(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】正極用プレ分散液およびそれを含有するリチウム二次電池用正極スラリー
(51)【国際特許分類】
H01M 4/1391 20100101AFI20240611BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240611BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240611BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240611BHJP
【FI】
H01M4/1391
H01M4/525
H01M4/62 Z
H01M4/505
(21)【出願番号】P 2022566715
(86)(22)【出願日】2022-04-19
(86)【国際出願番号】 KR2022005565
(87)【国際公開番号】W WO2022255637
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0071268
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0042281
(32)【優先日】2022-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】キュ・テ・パク
(72)【発明者】
【氏名】サン・スン・オー
(72)【発明者】
【氏名】ヒェ・ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】チ・ホ・ジョ
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-123460(JP,A)
【文献】特表2022-510983(JP,A)
【文献】特表2020-521285(JP,A)
【文献】特開2019-046689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で示す正極添加剤、第1導電材およびバインダーを含有
するリチウム二次電池正極用プレ分散液であって、
[化学式1]
Li
pCo
(1-q)M
1
qO
4
前記化学式1中、
M
1は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5であ
り、
前記リチウム二次電池正極用プレ分散液は、固形分100重量部に対して正極添加剤0.5~30重量部、第1導電材20~85重量部、およびバインダー20~70重量部を含有し、
前記リチウム二次電池正極用プレ分散液は、350~800nmの波長範囲での紫外可視吸光度の測定時、560~680nmの波長範囲に現れるピークの面積が全体ピークの面積の50%以上を占める、リチウム二次電池正極用プレ分散液。
【請求項2】
前記第1導電材は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラックおよび炭素繊維からなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池正極用プレ分散液。
【請求項3】
前記第1導電材は、カーボンナノチューブおよびグラフェンのうち1種以上を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池正極用プレ分散液。
【請求項4】
前記正極添加剤は、空間群がP4
2/nmcである正方晶系構造を有する、請求項1に記載のリチウム二次電池正極用プレ分散液。
【請求項5】
前記リチウム二次電池正極用プレ分散液に対するCIE LAB色座標の分析時、20≦Lおよびb≦20のうち1つ以上の条件を満たす、請求項1に記載のリチウム二次電池正極用プレ分散液。
【請求項6】
下記の化学式1で示す正極添加剤、第1導電材およびバインダーを混合して、プレ分散液を製造する段階を含み、
前記プレ分散液は、固形分100重量部に対して正極添加剤0.5~30重量部、第1導電材20~85重量部、およびバインダー20~70重量部を含有し、
前記プレ分散液は、350~800nmの波長範囲での紫外可視吸光度の測定時、560~680nmの波長範囲に現れるピークの面積が全体ピークの面積の50%以上を占め、
[化学式1]
Li
pCo
(1-q)M
1
qO
4
前記化学式1中、
M
1は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である、リチウム二次電池正極用プレ分散液の製造方法。
【請求項7】
前記プレ分散液を製造する段階は、40℃以下の温度条件で行われる、請求項
6に記載のリチウム二次電池正極用プレ分散液の製造方法。
【請求項8】
前記プレ分散液を製造する段階は、10%以下の相対湿度の条件で行われる、請求項
6に記載のリチウム二次電池正極用プレ分散液の製造方法。
【請求項9】
正極活物質と、請求項1に記載のリチウム二次電池正極用プレ分散液と、第2導電材と、を含むリチウム二次電池用正極スラリー。
【請求項10】
前記正極活物質は、下記の化学式2で示すリチウム金属複合酸化物であり、
[化学式2]
Li
x[Ni
yCo
zMn
wM
2
v]O
u
前記化学式2中、
M
2は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
x、y、z、w、vおよびuは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0≦y<0.95、0<z≦0.5、0<w≦0.5、0≦v≦0.2、1.5≦u≦4.5である、請求項
9に記載のリチウム二次電池用正極スラリー。
【請求項11】
前記正極活物質は、正極スラリー固形分100重量部に対して80~99.5重量部で含まれる、請求項
9に記載のリチウム二次電池用正極スラリー。
【請求項12】
前記第2導電材は、正極スラリー固形分100重量部に対して0.5~5重量部で含まれる、請求項
9に記載のリチウム二次電池用正極スラリー。
【請求項13】
前記第2導電材は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラックおよび炭素繊維からなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項
9に記載のリチウム二次電池用正極スラリー。
【請求項14】
下記の化学式1で示す正極添加剤と、第1導電材と、バインダーと、を混合して、プレ分散液を製造する段階と、
製造されたプレ分散液に正極活物質および第2導電材を混合して、正極スラリーを製造する段階と、を含み、
前記プレ分散液は、固形分100重量部に対して正極添加剤0.5~30重量部、第1導電材20~85重量部、およびバインダー20~70重量部を含有し、
前記プレ分散液は、350~800nmの波長範囲での紫外可視吸光度の測定時、560~680nmの波長範囲に現れるピークの面積が全体ピークの面積の50%以上を占め、
[化学式1]
Li
pCo
(1-q)M
1
qO
4
前記化学式1中、
M
1は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である、リチウム二次電池用正極スラリーの製造方法。
【請求項15】
前記正極スラリーを製造する段階は、
正極活物質および第2導電材を常圧条件で混合して、活物質混合液を製造する段階と、
製造された活物質混合液と前記プレ分散液を真空条件で混合して、正極スラリーを製造する段階とを含む、請求項
14に記載のリチウム二次電池用正極スラリーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極用プレ分散液およびそれを含有するリチウム二次電池用正極スラリーに関するものである。
【0002】
本出願は、2021年6月2日付けの韓国特許出願第10-2021-0071268号および2022年4月5日付けの韓国特許出願第10-2022-0042281号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に対する技術の開発と需要の増加に伴い、エネルギー源としての二次電池に対する需要が急激に増加している。このような二次電池のうち、高いエネルギー密度と作動電位を有し、サイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウム二次電池が商用化されて広く使用されている。
【0004】
最近では、電気自動車のような中大型デバイスの電源としてリチウム二次電池が用いられるに伴い、リチウム二次電池の高容量、高エネルギー密度、および低費用化がより一層要求されており、電極に使用される非可逆添加剤に対しても、より高い非可逆容量を有することが求められている。
【0005】
このような要求に合わせて従来Li6CoO4のような非可逆添加剤が開発されている。しかしながら、上記非可逆添加剤は、構造的に不安定で、二次電池の充電が進行されるにつれて、下記のように多量の酸素ガス(O2)を発生させることができ、正極に非可逆添加剤を高含有量で使用することは、リチウム二次電池の充放電効率と安全性の観点から限界がある。
【0006】
【0007】
これより、低含有量の非可逆添加剤を用いてリチウム二次電池の非可逆性を改善しようとする努力が続いた。しかしながら、非可逆添加剤を低含有量で、特に正極スラリー全体の重量に対して5重量%未満の少量で使用する場合は、正極スラリー内の分散性の保障が難しくて、リチウム二次電池の電気的物性が低下するのみならず、正極の製造過程で低粒度の非可逆添加剤が飛散して損失量が増加するので、工程設計の自由度が低下するという問題がある。
【0008】
したがって、非可逆添加剤を使用する場合、非可逆添加剤の正極スラリー内分散性が保障されて、リチウム二次電池の電気的物性を確保し得る技術の開発が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0023696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これより、本発明の目的は、正極の製造時に顕著に少ない量の非可逆添加剤を損失なしで高い分散度で含有する正極スラリーおよびそれを用いて製造されるリチウム二次電池用正極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述のような問題を解決するために、本発明は、一実施形態において、下記の化学式1で示す正極添加剤、第1導電材およびバインダーを含有するリチウム二次電池正極用プレ分散液を提供する:
【0012】
[化学式1]
LipCo(1-q)M1
qO4
【0013】
上記化学式1中、
M1は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【0014】
このとき、上記第1導電材は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラックおよび炭素繊維からなる群から選ばれる1種以上を含み得る。
【0015】
また、上記第1導電材は、カーボンナノチューブおよびグラフェンのうち1種以上を含んでもよい。
【0016】
また、上記プレ分散液は、固形分100重量部に対して正極添加剤0.5~30重量部;第1導電材20~85重量部;およびバインダー20~70重量部を含有してもよい。
【0017】
また、上記正極添加剤は、空間群がP42/nmcである正方晶系構造(tetragonal structure)を有していてもよい。
【0018】
これと共に、上記プレ分散液は、350~800nmの波長範囲でのUV/Vis(紫外可視)吸光度の測定時、560~680nmの波長範囲に現れるピークの面積が、全体ピークの面積の50%以上を占めることができる。
【0019】
また、上記プレ分散液に対するCIE LAB色座標の分析時、20≦Lおよびb≦20のうち1つ以上の条件を満たすことができる。
【0020】
また、本発明は、一実施形態において、下記の化学式1で示す正極添加剤;第1導電材およびバインダーを混合してプレ分散液を製造する段階を含むリチウム二次電池正極用プレ分散液の製造方法を提供する:
【0021】
[化学式1]
LipCo(1-q)M1
qO4
【0022】
上記化学式1中、
M1は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【0023】
この際、上記プレ分散液を製造する段階は、40℃以下の温度および10%以下の相対湿度の条件で行われ得る。
【0024】
また、上記プレ分散液は、350~800nmの波長範囲でのUV/Vis(紫外可視)吸光度の測定時、560~680nmの波長範囲に現れるピークの面積が全体ピークの面積の50%以上を占めることができる。
【0025】
しかも、本発明は、一実施形態において、正極活物質;上述した正極用プレ分散液;および第2導電材を含むリチウム二次電池用正極スラリーを提供する。
【0026】
ここで、上記正極活物質は、下記の化学式2で示すリチウム金属複合酸化物であってもよい:
【0027】
[化学式2]
Lix[NiyCozMnwM2
v]Ou
【0028】
上記化学式2中、
M2は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
x、y、z、w、vおよびuは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0≦y<0.95、0<z≦0.5、0<w≦0.5、0≦v≦0.2、1.5≦u≦4.5である。
【0029】
また、上記正極活物質は、正極スラリー固形分100重量部に対して80~99.5重量部で含まれ得る。
【0030】
また、上記第2導電材は、正極スラリー固形分100重量部に対して0.5~5重量部で含まれ得る。
【0031】
また、上記第2導電材は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラックおよび炭素繊維からなる群から選ばれる1種以上を含んでもよい。
【0032】
しかも、本発明は、一実施形態において、
下記の化学式1で示す正極添加剤;第1導電材およびバインダーを混合して、プレ分散液を製造する段階と、
製造されたプレ分散液に正極活物質および第2導電材を混合して、正極スラリーを製造する段階と、を含み、
上記プレ分散液は、350~800nmの波長範囲でのUV/Vis(紫外可視)吸光度の測定時、560~680nmの波長範囲に現れるピークの面積が全体ピークの面積の50%以上を占めるリチウム二次電池用正極スラリーの製造方法を提供する:
【0033】
[化学式1]
LipCo(1-q)M1
qO4
【0034】
上記化学式1中、
M1は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【0035】
ここで、上記正極スラリーを製造する段階は、
正極活物質および第2導電材を常圧条件で混合して、活物質混合液を製造する段階と、
製造された活物質混合液とプレ分散液を真空条件で混合して、正極スラリーを製造する段階と、を含んでもよい。
【発明の効果】
【0036】
本発明によるリチウム二次電池正極用プレ分散液は、化学式1で示す正極添加剤を高い含有量で含有し、UV‐Vis(紫外可視)吸光度の測定時、特定波長範囲に存在するピークの面積比を調節することによって、正極スラリー内での正極添加剤の分散性と作業性が向上するだけでなく、正極スラリーに含まれる正極添加剤の損失を最小化し、正極スラリーの製造時に発生しうる副反応を抑制することができるので、これを用いて製造される電極の電気的物性に優れているという利点がある。
【0037】
また、上記リチウム二次電池正極用プレ分散液は、正極スラリーの製造時、正極添加剤の分散性および副反応の発生有無を直接確認することができるので、製品品質検査(QC、quality control)時に適用が可能であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】実施例3および比較例5で製造されたプレ分散液の外観を撮影したイメージである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な実施形態を有することができるところ、特定の実施形態を詳細な説明で詳細に説明しようとする。
【0040】
しかしながら、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものと理解すべきである。
【0041】
本発明において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性をあらかじめ排除しないものと理解すべきである。
【0042】
また、本発明において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あると記載された場合、これは、他の部分の「真上に」ある場合だけでなく、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。反対に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」あると記載された場合、これは、他の部分の「真下に」ある場合だけでなく、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。また、本出願において「上に」配置されるというのは、上部だけでなく、下部に配置される場合も含むことができる。
【0043】
本発明において、「色座標」とは、CIE(国際照明委員会、Commossion International de l’Eclairage)で規定した色相値であるCIE Lab色空間での座標を意味し、CIE色空間での任意の位置は、L*、a*、b*の三つの座標値で表現されることができる。
【0044】
ここで、L*値は、明るさを示すものであり、L*=0であれば、黒色(black)を示し、L*=100であれば、白色(white)を示す。また、a*値は、当該色座標を有する色が純粋な赤色(pure magenta)と純粋な緑色(pure green)のうちいずれかに偏っているかを示し、b*値は、当該色座標を有する色が純粋な黄色(pure yellow)と純粋な青色(pure blue)のうちいずれかに偏っているかを示す。
【0045】
具体的に、上記a*値は、-a*~+a*の範囲を有し、a*の最大値(a*max)は、純粋な赤色(pure magenta)を示し、a*の最小値(a*min)は、純粋な緑色(pure green)を示す。例えば、a*値が負数であれば、純粋な緑色に偏った色であり、正数であれば、純粋な赤色に偏った色を意味する。a*=80とa*=50を比較したとき、a*=80がa*=50より純粋な赤色に近く位置することを意味する。これと共に、上記b*値は、-b*~+bの範囲を有する。b*の最大値(b*max)は、純粋な黄色(pure yellow)を示し、b*の最小値(b*min)は、純粋な青色(pure blue)を示す。例えば、b*値が負数であれば、純粋な黄色に偏った色であり、正数であれば、純粋な青色に偏った色を意味する。b*=50とb*=20を比較したとき、b*=50がb*=20より純粋な黄色に近く位置することを意味する。
【0046】
また、本発明において、「固形分」とは、本発明によるリチウム二次電池正極用プレ分散液または正極スラリーの最初重量を基準としてこれらから溶媒を除去した後に残っている固体形態の物質の重量百分率を意味する。例えば、1kgの正極スラリーから溶媒を除去して残留した固体物質の重量が500gである場合、正極スラリーの固形分は50%である。
【0047】
また、本発明において、「Ah」は、リチウム二次電池の容量単位であり、「アンペアアワー」と言い、時間当たりの電流量を意味する。例えば、電池容量が「3000mAh」であれば、3000mAの電流で1時間の間放電させることができることを意味する。
【0048】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0049】
リチウム二次電池正極用プレ分散液
本発明は、一実施形態において、下記の化学式1で示す正極添加剤、第1導電材およびバインダーを含有するリチウム二次電池正極用プレ分散液を提供する:
【0050】
[化学式1]
LipCo(1-q)M1
qO4
【0051】
上記化学式1中、
M1は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【0052】
本発明によるリチウム二次電池正極用プレ分散液は、正極添加剤、第1導電材およびバインダーを含有し、正極活物質を含有しなくてもよく、正極活物質を含有する場合、固形分100重量部に対して20重量部以下で含んでもよい。本発明による上記正極用プレ分散液は、正極スラリーの製造時、微粒子の正極添加剤を正極スラリーの固形分100重量部に対して5重量部未満で使用して、発生する正極添加剤の損失を防止する一方で、正極添加剤に対する計量正確性の低下およびこれによる作業性の低下を改善することができる。
【0053】
ここで、上記正極添加剤は、下記の化学式1で示すリチウムコバルト酸化物であってもよい:
【0054】
[化学式1]
LipCo(1-q)M1
qO4
【0055】
上記化学式1中、
M1は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【0056】
上記正極添加剤は、リチウムを過多含有して、初期充電時に負極での非可逆的な化学的物理的反応によって発生したリチウム消耗にリチウムを提供することができ、これによって、電池の充電容量が増加し、非可逆容量が減少して、寿命特性が改善されることができる。
【0057】
その中でも、上記化学式1で示す正極添加剤は、当業界で通常使用されるニッケル含有酸化物と比較してリチウムイオンの含有量が高いため、電池の初期活性化時に非可逆反応で失われたリチウムイオンを補充することができるので、電池の充放電容量を顕著に向上させることができる。また、当業界で通常使用される鉄および/またはマンガン含有酸化物と比較して電池の充放電時に遷移金属の溶出によって発生する副反応がないので、電池の安定性に優れているという利点がある。このような化学式1で示すリチウム金属酸化物としては、Li6CoO4、Li6Co0.5Zn0.5O4、Li6Co0.7Zn0.3O4などを含んでもよい。
【0058】
また、上記化学式1で示す正極添加剤は、正方晶系(tetragonal)結晶構造を有していてもよく、この中でも、コバルト元素と酸素元素とが成す歪んだ四面体構造を有するP42/nmcの空間群に含まれ得る。上記正極添加剤は、コバルト元素と酸素原価とが成す歪んだ四面体構造を有し、構造的に不安定なので、40℃を超過する温度および/または10%を超過する相対湿度(RH)の条件下で空気中の水分および/または酸素と副反応を引き起こすことができる。しかしながら、本発明は、上記正極添加剤をプレ分散することによって、正極添加剤が空気中の水分や酸素と副反応を起こすのを防止できるという利点がある。
【0059】
また、上記第1導電材は、正極の電気的性能を向上させるために使用されるものであり、当業界で通常使用されるものを適用できるが、具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックおよび炭素繊維からなる群から選ばれる1種以上の炭素系物質を使用することができる。例えば、上記第1導電材は、カーボンナノチューブまたはグラフェンを単独で使用したり、共に併用することができる。
【0060】
また、上記バインダーは、正極活物質、正極添加剤および導電材が互いに結着されるようにする役割を行い、このような機能を有するものであれば、特に限定されずに使用できる。具体的に、上記バインダーとしては、ポリビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF‐co‐HFP)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride、PVdF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)およびこれらの共重合体からなる群から選ばれる1種以上の樹脂を含んでもよい。一例として、上記バインダーは、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride)を含んでもよい。
【0061】
これと共に、上記正極用プレ分散液は、正極添加剤、第1導電材およびバインダーを固形分を基準として一定の割合で含んでもよい。具体的に、上記正極用プレ分散液は、固形分100重量部に対して正極添加剤0.5~30重量部;第1導電材20~85重量部;およびバインダー20~70重量部を含有してもよい。
【0062】
一例として、上記正極添加剤は、正極用プレ分散液の固形分100重量部に対して0.5~20重量部;0.5~18重量部;0.5~15重量部;0.5~10重量部;0.5~5重量部;0.5~3重量部;5~20重量部;10~20重量部;11~20重量部;20~30重量部;または8~16重量部で含まれ得る。
【0063】
他の一例として、上記第1導電材は、正極用プレ分散液の固形分100重量部に対して20~75重量部;20~70重量部;20~65重量部;20~50重量部;20~45重量部;25~40重量部;30~75重量部;35~75重量部;45~75重量部;50~75重量部;60~75重量部;25~65重量部;70~75重量部;または31~40重量部で含んでもよい。
【0064】
さらに他の一例として、上記バインダーは、正極用プレ分散液の固形分100重量部に対して20~60重量部;20~45重量部;20~30重量部;20~25重量部;25~60重量部;25~45重量部;25~30重量部;30~60重量部;40~75重量部;または45~55重量部で含んでもよい。
【0065】
また、上記正極用プレ分散液は、正極添加剤、第1導電材およびバインダーが分散するための分散媒をさらに含有してもよい。このような分散媒としては、N‐メチル‐2‐ピロリドン(N‐methyl‐2‐pyrrolidone、NMP)、ジメチルアセトアミド(N,N‐dimethyl acetamide、DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、アセトニトリル(acetonitrile、ACN)、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide、DMF))、アセトン、エチルアセテートおよび蒸留水のうち1種以上の極性非プロトン性溶媒を含有してもよい。一例として、上記分散媒は、N‐メチル‐2‐ピロリドン(N‐methyl‐2‐pyrrolidone、NMP)を含有してもよく、この場合、プレ分散液の粘度の調節を容易にすることができると共に、正極の製造時、溶媒の迅速な揮発によって合材層のクラックが発生しないように、溶媒の揮発速度を適切に制御することができる。
【0066】
しかも、本発明による上記正極用プレ分散液は、特定の色相、具体的には、青色(blue)系統の色相を示すことができる。
【0067】
一例として、上記正極用プレ分散液は、350~800nmの波長範囲でのUV/Vis(紫外可視)吸光度の測定時、560~680nmの波長範囲に現れるピークの面積が全体ピークの面積の50%以上を占めることができ、具体的には、全体ピークの面積の60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、または90%以上を占めることができる。560~680nmの波長を有する光は、可視光線中、黄色および/または黄赤色を示す光であり、本発明によるプレ分散液は、560~680nmの波長の光を吸収し、その補色となる青色を反射させる構成を有していてもよい。
【0068】
他の一例として、上記正極用プレ分散液は、CIE LAB色座標の分析時、20≦Lおよびb≦20のうち1つ以上の条件を満たすことができ、より具体的には、25≦L、およびb≦10;または30≦L≦80および-80≦b≦10のうち1つ以上の条件を満たすことができる。
【0069】
本発明によるリチウム二次電池正極用プレ分散液は、上述したように、UV/Vis(紫外可視)吸光度のピーク面積比とCIE LAB色座標を制御することによって、正極スラリー内での正極添加剤の分散性を向上させることができると共に、正極スラリーに含まれる正極添加剤の損失を最小化し、正極スラリーの製造時に発生しうる副反応を抑制することができるので、これを含む正極スラリーおよびリチウム二次電池の正極スラリーに電気的物性をより向上させることができる。しかも、上記リチウム二次電池正極用プレ分散液は、正極添加剤の分散性および副反応の発生有無を正極スラリーの製造時に直接確認することができるので、製品品質検査(QC、quality control)時に適用が可能であるという利点がある。
【0070】
リチウム二次電池用プレ分散液の製造方法
また、本発明は、一実施形態において、下記の化学式1で示す正極添加剤;第1導電材およびバインダーを混合して、プレ分散液を製造する段階を含むリチウム二次電池正極用プレ分散液の製造方法を提供する:
【0071】
[化学式1]
LipCo(1-q)M1
qO4
【0072】
上記化学式1中、
M1は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【0073】
ここで、上記プレ分散液を製造する段階は、正極添加剤、導電材およびバインダーを混合する段階であり、当業界でスラリーの製造時に使用される通常の方式で行われ得る。例えば、上記プレ分散液を製造する段階は、各成分をホモミキサー(homo mixer)に投入し、30~600分間1,000~5,000rpmで撹拌して行われ得、上記撹拌時、溶媒を追加添加して、粘度を制御することができる。一例として、本発明による正極用プレ分散液は、化学式1で示す正極添加剤、導電材およびバインダーをホモミキサーに投入し、3,000rpmで60分間混合しつつ、N‐メチルピロリドン溶媒を注入して、25±1℃での粘度が7,500±300cpsに調節された形態で製造されることができる。
【0074】
また、上記プレ分散液を製造する段階は、構造的に不安定な正極添加剤が分解および/または損傷するのを防止するために、特定範囲を満たす温度および湿度条件下で行われ得る。
【0075】
具体的に、上記プレ分散液を製造する段階は、40℃以下の温度条件で行われ得、より具体的には、10℃~40℃;10℃~35℃;10℃~30℃;10℃~25℃;10℃~20℃;15℃~40℃;20℃~40℃;15℃~35℃;または18℃~30℃の温度条件で行われ得る。
【0076】
また、上記プレ分散液を製造する段階は、10%以下の相対湿度(RH)の条件で行われ得、より具体的には、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下の相対湿度(RH)の条件で行われ得る。
【0077】
本発明は、正極用プレ分散液の製造時、温度と湿度条件を上述したように制御することによって、微粒子形態の正極添加剤が第1導電材などと混合される過程で空気中の水分および/または酸素と副反応などを起こして非可逆活性が低下するのを防止することができる。
【0078】
リチウム二次電池用正極スラリー
また、本発明は、一実施形態において、正極活物質;上述した本発明による正極用プレ分散液;および第2導電材を含むリチウム二次電池用正極スラリーを提供する。
【0079】
本発明による上記リチウム二次電池用正極スラリーは、リチウム二次電池に使用される正極を製造するための組成物であり、正極活物質、正極添加剤および第2導電材を含有し、かつ、上記正極添加剤として前述したような本発明の正極用プレ分散液を含むことによって、少量の正極添加剤が正極スラリー内に均一に分散するだけでなく、通常使用される微粒子形態の正極添加剤と比較して正極添加剤の活性に優れているので、これを含む正極およびリチウム二次電池の電気的物性を改善することができる。
【0080】
ここで、上記正極活物質は、可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な正極活物質であり、下記の化学式2で示すリチウム金属複合酸化物を含んでもよい:
【0081】
[化学式2]
Lix[NiyCozMnwM2
v]Ou
【0082】
上記化学式2中、
M2は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
x、y、z、w、vおよびuは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0≦y<0.95、0<z≦0.5、0<w≦0.5、0≦v≦0.2、1.5≦u≦4.5である。
【0083】
上記化学式2で示すリチウム金属複合酸化物は、リチウムとニッケルを含む複合金属酸化物であり、LiCoO2、LiCo0.5Zn0.5O2、LiCo0.7Zn0.3O2、LiNiO2、LiNi0.5Co0.5O2、LiNi0.6Co0.4O2、LiNi1/3Co1/3Al1/3O2、LiMnO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.9Co0.05Mn0.05O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.1Al0.1O2、およびLiNi0.7Co0.1Mn0.1Al0.1O2からなる群から選ばれる1種以上の化合物を含んでもよい。
【0084】
一例として、上記正極活物質は、化学式2で示すリチウム金属複合酸化物としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.05Al0.05O2、またはLiNi0.6Co0.2 Mn0.15Al0.05O2をそれぞれ単独で使用したりまたは併用することができる。
【0085】
また、上記正極活物質の含有量は、正極スラリーの固形分の全体100重量部に対して80~99.5重量部であってもよく、具体的には、85~95重量部、85~90重量部、90~95重量部または86~94重量部であってもよい。
【0086】
この際、上記第2導電材は、正極の電気伝導性などの性能を向上させるために使用でき、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックおよび炭素繊維からなる群から選ばれる1種以上の炭素系物質を使用することができる。例えば、上記導電材は、カーボンブラックまたはアセチレンブラックを単独で使用したり併用することができる。
【0087】
また、上記第2導電材は、正極スラリー固形分100重量部に対して0.5~5重量部を含んでもよく、具体的には、0.5~3重量部;または導電材0.5~2重量部を含んでもよい。
【0088】
本発明は、正極用プレ分散液に含有された第1導電材とともに第2導電材を正極スラリーに使用することによって、正極スラリー内に導電性ネットワークを形成することができ、これを通じて製造される正極の電気的物性をより向上させることができる。
【0089】
リチウム二次電池用正極スラリーの製造方法
これと共に、本発明は、一実施形態において、上述した本発明のリチウム二次電池用正極スラリーを製造する方法を提供する。
【0090】
具体的に、上記製造方法は、下記の化学式1で示す正極添加剤;第1導電材およびバインダーを混合して、プレ分散液を製造する段階と、製造されたプレ分散液に正極活物質および第2導電材を混合して、正極スラリーを製造する段階と、を含む:
【0091】
[化学式1]
LipCo(1-q)M1
qO4
【0092】
上記化学式1中、
M1は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【0093】
ここで、上記プレ分散液を製造する段階は、正極添加剤、第1導電材およびバインダーを混合する段階であり、当業界でスラリーの製造時に使用される通常の方式で行われ得る。例えば、上記プレ分散液を製造する段階は、各成分をホモミキサー(homo mixer)に投入し、30~600分間1,000~5,000rpmで撹拌して行われ得、上記撹拌時に溶媒を追加添加して、粘度を制御することができる。一例として、本発明による正極用プレ分散液は、化学式1で示す正極添加剤、導電材およびバインダーをホモミキサーに投入し、3,000rpmで60分間混合しつつ、N‐メチルピロリドン溶媒を注入して、25±1℃での粘度が7,500±300cpsに調節された形態で製造されることができる。
【0094】
また、上記プレ分散液を製造する段階は、構造的に不安定な正極添加剤が分解および/または損傷するのを防止するために、特定範囲を満たす温度および湿度条件下で行われ得る。
【0095】
具体的に、上記プレ分散液を製造する段階は、40℃以下の温度条件で行われ得、より具体的には、10℃~40℃;10℃~35℃;10℃~30℃;10℃~25℃;10℃~20℃;15℃~40℃;20℃~40℃;15℃~35℃;または18℃~30℃の温度条件で行われ得る。
【0096】
また、上記プレ分散液を製造する段階は、10%以下の相対湿度(RH)の条件で行われ得、より具体的には、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下の相対湿度(RH)の条件で行われ得る。
【0097】
本発明は、正極用プレ分散液の製造時、温度および湿度条件を上述したように制御することによって、微粒子形態の正極添加剤が第1導電材などと混合される過程で空気中の水分および/または酸素と副反応などを起こして非可逆活性が低下するのを防止することができる。
【0098】
一例として、製造されたプレ分散液は、正極添加剤と空気中に存在する水分および/または酸素の副反応が低減されて、特定の色相、具体的には、青色(blue)系統の色を示すことができる。
【0099】
これによって、上記プレ分散液は、350~800nmの波長範囲でのUV/Vis(紫外可視)吸光度の測定時、560~680nmの波長範囲に現れるピークの面積が全体ピークの面積の50%以上を占めることができ、具体的には、全体ピークの面積の60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、または90%以上を占めることができる。560~680nmの波長を有する光は、可視光線中、黄色および/または黄赤色を示す光であり、本発明によるプレ分散液は、560~680nmの波長の光を吸収し、その補色となる青色を反射させる構成を有していてもよい。
【0100】
また、上記プレ分散液は、CIE LAB色座標の分析時、20≦Lおよびb≦20のうち1つ以上の条件を満たすことができ、より具体的には、25≦L、およびb≦10;または30≦L≦80および-80≦b≦10のうち1つ以上の条件を満たすことができる。
【0101】
また、本発明による正極スラリーの製造方法は、このように製造されたプレ分散液に正極活物質と第2導電材を混合することによって、正極スラリーを製造する段階を含む。
【0102】
上記段階は、上記で準備したプレ分散液に正極活物質を混合する段階であり、この際の混合は、当業界で通常適用される方法であれば、特に限定されずに行われ得るが、具体的には、第2導電材とともにプレ分散液に添加される方式で行われ得、場合によっては、正極活物質と第2導電材を含む別途の分散液を製造し、製造された分散液とプレ分散液を混合する方式で行われ得る。
【0103】
一例として、上記正極スラリーを製造する段階は、正極活物質および第2導電材を常圧条件で混合して、活物質混合液を製造する段階と、製造された活物質混合液とプレ分散液を真空条件で混合して、正極スラリーを製造する段階と、を含んでもよい。
【0104】
具体的に、活物質混合液を製造する段階は、正極活物質と第2導電材を常圧(すなわち、1atm)条件で40~80分間混合して、正極活物質を含む活物質混合液を製造し、製造された活物質混合液と上記で製造されたプレ分散液を真空条件で10~50分間混合して、正極スラリーを製造することができる。
【0105】
ここで、活物質混合液とプレ分散液の混合時に真空条件で行うことによって、プレ分散液に含まれた正極添加剤と空気中の水分および/または酸素との副反応を最小化することができる。
【0106】
リチウム二次電池用正極
また、本発明は、一実施形態において、
正極集電体と、上記正極集電体上に位置し、上述した正極スラリーを用いて製造される正極合材層と、を具備するリチウム二次電池用正極を提供する。
【0107】
本発明によるリチウム二次電池用正極は、正極集電体上に正極スラリーを塗布、乾燥およびプレスして製造される正極合材層を含み、上記正極合材層は、正極活物質、化学式1で示す正極添加剤、導電材およびバインダーを含有する構成を有する。
【0108】
この際、上記正極合材層は、前述したような本発明の正極スラリーを用いて製造されることによって、電気的物性に優れているという利点がある。
【0109】
このような正極合材層の平均厚さは、特に限定されるものではないが、具体的には、50μm~300μmであってもよく、より具体的には、100μm~200μm;80μm~150μm;120μm~170μm;150μm~300μm;200μm~300μm;または150μm~190μmであってもよい。
【0110】
また、上記正極は、正極集電体として当該電池に化学的変化を誘発することなく、高い導電性を有するものを使用することができる。例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素などを使用することができ、アルミニウムやステンレススチールの場合、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものを使用することもできる。また、上記正極集電体は、表面に微細な凹凸を形成して、正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。また、上記集電体の平均厚さは、製造される正極の導電性と総厚さを考慮して3~500μmで適切に適用可能である。
【0111】
リチウム二次電池
しかも、本発明は、一実施形態において、上述した本発明による正極と、負極と、上記正極と負極の間に介在される分離膜と、を含むリチウム二次電池を提供する。
【0112】
本発明によるリチウム二次電池は、前述したような本発明の正極と、負極と、上記正極と負極の間に介在された分離膜と、を具備する構造を有する。上記リチウム二次電池は、前述したような本発明の正極を具備して、初期充電時に非可逆反応によって失われたリチウムイオンを効果的に補充することができるので、以後の電池の充放電時に高い容量と寿命を具現することができる。
【0113】
ここで、上記負極は、負極集電体上に負極活物質を塗布、乾燥およびプレスして製造され、必要に応じて正極と同じ導電材、有機バインダー高分子、添加剤などが選択的にさらに含まれ得る。
【0114】
また、上記負極活物質は、例えば、天然黒鉛のように完全な層状結晶構造を有するグラファイト、低結晶性層状結晶構造(graphene structure;炭素の6角形ハニカム形状平面が層状に配列された構造)を有するソフトカーボンおよびこのような構造が非結晶性部分と混合されているハードカーボン、人造黒鉛、膨張黒鉛、炭素繊維、難黒鉛化炭素、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、活性炭などの炭素および黒鉛材料や;LixFe2O3(0≦x≦1)、LixWO2(0≦x≦1)、SnxMe1-xMe’yOz(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の第1族、第2族、第3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;スズ系合金;SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO2、Bi2O3、Bi2O4およびBi2O5などの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li‐Co‐Ni系材料;チタン酸化物;リチウムチタン酸化物などが使用できる。
【0115】
一例として、上記負極活物質は、黒鉛とケイ素(Si)含有粒子を共に含んでもよく、上記黒鉛としては、層状結晶構造を有する天然黒鉛と等方構造を有する人造黒鉛のうちいずれか一つ以上を含んでもよく、上記ケイ素(Si)含有粒子としては、金属成分としてケイ素(Si)を主成分として含む粒子であり、ケイ素(Si)粒子、酸化ケイ素(SiO2)粒子、または上記ケイ素(Si)粒子と酸化ケイ素(SiO2)粒子が混合されたものを含んでもよい。
【0116】
この場合、上記負極活物質は、全体100重量部に対して黒鉛80~95重量部;およびケイ素(Si)含有粒子1~20重量部で含んでもよい。本発明は、負極活物質に含まれた黒鉛とケイ素(Si)含有粒子の含有量を上記のような範囲に調節することによって、電池の初期充放電時にリチウム消耗量と非可逆容量損失を減らし、単位質量当たりの充電容量を向上させることができる。
【0117】
また、上記負極合材層は、100μm~200μmの平均厚さを有していてもよく、具体的には、100μm~180μm、100μm~150μm、120μm~200μm、140μm~200μmまたは140μm~160μmの平均厚さを有していてもよい。
【0118】
また、上記負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、高い導電性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、ニッケル、チタン、焼成炭素などを使用することができ、銅やステンレススチールの場合、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものを使用することもできる。また、上記負極集電体は、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質との結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。また、上記負極集電体の平均厚さは、製造される負極の導電性と総厚さを考慮して3~500μmで適切に適用可能である。
【0119】
また、上記分離膜は、正極と負極の間に介在され、高いイオン透過度と機械的強度を有する絶縁性の薄い薄膜が使用される。分離膜は、当業界で通常使用されるものであれば、特に限定されないが、具体的には、耐化学性および疎水性のポリプロピレン;ガラス繊維;またはポリエチレンなどで作られたシートや不織布などが使用でき、場合によっては、上記シートや不織布のような多孔性高分子基材に無機物粒子/有機物粒子が有機バインダー高分子によってコートされた複合分離膜が使用されることもできる。電解質としてポリマーなどの固体電解質が使用される場合には、固体電解質が分離膜を兼ねることもできる。また、上記分離膜の気孔直径は、平均0.01~10μmであり、厚さは、平均5~300μmであってもよい。
【0120】
一方、上記正極と負極は、ゼリーロール形態で巻き取られて、円筒形電池、角形電池またはパウチ型電池に収納されるか、またはフォールディングまたはスタックアンドフォールディング形態でパウチ型電池に収納されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0121】
また、本発明による上記リチウム塩含有電解液は、電解液とリチウム塩からなってもよく、上記電解液としては、非水系有機溶媒、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用できる。
【0122】
上記非水系有機溶媒としては、例えば、N‐メチル‐2‐ピロリジノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ‐ブチロラクトン、1,2‐ジメトキシエタン、テトラヒドロキシフラン(franc)、2‐メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3‐ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3‐ジメチル‐2‐イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用できる。
【0123】
上記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合材などが使用できる。
【0124】
上記無機固体電解質としては、例えば、Li3N、LiI、Li5Ni2、Li3N‐LiI‐LiOH、LiSiO4、LiSiO4‐LiI‐LiOH、Li2SiS3、Li4SiO4、Li4SiO4‐LiI‐LiOH、Li3PO4‐Li2S‐SiS2などのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使用できる。
【0125】
上記リチウム塩は、非水系電解質に溶解しやすい物質であり、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、(CF3SO2)2NLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4‐フェニルボロン酸リチウム、イミドなどが使用できる。
【0126】
また、電解液には、充放電特性、難燃性などの改善を目的に、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n‐グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N‐置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2‐メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されてもよい。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含んでもよく、高温保存特性を向上させるために、二酸化炭素ガスをさらに含んでもよく、FEC(Fluoro‐Ethylene Carbonate)、PRS(Propene sultone)などをさらに含んでもよい。
【0127】
以下、本発明を実施例および実験例に基づいてより詳細に説明する。
【0128】
ただし、下記実施例および実験例は、ただ本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記実施例および実験例に限定されるものではない。
【0129】
実施例1~3および比較例1~5.リチウム二次電池正極用プレ分散液の製造
正極添加剤としてLi6Co0.7Zn0.3O4;第1導電材としてカーボンナノチューブ;およびバインダーとしてPVdF(重量平均分子量(Mw):500,000±25,000)を準備し、下記の表1に示されたように称量して、ホモミキサー(homo mixer)に投入した後、2,000rpmで30分間混合して、リチウム二次電池正極用プレ分散液を製造した。この際、混合時における温度および湿度は、下記の表1に示されたように調節した。
【0130】
【0131】
実施例4~6および比較例6~10.リチウム二次電池用正極スラリーの製造
正極活物質としてLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2;第2導電材としてカーボンブラックを準備し、下記の表2に示されたように称量して、ホモミキサーに投入した後、N‐メチルピロリドン溶媒を注入し、常圧(1atm)で2,500rpmで60分間活物質混合液を製造した。製造された混合液と実施例1~3および比較例1~5で製造された正極用プレ分散液;第2導電材としてカーボンブラックを準備し、下記の表2に示されたように称量して、ホモミキサーに投入した後、N‐メチルピロリドン溶媒を注入し、2,500rpmで60分間1次混合を行った。以後、真空条件下で2,500rpmで30分間混合して、2次混合を行うことで、リチウム二次電池用正極スラリーを製造した。
【0132】
【0133】
比較例11.リチウム二次電池用正極スラリーの製造
ホモミキサー(homo mixer)にN‐メチルピロリドン溶媒を注入し、正極活物質としてLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2 92重量部;正極添加剤としてLi6Co0.7Zn0.3O4 0.85重量部;第1導電材としてカーボンナノチューブ3.08重量部;第2導電材としてアセチレンブラック1重量部;およびバインダーとしてPVdF(重量平均分子量(Mw):500,000±25,000)3.08重量部を称量して、ホモミキサー(homo mixer)に投入した後、3,000rpmで60分間混合して、正極スラリーを製造した。
【0134】
実験例1.正極用プレ分散液の評価
本発明によるリチウム二次電池正極用プレ分散液を評価するために、下記のような実験を行った。
【0135】
イ)UV/Vis(紫外可視)吸光度の測定
実施例1~3および比較例1~5で製造されたプレ分散液を対象に目視で色相を観察した。次に、UV‐Vis分光器を利用してプレ分散液に対する350~800nmの波長範囲内での光吸収スペクトルを測定した。測定されたスペクトルに存在するピークの面積(A)、560~680nmの波長範囲に存在するピークの総面積(B)および560~680nmの波長範囲内に存在するピークのうち強度が最も強いピークの面積(C)をそれぞれ算出し、560~680nmの波長範囲に存在するピークの総面積比(B/A*100)および強度が最も強いピークの面積比(C/A*100)を導き出して、下記の表3に示した。
【0136】
ロ)CIE LAB色座標の測定
色差計(chromameter)を利用して実施例1~3および比較例1~5で製造されたプレ分散液を対象にCIE LAB色空間での色座標を測定し、その結果を下記の表3に示した。
【0137】
【0138】
上記表3に示されたように、本発明による正極用プレ分散液は、目視で観察した場合、青色を示すことが確認され、UV/Vis(紫外可視)吸光度の測定時、560~680nmの波長範囲に存在するピークの面積が全体ピークの面積の50%を超過し、CIE LAB空間での座標が20≦Lおよびb≦20を満たすことが確認された。一方、比較例のプレ分散液は、色相が黒色または黒色が近い青色であることが確認され、UV/Vis(紫外可視)吸光度ピークおよびCIE LAB色空間座標の条件を全部満たさないことが示された。
【0139】
実験例2.リチウム二次電池の評価
実施例4~6および比較例6~11で製造された正極スラリーをアルミニウム集電体の一面に塗布した後、100℃で乾燥し、圧延して、正極を製造した。この際、正極合材層の総厚さは、130μmであり、製造された正極の総厚さは、約200μmであった。
【0140】
また、負極活物質としての天然黒鉛およびケイ素(SiOx、ただし、1≦x≦2)粒子と;バインダーとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)を準備し、下記の表1および表2を参考にして正極スラリーを製造する方式と同じ方式で負極スラリーを準備した。この際、負極合材層の製造時に使用される黒鉛は、天然黒鉛(平均粒度:0.01~0.5μm)であり、ケイ素(SiOx)粒子は、0.9~1.1μmの平均粒度を有するものを使用した。準備した負極スラリーを銅集電体の一面に塗布した後、100℃で乾燥し、圧延して、負極を製造した。この際、負極合材層の総厚さは、150μmであり、製造された負極の総厚さは、約250μmであった。
【0141】
次に、製造された正極と負極の間に多孔質ポリエチレン(PE)フィルムからなる分離膜(厚さ:約16μm)を介在し、電解液としてE2DVCを注入して、フルセル(full cell)形態のセルを製作した。
【0142】
ここで、「E2DVC」とは、カーボネート系電解液の一種であり、エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC):ジエチルカーボネート(DEC)=1:1:1(体積比)の混合物に、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6、1.0M)およびビニルカーボネート(VC、2重量%)を混合した溶液を意味する。
【0143】
本発明による正極添加剤の性能を評価するために、このように製造されたリチウム二次電池セルを利用して下記のような実験を行った。
【0144】
イ)充放電時に発生する酸素ガス量の測定
実施例および比較例の正極スラリーを用いて製造されたリチウム二次電池を対象に、55℃で3.5Vおよび1.0Cの条件で初期充電(formation)を行い、上記初期充電を行うことで、正極で発生するガスを脱気して、初期充電時に発生する酸素ガスの含有量を分析した。次に、45℃でそれぞれ0.3Cの条件で50回充放電を繰り返し行うことで、各充放電時に電解質分解によって発生する酸素ガスの含有量を追加分析し、分析された結果は、下記の表4に示した。
【0145】
ロ)リチウム二次電池の充放電容量および保持率の評価
実施例および比較例の正極スラリーを用いて製造されたリチウム二次電池を対象に、25℃の温度で0.1Cの充電電流で充電終止電圧4.2~4.25Vまで充電し、終止電圧で電流密度が0.01Cとなるまで充電を行うことで活性化させた。以後、0.1Cの放電電流で終止電圧2Vまで放電させ、単位質量当たりの初期充放電容量を測定した。
【0146】
次に、45℃でそれぞれ0.3Cの条件で50回充放電を繰り返し行うことで、充放電時の容量を測定し、50回充放電を行った後、充放電容量保持率を算出した。その結果は、下記の表4に示した。
【0147】
【0148】
上記表4に示されたように、本発明による正極プレ分散液を用いて製造されたリチウム二次電池は、初期充放電後に発生する酸素ガスの量が少なく、初期充放電容量および容量保持率に優れていることが分かる。
【0149】
具体的には、実施例のリチウム二次電池は、初期充放電時、80~110ml/gの酸素ガスを発生させ、以後の充放電時、酸素ガス発生量が顕著に低減されることが示された。これは、正極合材層に含有された少量の正極添加剤が高い非可逆活性を有し、均一に分散することによって、初期充放電時、大部分の非可逆反応に参加することを意味する。また、上記実施例のリチウム二次電池は、103Ah以上の初期充放電容量と91%以上の高い容量保持率を示すことが確認されたが、これは、正極合材層に含有された正極添加剤が高い非可逆活性を有し、初期充放電時に非可逆反応によって失われたリチウムイオンを効果的に補充することを示す。
【0150】
このような結果から、本発明による正極用プレ分散液は、化学式1で示す正極添加剤を高い含有量で含有し、UV‐Vis(紫外可視)吸光度の測定時、特定波長範囲に存在するピークの面積比が調節された構成を有することによって、正極スラリー内での正極添加剤の分散性と正極スラリー製造時の作業性を向上させることができると共に、正極スラリーの製造時、正極添加剤の損失を最小化し、正極スラリーの製造時に発生しうる副反応を抑制して、正極添加剤の高い活性を維持できることが分かる。
【0151】
以上では、本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、当該技術分野における熟練した当業者または当該技術分野における通常の知識を有する者なら、後述する特許請求範囲に記載された本発明の思想および技術領域を逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正および変更させることができることが理解できる。
【0152】
したがって、本発明の技術的範囲は、明細書の詳細な説明に記載された内容に限定されるものではなく、特許請求範囲によって定められるべきである。