(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】電子機器および電子機器の搬送方法
(51)【国際特許分類】
G06F 1/16 20060101AFI20240611BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G06F1/16 312Q
G06F1/16 312D
H05K5/03 A
(21)【出願番号】P 2023011303
(22)【出願日】2023-01-27
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100181135
【氏名又は名称】橋本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆一
【審査官】松浦 かおり
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-312481(JP,A)
【文献】特開2010-153640(JP,A)
【文献】特開2000-183544(JP,A)
【文献】特開2018-110170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/00
G06F 1/16- 1/18
G11B 33/00-33/08
G11B 33/12-33/14
H05K 5/00- 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の機能を備えた機器を収容し、多面体状をなす筐体と、
該筐体の少なくとも一の面の少なくとも一部を覆って着脱可能に取り付けられるカバーと、
該カバーに形成され、利用者の複数本の指が挿入される開口部と、
該開口部と連なって前記一の面に形成された把持開口と、
前記開口部と交差する方向へ延びて前記把持開口から前記筐体の内部に突出するように前記カバーの前記開口部の周縁部に支持され、該支持された個所を基端として
上方へ弾性可能な取っ手と、
前記把持開口の内側に、前記筐体に連結して設けられて、弾性変形した前記取っ手の一部と接触可能な支持部材と、
を有し、
前記取っ手の一部は、取っ手の先端の突起である、
電子機器。
【請求項2】
前記筐体は六面体状をなし、
前記開口部は、前記一の面が側方へ向く姿勢において、横長となる形状を有し、
前記取っ手は、基端部が前記開口部と一体に連結され、先端部が上方へ弾性変形可能な板状をなし、
前記支持部材は、上方へ弾性変形した前記取っ手の先端部と接触して該取っ手の前記基端部へ向かう方向への移動を規制する、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記取っ手の先端には、前記支持部材と接触可能な突起を有する、
請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記カバーの内側の面と、前記筐体の一の面との間に、これらのいずれか一方から突出して、いずれか他方の一部を弾性変形させながら連結される連結機構を有する、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
所定の機能を備えた機器を収容し、多面体状をなす筐体と、該筐体の少なくとも一の面の少なくとも一部を覆って着脱可能に取り付けられるカバーとを連結する電子機器の搬送方法であって、
該カバーに形成された開口部から、該開口部に連なる把持開口へ利用者が複数本の指を挿入する工程と、
前記開口部と交差する方向へ延びて前記把持開口から前記筐体の内部に突出するように前記カバーの前記開口部の周縁部に支持され、該支持された個所を基端として弾性可能な取っ手を
上方へ弾性変形させながら、
前記利用者が前記カバーを持ち上げる工程と、
前記利用者が前記取っ手を弾性変形させながら、前記把持開口の内側に前記筐体に連結して設けられた支持部材に
前記取っ手の先端の突起を引っかける工程と、
を有する電子機器の搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器および電子機器の搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デスクトップ型コンピュータ等の電子機器には、多面体(一般に六面体)状をなす筐体のうち、一部の面、例えば、ユーザーに向けられる正面となる面を覆うカバーが取り付けられている。該カバーは、電子機器の意匠的価値を高め、あるいは電子機器の取り扱い上で必要な文字等を表記するという重要な機能を果たしている。
本願に関連する特許文献1、2には、該カバー、あるいは、該カバーを筐体に取り付ける構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-312481号公報
【文献】特開2018-116949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、前記カバーは、電子機器の組み立て工程を考慮して、あるいは、保守点検等を目的として筐体内にアクセスする際の利便性を考慮して、筐体に対して脱着が容易な取り付け構造を採用するが、装置(筐体)を持ち上げ、およびまたは移動しようとする際、誤って、本来把持すべき筐体ではなく、筐体から容易に着脱されるカバーを把持してしまう傾向がある。
そのため、可搬型の装置(例えばデスクトップコンピュータの本体)を持ち上げ、およびまたは移動しようとする際、カバーが外れる方向へ力が加わって外れるおそれがあった。このため、装置を持ち上げおよびまたは移動しようとする際にカバーが外れないための構造上の改善が求められていた。
【0005】
上記特許文献1、2に開示された取り付け、取外しの機能を持ち合わせているカバーでは、操作性を考慮し、簡易的な撓みを利用した爪構造、簡単に外れないよう凹凸を利用した物理的締結構造のどちらかが一般的である。
しかしながら、このような単にカバーの取り付け取外し程度の締結力を前提とした締結構造では、誤ってカバーを持って電子機器全体を持ち上げようとすると、前記締結構造によって得られる力では、電子機器全体に作用する重力に耐えられず、筐体からカバーが離脱する可能性がある。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、利用者が前記カバーを持ち上げて電子機器を移動させようとする際における、前記カバーが筐体からの離脱する現象を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明にかかる電子機器は、所定の機能を備えた機器を収容し、多面体状をなす筐体と、該筐体の少なくとも一の面の少なくとも一部を覆って着脱可能に取り付けられるカバーと、該カバーに形成され、利用者の複数本の指が挿入される開口部と、該開口部と連なって前記一の面に形成された把持開口と、前記開口部と交差する方向へ延びて前記把持開口から前記筐体内部に突出するように前記カバーの前記開口部の周縁部に支持され、該支持個所を基端として弾性可能な取っ手と、前記把持開口の内側に、前記筐体に連結して設けられて、弾性変形した前記取っ手の一部と接触可能な支持部材とを有する。
【0008】
本発明にかかる電子機器の搬送方法は、所定の機能を備えた機器を収容し、多面体状をなす筐体と、該筐体の少なくとも一の面の少なくとも一部を覆って着脱可能に取り付けられるカバーとを連結する電子機器の搬送方法であって、該カバーに形成された開口部から、該開口部に連なる把持開口へ利用者が複数本の指を挿入する工程と、前記開口部と交差する方向へ延びて前記把持開口から前記筐体内部に突出するように前記カバーの前記開口部の周縁部に支持され、該支持個所を基端として弾性可能な取っ手を弾性変形させながら、前記カバーを持ち上げる工程と、前記取っ手を弾性変形させながら、前記把持開口の内側に前記筐体に連結して設けられた支持部材に引っかける工程とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カバーを把持して電子機器を持ち上げようとする場合の筐体からのカバーの離脱を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本発明の一実施形態の外観を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態の縦断面の斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態のラッチ機構の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明にかかる電子機器は、所定の機能を備えた機器を収容し、多面体状をなす筐体1と、該筐体1の少なくとも一の面の少なくとも一部を覆って着脱可能に取り付けられるカバー2と、該カバー2に形成され、利用者の複数本の指が挿入される開口部3と、該開口部3と連なって前記一の面に形成された把持開口4と、前記開口部3と交差する方向へ延びて前記把持開口から前記筐体内部に突出するように前記カバー2の前記開口部3の周縁部に支持され、該支持個所を基端として弾性可能な取っ手5と、前記把持開口4の内側に、前記筐体1に連結して設けられて、弾性変形した前記取っ手5の一部と接触可能な支持部材6とを有する。
【0012】
上記構成によれば、前記カバー2に形成された開口部3から、該開口部3に連なる把持開口4へ利用者が複数本の指を挿入する工程と、前記開口部3と交差する方向へ延びて前記把持開口4から前記筐体1内部に突出するように前記カバー2の前記開口部3の周縁部に支持され、該支持個所を基端として弾性可能な取っ手5を弾性変形させながら、前記カバー2を持ち上げる工程と、前記取っ手5を弾性変形させながら、前記把持開口4の内側に前記筐体1に連結して設けられた支持部材6に引っかける工程とが実行される。
【0013】
これらの工程を備える搬送方法および前記電子機器にあっては、前記取っ手5の先端を支持部材6に接触させ、これらの接触によってカバー2を持ち上げる力を筐体1に作用させて、カバー2と一体に筐体1を持ち上げることができ、利用者の手(指)の力をカバー2の一部を介して筐体1に直接作用させることから、持ち上げ、移動に伴う操作によって前記カバー2が筐体1から離脱、さらには、落下する現象を防止することができる。
【0014】
図2~5を参照して本発明の一実施形態を説明する。なお、これらの図において、
図1と共通の構成には同一符号を付し、説明を簡略化する。
筐体1は筐体であって、全体として直方体状をなし、その一の側面は、例えばデスクトップコンピュータの本体の前面に相当するーの側面である。この一側面は把持開口11を有し、この把持開口11の上側の縁は、
図3に示すように、内側へ折り曲げられて内方に延びる支持部材12となっている。
【0015】
前記筐体1の前面には、カバー2が着脱可能に取り付けられている。該カバー2は、プラスチック等の成型体であって、全体として、前記筐体1の一側面に重なる形状を有し、前記把持開口11に対応する位置に、開口部21を有する。また前記カバー2は、前記筐体1の前面に設けられたラッチ機構13によって前記筐体1に着脱可能に支持されている。
【0016】
該開口部21の周縁部は、奥行き方向内側に折り曲げられて同方向内側へ延びる板状部22A、22Bを備え、これらの板状部22A、22Bにより囲まれた凹部23を有する、該凹部23は、利用者が複数本の手指を挿入することができる幅、高さを有し、その上面に相当する前記板状部22Aは、他の面の板状部22Bと分離して形成されることにより、前記開口部21の周縁部を基端として弾性変形可能に構成された板状の把持部24となっている。
この把持部24(22A)は、先端近くに、上方へ突出する突起25を有し、この突起25は、
図3に示す弾性変形しない状態にて前記支持部材12の先端に触れない高さまで突出している。また前記凹部23の最も奥の部分は壁面板26によって塞がれている。なお該壁面板26と前記把持部24の先端との間には、前記凹部23の奥行き方向(作業者が手指を抜き差しする方向)への隙間が設けられている。
【0017】
前記筐体1へカバー2を取り付けるためのラッチ機構13は、例えば、
図5に示すような構造を有する。
前記筐体1の前面には、支持部材30が取り付けられ、この支持部材30は、貫通孔31を有する。該貫通孔31には、前記カバー2の裏面から突出して設けられた一対の湾曲部材32が挿入される。
すなわち、一対の前記湾曲部材32は、
図5に示すように、前記貫通孔31の開口寸法(
図5の上下方向への寸法)より僅かに大きな上下方向への寸法で配置されていて、
図5に矢印で示すように互いに接近しながら弾性変形することにより、前記貫通孔31内に弾性変形状態で挿入される。
前記貫通孔31に挿入された一対の前記湾曲部材32は、弾性力により貫通孔31に密着することによって前記カバー2を前記筐体1の前面から離れないように保持する。
【0018】
このように、前記支持部材30と湾曲部材32とによって、前記カバー2を筐体1に着脱自在に取り付けるラッチ機構13が構成されている。すなわち、前記湾曲部材32の間に前記突出部31を挟んだ状態で前記カバー2を支持することにより、該カバー2の自重が筐体1により支えられている。すなわち前記カバー2は、前記湾曲部材32と突出部31とから構成されたラッチ機構13によって、前記筐体1にその前面を覆った状態で着脱可能に取り付けられている。
なお前記ラッチ機構13には、図示例の機構に限らず、凹凸嵌合や、ねじ止め、マジックファスナー(登録商標)等の着脱を前提とした固着手段を適用することができ、前記カバー2の意匠性を考慮して、その位置、数を選択することが望ましい。
【0019】
また、前記ラッチ機構13によって筐体1の前面にカバー2を取り付けるに伴い、筐体1の把持開口11にカバー2の開口部21の位置を合わせて、前記板状部22A(把持部24)を把持開口11に挿入して行き、
図3、4に示すように、把持部24の先端の突起25が前記支持部材12より奥の位置に達した状態で組み立てられる。
【0020】
このようにして組み立てられた電子機器を移動等のために持ち上げる場合の取り扱いの手順について説明する。
床や机の上に置かれた電気機器の前記筐体1に対し、前記カバー2の前面の開口部21の内側へ作業者が手の平を上へ向けて手指を挿入すると、前記開口部21の内側の凹部23に手指が進入して行き、指先が前記壁面板26に接触する位置でその旨を認識して挿入を止める。なお作業者の手指が前記板状部22A(把持部24)に触れながら進入している場合、前記板状部22A(把持部24)の先端に達して存在を認識しなくなることによっても、挿入を止めることができる。
【0021】
所定の深さまで手指が進入したと認識した作業者が前記把持部24に上方への力を加えると、前記把持部24が下に凸となるように湾曲しながら弾性変形し、その先端近くの突起25が前記支持部材12の先端より上方に達し、また、前記把持部24の上面が前記支持部材12の下面に接触することにより、前記把持部24の上方へ弾性変形が停止する。
この状態では、前記把持部24に上方への力を加えて前記筐体1の全体を持ち上げようとした場合に、前記突起25が前記支持部材12の先端に突き当たることにより、前記カバー2が筐体1から分離しようとする動きが規制され、したがって、前記把持部24が支持部材12に対してすべって前記カバー2が筐体1から分離することはない。
また前記カバー2は、ラッチ機構13によって前記筐体1に取り付けられているから、把持部24のみならず、前記カバー2の全面にわたって筐体1との一体性を維持することができる。
【0022】
前述のように、作業者が前記開口部21から手指を侵入させて前記筐体1をカバー2とともに所定の位置まで搬送して床あるいは机の上に下ろすと、搬送に伴って上方へ弾性変形していた前記把持部24が
図3、4に示すように、略水平となる位置へ復元する。
この復元の後、作業者が前記開口部21から手指を抜くと、作業が完了する。
【0023】
上記した一連の手順(工程)により一実施形態にかかる搬送方向が行われる。
すなわち、所定の機能を備えた機器を収容し、多面体状をなす筐体1と、該筐体1の少なくとも一の面の少なくとも一部を覆って着脱可能に取り付けられるカバー2とを連結する電子機器の搬送方法であって、該カバー2に形成された開口部21から、該開口部21に連なる把持開口11へ利用者が複数本の指を挿入する工程と、前記開口部21と交差する方向へ延びて前記把持開口11から前記筐体内部に突出するように前記カバー2の前記開口部21の周縁部に支持され、該支持された個所を基端として弾性可能な板状部22Aを弾性変形させながら、前記カバー2を持ち上げる工程と、前記板状部22Aを弾性変形させながら、前記把持開口11の内側に前記筐体1に連結して設けられた支持部材12に引っかける工程とが行われる。
【0024】
このように、一実施形態にあっては、前記把持部24の突起25が前記支持部材12と接触することによって前記カバー2の筐体1からの離脱を防止しつつ、前記筐体1とカバー2とから構成された電子機器を持ち上げながら所望の場所まで搬送することができる。
【0025】
なお一実施形態にあっては、搬送の際の操作性を考慮して、カバー及び筐体の開口部の位置を筐体の側面(あるいは前面の)の上部としたが、筐体内の機器配置により、電子機器の重心近くの他の位置であっても良い。
また把持部として使用される筐体およびカバーの開口部は、図示された面のみならず、反対側の面、あるいは、側面の全部に設けても良い。
また一実施形態で説明されたカバーを利用した把持部は、筐体におけるカバーを備えた面のみに採用し、他の(カバーを備えない)面では、筐体を貫通して形成した開口部に持ち手となる部品を取り付けた構成であっても良い。
【0026】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、電子機器の筐体に利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 筐体
2 カバー
3 開口部
4 把持開口
5 取っ手
6 支持部材
10 前面
11 把持開口
12 支持部材
13 ラッチ機構
21 開口部
22A、22B 板状部
23 凹部
24 把持部
25 突起
26 壁面板
30 支持部材
31 貫通孔
【要約】
【課題】本発明は、カバーを備えた筐体の搬送に際し、筐体からのカバーの離脱を防止することを目的とする。
【解決手段】電子機器は、所定の機能を備えた機器を収容し、多面体状をなす筐体1と、該筐体1の少なくとも一の面の少なくとも一部を覆って着脱可能に取り付けられるカバー2と、該カバー2に形成され、利用者の複数本の指が挿入される開口部3と、該開口部3と連なって前記一の面に形成された把持開口4と、前記開口部3と交差する方向へ延びて前記把持開口から前記筐体の内部に突出するように前記カバー2の前記開口部3の周縁部に支持され、該支持個所を基端として弾性可能な取っ手5と、前記把持開口4の内側に、前記筐体1に連結して設けられて、弾性変形した前記取っ手5の一部と接触可能な支持部材6とを有する。
【選択図】
図1