(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】半導体層のパターニング方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/308 20060101AFI20240611BHJP
H10K 39/10 20230101ALI20240611BHJP
【FI】
H01L21/308 C
H10K39/10
(21)【出願番号】P 2022200843
(22)【出願日】2022-12-16
【審査請求日】2022-12-16
(32)【優先日】2022-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】522328068
【氏名又は名称】天光材料科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Raynergy Tek Incorporation
【住所又は居所原語表記】2F, NO. 60, PARK AVENUE 2, HSINCHU SCIENCE PARK, HSINCHU, TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】張 怡鳴
(72)【発明者】
【氏名】蔡 佳樺
(72)【発明者】
【氏名】蘇 信遠
【審査官】原島 啓一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-256784(JP,A)
【文献】特表2011-503849(JP,A)
【文献】特開2015-038198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/308
H10K 39/10
H01L 21/304-21/3063
H01L 21/336
H01L 21/465-21/467
H01L 29/786
H05B 33/00-33/28
H05B 44/00
H05B 45/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機半導体層をパターニングする方法であって、
基板上に有機半導体材料より構成される半導体層を形成するステップと、
前記半導体層上にフォトレジスト層を形成するステップと、
フォトレジスト層をパターニングして、前記フォトレジスト層における前記半導体層の露出領域を露出させる開口部を形成するステップと、を含み、
前記半導体層の前記露出領域を溶液で溶解して前記半導体層をパターニングする方法であって、溶液が第1の有機溶媒と第2の有機溶媒とを含み、
前記第1の有機溶媒に対する前記半導体層の溶解度が1mg/mL以上であり、
前記第2の有機溶媒に対する前記半導体層の溶解度が1mg/mL以下である、
ことを特徴とする、半導体層のパターニング方法。
【請求項2】
前記半導体層が、少なくとも1つのI型分子、少なくとも1つのII型分子、少なくとも1つのIII型分子、又はそれらの組み合わせからなり、
少なくとも1つの前記I型分子は、以下の[化1]~[化11]のいずれか1つの構造を有すると共に、
前記少なくとも一つのII型分子が、以下の[化12]~[化16]のいずれか1つの構造を有すると共に、
前記少なくとも1つのIII型分子は、以下の[化17]の構造を有する(ここでnは1~500、x及びyはそれぞれモル分率、x及びyの和は1である)、
請求項1に記載の方法。
I型分子:
[化1]
[化2]
[化3]
[化4]
[化5]
[化6]
[化7]
[化8]
[化9]
[化10]
[化11]
II型分子:
[化12]
[化13]
[化14]
[化15]
[化16]
III型分子:
[化17]
【請求項3】
前記第1の有機溶媒が、クロロホルム、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、o-キシレン、トルエン、テトラリン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、又はそれらの組み合わせからなる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の有機溶媒が、n-ヘプタン、メタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、エタノール、水、又はそれらの組み合わせからなる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記半導体層が少なくとも1つのI型分子からなる場合、前記第1の有機溶媒がクロロホルム、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、o-キシレン、トルエン、テトラリン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、又はこれらの組み合わせからなり、前記第2の有機溶媒がn-ヘプタン、メタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、エタノール、水、酢酸エチル、アセトン又はこれらの組み合わせからなる請求項2の方法であって、
前記半導体層が、少なくとも1つのI型分子、及び、少なくとも1つのI型分子からなる場合、前記第1の有機溶媒が、ノボシド、メタノール、及び、1-ブタノールの組み合わせを含むことを特徴とする、方法。
【請求項6】
前記半導体層が少なくとも1つのII型分子からなる場合、前記第1の有機溶媒がクロロホルム、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、o-キシレン、トルエン、テトラリン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、又はこれらの組み合わせからなり、前記第2の有機溶媒がn-ヘプタン、メタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、エタノール、水又はこれらの組み合わせからなる、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記半導体層が少なくとも1つのIII型分子を含むとき、前記第1の有機溶媒がクロロホルム、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、o-キシレン、トルエン、テトラリン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、酢酸エチル、又はこれらの組み合わせからなり、前記第2の有機溶媒がn-ヘプタン、メタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、エタノール、水、アセトン又はこれらの組み合わせからなる、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の有機溶媒と第2の有機溶媒の体積比が、5:1~50:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記半導体層をパターニングした後、パターニングされた前記半導体層を前記第2の有機溶媒で洗浄し、前記第1の有機溶媒を除去するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記フォトレジスト層を形成する前に、前記半導体層上に保護層を形成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記保護層が、親水性ポリマー又は低表面エネルギー材料からなる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記保護層を形成する前に、前記半導体層上に
剥離層を形成するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記剥離層が低表面エネルギー材料からなる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記半導体層の露出領域を溶解する際に、溶液を前記半導体層に噴霧するステップ、溶液を前記半導体層にスピンコーティングするステップ、又は前記半導体層を溶液に浸すステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
半導体層の露出領域を溶解した後、パターン化されたフォトレジスト層を除去するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法 。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年8月4日に出願された台湾出願シリアル番号111129393の優先権を主張し、この出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、半導体層をパターニングする方法に関するものである。
関連技術の説明
【0003】
半導体電子部品の材料は、シリコン系材料から、非架橋の有機高分子、有機低分子、フラーレン誘導体、有機分子をコーティングして分散させたナノ粒子など、有機半導体材料へと徐々に発展してきている。
通常、良質の半導体電子部品は、材料の残骸から短絡や高抵抗値を発生させないことが望ましい。
そこで、上記新規有機半導体材料を所望のパターンにすることが解決すべき課題である。
【0004】
従来のパターニング方法には、ウェットエッチングやドライエッチングがある。
しかし、ウェットエッチングに用いられる酸性溶液やアルカリ性溶液では、上記新規な有機半導体材料をパターニングすることができない。
また、酸性溶液やアルカリ性溶液が有機半導体材料にダメージを与え、有機半導体材料の特性を損なわせてしまうという問題があった。
また、ドライエッチングは、真空装置やエッチングガスの使用に依存するため、コストや手間がかかるだけでなく、工程が複雑化する。
したがって、上記の問題を克服するために、有機半導体材料の新規なパターン形成方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、半導体層をパターニングする方法に関する。
本方法は、以下の操作を含む。
基板上に半導体層が形成される。
半導体層上にフォトレジスト層が形成される。
フォトレジスト層をパターニングして、フォトレジスト層における半導体層の露出領域を露出させる開口部を形成する。
半導体層の露出領域は、半導体層をパターニングするための溶液で溶解され、この溶液は、第1の有機溶媒と第2の有機溶媒とを含み、第1の有機溶媒に対する半導体層の溶解度(solubility)は1mg/mL以上であり、第2の有機溶媒に対する半導体層の溶解度は、1mg/mL以下である。
【0006】
いくつかの実施例では、半導体層は、少なくとも1つのI型分子、少なくとも1つのII型分子、少なくとも1つのIII型分子、又はそれらの組み合わせを含み、少なくとも1つのI型分子は、以下の[化1]~[化11]のいずれか一つの構造を有している。
[化1]
[化2]
[化3]
[化4]
[化5]
[化6]
[化7]
[化8]
[化9]
[化10]
[化11]
少なくとも一つのII型分子は、以下の[化12]~[化16]からなる何れかの構造を有するものである。
[化12]
[化13]
[化14]
[化15]
[化16]
及び少なくとも1つのIII型分子は、以下の[化17]:
[化17]
の構造を有する、ここでnは1~500、x及びyはそれぞれモル分率、x及びyの和は1である。
【0007】
いくつかの実施例において、第1の有機溶媒は、クロロホルム、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、o-キシレン、トルエン、テトラリン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、又はこれらの組み合わせを含む。
【0008】
いくつかの実施例において、第2の有機溶媒は、n-ヘプタン、メタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、エタノール、水、又はそれらの組み合わせを含む。
【0009】
いくつかの実施例では、半導体層が少なくとも1つのI型分子を含む場合、第1の有機溶媒は、クロロホルム、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、o-キシレン、トルエン、テトラリン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、又はそれらの組み合わせを含み、第2の有機溶媒は、n-ヘプタン、メタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、エタノール、水、酢酸エチル、アセトン、又はそれらの組み合わせを含む。
【0010】
いくつかの実施例では、半導体層が少なくとも1つのII型分子を含む場合、第1の有機溶媒は、クロロホルム、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、o-キシレン、トルエン、テトラリン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、酢酸エチル、アセトン、又はそれらの組み合わせを含み、第2の有機溶媒は、n-ヘプタン、メタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、エタノール、水、又はそれらの組み合わせを含む。
【0011】
いくつかの実施例では、半導体層が少なくとも1つのIII型分子を含む場合、第1の有機溶媒は、クロロホルム、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、o-キシレン、トルエン、テトラリン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、酢酸エチル、又はそれらの組合せを含み、第2の有機溶媒は、n-ヘプタン、メタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、エタノール、水、アセトン、又はそれらの組合せを含む。
【0012】
いくつかの実施例では、第1の有機溶媒と第2の有機溶媒との体積比は、5:1~50:1の間である。
【0013】
いくつかの実施例では、方法は、半導体層をパターニングした後、第2の有機溶媒でパターニングされた半導体層を洗浄し、第1の有機溶媒を除去するステップをさらに含む。
【0014】
いくつかの実施例において、本方法は、フォトレジスト層を形成する前に、半導体層上に保護層を形成するステップをさらに含む。
【0015】
いくつかの実施例では、保護層は、親水性ポリマー又は低表面エネルギー材料を含む
【0016】
いくつかの実施例において、本方法は、保護層を形成する前に、半導体層上に剥離層を形成するステップをさらに含む。
【0017】
いくつかの実施例において、放出層は、低表面エネルギー材料を含む。
【0018】
いくつかの実施例では、方法は、半導体層の露出領域を溶解する際に、溶液を半導体層に吹き付けるステップ、溶液を半導体層にスピニングコートするステップ、又は半導体層を溶液に浸すステップをさらに含む。
【0019】
いくつかの実施例において、本方法は、半導体層の露出領域を溶解した後、パターン化されたフォトレジスト層を除去するステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本開示の態様は、添付の図と共に読むと、以下の詳細な説明から最もよく理解される。
当業界の標準的な慣行に従って、様々な特徴は縮尺通りに描かれていないことに留意されたい。
【0021】
実際、様々な特徴の寸法は、議論を明確にするために任意に増加又は減少させることができる。
【0022】
【
図1】
図1は、本開示のいくつかの実施例による半導体層をパターニングする方法のフローチャートである。
【
図2】本開示のいくつかの実施例による半導体層をパターニングする際の中間段階の概略図である。
【
図3】本開示のいくつかの実施例による半導体層をパターニングする際の中間段階の概略図である。
【
図4】本開示のいくつかの実施例による半導体層をパターニングする際の中間段階の概略図である。
【
図5】本開示のいくつかの実施例による半導体層をパターニングする際の中間段階の概略図である。
【
図6AB】本開示のいくつかの実施例による半導体層をパターニングする際の中間段階の概略図である。
【
図6C】本開示のいくつかの実施例による半導体層をパターニングする際の中間段階の概略図である。
【
図7】本開示のいくつかの実施例による半導体層をパターニングする際の中間段階の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の開示は、本開示の異なる特徴を実施するための多くの異なる実施形態又は実施例を提供する。
構成要素及び配置の具体例は、本開示を簡略化するために以下に記載される。
もちろん、これらは単なる例であり、限定することを意図していない。
例えば、以下の説明における、第2の特徴の上又は上に第1の特徴を形成すること(又はステップ)は、第1及び第2の特徴が直接接触して形成される実施例を含んでもよく、また、第1及び第2の特徴が直接接触していなくてもよいように、第1及び第2の特徴の間に追加の特徴が形成されてもよい実施例を含んでもよい。
【0024】
さらに、本開示では、図中のある要素又は特徴と別の要素又は特徴との関係を説明するために、下及び上などの空間的相対用語が使用される場合がある。
図に描かれた向き以外に、空間的に相対的な用語は、使用又は動作中のデバイスの異なる向きを包含してもよい。
例えば、デバイスは、他の向き(例えば、90度回転した、又は他の向き)であってもよく、本開示の空間的相対用語は、それに応じて解釈され得る。
本開示では、特に断らない限り、異なる図中の同じ要素番号は、同じ又は類似の材料から同じ又は類似の方法によって形成された同じ又は類似の要素を指す。
【0025】
本開示は、半導体層をパターニングする方法に関する。
本方法は、以下の操作を含む。
基板上に半導体層が形成される。
半導体層上にフォトレジスト層が形成される。
フォトレジスト層をパターニングして、フォトレジスト層における半導体層の露出領域を露出させる開口部を形成する。
半導体層の露出領域を溶液で溶解して半導体層をパターニングし、溶液が第1の有機溶媒と第2の有機溶媒とを含み、第1の有機溶媒に対する半導体層の溶解度が1mg/mL以上であり、第2の有機溶媒に対する半導体層の溶解度が1mg/mL以下である、半導体層のパターニング方法。
本開示の半導体層のパターニング方法は、半導体層に対する溶解度が異なる第1の有機溶媒及び第2の有機溶媒を用いて、半導体層をパターニングするものである。
本開示の方法は、従来の酸又はアルカリ溶液を用いたウェットエッチングと比較して、半導体層へのダメージが少なく、半導体層の特性を維持することができる。
従来の真空装置を用いたドライエッチングと比較して、本開示の方法は、工程を簡略化し、実施しやすい。
以下、本開示の半導体層のパターニング方法について、実施例に基づいて詳細に説明する。
【0026】
図1は、本開示のいくつかの実施例による半導体層をパターニングする方法のフローチャートである。
図2~
図7は、本開示のいくつかの実施例による半導体層をパターニングする際の中間段階の模式図である。
図1の方法のフローチャートを読む場合、
図2~
図7の模式図も参照されたい。
【0027】
図1において、半導体層をパターニングする方法は、
図2に対応する動作S102を含み、基板110上に半導体層112を形成する。
いくつかの実施例では、半導体層112は、スピンコーティングによって基板110上に形成される。
いくつかの実施例では、基板110は、可撓性ポリエチレンターフタレート(PET)、可撓性ポリエチレンナフタレート(PEN)、可撓性ポリイミド(PI)、又はそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
いくつかの実施例では、基板110は、柔軟性のないガラス基板、柔軟性のないウエハ基板、又はそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
いくつかの実施例では、基板110は、電極を含む。
いくつかの実施例において、半導体層112は、例えば、共役ポリマー、共役低分子、フラーレン誘導体、非フラーレン受容体、又はそれらの組み合わせに限定されない可溶性有機半導体材料を含む。
本開示を実施するために、I型分子、II型分子、及びIII型分子が、以下の段落において例示的な例として詳細に提供される。
これらは例であり、本開示の限定を意図するものではないことに留意されたい。
本開示によって提供される半導体層をパターニングする方法を使用する限り、本開示の範囲内である。
具体的には、半導体層112は、少なくとも1つのI型分子、少なくとも1つのII型分子、少なくとも1つのIII型分子、又はそれらの組み合わせ、例えば、1つのI型分子と1つのII型分子との組み合わせ、1つのII型分子と1つのIII型分子との組み合わせ、1つのI型分子と1つのIII型分子との組み合わせ、2つのI型分子、2つのII型分子、2つのIII型分子等の組み合わせ、等が含まれていても良い。
I型分子、II型分子、及びIII型分子は、溶解度に基づいて分割される(詳細は後述する)。
いくつかの実施例において、I型分子、II型分子、及びIII型分子は、優れた光電変換効率を有するなどの感光性を有し、それにより、半導体電子部品における新規な材料となる。
しかし、得られるパターニング方法(例えば、酸やアルカリ溶液を用いたウェットエッチングや真空環境下でのドライエッチング)に制約され、これらの材料のパターニングや経済的コストへの対応が困難であった。
【0028】
次に、I型分子について詳細に説明する。
I型分子は、下記[化1]~[化11]のいずれか1つの構造を有する。
[化1]
[化2]
[化3]
[化4]
[化5]
[化6]
[化7]
[化8]
[化9]
[化10]
[化11]
ここでnは1以上500以下、x及びyはそれぞれモル分率、x及びyの和は1である。
具体的には、[化1]はポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)(P3HT)、[化2]はポリ({4,8-ビス[(2-エチルヘキシル)オキシ]ベンゾ[1,2-b:4,5-b']ジチオフェン-2,6-ジイル}{3-フルオロ-2-[(2-エチルヘキシル)カルボニル]チエノ[3,4-b]チオフェンジイル})(PTB7)、[化3]はポリ〔[4,8-ビス[5-(2-エチルヘキシル)-4-フルオロ-2-チエニル]ベンゾ[1,2-b.4,5-b']dithiophene-2,6-diyl]-2,5-thiophenediyl[5,7-bis(2-ethylhexyl)-4,8-dioxo-4H,8H-benzo[1,2-c:4,5-c']ジチオフェン-1,3-ジイル]-2,5-チオフェンジイル](PM6)、[化4]はポリ[[4,8-ビス[5-(2-エチルヘキシル)-2-チエニル]ベンゾ[1,2-b.4,5-b']dithiophene-2,6-diyl]-2,5-thiophenediyl[5,7-bis(2-ethylhexyl)-4,8-dioxo-4H,8H-benzo[1,2-c:4,5-c']ジチオフェン-1,3-ジイル](PBDB-T)、[化5]はポリ{[N,N'-ビス(2-オクチルドデシル)-ナフタレン-1,4,5,8-ビス(ジカルボキシイミド)-2,6-ジイル]-alt-5,5'-(2,2'-ビチオフェン)}(N2200)、[化6]は、ポリ([2,6'-4,8-ジ(5-エチルヘキシルチエニル)ベンゾ[1,2-b;3,3-b]ジチオフェン]{3-フルオロ-2[(2-エチルヘキシル)カルボニル]チエノ[3,4-b]チオフェンジイル})(PTB7-Th)、[化7]はポリ[12,13-ビス(2-デシルテトラデシル)-12,13-ジヒドロ-3,9-ジウンデシルビシチエノ[2'', 3'':4',5']チエノ[2',3':4,5]ピロロ[3,2-e:2',3'-g][2,1,3]ベンゾチアジアゾール-2,10-ジイル]メチルジイン[1-(ジシアノメチレン)-1,3-ジヒドロ-3-オキソ-2H-インデニル-2-イリデン]-2,5-チオフェンジイル [1-( ジシアノメチレン)-1.3-ジヒドロ-3-オキソ-2H-インデニル-2-イリデン]メチルジイン](PJ1)、[化8]はポリ{2,2'-((2Z,2'Z)-(4,4,9,9-テトラヘキサデシル-ジヒドロ-s-インダセノ[1,2-b.5,6-b']ジチオフェン-2,7-ジイル)ビス(メタニリデン))ビス(3-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-2,1-ジリデン)ジマルノニトリル-5,5'-ジイル-アルチオフェン-2.5-ジイル}(PZ1)、[化9]はポリ[(5,6-ジフルオロ-2-オクチル-2H-ベンゾトリアゾール-4,7-ジイル)-2,5-チオフェンジイル[4,8-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)-2-チエニル]ベンゾ[1,2-b:4,5-b']ジチオフェン-2,6-ジイル]-2,5-チオフェンジイル](J51)、[化10]はポリ[(2,6-(4,8-ビス(5-(2-エチルヘキシル-3-フルオロ)チオフェン-2-イル)-ベンゾ[1,2-b:4,5-b']ジチオフェン))-alt-5,5'-(5,8-ビス(4-(2-ブチロクチル)チオフェン-2-イル)ジチエノ[3,2'.3,4;2'',3'':5,6]ベンゾ[1,2-c][1,2,5]チアジアゾール)](D18)、[化11]はポリ(7-(4-ドデシルチオフェン-2-イル)-4-(チオフェン-2-イル)-5-クロロ-ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール)-アルトラ ン-4,8-ビス(5-(2-ヘキシルドシル)チオフェン-2-イル)-ベンゾチオフェン(RP1)である。
【0029】
次に、II型分子について詳細に説明する。
II型分子は、以下の[化12]~[化16]のいずれか1つの構造を有する。
[化12]
[化13]
[化14]
[化15]
[化16]
具体的には、[化12]は[6,6]-フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM)、[化13]は2,2'-((2Z,2'Z)-(12,13-ビス(2-エチルヘキシル)-3,9-ジウンデシル-12,13-ジヒドロ-[1,2,5]チアジアゾロ[3,4-e]チエノ[2],3].4',5']thieno[2',3':4,5]pyrrolo[3,2-g]thieno[2',3':4,5]チエノ[3,2-b]インドール-2,10-ジイル)ビス(メタニルリデン))ビス(5,6-ジフルオロ-3-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-2,1-ジイルリデン)ジマルノニトリル(Y6)、[化14]は 2,2'-[[6,6,12,12-Tetrakis(4-hexylphenyl)-6,12-dihydrodithieno [2,3-d.2',3'-d']-s-indaceno[1,2-b:5,6-b']ジチオフェン-2,8-ジイル]ビス[メチルジイン(5,6-ジフルオロ-3-オキソ-1H-インデン-2,1(3H)-ジイルイデン)]ビス[プロパンジニトリル](IT-4F)、[化15]は2,2'-[[4,4,9,9-テトラキス(4-ヘキシルフェニル)-4,9-ジヒドロ-S-インダセノ][1,2-b.5,6-b']dithiophene-2,7-diyl]bis[[4-[(2-ethylhexyl)oxy]-5,2-thiophenediyl]-(Z)-methylidyne(3-oxo-1H-indene-2,1(3H)-ジイリデン)]ビス-プロパンジニトリル,2,2'-((2Z,2'Z)-(5,5'-ビス(4,4,9,9-テトラキス(4-ヘキシルフェニル)-4,9-ジヒドロ-s-インダセノ[1,2-b.5,6-b']ジチオフェン-2,7-ジイル)ビス(4-((2-エチルヘキシル)オキシ)チオフェン-5,2-ジイル)ビス(メタニリデン))ビス-(3-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-2.1-ジイリデン))ジマルノニトリル(IEICO)、[化16]は2,2'-[6,6,12,12-テトラキス(4-ヘキシルフェニル)-6,12-ジヒドロチエノ[2',3':4',5']チエノ[3',2':4,5]シクロペンタ[1,2-b]チエノ[2'', 3'':4'', 5'']thieno[2, 3'': 3',4']cyclopenta[1',2':4,5]チエノ[2,3-d]チオフェン-2,8-ジイル]ビス[メチルジイン(フルオロ-3-オキソ-1H-インデン-2,1(3H)-ジイルジエン)]ビス[プロパンジニトリル](FOIC)。
【0030】
次に、III型分子について詳しく説明する。
III型分子は、下記[化17]の構造を有する。
[化17]
[化17]において、nは1以上500以下である。
具体的には、[化17]は、ポリ(5,6-ジシアノ-2,1,3-ベンゾチアジアゾール-アルト-インダセノジチオフェン)(DCNBT-IDT)である。
【0031】
引き続き、
図1の半導体層のパターニング方法を参照する。
図3A~
図3Bに対応する動作S102の後、動作S104に進み、半導体層112上にフォトレジスト層114を形成する。
フォトレジスト層114は、その後の工程で半導体層112のパターンを規定するために使用される。
いくつかの実施例では、フォトレジスト層114を形成する前に、本開示の半導体層をパターニングする方法は、半導体層112上に保護層113を形成するステップをさらに含む。
保護層113は、半導体層112とフォトレジスト層114との間にあり、半導体層112と化学反応を起こさないので、半導体層112を保護し、プロセスを通して半導体層112の損傷を低減することができる。
例えば、フォトレジスト層114の材料が半導体層112の材料と化学反応を起こす場合、保護層113は、半導体層112を保護することができる。
さらに、本開示の保護層113は、保護層113がフォトレジスト層114に影響を与えないように、フォトレジスト層114と共にパターン化されて、後続のプロセスで半導体層112のパターンを規定することができる。
いくつかの実施例では、保護層113は、親水性ポリマー又は低表面エネルギー材料を含む。
例えば、親水性ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸、又はそれらの組み合わせを含む。
例えば、低表面エネルギー材料は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオリド、又はそれらの組み合わせなどの、フルオロ含有ポリマー又はオリゴマーを含む。
親水性ポリマー及び低表面エネルギー材料は、半導体層112と化学反応を起こさず、フォトレジスト層114と共にパターン化できる材料であれば、上記の材料に限定されず、本開示の範囲に含まれることを意図している。
いくつかの実施例では、保護層113を形成する前に、本開示の半導体層をパターニングする方法は、半導体層112上に剥離層(図示せず)を形成するステップをさらに含む。
剥離層は、半導体層112と保護層113との間にあり、半導体層112と化学反応を起こさない。
また、本開示の
剥離層は、フォトレジスト層114と一緒にパターニングすることができるので、
剥離層が、後の工程で半導体層112のパターンを規定するフォトレジスト層114に影響を与えることがない。
さらに、本開示の剥離層は、フォトレジスト層114及び保護層113を半導体層112からより容易に剥離させる。
いくつかの実施例において、
剥離層は、低表面エネルギー材料、例えば、フルオロ含有ポリマー又はオリゴマー、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオロライド、又はそれらの組合せを含む。
なお、低表面エネルギー材料は、半導体層112と化学反応を起こさず、フォトレジスト層114及び保護層113を半導体層112からより容易に剥離させることができる材料であれば、上記の材料に限定されるものではなく、本開示の範囲に含まれることが意図されている。
【0032】
引き続き、
図1の半導体層のパターニング方法を参照する。
図4A~
図5Bに対応する動作S104の後に動作S106に進み、フォトレジスト層114に半導体層112の露出領域112Bを露出させる開口部114Oを形成するためのパターニングを行う。
具体的には、
図4A~
図4Bに示すようなマスク116が、フォトレジスト層114を覆う。
マスク116は、フォトレジスト層114の一部114Aを露出させる開口パターン116Oを有する。
マスク116に覆われた未露光部分は、フォトレジスト層114の残りの部分114Bである。
その後、光源118(例えば、紫外光)がマスク116に入射する。
フォトレジスト層114の部分114Aは、光源118の照射により硬化するため、半導体層112上に残存する。
しかし、フォトレジスト層114の残りの部分114Bは、半導体層112から除去されるようにマスク116に覆われ、光源118に露光されないため、硬化しない。
その結果、
図5A~
図5Bに示すように、フォトレジスト層114の開口部114Oが形成される。
図5A~
図5Bにおいて、パターン化されたフォトレジスト層114は、半導体層112における露出領域112B及び未露出領域112Aを規定し、フォトレジスト層114の開口部114Oは半導体層112の露出領域112Bを露出させ、フォトレジスト層114の部分114Aは半導体層112の未露出領域112Aを覆っている。
なお、上記の動作は、保護層113(
図4B及び
図5Bに示す)及び剥離層(図示せず)をさらに含むことができる。
光源118(例えば、紫外線)のマスク116への入射により、フォトレジスト層114の部分114Aの下にある保護層113及び剥離層は硬化して半導体層112上に残存する。
フォトレジスト層114の未硬化の残存部分114Bを除去する際には、フォトレジスト層114の残存部分114Bとともに未硬化の保護層113及び剥離層も除去される。
すなわち、保護層113及び剥離層は、フォトレジスト層114とともにパターン化される。
しかしながら、いくつかの実施例では、フォトレジスト層114、保護層113、及び剥離層のパターン工程は、独立して実施することができる。
例えば、フォトレジスト層114を先にパターン化し、後に保護層113及び剥離層を順次パターン化してもよい。
【0033】
引き続き、
図1の半導体層のパターニング方法を参照する。
図6A~
図6Cに対応する動作S106の後に動作S108に進み、溶液120を用いて半導体層112の露出領域112Bを溶解し、半導体層112をパターニングする。
溶液120は、第1有機溶媒(図示せず)及び第2有機溶媒(図示せず)を含む。
半導体層112の第1有機溶媒に対する溶解度は、1mg/mL以上、例えば、1.01mg/mL以上100mg/mL以下(例えば、1.01mg/mL、2mg/mL、4.99mg/mL、5mg/mL、10mg/mL、50mg/mL、100mg/mL、など)である。
半導体層112の第2有機溶媒に対する溶解度は、1mg/mL以下、例えば、0mg/mL~1mg/mL(例えば、0mg/mL、0.01mg/mL、0.1mg/mL、1mg/mL、等)である。
第1有機溶媒及び第2有機溶媒を含む溶液120は、フォトレジスト層114の部分114Aによって覆われていない半導体層112の露出領域112Bを溶解して、半導体層112に開口部112Oを形成する。
逆に、フォトレジスト層114の部分114Aによって覆われた半導体層112の未露光領域112Aは溶解しない。
いくつかの実施例では、溶液120において、第1有機溶媒は、第2有機溶媒よりも多い。
いくつかの実施例において、第1の有機溶媒と第2の有機溶媒との体積比は、5:1~50:1の間であり、例えば、5:1、10:1、20:1、50:1などである。
上記領域における第1有機溶媒と第2有機溶媒との体積比は、半導体層112を溶解するだけでなく、半導体層112を最適にパターン化することができる。
例えば、半導体層112が過剰に溶解されず(例えば、半導体層112の未露光領域112Aの側壁が溶解される)、溶解不足がない(例えば、半導体層112の露出領域112Bの一部が溶解されない)ようにすることができる。
いくつかの実施例では、詳細動作S108は、
図6Aに示すように、溶液120を半導体層112に噴霧して露出領域112Bを溶解させるステップを含む。
いくつかの実施例では、詳細な動作S108は、
図6Bに示すように、露出領域112Bを溶解するために溶液120を半導体層112にスピンコーティングするステップを含む。
いくつかの実施例において、詳細な動作S108は、
図6Cに示すように、半導体層112を溶液120に浸すステップを含む。
溶液120から半導体層112を除去した後、半導体層112の露出領域112Bは溶解する。
なお、
図6A~
図6Cでは、保護層及び剥離層は描かれていない。
【0034】
第1の有機溶媒、第2の有機溶媒、及び第1の有機溶媒と第2の有機溶媒に対する半導体層112の溶解度の詳細については、表1に記載されている。
いくつかの実施例において、第1有機溶媒は、クロロホルム(CF)、クロロベンゼン(CB)、o-ジクロロベンゼン(DCB)、1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)、o-キシレン、トルエン、テトラリン、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(DCM)又はこれらの組合せを含む。
半導体層112の第1有機溶媒に対する溶解度は、1mg/mL以上、例えば、1.01mg/mL~100mg/mL(例えば、1.01mg/mL、2mg/mL、4.99mg/mL、5mg/mL、10mg/mL、50mg/mL、100mg/mL、等々)程度とされる。
なお、I型分子([化1]~[化11])、II型分子([化12]~[化16])、III型分子([化17])を含む半導体層112の溶解度は、表1においてO及び△で示され、Oは5mg/mL以上、例えば5mg/mL~100mg/mL(例えば、,5mg/mL、10mg/mL、50mg/mL、100mg/mLなど)、△は1.01mg/mL~4.99mg/mL(例えば、1.01mg/mL、2mg/mL、4.99mg/mLなど)までの間の溶解度を表わす。
いくつかの実施例では、第2の有機溶媒は、n-ヘプタン、メタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、エタノール、水、又はそれらの組み合わせを含む。
半導体層112の第2有機溶媒への溶解度は、1mg/mL以下、例えば、0mg/mL以上1mg/mL以下(例えば、0mg/mL、0.01mg/mL、0.1mg/mL、1mg/mLなど)であり、表1において、I型分子([化1]~[化11])、II型分子([化12]~[化16])、III型分子([化17])を含む半導体層112についてXとして示したものである。
上記の第1有機溶媒及び第2有機溶媒を全て用いることで、本開示の半導体層のパターニング方法を実施することができる。
例えば、半導体層112が[化1]及び[化12]を含む場合(すなわち、P3HT及びPCBM)、第1有機溶媒はo-キシレン、第2有機溶媒はn-ヘプタンとすることができる。
【0035】
ただし、表1において、酢酸エチル及びアセトンは、I型分子の第2有機溶媒であり、溶解度が1mg/mL以下であるため、0mg/mL から1mg/mL(0mg/mL, 0.01mg/mL, 0.1mg/mL, 1mg/mL, etc.)までの溶解度を表す○で表記されていることに注意されたい。
酢酸エチル及びアセトンは、II型分子に対する最初の有機溶媒であり、溶解度が1mg/mLより大きく、溶解度が1.01mg/mL から 4.99mg/mL の間を示す△で表される(例えば、1.01mg/mL, 2mg/mL, 4.99mg/mL等)。
酢酸エチルはIII型分子の第1の有機溶媒であり、溶解度は1mg/mLより大きく、△で表すと1.01mg/mL~4.99mg/mL(e.g. , 1.01mg/mL, 2mg/mL, 4.99mg/mL, and so on)の溶解度であることを示す。
しかし、アセトンはIII型分子の第2の有機溶媒であり、溶解度は1mg/mL以下であり、0mg/mL から1mg/mL の間の溶解度を示すためにXで表される(例えば、0mg/mL, 0.01mg/mL, 0.1mg/mL, 1mg/mL等)。
すなわち、酢酸エチル及びアセトンは、半導体層112の全ての組み合わせに適用できるわけではない。
例えば、半導体層112が[化1]及び[化12]を含む場合(すなわち、P3HT及びPCBM)、[化12]の酢酸エチルに対する溶解度は1mg/mL以上であるが、[化1]の酢酸エチルに対する溶解度は1mg/mL以下なので、この場合、酢酸エチルは第1有機溶剤でも第2有機溶剤でもない。
なお、アセトンについても同様の理由であり、その説明は繰り返さない。
以上の理由により、半導体層112が少なくとも1つのI型分子を含む場合、第1有機溶媒は、クロロホルム、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、o-キシレン、トルエン、テトラリン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、又はこれらの組み合わせを含み、第2有機溶媒は、n-ヘプタン、メタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、エタノール、水、酢酸エチル、アセトン又はこれらの組み合わせである。
半導体層112が少なくとも1つのII型分子を含む場合、第1の有機溶媒は、クロロホルム、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、o-キシレン、トルエン、テトラリン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、酢酸エチル、アセトン、又はそれらの組み合わせを含み、第2の有機溶媒は、n-ヘプタン、メタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、エタノール、水、又はそれらの組み合わせを含む。
半導体層112が少なくとも1つのIII型分子を含む場合、第1の有機溶媒は、クロロホルム、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、o-キシレン、トルエン、テトラリン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、酢酸エチル、又はそれらの組み合わせを含み、第2の有機溶媒は、n-ヘプタン、メタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、エタノール、水、アセトン、又はそれらの組み合わせを含む。
【0036】
【0037】
【0038】
図1の動作S108の後、フォトレジスト層114の部分114Aを除去し、その結 果、
図7に示すような開口部112Oを有するパターン化半導体層112となる。
保護層113及び剥離層を含む実施例では、フォトレジスト層114の部分114Aの下にある保護層113及び剥離層は、フォトレジスト層114の部分114Aと共に除去される。
いくつかの実施例において、半導体層112をパターニングした後、第2有機溶媒に対する半導体層112の溶解度が低いため、本開示の半導体層のパターニング方法は、パターニングされた半導体層112を第2有機溶媒で洗浄し、第1有機溶媒を除去するステップを更に含む。
これにより、半導体層112は、溶解度が高いため、第1有機溶媒の残留物によってさらに溶解されることを回避することができる。
さらに、第2有機溶媒で洗浄した後の半導体層112は、より明確なパターン境界を有することができる。
本開示の半導体層のパターニング方法は、多くの応用が可能である。
例えば、電極を含む基板110の実施例において、
図7に示すような開口部112Oに、その後の工程で導電材料を充填し、基板110内の電極と半導体層112に形成された電極とを接続することができる。
本実施例では、半導体層112は、光ダイオードに使用される。
また、別の実施例では、
図7に示す開口部112Oに、後工程で絶縁材料を充填してパッケージ層とする。
【0039】
以下の実験1及び実験2は、本開示の特徴を具体的に説明するものである。
なお、以下の実施例では、材料とその量や比率、工程の内容などは、本開示の範囲を超えない範囲で適宜変更可能である。
したがって、以下に説明する実施例は、本開示を限定することを意図するものではない。
【0040】
実験1では、半導体層112は、[化1]を有するI型分子と[化12]を有するII型分子(すなわち、P3HTとPCBM)とを含んでいた。
半導体層112の厚さは、150nmであった。
溶液120において、第1の有機溶媒はo-キシレンを含み、第2の有機溶媒はn-ヘプタンを含み、第1の有機溶媒と第2の有機溶媒の体積比はそれぞれ10:1(実施例1)、5:1(実施例2)、2:1(比較例1)、1:1(比較例2)、0:1(比較例3)であった。
なお、半導体層112を溶液120に浸漬して半導体層112をパターニングする操作において、実施例1、実施例2、実施例1、比較例2、及び比較例3における浸漬時間は同じ、例えば60秒であり、温度も同じ、例えば20度であった。
実験結果を表2に示すが、Oは過度の溶解がない、又は溶解が十分であることを示し、Xは過度の溶解がある、又は溶解が不十分であることを示している。
【0041】
【0042】
実験2では、半導体層112は、[化1]を有するI型分子と[化12]を有するII型分子(すなわち、P3HTとPCBM)とを含んでいた。
半導体層112の厚さは、150nmであった。
溶液120において、第1の有機溶媒はo-キシレンを含み、第2の有機溶媒は2-プロパノールを含み、第1の有機溶媒と第2の有機溶媒の体積比はそれぞれ10:1(実施例3)、5:1(実施例4)、2:1(比較例4)、1:1(比較例5)及び0:1(比較例6)であった。
なお、半導体層112を溶液120に浸漬して半導体層112をパターン化する操作において、実施例3、実施例4、比較例4、比較例5、比較例6における浸漬時間は同じ、例えば60秒であり、温度は同じ、例えば20℃であった。
実験結果を表3に示すが、Oは過度の溶解がない、又は溶解が十分であることを示し、Xは過度の溶解がある、又は溶解が不十分であることを示している。
実験2と実験1との違いは、[化1]及び[化12]を含む半導体層112は、2-プロパノールに対する溶解性が、n-ヘプタンに対する溶解性に比べて弱いという点である。
そのため、溶解後の実施例3、実施例4、比較例4、比較例5、比較例6は、実施例1、実施例2、比較例1、比較例2、比較例3と比較して、それぞれ半導体層112の残留量が多くなっていることが分かる。
すなわち、異なる第1有機溶媒又は第2有機溶媒によって、半導体層112の溶解速度を調整することができる。
【0043】
【0044】
本開示の半導体層のパターニング方法は、半導体層に対する溶解度が異なる第1の有機溶媒と第2の有機溶媒とを用いて、半導体層をパターニングするものであった。
従来の酸又はアルカリ溶液を用いたウェットエッチングと比較して、半導体層へのダメージが少なく、半導体層の特性を維持することができる。
従来の真空装置を用いたドライエッチングに比べ、工程が簡略化され、実施しやすい。
【0045】
当業者にとって、本開示は、本開示の精神及び範囲から逸脱しない限り、修正及び変更され得る。
修正及び変更が、添付の特許請求の範囲の範囲及び精神に含まれる場合、それらは本開示によってカバーされる。