント塩酸塩、ロミデプシン、ロミプロスチム、ルビドマイシン(ダウノルビシン塩酸塩)、ルブラカ(ルカパリブカンシル酸塩)、ルカパリブカンシル酸塩、ルキソリチニブリン酸塩、リダプト(ミドスタウリン)、スクレロソル胸膜内エアロゾル(Sclerosol Intrapleural Aerosol)(タルク)、シルツキシマブ、シプリューセル-T、ソマチュリンデポ(ランレオチド酢酸塩)、ソニデジブ、ソラフェニブトシル酸塩、スプリセル(ダサチニブ)、STANFORD V、滅菌タルクパウダー(タルク)、ステリタルク(タルク)、スチバーガ(レゴラフェニブ)、スニチニブリンゴ酸塩、スーテント(スニチニブリンゴ酸塩)、サイラトロン(Sylatron)(ペグインターフェロンα-2b)、シルバント(シルツキシマブ)、シンリボ(オマセタキシンメペスクシナート)、タブロイド(チオグアニン)、TAC、タフィンラー(ダブラフェニブ)、タグリッソ(オシメルチニブ)、タルク、タリモジーンラハーパレプベック、タモキシフェンクエン酸塩、タラビンPFS(シタラビン)、タルセバ(エルロチニブ塩酸塩)、タルグレチン(ベキサロテン)、タシグナ(ニロチニブ)、タキソール(パクリタキセル)、タキソテール(ドセタキセル)、テセントリク(Tecentriq)、(アテゾリズマブ)、テモダール(テモゾロミド)、テモゾロミド、テムシロリムス、サリドマイド、サロミド(サリドマイド)、チオグアニン、チオテパ、チサゲンレクロイセル、トラク(Tolak)(フルオロウラシル局所)、トポテカン塩酸塩、トレミフェン、トリセル(テムシロリムス)、トシツモマブおよびヨウ素I 131トシツモマブ、トテクト(デクスラゾキサン塩酸塩)、TPF、トラベクテジン、トラメチニブ、トラスツズマブ、トレアンダ(ベンダムスチン塩酸塩)、トリフルリジンおよびチピラシル塩酸塩、トリセノックス(亜ヒ酸)、タイカーブ(ラパチニブジトシル酸塩)、ユニツキシン(ジヌツキシマブ)、ウリジントリアセテート、VAC、バンデタニブ、VAMP、バルビ(Varubi)(ロラピタント塩酸塩)、ベクティビックス(パニツムマブ)、VeIP、ベルバン(ビンブラスチン硫酸塩)、ベルケイド(ボルテゾミブ)、ベルサール(ビンブラスチン硫酸塩)、ベムラフェニブ、ベンクレクタ(Venclexta)(ベネトクラクス(Venetoclax))、ベネトクラクス、ベージニオ(Verzenio)(アベマシクリブ)、ビアドゥール(Viadur)(リュープロリド酢酸塩)、ビダーザ(アザシチジン)、ビンブラスチン硫酸塩、ビンカサールPFS(ビンクリスチン硫酸塩)、ビンクリスチン硫酸塩、ビンクリスチン硫酸塩リポソーム、ビノレルビン酒石酸塩、VIP、ビスモデギブ、ビストガード(Vistogard)(ウリジントリアセテート)、ボラキサーゼ(Voraxaze)(グルカルピダーゼ)、ボリノスタット、ヴォトリエント(パゾパニブ塩酸塩)、ヴィキセオス(Vyxeos)(ダウノルビシン塩酸塩およびシタラビンリポソーム)、ウェルコボリン(ロイコボリンカルシウム)、ザーコリ(クリゾチニブ)、ゼローダ(カペシタビン)、XELIRI、XELOX、Xgeva(デノスマブ)、ゾーフィゴ(二塩化ラジウム223)、イクスタンジ(Xtandi)(エンザルタミド)、ヤーボイ(イピリムマブ)、ヨンデリス(トラベクテジン)、ザルトラップ(Ziv-アフリベルセプト)、ザルジオ(フィルグラスチム)、ゼジュラ(Zejula)(ニラパリブトシル酸塩一水和物)、ゼルボラフ(ベムラフェニブ)、ゼヴァリン(イブリツモマブチウキセタン)、ザインカード(Zinecard)(デクスラゾキサン塩酸塩)、Ziv-アフリベルセプト、ゾフラン(オンダンセトロン塩酸塩)、ゾラデックス(ゴセレリン酢酸塩)、ゾレドロン酸、ゾリンザ(ボリノスタット)、ゾメタ(ゾレドロン酸)、ザイデリグ(イデラリシブ)、ジカディア(セリチニブ)、および/またはザイティガ(アビラテロン酢酸エステル)、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、またはCTLA-4阻害剤(例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、BMS-936559、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、またはアベルマブなど)、またはそれらの、任意の塩、エステル、アミド、プロドラッグ、プロエージェント、コンジュゲート、活性代謝物、異性体、断片、および/もしくは類似体。
【0059】
したがって、一態様では、ドキソルビシンおよび結合脂肪酸(例えば、9シス、11トランス、10トランス、および/または12シスを含むがこれらに限定されない共役リノール酸の1つ以上の異性体など)を含む1つ以上の操作された脂肪細胞を対象に投与することを含む、対象における癌または転移を治療、予防、阻害、および/または低減する方法である。一態様では、本明細書に開示されるのは、抗癌プロドラッグがドキソルビシンプロドラッグを含み、共役リノール酸がルーメン酸(9シス、11トランスリノール酸)を含む、対象に1つ以上の操作された脂肪細胞を投与することを含む、対象における癌または転移を治療、予防、阻害、および/または低減する方法である。
【0060】
64. 操作された脂肪細胞によって封入される脂肪酸結合抗癌剤が腫瘍の微小環境に生体応答性であり、例えば活性酸素種またはpHなどの微小環境内の因子への曝露時に抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤を放出するように設計することができると理解され、本明細書で企図される。一態様では、生体応答性の操作された脂肪細胞は、抗癌剤、遮断阻害剤、または免疫調節剤を腫瘍微小環境に少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43,44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、65、70、75、80、85、または90日間放出するように設計され得ることが本明細書で企図さる。
【0061】
65. 本明細書で使用される「治療する」、「治療すること」、「治療」、およびそれらの文法的な変形は、1つ以上の疾患もしくは状態、疾患もしくは状態の症状、または疾患もしくは状態の根本的な原因の強度または頻度を、部分的または完全に予防、遅延、癒す、治癒、緩和、軽減、変化、処置、改善、安定化、鎮静、および/または減少させることを意図または目的とした、組成物の投与を含む。本発明に係る治療は、防止的(preventively)に、予防的(prophylactically)に、一時的(pallatively)に、または改善的(remedially)に適用することができる。予防的治療は、発症前(例えば、癌の明らかな徴候が現れる前)、早期発症中(例えば、癌の初期徴候および症状が現れた際)、または癌の発症が確立した後に、対象へ投与される。予防的投与は、感染症の症状が現れるより数日前から数年前にわたって行われてもよい。
【0062】
66. 一態様では、癌または転移を治療、予防、阻害、または低減する開示された方法は、本明細書に開示される操作された脂肪細胞または操作された脂肪細胞を含む医薬組成物のいずれかを対象に投与することを含み、対象の特定の癌の治療に適切な任意の頻度で操作された脂肪細胞または医薬組成物の投与を含むことができる。例えば、操作された脂肪細胞または医薬組成物は、少なくとも12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48時間ごとに1回、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31日ごとに1回、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヶ月ごとに1回、患者に投与することができる。一態様では、治療薬送達ビヒクルまたは医薬組成物は、週に少なくとも1、2、3、4、5、6、7回投与される。
【実施例】
【0063】
D.実施例
67. 以下の実施例は、当業者に、本明細書で特許請求される化合物、組成物、物品、デバイス、および/または方法がどのように作製および評価されるかについての完全な開示および説明を提供するために提示され、純粋に意図される例示であり、開示を制限することを意図するものではない。数値(量、温度など)に関して正確さを確保するための努力がなされてきたが、いくつかの誤差と偏差を考慮する必要がある。特に明記されていない限り、部は重量部であり、温度は℃単位または周囲温度であり、圧力は大気圧またはそれに近い圧力である。
【0064】
1. 実施例1
a) 結果
68. この研究では、脂肪細胞を化学療法剤の持続放出のための薬物送達デポーとして利用して、抗癌効果を高め、同時に腫瘍免疫微小環境を調節してエフェクターCD4およびCD8 T細胞浸潤を促進した(
図1a)。pHおよびROS応答性ドキソルビシンプロドラッグ(pDox)を合成し(
図1b)、ルーメン酸(RA)で脂肪細胞に封入し、これによりDoxの脂肪細胞への適合性を高め、脂質代謝経路による腫瘍細胞へのDoxの輸送をさらに促進した。これらの操作された脂肪細胞は、pDoxとRAを癌細胞に送達し、細胞死滅と免疫調節に影響を与えることができる(
図1c)。腫瘍微小環境では、いくつかの腫瘍促進アディポカインがこれらの操作された脂肪細胞によってダウンレギュレートされ、腫瘍阻害免疫が確立された(
図1d)。
【0065】
69. 3T3-L1細胞分化脂肪細胞は、トランスウェルシステムでいくつかの癌細胞株と共培養された。予想通り、正常な脂肪細胞はこれらの細胞の増殖を促進した(
図1e~h)。一方、アディポカインプロファイリングでは、共培養培地中のVEGFとレジスチン発現および脂肪細胞中のリポカリン-2の高度な過剰発現を示し、細胞増殖と転移を促進した。腫瘍の進行における脂肪細胞の悪性の役割を逆転させるために、我々は、その分化中に脂肪細胞に封入される抗癌脂肪酸として、9Z、11E共役リノール酸とも呼ばれるRAを封入した。共役リノール酸(CLA)の最も豊富な異性体うちの1つとして、RAは乳癌、肝臓癌、および前立腺癌の細胞増殖を抑制することが実証されている。結果によると、RA、CLAおよび別のCLA異性体10E、12Z-CLAの同様の細胞毒性が観察され、RAと10E、12Z-CLAの間に明らかな相乗効果は見られなかった。B16F10細胞の増殖は、トランスウェルシステムでRA(脂肪細胞中のRA)またはCLAを負荷した脂肪細胞(脂肪細胞中のCLA)と共培養すると阻害された(
図1i)。しかしながら、いくつかの異性体の混合物として、脂肪細胞中のCLAはE0771細胞の増殖を抑制することができず(
図1j)、異なるCLA異性体の異なる機能を示している。
【0066】
70. いくつかの腫瘍促進アディポカインは、抗癌免疫細胞の動員を阻害し、腫瘍転移を導くためにTAAによって分泌される。データは、脂肪細胞に封入された異なる脂肪酸が、アディポカインの分泌と癌細胞の増殖に対するそれらの役割に影響を与える可能性があることを示した。レジスチン分泌が有意に減少すると、それは腫瘍細胞の増殖と転移を抑制するために、脂肪細胞中のCLAおよび脂肪細胞中のRAの最も重要な標的となり得る。興味深いことに、VEGFは脂肪細胞中のRAの培地で高度に過剰発現したが、B16F10細胞と共培養すると通常の濃度まで低下した。さらに、脂肪細胞におけるリポカリン-2の発現は脂肪細胞中のRAで有意に減少したが、MCP-1は過剰発現し、これは黒色腫の初期段階での単球の動員に寄与する。しかしながら、脂肪細胞中のCLA、脂肪細胞中のRA、または正常な脂肪細胞とのB16F10の共培養培地間でMCP-1濃度に有意差はなかった。
【0067】
71. 近年、プログラムされたデスリガンド1(PD-L1)の免疫チェックポイント阻害は、有望な臨床転帰を示した。TAAの機能不全によって引き起こされる白色脂肪から褐色脂肪への切り替え、白色脂肪組織の褐色化と呼ばれる現象は、褐色脂肪細胞でのPD-L1の発現を促進した。ただし、脂肪細胞が癌細胞のPD-L1発現に及ぼす影響はほとんどわかっていない。アディポカイン分泌に対する脂肪細胞中のRAの機能をテストする以外に、免疫細胞の調節におけるその役割が解明された。トランスウェルシステムでは、脂肪細胞中のRAおよび脂肪細胞中のCLAがB16F10細胞のPD-L1発現を抑制することができ(
図1k)、Tリンパ球の浸潤と活性化を促進する。この効果は、FABP4阻害剤(iFABP4)であるBMS309403によって部分的に逆転し、脂肪細胞と癌細胞の間のクロストーク中のRAとCLAの重要な役割を示している。結果はまた、10E、12Z-CLAを負荷した脂肪細胞、またはRAと10E、12Z-CLAを負荷した脂肪細胞の混合物は、脂肪細胞中のRAほど効果的にPD-L1発現をダウンレギュレートすることができないことを示した。次に、脂肪細胞中のRAの抗腫瘍効果を、B16F10マウス黒色腫腫瘍モデルを使用して評価した(
図3a)。脂肪細胞中のRAは、腫瘍のサイズと生存率の点で腫瘍の増殖を有意に遅らせたが(
図2a、2b、2c、および3c)、体重は、脂肪細胞中のRAのこの腫瘍内注射の影響を受けなかった(
図3b)。脂肪細胞中のRAの2回目の注射の2日後、腫瘍を採取し、フローサイトメトリーで分析した。PD-L1は、脂肪細胞中のRAを受けたマウスの腫瘍細胞で有意にダウンレギュレートされた(
図2dおよび3d)。その結果、対照と比較して腫瘍におけるCD8
+ T細胞の顕著な浸潤が、脂肪細胞中のRA治療群で検出された(
図2eおよび3e)。一方、脂肪細胞中のRA治療群は、制御性T細胞(Treg)集団の著しい減少を示した(
図2fおよび3f)。これらのデータは、脂肪細胞中のRAが腫瘍増殖を抑制し、免疫原性腫瘍表現型を促進することができることを示した。
【0068】
72. 脂肪細胞中のRAの効力はまた腫瘍切除モデルで調査された。フィブリンゲルに封入後、これらの脂肪細胞を切除腔に直接注射した。脂肪細胞中のRAは、体重に影響を与えることなく(
図4c)、腫瘍の再発と増殖を遅らせることができた(
図2g 2h、2i、4a、および4b)。脂肪細胞中のRA投与の1週間後、PD-L1陽性細胞、CD8+T細胞、およびTregの集団をフローサイトメトリーで分析した。対照群と比較して有意に低いPD-L1(
図2jおよび4d)発現が検出され、それにより腫瘍におけるCD8
+T細胞の集団(
図2kおよび4e)が増加し、Treg(
図2lおよび4f)が減少した。
【0069】
73. 依然として、癌治療の主力の1つであるが、化学療法の適用は重篤な副作用によって制限される。治療の選択性を高めるために、刺激応答性のプロドラッグまたは薬物送達システムが有望な戦略として検証されている。いくつかの研究は、正常細胞と比較して腫瘍のROS濃度が少なくとも10倍高いことを示した。副作用が減少した脂肪細胞中のRAの治療結果をさらに改善するために、ベンゼンボロン酸ベースのROS応答性リンカーでドキソルビシンをオレイン酸にコンジュゲートさせることにより、ドキソルビシン(Dox)プロドラッグを合成した(
図5)。10mM H
2O
2が酸化されると、pDoxは48時間以内にDoxに変換された。pDoxのUVおよび蛍光スペクトルは、Doxと比較してさらに特徴付けられた。pDoxの脂質コンジュゲーションは、乳癌および卵巣癌の進行の重要なプロモーターであるFABP4に依存する脂質代謝経路を介して、癌細胞の取り込みを促進することができることが理解された。したがって、pDoxとFABP4の結合(
図6a)をシミュレートし、蛍光偏光によって結合親和性を計算した(
図6bおよび6c)。pDoxはFABP4に対して高い結合親和性(K
d=23.14nM)を有していたが、DoxとFABP4の間にはほとんど特異的な結合がなかったことが示された。FABP4でpDoxを構築するために、リノール酸の構造を改変し、Glideプログラムを使用して結合ポケットにドッキングした。次に、pHおよびROS応答性リンカー鎖が構築され、脂質鎖の炭素9に追加された。pDox構造は、Schrodinger Maestro’s 3D-sketcherを使用して説明され、その後、初期エネルギー最小化手順が実行され、その後、全原子、20ナノ秒の分子動力学シミュレーションが実行された。加重結合自由エネルギーは、FABP4結合脂質、脂質とリンカー、およびpDoxで、それぞれ-54.58、-81.39、および-80.21kcal/molであった。興味深いことに、脂質結合親和性は、リンカーが付着した後に大幅に改善された。ただし、脂質とリンカーを加えたものと比較した場合、Doxの付着は結合親和性を有意に変化させなかった。SA-L-Drugの結合エネルギーは、クラスター14で-45 kcal/molの高さ、クラスター2で-98 kcal/molの最低エネルギーで、異なるクラスター間で大幅に異なった。脂質、脂質とリンカー、およびpDoxの動きは、FABP4結合ポケットでシミュレートされた。
【0070】
74. 次に、B16F10(
図6d)、A375(
図6e)、E0771(
図6f)、およびMCF-7(
図6g)細胞株に対するDoxと比較したpDoxの細胞毒性を評価した。B16F10、A375、E0771細胞に対するpDoxのIC50はDoxのほぼ1.5倍であったが、MCF-7細胞株で同様の毒性が観察された。DoxおよびpDoxは、3T3-L1細胞に、薬物封入のためそれらの分化中に追加された。次に、これらの薬物負荷脂肪細胞(脂肪細胞中のDoxおよび脂肪細胞中のpDox)をトランスウェルシステムでB16F10(
図6h)およびE0771(
図6i)細胞と共培養した。興味深いことに、脂肪細胞中のpDoxは、脂肪細胞中のDoxと比較して、癌細胞と脂肪細胞の間のクロストーク中に、より多くの細胞毒性を示した。これは、癌細胞が脂肪細胞からDoxを自由拡散を介して取り込むことができるのに対し、脂肪細胞内のpDoxはFABP4を介した脂質代謝経路を介して癌細胞に入ることができ、癌細胞との生体適合性が高いという薬物取り込み経路の違いによって説明することができる。次に、BMS309403をトランスウェル培地に添加して脂肪細胞から癌細胞への脂質輸送をブロックすることにより、この理解を試験した。予想通り、pDoxの細胞毒性は部分的にB16F10細胞に逆転した(
図6j)。次に、DoxおよびpDoxを負荷した脂肪細胞の脂質量を測定した。Doxは脂肪細胞の脂質蓄積を有意に阻害した。しかしながら、脂質の蓄積はpDoxによって有意に抑制されず、脂肪細胞に対するpDoxの適合性が改善されていることを示している(
図6k)。共焦点顕微鏡イメージングによると、ほとんどのpDoxは脂肪滴に局在していた(
図6l)。pDoxの吸収中、FABP4阻害剤は脂肪細胞におけるpDoxの取り込みに影響を与えなかった。しかしながら、トランスウェル実験では脂肪細胞からB16F10細胞へのpDoxの輸送を部分的に阻害し、脂肪細胞からのpDoxの取り込みは主にFABP4を介した脂質代謝経路に依存することをさらに示した(
図6m)。
【0071】
75. 次に、pDoxの送達のためのRA負荷脂肪細胞の可能性を評価した。W併用療法の効果は、B16F10およびE0771細胞株に対するpDoxおよびRAを使用して決定された(
図7aおよび7b)。RAとDoxの両方またはpDoxによる治療は、DoxとpDoxの細胞毒性を有意に増強した。次に、pDoxとRAを3T3-L1細胞の分化中に同時に投与して、DoxまたはpDoxとRAを負荷した脂肪細胞(脂肪細胞中のDox+RA、脂肪細胞中のpDox+RA)を生成した。3T3-L1の分化中にRAを投与すると、脂肪滴への脂質の蓄積を促進できる(
図7c)。脂肪細胞では、Doxと比較してより多くのpDoxを脂肪細胞中のRAに負荷することができるが(
図7d)、RAはDoxおよびpDoxの脂肪滴形成に対する阻害効果を部分的に逆転させ、脂肪細胞の薬物負荷能力を高めた。この結果は、共焦点顕微鏡イメージングによってさらに検証され、脂肪細胞中のRAでより多くのpDox封入によってより多くの脂肪滴形成が示された(
図7e)。エンドソームも標識され、ほとんどのpDoxが脂肪滴に局在していることを示している。次に、脂肪細胞中のpDox+RAまたは脂肪細胞中のRAをトランスウェルでB16F10細胞と共培養した。脂肪細胞中のRAは、脂肪細胞およびB16F10細胞で促進されたpDox取り込みを示したが、これはFABP4阻害剤によって阻害された(
図7f)。脂肪細胞から癌細胞への脂質のこの輸送は、ウエスタンブロットによってさらに確認された。3T3-L1細胞は、分化の開始後にFABP4の翻訳を開始した。脂肪細胞中のRAまたは脂肪細胞中のpDox+RAは、脂質輸送のためにB16F10細胞のFABP4の量を高めることができるが、BMS309403はこのプロセスを阻害することができる。さらに、脂肪細胞中のRAと脂肪細胞中のCLAとの間のpDox負荷容量、および各群のB16F10細胞のpDox取り込みに有意差はなかった。同じトランスウェルシステムにおいて、脂肪細胞中のpDox+RAは、脂肪細胞中のRAと比較して癌細胞に対してより多くの細胞毒性を示した。この細胞死滅効果は、FABP4阻害剤によって部分的に逆転する可能性があり、このプロセスがFABP4の輸送に依存することを示している(
図7g)。
【0072】
76. 上で考察されたように、腫瘍細胞によって誘発される脂肪分解によって引き起こされる腫瘍周囲TAAの脂質含有量の喪失は、腫瘍細胞と炎症性サイトカインにエネルギーを提供して腫瘍に有利な微小環境を生成することにより、腫瘍転移に寄与することが証明されている。したがって、腫瘍細胞によって誘発される脂肪分解は、標的薬物送達のための新しい腫瘍特異的代謝経路となり得る。これを試験するために、脂肪細胞中のpDox+RAおよび脂肪細胞中のDox+RAをB16F10細胞と共培養し、マウス線維芽細胞を対照として使用して、それらの薬物放出プロファイルと脂肪分解を比較した。B16F10は脂肪細胞からのDox(
図7h)およびpDox(
図7i)の放出を有意に誘発したが、線維芽細胞は遊離脂肪細胞と比較して薬物放出に影響を与えなかった。さらに、B16F10は、中程度の遊離脂肪酸濃度に従って脂肪細胞を48時間共培養した後、脂肪分解を誘導したが、線維芽細胞は脂肪細胞からの脂質放出を誘発しなかった(
図7j)。まとめると、脂肪細胞からのRAおよびpDoxの放出は、クロストーク中のpDoxおよびRAのFABP4依存性輸送による腫瘍細胞促進脂肪分解によって媒介された。
【0073】
77. インビボでの脂肪細胞中のpDox+RAの治療結果を検証するために、B16F10マウス黒色腫腫瘍モデルを、腫瘍サイズが50~100mm
3に達した0日目および3日目に腫瘍内投与される異なる治療で利用した。個々の腫瘍サイズを測定し(
図8a)、B16F10細胞の生物発光シグナルを記録することにより、腫瘍の増殖をモニターした。JAK/STAT3やAktを含むいくつかの血管新生経路がこのプロセスに関与していることを示した以前の研究と一致して、通常分化した脂肪細胞は、腫瘍の増殖を有意に促進した。おそらく脂質代謝経路を介したpDoxの送達が腫瘍細胞への生体適合性を増強したため、pDoxは、遊離薬物の腫瘍内注射と比較して、脂肪細胞によって送達された場合に増強された抗腫瘍効果を示した。さらに、Doxは、pDoxとRAの併用療法と比較して、腫瘍内にRAを注射した場合、わずかに優れた抗腫瘍効果を示した。これは、インビトロデータ(
図6d、6e、6f、6g、7a、および7b)と一致しており、Doxはより高い腫瘍細胞死滅効果を有していた。脂肪細胞を薬物送達プラットフォームとして使用する各治療群は、改善された効果を示し、これは、腫瘍細胞によって誘発されるDox、pDox、およびRAの放出の貯蔵庫として機能する脂肪細胞の役割に起因する可能性がある。DoxおよびRAにこの送達媒体を使用すると、3/7の腫瘍阻害で有意な抗腫瘍効果が観察された。しかしながら、1ヶ月で5/7の腫瘍増殖阻害(
図8a)を有するすべての他の群と比較して、脂肪細胞中のpDox+RAから、より多くの治療効果が得られた。腫瘍増殖(
図8b)は、脂肪細胞中のpDox+RA治療群で著しく抑制され、他の群と比較して生存曲線(
図8c)は良好であった。遊離薬物または薬物負荷脂肪細胞の腫瘍内注射は、各群の体重に影響を与えなかった。薬物または薬物負荷脂肪細胞の2回目の注射の2日後、フローサイトメトリー分析のために腫瘍を採取した。通常分化した脂肪細胞は、腫瘍細胞におけるPD-L1の発現をわずかに増強することができ(
図8d)、これは、脂肪細胞馴化培地での処理後のJAK/Stat3経路の活性化、およびIL-6およびレプチンの過剰発現によって引き起こされる前立腺癌細胞で近年報告された。わずかに減少したPD-L1陽性細胞集団が、遊離のDoxおよびRA治療群で見られた。RAの効果以外に、Doxは細胞膜のPD-L1発現をダウンレギュレートすることができるが、その核移行をアップレギュレートすることができ、これは、PD-L1のダウンレギュレーションにも寄与する可能性がある。脂肪細胞中のDox+RAは、脂肪細胞中のpDox+RAと比較して、腫瘍におけるPD-L1ダウンレギュレーションの同等の可能性を示した。CD8
+T細胞の有意な浸潤が各併用療法群で観察されたのに対し、脂肪細胞中のDox+RAおよび脂肪細胞中のpDox+RAは最も有望な効果を示した(
図8e)。PD-L1レベルに対応して、Tregs集団は、脂肪細胞中のDox+RAまたは脂肪細胞中のpDox+RAの処理下で有意に減少した(
図8f)。脂肪細胞治療群におけるTreg集団の増強は、おそらく脂肪組織からのTregのPPAR-γを介した動員によって引き起こされた。
【0074】
78. 術後の残存腫瘍細胞は、癌治療にとって依然として深刻な課題である。手術は、癌細胞を手術箇所から放出するか、以前の播種性癌細胞の血管新生を誘導する可能性がある。近年、Krallらは、手術による創傷が局所腫瘍と遠隔免疫原性腫瘍の両方の増殖を促進することを示し、このプロセスにおける全身性炎症反応の重要な役割を示している。TAAによって分泌されるTNF-α、IL-6、およびCCL2を含む炎症性サイトカインは、炎症性細胞の蓄積を直接誘導し、腫瘍部位に低悪性度の炎症をさらに確立する可能性がある。さらに、IL-6の循環濃度の上昇が肥満の女性に見られ、これは乳癌の進行に関連していた。これらの所見は、手術後の腫瘍再発プロセスにおけるTAAの悪性の役割を示す。本明細書において、腫瘍切除モデル(
図9a)において、腫瘍は、対照と比較して、脂肪細胞治療群において手術後により急速に増殖した。薬物送達デポーとしてフィブリンゲルを使用すると、DoxおよびRA負荷ゲルを投与されたマウスのみが腫瘍の増殖が遅延し腫瘍の再発からのより大きい保護を示した。脂肪細胞中のpDoxは、pDoxをゲルに負荷するよりも腫瘍増殖を抑制する効果が高かった。重要なことに、脂肪細胞中のDox+RAおよび脂肪細胞中のpDox+RAは、マウスを腫瘍の再発から有意に保護し、それぞれ62.5%および37.5%の再発率であった。Doxの腫瘍取り込みは、この脂肪細胞ベースの送達デポーでの脂質コンジュゲーション後に有意に改善されたことも実証された。ほとんどの腫瘍再発は、脂肪細胞中のpDox+RAによって少なくとも2ヶ月間抑制され得、他の群と比較して腫瘍体積が有意に少なく、生存率が高い(
図9bおよび9c)。体重に大きな影響を与えることなく、脂肪細胞ベースの薬物送達は、限られた毒性効果で高度に生体適合性があると見なすことができる。手術の1週間後、免疫活性を腫瘍微小環境で評価した。RA治療群は腫瘍細胞におけるPD-L1発現を有意に減少させたが、脂肪細胞中のRAはより有望な結果を示した(
図9d)。その結果、CD8
+T細胞の頻度が大幅に増加し(
図9e)、Treg集団の有意な減少が観察された(
図9f)。
【0075】
79. この研究は、腫瘍に関連する脂肪細胞の悪性の役割を逆転させ、化学療法のため、抗腫瘍脂肪酸としてのRAと脂質コンジュゲートDoxプロドラッグとの薬物送達のトロイの木馬としてそれらを操作した。腫瘍内および術後のB16F10黒色腫マウスモデルの両方で実証された腫瘍細胞のFABP4を介した脂質代謝経路を介した薬物輸送によって、有意に増強された抗癌効果が達成された。注目すべきことに、従来の化学療法以外に、脂肪細胞中のRAは、PD-L1発現をダウンレギュレートすることによって免疫原性腫瘍表現型を誘導した。この脂肪細胞を介した薬物送達戦略は、脂質代謝経路に関連する様々な疾患を治療するためにさらに拡張することができる。
【0076】
(1) (1)蛍光偏光
80. DoxまたはpDoxのFABP4への結合親和性を決定するために、すべての試料をPBS緩衝液で希釈した。5~100nMのFABP4の段階希釈液を、20nMのDoxまたはpDoxに添加した。QuantaMaster40 UV/VIS定常状態分光蛍光光度計(Photon Technology International)を使用して蛍光偏光を測定した。解離定数(Kd)は、観測された分極([mP])を前述のように2つの状態の結合の一般式に当てはめることによってそれぞれ計算された。2
【0077】
(2) (2)分子動力学シミュレーション
81. 最初に、Protein DataBank(PDB)の一般的な検索が、小分子リガンドを含むヒトFABP4タンパク質の結晶構造に対して行われた。リノール酸に結合したFABP4のX線結晶構造が見出された(PDB:2Q9S、解像度2.3Å)。タンパク質の構造は、以前の研究で使用された手順に従って、PRIMEおよびEPIKを備えるProteinPrep Wizardを使用して最適化された。リノール酸はステアリン酸(SA)の不飽和類似体であり、薬物送達システムのアンカーとして機能する。したがって、リノール酸の構造が改変され(二重結合を単結合に変換することにより)、SchrodingerソフトウェアパッケージのGlideプログラム(SPスコアリング関数)を使用してSAを結合ポケットに再ドッキングした。
【0078】
82. 次に、リンカー(L)鎖を手動で構築し、SA鎖の炭素9に追加した。ConfGenプログラム(OPLS3力場)を使用して配座検索を実行し、低エネルギー配座異性体を開始点として特定した。この配座異性体は、Jaguarで設定された6-311G**ポプル(Pople)基底関数を用いるハートリーフォック(Hartree Fock)ジオメトリ最小化を使用してさらに最適化された(これは回転可能な結合の数が多いために行われた)。次に、最適化されたSA-L化合物を、誘導適合ドッキングを使用してFABP4結合ポケットにドッキングした。誘導適合ドッキングは、タンパク質とリガンドの両方に原子の柔軟性を与えることにより、タンパク質の柔軟性をよりよく説明する(従来のドッキングでは、タンパク質が剛直であると見なされている間、リガンドの結合回転のみが可能である)。このアプローチにより、SA-L化合物の3つの安定した開始立体配座を同定することに成功した。手動検査の後、リンカーのベンゼン環をタンパク質の表面近くに配置する立体配座が選択された。この配置は、薬物がリンカーに付着するのを妨げる側鎖残基がないように見える。
【0079】
83. 最初に、SA-Lのドッキングポーズを識別するために使用されたのと同じアプローチを適用して、標的分子であるSA-L-Drugを作成した。ただし、SA-Lに使用された誘導適合ドッキング手順では、FABP4結合ポケット内に標的SA-L-薬物化合物の安定したドッキングポーズを生成することができなかった。SA-L-薬物の安定した結合ポーズがないため、SA-L-薬物構造は、Schrodinger Maestro’s 3D-sketcherを使用して手動で構築され、その後、初期エネルギー最小化手順が実行された。重要なことに、FABP4の表面に露出した残基側鎖を視覚化して、SA-L-薬物化合物の構築中に原子衝突が発生しないようにした。さらに、ヒドロキシル基を配置する際に、水素結合ネットワークの可能性が考慮された。
【0080】
84. 最初のSA-L-薬物構造がFABP4結合ポケットに構築された後、GPUで加速されたDesmondソフトウェア(OPLS3力場、TIP3P水環境、300K、NTP、2fs時間ステップ)を使用して、全原子、20ナノ秒の分子動力学シミュレーションが実行された。さらに、FABP4に結合したSAおよびSA-L複合体を同じシミュレーションにかけた。次に、SA、SA-L、およびSA-L-薬物の加重結合エネルギーを、MM-GBSAおよびDesmond軌道クラスタリングアルゴリズムを使用して計算した。この手順の詳細な説明は、Hayesらによって報告される。3つの分子動力学シミュレーションはすべて、SchrodingerのDesmond軌道クラスタリングアルゴリズムにかけられた。軌道クラスタリングは、分子動力学シミュレーションのすべてのフレーム間にRMSDマトリックスを作成し、次に平均リンケージを使用して階層的クラスタリングを実行した。クラスタリングは、共有された構造配向を持つフレームをグループ化し、すべての可能なタンパク質およびリガンド配向のサンプリングを提供する。重要なことに、このアプローチは、時間に依存する方法で構造(つまりフレーム)を選択するだけで、構造サンプリングバイアスを導入する可能性を排除する。シミュレーション時間によって選択されたフレームは、同じ3D方向を共有する可能性があり、タンパク質およびリガンド構造の真の変動性または安定性を正確に表していない可能性がある。この研究では、MDシミュレーションの長さである20nsと相関させるために、選択されたクラスターの数は20であった。
【0081】
85. 次に、各クラスターの結合自由エネルギーを測定し、FABP4に結合したSA、SA-L、およびSA-L-薬物の加重結合自由エネルギーをそれぞれ決定した。加重結合自由エネルギーを次のように計算した。
【数1】
【0082】
86. 式中、Piはクラスターiを観測する確率を表し、ΔGiはクラスターiの結合自由エネルギーを表す。 確率は、クラスターiに割り当てられたフレームの総数を取得し、シミュレーションのフレームの総数で割ることによって決定された。各クラスターの結合エネルギーは、VSGB溶媒和モデルを備えるSchrodingerのPrime MM/GBSAパッケージを使用して決定された。SA-L-薬物分子の5オングストローム以内のタンパク質残基は計算に柔軟であり、残りのタンパク質は剛体として扱われた。MD分析はすでに実行されているため、MM/GBSA分析に完全なタンパク質の柔軟性を与える必要はないと見なされた。
【0083】
b) 方法
(1) 材料
87. すべての化学物質はSigma-Aldrichから購入し、特に説明がない限り、受け取ったままの状態で使用した。塩酸ドキソルビシンは Oakwood Chemicalから購入された。FABP4阻害剤であるBMS309403はCayman Chemicalから購入した。RA(9Z、11E-CLA)(カタログ番号16413)、10E,12Z-CLA(カタログ番号04397)、およびCLA(カタログ番号O5507)はSigma-Aldrichから購入した。
【0084】
(2) 細胞培養
88. 3T3-L1、B16F10、A375、およびMCF-7を含む通常の細胞株は、American Type Culture Collectionから購入した。E0771細胞株はCH3 Biosystemsから購入した。生物発光B16F10細胞(B16F10-luc-GFP)は、ノースカロライナ大学チャペルヒル校のDr.Leaf Huangから提供された。B16F10、A375、およびMCF-7細胞は、10%FBS(Invitrogen)を含むDMEM(Gibco、Invitrogen)で培養した。E0771細胞は、10%FBSおよび10mM HEPES(Thermo Fisher Scientific)を含むRPMI1640培地で培養した。マウス初代皮膚線維芽細胞はCell Biologics(カタログ番号C57-6067)から購入し、Fibroblast Medium Kit(カタログ番号M2267)を使用して培養した。3T3-L1の培養には、10%ウシ胎児血清を含むDMEM(Thermo Fisher Scientific)を培地として使用した。3T3-L1分化キット(Sigma-Aldrichカタログ番号DIF001)を使用して、3T3-L1前脂肪細胞を分化させた。最大負荷容量を達成するために、この研究では3T3-L1細胞の10~20継代を使用した。
【0085】
(3) Dox、pDox、およびRAの負荷と放出
89. RAおよびDoxまたはpDoxを負荷した脂肪細胞を生成するために、RA(200μM)およびDoxまたはpDox(500nM)を維持培地(10%FBSおよび1.5mg/mLインスリンを含むDMEM/F12(1:1))に添加し、48時間ごとに交換した。RA、Dox、およびpDoxの濃度は、3T3-L1細胞死を有意に引き起こさないが、脂質の蓄積に影響を与える可能性がある最大濃度になるように最適化され、これについては、本文で考察された。脂肪細胞における脂質の蓄積は、オイルレッドO染色によって評価し、540nmでの光学密度測定によって定量化した。前脂肪細胞を培養し、分化させ、6ウェルトランスウェルインサート中で薬物封入し、6ウェルプレートで5 ×105個の前培養B16F10または線維芽細胞と共培養して、脂肪細胞に残っている薬物量に従って計算された薬物放出プロファイルを決定した。共培養培地中の遊離脂肪酸の濃度は、遊離脂肪酸定量キット(Sigma-Aldrich、カタログ番号MAK044)を使用して測定した。RAを負荷した脂肪細胞のDoxとpDoxの量を測定するために、20μLのTritonX-100を106個の脂肪細胞に添加した。次に、100μLの抽出溶液(イソプロパノール中0.75M HCl)を添加し、-20℃で一晩インキュベートした。20000 gで15分間遠心分離した後、498(励起)/591(発光)nmでの上清の蛍光を測定した。 動物実験のために維持培地を3~4回交換した。
【0086】
(4) 癌細胞と脂肪細胞間のクロストーク
90. 薬物および脂肪酸の細胞毒性は、48時間後に96ウェルプレートでのMTTアッセイによって決定された。薬物または脂肪酸を負荷した脂肪細胞の腫瘍細胞の死滅または促進効果を、脂肪細胞を24ウェルプレートに播種し、腫瘍細胞をトランスウェルインサートで増殖させるトランスウェルシステムで測定した。72時間培養した後、トランスウェルインサート内の癌細胞の細胞増殖をMTTアッセイで判定した。
【0087】
91. ウエスタンブロット、フローサイトメトリー、およびアディポカインプロファイリング(R&D Systemsカタログ番号ARY013)には、6ウェルトランスウェルシステムが、トランスウェルインサートで培養した癌細胞および下部で培養した脂肪細胞とともに使用された。72時間の共培養後、細胞または培地を分析した。クロストーク中のFABP4の役割を決定するために、30μMのBMS309403を培地に添加してFABP4をブロックした。ウエスタンブロットに使用した抗体には、β-アクチン(カタログ番号sc-47778、Santa Cruz)、FABP4(カタログ番号701158、Thermo Fisher)、PD-L1(カタログ番号ab205921、Abcam)が含まれていた。PEチャネルを使用して、脂肪細胞および癌細胞のpDox蛍光を測定した。
【0088】
(5) インビボ腫瘍研究
92. 皮下モデルでは、1×106個のルシフェラーゼタグ付きB16F10細胞をマウスの右脇腹に注射した。腫瘍が50~100mm3に達したとき、マウスをランダムに異なる群(n=10~11)に分け、0日目と3日目に、フィブリンゲル、pDox負荷フィブリンゲル、DoxおよびRA負荷フィブリンゲル、pDoxおよびRAを負荷フィブリンゲル、正常に分化した脂肪細胞、pDox負荷脂肪細胞、DoxおよびRA負荷脂肪細胞、およびpDoxおよびRA負荷脂肪細胞、を含む異なる製剤を腫瘍内注射した。pDoxの分子量はDoxのほぼ2倍であったため、DoxおよびpDoxの用量は0.1および0.2mg/kg(通常は7~10×106個の脂肪細胞)であった。腫瘍サイズをデジタルノギスで測定し、ルシフェリン(カタログ番号LUCK-100、Gold Biotechnology)の150mg/kgでの腹腔内注射でIVIS Luminaイメージングシステム(PerkinElmer)を使用して生物発光シグナルによりモニターした。腫瘍体積は、長径×短径2/2として計算された。
【0089】
93. 術後再発モデルでは、1×106個のルシフェラーゼ発現B16F10細胞をマウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍のサイズが200~300mm3に達したとき、ほとんどの腫瘍を切除し、1%の残存組織を残した。残存腫瘍の量は、手術前後のB16F10細胞の生物発光シグナルによって決定した。傷をオートクリップ傷クリップシステム(Autoclip wound clip system)によって閉じた。マウスをランダムに異なる群に分けた後(n=10~12)、薬物または薬物負荷脂肪細胞をフィブリンゲルに封入し、さらに手術箇所に移植した。クリップを取り外した後、生物発光を検出し、腫瘍サイズを測定することにより、腫瘍の増殖をモニターした。腫瘍内モデルと術後モデルの両方で、腫瘍サイズが1.5cm3を超えたときにマウスを安楽死させた。
【0090】
94. 腫瘍細胞およびT細胞の集団におけるPD-L1の発現を決定するために、腫瘍内モデルの製剤の2回目の注射の2日後に腫瘍を得るために各群の4匹のマウスをと殺した。腫瘍再発モデルでは、手術の1週間後に腫瘍を採取した。腫瘍の単細胞懸濁液は、染色バッファー(カタログ420201、BioLegend)を使用して調製した。FlowJoソフトウェアを使用して、試料あたり20000の事象を収集し、分析した。PD-L1陽性細胞、CD8+T細胞、およびTregを検出するための抗体には、CD3(カタログ100203、Biolegend)、CD4(カタログ100515、Biolegend)、CD8(カタログ100707、Biolegend)、PD-L1(カタログ124311、Biolegend)、FoxP3(カタログ126403、Biolegend)が含まれた。
【0091】
(6) 2,3-ジメチルヘキサ-5-エン-2,3-ジオールの合成。
95. 混合溶媒(50mL、4:1THF/H2O)に溶解した3-ヒドロキシブタン-2-オン(0.44g、5mmol)を激しく撹拌しながら、インジウム粉末(3.3g、30mmol)、次に臭化アリル(4mL、47mmol)を導入した。反応混合物を室温で3時間撹拌し、続いてHCl(3N、30mL)を加えて透明な溶液を得た。次に、混合物をCHCl3(2×100mL)で抽出し、減圧下で濃縮し、溶離液1:3のEt2O/PEを使用してシリカカラムを通過させて、純粋な生成物(0.55g、収率76%)を得た。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ5.89(m,1H),5.10(m,2H),2.40(m,1H),2.13(m,2H),2.0(s,1H),1.65(s,1H),1.2(m,3H),1.169(s,3H),1.10(s,3H)。
【0092】
(7) (4-(4-アリル-4,5,5-トリメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)メタノールの合成。
【0093】
96. 2,3-ジメチルヘキサ-5-エン-2,3-ジオール(0.21g、1.5mmol)、(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)ボロン酸(0.2g、1.35mmol)、および無水MgSO4(2g)をトルエン(50mL)中で混合し、一晩還流した。濾過後、溶媒を減圧下で除去し、残留混合物をシリカカラム(PE中5%~20%のEtOAc)を通過させることにより精製して、生成物(0.25g、収率80%)を得た。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ7.75(d,2H),7.31(d,2H),5.88(m,1H),5.07(m,2H),4.65(s,2H),2.49(m,1H),2.25(m,2H),1.32(s,3H),1.28(s,3H),1.24(s,3H)。
【0094】
(8) 4-(4-アリル-4,5,5-トリメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル(4-ニトロフェニル)カーボネートの合成。
97. (4-(4-アリル-4,5,5-トリメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)メタノール(0.2g)および4-ニトロフェニルカルボノクロリデート(0.2g)を、Et3N(0.5mL)を含むTHF(20mL)に溶解した。室温で4時間撹拌した後、混合物を減圧下で濃縮し、シリカカラム(PE中5%~20%のEtOAc)を通過させて、生成物(0.2g、収率60%)を得た。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ8.2(d,2H),7.8(d,2H),7.35(d,2H),7.28(d,2H),5.94(m,1H),5.24(s,2H),5.09(m,2H),2.50(m,2H),2.22(m,2H),1.31(s,3H),1.28(s,3H),1.23(s,3H)。
【0095】
(9) 4-(4-(3-((2-メルカプトエチル)チオ)プロピル)-4,5,5-トリメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル(4-ニトロフェニル)カーボネートの合成。
98. 4-(4-アリル-4,5,5-トリメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル(4-ニトロフェニル)カーボネート(0.2g、0.5mmol)、エタン-1,2-ジチオール(1g、10mmol)およびAIBN(0.2g、1.2mmol)をトルエン(30mL)中で混合し、反応をTLCによってモニターしながら40℃で撹拌した。反応が完了した後、混合物を濃縮し、シリカカラム(PE中15%~30%EtOAc)を通過させて、生成物(0.22g、90%)を得た。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ8.21(d,2H),7.8(d,2H),7.35(d,2H),7.29(d,2H),5.24(s,2H),2.66(m,4H),2.53(m,2H),1.65-1.97(m,5H),1.28(s,6H),1.23(s,3H)。
【0096】
(10) ドキソルビシンプロドラッグの合成。
99. 4-(4-(3-((2-メルカプトエチル)チオ)プロピル)-4,5,5-トリメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル(4-ニトロフェニル)カーボネート(30mg、0.06mmol)、オレイン酸(141.2mg、0.5mmol)、およびDMPA(4.5mg、0.02mmol)を、UV照射(波長365nm)下で30分間THF(50μL)中で混合した。反応をTLCでモニターし、すべての4-(4-(3-((2-メルカプトエチル)チオ)プロピル)-4,5,5-トリメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル(4-ニトロフェニル)カーボネートが反応したら停止し、続いて混合物を減圧下で濃縮した。生成物を、DMF(5mL)中の塩酸ドキソルビシン(40.6mg、0.07mmol)およびEt3N(20μL)と暗所で一晩さらに混合した。反応が完了した後、混合物を濃縮し、最初に大量のジエチルエーテルで精製した。粗生成物をシリカカラム(DCM/MeOH=40:1)を通してさらに精製してほとんどの不純物を除去し、精製された生成物は、DCM/MeOH=30:1からなる溶媒でカラムを溶出することによって得られた。
本願は以下の態様にも関する。
(1) 抗癌プロドラッグと共役脂肪酸とを含む、操作された脂肪細胞。
(2) 前記共役脂肪酸が、共役リノール酸異性体9シス、11トランス、10トランス、および/または12シスを含む、前記(1)に記載の操作された脂肪細胞。
(3) 脂質輸送タンパク質をさらに含む、前記(1)に記載の操作された脂肪細胞。
(4) 前記脂質輸送タンパク質が、脂肪酸結合タンパク質4(FABP4)を含む、前記(3)に記載の操作された脂肪細胞。
(5) 前記プロドラッグが、ドキソルビシンプロドラッグ(pDox)を含む、前記(1)に記載の操作された脂肪細胞。
(6) 前記プロドラッグが、活性酸素種応答性リンカーを介して前記共役脂肪酸にコンジュゲートされている、前記(1)に記載の操作された脂肪細胞。
(7) 対象における癌を治療する方法であって、前記(1)~(6)のいずれかに記載の操作された脂肪細胞を前記対象に投与することを含む、方法。
(8) 腫瘍への抗癌剤の持続放出を提供する方法であって、
前記抗癌剤を共役脂肪酸にコンジュゲートすることと、前記コンジュゲートした抗癌剤を脂肪細胞内に封入して、操作された脂肪細胞を作製することと、前記操作された脂肪細胞を腫瘍に送達することと、を含む、方法。
【0097】
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