(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】生物学的障壁を変更するのに好適な少なくとも1のナノ爆弾を含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 41/00 20200101AFI20240611BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240611BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20240611BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240611BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240611BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20240611BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240611BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240611BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20240611BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240611BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240611BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240611BHJP
C12N 15/87 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
A61K41/00
A61K9/16
A61K9/51
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K38/00
A61K39/395 Z
A61K47/02
A61K47/06
A61K47/32
A61K47/34
A61P43/00 105
C12N15/87 Z
(21)【出願番号】P 2021534974
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2019085391
(87)【国際公開番号】W WO2020127076
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-14
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522132247
【氏名又は名称】トリンス ビーヴィー
【氏名又は名称原語表記】Trince bv
【住所又は居所原語表記】Ottergemsesteenweg-Zuid 731,9000 Gent,Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ブレックマン,ケビン
(72)【発明者】
【氏名】フレール,ジュアン
(72)【発明者】
【氏名】デ スメット,ステファン
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-524368(JP,A)
【文献】特開2002-316950(JP,A)
【文献】特表2008-528114(JP,A)
【文献】Cancer-Cell Targeting and Photoacoustic Therapy Using Carbon Nanotubes as "Bomb" Agents,Small,2009年,5(11),p.1292-1301,10.1002/smll.200801820
【文献】Threshold parameters of the mechanisms of selective nanophotothermolysis with gold nanoparticles,Proc. of SPIE,2008年,vol.6854,pp.1-10,10.1117/12.759060
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 41/00-41/17
A61K 9/00- 9/72
A61K 31/00-31/80
A61K 47/00-47/69
A61P 43/00
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1のナノ爆弾を含む組成物であって、該少なくとも1のナノ爆弾は、nの第1粒子およびmの第2粒子を含み、nおよびmの各々は、少なくとも1であり、該mの第2粒子の少なくとも1は、該nの第1粒子の少なくとも1に近接しており、「に近接している」は、接触しているかまたは1μmよりも小さい距離dに配置されているかのいずれかと定義され、該第1粒子は、電磁放射線を吸収して蒸気泡を生成することが可能であり、それによって、該蒸気泡の該生成は、該少なくとも1の第2粒子を、該少なくとも1の第1粒子から距離Dにわたって推進し、該距離Dは、少なくとも0.01μmであ
り、
ここで、第1粒子は、
金、銀、白金、パラジウム、銅、およびそれらの合金、
酸化鉄、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、
グラフェン、酸化グラフェン、カーボンナノチューブ、
光吸収色素分子で負荷または機能化されたものを含むポリマー粒子であって、光吸収色素分子が、インドシアニングリーン、無機量子ドット、メラニン、ロドプシン、フォトプシン、またはヨードプシンを含む、前記ポリマー粒子、
ポリドーパミン、ならびにポリ(N-フェニルグリシン)
からなる群から選択される、
前記組成物。
【請求項2】
該少なくとも1のナノ爆弾の該mの第2粒子(単数または複数)が、該蒸気泡の該生成時に推進されると、生物学的障壁を変更するように適合されて
おり、
ここで、生物学的障壁は、真核細胞もしくは原核細胞の細胞膜または細胞壁、細胞内膜、エンドソーム膜、核エンベロープ、ミトコンドリア膜、多細胞組織、粘膜、血液脳障壁、血液網膜障壁、微生物バイオフィルム、細胞外マトリックス、粘液、硝子体液、基底層、あるいはバイオフィルムマトリックスを包含する、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
mが、nよりも大きい
、請求項
1または2に記載の組成物。
【請求項4】
該少なくとも1のナノ爆弾の該mの第2粒子(単数または複数)が、10nmと10μmとの間の範囲のサイズおよび/または少なくとも1kg/dm
3の密度を有する
、請求項
1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
該nの第1粒子の大多数が、近接した少なくともpの第2粒子を含み、pは、少なくとも2である
、請求項
1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
該距離Dが、0.1μmと100μmとの間の範囲である
、請求項
1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
該nの第1粒子(単数または複数)が、1以上のポリマー、脂質および/または分子のリンカーで機能化されている
、請求項
1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
該少なくとも1のナノ爆弾の該mの第2粒子(単数または複数)が、ポリマー粒子、金属酸化物粒子、ケイ素またはケイ素酸化物粒子、リポソーム、薬物負荷ポリマー粒子、薬物負荷ケイ素またはケイ素酸化物粒子、および薬物負荷リポソームからなる群から選択される
、請求項
1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
該mの第2粒子(単数または複数)が、1以上の荷電したポリマーまたは脂質、抗体、色素、タンパク質、核酸、薬物および/または標識からなる群から選択される1以上の標的化部分、および/または近接した第1粒子との連結ストラテジーを誘導する1以上の官能基で機能化されている
、請求項
1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
生物学的障壁を変更する方法における使用のための
、請求項
1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
薬物送達、化合物の細胞内送達
、細胞治療、免疫治療、遺伝子治療、および細胞のトランスフェクションにおける使用のための
、請求項
1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
生物学的障壁を変更するためのex vivoの方法であって、
- 請求項1~11のいずれか一項において定義されるnの第1粒子およびmの第2粒子を含むナノ爆弾を含む組成物を提供するステップ;
- 生物学的障壁の近くに前記組成物を導入するステップ;
- 電磁放射線を使用して前記組成物を照射して蒸気泡を生成し、それによって機械的力を生成して該蒸気泡の生成時に該ナノ爆弾の該第2粒子の少なくとも一部を推進するステップ
を含み、
ここで、生物学的障壁は、真核細胞もしくは原核細胞の細胞膜または細胞壁、細胞内膜、エンドソーム膜、核エンベロープ、ミトコンドリア膜、多細胞組織、粘膜、血液脳障壁、血液網膜障壁、微生物バイオフィルム、細胞外マトリックス、粘液、硝子体液、基底層、あるいはバイオフィルムマトリックスを包含する、
前記方法における使用のための、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
方法が、磁場を用いて、該組成物の該ナノ爆弾を該生物学的障壁に引き付けるステップをさらに含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
生物学的障壁を変更するため
のin vitroの方法であって、
- 請求項1~
11のいずれか一項において定義されるnの第1粒子およびmの第2粒子を含むナノ爆弾を含む組成物を提供するステップ;
- 生物学的障壁の近くに前記組成物を導入するステップ;
- 電磁放射線を使用して前記組成物を照射して蒸気泡を生成し、それによって機械的力を生成して該蒸気泡の生成時に該ナノ爆弾の該第2粒子の少なくとも一部を推進するステップ
を含
み、
ここで、生物学的障壁は、真核細胞もしくは原核細胞の細胞膜または細胞壁、細胞内膜、エンドソーム膜、核エンベロープ、ミトコンドリア膜、多細胞組織、粘膜、血液脳障壁、血液網膜障壁、微生物バイオフィルム、細胞外マトリックス、粘液、硝子体液、基底層、あるいはバイオフィルムマトリックスを包含する、
前記方法。
【請求項15】
磁場を用いて、該組成物の該ナノ爆弾を該生物学的障壁に引き付けるステップをさらに含む、請求項
14に記載の生物学的障壁を変更するための方法。
【請求項16】
請求項1~
11のいずれか一項において定義される組成物を調製する方法であって、
- 電磁放射線を吸収して蒸気泡を生成することが可能な第1粒子を提供するステップ、
- 第2粒子を提供するステップ;
- 該第1粒子および該第2粒子を混合して、少なくとも1のナノ爆弾を形成させるステップ、ここで、該少なくとも1のナノ爆弾は、nの第1粒子およびmの第2粒子を含み、nおよびmの各々は、少なくとも1であり、および該mの第2粒子の少なくとも1は、該nの第1粒子の少なくとも1に近接しており、「に近接している」は、接触しているかまたは1μmよりも小さい距離dに配置されているかのいずれかと定義される、
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、生物学的障壁を変更するのに好適な、とりわけ生物学的障壁を変形、透過化、または穿孔するのに好適な少なくとも1のナノ爆弾を含む組成物に関する。より具体的に言うと、本発明は、薬物送達、細胞治療、免疫治療、遺伝子治療、および細胞のトランスフェクションに好適な組成物に関する。本発明はさらに、生物学的障壁を変更するための方法における、とりわけ生物学的障壁を変形、透過化、または穿孔するための方法における、組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
外因性化合物を細胞に送達することは、生物学における突然変異細胞株の作製、薬学における生物学的製剤の薬物スクリーニング、または画像化のための細胞の標識のためであるかどうかにかかわらず、生物医学的用途において普遍的な要件である。特定の用途に関係なく、一般的な課題は、細胞膜を克服することであり、これは、ほとんどの高分子およびナノ粒子について大きな障害を示す。
【0003】
化合物の細胞への送達のための物理的方法は、相当な関心を集めている。かかる方法は、細胞膜の透過性が増大し、分子またはナノ粒子などの化合物が細胞膜を通過できるという共通点を有する。
【0004】
化合物の細胞への送達のための既知の物理的方法は、エレクトロポレーションである。エレクトロポレーションでは、高電圧の電気パルスの適用を通じて、細胞膜に小さな孔が形成される。この技法は何十年も前から適用されているが、大きな欠点を有する。1つの欠点は、前記技法が高い細胞毒性を誘導することである。
【0005】
化合物の細胞への送達のための代替のより最近の技法は、レーザー誘導フォトポレーションである。その本来の形態では、細胞膜に対して正確に焦点を合わせた高強度フェムト秒(fs)レーザーパルスによって、細胞膜に孔が作製される。このプロセスのスループットは、金ナノ粒子などの増感ナノ粒子を使用することによって大幅に改善され得る。ナノ粒子は、最初に細胞膜に吸着され、続いて広視野(すなわち、焦点を当てていない)レーザー照射で照射される。レーザー光の吸収時に、細胞膜は、局所加熱またはレーザー誘導水蒸気ナノ気泡(VNB)の形成など、局所的な光熱効果を通じて透過性になる。
【0006】
レーザー誘導フォトポレーションは有望な技法であるが、いくつかの欠点を有する。細胞膜に生成され得る孔のサイズは限定されているため、細胞へ送達され得る化合物のサイズ限定もある。プラスミドDNAなどの特に大きな高分子は、極めて低い送達効率を有する。さらに、レーザー誘導フォトポレーションは、いくつかのタイプの細胞、例えば植物細胞などの強い外側の細胞壁を有する細胞の透過化には好適ではない。加えて、金ナノ粒子などのプラズモンナノ粒子は、VNBの形成に使用される強度レーザー照射時に小さな断片に断片化する傾向がある。報告によると、かかる小さな金ナノ粒子は、細胞に取り込まれたときに遺伝毒性である可能性を有する。フォトポレーション法がプラズモンナノ粒子と細胞との間の密接な接触を必要とすることを考慮すると、例えば細胞治療で使用される細胞へのトランスフェクションにフォトポレーションを使用することは、ナノ毒物学的(nanotoxicological)懸念が存在し得る。
【発明の概要】
【0007】
本発明の概要
本発明の目的は、当該技術分野において知られている組成物の欠点を回避して、生物学的障壁、例えば細胞膜を変更するのに好適な少なくとも1のナノ爆弾を含む組成物を提供することである。
【0008】
また、本発明の目的は、当該技術分野において知られている組成物の欠点を回避して、生物学的障壁、例えば細胞膜を変形、透過化、または穿孔するのに好適な少なくとも1のナノ爆弾を含む組成物を提供することである。
【0009】
薬物送達、細胞治療、免疫治療、遺伝子治療、および細胞のトランスフェクションに好適な組成物を提供することも目的である。
【0010】
本発明の別の目的は、少なくとも1の第1粒子および少なくとも1の第2粒子を含む少なくとも1のナノ爆弾を含む組成物を提供することであり、それよって、第1粒子(単数または複数)は蒸気泡を生成し得、第2粒子(単数または複数)はナノ発射物として機能し得る。
【0011】
本発明のさらなる目的は、組成物の第1粒子と生物学的障壁との間の密接な接触または直接的な接触を回避して、例えば、第1粒子と細胞膜との間の密接または直接的な接触を必要とせずに、生物学的障壁を変更するのに好適な組成物を提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、比較的大きな化合物が生物学的障壁、例えば細胞膜を通過することを可能にする、1nmと1000nmとの間、例えば10nmと1000nmとの間のサイズを有する孔を有する生物学的障壁、例えば細胞膜を提供することを可能にする組成物を提供することである。
【0013】
本発明のなおさらなる目的は、機能化された第2粒子、例えば薬物負荷ナノ発射物を有する少なくとも1のナノ爆弾を含む組成物を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、とりわけ薬物送達、細胞治療、免疫治療、遺伝子治療、および細胞のトランスフェクションに好適な生物学的障壁、例えば細胞膜を変更する方法を提供することである。
【0015】
さらに、本発明の目的は、外因性材料の細胞内送達のためのナノ爆弾を含む組成物の使用を提供することである。
【0016】
本発明の第1の側面によれば、少なくとも1のナノ爆弾を含む、好ましくは複数のナノ爆弾を含む組成物が提供される。少なくとも1のナノ爆弾は、nの第1粒子およびmの第2粒子を含み、nおよびmの各々は少なくとも1である。mの第2粒子の少なくとも1は、nの第1粒子の少なくとも1に近接している。好ましくは、ナノ爆弾の第1粒子は、この第1粒子に近接した1、より好ましくは1より多い第2粒子によって囲まれている。1以上の第2粒子によって囲まれた第1粒子は、それによって、中央の第1粒子と称される。かかる第1粒子を囲む第2粒子(単数)または第2粒子(複数)は、周囲粒子(単数または複数)と称される。
【0017】
第2粒子(複数)または第2粒子(複数)は、好ましくは、第1粒子(単数)または第1粒子(複数)のサイズ以下のサイズを有する。より好ましくは、第2粒子(単数)または第2粒子(複数)は、第1粒子(単数)または第1粒子(複数)よりも小さいサイズを有する。第2粒子(単数)または第2粒子(複数)のサイズは、例えば、第1粒子のサイズよりも2倍小さい、第1粒子のサイズよりも10倍小さい、または第1粒子のサイズよりも20倍小さい。
【0018】
第1粒子は、電磁放射線を吸収して、蒸気泡、例えば蒸気マイクロ気泡または蒸気ナノ気泡を生成することが可能であり、それによって、蒸気泡の生成は、少なくとも1の第2粒子(すなわち、少なくとも1のnの第1粒子の少なくとも1に近接したmの第2粒子)を、該少なくとも1の第1粒子から距離Dにわたって推進し、該距離Dは、0.01μmよりも大きい。距離Dは、蒸気泡を生成するプロセスの結果としての少なくとも1の第2粒子の変位として定義される。
【0019】
本発明の目的のために、「に近接して」または「に近接している」という用語は、接触しているかまたは1μmよりも小さい距離dに配置されているかのいずれかと定義され、距離dは、少なくとも1の第2粒子の外表面と少なくとも1の第1粒子の外表面との間の最も近い距離である。本発明の目的のために、「に近接して」または「に近接している」という用語は、隣接または周囲粒子に関して使用される。「に近接して」または「に近接している」という用語は、組み込まれることまたは統合されることを包含しない。その結果として、第1粒子に近接した第2粒子は、この第1粒子の隣に位置付けられ、この第1粒子に組み込まれることも統合されることもない。同様に、第2粒子に近接した第1粒子は、この第2粒子の隣に位置付けられ、この第2粒子に組み込まれることも統合されることもない。
【0020】
距離dは、ゼロまたは非ゼロであり得る。好ましくは、距離dは、0nmと500nmとの間、例えば0nmと50nmとの間、または0nmと10nmとの間の範囲であり、例えば0.1nm、0.5nm、1nm、または5nmである。
【0021】
「と接触している」という用語は、任意のタイプの接触を含み、数ある中でも、相互に接続されていること、付着されていること、および触れていることを含む。とりわけ、「と接触している」という用語は、生体共役、複合体形成、静電的接続、物理吸着、化学的接続、例えば、1以上の共有結合による化学的接続を含む。接触する好ましい方法は、共有結合(単数または複数)による接続、物理吸着、静電的接続、および生体共役を含む。
【0022】
いくつかの態様において、ナノ爆弾のnの第1粒子およびmの第2粒子は、マトリックス材料によって、または周囲または部分的に周囲の物理的障壁またはシェルによって一緒に保持される。ナノ爆弾のnの第1粒子およびmの第2粒子は、例えば、ポリマー材料などの封入材料のマトリックス材料内にカプセル化され、第1および第2粒子を一緒に近接して保持するマトリックスを形成する。代替的にまたは加えて、nの第1粒子およびmの第2粒子は、ポリマーシェルなどの周囲シェルによって一緒に保持され、内部に第1および第2粒子が近接するマイクロ容器またはナノ容器を形成する。マトリックス材料、または周囲または部分的に周囲の物理的障壁またはシェルが、1のナノ爆弾または複数のナノ爆弾を含み得ることは明らかである。
【0023】
上に記載のとおり、本発明によるナノ爆弾の第1粒子(単数)または第1粒子(複数)は、電磁放射線を吸収して、好ましくは周囲の媒体中または周囲の媒体から蒸気泡を生成することが可能である。これは、ナノ爆弾の照射時に、とりわけナノ爆弾の第1粒子の照射時に、蒸気泡が生成されることを意味する。好ましくは、蒸気泡は、第1粒子を囲む媒体の蒸発によって生成され、蒸気泡は、例えば、第1粒子を囲む水の蒸発によって生成される。代替的に、蒸気泡は、第1粒子の蒸発または部分的な蒸発によって生成される。さらにまた、蒸気泡は、第1粒子を囲む媒体の蒸発と、第1粒子の蒸発または部分的な蒸発との組み合わせによって、生成され得る。好ましくは十分な強度の短パルス光レーザーの照射時に、熱の閉じ込めにより第1粒子の温度は急速に(通常は数百度まで)増加し、第1粒子を囲む媒体および/または第1粒子の材料は急速に蒸発する。これは、粒子表面の周辺で急速に膨張し、その後崩壊する可能性がある蒸気泡の生成をもたらす。かかる蒸気泡の生成は、近接した第2粒子(単数)または粒子(複数)を、第1粒子から遠ざかる方向に距離Dにわたって推進する。
【0024】
本発明による参照される蒸気泡は、ナノ爆弾の材料を囲む媒体、とりわけ第1粒子(単数または複数)を囲む媒体の蒸発によって引き起こされることが強調される。ナノ爆弾の材料、とりわけ第1粒子(単数または複数)の材料は、それによって蒸発しない。
【0025】
本発明によるナノ爆弾の第2粒子(単数または複数)は、好ましくは、蒸気泡の生成時に推進されると生物学的障壁を少なくとも部分的に変更するように適合されている。より具体的には、本発明によるナノ爆弾の第2粒子(単数または複数)は、蒸気泡の生成時に推進されると生物学的障壁を少なくとも部分的に変形するように適合されている。好ましい態様において、本発明によるナノ爆弾の第2粒子(単数または複数)は、蒸気泡の生成時に推進されると生物学的障壁を透過化するように適合されている。特定の好ましい態様において、本発明によるナノ爆弾の第2粒子(単数または複数)は、蒸気泡の生成時に推進されると生物学的障壁を穿孔するように適合されている。
【0026】
生物学的障壁は、細胞膜または障壁、例えば真核細胞および原核細胞の細胞膜または細胞壁、エンドソーム膜などの細胞内膜、核エンベロープ、ミトコンドリア膜などを包含するが、これらに限定されない。生物学的障壁はまた、粘膜、血液脳障壁、血液網膜障壁、微生物バイオフィルムなどの多細胞組織を包含するが、これらに限定されない。生物学的障壁はさらにまた、粘液、硝子体液、基底層、バイオフィルムマトリックスなどの細胞外マトリックスを包含するが、これらに限定されない。
【0027】
「変更する(alter)」、「変更すること(altering)」または「変更(alteration)」という用語は、生物学的障壁の1以上の特性を少なくとも部分的に、例えば少なくとも局所的に変える任意の方法を指す。変更することは、ナノ爆弾、とりわけナノ爆弾の第2粒子(単数)または第2粒子(複数)の作用を通じて構成物を追加、除去、破壊、または再編成することにより、生物学的障壁の組成に局所的な変化を誘導することを含むが、これらに限定されない。例えば、ナノ爆弾の第2粒子(単数)または第2粒子(複数)は、その粘度、多孔性、密度、剛性、弾性などの生物学的障壁の1以上の物理化学的特性を変えるように適合され得る。別の例において、第2粒子(単数)または第2粒子(複数)の推進は、障壁構成物の局所的な破壊または再配置をもたらし、障壁の組成および/または物理化学的特性の変化をもたらし得る。さらに別の例において、ナノ爆弾の第2粒子(単数)または第2粒子(複数)は、障壁に(生)化学的変化を誘導し得る活性化合物、例えば活性医薬化合物から構成されるか、または放出するように適合され得る。
【0028】
「変形する(deform)」、「変形すること(deforming)」および「変形(deformation)」という用語は、生物学的障壁の空間構成または構造を少なくとも部分的に、例えば少なくとも局所的に変更する任意の方法を指す。変形することの例は、生物学的障壁にくぼみまたは陥入を提供することを含む。
【0029】
「透過化する(permeabilize)」、「透過化すること(permeabilizing)」および「透過化(permeabilization)」という用語は、生物学的障壁の透過性を少なくとも部分的に、例えば少なくとも局所的に変更する任意の方法を指す。透過化することの例は、1以上のタイプの分子、粒子、またはナノ粒子に対してより透過性になるように、障壁の組成または構造を変更することを含む。
【0030】
「穿孔する(perforate)」、「穿孔すること(perforating)」または「穿孔(perforation)」という用語は、少なくとも部分的に、例えば少なくとも局所的に、1以上の開口部、穴または孔を有する生物学的障壁を提供する任意の方法を指す。生物学的障壁を穿孔することにより、開口部が障壁に作製され、分子、粒子、またはナノ粒子などの化合物の障壁を越えてのまたは障壁の中への輸送を可能にする。
【0031】
本発明の目的のために、「穿孔する(perforate)」、「穿孔すること(perforating)」、「穿孔(perforation)」という用語、および「透過化する(permeabilize)」、「透過化すること(permeabilizing)」、「透過化(permeabilization)」という用語は、互換的に使用される。同様に、本発明の目的のために、「開口部」、「穴」、および「孔」という用語は、互換的に使用される。
【0032】
脂質膜の弾道的な応答の最近の刊行物は、脂質膜に衝突するナノ発射物が、発射物の初速度、サイズ、および密度に応じて、3つの異なる経路をたどり得ることを示した。これらの経路は、はね返り、局所化変形浸透、および管形成浸透である。出願人はいかなる理論にも束縛されることを望まないが、本出願の文脈における「変形すること」、「透過化すること」、および「穿孔すること」という用語は、局所化変形浸透を通じた孔の生成、ならびに例えば管形成による膜の陥入による膜組成の局所的変化を包含する。
【0033】
ナノ爆弾の少なくとも1の第2粒子は、蒸気泡の生成時に距離Dにわたって推進されるため、生物学的障壁(単数または複数)は、好ましくはD以下の距離に位置付けられる。したがって、少なくとも1のナノ爆弾を含む組成物は、好ましくは、変更、変形、透過化、または穿孔される生物学的障壁の近くに導入される。とりわけ、少なくとも1のナノ爆弾を含む組成物は、好ましくは、変更、変形、透過化、または穿孔される細胞の近くに導入される。組成物と生物学的障壁との間、すなわちナノ爆弾と生物学的障壁との間の直接的な接触は可能であるが、必ずしも必要ではない。とりわけ、組成物と細胞との間、すなわちナノ爆弾と細胞との間の直接的な接触は可能であるが、必ずしも必要ではない。
【0034】
当該技術分野において知られている技法と比較して、本発明の重要な利点は、本発明による組成物が、組成物と、変更、変形、透過化、または穿孔される生物学的障壁との間の直接的な接触に依存しないことである。とりわけ、本発明による組成物を使用することにより、プラズモンナノ粒子と、変更、変形、透過化、または穿孔される生物学的障壁との間の直接的な接触は必ずしも必要ではない。その結果として、プラズモンナノ粒子の潜在的な毒性による潜在的なリスクは回避または大幅に低減され得る。
【0035】
本発明によるナノ爆弾の少なくとも1の第2粒子は、好ましくは距離Dにわたって推進されるように適合され、距離Dは、0.01μmと1000μmとの間、より好ましくは0.1μmと100μmとの間、0.5μmと20μmとの間、または1μmと20μmとの間の範囲である。
【0036】
蒸気泡の膨張中、蒸気泡境界は、蒸気泡が時間t
maxでその最大サイズに達するまで、速度v
膨張で外向きに移動する。速度v
膨張は、一般に、0.1m/sと100m/sとの間、例えば0.5m/sと20m/sとの間の範囲である。時間t
maxは、一般に、10nsと1μsとの間、例えば50nsと200nsとの間の範囲である。蒸気泡が速度v
膨張で膨張し、膨張する蒸気泡によって第2粒子が前方に押し出されるため、第2粒子の最大初速度v
0はv
膨張に等しいと予想される。出願人はいかなる理論にも束縛されることを望まないが、第2粒子が推進される距離Dは、数ある中でも、第2粒子の密度、第2粒子の重量、第2粒子の寸法、および粒子の初速度v
0、流体密度ρおよび流体の動的粘度ηに依存すると予想される。第2粒子が推進される最大距離は、水中で10m/sの初速度を有する、100nmの球状ナノ発射物について推定される。推定最大距離は、D
max estと称される。対応するレイノルズ数は、
【数1】
から計算される、
【数2】
であり、ここで、ρは流体密度であり、v
0は第2粒子の初速度であり、d
2Pは第2粒子の直径であり、ηは流体の動的粘度である。低レイノルズ数のこのレジームでは、ナノ発射物が受ける抗力は、ストークスの抗力
【数3】
によって近似され得る。次いで、ニュートンの運動方程式から、時間tの関数として移動した推定距離D
estは、
【数4】
であり、ここで、mは第2粒子の質量である。大きなtの限界では、第2粒子が推定最大距離
【数5】
を移動する。1.05kg/dm
3の質量密度を有するポリスチレンから構成される第2粒子を例にとると、第2粒子は、
【数6】
を超えて移動することはない。この推定から、最大距離D
max estは一般に1nmよりも大幅に小さいことがわかる。
【0037】
驚くべきことに、本発明によるナノ爆弾の第2粒子は、上記の理論的根拠に基づいて、予想よりも大幅に大きい距離Dにわたって、より具体的には、0.1μmよりも大きい距離Dにわたって推進されることが見出された。これは、予想よりも少なくとも10000倍大きい距離にわたるものである。
【0038】
好ましい一態様において、距離Dは、1μmよりも大きい(これは予想よりも100000倍大きい)、10μmよりも大きい(これは予想よりも1000000倍大きい)、または100μm(これは理論上の予想よりも10000000倍大きい)でさえある。
【0039】
好ましくは、本発明による組成物は、複数のナノ爆弾を含む。組成物中のナノ爆弾の濃度は、例えば用途に依存する。細胞膜を変更するために使用される本発明による組成物は、例えば、105ナノ爆弾/mLと1012ナノ爆弾/mLとの間、より好ましくは107ナノ爆弾/mLと1010ナノ爆弾/mLとの間の範囲、例えば、5×107ナノ爆弾/mL、5×108ナノ爆弾/mL、または5×109ナノ爆弾/mLのナノ爆弾の濃度を有する。
【0040】
上に言及されたように、本発明によるナノ爆弾は、nの第1粒子およびmの第2粒子を含み、nおよびmの各々は少なくとも1であり、すなわち、nおよびmの各々は1以上である。ナノ爆弾のmの第2粒子の少なくとも1は、nの第1粒子の少なくとも1に近接している。好ましい態様において、第2粒子の数mは、第1粒子の数nよりも大きい。
【0041】
好ましい態様において、ナノ爆弾は、1の第1粒子(n=1)および1の第2粒子(m=1)を含む。
【0042】
他の好ましい態様において、ナノ爆弾は、1の第1粒子(n=1)およびmの第2粒子を含み、mは1よりも大きい。
【0043】
さらに好ましい態様において、ナノ爆弾は、mの第1粒子およびnの第2粒子を含み、mおよびnは1よりも大きく、mはn以上であり得、好ましくは、mはnよりも大きい。
【0044】
好ましくは、ナノ爆弾の第1粒子は、1よりも多い第2粒子、例えば、この第1粒子に近接したpの第2粒子を有し、pは少なくとも2である。pの第2粒子は、それによって第1粒子を囲み、第1粒子から1μmよりも小さい距離dに配置され、dは少なくとも1の第2粒子の外表面と第1粒子の外表面との間の最も近い距離である。
【0045】
好ましくは、nの第1粒子の大多数は、第1粒子に近接した少なくともpの第2粒子を含み、pは少なくとも2である。nの第1粒子の大多数は、第1粒子の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、または少なくとも90%を意味する。
【0046】
1の第1粒子あたりの第2粒子の最大数pは、数ある中でも、ナノ爆弾における第1および第2粒子の立体配置、第1粒子のサイズ、および/または第2粒子のサイズに依存する。
【0047】
第1粒子が第2粒子の1の層によって囲まれる場合、1の第1粒子あたりの第2粒子の最大数は、第1粒子の最大負荷容量、すなわち第2粒子が第1粒子に近接するように第1粒子の周辺に配置され得る第2粒子の最大値によって限定される。最大負荷容量が、数ある中でも、第1粒子のサイズ、第2粒子のサイズ、および接続ストラテジーに依存することは明らかである。好ましくは、第1粒子を囲む第2粒子の数は、第1粒子の最大負荷容量の10%と100%との間の範囲である。より好ましくは、第1粒子を囲む第2粒子の数は、50%と100%との間の範囲であり、例えば、第1粒子の最大負荷容量の60%、70%、80%または90%である。
【0048】
複数の第1粒子(n>1)、例えば、互いに接触している、または互いに接続されている第1粒子が、第2粒子の1の層によって囲まれる場合、第2粒子の最大数は、例えば、複数の第1粒子の最大負荷容量、すなわち、第2粒子が第1粒子に近接するように複数の第1粒子の周辺に配置され得る第2粒子の最大値によって限定される。最大負荷容量が、数ある中でも、第1粒子のサイズ、それらの接続ストラテジー、第2粒子のサイズ、およびそれらの接続ストラテジーに依存することは明らかである。好ましくは、nは、複数の第1粒子の最大負荷容量の10%と100%との間の範囲である。より好ましくは、nは、50%と100%との間の範囲であり、例えば、60%、70%、80%、または90%、または複数の第1粒子の最大負荷容量である。
【0049】
第1粒子または複数の第1粒子が、第2粒子の1よりも多い層、例えば、第2粒子の2層または3層によって囲まれる場合、1の第1粒子あたりまたは複数の第1粒子あたりの第2粒子の数pは、第1粒子の最大負荷容量よりも高いものであり得る。
【0050】
ナノ爆弾が1よりも多い第1粒子(n>1)を含む場合、第1粒子は、互いに接触しているか、または互いに接続されているか、または互いに接触していないか、または互いに接続されていないかのいずれかであり得る。第1粒子は、例えば、第1粒子のクラスターを形成する。接触または接続される好ましい方法は、生体共役、複合体形成、静電的接続、物理吸着、化学的接続、例えば1以上の共有結合による化学的接続を包含する。互いに接触していないまたは接続されていない1よりも多い第1粒子を含むナノ爆弾の好ましい方法は、マトリックス材料中の第1粒子を含むか、またはポリマーシェルなどの物理的シェルによって囲まれたナノ爆弾を含み、それぞれマイクロまたはナノマトリックスまたはマイクロまたはナノ容器を形成する。マトリックスまたは容器中に存在する第1粒子の数および第2粒子の数は、数ある中でも、第1および第2粒子のサイズ、および/またはマトリックスまたは容器のサイズおよび/または組成に依存する。より大きな容器は、例えば、より小さなものと比較して、より多くの第1および第2粒子を含む。また、マトリックスまたは容器中に存在するナノ爆弾の数は、数ある中でも、第1および第2粒子のサイズ、および/またはマトリックスまたは容器のサイズおよび/または組成に依存する。
【0051】
ナノ爆弾が1よりも多い第1粒子(n>1)を含む場合、ナノ爆弾の第1粒子は同じものであり得るか、または異なるものであり得る。ナノ爆弾が異なる第1粒子を含む場合、第1粒子は、例えば、異なる組成および/または異なるサイズを有し得る。
【0052】
組成物において、1のナノ爆弾あたりの第1粒子の数は、一定であり得るか、または変化し得る。好ましくは、1のナノ爆弾あたりの第1粒子の数は一定または実質的に一定である。
【0053】
ナノ爆弾が1よりも多い第2粒子(m>1)を含む場合、ナノ爆弾の第2粒子は同じものであり得るか、または異なるものであり得る。ナノ爆弾が異なる第2粒子を含む場合、第2粒子は、例えば、異なる組成および/または異なるサイズを有し得る。
【0054】
組成物において、1のナノ爆弾あたりの第2粒子の数は、一定であり得るか、または変化し得る。好ましくは、1のナノ爆弾あたりの第2粒子の数は、一定または実質的に一定である。
【0055】
ナノ爆弾が組成において同一である必要がないことは明らかである。上に言及されたように、1のナノ爆弾あたりの第1粒子の数、ならびに1のナノ爆弾あたりの第2粒子の数は、組成において変化し得る。さらにまた、組成において異なるナノ爆弾は、組成および/またはサイズにおいて変化する第1粒子を含み得、および/または組成において異なるナノ爆弾は、組成および/またはサイズにおいて変化する第2粒子を含み得る。また、第1粒子と第1粒子との間の距離d、および第1粒子と第2粒子との間の接続ストラテジーは、組成内で変化し得る。
【0056】
第1粒子として、電磁照射時に蒸気泡を引き起こすように適合された任意の粒子が考慮され得る。好ましくは、第1粒子は、生体適合性粒子を含む。より好ましくは、粒子は、臨床的に承認された粒子を含む。
【0057】
第1粒子は、好ましくは、0.01μmと10μmとの間、より好ましくは0.02μmと7μmとの間、例えば、0.1μmと5μmとの間、例えば、0.03μm、0.1μm、0.2μm、0.5μm、1μm、2μm、または5μmの平均粒子サイズを有する。平均粒子サイズは、好ましくは、透過型または走査型電子顕微鏡法(TEMまたはSEM)または原子間力顕微鏡法(AFM)などの高解像度画像化技法によって決定される。
【0058】
好ましい第1粒子は、金属、金属酸化物、炭素または炭素ベースの材料、光吸収材料または1以上の光吸収材料または化合物(単数または複数)で負荷または機能化された材料、またはそれらの組み合わせを含む。第1粒子は、例えば、金属の組み合わせ、金属酸化物の組み合わせ、炭素ベースの材料の組み合わせ、光吸収材料または1以上の光吸収材料または化合物で負荷または機能化された材料の組み合わせ、または任意の他の組み合わせを含み得る。
【0059】
金属の例は、金、銀、白金、パラジウム、銅、およびそれらの合金を含む。好ましい金属は、金、銀、およびそれらの合金を含む。
【0060】
金属酸化物の例は、酸化鉄、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、および酸化マグネシウムを含む。
【0061】
炭素または炭素ベースの材料の例は、グラフェンまたは酸化グラフェンを含む。
【0062】
光吸収化合物の例は、合成有機または無機吸収剤、ならびにそれらの天然に存在する吸収剤または誘導体、例えば、インドシアニングリーンなどの光吸収色素分子、無機量子ドット(低い蛍光量子収率を有する)、色素(メラニン、ロドプシン、フォトプシン、またはヨードプシンなど)などの天然に存在する光吸収剤、およびポリドーパミンなどの合成類似体、または光線力学的治療で使用される光増感剤を含む。
【0063】
好ましい第1粒子は、金属粒子、金属酸化物粒子、炭素または炭素ベースの粒子、1以上の光吸収化合物を含む粒子、または1以上の光吸収化合物で負荷または機能化された粒子を含む。
【0064】
金属粒子の例は、金粒子、銀粒子、白金粒子、パラジウム粒子、銅粒子、およびそれらの合金を含む。好ましい金属粒子は、金粒子、銀粒子、およびそれらの合金を含む。
【0065】
金属酸化物粒子の例は、酸化鉄、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、および酸化マグネシウムを含む。
【0066】
炭素または炭素ベースの粒子の例は、グラフェン量子ドット、(還元された)酸化グラフェン、およびカーボンナノチューブを含む。
【0067】
1以上の光吸収化合物を含む粒子または1以上の光吸収化合物で負荷または機能化された粒子の例は、合成有機または無機吸収剤で負荷または機能化されたものを含む粒子、ならびに天然に存在する吸収剤またはその誘導体で負荷または機能化されたものを含む粒子を含む。具体的な例は、リポソーム、固体脂質ナノ粒子、インドシアニングリーンなどの光吸収色素分子で負荷または機能化されたものを含むポリマーベースの粒子、無機量子ドット(低い蛍光量子収率を有する)、色素(メラニン、ロドプシン、フォトプシン、またはヨードプシンなど)などの天然に存在する光吸収剤、およびポリドーパミンなどの合成類似体、または光線力学的治療で使用される光増感剤を含む。
【0068】
第1粒子の好ましい群は、磁性または磁化可能な粒子、例えば酸化鉄粒子を含む。かかる粒子は、磁石または磁石のアレイを用いて引力、例えば、処理される生物学的障壁への引力、例えば、処理される細胞(単数)または細胞(複数)への引力を可能にするという利点を有する。
【0069】
第1粒子(単数)または第1粒子(複数)はまた、シェルで囲まれたコアを含み得る。かかるコア/シェル粒子の例は、金属、金属酸化物、炭素、炭素ベースの材料、または1以上の光吸収材料または化合物で囲まれたポリマーコアなどのコアを含む。
【0070】
コアは、例えば、ポリスチレン粒子またはポリ(乳酸-コ-グリコール酸)粒子などのポリマー粒子、シリカ粒子、ヒドロゲルまたはベシクルを含み、これらは、生体細胞に由来するか、または主要な構成物として脂質および/またはポリマーを用いて合成的に作製され得る。
【0071】
金属の例は、金、銀、白金、パラジウム、銅、およびそれらの合金を含む。好ましい金属は、金、銀、およびそれらの合金を含む。
【0072】
金属酸化物の例は、酸化鉄、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、および酸化マグネシウムを含む。
【0073】
炭素または炭素ベースの材料の例は、グラフェンまたは酸化グラフェンを含む。
【0074】
光吸収化合物の例は、合成有機または無機吸収剤、ならびにそれらの天然に存在する吸収剤または誘導体、例えば、インドシアニングリーンなどの光吸収色素分子、無機量子ドット(低い蛍光量子収率を有する)、色素(メラニン、ロドプシン、フォトプシン、ヨードプシンなど)などの天然に存在する光吸収剤、およびポリドーパミンなどの合成類似体、または光線力学的治療で使用される光増感剤を含む。
【0075】
上に言及されたように、蒸気泡は、ナノ爆弾、とりわけナノ爆弾の第1粒子(単数または複数)を囲む媒体の蒸発によって、および/または(部分的に)ナノ爆弾の第1粒子(単数または複数)または第1粒子(単数または複数)の一部の蒸発によって生成され得る。
第1粒子(単数または複数)を囲む媒体の蒸発によって蒸気泡を生成する第1粒子の好ましい例は、金属粒子または金属酸化物粒子、ならびに炭素または炭素ベースの粒子を含む。
(部分的に)第1粒子または第1粒子の一部の蒸発によって蒸気泡を生成する第1粒子の好ましい例は、マトリックスまたは周囲のシェルに封入またはカプセル化された低沸点を有する液体など、低沸点を有する少なくとも1の構成物を含む粒子を含む。マトリックスまたは周囲のシェルは、1以上の光吸収化合物をさらに含む。具体的な例は、ポリマーまたは脂質でカプセルにカプセル化されたパーフッ化炭素またはヘキサデカン(揮発性油)などの低沸点液体を含む粒子を含み、ナイルレッドなどの有機色素などの1以上の光吸収化合物をさらに含む。色素は、マトリックス材料、シェルに組み込まれ得、または例えば油相に分散され得る。電磁放射線で照射されると、かかる粒子は局所的な加熱を誘導し、カプセル化された低沸点液体の相変換を引き起こす。
【0076】
好ましい一態様において、第1粒子は、例えば、第2粒子(単数)または粒子(複数)との相互作用または接続を改善するために、第2粒子(単数)または粒子(複数)を引き付けるために、生物学的障壁との相互作用、例えば、細胞(単数)または細胞(複数)との相互作用を改善するために、および/または第1粒子の安定性、ナノ爆弾の安定性、および/または組成物の安定性を改善するために、機能化され得る。第1粒子が、1よりも多い追加の機能性を第1粒子に提供するような方法で機能化され得ることは明らかである。
【0077】
機能化された第1粒子の例は、1以上のポリマー、脂質、および/または分子リンカーで機能化されて、(例えば、タンパク質、ペプチド、核酸との)生体共役、(例えば、複合体を形成し得る分子実体との)複合体形成、または(例えば、共有結合を形成し得る分子実体との)クリックケミストリーなどの連結ストラテジーを誘導する第1粒子を含む。
【0078】
第2粒子として、少なくとも1の第1粒子から距離Dにわたって推進されるように適合された任意の粒子が考慮され得る。好ましくは、第2粒子は、生体適合性粒子を含む。より好ましくは、第2粒子は、臨床的に承認された粒子を含む。
【0079】
第2粒子は、好ましくは、10nmと10μmとの間、または20nmと7μmとの間、より好ましくは50nmと5μmとの間、または100nmと5μmとの間、例えば200nm、500nm、1μm、2μm、3μm、または4μmの平均粒子サイズを有する。上に言及されたように、平均粒子サイズは、好ましくは、高解像度画像化技法、例えば、透過型または走査型電子顕微鏡法(TEMまたはSEM)または原子間力顕微鏡法(AFM)を使用して決定される。
【0080】
好ましい第2粒子は、ポリマー、金属酸化物、ケイ素またはケイ素酸化物、リポソーム(単数)またはリポソーム(複数)、またはそれらの組み合わせを含む。
【0081】
好ましい第2粒子は、ポリマー粒子(マイクロまたはナノ粒子)、金属酸化物粒子(マイクロまたはナノ粒子)、ケイ素またはケイ素酸化物粒子(マイクロまたはナノ粒子)、リポソーム、薬物負荷ポリマー粒子、薬物負荷金属酸化物粒子、薬物負荷ケイ素またはケイ素酸化物粒子、および薬物負荷リポソームを含む。
【0082】
ポリマー粒子の例は、ポリスチレンビーズまたはポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)ビーズを含む。
【0083】
金属酸化物粒子の例は、チタニアまたはジルコニアのマイクロ粒子またはナノ粒子を含む。
【0084】
好ましくは、第2粒子は、第2粒子が推進されると、近くの生物学的障壁、例えば近くの細胞膜に最小の影響を与えるように適合されている。好ましくは、第2粒子は、それらの完全性を損なうことなく推進されて、生物学的障壁、例えば細胞膜に浸透する。より好ましくは、第2粒子は、はね返りを回避し、推進されたときに管の形成または局所的な変形および浸透のいずれかを可能にする密度を有する。
【0085】
好ましくは、第2粒子は、生物学的障壁、例えば細胞膜に孔を形成するように適合されている。第2粒子によって作製された孔の孔サイズは、好ましくは、第2粒子のサイズに比例する。好ましくは、孔サイズは、化合物の通過が生物学的障壁を越えて、例えば細胞膜を越えて送達されることを可能にするのに十分に大きい。孔サイズは、好ましくは、1nmと5μmとの間、より好ましくは10nmと500nmとの間、または20nmと250nmとの間の範囲であり、例えば50nm、100nm、または150nmである。
【0086】
好ましくは、第2粒子は、少なくとも1kg/dm3の密度、例えば、1kg/dm3と30kg/dm3との間、例えば1kg/dm3と20kg/dm3との間の範囲の密度を有する。より好ましくは、第2粒子は、少なくとも5kg/dm3の密度、または少なくとも10kg/dm3の密度、例えば10kg/m3と30kg/dm3との間の範囲の密度を有する。
【0087】
好ましくは、第2粒子は、1nmと5μmとの間の範囲のサイズ、および1kg/dm3と30kg/dm3との間の範囲の密度を有する。好ましい第2粒子は、10nmと500nmとの間の範囲の粒子サイズ、および1kg/dm3と10kg/dm3との間の範囲の密度を有する。
【0088】
好ましい一態様において、少なくとも1の第2粒子は、例えば、第1粒子(単数)または第1粒子(複数)との相互作用または接続を改善するために、第1粒子(単数)または第1粒子(複数)を引き付けるために、生物学的障壁、例えば、細胞(単数)または細胞(複数)との相互作用を改善するために、第2粒子の安定性を改善するために、ナノ爆弾の安定性を改善するために、組成物の安定性を改善するために、または標的化抗体、色素、または放射標識などの標識などの1以上の標的化部分を有する少なくとも1の第2粒子を提供するために、機能化され得る。第2粒子が1よりも多い追加の機能性を第2粒子に提供するような方法で機能化され得ることは明らかである。
【0089】
機能化された第2粒子の例は、例えば粒子を安定化するために、または例えば第1粒子(単数)または粒子(複数)および/または生物学的障壁との静電相互作用を可能にするために、ポリマーまたは脂質で機能化された第2粒子、薬物、または標的化抗体、色素、または標識、例えば放射標識などの他の機能的分子で負荷された第2粒子、および/または官能基で機能化されて、例えば、(例えば、タンパク質、ペプチド、核酸との)生体共役、(例えば、複合体を形成し得る分子実体との)複合体形成、および/または(例えば、第1粒子と共有結合を形成し得る分子実体との)クリックケミストリーなどの連結ストラテジーを誘導する第2粒子を含む。
【0090】
機能化のためのポリマーの例は、キトサン、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム塩化物)、ポリエチレンイミン、ヒアルロン酸、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)である。脂質の例は、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)および1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-スクシナート(DGS)である。
【0091】
特に好ましい態様において、生物学的障壁を越えて、例えば細胞膜を越えて送達される化合物は、第2粒子自体によって提供され得る。かかる好ましい態様において、第2粒子は、生物学的障壁を越えて、例えば細胞膜を越えて送達される化合物(単数)または化合物(複数)で機能化される。第2粒子は、例えば、タンパク質、核酸、薬物、または放射標識などの標識などの1以上の機能的部分で機能化される。第2粒子は、それによって、細胞膜を透過化または穿孔するためのナノ発射物として、および化合物(単数)または化合物(複数)を細胞(単数)または細胞(複数)に直接送達するためのビヒクルとして機能している。
【0092】
タンパク質、核酸、ポリマー、薬物、および/または標識による第2粒子の機能化の好ましい方法は、静電相互作用、生体共役、または化学的接続(クリックケミストリー)による化学吸着によるものである。
【0093】
第2粒子の機能化の別の好ましい方法は、例えば、第1粒子(単数)または第1粒子(複数)および/または第2粒子(単数)または第2粒子(複数)との安定性および/または静電相互作用を改善するための、荷電した分子の物理吸着によるものである。例は、ヒアルロン酸、ポリエチレンイミン(PEI)、またはポリエチレンジアリルジメチルアミン塩酸塩(PDDAC)の吸着を含む。
【0094】
機能化のさらに好ましい方法は、例えば安定性を改善するために、非荷電分子の物理吸着を含む。一例は、ポリエチレングリコール(PEG)の吸着を含む。
【0095】
本発明の第2の側面によれば、生物学的障壁を変更する方法における使用のための、上に記載のとおりの少なくとも1のナノ爆弾を含む、好ましくは複数のナノ爆弾を含む組成物が提供される。とりわけ、組成物は、生物学的障壁、例えば細胞膜を変更するのに好適であり、より具体的には、組成物は、生物学的障壁を変形、透過化、または穿孔するのに、例えば細胞膜を変形、透過化、または穿孔するのに好適である。
【0096】
生物学的障壁、例えば細胞膜を変更、変形、または穿孔するための方法は、好ましくは、以下のステップを含む:
- 少なくとも1のナノ爆弾を含み、好ましくは複数のナノ爆弾を含む、上に記載のとおりの組成物を提供するステップ、ここで、該少なくとも1のナノ爆弾または該複数のナノ爆弾は、nの第1粒子およびmの第2粒子を含む、
- 前記組成物を生物学的障壁の近くに、例えば細胞の近くに導入するステップ、
- 電磁放射線を使用して組成物を照射して、蒸気泡を形成し、それによって機械的力を生成して、蒸気泡の生成時、より具体的には、蒸気泡の膨張および/または崩壊時に、該ナノ爆弾の少なくとも一部の該mの第2粒子を推進するステップ。
【0097】
連続的な波放射線の供給源による照射も考慮され得るが、組成物は、好ましくは、パルス放射線の供給源によって照射される。組成物は、1以上のパルスによって照射され得る。
【0098】
パルス放射線の供給源が使用されるとき、パルスは、好ましくは、10nsから0.1nsまたは10fsまでの範囲の持続時間を有する。
【0099】
放射線の供給源のパルスあたりのフルエンス(単位面積あたりに送達される電磁エネルギー)は、好ましくは0.01J/cm2と10J/cm2との間、より好ましくは0.05J/cm2と2J/cm2との間の範囲であり、例えば0.5J/cm2である。
【0100】
放射線の供給源の波長は、紫外線領域から赤外線領域までの範囲であり得る。好ましい方法において、使用される放射線の波長範囲は、可視から近赤外領域にある。
【0101】
本発明による少なくとも1のナノ爆弾を含む組成物は、薬物送達、化合物の細胞内送達、細胞治療、免疫治療、遺伝子治療、および細胞、例えば幹細胞またはT細胞のトランスフェクションにおける使用にとりわけ好適である。
【0102】
本発明による少なくとも1のナノ爆弾を含む組成物は、例えば、組成物を細胞媒体(cell medium)に加えることによって組成物のナノ爆弾が生物学的障壁に近接してもたらされるin vitroおよびex vivoの用途での使用に好適である。ナノ爆弾が磁性または磁化可能な粒子を含む場合、それらは、外部から印加された磁場を用いて、生物学的障壁に向かって、例えば細胞に対して濃縮され得る。
【0103】
本発明による組成物を生物学的障壁に近接させるための他の立体配置、例えば、細胞が培養され得る基板の上に組み込まれるかまたは基板中に包埋されるナノ爆弾を含む立体配置も考慮され得ることは明らかである。
【0104】
とりわけ、組成物は、オリゴヌクレオチド、siRNA、mRNA、またはpDNAを含む核酸の細胞内送達における使用に好適である。
【0105】
組成物はまた、Cas9/gRNAなどのリボ核タンパク質を含む核タンパク質の細胞内送達における使用に好適である。
【0106】
さらにまた、組成物は、ナノボディーまたは抗体などのペプチドおよびタンパク質の細胞内送達における使用に好適である。
【0107】
加えて、組成物は、量子ドット、酸化鉄ナノ粒子、およびガドリニウムキレートなどの造影剤の細胞内送達における使用に好適である。
【0108】
組成物はさらに、例えば、センシングおよび特徴付けの目的、例えばLSPRセンサー(局所表面プラズモン共鳴)またはSERS(表面増強ラマン分光法)について、プラズモンナノ粒子の細胞内送達における使用に好適である。
【0109】
組成物はさらに、in vivo用途での使用に好適である。ナノ爆弾が磁性または磁化可能な粒子を含む場合、磁石(単数)または磁石(複数)を使用することにより、特定の身体領域にナノ爆弾を優先的に局所化させることが可能である。
【0110】
本発明の第3の側面によれば、生物学的障壁を変更するためのex vivoまたはin vitroの方法が提供される。方法は、以下のステップを含む:
- 上に記載のとおりのnの第1粒子およびmの第2粒子を含むナノ爆弾を含む組成物を提供するステップ、
- 生物学的障壁の近く、例えば細胞の近くに組成物を導入するステップ、
- 電磁放射線を使用して組成物を照射して、蒸気泡を形成し、それによって機械的力を生成して、蒸気泡の生成時、より具体的には、蒸気泡の膨張および/または崩壊時に、該ナノ爆弾の該第2粒子の少なくとも一部を推進するステップ。
【0111】
好ましい方法は、細胞膜を変形、透過化、または穿孔する方法などの、生物学的障壁を変形、透過化、または穿孔する方法を含む。
【0112】
方法は、組成物のナノ爆弾、とりわけナノ爆弾の第1粒子(単数)または第1粒子(複数)を、磁場を用いて生物学的障壁に引き付けるステップをさらに含み得る。
【0113】
本発明の第4の側面によれば、上に記載のとおりの、少なくとも1のナノ爆弾を含む、好ましくは複数のナノ爆弾を含む組成物を調製するための方法が提供される。かかる組成物を得ることを可能にする任意の方法が考慮され得る。
【0114】
少なくとも1のナノ爆弾を含む組成物を調製するための好ましい方法は、以下のステップを含む:
- 電磁放射線を吸収して蒸気泡を生成することが可能な第1粒子を提供するステップ、
- 第2粒子を提供するステップ、
- 該第1粒子および該第2粒子を混合して、nの第1粒子およびmの第2粒子を含む少なくとも1のナノ爆弾を形成させるステップ、ここで、nおよびmの各々は少なくとも1であり、該mの第2粒子の少なくとも1は該nの第1粒子のうちの少なくとも1に近接しており、「に近接している」は、接触しているかまたは1μmよりも小さい距離dに配置されているかのいずれかと定義される。
【0115】
好ましい方法において、第1粒子、第2粒子、または第1および第2粒子は、好ましくは混合される前に機能化される。当該技術分野において知られている任意の方法は、第1粒子および/または第2粒子を機能化するために考慮され得る。
【0116】
本発明による組成物を調製するための特に好ましい方法は、自己集合を可能にするために、回転下、例えば24時間の回転下での第1粒子および第2粒子の混合を含む。
【0117】
組成物を調製するための方法は、1以上の追加のステップ、例えば、第1および第2粒子(単数または複数)の混合後および/または2つの混合ステップ間の1以上の精製ステップをさらに含み得る。
【0118】
精製ステップとして、当該技術分野において知られている任意の精製方法が考慮され得る。例は、洗浄、磁性洗浄、濾過、遠心分離などを含む。
【0119】
本発明による組成物を調製するための代替方法は、少なくとも1の第1粒子を容器またはプラットフォームの空洞または突起に堆積させ、これに続き、少なくとも1の第2粒子を堆積または付着させることを含む。空洞または突起は、機能化または非機能化のいずれかがなされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0120】
図面の簡単な記載
本発明は、添付の図面を参照して、以下でより詳細に論じられるであろう:
【
図1】
図1は、ナノ爆弾の合成およびかかるナノ爆弾の照射、これに続き、ナノ爆弾の第2粒子を推進し、それによって生物学的障壁に孔形成を誘導するための蒸気泡の生成を示す。
【
図2】
図2は、第2粒子の1つの層によって囲まれた第1粒子を含む、本発明による第1のタイプのナノ爆弾を示す。
【
図3】
図3は、第1および第2粒子を有する容器を含む、本発明による第2のタイプのナノ爆弾を示す。
【
図4】
図4aおよび
図4bは、パルス光レーザーによる照射の前および直後のナノ爆弾の暗視野顕微鏡画像を示す。
【
図5】
図5は、レーザー照射後のHela細胞および本発明によるナノ爆弾の共焦点画像を示す。
【
図6】
図6aおよび
図6bは、第1および第2粒子を含むナノ爆弾を使用する、および第1および第2粒子(非結合)を使用する、Hela細胞の共焦点画像を比較している。
【
図7】
図7は、金ナノ粒子による従来のフォトポレーションを使用する、および本発明によるナノ爆弾を使用する、mRNAによるトランスフェクションの効率を示す。
【
図8】
図8は、動的光散乱(DLS)および走査型電子顕微鏡法(SEM)(ナノ爆弾の場合)によって決定された、本発明による種々の第1粒子、第2粒子、およびナノ爆弾のサイズ(バー)およびゼータ電位(黒色ドット)を示す。
【
図9】
図9は、生成された蒸気ナノ気泡の数に対するレーザーフルエンスの効果を示す。
【
図10】
図10は、質量密度が増加する第2粒子を有する種々のタイプのナノ爆弾を使用したHela細胞でのFITCデキストランFD500(500kDa)のトランスフェクション効率を示す。
【
図11】
図11は、トランスフェクトされていない細胞と比較して、および従来のフォトポレーションと比較して、200nm PLGAナノ粒子を第2粒子として有するナノ爆弾を使用した本発明による方法の、Hela細胞でのmRNAによるトランスフェクションの効率(トランスフェクトされた細胞(%))、ならびに細胞生存率(%)を示す。
【
図12】
図12は、トランスフェクトされていない細胞と比較して、およびフォトポレーションと比較して、200nm PLGAナノ粒子を第2粒子として有するナノ爆弾を使用した本発明による方法を使用した、Jurkat細胞でのmRNAによるトランスフェクションの効率(トランスフェクトされた細胞(%))、ならびに細胞生存率(%)を示す。
【0121】
態様の記載
本発明は、特定の態様に関して、およびある図面を参照して記載されるであろうが、本発明は、それに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。図面は概略的なものに過ぎず、非限定的である。図面におけるいくつかの要素のサイズは、説明のために誇張されており、縮尺どおりに描かれていない場合がある。寸法および相対的な寸法は、本発明の実施に対する実際の縮小に対応していない。
【0122】
範囲の端点を参照するとき、範囲の端点の値が含まれる。
【0123】
本発明を記載するとき、使用される用語は、別様に明記されない限り、以下の定義に従って解釈される。
【0124】
記載ならびに特許請求の範囲で使用される「第1」、「第2」等の用語は、同様の要素を区別するために使用され、必ずしも時間的、空間的、ランク付けまたは任意の他の様式で順番を記載するわけではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載の本発明の態様は、本明細書に記載または図示以外の順番で操作することができることを理解されたい。
【0125】
2以上の項目を列挙するときの「および/または」という用語は、列挙された項目のいずれか1つがそれ自体で用いられ得ること、または列挙された項目の2以上の任意の組み合わせが用いられ得ることを意味する。
【0126】
「蒸気泡の生成」という用語は、蒸気泡の膨張、蒸気泡の崩壊、または蒸気泡の膨張および崩壊の組み合わせのいずれか、および気泡の膨張および崩壊の結果であり得る二次的効果(圧力波および周囲の媒体の流れなど)を含む。
【0127】
「マイクロ粒子」という用語は、1μmと100μmとの間の範囲の直径または同等の直径を有する粒子を指す。「ナノ粒子」という用語は、1nmと1000nmとの間の範囲の直径または同等の直径を有する粒子を指す。
【0128】
「蒸気泡」または「気泡」という用語は、蒸気ナノ気泡および蒸気マイクロ気泡を指す。好ましくは、「蒸気泡」または「気泡」という用語は、10nm~100μmの範囲にある直径を有する蒸気泡を指す。蒸気泡は水蒸気泡を含むが、態様はそれに限定されない。
【0129】
図1は、ナノ爆弾の合成(ステップa.)ならびにかかるナノ爆弾の照射(ステップb.)、これに続き、蒸気泡の生成(ステップc.)およびナノ爆弾の推進された第2粒子による細胞の穿孔(ステップd.)を示す。
【0130】
ナノ爆弾1は、第1粒子2(蒸気ナノ気泡の供給源として作用する)および第2粒子3(ナノ発射物として作用する)を混合することによって合成される(ステップa.)。ナノ爆弾1は、好ましくは十分な強度の短パルス光レーザー8を使用して照射される(ステップb.)。照射時に、ナノ爆弾1、とりわけナノ爆弾1の第1粒子2が加熱される。温度は、周囲の媒体の沸騰温度を超え、それによって周囲の媒体を蒸発させ、蒸気泡9を形成する。代替的にまたは加えて、温度は、第1粒子2または第1粒子2の一部の蒸発温度を超え、第1粒子2または第1粒子2の一部は蒸発して蒸気泡9を形成する。蒸気泡9は、第1粒子2の周辺で急速に膨張している。蒸気泡9の膨張および場合によっては崩壊により、第2粒子3が第1粒子から推進される(ステップc.)。推進された第2粒子は、参照番号10によって示される。推進された第2粒子10は、近くの細胞11の膜に孔形成を引き起こし得る(ステップd.)。
【0131】
図2は、本発明による第1のタイプのナノ爆弾1を示す。ナノ爆弾1は、第1粒子2として酸化鉄ナノ粒子(IONP)および第2粒子3として蛍光ポリスチレンナノスフェアを含む。IONPは、例えば500nmの平均直径を有し、単一のレーザーパルス(例えば、1J/cm
2のフルエンスおよび561nmの波長を有する7nsレーザーパルス)による照射時に、蒸気泡を生成し得る。IONPはストレプトアビジン分子5で機能化され得る。第2粒子3の詳細は
図2のボックスa.に示されている。第2粒子3は、100nmの平均直径を有し、ビオチン4で機能化された蛍光ナノスフェアを含む。第2粒子3は、例えば、
図2のボックスb.に示されるとおり、ビオチン-ストレプトアビジンリンカー部分4によって第1粒子1に付着されている。
【0132】
生体共役、複合体形成、静電的接続、物理吸着、化学的接続、例えば1以上の共有結合によるもの(クリックケミストリー)などの他の連結ストラテジーも考慮され得ることは当業者にとって明らかである。
【0133】
さらにまた、本発明によるナノ爆弾は、例えば、生体共役、複合体形成、静電的接続、物理吸着、または化学的接続などによって互いに接触または接続された1よりも多い第1粒子を含み得ることは当業者にとって明らかである。
【0134】
本発明によるナノ爆弾が、第2粒子の1よりも多い層によって囲まれた、例えば第2粒子の2または3の層によって囲まれた、第1粒子または複数の第1粒子を含み得ることも当業者にとって明らかである。
【0135】
表1は、第1粒子のタイプ(蒸気ナノ気泡(VNB)供給源として機能する)、第1粒子の表面の機能化、第2粒子のタイプ(発射物として機能する)、第2粒子の表面の機能化、および第1粒子(単数または複数)と第2粒子(単数または複数)との間の連結ストラテジーを特定することによって、本発明によるナノ爆弾のさらなる例に言及している。
【表1-1】
【表1-2】
【0136】
図3は、本発明によるナノ爆弾1’のさらなる態様を示す。ナノ爆弾1’は、マトリックス6’またはシェル7’によって一緒に保持された第1粒子2’および第2粒子3’を含む。マトリックス材料6’またはシェル7’が1のナノ爆弾または複数のナノ爆弾を含み得ることは明らかである。
【0137】
図4は、暗視野顕微鏡で視覚化されたナノ爆弾の光学的トリガーを示す。
図4aは、照射前(時間t
0)の
図1において示される水中のナノ爆弾の分散の暗視野顕微鏡画像を示し、
図4bは、単一の7nsレーザーパルス(時間t
1)による
図4aにおいて矢印によって示されるナノ爆弾の照射直後の暗視野顕微鏡画像を示す。
図4bは、ナノ爆弾の第1粒子からの蒸気泡の生成(矢印20によって示されている)と、第2粒子の推進(矢印22によって示されている)を明確に示す。第2粒子は、それによって、周囲の媒体において数十マイクロメートルにわたって推進される。
【0138】
ナノ爆弾の照射後の細胞へのナノ爆弾のナノスフェアの浸透は、共焦点画像によって実証することができた。ナノスフェアの細胞への浸透を実証するために、本発明によるナノ爆弾、とりわけ
図1に示されるナノ爆弾を、膜透過性のマーカーとしてのヨウ化プロピジウム(PI)と一緒に培養細胞に加える。
図5の共焦点画像は、レーザー照射後、ナノスフェアが細胞に順調に浸透し、同時に細胞の細胞質にPIが流入したことを示す。第2粒子40は、細胞41において部分的に見出される。
【0139】
図6aおよび
図6bは、本発明によるナノ爆弾、すなわち、第1および第2粒子を含むナノ爆弾の存在下(
図6a)および非結合の第1および第2粒子の存在下(
図6b)での、マーカーとしてのヨウ化プロピジウムと一緒の培養細胞の共焦点画像を示す。
図6aおよび
図6bに示されるとおり、PIは、本発明によるナノ爆弾を使用してほとんどの細胞に送達できたが、IONPおよびナノスフェアが両方の構成要素の混合物として細胞に加えられた、すなわち、実際のナノ爆弾を形成するために第1および第2粒子が相互に接触することのない対照実験では明らかにそうではなかった。
【0140】
図1に示されるとおり、従来のフォトポレーションを使用するGFPをコードするmRNAによる細胞のトランスフェクションを、ナノ爆弾を使用するmRNAによる細胞のトランスフェクションと比較した。
【0141】
従来のフォトポレーションを、正に荷電した70nmの金ナノ粒子(AuNP)(8.5×10
7AuNP/mL)との30分間のインキュベーションによって行った。この期間の後、AuNPを洗浄し、mRNAを含む媒体を加えた。細胞を即時に照射した。本発明によるナノ爆弾を使用するトランスフェクションのために、媒体中のナノ爆弾(6.4×10
8ナノ爆弾/mL)およびmRNAの混合物を細胞に加え、レーザー処理の前に5分間インキュベートした。どちらの方法でも、レーザー処理後に細胞を洗浄し、新しい媒体を加え、24時間後に緑色蛍光タンパク質(GFP)を確認した。各実験では、実験の24時間前に15000の細胞を96ウェルプレートに播種した。結果を
図7aおよび
図7bに示す。本発明によるナノ爆弾を使用するmRNAによるトランスフェクションの効率は、従来のフォトポレーションを使用するmRNAによる効率よりも大幅に高い:追加の細胞毒性のない、70%のトランスフェクトされた細胞対20%のトランスフェクトされた細胞。
【0142】
図8は、DLS(動的光散乱)およびSEM(走査型電子顕微鏡法(ナノ爆弾の場合))によって決定された本発明による種々の第1粒子、第2粒子、およびナノ爆弾のサイズ(バー)およびゼータ電位(黒色ドット)を示す。考慮される第1粒子、第2粒子、およびナノ爆弾は以下のとおりである:
- 0.5μmの直径を有する酸化鉄ナノ粒子(IONP);
- 200nmの直径を有するポリスチレンビーズ;
- ビオチンで機能化された200nmの直径を有するポリスチレンビーズ;
- ビオチンで機能化された200nmの直径を有する平均35のポリスチレンビーズで囲まれた0.5μmの直径を有するIONPのコアを含むナノ爆弾;
- 1μmの直径を有する酸化鉄ナノ粒子(IONP);
- ビオチンで機能化された200nmの直径を有するポリスチレンビーズで囲まれた1μmの直径を有するIONPのコアを含むナノ爆弾。
【0143】
図9は、200nmのポリスチレンビーズによって囲まれた0.5μmのIONPのコアを含むナノ爆弾を使用して生成された蒸気ナノ気泡の数に対するレーザーフルエンスの効果を示す。フルエンス閾値(90%の確率)を1.05J/cm
2であると決定した。
【0144】
図10は、0.5μmのコアまたは1μmのコアのいずれかを有する種々のナノ爆弾を使用した、Hela細胞におけるFITCデキストランFD500(500kDa)の送達効率を示す。ナノ爆弾(0.5μmのコアを有し、1μmのコアを有する)は、以下の材料のうちの1つの200nmの第2粒子(ナノ発射物)を有する:
- ポリスチレン:1.04g/cm
3の密度
- PLGA(ポリ(乳酸-コ-グリコール酸):1.37g/cm
3の密度
- TiO
2:4.30g/cm
3の密度
【0145】
PLGAは、生分解性、生体適合性、およびFDAおよびEMA承認の材料であるという利点を有する。
【0146】
図11は、トランスフェクトされていない細胞と比較した、およびフォトポレーションと比較した、本発明による方法を使用した、Hela細胞におけるmRNAによるトランスフェクションの効率(%)ならびに細胞生存率(%)を示す。ナノ爆弾を、5分のインキュベーション時間で1.3×10
8ナノ爆弾/mLを使用して、これまでに決定されたフルエンス閾値で単一のレーザーパルスで照射した。フォトポレーションには、4×10
7金ナノ粒子/mLの濃度を使用した。
【0147】
図12は、トランスフェクトされていない細胞と比較した、およびフォトポレーションと比較した、本発明による方法を使用した、Jurkat細胞におけるmRNAによるトランスフェクションの効率(%)ならびに細胞生存率(%)を示す。ナノ爆弾を、20分のインキュベーション時間で1.3×10
8ナノ爆弾/mLを使用して、これまでに決定されたフルエンス閾値で単一のレーザーパルスで照射した。フォトポレーションには、4×10
7金ナノ粒子/mLの濃度を使用した。