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特許7501956単一光子アバランシェ検出器、その使用方法および製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】単一光子アバランシェ検出器、その使用方法および製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/107 20060101AFI20240611BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H01L31/10 B
G01J1/02 B
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021537517
(86)(22)【出願日】2019-09-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 GB2019052508
(87)【国際公開番号】W WO2020053564
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】1814688.6
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】301008419
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティー コート オブ ザ ユニバーシティー オブ グラスゴー
(73)【特許権者】
【識別番号】505469481
【氏名又は名称】ヘリオット-ワット・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Heriot-Watt University
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポール、ダグラス ジョン
(72)【発明者】
【氏名】デュマス、デレク
(72)【発明者】
【氏名】キルドダ、ヤロスロウ
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、ロス ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】ミルザ、ムハマド エム
(72)【発明者】
【氏名】ブラー、ジェラルド エス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァインズ、ピーター
(72)【発明者】
【氏名】クズメンコ、カテリーナ
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0326259(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0028443(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0172525(US,A1)
【文献】特開2016-213362(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0300838(US,A1)
【文献】特開2013-207231(JP,A)
【文献】特開昭58-091686(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105720129(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/0392,31/08-31/119
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型半導体接触層上に形成されたSiベースのアバランシェ層と、
アバランシェ層の中または上に形成された、面内幅を有するp型電荷シート層と、
電荷シート層および/またはアバランシェ層の上に、電荷シート層と重なるように形成された、面内幅を有するGeベースの吸収層と
を備える、単一光子アバランシェダイオードデバイス(SPAD)であって、
少なくとも1つの表面内方向において、前記Geベースの吸収層の前記面内幅は、前記p型電荷シート層の前記面内幅より大きい
SPADデバイス。
【請求項2】
すべての表面内方向において、前記Geベースの吸収層の前記面内幅が前記p型電荷シート層の前記面内幅より大きい、請求項1に記載のSPADデバイス。
【請求項3】
前記Geベースの吸収層上に形成された、面内幅を有するp型半導体接触層をさらに備え、
前記p型半導体接触層の少なくとも一部が、前記p型電荷シート層の少なくとも一部実質的に上方に形成され、その間に前記Geベースの吸収層が介在している
請求項1または請求項2に記載のSPADデバイス。
【請求項4】
少なくとも1つの表面内方向において、前記Geベースの吸収層の前記面内幅が、前記p型半導体接触層の前記面内幅より大きい、請求項3に記載のSPADデバイス。
【請求項5】
すべての表面内方向において、前記Geベースの吸収層の前記面内幅が、前記p型半導体接触層の前記面内幅より大きい、請求項3に記載のSPADデバイス。
【請求項6】
すべての表面内方向において、前記Geベースの吸収層の前記面内幅が、前記p型半導体接触層の前記面内幅より大きく、かつ前記p型電荷シート層の前記面内幅より大きい、請求項3に記載のSPADデバイス。
【請求項7】
前記p型半導体接触層全体が、前記p型電荷シート層の少なくとも一部実質的に上方に形成された、請求項3から6のいずれか一項に記載のSPADデバイス。
【請求項8】
前記Geベースの吸収層は、前記表面内方向に側壁を有し、前記電荷シート層は、前記表面内方向に横方向縁部を有し、かつ
(a)前記Geベースの吸収層が少なくとも1μmの厚さを有する場合、前記電荷シート層の前記横方向縁部と前記Geベースの吸収層の前記側壁との間の前記表面内方向の距離は、前記Geベースの吸収層の前記厚さより少なくとも1μm大きい、または
(b)前記Geベースの吸収層の厚みが1μm未満の場合、前記電荷シート層の前記横方向縁部と前記Geベースの吸収層の前記側壁との間の前記表面内方向の距離は、少なくとも1μmである、
請求項1から7のいずれか一項に記載のSPADデバイス。
【請求項9】
前記電荷シート層の横方向縁部と前記Geベースの吸収層の側壁との間の前記表面内方向の距離は、少なくとも5μmである、請求項1から8のいずれか一項に記載のSPADデバイス。
【請求項10】
前記p型半導体接触層は、前記表面内方向に横方向縁部を有し、前記電荷シート層は、前記表面内方向に横方向縁部を有し、かつ
(c)前記電荷シート層の幅が25μm以上の場合、前記電荷シート層の前記横方向縁部と前記p型半導体接触層の前記横方向縁部との間の前記表面内方向の距離が2μm以上である、または
(d)前記電荷シート層の幅が25μm未満の場合、前記電荷シート層の前記横方向縁部と前記p型半導体接触層の前記横方向縁部との間の前記表面内方向の距離は、少なくとも1μmである、
請求項3から7、または請求項3から7のいずれか一項に従属する請求項8から9のいずれか一項に記載のSPADデバイス。
【請求項11】
前記電荷シート層は、前記Siベースのアバランシェ層の表面から10100nmの範囲の深さで最大ドーピング濃度を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載のSPADデバイス。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のSPADデバイスをそれぞれ少なくとも1×2で配列し、共通の基板上に形成された、SPADアレイ。
【請求項13】
隣接するSPADデバイスのそれぞれのGeベースの吸収層は、
(i)隣接するSPADデバイスのそれぞれのGeベースの吸収層を形成するため、少なくとも前記p型電荷シート層の深さまで、連続した前記Geベースの吸収層エッチングされた空間によって、または
(ii)隣接するSPADデバイスのそれぞれのGeベースの吸収層を形成するため、少なくとも前記p型電荷シート層の深さまで、連続した前記Geベースの吸収層ドーピングされた部分によって、または
(iii)隣接するSPADデバイスのそれぞれのGe吸収層を形成するため、パターン化された電気絶縁層内で選択的に成長されたそれぞれの前記Geベースの吸収層とすることによって、
横方向に隔離された、請求項12に記載のSPADアレイ。
【請求項14】
0.92.0μmの範囲の波長の光を発する光源と、請求項1から11のいずれか一項に記載のSPADデバイス、または請求項12から13のいずれか一項に記載のSPADアレイとを備える、LIDARシステム。
【請求項15】
0.92.0μmの範囲の波長を有する少なくとも1つの光子の検出における、請求項1から11のいずれか一項に記載のSPADデバイス、または請求項12から13のいずれか一項に記載のSPADアレイの使用。
【請求項16】
請求項1から11のいずれか一項に記載のSPADデバイスを製造する方法であって、前記p型電荷シート層が、前記Siベースのアバランシェ層へのドーパントの選択エリア注入により形成される、SPADデバイスを製造する方法。
【請求項17】
前記電荷シート層は、Geベースの吸収層の堆積前に850℃以上の温度でアニールされて活性化される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
Geベースの吸収層の少なくとも1つの上面および/または側面がパッシベーションされる、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記パッシベーションは、熱成長したGeO層により提供され、Al層で保護される、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一光子アバランシェ検出器(SPAD)に関し、特に、排他的ではないが、1300~1600nm(SWIR)または1700nmの間の波長で動作するように設計された単一光子アバランシェ検出器に関する。本発明は、そのような検出器のアレイに加え、そのような検出器またはアレイの使用方法、およびそのような検出器またはアレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
波長1310nmおよび1550nmの単一光子検出器は、量子光学、量子拡張イメージング、光ファイバによる量子通信、自動車や自律走行車のLIDAR(光検出及び測距、LIDAR:Light Detection And Ranging)など、幅広い応用で必要とされている。イメージングと距離測定の応用では、1500~1600nmの波長での動作が特に重要である。この波長は、スペクトルの可視部分を含む短波長に比べて、水蒸気が光を強く吸収または散乱しない大気のウィンドウである。煙[54]、スモッグ[15]、霧やヘイズ[16]は、すべてこのウィンドウでは可視光に比べて透明度が向上する。可視波長のバックグラウンド信号として機能する太陽放射は、可視波長から1550nmで大幅に低減する[14]。1400nm超の波長では、可視光および近赤外光に比べてレーザの安全閾値が高くなるため[13]、LIDARなどの活性システムの光源の光パワーも、波長1550nmでは可視光の波長に比べて少なくとも20倍以上増加し、システムの信号対雑音比を向上させることができる。そのため、1550nmでのLIDARの性能は、可視波長と比べて、特に多くの不明瞭なものが存在する場合には、大幅に向上する。
【0003】
2016年のLIDAR市場は5億8、000万ドル規模(主に地理情報システムに加え、CMOSイメージセンサとロボティクスが約市場の40%を占める軍事システム)であったが、2022年には12億ドル規模に成長し、自動車用LIDARが市場の16%を占めるようになるとの報告もある。US50ドルの自動車用LIDARシステムを提供できるようになれば、商業的にも大きな利益が得られる。すでに自動車および自律走行車向けに、オールSiの光検出器を利用した可視光または可視光に近い光(例えば、905nmまたは940nm)のLIDARシステムが多数入手可能である。
【0004】
市販されているシリコンCMOS SPADは、940nmまでの可視光で動作するが、Siの間接バンドギャップのため、単一光子検出効率(SPDE)は低い(10%以下)[12]。現在、波長1310~1550nmの単一光子検出器として市販されているのは、233Kでペルチェ冷却器を使用して動作するInGaAs/InP SPADデバイスのみで、価格は1ピクセルモジュールで約2万ポンドである。これらのInGaAs/InP SPADデバイスのイメージングアレイは10万ポンド以上かかり、ITAR(米国の規制制度)で制限されている。8K未満の極低温動作が必要な超伝導単一光子検出器もそれぞれ通常単価8万ポンドで市販されているが、極低温冷却器は大型で、かなりの電力を必要とするため、持ち運び可能な応用での使用機能が制限されている。どちらの技術も高価である間に、特に自動車および自律走行車の市場では、一般的に低価格(US50ドル程度)のシステムが求められており、現在の技術では大量生産しても到達することは極めて困難である。
【0005】
上記のような市場で必要とされる性能を備えた安価な製品を量産するように、大量製造できる単一光子検出器デバイスを生産できることが望ましい。
【0006】
本発明は、以上の検討を踏まえて考案されたものである。
【発明の概要】
【0007】
本発明の発明者らは、平面Ge-on-Si SPADアーキテクチャを使用することで、意義深い性能が得られる可能性があることに気付いた。これは、本発明の一般的な態様を構成している。これにより、安価なGe-on-Siプラットフォームを利用しながら、Ge吸収層の電界を横方向に閉じ込めることで、メサ型平面Ge-on-Si SPADアーキテクチャよりも性能が向上できると考えられる。
【0008】
したがって、本発明は好ましく第1の態様において、n型半導体接触層上に形成されたSiベースのアバランシェ層と、アバランシェ層の中または上に形成された、面内幅を有するp型電荷シート層と、電荷シート層および/またはアバランシェ層の上に、電荷シート層と重なるように形成された、面内幅を有するGeベースの吸収層とを備える単一光子アバランシェダイオードデバイス(SPAD)であって、少なくとも1つの表面内方向において、前記Geベースの吸収層の前記面内幅は、前記p型電荷シート層の前記面内幅より大きいSPADデバイスを提供する。
【0009】
本発明は好ましく第2の態様において、第1の態様にそれぞれ係るSPADデバイスを少なくとも1×2で配列し、共通の基板上に形成したSPADアレイを提供する。
【0010】
本発明は好ましく第3の態様において、1.31.6μmの範囲の波長の光を発する光源と、第1の態様に係るSPADデバイス、または第2の態様に係るSPADアレイとを備える、LIDARシステムを提供する。
【0011】
本発明は好ましく第4の態様において、第1の態様に係るSPADデバイス、または0.92.0μmの範囲の波長を有する少なくとも1つの光子の検出における、第2の態様に係るSPADアレイの使用を提供する。第1の態様に係るSPADデバイスまたは第2の態様に係るSPADアレイは、1.3~1.6μmの範囲の波長を持つ少なくとも1つの光子の検出における使用されてよい。
【0012】
本発明は好ましく第5の態様において、第1の態様に係るSPADデバイス、または第2の態様に係るSPADアレイを製造する方法であって、前記p型電荷シート層が、Siベースのアバランシェ層への選択エリア注入によって形成される製造する方法を提供する。
【0013】
ここで、本発明の任意の特徴を説明する。
【0014】
好ましくは、すべての表面内方向において、Geベースの吸収層の面内幅は、p型電荷シート層の面内幅よりも大きいことである。これにより、デバイス内の電界分布が適切になり、1または複数の領域での「ホットスポット」を回避することが確実にできる。また、側壁の表面状態による暗計数率(DCR)への寄与を低減または回避することもできる。
【0015】
SPADデバイスは、前記Geベースの吸収層上に形成された、面内幅を有するp型半導体接触層をさらに備えてよく、前記p型半導体接触層の少なくとも一部が、前記p型電荷シート層の少なくとも一部の実質的に上方に形成され、その間に前記Geベースの吸収層が介在してよい。
【0016】
この場合、好ましくは、少なくとも1つの表面内方向において、Geベースの吸収層の面内幅がp型半導体接触層の面内幅よりも大きい。より好ましくは、すべての表面内方向において、前記Geベースの吸収層の前記面内幅が、前記p型半導体接触層の前記面内幅より大きく、かつ前記p型電荷シート層の前記面内幅より大きい。
【0017】
好ましくは、前記p型半導体接触層全体が、前記p型電荷シート層の少なくとも一部実質的に上方に形成される。代替的に、p型半導体接触層の少なくとも一部が、p型電荷シート層全体実質的に上方に形成されていることが好ましい。
【0018】
前記Geベースの吸収体は、表面内方向に側壁を有してよい。また、電荷シート層は、前記表面内方向に横方向縁部を有してよい。また、Geベースの吸収体の厚さが1μm以上の場合、電荷シート層の横方向縁部とGeベースの吸収体の側壁との間の表面内方向の距離は、Geベースの吸収体の厚さよりも1μm以上大きいことが好ましい。これにより、上述および後述の説明された技術的利点を得るために、Geベースの吸収体をp型電荷シート層の上に適切に重ならせることができると考えられる。
【0019】
代替的に、Geベースの吸収体の厚さが1μm未満の場合、電荷シート層の横方向縁部とGeベースの吸収体の側壁との間の表面内方向の距離は、1μm以上であってよい。
【0020】
いくつかの実施形態において、電荷シート層の横方向縁部とGeベースの吸収体の側壁との間の表面内方向の距離は、少なくとも5μmである。
【0021】
いくつかの実施形態において、電荷シートの幅が少なくとも25μmである場合、電荷シート層の横方向縁部とp型半導体接触層の横方向縁部との間の表面内方向の距離は少なくとも2μmであってよい。代替的に、電荷シートの幅が25μm未満の場合、電荷シート層の横方向縁部とp型半導体接触層の横方向縁部との間の表面内方向の距離は、少なくとも1μmであってよい。
【0022】
本開示では、デバイスの表面内方向の寸法を示すために、一般的に「幅」という表現を使用している。表面内方向とは、デバイスを形成する基板(代表的には単結晶Si基板)の主面に平行な方向である。「直径」という表現は、デバイスの特定の特徴の幅を示すために使用され、典型的には島状構成を有する特徴である。「直径」という表現の使用は、必ずしもその特徴が平面視で円形であることを(可能であり、場合によってはそれが望ましいことにかかわらずに)示すものではない。この特徴は、平面視で正方形、長方形、丸みを帯びた正方形または丸みを帯びた長方形、楕円形、レーストラック、またはその他の同等の形状を有しており、その「直径」は関心のある表面内方向の幅を示すことを意図してよい。
【0023】
電荷シート層は、通常、Siベースのアバランシェ層の表面からの深さに応じて変化するドーピング濃度を有している。そのため、最大ドーピング濃度の深さに相当する深さを特定することができる。好ましくは、電荷シート層は、Siベースのアバランシェ層の表面から30100nmの範囲の深さに最大のドーピング濃度を有する。この構成により、ドーパントが表面に拡散して失われるのを防ぎ、したがってGeベースの吸収層の堆積前に洗浄することができると考えられる。
【0024】
Siベースのアバランシェ層は、少なくとも0.5μmの厚さであってよい。好ましくは、少なくとも1μmの厚さであり、最大2μmの厚さであってよい。
【0025】
Siベースのアバランシェ層はi-Siでよい。
【0026】
また、n型半導体接触層は、n++Siであってよい。
【0027】
Geベースの吸収体はi-Geであってよい。Geベースの吸収体は、i-Geを含めてよい。Geベースの吸収体は、80%以上のGe、85%以上のGe、90%以上のGe、95%以上のGe、または99%以上のGeを含めてよい。Geベースの吸収体は、Ge合金ベースの吸収層であってよい。Ge合金ベースの吸収体は、GeとSn(スズ)、Si(シリコン)またはC(カーボン)の合金を含めてよい。例えば、Ge合金ベースの吸収体は、GeSi1-x、Ge1-xSn、GeSi1-x-ySn、またはSi1-xGeを含んでよい。p型半導体接触層は、10100nmの範囲の厚さを有してよい。
【0028】
また、p型半導体接触層は、p++Geであってよい。
【0029】
また、Geベースの吸収層の少なくとも1つの上面および/または側面がパッシベーション化されてよい。このパッシベーションは、GeO層に提供されてよい。これは、例えば、熱成長してよい。GeO層はAl層で保護されてよい。適切なAl層は、原子層堆積法によって堆積されてよい。Al層は、GeO層が大気中の水分によってエッチングされるのを防ぐことができてよい。
【0030】
電荷シート層の横方向縁部は、電荷シート層の最大ドーパント濃度からアバランシェ層のドーパント濃度までの表面内距離に応じて変化するドーパント濃度のプロットにおいて、電荷シート層の最大ドーパント濃度の0.5倍の位置と定義することができる。
【0031】
通常、p型半導体接触層はリソグラフィによって形成される。接触層は、エッチングまたは注入により形成されてよい。なお、p型半導体接触層の横方向縁部は、Geベースの吸収層からのp型半導体接触層の最大高さの半分に相当する横方向位置と定義してよい。
【0032】
好ましくは、Geベースの吸収体は、少なくとも1つの表面内方向に側壁を有し、Geベースの吸収体の幅は、1つの側壁から別の側壁まで測定可能である。
【0033】
一般的には、デバイスはSACM(Assorption Charge and Multiplication)アーキテクチャを有することが好ましい。
【0034】
好ましくは、100Kでの暗計数率(DCR)が100カウント/秒/μm未満のデバイスである。
【0035】
好ましくは、このデバイスは、波長1.3~1.45μmの光子に対して、100Kで10%以上の単一光子検出効率(SPDE)を有する。
【0036】
好ましくは、このデバイスは、78Kで2×10-15W/Hz1/2以下のノイズ等価電力(NEP)がを有する。
【0037】
好ましくは、このデバイスは、100Kで3×10-15W/Hz1/2以下のノイズ等価電力(NEP)を有する。
【0038】
好ましくは、このデバイスは、125Kで7×10-15W/Hz1/2以下のノイズ等価電力(NEP)を有する。
【0039】
SPADアレイでは、SPADデバイスが平面的な構造を有することが好ましい。これは、メサアーキテクチャよりも優先される。
【0040】
SPADアレイでは、少なくとも2×2個のSPADデバイス、少なくとも4×4個のSPADデバイス、またはその任意の他の適切なSPADデバイスのアレイを持つことが好ましく、イメージング用途のように多数のSPADデバイスを含むことも可能である。
【0041】
SPADアレイにおいて、隣接するSPADデバイスのそれぞれのGeベースの吸収層は、
(i)隣接するSPADデバイスのそれぞれのGeベースの吸収層を形成するため、少なくとも前記p型電荷シート層の深さまで、連続した前記Geベースの吸収層をエッチングすることによって、または
(ii)隣接するSPADデバイスのそれぞれのGeベースの吸収層を形成するため、少なくとも前記p型電荷シート層の深さまで、連続した前記Geベースの吸収層をドーピングすることによって、または
(iii)隣接するSPADデバイスのそれぞれのGe吸収層を形成するため、パターン化された電気絶縁層内でそれぞれの前記Geベースの吸収層を選択エリア成長させることによって、横方向に隔離されてよい。
【0042】
なお、(iii)については、Si-Geヘテロ界面の転位密度を低減するため、選択エリア成長が有利になれる。
【0043】
SPADアレイ(またはSPADデバイス)は、ペルチェ冷却器に取り付けられて用いられてよい。
【0044】
SPADデバイスを適切な動作温度に維持するため、ペルチェ冷却器を使用することが低コストの実施形態では好ましい。
【0045】
SPADデバイスは、0.9~2.0μmの範囲、または1.3~1.7μmの範囲の波長を有する少なくとも1つの光子を検出するために使用されることが好ましい。 本発明の発明者らは、1.7μmまでの間接吸収テールに改善が見られることが確認された。
【0046】
使用時には、SPADと同様に、デバイスにそのアバランシェ降伏電圧超にバイアスをかける。 これは、アバランシェフォトダイオード(APD)と呼ばれる、関連するが別の種類である対照的デバイスである。 光子が検出された後、SPADデバイスは通常、バイアスを耐圧未満に低減することでクエンチされ、その後、バイアスを耐圧電圧超に増やすことでリセットされる。
【0047】
本発明のデバイスを製造する方法では、Geベースの吸収層を堆積する前に、850℃以上の温度でアニールすることにより、電荷シート層を活性化してよい。
【0048】
本発明は、そのような組み合わせが明らかに許されない、または明示的に回避される場合を除き、記載されている態様および好ましいまたは任意の特徴の組み合わせを含むものである。本発明のさらなる任意の特徴は、本開示の残りの部分に記載されている。
【0049】
本発明の好ましい実施形態では、ゲルマニウム・オン・シリコン単一光子アバランシェ検出器(SPAD)を、シリコン鋳造業を使用した平面プロセスで製造することができるという大きな利点が提供される。これにより、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)またはMEMS(微小電気機械システム)鋳造業の製造技術が可能となり、同一ダイ上に電子部品を集積する可能性がある。詳細は後述するように、この新しい設計・製造方法により、125Kで1310nmの単一光子検出効率(SPDE)が最大38%になることが実証された。これは、これまでのGe-on-Si SPADデバイスの中で最も優れたものと比較して、ほぼ数値を一桁向上した[29][28][30]。直径100μmのデバイスは175Kまで動作し、サイズを小さくすることで、現在市販されているInGaAs/InP SPADデバイスで使用されているようなペルチェ冷却器での動作が可能になる。SPDEの性能は、市販のInGaAs/InP SPADと同等以上であるが、DCRは他のGe-on-Si SPADよりもかなり低く[29]、最先端のInGaAs/InP SPAD[44]よりもまだ高い。DCRはデバイスの面積にほぼ比例するため、より小径のデバイスにスケールアップすることでDCRを有利に低減する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
ここで、本発明の原理を示す実施形態および実験について、添付図面を参照して説明する。
【0051】
図1】本発明の一実施形態に係る装置の概略図である。
図2a】本発明の一実施形態に係るプレーナデバイス(設計1)の電界プロファイルをシミュレーションしたもを示す図である。
図2b】本発明の一実施形態に係るプレーナデバイス(設計1)の電界プロファイルをシミュレーションしたもを示す図である。
図3a】比較例のメサデバイス(設計2)の電界プロファイルをシミュレーションしたものを示す図である。
図3b】比較例のメサデバイス(設計2)の電界プロファイルをシミュレーションしたものを示す図である。
図4図2に示されたデバイス(設計1)と図3に示されたデバイス(設計2)の100Kにおける暗電流を示しす図である。
図5】78Kにおける1310nmの波長の光を照射したときの暗電流と光電流の応答を示す図である。20Vではシート電荷層のパンチスルーが明らかである。
図6】設計1の直径100μmのGe SPADの78K、波長1310nmにおける単一光子検出効率(SPDE)と暗計数率(DCR)を示す図である。メサデバイス(設計2)と比較してDCRが700分の1に低減していることを明示する。
図7】設計1の直径100μmのGe SPADの100K、波長1310nmにおける単一光子検出効率(SPDE)と暗計数率(DCR)をを示す図である。メサデバイス(設計2)と比較してDCRが700分の1に低減していることを明示する。
図8】設計1の直径100μmのGe SPADの125K、波長1310nmにおける単一光子検出効率(SPDE)と暗計数率(DCR)をを示す図である。メサデバイス(設計2)と比較してDCRが700分の1に低減していることを明示する。
図9】SiOマスクにエッチングされたウィンドウの内側にあるSiの上に、選択的に成長させたGe吸収体の走査型透過電子顕微鏡(STEM)の画像である。一方、SiとGeの間のヘテロ界面にはミスフィット転位(黒点)が明らかであるが、10μm幅のGeピクセルには貫通転位は明らかではない。Si層とGe層の一部に見られる座屈は、透過型電子顕微鏡(TEM)サンプルの形成過程で生じた残留ひずみによるものである
図10】原子層堆積Al保護キャップを用いた熱酸化による平坦なGe表面上のGeOパッシベーションプロセスの静電容量-電圧挙動を示す図である。
図11】過剰バイアス5.5%、温度78K、入射放射線λ=1310nmの条件で、直径100μmのSPADのタイミングヒストグラムである。半値全幅(FWHM)のジッタは310psである。
図12a】、直径100μmのSPADの温度125K(四角)、150K(丸)、175K(三角)における入射波長の関数としての正規化SPDEを示す図である。
図12b】、直径100μmのSPADの温度125K(四角)、150K(丸)、175K(三角)における入射波長の関数としての正規化SPDEを示す図である。
図13】Geの遮断波長の実験値(四角)と理論値(線)を温度の関数として示す図である。
図14】厚さ2μmのGe吸収領域を持つGe-on-Si SPADの推定遮断波長とフィッティングを示す図である。
図15】直径100μmのGe-on-Si SPAD(開いた四角)のアフターパルシング確率を、直径25μmの市販のInGaAs/InP SPAD(閉じた四角)に比べ、λ=1310nmで測定し、SPDE17%と温度125Kの条件で動作させたときのゲート遅延時間の関数として示す図である。
図16】過剰バイアスが2.0%(黒四角)、2.5%(赤丸)、3.5%(青の上三角)および4.5%(ピンクの下三角)の場合に、Ge-on-Si SPADのアフターパルシング確率から抽出した時定数を1/kTの関数として示す図である。
図17】Ge-on-Si SPADの活性化エネルギーを過剰バイアスの関数として示す図である。
図18】125KにおけるGe-Siヘテロ界面のバンド構造を示す図であって、転位による閉じ込められた欠陥状態を示している(破線)。
図19】単一光子特性評価機構を示す図である。黒い線は電気的接続を、赤い実線は光ファイバ接続を、赤い点線は自由空間光接続を示している。レーザスポットは、広帯域イメージングシステム(図示せず)を使用してSPADの光学領域に向けられた。
図20】設計1の直径100μmのGe SPADと設計1の直径26μmのGe SPADについて、78K、100K、125Kおよび150K、波長1310nmにおける単一光子検出効率(SPDE)を示す図である。
図21】設計1の直径100μmのGe SPADと設計1の直径26μmのGe SPADについて、78K、100K、125Kおよび150K、波長1310nmにおける暗計数率(DCR)を示す図である。
図22】設計1の直径100μmのGe SPADと設計1の直径26μmのGe SPADのノイズ等価電力(NEP)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
ここで、本発明の態様および実施形態について、添付図面を参照して説明する。さらなる態様および実施形態は、当業者に対しては明らかである。本明細書において、文中に言及されたすべての文献の内容は、参照により組み込まれている。それらの文献は、説明の最後にリストアップされ、番号が付けられており、以下のテキストでは角括弧により示されている。
【0053】
[序章と概要]0.9μm~2.0μmの波長領域でピコ秒分解能のタイミングアプリケーションに使用する新世代の平面Ge-on-Si単一光子アバランシェ検出器(SPAD)の設計、製造、特性評価を行った。この新規平面形状を採用することにより、このクラスの単一光子検出器の性能を大幅に向上させることができ、アバランシェ降伏を超える大きな過剰バイアスをかけることができ、その結果、125Kで、検出波長1310nmの条件で38%の単一光子検出効率(SPDE)を実現した。この波長領域で動作する他の半導体ベースの単一光子検出器と比較しても優れており、低暗計数率(DCR)と相まって、Ge-on-Si SPADの記録的に低いノイズ等価電力(NEP)である2×10-16WHz-1/2を達成し、これまでの最良の結果に比べて50倍の改善を達成した。初めて、InGaAs/InPとGe-on-Si SPADとを同様の動作条件で比較したところ、Ge-on-Si SPADはアフターパルシング効果がかなり低く、非常に高い計数率での使用が可能であることが示されている。これらの結果は、安価なGe-on-Siプラットフォームを利用することで、アイセーフな自動車Oおよび自律走行車LIDAR、及び、将来の量子技術利用の範囲内での利用のために、通信波長で動作する高効率、高計数率のGe-on-Si SPADの大規模アレイの開発に向けたルートを提供する。
【0054】
室温に近いコンパクトな半導体ベースの単一光子検出器(SPAD)は、可視光および短波長赤外のスペクトル領域における様々な新興の応用分野で、光学的検出アプローチとして受け入れられているようになった[1][2][3]。SPAD検出器は、アバランシェ降伏を超える電界でバイアスされたガイガーモードのアバランシェフォトダイオードであって、ここで、入射した単一光子によって自立型アバランシェ電流が引き起こされることができる。光誘発アバランシェの後、次の検出事象の前に、検出器をリセットする、または「クエンチ」の必要がある。このような検出器は、通常、数百ピコ秒の時間的ジッタを持ち、高速の光過渡現象を超高感度で測定することができる。1μm未満の波長では、SiベースのSPADは、量子基盤の実験[4]およびファイバや自由空間での量子通信の実証実験[5][6]を含む様々な量子フォトニック応用に使用されている。光検出及び測距(LIDAR:Light Detection And Ranging)などのより伝統的な応用分野でも、SiベースのSPAD検出器は、高感度とピコ秒の時間応答性により、射程距離の向上と表面間の分解能の改善を実現し、候補技術として浮上している[7]。Si SPAD検出器は、標準的なSi CMOSプロセスと統合され、電子機器を内蔵した超高感度の大型検出器アレイを実現している[8]。この低コスト技術により、タイムオブフライトシステムは、自動車産業[9][10][11]およびスマートフォン産業[12]への適用や開発が可能となった。
【0055】
SPAD検出器のスペクトル範囲を、SiベースのSPADの検出スペクトルを超えて短波長赤外(SWIR)領域に拡張することには、多数の明確な利点がある。まず、光ファイバの低損失通信ウィンドウとの互換性は、量子通信を含むほとんどのファイバベースの応用の基本要件である。次に、LIDARや距離測定などの自由空間での応用では、眼の安全レーザ閾値のために、レーザ光源の光パワーは比較的低いレベルに制限されている。この閾値は、レーザの波長が850nmから1550nmに増大すると約20倍に上昇し[13]、活性イメージング応用において、眼の安全を維持しながら光パワーを向上させることができる。その結果、到達可能な最大範囲が大きくなり、および/または、深度分解能が向上する可能性がある。第3に、ほとんどの単一光子LIDARシステムで通常バックグラウンドレベルとして機能する太陽放射は、SWIRでは大幅に減少する[14]。最後に、SWIRでの動作は、特に煙、スモッグ[15]、霧およびヘイズ[16]などの不明瞭なものを通じた大気中の透過率を高めることになる。
【0056】
SWIR領域において、最も広く使用されている単一光子検出器は、InGaAs/InP SPAD、および超伝導ナノワイヤ単一光子検出器(SNSPD)である[1][2]。一般的に、SNSPDデバイスは優れた単一光子検出性能を持っているが、動作温度が通常3K未満の極低温であるため、特定の重要な応用分野での使用が制限されている。InGaAs/InP SPADは、SWIR領域の主要な単一光子検出器であり、様々な量子通信実験、特に長距離量子鍵配布の実証実験に使用されている[17]。最近、InGaAs/InP SPADがLIDARやデプスプロファイリング実験に使用され、キロメーター範囲で良い効果を上げている[18][19]。InGaAs/InP SPADのアレイが開発され、通信波長で高性能な検出を実現している[20]が、2次元アレイは、低コストで大量生産される自動車や自律走行車のLIDAR市場では高価になる可能性がある。InGaAs/InP SPADの使用を困難にしている一つの問題は、後述するアフターパルシングの影響であり、多くの異なる応用状況において、これらのSPADに対する可能な計数率を大幅に制限している。
【0057】
吸収層にInGaAsを使用する代わりに、半導体材料のGeを使用する方法がある。室温では、Geは1650nmまでの波長の入射放射線に対して感度があり、Si CMOS[21]との集積化が可能で、電子機器集積化、高収率、低コストの量産が期待できる。これまで、Geのみで作製したSPADは、時間分解フォトルミネッセンス[22]など、実験室ベースの単一光子応用に使用されてきたが、Geの直接バンドギャップが約0.8eVと狭いため、アバランシェのゲインはバンド間トンネリングによって制限されている。1210nmの放射線を吸収するためにSi0.7Ge0.3/Si多重量子井戸を用いたGe含有SPADは、Loudonらによって初めてSiアバランシェ領域を持つものが報告された[23]。この検出器の効率と波長範囲は、比較的薄い歪んだ超格子の吸収層を使用することで制限されていた。この検出器は、短波長赤外域での効率が悪かったものの、SiベースのSPAD検出器におけるSACM(Separate Absorption、 Charge and Multipiplication)構造の別の初期の例であり、InGaAs/InP SPADやアバランシェフォトダイオードで使用されていた以前のSACM設計と概念的に類似していた。Si0.7Ge0.3吸収体領域では、トンネリングやインパクトイオン化を避けるために低電界とし、Si増倍層では薄いSiチャージシートにより、より大きな電界を実現している。300K(78K)で3.66eV(3.53eV)という大きなSi直接バンドギャップ[24]は、高性能のSPADに不可欠な高電界アバランシェ領域でのバンド間トンネリングによるノイズを大幅に低減する。この10年間で、Si基板上により厚いエピタキシャルGe層を成長させることが可能になった。Kangらは、高ゲインの帯域幅製品で動作するモノリシックGe-on-Siアバランシェフォトダイオード(APD)を発表した[25]。また、CMOS対応のGe導波路型フォトダイオード[26]およびAPD[27]も開発されている。ガイガーモードのGe-on-Si SPADは、Luら[28]とWarburtonら[29]によって発表された。後者では、1310nmの検出波長を使用する100Kで1×10-14WHz-1/2のノイズ等価電力(NEP)が報告された。より最近では、Martinezらによって導波路型Ge-on-Si SPADが製造され[30]、波長1310nm、80Kでの単一光子検出効率(SPDE)が5.27%であることが報告された。しかし、これらのSPADは、いずれもInGaAs/InP SPADに十分に匹敵する性能を有しておらず、また、暗計数率が多くの応用で効果的に使用されることを阻止している。
【0058】
今まで、標準的な入射用Ge-on-Si SPADでは、デバイスの側壁が露出するメサ型設計が採用されていた。本発明の発明者らは、このような状況下では、表面効果のために検出器の性能が大きく制限され、暗計数率が非常に高くなることに気付いた。本発明の発明者らはさらに、高電界領域がいずれの側壁からも十分に離れた場所にある平面設計を使用することで、これらの制限を回避でき、高品質のパッシベーション層の要件を軽減できることに気付いた。本明細書において、初の垂直入射の平面型Ge-on-Si SPADを報告し、高性能な動作を実証する。Si CMOSと統合することで、低コストで高性能なSPADアレイによるSWIRバンドのイメージングが明らかに可能になることを示す。
【0059】
設計、製造、特性評価の結果
【0060】
図1は、参照番号で示される以下の特徴を有する本発明による装置の概略断面図である。
1.p++Geトップオーミック接触層;
2.i-Ge吸収体;
3.P型ドープSiシート電荷層;
4.i-Siアバランシェゲイン増倍領域;
5.底部n++Siオーミック接触層;
6.シリコン基板;
7.SiO、Si、SiO、水素シルセスキオキサン、TEOS、BPSG、ポリイミド、ベンゾシクロブテンベースのポリマ、などの電気絶縁体;
8.Ge on Si SPADデバイスの上部電気接点への金属配線;
9.Ge on Si SPADデバイスの底部の電気接点への金属配線;
10.トップオーミック接触層(1)の外側とP型ドープシート電荷層(3)の外側との間の横方向距離;
11.Ge吸収体の厚さ;
12.ドープシート電荷層(3)の外側の縁部とGe吸収層(2)の外側の縁部との間の距離;
13.i-Siアバランシェゲイン増倍領域の厚さ;
14.ドープシート電荷層(3)の幅。
【0061】
図示していないが、このデバイスは、反射防止コーティング(ARC-窒化シリコン、または屈折率が約2である他の透明な材料など)をさらに含んでよく、ホットスポットを減らすためにトップオーミック接触層を段階的にエッチングし、ドープシート電荷層(3)をGe-Siヘテロ界面からゼロではない距離に埋め込んでもよい。
【0062】
理論に縛られることなく、本発明の発明者らは、以下に説明する特徴を単独で、またはより好ましくは組み合わせて、既知のデバイスと比較して技術的に顕著な差異を提供することを示唆する。
【0063】
まず、能動デバイスの特定の部分を覆うように、選択エリアに注入されたシート電荷層3を使用する。これにより、高電界のSiアバランシェ領域を横方向に閉じ込めることができ、Ge吸収体内の電界を横方向に閉じ込めることができる。注入後、このシート電荷層3を950でアニールして活性化させてから、その上にGe吸収体2とトップp++接触層1をエピタキシャル成長させる。このアプローチでは、Geの融点超の温度で供給層のドーパントを高レベルで活性化し、DCRを増加させる可能性のある点欠陥を減らすことができる。シート電荷層3は、Ge吸収体の成長前に、表面への拡散やその後の洗浄によってドーパントがほとんど失われないように、シリコン表面の下から約60nmのところに最大ドーピングを持つように注入された。
【0064】
第2に、選択エリアドーピング3とゲルマニウム吸収体2を組み合わせたプレーナーデバイスプロセスを設計する。その後、ゲルマニウム層を電荷シートの深さとほぼ同じ深さまで、電荷シートのサイズよりもピクセルのサイズが大きい「スーパーピクセル」の設計でエッチングする。距離12と10は、Geの厚さ11(実証デバイスでは約1.1μmの深さ)よりも大きいことが好ましい。これは、「スーパーピクセル」の側壁での電界がゼロに近くなるようにして、側壁の表面状態によるDCRへの寄与を抑えるためである。この結果、同一面積、同一温度、同一電圧のオーバーバイアスにおいて、公開されたメサデバイスと比較して、暗計数率(DCR)を700分の1に低減することができる[29]。アバランシェ降伏前の暗電流(図4)とDCR(図6図7および図8においては78~125K)の低減により、図6図7および図8に示すように、そのデバイスを著しくより高い単一光子検出効率(SPDE)で動作させることができる。これは、新しいプレーナデバイスの設計とプロセスにより、以前のメサデバイス[29]に比べてSPDEが10倍向上したことに相当する。後述の図2および図3に示す電界モデルでは、設計1のほうが側壁での電界が著しくより低いことが示されている。
【0065】
第3に、埋め込まれたシリコン3、4の上にGe吸収体2は再生される。このGe吸収体は、パターン化された電気絶縁層(例えば、二酸化ケイ素または窒化ケイ素)7の内側にあるバルクエピタキシャル成長層、または選択的に成長したエピタキシャル層とすることができる(図9参照)。また、選択エリアアプローチにより、デバイスの横方向電気的な隔離が可能となり、アレイの実現が可能となる。4×4のテストアレイが生成され、この隔離を実証した。このように、電荷シート層3および上部のp++-Geオーミック接触層1よりも横方向に大きいGe吸収体に「スーパーピクセル」設計を採用することで、デバイスの縁部でアバランシェ降伏の早期開始につながるデバイスのアバランシェ領域のホットスポットを最小限に抑えるように設計されている(すなわち、縁部降伏)。ホットスポットがあると、活性領域の中心部でデバイスの効率が低下するため、SPDEが低下し、デバイスを効率的により高いバイアスレベルで動作させる必要があり、結果的に暗計数率が高くなる。
【0066】
第4に、吸収体をバルクGeエピタキシャル成長させた後に、ピクセルを電気的に隔離する別の方法がある。これは、スーパーピクセルの側壁をGe層2の深さ全体に渡ってエッチングし、ピクセル間の横方向の電気的隔離を行うことを意味する。これは、シャロートレンチアイソレーションと同様に、ゲルマニウムの高い固有キャリア密度と典型的なバックグラウンドドーピングレベル(>1015cm-3)の組み合わせにより、デバイスを横方向に電気的に隔離する方法が必要となるためである。トレンチのエッチングされた縁部は、デバイスの活性領域から少なくともGeヘテロ層2の深さ分の横方向の距離に配置されることが好ましい。活性領域は、p++表面のオーミック接触1と埋め込られたp型シート電荷層3との間の電界プロファイルの観点から考えられる。これは、表面状態で捕捉電荷が電界によってアバランシェ領域に加速され、暗電流およびDCRが増加するのを防ぐことを目的とするアプローチである。代替的に、ドーピングを利用して横方向のp-n電気的な隔離を形成することもできる。
【0067】
第5に、熱成長したGeO(図示せず)をGe表面2およびエッチングされた表面に使用して、パッシベーション化されたGe表面を生成する。いくつかの実施形態において、このGeOを原子層堆積Al層で保護して、大気中の水によってGeOがエッチングされることを防ぐ。図10は、同じ厚さのGeO層とAl層を直径100μmのコンデンサの一部として使用した場合のパッシベーションの電気的特性を示す。このCVでは、1011cm-2程度の捕捉電荷レベルが実証される。
【0068】
第6に、限られたエリア成長を利用して転位の数を減らし、デバイスの暗電流とDCRを低減する。図9では、Si-Geヘテロ界面からGe表面に向かういずれの暗転位線がないことは、限られたエリア成長により貫通転位密度が低減できることが実証される。これにより、アフターパルシングの原因となる捕捉電荷が転位に関連していることが示された場合、この効果の悪影響をさらに低減または排除できる可能性がある。
【0069】
本明細書で説明する実施形態のデバイスは、図2aおよび図2bにモデル化されたSACM構造を一般的に使用しており、または本明細書では「設計1」と呼ばれている。設計1は、p-Ge接触を備え、直径をp-Siシート電荷層よりも小さくし、i-Ge吸収体の幅を両者よりも大きくしたデバイスである。電界プロファイルにより、このデバイスの暗電流および暗計数率が比較的低いと示唆されている。なお、図2aでは、横軸と縦軸は同じ縮尺ではない。図2bは、図2aに示したデバイスの一部を示し、pSi電荷シートの縁部に対応するデバイスの領域における電界強度マッピングをより明確に示すため、横方向のスケールがさらに図2aより拡大されたものである。
【0070】
図3aおよび図3bに比較例のメサ構造が示される。ここでは「設計2」とも呼ばれる。設計2は、i-Ge吸収体と同じ直径のp-Ge接触を持ち、両方ともp-Siシート電荷層の直径よりも小さい(あるいは同じの)直径を持つデバイスである。電界プロファイルは、エッチングされたGeメサの側面に高い電界ホットスポットがあることを示す。これは、アバランシェ(すなわち、縁部降伏)が早期開始したことを示唆している。これによりSPDEが低下し、デバイスを効率的により高いバイアスレベルで動作させることになり、結果として暗計数率が高くなる。
【0071】
設計1のデバイス(設計2のデバイスの場合も同様)では、入射したSWIR放射線はGe吸収領域で吸収され、Si増倍領域で信号増幅が行われる。これらの領域の間では、電荷シートを用いて電界を変調し、増倍領域では励起されたキャリアがアバランシェ降伏を起こすのに十分な高電界を、吸収領域ではバンド間および捕捉アシストトンネリングを防ぐのに十分な低電界を確実にする。しかし、Ge層には適度な電界が維持されており、光で発生した電子を効率よく増倍領域にドリフトさせることができる。SPADはアバランシェ降伏電圧超にバイアスされており、入射した光子がGeの吸収領域で吸収され、電子-正孔対が生成されることでプロセスが開始される。光励起された電子は、次に適度な電界の下をドリフトしながら、Si増倍領域に到達する。ここで、高電界の下で加速され、十分な運動エネルギーを得て、電子-正孔対を生成するインパクトイオン化を受ける。二次電子と正孔は加速され、衝撃でイオン化され、さらに電子-正孔対が生成される。このプロセスが続くと、大きなアバランシェ電流が発生する。この電流は、デバイスにアバランシェ降伏超のバイアスをかけると、自己持続することができる。このような条件下では、最初のレーザーパルスに関連して、時限的に検出可能な電子信号が得られる。検出後、SPADをアバランシェ降伏未満に瞬間的にバイアスしてアバランシェをクエンチさせた後、SPADをその静止状態に戻し、次の入射光子を検出できるようにする必要がある。設計2のデバイスは、概ね同様の方法で動作する。
【0072】
図2aおよび図2bに示すように、SPADの設計には、Silvaco ATLASソフトウェアを用いた有限要素解析モデリングが使用られた。電荷シートのドーピングレベル、増倍領域と吸収領域の厚さを決定し、SPADの好ましい全体設計寸法も決定した。これは、上述したように、SPAD全体の電界プロファイルが高性能を発揮するために適切であることを保証するために必要であった。図2のプレーナデバイス、および図3の比較例のメサ型デバイスのシミュレーションにおいて、アバランシェ降伏電圧より5%高い電位(または5%の過剰バイアス)に保持した場合の電界プロファイルを示している。図2aおよび図2bから明らかなように、降伏時のGe吸収体には低電界が存在し、高電界はSPADの中心部に限定されていることにより、側壁で由来したキャリアが降伏現象を引き起こすことが防止される。
【0073】
スーパーピクセルの半径から電荷シートの半径を引いた値(図1では寸法12となっている)は、側壁での電界を最小化し、図1のA点と呼ばれる側壁の最下部の角のすぐ下にある電界ホットスポットを減らすために、約2μm以上であることが好ましい。非常に薄いGe吸収体(図1の寸法11)の場合、寸法12を2μmよりわずかに小さくすることができる可能性がある。Ge吸収体の厚さが1μm以上の場合は、次の式で寸法12の適切な最小値が得られる。 寸法12=寸法11+1μm
【0074】
好ましくは、接触層は、図1の寸法10で示されるように、電荷シートよりも小さな半径を有する。好ましくは、接触層の半径は、典型的なデバイスの活性領域が25μm以上であることを考慮すると、寸法10は2μm超であることが好ましい(活性領域は、電荷シートの直径、すなわち図1の寸法14として定義される)。寸法14が25μmよりもはるかに小さい場合、寸法10は2μmよりも小さくてもよい。
【0075】
これらのデバイスの特性評価のために、直径150mmのn++型ドープSi基板上に5つの構造を成長させた。まず、市販の減圧化学気相成長法(RP-CVD)により、厚さ1.5μmのSi増倍領域を成長させた。フォトリソグラフィを用いて電荷シート領域を形成し、そこに10keVのエネルギーでホウ素アクセプタを注入した。製造公差を考慮し、最適な電界プロファイルの実現を確実にするために、5枚のウェハそれぞれに異なる電荷シート用量を注入した。注入後、高速熱アニール装置を用いて950℃で30秒間、ホウ素ドーパントを活性化させた。RCA洗浄後、選択的に注入されたSi層の上に、厚さ1μmの公称アンドープGe吸収領域および50nmのp++Ge上部接触層をRP-CVDにより成長させた。SPADを電気的に隔離するため、電荷シートから横方向に10μmの距離でGeのトレンチエッチングを実行した。本実施形態では、Ge層のバックグラウンドのドーピングレベルのために、この隔離が必要であると考えられた。また、図3aに示すような側壁が露出したメサ設計も製造し、特性評価の際の対照として使用された。その後、金属接触、GeOパッシベーション、反射防止(AR)コーティング、ボンドパッドが堆積された。短時間で高い収率を確実にするため、デバイスの直径を100~200μmの範囲とし、以前のGe-on-Si SPADと比べて非常に大きな断面積を実現した[28][29]。しかし、本開示は、これよりも著しく小さいSPADにも適用できることを意図している。例えば、暗計数率をさらに低減するためには、デバイスの直径を約10μmを使用することが適切である。
【0076】
製造後、SPADはJanis社のマイクロマニピュレーション式極低温プローブシステムで冷却された。図4は、同一ウェハ上に製造された平面およびメサエッチングされたSPAD構造の両方の、温度100Kでの暗電流を示す図である。メサエッチング構造は、図2の平面形状と同様の微細構造を有しているが、ここで、イオン注入された電荷シートの直径よりも小さい直径のメサが、電荷シートのすぐ下の深さまで、および増倍層に、エッチングプロセスによりエッチングされて作成された(図3)。平面型SPADは、急激な降伏を有し、低増倍暗電流を示している。これは、望ましい低暗計数率性能の強力な指標であることが既に判明しており[31]、電界モデルで予測されたように、表面生成効果が無視できることを示している。メサエッチングされたSPADは、暗電流が降伏直前の平面構造の50倍となり、よりソフトな降伏となった。これによれば、本開示に基づいて期待されるように、意義深い表面生成が存在し、平面型SPADと比較して高い暗計数率を有することを示唆している。実際、メサエッチングされたSPADは、そのDCRが非常に高いため、降伏以上の特性評価はできなかった。図5は、78Kにおける平面型SPADの暗電流と光電流を逆バイアスの関数として示す図である。降伏前の暗電流は1nA未満で、SPADはデバイス間の暗電流のばらつきが少なく、良好な均一性を示した。λ=1310nmでの光電流測定では、電界が吸収領域に到達し、光励起された電子が増倍領域にドリフトする20Vでの明確なパンチスルーが確認された。デバイスの収率は90%以上で、Ge-on-Si SPADフォーカルプレーンアレイの最終的な実現に向けて、この初期段階では非常に有望な結果ができた。
【0077】
予備的な特性評価の後、「方法」部分で詳しく述べたように、時間相関単一光子計数法(TCSPC)を用いて、SPDE、DCR、ジッタの測定を行った。これらの測定では、電気的なゲーティングアプローチを用いて、減衰したレーザーパルスの到来に同期して、50nsの間、検出器をアバランシェ降伏超のガイガーモードに切り替えた。このゲート式検出器アプローチは、アバランシェを完全にクエンチし、後述するアフターパルシングの影響を避けるために、1kHzという低い周波数で使用された。SPAD検出器を78Kに冷却してから、λ=1310nmのレーザ放射線を用いてSPDE、DCR、ジッタを測定した。図6、7および8は、78K、100K、125Kの各温度における過剰バイアスの関数としてのSPDEおよびDCRを示している。なお、使用された検出器は大面積(直径100μm)であり、以前にオールSiのSPADで報告されたように、面積の小さいデバイスではDCRがかなり低くなることが十分に予想される[32]。
【0078】
測定されたDCRは、以前のGe-on-Siの研究と比較して大幅に改善されたことが実証されている。Warburtonらは、メサ型Ge-on-Si SPADについて、温度100Kで直径25μmのSPADのDCRが5.5MHzであることを報告した[29]。これは11、200カウント/μmに相当し、本研究で報告した18.3カウント/μmよりも約3桁高い値である。なお、この条件では、その論文で報告したSPDEが4%であるのに対し、本研究で報告したSPADは26%であることにも注意するべきである。1μm×15.9μmの矩形導波路SPADの500kHzのDCRを80Kの温度で報告したMartinezらの結果と比較しても、同様の関係が示される[30]。これは31、400カウント/秒/μmに相当し、ここで報告された6.37カウント/秒/μmよりも3桁超の高い値である。その結果、彼らに報告されたSPDEは5%であったのに対し、ここで報告されたSPADは22%である。このように暗計数率が大幅に減少したのは、これらの平面型検出器の電界プロファイルが慎重に設計されたためで、すなわち、高電界がSPAD内に閉じ込められ、表面状態がDCRに大きく寄与するのを防ぐことができる。
【0079】
図6、7および8は、SPDEが過剰バイアスとともに増加し、125Kで最大38%になることを示している。これは、GeおよびGe-on-Si SPADでこれまでに報告されたSPDE [22][28][29][30]よりも著しく高く、InGaAs/InP SPADで225Kで記録された最大値[33][34][35]に匹敵する値である。これは、到達可能なDCRが低いためにSPADにかかる過剰バイアスが大きくなり、増倍領域での降伏確率が高くなったことが原因の一つである。また、1.5μmのSi増倍領域が比較的厚いため、インパクトイオン化して降伏連鎖が始まる前にキャリアが増倍領域から抜ける確率が低くなり、降伏確率が高くなる。Si増倍層下部の残留ドーピングが少ないため、増倍領域に均一な電界が発生し、インパクトイオン化率が全体的に均一となり、降伏確率がさらに向上する。また、最適化された電界により、光励起された電子が低い確率で再結合しながら増倍領域にドリフトしていくことが確実にされた。意義深いのは、Geの吸収領域とSi電荷シートの間には伝導帯のエネルギー障壁がないため、光励起された電子はGeからSiへと容易に移動することが保証できる。実際、参考文献[36]の変形ポテンシャルを用いて計算すると、SiのΔ谷の伝導帯縁部は、吸収体のGeのL谷の伝導帯縁部よりも235meV低い。これは、光励起されたキャリアがInP増倍領域に到達するために乗り越えなければならないエネルギー障壁ステップを有するInGaAs/InP SPADよりも有利である。
【0080】
これらのSPADでは、吸収体-電荷シート界面へのキャリア蓄積を抑えるために、InGaAs領域とInP領域の間にInGaAsPグレーディング層を設ける必要がある。SPADの上面からの反射を入射放射線の1%未満にするために、デバイスにARコーティングを含むことが好ましい。これらのサンプルによれば、より高い温度での測定は、熱発生率の増加によるDCRの増加によって制限されていたが、検出器の面積を減らすことでDCRがさらに減少し、著しくより高い動作温度が可能になる。
【0081】
比較的薄いGe吸収領域を使用しているにもかかわらず、高いSPDEを実現している。77Kでの単結晶Geの吸収係数[37]を用いて計算したところ、厚さ1μmのGe吸収体で吸収される1310nmの波長の放射線は、動作温度範囲全体で50%未満であった。ビール・ランバートの法則によれば、厚さ2μmのGe吸収体では吸収率が70%超になり、125KでのSPDEが55%超になる。この数値は、報告されたInGaAs/InP SPADのSPDE[33][34][35]よりも著しく高い。さらに厚いGe層は、より高い吸収率も提供する。
【0082】
NEP(Noise Equivalent Power)は、以下の数式で検出器のSPDEとDCRから算出されるSPADの性能指数である。
【数1】
ここで、hはプランク定数、vは入射放射線の周波数である。この値は検出器の比較に用いられ、値が小さいほど性能が高いことを示す。78Kでは、Ge-on-Si SPAD検出器の測定したNEPが1.9×10-16W/Hz1/2と記録的に低く、[29]で報告されたGe-on-Si SPADのNEPよりも50倍も低い値を示した。NEPの値は、温度が100Kと125Kの場合、それぞれ3×10-16と7×10-16WHz-1/2と算出された。
【0083】
図11は、過剰バイアス5.5%、温度78Kで、λ=1310nmで測定したタイミングヒストグラムである。ジッタFWHMは310psで、増倍領域の幅が大きくなっていることを考慮すると適当な値である[38][39]。増倍領域をより幅広くすることで、一般的にSPDEは改善されるが、アバランシェ蓄積時間のばらつきが大きくなるため、ジッタが増加する。Si SPADで以前に見られたように[40]、また冷却されたデバイスの電子パッケージを改善することで、デバイスの直径を小さくするとジッタが減少することが予想されている。
【0084】
Ge-on-Si SPAD検出効率の波長依存性は、Geのバンドギャップが温度によって変化するのに伴い、SWIRにわたって変化する。図12aおよび図12bは、Ge-on-Si SPADのSPDEの波長依存性を温度関数として示す図である。高効率のSPDE領域は、(点における伝導帯と価電子帯の間の直接的なバンドギャップ吸収に関連している。より長い波長での吸収は、L-valleyと価電子帯への間接吸収が著しくより弱いことに関連している。室温ではGeの直接バンドギャップは0.80eVであるが[36]、78Kでは0.88eVに増加し、検出遮断波長が減少する[36]。チューナブルなNKTスーパーコンティニュアムレーザを使用して、SPADに入射する放射線の波長を1310nmから1550nmまで変化させ、様々な温度で正確な遮断波長を得ることができた。検出器のSPDEが1450nmの波長値の50%になる波長を遮断波長λと定義すると、図13に示すように、λは125Kの1468nmから175Kの1495nmまで約0.54nm/Kの割合で増加し、[41]のVarshni温度依存性バンドギャップパラメータを用いて計算した値と一致していることが確認できる。また、SPADの動作温度を180K以上に増加すると、遮断波長を1500~1800nmの大気透過ウィンドウまで広げることができる。これは、DCR率が低く、高温動作が可能なより小径のデバイスを使用することで容易に実現できると考えられる(前述)。また、Geの吸収領域の厚みを増やすと、SPDEが大きくなり、λがより長波長側にシフトする。図14は、厚さ2μmのGe吸収領域を有するGe-on-Si SPADの遮断波長の推定値を示している。これにより、1550nmの波長の放射線を検出するのに必要な温度は220Kに低減した。
【0085】
Ge-on-Si SPADとInGaAs/InP SPADの代替手段との間の1つの決定的な違いは、検出器のアフターパルシングによる悪影響を大幅に減少させることであると考えられている。アフターパルシングは、アバランシェ事象の後にキャリアが捕捉され、後に放出される場合に発生し、バックグラウンドレベルを上昇させる。これは、各事象の後に長いホールドオフ時間(通常は>10μs)を使用して、検出器が再活性化する前に捕捉されたキャリアを放出できることで軽減できる。しかし、このアプローチでは不感時間が長くなり、可能な最大計数率が制限される。アフターパルシングは、InGaAs/InP SPADの性能における主要な制限の1つとして認識されており、適度な計数率であってもその性能に重大な影響を与える。InGaAs/InP検出器のアフターパルシングは、主にInP増倍層の深層捕捉状態から発生するが[42][43][44]、Ge-on-Si SPAD検出器では、高品質のSi増倍層がそのような状態のより低い密度を有する見込みである。InGaAs/InP SPADとGe-on-Si SPADとを同様の動作条件で比較することは初めてである。
【0086】
アフターパルシングの測定は、直径100μmのGe-on-Si SPADを78Kから175Kまでの温度で、時間相関キャリア計数法[45]を用いて行い、SPADが意図的にアバランシェを起こした場合に行った。その後、該当デバイスをすぐにクエンチし、続いてすぐに電気ゲートを介して2回目の起動を行う。2つの検出器ゲート間の時間を変化させることで、2つ目のゲートでアバランシェが発生する確率を考察し、従って最初のアバランシェからの時間関数としてアフターパルシング確率を提供した。得られた結果は、市販最新のInGaAs/InP SPADを同一温度で動作させ、両検出器に同一のSPDEを得るように各検出器に特定の過剰バイアスを印加した場合と比較した。図15は、両検出器における温度125Kで2つのSPADのSPDE17%に相当する過剰バイアスを印加したときのアフターパルシング確率の変化を示している。その結果、特定のホールドオフ時間において、Ge-on-Si SPADのアフターパルシング確率が大幅に減少したことが確認できる。例えば、ホールドオフ時間を10μsとすると、Ge-on-Si SPADはInGaAs/InP SPAD検出器の20%のアフターパルシング確率を示す。150Kでも同様の傾向が示される。絶対アフターパルシング確率は、例えばゲート時間などの動作条件に影響されるが、これらの結果は、名目上同一の動作条件における2つのタイプの検出器の比較を提供するものであることに留意すべきである。これらの初期結果は、今後のGe-on-Siの開発に大きな期待を抱かせるものであり、アフターパルシング確率の向上は、この特殊な検出器の特性を最適化するために、特にSiのエピ層材料の品質をさらに向上させることで、さらに高まると考えられる。
【0087】
Ge-on-Si SPADのアフターパルシングメカニズムを決定するために、78Kから125Kまでの範囲で温度関数としてアフターパルシングを考察し、指数関数的な減衰をフィットさせた。アレニウスプロットをフィットさせることで、8090meVの領域の活性化エネルギーをオーバーバイアスレベルの範囲で推定し、捕捉の起源を確認することを試みた。天然型Si表面、天然型Ge表面およびGe表面のGeOは、それぞれ420meV[46]、130meV[46]、200~300meV[47]に近い捕捉状態を有することが示されている。これにより、平面形状が露出した表面での捕捉やその他の不純物の影響を低減していることがさらに証明された。したがって、このアフターパルシングは、パッシベーションされたGeまたは露出したSi表面の表面状態とは関係ないと考えられる。
【0088】
図18は、分かりやすくするために電界をかけずに[24]の変形ポテンシャルを用いて125Kで算出されたGe-Siヘテロ界面のバンド構造を示しており、Ge中の転位の3つの主要な捕捉状態がバンドギャップ内の破線で示されている[48]。一方、図17から抽出された80~90meVの活性化エネルギーは、70meVのアクセプタと90meVのドナーがGeの転位から価電子帯域端に捕捉された状態に近いが、これらの状態でアフターパルシングが発生する原因となるメカニズムは明確ではない。このような値に近いエネルギーを持つGe中の金属不純物は、Co(90meVアクセプタ)、Zn(90meVアクセプタ)、Hg(87meVアクセプタ)およびCr(70meVアクセプター)である[49]が、本デバイスではいずれも微量レベルではないと予想される。同様のエネルギーを持つSi中の金属不純物は、Bi(69meVドナー)、Ga(72meVアクセプタ)、Al(67meVアクセプタ)である[49]。一方、接触とボンドパッドにはAlが使用されているが、これらはGeの上部とSiウェハの背面にあり、デバイスのアバランシェ領域は埋め込まれているため、デバイスのアバランシェ領域に近いところには微量のAlは存在しないべきである。
【0089】
図20図21および図22は、直径26μmのGe-on-Si SPADデバイスが、78K、100K、125Kおよび150Kの各温度で、直径100μmのGe-on-Si SPADと比較して、SPDE、DCRおよびNEPを大幅に低減することを示している。直径26μmのデバイスではSPDEの減少がわずかに明確されたが、これは使用したデバイスの横方向の効率プロファイルが不均一であったためと考えられる。さらに、直径26μmのGe-on-Si SPADは、直径100μmのGe-on-Si SPADと比較して、ジッタが大幅に低減されたことが実証された(149±10PS CF.310±10PS)。
【0090】
Siの転位捕捉は、D1からD4の捕捉状態で、12Kの価電子帯上の807、870、940、および1001meVにそれぞれ集中していることが測定された[50]。これらの転位捕捉状態のうち最後のものは、125KでのSi伝導帯以下の約130meVに相当し[50](図18参照)、この温度では線幅に少なくとも10meVの熱膨張がある。Si基板上に臨界厚さ以上に成長したGeまたはSi1-xGeヘテロ層の緩和時に、いくつかの貫通転位がSi基板に注入でき[51]、ヘテロ界面近くのSiにある程度のひずみが伝わり、捕捉状態と伝導帯縁部との間のエネルギーが低減することはよく知られている。SiのD4捕捉状態は、転位の緩和によるものであることが識別されており[52]、熱膨張とひずみの不確実性と、3つの温度から抽出されたアフターパルシングの励起エネルギーの不確実性とを組み合わせると、このSi中のD4転位捕捉がアフターパルシングの起源の有力な候補となる。Si上にGeを限定的にエリア成長させることで、Geヘテロ層とSi基板の両方に存在する貫通転位の密度が大幅に減少することがすでに実証された[53]。これにより、アフターパルシングをさらに低減できるかどうかを判断し、D4捕捉状態がアフターパルシングのメカニズムに関与しているかどうかを確認し、したがってアフターパルシングの確率をさらに低減することができる。
【0091】
結論
【0092】
新規平面形状を用いて設計された高性能Ge-on-Si SPADを報告した。直径100μmのSPADは、125K、検出波長1310nmで38%のSPDEを実証した。これは、Ge-on-Si SPADに関するこれまでのすべての報告と比較して、性能レベルが大幅に段階的な変化で向上しており、市販のInGaAs/InP SPADと比較しても遜色ではない。温度78KでのNEPは1.9×10-16WHz-1/2で、これまでに報告されたGe-on-Si SPADの50倍の改善された性能を達成している。アフターパルシング性能は、時間相関キャリア計数法を用いて分析され、市販のInGaAs SPADと比較された。この初期のGe-on-Si SPAD検出器は、市販のInGaAs/InP SPADと比較して、同じ条件で不感時間を50~75%低減しながら動作でき、結果として、はるかに高い最大計数率で動作できる。これらの結果は、より厚いGe吸収体を統合したより小型の検出器が、室温またはそれに近い温度で、低暗計数率および高計数率で動作可能になるという明確なルーティングを示している。この温度上昇により、これらの検出器は、比較的アイセーフの1550nmの波長領域で高効率な動作が可能になる。Siプラットフォームを使用することで、アイセーフの短波長赤外領域での単一光子3Dイメージングおよびセンシングの低コストルーティングを提供する。これは、自動車や自律走行車のLIDAR、セキュリティ、環境LIDARのモニタリングなど様々な一般的な応用において重要な意味を持つ可能性があり、また、重要な通信波長を使用する様々な量子技術応用にも有効である。
【0093】
方法
【0094】
[デバイス製造]このデバイスは、直径150mmのn++Si(001)ウェハ上に1.5μmのアンドープSiを成長させたものから作製された。Silvaco ATLASソフトウェアを用いた有限要素解析モデリングにより、Ge吸収体には低電界を、Siアバランシェ領域には高電界を提供するための最適な電荷シート密度を決定した。その後、フォトリソグラフィを用いて、10kVのホウ素のイオン注入を行い、電荷シート層を選択的に形成した。950で活性化アニールを行った後、シート密度が1~5×1011cm-2の5つの異なるウェハを製造した。その後、厚さ1μmのアンドープGeを成長させ、上部オーミック接触用に最大50nmのホウ素をin-situでドープした。フォトリソグラフィとフッ素系ドライエッチングとを用いて、Geに電気的な隔離トレンチをエッチングした後、SiOパッシベーション層と平坦化層を堆積した。ウェハの裏面にAlを堆積して底部オーミック接触を形成した。本明細書において、特性評価の結果が提示されたデバイスセットは、裏側接触を採用した。よく理解されているように、並びに図面に示されているように、図1において、ビアホール9を使用して底部オーミック接触を形成することが可能である。下位n接点の接触方法は、デバイスの性能にとって重要ではないと考えられる。上部接触アプローチは工業的な実装に適していると考えられるが、一方、裏側接触は実験室規模の製造と試験により適しており、本明細書で報告された。なお、上部接触アプローチでは、基板を通して照射することも可能であり、これは一部の応用にとっては有利である。Ni/Alを堆積してアニールし、上部金属接触を形成する前に、フォトリソグラフィを用いて酸化物に穴を上部オーミック接触までエッチングした。デバイス上部のSiOをエッチングで除去し、PECVDでSi反射防止コーティングを堆積した。
【0095】
単一光子特性評価
【0096】
図19に概略的に示したこの特性評価に使用した機構により、時間相関単一光子計数(TCSPC)技法を用いて、SPDE、DCR、ジッタ測定を行った。SPAD検出器はOxford Instruments社の液体窒素低温保持装置に取り付けられ、78K~175Kでの測定が可能であった。低温保持装置には光学アクセスがあり、検出器と外部光学系との間の作業距離を短くすることができた。SPADのSPDE測定にはピコ秒パルスレーザを使用し、1つのパルスに複数の光子が含まれる確率を低減するために、出力を1パルスあたり1光子よりはるかに少ないレベルに減衰させた。使用したレーザは、波長1310nmを放射するPicoQuantレーザダイオードと、1150nm~2000nmの波長範囲でチューナブルであるNKTスーパーコンティニュアムレーザと2つあった。レーザ出力は単一モード繊維(SMF-28)に結合され、次に50:50の繊維スプリッタに接続された。スプリッタの1つの出力は、較正されたパワーメータに接続され、in-situでの電力測定値を提供し、測定中は継続的に監視された。もう一方の出力は、プログラム可能な光減衰器に接続され、最大100dBまで減衰させることができた。この減衰器出力を反射性コリメータに挿入し、自由空間でのコリメーションを行った。コリメートされたビームは、広帯域照射チャンネルとイメージングチャンネルが形成された2つのペリクルビームスプリッタ(分割比92:8)を通過し、SPADのレーザスポットの位置と焦点を合わせる用のSWIRカメラまで送られた。各SPDE測定の前に、SPADに到達するレーザパワーを測定し、in-situパワーメータで測定した電力と比較した。この比率は、所与のパワーメータの測定値に対してSPADに入射するパルスあたりの光子の数を計算するために使用された。このデバイスは、DCソースでSPADを耐圧のすぐ下にバイアスして、ゲートモードで動作した。マスタクロックは、レーザのトリガ、検出器のゲート、Edinburgh Instruments社のTCC900光子計数カードのスタート信号のタイミングを制御した。本開示において説明された実験では、50ナノ秒継続時間の検出器ゲートを使用した。検出器ゲートはTektronix社の5530 Bias Teeという製品を用いてDCバイアスと組み合わせ、その出力をSPADのアノードに接続した。SPADのカソードは、光子計数カードの停止信号に接続された。SPDE、DCR、デバイスジッタの計算には、光子計数カードで記録したタイミングビン幅19.5psのタイミングヒストグラムを使用した。
【0097】
前述の説明、または以下の特許請求の範囲、または添付の図面に開示された特徴は、それらの具体的な形態で、または開示された機能を実行するための手段、または開示された結果を得るための方法またはプロセスの観点から、適切に表現されており、個別に、またはそのような特徴の任意の組み合わせで、本発明をその多様な形態で実現するために利用することができる。本発明を上述の例示的な実施形態と併せて説明してきたが、この開示を受ければ、多くの同等の修正および変形が当業者に明らかになるであろう。したがって、上述した本発明の例示的な実施形態は、例示的なものであり、限定的なものではないと考えられる。本発明の精神と範囲から逸脱することなく、説明された実施形態に様々な変更を加えることができる。
【0098】
任意の誤解を避けるために、ここで記載されている理論的な説明は、読者の理解を深めるためのものである。本発明の発明者らは、これらの理論的説明に拘束されることを望んでいない。
【0099】
本明細書で使用されているいずれのセクションの見出しは、整理のみを目的としたものであり、記載されている主題を限定するものと解釈されるものではない。後続の特許請求の範囲を含む本明細書全体において、文脈上他に要求されない限り、「備える」、「有する」、「持つ」および「含む」という単語、ならびに「備え」、「有し」、「持ち」、「含み」などの変形は、記載された完全体または段階、または完全体または段階の群を含めることを意味するが、他の完全体または段階、または完全体または段階の群を除外することはないと理解される。
【0100】
本明細書および添付の特許請求の範囲では、単数形の「1つの」、「1」、および「該当」は、文脈上明らかに別の意味を持つ場合を除き、複数の参照語を含むことに留意する必要がある。本明細書では、ある特定の値の「約」から、および/または別の特定の値の「約」までの範囲を表すことがある。このような範囲を表す場合、別の実施形態では、1つの特定の値からおよび/または他の特定の値までを含む。同様に、値が近似値として表現されている場合、先行詞「約」の使用により、特定の値が別の実施形態を形成していることが理解される。数値に関する「約」という用語は任意であり、例えば、±10%を意味する。
【0101】
参考文献
本発明および本発明が属する技術分野の最新技術についてをより完全に説明し、開示するために、出版物を上記に多数引用している。これらの参考文献の完全な引用を以下に提供する。これらの各文献の全体像が本明細書に組み込まれている。
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