(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】液状炭化水素の増産方法
(51)【国際特許分類】
C10G 2/00 20060101AFI20240611BHJP
C07C 1/04 20060101ALI20240611BHJP
C07C 9/14 20060101ALI20240611BHJP
C10L 1/32 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
C10G2/00
C07C1/04
C07C9/14
C10L1/32 D
(21)【出願番号】P 2024010446
(22)【出願日】2024-01-26
【審査請求日】2024-02-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514134321
【氏名又は名称】株式会社コスモス
(74)【代理人】
【識別番号】100084696
【氏名又は名称】赤尾 直人
(72)【発明者】
【氏名】山田 豊滋
(72)【発明者】
【氏名】竹本 正
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特許第7428453(JP,B1)
【文献】特許第7385972(JP,B1)
【文献】特許第7385974(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 2/00
C07C 1/02
C07C 9/00
C10L 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
継続的に供給されている二酸化炭素が溶解しており、かつ液状炭化水素と混合状態にある水を収容している反応槽内にて光触媒を介して、二酸化炭素及び水を一酸化炭素及び水素に還元し、更に当該光触媒を介した当該一酸化炭素と当該水素との化学反応によって当該液状炭化水素を更に合成する方法であって、二酸化炭素と空気との混合気体の気泡を当該反応槽の底部及び/又は側部から供給するか、又は二酸化炭素の気泡及び空気の気泡を、それぞれ当該反応槽の底部及び側部から供給するか、若しくはそれぞれ当該反応槽の側部及び底部から供給することによって、反応槽の上側領域にて生成されている液状炭化水素の層における上側界面が、前記層を通過した二酸化炭素と空気との混合気体との接触状態を維持している液状炭化水素の合成方法において、
反応槽の水平方向中心位置に回転軸を備え、かつ反応槽の底部の近傍にて回転する回転羽根によって水の流動状態を形成することによる液状炭化水素の増産方法。
【請求項2】
回転羽根の回転範囲が反応槽の壁部内側の近傍にまで及んでいることを特徴とする請求項
1記載の液状炭化水素の増産方法。
【請求項3】
継続的に供給されている二酸化炭素が溶解しており、かつ液状炭化水素と混合状態にある水を収容している反応槽内にて光触媒を介して、二酸化炭素及び水を一酸化炭素及び水素に還元し、更に当該光触媒を介した当該一酸化炭素と当該水素との化学反応によって当該液状炭化水素を更に合成する方法であって、二酸化炭素と空気との混合気体の気泡を当該反応槽の底部及び/又は側部から供給するか、又は二酸化炭素の気泡及び空気の気泡を、それぞれ当該反応槽の底部及び側部から供給するか、若しくはそれぞれ当該反応槽の側部及び底部から供給することによって、反応槽の上側領域にて生成されている液状炭化水素の層における上側界面が、前記層を通過した二酸化炭素と空気との混合気体との接触状態を維持している液状炭化水素の合成方法において、反応槽の壁部
に外側への突出
領域を1個又は複数個設定し、かつ当該
突出領域の内側近傍に備えたスクリュー又は回転羽根によって水の流動状態を形成すること
による液状炭化水素の増産方法。
【請求項4】
スクリュー又は回転羽根よりも内側に
反応槽の壁部に設定している外側への突出領域の突出する側に湾曲している内壁を設け
ていることを特徴とする請求項
3記載の液状炭化水素の増産方法。
【請求項5】
継続的に供給されている二酸化炭素が溶解しており、かつ液状炭化水素と混合状態にある水を収容している反応槽内にて光触媒を介して、二酸化炭素及び水を一酸化炭素及び水素に還元し、更に当該光触媒を介した当該一酸化炭素と当該水素との化学反応によって当該液状炭化水素を更に合成する方法であって、二酸化炭素と空気との混合気体の気泡を当該反応槽の底部及び/又は側部から供給するか、又は二酸化炭素の気泡及び空気の気泡を、それぞれ当該反応槽の底部及び側部から供給するか、若しくはそれぞれ当該反応槽の側部及び底部から供給することによって、反応槽の上側領域にて生成されている液状炭化水素の層における上側界面が、前記層を通過した二酸化炭素と空気との混合気体との接触状態を維持している液状炭化水素の合成方法において、二酸化炭素と空気との混合気体の気泡、又は二酸化炭素の気泡及び空気の気泡の何れかを、反応槽の壁
面に沿って1カ所又は複数カ所から噴流
することよって、水の流動状態を形成している液状炭化水素の増産方法。
【請求項6】
各気泡の噴流方向が水平方向より下側に傾斜していることによって
各気泡が底面及び壁面との衝突を伴っていることを特徴とする請求項5記載の液状炭化水素の増産方法。
【請求項7】
継続的に供給されている二酸化炭素が溶解しており、かつ液状炭化水素と混合状態にある水を収容している反応槽内にて光触媒を介して、二酸化炭素及び水を一酸化炭素及び水素に還元し、更に当該光触媒を介した当該一酸化炭素と当該水素との化学反応によって当該液状炭化水素を更に合成する方法であって、二酸化炭素と空気との混合気体の気泡を当該反応槽の底部及び/又は側部から供給するか、又は二酸化炭素の気泡及び空気の気泡を、それぞれ当該反応槽の底部及び側部から供給するか、若しくはそれぞれ当該反応槽の側部及び底部から供給することによって、反応槽の上側領域にて生成されている液状炭化水素の層における上側界面が、前記層を通過した二酸化炭素と空気との混合気体との接触状態を維持している液状炭化水素の合成方法において、反応槽の底部を水平方向に対し平行状態とするか、又は当該水平方向に対し傾斜させたうえで、反応槽における下側の出口から上側の入口への、ポンプによる水の環流を介して反応槽の水の流動状態を形成する液状炭化水素の増産方法。
【請求項8】
底部及び/又は側部にて
二酸化炭素と混合された状態にて供給されるか、又は単独にて供給されている空気の供給量を調整することを特徴とする請求項1,
3,5,6の何れか一項に記載の液状炭化水素の増産方法。
【請求項9】
前記上側界面の上側に空気を送付し、かつ当該送付量を調整することを特徴とする請求項1,
3,5,7の何れか一項に記載の液状炭化水素の増産方法。
【請求項10】
液状炭化水素の層内に、気泡の移動速度を緩和する抵抗素子を備えていることを特徴とする請求項1,
3,5,7の何れか一項に記載の液状炭化水素の増産方法。
【請求項11】
超音波振動によってナノバブルを形成している酸素を含有している水を、反応槽の底部及び/又は側部に供給していることを特徴とする請求項1,
3,5,7の何れか一項に記載の液状炭化水素の増産方法。
【請求項12】
超音波振動によってナノバブルを形成している二酸化炭素及び/又は空気を含有する水を、反応槽の底部及び/又は側部に供給していることを特徴とする請求項1,
3,5,7の何れか一項に記載の液状炭化水素の増産方法。
【請求項13】
供給する混合気体における二酸化炭素の濃度を調整するか又は供給する二酸化炭素及び空気の比率を調整することによって、前記混合気体における二酸化炭素の濃度が430ppm~2000ppmであることを特徴とする請求項1,
3,5,7の何れか一項に記載の液状炭化水素の増産方法。
【請求項14】
溶解している酸素に対し、紫外線を照射することを特徴とする請求項1,
3,5,7の何れか一項に記載の液状炭化水素の増産方法。
【請求項15】
混合状態にある前記液状炭化水素と前記水とが反応槽に流入していることを特徴とする請求項1,
3,5,7の何れか一項に記載の液状炭化水素の増産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中において光触媒を介して二酸化炭素及び水を一酸化炭素及び水素に還元し、当該光触媒を介した当該一酸化炭素と当該水素との化学反応によって合成された液状炭化水素を増産する方法及を対象としている。
【背景技術】
【0002】
水中において二酸化炭素を還元させて液状炭化水素を合成することは、既に従来技術によって提唱されている。
【0003】
例えば、特許文献1においては、光電気化学セルにおいて、二酸化炭素を含む水中に酸素を供給し、二酸化炭素を還元することによって、液状炭化水素を生成する方法が提唱されている(page 81, lines 4- 21)。
【0004】
即ち、特許文献1における光触媒は、光電気化学セルを前提としており、陰極において液状炭化水素等による燃料を生成していることを前提としている(Claims 2, 77, 79)。
【0005】
従って、特許文献1においては、純然たる光触媒による二酸化炭素及び水の還元が実現している訳ではない。
現に、特許文献1においては、水に対する紫外線の照射による酸素の活性化は実現されていない(この点において、特許文献2の場合と明らかに相違している。)。
【0006】
特許文献2に示すように、二酸化炭素が溶解している水中に酸素を供給し、かつ酸素のナノバブルを発生させ、紫外線の照射によってナノバブルから生成された活性酸素の存在下において、光触媒を介して二酸化炭素及び水を一酸化炭素及び水素に還元することを前提とする液状炭化水素の製造方法及び製造装置が提唱されている。
【0007】
しかしながら、特許文献2の場合には、酸素のナノバブルの生成、及び紫外線の照射による活性酸素の生成を必要不可欠としている点において、その構成は、必ずしもシンプルではない。
【0008】
特許文献1及び同2において、光触媒を介して液状炭化水素を生成した場合には、液状炭化水素の層が水よりも上側領域にて生成されている。
【0009】
このような場合、二酸化炭素を含有する上側の空気との接触状態が実現するが、その場合には、空気が含有する炭酸ガスの濃度によって、水中の二酸化炭素における還元効率が左右される。
【0010】
然るに、特許文献1、2のような従来技術においては、液状炭化水素が存在する上側界面と接触する空気における炭酸ガスの濃度の調整によって、効率的に液状炭化水素を生成するという基本的発想は全く提唱されていない。
ましてや、水の流動に着目し、液状炭化水素を増産するという発想は全く開示及び示唆されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】WO2010/042196 A1
【文献】特許第6440742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、酸素及び二酸化炭素が溶解している水に対する光触媒を介して液状炭化水素を極めて効率的に生成すると共に、水の流動に着目し、かつ液状炭化水素を増産する方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明の基本構成は、
(1)継続的に供給されている二酸化炭素が溶解しており、かつ液状炭化水素と混合状態にある水を収容している反応槽内にて光触媒を介して、二酸化炭素及び水を一酸化炭素及び水素に還元し、更に当該光触媒を介した当該一酸化炭素と当該水素との化学反応によって当該液状炭化水素を更に合成する方法であって、二酸化炭素と空気との混合気体の気泡を当該反応槽の底部及び/又は側部から供給するか、又は二酸化炭素の気泡及び空気の気泡を、それぞれ当該反応槽の底部及び側部から供給するか、若しくはそれぞれ当該反応槽の側部及び底部から供給することによって、反応槽の上側領域にて生成されている液状炭化水素の層における上側界面が、前記層を通過した二酸化炭素と空気との混合気体との接触状態を維持している液状炭化水素の合成方法において、反応槽の水平方向中心位置に回転軸を備え、かつ反応槽の底部の近傍にて回転する回転羽根によって水の流動状態を形成することによる液状炭化水素の増産方法、
(2)継続的に供給されている二酸化炭素が溶解しており、かつ液状炭化水素と混合状態にある水を収容している反応槽内にて光触媒を介して、二酸化炭素及び水を一酸化炭素及び水素に還元し、更に当該光触媒を介した当該一酸化炭素と当該水素との化学反応によって当該液状炭化水素を更に合成する方法であって、二酸化炭素と空気との混合気体の気泡を当該反応槽の底部及び/又は側部から供給するか、又は二酸化炭素の気泡及び空気の気泡を、それぞれ当該反応槽の底部及び側部から供給するか、若しくはそれぞれ当該反応槽の側部及び底部から供給することによって、反応槽の上側領域にて生成されている液状炭化水素の層における上側界面が、前記層を通過した二酸化炭素と空気との混合気体との接触状態を維持している液状炭化水素の合成方法において、反応槽の壁部に外側への突出領域を1個又は複数個設定し、かつ当該突出領域の内側近傍に備えたスクリュー又は回転羽根によって水の流動状態を形成することによる液状炭化水素の増産方法、
(3)継続的に供給されている二酸化炭素が溶解しており、かつ液状炭化水素と混合状態にある水を収容している反応槽内にて光触媒を介して、二酸化炭素及び水を一酸化炭素及び水素に還元し、更に当該光触媒を介した当該一酸化炭素と当該水素との化学反応によって当該液状炭化水素を更に合成する方法であって、二酸化炭素と空気との混合気体の気泡を当該反応槽の底部及び/又は側部から供給するか、又は二酸化炭素の気泡及び空気の気泡を、それぞれ当該反応槽の底部及び側部から供給するか、若しくはそれぞれ当該反応槽の側部及び底部から供給することによって、反応槽の上側領域にて生成されている液状炭化水素の層における上側界面が、前記層を通過した二酸化炭素と空気との混合気体との接触状態を維持している液状炭化水素の合成方法において、二酸化炭素と空気との混合気体の気泡、又は二酸化炭素の気泡及び空気の気泡の何れかを、反応槽の壁面に沿って1カ所又は複数カ所から噴流することよって、水の流動状態を形成している液状炭化水素の増産方法、
(4)継続的に供給されている二酸化炭素が溶解しており、かつ液状炭化水素と混合状態にある水を収容している反応槽内にて光触媒を介して、二酸化炭素及び水を一酸化炭素及び水素に還元し、更に当該光触媒を介した当該一酸化炭素と当該水素との化学反応によって当該液状炭化水素を更に合成する方法であって、二酸化炭素と空気との混合気体の気泡を当該反応槽の底部及び/又は側部から供給するか、又は二酸化炭素の気泡及び空気の気泡を、それぞれ当該反応槽の底部及び側部から供給するか、若しくはそれぞれ当該反応槽の側部及び底部から供給することによって、反応槽の上側領域にて生成されている液状炭化水素の層における上側界面が、前記層を通過した二酸化炭素と空気との混合気体との接触状態を維持している液状炭化水素の合成方法において、反応槽の底部を水平方向に対し平行状態とするか、又は当該水平方向に対し傾斜させたうえで、反応槽における下側の出口から上側の入口への、ポンプによる水の環流を介して反応槽の水の流動状態を形成する液状炭化水素の増産方法、
からなる。
【発明の効果】
【0014】
基本構成(1)、(2)、(3)、(4)においては、反応槽において水よりも上側領域にて生成されている液状炭化水素の層においては、通過する二酸化炭素と空気との混合気体との接触及び前記層の上側界面における二酸化炭素と空気との混合気体との接触状態の維持によって、極めて効率的な二酸化炭素の還元、更には液状炭化水素の合成を実現することができる。
【0015】
即ち、前記混合気体による気泡が前記層を当該気泡の全表面における接触を伴った状態にて通過する段階及び上側界面における接触状態の維持による段階の双方によって、前記効率的な合成を可能としているが、特に前者による効果は、液状炭化水素の合成が順次進行し、上側領域の層が大きくなるに従って一層顕著となる。
尚、基本構成(1)、(2)、(3)、(4)においては、二酸化炭素を継続的に供給することを前提としているが、前記二酸化炭素と空気との混合気体を反応槽の底部及び/又は側部に供給する場合には、当然前記効果が発生している。
たとえ前記混合気体ではなく、二酸化炭素及び空気をそれぞれ反応槽の底部及び側部から供給する場合、若しくはそれぞれ反応槽の側部及び底部から供給する場合であっても、前記層を通過するに至るまでに、気泡は相当の割合にて二酸化炭素と空気との混合気体を生成していることから、前記効果を実現することができる。
【0016】
基本構成(1)、(2)、(3)、(4)は、特許文献1における電極を採用する構成に比し極めてシンプルであって、しかも電圧の印加を要せずに、純然たる光触媒反応によって、燃料となる液状炭化水素を得ることができる。
【0017】
基本構成(1)、(2)、(3)、(4)の場合には、前記二酸化炭素と空気との混合気体又は空気を供給しており、しかも当該空気中に酸素が含有されていることから、特許文献2のように、酸素の供給、更には当該酸素のナノバブルの形成を必要不可欠としている訳ではない点においてシンプルな構成を実現している。
【0018】
このように、基本構成(1)、(2)、(3)、(4)に立脚している本願発明は、シンプルな構成でありながら、極めて効率的な液状炭化水素の生成を実現することができる。
因みに、特許文献2の構成のうちには、別途調整した液状炭化水素と酸素のナノバブルから生成される活性酸素の存在下において、二酸化炭素を還元させる構成も包摂されているが、このような混合状態を、例えば24時間設置した場合に、液状炭化水素が更に合成される割合は、通常10~15%である(段落[0029])のに対し、基本構成(1)、(2)、(3)、(4)においては、液状炭化水素と接触している空気の二酸化炭素の濃度を430ppm~2000ppmの範囲内にて調整した場合には、更に合成される液状炭化水素の割合を、20~30%とすることができる。
【0019】
このような効率的な液状炭化水素の合成に加えて、基本構成(1)、(2)、(3)、(4)においては、反応槽内の水を流動状態とすることによって、液状炭化水素の増産を実現可能としている。
【0020】
前記増産の根拠につき説明するに、水が流動せずに静止している場合には、液状炭化水素の層に至るまでの反応槽内における二酸化炭素と空気との混合気体の気泡又は二酸化炭素の気泡及び空気の気泡の移動距離は、各気泡が流入した高さ位置と液状炭化水素の高さ位置との差の距離に過ぎない。
【0021】
これに対し、水が流動している場合には、前記各気泡は、水と共に水平方向に流動することによって液状炭化水素の層に至るまでの移動距離が増加する。
【0022】
しかも、各気泡が水と共に流動する場合には、水の流動によって発生する圧力によって気泡の体積が減少し、液状炭化水素の層に至るまでの時間もまた増加する。
【0023】
このように、各気泡の移動距離及び移動時間の増加によって、実質的には反応槽の容積が増加した状態と同様の状態を想定することができる。
尚、移動距離及び移動時間の増加を原因として、液状炭化水素の合成に至る反応の機会が増加することについては、具体的な数式、更には液状炭化水素の合成に至る反応式に即して、後述する通りである。
【0024】
更には、基本構成(1)、(2)、(3)、(4)において、所定の液状炭化水素を合成する場合には、後述するように相当量の二酸化炭素を必要とし、かつ相当量の酸素を排出するが、その結果、諸々の製造工程において排出された二酸化炭素を費消し、かつ酸素を生成するという植物の作用と同様の生活環境の向上に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】基本構成
(1)、(2)、(3)、(4)の方法
において共通する各作動状態を示すブロック図である。
【
図2】基本構成
(1)、(2)、(3)、(4)において共通する空気、二酸化炭素、混合気体の供給及び水の流動を示す模式図であり、(a)は、二酸化炭素と空気との混合気体を反応槽の底部及び/又は側部から供給する供給源を採用し、かつ混合される空気の量を調整する実施形態を示しており、(b)は、二酸化炭素及び空気をそれぞれ反応槽の底部及び側部から供給する供給源を採用し、かつ反応槽の上側にて空気を供給し、しかも供給量を調整している実施形態を示し、(c)は、二酸化炭素及び空気をそれぞれ反応槽の側部及び底部から供給する供給源を採用し、しかも反応槽の上側にて空気を供給し、かつ供給量を調整する実施形態を示す。 尚、(a)、(b)、(c)において、反応槽内における斑点の表示は、合成によって形成された液状炭化水素の層を示し、矢印は、水の流動方向を示す。
【
図3】
基本構成(1)を示す水平方向側面図である。尚、矢印は、水の流動方向を示す。
【
図4】
基本構成(2)を示す水平方向側断面図である。尚、矢印は、水の流動方向を示す。
【
図5】
基本構成(3)を示しており、(a)は
水平方向側面図であり、(b)は鉛直方向断面図である。 尚、矢印は、水の流動方向を示す。
【
図6】
基本構成(4)を示す断面図であって、(a)は、
反応槽の底面が
水平方向に平行である場合を示し、(b)は、
反応槽の底面を
水平方向に傾斜させた場合を示す。 尚、矢印は、水の流動方向を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
基本構成
(1)、(2)、(3)、(4)において共通する作動の構成は、図1のブロック図に示すように、継続的に供給されている二酸化炭素が溶解しており、かつ液状炭化水素HCと混合状態にある水Wを収容している反応槽1内にて光触媒を介して、二酸化炭素及び水Wを一酸化炭素及び水素に還元し、更に当該光触媒を介した当該一酸化炭素と当該水素との化学反応によって当該液状炭化水素HCを更に合成する方法であって、二酸化炭素と空気Aとの混合気体Mの気泡を当該反応槽1の底部及び/又は側部から供給するか、又は二酸化炭素の気泡及び空気Aの気泡を、それぞれ当該反応槽1の底部及び側部から供給するか、若しくはそれぞれ当該反応槽1の側部及び底部から供給することによって、反応槽1の上側領域にて生成されている液状炭化水素HCの層における上側界面が、前記層を通過した二酸化炭素と空気Aとの混合気体Mとの接触状態を維持している液状炭化水素HCの合成方法において、当該反応槽1内の水Wを流動状態とすることによる液状炭化水素HCの増産方法である。
【0027】
基本構成
(1)、(2)、(3)、(4)において共通する装置の構成は、図2(a)、(b)、(c)の模式図に示すように、液状炭化水素HCと混合状態にある水Wを収容している反応槽1内にて光触媒を介して、反応槽1の底部及び/又は側部にて継続的に供給されている二酸化炭素を、水W中内にて一酸化炭素及び水素に還元し、当該光触媒を介した当該一酸化炭素と当該水素との化学反応によって更に液状炭化水素HCを反応槽1の上側領域にて層状に合成する装置であって、当該反応槽1内において前記光触媒を有している光触媒手段を備え、かつ当該反応槽1の底部及び/又は側部にて前記二酸化炭素と空気Aとの混合気体Mの供給源2と接続するか、又は当該反応槽1の底部及び側部にてそれぞれ二酸化炭素の供給源3及び空気の供給源4と接続するか、若しくは当該反応槽1の側部及び底部にてそれぞれ二酸化炭素の供給源3及び空気の供給源4と接続している液状炭化水素HCの合成装置において、当該反応槽1内の水Wに対する流動機構を備えている。
【0028】
基本構成(1)、(2)、(3)、(4)においては、二酸化炭素と空気Aとの混合気体Mの気泡を反応槽1の底部及び/又は側部から供給する場合と、二酸化炭素の気泡及び空気Aの気泡をそれぞれ反応槽1の底部及び側部から供給する場合、若しくはそれぞれ反応槽1の側部及び底部から供給する場合との双方が包摂されているが、通常は、効率的な液状炭化水素HCの合成を考慮し、前者を採用する場合が多い。
【0029】
基本構成(1)、(2)、(3)、(4)においては、液状炭化水素HCの生成のために二酸化炭素の継続的な供給を技術的前提としているが、既に効果の項において指摘したように、上側領域における液状炭化水素HCの層と、層を通過する二酸化炭素と空気Aとの混合気体Mとの接触、更には、液状炭化水素HCが生成されている水Wの上側界面と二酸化炭素と空気Aとの混合気体Mとの接触によって前記還元反応が促進される根拠については、以下のような技術的根拠を推定することができる。
【0030】
水中に溶解している二酸化炭素については、水に対する光触媒によって、ラジカル水、即ち化学反応を起こし易い活性化した水の状態を形成した場合には、以下のような当該ラジカル化を原因とする還元反応については、以下のような反応式を相当の確率を以て想定することができる。
nCO2+(2n+1)H2O→nCO+(2n+1)H2+(3n+1/2)O2 ・・・(1)
即ち、前記(1)式においては、順次左側から右側への還元反応を呈しているが、個別の反応に着目した場合、部分的には、一酸化炭素分子が酸化されて二酸化炭素分子に変化する逆反応も存在するが、全体としては、順次二酸化炭素分子が一酸化炭素分子に還元される反応が進行することに帰する。
【0031】
前記(1)式の反応式に引き続き、ラジカル水中において、当該ラジカル化を原因として、以下のような液状炭化水素HCを更に生成する反応式についても、以下の反応式を相当の確率を以て想定することができる。
(2n+1)H2+nCO→CnH2n+2+nH2O ・・・(2)
従って、水Wの上側領域に生成されているCnH2n+2による液状炭化水素HCの層は、前記(2)の反応式に由来している。
尚、炭素数nは、予め配合され、かつラジカル水と混合状態にある液状炭化水素HCの炭素数と同一であることから、予め配合される液状炭化水素HCは、鋳形と称されている。
但し、どうして、更に合成される液状炭化水素HCの炭素数nが鋳形である液状炭化水素HCの炭素数と同一であるかの根拠については、完全に解明されている訳ではない。
【0032】
前記想定による(1)式、及び(2)式によれば、1モルの液状炭化水素CnH2n+2を合成する場合には、nモルの二酸化炭素が費消され(3n+1)/2モルの酸素が発生する。
したがって、n=14とし、10モルの液状炭化水素であるC14H30を合成する場合には、140モル、即ち6160gの二酸化炭素を必要とし、215モル、即ち6880gの酸素が生成され、重量を基準とした場合、3.1倍の二酸化炭素が費消され、3.5倍の酸素が排出されることに帰する。
即ち、前記想定した場合であっても、所定量の液状炭化水素を合成する場合には、数倍の二酸化炭素を費消し、数倍の酸素が発生するが、このような二酸化炭素の費消及び酸素の発生は、産業上、発生した二酸化炭素の費消をすると共に、酸素の生成を実現できることから、植物と同様の生活環境の改善に寄与することができる。
但し、自然環境の下に二酸化炭素を供給しかつ費消する場合には、きのこ類を培養し、かつ当該きのこが発生する二酸化炭素を供給しかつ費消する方法も採用することができる。
【0033】
基本構成(1)、(2)、(3)、(4)において、反応槽1内の水を流動状態にすることによって、液状炭化水素HCの増産を実現し得る根拠は、以下の通りである。
【0034】
水の流動によって、二酸化炭素及び空気Aの混合気体Mの気泡又は二酸化炭素及び水の混合気体の気泡が水平方向に移動する距離Lとし、反応槽1の底部が反応槽1における液状炭化水素HCの最下層に至るまでの距離をHとした場合、前記各気泡が液状炭化水素HCの最下層に至るまでに移動する距離は、
である。
【0035】
即ち、前記各移動距離は、流動していない場合の距離Hに対し、
倍増加している。
しかも、前記各気泡は、水の流動に伴って水平方向に移動することによって、水との間に粘性抵抗が発生している以上、当該粘性抵抗が増加した分だけ反応槽1の底部から液状炭化水素HCの最下層に至るまでの時間もまた増加している。
【0036】
具体的に説明するに、
反応槽1における水Wが移動していない場合における各気泡の体積をVとし、気泡が上昇する速度をuとし、重力定数をgとし、水Wと気泡との粘性係数をμとした場合には、水Wが上昇する流動速度は一定であることから、気泡に対する浮力と粘性抵抗とは概略等しい関係にあり、
F=ρVg-kμu≒0
が成立する。
但し、ρ:水の密度、V:気泡の体積、g:重力定数、μ:気泡と水との間の粘性係数、u:気泡が上昇する速度、k:比例定数である。
従って、u≒ρVg/(kμ)が成立する。
【0037】
各気泡が水Wとの粘性抵抗を原因として、水Wと共に流動している場合には、水Wと気泡との間に速度差が存在することを前提としている。
従って、各気泡の流動速度は水Wの流動速度と同一ではなく、当該速度よりも小さいことから、各気泡は、水Wによって流動方向に圧力を受け、その結果、体積Vが減少する。
即ち、気泡の上昇速度は、体積Vの減少を原因として低下することに帰する。
尚、前記体積Vの減少においては、気泡が本来の球形から略楕円形に変形している。
【0038】
このように、気泡の上昇速度は、水の流動を原因として小さくなる以上、流動していない気泡が水Wと共に流動していない場合に比し、反応槽1の底部から液状炭化水素HCの最下層に至るまでの時間もまた増加することに帰する。
【0039】
このように、各気泡と水Wとの流動によって、移動距離及び浮上時間が増加する以上、前記(1)及び(2)の反応式は、気泡が水Wと共に流動していない場合に比し、成立する機会が増加することに帰する。
【0040】
前記反応式(1)、(2)を平穏に推進することを考慮した場合、水Wの流動については、層流を原則とする。
但し、層流よりも流速が大きい乱流の場合には、気泡は反応槽1から液状炭化水素HCの最下層に至るまでの距離及び時間が増加するが、乱流の場合、必然的に前記(1)及び(2)の反応式の成立に支障が生ずる否かは不明であり、乱流の程度が少ない場合には、支障が生じない可能性を否定することができない。
【0041】
このような状況を考慮し、基本構成(1)、(2)、(3)、(4)において、乱流の場合、どの程度の流速による乱流が採用可能であるかについては、レイノルズ数(Re)を基準として、今後検討されねばならない。
【0042】
前記反応式(1)及び(2)の場合、液状炭化水素HCの層を通過している段階にあり、かつ空気Aと混合気体Mを生成している二酸化炭素、及び前記層の上側にて空気Aと混合気体Mを生成している二酸化炭素は、非極性液体である液状炭化水素HCと親和性を有することを原因として、液状炭化水素HCの層を透過し、更には下側領域の水Wが極性液体であっても、水Wに溶解し易いことを原因として、水Wの側に移行し、かつ溶解する。
【0043】
前記溶解によって、前記(1)の還元による反応式が促進され、ひいては、前記(2)式の合成反応もまた促進されることに帰する。
前記(1)、(2)の各反応式に着目する限り、前記界面の上側において調整自在の液状炭化水素HCの濃度については、高いほど前記(1)式及び前記(2)式の各反応が促進されるが如くである。
【0044】
ところが、現実には、二酸化炭素の濃度が高いほど前記(1)、及び(2)式の反応が促進される訳ではなく、前記界面の上側における二酸化炭素が所定の濃度を超えた場合には、かえって液状炭化水素HCの生成が減少する場合があることが判明している。
【0045】
二酸化炭素の濃度が所定の数値を超えた場合に、液状炭化水素HCの合成効率が低下する正確な根拠については、現時点では明らかではない。
但し、前記(1)、(2)の反応式における光触媒の機能が、二酸化炭素が所定の濃度を超えた場合には、却って低下することを推定することができる。
【0046】
前記上側界面における二酸化炭素の適切の濃度は、水中に含有される二酸化炭素の含有量によって左右されるが、大抵の場合、430ppm~2000ppmの数値範囲によって適切な二酸化炭素の濃度を設定することができる。
【0047】
二酸化炭素の継続的な供給を前提としている前記反応式(1)、(2)においては、二酸化炭素と空気Aとの混合気体Mの供給又は空気Aの供給によって、前記のような適切な数値範囲の二酸化炭素の濃度を実現することができる。
【0048】
酸素のナノバブルを必要不可欠とする特許文献2の構成の場合には、反応槽1における温度としては、室温40℃が好ましく、特に30℃がより好ましいことが想定されていた(段落[0028])。
これに対し、前記反応式(1)及び(2)の場合には、水温については自然状態の場合、冷却する場合、加熱する場合の何れをも包摂しているが、水温は、液状炭化水素HCの合成効率にさしたる影響を与えない。
【0049】
その根拠は、前記(1)式の還元反応及び(2)式の液状炭化水素HCの合成反応によって作用する光触媒によって、水W中にて局所的に熱振動よりも桁違いに大きな振動数による分子の振動が生じており、水温を左右する熱振動は、前記分子運動に殆ど影響を与えないことにあるものと解される。
【0050】
基本構成
(1)、(2)、(3)、(4)の合成方法においては、底部及び/又は側部にて
二酸化炭素と混合された状態にて供給されるか、又は単独にて供給されている空気Aの供給量を調整する実施形態を採用することができ、その場合に対応する装置としては、
図2(a)に示すように、底部及び/又は側部にて
二酸化炭素と混合された状態にて供給されるか、又は単独にて供給されている空気Aに対する供給量調整器具5を備えている。
但し、
図2(a)は、
二酸化炭素と混合される前の空気Aに対する供給量調整器具5を採用した場合を示す。
【0051】
前記実施形態の場合には、供給する二酸化炭素、又は空気A、又は二酸化炭素と空気Aの混合気体Mの供給量を調整することによって、液状炭化水素HCの合成効率を調整し、しかも430ppm~2000ppmという好ましい二酸化炭素の濃度を設定することができる。
【0052】
基本構成
(1)、(2)、(3)、(4)の合成方法においては、前記上側界面の上側に空気Aを送付し、かつ当該送付量を調整する実施形態を採用することができ、その場合に対応する装置としては、
図2(b)、(c)に示すように、反応槽1の上側にて空気の供給源4及び供給量調整器具5を備えている。
【0053】
前記実施形態においては、二酸化炭素と空気Aとの混合気体M又は空気Aの供給量を一定とした上で、水W面の上側にて供給する空気Aの供給量を調整することによって、液状炭化水素HCの合成効率を調整し、かつ430ppm~2000ppmという好ましい二酸化炭素の濃度を設定することができる。
【0054】
前記の実施形態の場合には、前記上側界面の上側にて二酸化炭素の濃度を測定している構成を採用し、当該実施形態に対応する装置において、
図2(a)、(b)、(c)に示すように、反応槽1の上側に二酸化炭素の濃度の測定器具6を備える構成を採用した場合には、正確な二酸化炭素の濃度を設定することができる。
【0055】
基本構成(1)、(2)、(3)、(4)においては、、液状炭化水素HCの層内に、気泡の移動速度を緩和する抵抗素子を備えていることを特徴とする実施形態を採用することができ、その場合に対応する装置としては、液状炭化水素HCの層内に単数又は複数個のフィルターを設置している。
【0056】
前記実施形態の場合には、液状炭化水素HCの層を気泡が通過する段階では、気泡は相当の比率にて二酸化炭素と空気Aとの混合気体Mを生成しており、前記のような気泡の移動速度の緩和の結果、液状炭化水素HCと混合状態の気泡との接触時間の増加によって、液状炭化水素HCの合成効率を助長することができる。
尚、前記抵抗素子及び前記フィルターと液状炭化水素HCの層より下側の水W中に設けた場合には、前記混合気体Mを生成せずに供給された空気Aの気泡と、二酸化炭素の気泡との混合状態を促進することができる。
【0057】
基本構成(1)、(2)、(3)、(4)においては、超音波振動によってナノバブルを形成している酸素を含有している水Wを、反応槽1の底部及び/又は側部に供給していることを特徴とする実施形態を採用することができ、その場合に対応する装置としては、超音波振動装置を備えた水槽にてナノバブルを形成した酸素の供給槽を反応槽1の底部及び/又は側部と接続している。
【0058】
前記実施形態の場合には、予め超音波振動によって酸素のナノバブルを形成した上で、反応槽1内にナノバブルを供給することによって、液状炭化水素HCの合成効率を向上させることを可能とする一方、反応槽1内にて超音波による振動が発生していない以上、前記(1)の還元反応を平穏な状態にて実現することができる。
【0059】
基本構成(1)、(2)、(3)、(4)においては、超音波振動によってナノバブルを形成している二酸化炭素及び/又は空気Aを、反応槽1の底部及び/又は側部に供給している実施形態を採用することができ、その場合に対応する装置としては、超音波振動装置を備えた水W中にて、ナノバブルを形成した二酸化炭素及び/又は空気Aの供給槽を反応槽1の底部及び/又は側部に接続している。
【0060】
前記実施形態においては、ナノバブル化した二酸化炭素及び/又は空気Aが活性化しており、液状炭化水素HCの合成効率を向上させることができる。
【0061】
具体的に説明するに、ナノバブルによって、二酸化炭素及び/又は空気Aによる気泡の体積が狭小化することによって水W中を移動する速度が低下し、二酸化炭素と混合せずに供給された空気Aが別途供給されている二酸化炭素の混合状態が生じ易いだけでなく、液状炭化水素HCの層を移動する速度が減少し、前記層が前記混合気体Mと接触する期間が増加することによって、前記合成効率の向上を助長することができる。
【0062】
しかも、反応槽1の外部にて超音波振動が実現するため、上記酸素のナノバブルの場合と同様に、前記(1)式の還元反応を平穏な状態にて実現することができる。
【0063】
基本構成(1)、(2)、(3)、(4)においては、供給する混合気体Mにおける二酸化炭素の濃度を予め調整するか又は供給する二酸化炭素及び空気Aの比率を予め調整することによって、混合気体Mにおける二酸化炭素の濃度が430ppm~2000ppmである実施形態を採用することができ、前記装置においては、反応槽1の上側にて二酸化炭素と空気Aとの混合気体Mの上昇を遮蔽する遮蔽板を設けることによって、前記の濃度を実現することができる。
【0064】
前記実施形態の場合には、反応槽の全領域にて、二酸化炭素の濃度を大気圧の場合に概略等しい430ppmよりも相当大きな濃度に設定し、ひいては前記反応式(1)、(2)を個別的に推進することができる。
特に、遮蔽板に所定の隙間を設け、かつ隙間の程度を調整し得ることを特徴とする構成を採用した場合には、隙間の調整によって、当該濃度を適宜選択することができる。
【0065】
基本構成(1)、(2)、(3)、(4)においては、溶解している酸素に対し、紫外線を照射することを特徴とする実施形態を採用することができ、その場合に対応する装置としては、反応槽1内に溶解している酸素に対する紫外線照射装置を備えている。
【0066】
紫外線の照射によって溶解している酸素を活性化した場合には、活性化しない場合に比し、二酸化炭素の還元効率を大幅に増進することができる。
【0067】
その根拠については、溶解している酸素の活性化によって過酸化水素(H2O2)が生成され、その結果、以下のような化学式によって、効率的な二酸化炭素の還元を想定することができる。
CO2+H2O2→CO+H2+3O2/2 ・・・(3)
【0068】
以下、基本構成(1)、(2)、(3)、(4)について個別に説明する。
【0069】
図3に示すように、基本構成
(1)においては、反応槽1の水平方向中心位置に回転軸を備え、かつ反応槽1の底部の近傍にて回転する回転羽根7によって水Wの流動状態を形成
している。
【0070】
基本構成(1)においては、1個の回転羽根7というシンプルな構成によって、水Wの流動を実現する点に技術的メリットが存在するが、回転羽根7を反応槽1の底部近傍に備えている根拠は、可能な限り、反応槽1内における前記(1)、(2)の反応式をディスターブすることを避けることにある。
【0071】
基本構成(1)においては、特に、回転羽根7の回転範囲が反応槽1の壁部内側の近傍にまで及ぶ構成を選択した場合には、反応槽1の全領域において流動状態を確保することができ、液状炭化水素HCの効率的な増産に資することができる。
【0072】
図4に示すように、基本構成
(2)においては、反応槽1の壁部
に外側への
突出領域10を1個又は複数個設定し、かつ当該
突出領域10の内側近傍に備えたスクリュー又は回転羽根7によって水Wの流動状態を形成
している。
尚、
図4は、流動状態を実現するためにスクリューを採用している場合を示す。
【0073】
基本構成(2)においては、スクリュー又は回転羽根7を前記突出領域10の内側近傍に備えることによって、前記(1)、(2)の反応式に対する影響を、基本構成(1)の場合よりも少ない状態とし得る点に技術的メリットが存在するが、前記突出領域10における鉛直方向の領域範囲は、特定している訳ではない。
即ち、反応槽1の底部から、液状炭化水素HCの層の最下層近傍まで延設することが可能である。
但し、鉛直方向に広範な領域にて前記突出領域10を設ける場合には、スクリュー又は回転羽根7を前記突出領域10内に鉛直方向に沿って複数個設けると良い。
【0074】
図4に示すように、
基本構成(2)において、スクリュー又は回転羽根7よりも内側に内壁に
反応槽の壁部の外側への突出領域10の突出する側に湾曲している内壁を設けていることを特徴とする構成を選択した場合には、スクリュー又は回転羽根7による前記反応式(1)及び(2)に対する影響を極力少なくすることも可能となる。
【0075】
図5(a)に示すように、基本構成
(3)においては、二酸化炭素と空気Aとの混合気体Mの気泡、又は二酸化炭素の気泡及び空気Aの気泡の何れかを、反応槽1の壁
面に沿って1カ所又は複数カ所から
水Wの流動状態を形成している。
【0076】
基本構成(3)においては、二酸化炭素と空気Aの混合気体M又は二酸化炭素及び空気Aの反応槽1への供給と水Wの流動との双方を両立する点に技術的メリットが存在するが、一様な流動状態を実現するためには、噴流の場所及び噴流装置を複数個設けることが好ましい。
尚、噴流方向を壁部の位置又はその近傍と設定するためには、図
5(a)に示すように、外側から内側に連通し、かつ前記方向に沿うようなパイプを採用すると良い。
基本構成(3)においては、図5(b)に示すように、各気泡の噴流方向が水平方向より下側に傾斜していることによって各気泡が底面及び壁面との衝突を伴っていることを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0077】
図6(a)、(b)に示すように、基本構成
(4)においては、反応槽1の底部を水平方向に対し平行状態とするか、又は当該水平方向に対し傾斜させたうえで、、水Wの流動状態を形成し、かつ反応槽1における下側の出口から上側の入口への、ポンプPによる水Wの環流を介して反応槽の水の流動状態を形成
している。
【0078】
基本構成(4)もまた、ポンプPによる環流を介することによるシンプルな構成によって、水Wの流動を実現することができる。
但し、反応槽1に底部が水平方向である場合にはポンプの環流を流動原因とする一方、反応槽1の底部が傾斜している場合には、当該傾斜によって反応槽内の流動を実現することからポンプによる環流については必ずしも流動原因とする必要がなく、単に、水を反応槽の出口から入口に戻す作用に終始するという設計も可能である。
【0079】
以下、実施例に即して説明する。
【実施例】
【0080】
実施例1は、基本構成(1)、(2)、(3)、(4)において、混合状態にある前記液状炭化水素HCと前記水Wとが反応槽1に流入していることを特徴としている。
【0081】
このような特徴によって、反応槽1内においては、反応槽1に流入した液状炭化水素HCと、二酸化炭素と空気Aとの混合気体Mによる気泡との頻繁な接触が実現され、液状炭化水素HCの合成効率を一層助長することに帰する。
【産業上の利用可能性】
【0082】
基本構成(1)、(2)、(3)、(4)に立脚している本発明は、液状炭化水素が生成されている層における二酸化炭素と空気との混合気体による気泡の全表面との接触、更には、当該層の上側界面における二酸化炭素と空気との混合気体との接触によって液状炭化水素を効率的に合成した上で、水の流動状態によって、前記(1)及び(2)の反応式が発生する機会を助長することによって、液状炭化水素の増産を実現することができるという多大なメリットを発揮しており、産業上の利用価値は絶大である。
【符号の説明】
【0083】
W 水
A 空気
HC 液状炭化水素(hydrocarbonの略)
M 二酸化炭素と空気の混合気体
P ポンプ
1 反応槽
10 反応槽の壁部における突出領域
11 環流パイプ
2 二酸化炭素と空気との混合気体の供給源
3 二酸化炭素の供給源
4 空気の供給源
5 供給量調整器具
6 二酸化炭素の濃度測定器具
7 回転羽根又はスクリュー
【要約】
【課題】水中の酸素及び二酸化炭素から液状炭化水素を増産する方法の提供。
【解決手段】液状炭化水素HCと混合している水Wを収容している反応槽1内にて光触媒を介して、二酸化炭素及び水Wを一酸化炭素及び水素に還元し、更に光触媒を介した一酸化炭素と当該水素との化学反応によって液状炭化水素HCを更に合成する方法及び装置であって、二酸化炭素と空気Aとの混合気体Mを反応槽1の底部及び/又は側部から供給するか、又は二酸化炭素及び空気Aをそれぞれ反応槽1の底部及び側部の一方及び他方から供給することによって、水Wの上側における液状炭化水素HCの層を通過する混合気体Mによる気泡との接触、前記層の上側界面と、二酸化炭素と空気Aとの混合気体Mとの接触、水Wの流動によって前記課題を達成している液状炭化水素HCの合成方法。
【選択図】
図1