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  • 特許-インソールの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】インソールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A43B 17/14 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
A43B17/14
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022578022
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 JP2021027466
(87)【国際公開番号】W WO2022162973
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】P 2021012627
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521398356
【氏名又は名称】株式会社レーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100151208
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】中川 智
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3011472(JP,U)
【文献】実開昭55-158902(JP,U)
【文献】特開2014-108567(JP,A)
【文献】特開2015-226484(JP,A)
【文献】特開昭64-020804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の温度で融解する熱可塑性樹脂を用い、所定の厚みを有する足形形状の足形樹脂部を形成する第1の工程と、
前記足形樹脂部をフィルムで覆うようにシュリンク加工を行った後に、前記フィルムで覆われた前記足形樹脂部をナイロンポリ袋で真空パックする第2の工程と
前記第1の工程及び前記第2の工程を経て製造されたインソールを所定の温度で加熱する第3の工程と、
前記第3の工程により融解した前記足形樹脂部を有する前記インソールをユーザの靴内部に装着し、前記ユーザが靴を履いた状態で所定の時間経過させることにより前記足形樹脂部を硬化させる第4の工程と、
前記第3の工程及び前記第4の工程を経た後に前記フィルムを剥離し、前記足形樹脂部のうち前記ユーザの足裏に接触する面に柔軟性シート部を装着する第5の工程を備え、
前記熱可塑性樹脂は、60~70℃で融解するポリカプロラクトン樹脂を含み、
前記フィルムは、ポリエチレン製フィルムを含み、
前記ナイロンポリ袋は、少なくともナイロンとポリエチレンの2層を含むことを特徴とするインソールの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のインソールの製造方法において、
前記所定の厚みは、2mm~3mmに設定されていることを特徴とするインソールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インソールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サイズ調整や履きやすくする目的で用いられ、硬い靴の中底の上に設置される靴の中敷きであるインソールが開発されており、スポーツや日常生活まで幅広い分野の靴に活用されている。
【0003】
本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、型枠の底に厚さ0 .5mm 程度の台紙を敷き、前記台紙の上に厚さ7mm程度にシリコーン樹脂を塗布し、前記シリコーン樹脂の表面をラップフィルムで覆った中敷き材の上に靴用中敷きの使用者が素足で立ち、力を加えて足裏の型を取り、前記中敷き材のシリコーン樹脂が固まった後に靴の形状に合わせて足裏型の形成された中敷き材をハサミで切り取ることで完成することを特徴とした靴用中敷きが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、従来例のようにただ現状の足に対してその足型をいかに正確に取るかを重視するのではなく、現状の足をまず正常な足に戻しておき、正常になった足に付いてその型を取るようにした点に特徴を有する足型の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-198921号公報
【文献】特開2013-212335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、様々なインソールが開発されているが、これらのインソールは平均的な足形に沿った形状であるため、購入者にフィットする形とは限らない。また、特許文献1,2のように足形に正確にフィットするような中敷きなども開発されているが、大がかりであり、時間や費用も掛かるという課題がある。
【0007】
本発明の目的は、より簡単に購入者の足にフィットするインソールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るインソールの製造方法は、所定の温度で融解する熱可塑性樹脂を用い、所定の厚みを有する足形形状の足形樹脂部を形成する第1の工程と、前記足形樹脂部をフィルムで覆うようにシュリンク加工を行った後に、前記フィルムで覆われた前記足形樹脂部をナイロンポリ袋で真空パックする第2の工程と、前記第1の工程及び前記第2の工程を経て製造されたインソールを所定の温度で加熱する第3の工程と、前記第3の工程により融解した前記足形樹脂部を有する前記インソールをユーザの靴内部に装着し、前記ユーザが靴を履いた状態で所定の時間経過させることにより前記足形樹脂部を硬化させる第4の工程と、前記第3の工程及び前記第4の工程を経た後に前記フィルムを剥離し、前記足形樹脂部のうち前記ユーザの足裏に接触する面に柔軟性シート部を装着する第5の工程を備え、前記熱可塑性樹脂は、60~70℃で融解するポリカプロラクトン樹脂を含み、前記フィルムは、ポリエチレン製フィルムを含み、前記ナイロンポリ袋は、少なくともナイロンとポリエチレンの2層を含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るインソールの製造方法において、前記所定の厚みは、2mm~3mmに設定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、購入者の足にフィットするインソールを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る実施形態であるインソールの製造方法によって製造されたインソールを示す図である。
図2】本発明に係る実施形態であるインソールの製造方法によって、ユーザにフィットするインソールを形成する様子を示す図である。
図3】本発明に係る実施形態であるインソールの製造方法において、インソールを製造する手順を示すフローチャートである。
図4】本発明に係る実施形態であるインソールの製造方法において、インソールを形成する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0017】
図1は、本発明に係る実施形態であるインソールの製造方法によって製造されたインソール10,11を示す図である。
【0018】
図2は、インソール10を用い、ユーザの足3にフィットするインソール11を形成する様子を示す図である。
【0019】
図3は、本発明に係る実施形態であるインソールの製造方法において、インソール10を製造する手順を示すフローチャートである。図4は、本発明に係る実施形態であるインソールの製造方法において、インソール11を形成する手順を示すフローチャートである。
【0020】
インソール10は、ユーザの足3の形状にフィットさせることを可能とする中敷きである。インソール10は、足形樹脂部12と、フィルム部14と、真空パック部15とを備えている。
【0021】
足形樹脂部12は、所定の温度で融解する熱可塑性樹脂を用い、所定の厚みを有する足形形状の部材である。熱可塑性樹脂は、60~70℃で融解するポリカプロラクトン樹脂を用いることが好ましいが、もちろん、その他の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0022】
足形樹脂部12は、上記のようにポリカプロラクトン樹脂を含んで構成することが好適であるが、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリウレタン(PUR)、テフロン(登録商標)-(ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂、アクリル樹脂(PMMA)などを用いることも可能である。
【0023】
足形樹脂部12は、2mm~3mmの厚みに設定することが好適であり、より好ましくは、2.5mmに設定されることである。足形樹脂部12は、射出成型により形成される。
【0024】
フィルム部14は、足形樹脂部12をフィルムで覆うようにシュリンク加工されることにより形成される。フィルム部14は、ポリエチレン(PE)のフィルムで構成されており、足形樹脂部12の全面を覆い、空気を除去しつつ収縮させて足形樹脂部12を密封する。
【0025】
足形樹脂部12を覆うのは、上記のようにポリエチレン(PE)製のフィルムを用いて構成されることが好適であるが、その他のフィルム素材を用いてもよく、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)を用いることも可能である。
【0026】
真空パック部15は、ナイロンポリ袋が真空パックされることにより形成される。ナイロンポリ袋は、湯煎した際に収縮しないような材料で構成されることが好ましく、ここでは、外層にナイロン(NY)が配置され、内層にポリエチレン(PE)が配置された二層で形成されているものとして説明するが、三層以上に積層されていてもよい。例えば、上記二層に加え、直鎖上低密度ポリエチレン(Linear Low Density Polyethylene)が積層されてもよい。なお、真空パック部15は、湯煎した後に開封しやすいように、切り欠きが形成されていることが好ましい。また、真空パック部15で足形樹脂部12を覆うことで埃等から保護することができ、保管にも便利である。なお、上記では、二層のナイロンポリ袋を構成する内層にはポリエチレン(PE)が配置されるものとして説明したが、ポリプロピレン(PP)であってもよい。
【0027】
続いて、本発明に係る実施形態のインソールの製造方法を用いて、インソール10を製造する手順を説明する。最初に、足形樹脂部12を形成する(S1)。具体的には、ポリカプロラクトン樹脂を他の材料などと混ぜ合わせ後、射出成型にて2.5mmの厚みを有する足形形状の足形樹脂部12を成型する。
【0028】
次に、足形樹脂部12をフィルムで密封するようにシュリンク加工を行った後に、前記フィルムで覆われた前記足形樹脂部をナイロンポリ袋で真空パックする(S2)。具体的には、足形樹脂部12の全面がポリエチレン製のフィルムで覆われるようにシュリンク加工を行う。ポリエチレン製のフィルムを用いることで、足形樹脂部12にへばりつくことなく密封させることができる。また、S2の工程を得ることで、図1(a)に示されるようにフィルムで覆われた足形樹脂部12がナイロンポリ袋で構成される真空パック部15により被覆される。
【0029】
S1の工程とS2の工程を経て、図1(a)に示されるように、足形樹脂部12とフィルム部14とで構成されるインソール10が完成する。
【0030】
次いで、このインソール10がユーザなどに渡された後、ユーザが本発明に係る実施形態のインソールの製造方法を用いて、インソール11を形成する。以下では、インソール11を形成する手順について説明する。
【0031】
最初に、インソール10を加熱する(S3)。具体的には、足形樹脂部12が融解するとされる60~70℃以上の温度に温められたお湯が収容された容器等にインソール10を入れ、湯煎によりインソール10を融解する。このように温められたインソール10を図2(a)に示されるように、ユーザの靴2の内部の中底に敷く。ここで、インソール10の足形樹脂部12は融解して液体化しているが、フィルム部14が足形に形成されているため変形は少なく、足形を保つことができる。S3の工程でインソール10を加熱した後、真空パック部15の切り欠きなどを用いて、フィルムで覆われた足形樹脂部12を取り出す。なお、真空パック部15は、ナイロンポリ袋で構成されており、耐熱性に優れており、収縮することもなく、フィルムで覆われた足形樹脂部12の形を保つことが出来る。
【0032】
次に、足形樹脂部12を硬化させる(S4)。具体的には、融解した足形樹脂部12を含むインソール10をユーザの靴2の内部の中底に設置した後に、図2(b)に示されるように、ユーザの足3で靴2を履く。
【0033】
図2(b)で示されるように、ユーザが靴2を履き、起立した状態で立ち、ユーザの体重がかかることで、インソール10に圧力が加えられる。ここで、足形樹脂部12は液状化しているため、足形樹脂部12の表面側はユーザの足3の形に沿って変形し、足形樹脂部12の裏面側は靴2の中底の形状に沿って変形する。また、フィルム部14は、足形に形成されているが、足形樹脂部12の変形に応じて形が変わる。
【0034】
このような状態で、10~15分経過させることにより、足形樹脂部12が硬化し、ユーザの足3にフィットしたインソール11が完成する。なお、上記では、起立した状態で足形樹脂部12の形状を形成するものとして説明したが、靴2の使用用途の姿勢に応じて圧力をかけてもよい。なお、靴2がタイトな靴ではなく、ルーズな靴(例えば、革靴)などの場合には、液体化したインソール10の底面側の形状を形成するためのスポンジ材などを設置した後に、インソール10を敷いてユーザの足3で履いて表面側を足3の形に形成してもよい。
【0035】
その後、図2(c)に示されるように、インソール11を取り出した後に、柔軟性シート部であるスポンジシート16を貼着する(S5)。具体的には、靴2から取り出されたインソール11のフィルム部14を剥離する。
【0036】
そして、足形樹脂部12のうち、ユーザの足3の裏に接触する面において、スポンジシート16を貼り付け、不要な部分を切断して形を整える。これにより、図1(b)に示されるように、ユーザの足3にフィットしたインソール11が完成する。
【0037】
次いで、スポンジシート16が貼着されたインソール11を再び靴2の中底に設置し、ユーザが靴2を履く。これにより、ユーザの足3に完全にフィットしたインソール11とすることができる。したがって、ユーザが、例えば、ランニング等の運動する場合にグリップが効いた状態で走ることができるため、より一層良いタイムを出すことが可能となるという利点がある。
【0038】
本発明の実施形態に係るインソールの製造方法によれば、インソール11の表面はユーザの足3の形に沿って成型され、また、インソール11の裏面は靴2の形に沿って成型される。すなわち、両面成型されるため、ユーザの足3と靴2の双方に最適な形状のインソール11を成型することができるという顕著な効果を奏する。
【0039】
本発明の実施形態に係るインソールの製造方法により製造されたインソール10は、60~70℃で融解する足形樹脂部12を含んで形成されているため、一般家庭などにおいいも数分間(例えば、2分~3分)、湯煎することで簡単に液体化させることができる。
【0040】
また、インソール10は、上記のように、足形形状に固体化された足形樹脂部12に対してラミネート加工されて密封するフィルム部14が覆われているため、足形樹脂部12が液状化したときでも、足形形状を保った状態とすることができる。
【0041】
そして、上述したように、湯煎により液体化した足形樹脂部12を含むインソール10をユーザの靴2の中底に配置してユーザが靴2を履く必要があるが、足形樹脂部12は60~70℃で融解させることができるため、素足で履いても火傷することなく、ユーザにフィットしたインソール11を形成することができるという利点がある。
【0042】
ユーザが靴2を履いて圧力を加えることで、足形樹脂部12の表面がユーザの足3の全体に完全にフィットする形に形成できるともに、足形樹脂部12の裏面が靴2の中底の形状に完全にフィットさせることができる。すなわち、ユーザが、その靴2を履いて運動などをするのに最適な状態にすることができるという利点がある。
【0043】
従来のインソールは、土踏まず部分及び踵部分について一般的な形状で凹凸部が形成されていていたが、本発明の実施形態に係るインソールの製造方法によれば、一般的な形ではなくユーザの土踏まず部及び踵部に完全にフィットさせることができるだけでなく、足の5本指を包み込むような形状に成型することができるため、より最適な形状を有するインソール11を形成することができる。
【0044】
また、インソール10は、足形樹脂部12を密封するフィルム部14は、ポリエチレン製のフィルムであるため、足形樹脂部12にべったりと付着することなく密封させることができるため、ユーザの足3の形に成型して硬化されたインソール11のフィルム部14を簡単に剥離することができるという利点がある。
【0045】
さらに、本発明の実施形態に係るインソールの製造方法は、ユーザの足形にフィットさせた後に、足3の裏に接触する部分に柔軟性を有するスポンジシート16が貼着されるため、履き心地を良くすることができるという効果がある。
【符号の説明】
【0046】
2 靴、3 足、10,11 インソール、12 足形樹脂部、14 フィルム部、15 真空パック部、16 スポンジシート。
図1
図2
図3
図4