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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】バッテリー異常診断装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20240611BHJP
   G01R 31/387 20190101ALI20240611BHJP
   G01R 31/3842 20190101ALI20240611BHJP
   G01R 31/378 20190101ALI20240611BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/387
G01R31/3842
G01R31/378
H01M10/48 P
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022567855
(86)(22)【出願日】2021-08-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 KR2021010474
(87)【国際公開番号】W WO2022035151
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】10-2020-0100130
(32)【優先日】2020-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ジン・キム
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/036760(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103698714(CN,A)
【文献】特開2018-147635(JP,A)
【文献】特許第7384529(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーセルの電圧と電流を測定するセンサ部、
前記バッテリーセルの容量と電圧に対する微分データを算出する微分データ算出部、及び
前記微分データに基づいて前記バッテリーセルの異常を診断し、前記異常の類型を分類する異常診断部、
を含み、
前記異常診断部は、前記微分データのピークでの電圧と前記微分データのピーク大きさとに基づいて前記バッテリーセルの異常の類型を分類する、バッテリー異常診断装置。
【請求項2】
前記異常診断部は、前記微分データのピークでの電圧の和を予め設定された第1基準値と比較することにより、前記バッテリーセルの異常を第1類型として分類する、請求項に記載のバッテリー異常診断装置。
【請求項3】
前記バッテリーセルの異常に関する前記第1類型は、使用可能なリチウムの損失を含む、請求項に記載のバッテリー異常診断装置。
【請求項4】
前記異常診断部は、前記微分データのピーク大きさの和を予め設定された第2基準値と比較することにより、前記バッテリーセルの異常を第2類型として分類する、請求項のいずれか一項に記載のバッテリー異常診断装置。
【請求項5】
前記バッテリーセルの異常に関する前記第2類型は、正極反応面積の縮小を含む、請求項に記載のバッテリー異常診断装置。
【請求項6】
前記異常診断部は、前記微分データのピーク大きさを前記微分データのピークでの電圧で割った値を予め設定された第3基準値と比較することにより、前記バッテリーセルの異常を第3類型として分類する、請求項のいずれか一項に記載のバッテリー異常診断装置。
【請求項7】
前記バッテリーセルの異常に関する前記第3類型は、負極反応面積の縮小を含む、請求項に記載のバッテリー異常診断装置。
【請求項8】
バッテリーセルの電圧と電流を測定するセンサ部、
前記バッテリーセルの容量と電圧に対する微分データを算出する微分データ算出部、及び
前記微分データに基づいて前記バッテリーセルの異常を診断し、前記異常の類型を分類する異常診断部、
を含み、
前記微分データ算出部は、前記バッテリーセルの基準時間の間の充電電流変化量または放電電流変化量が基準値よりも大きい場合に対し、前記バッテリーセルの容量と電圧に対する微分データを算出する、バッテリー異常診断装置。
【請求項9】
バッテリーセルの電圧と電流を測定するセンサ部、
前記バッテリーセルの容量と電圧に対する微分データを算出する微分データ算出部、及び
前記微分データに基づいて前記バッテリーセルの異常を診断し、前記異常の類型を分類する異常診断部、
を含み、
前記微分データ算出部は、前記バッテリーセルの充放電終了後、基準時間の間のSOC変化量が基準値よりも小さい場合に対し、前記バッテリーセルの容量と電圧に対する微分データを算出する、バッテリー異常診断装置。
【請求項10】
前記微分データ算出部は、前記センサ部を介して測定された電圧データに対するサンプリングを用いて前記微分データを算出する、請求項1~9のいずれか一項に記載のバッテリー異常診断装置。
【請求項11】
前記微分データ算出部は、前記センサ部を介して測定された電圧データに対する平滑化スプラインを用いて前記微分データを算出する、請求項1~9のいずれか一項に記載のバッテリー異常診断装置。
【請求項12】
バッテリーセルの電圧と電流を測定するステップと、
前記バッテリーセルの容量と電圧に対する微分データを算出するステップと、
前記微分データに基づいて前記バッテリーセルの異常を診断し、前記異常の類型を分類するステップと、
を含み、
前記バッテリーセルの異常の類型を分類するステップは、前記微分データのピークでの電圧と前記微分データのピーク大きさに基づいて前記バッテリーセルの異常の類型を分類する、バッテリー異常診断方法。
【請求項13】
前記バッテリーセルの異常の類型を分類するステップは、前記微分データのピークでの電圧の和、前記微分データのピーク大きさの和、及び前記微分データの大きさを前記微分データのピークでの電圧で割った値のうちの少なくとも1つを基準値と比較することにより前記異常の類型を分類する、請求項12に記載のバッテリー異常診断方法。
【請求項14】
バッテリーセルの電圧と電流を測定するステップと、
前記バッテリーセルの容量と電圧に対する微分データを算出するステップと、
前記微分データに基づいて前記バッテリーセルの異常を診断し、前記異常の類型を分類するステップと、
を含み、
前記算出するステップは、前記バッテリーセルの基準時間の間の充電電流変化量または放電電流変化量が基準値よりも大きい場合に対し、前記バッテリーセルの容量と電圧に対する微分データを算出する、バッテリー異常診断方法。
【請求項15】
バッテリーセルの電圧と電流を測定するステップと、
前記バッテリーセルの容量と電圧に対する微分データを算出するステップと、
前記微分データに基づいて前記バッテリーセルの異常を診断し、前記異常の類型を分類するステップと、
を含み、
前記算出するステップは、前記バッテリーセルの充放電終了後、基準時間の間のSOC変化量が基準値よりも小さい場合に対し、前記バッテリーセルの容量と電圧に対する微分データを算出する、バッテリー異常診断方法。
【請求項16】
前記バッテリーセルの異常の類型は、使用可能なリチウムの損失、正極反応面積の縮小及び負極反応面積の縮小のうち少なくとも1つを含む、請求項12に記載のバッテリー異常診断方法。
【請求項17】
バッテリー異常診断装置のプロセッサに実行されると、前記バッテリー異常診断装置に、請求項12~16のうちのいずれか一項に記載のバッテリー異常診断方法を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互参照]
本発明は、2020年8月10日に出願された韓国特許出願第10-2020-0100130号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容を本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、バッテリーの容量-電圧に対する微分曲線を用いてバッテリーの非正常的な異常挙動を診断し、異常の種類を分類するためのバッテリー異常診断装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、二次電池に対する研究開発が活発に行われている。ここで、二次電池は、充放電が可能な電池であって、従来のNi/Cd電池、Ni/MH電池などと、最近のリチウムイオン電池を全て含む意味である。二次電池のうちリチウムイオン電池は、従来のNi/Cd電池、Ni/MH電池などに比べて、エネルギー密度が遥かに高いという長所がある。また、リチウムイオン電池は、小型・軽量で製作できることから、移動機器の電源として用いられる。また、リチウムイオン電池は、電気自動車の電源へまで使用範囲が拡張され、次世代のエネルギー貯蔵媒体として注目を浴びている。
【0004】
また、二次電池は、一般的に複数個のバッテリーセルが直列及び/又は並列に連結されたバッテリーモジュールを含むバッテリーパックとして用いられる。そして、バッテリーパックは、バッテリー管理システムによって状態及び動作が管理及び制御される。
【0005】
このような二次電池の場合、持続的に使用すると、バッテリーの使用可能な容量が漸進的に減少するという退化現象が発生し得る。従来は、このようなバッテリーの退化を検出するために測定データの不安定な挙動を検出する方法を用いたが、バッテリーが正常に動作する場合に対しては退化を検出する方法がなかった。また、従来は、単にバッテリーの退化可否のみを検出できただけで、具体的な退化の種類に対しては区分し難いという問題もあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記のような課題を解決するために考案されたものであって、バッテリーの容量と電圧に対する微分データを分析することで、バッテリーの非正常的な異常挙動を診断し、異常の類型を分類することができるバッテリー異常診断装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係るバッテリー異常診断装置は、バッテリーセルの電圧と電流を測定するセンサ部、前記バッテリーセルの容量と電圧に対する微分データを算出する微分データ算出部、及び前記微分データに基づいて前記バッテリーセルの異常を診断し、前記異常の類型を分類する異常診断部を含むことができる。
【0008】
本発明の一実施形態に係るバッテリー異常診断方法は、バッテリーセルの電圧と電流を測定するステップ、前記バッテリーセルの容量と電圧に対する微分データを算出するステップ、及び前記微分データに基づいて前記バッテリーセルの異常を診断し、前記異常の類型を分類するステップを含むことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のバッテリー異常診断装置及び方法によれば、バッテリーの容量と電圧に対する微分データを分析することで、バッテリーの非正常的な異常挙動を診断し、異常の類型を分類することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一般的なバッテリーパックの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係るバッテリー異常診断装置の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係るバッテリー異常診断装置によって算出された微分データの概形を示すグラフである。
図4a】本発明の一実施形態に係るバッテリー異常診断装置によって算出された最大ピーク電圧とピーク大きさを示す図である。
図4b】本発明の一実施形態に係るバッテリー異常診断装置によって算出された充電時の特定地点でのピーク電圧とピーク大きさを示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係るバッテリー異常診断装置によって分類された異常の類型を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係るバッテリー異常診断方法を示すフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態に係るバッテリー異常診断装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の様々な実施形態について詳細に説明する。本明細書において、図面上の同一の構成要素については、同一の参照符号を使用し、同一の構成要素に対する重複した説明は省略する。
【0012】
本明細書に開示されている本発明の様々な実施形態について、特定の構造的または機能的な説明は、単に本発明の実施形態を説明するための目的として例示されたものであって、本発明の様々な実施形態は、様々な態様で実施することができ、本明細書に記載された実施形態に限定されるものと解釈されてはならない。
【0013】
様々な実施形態で使用される「第1の」、「第2の」、「第一の」または「第二の」などの表現は、様々な構成要素を順序および/または重要度に関係なく修飾することができ、当該構成要素を限定するものではない。例えば、本発明の権利範囲を逸脱することなく、第1の構成要素は、第2の構成要素として命名することができ、同様に、第2の構成要素もまた第1の構成要素に置き換えて命名することができる。
【0014】
本明細書において使用される用語は、単に特定の実施形態を説明するために使用されたものであって、他の実施形態の範囲を限定する意図ではない。単数の表現は、文脈上明らかに異なって定義しない限り、複数の表現を含むことができる。
【0015】
技術的または科学的な用語を含めて、ここで使用される全ての用語は、本発明の技術分野における通常の知識を有する者によって、一般的に理解されるものと同じ意味を有することができる。一般的に使用される辞典に定義されている用語は、関連技術の文脈上有する意味と同一または類似の意味を有するものと解釈されることができ、本明細書で明らかに定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味に解釈されない。場合によって、本明細書で定義されている用語であっても、本発明の実施形態を排除するように解釈されてはならない。
【0016】
図1は、一般的なバッテリーラックの構成を示すブロック図である。
【0017】
図1を参照すれば、本発明の一実施形態に係るバッテリーラック1と、上位システムに含まれている上位制御器2とを含むバッテリー制御システムを概略的に示す。
【0018】
図1に示すように、バッテリーラック1は、1つ以上のバッテリーセルからなり、充放電可能なバッテリーモジュール10と、バッテリーモジュール10の(+)端子側または(-)端子側に直列に連結され、バッテリーモジュール10の充放電電流の流れを制御するためのスイッチング部14と、バッテリーラック1の電圧、電流、温度などをモニタリングして、過充電及び過放電などを防止するように制御管理するバッテリー管理システム20(例えば、MBMS)を含む。ここで、バッテリーラック1には、バッテリーモジュール10、センサ12、スイッチング部14及びバッテリー管理システム20が複数個備えられてよい。
【0019】
ここで、スイッチング部14は、複数のバッテリーモジュール10の充電または放電に対する電流の流れを制御するための半導体スイッチング素子として、例えば、バッテリーラック1の仕様によって少なくとも1つのMOSFETやリレー、電磁接触器などが用いられてよい。
【0020】
また、バッテリー管理システム20は、バッテリーラック1の電圧、電流、温度などをモニタリングするため、半導体スイッチング素子のゲート、ソース及びドレインなどの電圧並びに電流を測定または計算することができる。また、バッテリー管理システム20は、半導体スイッチング素子に隣接して設けられたセンサ12を用いて、バッテリーラック1の電流、電圧、温度などを測定することができる。ここで、センサ12は、後述する図2のセンサ部に該当し得る。
【0021】
バッテリー管理システム20は、前述した各種パラメータを測定した値の入力を受けるインターフェースであって、複数の端子と、これらの端子と連結され、入力を受けた値の処理を行う回路などを含むことができる。また、バッテリー管理システム20は、スイッチング部14、例えば、MOSFETのON/OFFを制御することもでき、バッテリーモジュール10に連結され、バッテリーモジュール10それぞれの状態を監視することができる。
【0022】
一方、本発明のバッテリー管理システム20では、以下で後述するように、バッテリーセルの容量と電圧に関する微分データを別のプログラムを介して算出することができる。また、算出された微分データを用いてバッテリーセルの異常可否を診断することができる。
【0023】
上位制御器2は、バッテリー管理システム20にバッテリーモジュール10に対する制御信号を伝送することができる。これによって、バッテリー管理システム20は、上位制御器から印加される信号に基づいて、動作が制御され得る。一方、本発明のバッテリーセルは、ESS(Energy Storage System)に用いられるバッテリーモジュール10に含まれた構成であってもよい。そして、このような場合、上位制御器2はESS制御器であってもよい。但し、バッテリーラック1は、かかる用途に限定されるものではない。
【0024】
このようなバッテリーラック1の構成及びバッテリー管理システム20の構成は、公知の構成なので、より具体的な説明は省略する。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態に係るバッテリー異常診断装置の構成を示すブロック図である。
【0026】
図2を参照すれば、本発明の一実施形態に係るバッテリー異常診断装置200は、センサ部210、微分データ算出部220及び異常診断部230を含むことができる。
【0027】
センサ部210は、バッテリーセルの電圧と電流を測定することができる。ここで、センサ部210は、バッテリーセルの電圧と電流を一定時間間隔で測定することができる。
【0028】
微分データ算出部220は、バッテリーセルの容量と電圧に対する微分データを算出することができる。例えば、微分データ算出部220は、バッテリーセルの容量と電圧に対する微分曲線であるdQ/dVを算出することができる。
【0029】
この場合、微分データ算出部220は、バッテリーセルに対して測定または算出されたデータ値が予め設定された条件を満たす場合に対し、微分データを算出するようにしてもよい。例えば、微分データ算出部220は、バッテリーセルの一定時間の間の充電電流変化量または放電電流変化量が基準値よりも大きい場合に対し、バッテリーセルの容量と電圧に対する微分データを算出するようにしてもよい。また、微分データ算出部220は、バッテリーセルの充放電終了後、一定時間の間のSOC変化量が基準値よりも小さい場合に対し、バッテリーセルの容量と電圧に対する微分データを算出することができる。このような条件は、安定したESSシステムの運営のために求められる条件であり得る。
【0030】
微分データ算出部220は、センサ部210を介して測定された電圧データに対するサンプリングを用いて微分データを算出することができる。ここで、電圧データに対するサンプリングは、バッテリーセルの電圧を単調増加または単調減少形態のデータに変換する前処理過程を意味する。例えば、微分データ算出部220は、同じ電圧の大きさ(V)を有するバッテリーセルの容量値(Q)を分類し、電圧の大きさ別にバッテリーセルの容量値の平均値を算出することで、電圧に対するサンプリングを行うことができる。
【0031】
また、微分データ算出部220は、センサ部210を介して測定された電圧データに対する平滑化スプライン(Smoothing Spline)を用いて微分データを算出することができる。これを介して、隣接したデータ間の連続性を満たすように変換することで、バッテリーセルの微分データの曲線を緩やかな形態に変換することができる。
【0032】
異常診断部230は、微分データに基づいてバッテリーセルの異常を診断し、異常の類型を分類することができる。ここで、異常診断部230は、微分データのピーク(peak)値に基づいてバッテリーセルの異常の類型を分類することができる。また、異常診断部230は、微分データのピークでの電圧と微分データのピーク大きさ(intensity)に基づいてバッテリーセルの異常の類型を分類することができる。
【0033】
具体的に、異常診断部230は、微分データのピークでの電圧の和を予め設定された第1基準値と比較することにより、バッテリーセルの異常を第1類型として分類することができる。ここで、第1基準値は、微分データに対する平均と標準偏差の和(例えば、μ+3σ)で表すことができる。例えば、バッテリーセルの異常に関する第1類型は、使用可能なリチウムの損失を含むことができる。
【0034】
また、異常診断部230は、微分データのピーク大きさの和を予め設定された第2基準値と比較することにより、バッテリーセルの異常を第2類型として分類することができる。ここで、第2基準値は、平均と標準偏差の差(例えば、μ-3σ)で表すことができる。例えば、バッテリーセルの異常に関する第2類型は、正極反応面積の縮小を含むことができる。
【0035】
そして、異常診断部230は、微分データのピーク大きさを微分データのピークでの電圧で割った値を予め設定された第3基準値と比較することにより、バッテリーセルの異常を第3類型として分類することができる。ここで、第3基準値は、微分データに対する平均と標準偏差の和(例えば、μ+3σ)で表すことができる。例えば、バッテリーセルの異常に関する第3類型は、負極反応面積の縮小を含むことができる。
【0036】
一方、図2には示していないが、本発明の一実施形態に係るバッテリー異常診断装置200は格納部を含んでよい。このような格納部には、バッテリーセルの電圧及び電流測定データ、バッテリーセルの容量と電圧に対する微分データ、バッテリーセルの異常類型に関する各種データなどが格納されてもよい。しかし、格納部が必ずバッテリー異常診断装置200内に含まれなければならないものではなく、格納部が外部サーバに含まれて別の通信モジュール(図示せず)を介してデータを送受信する形態で構成されてもよい。
【0037】
また、本発明の一実施形態に係るバッテリー異常診断装置200は、ディスプレイ部(図示せず)をさらに含んでよい。したがって、本発明の一実施形態に係るバッテリー異常診断装置200は、ディスプレイ部を介して微分データ算出部220を介して算出された微分曲線の概形などをグラフ状でユーザに表現することができる。また、ディスプレイ部には、ユーザインターフェース(例えば、タッチパッドなど)を備えてユーザの入力を受信するようにしてもよい。
【0038】
このように、本発明のバッテリー異常診断装置及び方法によれば、バッテリーの容量と電圧に対する微分データを分析することで、バッテリーの非正常的な異常挙動を診断し、異常の類型を分類することができる。
【0039】
図3は、本発明の一実施形態に係るバッテリー異常診断装置によって算出された微分データの概形を示すグラフである。図3を参照すれば、x軸はバッテリーセルの電圧(V)を示し、y軸はバッテリーセルの容量と電圧に対する微分データ(dQ/dV)(Ah/V)を示す。
【0040】
図3に示すように、本発明の一実施形態に係るバッテリー異常診断装置ではバッテリーセルの容量と電圧に対する微分データの概形を分析することで、バッテリーセルの異常可否を判断することができる。例えば、図3の微分曲線において、Ea(1)、Ea(5)、Ec(2)、Ea(6)pre地点のようにピークが示される部分でバッテリーセルに異常が発生する可能性がある。
【0041】
また、図3の微分データに対して統計的方法を適用してバッテリーセルの異常可否を診断することができる。例えば、バッテリーセルの微分データに対する平均や標準偏差などの統計値を設定された臨界的と比較することにより、バッテリーセルの異常可否を検出することができる。ここで、平均や標準偏差などに対して、スライディングウィンドウのような分析技法を介して異常を診断することができる。
【0042】
図4aは、本発明の一実施形態に係るバッテリー異常診断装置によって算出された最大ピーク電圧とピーク大きさを示す図である。
【0043】
図4aを参照すれば、上段グラフのx軸は時間を示し、y軸は図3の微分データで最大ピークが示される電圧(V)(例えば、図3のx軸に当該)である。また、図4aの下段グラフの場合、x軸は時間を示し、y軸は図3の微分データで最大ピークの大きさ(Ah/V)を示す。ここで、図4aのデータは、バッテリーセルの充放電期間中に獲得されたデータであり、図3のEa(5)及びEc(2)に該当し得る。
【0044】
図4aの上段及び下段グラフを参照すれば、バッテリーセルの最大ピーク電圧と最大ピークの大きさの概形が一定範囲内で含まれているが、特定期間に上段または下段に外れるピークが発生することが分かる。例えば、図4aにおいて、2019年12月2日、12月10日、12月26日頃に上段及び下段グラフで共通的にピークが発生することが確認できる。したがって、本発明の一実施形態に係るバッテリー異常診断装置では、このようにバッテリーセルの最大ピーク電圧と最大ピークの大きさの曲線でピーク値を検出することにより、バッテリーセルの異常可否を判断することができる。
【0045】
図4bは、本発明の一実施形態に係るバッテリー異常診断装置によって算出された充電時の特定地点でのピーク電圧とピーク大きさを示す図である。
【0046】
図4bを参照すれば、上段グラフのx軸は時間を示し、y軸は図3の微分データで最大ピークが示される電圧(V)(例えば、図3のx軸に該当)である。また、図4aの下段グラフの場合、x軸は時間を示し、y軸は図3の微分データで最大ピークの大きさ(Ah/V)を示す。ここで、図4bのデータはバッテリーセルの充放電期間中に獲得されたデータであり、図3のEa(6)preに該当し得る。
【0047】
図4bの上段及び下段グラフを参照すれば、図4aの場合と同様に、バッテリーセルの最大ピーク電圧と最大ピークの大きさの概形が一定範囲内で含まれているが、特定期間に上段または下段で範囲を外れるデータが示されることが分かる。例えば、図4bの上段グラフでは2019年12月5日に異常データが発生し、下段グラフでは12月5日、12月10日、12月13日頃に異常データが発生したことが確認できる。したがって、本発明の一実施形態に係るバッテリー異常診断装置では、このようにバッテリーセルの最大ピーク電圧と最大ピークの大きさの曲線に対して設定された範囲から外れる異常データを検出することにより、バッテリーセルの異常可否を判断することができる。
【0048】
図5は、本発明の一実施形態に係るバッテリー異常診断装置によって分類された異常の類型を示す図である。
【0049】
図5を参照すれば、x軸はバッテリーラックに含まれたバッテリーセルのIDを示し、y軸は左側グラフからそれぞれ微分データのピークが示されるピーク電圧の和、ピークの大きさの和及びピークの大きさを電圧で割った値(例えば、図3のEa(6)pre)を示す。
【0050】
このように、本発明の一実施形態に係るバッテリー異常診断装置は、図5に示すように、微分データから算出された値に基づいてバッテリーセルの異常を診断し、異常の類型を分類することができる。
【0051】
具体的には、図5の一番目のグラフを参照すれば、微分データのピークでの電圧の和が第1基準値(例えば、μ+3σ)よりも大きい場合、バッテリーセルの異常を第1類型に分類し得る。ここで、第1類型は、使用可能なリチウムの損失であり得る。
【0052】
また、図5の二番目のグラフを参照すれば、微分データのピーク大きさの和が予め設定された第2基準値(例えば、μ-3σ)よりも小さい場合、バッテリーセルの異常を第2類型に分類し得る。ここで、第2類型は、正極反応面積の縮小であり得る。
【0053】
そして、図5の三番目のグラフを参照すれば、微分データのピーク大きさを微分データのピークでの電圧で割った値が予め設定された第3基準値(例えば、μ+3σ)よりも大きい場合、バッテリーセルの異常を第3類型に分類し得る。ここで、第3類型は、負極反応面積の縮小であり得る。
【0054】
一方、図5においては、バッテリーセルの異常に関する第1から第3類型がそれぞれ使用可能なリチウムの損失、正極反応面積の縮小及び負極反応面積の縮小であるものと説明したが、本発明がこれに制限されるものではなく、本発明のバッテリー異常診断装置を介して検出可能な異常類型はそれ以外にも多様に含まれ得る。
【0055】
また、図5においては、微分データのピークでの電圧の和、微分データのピーク大きさの和、及び微分データのピーク大きさを微分データのピークでの電圧で割った値を基準値と比較する方法を使用したが、本発明がこれに制限されるものではなく、前記算出値以外にも微分データから導出された他の算出値が使用されてもよく、診断方式もまた必要に応じて多様な方法が活用されてもよい。そして、バッテリーセルの微分データに対する平均と標準偏差の和または差に基づいて基準値を設定したが、前述した第1から第3基準値もまた必要に応じて多様に設定されてもよい。
【0056】
図6は、本発明の一実施形態に係るバッテリー異常診断方法を示すフローチャートである。
【0057】
図6を参照すれば、先ず、バッテリーセルの電圧と電流を測定することができる(S610)。ここで、ステップS610では、バッテリーセルの電圧と電流を設定された一定時間間隔で測定することができる。
【0058】
そして、測定データ値が予め設定された条件を満たしているか否かを判断する(S620)。ここで、予め設定された条件とは、バッテリーセルの一定時間の間の充電電流変化量または放電電流変化量が基準値よりも大きく、バッテリーセルの充放電終了後、一定時間の間のSOC変化量が基準値よりも小さい場合を含むことができる。これは安定したESSシステムの運営のために求められる条件であり得る。
【0059】
もし、測定データ値が前記設定された条件を満たさなければ(NO)、ステップS680に進行して未分類処理を行うことができる。その反面、測定データ値が設定された条件を満たす場合(YES)、ステップS630に進行する。
【0060】
そして、ステップS630では、バッテリーセルの容量と電圧に対する微分データdQ/dVを算出する。ここで、測定された電圧データに対するサンプリングを用いて微分データを算出することができる。例えば、同じ電圧の大きさを有するバッテリーセルの容量値を分類し、電圧の大きさ別にバッテリーセルの容量値の平均値を算出することで電圧に対するサンプリングを行い、バッテリーセルの電圧を単調増加または単調減少形態のデータに変換することができる。また、ステップS630では、測定された電圧データに対する平滑化スプライン用いて隣接したデータ間の連続性を満たすように変換することで、バッテリーセルの微分データの曲線を緩やかな形態に変換することができる。
【0061】
次いで、微分データのピークでの電圧(Vpeak)と微分データのピーク大きさ(Intensity)を算出する(S640)。そして、ステップS650では、微分データのピークでの電圧の和(ΣVpeak)を予め設定された第1基準値(μ+3σ)と比較する。もし、微分データのピークでの電圧の和が第1基準値を超える場合(YES)、当該バッテリーセルに使用可能なリチウムの損失が発生したものと判断する(S655)。
【0062】
その反面、微分データのピークでの電圧の和が第1基準値以下である場合(NO)、ステップS660に進めて微分データのピーク大きさの和(ΣIntensity)を予め設定された第2基準値(μ-3σ)と比較する(S660)。もし、微分データのピーク大きさの和が第2基準値未満である場合(YES)、当該バッテリーセルに正極反応面積の縮小が発生したものと判断する(S665)。
【0063】
その反面、微分データのピーク大きさの和が第2基準値以上である場合(NO)、ステップS670に進行して微分データのピーク大きさを微分データのピークでの電圧で割った値(Intensity/Vpeak)を予め設定された第3基準値(μ+3σ)と比較する(S670)。もし、微分データのピーク大きさの和が第3基準値よりも大きい場合(YES)、当該バッテリーセルに負極反応面積の縮小が発生したものと判断する(S675)。
【0064】
一方、微分データのピーク大きさの和が第3基準値未満である場合(NO)、ステップS680に進行して当該バッテリーセルの異常類型を分類せずに終了する。
【0065】
このように、本発明のバッテリー異常診断方法によれば、バッテリーの容量と電圧に対する微分データを分析することで、バッテリーの非正常的な異常挙動を診断し、異常の類型を分類することができる。
【0066】
図7は、本発明の一実施形態に係るバッテリー異常診断装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0067】
図7を参照すれば、本発明の一実施形態に係るバッテリー異常診断装置700は、MCU710、メモリ720、入出力I/F730及び通信I/F740を含んでよい。
【0068】
MCU710は、メモリ720に格納されている各種プログラム(例えば、バッテリー診断プログラム、微分データ算出プログラム、バッテリー異常類型分類プログラムなど)を実行させ、このようなプログラムを介してバッテリーセルの異常診断と類型分類などのための各種データを処理し、前述した図2の機能を行うようにするプロセッサであってよい。
【0069】
メモリ720は、バッテリーセルの微分データ算出、異常診断及び分類などに関する各種プログラムを格納することができる。また、メモリ720は、バッテリーセルの測定電圧及び電流データ、バッテリーセルの微分データなど各種データを格納することができる。
【0070】
このようなメモリ720は、必要に応じて複数個設けられてもよい。メモリ720は、揮発性メモリであってもよく、非揮発性メモリであってもよい。揮発性メモリとしてのメモリ720は、RAM、DRAM、SRAMなどが使用されてよい。非揮発性メモリとしてのメモリ720は、ROM、PROM、EAROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリなどが使用されてよい。前記列挙したメモリ720の例は単に例示であるだけで、これらの例に限定されるものではない。
【0071】
入出力I/F730は、キーボード、マウス、タッチパネルなどの入力装置(図示せず)とディスプレイ(図示せず)などの出力装置とMCU710との間を連結してデータを送受信できるようにするインターフェースを提供することができる。
【0072】
通信I/F740は、サーバと各種データを送受信できる構成であり、有線または無線通信を支援できる各種装置であってよい。例えば、通信I/F740を介して別に設けられた外部サーバからバッテリーセルの微分データ算出と診断のためのプログラムや各種データなどを送受信することができる。
【0073】
このように、本発明の一実施形態に係るコンピュータープログラムはメモリ720に記録され、MCU710によって処理されることで、例えば、図2に示した各機能ブロックを行うモジュールとして具現されてもよい。
【0074】
以上、本発明の実施形態を構成する全ての構成要素が1つに結合するか、結合して動作するものと説明されたからといって、本発明が必ずしもこれらの実施形態に限定されるわけではない。即ち、本発明が目的とする範囲内であれば、その全ての構成要素が1つ以上に選択的に結合して動作することもできる。
【0075】
また、以上で記載された「含む」、「構成する」または「有する」などの用語は、特に反対される記載がない限り、当該構成要素が内在し得ることを意味するので、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得るものと解釈されるべきである。技術的または科学的な用語を含む全ての用語は、特に定義されない限り、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって、一般的に理解されるものと同一の意味を有する。辞典に定義されている用語のように、一般的に使用される用語は、関連技術の文脈上の意味と一致するものと解釈されるべきであり、本発明で明らかに定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味と解釈されない。
【0076】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で、様々な修正および変形が可能である。したがって、本発明に開示された実施形態は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく、説明するためのものであり、このような実施形態により本発明の技術思想の範囲が限定されるわけではない。本発明の保護範囲は、以下の特許請求の範囲によって解釈されるべきであり、それと等しい範囲内にある全ての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0077】
1 バッテリーラック
2 上位制御器
10 バッテリーモジュール
12 センサ
14 スイッチング部
20 バッテリー管理システム
200 バッテリー異常診断装置
210 センサ部
220 微分データ算出部
230 異常診断部
700 バッテリー異常診断装置
710 MCU
720 メモリ
730 入出力I/F
740 通信I/F
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7